ERATO小島マーケットデザインプロジェクトにおける情報学
2024/9/5 9:30-12:00
第2イベント会場
9:30-9:50 講演(1) ERATO小島マーケットデザインプロジェクト
小島 武仁(東京大学 大学院経済学研究科経済専攻経済学コース 教授)
【概要】  「マーケットデザイン」は,望ましい制度を科学的に設計し,実社会の制度の改善を目指す研究分野です.私の講演では,この分野がどのような問題意識をもって研究と実践に当たっているのかを紹介し,また私が研究総括を務めるERATO小島マーケットデザインプロジェクトが目指すアジェンダについてご説明いたします.また,日本においてはまだまだ数が少ないと思われるいわゆる「文理融合」的な研究プロジェクトであることから,我々のプロジェクトにおいて異分野間の協働をいかに進めているかについてもご紹介し,異分野間の有益な協働のための情報提供としても参考にしていただけるような講演を目指します.
【略歴】 2003年東京大学経済学部経済学科卒業.2008年ハーバード大学Ph.D.(経済学専攻)取得.2009年スタンフォード大学経済学部助教授,2013年同准教授,2019年同教授.2020年より現職および東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)センター長.研究分野はマーケットデザイン,マッチング理論,ゲーム理論.2021年より科研・基盤(S)「マーケットデザインとその社会実装による社会科学の革新」研究代表.2023年よりJST ERATO 小島マーケットデザインプロジェクト研究総括.
9:50-10:30 講演(2) 情報科学とゲーム理論/マーケットデザイン
横尾 真(九州大学システム情報科学研究院情報学部門 教授)
【概要】 マーケットデザインとは,ゲーム理論やその他の経済学の知見をいかして現実のマーケットや経済制度の修正または設計を行う研究分野である.ここでの「マーケット」の意味は非常に広範で,携帯電話の周波数帯域を割り当てる周波数オークションや,研修医に病院を割り当てる研修医マッチング,学生・児童が学校を選ぶ学校選択制などの金銭が介在しない「市場」も守備範囲に含む.マーケットデザインは,経済学,情報科学,人工知能等が関連する学際的な研究分野となっている.本講演では情報科学の観点から,マーケットデザインの主要な実践例であるオークションとマッチングについて概説する.
【略歴】 1986年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了. 同年 NTT に入社.
2004年より九州大学大学院 システム情報科学研究院 教授.マーケットデザイン,マルチエージェントシステムに関する研究に従事. 博士 (工学).
2004年 Association for Computing Machinery (ACM) Special Interest Group on Artificial Intelligence (SIGAI) Autonomous Agent Research Award,
2006年学士院学術奨励賞, International Foundation for Autonomous Agents and Multiagent Systems influential paper award, 2018年文部科学大臣表彰科学技術賞 受賞.Association for the Advancement of Artificial Intelligence (AAAI), 情報処理学会,日本ソフトウェア科学会 フェロー
10:40-11:20 講演(3)/司会 離散最適化のメカニズムデザインへの適用
田村 明久(慶應義塾大学 理工学部 教授)
【概要】 情報学でも重要な離散数学は,不可分財(自動車など分割できない財)を扱うマーケットデザインにおいて有益な道具です.本講演では,離散最適化の枠組みのひとつである離散凸解析とこれを用いた不可分財を扱う市場モデルについて紹介します.具体的には,安定結婚問題の拡張と不可分財を扱う市場における均衡の存在を,離散凸解析を通して説明します.
【略歴】 1984年東京工学大学理学部情報科学科を卒業、1989年東京工業大学大学院理工学研究科情報科学専攻修了。理学博士。1989年東京工業大学助手、1993年電気通信大学専任講師、1994年同大助教授、1999年京都大学助教授を経て、2004年慶應義塾大学理工学部教授。ERATO小島マーケットデザインプロジェクト離散数学グループリーダー。
11:20-12:00 講演(4) 複数財オークションの数理とアルゴリズム:離散凸解析の視点から
塩浦 昭義(東京工業大学 工学院経営工学系 教授)
【概要】 オークションとは,財を売りたい競売人と,財を買いたい入札者の間の手続きであり,どの入札者に,何円で売るか,を決定する.本講演では,複数の不可分財(家,自動車,権利など)に対するオークションを,財の均衡配分および均衡価格を求める計算問題とみなした場合,ある種の離散最適化問題とその双対に帰着できることを示す.また,均衡配分および均衡価格を求めるオークションの手続きが,対応する離散最適化問題の主双対アルゴリズムとみなせることを説明する.さらに,オークションと離散凸解析の繋がりを示し,これらの問題とアルゴリズムへの理解を深める.
【略歴】 1995年東京工業大学理工学研究科情報科学専攻修了.1997年情報理工学研究科数理・計算科学専攻中退.1998年博士(理学)取得.1997年上智大学理工学部機械工学科助手.2001年東北大学大学院情報科学研究科助教授(准教授).2015年東京工業大学社会理工学研究科社会工学専攻准教授.2016年工学院経営工学系准教授.2020年同教授,現在に至る.離散最適化の理論とアルゴリズムの研究に従事.