パルスアーク溶接は，電流波形をパルス状にすることで，溶接パラメータを調節し溶融形状を制御することが可能な溶接技術である。しかし，溶接パラメータと溶融池形状の形成の要因となる物理現象の解明は進んでいない。この解明には，アーク軸方向の温度勾配に起因する陽極近傍の流速，及び，このことから生じる陽極近傍の電磁力や温度分布により生じる溶融池の駆動力の解明が不可欠である。これら解明のためには，まず，アーク温度が電流波形の変化により時間変化するかどうかを明らかにする必要がある。本論文では，パルス電流波形における電流の増加率(di/dt)が及ぼすアーク温度の時間変化の検討を行った。