イベント企画
技術者を成長させる仕組み〜日本技術士会の取り組みを例に〜
2025/9/5(金) 13:10-15:40
第1イベント会場
【企画概要】現代のDX(デジタルトランスフォーメーション)や生成AIの進展に伴い,技術者のスキルアップがますます重要となっています.本パネル討論では,日本技術士会の取り組みを例に,技術者育成の最新動向と効果的な支援策を探ります.JABEEが認定する高等教育機関の修了生や技術士を目指す修習技術者を支援するため,技術士会修習技術者支援委員会が20年以上にわたり培ってきた「修習ガイドブック」に基づく研修プログラムの成果と,2025年6月に改訂版を発行したガイドブックの内容を紹介します.さらに,企業における教育や支援の必要性について議論し,DX時代に対応可能な技術者育成のための具体的な課題と対策を明らかにします.生成AIを活用した新たな教育手法も取り上げ,未来の技術者育成の方向性を考察します. 【企画資料はこちら】
13:15-13:20 司会 日本における技術者を成長させる仕組み〜パネリスト紹介〜
中谷 多哉子(放送大学 教養学部教養学科情報コース 教授)
【討論概要】日本における技術者教育支援の流れを,1)大学教育,2)企業内教育,および3)技術士による技術者育成によって概観し,パネリストの講演を位置づける.それぞれの立場で,教育が目指すべき事がらを,国際的通用性を考慮して議論する.
【略歴】1998 年東京大学大学院博士後期課程修了.博士(学術).企業におけるソフトウェア開発経験を経て,2015年より放送大学教授.要求工学のうち,特に獲得手法に関する研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,ソフトウェア科学会,プロジェクトマネージメント学会,IEEE-CS,ACM 各会員.
13:20-13:40 講演(1) 国際的に活躍する技術者育成とJABEEの役割
佐渡 一広(群馬大学 名誉教授)
【概要】JABEE(技術者教育認定機構)はWA(ワシントン協定)という米英を中心に設立された大学の教育に関する国際協定に加盟することを目的として設立され、2005年にWA(ワシントン協定)正式加盟が認められた。2008年にコンピューティング分野を対象としてSA(ソウル協定)が6カ国の団体で設立された。現在では、JABEEはWA、SA、キャンベラ協定(建築系)の3つに加盟している。分野として、SA対応としてCS、IS、IT&CSec、DS、情報一般の5分野の認定を行なっている。JABEEの審査では、教育内容が各分野に適しているかや教育体制について審査する。JABEEの認定を受けているプログラムを修了(卒業)をした場合は技術士の一次試験免除が受けられ、技術者としての入り口に立てる。以上のように、JABEEの経緯や認定・審査の状況、および国際的な状況について報告する。
【略歴】1983年3月東京工業大学理工学研究科博士後期課程単位取得退学,1985年東京工業大学理学博士,1983年4月群馬大学工学部助手,1987年4月群馬大学工学部助教授,1993年10月群馬大学社会情報学部助教授,2010年4月群馬大学社会情報学部教授,2020年群馬大学名誉教授,2019年JABEEソウル協定部会主査
13:40-14:00 講演(2) DX時代に求められる技術者育成の最前線:CITPと認証評価の役割
掛下 哲郎(佐賀大学理工学部 数理・情報部門 准教授)
【概要】本講演では、DX時代に対応した技術者育成の新たな潮流として、情報処理学会のCITP(Certified IT Professional)制度、JABEEの認証評価、ISOの国際基準策定の動向について紹介する。CITP制度は、高度なIT技術者のスキルと実績を可視化し、業界標準に基づいた資格を付与するものであり、現在はDX推進スキル標準やiCDを踏まえた改訂が進められている。一方、JABEEでは技術系専門職大学院の認証評価において生成AIを活用し、評価の精度向上と審査の負担軽減を図っている。ISOではソフトウェア工学・システム工学分野における人材資格の国際標準ISO/IEC 24773を策定し、将来的にはサイバーセキュリティやデータサイエンス分野への展開も予定されている。生成AIは審査の補助に有用だが、最終判断は人間が担うべきであり、適切な運用が求められる。DXやAIを使いこなす人材の重要性が一層高まっており、情報分野における技術者育成は、DXとAIの活用を前提とする段階に入っている。
【略歴】情報処理学会にて認定情報技術者(CITP)制度の策定やデータサイエンティスト資格の制度設計に取り組んだ.JABEE 専門職大学院 認証評価委員会 委員長.ISO/IEC JTC1/SC7/WG20委員としてソフトウェア技術者資格に対する国際規格ISO/IEC 24773の策定にも従事.最近は生成AIの活用を前提としたプログラミング教育やソフトウェア工学教育等の研究に取り組んでいる.ソフトウェア工学,情報システム,情報専門教育等を専門とする.工学博士(九州大学).
14:00-14:20 講演(3) 技術士の国際化:IPDを中心とした課題と展望
池田 紀子(紀梢技術士事務所 所長,技術士(応用理学/総合技術監理部門))
【概要】日本は世界における総合力ランキングで低迷し、技術者には従来のモノづくりだけでなく、社会的課題の解決にも貢献する役割が求められている。国際的に通用する人材の育成には、エンジニアリングスキルの国境を越えた移動(Mobility)を支える制度が必要である。IEAは2019年に専門技術者の資質能力(PC)を改訂し、各国の制度に整合を求めている。日本では文科省所管の国家資格である技術士制度が、IEA基準との同等性確保を進めているが、「試験型」を採用する日本と、「育成型」が主流のIEA加盟国には制度上のギャップが存在する。このギャップ解消には、初期専門能力開発(IPD)の体系的な推進と、第二次試験における客観的評価の仕組み整備が不可欠である。本発表では、日本技術士会のIPDに関する取り組みを紹介し、技術者育成の今後のあり方を考察する。
【略歴】1979年(株)富士通研究所入社、材料設計、分子計算、がんワクチン解析、化学特許解析、高分子オントロジーの研究に従事。内2003年〜2006年(国研)産業技術総合研究所へ出向し糖鎖質量分析に参加。2021年より紀梢技術士事務所所長、2023年より文部科学省技術士分科会制度検討特別委員会専門委員、2024年より(一財)公正研究推進協会理事、2025年より(公社)日本技術士会理事、(一社)中小企業経営支援専門家協会理事。
14:20-14:40 講演(4) 修習技術者支援のこれまでと未来 ― 修習ガイドブックの活用とDX・AI時代の人材育成―
阿部 修一(阿部計装技術士事務所 所長,技術士(電気電子部門))
【概要】日本技術士会 修習技術者支援委員会は、技術士を目指す修習技術者のために、コンピテンシーベースの研修会を企画・実施してきた日本技術士会の実行委員会です。20年以上にわたり、技術者の育成支援に取り組んできました。その中心となる「修習ガイドブック」は、若手技術者が初期専門能力開発(IPD)を着実に進めるための、実践的な道しるべとして、多くの研修で活用されてきました。本講演では、修習ガイドブックの内容を紹介するとともに、一例として、リスクマネジメントを題材とした研修会を取り上げます。これまでの経験を礎に、DXや生成AIの進展に伴う、これからの技術者育成のあるべき姿を、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
【略歴】阿部計装技術事務所所長である阿部修一は、化学工場の計装技術コンサルタントとして、計装設備の計画・設計・施工支援・指導と医薬品コンピュータ化システムバリデーションの実践指導、および計装技術講習会の講師の業務に従事している。2016年に技術士 電気電子部門に登録し、その後、公益社団法人 日本技術士会の修習技術者支援委員会や研修委員会で活動してきた。修習技術者支援委員会では2019年~2023年の4年間、委員長を務めた。
14:45-14:55 休 憩 
14:55-15:40 パネル討論 技術者を成長させる仕組み