イベント企画
限られたデジタル化された歴史資料から所望する資料を探し出す検索システム
2025/9/5(金)9:30-12:00
第2イベント会場
【企画概要】公文書館では、特定の組織や個人が作成された行政文書、書簡などの一点ものの歴史的資料(アーカイブズ資料)を収集し、ある体系に基づいて編纂、保管をしている。公文書館における歴史的資料のデジタル化は世界でみても進んでいない状況である。世界最大規模の英国国立公文書館では、2000年頃からアーカイブズ資料のデジタル化を開始して、140億ページに及ぶ6千万点の資料をデジタル化している。20年近くにわたる膨大な取り組みにも関わらず、デジタル化率5%に留まる。また日本国内では国立公文書館、国立国会図書館などの大規模機関から都道府県立公文書館など、800以上の公文書館がある。デジタル化の遅れから、研究者は、国内外の大小様々な公文書館に足を運ばなくてはならず、時間や費用を要し、資料調査の効率・利便性を大きく損ねている。  アーカイブズ資料はごく一部の資料のみがデジタル化されており、大部分の資料は、公文書館の紙の資料がファイル閉じされ、資料保管コンテナに所蔵されている。そのため、デジタル化されたテキストやメタデータを前提にする、従来の全文検索を適用することができない。本チュートリアルでは、限られたデジタル化されたアーカイブズ資料から所望のアーカイブズ資料を検索システムについて、以下のトピックについて解説することで、アーカイブズにおける新しい検索課題に関する認知を広めることを目的とする。 •アーカイブズ機関でのデジタル化の取り組みと研究者のアーカイズ利用状況 •少数のデジタル化されたアーカイブズ資料から、所望のアーカイブズ資料を検索する課題と検索システムの評価 •基本的なアーカイブズ検索システムについての解説
9:30-11:30  限られたデジタル化された歴史資料から所望する資料を探し出す検索システム
鈴木 釈規(筑波大学 システム情報系 助教)
【概要】公文書館では、行政文書や書簡などの歴史的資料(アーカイブズ資料)を体系的に収集・保管している。しかし、資料のデジタル化は世界的に見ても進んでいない。例えば、英国国立公文書館では2000年頃から6千万点の資料をデジタル化しているが、20年にわたる取り組みの結果も全体の5%に留まる。日本でも800以上の公文書館が存在するが、多くの資料は紙のままである。研究者は直接訪問を強いられ、探索の効率や利便性が損なわれている。本チュートリアルでは、アーカイブズ資料調査の現状と課題を踏まえ、限られたデジタル化資料からの検索課題と検索システムの基礎技術について解説し、アーカイブズ資料検索の全体像を把握することを目的とする。
【略歴】2021年、九州大学システム情報科学府にて博士号(工学)を取得。同年、九州大学システム情報科学研究院特定プロジェクト教員(助教)。2024年、米国メリーランド大学訪問研究者。2025年、筑波大学システム情報系助教。現在に至る。情報アクセス、ウェブマイニングに関する研究に従事。2024年に、国際会議NTCIR-18で、アーカイブズ資料検索に関する共有タスク「SUSHI: Searching Unseen Sources for Historical Information」を開催。