情報法のこれから
2024/9/5 15:30-17:30
第2イベント会場
15:30-17:30 パネルディスカッション司会 情報法のこれから
橋本 誠志(徳島文理大学 総合政策学部 准教授)
【概要】 本パネル企画では,情報法の発展、とりわけその未来像を議論する.分散型コンピュータネットワークの実現を目指して米国で1969年に構想されたARPANETがNSFNETへの転用を経て1995年に民間移管されて本年で29年になろうとしている.この間,インターネットによる情報の生産・流通・利用形態の多様化と高度化の中で,情報の運用・処理の方法や技術のあり方は,社会統制手段として最も強い強制力を有する法の価値原理とその論理技術を用いて情報に関する諸課題への取組み方の影響を受けてきた.これを受けて,『情報処理』64巻12号では「情報法の昨日・今日・明日」の特集が掲載された.本パネルでは,インターネットが一般に利用され始めてまもなく30年を迎えることに鑑み、上記特集の各記事の執筆者により,それぞれの担当記事に関する分野から情報法の未来像を報告頂き、その方向性を全体で議論したい。
【略歴】 1973年生.関西学院大学法学部卒業.2003年同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程修了.現在,徳島文理大学総合政策学部准教授.情報処理学会会誌編集委員,情報処理学会電子化知的財産・社会基盤研究会(EIP)幹事.情報ネットワーク法学会理事.情報法政策の研究に従事
15:30-17:30 パネリスト 行政のAI活用とデジタル化の課題
寺田 麻佑(一橋大学)
【概要】 本講演では、情報化の進展とそれに伴う情報と法制度の課題について論じる。情報化の進展に伴い、現在、多くの関連法が整備されており、その中には行政のデジタル化の推進も含まれている。特に、デジタル化推進のために設置されたデジタル庁は、行政のデジタル化の進展に重要な役割を果たしている。また、AIのと行政の課題についても議論が進んでいる。AIの導入は、行政サービスの効率化や透明性の向上に寄与する一方で、プライバシー保護やデータの適正利用といった新たな課題も生じているため、これらの課題に対応するための法整備や政策の検討が進められており、デジタル庁の役割はますます重要となっているということができる。そこで、本講演では、デジタル庁の設置と行政のAI利活用の進展、デジタル化の進展から、社会におけるインフラとしての行政手続のデジタル化の課題と展望について検討をおこなう。
【略歴】 一橋大学法学部公共関係法学科卒業。慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)および一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。慶應義塾大学法務博士、博士(法学、一橋大学)。国際基督教大学教養学部准教授、同上級准教授を経て、2022年9月より一橋大学ソーシャル・データサイエンス教育研究センター教授、2023年4月より同ソーシャル・データサイエンス研究科教授。理化学研究所革新知能統合研究センター(AIP)客員研究員。専門は公法学、情報通信法。2022年9月より2023年3月までドイツで在外研究。著書に『EUとドイツの情報通信法制』(勁草書房、2017年)、『先端技術と規制の公法学』(勁草書房、2020年)などがある。
行政法・情報法の観点から、情報公開や個人情報保護の法制度、AI法に関する立法政策、ドローンに関する法政策やスマートシティ政策を含めたデジタル社会における行政の課題、AI社会の立法課題に関する研究をEUやドイツの法政策との比較の観点からも進めている。
15:30-17:30 パネリスト 統治過程の観点から
湯淺 墾道(明治大学)
【概要】 古来、統治過程と情報とはきわめて綿密なかかわりを有してきた。しかし当初、「情報法」という場合にはマスメディアに関連する法制度としての言論法を指す場合が多く、行政においても情報公開という場合の情報とは文書を指す場合がほとんどであった。情報法はサイバースペースや、通信、特にコンピューター・ネットワークを経由して送受信されるデータに関する法であるという観念が広がってきたのは、インターネットが家庭やオフィスに普及してきた1990年代の半ば以降のことではないかと思われる。統治過程に関係する情報法の発展を瞥見し、統治過程と情報法との相互影響・相互関係について検討すると共に、その将来についての考察を試みる。
【略歴】 1970年生まれ。青山学院大学法学部卒業。2008年九州国際大学法学部教授・副学長、2011年情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授、2020年情報セキュリティ大学院大学副学長、2021年より明治大学専門職大学院ガバナンス研究科教授。明治大学学長室専門員、国立研究法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(情報社会における社会的側面からのトラスト形成)プログラム総括、総務省情報通信政策研究所特別研究員、サイバーセキュリティ法制学会副理事長ほか。
15:30-17:30 パネリスト コードとガバナンスの観点から
楠 正憲(デジタル庁 デジタル社会共通機能グループ 統括官)
【略歴】 マイクロソフト、内閣官房、ヤフー、Japan Digital Designなどを経て、2021年9月からデジタル庁の立ち上げに参画。統括官としてマイナンバー制度、自治体システム標準化、ベースレジストリ、電子署名法、公的個人認証法、預貯金2法、AI戦略・Web3などを担当。東京都 デジタルサービスフェロー、福岡市 政策アドバイザー、ISO/TC307 国内委員会 委員長なども務める。
15:30-17:30 パネリスト 個人情報保護法制の観点から
板倉 陽一郎(ひかり総合法律事務所)
【略歴】 2002年慶應義塾大学総合政策学部卒,2004年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程修了,2007年慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)修了。2008年弁護士(ひかり総合法律事務所)。2016年4月よりパートナー弁護士。2017年4月より理研AIP客員主管研究員,2018年5月より国立情報学研究所客員教授,2020年5月より大阪大学ELSIセンター招へい教授、2021年4月より国立がん研究センター研究所医療AI研究開発分野客員研究員,2023年9月より早稲田大学次世代ロボット研究機構AIロボット研究所客員上級研究員(研究院客員教授)。当会電子化知的財産・社会基盤研究会(EIP)幹事。
15:30-17:30 パネリスト 情報セキュリティの観点から
須川 賢洋(新潟大学 法学部 助教)
【略歴】 新潟大学大学院法学研究科修了.修士(法学).専門は情報法.コンピュータ犯罪,デジタル知的財産,情報セキュリティ制度,デジタル・フォレンジックなど,先端技術と法律の関係を中心に研究している.共著に「ITセキュリティカフェ--見習いコンサルの事件簿」(丸善),「実践的eディスカバリー米国民事訴訟に備える」(NTT出版),「基礎から学ぶデジタル・フォレンジック」(日科技連),「~法律構成の違いがわかる!~依頼者の属性別 弁護士が知りたいキャッシュレス決済のしくみ」(第一法規)など.情報処理学会「電子化知的財産・社会基盤研究会(EIP)」前幹事.
15:30-17:30 パネリスト 情報法が目指すもの--情報法全般の観点から
小向 太郎(中央大学)
【概要】 情報法という法律学の分野があることは、現在では広く認められている。しかし、情報法とは何なのかについて、共通の理解が確立しているわけではない。情報法という分野を研究することに意味が認められるのは、情報を対象とする法的な規律を研究する際に、情報に焦点を当てることで、法律の解釈や立法政策に関する理解が深まり、よりよい法制度の実現に寄与する可能性があるからである。このような検討を行うためには技術的・社会的背景を踏まえた考察が不可欠である。情報法は、そもそも文理融合の研究分野である。有意義な成果を挙げるためには、情報技術を始めとする多様な分野とのコラボレーションが重要であり、情報処理学会において情報法研究を行う意義もそこにある。
【略歴】 情報通信総合研究所取締役法制度研究部長、早稲田大学客員准教授、日本大学教授等を経て、2020年より中央大学教授。1990年代初めから、情報化の進展によってもたらされる法制度上の問題をテーマとして幅広く研究を行う。著書として『情報法入門(第6版)デジタル・ネットワークの法律』(NTT出版、2022年)、『概説GDPR-世界を揺るがす個人情報保護制度』(共著、NTT出版、2019年)など。情報処理学会電子化知的財産・社会基盤(EIP)研究会主査。