Society5.0を支える革新的コンピューティング技術
8/27(金) 9:30-12:00
第1イベント会場(オンライン)
【セッション概要】 来たるべき超スマート社会のよりよい実現のため、情報分野では、新しい計算原理・回路・アーキテクチャ・ソフトウェアの諸技術が必要であり、これらを統合したシステムが、防災・医療・行政・産業・交通・介護などの場でさまざまなサービスを提供することとなる。文部科学省の選定した戦略目標「Society5.0を支える革新的コンピューティング技術の創出」に沿ってJST CREST・さきがけのプロジェクトでは、(1) 情報処理を質的に大転換させる新たなコンピューティング技術の創出,(2)アルゴリズム,アーキテクチャ等の技術レイヤーを連携・協調させた高効率コンピューティング技術の研究開発に取り組んでいる。本企画では、プロジェクトの中間段階での顕著な成果について報告する。
9:30-12:10 司会
近藤 正章(慶應義塾大学理工学部 理工学部情報工学科 教授)
【略歴】 2003年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻修了。博士(工学)。JST CREST研究員、東京大学先端科学技術研究センター特任助手、電気通信大学大学院情報システム学研究科准教授、東京大学大学大学院情報理工学系研究科准教授などを経て、2021年4月より慶應義塾大学理工学部教授。理化学研究所計算科学研究センターチームリーダーを兼務。計算機アーキテクチャ、ハイパフォーマンスコンピューティング、人工知能、量子コンピュータに関する研究に従事。
9:30-9:35 挨拶
坂井 修一(東京大学 教授)
【略歴】 東京大学理学部情報科学科卒業(1981)。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了、工学博士(1986)。電子技術総合研究所、マサチューセッツ工科大学 (MIT)、筑波大学電子・情報工学系などを経て、東京大学工学系研究科助教授(1998)、東京大学情報理工学系研究科教授(2001,4~)。同研究科長(2013~2014)。現在、東京大学副学長・ 附属図書館長。情報処理学会フェロー。電子情報通信学会フェロー。IEEE Outstanding Paper Award, 日本IBM科学賞、大川出版賞、電子情報通信学会業績賞など受賞。
9:35-9:55 講演(1) 学習/数理モデルに基づく時空間展開型アーキテクチャの創出と応用
本村 真人(東京工業大学 AIコンピューティング研究ユニット 教授)
【概要】 Society5.0時代の知能コンピューティングの要件を踏まえ、機械学習、アルゴリズム、数理科学とアーキテクチャの協創により、その共通基盤アーキテクチャとなる「時空間展開型エッジ知能コンピュータ」の確立を目指す掲題のCREST研究を推進している.このプロジェクトは,特に,決定木型・アンサンブル型の機械学習技術と組み合わせ最適化問題を解くアニーリング技術を主たるターゲットとし,それらの応用-アルゴリズム-アーキテクチャにわたる知見を結集しながら新しいコンピューティング基盤を目指すことをその特徴としている.本講演では研究の狙いとこれまでの成果を紹介する.
【略歴】 87年京都大学修士(物理学),96年同博士(工学).87年よりNECにてリコンフィギュラブルハードウェア,オンチップマルチプロセッサ等の研究開発に従事.92年MIT客員研究員.11年より北海道大学教授.19年より東工大教授.人工知能処理アーキテクチャの研究などに従事.92年IEEE JSSC Best Paper Award,99年IPSJ年間最優秀論文,11年IEICE業績賞,18年ISSCC Silkroad Award等を受賞.
9:55-10:10 講演(2) アーキテクチャとアルゴリズムの協調による高効率深層学習システムの創出
高前田 伸也(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授)
【概要】 本研究では、エッジコンピューティングにおいて、安心・安全な認識・判断とオンライン学習をリアルタイムに行う深層学習システムを実現する、アーキテクチャとアルゴリズムの協調技術について研究を進めている。本講演では、アーキテクチャを補完するアルゴリズムと、アルゴリズムに柔軟性を与えるアーキテクチャ、およびFPGA等の上にそれらを実現する高位合成コンパイラに関するこれまでの研究成果を紹介する。
【略歴】 2014年東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程修了.博士(工学).2014年から2016年まで奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教.2016年から2019年まで北海道大学大学院情報科学研究科准教授.2019年から東京大学大学院情報理工学系研究科准教授.2018年10月からJSTさきがけ研究者.コンピュータアーキテクチャ,ハードウェア高位設計技術,機械学習に関する研究に従事.
10:10-10:25 講演(3) 双対過程に基づくコンピューティングの展開
大久保 潤(埼玉大学 大学院理工学研究科 准教授)
【概要】 金融工学やロボット制御などで用いられる確率微分方程式に対して、通常はモンテカルロサンプリングに基づいて統計量が計算され、フィルタリングや制御などが行われる。しかし、精度の向上にはサンプリング数、すなわち計算量の増加が必要となる。一方、確率微分方程式に対して、双対となる出生死滅過程が存在し、場合によっては統計量を容易に計算できることが知られていた。しかし、双対過程を導出する系統的な方法が知られておらず、工学的な応用もなされていなかった。講演者の研究により、双対過程を系統的に導出する方法が考案され、新しい計算原理としての利用可能性を模索中である。また最近、この双対性がKoopman作用素を用いたデータ解析手法に関係することもわかってきた。本講演では、双対過程の利用によってどのような『計算』が可能になるか、その展望を概観する。また、これまでに達成できていること、今後の課題についても説明する。
【略歴】 2007年 東北大学大学院情報科学研究科 博士後期課程修了。博士(情報科学)。東京大学物性研究所 助教、京都大学大学院情報学研究科 講師を経て、2015年から埼玉大学大学院情報理工学研究科 准教授(現職)。2018年10月からJSTさきがけ研究員(兼任)。専門は統計物理学や確率過程の情報処理への応用で、特に確率過程の双対性を用いた計算原理、機械学習、アニーリング型計算機などに関する研究を実施。
10:25-10:45 講演(4) MEC用マルチノード統合システムの開発
天野 英晴(慶應義塾大学理工学部 教授)
【概要】 MEC(Multi-Edge access Computing)は、5G基地局に計算サーバーを設置し、低遅延、高バンド幅通信を生かして、スマートシティの交通制御、工場のスケジュール、ドローンやロボットの制御などタイムクリティカルな処理を実行する手法であり、ソサイエティ5.0実現の鍵となる技術である。この計算ノードとして、複数のFPGAを接続したマルチFPGAクラスタは、ハードウェアにより複数の要求を一定の時間で処理することが可能であり、低電力である利点を持っている。我々のプロジェクトで開発したマルチFPGAシステムであるMKUBOS-PYNQクラスタと、管理システム、アプリケーションについて紹介する。
【略歴】 1986年慶應義塾大学工学部博士課程修了、工学博士
現在、慶應義塾大学理工学部情報工学科教授、コンピュータアーキテクチャを研究
10:45-11:00 講演(5) アーキテクチャとアルゴリズムの協調による高効率深層学習システムの創出 双対過程に基づくコンピューティングの展開 耐故障並列計算と高速ロシー結合網の協調
鯉渕 道紘(国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究系 准教授)
【概要】 半導体の微細化が徹底追求された現在、現実的なコストで従来通りのデータロスが生じない高性能通信ハードウェアの設計が難しくなっています。本研究では、アルゴリズムレベルで高い耐故障性を有する並列計算アプリケーションと、通信ハードウェアの耐故障性に関する設計を最小限に留める高速通信アーキテクチャに関する協調設計技術を創出することで、高性能クラウド並列計算基盤の実現を目指します。
【略歴】 2003年慶大大学院理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。2009年より国立情報学研究所准教授。相互結合網と計算機システムの研究に従事。情報処理学会論文賞(2008年)、電子情報通信学会論文賞(2016年)、日本学士院学術奨励賞、日本学術振興会賞(2021年)など各受賞。
11:00-11:15 講演(6) 粉末コンピュータ
三浦 典之(大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)
【概要】 コンピュータのダウンサイジングの極限を追求した超小型コンピュータとして、目に見えないほどに小さな極小粉末状のコンピュータの研究を行っている。本講演では、研究プロジェクトの概要とスコープを紹介する。
【略歴】 2007年 慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了 博士( 工学)、同年より日本学術振興会特別研究員(PD)、2008年より慶應義塾大学 特任助教、2012年より神戸大学大学院システム情報学研究科 特命助教、2016年より同大学 准教授、2018年よりJST さきがけ研究員兼務、2020年より大阪大学大学院情報科学研究科 教授。
11:15-11:35 講演(7) 耐量子計算機性秘匿計算に基づくセキュア情報処理基盤
本間 尚文(東北大学 電気通信研究所 教授)
【概要】 本研究では、準同型暗号に基づく秘匿計算を極めて高速・高効率に実行可能とする耐量子計算機性・耐タンパー性セキュア情報処理基盤技術の理論構築とそれを集積化したセキュア秘匿計算プラットフォームの開発を目的とします。また、当該プラットフォームが拓く新たな応用として、高速・高効率秘匿計算に基づく秘匿統計解析や機械学習における入出力や学習パラメータを秘匿した秘匿推論等のアプリケーションを創出します。
【略歴】 2001年東北大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。博士 (情報科学)。同大学の助教、准教授を経て2016年より現職。専門はLSI コンピューティングおよびハードウェアセキュリティ技術。特に暗号をソフトウェアやハードウェアで実装する方法に興味を持っている。日本学術振興会賞、市村学術賞、ドイツイノベーションアワードなどを受賞。CRYPTREC暗号技術検討会構成員、JEITAハードウェアセキュリティ技術分科会委員長などを兼務。
11:35-11:50 講演(8) バッテリレス無線センサネットワークのためのポスト量子暗号計算技術
上野 嶺(東北大学電気通信研究所 電気通信研究所本間研究室 助教)
【概要】 自動運転やインフラ健康診断などを実現するために無線センサネットワークが期待されており,そのセキュリティを実現するための暗号モジュールが必要とされている.一方,メンテナンスや実用化の観点から環境発電によるバッテリレス化と15年以上先を見据えた長期セキュリティが求められる.しかしながら,現在用いられている公開鍵暗号は量子計算機によって効率的に解読可能なことが知られているため,長期セキュリティの実現においては量子計算機を用いた暗号解読に耐性のあるポスト量子暗号技術の開発と利用が必要不可欠である.さらに,上記のような組み込み応用においては,暗号の理論的安全性に加えて,暗号モジュールからタンパー手段を用いて物理的に秘密情報を抽出する実装攻撃に対する安全性も極めて重要となる.そこで,本研究は計算リソースの制約が厳しいIoTデバイスの高安全化を目的として,ポスト量子暗号の高効率かつ高安全な計算技術の開発を目的としている.本講演では,特に,ポスト量子暗号モジュールの最先端の安全性評価手法について述べる.
【略歴】 2018年3月東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学選考博士課程修了.博士(情報科学).2018年4月より東北大学電気通信研究所助教,2018年10月より科学技術振興機構さきがけ研究者,現在に至る.情報システムの安全かつ高効率な実装方法や情報システムの安全性評価に関する研究に従事.Kenneth C. Smith Early Career Award in Microelectronics,船井研究奨励賞など受賞.
11:50-12:05 講演(9) 光集積回路で切り拓く次世代セキュアコンピューティング基盤
塩見 準(大阪大学大学院情報科学研究科 准教授)
【概要】 無数の情報端末があらゆるヒトやモノに組み込まれた超スマート社会においては、その持続的な発展を支えるために、各端末に対する物理的な攻撃に強靱なコンピューティング基盤を実現することが最重要課題です。本講演では、光集積回路技術に基づく新概念のコンピューティング技術として、光の波として特性を最大限活用した、耐タンパ セキュアコンピューティングのコンセプトを述べます。“耐タンパ”は、集積回路の内部状態を、外部から不正に盗み見ることが難しいことを意味します。クリティカルな情報をやりとりする今日の情報端末には耐タンパであることが強く求められています。本講演では、従来の電気電子方式の集積回路デバイスとは一線を画す、耐タンパかつ高効率な光集積回路デバイスの実現に向けて、講演者が取り組んでいる研究事例を紹介します。
【略歴】 2017年11月京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。日本学術振興会特別研究員(DC1)。2017年12月より京都大学大学院情報学研究科助教。2021年4月より現職。2020年11月よりJSTさきがけ研究員(兼任)。CMOS集積回路および光集積回路の設計技術を研究。情報処理学会より2016年度山下記念研究賞、2017年度CS領域奨励賞、電子情報処理学会より2017年度論文賞など各受賞。
12:05-12:10 挨拶
井上 弘士(九州大学大学院システム情報科学研究院 教授)
【概要】 1996 年九州工業大学大学 院情報工学研究科修士課程修了.2004 年より九州大学大学院システム情報科学研究院助教授,2014 年より同大教授.コンピュータ・アーキテクチャに関する研究に従事.IPSJ 40周年記念論文賞,平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞,など.
【略歴】 1996 年九州工業大学大学 院情報工学研究科修士課程修了.2004 年より九州大学大学院システム情報科学研究院助教授,2014 年より同大教授.コンピュータ・アーキテクチャに関する研究に従事.IPSJ 40周年記念論文賞,平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞,など.