一般講演

1-001

アクティブラーニングを用いた組込みシステム教育の提案

◎森本舜介・南角茂樹（大阪電気通信大学）

大学等の教育機関では製品開発を行っておらず組み込みシステム教育は難しい．製品開発を行っている企業においても製品情報に直結するため，組み込みシステム開発技術の公開が進まず，教育カリキュラムも確立しにくい状況である．そこで，情報系学生を対象としアクティブラーニングを用いた組み込みシステム教育を提案する．

1-002

VR技術による遠隔授業支援ツールの検討

◎杉 龍明・河村悠汰・徳久龍之介・眞鍋知久・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）

本研究ではVR技術を応用し，VR空間の仮想的な教室に聴講者を集め，多人数参加型のオンライン通信授業を行うシステムを開発する．VR空間を用いることで従来の動画配信型やオンラインで通話する形式とは異なり，多人数が同時に3次元空間に集合し，お互いにコミュニケーションできる双方的な授業が行える．VR技術を用いるため,磁力線などの不可視の物理現象も可視化できる.加えて，開発するシステムでは聴講者の姿もVR空間に反映させることで，一般的な物理・化学の授業への適用のみならず，体育・スポーツ科学といった身体の動かし方を講座する授業への拡張も期待できる．

1-003

AR/VRを利用した電磁界可視化システムの開発

◎河村悠汰・杉 龍明・眞鍋知久・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）・野口 総（北海道大学）

電磁気学は電気・電子・情報分野における基礎であり、重要な分野である。しかし、電磁界は視覚で直感的に捉えることができないため、従来の講義形式では具体的なイメージを掴むことができない学生が多い。そこで我々は、拡張現実(AR)技術や仮想現実(VR)技術を利用し、電磁気学初学者でも簡単に電磁界のイメージを得られる可視化システムを開発している。これまでに、VR技術を利用した磁界可視化システムについてはその開発状況を報告してきたが、本発表では、電界の可視化システムの開発状況や、VR技術と没入型デバイスを採用した可視化システムの開発状況等について報告する。

1-004

論文分析の観点からの電気電子工学領域の変化

○伊藤裕子（科学技術振興機構）

2017年に日本学術会議から「電気電子工学の新たな方向性」が発表された。この中で、電気電子工学の社会における重要性が示され、産学で、新たな社会価値の創出や産学連携による新規イノベーション創出等を実施すべきと提言された。一方、近年、工学分野の研究活動の国際競争力低下が指摘されている。今後、電気電子工学の教育や研究を考える上で、現状を明らかにすることは必要と考え、20年間の論文の変化を分析した。その結果、電気電子工学は他の研究領域と比べると国際競争力を有していた。このことから、新しい領域を創出し付加価値をつける際には電気電子工学を軸とすること、その領域で国際共同研究や教育を実施することが重要と考えられた。

1-005

「電気の知識を深めようシリーズ」―マッピング表を使った活用促進―

○谷口 元（IEEJプロフェッショナル・電気理科クラブ）

電気学会から「電気の知識を深めよう」シリーズ小冊子7巻が刊行され、現在これらの活用促進活動が進められている。本稿では最近の活用状況と、電気理科クラブと連携のもと学習指導要領解説と電気の知識小冊子内容とのマッピング表を作成するなど更なる活用促進を図ろうとしている状況について述べる。

1-006

放送大学における電気の基礎知識に関する面接授業と得られた知見

○伊与田 功・伊藤義道（大阪電気通信大学）・川畑良尚（立命館大学）・藤田秀紀（放送大学・元中部電力）

電気学会では電気の基礎知識を社会に分かり易く伝えるための啓蒙書を作成しそれを使った種々の試みをしている。その一環で放送大学の面接授業を実施している。本報告では大阪学習センターの事例を用いてその内容を報告している。 文系の受講者が多く60歳以上が過半数であった。電気工学の理論や公式ではなく、社会的視点からは電気をどのようなものと捉えたらよいかを講義した。電磁気の性質を示すマジック的な実験などを実施した。アンケートで調査した結果、難易度に関しては66%の人が適度であると回答した。実験等も好評であった。一方、電力系統の仕組みの説明になると、学生が付いてきていないことが明らかになった。

1-007

工学部学生の教養科目の履修状況

○大来雄二（金沢工業大学）・丸山あや子

技術者倫理教育の品質改善に資するため、科研費助成を得て学生対象の授業アンケートを実施する中で、工学部学生の教養教育科目の履修状況を調査したので、報告する。多くの学生が伝統的な教養科目を履修しないまま技術者倫理教育を受けている実態が明らかになった。現状のままでは技術者倫理の教育効果も上がらないし、社会が必要とするエンジニアとして活躍するための基礎力も付かないので、教養教育の在り方の見直しが必要である。

1-008

多様な人材の育成に向けた電気実験

○山崎 彰（技科学融和研究所）・浦野昌一・栗田 篤・田村 滋（明治大学）

多様化する学生の知識や経験に配慮した電気実験への取り組みについて報告する。

1-009

晴眼盲弱を区別しない初等プログラミング教材

○木室義彦・家永貴史（福岡工業大学）

情報化社会の今日，視覚障害のある児童生徒もプログラミングを経験し，コンピュータでできることできないことを体験することが重要である．しかし，初学者向けプログラミング教材はGUIを多用しており，利用が困難であった．さらに文科省は小学校でのプログラミング必修化を進めている．盲学校に限らず，PCやスマホを簡単には活用できない学校現場では，晴眼盲弱を区別しないレベル，すなわち，視覚障害のある児童でも短時間で修得・利用可能なプログラミング教材が必要である．そのため我々は，全国の盲学校に対して実施したアンケート調査結果に基づき，PCやスマホなしに単体でプログラミングできる移動ロボット教材を開発した．

1-010

レゴマインドストームとプログラムシートを組み合わせた児童向けプログラム学習教材の検討(Ⅰ)

◎宇田涼佑・大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

2020年度から文部科学省が実施する教育指導要領の改訂によって小学校でもプログラム教育が必修化されプログラム的思考能力を身につけることが求められている。各市町村の教育委委員会や小学校では現在使用する教材の選定が進められている。低年齢向けのプログラム言語を学習できかつ児童が楽しくかつ論理的思考能力が身に付くことが大切であると考える。本報告では、レゴマインドストームEV3とプログラミングシートを使用して小学校低学年でもわかりやすく楽しくプログラム制御を学習し論理的思考能力が身につく補助教材について検討を行った。

1-011

コミュニケーションロボットを用いた実習科目の支援に関する研究

○黒岩 孝・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）

本研究では、コミュニケーションロボットを実習科目の教育支援に利用できるかどうか検討する。具体的には、理工系学部の必修科目である学生実験に対し、コミュニケーションロボットの効果的な導入ができるかを検討する。

1-012

フィジカルコンピューティングを用いたアーチェリー長距離練習システムの効果

○宮内 肇（松江工業高等専門学校）・栗山 繁（豊橋技術科学大学）

アーチェリーには，18m，30mの短距離,50m，70m，90mの長距離競技がある。このうち，高専や高校の学校グラウンドにおいては，多くの部活動で併用しているために，安全面と時間的制約から長距離練習はほとんどできない。そこで，フィジカルコンピューティングとシミュレーションおよび近射を用いたアーチェリー長距離練習システムを考案した。 筆者はこのシステムで繰り返し練習することで、70m長距離競技力を得ることができた。

1-013

回答の定まっていない題材による電力・エネルギー工学の教育実践その2

○白川晋吾（東京理科大学）

2011 年東日本大震災，福島第一原発事故発生後，電力・エネルギー工学を巡る環境が大きく変化している。2017 年度には電力・エネルギー工学に関する回答の定まっていない題材として，再生可能エネルギー主に大量導入時の太陽光・火力発電の出力動向，水力・揚水発電の動向，新規制規準による原発に関する論文・資料等を用いて教育実践を試みている。本稿ではこれらに関して述べる。太陽光発電は分散電源，火力・水力・原発がベースロード電源に適している。

1-014

チーム学習の効果に男女比と学習スタイルがおよぼす影響

○内田君子（名古屋学芸大学）・大矢芳彦（名古屋外国語大学）・奥田隆史（愛知県立大学）

チーム学習（TBL：Team-Based Learning）とは，事前学習によって学習課題に取り組む上で必要な基礎知識を獲得した後，その知識を応用した課題にチームで取り組ませることで深い学びを実現しようとする授業手法のことである．本研究は，チーム学習を筆者らが担当する情報リテラシーに関する講義に採用し，チーム内男女比と学習スタイルという2つの要因が効果にどのような影響をおよぼすのか検討した．その結果，4人編成チームの場合は男1対女3または男2対女2のチーム学習効果値（チーム学習到達度，チーム学習参加度，チーム学習満足度・認識度）が有意に高く，男女比がチーム学習を通じた学びに影響していることが明らかとなった．

1-015

3画面連動表示ができる電子黒板システムの構築

○信山克義（八戸工業大学）

著者は工学部電気系学生の専門科目の授業に学生自らが主体的・能動的に学ぶアクティブ・ラーニングを積極的に導入している。従来、教室にホワイトボードを複数台設置し、授業の中で学生が演習や課題などを発表する際に使用していたが、電気回路図や解法などをすべて書き起こす必要があり手間となっていた。そこで、3画面連動表示ができる電子黒板システムを構築し、授業に導入した。その結果、概ねの学生が構築した電子黒板を用いることで学習理解度が深まり、電子黒板の必要性を感じていることがわかった。

1-016

ハノイ大学情報学部におけるICTハードウェア実験

○松田豊稔・西山英治・石橋孝昭・葉山清輝（熊本高等専門学校）・ Dang Dinh Quan・ Nguyen Xuan Thang（ハノイ大学）

熊本高専とハノイ大学情報学部に所属する筆者らは、ICTに関するハードウェア実験教材を共同で開発している。そして、2016年から共同開発した教材を用いてハノイ大学情報学部でハードウェア実験を実施している。本稿では、このICTハードウェア実験の教材開発からハノイ大学情報学部での実践までを報告する。

1-017

形状の異なる風力発電機を用いた授業実践

◎川西達也・吉田義昭（広島工業大学）

サボニウス風車は構造が簡単で低風速域（5 m/s以下）でも発電するため，自然エネルギーを学ぶ身近な教材として利用できる。2016年度の先端エネルギー工学の講義では1号機を用いた授業実践を行った。風速5 m/s時に1号機の出力は0.89 Wであり，定格出力2.4 Wに達しない課題があった。出力向上のため，形状を最適化した2号機は，同じ風速下で出力が2.41 Wに達した。3年生の専門ゼミナールで，風車の最適設計をテーマにPBL型授業行い，好評を得た。これを踏まえ2017年度の先端エネルギー工学の授業では，1号機と2号機の形状の違いから出力の変化を学ぶための演示実験を導入した。その教育効果を検証する。

1-018

加速度運動実験支援ソフトウェアの複数斜面における加速度運動実験への応用

○都丸滉平・太田祐貴・浜松芳夫・星野貴弘（日本大学）

中学・高等学校における加速度運動実験は、記録タイマ・テープを用いて測定をしている。しかし、実験時間が長くなり、結果と物理現象の対応関係を十分に理解できない生徒がいる。これらの問題を解決するため、先行研究では、スマートデバイスを利用した加速度運動実験支援ソフトウェアの開発を行った。しかし、開発したソフトウェアは、運動途中で斜面角度が変化することを考慮していない。本研究では、斜面角度の変化を読み取るためジャイロセンサを用いた改良案を2つ提案し、ソフトウェアの改良を行った。また、改良したソフトウェアを用いて複数斜面での測定を行い、記録テープで測定した結果と理論値との比較し、有用性について検証した。

1-019

近距離無線通信を組込み技術に活用したNFCタグ読み取りシステムの試作

○荻窪光慈（埼玉大学）

近距離無線通信（NFC）を活用した組込みシステムの一例として、NFCタグ読み取りシステムの試作を行った。NFCの代表的規格であるtype A、type B、type Fの3規格についてNFCタグを識別することができた。また、type AについてはNFCタグを一意に特定するためのID情報を読み取ることもできた。今後、他のタイプについてもID情報を読み取る機能を追加したい。

1-020

ホール素子変位センサを用いた磁気浮上システムの開発：Arduinoによる電圧駆動制御システムの実現

○安里健太郎（沖縄工業高等専門学校）・長堂 勤（琉球大学）

著者らはこれまで科学技術教材として，ホール素子変位センサを利用した低コストな磁気浮上システムの開発を行ってきた．これまで開発した磁気浮上システムは，電流駆動制御のためアンプとして大型の機器を利用しており，可搬性やコストの面で課題が残っていた．そこで本研究では，電圧駆動制御とすることでそれらの課題解決を行った．電圧駆動制御においては，電磁石の回路方程式が必要になるが，そのために電磁石インダクタンスを求める方法として，ステップ応答法を採用した．また，安価なマイコンボードArduinoを利用することによって，教材全体の可搬性を高め，大幅な低コスト化を実現することができた．

1-021

安全制御システムのハイブリッドシミュレータを用いた教育ツールの提案

◎大森大地・原 圭吾・高橋宏冶（職業能力開発総合大学校）

機械安全を制御技術に基づいて実現するためには、国際規格に従った安全関連部の設計が必須である。この回路構築技術や回路の動作検証などにおいて、教育訓練が求められている。本研究では、制御対象とする装置をコンピュータグラフィックスで模擬し、実際の安全制御回路と組み合わせたハイブリッドシミュレータを試作し、これにより具体的な事例検証を通じ、効果的に機械安全を学ぶことができるものとした。

1-022

水銀整流器の保存に関する調査研究 ‐京都大学総合博物館の事例‐

○秋山 肇・三島美佐子（九州大学）・塩瀬隆之（京都大学）

水銀整流器は1900年に米国で発明された電子管である．高耐圧・大電流に適用できることから電力制御用デバイスとして日本に於いても研究開発がなされ，1970年代に半導体デバイスへと世代交代するまで半世紀に亘る歴史を有する．今回，京都大学総合博物館での収蔵庫調査を通して現時点で7台の水銀整流器が確認された．いずれも保存状態は良好であり，製造時期や教育・研究上の活用に関する背景調査を継続している．本稿ではその現状と今後の課題について報告する．

1-023

周期外力を受けるマッシュー型振子から導かれたサインサークルマップと分岐現象

○山口尚宏・太田垣博一（岡山理科大学）

周期外力を受ける非線形システムの振動の態様は，外力の特徴やシステムの固有角周波数との関係によっては分岐現象やカオス現象を呈示するなど，きわめて多様で，複雑でありうることから，これらの態様を解明することは重要である。 本研究では，周期励振力を受けるMathieu型振子から導かれたサインサークルマップと分岐現象について報告する。

1-024

周波数制御による広線幅光信号からの狭線幅電気信号生成法の提案

◎上川紘輔（青山学院大学）・菅野敦士（情報通信研究機構）・外林秀之（青山学院大学）

世界の情報通信量が増大している近年で、高速・大容量伝送を可能にした光ファイバ通信システムは、代表的なブロードバンド通信技術として普及が進んでいる。しかし、光ファイバのような有線での通信では、河川や大道路をまたぐ敷設が難しいという難点がある。この対応策の一つして用いられているのが、光信号を電波に変換し、光ファイバを敷設できない場所まで無線伝送するRoFシステムである。このRoFシステムの問題点として、長距離の伝送により劣化した光信号を扱う可能性がある点である。よって、我々は線幅の大きい光信号であっても、周波数制御化されたO/E変換により高品質な電気信号を生成可能なシステムを考案した。

1-025

高速多重極表面電荷法とSPFD法の2段階による低周波電界ばく露時の人体内誘導電界計算手法

◎関場陽一（電力計算センター）・山崎健一（電力中央研究所）

電力設備周辺に存在する電磁界の人体安全性評価については，ICNIRPやIEEEにより定められた防護指針が参照され，その策定や適合性評価には多くの場合，詳細人体モデルを対象とした数値電磁界解析が用いられる。 本研究では，高速多重極表面電荷法とSPFD法の2段階計算により，低周波電界ばく露によって人体に誘導される電界を計算する手法を開発し，詳細人体モデルへの適用を行った。提案手法では体外空間の電気量を考慮する必要が無いため，従来手法よりも少ない計算負荷で体内誘導電界の解析を行うことができる。

1-026

積層無絶縁REBCOパンケーキコイルの電磁・熱・応力連成シミュレーション

○立木百一・野口 聡（北海道大学）・岩佐幸和（MIT）

簡易的で計算時間の短いPLEC (Pancake-Lumped Equivalent Circuit)モデルを用いて積層NI-REBCOパンケーキコイルにおける、電磁的、熱的、機械的振る舞いの連成解析を実施したので報告する。 PLECモデルでは、周方向成分としてインダクタンス、REBCO層抵抗、安定化層抵抗、径方向成分として接触抵抗を並列回路として表している。さらに、遮蔽電流を表現するためのインダクタンスおよびレジスタンス成分をカップリングさせることで、1つのシングルパンケーキコイルの等価回路を表現している。それらをn個直列に接続することで、マグネット全体の等価回路としている。 今回の解析では積層NI-REBCOパンケーキコイルの、励磁、消磁、常電導転移時を想定し、コイルの励磁中のフープ応力によるひずみや常電導転移時の熱の伝播の様子を調査した。

1-027

ストリップ導体で構成された角柱物体による電磁波の散乱

○山崎恒樹・柴山俊輝・尾崎亮介（日本大学）

近年，導体と誘電体が混合した任意形状物体の散乱問題が注目され,色々な解法（積分方程式法, モーメント法,有限要素法, FDTD法）で解析されている．なかでもアトム法は散乱体の分極に着目し,導体と誘電体を同時に扱える利点ががあるため,導体と誘電体の混合物体の解析には有力な解法の一つである. 本文ではアトム1個の物質量と誘電体1セル中の物質量とが等しいという条件で、導体と誘電体が混合した角柱物体による電磁波の散乱が精度位よく解析できることを示し,誘電体が散乱特性に及ぼす影響を検討した.

1-028

発振回路から生じる磁界分布の非対称性に及ぼす回路基板の影響

◎望月敬太・高橋 徹（筑波大学）・本田友和・山口芳文（安川電機）

本研究では，測定結果において磁束密度分布の非対称性が確認された発振回路を対象とし，回路基板が電磁波の伝播挙動に及ぼす影響を3次元電磁波解析により明らかにした。発振回路を構成する回路基板の物性ならびにベタGND層における反射を考慮した解析結果から，発振回路のループアンテナから生じた電磁波が基板において屈折・反射し，磁束密度の分布に偏りが生じることを確認した。本発表では，発振回路の周囲を取り囲む筐体の影響を評価し，ループアンテナから生じる電磁波の非対称性の原因を特定する。

1-029

菱形折り返しアンテナを用いた間接ESD代替試験法の検討(2)

◎小池龍太・川又 憲・石上 忍・嶺岸茂樹（東北学院大学）

ESDイミュニティ試験国際規格IEC 61000-4-2における間接放電試験では、垂直結合板(VCP)から10[cm]離れた場所に供試機器(EUT)を設置することが規定されているが、この距離の電磁界強度は極めて小さいことがこれまでの検討で分かっている[1]。そこでVCPに代わる電磁界の放射体として菱形折り返しアンテナ[2]の指向特性及び距離特性を測定し、その使用可能性について検討を行っている。本報告では、提案するアンテナにより発生した磁界の距離10[cm]における空間分布を測定し、VCPの場合との比較を行う。

1-030

パルス状ノイズ検出装置の評価（3）－入力信号検出レベルの評価－

○桑原 崇・明星慶洋・大和田 哲・小林遼太・山梶祐介・廣瀬健二・大橋英征（三菱電機）

プリント基板のノイズ耐性評価の一つにESD（静電気放電）試験がある。しかし基板上におけるノイズ伝搬経路の把握は容易ではない。そこで筆者らは静電気ノイズの伝搬経路の把握を目的として、蝶状コイルをアレイ状に多数配列したセンサにより、一定の範囲内の静電気ノイズを同時に検出することで、当該ノイズの伝搬経路を可視化する検討を行ってきた。本稿では、上記センサと組み合わせるノイズ検出回路で検出可能な入力信号レベルを、実測により評価したので報告する。

1-031

電気機器から発生する伝導雑音と放射雑音との相関に関する検討

◎紺野達夢・守屋若菜・石上 忍・川又 憲（東北学院大学）

近年，省電力の観点よりインバータなどのスイッチング素子を導入した電気機器が増えている．しかしながら，これらの機器から発生する電磁雑音の測定法等を規定する規格については，必ずしも十分な検証が行われておらず，一方，国際無線障害特別委員会では，十分な検証の無い中で雑音電力による伝導妨害波許容値の見直しが行われている．そこで本研究では，規格改訂に資する基礎的検討として，電気機器からの伝導及び放射雑音の相関について検討を行う．

1-032

家電製品から発生する磁界の評価

○林 清孝・大坪 茂・角矢敏尚・大久保千代次（電気安全環境研究所）・水野幸男（名古屋工業大学）

家電製品はさまざまな周波数の磁界を発生しており、複数周波数発生源における国際非電離放射線防護委員会（ICNIRP）2010のガイドラインの一般公衆の参考レベルに対する割合が平成25年度に（一財）家電製品協会により、公表されているが、具体的な磁束密度などの値は公表されていない。本研究では、より多くの最新の家電製品について、複数周波数発生源における磁束密度を測定し、ICNIRP2010の一般公衆への参考レベルに対する評価を行った。家電製品から発生する磁界の評価をした結果、いずれもICNIRP2010の一般公衆への参考値より低い値となった。

1-033

マイクロギャップ球電極ESDに伴う放電電流分布特性に関する一考察

◎及川正登・岡村千礼・川又 憲・石上 忍・嶺岸茂樹（東北学院大学）・藤原 修（名古屋工業大学）

球電極マイクロギャップESDに伴う電流分布の測定を行った。測定は、シールデットループアンテナを用いて、電極表面の電流分布を測定した。その結果、電流変化の分布は電極上の測定位置に影響を受けるが、放電点近傍は電極直径の影響を受けないことが分かった。また、放電点からの経路長とピーク値との関係を調べると、電流変化ピーク値は電極円周30mm付近の距離まで球電極直径によらず同様に重なることがわかった。

1-034

Consideration on infrared rays related to heated substance - 2

○Toshiharu Tada

H29-PE大会で発表した論文「Considerations on thermal resistance proportional to volume and infrared rays related substance」の補足です。眞空状態における熱伝導の説明と線形で増加する時の説明です。

1-035

商用周波磁界に対する培養神経回路網の応答

◎齋藤淳史・高橋正行・中園 聡（電力中央研究所）・牧野 佳・鈴木敬久（首都大学東京）・神保泰彦（東京大学）

電力設備等に起因する商用周波（50／60 Hz）磁界に対する人体防護ガイドラインは，頭部・中枢神経系への刺激作用の閾値に基づいている。しかし，磁界ばく露により生じる脳内での神経刺激応答を精密に計測・評価することは困難であり，その閾値は十分に明らかとなっていない。本研究では，商用周波磁界ばく露による脳・神経系での刺激閾値を明らかにするために，磁界ばく露直後の培養神経回路網の応答を細胞外多点電位記録法により評価した。また，培地内誘導電界強度と刺激応答の関係を比較し，培養神経回路網の活動が変化する閾値を推定した。

1-036

TEMセルを用いた暗号モジュールへの故障注入攻撃の定量的耐性評価環境の構築

◎鈴木太陽（東北学院大学）・林 優一（奈良先端科学技術大学院大学）・石上 忍・川又 憲・嶺岸茂樹（東北学院大学）

現在、暗号モジュールの故障利用解析に用いられる故障注入手法として、パルス波や連続波を与える手法などが報告されている。しかし、このような既存の手法では、周囲の電磁環境の変化に伴い、解析と併せた評価結果に差異が現れる。そこで本研究では、環境の変化に影響されない手法として、TEMセル(Transverse Electro-Magnetic Cell)を用いて周囲の電磁界から測定環境を分離し、定量的な電界を発生させる空間を作ることで、再現性の高い評価環境の提案を行うとともに、暗号機器をTEMセル内に発生させた電界に曝し、故障が発生する割合を比較することで、提案した評価環境の有効性を検証する。

1-037

2.4GHz帯の電波のOAフロア床下空間における送受信実験－フロア床下で作業するロボット制御のための調査研究－

◎下尾浩正・渡邉尚倫・南部幸久（佐世保工業高等専門学校）

プラント設備の管内部やOAフロアの床下，金属を含む瓦礫の中など，波長に比べて狭い空間で作業や画像情報を取得するのためのロボットの開発は，様々な分野で必要とされている．本稿では，無線LANを用いてOAフロア床下で調査や作業を行うロボットの制御及びロボットからの画像情報取得を目的として，OAフロア床下における2.4GHz帯の電波を用いた送受信試験を行い，送受信アンテナの設置方向により生じる偏波方向の違いを考慮した受信電力の測定を行った．そしてOAフロアの縦横の任意の一列方向であれば，比較的安定した送受信を行えることを確認した．本稿の結果は狭空間で作業を行うロボットの開発に有用である．

1-038

磁性膜を配置したMSLの回路定数の計測と特性解析

◎室賀 翔（秋田大学）・遠藤 恭（東北大学）・安藤浩哉（豊田工業高等専門学校）・田中元志（秋田大学）

回路の極近傍に磁性膜を配置することにより，対策用の面積を増加させることなく電磁ノイズを制御する手法が提案され，その実証実験や抑制機構解析が行われている。一方で，磁性体の複素透磁率を考慮した配線の設計指針は現象論的な理解に留まり，設計指針の構築に至っていない。 本研究では，磁性体を配置した伝送線路の設計指針の構築を目指し，ノイズ抑制周波数を5 GHz帯域と想定して試作したCo-Zr-Nb膜を配置し，マイクロストリップ線路の回路定数計測からその特性を解析した。その結果，設計通りの周波数で抵抗の極大値を得るとともに，インピーダンス整合のための課題を抽出した。更に，磁性膜を配置した伝送線路の設計指針の構築に対する本解析の有用性を示した。

1-039

マイクロ波聴覚効果を用いた音声伝送に関する検討

◎久嶋航平・星 智也・多氣昌生（首都大学東京）・佐々木謙介・和氣加奈子・渡辺聡一（情報通信研究機構）

マイクロ波聴覚効果を用いた音声伝送の方法について検討を行った。 人体頭部モデルに単一のマイクロ波を照射した際の側頭骨の乳様突起部分での圧力の時間変化と音声信号を畳み込み積分することで音声データを離散化しマイクロ波パルス列として人体頭部に照射することを模擬した数値計算を行った。 計算によって得られた音声の了解性は高くなかったが、元の音声の内容を認知している場合は聞き取ることができた。音声の了解性については実験によって確かめる必要がある。元の音声に対して帯域制限をかける、等工夫することで音声の了解性が向上する可能性がある。

1-040

パルス列に対するマイクロ波聴覚効果の数値解析を用いた検討

◎星 智也・久嶋航平・多氣昌生・鈴木敬久（首都大学東京）・佐々木謙介・和氣加奈子・渡辺聡一（情報通信研究機構）

パルス変調されたマイクロ波を頭部に照射した際、生じた熱弾性波によって音を知覚するマイクロ波聴覚効果という現象が知られている。本検討ではバーストパルスマイクロ波照射によって熱弾性波の時間的な加算による振幅の変化、また、媒質の損失による熱弾性波の減衰による、可聴閾値に必要なピーク電力密度の依存性について、数値解析を用いて検討した。 結果としてバーストパルスマイクロ波照射により可聴閾値に必要なピーク電力密度が下がることが示された。また、バーストパルス波のパルス周期によって、生じる熱弾性波の振幅の大きさが変わること、また、媒質の損失が小さいほど可聴閾値に必要なピーク電力密度が下がることが示された。

1-041

電気的ファーストトランジェント・バースト(EFT/B) イミュニティ試験における電源ケーブルの影響

○奥田一郎・松本哲也・中里一茂（兵庫県立工業技術センター）

電気的ファーストトランジェント・バースト(EFT/B)試験において、被試験物と試験装置を接続するケーブルの長さ、束ね方などの条件で試験結果に違いが生じると測定結果に影響を及ぼすことが懸念される。ケーブルの長さ、束ね方を変え、パルス雑音の出力波形を比較することにより測定にどのように影響するかを調べて正確な試験を行えるようにする。

1-042

電流可視化装置による太陽電池評価システムの開発

◎岡田英朗・薮本 海・佐藤宣夫（千葉工業大学）

単接合太陽電池は変換効率30%を超えられないことが，Shockley とQueisser によって示された．この限界を突破するため，集光型や多接合タンデム型といった太陽電池が開発され，単接合では実現不可能だった，エネルギー変換効率30%を超える太陽電池の実現された．太陽電池の高効率化が進む中で，いかに安定した生産を行えるかが実用化するに当たっての課題と言える．太陽電池の品質評価の手法としては，EL(Electro Luminescence) 法やPL(Photo Luminescence) 法が挙げられるが，太陽電池に光が照射された際にセルの各所に発生する起電力の差異を直接測定する手法は，いまだ確立されていない．その為，本研究では電流可視化装置により，セルの各所に発生する光起電力に起因する電流を画像化し，太陽電池評価システムの構築を目指す．

1-043

電圧位相差を用いた単相交流の電力測定方法の検討

◎ニックケチックムジャヒダー・圓句拓海・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・小林昭二（エネサイバー）

近年、電力需要の増加に伴って電力測定システムが必要とされている。しかし、現在使用されている電力測定器は電流センサーを用いており高価なため、低コストでの電力計測技術の開発か望まれている。我々は電流センサーを用いず、電力を電圧計測のみで行う手法を提案した。しかし、測定を行う部分のインピーダンスが小さく、また位相差が小さいスケールであり、実際に送電側と受電側の電圧波形位相差を取得することは容易ではない。そこで、まず測定回路に値の小さな抵抗を挿入し、本提案手法での電力が測定を試みた。

1-044

三相交流における位相差－有効電力特性の力率依存

◎圓句拓海・ニックケチックムジャヒダー・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・小林昭二（エネサイバー）

近年、電力需要の増加によりスマートグリッドが注目されている。実現には多くの需要家で、従来の電力量計からリアルタイムで計測・データ送信を行う電力量計に取り換える必要がある。そのため、電流センサによって高価格になっている電力量計のコストダウンが要求されている。 そこで、本研究では電流を測定せずに、サーキットブレーカの両端の電圧位相差より電力を求めることを目標とする。理論では位相差－有効電力特性は力率依存しない。しかし、実験において力率依存することがわかり、本報告では考察を行い、力率に依存する理論式を算出した。

1-045

コロナ帯電と除電を併用した非接触型表面抵抗率測定法の開発

◎沼山和樹・杉本俊之（山形大学）・田口浩一（ナプソン）

表面抵抗率は一般に電極を接触させることにより測定されるが，表面に凹凸のあるものや接触により表面が損傷してしまうサンプルの測定は困難である。このため，非接触で表面抵抗率を測定する方法が検討されている。本研究ではコロナ帯電法に除電機構を追加することにより，10⁶〜10¹⁰Ω/sqの低抵抗側に測定レンジをシフトすることを目的とした。表面抵抗率を10⁶〜10¹⁰Ω/sqの範囲で変化させたところ，今回のセッティングでは，測定された表面電位にはおよそ1500Vの差が生じた。この結果は，理論式を用いたシミュレーション結果とほぼ一致した。このことから，コロナ帯電法と組み合わせることにより，10⁶〜10¹⁵Ω/sqの範囲で測定できる可能性が示唆された。

1-046

誘導加熱コイルによるハット型CFRTPの温度特性に関する研究

◎田中亨弥・清水僚太・板谷年也（鈴鹿工業高等専門学校）

熱可塑性炭素繊維強化プラスチック（CFRTP）の成形品は、自動車部品や小型風力ブレードに利用されており、2次元でなく実用的に3次元つまり立体形状の損傷修復が期待されている。本研究は、渦電流法による立体形状のCFRTPの損傷修復を目的に、立体形状に対して効果的な誘導加熱コイルを提案した。立体形状としてハット型CFRTPを製作し、提案するコの字形コイルを用いて誘導加熱実験を行い、CFRTP表面および裏面の温度特性を調査した。その結果、コの字形コイルの巻線部分に沿って、ハット型CFRTPの表面および裏面温度が上昇した。立体形状に合わせてコイルをマッチングさせることによって、局所的に加熱できることがわかった。

1-047

脈流電力を用いたデバイスの熱パラメータの高速測定

◎志村優輔・佐野勇司（東洋大学）

従来の測定方式でのデバイスの熱パラメータ測定は長時間を要していた。デバイスの熱抵抗θと熱容量Cの測定を高速化するために、脈流電力を加えた際の温度変化から熱パラメータを解析する方式を提案した。従来の測定方式と提案した測定方式を比較すると、従来では約2時間を要していた測定時間を提案方式では20分程に短縮しながらも、デバイスの熱容量を5.0％以下の誤差で測定することができた。時間を要して熱平衡状態に近づけなければ測定精度が向上しない熱抵抗θについては、測定精度が19%に抑えられた。測定結果から脈流電力の周波数が低いほど温度変化の振幅が増えることにより、測定精度が向上することが確認できた。

1-048

3軸磁界プローブを用いたIH調理器によるカーボン製土鍋の発熱量予測

◎小幡翔平・宇高亜留・米津大吾（関西大学）・大久保 博・西尾博文・東城哲朗（東洋炭素）・上関俊也（オーシン）

本報告では、3軸磁界プローブを用いて4種類のIH調理器による土鍋の発熱量予測を試みた。発熱量を予測する土鍋は押出成形カーボン製円盤を貼り付けたものとした。 昨年度の報告では、IH調理器から発生する磁界から鍋の発熱量を予測する方法を提案し、発熱量予測を試みた。磁界の測定は1軸磁界プローブとスペクトラムアナライザで行ったところ、精度の高い予測は難しいと考えられた。一方、本報告の検討により3軸磁界プローブを土鍋側面に直付けして測定することで土鍋の発熱量が精度よく予測できることが明らかとなった。

1-049

BerengerのPMLを適用したマイクロ波帯域の大規模有限要素電磁界解析

◎東 勇・武居 周（宮崎大学）

本研究では、現在最も有効な吸収境界条件であるBerengerのPMLを、領域分割法に基づく並列有限要素法に適用し、ダイポールアンテナを解析対象としたマイクロ波帯域の電磁界解析を行った。その解析結果から、ダイポールアンテナの遠方界の数値解を導出して理論解との比較を行った。また、Sパラメータを用いて反射係数を導出した。この結果、遠方界の数値解と理論解の非常に良好な一致と、十分な吸収性能を表す反射係数が示された。以上のことから、マイクロ波帯域の解析手法としての有効性を確認できたため、報告する。

1-050

混合ガウスモデルとEMアルゴリズムを用いた対象騒音と暗騒音の分離法

○三谷康夫・筒本和広・地主弘幸・瀬島紀夫（福山大学）

騒音計測の場面では、暗騒音の影響を受けることがある。その場合、混合騒音データから、対象騒音と暗騒音を分離する手法が必要となる。暗騒音を雑音成分と見なして、事前情報として雑音の統計的性質やスペクトルなどを利用して対象騒音を抽出する様々な手法が提案されている。しかし、これらの事前情報を得にくい場合がある。本研究では、対象騒音と暗騒音の騒音変動が混合した確率密度関数のモデルとして、混合ガウスモデルを導入する。そして、EMアルゴリズムを用いて対象騒音や暗騒音のレベル変動（あるいは、エネルギー変動）の平均や分散などを精度よく推定する手法を考察し、混合騒音から対象騒音や暗騒音の等価騒音レベルを抽出する手法を提案する。

1-051

TMSコイル周辺の電界分布測定

◎小林拓人・熊田亜紀子・日髙邦彦・関野正樹（東京大学）

疼痛などの神経疾患の治療における新たな手法としてTMS(Transcranial Magnetic Stimulation)がある。 TMSにおける研究では、人体内部に誘起される電界に注目し有限要素法やSPFD法によるシミュレーション、プローブによる測定が行われてきた。その一方で、TMSコイル周辺における電界についての検討は行われておらず安全面の観点から把握が求められている。そこで、本研究ではポッケルスセンサを用いてTMSコイル周辺の電位を測定、またその測定結果からコイル周辺の電界分布を求めた。

1-052

時間領域並列有限要素法に基づく大規模音響解析手法

◎山本広太・村上裕也・武居 周（宮崎大学）

音響特性等の評価をするにあたり，音の時間発展問題を考慮することが必要となる．しかし，波動音響解析手法を用いた解析は一般に計算コストが高くなる傾向があり，時間領域における有限要素法に関しては，数m3程度の規模の報告はあるが，それ以上の報告は少ない．また，近年の解析領域および周波数帯域の拡大の要求により，音響問題は大規模問題に対応する必要がでてきた．これに対し，筆者らは，以前開発した大規模有限要素音響解析手法に時間発展解析機能を追加することで，大規模な非定常解析に対応した．今回の講演では階層型領域分割法による並列有限要素法を用いた時間領域大規模音響解析手法と，その開発手法による数値計算例を示す．

1-053

送電鉄塔に設置した大気腐食モニタリングセンサによる環境観測と腐食速度評価

○布施則一・長沼 淳・堀 康彦（電力中央研究所）

2020年頃に約半分が経年50年を迎える送電鉄塔では，腐食評価手法の開発が求められ，腐食環境因子の観測と腐食速度RCの評価が重要である。本稿では，鉄塔に設置した大気腐食モニタリング（ACM）センサによる評価結果を報告する。また，著者らが開発したセンサデータの解析法について，上記実フィールドデータで妥当性を確認した。

1-054

電気絶縁性によるスプレー塗着均一性の評価

◎田中 醇・杉本俊之（山形大学）

抗菌，殺菌，殺虫等を目的としたスプレー塗布はできるだけ小さな微粒子を高い密度で均一に対象物に付着させることが重要である。本研究の目的は，このようなスプレー塗布均一性を表面の電気絶縁性から定量評価する方法を開発することである。コロナ帯電と表面電位測定から絶縁性を評価する装置を開発し，表面指標Isを提案した。噴出角度の異なる3種類のスプレーを用い，スプレーとガラスとの距離dとIsとの関係を測定した。Isは微小な水滴のまま高密度で付着した状態のときに大きな値を示した。また，噴出角度の違いでIsが最大となるdも変化した。電気絶縁性により，ガラス表面に塗布された水滴の均一性を定量評価できることが示唆された。

1-055

急速暴露法による体表温測定の予備的検討

○津吉 彰・坂本 匠（神戸市立工業高等専門学校）

糖尿病の患者の中には手や足先まで十分に血液が回らず壊死してしまうなどの症状が現れる場合もある。体温と血流との直接的な因果関係は無いので、血液循環の確認のため、逐一患部の温度を測定する必要がある。しかし表皮体温を測定するためにK熱電対などを体に装着する事は患者に負担が大きく、測定器を含めたコストも高価となり在宅医療などの現場では現実的でない。そこで放射温度計を用いて体表温度を測定することが考えられる。しかし、放射温度計を使用できるように衣服や布団を剥がす間に温度が低下してしまい、正しい温度を測定することができない。そこで放射温度計を用いて簡便に温度を測定する方法を提案する。

1-056

深度センサを用いた閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検査方法に関する基礎検討

◎久下沼聖之・松村太陽・小野 隆（日本大学）

睡眠時無呼吸症候群(以降，SAS)は心血管疾患への合併症や交通事故の要因となり，近年社会問題となっている。SASの検査は複数の接触型センサが用いられており，ヒトに対して侵襲であるため患者への負担が大きいことが指摘されている。本研究は，ヒトに対して比較的無侵襲でSASを判別できる検査法の確立を目指している。今回は，深度センサを用いて呼吸運動による胸部と腹部の振幅を測定し，その位相を基に無呼吸を検出する検査法を提案した。これより被験者が衣服を着用したため測定される呼吸運動の振幅が小さくなった場合でも，胸部と腹部の位相が同位相か逆位相か判別でき，無呼吸を判断できる見通しを示した。

1-057

CO₂センサによる単身者の緊急性の高い異常状態の検出

◎酒井伸康・松村太陽・三浦 光・小野 隆（日本大学）

近年，単身者の孤立死の増加が社会問題となっている。そこで本研究は，単身者が安心・安全に暮らせる見守りシステムの構築を目的とし，複数センサによりヒトの室内での行動を抽出し，異常状態の早期発見について検討している。今回は室内でのヒトの呼吸より得られるCO₂濃度の変化から，呼吸停止のような緊急性の高い異常状態の検出について検討した。その結果，呼吸停止のような緊急性の高い異常状態はCO₂濃度の変化が-0.10 ppm/10 s以下と急峻に変化することがわかった。これより，CO₂センサを多次元尺度構成法の要素に取り入れることで，複数センサを用いた異常状態の検出ができると考えられる。

1-058

SQUID磁束計用FLL回路の耐雑音特性向上の検討

◎並川 誠・作田 健（滋賀県立大学）

近年の異物混入事故の頻出や医療技術の発展により，高感度な磁気センサであるSQUIDの異物検出や生体磁気計測等への応用が注目されている。しかし，SQUIDはノイズによる影響を強く受けるため，製造現場において安定した動作をさせることは困難である。本研究の目的は，ノイズ減衰の機能を有した駆動回路を開発することである。手法としては，バンドパスフィルタを駆動回路に並列に付加させ対象周波数の信号のみ余分にネガティブフィードバックし，SQUIDに流入するノイズ量を減衰させる。結果として，商用電源ノイズに対しては約45dBの低減が確認され，ノイズに埋もれていた微小信号の検出が可能となった。

1-059

光学3次元皮膚表面計測を用いた放射線治療高精度体位位置決め法

○手塚聖貴・星 泰成・馬場則男（工学院大学）・三上隆二・筑間晃比古・徳植公一（東京医科大学）

本研究は光計測とデータ処理の放射線治療への新たな工学手法を提案するものである。放射線治療は毎日多数回同じ体位同じ条件で治療することが必要である。治療装置の性能は高精度化しているが、体位の位置決めは参照点を皮膚にマークする原始的な方法に頼っている。これを改善するため、新たに光計測技術を導入した。その結果、3Dスキャナーと呼ばれる汎用の光学装置を用い患者の皮膚表面の立体形状を計測し、これに治療計画のためのCTデータを合致させる、高精度位置決め法を提案する。IPCアルゴリズムに独自の手法を加え、ファントムのスキャナーデータとCTデータを位置合わせしたところ予備実験ながら実用化に良い結果が得られた。

1-060

近接・圧力タッチパネルによる3D操作法

◎辻 聡史・小浜輝彦（福岡大学）

タッチパネルは、画面を直接触って直感的に操作ができることから有用なインターフェースである。これらのタッチパネルの多くは、指の接触位置のみを検出し、2次元的な操作を行うものである。本研究では、ディスプレイ（LCD）上の近接及び圧力の3次元空間で操作可能なタッチパネルの開発を目的にしている。我々はこれまでに近接及び圧力測定が可能な近接・圧力タッチパネルを提案した。本稿では、提案したタッチパネルによる3D操作法の提案を行った。

1-061

超小型PVを用いた簡易バンド分光光量子計の開発

◎針谷 達・竹内悠人・谷本 壮・須田善行・滝川浩史（豊橋技術科学大学）・神谷雅男（伊藤光学工業）・高岡秀司・平塚元久（エイム）

本研究では，光センサ用超小型太陽電池を使用した，小型分光光量子計の開発を試みた。植物生長研究の観点では，光量を光量子束密度で計測することが望ましい。また，300 nm〜800 nmにおける光波長領域（約100 nm幅）ごとに，植物生長へ与える影響が異なる。したがって，農作物の高効率生産を目指す植物生長研究では，安価な分光光量子計が必要とされており，我々はこれまでに，太陽電池とバンドパスフィルタを用いたバンド分光光量子計を開発してきた。しかし，そのサイズは大きく，測定環境において十分な空間分解能を得られなかった。本研究の小型分光光量子計は，サイズ・重量ともに約90%の小型化を実現し，実用的な計測装置として期待される。

1-062

可視画像による照明灯具の劣化推定手法

◎松村和則・濱田祥文（西日本高速道路エンジニアリング四国）・小田 功（木更津工業高等専門学校）

道路管理者は良好なトンネル内視環境や第三者への走行安全性を維持するため、トンネル灯具などの設備の保守・点検作業や清掃を実施している。しかし、設備の老朽が進行や、少子高齢化による技術者不足が深刻化する中、現状施設の劣化状況を把握するためには、今後、保守作業を効率的かつ効果的に行う必要がある。 本検討は、LED灯具の出力、灯具ガラス面の白濁、煤塵の付着を要因とした劣化度について、可視画像を用いた画像解析により、劣化推定手法を提案するものである。なお、本法により蛍光灯の劣化推定の可能性について、基礎的検討もあわせて報告する。

1-063

深紫外LEDによる有機色素の分解効果

◎新田純也（阿南工業高等専門学校）・鎌田 隼（徳島大学）・徐 微微・藤原健志・小西智也・釜野 勝・香西貴典（阿南工業高等専門学校）

本研究ではDUV LEDの有機化合物分解効果の検証を行うことを目的とする。有機化合物にはメチレンブルーを使用した。本実験に使用したDUV LEDのピーク波長は260nmである。実験内容は、DUV LEDへの入力電流を20mAで統一させ、メチレンブルー水溶液（3mg/L）に5分、10分、20分、30分、60分間照射し、それぞれの吸収率を測定する。さらに、DUV LEDに流れる電流を20mAから100 mAまで20 mAずつ変化させ、20分間照射し吸収率の変化を観測する。なお、それぞれの実験後には吸光度を測定し、実験前の溶液と濃度を比べることで減少率を計算した。 メチレンブルーは、赤色の光（610〜750 nm）付近の光を吸収することが既知であるため、照射前の水溶液（3mg/L）を660 nmにおける吸光度を減少率0 %と基準とし、そこからの減少率の変化を観測した。実験結果から、照射時間と入力電流の増加と共に減少率が多くなる（メチレンブルーの濃度が下がる）ことがわかった。特にLEDの入力電流依存実験では電流値が50mA付近より減少率が飽和している傾向も確認できた。

1-064

レーザーによるコンクリート構造物内部欠陥検査手法の高速化と屋外検査装置の開発

◎倉橋慎理（レーザー技術総合研究所）・北村俊幸・岡田 大・近藤修司・三上勝大・長谷川 登・錦野将元・河内哲哉（量子科学技術研究開発機構）・乗松孝好（大阪大学）・島田義則（レーザー技術総合研究所）

レーザーを用いた社会インフラの遠隔検査技術の開発を行っており、実用化のためには検査の高速化が求められている。 レーザー干渉計、ガルバノミラーからなる計測装置の開発を行い、得られた結果をリアルタイムで解析し、検査対象の健全性をその場で表示可能な高速レーザー計測システムを構築した。本システムと量研機構が開発した高繰り返しパルスレーザーを用いた検査装置を構築し、車載化することで、屋外計測が可能な装置を開発した。屋外模擬トンネルでの実証試験を行い、トンネル内に生じた欠陥の検出、健全性評価が可能である事を示した。

1-065

2値化信号の加算平均を用いた端子電圧型自己結合レーザー距離センサのための信号処理

◎吉松 剛・五島敬史郎・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

端子電圧型自己結合レーザー距離センサは、自己結合効果によるレ―ザー端子電圧の僅かな変動から距離信号(MHP)を検出する、光検出器のないレーザー距離センサである。端子電圧から得られる自己結合信号には、MHP、ホワイトガウスノイズとMHPの高次高調波が含まれる。MHPの代表的な解析方法は高速フーリエ変換(FFT)であるが、FFTは必要とされる処理時間が長い。FFTに代わる信号処理方法としては、2値化信号のパルス幅を逐次計測してヒストグラムを作成する方法がある。しかし、センサとターゲットの間の距離が短い時のMHP周波数は低く、発生頻度が少ない。そこで、取得した2値化信号を加算平均してMHPのパルス幅を計測する信号処理を発案し実験を行った。

1-066

赤外線とHTCCネットを用いた消霧効果の検討

◎谷 翔樹・石井拓弥・胡桃 聡・松村太陽・門馬英一郎・鈴木 薫・小野 隆（日本大学）

濃霧の発生は，交通規制による渋滞発生や視認障害による交通事故の要因となる。本研究では，高速自動車国道などで発生する霧を効果的に除去するシステムの開発を目的としている。これまでに霧中に設置した高熱伝導性炭素繊維でコーティングしたネット( 以下，HTCCネット )の温度上昇による消霧効果についての検討してきた。本稿では，HTCCネットが設置された霧箱内に流入させる霧濃度を透過率30 %〜80 %の範囲で10 %毎に変化させ，HTCCネットの温度を40, 60, 80,100℃と変化させたときの消霧効果について検討を行った。これより，HTCCネット通過前の透過率に対して有効に消霧効果が得られる温度が予測できると考えられる。

1-067

特殊信号発光機の保全における取替指標の研究

◎山崎力也（東日本旅客鉄道）

特殊信号発光機は、踏切やホームにおいて非常停止を列車運転士に伝える重要な設備である。特殊信号発光機は常時滅灯という使用特性にも関わらず当社ではLED使用設備として区分し、LED劣化に依存した取替標準としている。これに対し、本研究では特殊信号発光機の劣化要因を構成部品ごとに分析を行い、寿命延伸の可能性について検討した。輝度測定結果より、現在の取替基準の見直しの可能性を見出すとともに、劣化の主要因であるカバーを交換することで、更なる取替基準の延長が可能であることを示した。本稿では得られた知見について述べるとともに、知見の活用による特殊信号発光機の保全方法を提案する。

1-068

超音波顕微鏡による培養細胞の厚さ方向の音響インピーダンスマッピング

◎BINTI JALALUDDIN NUR DALILA・川島朋裕・村上義信・吉田祥子・穂積直裕（豊橋技術科学大学）

培養細胞は平面方向に薄く拡がっているが、その内部は三次元構造をもつ。光学顕微鏡や原子間力顕微鏡を含む顕微鏡では、通常これを二次元的な画像として捉える。三次元観察と云われる観察は殆どが形状、すなわち細胞の厚さを測定している(1)。定量顕微鏡と云われるものも、音速や屈折率など、細胞の厚さ方向の平均的な物性を計測するため、奥行方向の情報をもたないことが多い。医療用超音波診断装置のBモード画像はレーダーと同様反射体からの反射の強さを表示する。これはビームに沿った断面像であり、奥行方向の情報をもつため、このBモード画像のもととなる反射波形を送波側から適宜音響物性に変換することを繰返すと，音響物性の奥行方向分布を表示することが可能と考えられる。そこで time-domain reflectometry (TDR)を参考とした簡単なアルゴリズムを作成した(2)。本報告ではこれを培養細胞の内部音響インピーダンス分布の立体視に適用した

1-069

Si含有DLC成膜用TMSプラズマの診断-プラズマ基礎特性のガス圧力依存性-

◎永井雅之・大野祐也・小田昭紀（千葉工業大学）・上坂裕之（岐阜大学）・太田貴之（名城大学）

ダイヤモンドライクカーボン（DLC: Diamond-Like Carbon）は、硬さ、耐食性、耐摩耗性などの機械的特性に優れており、特にSi含有DLC(DLC-Si)膜は、各種DLC膜の中でも低い摩擦係数を示すことから、自動車業界を中心に注目され、このDLC-Si成膜用の原料ガスとして主にテトラメチルシラン（TMS: Tetrametylsilane, Si(CH3)4）が利用されている。成膜の際、原料ガス由来の正イオンやラジカルの生成過程は成膜に寄与するため重要となる。しかし、TMSプラズマ中の解離過程に未解明な部分が多く残されているため、TMSプラズマの諸特性を明らかにすることが重要である。本報告では、Ar/TMS(1%)混合ガスを原料として容量性結合型RFプラズマを生成し、その基礎特性について質量分析装置により診断を行ったので、その結果を報告する。

1-070

質量分析器によるDLC成膜用メタンプラズマの診断

◎小川 慎・大野祐也・小田昭紀（千葉工業大学）・太田貴之（名城大学）・上坂裕之（岐阜大学）

ダイヤモンドライクカーボン(DLC：Diamond-Like Carbon)は炭素または炭化水素からなる硬質膜で、非結晶構造でグラファイトとダイヤモンドの中間の存在であると言われている。DLC膜は耐摩耗性や硬度，耐蝕性などの機械的特性に優れており、自動車部品や切削工具などの様々な分野に応用されている。 DLC成膜方法の1つとしてプラズマCVD法が用いられ、原料ガスをプラズマ化させ基板表面に粒子を堆積させることで成膜する方法が主流となっている。プラズマCVD法はプラズマの生成条件を変えることによってDLC膜のダイヤモンドとグラファイトの構造比を調整できるため炭化水素系プラズマの諸特性の解明が求められている。

1-071

分割型Sin-Cosプローブによる磁場反転配位プラズマの揺動磁場計測

◎廣橋光始・蜂須賀 拳・関口純一・浅井朋彦・高橋 努（日本大学）

プラズマの巨視的運動により発生する揺動磁場は、ミルノフコイルで計測しモード解析することで同定できるが、高次のモードが存在する場合正確なモード同定を行えない。 Sin-Cosプローブは三角関数の直交性を利用して観測したいモードの磁場だけを取り出すことのできる磁気プローブである。しかし、nモードまでの同定を目的とした場合、2n+1個のプローブを作成する必要がある。 分割型Sin-Cosプローブは、ロゴスキーコイルをm個に分割し全周の磁場計測を行い分割した各プローブに対応したsinθ、cosθの重みを掛けることで、一つのプローブで複数の低次モードの同定が可能であり、分割数に応じて高次モードの混入を抑えることができる。

1-072

発光スペクトル強度比を用いたSF₆ガス中放電における換算電界強度評価

◎玉城陽平・菊池祐介・永田正義（兵庫県立大学）・川野涼子・吉村 学・海永壮一朗・武藤浩隆（三菱電機）

電力機器のコンパクト化や高信頼性化には，放電現象の理解に基づいた電界設計技術の開発が重要となる。筆者らは，発光スペクトル強度比を用いた換算電界強度評価手法の開発を行ってきた。これまでに，乾燥空気中のストリーマ放電に適用し，放電電界強度の定量評価が可能であることを示した。乾燥空気では窒素分子と窒素分子イオンスペクトルの励起エネルギーに差があるため，換算電界強度の大小によってスペクトル強度比が変化するという原理に基づいて測定している。一方SF₆中放電では，そもそもこのような関係性が見られるスペクトルがあるのかもわかっていない。本発表では，SF₆ガス中放電における発光スペクトル強度比と換算電界強度の関係を調査した結果を報告する。

1-073

空気中火花放電における発光スペクトルと静電エネルギー密度との関係

○三浦 崇（労働安全衛生総合研究所）

非接触で影響を与えずに火花放電の静電エネルギーを測定する手法を開発するために，発光スペクトルと静電エネルギーとの関係を調べてきた．本研究では発光スペクトルと同時に空気の絶縁破壊時の放電路の長さも測定し，N IIとN Iの輝線強度比と静電エネルギーの空間密度との関係を調べた．その結果，強度比はエネルギー密度に強く依存することが明らかになった．

1-074

任意電圧波形を用いたC₇H₈+Ar+H₂プラズマ生成

○古閑一憲・山木健司・Taojun Fang・山下大輔・徐 鉉雄・板垣奈穂・白谷正治（九州大学）

本研究では、任意電圧波形を用いたプラズマCVDのラジカルとイオンの精密制御堆積を実現することを目的として、筆者等が開発した水素原子源付プラズマCVD法に任意電圧波形を印加してプラズマを生成した結果について報告する。13.56MHzと27.12MHzの高周波を重畳して位相差を変化することで、セルフバイアス電圧を制御可能であることを明らかにした。

1-075

プラズマ溶射粒子の温度と速度同時計測システム

○川口保幸・白谷正治・山形幸彦・小林 希（九州大学）・村岡克紀（プラズワイヤー）

溶射は、金属やセラミック等の溶融粒子を基材に吹付けて皮膜を形成し、その耐食性、耐磨耗性などを向上させる技術である。その溶射過程に於いて、溶融粒子の温度や速度等は皮膜特性を左右する重要な制御パラメータであることがわかっており、皮膜の品質管理や高機能化といった顧客ニーズに応じるために、簡易測定器の開発が切望されている。本講演では、プラズマや可燃性ガスを用いる溶射装置の粒子温度と速度を現場で測定する事を目的として開発した光学式飛翔粒子温度速度測定器の性能試験を行った結果について報告する。

1-076

時間分解発光分光法によるHe/O₂狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマの診断

○中野俊樹・北嶋 武（防衛大学校）

高分子の表面酸化プロセスなどに有効であるHe/O₂挟ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマを時間分解発光分光法および電極間電圧・電流波形によって診断し、プラズマの生成に及ぼすO₂の影響に着目して検討した。その結果、O₂の添加によってプラズマ中で負イオンが生成されて電子密度が減少し、特に、アフターグロー中の再結合による発光が抑制されることが示唆された。He/O₂狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマでは、プラズマ生成・維持や表面酸化のメカニズムを検討する際に、O₂から生ずる負イオンの影響を考慮する必要があることがわかった。

1-077

DBDによる大気圧Heプラズマバレットの電荷密度測定に関する実験

◎吉野貴文・大山龍一郎（東海大学）

A plasma jet of atmospheric pressure He was produced passing through dielectric barrier discharge (DBD) in a glass tube. In the experiment, the measurement of spatial and time distributions of the pulse current on plasma bullet was conducted. In this report, a charge density calculated from these distributions is shown.

1-078

フェムト秒レーザ－誘起高気圧アルゴンプラズマの電子温度

◎土田晃輔・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

フェムト秒レーザーは多くの研究で使用されてきたが、その大部分は1気圧未満で使用されている。 1気圧以上のフェムト秒レーザーを用いた研究はほとんどない。そこで、二通りの方法でフェムト秒レーザーによる高気圧アルゴンプラズマの電子温度を測定した。また測定結果の信頼性を向上させるために、測定結果と理論計算を比較した。得られた電子温度は約10000K程度となった。

1-079

電気集じん装置内における再飛散粒子の可視化

◎宮下皓高・柳川鴻太・江原由泰（東京都市大学）・乾 貴誌・西田英幸（富士電機）

電気集塵装置(Electrostatic Precipitator:ESP)は大気汚染物質を捕集する装置として着目されている。ESPは他の捕集装置に比べて高集塵率・低圧力損失などの利点があるが，それとは逆に低抵抗粒子を捕集する際の再飛散現象が問題視されている。再飛散現象は集塵率の低下を引き起こすため，再飛散現象の解析はESPの性能向上に必要不可欠である。しかし，再飛散現象の観測は先行研究で行われているが，再飛散粒子挙動の解析などは行われていない。 本研究では，ESP内における再飛散粒子を可視化し，放電電流値の変化による再飛散粒子への影響を解析した。

1-080

ホール型電気集じん装置に及ぼす排気ガス温度の影響

◎鈴木菖平・宮下皓高・江原由泰（東京都市大学）・乾 貴誌・西田英幸（富士電機）

本研究では、ホール型電気集じん装置(ESP)を使用して実験を行い、排気ガス温度による集塵性能への影響を明らかにすることを目的とした。ホール型ESPとは、集塵電極に孔を開けたESPのことである。粒子はクーロン力やイオン風の影響を受け、ホール内に誘導される。電界が0の捕集空間に粒子を誘導することで、再飛散現象の抑制が期待できる。実験方法は、燃料として軽油を用いたディーゼル発電機に88％の負荷をかけ、熱交換器により温度を調節した排気ガスをESPに直接流入させ、粒径分布を測定した。実験の結果、排気ガス温度を100℃以下まで低下させた場合に集じん率が著しく向上することが判明した。

1-081

ホール型電気集塵装置内におけるホール流入粒子のシミュレーション

◎下田正也・江原由泰（東京都市大学）・乾 貴誌・西田英幸（富士電機）

本研究では，針直下に再飛散を抑制するためのケーシングを設置したホール型電気集塵装置内における，ホール近辺での粒子挙動について，二次元モデルシミュレーションを用いて解析した。解析方法として，帯電させた粒子を針周辺に置き，その粒子軌跡からホール流入率を調べるという方法を取った。解析の結果，主流体速度が遅い場合，粒径粒子が大きいと流体の影響を大きく受け，ホール流入率は高くなる傾向があり，粒径粒子が小さいと流体よりクーロン力の影響を大きく受けるため，粒子はホールへ流入せずエッジへ付着するという結果が得られた。

1-082

電極汚染による電気集塵性能に及ぼす影響

◎田中直輝・宮下皓高・江原由泰（東京都市大学）・栗田加奈絵・永吉健太郎（富士通ゼネラル研究所）

近年、環境問題は解決すべき問題として重要視されている。中でも、PM2.5のような微小汚染物質は、大気中に浮遊して環境に影響を与えたり、体内に取り込まれて、そこに沈着し健康障害を引き起こす可能性がある。そこで、これらの物質を除去する方法として、電気集塵装置がある。しかし電気集塵装置は電極が汚染する事により、性能が変化する。そこで本研究ではタバコ煙を用いる事で電極を汚染させ、どのように影響して性能が変化するかを調べた。使用した電極はワイヤと鋸歯状片刃の二種であり、結果として鋸歯電極の方が、ワイヤ電極より汚染による影響があると考えられた。

1-083

磁化プラズマ容器器壁における電子反射が電子エネルギー利得機構に及ぼす効果

◎高橋宏徳・中島克博・山本達平・菅原広剛（北海道大学）

誘導結合型磁化プラズマの一種であるX点プラズマは容器内に対向発散磁界を形成し、電子閉じ込め効果により低圧下でも分界面上部領域に高密度を維持する。負イオンエッチ基源として低ダメージの異方性エッチングへの応用などが考えられる。励起源RFアンテナ付近の強電界下と共鳴磁界域に加え、側壁上部近傍でもプラズマ維持に寄与する電子エネルギー利得が高くなることがモンテカルロ法により観察された。本研究では既報で詳解されたエネルギー利得機構への電子器壁反射の統計的影響を調べるため、電子エネルギー利得、エネルギー損失、平均エネルギーの空間分布を解析した。結果、器壁近傍で利得が高く、器壁反射の利得機構への影響が見られた。

1-084

対向発散磁界下誘導結合型磁化プラズマ中の電子エネルギー利得と電子周方向速度の空間分布解析

◎中島克博・菅原広剛（北海道大学）

電子閉じ込め効果を持つ対向発散磁界下誘導結合型RFプラズマ中の電子エネルギー利得Gと電子周方向速度vθに影響を及ぼす要素の検討を目的に電磁界下の電子運動をモンテカルロ法により模擬した。Gとvθを容器中の各区画で位相分解・フィッティングし、フィッティングパラメータを分布図にすることで全域的なRF応答の様子を俯瞰した。vθのパラメータは励起源直下を含む広範囲で共通の傾向を示したがGのパラメータは励起源直下で特異的であった。Gとvθの関係を理論式で表した。これらの結果より、Gを決める要因は電界とvθに分離され、vθは電界にはさほど依存しないということがわかった。

1-085

大気圧高周波Heプラズマにおける放電モードの遷移メカニズムに関する数値解析

◎小嶋正宏・大木一真・小森郷平・小田昭紀（千葉工業大学）

非平衡大気圧プラズマは、薄膜形成や微細加工技術などの材料プロセス分野や、バイオ・医療分野など幅広い産業分野へ応用されている。その際、特に高周波大気圧プラズマにおける放電モードに着目すると、放電空間内での電離作用で放電維持されるαモードと、電極へのイオン衝撃により放出された2次電子の作用で放電維持されるγモードが確認されている。しかしながら、これらαモードからγモードへの遷移メカニズムの解明は十分に進んでおらず、いまだ未解明な点が多いのが現状である。 そこで本研究では、シミュレーションにより本プラズマの放電モードの遷移メカニズムについて解析することを目的とした。

1-086

大気圧Air/Ar混合ガス及びAir/He混合ガスの電子ドリフト速度と実効電離係数の比較

◎呑山諒次・佐々本 凌・生澤泰二・西嶋喜代人（福岡大学）

近年、大気圧中のプラズマ応用は、真空装置が不要である点から注目されている。大気圧中のプラズマは、大気圧空気と供試ガスが混合した状態となっている。そのため、混合ガスの混合率の違い及び供試ガスの違いによりプラズマの挙動が異なる。これらのプラズマ挙動を理解するためには、電子の挙動を把握する必要がある。本研究では、大気圧Air/Ar混合ガス及びAir/He混合ガスにYAGレーザを照射し弱電離プラズマを発生させるパルスレーザ誘導法を用いた。そして、荷電粒子スウォームパラメータである平均ドリフト速度と実効電離係数の計測を行なった。本稿は、Ar及びHeガスの混合率の違いと比較結果を報告する。

1-087

蓄積電荷の脱離が誘電体バリア放電に与える影響について

○明石治朗・吉永智一（防衛大学校）

Effect of accumulated charge desorption from dielectric surfaces is considered in atmospheric pressure dielectric barrier discharges using two dimensional fluid model. Obtained waveforms of discharge current and discharge voltage are not typical waveforms obtained from capacitive discharges. And it is found that the discharges occurring in this condition are not streamers and surface discharges, but glow-like discharge.

1-088

諸気体中の電子輸送係数と電子衝突断面積 IX ー電子スオーム法によるNOの電子衝突断面積の再検討(2)－

○中村義春（元慶應義塾大学）

前報において最近までの諸報告例を調査して決めたNO分子の初期電子衝突断面積セットを報告した。それはNO分子の開殻構造を忠実に反映し、また、NO特有の弾性・振動励起断面積に特徴的な共鳴構造にも最新の理論・実験結果を反映している。本報告では電子スオーム特性の測定結果と矛盾しないように上記の初期断面積セットから決定したNO分子の推奨断面積セットについて報告する。

1-089

Ar(3P2)のAr(1S0)とH2Oによる失活レート係数の測定

◎碓氷陽平・鈴木 進・伊藤晴雄（千葉工業大学）

アルゴン準安定励起原子Ar(3P2)のAr基底状態Ar(1S0)による失活レート係数の温度依存性を300 Kから353Kまで変化させて決定し，アレニウス式として表した。 また，Ar/H2O(112ppm)混合ガス中においてAr準安定励起原子Ar(3P2)のH2Oによる失活レート係数の温度依存性の結果についても報告する。

1-090

非分光法と分光法によるAr(3P2)の失活レート係数測定結果の比較

○鈴木 進・碓氷陽平・伊藤晴雄（千葉工業大学）

準安定励起原子Ar(3P2)の基底状態Ar(1S0)による失活レート係数を決定した。著者らの方法はAr(3P2)の電極表面でのγm作用を利用して得られる過渡電流波形の時定数からAr(3P2)の実効励起寿命を求め，そこから失活レート係数を決定する方法で，非分光法である。これに対して，多くの場合，失活レート係数は分光法によって求められているが，両者の結果は一致するはずである。本報告では，分光法によって決定されたAr(3P2)のAr(1S0)による失活レート係数と著者らの非分光法によって決定した値を比較検討する。

1-091

真空中沿面放電進展過程に対する放電経路上の初期帯電分布の影響

◎生田和也・小島寛樹（名古屋大学）・飯塚伸介・田中 荘（日立産機システム）・早川直樹（名古屋大学）

真空中沿面フラッシオーバ(FO)に対して，その経路上に負帯電分布を形成した後に，負極性インパルス電圧によりFOを発生させ，絶縁物上の発光推移から，初期帯電存在時のFO進展過程について検討した．経路上初期帯電存在時のFO進展過程は，FO開始時においては初期帯電分布の形成する電界により2次電子なだれ(SEEA)の陽極方向への進展が抑制されたが，FOが進展するにつれて，陰極近傍の過渡帯電の増加やSEEAに伴う電界変歪によって，初期帯電分布の影響が弱まっていくことで，SEEAの陽極方向への進展が可能となっていったと推測された．

1-092

直流電圧に重畳したパルス電圧の周波数成分が静電噴霧と放電進展に与える影響

◎田丸寛太・弓達新治・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

我々は，静電噴霧の形成を生じさせる正直流電圧に対して，放電を生じさせるパルス電圧を重畳し，噴霧と放電の時間制御をおこなうことで両立を実現した。難分解物質を含む溶液を実用レベルで分解するためには複数針からなる電極配置構成が必要である。しかしながら，複数針の場合，放電に必要な重畳電圧の振幅が増加し，噴霧が不安定になった。本報では，重畳パルス電圧の周波数成分が，静電噴霧と放電進展に与える影響を明らかにすることを目指した。結果として，高い周波数成分を有するnsパルスをf=500[Hz]の周波数で直流電圧に重畳することで，安定した静電噴霧と放電進展に有効であることが明らかとなった。

1-093

空気中でのGFRPとCFRP遮蔽板の下面放電の観測

◎青柳大地・佐々本 凌・生澤泰二・西嶋喜代人（福岡大学）

我々は、短ギャップ間に挿入した誘電体遮蔽板に急峻インパルス放電を印加した際に、沿面放電に付随して遮蔽板の下面で放電現象が発生することを観測した。本研究では、室空気と合成空気を供試気体とし、GFRP（ガラス繊維強化プラスチック）遮蔽板に正極性急峻インパルス放電を印加した。結果、沿面放電の進展距離と下面放電の本数、下面放電発生位置に違いが現れた。さらに、遮蔽板の導電率と下面放電現象の関係性を調査するために、CFRP（炭素繊維強化プラスチック）を供試体として大気圧合成空気中で正極性急峻インパルス放電を印加した。結果、CFRP遮蔽板上では沿面放電が発生しないにもかかわらず、遮蔽板下面の放電を観測した。

1-094

誘電体PET円板の厚み及び帯電電圧の違いによる表面帯電電荷減衰特性

◎宮崎貴駿・佐々本 凌・生澤泰二・西嶋喜代人（福岡大学）

本研究では、大気圧空気中の正極性直流コロナ放電を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)の誘電体円板表面に電荷を帯電させた。そして、厚みの異なる9種類(0.025 ~ 2.0 mm)のPET円板表面の電荷減衰過程を測定した。また、帯電電圧を12 ~ 15 kVに変化させた際のPET円板の電荷減衰過程も測定した。結果、PET円板表面の電荷減衰過程から、PET円板の厚みが0.2 mmを境に異なる減衰特性を得た。PET円板の厚みが0.025 mmから0.2 mmになるに伴い緩やかな減衰特性を示した。一方、PET円板の厚みが0.2 mmから2.0 mmになるに伴い著しい減衰特性を示した。また、帯電電圧の違いによるPET円板の電荷減衰過程は、帯電電圧の減少に伴って緩やかな減衰特性を示した。

1-095

ZnO上マイクロギャップフラッシオーバの印加電圧極性依存性

◎谷 直樹・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

近年のウェアラブル機器の普及に伴い、ESD保護デバイスの重要性が増している。本研究ではESD保護デバイスの新たな仕組みとしてZnO上マイクロギャップ放電の利用を考えている。基礎的な特性の把握として硼珪酸ガラス上およびZnO上ギャップにおけるフラッシオーバ電圧とギャップ長の関係を調査した。その結果，ZnO上正極性フラッシオーバ電圧は，ギャップ長 5-40 μmの範囲においてパッシェン最小値（330V）以下であった。したがって，ZnO上のフラッシオーバには低放電電圧領域広域化の可能性があることが示唆された。

1-096

発泡エナメル皮膜材料の電荷減衰特性

◎武川秀介・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・太田槙弥・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年の産業用モータは省エネルギー化が図れるインバータが用いられ高電圧で駆動している。 しかし、モータコイルに使用されるエナメル線に高電圧が印加されると、部分放電が発生しエナメル線が損傷する可能性があり、部分放電抑制のために発泡エナメル線が開発されている。ここで、部分放電により発生した蓄積電荷がエナメル線の部分放電特性に影響を与えることが確認されており、発泡エナメル線でも同様に蓄積電荷の影響が考えられる。 今回の研究で発泡率の高い皮膜材料の方が電位の減衰が速いことが分かった。それにより、発泡率を高くするほど皮膜材料への蓄積電荷の影響を低減することが出来る。

1-097

部分放電に伴う放射電磁波の特性解析と電圧波形及び部分放電電流の影響

◎神川卓人・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・黒石祥斗（西日本旅客鉄道）

安定した電力供給を確保するために機器の故障や事故の未然防止が必要不可欠である。そのために、絶縁破壊の前駆現象である部分放電を検出し、劣化等の異常を発見することが重要である。本報告では電磁波法に着目し、印加電圧波形が異なる場合の部分放電による放射電磁波について特性を解析し、部分放電電流との関係性について調べて報告する。印加電圧は直流ランプ電圧、60Hzの交流電圧、1kHzの交流電圧で電磁波の周波数成分に大きな違いは見られなかったが、100MHz以上の周波数成分で電磁波強度に違いが見られた。また、その時の電流波形を解析し、同様に100MHz以上の周波数成分で違いが見られたことから電磁波と電流に関係性があることがわかった。

1-098

中央部からO₂を導入したループ型Ar誘導熱プラズマの電磁熱流体解析

◎藤田敦士・土谷拓光・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィ・リサーチ）

筆者らは，熱プラズマによる大面積にわたる超高速処理を目指し，これまでにループ型誘導熱プラズマ(Loop-ICTP)装置を開発している。この装置はループ型トーチを円型コイルにより挟み込み，トーチ面に垂直な交番磁界を印加して誘導熱プラズマを維持するものである。このLoop-ICTPの一部を基板の表面上に生成することにより，基板表面の高速処理が可能となる。実際，Ar/O₂ Loop-ICTP照射により，Si基板上の長さ80 mmにわたって100 nm/minの超高速酸化が可能であることを確認している。本報では，トーチ中央部からO$_2$ガスを導入したループ型Ar誘導熱プラズマの3次元電磁熱流体解析モデルを構築し，ループ管内および基板上のガス温度およびO₂質量分率分布を検討した。

1-099

空洞共振器付きプラズマ源におけるプラズマ生成，維持に寄与する電磁波の検討

◎高井野亜・片山 昇（東京理科大学）

空洞共振器付きプラズマは、誘電体とプラズマの境界においてTM波と呼ばれる電磁波により発生する表面波により高密度な状態を維持すると従来では考えられていた。しかし、TM波共振器状態でもTM波による表面波でも説明できない現象が観察されている。そこで本研究ではプラズマを発生および維持している機構はTM波による表面波ではなく、空隙長の変化に伴い様々な形態の電磁波が奇与するのではないかという仮定の元、チャンバ下部からのプラズマの状態を観察し実際に電磁波がどのような形態になっているか調べた。さらに、空隙長を変化させることで密度ピークを測定した。

1-100

直流大気圧放電による電磁波伝搬特性の制御

◎岩瀬裕紀・髙山正和（秋田県立大学）

プラズマにはプラズマ周波数よりも低い周波数の電磁波を反射する性質がある。この性質を用いて電磁波伝搬特性の制御を行う。 大気中で直流放電を生成し，その放電電流密度から電子密度を最大で n_e =5.53×10¹⁹ m^-3と推定した。これに対するプラズマ周波数がf ≅ 67 GHzとなった。これに対して，十分に低い周波数の電磁波の伝搬特性を測定するために，通過帯域4.64〜7.04GHzの導波管を製作した。 この導波管の中心に電極を設置して導波管内に直流大気圧放電を生成した。そして，ネットワークアナライザにより放電時と無放電時の電磁波伝搬量を計測した。その結果，6.0〜7.0GHzの範囲で，放電時の伝搬量が減少した。これにより，直流大気圧放電による電磁波伝搬の減少が確認された。

1-101

低温大気圧プラズマジェットへの予備電離法の適用とその評価

◎小林大地・笠井芳幸・田中郁行・徳永智彦・藤原恭子・佐原純輝・浅井朋彦（日本大学）・小口治久（産業技術総合研究所）

低温大気圧プラズマジェットは，大気圧下での効率よくラジカルが生成できることから，医療や材料分野において応用研究が進められている．しかし，プラズマの生成に使用できるガス種が制限されることや，プラズマの照射効果の再現性の悪さなどの課題がある．これらを解決するために本研究では，LFジェットに誘電体バリア放電を用いた予備電離システムを導入し，その効果の定量的な評価を行った．LFジェットを生成できるガス種の選択性，ラジカルの生成量が向上することが示唆され，また，より低電圧，低ガス流量領域に動作範囲を広げることができた．

1-102

Numerical Simulation on Temperature Distributoin in Ar/H2 Induction Thermal Plasma with Silicon Powder Injection

○Siregar Yulianta・Kodama Naoto・Tanaka Yasunori・Uesugi Yoshihiko・Ishijima Tatsuo（Kanazawa University）

In nanopowder synthesis, feedstock powder is injected to be evaporated in the ICTP. Mixing of this evaporated materials to the ICTP markedly affects the thermodynamic properties and transport properties. These complex interactions between the ICTP and evaporation of feedstock is essential to be understood. In this report, we investigated thermal interactions between silicon (Si) feedstock powder and 99%Ar/1%H2 ICTP by the developed numerical model for Si nanopowder synthesis. The Si feedstock feed rate was set to 0, 0.1, 1.0 and 10 g/min. This implies that Si feeding more than 1 g/min may be too heavy to vaporize all feedstock injected.

1-103

3針－平板電極におけるバリア放電電流の分析

◎中村謙介・坂本香苗・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

オゾンは強力な酸化力を有しており、さらに残留毒性がないことから様々な分野で利用されている。しかし、オゾン生成においてはランニングコストの高さが長年の課題として挙げられる。オゾン生成コストの削減、つまりオゾン生成効率の向上にはイオン等のガス分子の加速させずに電子のみを選択的に加速させるようなナノ秒パルス放電を発生させればよい。本報告では、従来用いられている平板－平板電極構造のバリア放電電極ではなく多針－平板電極構造のバリア放電電極において、針電極間隔を狭くすることによって放電電流ピーク値が大きいかつ放電電流半値幅が小さい急峻なパルス放電に転換していることを見出した。

1-104

準大気圧下における高繰り返しナノ秒パルスグロー放電の放電形態

◎前川拓也・菊池祐介（兵庫県立大学）・大坪 陽・西村芳実（栗田製作所）・永田正義・八束充保（兵庫県立大学）

本研究では，SiC-MOSFETインバータ電源および検出器に光電子増倍管を有する可視分光器を用いて，準大気圧高繰り返しヘリウムパルスグロー放電プラズマの時間分解分光計測を実施し，陰極近傍での発光スペクトル{全発光，He原子発光（He I, 2p-3d, 587 nm），窒素（N₂）分子イオン発光（N₂⁺, 391 nm）}の時間発展を取得した．その結果，全発光は電圧印加終了後も発光が持続しており，放電発光が準定常的に存在していることがわかった．また， N₂⁺は電圧がゼロになった後も発光が持続していることが分かった．ここで，N₂⁺は準安定状態のHe原子（He^*）によるペニング電離により発生していると考えられ，アフターグローでは，He^*が存在していることを示唆された．

1-105

大気圧マイクロプラズマによる植物ホルモン除去の研究

木村 聡・ヤロスラヴクリストフ・マリウスブラジャン・◎清水一男（静岡大学）・大下貴也（積水化学工業）

エチレン (C₂H₄) は主に果実・野菜類から発生する植物の成長ホルモンであり、植物の成長を調整する働きがあり果実・野菜類の保存状態に大きく影響する。そのため果実・野菜類の輸送や保存時にはコンテナや倉庫内における環境制御の一環として産生したエチレン量を調整する必要がある。本研究では植物ホルモンの一種であるエチレンを大気圧マイクロプラズマによる分解を試み、その分解率と副生成物を調べた。その結果、大気圧マイクロプラズマによるエチレンの分解が確認され、副生成物としてオゾン、エチレンオキシドの発生が確認された。また実際の作物を使った保存環境において大気圧マイクロプラズマを使用した結果、熟成の抑制が確認された。

1-106

放電型光触媒装置による浮遊菌の処理（VII）―実使用空間での処理特性評価―

○志村尚彦（東芝エネルギーシステムズ）・瀬川 昇（東芝環境ソリューション）

当社では、酸化チタン光触媒を空気中での直接放電光によって活性化させる放電型光触媒技術を搭載した冷蔵庫等を製品化している。今回はこの放電型光触媒技術を用いた空気清浄機の住空間への適用可能性を検討するために、25m3空間おいて浮遊黄色ブドウ球菌の除菌試験を行った。結果、コントロールと比較して、99.9％以上の除菌性能が確認され、住空間でも本装置の有効性が示された。

1-107

電気集塵装置におけるディーゼルナノ粒子の集塵特性:残渣油と軽油を用いた実験

◎澤野秀敏・瑞慶覧章朝・安本浩二（神奈川工科大学）

本研究は、ディーゼルナノ粒子に対する電気集塵装置の集塵特性の把握を目的とし、残渣油と軽油による燃料の違いがESP通過後の粒径分布に与える影響について検討した。その結果、残渣油を使用した時、電圧を印加すると粒径50 nm以上の粒子が電気集塵されたが、粒径約20 nm以下の粒子濃度が増加した。軽油を使用した際も集塵効果がみられたが、残渣油の時のような20 nm以下の粒子濃度の増加はみられなかった。これは軽油よりも残渣油使用時の排ガスにSO2が多く含まれているため、イオン誘発核生成によって微粒子が生成されたためだと考えられる。ただし、残渣油使用時においても、イオン誘発核生成による微粒子の濃度増加が全体の集塵率に与える影響は殆ど無かった。

1-108

非対称矩形波交流電圧を用いた電気集塵装置における逆電離現象の抑制

◎三井智也・瑞慶覧章朝・安本浩二（神奈川工科大学）・中納 隆・坪内恒祐・小川貴志（古河産機システムズ）

工場や発電所の排ガスに含まれる粒子状物質が大気汚染の問題となるため，その対策として電気集塵装置が使用されている．しかし，捕集された粒子状物質の電気抵抗率が高いと，ダスト層で逆電離現象が発生する．この現象は集塵性能の低下をまねくため，その防止が必要である．本研究は矩形波交流電圧を用いて逆電離現象を防止することを目的としている．本報告では矩形波交流電圧における正及び負極性電圧印加時間を変化させ逆電離現象の抑制を試みた．その結果，非対称矩形波交流電圧を印加することで逆電離現象を防止した．

1-109

線対平板型電気集塵装置における電流密度分布のシミュレーション解析

◎伊藤航平・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・川田吉弘（職業能力開発総合大学校）・田岡智浩・柴田憲司（住重プラントエンジニアリング）

工場などからの排ガスによる大気汚染を防止するため、ESPが利用されている。ESPの開発・設計は実験によるアプローチが主流と思われるが、シミュレーションによる研究も進んでいる。シミュレーションは、大規模な実験設備が不要でパラメータを自由に変更でき、更なるESPの開発に有効である。本研究では、シミュレーションソフトを用いて、線対平板型ESPにおけるコロナ放電の電流密度分布を解析し、実験結果とのフィッティングを行った。 その結果、接地平板電極表面の電流密度分布の実験値と解析値はほぼ等しい値に設定できた。また、全体的な傾向と値も実験値とほぼ同様であり、解析結果が妥当であることがわかった。

1-110

高温下における誘電体バリア放電の挙動観測

◎神田直人・市來龍大・喜多村圭一・赤峰修一・金澤誠司（大分大学）

我々は、これまでの先行研究でDBDでの金属窒化処理に成功した。DBDの利点である対向電極の形状を変化できることを利用して窒化領域を制御しようとしたが、想定外の大面積処理がなされていた。この原因を調査するため我々は今回、高温下における平板型窒素DBDの観測を行った。その結果、600℃までの温度上昇によって、対向電極の領域を大幅に超えて徐々に放電の生成面積が拡張した。それに加え、400℃〜500℃付近でフィラメント放電からグロー状の放電へと形態変化を起こした。これらのプラズマの変遷が想定外の大面積処理を起こしたのではないかと考えられる。

1-111

弱電離気体プラズマの解析(CXLIII) パックトベッド放電による模擬消化ガスの脱硫特性 (7) 放電リアクタのクラスタ化とその効果

◎上原大知・高橋一弘・佐藤孝紀（室蘭工業大学）

放電リアクタをクラスタ化し，その効果を調査するとともにこれまでのリアクタを用いたときの結果と比較した。H₂S分解率は，クラスタ化したリアクタを用いた場合，60.2% (1.0 L/min)および26.5% (5.0 L/min)となり，これまでのリアクタを用いたときよりも10%程度低下した。どちらのリアクタでも分解生成物としてCH₃SH, CS₂,C₂H₅SH,CH₃SCH₃, C₂H₅SCH₃およびSO₂の生成が確認された。どちらのリアクタを使用しても流量を低くすることで分解率を向上させることが可能であるが，低流量ではSO₂およびothers（S原子を含む未特定分子および電極や誘電体に堆積したS原子）の濃度が増加することから，H₂Sの分解率向上とSO₂濃度の増加がトレードオフの関係にあると考えられる。

1-112

弱電離気体プラズマの解析(CXLIV) パックトベッド放電中のH₂S分解過程

◎大隅隆広・高橋一弘・佐藤孝紀（室蘭工業大学）

パックトベッド放電を用いて模擬消化ガスの脱硫を行うとともに，分解生成物を詳細に調査し，その結果からH₂Sの分解過程を検討した。分解生成物としてSO₂，CH₃SH，C₂H₅SH，(CH₃)₂S，CS₂およびCH₃SC₂H₅の生成が確認され，これらの濃度は，滞在時間に対してピークを有することから，中間生成物であることがわかった。また，S原子のマスバランスを調べると，S原子を含む未特定の分子あるいは誘電体に堆積したS原子数は，滞留時間の増加に伴い単調に増加していることから，H₂Sおよび中間生成物の分解が進み，誘電体ペレットや電極にS原子が堆積すると考えられる。

1-113

ハニカム型プラズマリアクタによるVOCの循環除去

○澤田朝陽・江原由泰（東京都市大学）

本研究では、大気汚染物質の原因の一つである揮発性有機化合物を放電で除去することを試みた。実験にはトルエンを用いた。循環装置内にハニカム型プラズマリアクタを設置し、直流高電圧を印加することでトルエンの除去を行った。 放電頻度測定では、電圧6kV~12kVまで変化させ電圧の上昇に伴い放電頻度が上昇することが確認された。 また、循環装置を用いたトルエン分解実験では、トルエン初期濃度200ppm、湿度40~80%、電圧10kVで実験を行った。湿度が高いほどトルエンの分解が促進されることが確認された。これは、電極間で生成されるOHラジカルが増加したためだと考えられる。

1-114

バリア放電によるNOxの生成と制御に関する研究

◎國分聡志・平井 希・江原由泰（東京都市大学）

NOx(窒素酸化物)は人体や環境に悪影響を及ぼすものとして認知されている。しかし、NOxは幅広い使用用途もあるため、本研究ではバリア放電によるNOxの生成と制御を目的とし研究を行った。リアクターは二重円筒のパックドベッド型リアクタを用い、交流高電圧を印加して実験を行った。リアクターの中に充填する誘電体やリアクターの材質などを変えることで、放電条件を変化させた。そして、NOxやオゾンなどの放電生成気体の測定を行い、その結果の検討を行った。

1-115

ペニング型大電力パルススパッタ放電を用いたガラス基板上への窒化チタン薄膜の作製

◎永井 僚・東 欣吾（兵庫県立大学）

薄膜分野において膜対象粒子をイオン化することで、薄膜の高機能化ができることが示唆されている。そのイオン高効率生成装置の1つとしてペニング型大電力パルススパッタ放電（HPPS-PD）装置がある。本装置は大電力パルススパッタ放電(HPPS)を用いた小型で高電離度の金属プラズマ源で、ペニング放電と呼ばれる形態の放電を用いる。今回、Tiターゲットを使用し、Ar及びN2雰囲気ガス中でガラス基板に対し成膜を行い成膜速度、電気抵抗等の調査を行った。

1-116

準大気圧プラズマCVDによる高濃度CF₄原料ガスからのフルオロカーボン膜の成膜特性

◎木倉 丈・田中智之・竹本啓輝・垣内弘章・安武 潔・大参宏昌（大阪大学）

PPFC(Plasma Polymerization Fluorocarbon)膜は，電気絶縁性,耐薬品性,撥水生を有する機能膜として様々な応用が期待されている．しかし，その原料ガスには,C₄F₈やC₆F₆など高次の炭素を含有するフルオロカーボンガスが用いられることがもっぱらであり,PPFC膜の形成を廉価なCF₄で実現できれば,コストメリットは大きい．そこで本研究ではCF₄原料ガスからのPPFC膜の高速形成を目指し，高圧・高濃度雰囲気下でのプラズマCVD法を試みた.今回はPPFC膜の形成に寄与するパラメータを調査した結果を報告する.

1-117

変調誘導熱プラズマ照射による多結晶ダイヤモンド膜堆積へのCH₄/H₂流入量の影響

○荒井隆志・別院利城・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

本報告では，Si基板に，変調誘導熱プラズマ(MITP)を照射して多結晶ダイヤモンド膜生成実験をおこなった。誘導熱プラズマ(ICTP)は，高温かつ熱容量が大きく，クリーンな反応場を生成できるという利点から，超高速材料プロセスへの応用が期待されている。筆者らは，このICTP をダイヤモンド膜生成に応用することを考えている。これまでの実験から，MITP照射時のほうが無変調ICTP照射時より基板表面に一様に多結晶ダイヤモンド膜が生成できた。今回，MITPの高温部に流入する原料ガス CH₄/H₂の流量を変更してSi基板に照射することで，多結晶ダイヤモンド膜生成に及ぼす影響を検討した。その結果，CH₄/H₂の流量を増やすことで，多結晶ダイヤモンド膜の生成レートが向上した。

1-118

Si/Cナノ粒子生成用誘導熱プラズマ装置下流部へのAr+CH4クエンチングガス導入による空間冷却効果の数値解析的検討

◎清水光太郎・石坂洋輔・隠田一輝・兒玉直人・田中康規・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）

本報告では熱プラズマを用いてSi/C ナノ粒子を生成するに際し，数値解析によって熱プラズマ下流の反応容器に Ar+CH 4 クエンチングガス (QG) を導入した場合の温度分布を算出した．本計算では，数値解析ソフト COMSOL multiphysicsを用いて三次元熱流体解析を行った．その結果，Ar+CH4クエンチングガスを導入することによって下流の温度が急激に低下し，およそ6000 kから1500 K 以下になった．

1-119

2つのコイルを持つタンデム型Ar誘導熱プラズマを用いたSiナノ粒子生成の基礎検討

◎隠田一輝・児玉直人・石坂洋介・清水光太郎・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

筆者らは，1つのプラズマトーチに2つのコイルを用い，熱プラズマを軸方向に空間制御できるタンデム型誘導熱プラズマを開発してきた．今回，タンデム型誘導熱プラズマを用いた初めてのナノ粒子生成を行い，基礎検討を行った．その結果，原料を上段コイルから投入することで，熱プラズマが比較的不安定になりやすいことが示唆された．

1-120

準大気圧定常ヘリウムアーク放電プラズマ照射によるタングステンの表面ナノ構造形成

◎奥村卓也・菊池祐介（兵庫県立大学）・前中志郎・青田達也・藤田和宣（ユメックス）・高村秀一（愛知工業大学）

ヘリウム（He）プラズマ照射によって形成されるタングステン（W）表面の繊維状ナノ構造は完全黒体に近い放射特性を有する等，様々な産業応用のポテンシャルを有している。我々は，繊維状ナノ構造形成に向けて，準大気圧下で定常Heアーク放電プラズマを生成・照射する装置を開発している。今回，W試料への照射に先立って，Heプラズマ生成実験後のW製放電電極の表面観察を実施したところ，Heバブル・ホール（電極表面温度：約1440℃）及び成長初期段階の繊維状ナノ構造（電極表面温度：約1060℃）を初めて確認した。

1-121

カーボン薄膜の選択プラズマCVD

○白谷正治・TAOJUN FANG・山木健司・徐 鉉雄・板垣奈穂・古閑一憲（九州大学）

カーボン薄膜は、高いガスバリア性・低摩擦性・耐摩耗性・耐焼き付き性・耐食性などの優れた特長を有しているため、自動車部品や機械部品などの摺動部、工具や金型の表面処理、さらには半導体デバイスプロセスにおける保護膜など、多様な用途がある。多くの用途において下地や形状などの違いを利用し、選択的にカーボン薄膜を堆積する技術が求められている。本論文では、プラズマCVDによりカーボン薄膜を選択的に堆積する技術について報告する。

1-122

水蒸気雰囲気下におけるマイクロ波励起プラズマを用いた種々のポリマー膜に対するアッシングメカニズムの検討

◎島田大伸・鈴木宏明・相澤 洸・石島達夫・田中康規・上杉喜彦（金沢大学）・高森司真・西山 聖・堀邊英夫（大阪市立大学）

我々は、水のみを原料とするマイクロ波励起水プラズマによる低環境負荷のレジスト除去法の開発を進めている。本手法は、ウェハを水に直接接触させて高い冷却効果を持たせつつ，極めて高いレジスト除去速度 ( > 1 µm/min )を実現できることが特徴である。これまで5種類のポリマー膜(PVP，PCHMA，PBeMA，PPrMA PEMA)に対してアッシング時の時分解分光計測を行った。Hの発光強度は，側鎖にベンゼン環を有するPVPの場合は時間的に減少し極小値が見られるのに対し、他の4種のポリマー膜の場合には極小値をとらないことを見出した。本報では、5種のポリマー膜に対してアッシングレートの評価を行い、化学構造の差異に伴うポリマー除去の様相を検討し報告する。

1-123

低周波および直流放電プラズマを用いたDLC膜の成膜と除膜

○谷本 壮・藤田 至・近藤勇樹・針谷 達・須田善行・滝川浩史（豊橋技術科学大学）・権田英修（オーエスジー）・羽田野泰弘（小島プレス工業）・神谷雅男（伊藤光学工業）

ダイヤモンドライクカーボン（DLC）膜は、高硬度、低摩擦などの優れた特徴を有する機能性膜であり、工具などの保護膜として応用されている。DLC膜を大量の工具などへ成膜する際、既存の成膜速度では多くの時間が必要になり成膜速度の高速化が求められている。また、工具等からDLC薄膜を取り除き、母材を再利用するためのDLC膜の高速除膜技術も高速成膜と同様に求められている。 本研究では、低周波電源及び直流電源を組み合わせて生成される放電プラズマを用いDLC薄膜の成膜及び除膜を行った。

1-124

フッ素支援プラズマCVD法を用いた立方晶窒化ホウ素膜の島成長と電界放出特性評価

◎高橋里奈・堤井君元（九州大学）・松本精一郎（物質・材料研究機構）

高効率電界放出エミッタの材料として、ワイドバンドギャップ半導体が注目されている。その中でも立方晶窒化ホウ素（cBN）は、炭素系材料と異なり高温耐酸化性を有するため、次世代エミッタ材料として期待されている。従来のcBN膜の合成法ではcBNの生成に強いイオン照射を必要とするため、低品質な膜しか得られず、電界放出特性の評価に至らなかった。我々のグループでは、独自のプラズマCVD法によって低エネルギーイオン照射下で高品質なcBN膜の合成に成功した。本研究ではこれらcBN膜の構成相、表面粗さ、電界放出特性の相関を報告するとともに、cBNが他の材料に匹敵する優れた電界放出性能を有することを示す。

1-125

大気圧プラズマ流誘導による貫通穴の内壁窒化

◎戸田吉保・山野内健太・市來龍大・赤峰修一・金澤誠司（大分大学）

我々の研究では、押出成形金型の内壁窒化を目指しているが、従来の低圧プラズマ窒化法では微小の穴の内壁窒化が困難である。しかし、大気圧プラズマジェットの照射により内壁を窒化できるのではないかと考え、推進してきた。過去の我々の研究で高さ10 mm、貫通穴の直径1 mm、2 mmの内壁窒化を試みた結果、2 mmの穴は内壁全体が窒化できていたが、1 mmの場合は穴の深部の窒化ができていなかった。そこで本研究では、穴の底からポンプで吸引し、プラズマの流れを穴内部に誘導することで、穴1 mmでも内壁全体の窒化ができるのではないかを推測した。ロータリーポンプを用いた実験を行った結果、1 mmの穴の内壁全体の窒化に成功した。

1-126

非対称電極系における部分放電のゆらぎに注目した積分方程式に関する検討

◎山川湖南・八島政史・岡本達希（東北大学）

近年、電力流通設備の高経年化や機器の小型化に伴う高電界化により、絶縁劣化診断技術はますます重要度を増している。設備の劣化に伴って発生する部分放電は、高電圧機器・ケーブル等の絶縁材料の寿命を左右する有害な要因として注目されている。しかし、絶縁材料物性と部分放電特性との関係の解明は未だなされているとは言えない。そこで、本研究ではその双方に直接関係すると考えらえる部分放電のゆらぎに注目し、非対称電極系における交流電圧課電下での部分放電をモデル化し、放電確率φ-n分布やパルス平均φ-q分布といった部分放電特性を表す積分方程式の導出を行った。今回はその結果を報告する。

1-127

SF₆, CO₂, Dry Air, N₂のPD放射電磁波の振幅値特性のPD電流波形に基づく解析的検討

◎田中麻理菜・白石智也・大塚信也（九州工業大学）・井波 潔・羽馬洋之（三菱電機）・山本尚史・岡部成光（東京電力ホールディングス）

近年、SF6代替ガスとして Dry Air や CO2 などの自然ガスによるSF6代替ガスの研究が進められている。このような新たなガスを使った電力機器の設計開発期間の短縮や高度化のためには、部分放電現象、特に部分放電電流と二次的に放射される部分放電放射電磁波特性を理解する必要がある。筆者らは、これまで部分放電現象の理解を目的とし、SF6及び、CO2、Dry Air、N2の部分放電特性の基礎検討として、交流電圧印加時の部分放電電流及び放射電磁波に関する検討を行っている。本論文では、取得した各種ガスの部分放電電流及び部分放電電磁波をもとに模擬電流波形を作成し、ガス種及びPD電流が及ぼすPD放射電磁波への影響をFDTD解析により検討した。

1-128

発泡エナメル線における部分放電位相角特性に及ぼす印加電圧の影響

◎石津祥子・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・太田槙弥・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年、モータ巻線の部分放電劣化の対策として、部分放電の抑制や絶縁劣化の診断が求められている。本研究ではツイストペアエナメル線における部分放電の診断及び発生機構の把握のとして電荷量、放電発生回数の位相角特性（φ-q-n分布）に着目した。部分放電抑制のための低誘電率化を行った発泡エナメル線を用いた。本報告では交流電圧を10分間印加した場合のエナメル線(PIW)の電圧位相に対する部分放電電荷量及びその発生回数の測定を行った。発泡率0、30 %に1.5 kVを印加した場合、10秒後のφ-q-n分布では様相に違いが見られ、0%では1000pC以下の放電発生回数が30%に比べ増大した。

1-129

発泡エナメル線の空孔内放電に関する検討

◎田中壱樹・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・太田槙弥・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

モータ巻線間での部分放電を抑制するためには部分放電開始電圧を高くすればよく、エナメル線絶縁皮膜の誘電率を低下させることでそれを実現できる。その方法として、皮膜を発泡させることで誘電率を低下させた発泡エナメル線が開発されている。発泡エナメル線に関しては、発泡により生じる絶縁皮膜内の空孔でも放電が発生することが考えられる。そこで、電界解析により空孔内で放電が起こる可能性について検討した。その結果、空孔径を小さくすると放電開始電圧が大きくなることがわかった。また、その値は3000V程度で、インバータサージを考慮しても1500Vまでは放電が発生しないことがわかった。

1-130

小型パワーモジュールモデルに対する新しい位置評定アルゴリズムの提案

◎真木洵耶・秋永優也・松添宇一・今給黎明広・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・中村瑤子・谷口克己・池田良成・岡本健次（富士電機）

著者らは，樹脂封止したパワーモジュール内部で発生する部分放電による放射電磁波信号を複数のループセンサにて検出し，到達時間差法により最高精度2 mmの位置標定技術を実証している。更なる位置標定精度向上を目的として，波形の極性反転に着目した新たな部分放電位置標定法を考案した。本手法では， PD源が二つのセンサ間にある場合には，アンペールの法則よりセンサを鎖交する電磁波信号の向きが反転する原理を用いたものである。本稿では，極性反転法を用いた位置標定システムを小型パワーモジュールモデルに適用すべく，効果的な部分放電位置標定アルゴリズムを提案し，検討した結果を報告する。

1-131

パワーモジュール封止用絶縁ゲル中のキャビティー進展における繰り返しインパルス電圧下の極性効果

◎中村 信・三谷卓矢・江尻 開・熊田亜紀子・日髙邦彦（東京大学）・早瀬悠二・髙野 翔・山城啓輔・高野哲美（富士電機）

パワーモジュールの絶縁にはシリコーンゲルが用いられる。パワーモジュールでは，キャビティーと呼ばれる樹枝状の空孔がシリコーンゲルと基板の界面に部分放電によって形成される。パワーモジュールはスイッチング素子のため，実用上はPWM制御波形のように，立ち上がりが数十nsから数us程度と速く，周波数が高い電圧が印加される。著者らは，正弦波交流や，台形波等，各種印加電圧波形下における，シリコーンゲル中の放電進展特性を測定してきた。本稿では，実機に近い印加電圧波形について，周波数，印加電圧極性を変化させ，キャビティーの進展について調査した。

1-132

部分放電による放射電磁波と放電電流の関係に及ぼす電極間距離の影響

◎羽渕雄堂・神川卓人・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

部分放電は絶縁破壊の前駆現象であり、これを初期の段階に検知することは機器の損傷や電力系統の事故の回避に非常に有効である。多くの部分放電検出方法が提案されているが、特に放射される電磁波の計測は外部ノイズとの分離が必要である。アンテナなどは被測定対象からは電気的に分離されているという利点を有する。本実験から得られた結果として、各電極間距離における最大電磁波強度は、電流の立ち上がり急峻度に対して単調増加していた。このことから、電磁波強度が大きくなるほど、急峻な電流が流れていることがわかった。

1-133

TEVセンサーの検出特性についての基礎検討〜部分放電源からの距離依存性と検出信号の周波数特性〜

◎上田尚弥・新貝健将・八島政史・岡本達希（東北大学）

最近のIoT技術の急速な展開に伴い、TEVセンサーのような簡易センサーを分散して多数配置することで、電力流通設備の全体的な監視・診断に活用できる期待がある。今回、我々は電力流通設備の金属筐体を模擬した実験系において、検出波形の立ち上がり部の時間差に着目した距離依存性の確認、FFT解析を使用したセンサーの検出特性の確認等を行った。その結果、2台のセンサーの立ち上がりの時間差がnsのオーダーでの距離依存性を示し、TEVセンサーを部分放電源の位置標定に役立てられる可能性があること、部分放電源で発生している電磁波のうち検出していたのは高周波成分がほとんどであったこと等を確認することができた。

1-134

微小空隙における沿面放電進展過程のシミュレーション

◎中祖佑哉・岩渕大行・大山 力（横浜国立大学）

現在、電気車両用モータシステムは小型化が求められており、そのため高電位箇所が広範囲に及んでしまうという危険性がある。そこで本研究では、絶縁設計をより優れたものにするために微小なギャップや空洞を有する系におけるシミュレーションを行った。シミュレーションモデルを作成し、気圧や空洞距離、背後電極などの条件を変え、絶縁破壊電圧、進展過程の分析を行った。 その結果、背後電極が陰極と同電位の場合は気中放電によって進展し、背後電極が陽極と同電位の場合は沿面放電によって進展しており、前者の条件よりも後者の条件の方が絶縁破壊電圧が低くなっていることが確認できた。

1-135

イカダモの増殖に及ぼす直流電界の効果

○山下 遼・村本裕二・村上祐一（名城大学）

直流電界印加によるイカダモの増殖促進効果について報告する。実験は、実験試料を入れた三角フラスコの内側に電極間距離10 mmの平行平板電極を設置し、直流電圧 1 V(直流電界100V/m)を印加し、イカダモの細胞数を計測した。実験試料は、液体培地（BG11）50 mLにイカダモを含む同培地を0.5 mL入れたものである。本実験系にて直流電界100 V/m有無で10日間培養させた。結果は、直流電界有の方が無のものに比べてイカダモの細胞数が少なかった。また、実験試料の分解電圧を観測したところ約0.5 Vであった。このことから、本実験で使用した直流電界では、試料内で電気分解が生じ、その影響でイカダモの増殖が阻害された可能性も考えられるが現在、検討中である。

1-136

電子スピン共鳴法によるプラズマ処理された液中OHラジカルの測定

○金澤誠司・古木貴志・馬田裕史郎・赤峰修一・市來龍大（大分大学）・コチックマレック（ポーランド科学アカデミー）・小林 正（大分大学）

大気圧放電プラズマにより液中や気液界面で生成する活性酸素(ROS)や活性窒素(RNS)が注目されている。我々は，活性酸素の中でも，OHラジカルの効果的な発生方法の開発とその測定および応用を研究してきた。これまでOHラジカルの測定は，試薬を用いる化学プローブ法により蛍光測定を実施してきた。今回，ラジカルの絶対量の測定も可能となる電子スピン共鳴(ESR)法を導入し，クロスチェックを行うことで信頼性あるデータの提供を目指している。講演では，スピントラップ法によるOHラジカルのESR測定を報告する。

1-137

正極性パルスストリーマ放電下の気液界面におけるOHラジカルの計測

◎青野海豊・小野 亮（東京大学）

大気圧プラズマの一種のストリーマ放電は高い化学反応性をもつ活性種を容易に生成することができる。この活性種の一つにOHラジカルがあり、水処理における促進酸化処理法や表面処理、プラズマ医療において効果があると考えられている。しかしながらOHラジカルは非常に短寿命であり、気液界面放電でこの効果を利用することを考えると液面近傍で生成されたOHラジカルしか水面に作用しないことが考えられる。これに注目し、著者らは気液界面におけるOHラジカルの密度を測定してきた。今回この液界面でより精度を上げた計測について報告する。

1-138

キャビテーションプラズマ発生率に及ぼす連続放電発生回数の影響

◎岡田 翔・澤近航平・黒島朋哉・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマは高繰り返し高電圧短パルスを印加した電極間にキャビテーション気泡を含む溶液を導くことで生成される液中低温プラズマである。キャビテーションプラズマは処理能力が高く、分散、合成、分解、殺菌などへの応用が期待されている。しかし、その気泡内での放電現象については報告が少ない。本発表では、処理水導電率に対するキャビテーションプラズマ発生率と連続放電発生数の関係について調査を行った結果を報告する。導電率が上昇するとプラズマ発生率は減少し、特に100 µS/cm以上の導電率ではプラズマ発生率は急激に減少する。連続放電発生回数は導電率300 µS/cmにおいて最大で300パルス継続するものがあることが分かった。

1-139

キャビテーションプラズマ処理による水溶液中メチレンブルーの分解

◎大塚健太郎・黒島朋哉・澤近航平・岡 好浩・八束充保（兵庫県立大学）

近年、液中プラズマを用いた有機染料の分解が注目されている。これまでに、我々はキャビテーション気泡に高繰り返し高電圧ナノパルスを印加することによって、水中に低温プラズマを生成することができるキャビテーションプラズマ装置を開発してきた。今回、キャビテーションプラズマによるメチレンブルーの高速分解に取り組んだ結果、処理時間10分でCOD値が295 mg/Lから7 mg/Lまで減少させることができ、97.4%のメチレンブルーを完全分解することに成功した。

1-140

キャビテーションプラズマによる銀電極の消耗に及ぼすナノパルス電圧の極性による影響

◎黒島朋哉・澤近航平・大塚健太郎・岡 好浩・八束充保（兵庫県立大学）

銀ナノ粒子はその特有の物理化学特性から抗菌剤やバイオセンサー等への応用が進められている。これまでに、キャビテーション現象により発生させた微小気泡雲に高繰り返し高電圧ナノパルスを印加することによって得られる、キャビテーションプラズマ(CBP)を開発し、粒径1-20 nm程度の銀ナノ粒子の合成に成功してきた。今回、CBPによる銀ナノ粒子合成のメカニズムを調べるためにパルス電圧の極性を変化させて電極消耗量を調べた結果、両極性の場合に比べて正極性、負極性の場合は高電圧側と接地側の電極消耗量の差が大きくなっていることがわかった。特に陽極側の消耗が大きくなっていることから陽極側で溶出した銀イオンがCBPによって還元され、銀ナノ粒子が生成される過程が支配的であると考えられる。

1-141

プラズマ殺菌用大気圧ジェットプラズマのシミュレーションⅡ

○高木茂行・能勢大輔（東京工科大学）

低温で薬液を使わないプラズマ殺菌のプラズマ源として期待される大気圧ジェットプラズマで，ガス流れを考慮したプラズマシミュレーションを行った。ドライエアをプラズマ用のガスとし，大腸菌K12株を使った実験で，プラズマの殺菌効果を確認した。実験と同じ動作条件で，プラズマシミュ―ションを行い，ガス流れが無い場合，電子，O原子密度ともRF電極近傍で高くなった。また，ガス流れにより電子，O原子ともにノズル側に輸送されるが，その効果はO原子で顕著であることが分かった。

1-142

低周波大気圧プラズマジェットの電極構成が液中種・化学種の生成に及ぼす影響

◎田村悠一（金沢大学）

プラズマと液体を相互作用させることにより, 液中に種々のイオンやラジカルが生成される。これらのイオンやラジカルを定量的に生成するためには，プラズマの安定的な生成と制御が重要である。電極個数はプラズマを生成する上で重要なパラメータの一つであるが，電極位置が液中活性種・化学種に与える影響に関する報告は多くない。本報告では，低周波大気圧プラズマジェット(Low Frequency Atmospheric Pressure Plasma Jet : LFAPPJ)を液体に照射した。電極構成を変化させ，液中OHラジカル濃度およびプラズマの発光の変化を検討した。

1-143

水処理溶液状態による球雷状放電からの発光スペクトル分布の変化

○前山光明・高取芳光・戸梶公雄・田代潤一郎・稲田優貴（埼玉大学）

球雷状放電は、100 ms という大気圧放電としては非常に長い放電維持時間と OH ラジカル由来の強い発光が直径10cm 程度の体積で観測されることなどから、これを用いた新たな水処理手法の開発が期待されている。これまでの結果より、大きな極性効果があり、特に水溶液中のオゾン濃度が繰り返し放電により大きく変化すること、および処理の経過と共に処理速度が急変することなど報告してきた。 酢酸の分解処理では、OH ラジカルが主要活性種であることからこれらの分解処理能力の処理条件による評価において OH ラジカルからの310nm 近傍のスペクトル強度との関連性を実験的に検討した。

1-144

エレクトロスプレー法による微小液滴形成と放電進展によるインジゴカルミン水溶液の脱色

○弓達新治・近藤賢宏・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

我々は，エレクトロスプレー針に印加する正直流電圧にパルス電圧を重畳することで，液滴形成と放電の時間制御をおこない，一般的には困難とされる液滴が形成された空間に放電を進展させることが可能であることを示してきた。本研究では，被分解物質としてインジゴカルミン水溶液を用い，エレクトロスプレー法による液滴形成と放電進展による被分解物質分解(脱色)の実証をおこなった。正直流電圧にナノ秒パルス電圧を重畳することで非常に低消費電力な分解がおこなわれることを示した。

1-145

外部磁場印加型直流プラズマトーチのアーク電圧計測とアーク挙動の可視化

◎松本 光・前島 啓・齋藤宏輝・藤野貴康（筑波大学）

外部磁界印加型プラズマトーチのアーク電圧計測とアーク挙動の可視化を実施した。実験には，中心軸上の磁束密度の最大値が0.27 Tのリング状永久磁石を配置した数 kW級直流プラズマトーチを用いた。高速度カメラにより撮影した連続画像より，磁界を印加した場合はアークの陽極付着部が磁界による反時計方向のローレンツ力を受け，時間経過に伴い移動することが確認できた。また，データロガーを用いたアーク電圧計測より，磁界を印加した場合はアーク電流増加に伴うアーク電圧の平均値の変化が小さくなることがわかった。

1-146

数kW級非移行式直流プラズマトーチのアーク電圧とアークジェット長の関係

◎前島 啓・松本 光・齋藤宏輝・藤野貴康（筑波大学）

本研究では，数kW級の非移行式直流プラズマトーチにおけるアーク電圧とアークジェットの時間変動の関係を実験的に調査した。実験では，アーク電圧計測と同時に，高速度カメラを用いたアークジェットの可視化を行い，トーチ出口部のアークジェット長の時間変化を計測した。作動ガスにはアルゴンガスを使用し，流量は10 slmから60 slmまで変化させた。電流は40 Aから100 Aまで変化させた。計測結果から，アーク電圧とアークジェット長には関係性があることがわかった。また電流やガス流量の条件を変えることで，アーク電圧とアークジェット長は変化することがわかった。

1-147

小電流アーク放電を有する電極間空間に対する高周波信号の伝達特性の計算

○柴山正雄・田中康規・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）

遮断器の開極初期におけるアーク特性を把握するには，数十μm以下の電極間距離の時間変化を知る必要がある。筆者らは既に，開極時の電極間静電容量が距離に対し変化することを利用して，電極間に加えた高周波信号の振幅の変化を時間的に捉えて電極間距離を求める方法を示している。この場合には電極間にアークがないとしたが，本報告では電極間に小電流アークが存在する環境で，同方法の適用の可能性を検討した。電極間静電容量にアーク抵抗を加えた回路モデルで伝達特性を計算し，電極間距離との関連を簡易的に求めた。この結果，アーク電流が1〜2 A以下であれば高周波信号を重畳させて，電極間距離を測定できる可能性があることが分かった。

1-148

低圧気中開閉器における開極開始時の接点消耗

◎堀田克輝・渡邉真也・稲口 隆（三菱電機）

低圧気中開閉器の接点寿命を決める要因のひとつが開閉時に発生するアークによる接点消耗である。大気中に一対の棒状接点(Ag99.99%, Cu99.9%)を設置し、接点間に平均アーク電流90~430 A, アーク時間8~24.4 msのアークを発生させ、接点消耗特性を調べた。その結果、開極開始直後に発生しアーク時間に依存しない接点消耗量Mbが存在することが分かった。これは開極時に発生するブリッジによる接点消耗と考えられる。Mbは開極開始時の電流の約2乗に依存しており、これは開極時のブリッジ形成・破壊が最終接触点における電極加熱に依存しているためと考えられる。また、融点の高いCu接点の方がAg接点よりもMbが約45%小さいことがわかった。

1-149

気中開閉器の電流遮断時におけるシミュレーション

○高崎由右多・Norrawit Tonmitr・金子英治（琉球大学）・林田丈博（戸上電機製作所）

気中負荷開閉器の消弧室には高分子材料が使用されている。電流遮断時に発生するアークが高分子材料に触れることにより、アブレーションガスが発生し、このアブレーションガスがアーク特性に影響を及ぼすことは良く知られている。この電流遮断現象をシミュレーションする場合、大電流域ではCassieモデル、小電流域ではMayrモデルが使われ、アークパラメータを変えることにより、材料毎の比較ができる。 そこで本研究は実験によって得られた波形と、MayrモデルとCassieモデルを直列に接続したシミュレーション回路を用いて得られた波形との比較を行ったので、その結果を報告する。

1-150

Arc Spectrum Emission on the Polymer Material Characteristics of an Air Load Break Switch under High Current Condition

○NORRAWIT TONMITR・Yuta Takasaki・Eiji Kaneko（University of the Ryukyus）・Takehiro Hayashida（Togami Electric MFG. Co. Ltd.）

An air load break switch is a switching equipment which operated manually as well as automatically for controlling and protecting in electrical power system. As well known, usage of polymer materials in the extinguish chamber is one of the most effective methods of improving performance of an air load break switch. During a high current interruption, arc discharge across the separating electrodes touches the insulator, and ablation gasses are generated and emitted [1]. In order to clarify the ablation characteristics of polymer materials and improve the breaking performance of an air load break switch, we investigate on arc spectrum emission under high current condition with four kinds of polymer materials.

1-151

Study of Electric Arc Behavior in Aircraft Conditions, Initiated by Foreign Object Debris

◎Guillaume Belijar・Aurore Risacher・Loïc Hermette（IRT Saint Exupéry）・Masahiro Kozako・Masayuki Hikita（Kyushu Institute of Technology）

Due to environmental and cost constraints, electricity demand in aerospace increases, toward More Electrical Aircrafts and all-electrical aircrafts(1). This led to increased voltage in recent aircrafts, 230/400 Vac and ± 270 Vdc. One of the most severe issue in aircraft environment is electric arc. This risk is increased in presence of Foreign Object Debris (FOD), small conductive pieces that can initiate electric arc by a short-circuit. In this paper, the evolution of electric arc dimensions during time is studied.

1-152

直線型慣性静電閉じ込め核融合中性子源の特性

○堀田栄喜・奥友航平・板垣智信・高倉 啓・河野俊之・長谷川 純（東京工業大学）

慣性静電閉じ込め（Inertial Electrostatic Confinement: IEC）核融合中性子源は，構造が簡単かつ小型で安価，制御が容易などの特徴があり，爆発物探知や中性子イメージング用の可搬型中性子源としての利用が考えられている。我々は直線型IEC核融合中性子源を用い，重水素放電による中性子生成率10^9 n/secの達成を目標に研究開発を行っている。本報告では，これまでに得られた中性子源の特性について述べる。

1-153

直線型慣性静電閉じ込め核融合中性子源の解析

○長谷川 純・奥友航平・板垣智信・高倉 啓・河野俊之・堀田栄喜（東京工業大学）

直線型IEC核融合中性子源の最適設計のために放電プラズマ中の詳細な素過程を考慮したモンテカルロ(MC)計算を行い，放電条件と核融合反応率の相関を調べた．背景ガス圧の上昇に伴い核融合反応率は増加するが，重水素イオンおよび原子の平均エネルギーの低下のためやがて減少に転じることが分かった．IEC装置において核融合反応率を最大化するには，動作電圧を上げると同時に装置を小型化（電極間距離を小さく）することが効果的であることが分かった．

1-154

適合粒子細分化法を用いたParticle-In-Cellコードの開発

◎西田賢人・Setthivoine You・小野 靖（東京大学）・堀内利得（核融合科学研究所）

Particle-In-Cellシミュレーションは粒子をひとまとめに取り扱った超粒子によって運動論効果を効率的に取り扱うことができる．円筒座標系のPICシミュレーションを行う際は，径方向位置によって，粒子の体積要素が異なるため，重み付け粒子を用いたPICコードの適用が望まれる．一般に，電流や密度，エネルギーを保存しつつ粒子の細分化を行う手法として提案されている手法を改良し，二次形状関数においても適用可能な適合細分化法について，本講演では紹介する．速度分布関数を保存するために位相空間上での近接粒子をまとめて結合することにより，速度分布関数への擾乱を抑えている．講演では手法の詳細及び磁場反転配位への適用結果について述べる．

1-155

水平点灯用キセノンショートアークランプの三次元数値解析モデルの構築

○前中志郎（ユメックス）・田代真一（大阪大学）・B. Murphy Anthony（CSIRO）・藤田和宣（ユメックス）・田中 学（大阪大学）

水平点灯されるキセノンランプは、アーク流が浮力によって上方に傾き、蒸発した電極物質の付着による発光管内壁の黒化位置や発光管の温度場などに偏りが生じる。本研究では、本ランプの電磁・熱流体解析モデルをメインモデルに、輻射伝熱とタングステンの蒸発、輸送および付着のサブモデルを加え、さらに重力も考慮した3次元統合モデルを構築して、浮力がアーク流へ及ぼす影響を評価し、発光管の温度場や黒化位置などの偏りについて検討した。発光管内上部の平均ガス温度は、下部の約1.5倍となっていた。また、大部分のタングステン蒸気が発光管上部に付着するのが確認でき、実機で水平点灯されたランプにみられる黒化部分とよく一致していた。

1-156

高速レーザストロボ撮影によるプラズマ切断面における溶融鋼の挙動観測

◎飯田桂吾・竹中裕亮・大邊優太・上杉喜彦・田中康規・石島達夫（金沢大学）・山口義博・高田伸浩（コマツ産機）

プラズマ切断においてドロスが付着しない切断手法の実現が求められている。ドロスとは熱切断時に発生した溶融鋼が切断底面に流れ出し，切断溝底面に凝固・付着したものであり，ドロスが形成される過程や原因は解明されていない。筆者らはこれまで，ドロスの形成メカニズム解明のために，YAGレーザとバンドパスフィルタを用いたストロボ撮影によってアークプラズマ切断面における溶融鋼挙動の観測を行ってきた。本報では流動的な溶融鋼挙動の観測のために，より高フレームレートで撮影できるストロボ撮影システムを構築し，アークプラズマ切断面における溶融鋼挙動の観測を行った結果を報告する。

1-157

横風吹き付け時における外部磁界が及ぼす対流熱伝達の算出

◎真栄田義史・西澤翔也・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

ガスシールドアーク溶接法において，横風によってアークが偏向してしまうと，陽極側ではなく風下側にエネルギーが損失する。この横風によるエネルギーの損失を抑えるために，外部磁界を印加することでアークを中心に拘束することに着目する。しかし，現状では，アークを中心に拘束するのみの報告となっており，アーク内のエネルギーの輸送を可視化した報告は少ない。以上より，本論文では，横風吹き付け時における外部磁界が及ぼす対流熱伝達の算出を行った。結果として，Bex = 0.5 mTを印加した時には，軸中心部で軸方向のエンタルピーフローがピークとなった。これに対して，磁束密度を増加すると，径方向側にピークがシフトし値が減少した。

1-158

銀及び銅電極比較による真空アーク放電における電流遮断時の不安定現象の解析

○鎌田憲嗣・Narong Mungkung・Pakpoom Chansri（King Mongkut’s University of Technology Thonburi）・湯地敏史・木之下広幸（宮崎大学）・赤塚 洋（東京工業大学）

Vacuum circuit breakers have an issue of unstable current chopping phenomenon when the current is cut off. We modeled the cathode spot that ignores transition region in the collisionless sheath and collisional plasma region using eight equations with silver and copper electrode materials which presents low ionization tendency, and performed dichotomous simulation. The result showed that the changes in the work function at ambient temperature did not have great influence on the arc stability limit current both in the silver electrode and copper electrode. On contrary, the changes in the heat conductivity at ambient temperature affected greatly the arc stability limit current both in the silver and copper electrodes. Furthermore, we found out that the copper electrode showed unstable current phenomenon where no cathode spot is observed in the cathode ion sheath when the copper electrode is energized with current of 25A.

1-159

ステンレス製電界緩和シールドつき電極の真空アーク観測

◎近藤淳一・吉田 剛（東芝エネルギーシステムズ）・坂口 亙・浅利直紀（東芝）

真空バルブは真空遮断器に広く使用されているが，近年では真空断路器にも適用が拡大している。断路器は遮断器に比べ，絶縁信頼性が要求されることから，CuCr接点周辺にCuCr接点とは異なる材質の電界緩和シールドを設けることもある。一般に断路器には大電流を遮断する責務はないが，比較的小さい電流を遮断する必要がある。しかし，電界緩和シールドつきのCuCr電極構造における電流遮断時のアーク挙動は観測されていない。そこで，今回CuCr接点近傍にステンレス製の電界緩和シールドを設けたときの真空アークの観測を行ったので報告する。

1-160

縦磁界が及ぼす真空アーク陰極点の分裂時の挙動

高橋有沙・◎堀場祐哉・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

真空アーク陰極点は，陰極上を不規則に動き回る特徴を持ち，制御することが難しい。この解決のため，筆者らは，横磁界や縦磁界を用いて陰極点を制御することを提案している。本制御により，酸化膜の除去速度の高速化と除去面積の拡大が可能となり，表面処理の高効率化を図ることができる。しかし，この制御をするためには，陰極点近傍の物理現象の把握が必要である。本論文では，確実な移動制御の実現に向けた知見を得るために，縦磁界が及ぼす陰極点の分裂時の挙動の検討を行った。

1-161

横磁界変化時における真空アーク陰極点の移動軌跡

金田至功・◎竹田悠莉子・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

真空アークに横磁界を印加すると，「逆行運動」と呼ばれるフレミングの法則から予想される方向とは反対の方向に陰極点が移動する現象が多数報告されている。しかし，逆行運動する理論は，明らかになってはいない。本研究は，この解明に向けて，横磁界印加時における真空アーク陰極点の移動軌跡について検討した。

1-162

3次元電磁熱流体シミュレーションによる真空アーク陰極点の逆行運動の解析

◎山本真司・岩尾 徹・江原由泰（東京都市大学）

真空アーク陰極点は，金属表面の酸化膜を除去できるため，溶射前処理への利用が期待されている。しかし，陰極点の電流密度や移動速度が処理中に変化し，酸化膜の除去速度と陰極の溶融量が変化することが報告されている。このため，横磁界を真空アークに印加し，陰極点の挙動を制御することが行われている。しかし，磁界中の陰極点の移動過程は未解明な点が多く，さらに，同時に変化する電流密度や電圧，エネルギーバランスなどを解析した例は少ないのが現状である。本論文では，陰極から陽極に拡散する正イオンによる逆電流に着目し，3次元電磁熱流体シミュレーションを用いて横磁界中の陰極点の逆行運動を解析した。

1-163

N₂バブル付加絶縁油の交流破壊特性

◎蒲原聖也・高村紀充・荒岡信隆・前和田裕介・吉田貴紀・花井正広（福岡大学）

近年、マイクロバブルやナノバブルは注目を集めており、様々な分野で応用されている。しかし、気泡は液体絶縁材料において弱点となり破壊電圧が低下することが知られているため、高電圧分野での報告は見当たらない。一方、気泡をナノバブルにすることで新たな性質が現れる可能性がある。本論文では、バブル発生装置を用いてN₂バブルを付加した鉱油と付加しなかった鉱油の交流破壊電圧を調査し、比較した。N₂バブル付加した鉱油、付加しなかった鉱油の交流破壊電圧に大きな差はないことが確認され、気泡はマイクロバブルやナノバブルのサイズになると、絶縁破壊電圧にいたる際の弱点になりにくい可能性があることが示唆される結果となった。

1-164

気中長ギャップ放電による銅箔の放電痕調査

◎高根直也・荒岡信隆・高村紀充・水﨑雅之・竹元真樹・岡本隆平・花井正広（福岡大学）

風力発電機のブレードへの落雷による被害が多発しており深刻な問題となっている。雷のような放電がブレードなどの絶縁物を貫通するメカニズムは依然として解明されていない。そこで我々は放電が絶縁物を貫通する要因の1つとして考えている放電の圧力を調査している。本論文では平板電極上に銅箔で覆った圧力測定フィルムを設置し、電極間に負極性雷インパルス電圧を印加して放電を発生させる試験を行った。その結果、圧力測定フィルムを覆った銅箔の放電痕がサンプルごとに異なっていた。貫通して銅箔に穴があいたサンプル、円形状に銅箔が変色したサンプル、1つの円形状とその周囲に点状に銅箔が変色したサンプルの3種類が確認された。

1-165

空隙距離がポリイミド沿面のサージ火花放電開始電圧に与える影響

◎藤本博晃・川島朋裕・長尾雅行・村上義信（豊橋技術科学大学）

近年、制御性・効率性の観点からインバータ駆動システムの利用が回転機を中心として拡大している。インバータのスイッチングに起因するサージ電圧下における放電特性の調査が行われているが、それらのほとんどはモータ巻線を模したツイストペア試料等における結果である。一方、ポリイミド(PI)は絶縁性能に加えて耐熱性、機械的特性に優れる樹脂であることから、パワーモジュールの封止樹脂として用いられている場合がある。本研究では、サージ電圧下における沿面放電特性を把握するため、PI 表面の沿面火花放電開始電圧(FOIV)の電極間距離依存性を測定したので報告する。

1-166

トリー発生前および発生後における固体中部分放電による超音波の周波数スペクトル特性

◎井上俊介・姚 因龍・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

近年、高度成長期に大量投入された変圧器など機器が寿命を迎え、電力機器内外における絶縁物の劣化や接触不良による部分放電が発生する。この部分放電は放置すると絶縁破壊を引き起こし、事故、故障が発生する。そのため、絶縁破壊の前駆現象である部分放電を検出し、診断することが重要である。 本報告では電気機器内の欠陥を模擬した試料を用いて絶縁物内の欠陥およびトリーの発生、進展時における部分放電に伴う超音波の検出と周波数特性の検討を行った。

1-167

空気中チャネル加熱絶縁破壊における高導電率チャネルの軸方向進展

◎杉野一樹・浅野竜大・小島寛樹（名古屋大学）・米須大吾・小林金也・六戸敏昭（日立製作所）・早川直樹（名古屋大学）

大気圧空気中の短ギャップ不平等電界下では，針電極から複数の1次・2次ストリーマが対向電極に進展・到達した後，最短距離のチャネルに電流が流れ続けて加熱され，絶縁破壊に至るチャネル加熱絶縁破壊過程が存在する．この絶縁破壊は，温度上昇による導電率上昇・電流増大により引き起こされると考えられるが，特に，温度が比較的高い高導電率領域が，チャネル端部から放電チャネル中央に向かって進展し，つながることで絶縁破壊に至ると実験結果から推測されている．本論文では，放電チャネルをチャネル形状を考慮した温度依存性を持つ格子状の抵抗回路で模擬することで，チャネル内部の高導電率領域の軸方向進展過程を明らかにした．

1-168

真空中における長ギャップ絶縁破壊現象に関する検討

◎竪山智博・浅利直紀・塩入 哲（東芝）・近藤淳一（東芝エネルギーシステムズ）

本論文は、真空中におけるギャップ長と絶縁破壊電圧の関係を取得し、有効面積を用いて考察を行なったものである。真空チャンバを用いた雷インパルス試験を行い、CuCr電極の絶縁破壊電圧がギャップ長の約0.61乗に比例して増加する結果が得られた。このギャップ長特性が得られる理由を有効面積と絶縁破壊電界との関係を用いて考察し、以下のことが判明した。 (1)ギャップ長が10mm以下の短ギャップ領域では有効面積がギャップ長に対して大きく変化するため、ギャップ長をわずかに広げても絶縁破壊電圧は大幅に増加する。 (2)ギャップ長が20〜40mmの長ギャップ領域では有効面積が一定であるため、ギャップ長と絶縁破壊電圧は比例関係となる。

1-169

サージ電圧が絶縁体-空気-絶縁体電極系おける部分放電開始電圧に与える影響

◎高萩秀幸・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

筆者らは、金属-空気-絶縁体(MGI)電極系においてサージ電圧下の部分放電開始電圧(PDIV)より評価した空気の分担電圧(Va)は金属-空気-金属(MGM)電極系におけるサージ電圧下のPDIVに一致することを報告した。今回は絶縁体-空気-絶縁体(IGI)電極系を用いてサージ電圧下におけるPDIVを測定した。MGI電極系のSurge-PDIVから評価したVaはMGM電極系のSurge-PDIVと一致したが、IGI電極系のSurge-PDIVから評価したVaはMGM電極系のSurge-PDIVよりも高くなった。一方、DC電圧下では、電極系に関わらずDC-PDIVから評価したVaはMGM電極系におけるDC-PDIVとほぼ一致した。サージ電圧下のIGI電極系は他の電極系に比べ、初期電子の発生確率が低下するため、Surge-PDIVから評価したVaはMGM電極系におけるSurge-PDIVに一致しないこと示唆された。

1-170

直流極性反転時における空気中部分放電開始電圧(PDIV)の低下特性

◎高林享平・中根龍一・大久保 仁（愛知工業大学）

直流送電や電力貯蔵装置などの高電圧直流(HVDC)が導入されつつある．そのため高電圧直流絶縁性能の向上が必要である．その中で直流部分放電や絶縁破壊特性の解明が重要である．今回は直流極性反転時の部分放電開始電圧と帯電特性の相関性の検討をした．特に直流極性反転時においては固体絶縁物表面上に蓄積した逆極性直流電荷により部分放電開始電圧が大きく低下することが明らかとなった．

1-171

銅充填エポキシ樹脂の雷インパルス電圧破壊特性

◎山﨑翔太・荒岡信隆・高村紀充・井上大輔・古賀啓太郎・花井正広（福岡大学）

我々は、ZnO顆粒をエポキシ樹脂に充填した試料で電圧印加を行い、ZnOが動作したと思われる特有の電圧・電流特性を確認した。しかし、この特性がエポキシ樹脂層による影響の可能性が考えられる。 本論文では、銅顆粒を2、4、6 vol%の充填率で充填したエポキシ試料を作製し、樹脂中に埋め込んだ針対平板電極に正極性雷インパルス電圧を印加して、ZnO顆粒を充填した場合と同様の特有の電圧・電流特性を示すかについて調査した。その結果、銅顆粒の充填量を増加させるほど破壊電圧が低下する傾向であることが確認できた。銅顆粒の充填量が増加するほど針対平板間により多くの銅顆粒が存在し、顆粒間のエポキシの厚さが薄くなったためだと考えられる。

1-172

球対平板電極構成における超純水の雷インパルス絶縁破壊電圧特性の比較

◎大坪拓矢・高村紀充・荒岡信隆・日野雄太・蒲原聖也・別府拓哉・梅﨑寛人・花井正広（福岡大学）

我々はこれまで純水および超純水の絶縁破壊特性の調査を行ってきた。本論文では球対平板電極構成を用い、高電圧側と接地側の電極を入れ換えて、超純水の雷インパルス絶縁破壊電圧の極性効果について調査した。球対平板電極で昇降法による負極性雷インパルス電圧を超純水に印加し、その50%破壊電圧を比較した。平板電極に高電圧を印加した電極構成よりも、球電極を高電圧とした時のほうが50%破壊電圧は約10 kV低い結果となった。電界計算からも同様の結果を得た。このことから、超純水の絶縁特性において極性効果があることが示唆された。

1-173

小型多孔電極における真空中絶縁破壊電界予測手法の検討

大倉徹也・◎西山真史・山納 康（埼玉大学）・柏木美恵子・小島有志（量子科学技術研究開発機構）

臨界プラズマ試験用装置JT-60SAにおける負イオン源加速電極の絶縁設計指針を得ることを目的に，多孔電極のような不平等電界部をを有する電極に対して電極上の電界積分値を用いることで，真空中絶縁破壊電界を予測する手法について検討をおこなった。その結果，電界積分値の低減により，F-N理論に基づく電界増倍係数β，電子放出面積Aは小さくなり，電界電子放出電流が低減されるため，真空中の絶縁破壊電界が向上するという知見を得た。

1-174

気中放電によるPETフィルム貫通に及ぼす表面抵抗の影響

◎水﨑雅之・荒岡信隆・高村紀充・高根直也・岡本隆平・竹元真樹・花井正広（福岡大学）

我々はこれまで放電が絶縁物を貫通する現象について調査してきた。風力発電機のブレードの耐雷対策としてレセプタで受雷する方法があるが、レセプタによる受雷に失敗した場合、ブレードに着雷して放電がブレードを貫通してしまうことがある。そこで、我々は絶縁物の表面抵抗を低下させることで放電による貫通を防ぐことができるのではないかと考えた。棒電極の直下に未処理のPETフィルムを配置して負極性雷インパルス放電を発生させた場合は放電が未処理のPETフィルムを貫通したが、表面抵抗を低下させたPETフィルムを配置した場合は放電が貫通しなかった。このことから、絶縁物の表面抵抗を低下させることで放電が貫通しにくくなる可能性がある。

1-175

3D造形エポキシと注型エポキシの交流絶縁破壊特性に対する厚さの影響

◎別府拓哉・荒岡信隆・高村紀充・浪瀬雅也・浜野大輝・花井正広（福岡大学）

近年、3Dプリンタの技術が進歩を遂げたことにより、従来造形不可能であった形状と特性を持つ絶縁機器が実現できる可能性がある。そこで、本論文では光造形方式の3Dプリンタを用いて作製したエポキシ樹脂（3D造形エポキシ）と金型にて作製した従来通りの注型エポキシの試料について交流電圧印加時の短時間絶縁破壊特性を比較した。その結果、厚さ^t1.0 mmの3D造形エポキシと注型エポキシの絶縁破壊電圧に有意差は無く、 V₅₀の差は殆ど無かった。一方、厚さ^t2.0 mmでは、両者の絶縁破壊電圧に有意差が有り、注型エポキシのV₅₀の方が3D造形エポキシより約10%高い結果となった。

1-176

交流電圧印加時の平等電界における混合油（劣化鉱油とエステル系絶縁油）の絶縁破壊特性

○山本博法・黒田竜平・花岡良一・宮城克徳（金沢工業大学）

現在の油入変圧器に使用されている鉱油は、焼却時のCO2排出や漏油による土壌汚染など、環境問題が懸念されるため、環境循環型社会の構築に向けて、絶縁油を鉱油からカーボンニュートラル効果のある植物油（エステル系絶縁油）に変更した環境調和型の変圧器に注目が寄せられている。本研究では、劣化鉱油を植物油にレトロフィルした時を想定し、劣化鉱油と植物油（菜種油、PFAE、及び大豆）の混合割合を2：8としたブレンド油中の絶縁破壊電圧の測定結果について報告する。

1-177

パルス電界による酵母由来酵素抽出における印加回数の影響

◎齋藤周太・南谷靖史（山形大学）・杉浦敏行（天野エンザイム）

パルス電界のバイオ分野への応用が期待され研究が進められている。本研究では、パルス電界印加による酵母由来酵素の抽出を試みている。先行研究ではパルスを印加した試料液を菌が含まれたまま測定した場合、目標である物理的破砕よりも酵素活性値が高くなった。しかし、遠心分離により菌を取り除いた上清では活性値はほとんど出なかった。これより、印加によって酵素が露出するが細胞外に出ていないと考えた。よって本報告では印加回数を大幅に増加した場合の調査を行った。電界強度40 kV/cm、印加回数10000 shotsで約0.04 U/mLの酵素活性値が得られた。今後は印加回数、電界強度をさらに増やすことでさらなる収量の改善が見込める結果となった。

1-178

高電界パルスによって動物細胞に誘導されるROS産生

○亀崎太一・大西伸明・松林恭平・藤原祐介・勝木 淳（熊本大学）

本研究では、高電界パルスを印加したヒト子宮頚がん由来細胞（HeLa）における細胞内のROS産生について報告する。 先行研究にて報告されたROS産生因子である細胞外部カルシウムイオンと膜タンパク質であるNADPHオキシダーゼ（NOX）をそれぞれ阻害して、蛍光顕微鏡下で観察を行った。 10 µsパルスを印加した場合、電界強度に依存したROS産生が確認された。また、NOXを阻害した場合ROSが有意に抑制された。一方、外部カルシウムイオンを阻害した場合、非阻害条件と同様な電界強度依存的なROS産生が確認された。結果より、高電界パルスにより誘起したROS産生は細胞外部カルシウムイオンに非依存的であり、かつNOXが関与していることが明らかとなった。

1-179

ナノ秒パルス電界印加によるシロイヌナズナへの影響

○猪原 哲・白石将平（佐賀大学）

高電界ナノ秒パルス印加によるシロイヌナズナのDNA変異を調べるための予備実験として，ナノ秒パルス電界の発芽率への影響を調べた。発芽率のピークは印加電界200kV/cmでは76%、100kV/cmでは74%の発芽率だった。また，印加回数によって発芽率が50 %程度，まで減少することが分かった。

1-180

高電界パルスによる大腸菌殺菌に及ぼす増殖周期の影響

◎佐藤拓直・鈴木浩華・村上祐一・村本裕二（名城大学）

本報告では、大腸菌の細胞周期を注目し、高電界パルス印加が大腸菌の各増殖期(誘導期、対数増殖期、定常期、死滅期)に及ぼす影響を調査したので、報告する。 実験試料は、各増殖期の大腸菌を含む1.0×10-3 mol/L NaCl水溶液である。室温下で－3.6 kVのパルス電圧を印加した。印加回数は30回である。パルス電圧印加前後の生菌数をコロニー計数法によって測定した。パルス電圧印加後、全ての増殖期において殺菌されていることが確認できた。今回の結果では、対数増殖期が最も殺菌され易く、死滅期に最も殺菌されにくい、という結果が得られた。対数増殖期の菌は、盛んに分裂を繰り返しているために、他の増殖期に比べて殺菌されやすいことが示された。

1-181

人工細胞への高電界パルス印加に伴うイオン流動の可視化

◎島田雅治・永久智浩・大西伸明・勝木 淳（熊本大学）

高電界パルスを生体細胞に印加すると、脂質二重層の細胞膜に電界が集中し膜透過性の亢進（エレクトロポレーション）が起き、細胞内外の物質流動が生じて多様な生体応答を誘発させる。特に、カルシウムイオン（Ca＜sup＞2+＜/sup＞）の細胞内流入は、細胞死や増殖活性など重要な応答決定要因となっている。本研究では、リン脂質で構成された人工細胞（ベシクル）を用いて、Ca＜sup＞2+＜/sup＞貯蔵器官からの放出を無視した、エレクトロポレーションによるCa＜sup＞2+＜/sup＞流入の観察を試みた。ベシクルの作製は、エレクトロフォーメーション法、その前段階の脂質平面膜の形成にスピンコート法を用いた。ベシクル内のCa＜sup＞2+＜/sup＞流入の観測には、Ca＜sup＞2+＜/sup＞と結合して蛍光を発する試薬Fluo-8を使用した。

1-182

パルス電界印加によるウサギ精子の先体反応の誘導

◎白石将平・猪原 哲（佐賀大学）

パルス電界印加によるウサギ精子に対する先体反応誘導効果を調べた。その結果，パルス幅変化（49-90 ns）に対する，印加電界55 kV/cm、印加回数3,000回としたとき，先体反応を誘導する可能性が示唆されたが，高い生存率を維持する条件を見つける必要があることが分かった。

1-183

パルス高電界とマイルドな温熱を組合せた液体低温殺菌の高効率化に関する研究

◎片野景一郎・梶原大河・平川信二・前田達哉・渡邊将吾・勝木 淳（熊本大学）

【背景】近年の食品の品質への関心の高さから低温殺菌技術が求められており、パルス高電界と温熱を併用することで劇的に殺菌効果が高まることが報告されている。 【目的】PEFと温熱を併用する際に重要となる温熱処理の条件について考察する。 【方法】PEF印加中の温度と電界印加処理から温熱処理までの隙間時間の殺菌効果への影響について調査した。 【結果】電界印加中の温度を変化させ処理したところ、45℃より高い温度では全ての電界強度において、より殺菌効果が高められ、46℃付近で菌膜がゲル相から液晶相に変化（相転移）することが示唆された。また、隙間時間が長くなるにつれて殺菌効果が指数関数的に低下することを示した。 【結論】結果より、温熱とPEFを併用した殺菌方法においてPEF印加中の温度は菌の膜相転移温度以上にし、隙間時間は秒スケールでなるべく短くする必要がある。

1-184

乳酸菌の高周波パルス電界殺菌における温度の影響

◎法喜年哉・桑子将司・佐藤浩美・南谷靖史（山形大学）・中野 晃・横井愛加（一正蒲鉾）

パルス電界殺菌はパルス電界を細菌に対して印加することで物理的に細胞膜を破壊し殺菌を行うため非加熱で，食品の品質に悪影響を及ぼさず殺菌が可能である。また，包装状態で殺菌が可能であれば，消費期限の延長が見込める。そこで，我々の研究室ではパルス電界を包装食品の殺菌に使うことを提案している。本稿では高周波パルス電界殺菌の広範囲な食品への適用を目指し，低温加熱殺菌付近の温度，50℃から70℃におけるパルス電界殺菌の相乗効果を調査した。乳酸菌は70℃の温度でナノ秒パルス電界を印加することで4桁菌数を減少させることが出来る。また，50℃以上の温度で印加することでパルス電界印加との相乗効果が大きくなることがわかった。

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パルス大電力マイクロ波を照射した動物細胞の応答

◎主計俊哉・岸本健太郎・延塚公暉・Soowon LIM・勝木 淳（熊本大学）

大電力マイクロ波（High Power Microwave, HPM）は、数百MWから数GWレベルの強度を有するパルスマイクロ波を指す。このような高ピーク電力で低平均電力のHPMは非熱的な強電磁界による作用を伴うことから、新しい生体ストレス付与装置としての医療応用が期待される。本研究では、まず、大電力マイクロ波（HPM）発生装置である反射三極仮想陰極発振器を開発し、それにより生成したHPMパルスを癌細胞に照射し、フローサイトメータを用いて生体応答について調べた。

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仮想陰極発振器のマイクロ波変換効率改善に向けた電極形状の効果と共振器の多段化

◎丹羽郁弥・中村 吏・佐藤友哉・伊藤弘昭（富山大学）

仮想陰極発振器は高出力マイクロ波を発生させる装置の一つである。他の高出力マイクロ波源に比べ、仮想陰極発振器は構造が簡単でありながら、数十MWから数GWのマイクロ波発生が可能である点で優れている。一方で、電子ビームをマイクロ波に変換する効率はまだ数パーセントであり、実用化に向け十分なレベルに達していない。本研究では、効率改善に向けカロリーメータを用いてマイクロ波変換効率を評価し、電極形状の効果や共振器の多段化について調べたので、その結果を報告する。共振器を組み込む前の結果として、最大マイクロ波変換効率は1.1%の値が得られた。

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両極性パルス加速器におけるパルス重イオンビームのエネルギー評価

◎寺田匡志・朴木太郎・山本晃平・伊藤弘昭（富山大学）

半導体デバイス産業では高効率・小型・低損失のパワーデバイスや高周波デバイスとして炭化ケイ素（SiC）がシリコンに代わる半導体材料の1つとして期待されている。本研究ではSiCの新しいイオン注入技術であるパルスイオン注入法を提案してきた。この技術に向けて高純度のパルス重イオンビームが必要であり両極性パルス加速器の開発をしてきた。本発表は装置を改良して、飛行時間差法と固体飛跡検出器CR-39を利用した2通りでパルス重イオンビームのエネルギー評価を行った。CR-39を用いたエネルギー評価は飛行時間差法より正確なエネルギー評価ができたと考えられる。このエネルギー評価を用いた2段加速実験については、本発表にて述べる。

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マイクロ波によるカーボンブラックの燃焼における配置位置の影響

◎渡久地崇磨・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・豊角浩之・乾 貴誌（富士電機）

本研究では、マイクロ波によるカーボンブラックの燃焼実験を行い燃焼率と配置位置の関係を検討した。 実験装置はソリッドステート電源、同軸導波管変換器、3スタブチューナー、導波管、短絡板によって構成した。導波管内の寸法は縦幅54.6 mm, 横幅109.2 mmである。波長147.9 mmの定在波を発生させ、電磁界の最大地点とその中間にカーボンブラック2 gを入れたるつぼを配置し、マイクロ波を5分間照射した。燃焼率は照射前後のカーボンブラックの質量から算出した。 その結果、いずれの位置においても燃焼率は10 〜17 %であり、位置による顕著な差はみられなかった。カーボンブラックには電界で加熱される成分と磁界で加熱される成分が含まれていると考えられる。

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正・負極性ナノ秒パルス放電の進展様相

◎山口仁志・松尾達也・龍 輝優・王 斗艶・浪平隆男（熊本大学）

現在、非熱平衡プラズマを利用した環境改善技術は,盛んに研究が行われている。その中でも、ナノ秒パルス放電法は従来の放電法と比べて、高効率で排ガス処理とオゾン生成を行えることから新たな環境改善技術として期待されている。一方で、その放電の基礎特性は未だ明らかにされていない点が多い。よって本研究ではICCDカメラを用いて、正極性と負極性の印加電圧変化時のナノ秒パルス放電の様相と進展速度の比較検討を行った。その結果、ナノ秒パルス放電において、正極性電圧印加時の方が負極性よりも放電発光が強く、また電極間をより速い速度で進展していくことが確認された。

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ナノ秒パルス放電による生成オゾン濃度の時空間分布観測

◎安東弥香・田村隆二・王 斗艶・浪平隆男（熊本大学）

現在ナノ秒パルス放電でのオゾン生成は世界最高収率を達成している。しかし、オゾン濃度が約40g/㎥で飽和することが課題であり、幅広い分野での利用に向け更なる高濃度化が求められる。本研究では生成オゾン濃度が飽和する原因解明のため、同軸円筒型電極内のナノ秒パルス放電による生成オゾン濃度の時空間分布を紫外線吸収法により観測を行った。測定点を中心電極から4、19、34mmとし、オゾン生成能力の空間・時間依存性について調査を行った。

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Longitudinally Excited CO2 Laser Driven by Fast-High Voltage Solid State Switch

○Noor Shahira Masroon・Shigeyasu Ohashi・Masaya Tei・Miyu Tanaka・Hitoshi Nakano（Kindai University）・Kazuyuki Uno（Yamanashi University）

Longitudinally excited CO2 laser driven by fast-high voltage solid state switch has been developed, which consists of avalanache transistor circuit and series-connected of IGBTs. Simple, compact and affordable gas laser has been realized.

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可搬型半導体化IGに向けた電源回路方式の検討

◎金森靖仁・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

近年、様々な環境下でパルスパワー技術を利用可能にするためパルスパワー電源の小型化が要求されている。 本研究室では高繰り返し動作可能な半導体化IGを開発した。しかし、商用電源を昇圧しコンデンサを充電するため昇圧トランスが大型装置となる要因となっている。さらなる応用範囲拡大のために小型化が必要であった。 本研究では、非絶縁型DC-DCコンバータで昇圧を行い、コンデンサを充電した。これは高速スイッチングによりコイルのコアを小型化でき、安価に作製できるといった利点がある。また、屋外など商用電源が利用できない場合でもパルスパワーを利用できるよう12Vバッテリーから昇圧を行い、出力コンデンサを1kV充電することが出来た。