一般講演

6-001

電圧低下検出方式を採用した配電線短絡保護用柱上遮断器の開発

○日髙伸亮・牧 健太郎・伊藤秀隆（九州電力）・江頭諒一・中野好樹（戸上電機製作所）

6kV配電線において、末端短絡付近など短絡時の事故電流が小さく変電所の過電流継電器で検出できない区間は、柱上遮断器（Pole Gas Breaker:PGB）にて過電流検出閾値（OCR設定値）を設け、短絡保護している。しかしながら、分散型電源の大量連系に伴い、配電系統への逆潮流が増加しており、逆潮流がPGBのOCR設定値を超過する際は、OCR設定値の変更や系統切替等の検討が必要となる。 そこで、短絡電流が小さく変電所の過電流継電器で検出できない区間の短絡を確実に検出・遮断し、かつ逆潮流対策として、電圧低下検出方式を採用したPGBの開発を進めており、概要について報告する。

6-002

配電自動化機器の接地方式が雷サージ発生様相に与える影響

◎原 慎吾・石本和之・森 亮太・新井伸隆・浅川 聡（電力中央研究所）

配電自動化機器（自動開閉器、配電自動化子局）は，現在の配電系統の維持管理において，必要不可欠であるが，内部に多くの電子回路を有しているため，雷に対する脆弱性が懸念される。一方，配電自動化子局の雷故障の一因は，子局内部を雷電流が通過することによる避雷素子の耐量超過や配線の溶断であるとの報告がなされている。本研究では，配電自動化機器の接地方式が，雷撃時における自動化機器内への雷電流流入出様相に与える影響を実験的に検証し，その接地方式の違いにより，同機器内に流入出する雷電流が大幅に増減することを明らかにした。

6-003

電流変化率及び回復電圧の初期上昇率の抑制に及ぼす遮断タイミングの寄与

◎福岡玲央・山本真司・岩尾 徹（東京都市大学）

電力系統では，送変電事故は避けられない。このため，遮断器は，系統の保護機器として重要な役割を担っている。しかし，遮断器の開閉時に生じる系統電圧や電流の過渡現象は，開閉サージを誘発し，場合によっては遮断が失敗してしまうことがある。したがって，本論文では，遮断タイミングが遮断成功の確率の向上に寄与するとの仮説を立て，電流変化率及び回復電圧の初期上昇率の抑制に及ぼす遮断タイミングの寄与に関し，検討を行った。 本計算では，MATLAB/Simulinkを用いて解析を行った。 本研究では，電流零点までの遮断電流と，電流零点後の回復電圧を算出し，遮断の成否を判断するため，指標となる電流変化率（di/dt）と回復電圧の初期上昇率（dv/dt）を求めた。 結論として，遮断タイミングを遅らせることで，遮断に適した回路条件を明らかにすることができ，遮断成功の確率の向上が図られる結果が得られた。

6-004

高抵抗接地系における進み小電流遮断時の回復電圧に対する考察(1)

◎柳 康介・豊田 充（東芝エネルギーシステムズ）・腰塚 正（東京電機大学）

進み小電流遮断における回復電圧の値は、JEC-2300:2010及びIEC 62271-100:2017において、系統を有効接地系(直接接地系と低抵抗接地系)と非有効接地系(高抵抗接地系と完全非接地系)の2つに分類して規定されている。健全状態での遮断試験時の回復電圧は、相電圧に係数をかけた給与電圧で規定され、架空線の場合、有効接地系では1.2倍、非有効接地系では1.4倍の係数が規定されている。しかし、中性点に高抵抗を入れた高抵抗接地系の場合、進み小電流遮断時の回復電圧が、完全非接地系ほどには高くならないことが想定される。筆者らは、EMTPを用いて1回線の架空線の場合について系統解析を実施し、高抵抗接地系における遮断器極間回復電圧値は、通常の線路長の範囲では有効接地系におけるそれとほぼ同じ値となることを示した。

6-005

近距離線路故障遮断におけるダイオードを用いたTRV測定結果の換算の検討

◎澤田裕季・腰塚 正・松田敬介（東京電機大学）・池田久利・萩森英一（東京大学）・新海 健（東京工科大学）

日本短絡試験協会(JSTC)は遮断器の過渡回復電圧（TRV）測定系の不確かさについて検討を行っている。TRV波形は遮断器の遮断成否に影響するため、理想遮断器で電流遮断した際の回路固有のもので検討すべきであるが、実際には理想遮断器は存在しないため代わりにダイオードを用いて低電圧で計測されることが多い。しかし、ダイオードで電流遮断をした場合、ダイオードの順方向電圧降下の影響でTRV波高値などの大きさが変化し、固有TRVを得ることが非常に困難である。そこで、本報告では近距離線路故障（SLF）の三角波TRVとダイオード遮断の波形から理想遮断時への換算についてATP-EMTPによる解析から検討した結果を述べる。

6-006

DC-GISの絶縁特性: 金属異物トラップ装置の開発

◎安岡孝倫（東芝）・阿部裕太・椎木元晴・武井雅文（東芝エネルギーシステムズ）

近年、高効率な電力送電システムとしてHVDCが注目されている。その開閉器として直流用ガス絶縁開閉装置（DC-GIS）のニーズが高まっている。DC-GISの絶縁性能は金属異物が万が一存在したときの絶縁破壊特性に強く依存する。そのため、筆者らは金属異物を無害化すべく、異物トラップ装置を開発したので報告する。

6-007

非線形抵抗材コーティングによる耐金属異物絶縁性能向上に関する基礎検討

◎古井宏和・額賀 淳・廣瀬 誠（日立製作所）

ガス絶縁開閉装置に用いる絶縁物沿面に金属異物が付着した際の耐電圧を高めるために，沿面電界が閾値を超えると抵抗率が著しく減少する非線形抵抗材を絶縁物沿面へコーティングしたときの金属異物端部に集中する電界の緩和効果について検討した。非線形電界解析により，絶縁物沿面に非線形抵抗材をコーティングした場合には，付着金属異物端部における電界が約20%低減できることを確認した。エポキシ材の沿面に非線形抵抗材を塗布した試料に雷インパルス電圧を印加し，金属異物を付着させた場合の絶縁破壊電圧を測定した結果，約20％の耐電圧向上を確認した。

6-008

樹脂内の非線形抵抗材分布が絶縁特性に与える影響評価

◎藤田晋士・古井宏和・額賀 淳（日立製作所）

ガス絶縁開閉装置(GIS : Gas Insulation Switchgear)は，電力系統の保護や制御を担う重要な装置であり，高い信頼性が求められる。GIS内部に混入した金属異物は，印加電圧により浮上し，導体周辺の絶縁耐力を低下させるため，高信頼性確保の観点で，解決すべき課題の1つである。金属異物への対応として，非線形抵抗材を含む樹脂をGISタンク表面に塗布する方法が知られている。本報告では，樹脂内における非線形抵抗材の分布が浮上開始電界に与える影響を評価した。その結果，非線形抵抗材を表面改質し，樹脂表層に分布させることで，従来樹脂よりも浮上開始電界が向上することを確認した。

6-009

可変配合注型法によるポスト型誘電率傾斜機能材料の作製

◎落合健太・大石涼太・小島寛樹（名古屋大学）・満留 博・柳瀬博雅・岡本健次（富士電機）・加藤克巳（新居浜工業高等専門学校）・早川直樹（名古屋大学）

筆者らはGISスペーサの電界制御によるコンパクト化を目的とし，誘電率傾斜機能材料(ε-FGM)の実用化を目指している．今回，ε-FGMの作製方法として可変配合注型法を想定し，作製技術の検証を行った．その結果，シリンジポンプとスタティックミキサを組み合わせることにより可変配合注型装置を作製し，2種類のコンポジットの配合割合を連続的に制御・混合することに成功した．また，可変配合注型装置により作製したポスト型ε-FGMの比誘電率測定結果が目標とほぼ一致したことから，可変配合注型法によるポスト型ε-FGMの作製可能性を検証した．

6-010

導電率傾斜機能材料(σ-FGM)による沿面放電電圧向上効果

◎大石涼太・伊豆淳宏・小島寛樹（名古屋大学）・加藤克巳（新居浜工業高等専門学校）・早川直樹（名古屋大学）

ガス絶縁開閉装置(GIS)の電界利用率向上に向けて，導電率傾斜機能材料(σ-FGM)のGISスペーサへの適用を目指している．これまで我々は，導電性多層コーティングによるσ-FGM作製技術の検証と，GISスペーサ適用時の電界緩和効果の評価を行ってきた．今回は，導電性コーティング作製における層厚制御性の評価を行い，導電性ペーストの粘度とサンプルの引上速度により，層厚100 μm近傍において導電性コーティングの層厚を制御できた．また，導電性3層コーティングによるσ-FGM適用により沿面放電電圧が約10%向上することを実験および解析の両面から検証した．

6-011

電界特異性を回避した絶縁スペーサにおける誘電率傾斜機能材料の電界緩和効果

○加藤克巳（新居浜工業高等専門学校）・満留 博・柳瀬博雅・岡本健次（富士電機）・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

筆者らは、高電圧機器の電界制御によるコンパクト化を目的として、誘電率傾斜機能材料（e-FGM）の実用化を目指している。これまで、絶縁スペーサによって生じる三重点（TJ）が電界特異性を有する場合について、e-FGMによる電界緩和効果を検討し、その適用効果を原理的に検証した。しかし、実際の機器では、TJにおけるスペーサの角度を変えることで、電界特異性を回避することが一般的である。そこで今回、電界特異性を回避したスペーサにおけるe-FGMの電界緩和効果を数値電界解析によって検討した。その結果、e-FGM適用による電界緩和効果が得られることが確かめられた。

6-012

アルミパイプ母線系変電所の地震応答解析

永渕尚志・太田将史・郡司掛安俊・山口一徳（九州電力）・佐藤浩章・石丸 真（電力中央研究所）・○金森聡宏・久世裕子・村瀬成一（三菱電機）

平成28年4月に発生した熊本地震により震源地に近い変電所のアルミパイプ母線系で被害が確認された。単体機器の耐震強度に関しては国内の耐震指針であるJEAG 5003に基づいて確認しているが，各機器を組合せた状態での検討は未実施であった。JEAG 5003では機器の固有振動数で加振する擬共振法が適用されているが，変電所モデルのように固有振動モードが多数存在し相互に影響し合う場合は海外の耐震基準で適用されている加速度応答スペクトルを用いた方法が有効であるといわれている。そこでアルミパイプ母線系変電所に応答スペクトル法を適用し，その妥当性を確認すると共に，耐震性能を検討した結果について報告する。

6-013

パンタグラフ形断路器損壊メカニズムの解明および耐震性向上策

○永田清志・大山友幸・神田一彦（東光高岳）・山口一徳・永渕尚志・太田将史・郡司掛安俊（九州電力）・佐藤浩章・石丸 真（電力中央研究所）

2016年熊本地震では超高圧変電所の気中断路器が被害を受け，その中でも220kVパンタグラフ形断路器の損壊が目立った。先の地震では，機器応答が耐震設計基準(JEAG5003)を大きく超え同断路器の耐震強度を上回ったため損壊に至ったものと考える。このことを踏まえ，本研究では，220kVパンタグラフ形断路器についてデータ採取実験および地震応答解析を実施し，耐震性を詳細にレビューした。また，今後同規模の地震が発生した場合でも確実に電力供給できるよう，耐震性向上策を確立した。

6-014

変電所へのIoT導入に関する検討 -IoT機器の寿命評価-

○吉田昌展（中部電力）・西尾幸治（ラヴォックス）

製造業をはじめとした産業界ではIoTの導入による業務効率化やコスト削減が図られている。電力業界においてもIoTの導入が推進されているが、電力機器の寿命に対してIoT関連機器の更新時期が極端に短い場合には、かえって業務量やコストが増大する可能性がある。そこで、電子部品の故障実績をもとに、IoT関連機器の期待寿命を評価した。経年劣化による電子部品の故障は、使用年数8年程度から増大する傾向が見られ、IoT機器は電力機器と比較して短寿命である。とりわけ、アルミ電解コンデンサは経年劣化による故障が顕著であった。

6-015

145kV 大容量ガス絶縁開閉装置(GIS)の開発

◎久保田優人・池田芳輝・木佐貫 治・塚尾康宏・藤田大輔（三菱電機）

北米で需要の高い，63kAの短時間耐電流仕様機種として，145kV大容量GISを開発した。本機種は，大容量化の為の施策のほか，ユニット輸送，フレキシブル連結など最新技術を取入れている。本講演では，145kV大容量GISの適用技術の特長，および今後の国内適用拡大について報告する。

6-016

縮小形300kVGISの開発

○中内慎一朗・中村泰規・川東真人・芳友雄治・池田芳輝・清水芳則（三菱電機）

保守点検省力化，据付工期短縮のニーズに応えるため，ばね操作ガス遮断器（GCB），電動操作断路器（DS），フレキシブル連結機構，高抵抗避雷器を適用した縮小形300kV 4 000 A ガス絶縁開閉装置(Gas-Insulated Switchgear: GIS)を2015 年に開発・製品化を行い，平成28 年度電気学会全国大会にて報告を行った。引き続き平成29 年に同コンセプトの300 kV 6 000 A GIS の開発により，縮小形300 kV GISのシリーズ化を完了したため，基本構成，特長，検証試験結果を報告する。

6-017

縮小型海外向け24kV C-GISの開発

◎星 和祐・菊地徳明・松澤祐介・佐藤潤一・長竹和浩・鶴田豊久・小林 徹（明電舎）

当社では、24kV C-GISシリーズをシンガポール向けに納入している。従来器は定格電流1250A/800Aで共通化していた。今回、800A限定仕様として小型・軽量化機種を開発した。また、本開発において、絶縁・温度・強度設計の各解析を実施し、最適化を図った。通電時の温度上昇検討へは熱流体解析を用いたので紹介する。

6-018

77kV GIS－Tr間ケーブル母線システムの実用化

○加藤寛隆・丸山英之・佐藤浩正・森口至郎（昭和電線ケーブルシステム）・小濱佑弥（中部電力）

現在、変電所で使用されている77kVガス絶縁開閉装置と変圧器の接続方式として、コスト面、設置スペースなどが有利なことから直結型が採用される場合がある。しかし、不具合などの緊急時に機器を切り離す場合、ガスや油の処理が必要となることから、復旧に時間を要するという点が懸念されていた。そこで、現状のスペースを確保し、事故時の早期復旧が可能な、ケーブル母線システムを実用化した。今回、電力会社殿の変電設備に初採用され、運転を開始したのでここに報告する。

6-019

550 kV GIS用ポリマーガスブッシングの劣化調査結果

◎佐藤光馬（三菱電機）・久世直樹・室田 勇・竹田正史（北陸電力）・日下義浩・大塚卓弥・笹森健次（三菱電機）

ポリマーガスブッシングは超高圧クラス以上の設備への適用例が限られており、フィールドにおける諸特性の経年変化に関する報告は少ない。今回、北陸電力中能登変電所の据付後経年12年となる550 kV GIS用ポリマーガスブッシングの外観状態、ゴム硬度、撥水性・撥水回復特性、表面汚損度(ESDD,NSDD)、漏れ電流、絶縁抵抗、水分透過量を評価し、当該器の劣化状態を調査した。その結果、据付初期、経年6年時と比べて顕著な劣化兆候は見られなかったが、表面汚損度の部位依存性、外被ゴムの硬化傾向を反映する結果が得られたので、これら調査結果について報告する。

6-020

77kV初期形GISのOリング劣化評価

◎小山公一（日立製作所）・坪井清浩（中部電力）・村田政文（関西電力）・前田誠次（九州電力）

(株)日立製作所の77kV GISは1969年に相分離形（以下，初期形GIS），その後1976年に全三相一括形，1986年には縮小形が開発され現在に至る。初期形GISが導入されてから45年以上経過しており，高経年GISに対する寿命見極めが重要な課題である。劣化度を把握するため，初期形GISの解体調査を実施した。うち今回はOリングの劣化評価に関して報告する。

6-021

ポリマーガスブッシングの電磁両立性試験に関する考察

○加川博明・塚尾茂之（東京電力パワーグリッド）・甲斐善丈・酒井啓資（日本ガイシ）・小池 徹・松本詠治（東芝エネルギーシステムズ）

現在，電協研第72巻第4号の発刊以降，GCB・GIS用やTr用のガスブッシングを始めとしてポリマーブッシングの適用が拡大してきている状況を踏まえて，JEC-5202「ブッシング」においても，従来の磁器がい管ブッシングとポリマーブッシングを一体とした規格体系とすべく改定作業が進められている。この中で，同電協研の検討結果を踏まえて，ポリマーブッシングの場合はコロナ放電の発生に伴う外皮ゴムの劣化を懸念し，定格電圧クラスに関わらず，形式試験として可視コロナ試験を規定する予定である。 一方，改定版のIEC 60137:2017において，タイプテストとして「電磁両立性試験：Electromagnetic compatibility tests (EMC)」のうち，「エミッション試験：Emission test」が新たに規定されたことから，改定版JECにおいてもこれに伴う対応が求められている。 そこで今回，同電協研が発刊されて以降に開発が完了した550kVおよび300kVのGCB・GIS用ポリマーガスブッシング（電協研対応品）を対象に，EMC相当の試験となる部分放電試験，ラジオ障害電圧の測定，可視コロナ試験の結果について評価した内容について報告する。

6-022

ラッチ式6kV自動真空開閉器(800A)の開発

◎稲永健太郎・穴見直也・田中 将・川路恭彦（九州電力）

これまで，6kV柱上開閉器はコンパクト化のため，絶縁性能および消弧性能に優れたSF6ガスを封入したガス開閉器を使用してきたが，環境負荷物質であるSF6ガスの削減およびコスト低減を目的として，SF6ガスを使用しない真空開閉器（800A）を開発した。 真空開閉器の構造は，筐体内部を気中絶縁とし，接点部に真空バルブを用いた。 また，電圧負荷管理や事故区間特定等の状態監視を行うため，既存ガス開閉器と同様にセンサー（PD，CT，ZCT）を内蔵し，性能についても既存ガス開閉器を踏襲した。 本開発品はガス開閉器（800A）の後継機種としてH30年度からの導入を計画している。

6-023

電界緩和シールドリング高さの違いによる円筒型絶縁体の真空中帯電特性

◎藤田一誠・山納 康（埼玉大学）・山本 修（元京都大学）・福田英昭・石川啓太・山村健太（明電舎）

真空遮断器の小型化・高電圧化において、遮断部である真空インタラプタの絶縁物表面において帯電を伴って発生する沿面放電が問題となっている。沿面放電・帯電抑制方法の一つとして電界緩和シールドが適用されているが、これを最適に設計するには絶縁物の帯電特性の把握が重要である。本研究では、真空インタラプタを模擬したシールド付き円筒型絶縁体試料に交流電圧を印加し、シールドの高さが帯電分布に与える影響について調査した。結果、トリプルジャンクションの電界緩和効果が最も弱い試料の正帯電が大きかった。また、シールド端部の高電界でも正帯電が形成されることから、シールドを適切な高さに設計する必要があることが示された。

6-024

水晶振動子を用いた真空中絶縁壁の汚損量測定

◎竹松俊彦・道念大樹・糸谷孝行・古賀博美（三菱電機）

真空遮断器に使用される真空バルブには、電流遮断時に発生する金属溶融物の付着による絶縁管内壁の汚損を防止するためアークシールドが設けられている。真空バルブの小型化、高耐圧化の上で汚損量を適切に制御することが重要な課題の一つであり、アークシールドの最適設計にあたり汚損過程を理解する必要がある。 本研究では微量な質量計測が可能な水晶振動子法を用いて、汚損量を定量的に測定できる試験系を構築した。また、同試験系を用いて電流極性や放電電荷量と汚損量の関係について調べた。

6-025

真空開閉器用接点材料の遮断性能簡易評価法

◎道念大樹・谷原康友・高井雄一・越智 聡（三菱電機）

真空開閉器用の接点開発において、遮断性能のスクリーニングを高効率・高精度に行う評価法は近年でもしばしば関心を引くテーマである。本報告では、簡易な直接試験回路を用いて短時間で評価可能な試験方法について報告する。

6-026

大電流遮断時のスパイラル電極の温度分布評価

◎大坊 昂・丹羽芳充・坂口 亙・浅利直紀・今澤優子（東芝）

真空遮断器の真空バルブでは遮断時のアークで電極表面が加熱される。電極温度は遮断性能に影響を与えると言われているが、アークが高速で回転するため、電極表面上の温度分布評価が十分進んでいない。そこで本論文では、アーク柱の挙動からスパイラル電極の温度分布の算出方法を検討した。窓付き真空チャンバーに一対のスパイラル電極を入れ、遮断試験を実施してアークを観測した。アーク柱が触れているときにエネルギーが入力されていると仮定し、温度分布を算出した。遮断合否で温度分布を比較したところ、遮断失敗時は、成功時に比べて温度分布が不均一で、最高温度が高いことがわかった。

6-027

Field Emission Voltage of 72.5 KV Vacuum Interrupter with Shield Potential Control

◎Yusuke Nakano・Volker Hinrichsen（Technische Universität Darmstadt）

Internal field strength on electrode and distribution of vacuum interrupters (VIs) are important elements for its design. A vapor shield of a VI is a factor for the determination of the electric field strength on the contact edge as well as the field distribution inside the VI. By giving the vapor shield a well-defined electric potential, the impulse breakdown voltage can be increased. The present study shows a field emission measurement of potential-controlled VI under AC voltage. As a result, field emission voltage can be increased with vapor shield potential comparing with the floating potential case.

6-028

大電流真空アークにおけるCuCr縦磁界電極のアークエネルギーおよび表面温度の測定

◎加藤和也・諏訪晃弘・松井芳彦・石川啓太・長 輝通（明電舎）

真空遮断器（VCB）は、保守点検の容易性、電流遮断部に地球温暖化ガスであるSF₆を使用しないことから、高電圧大容量化が期待されている。大電流真空アークにおいては、高密度のアークエネルギーが電極表面に注入され、電極接点材料が溶融する。このため、電流遮断直後の電極表面状態は遮断性能に大きく影響していると考えられる。そこで、VCBの高電圧大容量化に向けた各電極材の基礎的なデータ取得を目的に、測定設備を立ち上げた。本稿では、第一ステップとして、大電流遮断時における銅クロム（CuCr）縦磁界電極の表面温度を測定し、アークエネルギーと表面温度および溶融持続時間の関係を調べた。

6-029

真空中陽極加熱絶縁破壊領域におけるコンディショニングと電極初期表面状態の関係

◎野田昌嗣・大木駿士朗・小島寛樹（名古屋大学）・福田英昭・榊 正幸（明電舎）・早川直樹（名古屋大学）

真空中において陽極加熱絶縁破壊が主体となる条件で，電解研磨の有無により初期表面状態の異なる2種類の電極に対してスパークコンディショニングを施し，陽極加熱絶縁破壊領域におけるコンディショニング特性と電極初期表面状態の関係を検討した．陽極加熱絶縁破壊が主体となる領域では，コンディショニング飽和時の50%破壊電界(Esat)は電極初期表面状態にほぼ依存しなかった．この結果から，陽極加熱絶縁破壊は陽極の溶融が絶縁破壊の起点であるため陰極表面の溶融が小さい放電電荷量抑制時においてもEsatは陰極初期表面状態にほぼ依存しないと考えられる．

6-030

真空ギャップ中微小粒子挙動のモンテカルロシミュレーション

◎江尻 開・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・道念大樹・小倉健太郎（三菱電機）

中電圧階級で広く用いられる真空遮断器の高電圧階級への適用のためには、ギャップ中に存在する微小粒子による絶縁破壊電圧低下の抑止方法を明らかにする必要がある。本稿では、微小粒子除去手法の確立を目的として、微小粒子が電極間を往復し、電極から除去される過程をモンテカルロ法によりシミュレートした。その結果、混入の恐れのある金属や絶縁物の微小粒子の挙動は、微小粒子の材質により大きく異ることが明らかになった。特に、絶縁物の微小粒子は金属の微小粒子と比較してギャップ間から除去されるまでに要する時間が非常に長く、絶縁耐力を大きく低下させるため特に混入への対策が必要であることがわかった。

6-031

各種高分子製ノズルにおける電流遮断過程のアークパラメータ

◎富沢文基・小林隆典・大丸智弘・清滝和雄（日新電機）・横水康伸（名古屋大学）

電力用ガス遮断器のノズルには，一般的にPTFE (poly -tetrafluoroethylene)が使用されている。電流遮断時において，アークの熱エネルギーによってノズルが溶発してアークに混入するため，電流遮断特性に影響を与える可能性があり，その程度はノズル材料の組成に依存すると考えられる。本稿では，PTFEに加えて新たに3種類の高分子材料でノズルを製作し，遮断性能と密接に関連するアークコンダクタンス及びアークパラメータを評価した。その結果、新たに製作した3種類の高分子材料でのアークコンダクタンスはPTFEよりも小さく、アーク損失はPTFEよりも大きくなることを確認した。

6-032

珪砂中でのPA66円筒配置による直流アーク電圧上昇効果—2種類の電極間距離での測定—

◎高橋明里・南 翔太・横水康伸（名古屋大学）・近藤祐介（太平洋精工）

本研究は，ヒューズによる直流遮断に関して，遮断時間の短縮および遮断容量の向上を目指している。筆者らはこれまでに，アーク電圧上昇手法の試みとしてPA66製円筒を電極周辺に配置し，珪砂封入空間でのアーク電圧を測定してきた。本稿では，電極間距離を15 mmおよび30 mmの2種類に設定して，アーク電圧上昇効果の検討を行った。 珪砂中にPA66製円筒を設置することでアーク電圧は高まった。さらに電極間距離が長くなるほど，その効果は高まることがわかった。

6-033

アーク分光手法によるガス遮断器の電流零点近傍の温度計測

◎作山俊昭・小林浩之・白石勝彦・浦井 一（日立製作所）

ガス遮断器においては，電源増強による短絡容量増大から，遮断電流が増加する傾向にある。大電流化により電流傾度が大きくなり，より過酷な遮断責務となる近距離線路故障遮断においては、電流零点近傍の遮断のプロセスをより詳細に解明することが必要となる。本報告では，小形モデルを用いて遮断試験と同時にアークの分光計測を実施し、熱的遮断性能の遮断成否に対する電流零点近傍の温度変化について詳細に把握することができた。

6-034

多方向アーク発光観測とトムソン散乱法によるアーク内電子密度・温度の空間分布計測

◎竹中章太・米田宗次・富田健太郎・内野喜一郎（九州大学）・中野智之・出村雄樹・田中康規（金沢大学）

電力用開閉装置の一つであるガス遮断器（GCB）の開発では、数値解析技術への期待は大きい。しかし数値解析を裏付けるアーク状態の実計測データは乏しく、精密な計測によるアークプラズマのパラメータ（電子密度・温度）の計測データ蓄積が求められている。本研究ではアーク現象の理解のために、最も基礎的な過程であるフリーリカバリ状態でのアーク減衰過程における電子密度・温度の径方向分布および時間進展把握を、レーザートムソン散乱法（LTS）や自発光観測を中心に行っている。LTSと同時に多方向からアーク位置を観測することで、アーク径方向の電子密度・温度の詳細な分布を得ることができている。

6-035

アーク電位および通電領域半径の非接触測定法開発に向けた検討

◎南 翔太・横水康伸・松村年郎（名古屋大学）・真島周也・内井敏之（東芝）

消弧ガス吹き付け遮断器において，ノズル内アークの状態は，急速な過渡変化を示し，遮断性能に大きな影響を与えている。筆者らは，アークの状態を非接触にて測定することを目指している。これまでに，電位と通電領域半径の同時測定手法を提案し，アークの代わりに抵抗素子を対象とした測定を行ってきた。本手法は，4つの導体を測定箇所周辺に配置する手法である。本報告では，抵抗素子が両導体の中点からy方向にずれた場合に関して，電位および通電領域半径の測定を行った。その結果，抵抗素子がずれた場合でも，被測定部の電位を計測することに成功した。また，ずれが3 mm以下であれば，推定される径は抵抗素子半径にほぼ等しい値を示した。

6-036

燃料中に浸漬されたDCモータにおけるブラシ・整流子片の開離プロセスでの接触電圧の検討

◎福塚隆司（デンソー）・横水康伸・大島和也（名古屋大学）・浅井洋光（デンソー）

発表要旨 CO2排出量低減の観点からアルコール燃料の適用が進んでおり，燃料の圧送はブラシ付きDCモータが用いられる．ブラシと整流子片間で整流する際にアーク放電が発生し，その損傷が寿命を左右する．本研究では，エタノール環境下ではガソリンに比べ，残留電流が大きくなりアーク放電が大きくなる現象に対して，燃料種の変化が接触電圧の上昇を導く傾向を明らかにし，その電圧増加は接触抵抗の変化に依存することを見出した．接触抵抗の変化は接触面積が変化することにより，抵抗増加を導くことから，燃料物性や摺動形態が寄与するものと考えられる．

6-037

ブラシ・整流子片開離過程における接触電圧の過渡推移に関する検討

◎大島和也・横水康伸・福塚隆司（名古屋大学）

直流モータでは，アーク放電がブラシと整流子片との間に発生することがある。アーク放電の発生はブラシ損耗現象の起因となる。これまでに，筆者らは，ブラシと整流子片を模擬した装置を製作し，その開離過程において接点間電圧と瞬時電流の時間推移を測定してきた。その結果から，接触抵抗の上昇によって，ブラシ電流は減少し，さらにアーク点弧時の電流瞬時値が左右されることを見出した。本稿では，ブラシ・整流子片開離過程において，接触部の温度分布および接触電圧の理論計算を試みたので，報告している。算出した接触電圧は，同一条件の実験で測定された波形と概略一致した。さらに，接触電圧の支配要因に関して，接触抵抗を分離することで考察を行った。

6-038

低圧直流遮断時における回路インダクタンスとアークコラム電圧に関する検討

◎長谷川知帆・奥田浩基・藏地康佑・津坂亮博・松村年郎・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・宮本淳史・伊藤裕幸（日東工業）

直流対応の配線用遮断器では，アーク電圧の増大によって電流を限流し，遮断を行っている。しかし，直流アークの限流遮断現象は十分に解明されていない。 筆者らは，電源電圧DC120 Vで遮断すべき直流電流を5 〜80 Aとし，簡易アーク消弧装置の限流遮断過程におけるアーク電圧と電流を測定した(1)。本稿では，その測定結果から回路インダクタンスによるアークへの影響について検討を行った。その結果，本稿の実験条件において，少なくともL=3.3 mHを接続し，回路時定数を大きくしたとき，アークはその影響を受け，遮断に要する時間が変化することが確認できた。

6-039

低圧直流アーク消弧過程におけるアークパラメータ推定に関する一検討

◎津坂亮博・奥田浩基・藏地康佑・長谷川知帆・松村年郎・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・横水康伸（名古屋大学）

筆者らは，直流アークの消弧過程の解析を進めている。今回，Mayrなどのアークモデルの基本に基づいて，新しいアークパラメータの推定方法を試みたので報告する。 Mayrモデルにおけるアークパラメータである，アーク時定数とアーク損失の両者が，それぞれ時々刻々変化するものの両者の積が一定の値Qを持つと仮定して推定を行った。 遮断電流が異なっても，推定したアークパラメータと電流の関係を見ると，アークが消弧される直前において同じような波形となることがわかった。

6-040

チューブ内の液体中直流アークの基礎特性

上野晟也・堀越信平・小出真平・谷口 淳・高畔竜太・○新海 健・高木茂行（東京工科大学）・腰塚 正（東京電機大学）

高電圧直流送電の主回路用遮断器への適用を目指し、液体中のアークの限流効果を研究している。本報告では、液体中のアークの周囲に樹脂製チューブを設けて器壁安定化し、よりアーク抵抗を上昇できないか検討した結果について述べる。ハイドロフルオロエーテル中で内径15mmのチューブを設けた場合に最も高いアーク電圧が得られ50mmギャップで3kV程度、消弧ピークでは6kVとなった。

6-041

気中高周波アークに関する検討

◎田中僚一・腰塚 正（東京電機大学）

遮断器によるリアクトル開閉時において高周波のアークが発生することがある。この高周波アークは電力機器の破損など様々な影響をもたらす。しかし、この高周波のアークについて実測に基づき検討した例は少ない。本論文では空気中に発生するアークについて実測に基づく基礎的な検討を行ったので、その結果を報告する。

6-042

遺伝的アルゴリズムを用いたガス遮断器動作解析用工学的アークモデル

◎今澤優子・内井敏之・森 正（東芝）

ガス遮断器の動作解析には，アークによる熱入力やノズルアブレーションによる質量入力を模擬するアークモデルが必要である。しかし，アーク現象は非常に複雑な現象であり，消弧室のディメンジョン設計を効率よく行う場合には，厳密な物理モデルではなく計算負荷が少ない工学的モデルの方が適している。本研究では，経験則に基づいて3つの工学的アークモデルを立式し、モデル中の定数を遺伝的アルゴリズムにて最適化することで工学的アークモデルの構築を試みた。最適化したパラメータ値を用いて開極ストロークとガス圧力の解析を実施し、本アークモデルにて開極特性および圧力上昇の様子を精度よく表現できることを確認した。

6-043

ガス遮断器の排気特性評価法の検討

○寺田将直・浦井 一（日立製作所）・横水康伸（名古屋大学）

ガス遮断器は高温ガス流が形成されるため，大容量かつコンパクトな機器要請の元では，絶縁性能の低下が懸念される。絶縁破壊回避の構造を設計するためには熱ガス流解析による各部の温度見積もりが必要となる。熱ガス排気特性を最小限の計算コストで評価するため，1次元アーク解析で高温ガス発生源の遮断部を2次元熱ガス流解析で排気部を模擬して，境界条件を介して連携させる解析ツールを構築した。本手法を実器解析に適用し，排気処理空間からタンク側，電極側の2方向への排出温度を臨界電界から決まる閾値以下とするような，最小の排気容積を見出した。本構造での遮断試験の結果，地絡を回避することができ，評価手法の有効性を確認した。

6-044

SF6ガス絶縁電力機器の空気による内部アーク代替試験法の検討—SF6ガスを空気で代替する場合の電流値の設定方法—

◎神足将司・田所 兼・田中慎一・岩田幹正（電力中央研究所）

SF6ガス絶縁電力機器の内部アーク試験では，機器の初期充填ガス圧力値に，内部故障に起因するガス圧力上昇値を加えた最終圧力値を把握し，アークに対する筺体などの耐圧性能などを評価する場合がある。その際，関連規格に基づき，SF6ガスを空気に置き換えて試験を実施する場合があるが，圧力上昇現象などの等価性を担保する電流値などの試験条件の決定には至っていない。そこで，本稿では，放圧機構が無く，初期充填ガス圧力値が0MPaGのSF6ガス絶縁電力機器を対象とし，アーク発生時の空気とSF6ガスにおける最終圧力値の差異，および銅電極の空気またはSF6ガスの圧力上昇最大値のアークエネルギー依存性から，SF6ガスを空気で代替した場合の電流値の設定方法を提案した。さらに，その設定方法の妥当性を実験的に検証した。

6-045

ポリアミド6噴流によるホットガス冷却効果の数値解析的検討

◎田畑 裕・中川拓也・中野智之・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・浅沼 岳・恩地俊行（富士電機）

配線用遮断器には，短絡事故時に短絡大電流を遮断する必要がある。 このとき，遮断器の排気口から高温・高導電性のホットガスが噴出する。 このホットガスにより相間短絡，地絡事故など二次的波及事故が誘発される可能性がある。 これらの二次的波及事故を防ぐためにはホットガスの温度，導電性を迅速かつ十分に低下させることが不可欠である。 本稿では，ポリマー噴流によるホットガス冷却効果を数値解析的に検討した。 円筒形状のホットガス冷却経路を仮定し，経路内に溶発材として円環状ポリマー材を配置した。 経路内へホットガスを模した高温空気を流入させ，ポリマー溶発が生じた場合について，排出ガスの温度分布とポリマー蒸発蒸気分布を評価した。

6-046

CO₂/O₂/C₅F₁₀O(C₅ PFK)吹付け定常アークの電磁熱流体解析

○出村雄樹・中野智之・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

ガス遮断器にはアーク消弧能力が高いSF₆ガスが用いられているが、その地球温暖化係数が非常に高く、使用量の削減が望まれている。 近年では、CO ₂とフルオロニトリル(PFN)の混合ガスやCO₂/O₂とフルオロケトン(PFK)の混合ガスが代替ガスとして注目されている。 そこで、筆者らがこれまでに構築してきた局所熱平衡を仮定したモデルを用いて、CO ₂および10%C₅F₁₀O+80%CO₂+10%O₂吹付け定常アークの電磁熱流体解析を行った。 軸方向位置z=78 mmの中心でアーク温度を比較した結果、10%C₅F₁₀O+80%CO₂+10%O₂吹付けアークのほうが定常電流が50 A、100 Aの場合は400 Kほど低く、500 Aの場合は100 Kほど高くなった。

6-047

Cu電極の蒸発を考慮した大電流空気アークの電磁熱流体解析モデルの構築

◎竹島 徹・松島智也・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

高エネルギーアーク損傷（HEAF; High Energy Arcing Fault）と呼ばれる大規模アーク放電事故が，国内外の原子力発電所の電気設備などで発生する場合がある。HEAFにより発生する高い圧力や熱流束は，電源盤・配電盤自身などに大きな損傷を与える。HEAFの規模や挙動を明らかにするためには，理論数値解析的に大電流空気アークの基礎特性を明らかにすることが有効である。HEAFによるアークには，金属蒸気が混入する。このため，本モデルにおいては金属電極間に生じた大電流空気アークを対象とした。ここでは電源盤，配電盤等の材料に用いられるCuが蒸発することを考慮して空気アークプラズマの電磁熱流体解析を行った。アークの温度変化，ガス流場などを明らかにした。

6-048

ガス遮断器の回路－電磁場－熱流体連成解析

○榎並義晶・高尾宣行・磯崎 優（富士電機）

SF₆ガス遮断器の遮断性能を評価するために構築した電気回路・電磁場・熱流体の連成シミュレーション技術について、軸対称電流が作る2次元磁場の計算方法を述べるとともに、定格電圧145kVのガス遮断器で電流36kA、周波数50Hz、アーク時間18.3msの90％近距離線路故障を想定した場合の実測結果と計算結果とを比較した。 アーク電圧や電流零点付近でのコンダクタンスは実測に近い挙動を再現でき、電流零点付近でのコンダクタンスを用いて遮断性能を評価できることを確認した。熱パッファ室の圧力上昇もほぼ一致したが、圧力上昇のピーク後の減少速度が遅い点は今後の改良課題であることが分かった。

6-049

高温SF₆ガスプラズマに対する光選択吸収体を用いた輻射冷却方式に関する研究

◎津田慎一郎（東北大学）・堀之内克彦（三菱電機）・湯上浩雄（東北大学）

本研究では、高温ガス媒体の輻射冷却手法を提案している。この手法はガスの選択吸収特性にマッチングした光選択吸収体を介した輻射熱抽出を利用したものである。我々はモデルとして、高温ガス媒体の高効率な冷却が必要なガス遮断器におけるSF₆ガスプラズマに着目した。我々が実施した理論解析によって、ガスの紫外-近赤外選択吸収特性にマッチングした吸収特性を有するフォトニック吸収体が高温ガスプラズマから効率的に熱を引き出し、それによって、実作動条件において、黒体表面および金属表面を用いた場合と比べて輻射平衡ガス温度を最大で1270K低下させることが出来ることを明らかにした。

6-050

高温SF₆ ガス中の衝突反応に関する反応速度係数の妥当性検証

◎小島勇輝・横水康伸・石井達也・村北慶輔（名古屋大学）

電力機器において高温ガスが形成されると，電界印加下では，その高温ガスを通じて誘電破壊に至ることがある。微視的な機構からみると，電界印加により加速された電子がガス中の粒子に衝突し，電離・付着といった衝突反応を起こす。これらの反応に伴い電子なだれが成長することで誘電破壊に至る。ここで，衝突反応の回数は，反応速度係数kを用いて表される。つまり，kは誘電破壊現象の解明にあたり，重要な物理パラメータとなる。筆者らは，温度300-3000Kの高温SF₆ガスを対象とし，衝突電離・電子付着反応に関するkを導出してきた。本稿では，導出されたkの結果について文献値と比較することで，妥当性を検証した。その結果，筆者らが導出したkのデータは妥当であると判断した。

6-051

PTFE/BN溶発蒸気が多量混入した高温SF6ガスの臨界電界に関する基礎検討

◎石井達也・横水康伸・小島勇輝（名古屋大学）・寺田将直・浦井 一（日立製作所）

ガス遮断器のノズルに用いられているPTFEおよび添加剤BNが，大電流遮断過程でアークによって溶発し，その溶発蒸気が高温SF6ガスに混入することが考えられる。高温ガスの諸特性の一つである臨界電界は，そのガスの高温下での絶縁耐力を示す有用な基本量である。 そこで，本研究では，PTFE/BN蒸気が混入した高温SF6ガスを対象として，実効電離係数の考え方に基づき臨界電界を導出した。 その結果，2000K以下の温度域で，PTFE/BN蒸気の多量混入が臨界電界を低下させていることがわかった。

6-052

PD実験用245kV級GISの電磁波伝搬特性の検討

◎浜口真周・渡邉修平・村瀬 洋（愛知工業大学）

ガス絶縁開閉装置（GIS）の絶縁診断法として、GIS内部で発生する部分放電の電磁波をその外部に設置したセンサ（アンテナ）により検出する方法を検討してきた。その成果から、アンテナの出力と部分放電発生場所の相関性には、アンテナの応答特性が関与していることが判明している。そこで、応答特性が関与する理由を解明するべく、GISにおける電磁波の伝搬特性の調査が必要と考えた。本論文は、PD実験用GISの寸法から伝搬モードごとの遮断周波数を推定したうえで、スペクトラム・アナライザを用いて、本GIS内部に設置した内部電極の応答特性から電磁波の伝搬特性を定量的に観測することを試みた。その結果、本GISにおいて高次モードの存在を想定できた。

6-053

コンデンサ型油入ブッシング内外における部分放電放射電磁波伝搬特性

◎藤村公大・益田聖也・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・山本尚史・岡部成光（東京電力ホールディングス）

現在，油入変圧器の劣化による不具合事象としては，油入ブッシングによる不具合の存在が確認されているが，一方で，油入ブッシングを対象とする絶縁診断技術は未だ確立されていないのが現状である。本研究では，油入ブッシングの絶縁診断技術の確立を目指し，ブッシング内で生じた部分放電(partial discharge : PD)による放射電磁波に着目し，FDTD(Finite-difference time-domain)解析ソフトを用いてその伝搬特性を検討してきた。本稿では，コンデンサ型油入ブッシングの内側および外側において，PD放射電磁波伝搬メカニズムについて検討した結果を述べる。

6-054

部分放電に起因する過渡接地電圧信号の低周波成分のメカニズムの基礎的検討

◎吉積弘将・古賀嵩章・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・藤井祐樹（東芝）・中村勇介・長 広明（東芝エネルギーシステムズ）

著者らは、高圧受変電機器における過渡接地電圧（transient earth voltage: TEV）信号を用いた部分放電（partial discharge: PD）検出による絶縁診断技術に関して検討してきた。本稿では、PDを発生させた時に機器の外壁面に取り付け可能なTEVセンサを用いて信号を検出し、TEV信号に含まれる低周波成分についてのメカニズムについて検討した。その結果、低周波成分は二つの要素で決まることがわかった。一つは電気回路的に決まる集中回路定数共振周波数、もう一つは線路長によって決まるダイポールアンテナ理論共振周波数である。これらの共振周波数は高圧電源とPD源を閉回路とする線路で概ね一致することがわかった。このことは、TEV信号からPD診断するうえで非常に有益な情報になると考えられる。

6-055

過渡接地電圧法による部分放電検出回路の開発

◎藤井祐樹・鷹箸幸夫（東芝）・長 広明・中村勇介（東芝エネルギーシステムズ）

電力機器の絶縁劣化診断技術において、絶縁破壊の予兆現象である部分放電を、筐体壁面への取付けで簡便に計測できる過渡接地電圧（Transient Earth Voltage: TEV）法が検討されている。本報告では、TEV法による部分放電検出原理に基づく部分放電検出システムを構築し、放電電荷量1,000 pCの部分放電信号を検出できる性能を確認できたとともに、部分放電信号とパルスノイズとの切り分けを可能とできることを示した。

6-056

電力機器のPD検出用4端子面電流センサの特性検討

◎林 寿樹・村瀬 洋（愛知工業大学）

電力機器の絶縁診断において絶縁破壊の前駆現象である部分放電(PD)によって発生する電磁波の検出が有効な手段として挙げられる。本研究では、面電流センサを応用した機器外部からの信頼性の高いPD診断法の開発を目指している。これまでの研究では面電流センサの基本形としての2端子面電流センサについて研究してきた。今回、更なる指向性、安定性の向上を実現するために4端子の面電流センサを提案し、センサの構造を様々に変化させ、研究を行った。その結果、電磁波をベクトル的に検出するという面電流センサ本来の特性を得ることができたので報告する。

6-057

フェライトコアを用いた新しい部分放電検出法の基礎的検討

◎吉川 雛・益田聖也・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・馬渡 威・松元 孝（九州電力）

現在，電力設備の絶縁診断として部分放電(partial discharge: PD)測定が注目されており，各種検出法が提案されているが未だ確立されていない。対象機器・設備によっては安価なPD検出法が求められる。本研究では，低価格で取り付けが容易なフェライトコア(Ferrite core: FC)を用いた新しいPD検出手法を用いた常時監視システムの確立を目指している。通常，FCは高周波ノイズ除去に使用するが，PDが有する高周波成分をFCにより検出することで新しいPD検出法を提案する。本報では，基礎的検討として特定のFCの個数におけるPD信号強度の検討結果について述べる。FCの検出感度は個数の変化により増加し，FCの抵抗値の周波数依存性に起因していることを示唆している。

6-058

5気圧までのDry airとCO₂中部分放電放射電磁波の検出特性のアンテナ帯域依存性

◎白石智也・田中麻理菜・大塚信也（九州工業大学）・井波 潔・羽馬洋之（三菱電機）・山本尚史・岡部成光（東京電力ホールディングス）

SF6ガスは、絶縁性能および消弧性能が優れているが、地球温暖化係数(GWP)が高いなど問題点があることから、近年SF6代替ガスの研究が進められている。筆者らはこれまで、電磁波検出によるGIS診断技術の高度化および部分放電(PD)現象の理解を目的とし、SF6およびN2やCO2、Dry airなどのSF6代替ガスを対象に、ホーンアンテナHA (750 MHz~5 GHz)、ダイポールアンテナDA (300 MHz)、50 MHz帯モバイルアンテナMA50を使用して大気圧から0.5 MPaまでの高気圧PD放射電磁波特性を検討している。本研究では、使用するアンテナを増やし、CO2とDry air中での高気圧PD放射電磁波特性を比較検討した。

6-059

短絡発電機による高電圧直流遮断器の遮断試験

○常世田 翔・稲垣卓志・亀井健次・皆川忠郎・伊藤弘基（三菱電機）

将来の多端子HVDC系統で必要な高電圧直流遮断器（DCCB）の開発が主に欧州や中国で進められている。当社は低損失，低コストの他励発振方式（高周波逆極性電流重畳による電流ゼロ点形成法）機械式DCCBを開発した。本稿では±320 kVクラスDCCBの1ユニット相当供試器の当社大電力試験所での直流遮断試験につき報告する。

6-060

SiC-MOSFETを用いた直流モデル遮断器による直流遮断実験—遮断時間および接合部温度のゲート・ソース間時定数依存性—

横水康伸・◎小川拓真・小椋陽介（名古屋大学）・柳樂和宏（エナジーサポート）

「抄録」筆者らは，IGBTやSiC-MOSFET等のパワー半導体からなる低圧直流用遮断器の回路構成を考案・試作し，その特性評価を行ってきた。その試作器の一つは，限流部では限流抵抗による直流限流を行い，遮断部では，SiC-MOSFETのゲート・ソース間電圧をある時定数 τ で低下させ，ドレイン・ソース間を高抵抗に推移させ遮断を達成する。本稿では，τ の値を複数に設定し，遮断時間や接合部の温度上昇について検討している。

6-061

SiC-MOSFETを用いた直流モデル遮断器の限流遮断プロセスとジャンクション温度推定

横水康伸・◎小椋陽介・小川拓真（名古屋大学）・柳樂和宏（エナジーサポート）

現在直流遮断器として主に用いられている配線用気中遮断器には，遮断時間の調整の難しさやアークによる部品の損耗といった欠点がある。筆者らはIGBT素子やSiC-MOSFET素子等を用いた低圧直流用モデル遮断器を試作し，その特性評価を行ってきた。その試作器の一つは，限流部として抵抗による直流電流限流を行い，遮断部では限流された電流を遮断する。本稿では，このモデル遮断器に直流電流の遮断を課した。測定された波形に基づいて，遮断プロセスを詳細に述べるとともに，遮断部でのSiC-MOSFETのジャンクション温度の過渡推移を述べている。

6-062

機械式遮断器と半導体スイッチを並列接続した共振型直流遮断器の実験検証

◎高所健太・大井一伸（明電舎）

直流給電システムは電力変換回数が少なく効率に優れ，特にデータセンタにおいて採用が進められている。しかし，直流電流には零点がないため既存の交流用遮断器では大電流の遮断が困難という課題がある。対策として，機械式遮断器と半導体スイッチを組み合わせた直流遮断器の検討が行われている。著者らは以前，共振回路を用いた遮断器を提案し，直流電流100Aの遮断を確認した。今回は加えて機械式遮断器に半導体スイッチを並列接続し，機械式遮断器開極時に電流を半導体スイッチに転流させる方式を併用し，アーク放電の低減と直流電流1kA遮断に成功したため結果を報告する。

6-063

直流送電向けハイブリッド直流遮断器におけるガス断路部接点の耐電圧絶縁性能の検討

○星野俊弘・佐藤正幸・金谷和長・網田芳明（東芝）・飯尾尚隆（東芝エネルギーシステムズ）

プレアーク消滅直後から雷インパルス電圧印加までの時間δtとガス断路部の接点部の耐電圧値との相関関係を取得することで，プレアーク／SF6ガス吹き付け有無が接点部の耐電圧絶縁性能に及ぼす影響を定量化した。その結果，プレアークの残存時間がガス断路部接点の耐電圧性能にどの程度影響を及ぼすか，またSF6ガス吹き付けによりこのガス断路部接点の耐電圧性能がどれだけ向上するかを電界設計の視点から定量的に見極められるようになった。

6-064

ハイブリッド直流遮断器におけるアークレス転流限界と回路特性の関係

◎全 俊豪・中山恭太郎・安岡康一（東京工業大学）

近年，太陽光発電や分散型電源の導入増加により直流送配電が見直されている。しかし，直流送配電は交流に比べ送電ロスが小さい，位相制御をしなくてよいなどの利点があるが，電流を遮断する際，電流零点を持たないため，電流遮断が難しいという課題があった。本研究グループは電気接点とパワーデバイス(SiC-MOSFET)を用いたハイブリッド直流遮断器を開発し，低定常損失とアークレスで高速な電流遮断の両立が可能である。本発表では銅接点のアークレスで転流できる電流限界の回路条件等について報告する。

6-065

自励式AVRの励磁電力を考慮したPSSの設計

◎大澤裕輝・坂本織江・仁田旦三（上智大学）

超速応型超電導発電機において、系統事故時に自励式AVRの励磁制御に伴い発電機端子から界磁巻線に流れ込むエネルギーが、同期安定性を向上させる効果を持つことが確認されている。自励式AVRを有する超電導ではない従来の同期発電機（以下、従来機）においても励磁電力は同様の安定性向上効果をもつと期待されるが、著者らの知る限り、従来の安定性解析や励磁制御系の設計では考慮されてこなかったように見受けられる。本稿では、励磁制御系の設計に関し、時間領域シミュレーションにより、励磁電力を考慮したPSSの設計を行った。

6-066

電力系統の過渡安定性向上を目的とした広域リアルタイム情報に基づく発電機励磁制御手法の検討―AVRとの併用による改善―

◎増田宗紀・河辺賢一・七原俊也（東京工業大学）

将来の電力系統では，再生可能エネルギーの大量導入に伴い，想定外の不安定現象の発生が懸念される。これに対し著者らは，広域リアルタイム情報に基づく発電機励磁制御則（以下，安定化制御則と呼ぶ）を提案してきた(1)。先行研究(1)では，安定化制御則によって励磁電圧を制御することにより，既存のAVR(Automatic Voltage Regulator)を適用した場合と比較して過渡安定性を向上できる一方，事故除去後に端子電圧を漸減させてしまうという問題が明らかになった。 本論文では，安定化制御則をAVRと併用することで，課題であった電圧の漸減を防ぎ，より高い過渡安定性の向上効果を得られることを確認したのでこれを報告する。

6-067

大規模系統における適応型PSSとTCSCの協調制御手法に関する一考察

◎櫻木政徳・横山明彦・天野博之（東京大学）・太田 豊（東京都市大学）・河辺賢一（東京工業大学）

近年、電力系統の複雑化が進んでおり、同時に系統動揺現象も複雑化している。 さらに、分散型電源の導入がますます進んでいき、系統状態の変化が激しくなることは明白である。 このような状況においては、地域間の相互作用によって生じる長周期の地域間動揺が生じることが問題になる。 本研究では、地域間動揺の抑制を目的として、広域情報を用いた制御手法の中で、特に系統の状態に合わせて制御変数を変更する適応型PSSとTCSCを協調させる制御手法の開発を行う。 本稿では、適応型PSSとエネルギー関数を用いたTCSCとの協調制御について大規模系統における考察をする。

6-068

過渡安定度向上を目的とした自励式変換器と発電機のSSTIに関する検討

大部 孝・中山維織（関西電力）・○天満耕司（三菱電機）

近年，STATCOM（STATic synchronous COMpensator）、自励式BTB，自励式HVDCの電力系統への適用事例が国内外において増加しつつあり，次世代送変電設備の一つとしての役割が期待されつつある。自励式変換器を電力系統へ適用する際，適用地点近傍に発電機が設置されていると，発電機と自励式変換器の相互作用により発電機軸系にねじれ振動現象SSTI（Subsynchronous Tortional Interaction）が発生する可能性がある。本論文では過渡安定度向上を目的としたSTATCOMやBTBにより発電機軸系へ与える影響検討について報告する。

6-069

PVの分布の違いによるPVのVSGモデル制御の系統安定化効果に関する検討

◎野上 駿・横山明彦（東京大学）・大部 孝・芳野祐樹（関西電力）

近年，太陽光発電（Photovoltaic Generation : PV）が大量に系統に接続されており，今後も，益々の増加が見込まれている。しかし，PVは従来の同期発電機と異なり慣性を持たないという特徴がある。そのため系統におけるPV導入比率の増加に伴い，系統全体の慣性が低下し，擾乱に対して，系統の安定運用が損なわれる可能性がある。その対策として，PVのインバータに電力貯蔵装置を付加し，同期発電機の慣性を模擬する仮想同期発電機（Virtual Synchronous Generator : VSG）の研究がなされている。しかし，それらの研究は，基幹系統などの大規模系統での安定化効果については検証がなされていないのが現状である。本稿では，PVの地域分布によってVSGモデル制御の系統安定化効果がどのように変化するのかについて検討する。

6-070

VSWT-PMSGを用いた仮想同期発電機制御の安定化に関する研究

◎今井秀岳・織原 大・斎藤浩海（東北大学）

太陽光・風力発電などの分散電源の多くは、非同期発電システムであるため、大量導入された場合、系統慣性が減少し系統安定性の低下を招くことが懸念されている。この問題の解決策として、VSWT-PMSGを用いたVSG制御の開発に取り組んでいるが、VSWT-PMSGに従来のVSG制御を適用すると、系統事故時にVSWT-PMSGが正常な回転速度を維持できなくなる場合がある。本稿では、VSWT-PMSGの回転速度を復帰させるための補助ロジックを加えたVSG制御を提案し、提案手法により風力発電システムが不安定化することなくVSGとして過渡安定性向上に寄与できることを示した。

6-071

仮想同期発電機制御と系統電圧制御を用いたインバータの系統安定化効果への影響

◎露木雅也・太田 豊・中島達人（東京都市大学）

近年,太陽光発電などの再生可能エネルギーを用いた分散形電源の導入が拡大しているが, これらは従来用いられる同期発電機の特性である慣性・同期化力を持っていない。そのため, 同期発電機の休廃止が増えると，系統の慣性・同期化力が減少し,系統の安定度が低下する課題が懸念されている。この解決策として, インバータ連系の分散形電源に同期発電機と同様の慣性・同期化力を模擬する仮想同期発電機制御が提案されている。本稿では, 有効電力制御にガバナ制御と仮想同期発電機制御を用い, 無効電力制御に系統電圧制御を用いる系統連系インバータの制御手法を提案した。 PSCAD/EMTDCシミュレーションにおいて, 臨界故障除去時間を用いて安定化効果への影響を定量的に検証した。その結果, 提案制御手法が安定化効果を向上させることを確認した。

6-072

不確実性を含む電力系統の安定度評価への機械学習の適用

◎矢口航太・下尾高廣・木村 操・若江智秀・高野俊也（東芝）

近年、発送電分離や再生可能エネルギー電源の導入増加に伴って電力系統の不確実性が増大しており、将来とり得る潮流状態を一意に定めることが困難となる。不確実性の影響下でどのような潮流状態に対しても系統安定度を維持するためには、膨大なケースに対して安定度解析を行う必要がある。そこで、過渡安定度計算などの詳細計算を行わない簡易モデルによる安定度評価手法を開発する。簡易モデルの作成方法として深層学習を適用し、その評価精度について検証する。

6-073

リアルタイム情報を用いた決定木による過渡安定性推定

◎大山貴央・天野博之・横山明彦（東京大学）・栄田真吾・ヴァルマスレシチャンド（中部電力）

近年，再生可能エネルギーを用いた発電方式が電力系統に大量に導入されており，今後もその導入量は増加していくと予想される。また，電力システム改革の進展に伴って，電力系統に関わる事業者が多様化することが考えられる。これらの要因による電力系統の複雑化と電源の分散化が進む中で安定な系統運用や電力品質を維持するため，電力系統のリアルタイム監視・安定度把握技術の重要性は今後さらに増していくと考えられる。本稿では，系統の過渡安定性についてPMU(Phasor Measurement Unit)から得られるリアルタイム情報から決定木(DT：Decision Tree)を用いて推定する手法について検討を行った。また，DT作成にはMATLABのMachine Learning Toolboxを用いた。

6-074

クープマンモード分解による系統慣性定数推定の実測データへの適用

◎浜崎 凌・薄 良彦（大阪府立大学）・寺師 純（九州工業大学）・石亀篤司（大阪府立大学）・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

再生可能エネルギーなどに代表される分散型電源の大量導入を背景とし，系統慣性定数を実測データから推定する研究が行われている．筆者らは，先行研究のアイデアとクープマンモード分解と呼ばれる時系列データの解析手法を用いることにより，系統慣性定数の推定を行なう．推定にはフェーザ計測装置により観測された電圧位相データ及び連系線潮流データを用いる．

6-075

再生可能エネルギー大量導入に伴う発電機の停止が過渡安定度に与える影響についての一考察

◎高橋修平・白崎圭亮・天野博之（電力中央研究所）・坂本正栄・野見山史敏・高崎真司（九州電力）

九州地方では再生可能エネルギー（以降再エネ）の大量導入が進んでおり，系統内の発電機並列容量は減少する傾向にある。このため，発電機の停止が過渡安定度に及ぼす影響について把握しておく必要がある。再エネ出力，発電機並列容量，安定度の関係を表す指標として，「発電機停止率α」が電力中央研究所により考案されており，αを一定値以下とすることで安定度を維持することができる可能性について示されている。しかし，詳細には停止する発電機の位置等も安定度に影響すると考えられるため，安定度を維持可能なαの値はばらつくと考えられる。本研究では，安定度制約が強いローカル系統を対象例とし，再エネ出力，発電機並列容量，安定度の関係について分析し，αのばらつきの程度を把握する。

6-076

同期機比率低下時の誘導機負荷による動態不安定

○山田誠司（北陸電力）

2012年のFIT制度施行後，我が国ではPVを主とする再生可能エネルギー電源の大量導入が始まり，現時点ではPVだけでも40GW程度導入されている。これは全国大での最大需要の約25%であり，軽負荷時には再エネ電源が過半を占める大規模系統も珍しくないと考えられる。このような状況においては，今まで知られていなかった不安定現象が起こり得る。本稿では，1機1負荷系統を用いて，同期機電源減少時の単独系統において動態不安定が生じることを示すとともに，シミュレーション結果の分析を通じて，誘導機負荷の挙動がその原因であることを示す。

6-077

FRT継続時間と誘導機比率を考慮した過渡安定度に関する一考察

○入口 毅・定塚 剛（北陸電力）

太陽光発電などの再生可能エネルギーは系統連系規程のFRT要件を満たすFRT機能を搭載する必要がある。FRT機能が系統安定度に与える影響を正しく評価するためには，解析に実現象を再現できる系統モデルを用いる必要がある。特に，負荷に含まれる誘導機の動特性と負荷に至る経路インピーダンス（負荷ブランチ）を模擬することが重要である。本稿では，誘導機の動特性と負荷ブランチを考慮した系統モデルを用いて，FRT継続時間と誘導機比率を変化させた場合の過渡安定度に与える影響について考察する。

6-078

過渡安定度からみた二次電池最適設置点の一検討

○白川克也・小出 明・田中和幸（富山大学）

近年，太陽光発電(PV)など再生可能エネルギーの大量導入に伴い，需給対策のひとつとして二次電池(BESS)の適用が検討されている。一方，BESSは制御応答速度が速いことから，系統安定化を目的とした制御への適用も期待されている。著者らはBESSの有効利用の観点から，電力系統の過渡安定度向上を目的としたBESSの運用手法を検討してきた。本稿では，複数のBESS設置点候補が考えられるとき，過渡安定度向上に最も貢献するBESS設置点について検討を行った結果を報告する。

6-079

位相・潮流情報に基づく広域動揺モードの同期化力評価

◎上田圭祐・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）・大部 孝・法京聖士（関西電力）

西日本60 Hz系統において発生する周期が2~3秒の広域動揺は弱制動の性質を有し，運用によっては電力系統の安定度の低下が懸念される。系統の状態を把握するために、多地点同期位相計測装置（PMU）によって観測された位相・潮流情報を用いて系統間動揺である広域動揺モードの同期化力を評価することを考える。本稿では，九州工業大学と名古屋工業大学で得られた広域の位相情報と関西電力系統で得られた潮流情報を用いて，同期化力の評価を行い、1日を通しての同期化力の推移や需要期での変化を観測することを目的とする。

6-080

通信遅延を有するWADCの効果に対する予備分析

◎潮崎祐亮・山口順之（東京理科大学）・定本知徳（東京工業大学）

電力系統の広域運用の拡大により，電力系統間で発生する長周期の電力動揺の抑制が解決すべき課題である。この動揺は，主同期機の有効電力偏差を入力とするPSSの出力を励磁系に入力するだけでは効率よく減衰することが困難である。そこで，広域信号を入力とした広域減衰制御器WADCの設計が海外で研究されており，このWADCの出力を励磁系に入力することによって，長周期電力動揺を効率よく減衰することが期待できる。しかし，広域信号はリモート信号であるため，通信遅延が生じ，WADCの減衰性能を悪化させる。 本研究では，WADC付き電力系統の数値モデルを構築し，電気学会EAST30機系統モデルを用いて時変の通信遅延を有する広域減衰制御器の予備分析を行う。

6-081

Modeshapeおよび感度評価を用いた広域動揺抑制

◎高橋響生・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

電力系統における地域間動揺は主に電気機械系モードが支配的である。このモード特性を把握することは重要であり、系統制御のための重要な情報を与える。一方でこれまでに系統間動揺の抑制を目的とした系統安定化装置PSS(Power System Stabilizer)の設計手法が検討されてきた。PSSによる動揺抑制はパラメータ以外にも入力信号に依存する。本稿では、固有ベクトルと電圧位相や電流の感度からNetwork Modeshapeという指標を算出している。この指標が動揺抑制効果を示す指標であることを示し、Network Modeshapeによる入力信号選定への有用性を検討している。

6-082

Dynamic Phasor型WADCに関する瞬時値シミュレーションによる基礎検討

川上峻弥・◎山内 駿・山口順之（東京理科大学）

長距離大電力送電系統の重大事故時に発生する長周期動揺の抑制力の向上は、電力系統の信頼性を高め経済的な運用に繋がる。Dynamic Phasorを用いることで高頻度かつ高精度で系統の情報を把握できるようになり、制御分野への活用が期待されている。WADC（Wide-Area Damping Controller：広域減衰制御器）は長周期動揺の抑制が期待されている。本研究では瞬時値シミュレーションにて2つの負荷母線電圧からDynamic PhasorまたはZero crossing法を用いて求めた角速度偏差の差を入力としたDynamic Phasor-WADC、Zero crossing-WADCをそれぞれ3機9母線系統に導入し、3相地絡事故が起きた際の動揺の減衰性を比較し、Dynamic Phasor-WADCがより高い減衰性を示すことを確認した。

6-083

Implementation of Special Protection Scheme (SPS) and construction Battery Energy Storage System (BESS) -Smart Grid Demonstration Project in Poland to improve power system protection in case of high penetration of renewable energy-

◎Shintaro Ueno・Hiroshi Tanso・Shohei Takahashi・Takafumi Morishige（Hitachi, Ltd.）・Hiroyuki Sugiyama・Tatsuya Moriyama（Chugoku Electric Power Co., Inc.）・Robert Trębski・Łukasz Szczepaniak（Polskie Sieci Elektroenergetyczne S.A.）

Driven by the climate policy, the installation of windfarm is reached level of 6,000MW in Poland especially in northern area. Since the windfarm generation is unpredictable and uncontrollable, the increase of windfarm is concerned that it causes grid stability problems such as the occurrence of overloads or the lack of reserve capacity. In this project, SPS system (hereinafter “SPS”) and Battery Energy Storage System (hereinafter “BESS”) will be installed in order to solve the problems. The article presents the main objectives and assumptions of the project implemented within the framework of Polish-Japanese cooperation.

6-084

電力系統の過渡安定性向上に寄与する負荷周波数制御方式に関する基礎的検討

◎織原 大・斎藤浩海（東北大学）

自然変動電源が常時発する変動出力は、系統の潮流状態、発電機の出力状態を短時間で大きく変化させ、系統の過渡安定性を時々刻々変化させ得る。本稿では、短周期の変動電力を吸収するLFCについて、過渡安定性を向上させるような指令値配分手法を提案する。

6-085

電力基幹系統を考慮した大規模最適電源構成モデルの開発

○小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

本稿では全国の全ての基幹系統を352ノード，441本の送電線でモデル化した大規模最適電源構成モデルを開発し，太陽光・風力発電の大量導入下での数値シミュレーション分析を行う．分析の結果，北海道地域では，再エネ比率拡大につれ、電力価格が低下し，再エネ比率40％ケースでは，年間の3分の1の時間帯で電力価格はほぼゼロに下落する．そして電源の収益に関して分析を行うと，再エネ電源比率拡大に伴い，電力価格の低下，稼働率低下を受けて，LNG複合火力等の収益性が悪化する．

6-086

関西エリアの需給・周波数シミュレーションモデルの開発

◎徳光啓太・天野博之（電力中央研究所）・三宅翔太・安部 誠・竹内康介（関西電力）

太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの導入拡大による需給・周波数制御の課題や，その対策等を検討するため，需給・周波数シミュレーションの必要性が高まっている。本稿では，電気学会AGC30モデルのプラントモデル等を活用して開発した関西エリアの需給・周波数シミュレーションモデルの概要，ならびに実績データとの対比によるモデルの精度検証結果の一例を報告する。

6-087

再生可能エネルギーの大量導入系統を用いた系統縮約手法の汎用性評価

◎下尾高廣・木村 操（東芝）・石原祐二・前田隆文（東芝エネルギーシステムズ）

電力系統解析や，系統安定化システムの演算のために，電力系統の接続状態や発電機特性をモデル化した電力系統モデルが用いられる。電力系統が大規模・複雑化すると演算処理負担が増えること，また外部の電力系統（以下，外部系統）の情報入手が困難であることから，外部系統を簡略化した縮約系統モデルが用いられる。縮約系統モデルは縮約前の特性を忠実に引きつぎ，安定化に必要な電源制御量の誤差を最小化する必要がある。我々は系統動揺誤差と電制量誤差を同時に最小化する縮約手法を開発し，その汎用性評価を行ってきた。本稿では，将来的な再エネの大量導入を鑑みて，再エネが大量に導入された系統断面での開発手法の汎用性を評価する。

6-088

調整力を考慮した過渡安定度付き多目的最適潮流計算法に関する研究

◎吉野卓司（広島大学）・久保川淳司（広島工業大学）・餘利野直人・造賀芳文・佐々木 豊（広島大学）・杉山健太・高松祐基・龍野正志（中部電力）

電気事業法の改正による事業ごとの分離により，各事業単位での利益を追求していくこととなり，電力の安定供給に向けてこれまで以上に調整力の効率的な管理・運用が求められることとなる。本研究では，調整力を考慮した多目的のTSCOPFの実現を目的とする。 調整力は発電機の出力帯によってコスト関数が変化する区分線形で表される。我々はこれまでに1反復ごとに出力を場合分けしてコスト関数を決定するプログラムを提案し研究を行っていたが，複数の区分をまたぐことでコストが振動してしまい，収束が困難になるなどの問題点があった。そこで本論文では変数を2つに分け，1反復ごとに出力の上下限制約を更新する新たな手法を提案することで、問題の改善を目指す。

6-089

広域系統運用におけるRES出力変動を補償する調整用発電機の単目的最適出力分担値の多目的評価

◎浅見拓一知・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）・野中俊介（電源開発）

広域系統運用は、RES出力変動補償する調整力確保への貢献が期待されている。一方で、管理対象地域の拡大による潮流変化の複雑化が懸念されることから、送配電事業者は多様な系統指標を考慮しつつ運用を行う必要があると考えられる。そこで本稿では、広域系統運用におけるRES出力変動を補償する調整用発電機の出力分担値が系統指標に与える影響を、各エリアの残存調整容量・出力調整時間・過渡安定性・電圧変動量の観点から評価するため，各系統指標の定式化を行った。さらに，RESを追加模擬した電気学会EAST30機系統モデルを用いた数値計算において，各系統指標の単目的最適出力分担値を算出し，算出したそれぞれの出力分担値を定式化した各系統指標から多角的な評価を実施した。

6-090

バッドデータ検出とM-estimatorに基づくマルチエリアにおける電力状態推定

◎三宅修平・馬郡英樹・中西要祐・岩村一昭（早稲田大学）

近年，スマートグリッドの普及や再生可能エネルギーの大量導入など，電力系統の複雑化に伴い，発電と消費の両特性を有する複数のエリアにまたがる電力輸送が増加している.本研究では，クラスター化されたスマートグリッドの間で電力輸送を行う際に，発生する可能性のある電力系統状態量が異常値(バッドデータ)をもつことがあり，このバッドデータを検出し，正しい値を推定する新しい状態推定方法を提案する(1).さらに，系統内にバッドデータが存在した場合，提案手法を導入することにより，ほかのエリアにどのような影響が出るかを検討した.今回，ロバスト性の高い推定手法を開発するため，Tukeyが提案したM-estimator推定手法を電力状態推定に適用し，バッドデータ検出性能を向上させ状態推定計算における収束性を改善した.

6-091

SCケーブル系統における遮断器投入現象解析

○中山昌紘・山田知宏・腰塚 正（東京電機大学）・荒井純一（工学院大学）・東川甲平（九州大学）・池田久利（東京大学）

無負荷変圧器を投入する際、定常状態よりも大きな突入電流が発生することがある。これまで架空送電系統における遮断器投入現象の解析が行われてきたが、都心部においてはケーブル系統の導入も進んでいるため、その解析も行われている。しかし、世界的にみるとケーブル系統はまだ少なく、その解析例は少ない。抵抗成分を著しく低減した超電導ケーブル系統(以下、SCケーブル)の導入も今後考えられ、遮断器投入による現象がこれまでと変わることが予想される。 そこで本論文は、SCケーブルが接続された変圧器の励磁突入電流について、遮断器の投入位相を変えた場合についてシミュレーションを用いて解析を行ったので、その結果を報告する。

6-092

模擬送による同期機FRT特性の検討

平松大典（日本電気技術者協会）・雪田和人・濱中真和・◎新實健秀・松村年郎（愛知工業大学）

同期発電機は，従来から電力用として広く用いられている。近年の単機大容量化はめざましく， 2極1,200,000kVA，4極1,500,000kVAクラスの大容量タ－ビン発電機の製作，国内外へ納入実績が報告されている。これまで多くの過渡事象についての模擬送用いた実測データの取得とそれを用いた解析の検証が報告されているが，FRTについては報告されていない。そのため，本報告では，FRTに関して，大容量機の挙動を模擬した模擬送によるデータ取得と，模擬送と同等の解析モデルによる解析結果の比較を行い，その解析モデルの適切性の検証を行ったことを報告する。

6-093

同期発電機の単独運転検出と非干渉な無効電力補償装置

○佐藤道彦・関 孝二郎・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

SVC(静止形無効電力補償装置)と同期発電機が系統に並列接続されている場合に、SVCの無効電力補償動作と、同期発電機の単独運転検出のための無効電力注入が干渉し、同期発電機が単独運転を検出できなくなる可能性がある。 今回、同期発電機の単独運転検出を妨げることなく動作可能なSVC の制御方式のアルゴリズムを設計、開発した。

6-094

水車特性を考慮した水力発電モデルの構築と系統並列時における電流の考察

◎平井涼介（芝浦工業大学）・竹本泰敏（日本工業大学）・藤田吾郎（芝浦工業大学）・河野健人

再生可能エネルギー促進の一環として，小水力発電は出力変動が太陽光発電などに比べて小さく，賦存量の多さから今後の普及が期待されている。その小水力発電には低コストで構造簡単，運転操作が簡単などの長所を有する誘導発電機が多く採用されてきた。しかし誘導発電機が配電系統に並列される際には突入電流が流れ，配電系統の瞬時電圧降下を引き起こすなどの影響を及ぼす。そこで突入電流を評価するモデルの構築を行ってきたが水車のトルク特性に関する検討は不足していた。本研究では，水車のトルク特性を考慮した水力発電モデルの構築を行い，トルク特性が並列時の電流にどのような影響与えるかを明らかにすることを目的とする。

6-095

電圧位相差の推定に基づく誘導電動機の同相母線切換

◎山岡昂平・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

発電所や工場で母線切換が行われる際、補機の誘導電動機に残留電圧に起因する過渡トルクが発生し、機械的損傷をもたらす恐れがある。本稿では過渡トルクを抑制しうる同相母線切換に着目した。遮断器の動作遅れを考慮し、複数の誘導電動機が接続された母線に対し同相母線切換を行う方法を検討した。切換開始後数サイクルの電源電圧、残留電圧データから求めた位相差に対し、最小二乗法を適用し、求めた位相差の時間推移から同相時間を推定した。観測データを用いて同相時間を推定することで、誘導電動機の動作状態や系統条件によらずに過渡トルクを抑制する切換方式を提案する。

6-096

産業用電力系統におけるプロセス継続性を考慮した誘導電動機の再閉路時間決定手法

◎金子悠一・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

産業用電力系統とは，石油化学や石油精製，製紙工場等の数千台の誘導電動機が稼働している工場の受電システムであり，生産工程は連続プロセスで構成されている。瞬時電圧低下発生時には，産業用電力系統におけるプロセスの継続性から特に誘導電動機の回転数を維持する必要がある。したがって，誘導電動機に対する瞬時電圧低下対策が必要であり，本研究ではその方法として順次再閉路方式に着目する。このとき，誘導電動機の特性に起因する電圧回復性の課題とプロセス側の対応を考慮する必要がある。本報告ではプロセスの継続性を考慮し，製造設備のインターロックが動作しないように誘導電動機の限界再閉路時間を決定する手法の提案を行う。

6-097

構造方程式型負荷モデルの提案と高サンプリング実測値を用いた予備検証

◎平田 梢・山口順之（東京理科大学）

近年、低炭素社会に向けた取り組みや電力不足を背景に、再生可能エネルギーの大量導入が行われている。その中でも太陽光発電は高い割合を占めているが、日射量や気温などの気象条件により発電量に大差が生じるため、電力系統において発電電力や電力余剰の逆潮流や、周波数変動などが問題視されている。そのような問題を検討するにあたって、発電所、送電線、負荷などの忠実なモデル化が必要である。その中でも負荷特性の把握は非常に重要な項目であるが、詳細なモデル化が進んでいないのが現状である。 本研究では、従来のZIPモデルでは表現できなかった進み力率の時間帯にも対応することが出来る負荷モデルを、構造方程式を用いて作成し、高サンプリング実測値を用いた予備検証を行う。

6-098

適応フィルタを用いた特別高圧需要家系統の高調波解析

○渡邊政幸・吉岡伸之（九州工業大学）・加戸良英（旭化成）・壹岐浩幸（富士電機）・三谷康範（九州工業大学）

特定線路の高調波通過量を評価するとき，現在のように高調波発生源が点在する環境下では，従来用いられてきた電流とその位相で評価する方法の適用が困難となることが指摘されている。本稿では，特別高圧需要家構内で計測した実測データに対して，理論高調波の各成分を詳細に調べるため，適応フィルタを用いて解析を行った結果を報告する。時間領域で各高調波成分の分析が可能であることが特長であり，理論高調波以外の残留成分も発生する環境下において，常に変動する高調波電力を計測データから精度よく検出できることが期待される。

6-099

次世代配電系統解析用シミュレータの妥当性確認のための実証試験

◎山根啓介・飯岡大輔・斎藤浩海（東北大学）・青砥由貴・橋本 潤・合田忠弘・鈴木正一・菅原秀一・大谷謙仁（産業技術総合研究所）

PV大量導入に起因する問題に対して，電力系統の安定化をサポートする機能を持つPCSであるスマートインバータによる対策が検討されている．スマートインバータが系統に与える影響は複雑であり，それらの効果を明らかにするための手法が必要である．そこで，著者らは，スマートインバータの影響の解析が可能な配電系統シミュレータの開発を行っている．そのシミュレーション結果が実系統の応動と等しいことを確認するため，産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所実証フィールドの配電系統模擬設備を用い，実証試験を行った．

6-100

電力需要減少を見越した長期的系統計画案策定手法に関する研究

◎田中真喜・永田真幸・横山明彦（東京大学）

近年、我が国では再生可能エネルギーや省エネ機器の急速な普及、少子高齢化の進展に伴う電力需要の鈍化・減少など電力システムを取り巻く環境が急速に変化している。また、現在の日本の電力流通設備は高度経済成長期に建設されたものが多く、近い将来これらの設備が高経年を迎えるにあたり供給信頼度を維持しつつ設備の維持コストを低減する適切な設備更新計画を策定することが必須となっている。本稿では、将来の電力需要が減少した場合における供給信頼度確保を前提とした撤去送電線の選定や撤去年の算定を行なった。さらに、過負荷送電線指標と経済性指標の導入によるプランの選定や送電線劣化シナリオを考慮したプランの策定を試みた。

6-101

Experimental Validation of a Simplified Model for Calculating the Temperature of Overhead Conductors under Dynamic Line Ratings

◎Bonface Ngoko・Hideharu Sugihara・Tsuyoshi Funaki（Osaka University）

This paper presents an experimental validation of a simplified form of the CIGRE model for calculating the temperature of an overhead transmission line under dynamic line rating applications. The temperature of an overhead conductor typically used in the Japanese network was measured in a wind tunnel environment under varying magnitudes of conductor current and ambient wind speeds. A comparison of measured conductor temperature values (for both steady-state and transient-state conditions) with values estimated using the proposed simplified version of the CIGRE model confirms the validity of the proposed model.

6-102

電力需要減少・再生可能エネルギー電源導入拡大下における送電系統計画

◎伊藤 夏・永田真幸・横山明彦（東京大学）

電力小売完全自由化や再生可能エネルギー電源導入の機運の高まり，電力需要の減少など，日本の電力系統を取り巻く環境は大きく変化している。 電力需要の減少により，送電網のスリム化が求められる一方で，出力が不安定な再エネ電源導入の拡大により，送電設備の拡充が必要となると予想される。このような状況において，将来どのような系統が合理的であるかを論ずるにあたっては，送電網の縮小と拡充の両面が適切に考慮された系統計画を行う必要があると考えられる。 本稿では，送電線の増設・撤去の同時考慮の前段階として，再生可能エネルギー(再エネ)電源導入下における送電線の拡充計画と，需要減少下における送電線の撤去計画を別々に行った際の定式化や結果について述べていく。

6-103

送電網建設を考慮したウィンドファーム設置領域最適化手法の開発

◎西山航平・小林 良・岩村一昭・中西要祐（早稲田大学）

新設ウィンドファーム(WF)の設置位置最適化手法の開発と、その発電所内における電力を集約するような代表点(RP)位置の評価を行った。風況と標高のメッシュデータを用いてWF建設有望領域を抽出し、設置位置の最適化を行った。その後、RPと既存の変電所から構成される電力系統の建築コストを比較し、RP位置の評価を行った。その際、電力系統の建築コストは、最小全域木問題を解くことで得られる総線路長から導出した。その結果、RP位置によっては送電線建設コストを大幅に抑えられる場合もあることを確認した。以上よりRP位置を考慮したWF領域の選定、及び送電ネットワークの構築戦略が必要になることが分かった。

6-104

分散電源の大量導入を想定した電力系統の運用面から見た信頼度評価に関する基礎研究

◎山口 遼（横浜国立大学）・中地芳紀・ヴァルマスレシチャンド（中部電力）・辻 隆男・大山 力（横浜国立大学）

今後、エネルギー問題・環境問題の対策として太陽光発電等の分散電源の普及が見込まれる。現在の電力系統の信頼度評価手法は、需要地側へ分散電源が大量に導入されたケースでは、線路やバンクを流れる潮流が減少するため、これを考慮すると高い信頼度と評価される。しかし、実際には分散電源の出力は気象変化や系統事故によって急変することが考えられ、隣接系統間での「電圧位相差拡大」「電圧差拡大」により復旧操作ができず供給信頼度の低下が発生しうる。そこで、本研究は設備容量による「容量制約」に加え、隣接系統間での「電圧位相差制約」「電圧差制約」の3観点から電力系統の供給信頼度を定量的に評価する新手法の提案を行う。

6-105

ロバスト信頼指標による電力系統の信頼度評価

◎兼岡新司・餘利野直人・佐々木 豊・造賀芳文（広島大学）・奥本芳治（MIRAI・未来）

近年，再生可能エネルギーへの関心は更に高まりを見せている。特に太陽光発電（PV）への関心は強く,震災以前の想定ではPVの導入量を2030年までに40倍（約53GW）まで増加させることが目標として掲げられている。このことから，更なるPVの導入の拡大が見込まれる。一方，日射条件によって出力が変動するPVが大量導入された場合，配電系統の電圧調整や調整力確保の難化，系統周波数変動に与える影響等の問題が指摘されている。それに対して本研究室では，従来のN-1信頼度を不確定環境下で適用できるロバスト信頼度の概念や,ロバスト動的実行可能領域(RDF領域)の大きさを示す指標の計算手法を提案した。本稿では電気学会West30機系統でのRDF領域の指標の計算結果を示す。

6-106

受給制御マネージャにおける発電機起動停止計画手法の改良

◎上島李樹・東 克俊・佐々木 豊・餘利野直人・造賀芳文（広島大学）

近年、地球環境問題に対する関心が高まっており、太陽光発電(PV)や風力発電(WT)等の再生可能エネルギー電源(RES)の導入が急速に進められている。しかし、RESは気象環境に依存するため、出力変動が大きく、予測も困難である。そのため、蓄電池の導入・運用や高精度予測手法による需給制御が必要となる。そこで、著者らはRESを含む電力システムにおける需給制御マネージャの発電機起動停止計画(UC)を開発している。本稿では、燃料費関数を区分線形近似した混合整数線形計画法(PW-MILP)を適用し、混合整数二次計画法(MIQP)と燃料費関数を線形近似した混合整数線形計画法(MILP)と比較し、計算時間と解の精度の観点から、本手法の有効性を検証する。

6-107

再生可能エネルギー導入時の予備力確保を考慮した発電機および電力貯蔵装置の最適週間運用計画に関する研究

◎谷口 暢・横山明彦（東京大学）

近年、再生可能エネルギー電源の電力系統への大量導入が進んでいるが、その出力は天候条件に大きく左右されるため大量導入時には対策が必要不可欠である。その対策には電力貯蔵装置の利用や再生可能エネルギー電源の発電出力予測などが候補として挙げられる。本稿では、RES大量導入時の電力系統において、予備力の確保に関して様々なケースを設定した上で、火力発電機および電力貯蔵装置の最適運用計画の作成を行い、需給シミュレーションによって供給信頼度ならびに週間運用コストの評価を行った。その結果、電力貯蔵装置にも予備力を持たせ、その上でSOC不足が発生しないように制御を行うことで供給信頼度を下げずに運用コストを低減できることを確認した。

6-108

RE電源大量導入下の電力系統における可変離散時間幅発電機起動停止計画

◎泉谷圭祐・原 亮一・北 裕幸・田中英一（北海道大学）

発電機起動停止計画(UC)は一日などの一定期間離散化し、各時間内では需要が一定であるとした上で、最小起動停止時間などの制約のもと、発電機の起動停止状態、出力をまとめて決める問題である。近年の再生可能エネルギー電源の増加に伴う需給一致の不安定化により、従来の三十分の離散幅によるUCは精度が足りないと考えられる。そこでより短い時間幅を採用することが求められるが、発電機の起動停止状態というバイナリ変数により計算時間が長期化してしまう。そこで本稿ではUCを効率的に解決する手段として、離散時間幅を可変とすることで、評価結果の精度低下を回避しつつ計算時間を短縮する手法を提案する。

6-109

著しく大量の PV が導入された電力系統の当日予測に基づく BESS・火力機協調運用の基礎検討

◎小林大貴・益田泰輔（名城大学）・大竹秀明（産業技術総合研究所）

本研究グループでは，これまでに太陽光発電（Photovoltaic generation，以下，PVと表記）予測情報を利用した需給運用手法の開発を進めてきた。先行研究では，PVが我が国全体で100 GW程度導入される状況を仮定し，数時間ごとに更新される精度の高い当日予測を用いて，蓄電池システム（BESS: Battery Energy Storage System）充放電計画と発電機起動停止計画（UC: Unit Commitment）を修正する手法を提案・評価した。本論文では，さらにPVの導入が進むものとして，日本全体で300GW程度の著しく大量のPVが導入された状況を仮定し，先行研究の手法を改良した新しいBESS充放電計画および発電機UCの作成・修正手法を提案・評価する。

6-110

近似動的計画法による再生可能エネルギー出力の予測誤差を考慮した電力需給運用の分析

◎宮本泰平・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

本研究では、太陽光・風力発電の発電量の予測誤差を考慮に入れた最適な電源運用を計算するモデルを構築した。近似動的計画法を用いることで、電力システム総コストの期待値が最小となる最適な電源運用を求めるモデルである。各時点で再エネ発電量の予測誤差の異なる5つの状態を考慮しており、計算対象期間は1日・1時間刻みであるため、5＾23通りの状態遷移が考慮されている。 本研究では、上記のモデルを用いて特に太陽光発電の出力制御に着目した分析を行った。現在の仕組みでは前日時点で決めなければならない出力制御量を、リアルタイムで決められるようになった場合、どの程度のメリットが生じるのかを分析した。

6-111

再生可能エネルギー電源に対する公平かつ効率的な出力抑制配分の提案―接続可能量による評価

◎北風玲太・原 亮一・北 裕幸・田中英一（北海道大学）

近年，RE電源の大量連系により余剰電力が発生する可能性が懸念されている。余剰電力への対策の一つとしてRE電源の出力抑制が挙げられているが，年間の最大出力抑制日数や時間が整定されており，これを見込んだRE電源の導入量である接続可能量が地域ごとに算定されている。また，系統運用者による出力抑制の実施に際しては，RE電源を所有者間の公平性を確保する必要がある。そこで，著者らは各RE電源の出力予測に基づき，出力抑制時間を削減しつつ，公平性を担保可能な出力抑制配分方法について検討してきた。本報では提案手法の適用がRE電源の接続可能量にどのような影響を及ぼすかを評価する。

6-112

出力抑制制御と蓄電池を併用した自然変動電源の出力変動緩和手法-出力抑制リセットタイミングの検討-

◎森下雄斗・原 亮一・北 裕幸・田中英一（北海道大学）

太陽光や風力発電に代表される再生可能エネルギー(以下、RE)電源の出力変動緩和に対する電力会社から義務づけられた要件を遵守するために高価な蓄電池のみではなく、RE電源の出力抑制を併用する制御手法を開発している。この制御手法では、自主的にRE電源出力の一部を抑制することで出力変動そのものの発生を緩和しつつ、発電機会の損失につながる出力抑制による逸失電力量を少なく効果的に蓄電池容量の削減をすることを目指している。そのためには、いつ、どれだけ抑制することが適切かを考えてきた。本発表では出力抑制のリセット（無効化）のタイミングを決める手法を提案し、その結果について議論する。

6-113

需給調整を評価するマイレージ指標の動向

○尾出友実・山口哲一・品田浩一郎（東北電力）・豊田淳一（東北大学）

米国では需給調整に利用される調整設備の運用に関して調整設備の容量だけではなくその調整性能も評価に含めるという運用方式が進められており，米国各地のISO でいろいろな評価方式が試みられている。その中でも調整性能を評価する「マイレージ指標」は著者らで検討している「需要変動のしわ引伸ばし評価」と相似のコンセプトであり米国の各所ISO で進められている「マイレージ指標」に共通の動向を分析検討した結果を報告する。

6-114

需要ランプ調整とマイレージ評価に関する検討

○豊田淳一（東北大学）・尾出友実・三澤和広・千田卓二・品田浩一郎（東北電力）

米国においては、需給調整に係る性能を評価するのに「マイレージ評価」が利用されている。著者らは、かねてより再エネ変動電源の導入にともなう調整用火力機の起動停止回数の増加の可能性について、「需要のしわ引伸ばし」を利用した分析を行ってきている。米国のルール755の「マイレージ評価」は変動周期が秒／分単位の周波数調整の性能評価を対象としているが、著者らは時間単位の起動停止問題を対象として「需要のしわ引伸ばし評価」を提案してきている。時間領域の差はあるが、「マイレージ評価」と「需要のしわ引伸ばし評価」のコンセプトは相似している。本稿では、マイレージによる時間ランプ変動の調整の評価について検討した結果を報告する。

6-115

リスク鋭感的価値尺度を用いた新しい供給信頼度指標の一提案

◎古川義英・宮内 肇（熊本大学）・三澤哲也（名古屋市立大学）

電力システムの供給信頼度を確率論に基づいて評価する場合、LOLE (Loss-of-Load Expectation) などの信頼度指標を用いることが一般的である。これらの手法では、不確実な要因を確率過程で記述しモンテカルロシミュレーションを行うことで、年間の停電時間の期待値を得る。モンテカルロシミュレーションで得られた確率頻度分布から計算される期待値を指標として信頼度を評価することは、確率頻度分布そのものが持つ性質を無視した評価であり、信頼度指標として情報を十分には活用しておらず不適切である。そこで本研究では、従来のLOLEにリスク鋭感的価値尺度を適用することで、リスク評価の適正化を図る。

6-116

発電機起動停止計画を用いた広域的調整力調達の年間コスト評価

◎桑原卓也・山口順之（東京理科大学）

電力システム改革の目玉の一つに需給調整市場の創設が挙げられている。需給調整市場の基本概要は、広域化による効率化の在り方が重要な論点となっており、今後に向けて経済的な調整力調達の実現に向けて、議論が行われている(1)。広域的な調整力の実現による経済性を定量的に評価すると共に、調整力の地域的な偏在や連系線の使用量との関係についても十分な検討が必要である。そこで本研究では、数理計画法に基づく電源運用シミュレーション手法として発電機起動停止計画を用い、広域的な調整力調達の経済的な価値評価を行う。

6-117

連系線マージンによる調整力融通を考慮した運用コスト・供給信頼度評価

○赤羽光貴・横山明彦（東京大学）・北岸延之・西村剛史・石川幸一郎（東京ガス）

我が国において、全国大で平常時・緊急時の需給調整機能を強化する必要から、連系線の利用ルールの見直しなどがなされており、エネルギー取引(kWh)のための利用と広域的な需給調整メカニズム(ΔkW)をどう整合させていくかが重要なテーマである。特に、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、ゲートクローズ後であってもそれらの発電出力が大きく変動する可能性があり、エリアを越えた需給調整を行うことでより効率的に運用できる可能性がある。そこで、本稿では連系線に調整力融通のためのマージンを確保することによりエリア全体での運用コストと供給信頼度評価に与える影響を検討する。

6-118

融雪期におけるダム残流予測モデル構築手法

◎長田悠人・飯坂達也（富士電機）・佐藤吉行・川崎隆一・下鳥順文（東北電力）

電力会社の発電用ダムでは，出水時のゲート操作及び平水時の発電計画立案のため，残流と呼ばれる上流ダム放流量を除いた流入量予測が必須となる。本稿では，融雪期（3〜5月）の残流予測モデル構築手法を提案する。オンラインで取得できるデータのみで予測を行うため，任意のダムへの適用が容易である。残流変化の傾向（融雪の影響が大きい，降雨の影響が大きい）に合わせ，予測モデルを切換える。東北電力の只見・阿賀野川水系を対象とし，シミュレーションにて予測誤差の評価を行った結果，夏期や冬期と同程度の精度で残流予測が可能であることを確認した。本手法により，通年通して残流予測が可能となる。

6-119

気温予測情報を用いた電線温度モデルの検討

◎川久保志朗・南波和樹・端倉弘太郎（首都大学東京）・杉原英治（大阪大学）・児島 晃（首都大学東京）

近年,太陽光発電(PV)の導入に主眼をおいた電力システムの構成が進められている. しかしながら, PVの出力は天候の変化に大きく依存するため, このような電力システムの運用においては, 系統の制約をより的確に評価することが有用であると考えられる.これまで送電容量制約をより的確に評価するために用いられる電線温度制約を線形近似モデルと線形行列不等式制約に基づいて評価する方法が検討されてきた. しかしながら, 外気温については最悪条件としたため, 気温の予測情報を用いれば, さらに柔軟な運用を行えることが期待される.本報告では気温予測情報の日変化を考慮した予測モデルを用い, それらの予測精度と経済負荷配分制御への影響を評価する.

6-120

小規模エリアの電力需要予測のためのARIMAモデルの検討

◎羽柴雄太・浦野昌一（明治大学）

東日本大震災後，電力供給力不足や省エネなどにより，さらなるエネルギーの効率化や有効活用が注目されている。また，近年蓄電池活用やスマートシティのような仕組みも登場し，最適な制御の実現にはコミュニティ単位での電力需要予測が不可欠である。しかし，従来の電力会社では大規模での予測が中心であったため，小規模予測の対応は出来ていない部分がある。そこで時系列データ予測モデルを改良し，コミュニティ単位の場合でも高精度に対応できるモデルの開発を進める。

6-121

HEMSにおける個別住宅の行動パターン分析に基づく翌日需要電力量の予測手法

◎藤田隆史・植田 譲（東京理科大学）

個別住宅の需要電力量は在宅人数，スケジュール，天候等の様々な要因により変化するため，その予測は需要家群を対象とするアグリゲータや電力系統レベルの電力量予測と比較して困難である。本研究では，まずクラスタリング，及び決定木の技術を用いて個別住宅の過去の需要電力量から住宅それぞれの電力使用の傾向を分析する。そして，需要電力の振る舞いに基づいて翌日需要電力量の1時間値を予測する手法を提案する。その結果，需要予測で一般的なニューラルネットワークを用いた手法と比較して，予測誤差を改善することができた。

6-122

類似施設のBEMS需要データを用いた商用施設の電力需要予測手法

◎藤原孝洋・植田 譲（東京理科大学）

太陽光発電システムを大量導入した場合、発電量が安定しないため需要家でのピーク時の電力使用量の分散や抑制が有効となる。そこで、本論文では、翌日24時間の予測対象施設での負荷予測を他の類似施設の実際の負荷の値を使用し、予測することを目的としている。予測手法は、3つである。1つ目は類似施設の負荷のみ使用した予測手法である。2つ目は、1つ目の手法に加え、前日との誤差を用いた予測手法である。3つ目は誤差に気温の情報を加えた予測手法である。

6-123

盗電判定手法に関する基礎検討

○瀧ケ崎 光・佐野常世・吉村和紘（東京電力ホールディングス）・黒岩正貴・宮田真人・玖島義亮（東京電力パワーグリッド）

配電系統で発生するロスは，配電線の電力設備で発生する電気的損失である技術的ロスと，契約関係がない人が違法に電線と接続したり計器に細工をするなどして消費される盗電などの商業的ロスに区分される。社会インフラが整備され，貧困格差が少ない日本をはじめとした先進国では，商業的ロスは問題視されていないが，アジアや南米などの諸国では盗電による商業的ロスが発生しており，盗電の有無を簡易に判定できる手法が求められている。本稿では，著者らが研究を行ってきた負荷予測手法を応用して盗電の有無を判定することが可能であるか検証を行ったので，その結果について述べる。

6-124

決定木を用いた機械学習による年度別電力需要の要因比較

◎小川治義・山口順之（東京理科大学）

近年、日本では太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及が進んでいる。PVの導入が進むにつれて日中の実需要が減少し需要のピーク時間が変化している。2011年の東日本大震災以降の電力危機により、節電や省エネが大きく進展したが、最近は、これらの効果が薄れている可能性も考えられる。このような需給構造の変化をとらえることは将来の電力供給力確保・安定供給の観点から非常に重要であり、その変化を知るために時刻ごとの電力需要を分析する必要がある。本研究では電力需要のモデル化に決定木を用いた機械学習のアンサンブル法を用いて2008から2015年の電力需要を各年のモデルを作成、入力変数を選択し選ばれた変数のみを用いて再計算する。そして計算結果から求まる変数重要度から電力需要の年度変化を要因から分析する。

6-125

地域特性を考慮した機器別住宅エネルギー需要推定に基づく配電系統評価手法

◎竹延祐二・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）・上林由香・山口容平・下田吉之（大阪大学）

自動車・熱需要の電化や電気機器の省エネルギー化，太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーの普及など，電力消費構造が目まぐるしく変化していく中で，将来の配電系統の運用及び設備設計は大きな影響を受ける事が懸念される。今後，長期に渡る配電系統の設備・運用を効率的に設計していくためには，将来の電力需要・発電の変化の双方を想定しながら，配電系統を評価していくことが重要である。そこで本稿では，地域特性を考慮した機器別住宅エネルギー需要推定と将来の技術普及（HP給湯機，省エネルギー機器）の想定に基づく配電系統評価手法を提案する。

6-126

電力需要特性に基づく配電エリアのクラスタリングに関する一検討

◎松木徹哉・池上幸佑・栗本宗明・舟橋俊久・加藤丈佳（名古屋大学）

将来の配電系統の電力需要は、需要家構成、各種分散電源の導入状況に応じて、量的・時間的に大きく変化する可能性があり、蓄電池等の追加的な設備導入が必要となる可能性がある。電力システム全体として必要となる設備の規模や件数を見積もるためには個々の配電エリアにおける電力需要特性や電圧・潮流等の制約を考慮した検討が必要であるが、全ての配電系統を対象とした検討には多大な労力を要する．本研究では、様々な配電エリアを電力需要特性に基づきクラスタリングし、代表エリアに関する評価結果を同じクラスタ内の他の配電エリアに適用する。その第一段階として、中部エリア5県を対象として配電エリアをクラスタリングした結果を示す。

6-127

車載蓄電池群によるアンシラリーサービス提供の送配電結合モデルに基づく数値的検討

◎弓木翔太・薄 良彦・水田直斗（大阪府立大学）・太田 豊（東京都市大学）・石亀篤司（大阪府立大学）

近年, 配電システムに大量導入された分散電源群による電力システム制御として, 電気自動車の蓄電池を活用したアンシラリーサービスの提供が検討されている. 上記の電力システム制御では, 今後, 配電システムが従来送電システムで担っていた制御機能の役割を担う. この場合, 従来の電力システム解析に用いられてきた送電・配電システムの時空間的なスケール分離は必ずしも自明ではない. 本報告では, 従来の動揺方程式をベースとした送電システムの数式モデルと近年提案された非線形微分方程式で記述される配電システムの数式モデルとを結合した送配電システムのモデル化を提案し, 従来研究で分離されてきた配電電圧の空間的変動と送電周波数の時間的変動を比較的簡易な数式モデルで同時に検討できる可能性を示す.

6-128

EV蓄電池による調整力供給の発電コストに及ぼす影響の一評価

◎柴田皓元・山口順之（東京理科大学）

CO2排出量の削減、エネルギー自給率向上をともに達成することが期待される太陽光発電（PV）への注目が高まってきており、導入量が増加しつつある。しかし、PVは気象条件により発電量が大きく変動するため、将来、調整力を火力発電所だけで確保すること困難になると懸念される。一方、経済産業省は、2030年には電気自動車（EV）の導入が進むと見込んでおり、将来の電力需給に大きな影響を及ぼすと想定される。そこで本研究では、EVを一定数が常に系統に連系されている分散型の蓄電池として扱い、既存の揚水発電所と組み合わせて、電力需給調整力として活用することを想定し、発電コストの抑制効果を評価する。

6-129

負荷周波数制御におけるANNを用いたVPP制御に関する一考察

◎水上瑛太・田邉 龍・岩本伸一（早稲田大学）

近年，二酸化炭素排出量抑制の観点から，再生可能エネルギーが大量導入されている。しかし，周波数は需給バランスによって維持されるため，再生可能エネルギーの出力の変動性から，周波数変動の増大が懸念される。これに対応するためには蓄電池が有効と考えられるが，蓄電池の充電状態(SOC)を適切に制御しなければならない。一方で，IoTの発達により，定格容量の小さい発電設備や蓄電設備を集約することで，従来の発電所を模擬するVPPが話題となっている。本研究では，周波数偏差を低減しつつ，大型蓄電装置のSOCを維持することを目的とし，その目的を達成するために，電力系統にVPPを導入し，ANNを用いた制御法を提案する。

6-130

変圧器容量制約と電圧制約を考慮したLFCに貢献するEVの有効電力・無効電力制御手法

◎高野友義・辻 隆男（横浜国立大学）

本稿では，電気自動車(EV)が系統連系する際のPCSにより無効電力も制御できることに着目し，EVの放電制御による配電系統電圧への影響を緩和するためのEVの有効・無効制御手法を提案する。このとき，配電用変電所の変圧器では，太陽光発電および EVからの有効電力の逆潮流と，電圧制御のための無効電力潮流により，過大な電流が流れ変圧器の容量制約違反を起こすことが懸念される。これを回避するために，フィーダ上流側に位置するEVでは無効電力放出する進相運転を行うことで配電系統内で無効電力の融通を行い，変圧器での過電流の発生を回避することを合わせて検討する。

6-131

需要側調整力としての電気自動車充放電制御の予備検討

◎吉岡七海（東京大学）・浅野浩志・坂東 茂（電力中央研究所）

車載蓄電池の系統利用への期待が高まる中、起動停止計画(Unit Commitment;UC)段階で車載蓄電池を予備力確保に用いることで火力機の起動台数が削減可能なことが示されるなど、車載蓄電池活用の可能性は広がりつつある。一方でUC時点での自然変動電源の予測誤差が大きいと当日に需給均衡できない可能性があり、UCのみを通じてその経済的効果を評価することは適切とは言えない。本稿は予測外れに伴う調整コスト増を評価するため、予備検討として車載蓄電池を需要側柔軟性資源として活用することの経済性評価を、九州電力管内を対象に行う。まず車載蓄電池によるLFC調整力、運転予備力の確保を考慮したUCを予測値の下で作成し、次いで、実績値の下で経済負荷配分を計算し、運用コストを評価する。

6-132

V2Gを活用した将来型系統周波数制御の研究

◎堀田昌希・熊野照久（明治大学）

近年,我が国では太陽光発電(PV)の導入が進んでおり,今後さらに普及していくと想定される。しかし,PVには天候の変化により発電量が大きく変動する特性があり,普及が拡大していった場合,系統周波数制御への影響が懸念されている。 対策の一つとして蓄電池を利用した系統周波数制御が考えられており,先行研究も多く行われている。また,蓄電池を利用する技術として,普及拡大が見込まれているEV・PHVを電力系統に接続し電力融通を行うV2Gの実証実験が行われており、実用化が期待されている。 このような背景をもとに本論文ではV2Gを活用し複数台のPHVによる系統周波数制御を行う解析手法を提案する。

6-133

短周期変動の増加を抑えつつ負荷平準化を行う家庭用ヒートポンプ給湯機の群制御手法

◎堀 立磨・馬場旬平（東京大学）・榊原久介（デンソー）

本稿は、家庭用ヒートポンプ給湯機(HPWH)の群制御による負荷平準化手法を検討したものである。 変動性電源が大量導入された電力系統の需給バランス維持の手段の1つとして、系統側から可制御負荷の消費電力を直接制御することが考えられているが、大量の可制御負荷資源が系統内で運用される際には、可制御負荷の消費電力の急激な変動による系統周波数への悪影響が生じる可能性がある。 本稿では、可制御負荷として特にHPWHに注目し、起動時の急激な負荷変動を抑えながら負荷平準化を行う群制御手法を提案した。 電力系統の周波数シミュレーションモデルを用いてその効果を検証したところ、規定周波数からの逸脱率を低減させる効果が確認できた

6-134

需給調整力提供を目的とした複数コージェネレーションシステムの運用計画に関する検討

◎中村勇太・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・横川 誠・武田清賢（北海道ガス）

自然変動電源の更なる導入には，需給調整力（調整力）をこれまで以上に用意することが不可欠である。既報ではその調整力の供給源として需要家が設置するコージェネレーションシステム（CGS）に着目し，複数CGSを統括的に運用・制御するアグリゲータにより調整力提供の大きさや時間帯などに柔軟性を持たせることができる可能性を示した。しかしながら，既報のように各需要家の機器特性や需要を全て把握することは現実的とは言えず，より実態に即した検討が必要と考える。本研究では，アグリゲータが果たす役割を含めた，調整力提供を目的とした複数CGSの運用計画手法を提案し，数値試算により提案手法の有効性を検証する。

6-135

水素製造技術を活用した再エネの出力変動対策（その1）〜水素製造システムの概要と変動抑制効果の検証〜

◎大山達也・松本 弘・真島洋一・加藤 尚（東北電力）・久保田和人（東芝）・橘高大悟（東芝エネルギーシステムズ）

電力系統への再生可能エネルギーの導入にあたっては，気象条件により発生する出力変動の抑制が課題となっており，当社ではこれまで蓄電池技術を活用して対策に取組んできた。本研究では，再生可能エネルギーの出力変動として，水素製造技術の適用可能性を検証している。 今回の発表では，東北電力㈱研究開発センター構内に設置した水素製造システムの設備概要と運転方法について紹介し，合わせて出力変動抑制効果に関する試験結果の一例を紹介する。

6-136

水素製造技術を活用した再エネの出力変動対策（その2）〜水素製造システムのシミュレーションモデル構築〜

◎久保田和人（東芝）・橘高大悟（東芝エネルギーシステムズ）・大山達也・山口哲一・松本 弘・真島洋一・加藤 尚（東北電力）

水素製造技術を活用した再生可能エネルギーの出力変動対策に関する試験研究を行うため、PV、蓄電池、水電解水素製造装置(PEM)、燃料電池(FC)、模擬負荷で構成される水素製造システムを導入した。同システムは、PVの変動をPEMと蓄電池で吸収するPV変動抑制モードや、模擬負荷で生成した仮想負荷のピークをFCと蓄電池で抑制する模擬負荷ピークカットモードを備えており、制御パラメータの変更でPEM、FC、蓄電池の動作範囲を設定できる。本稿では、PV変動抑制モードに焦点を当て、最適なパラメータの探索を目的として構築した水素製造システムのシミュレーションモデルと評価結果の一例を報告する。

6-137

ニューヨーク州における配電事業者のビジネスモデル開発に関する調査

◎大野智晴・坂東 茂・浅野浩志・高橋雅仁・高木雅昭（電力中央研究所）・小俣真吾・吉岡七海（東京大学）

近年、米国ニューヨーク(NY)州では、レジリエンシーや供給信頼度の向上、再生可能エネルギー電源の受け入れ拡大、老朽設備の更新費用抑制等を目的に、電力系統の近代化をめざすエネルギービジョン革命（REV：reforming the energy vision）に取組み、様々な制度設計検討や実証事業を行っている。この取組の中で配電事業者は、ローカル市場設計等の新たな役割を含めて中核的な役割を担う必要があるとされている。 本稿では、日本でも同様の検討を行う際に資することを目的として、配電事業者の新たなビジネスモデルを中心に調査した結果について述べる。

6-138

不確実性を考慮した配電系統における長期的意思決定支援

○弓削裕要・大森浩充（慶應義塾大学）

近年の世界的な再生可能エネルギーの導入拡大傾向から, 具体的な再生可能エネルギー電源の投資運用方法が課題となる. 本研究では, 出力不確実性を伴う分散型電源の投資者に向けた長期的な意思決定支援の枠組みを作成する. 支払う費用を最小化する二段階確率計画問題として定式化した上で, 現実に即した系統運用を考慮するために変電所の拡張, キャパシタバンクの導入, 逆潮流量制限を扱った. 問題は需要・太陽光発電出力・風力発電出力の不確実性を保有し, その実現値であるシナリオは膨大な数となる. 現実的かつ効率的なシナリオ作成のために, 不確実性間の相関の大きさを考慮したシナリオ生成法を提案した. 数値実験により提案モデルの妥当性とシナリオ生成法の効果を確認した.

6-139

間接オークション導入に伴う卸電力取引市場の動向調査

◎村井 瑛・大山 力（横浜国立大学）

現在の日本の地域間連系線使用ルールには公正性・公平性の課題がある。その解決策として，間接オークションを導入する計画が進められている。間接オークションの導入がJEPXのスポット市場に及ぼす影響を市場シミュレーションを行い調査した。 シミュレーションでは電力需要・供給，取引日，電源ごとの発電コスト・稼働率，スポット市場の約定方式，連系線制約による市場分断処理などの要素を考慮した。 結果として，取引参加者はコストの高いピーク電源を使用せずに電力需要を賄うことができることを確認した。間接オークションを導入し，市場の経済合理性が高まると，コストの高い電源が将来的に不必要になる可能性があると考えられる。

6-140

U-Martを用いた電力取引市場模擬環境の検討

○平野秀明・北村聖一・森 一之・泉井良夫（三菱電機）・森 直樹・松本啓之亮（大阪府立大学）

発送電分離に向けた動きが進んでおり、発電・小売事業者はそれぞれ計画値同時同量を課せられている。例えば、卸電力取引市場を活用することで計画と実績を一致させるが、市場は競争環境であり、取引の不確実性、自社収益や電源運用への影響から、取引業務には慎重を期する必要がある。 本研究では、事業者が任意の市場状況での模擬取引およびその検証、取引業務未経験者への教育等を可能にするため、電力取引市場シミュレータを構築する。汎用的な人工市場システムU-Martをベースに電力取引市場に対応するため、電力取引商品や連系線等の電力取引市場特有の条件について検討した。

6-141

電力需給解析手法を用いたネガティブプライスに関する基礎検討

◎水野碩人・山口順之（東京理科大学）・東 仁・福留 潔・磯永 彰（JPビジネスサービス）

近年，世界中で脱炭素社会の実現するために再生可能エネルギー発電の普及が拡大している。しかし再エネによる発電は気候の状態によって出力が大幅に変動してしまうため余剰電力発生などの問題が生じている。余剰電力の発生に伴ってドイツでは卸電力取引所にてネガティブプライスでの取引が発生した。我が国でも同様にネガティブプライスでの取引が発生する可能性が考えられる。ネガティブプライスでの取引を行うことが市場，系統にどのような影響を及ぼすのか現在，不透明である。 本研究では，ネガティブプライスを考慮した広域需給調整プログラムによって電力需給解析を行い，ネガティブプライスの影響評価を行う。

6-142

電力部門の高時間解像度分析を可能にした動学的多部門エネルギー経済モデルの開発

◎磯貝 基・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

地球温暖化や枯渇性資源問題等に代表されるエネルギー問題への議論が高まる中，今後100年のエネルギー政策に現実的な示唆を与えるエネルギーモデルは，エネルギーシステムそのものだけではなく，他産業との経済的関係について検討可能であることが望ましい．そこで，我々が開発を続けている動学的多部門エネルギー経済モデルでは，エネルギー部門の中でも特に電力部門にフォーカスし，ボトムアップ式に非常に高い時間解像度(年間の出力を1時間毎に分割)で分析可能にすることで，再生可能エネルギーの出力変動の考慮を可能にした．また，その他の産業は独自の方法を用いてトップダウン式に定式化し，電力部門とその他部門との経済的相互作用についての分析を可能にした．

6-143

電力需給モデルによる再エネ大量導入下でのマージナルコスト決定要因分析

○中山寿美枝・簑津真一郎（電源開発）・東 仁・磯永 彰・福留 潔（JPビジネスサービス）・荻本和彦・片岡和人（東京大学）

再エネ大量導入下における電力系統運用と電力市場の課題の検討として、2030年の日本の電力系統における変動性再エネ（VRE：PVおよび風力）および柔軟性によるマージナルコスト（MC）の決定要因に関する分析を、系統連系を考慮した電力需給解析モデルで行った。VREとしては政府の2030年目標シナリオと大量導入シナリオを、柔軟性としては、連系線によるエネルギー融通の有無、石炭火力のLFC調整の有無、揚水運用の有無、について影響を評価した。その結果、VRE導入シナリオに共通して、石炭LFC、揚水によるMC決定要因への影響が確認された。

6-144

電力システムの運用設備の変更による二酸化炭素排出削減効果の評価

◎馬渡栄嘉・池上貴志（東京農工大学）

本研究では、2030年時点で想定される原子力発電，火力発電を用いた運用する設備の変更のみによるCO2排出削減効果を削減コストとともに評価することを目的とした。再エネ発電の出力抑制制御や短周期変動の必要調整力を確保することを考慮した発電機の起動停止計画モデルを用いた電力需給解析を行い、コスト最小の運用による評価だけでなく、CO2排出削減コストを評価するためにCO2排出削減単価を設定することでCO2排出削減量をコストメリットに転換して最適化計算を行い、トータルのコストが最小となる運用方法の評価を行うこととした。CO2排出削減単価を変化させて計算を行い、それぞれにおけるCO2排出削減効果を明らかにした。

6-145

損益リスク定量化のためのモンテカルロ法高速化に関する検討

◎佐野正裕・内藤健人・平野秀明・広瀬公一（三菱電機）

発送電分離に伴い，発電及び電力小売事業への新規参入業者が増加することが見込まれる。このため，全ての事業者は，高い精度で将来の事業損益(=損益リスク)を予見し事業計画等を実施する必要がある。損益リスクの定量化には，モンテカルロ法が一般的だが、従来のモンテカルロ法では変数の数や演算数に応じて計算時間が膨大になるため，高速化が求められる。 本稿ではリスク指標を高速に求めるために，発電機の起動パターンに応じた重回帰モデルを利用したモンテカルロ法を提案し，シミュレーションにより提案法の効果を検証した。 この結果、提案法では従来法と比較して約10倍の高速化を実現しつつ，リスク指標の誤差が1%未満である結果を得た。

6-146

不確実な電力市場価格の下での需給計画に関する一検討

◎内藤健人・平野秀明・森 一之（三菱電機）

電力自由化環境の下で発電・小売事業者が利益を最大化するためには，需要家への売電と電力市場での取引を考慮して需給計画を作成する必要がある。この際，市場価格の予測の不確実性を考慮して期待利益を最大化する手法が求められる。このような手法にラグランジュ緩和法を用いる手法や確率動的計画法を用いる手法などがあるが，いずれも求解に時間を要するという問題点がある。そこで本稿ではUnit Decommitment法を用いて高速に計画を策定する手法を検討した。発電機15台に対する週間需給計画シミュレーションを行った結果，CPU：Intel Core i5-6600K，メモリ：8GBのPCを用いて約302秒で求解することができ、不確実性を考慮しない手法と比較して利益が1.02%改善する結果となった。

6-147

ブロックチェーンを用いた分散型PV余剰電力取引システムの検討

◎長塚卓巳・佐野盛僚・山口順之（東京理科大学）

近年，我が国では再生可能エネルギー発電のFITによりPVが大量導入されてきている．PV大量導入に伴い，電力需要が少なくPV発電量が多い時間帯において余剰電力が生じつつある．この余剰電力を有効活用するには，単にPVを出力制御するだけでなく，電力需要をシフトすることが望ましい．そのためには，PV余剰電力が発生する時間帯に電力需要を通常よりも多くすることのできる需要家とPV出力をマッチさせる必要がある．本研究では，コストと信用リスクを低く抑えることのできるブロックチェーンと，取引のプロセスにおいて，中央の取引所を介さずに，自律的で透明性の高い取引を行うことができるスマートコントラクトを活用したPV余剰電力取引システムを提案する．

6-148

ブロックチェーンを用いた分散型PV余剰電力取引システムの処理時間に関する予備実験

◎佐野盛僚・長塚卓巳・山口順之（東京理科大学）

太陽光発電（PV）が大量に導入された電力系統において，従来通り電力の同時同量を維持するために，一部のPVに出力制御対応機器を設置した出力制御システムの構築が進められている。筆者らはこれまでに，出力制御システムに用いられている電力サーバーをブロックチェーンに置き換え，スマートコントラクトを応用することにより，余剰電力を近隣の需要家と融通し，出力制御を回避する方法の提案している。そこで本研究では，提案システムの処理時間の決定要因を明らかにするために，複数台の電子計算機（PC）を接続した実験環境を構築し，予備実験を実施する。

6-149

インバランス料金制度における供給力不足時間帯の予測に関する一検討

◎金子奈々恵・藤本 悠（早稲田大学）

電力小売全面自由化以降，小売電気事業者等には 30 分計画値同値同量が求められており，小売り事業者は供給計画値と実需給が一致しなかった場合，インバランス料金単価によって決まる金額を支払うこととなる。インバランス料金単価の係数は系統全体での需要と供給のバランスにより決定されることから系統全体での電力供給の過不足を判断する1つの指標となり，インバランス料金単価の予測は供給が十分ではない時間帯を正確に把握し計画値を提出する意思決定を行うにあたり重要となる。本稿では，供給力過不足を二値判別問題としてとらえた予測アプローチを検討し，シミュレーションに基づき，供給力不足時間帯の予見可能性について評価を行う。

6-150

拡張型マイクログリッドクラスターにおける送電混雑時の送電運用および託送料金の分析

◎森元雄介・田中哲人・岩村一昭・高森 寛・中西要祐（早稲田大学）

大規模な地震のような災害が発生しても安定して電力を確保することは早期復興や地域社会の発展においても重要である。ここでは電力安定供給を実現する手段として、地域を再生可能エネルギー発電と需要を両方含む地産地消のノード(拡張型マイクログリッドクラスタ―)として捉え、電力不足時に電力余剰の地域から融通する方式が考える。本研究では、異なる価格弾力性の需要と発電の両方を持つノード間で、余剰/不足電力を解消するために、連系線の双方向に電力が流れる輻輳ノードモデルにおいて、社会厚生の最大化がなされるように、競争市場下における電力需給バランスと均衡価格を決定する方法を提案する。また、送電線混雑時の最適な託送料金の設定手法についても検討する。

6-151

2050年低炭素社会における発電部門: 高時間解像度エネルギーシステムモデルによる一考察

◎川上恭章・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

2050年に向けた大幅なCO₂削減の技術オプションを提示する既往研究は多いが、いずれも発電部門の時間解像度が低く、出力変動電源の変動性や火力発電の負荷追従性、最低出力制約等の技術的観点を十分に考慮できない課題を有する。本研究は60分・365日連続という高時間解像度を持つ発電部門を統合したエネルギーシステムモデルを開発し、2050年に日本のCO₂排出量80%削減を実現する最適技術構成を分析した。分析により、大規模CO₂削減には発電部門の最大限の低炭素化が不可欠であり、アンモニア発電や水素発電等の次世代発電システムや、CCSによるCO₂隔離といった新技術の導入を要すること、また原子力発電の稼働増が総コストを低減させることが明らかになった。

6-152

需要家行動モデルによる電気料金メニュー策定

◎奥村悠太・丸山高弘（三菱電機）

電力小売自由化および電力小売料金規制撤廃により、電力小売事業者間で電気料金メニューの設定による需要家獲得競争が激化している。その際、電力小売事業者は需要家を獲得しつつ、所望の利益を確保できるような適切な電力料金メニューを設定する必要がある。適切な電気料金メニューの設定には、需要量の予測が不可欠であり、とりわけ電気料金メニューの変更に伴う需要量の変化量を考慮する必要がある。先行技術では、需要家の契約変更をモデル化し、需要量の変化量を推定しているが、他社への契約変更は考慮されていても、自社への契約変更は、未契約需要家に関する情報量の不足により考慮されていなかった。本稿では、自社への契約変更も考慮した需要量の変化量を推定し、その推定結果に基づき、電力小売事業者の利益が最も大きくなる電気料金メニューを策定する手法を提案する。

6-153

JEPX取引価格と燃料価格に関する一検討

◎森田 圭（JXTGエネルギー）

2016年4月の電力小売全面自由化に伴い、様々な事業者が電力小売事業に参入した。大半の新規参入事業者は旧一般電気事業者と異なり十分に電源を保有していないため、電力の調達を日本卸電力取引市場(Japan Electric Power Exchange : JEPX)に頼っていることが多い。したがって、それらの新規参入事業者が効率的な事業計画の立案や日々の調達計画の最適化を行うためには、JEPXの取引価格を精度良く推定することが求められる。本稿では、JEPXの取引価格の推定のための予備的検討として、燃料価格とJEPXの取引価格との関係についての検討結果を述べる。

6-154

太陽光発電の大量導入に伴う配電系統における課題と取組みについて

○久冨木 護・後藤太一・久保田浩之・田中俊生・張本 毅（九州電力）

固定買取価格制度（FIT）導入以降、九州電力管内では太陽光発電の連系量が増加しており、そのうち約9割が高低圧の配電系統に接続している。これに伴い、配電系統においては電力品質への影響が顕在化している。 電力品質上の影響は、低圧用パワーコンディショナに具備されてた単独運転検出機能（新型能動的方式）からの無効電力に起因する電圧フリッカ現象と、配電系統内の逆潮流量増加に伴う系統電圧低下現象の二つに大別される。本発表では、九州電力管内における太陽光発電の連系状況を説明したのち、二つの課題と具体的な取組みについて報告する。

6-155

逆潮流による配電線電圧低下の条件とセンサー内蔵開閉器の計測情報の比較

◎藤井嵩大・飯岡大輔・斎藤浩海（東北大学）・田中俊生・張本 毅・嶋田昭彦・後藤太一・久冨木 護（九州電力）

一般的に、配電線末端に太陽光発電を連系した場合配電線電圧は上昇することが知られているが、逆潮流の著しい増加により配電線電圧が低下することが確認されている。本稿では、まず実配電系統に設置されたセンサ内蔵開閉器による計測情報を用いて逆潮流の増加により配電線電圧が上昇及び低下するケースを示した。次にP-Vカーブを用いて配電系統の構成と配電線電圧の上昇及び低下の関係性について示した。また、センサ内蔵開閉器の計測情報とも比較し妥当性を示した。

6-156

太陽光発電が大量連系された配電線で測定された電圧低下と不平衡を表す不平衡潮流計算

○飯岡大輔・斎藤浩海（東北大学）・田中俊生・張本 毅・嶋田昭彦・後藤太一・久冨木 護（九州電力）

配電系統に連系された太陽光発電からの逆潮流が著しく増加した場合，配電線電圧が低下する可能性が指摘されており，センサー内蔵開閉器の計測情報から配電線の電圧が実際に低下したケースがあることを確認している。センサー内蔵開閉器が設置されている配電線の中から，太陽光発電からの逆潮流に起因して配電線電圧が低下していると考えられる計測データを抽出したところ，大きな電圧不平衡も伴うデータがあることを確認したので，これを再現する不平衡潮流計算を行った。その結果，太陽光発電の不平衡出力を考慮する必要があることを明らかにした。

6-157

太陽光発電の大量連系による逆潮流が配電系統の相差角に与える影響について

○田中俊生・中山陽介・張本 毅・嶋田明彦・大野祐司・後藤太一・久冨木 護（九州電力）・飯岡大輔（東北大学）

配電系統で太陽光発電の逆潮流の増加に伴い電圧が低下する際は、遅れ無効電力の消費が増加することが実測データにより確認された。 先行研究では、太陽光発電の連系地点の相差角が変電所より進むことで、配電系統は逆潮流となり、遅れ無効電力の消費が増加することが述べられている。 今回、シミュレーション及び模擬配電線路による実証試験から、太陽光発電の逆潮流の増加に伴い、電圧が低下すること、相差角が進むこと及び遅れ無効電力の消費が増加することがわかったので報告する。

6-158

低圧太陽光用PCSからの無効電力に起因する配電線電圧変動について

○張本 毅・中山陽介・後藤太一・久冨木 護（九州電力）・百武宏記・林 秀美（キューヘン）・馬場旬平・早川航平（東京大学）

近年、新型能動的方式（ステップ注入付周波数フィードバック方式）からの無効電力を原因とする配電線の電圧変動が発生している。この電圧変動には、各線間電圧の変動のタイミングが揃っている場合と、変動周期に対して1/3周期ずつずれている場合がある。STATCOMが電圧変動を補償している時は、タイミングが1/3周期ずれ、線間電圧の三相平均値の変動がほぼ零になっているため、現行の平衡補償制御では、STATCOMの出力が増加しない。そこで今回、XTAPによるシミュレーションにより上記現象の再現し、周期ずれの発生原理に関する検討を行ったため、その成果について報告する。

6-159

低圧用新型能動方式PCSと負荷の無効電流特性

◎竹下健太・坂本織江（上智大学）・張本 毅（九州電力）

近年の太陽光発電の導入拡大に伴い、新型能動方式PCSが多量に連系している配電線において、PCSからの無効電力注入による電圧フリッカの発生が報告されている(1)。その発生機構の検討のために、著者らは、低圧単相試験回路における新型能動方式PCSと負荷の相互作用について、実験と電力系統瞬時値解析プログラムXTAPを用いた解析を行っている。本稿では無効電流に関する結果を報告する。

6-160

相間で位相差のある周期的電圧変動発生時のdq変換値の解析

◎早川航平・馬場旬平（東京大学）・久冨木 護・張本 毅（九州電力）

近年、新型能動的方式（ステップ注入付周波数フィードバック方式）の無効電力注入機能に起因すると考えられる配電線の電圧変動が発生しており，電圧変動の振幅および位相が各相で異なる事例も観測されている。 電圧変動抑制手法の1 つにdq変換値を利用した無効電力補償が挙げられる。本稿では，相間で位相差のある電圧変動が発生したときのdq 変換値の変動について検討した。 その結果，相間で位相差のある電圧変動が発生したとき，三相不平衡成分による振動と近い周波数でd軸電圧，q軸電圧ともに振動することがわかった。今後は，無効電力補償によって相間で位相差のある電圧変動を抑制できるように，dq変換値上で三相不平衡成分と電圧変動分を分離する手法について検討する必要があると考えられる。

6-161

配電系統におけるPV導入量増加が及ぼす影響に関する考察

◎泰間智也・瀧ケ崎 光・佐野常世（東京電力ホールディングス）・小比類巻 智・渡辺 彰（東京電力パワーグリッド）

近年，電力需要が停滞・減少傾向となっている一方で，配電系統に対する太陽光発電(PV)の連系量は急増している。 配電系統では，PVの連系に際し，配電線の太線化等の連系対策工事を行っている。しかしながら，近年ではPV連系量が広域的に急増しており，上位系統の対策が必要となるなど，配電系統だけの局所的な対策では許容できなくなってきている。2050年にはPV連系量が直近年の十数倍以上にもなるとの見込みもあることから，今後も同様の事例が増加していくと想定される。 本稿では，人口減少とPV導入量の長期的な想定値に基づき，首都圏における配電系統における影響を検証するとともに，その対策案について考察したので，その結果を述べる。

6-162

スマートメータ情報を活用した住宅用PCSの出力力率制御手法の検討

◎森脇 滉・上村 敏（電力中央研究所）

近年，逆潮流による配電線電圧の上昇が問題となっており，この対策として住宅用パワーコンディショナ等の低圧系統に連系する発電設備の力率0.95一定制御が系統連系規定に盛り込まれた。一方で，2019年からのPVの余剰電力買取期間満了の需要家の発生やPV買取価格の低下，政府のネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの推進により，PV発電電力の住宅内自家消費への移行が想定される。筆者らはこれまでに，この状況下で力率一定制御した場合，系統へ進相無効電力のみが注入され，配電線電圧が著しく低下する可能性を確認した。本発表では，スマートメータ情報を活用したPV逆潮流時の配電線電圧の上昇抑制，PV自家消費時の電圧低下抑制ともに寄与するPCS制御手法を提案する。

6-163

スマートメータを活用した高圧配電系統における電圧推定手法に関する検討

○西田悠介・瀧ケ崎 光・廣瀬健太郎（東京電力ホールディングス）・阪本雄祐（東京電力パワーグリッド）

高圧配電系統では、立ち上がり点から負荷分布による電圧降下を加味し電圧管理を行っている。しかしながら、近年、太陽光発電(PV)をはじめとする分散型電源の配電系統への連系量が急速に拡大している。PVが大量連系された配電系統では、急峻な発電量の変化に伴い、従来よりも電圧が複雑に変化する。したがって、より複雑な電圧変化に対応するため、配電系統に応じた詳細な電圧管理が不可欠となる。従来では配電用変電所の送出し電圧及び電流、またはセンサ内蔵開閉器の測定値及び電圧制御器設置点の電圧・電流などを用いて電圧管理を行っているが、測定点以外の電圧を把握するにはシミュレーション等を実施する必要があった。逆潮流を踏まえたシミュレーションについても報告されているが(1) (2)、より詳細な電圧検討の実施には従来よりも多くの測定点が要求される。一方で、電力量をデジタルで計測し、メーター内に通信機能を持たせたスマートメータ(SM)の導入が進んでおり、新たな電圧管理方法も期待されている(3)。以上を踏まえ、著者等は、SM計測データを用いた高圧配電系統における新たな電圧推定手法を提案し、その有効性について検討を行った。

6-164

配電系統におけるPVのならし効果を考慮した系統用蓄電池の容量設計に関する基礎検討

◎赤木 覚・芳澤信哉・伊藤雅一・藤本 悠・宮崎 輝・林 泰弘（早稲田大学）・矢野 孝・久田俊哉・田和克久（住友電気工業）

近年，配電系統への太陽光発電の大量導入に伴う需給バランスの悪化が課題となっており，系統用蓄電池の活用が検討されている。蓄電池の効率的な利用のためには，適切な容量選定が重要となるが，必要容量は系統状況によって異なるため容易ではない。特に，蓄電池を変動緩和に用いる場合においては，運用に必要な出力はPVのならし効果の想定に大きく影響されると考えられる。そこで本稿では，ならし効果による影響を確認するため，ならし効果が比較的少ないと考えられるLarge Scale PVのみが設置されたケースと，大きなならし効果が期待されるMiddle Scale PVが分散設置されたケースの双方において，運用に必要な蓄電池の容量を比較する。

6-165

集中型蓄電池を用いた配電系統のホスティングキャパシティ増大手法の検討

◎張 昊・菊池翔太・今中政輝・馬場旬平（東京大学）・飯岡大輔・三浦幸也（東北大学）・浅野浩志（電力中央研究所）

集中型蓄電池を用いた配電系統のホスティングキャパシティ増大手法の検討近年、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及が拡大しており、それにより配電系統においては逆潮流による電圧上昇の問題が厳しくなりつつある。本稿では、その解決策として集中型蓄電池を想定し、ホスティングキャパシティを指標として、太陽光発電の導入可能量に対する影響を分析した。結果として、蓄電池の設置はホスティングキャパシティを増大する可能性があり、その設置地点がフィーダの末端に近いほど効果が著しいが、系統に採用されている制御手法もホスティングキャパシティに対して大きな影響があることが分かった。

6-166

導体非接触型交流高電圧センサの性能評価

◎北村高嗣・三田慎一・北野豊和・宮里健司（ダイヘン）・飯田智巳・飯田明由（イイダ電子）

近年の複雑化する配電系統に対し，安全かつ取付容易な測定装置の活用は，システム高度化への有効な手段の一つである．そのような測定装置の候補として開発が行われている「導体非接触型交流高電圧センサ」に関して，測定原理の紹介と性能評価について報告を行う．原理として，筐体内にある複数の電極について電極間で発生する電流量を測定して電圧を算出する．三相各線への取付により，接地方式や相電圧の平衡状態に依存せずに三相線間電圧を測定することができる．性能試験として，電圧，温度，湿度のいずれかを変化させて測定値と真値の誤差を調べた．常温湿環境下について精度よく測定できた一方，過酷環境下では精度が低下する事がわかった．

6-167

リアルタイムディジタルシミュレータを用いた配電系統向け新型電圧調整機器の制御性能比較

○大井章弘・神通川 亨・金澤康久（富士電機）

近年，太陽光発電（PV）が急増しており，配電系統への導入量も増加している。PVの急激な出力変動に対し，既存の自動電圧調整器(SVR)では動作時限による制御応答の遅れにより，系統電圧が管理値から逸脱する懸念がある。そこで，電圧を高速に連続的に調整可能な無効電力補償装置（SVC）や静的同期直列補償装置（SSSC）の適用が検討されている。これら複数台機器による系統全体での電圧最適化を行うための電圧制御方式として，中央監視システムによる集中制御と機器間の相互通信による協調制御を検討してきた。今回，リアルタイムディジタルシミュレータを用い，電圧制御システムに実装したローカル制御，協調制御，集中制御の制御性能比較を行った結果を報告する。

6-168

確率潮流計算を用いた配電系統の電圧適正化方式の検討

○犬塚達基（日立製作所）

分散電源が導入された配電系統に確率潮流計算を適用して，電圧調整機器による電圧適正化の制御方式を検討した結果を報告する。

6-169

配電線送り出し電圧制御おける配電用変圧器GPT2次電圧補正の影響

◎中崎陽介・石丸雅章（北陸電力）

配電線電圧はLRTやSVR等の電圧調整機器によって，規定電圧内に維持されている。LRTの送り出し電圧制御では，配変6.6kV母線に設置されている計器用変圧器GPTの2 次電圧を使用している。GPT 2次電圧はGPT自体のインピーダンスによる電圧変動分を含んでおり，この変動分の補正の有無が配電線電圧制御に与える影響を確認しておく必要がある。配変のGPT 2次電圧は，比誤差-負担特性の影響により理想変圧器として計算される2次電圧とは異なる場合があることを実測により確認した。また，配電線電圧計算において，GPT 2次電圧を補正したLRTの基準電圧整定値を用いた場合，補正しない基準電圧整定値を用いた場合と比べて電圧計算精度が1％以上向上するケースを確認した。

6-170

配電系統のループ運用時におけるHVRの導入効果

◎近藤大貴・青木 睦（名古屋工業大学）・佐々木俊介・小嶋利朗・石井佑弥（中部電力）

近年，電力系統において太陽光発電システムの大量連系が進んでおり，天候の変化による急峻で不規則な電圧変動が問題となっている。この問題に対し，既存の電圧制御機器である自動電圧調整機器SVRを用いた新たな制御手法などが提案されている。しかし，SVRは機械的な動作を伴うため高速に動作を行うことができず，さらなるPVの導入量増加による電圧の適正維持が困難になることが予想される。この問題に対して，タップ切替回路とインバータを併用することで高速かつ連続的な電圧制御が可能な新型電圧制御装置HVRが提案されている。また，電圧変動を抑制する方法として古くから系統のループ運用が提案されている。そこで，本論文では，配電系統のループ系統にHVRを導入することで得られる効果について検証を行った結果について述べる。

6-171

減衰IDS型Q学習を用いたCell Gridによる配電系統の電圧上昇抑制

◎竹中龍一郎・高山聡志・石亀篤司（大阪府立大学）

近年, 太陽光発電(以下, PV)の大量導入に伴い需要家からの逆潮流の影響で連系点の電圧が上昇し，規定範囲から逸脱する電圧上昇が顕在化している。この問題に対して著者らは, 各需要家による自律的な無効電力の運用により, 電力系統の電力品質維持への寄与を目的としたCell Gridを提案しており，特にCell Gridの無効電力出力量について強化学習を利用した手法を提案している。本稿では, 事前に学習を行った状況よりもPV導入量が増加し未学習の電圧を検知した場合についても, Cell Gridが自律的に対応可能か評価を行う。また，一回毎の学習効果を高めるIDS(Ink Drop Spread)更新則を取り入れ, IDSの有無による電圧逸脱量を比較し更新則の有用性について検討する。

6-172

地域負荷供給系統における上位変電所の分散協調型電圧制御手法に関する検討

◎新二日市裕希・青木 睦（名古屋工業大学）・山口忠徳・中地芳紀（中部電力）

近年，デマンドレスポンス(DR：Demand Response)など需要家リソースの活用などが検討されている。中でも，自動DR(ADR：Auto Demand Response)が面的に複数の需要家で同時に行われると複数の配電用変電所(DS：Distribution Substation)において，同時に同方向の電圧制御が行われると考えられる。このとき，上位の変電所(US：Upper Substation)で一括して代行制御できれば，下位変電所に相当するDSの電圧制御機器の動作回数を低減することができ，機器の長寿命化につながる。しかし，電圧が適正範囲内にあるDSでは，USの代行制御に伴いDSの電圧が適正範囲から逸脱し，逆に電圧制御機器の動作回数が増加してしまう恐れがある。本論文では，先行研究のUSの制御について改良手法を提案し，シミュレーションによりその有効性を確認する。

6-173

無効電力による配電線電圧調整に関する比較検討

○大日向 敬・有松健司（東北電力）・小木宏史・中島高幸（電力計算センター）・山田 真・小島武彦（富士電機）

無効電力による電圧調整装置について，SVCのように進みから遅れ無効電力まで調整可能な装置と，可変インダクタ適用装置のように遅れのみ調整可能な装置の電圧補償効果について，計算機シミュレーションにより比較検証を行った。

6-174

系統切り替えを考慮したSVRとSTATCOMの協調制御手法の一検討

◎橋本和也・青木 睦（名古屋工業大学）・佐々木俊介・小嶋利朗・石井佑弥（中部電力）

近年，太陽光発電（PV）の導入が進んできており，配電系統において急激な電圧変動や電圧上昇を起因とする電圧管理上の問題が懸念されている。その対策の一つとして，STATCOMを配電系統に導入することが検討されているが，容量の制約があるため，SVRとの協調が求められている。本論文では，LDC要素を導入したSVRとSTATCOMによるオフラインでの協調制御手法を提案する。提案手法はSTATCOMの制御がない状態での電圧降下量の推定により、SVRの不感帯を変更させることで、実際にSTATCOMが制御した場合の電圧降下量の違いを利用して動作協調をさせる。さらに，系統切り替えの負荷変動に対応した決定手法を提案する。

6-175

Cooperative Tap Control for Multiple SVRs in Distribution System with Photovoltaics

◎Yidi Wang・Takao Tsuji（Yokohama National University）・Shimpei Oe・Takayoshi Yamamoto・Masayuki Oyama（Kansai Electric Power Co., Inc.）・Masato Watanabe（TEPCO Power Grid. Incorporated）・Yusuke Nishida（Tokyo Electric Power Company Holdings, Inc.）

With the photovoltaic (PV) penetration, the voltage rise problem is becoming more and more serious due to the reverse power flow in distribution systems. Conventionally, step voltage regulators (SVRs) have been used to keep voltage profile within the allowable range. In fact, not only LDC parameters but also time delay of tap operations is an important factor to decide control performance, in particular, in the case of the system with multiple SVRs. Hence, in this paper, the relationship between the parameter setting of the time delay and the control performance is analyzed based on a distribution system model with two SVRs and PVs.

6-176

高圧配電線の位相切断時における変圧器の磁気飽和による共振現象の解析

◎熊 安捷・北川 亘・竹下隆晴（名古屋工業大学）・岩月秀樹・國井康幸・上田 玄（中部電力）

高圧配電線の停電工事において，その配電線を1相切断する際，切断箇所の負荷側に高圧ケーブル等の対地静電容量と，自動開閉器等の無負荷変圧器が設置されていると，変圧器の磁気飽和を原因とする共振状態が継続して発生する場合がある。この共振は，高圧配電系統の中性点電位を変動させるため，変電所の接地用変圧器が零相電圧を検出し，配電線の遮断等の不必要動作を発生させる可能性がある。本論文ではこの変圧器の磁気飽和を原因とする共振現象について，簡単化した等価回路の検討を行い，共振現象が継続して発生する位相条件を理論的に求めた。

6-177

配電系統における高調波の発生源推定と実験による検証

◎二宮伸夫・望月柾成・川﨑章二（明治大学）

パワーエレクトロニクス技術の進展による非線形負荷が多様化，分散型電源の配電系統への連系台数の急激な増加に伴い，これらの機器から発生する高調波が系統の電力品質に及ぼす影響が懸念されている。これに対して，系統の高調波を抑制する対策は行われているが，高調波抑制対策機器は設置や管理に掛かるコストが高額になるため，高調波の発生が顕著である箇所を推定して，効率的に設置することが望ましい。 本研究では，高調波電流の方向別分離を用いて配電系統における高調波発生源の推定方法について検討を行う。配電系統モデルを用いた数値解析と配電系統模擬設備を用いた実験により，発生源推定の可能性を検証する。

6-178

多地点同期計測システムを用いた配電系統の高調波潮流の可視化に関する一検討

◎佐々木星斗・藤田真也・青木 睦（名古屋工業大学）・小島一浩（中部電力）・大谷哲夫・天雨 徹（名古屋工業大学）

近年，太陽光発電などの普及やインバータによる誘導電動機の可変速制御の普及などによって，配電系統においてパワーエレクトロニクス機器が多数連携されるようになってきた。これらの機器から発生した高調波が系統の条件によって拡大し，機器の加熱・損傷や誤動作を引き起こす原因となっている。とくに近年では，高次高調波に関する障害事例も報告されている。配電系統における高調波対策を効果的に行うためには，高調波発生源の特定が有効である。そこで本研究では，多地点で同期して電流・電圧が計測可能なシステムを用いて，高調波発生源の特定を目的とした分岐回路における3地点の電圧波形データの測定・解析を行ったので報告する。

6-179

集合住宅が連系した配電系統における家庭用コージェネレーションによる太陽光発電の出力変動補償制御効果の評価

◎小井手孝徳・古林建人・三谷康範（九州工業大学）

近年，エネルギー・環境面の問題のための国策によって太陽光発電(PV)の導入が拡大しており、同時に経済効率性、環境適合性の観点から熱電供給システムであるコージェネレーション(CG)の導入も増加している。こうした中で、太陽光発電の発電量は天候による影響を強く受け、出力が不安定という特徴があり、導入が進むと電力系統の周波数維持に悪影響を及ぼすことが懸念される。先行研究において、その対策としてCGの発電電力で太陽光発電の変動補償を行うことが提案されている。本論文では、そのCGの制御ロジックを集合住宅が連系した配電系統モデルに適用した場合を想定し、配電系統の電圧変動に対してどのような影響があるのか解析・評価を行う。

6-180

配電系統における太陽光発電の出力変動に起因する受電端電圧変動に関する基礎検討

◎廣瀬健太郎・前田 亮・加藤彬久・山本良太（東京電力ホールディングス）・緑川 将（東京電力パワーグリッド）

固定価格買取制度が導入されて以降，太陽光発電を中心とした分散型電源の普及が急激に進んでおり，当初太陽光発電の目標導入量を2020年に2800万kW，2030年に5300万kWとしていたが，近年はこれを上回るペースで普及している。これらの太陽光発電が電力系統に連系されると，至る所で逆潮流が発生することで，電力潮流が複雑になり，電力品質の維持が困難になることが想定される。 これまで，配電線へ分散型電源が連系されると連系点までの距離（インピーダンス）と連系容量（逆潮流量）によって電圧上昇が生じると一般的に考えられてきた。しかし，長亘長であり，大容量の分散型電源が連系されている配電線では，分散型電源からの逆潮流により，通常とは逆に電圧が低下する事象が散見されてきた。 これまでの先行研究では，ベクトル計算などを用いた回路論的考察にて一定程度メカニズムが明らかにされてきた1)2)。しかし，一般的な配電線には負荷が点在することから理論値と計測値が合致するかを検証することは困難であった。今回，専用線（無負荷，太陽光発電のみ連系）において太陽光発電の出力変動によって変動する受電端電圧が理論値と合致するか検証したのでここに報告する。

6-181

様々な太陽光発電の導入分布に対するセンサ計測器の最適配置に関する基礎検討

◎芳澤信哉・林 泰弘（早稲田大学）

配電系統への太陽光発電の大量導入に伴う電圧逸脱問題の解決として，配電系統に設置するセンサ計測器を活用した集中型電圧制御手法が多く提案されている。これらの手法ではセンサ計測値を活用して動的に電圧管理することが特徴であるが，太陽光発電の分布・量が今後どのように導入されるか分からないことから，配電系統状況を正確に把握し，電圧管理性能を向上させるためにはセンサ計測器の設置台数を増加させる必要がある。本研究では，センサ計測器の最適配置に関する基礎検討として，様々な太陽光発電の導入分布に対する配電系統の電圧分布解析に基づき，集中型電圧制御下におけるセンサ計測器の設置地点の影響評価を行う。

6-182

配電系統末端への大容量太陽光発電装置導入時における線路損失および配変への逆流電力に関する検討

○松村年郎・塚本真澄・高木聖人・森 光祐・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・横水康伸・立脇健人（名古屋大学）・清水洋隆（職業能力開発総合大学）・飯岡大輔（東北大学）・石井佑弥・石川博之・松尾顕守・岩月秀樹（中部電力）

筆者らは，大容量の太陽光発電装置が長距離の高圧配電系統の末端に導入された場合，単純に電圧上昇が生じるのではなく，電圧低下が発生することを指摘し，その電圧上昇・低下メカニズムを回路論的に明らかにした(1)。本稿では，末端に導入された太陽光発電装置から供給される有効電力が配電用変電所までにどの程度届くのかを，ベクトル軌跡に基づいて，検討したので報告する。

6-183

配電系統末端部への低圧太陽光発電装置の大量導入時における高・低圧配電線での電力損失に関する検討

◎立脇健人・横水康伸（名古屋大学）・松村年郎・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・石井佑弥・石川博之・岩月秀樹・上西宏和（中部電力）・飯岡大輔（東北大学）・清水洋隆（職業能力開発総合大学校）

近年，太陽光発電装置(PV装置)の導入量増加に伴い，逆潮流が発生し，高・低圧配電線を通じて変電所に流入している。パワーコンディショナー(PCS)から出力された電力は，高・低圧配電線の抵抗分により損失する。そこで，本稿では，配電系統末端部にPV装置が大量導入された場合において，高・低圧配電線での電力損失を求めた。また，PCSによる進相制御後の損失も算出した。その結果，進相制御前において，高・低圧配電線での電力損失は，PCS出力合計値P_TPCSが約900 kWの場合，70 kW程度であるが，P_TPCSが約6700 kWとなると，2400 kW程度にまで増大する。進相制御後において，P_TPCSが約6700 kWの場合，電力損失は3300 kW程度となる。

6-184

異なる線種からなる配電線路末端への大容量太陽光発電装置導入時における線路途中の電圧分布

◎塚本真澄・高木聖人・森 光祐・松村年郎・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・横水康伸・立脇健人（名古屋大学）・清水洋隆（職業能力開発総合大学）・飯岡大輔（東北大学）・石井佑弥・石川博之・松尾顕守・岩月秀樹（中部電力）

長距離高圧配電系統末端に大容量太陽光発電装置が連系された場合，線路途中の電圧は，線路長が比較的短い場合，配電用変電所(配変)から末端に向かって単調に増加するのに対し，線路長が長い場合，配変直近では電圧低下を引き起こし極小値を示した後，末端に行くにしたがって電圧は高くなることが明らかになった。 本稿では，実際の配電系統に近づけるために，太さの異なる線種が組み合わされている線路を想定し，一種類の線種で構成されている場合より短い線路長でも，線路途中の電圧が配変より低下する可能性があることを明らかにした。

6-185

クラスター分析により作成した代表モデルを用いた配電系統の高低圧電圧分担に関する一検討

◎武者祐介・飯岡大輔・斎藤浩海（東北大学）・佐々木俊介・石川博之・上西宏和（中部電力）

既存の配電系統は，供給電圧を適正範囲に収めるために，許容変動幅である12Vを高圧系統と低圧系統に分担し，電圧降下が基準値以内となるよう設計されている．高低圧の電圧分担比が変わると，配電系統の設備構成が変わるため，設備投資コストに大きな影響を与えると考えられる．配電系統は，数が膨大で設備形成や負荷構成がそれぞれ異なり，個別に解析を行うことは難しいため，一般的には代表系統モデルを用いて解析を行う．本稿では，実配電系統データをクラスター分析し作成した代表配電系統モデルを用いて，電圧分担比の変更が設備投資コストに与える影響について検討した結果を述べる．

6-186

通信機能付EV用急速充電器による配電系統電圧制御―充電スケジューリング手法の基礎検討―

◎宮坂日和・中村勇太・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・渡辺雅人（東京電力パワーグリッド）・西田悠介（東京電力ホールディングス）

配電系統に太陽光発電(PV)や電気自動車(EV)用急速充電器（以下，充電器）が導入されると，配電系統内の電圧変動問題が今後さらに深刻化することが予想される。一方，充電器内のインバータを利用することで，原理的にはEVのプラグインの有無に関わらず無効電力の発生・吸収が可能であることから，著者らは，充電器の無効電力補償を活用した電圧制御手法を提案するとともに，充電器間の通信機能を利用して，近隣の充電器の空き容量を有効に活用する手法を開発した。 ところで最近，充電器の利用をあらかじめ予約することができるサービスが展開されている。本稿では，EVによる充電器利用情報に基づいてEVの充電量をスケジューリングすることで全充電器の空き容量を平準化させることを目的とし，そのスケジューリング手法を提案する。

6-187

配電線の電圧不平衡状況とインピーダンスが電圧不平衡抑制装置の導入効果に与える影響

◎猪飼千真・青木 睦（名古屋工業大学）・藤田 悠・小林 浩（トーエネック）・石井佑弥・上西宏和（中部電力）

近年，住宅用太陽光発電システムなどの普及による電圧不平衡の拡大により，配電系統の電圧管理が難しくなる可能性がある。筆者らは単相SCを用いた電圧不平衡抑制装置(SC装置)の開発を行っている。一方で，同じ電圧不平衡率であっても三相電圧の大小関係や配電線インピーダンスによりSC装置による電圧不平衡抑制効果に違いがある。そこで，本稿では三相電圧の大小関係と配電線インピーダンスの大きさに着目して，SC装置の導入効果が大きい条件を代表的な電圧不平衡抑制装置である無効電力補償装置（SVC）と三相不平衡対応期の内気サイリスタ式自動電圧調整器と比較し検証を行った結果を述べる。

6-188

システム同定を用いた配電系統動特性評価のシミュレーションによる検討

◎松本航輝・西村大貴・白井康之（京都大学）

分散型電源や自動制御機器の増加に伴いますます複雑化する配電系統の動特性を把握するための手法として、系統に微小な電力擾乱を注入しその応答データから伝達関数モデルを作成する微小擾乱注入手法をこれまで提案してきた。本論文では、この手法によって得られる伝達関数モデルと、自動電圧調整器(AVR)や系統安定化装置(PSS)といった、モデル化対象系統に含まれる発電機の制御系との関連について比較検証した。AVRに含まれるPI制御のゲイン及び時定数の変化やPSSの有無は、伝達関数モデルのボード線図において主にピーク位置の変化として表れることが明らかになり、系統の制御構成の変化が伝達関数モデルに妥当な形で反映されることを示した。

6-189

配電系統状態推定へのディペンダブルな複数集団型DEEPSOの適用

◎岩田壮平・福山良和（明治大学）・神通川 亨・藤本 久・松井哲郎（富士電機）

近年，我が国においては，配電系統への再生可能エネルギーの大量導入に伴い，配電系統の状態はより不確実性を含み，より高精度で短周期の状態推定が必要となることが予想される。この対策として並列分散処理による高速化が考えられるが電力系統は社会インフラの一つであることから，状態推定のようなオンライン計算では，いくつかの並列分散処理のプロセスからの応答がない場合でも適切な解の質を維持し計算を継続させることが求められる。本論文では，配電系統状態推定にディペンダブルな複数集団型DEEPSOの適用を提案し，ディペンダビリティ性が向上することを確認した。

6-190

高低圧混触事故を低圧配電線側から直接検出する手法の実験検証用ミニ配電線モデルの開発

○吉田義昭・塚本哲大（広島工業大学）・鈴木宏和（東京大学）

従来，高低圧混触事故を低圧配電線側から検出する手法は，単独運転検出装置による間接検出が一般的である。しかし，従来手法では「発電量と負荷が平衡すると検出時間に遅れが出る」，「系統擾乱時の誤動作」，または「能動信号の不要一斉注入による電力品質低下」などの課題がある。これらの課題を解決するため著者らは，低圧三相パワーコンディショナへの適用を想定して，低圧側から高低圧混触事故を（遮断器開放前に）直接検出する手法について検討を進めてきた。その原理は，地絡電流が事故相の高圧線路に流れることによって発生する線間電圧の特徴的変化を捉えることである。高圧配電線側の線間電圧に高低圧混触事故特有の変化があれば，低圧配電線側でも検出することができる。本研究では，提案手法を実験で検証するため，地絡事故時の電圧変化が高圧配電線の実規模モデルと等価であるミニ配電線モデルを開発した。その結果，概ね原理通りの動作を確認できた。

6-191

配電系統における負荷と太陽光発電に起因する電圧不平衡を同時に低減する単相柱上変圧器の振替量の計算方法

○八田浩一・齋藤哲也・三川玄洋（中国電力）

電圧不平衡は単相の負荷または太陽光発電の偏りで発生することが知られているが，本稿では，同一日に負荷と太陽光発電の両方により電圧不平衡が発生している配電系統に対して，両方の電圧不平衡を同時に低減する単相柱上変圧器の振替量を計算する方法を提案する。 提案手法は，計測機能付き開閉器の計測値である見かけ負荷を実負荷と太陽光発電に分離する必要がなく，実負荷の影響変化分のみを推定することにより，単相柱上変圧器の振替量を簡易に計算可能である。

6-192

センサ開閉器の段階的導入に対応したPV連系配電系統のLDC制御パラメータ平面決定手法

◎金子曜久・伊藤雅一・林 泰弘（早稲田大学）・大恵慎平・山本享慶・大山雅之（関西電力）

配電系統では，PV普及拡大に伴う電圧逸脱発生への懸念から，LRTやSVRの高度化が求められている。これまで，筆者らは全ノード間に設置されたセンサ開閉器の計測情報の中の電圧上昇・降下が大きいそれぞれ2断面の代表4断面に基づくLDC制御パラメータ平面決定手法を提案してきた。しかしながら，現状センサ開閉器が導入段階であり，全ノード間へのセンサ開閉器設置には時間がかかる。そこで，本稿では，電圧推定を取り入れることにより，センサ開閉器の段階的導入に対応したLDC制御パラメータ平面決定手法を提案する。提案手法では，センサ開閉器が少ない場合でも電圧逸脱量の増加を少量に抑えられ，重回帰による平面決定手法と比較して電圧逸脱量を95%削減できたことから，手法の有効性を確認した。

6-193

PV連系系統に対応したSVRのLDC機能拡張および実証評価

○松田勝弘・葵木智之・吉田貴広・武蔵利行（東北電力）・友部 修・井上秀樹・足立昌宏（日立製作所）・松本拓也・渡部瑞貴・村越 潤（東北電機製造）

太陽光発電(PV)の普及拡大に伴う配電系統の電圧上昇・急変やPV出力抑制問題に対し，SVR等の電圧調整機器を適切に整定・制御することが重要となる。特に，PV出力抑制機能が働いている場合，SVRでは出力抑制発生を感知できず，PV連系地点電圧を下げる制御ができない課題がある。本研究では，PV連系系統の電圧管理を高度化することで，PVの出力抑制および配電系統の電圧逸脱を回避するためのLDCの機能拡張について提案する。

6-194

複数のSVRが設置された配電系統における目標電圧の設定法についての考察

◎石原茂樹・青木 睦（名古屋工業大学）・佐々木俊介・小嶋利朗・石井佑弥（中部電力）

近年，太陽光発電が大量に導入により，配電系統において急激な電圧変動などの電圧管理上の問題が懸念されている。これに対して，配電系統のループ運用も古くから注目されているが，多くの課題が残されている。課題の一つを解決するために，筆者らは，複数のSVRが接続されたループ運用時の配電系統において，SVRの目標電圧を決定する手法について提案してきた。しかし，SVRの設置点と回線間の連系点が遠い場合は，適切に電圧を維持することができるが，SVRと連系点が近い場合には，他方のSVRのタップ位置の影響を受けやすくなりハンチングが生じることがある。本論文では，SVRの設置点近くで回線間の連系を行った場合の問題点その対策について述べる。

6-195

需要家の電力データに基づくLVRの制御パラメータ決定手法の体系的評価

◎喜久里浩之・小林将矢・小浦直洋・宮崎 輝・藤本 悠・若尾真治・林 泰弘（早稲田大学）・茂木規行・山下裕輔（東光高岳）

配電系統では，太陽光発電の大量導入や需要側の機器の多様化により電力潮流の複雑化が見込まれており，適正電圧の維持が困難になると懸念されている。この課題への対策として，電圧制御機器の新規開発や機能拡張，制御手法の改良が進められている。同時に，系統へのセンサ内蔵開閉器の設置や需要家へのスマートメーターの設置などの配電系統のデジタル化も進められており，新たに利用可能になるデータの活用方法について議論されている。本稿では，スマートメーターから取得可能なデータをLVRの制御パラメータ決定に用いることを想定し，その活用方法の違いが電圧制御性能に与える影響をシミュレーションにより評価する。

6-196

SVR整定値の自動更新に向けた一検討

◎三田慎一・泉 健児・白土紀明・北野豊和・宮里健司（ダイヘン）

配電系統には，系統電圧を適正に管理すべく，自動電圧調整装置（SVR）が設置されている．SVRは自律制御を行うため，系統状態に応じた整定を行う必要がある．しかし，近年，太陽光発電の多量連系を受け，系統状態は複雑化している．この複雑化に対し，予め決定した整定値のみではSVRの制御は対応できず，整定値の変更業務が増加する懸念がある．そこで，本稿では，SVRが計測情報（電圧実効値）から高速フーリエ変換による分析を行い，整定更新の要否を自律的に判断する方法を提案する．提案方法の効果については，シミュレーションによる検証にて確認し，複雑化する電圧変動（系統状態）に対しても，対応できる可能性があることが判明した．

6-197

スマートインバータのVolt-VAR制御パラメータによる配電系統への影響評価に関する一検討

◎高澤佑太・赤木 覚・芳澤信哉・石井英雄・林 泰弘（早稲田大学）

近年，太陽光発電（以下，PV）の導入に伴う電力潮流の複雑化により，配電系統における電圧管理が課題となっている。今後のさらなるPVの導入拡大によって系統状況が変化することが想定されており，それぞれの状況に応じて設定を変更できる柔軟性のある制御が必要になると考えられる。このような課題に対して，スマートインバータ（以下，SI）の実用化が検討されており，配電系統における電圧管理への活用が期待されている。しかし，一方でSIの制御パラメータをどのように選択するかが課題となる。本稿ではSIの電圧制御機能のうち，Volt-VAR機能を対象とし，制御パラメータによる系統への影響を電圧逸脱量，電圧余裕量，配電損失，系統力率に基づき定量的に評価する。

6-198

太陽光発電が導入された配電系統の電圧制御にSVCの不感帯が及ぼす影響

○高橋聖貴・飯岡大輔・斎藤浩海（東北大学）

SVRにより電圧が制御されている配電系統にPVが導入されることを想定し、SVCを追加で導入した場合について、電圧適正範囲内に制御するために必要なSVC制御パラメータを配電系統の計測情報から自動でリアルタイム決定することについて検討している。そこで本稿では、その第一段階としてSVCの不感帯の範囲を変えた場合に配電系統全体の電圧がどのように変化するのかを明らかにした結果を述べる。本研究で使用しているモデル系統においてPV導入量とSVCの不感帯を変えて5秒刻みで半日分の潮流計算を行い、各ノード電圧を算出しSVCの不感帯の影響を調べた。また、定量的に明らかにするために評価指標を用いてSVCの不感帯が配電系統に及ぼす影響を調べた。

6-199

配電系統における多重ループ運用に関する基礎研究

◎奥田駿斗・長田 徹・山村直紀（三重大学）・上田 玄（中部電力）・石田宗秋（三重大学）

現在，配電系統で主に運用されている放射状方式からループ状方式に再構築する研究が成されている。ループ状方式とはフィーダ間を連系する開閉器を常にonした状態での運用を指す。このループ状方式により電圧分布の改善や線路損失低減などの可能性があり，ループ状方式に関する研究が行われている。しかしこれらの研究では2フィーダ間のループを対象としたものがほとんどであり，3本以上の複数フィーダのループ（多重ループ）を対象とした研究は少ない。そこで本研究では多重ループ運用に注目し，最適ループ点を求めることを目的としている。多重ループ運用にて，順次探索法を用いた数式計算によって線路損失の低減が最大となる連系の予測が可能であることを考えた。

6-200

配電系統における系統切替最適化を目的とした多目的最適化アルゴリズムの開発

◎関崎真也・山崎拓哉・西崎一郎・林田智弘（広島大学）・石川博之・上西宏和（中部電力）

配電系統は，配電線工事の際の停電区間縮小や故障発生時における健全区間への迂回送電のために系統切替を実施しており，系統切替の最適化によって業務効率化や故障時の復旧時間短縮化による供給信頼度の向上が期待できる。実運用の観点からは，系統切替問題を多目的最適化問題として定式化し，得られたパレート最適解から運用に適した解を同定することが望ましい。実用時間内に十分な数の解候補を求めるには，進化計算を利用した多目的最適化手法が有効である。本論文では，パレートフロンティアの近似性能に優れたNSGA-III (non-dominated sorting genetic algorithm III)をベースとしたアルゴリズムを用いた系統切替最適化手法を開発し，実規模の配電系統に適用する。

6-201

PV大量導入時における配電系統の開閉器パターン最適化手法の検討

○中村仁貴・大山 力・辻 隆男（横浜国立大学）・西田悠介（東京電力ホールディングス）

近年、化石燃料の枯渇や環境問題の解決に向け、再生可能エネルギーを用いた発電方法が注目され、その中でも太陽光発電や風力発電などの分散電源の導入が盛んである。しかし、配電系統に分散電源を大量導入した場合、逆潮流による適正電圧の逸脱が生じてしまう。その対策として現在、配電用自動電圧調整器(SVR)などの機器設置が施されるが、設備費用の増大が懸念される。そこで、本研究では配電系統に半導体式開閉器を導入し、PVが大量導入した場合、提案した最適化手法を用いて電圧を適正電圧内に抑えられる開閉器の開閉パターンを探索した。その結果、系統内で最も不利なPV導入箇所での最適化に成功し、系統運用の有用性を示した。

6-202

配電線における共同接地線を用いた地絡点推定

○児玉安広（東京電力パワーグリッド）・山本良太・西田悠介（東京電力ホールディングス）

配電線に地絡が発生した際，時限式事故捜査器により地絡点は特定区間に絞られるが，その後，電力会社の作業員が電柱上にて地絡点を探査するための作業を行っている。地絡点探査の効率化を目的にセンサ開閉器で地絡波形を検出し，地絡点や地絡原因を特定するための検討が行われている。具体的には，地絡発生時に地絡サージ電流が複数のセンサ開閉器へ到達する時間差から地絡点を推定する手法がある。著者等は，簡易な計測システム構築の観点から配電線の立ち上がりと末端に設置したセンサ開閉器から地絡点に流れる振動成分を有する地絡電流の共振周波数からインダクタンスを算出し，センサ開閉器間を幹線とした地絡点に至る分岐点を推定する手法を提案した。この手法は，地絡抵抗値が20Ωを超過すると推定精度が低下するという問題がある。 そこで，著者等はこの問題を解決するために東京電力PGの配電線に施設されている共同接地線を用いて，高抵抗(1kΩ)の放電性地絡における地絡点を推定できる手法を提案し，ATPシミュレーションで評価した結果を報告する。

6-203

複数配電系統を対象にした電力損失最小化運用の年間評価

◎内山慎距・竹延祐二・宮崎 輝・林 泰弘（早稲田大学）・吉永 淳・渡辺雅人（東京電力パワーグリッド）・山本良太（東京電力ホールディングス）

電力損失最小化運用とは，配電系統における電力需要を考慮して運用期間の電力損失量を最小とする系統構成に切替える運用である。本運用技術の実系統への適用時には，多数存在する配電系統の中でも，特に改善効果の高いエリアから段階的に実施していくことが想定される。したがって，どのような特性をもった系統で高い電力損失削減効果が得られるかを示すことが，送配電事業にとって有効な情報になると考える。本稿では，系統特性の異なる3つの配電用変電所単位の実系統を対象に，現行運用から電力損失最小化運用への移行による年間の改善効果を明らかにし，系統特性と電力損失削減効果の関係についての分析を行ったので，結果を報告する。

6-204

配電系統における太陽光発電の統計的ホスティングキャパシティの基礎検討

◎菊池翔太・今中政輝・馬場旬平（東京大学）・三浦幸也・飯岡大輔（東北大学）・浅野浩志（電力中央研究所）

現在、太陽光発電(PV) をはじめとする再生可能エネルギー電源の導入が著しく進展しており、今後もそれらの導入は拡大されていくと考えられる。しかし、PV が大量に導入されることによって需給バランス維持の困難化や配電系統における電圧上昇、配電線の過負荷などの問題が生じる可能性がある。先行研究では低圧配電系統の各需要家にPV が一律に導入されたという仮定の下、電圧上昇対策として無効電力制御、配電線の太線化及び昇圧の有効性の検討を行った。本稿では配電系統の需要家にPV が無作為に導入される場合において無効電力制御、配電線の太線化及び昇圧という3 つの電圧上昇対策の有効性を統計的ホスティングキャパシティを用いて検討行った。

6-205

PV連系系統における電圧調整設備の長期的な配備計画に関する基礎検討

○三上大智・芳澤信哉・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）・松田源立（東京大学）

PVの連系が原因で適正電圧維持が困難となった場合，電圧制御機器の設備増強が必要となるが，PVの導入状況推移は不確実性を有するため，電圧問題を逐次的に解消する設備増強が行われる傾向がある。そこで本研究では，配電系統での電圧調整設備設置の長期計画の必要性を検討する。具体的には，電圧制御機器のSVRを対象として，長期的なPV導入推移を模擬し，逐次的な設備増強を行っていく場合と最終年次における設備増強を行った場合における電圧制御機器の設置数と電圧逸脱需要家数を比較する。数値計算の結果，両者で設備設置数には差がなかったが，逐次的な設備増強では継続的に電圧逸脱需要家数が発生し続け，長期的な電圧逸脱可能性を評価することで継続的な電圧逸脱の発生を未然に削減できる可能性が判明した。

6-206

多端子直流送電システムにおけるブレーキングチョッパ制御の基礎検討

◎吉原 徹・木村 守（日立製作所）

環境負荷低減のため，洋上ウインドファーム(WF)の大量導入が進んでいる。 WFの発電電力を陸上まで送電する手段として，洋上WF連系直流送電(WF-HVDC)および，直流送電を多端子化した洋上WF連系多端子直流送電(WF-MTDC)が注目されている。 日本でも現在，WF-MTDCに関する技術開発が進められており，筆者らは，WF-MTDCのシステム制御・保護の検討を進めている。 これまでに筆者らは，WF-HVDC変換所の過電圧停止を回避するブレーキングチョッパ(BC) の制御手法を提案した。 しかし,WF-MTDCの場合,BC動作時による他変換所への電力の回り込みが発生し, 最悪の場合,事故波及を招く懸念がある。このような背景のもと, 本稿では基礎検討として,WF-MTDCの解析モデル構築と, BC動作時のシミュレーション結果を報告する。

6-207

直流多端子系統の最適潮流制御方式の検討

○高野富裕・上田健詞・田中美和子（三菱電機）

直流多端子系統において、電流・電圧を規定内に維持しつつ、系統損失を最小化できる制御を目指し、最適潮流計算を用いて変換器の制御パラメータを決定する方式を検討したので報告する。

6-208

直流線路事故時の電流現象の検討

◎久米里奈・直井伸也（東芝）・石黒崇裕・飯尾尚隆（東芝エネルギーシステムズ）

直流送電（以下HVDC）は長距離、大容量送電に適しており、近年、遠隔地での発電電力の送電を目的に3箇所以上の変換器を直流線路で結ぶ多端子HVDCの導入が検討されている。しかし、多端子HVDCを対象に直流線路事故時の保護が検討されているものの、その現象は詳細には解明されていない。ここでは直流線路の事故解析により、双極3端子HVDCを対象に事故点をパラメータにして、事故から5ms後までの事故電流の最大値を調査した結果を示す。考察のため、対象システムを単極2端子HVDCへと簡略化し、線路長を変化させて電流を比較した内容も紹介する。

6-209

交直変換器システムを対象とした特性把握手法の妥当性検証

○宜保直樹（電力中央研究所）

本稿では，交直変換器システムを対象とした特性把握手法の妥当性を簡単なシステムを用いて検証した。

6-210

Design and Economic Load Dispatch of a Mixed AC / Multi-Terminal VSC HVDC System with Wind Farms by Hierarchical Optimal Power Flow

◎SANGWON KIM・Akihiko Yokoyama（The University of Tokyo）・Tomihiro Takano・Yoshio Izui・Kazuyuki Mori（Mitsubishi Electric Corporation）

A multi-terminal VSC HVDC system is proposed for the long-distance wind power transmission in an East Japan model power system. Since the economic benefits are highly affected by the investment costs of the VSC HVDC system, a hierarchical optimal power flow (OPF) approach with multi time sections is developed for both the effective VSC HVDC system capacity determination and the economic load dispatch. The variations of the load-demand and wind power production are taken into account as the form of different time sections.

6-211

フライングキャパシタ形マルチレベルコンバータを用いた直流給電システムの特性評価

◎小堀晃平・北條昌秀・山中建二（徳島大学）

近年，分散電源やその出力平滑化のための蓄電装置が普及している。しかし，これらは直流出力であるために系統連系するとき，複数の電力変換器が必要となる。そこで集中電力変換装置としてフライングキャパシタ形マルチレベルコンバータを用いた直流給電システムのモデルを提案した。提案モデルでは，u相の端子に太陽光発電が接続されており，ここではMPPT制御を行うこととする。その他の低電圧直流端子と高電圧直流端子にはそれぞれ異なる直流負荷が接続されている。また，交流端子ではPWM制御により三相正弦波電圧を出力し，LCLフィルタを介して系統連系されている。本稿では，各端子における負荷変動に際してその特性評価を行った結果を述べる。

6-212

路面電車電力線を用いたPV出力の有効利用 ―PVの並列接続を考慮したタブー探索による最適配置―

◎戸沢梢乃・三島裕樹・下町健太朗（函館工業高等専門学校）・北條昌秀（徳島大学）

政府主導によるPV導入促進の方策の一つに，教育機関におけるPVの導入拡大に向けた取り組みがある。一方で，市街地などで運用されている路面電車は，直流電力を利用して運転されており，これは路面電車を保有する市の市街地には直流グリッドが既存であることを意味する。筆者らはこれまでに，PVの有効的な活用方法の一つとして，PV出力を直接的に路面電車の直流グリッドへ給電する新たなシステムを提案している。本稿では，学校施設にPVが導入された状況を想定し，変換器に複数のPVシステムが並列されることによる出力低下を考慮して，タブー探索を用いて変換器の最適配置を見つける手法を提案する。

6-213

多地点位相計測による系統間動揺周波数計測に基づく慣性の推定と需給実績を用いた検証

◎綱分智則・寺師 純・三谷康範（九州工業大学）

近年の太陽光発電の導入量の増加により、周波数変動を抑える役割を持つ慣性を有している同期機の接続数が減少し、電源脱落等の事故時に大きな周波数変動が生じることが懸念されている。そこで本研究では系統の有する慣性を把握する方法として、系統全体で生じている広域動揺に着目した。具体的な方法としては実系統に設置した同期位相計測装置(PMU)を用いて位相差情報を取得し、そこから得られた広域動揺周波数から動揺方程式に基づき慣性の推定を行った。また、実際に観測された動揺周波数と、電力会社が公開する需給実績から得られた電力需要との相関をとり、系統の慣性の動きが観測されているかの検討を行った。

6-214

PV導入拡大時におけるLFC調整力確保手法に関する検討

◎水野優子・青木 睦・Suresh Chand Verma（名古屋工業大学）

近年，太陽光発電の導入が拡大している。しかし，太陽光発電の出力は気象条件によって変化するため，電力系統の需給制御に影響を与えることが懸念されている。影響の一例として，昼休みの時間帯における需要の減少と太陽光発電出力のランプアップが重なり，需給バランスを維持するために発電機の出力が下限まで下がり，負荷周波数制御に用いる調整力が不足する可能性のあることが挙げられる。そこで， LFC調整力を確保するために，LFC指令情報によるLFC指令推定変化幅を用いた短時間の出力予測をもとに，経済負荷配分制御の指令を調整する手法を提案する。そして，提案手法の効果を需給・周波数シミュレーションの標準解析モデルを用いて検証する。

6-215

直流送電で連系された洋上プラントの電動機負荷制御による陸上系統周波数調整手法

◎松田 洋・太田 豊・中島達人（東京都市大学）

再生可能エネルギー導入拡大の中で，洋上風力発電の開発が進んでおり，また，洋上風力発電と，資源開発などの洋上プラントへの電力供給との組合せによる洋上多端子直流送電の構想も国内外で想定されている。一方，再生可能エネルギーの導入拡大に伴い，既存の同期発電機が休廃止され系統慣性が減少し，周波数変動の増加が懸念されている。本研究は，陸上系統から直流送電経由で電力供給される洋上プラントにおいて，陸上系統周波数の変動に応じて大容量電動機の消費電力を制御することにより，陸上系統周波数の変動抑制に貢献する手法を提案した。シミュレーション解析の結果，陸上系統の周波数低下幅と周波数動揺の抑制への有効性が確認できた。

6-216

Inertial Response Control by Wind Turbine based on Delta Control with Adjusting Tip Speed Ratio

◎Jingting Qi・Takao Tsuji（Yokohama National University）

In order to cope with the penetration of renewable energy sources such as photovoltaic and wind turbine, it is of prime importance to keep supply and demand balance with proper frequency regulation. It is expected that inertial response control of wind turbine is effective to mitigate frequency drop in the case of sudden disconnection of any generating plant. In particular, this fast frequency response is needed to improve ROCOF (rate of change of frequency) and frequency nadir when moment of inertia of the entire system decreases because a part of conventional generators is replaced with asynchronous generators such as renewable energy sources. In this paper, a possibility that inertial response control can contribute to frequency regulation in normal condition is examined.

6-217

複数の系統周波数変動パターンに対する電気とガスのハイブリッド空調機のLFCへの活用

◎澤 俊季・辻 隆男・大山 力（横浜国立大学）・塚田龍也・八木貴大（東京ガス）

本稿では、電気とガスのハイブリッド空調機をLFCに活用した時の効果を検証する事を目的とし、系統周波数が変動しやすい軽負荷期（秋季休日）を想定した周波数解析シミュレーションを行う。PVの大量導入が引き起こす周波数変動を、原因別に3パターンに分け、それぞれのシナリオにおいて空調機のLFC活用が周波数安定化にどれだけ貢献するかを、PVの導入量を変化させながら検討した。その結果、短周期変動増加ケースと発電不足ケースにおいては、空調機のLFC活用によって周波数のRMS値を効果的に抑えられた。特に定格消費電力が100MWに相当する空調機を活用した時に、最も改善効果が高い結果となった。一方、発電過剰ケースにおいては、周波数偏差の改善効果が少ない結果となった。しかし、空調機を「発電機が確保するべきLFC容量」に含めて運転する事で、RMS値を効果的に抑える事が出来た。

6-218

相関分析によるLFCの性能評価手法の提案

◎鈴木聖人・河辺賢一・七原俊也（東京工業大学）

最近，地球温暖化への関心の高まりから，太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入が進んでいる。一方で，太陽光発電や風力発電といった出力変動が大きい電源が増えると負荷周波数制御(LFC)が困難となる恐れがあるため，LFCの一層の最適化が必要となる。本論文では，LFCの制御性能を「制御遅れ角」や「制御判定角」により評価する手法を提案し，電気学会電力需給・周波数シミュレーションの標準モデルのシミュレーション結果にそれを適用し，手法の有効性の検証を図った。

6-219

風力発電大量導入時における水電解装置の活用と風力発電出力制御による周波数制御

◎石井駿吾・大山 力・辻 隆男（横浜国立大学）

近年、水素社会への関心が高まる一方で、再生可能エネルギーの積極的な技術開発が求められている。再生可能エネルギーは天候等の変化に伴い発電量が大きく変動するため、既存発電機群はその出力変動に対応しなければならない。そのため、風力発電出力制御や水素製造に関する技術開発が進んでいる。 本研究では、風力発電が大量導入された電力系統モデルにおいて、水電解装置による需給制御および風力発電出力制御により、系統周波数の安定化を図るシミュレーションを行い、その評価を行う。水電解装置は主に LFC に相当する時間領域での需給制御に活用し、風力発電出力制御はピークカット制御とレートリミッタ制御を組み合わせた制御を行う。

6-220

自律分散LFCにおける平均合意アルゴリズムに基づく最適な調整力配分係数の推定法

◎高田聖也・織原 大・斎藤浩海（東北大学）

分散電源の導入やデマンドレスポンスの活用等により制御要素が増大した電力系統では、従来のコントロールセンタに全ての情報を収集する集中制御は、莫大な通信、計算コストを要する。筆者らはこの問題の解決策として、負荷周波数制御(LFC)について、自律分散化した構造を提案してきた。この自律分散LFCは、平均合意アルゴリズムに基づき、隣接電源との局所的通信のみで電源同士が最適な比での調整力配分を行う通信・処理システムである。しかしながら、これまでの構造では、各自律要素が全体のLFC電源の台数を把握できないために、制御ゲインが過大となる問題があった。 そこで本稿では、新たに台数情報を共有する制御ロジックを考案した。そしてAGC30モデルを用いた時間領域シミュレーションにより、追加ロジックの有効性を明らかにしている。

6-221

大型蓄電池システムによる周波数制御効果の検証

○山口哲一・千田卓二・品田浩一郎（東北電力）・高口雄介・三谷智久（三菱電機）・坂口広二（メルコ・パワー・システムズ）

東北電力は，平成27年2月に西仙台変電所の大型蓄電池システムを運転開始し，蓄電池による周波数調整力の拡大効果を検証する実証事業に取組み，蓄電池による周波数制御効果を実証試験データから評価する手法の検討を進めてきた。本稿では，実証試験データによる周波数制御効果の検証結果について報告する。

6-222

太陽光発電のP-fドループ制御による系統周波数調整に関する実験的検討

○玉越祐作・金原佑樹・栗本宗明・舟橋俊久・加藤丈佳（名古屋大学）

近年，太陽光発電(PV)の大量導入により，同期発電機の発電比率低下に伴う周波数調整力の低下が危惧されている。その対策に，PVや蓄電池に系統周波数制御に貢献する出力制御手法を導入することが考えられる。筆者らはこれまでに，PV模擬電源にP - fドループ制御を導入し，動作を検証している。本論文では，P - fドループ制御が導入されたPV模擬電源に，実時間で需給偏差から系統周波数偏差を算出する系統モデルを接続することでPower Hardware In-the-Loop(PHIL)試験環境を構築し，周波数制御に対するPVのP - fドループ制御の効果を検証した。

6-223

電圧・無効電力制御に対するディペンダブルな複数集団を用いた並列DEEPSOの適用

◎吉田武尊・福山良和（明治大学）

電圧・無効電力制御（以下，VQC）は，時々刻々と変化する系統内の負荷に追従して無効電力の供給とのバランスを考慮する制御である。VQCは対象系統のロスミニマム等を目的関数として定式化でき，進化計算の適用が試みられている。近年，並列分散処理による高速化が検討されている。しかし，電力系統は社会のインフラであるため，制御の継続性が求められる。つまり,いくつかのプロセスからの応答がない場合でも，計算の継続性が可能なディペンダブルな方式が必要とされる。本論文では，ディペンダビリティ性の向上を目的として，ディペンダブルな複数集団を用いた並列DEEPSOを提案し，提案法が従来法よりもディペンダビリティ性が向上することを確認した。

6-224

電圧・無効電力制御に対するC-DEEPSOの適用

◎東 大智・吉田武尊・福山良和（明治大学）

本論文では、電圧・無効電力制御に対してC-DEEPSOを適用することを提案する。電圧・無効電力制御は対象系統の電力損失最小化等を目的関数とした混合整数非線形最適化問題として定式化でき，これまで様々な進化計算に適用されてきたが、解の質には改善の余地がある。今後，我が国の電力系統においては，再生可能エネルギーの大量導入が予想され，また，今後の電力自由化の進展を考慮すると，電力会社間の融通がより一層積極的に進められることが考えられる。本論文では、解の質の向上のため、電圧・無効電力制御に対してC-DEEPSOを適用し、IEEE118母線に適用した。C-DEEPSOはDEEPSOの改良手法であり，従来法よりも優れた解が得られたことを確認したので，その結果について報告する。

6-225

配電系統におけるLRTの動作を考慮したオンライン系統構成変更とLRT制御パラメータの動的変更

◎釜谷光翔・原 亮一・北 裕幸・田中英一（北海道大学）

近年，配電系統への太陽光発電（以下PV）の導入の加速により，逆潮流や出力変動の影響で配電系統内の電圧分布の複雑化や，適正範囲逸脱などの問題が顕在化している。従来，配電系統では電圧制御の一手段として，負荷時タップ切替変圧器（以下LRT）が広く利用されている。一方で，系統の局所的な範囲の電圧を制御するといった柔軟性は持ち合わせていない。そこで著者らは，系統内の区分開閉器の開閉状態を状況に応じて柔軟に変更することで，系統内の潮流や電圧分布を調整が可能なオンライン系統構成変更との協調制御を検討している。本稿では，著者らがこれまでに開発してきたLRT制御手法をベースとして，オンライン系統構成変更との協調方法を提案するとともに，その有効性を議論する。

6-226

ダイオードブリッジを持つ回路を用いた無効電力制御において電流ピーク値最小とする電流波形の算出

◎近藤健一・馬場旬平（東京大学）

配電系統の電圧上昇を抑制する対策として無効電力制御が考えられている。無効電力制御機器を追加設置するのではなく，既存の需要家機器内部の PFC (Power Factor Correction) コンバータで無効電力を制御する方法が検討されている。ダイオードブリッジを持つ PFC コンバータで無効電力制御を行う場合，電圧・電流極性の関係に制約があり，電流ピーク値が必要以上に増加し無効電力出力が制限される問題がある。本稿では PFC コンバータで無効電力制御を行う際に電流ピーク値を最小とし, 出力可能な無効電力を最大化する入力電流波形を検討した。検討の結果，一定の位相角から次の電圧ゼロ点まで続く方形波電流が得られた。

6-227

Voltage Stability Analysis in Power System with Photovoltaics Considering Inverter Current Limitation

◎Yue Zhuo・Takao Tsuji（Yokohama National University）

Nowadays, Distributed Generation (DG), as a new power source, has played an important role in transmission and distribution networks. Various coordinated control strategies between conventional power grid and DGs have been realized. With the penetration of large amount of DGs, there is a possibility that DGs could contribute to mitigate voltage instability issues by using reactive power control when an operating point is approaching the stability limit. In previous research, the authors have developed a control strategy to dispatch optimal reactive power output considering active power curtailment under power capacity constraint of PV plants, aiming to maximize Loading Margin (LM). Although the improvement of LM was significant, the accuracy of the analysis might not be enough as inverter current limit was not considered. Therefore, in this paper, the control effect is reevaluated with the current limit of PCSs. One-machine infinite-bus system model was used for this simulation and continuation power flow (CPF) method was applied to obtain LM.

6-228

PVカーブを用いた過渡電圧安定性向上に寄与する太陽光発電の最適力率推定手法

◎山口航太・大山貴央・野上 駿・天野博之・横山明彦（東京大学）

太陽光発電(PV:Photovoltaic Generation)が大量導入された電力系統において，PVの有効・無効電力出力による系統の電圧の変化が過渡電圧安定性に大きな影響を及ぼすと考えられており，様々な解析・考察が行われている。本稿では，1負荷無限大母線系統において，事故除去後の電圧回復に最適なPVの力率〖PF〗_Vmaxの推定手法について述べる。

6-229

WRFとMSM-GPVの併用による日射強度予測の高精度化に関する一検討

◎甲斐直登・栗本宗明・舟橋俊久・加藤丈佳（名古屋大学）・宇野史睦（産業技術総合研究所）

太陽光発電が大量導入された電力系統の安定運用のためには、高精度の日射量予測手法が必要不可欠である。数時間より先の日射量予測は、一般に、数値気象予報モデルによる予測値が用いられる。筆者らは、Weather Research and Forecastingの予測日射強度をサポートベクターマシンによって補正する手法や、気象庁のMSM-GPVの雲量等の予測値を重回帰分析によって日射強度に変換する手法を提案している。本研究は、これらの手法を併用することによる予測精度向上の可能性を評価した。

6-230

全天画像解析による日射量推定手法の構築

◎横澤功吉・谷口文紀・渕野 凱・塩田 淳・三谷康範（九州工業大学）

現在、化石燃料枯渇問題や地球温暖化問題の深刻化に伴い再生可能エネルギー普及が推進されている。とりわけ太陽光発電は設置場所を選ばず、固定買取制度の導入や設置価格の低下により導入が進んでいる。しかし、太陽光発電システムは建物・樹木の影や天候に左右されやすく、それらが発電量に大きな影響を与えることが知られている。そこで本研究では、全天画像から空の状態を把握し、全天画像中のRGB値を用いて太陽付近の空を状態に応じて区分し、各区分の日射量への影響度合いを求める。その後、地理情報システムによる日射量解析と組み合わせることで、雲の影響を考慮した日射量を推定、空の状態が反映されているかを検討した。

6-231

クラスタリングを応用した日射量予測に関する研究

◎川口友規・川﨑章司（明治大学）

近年，原子力発電の依存度低減や地球環境問題の観点から太陽光発電の普及が進んでおり，今後も太陽光発電システムの設置台数は増えると見込まれる。しかし，太陽光発電は気象条件に大きく出力を左右されるため，安定した電力供給が困難である。よって，事前に太陽光の発電電力量を予測し，需給バランスを調節することで電力供給を安定化させる必要がある。 これらの背景から本研究では，気象庁が公開している気象データをもとに，クラスタリングのk-means法からヒントを得た独自の日射量予測アルゴリズムを提案する。また，その精度を数値計算によって検証することで提案手法の妥当性を検討する。

6-232

衛星推定日射量を用いた太陽電池セルのパラメータ同定手法の開発

◎高松尚宏・中島 孝（東海大学）

近年，世界におけるエネルギー需要の低炭素化・脱炭素化の動きが加速していることから，世界的に太陽光発電の導入が急速に拡大している．しかし，今後の太陽光発電システムの急速な普及にともない，システム全体のメンテナンスに必要となるコストが増大していくものと考えられる．そのため，メンテナンスコストの抑制を目的として，太陽光発電システムの状態をオンラインかつ遠隔的に把握する手法が必要とされる．本研究では，太陽光発電システムを数理モデルによって構成し，モデルから出力された最大電力点における電流値と電圧値から，衛星推定日射量を用いて太陽電池セルの等価回路パラメータを同定する手法について検討を行った．

6-233

遠隔出力制御のための太陽光発電出力予測モデル開発とその予測精度検証

◎村上美雪・小島貴之・早崎宣之（伊藤忠テクノソリューションズ）

出力制御に向けた出力予測・把握技術高度化のため,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）の事業である電力系統出力変動対応技術研究開発事業／再生可能エネルギー連系拡大対策高度化で収集した発電・気象の広域モニタリングデータや気象庁局地モデル（LFM）の数値気象予報データを用いて太陽光発電出力予測モデルを開発した.本報告では当日のきめ細やかな出力制御において重要となる, 予測発表時刻から6時間先までの太陽光発電出力予測（以下, 短時間予測）について, その手法を紹介するとともに, 予測精度を検証した結果を報告する.

6-234

送電線潮流のスペクトル解析による太陽光発電出力推定

○福田恵太・福井伸太（東洋大学）

本論文では、日射量予測データを使用せず、位相計測装置（PMU）が設置された変電所側送電線の観測潮流のみを用いて、配電系統に大量に導入された太陽光発電（PV）出力をスペクトル解析することで周波数の違いにより推定する手法を提案し、その手法の有効性を検証する。PMUによる計測データでの計測データを用いて送電線潮流を1秒毎に推定し、PV発電出力と電力需要のスペクトル解析により送電側変電所母線のPV発電出力を含めた送電線潮流からPV発電出力を推定する。需給制御や潮流制御に活用することを目的にシミュレーションにより構築・確認を行う。

6-235

配電系統におけるスマートメータを用いた太陽光発電出力推定の検討

○河野高一郎・曽我部 剛（四国総合研究所）・宇野裕二（四国電力）

近年，配電系統への太陽光発電の導入が積極的に進んでおり，配電線の適正電圧維持のために，配電線に接続されたPVや負荷の有効・無効電力の精度の高い推定が必要となっている。本報告では，スマートメータデータを活用することで，配電線に接続されたPVの出力を推定するとともに，推定したPV出力と測定した配電線の皮相電力から負荷の有効・無効電力を推定する手法について検討した。この推定手法について実測結果と比較したところ大きな差異はなく，当該手法の有効性を確認した。

6-236

太陽光発電出力推定の精度向上〜連系区分毎のPV 出力換算係数の算定〜

○鈴木直人・秋根孝寛・古田昭宏・野見山史敏・下村義隆（九州電力）

九州本土のPV総出力を把握するため、日射観測地点の計測値にPV出力換算係数を用いて推計する手法が用いられているが、これまでの出力換算係数は、当社事業所に設置されたPVと日射計のデータから算出したものであり、連系区分毎の違いを把握する必要があった。本稿では、実測データを基に連系区分毎の係数を把握することで、実態に即したPV出力推計を可能とし、精度向上を図った。

6-237

気象衛星観測データを用いた配電線における太陽光発電出力推定の一検討

○石丸雅章・中崎陽介（北陸電力）

気象衛星観測データを活用した衛星推定日射量および日射計で計測される全天日射量から推定したPV総発電出力とPV発電出力実測値の和との誤差を比較し，衛星日射量の適用の可能性を検討

6-238

太陽光発電所における汚損物付着による太陽電池モジュールの発電出力の影響検証

○太田文彦・菅野純弥（東京電力ホールディングス）

・太陽光発電所の太陽電池モジュールに付着した汚損物質を特定する。 ・特定した汚損物質から洗浄に有効な方法を提案し、その洗浄方法にて太陽電池モジュールを洗浄する。 ・各洗浄の前後で、I-V特性測定の最大出力点を測定することで、太陽電池モジュールの回復具合を確認する。

6-239

地域特性を考慮した住宅太陽光発電・蓄電池の最適導入量に関する一検討

◎原嶋ひかり（芝浦工業大学）・竹本泰敏（日本工業大学）・河野健人（無所属）・香月壮亮（砂川建築環境研究所）

環境問題への関心の高まりからFIT法施行以降，太陽光発電の導入量が急速に伸びている．だが，住宅太陽光導入量が拡大すると，配電系統電圧上昇などの問題が懸念される．このため，太陽光発電出力の抑制が行われている．一方，近年の蓄電設備は小型化大容量化が進み住宅設置が可能になっている．この蓄電設備を住宅用太陽光発電と併用することで，逆潮流を低減するとともに，パワーコンディショナによる発電電力の出力抑制を行わずに限有効利用することが可能である．本稿では，住宅太陽光発電，蓄電池の最適導入量を明らかにするために，地域毎の発電電力量，エネルギー消費量を数値解析により明らかにして，蓄電池導入量に関する評価をおこなったのでこれを報告する．

6-240

雪氷冷熱温度差発電システムと太陽光発電の経済性比較

◎森 永成・原 亮一・北 裕幸・田中英一（北海道大学）

北海道では近年，雪氷の持つエネルギーの有効利用に向けた取り組みが進められている。著者らも，雪氷エネルギーを利用する雪氷冷熱利用温度差発電（提案システム）を提案している。再生可能エネルギーの一種である雪氷冷熱を利用していくことは環境問題・エネルギー資源問題の両面に対して有効である。また，近年再生可能エネルギー電源導入が進んでいるが，出力が天候に依存するため，需給バランス維持のための調整力をより大きく確保する必要ある。一方，提案システムは出力が安定しているだけでなく，需給調整力としての活用も視野に入れることができる。そこで本稿では，今後電力系統に提案システムを導入する際の経済性を，PVと比較する。

6-241

未開発な再生可能エネルギーによるエネルギーマネージメントシステムに関する基礎的研究

◎王 相国・秋津哲也（山梨大学）

東日本大震災で起こった送電系統のパラダイムシフトをめぐって，エネルギーの地産池消の進行が加速されている．本研究は山梨県で使用可能な再生可能エネルギーのグリッドレベルストレージ（揚水水力発電）による電力蓄積・系統安定化について分析する．流れ込み式水力発電所の出力制御の調査結果に基づき，上ダムの容量をもとに，揚水型発電方式に変えてエネルギーストレージとして導入した場合に，地域型自給自足システムの構築に寄与できることを明らかにする．研究成果として，仮想の揚水水力発電所を改良運用することにより，系統安定の上で，最大700 MWの風力発電が導入可能になる．山梨県の電力需要の7-8割をカバーできる．

6-242

地域内分散型電源の統合運用によるコスト削減効果

◎南島新樹・高山聡志・石亀篤司（大阪府立大学）

近年の気候変動問題への危機感の高まりや，我が国のエネルギー自給率の低さが問題視されており，送電ロスが少ないことや熱の有効利用などの観点から，電力消費地近傍で発電を行う分散型電源が注目されている。一方で，分散型電源の抱える問題として，コスト面と再生可能エネルギー大量導入時の出力変動に対する調整用電源の問題(1)が懸念されており，本稿では上記2点への対策として，地域内で電力融通や複数の工場が協力して太陽光発電（以下PV）の予測誤差を補償する地域内分散型電源の統合運用について提案し，省コスト性およびインバランス対策のための誤差補償効果についてシミュレーションを通じて評価を行う。

6-243

地産地消率向上と潮流削減を目的とした住宅タウンでの充放電計画決定手法

◎谷 哲郎・芳澤信哉・宮崎 輝・林 泰弘（早稲田大学）・塩 将一・梅岡 尚（積水化学工業）

住宅については，ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの実現を目指さなければならず，太陽光発電の設置が進んでいる。加えて，FIT制度適用期間終了後は，蓄電池などを併設させ，太陽光発電電力の自家消費量を上げるようなエネルギー管理が行われる。しかし，住宅の購入電力削減を目的として多くの住宅が蓄電池を運転させた場合，太陽光発電の逆潮流や蓄電池の充放電によっては系統内の変圧器容量の超過を引き起こす可能性がある。そこで本稿では，地産地消率向上と潮流削減を目的として，充放電による住宅間での電力融通を促すように，住宅の充放電の優先度を考慮したエネルギー管理手法を提案する。また，数値計算を通してその有効性を検証した。

6-244

自立移動式ゼロエネルギーユニット（D-ZEV）における電力供給システムの検討（その2）

◎久保陽平・野呂康宏（工学院大学）

著者らは、私立大学研究ブランディング事業「巨大都市・複合災害に対する建築・情報学融合によるエリア防災活動支援技術の開発と社会実装」の一環として、簡易救護所や情報通信・発信機器、自然エネルギーを利用した発電・週熱機器が搭載されており、地域防災拠点などで情報通信面・必要最低限のエネルギー供給面・救急救護面のサポートを行う、「自立移動式ゼロエネルギーユニット（D-ZEV：Disaster-robot Zero Energy Vehicle）」の開発を行っている。本原稿では、D-ZEVの概念や研究・開発の実施内容、電力供給システムに求められる条件や仕様の予備検討結果、D-ZEVの電力供給源であるPVの設置方法について報告する。

6-245

住宅と商業施設のアグリゲーションによる電力費用削減手法の開発

◎榎本美紅・植田 譲（東京理科大学）

本論文では，様々な事業の商業施設とPVの設置された複数の住宅をグループとして考え，住宅の余剰電力を商業施設へ売電することを提案する。住宅と商業施設を組み合わせたグループを作成し，各商業施設の電気料金を最小化する蓄電池の容量を算出した。そして，その蓄電池を所有した商業施設と住宅の電気料金削減，ピーク需要および逆潮流低減において期待できる効果の検討を行った。検証の結果，住宅，商業施設ともに電気料金を削減でき，商業施設の契約電力も削減することが出来た。

6-246

需給調整力提供を目的とする複数の需要家側機器を併用した調整能力評価

◎小牧祐太・中村勇太・原 亮一・北 裕幸・田中英一（北海道大学）

著者らは，発電出力が変動する自然エネルギー電源の大量導入のために,近年導入が進んでいるヒートポンプなどの可制御性を有する需要家側の機器を用いた需給調整力（以下,調整力）の確保のための手法を開発している（以下,提案手法）。提案手法では,特性や運用上の違いから機器ごとに提供できる調整力はその方向（出力及び消費電力の増減）で異なることに注目した。本稿では発電機器（CGS）と負荷機器（EV)を協調させることで双方向の調整力実現にどの程度寄与しうるのかを評価する。

6-247

周波数制御支援を目的とした需要側機器使用の偏りを低減するコンセンサス負荷制御の提案

○斎藤浩海・織原 大（東北大学）

再生可能エネルギー電源が大量連系した電力システムでは、需給調整能力を蓄電池や需要側資源の活用により確保する必要がある。本稿では、LFC担当領域の需給平衡を支援する自律分散型負荷制御において、負荷機器使用の偏りを低減するため、合意制御の考え方を応用したコンセンサス負荷制御の考え方を提案する。

6-248

リソースアグリゲータによる需要家蓄電池へのDR指令配分の基礎検討

◎原口嵩康・伊庭健二（明星大学）

現在、電力系統に大量の再生可能エネルギーが導入されはじめており、それに伴い需給調整が難しくなると予想されている。需要家側が負荷調整するデマンドレスポンス(DR: Demand Response)はその有効な手段として検討されており、現在実証試験が進められている。特に需要家が所持している蓄電池を有効活用することは、制御能力が高く確実なため期待されている。需要家にとっても蓄電池の余力をDRに供出することで対価を得られ、蓄電池のコストを相対的に下げるメリットがある。 しかし、リソースアグリゲータ(RA: Resource Aggregator)が系統運用者から指定された必要な需要削減量の配分を複数の需要家に指令する方法はあまり検討されていない。本稿では常時蓄電池を負荷平準化に用いている複数の需要家に対し、RAが需要削減を指定する方法について検討した。

6-249

IoT化する家電機器による電力需要創出に関するユーザー受容性調査結果

馬場博幸・今中政輝・荻本和彦（東京大学）・天津孝之・○鈴木友矩（東京電力ホールディングス）・宇田川佑介・請川克之（構造計画研究所）

太陽光発電（PV）等自然変動電源の急増により、電力が余剰気味になる期間がある。現在検討されているPV出力抑制に代えて、需要創出することによって過剰な電力を消費することも有効な手立てである。筆者らは、IoT化が進む家電機器をアグリゲーターが起動／停止することによる、前述の電力消費の仕組みを研究している。本報告では、簡易なインタビューにより、この起動／停止に対するユーザー受容性について調査した結果を報告する。

6-250

需要抑制に対するインセンティブの設定方法に関する検討

◎田野中直人・高野浩貴・菊田 翔・小原敦美（福井大学）

需給逼迫時の節電要請の有力な手段として、デマンドレスポンス(DR)が注目されている。DRには様々なタイプがあるが，二種類に大別することができる。一つは時間帯別料金などの電気料金ベースのDRであり，もう一つは需給調整契約などのインセンティブベースのDRである。インセンティブベースのDRの代表例としてピークタイムリベート(PTR)型DRが知られている。需要家に負担感の少ないとされるPTR型DRに関しては，需要家に支払う適切な報酬額の設定方法は確立されておらず，その設定方法について議論の余地が残ると考えられる。そこで本稿では，需要家と発電会社の効用関数を仮定して社会余剰最大化問題を定義し，電力抑制実施後の需要家余剰の減少量をもとに適切な報酬額を設定する方法を検討する。

6-251

ヒートポンプ給湯機及び電気自動車のデマンドレスポンスのアグリゲーションモデルの検討

○岩船由美子・荻本和彦（東京大学）・東 仁（JPBSビジネスサービス）・下田吉之・松岡綾子（大阪大学）

日本の10送電系統におけるヒートポンプ給湯機（HP給湯機）及び電気自動車（EV）によるデマンドレスポンス（DR）の電力システム全体への適用効果を評価するためのモデル化を行った。

6-252

系統貢献を目的とした複数地域冷暖房システムのアグリゲーション制御

◎冨田康平・伊藤雅一・林 泰弘（早稲田大学）・八木貴大・塚田龍也（東京ガス）

コージェネレーションシステムが併設された地域冷暖房システムは，各地域の熱需要を満たしつつ，電力量調整が可能であることから系統貢献への利用可能性が高い。そのため，先行研究では，電力自由化に伴い，系統安定化のために導入された緊急時に調整出力を行う調整力公募を対象とし，地域冷暖房システムによる調整力を提案し，有用性を確認した。本研究では，地域冷暖房システムは全国各地へ導入が進んでいることから，複数地域冷暖房システムによるそれぞれの調整力を合わせて1つの調整力と考え，そのアグリゲーション制御を提案する。先行研究による地域冷暖房システムの単独制御と提案手法の経済性を比較し，アグリゲーション制御の有用性を明らかにした。

6-253

マイクログリッドにおけるマルチスケール供給運用に関する基礎検討

○和田知佳・高山聡志・薄 良彦・石亀篤司（大阪府立大学）・出口和広・小西康太・田中健一（ヤンマー）

近年，環境問題の観点から再生可能エネルギーを含む分散型電源の導入促進が期待されている。一方で，再生可能エネルギー由来の分散型電源はコストが高価であること，また，出力が不安定であることから，電力系統への大量導入時に悪影響を及ぼす可能性が懸念されている。これらの問題の解決策として，複数の発電設備と需要家を統合制御するマイクログリッドが提案されている。本報告は経済性と安定性を同時に考慮した系統連系型マイクログリッドの検討を行うための第一段階として，最適計画の策定方法について検討し，経済性の観点から評価を行う。

6-254

離散型粒子群最適化法と二次計画法に基づくマイクログリッドの需給運用計画の決定手法

◎伊藤大智・高野浩貴・塩見竜平（福井大学）

安定供給性や経済性の高いマイクログリッドを実現するためには，マイクログリッドの電力供給を決定する需給運用計画を適切に作成することが重要である。その際，系統からの電力購入を許容することで，マイクログリッド内の安定供給性と経済性の両立を図ることも不可能ではない。そこで本研究では，系統からの電力購入も踏まえてマイクログリッドの需給運用計画問題を定式化し，離散型粒子群最適化法（BPSO）と二次計画法（QP）を組み合わせた解法を提案する。また，数値シミュレーションにより提案手法の妥当性を検証する。

6-255

再生可能エネルギーを主体とした離島のオフグリッドにおける発電・蓄電設備量および天気情報を考慮したSOC運用方法の決定手法

◎釜 壮一郎・宮崎 輝・広橋 亘・林 泰弘（早稲田大学）・渡辺雅人（東京電力パワーグリッド）・瀧ヶ崎 光（東京電力ホールディングス）

近年、商用系統から独立して太陽光などの再生可能エネルギー、ディーゼルエンジン(DE)などの分散型電源を用いて電力供給を行うオフグリッドの検討が進められている。この実現により、変電所から離れた地点への電力供給の際の、送電設備投資の抑制、自然災害などによる停電リスクの解消が期待される。オフグリッドを導入する際には、安定供給が可能な過不足ない発電・蓄電設備容量を選定することが重要となる。本稿では、現在DEのみで電力供給行っている遠隔地に対して再生可能エネルギーを主体としたオフグリッド化を行った際のコストを最小化する導入発電・蓄電設備容量と天気情報を元にした最適な運用を実現するためのパラメータを決定する手法を提案する。

6-256

離島系統における可制御需要家機器と蓄電池の協調運転による周波数制御

◎森 智之輔・横山明彦（東京大学）・三川玄洋・河内清次（中国電力）

2012年のFIT制度導入以降，再生可能エネルギー電源の導入が加速している。しかし再生可能エネルギー電源は出力が不安定であるため，電力系統の周波数に影響を及ぼす可能性がある。特に離島系統においては系統の慣性力が小さく，また大規模系統と比べ再生可能エネルギー電源の平滑化効果も期待できないため，上記の問題はより深刻になる可能性がある。以上より，離島系統における周波数安定化対策が求められている。 本研究では，再生可能エネルギー電源が大量導入された離島系統において，系統側蓄電池（Battery Energy Storage System : BESS）及び可制御需要家機器として家庭用ヒートポンプ給湯器（Heat Pump Water Heater : HPWH）の協調制御による周波数制御への効果を検証し，その結果HPWHとBESSの協調運転により，BESSの出力変動が緩和されることを確認した。

6-257

太陽電池，バッテリー，ヒートポンプ給湯機を用いた小規模離島における再生可能エネルギー電力・熱供給システムの検討

◎藤井則孝・今中政輝・馬場旬平（東京大学）・比嘉直人（すまエコ）

島内に発電所を持たない小規模な離島への電力供給は海底ケーブルを用いているが、系統規模とケーブル敷設距離によっては非常に高い電力供給コストになる。 そこで、再生可能エネルギー発電と蓄エネルギーシステムで電力供給を賄う事で電力供給コストを下げる検討が行われている。 しかし、このような再エネ電力供給システムでは設備利用率が低く大量の余剰電力が発生する。 本稿ではヒートポンプ給湯機を用いた再エネ電力・熱供給システムを考案した。ヒートポンプ給湯機で余剰電力のみを消費して給湯需要をほとんど満たすことで、システムの設備利用率を上げ供給コストを削減できる可能性を示唆する。

6-258

系統連系型マイクログリッドにおける蓄電池の多目的最適運用計画決定手法の提案

◎劉 安東・石井英雄・林 泰弘（早稲田大学）

既存の電力供給システムでは，台風や地震などの自然災害を含む非常事態を原因とした系統事故により，電力供給が途絶する大規模停電の発生リスクを抱えている。そこで，既存システムに全面的依存をせずに, 地域や建物単位に分散型電源を配置しバックアップ電源として機能させるレジリエントな電力供給システム構築への期待が高まっている。本稿では，系統連系型マイクログリッドにおいて，経済性の指標として定義した系統連系運転時の電気料金とレジリエンスの指標として定義した自立運転移行後の停電時間の重み付き線形和で記述される目的関数を最小化する多目的最適化問題を定義し，粒子群最適化手法(PSO)を用いた蓄電池の多目的最適運用計画決定手法を提案する。

6-259

水素製造プロセスを需要として含むマイクログリッドにおける水素生産量の評価

◎藤山はるか・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・今久保知史・小熊祐司（IHI）

近年，太陽光発電（以下，PV）等の出力変動型の電源の大量導入の対策として水素エネルギーに注目が集まっている。著者らは，福島県相馬市で構築が検討されている，PVの余剰電力を水素に変換して利用するスマートコミュニティの実現に向けて，水素製造プロセスを需要として含むマイクログリッド（以下，提案MG）の運用方法を検討している。本稿では，提案MGがPVを最大限に活用した水素製造の拠点であるとみなし，その水素生産量のポテンシャルを評価するための手法を提案する。

6-260

二重給電発電機を用いた可変速エンジン発電機の離島における高効率運用の評価

○日野徳昭・木村 守・高橋理音・田村淳二（日立製作所）

太陽光発電や風力発電など出力が変動する再生可能エネルギーの導入を拡大していくためには，系統全体として調整力を高める必要がある。既に離島など小規模系統では調整力不足が顕在化している。本稿では，離島の主電源であるディーゼル発電機が，二重給電式発電機を利用して可変速化することにより，最低負荷低減と部分負荷効率向上を見込むことができることを示した。離島でこのシステムを適用した試算により，再生可能エネルギーの導入を拡大し，燃料を削減できることを示した。

6-261

異なる双方向充放電回路を用いた電力貯蔵装置の協調制御によるハイブリッドマイクログリッドの直流母線安定化の検討

齋藤明登・○呉 国紅（東北学院大学）

本研究は、再生可能エネルギー発電を含む交直流ハイブリッドマイクログリッドにおける直流母線電圧の安定化について検討する。このシステムでは、変動する再生可能エネルギー発電と直流負荷が直流母線に接続されるため、複雑に変動する直流電圧の安定化が課題である。いままでは、二次電池とEDLCの異なる電力貯蔵装置を用いて協調制御による直流電圧の安定効果を実験検討してきた。しかし、充放電装置の動作遅れや制御による遅れによりEDLCの高速追従能力を十分に活かせなく、電圧補償効果が低減される現象も現れた。そのため本研究では、新たに二種の特徴を持った双方向充放電コンバータ回路を用いて、実験システムと同様なマイクログリッドにおいて、シミュレーションモデルを作成・動作確認し、改善された電力補償効果を確認した。

6-262

誘導機負荷を有するマイクログリッドにおけるインバータ電源を用いた電力品質改善

◎川口 響・北條昌秀・山中建二（徳島大学）・舟橋俊久・加藤丈佳（名古屋大学）

近年，再生可能エネルギーの有効利用法の一つとしてマイクログリッドが期待されている。著者らはマイクログリッドにおいて周波数と電圧を一定の範囲内に保つためのインバータ電源の制御について検討を行ってきた。本稿では，特に誘導機のような動的負荷が含まれるときの提案制御の有効性について検討した結果について述べている。提案の制御方式は，単一の制御ゲインKの値を調整することで周波数制御の強さを変更できる点に特徴があるが，誘導機を負荷として持つモデル系統においてPSIMを用いたシミュレーション解析を行ったところ，これまでと同様，この特徴を確認することができた。今後はより具体的な条件下での検討を行う予定である。

6-263

仮想同期発電機を使ったマイクログリッドにおける自律的電力管理（その2）

○平瀬祐子・吉村英治（川重テクノロジー）・平井友之・山下尚也（大阪ガス）・杉本和繁・崎元謙一（川崎重工業）

マイクログリッド(MG)を1住戸を意味するナノグリッド(NG)の集合であると見なし、NGには、蓄電池インバータ(BAT)、家庭用燃料電池(FC)、および家庭内負荷(LD)が接続される。BATには慣性力を模擬する同期発電機(VSG)制御を、FCには一般的な制御(慣性力を持たない電流制御)を搭載する。各NG内の電力制御部(APM)が、周波数、受電電力、電池残量を計測制御することで、MG全体の電力の融通と効率的な利用を可能にする。従来手法のように各NGの上位集中管理制御や、NG間における情報の授受は用いず、NGが自律分散的に制御を行う点が新しい。実1住戸での連続生活結果、模擬3住戸MGでの自律的電力管理実証結果、および実需要を用いたシミュレーション結果を報告する。

6-264

マイクログリッドに多数台導入された太陽光発電システム制御時の通信遅延の影響の補償についての検討

◎田村 潤・近藤健一・馬場旬平（東京大学）

太陽光発電 (Photovoltaic gereration, PV) が大量に導入されると、電力需給の一致を図ることが難しくなり，周波数変動が増加すると考えられる。その対策として、筆者らはPVの出力を単に抑制するのみではなく、通信を用いた出力制御を行い、短周期変動補償に貢献させることの効果を検討すると同時に、機器との通信品質が系統の周波数変動補償にどのような影響を与えるのかについての検討を行ってきた。本稿では、先行研究では補償を考慮しなかった通信遅延の補償手法を提案し、マイクログリッドの電力変動の補償効果を検討した。その結果、提案する手法により制御の際の出力のフィードバックに含まれてしまう通信遅延による誤差の補償がある程度行える可能性が示された。

6-265

再生可能エネルギーを含む孤立系統の供給信頼度

◎馬 丁・宮内 肇（熊本大学）

送電網から遠く離れている負荷に対して、孤立発電系統ではそのような負荷へ短距離送電することから、送電コストと送電損失がほとんど発生しない。さらに再生可能エネルギー発電をもつ孤立系統では、化石燃料の輸送コストを削減でき、温室効果ガスの排出も抑えられるという利点がある。 本研究では、中国内モンゴル自治区にある未電化村落を対象として、再生可能エネルギー（主に風力）を含む孤立系統を適用し、系統の停電時間により孤立系統の供給信頼度について検討する。さらに蓄電池を導入した場合の停電時間についても考察を行う。

6-266

蓄電池の最適容量算出のための太陽光発電と風力発電の相関関係の検討

◎武田航征・浦野昌一（明治大学）

日本国内の再生可能エネルギーの導入量において, 2015年度では国内の全発電量に占める割合は14.5%程度と推計され, 太陽光発電と風力発電を合わせてもいまだ4%程度に過ぎない。導入における主な課題として, 太陽光発電は発電コストが比較的高く, 風力発電などは立地制約があり, また天候により出力の変動が左右されてしまうことがあげられる。その出力変動対策として蓄電池が用いられている。本研究では, 太陽光発電と風力発電を合一した発電と捉えることにより蓄電池容量の低減ができないかを考慮する。研究の初期段階として, 太陽光発電と風力発電の2つの発電量に着目し, その相関関係について検討する。

6-267

風力発電の出力平準化のための蓄電池配置個所の検討

◎茂木文哉（早稲田大学）・伊庭健二（明星大学）・中西要祐（早稲田大学）

近年、地球温暖化の原因とされている二酸化炭素排出削減のために、世界的に再生可能エネルギーの導入が叫ばれている。再生可能エネルギーの種類は多岐にわたるが、中でも風力発電はコストが安価で日本での潜在容量も大きいため注目されている。しかし、風力発電の出力は気象に依存するため出力が不安定であることが課題となっているため、本稿では東北地方を模したモデル系統を構築し、蓄電池による出力平準化の検討を行った。ウインドファーム（WF）の発電電力は実際に実測されたデータを用いた。検討は蓄電池の配置に関するものであり、ならし効果を期待して系統集約地点の1カ所に置く場合と各ウインドファーム内に蓄電池を置いた場合の2ケースを考え、出力の平準化の効果と必要量およびそのコストを比較した。

6-268

蓄電池導入による調整力量低減効果の検討(1)―LFC制御―

◎岡 俊介・柏原賢司・安喰 誠（関西電力）・工藤耕治（日本電気）

系統内に広域的に存在する分散電源を，エネルギーリソースアグリゲータが統合的に監視制御し，あたかも一つの発電所のような取扱いを可能とする仮想発電所（VPP：Virtual Power Plant）の取り組みに注目が集まっている。 VPP において重要なリソースの一つと考えられる需要家側蓄電池を負荷周波数制御（LFC）等による周波数制御へ活用することで，調整力電源の多様化による系統安定化，調整力コストの低減を目指し， VPP 構築実証事業に取り組んでいる。 本論文では，蓄電池をLFC に活用した場合の効果を電気学会標準モデルを活用したシミュレーションにより検証した結果を報告する。

6-269

蓄電池導入による調整力量低減効果の検討（2）－GF相当（Δf）制御－

○工藤耕治（日本電気）・岡 俊介・柏原賢司・安喰 誠（関西電力）

近年，系統内広域に多数存在する分散電源を，エネルギーリソースアグリゲータが統合的に監視制御し，あたかも一つの発電所のような取扱いを可能とする仮想発電所（VPP）実現へ向けた取り組みが活発化してきている。VPPのサービスは，種々想定されているが，中でも，負荷周波数制御（LFC）/ガバナフリー（GF）相当の周波数制御は有望なサービスの一つであり，われわれは需要家側蓄電池群を用いた実現へ向けて検討を進めている。このとき，蓄電池を用いた周波数制御の効用を明らかにすることは非常に重要である。特に経済価値に直結する“必要な調整力量の低減効果”は，非常に重要な観点であろう。今回，蓄電池をGF相当（Δf）制御に活用した場合の効果を，調整力量の低減効果の観点で検証したので報告する。

6-270

蓄電池の現在状態を考慮した充放電指令配分

◎高坂一郎・熊野純一・高口雄介・竹村大吾（三菱電機）

近年，再生可能エネルギー設備の発電出力平滑化用途や，電気自動車の普及拡大によって，蓄電池の需要が高まっている。しかし，複数種類の蓄電池を活用する場合や，リユース品と新品とを共用する蓄電システムを構築する場合などでは，最も寿命の短い蓄電池にシステム全体の寿命が依存してしまうことがある。 そこで本研究では，複数種類および劣化状況の異なる複数の蓄電池を内包する蓄電システムに対して，適切な制御指令配分による蓄電池寿命の平滑化を行うことで，蓄電システム全体の長寿命化を図ることを目的とする。

6-271

リチウムイオンキャパシタを用いた蓄電回路の電気特性

○中田俊司・奥畠 稜・合田満貴（近畿大学）

近年再生可能エネルギーの蓄電や自動車の電動化技術が注目されている。今回、リチウムイオンキャパシタを蓄電デバイスとした回路の充放電特性を検討したので報告する。

6-272

PV・EVの大量導入を可能とするIoT機器活用型配電系統アセットマネジメント手法の検討

◎大久保里矩・芳澤信哉・林 泰弘（早稲田大学）・河野俊介・板屋伸彦・高野富裕（三菱電機）

太陽光発電，電気自動車の配電系統への導入に伴い，逆潮流の増加による低圧配電系統設備の容量超過が懸念される。従来では，系統運用者による柱上変圧器の容量増加や分割設置などの対策がなされてきた。しかし，PV売電価格の低下やnet-Zero Energy Houseの義務化による自家消費の高まりや通信網の発達により，家庭用蓄電池やスマートメータを始めとするIoT機器が普及すると考えられる。これらのIoT機器や計測情報を利用することにより，不必要な設備投資の防止が期待できる。本稿ではPV，EV大量導入時にも低圧配電系統設備の容量超過を抑えつつ需要家の充電量を損なわないアセットマネジメント手法として，スマートメータの計測情報を活用した蓄電池の充放電計画を提案し，有用性を検証する。

6-273

メガソーラが連系された配電系統における実負荷の力率推定手法

◎坂内容子・村上好樹・廣政勝利（東芝）・塚田 徹（東芝エネルギーシステムズ）・三浦知則・松田勝弘（東北電力）

配電線事故発生時には、事故区間内の太陽光発電は自動復旧しないため、事故区間内の事故前の負荷を推定して融通を開始する必要がある。実際には計測できる潮流のみから太陽光発電と実負荷を分離推定する必要があり、そのためにはまず現状未知である実負荷の力率を推定しなければならない。この実負荷力率の推定精度は最終的に実負荷の推定精度に影響するため、実負荷力率の推定精度が現状実負荷推定の課題となっている。本報告では、配電系統内の計測器から得られる潮流データのみから、実負荷力率を求める手法を提案する。

6-274

インテリジェントPCSにおける各種電圧制御機能の性能比較

◎堀江俊介・岩根佑治・合田忠弘・雪田和人・松村年郎・後藤泰之（愛知工業大学）

近年太陽光発電が増加しているが太陽光発電には発電出力の変動という欠点がある。さらに一般家庭の屋根に設置される太陽光発電には配電線の線路容量や電圧制約等により配電用変電所からの距離によって発電出力が制約をうける空間的な不公平性と設置時期によって系統への接続に制約を受ける時間的な不公平性がある。そこで本稿では、インテリジェントPCSに具備されている各種の系統制御支援機能に関して、電圧制約における空間的公平性を担保する観点からの評価を実施する。この評価においては、系統に連系された発電設備の総発電量を大きくすることが社会的に求められるので、総発電量を勘案した評価を実施する。

6-275

蓄電池併設型太陽光発電用PCSを用いたエネルギーシステムの電力利用率向上に関する研究

○遠藤浩輝・栗坂昌克・上野 勉・吉岡佑介（GSユアサ）・井上 馨・加藤利次（同志社大学）

将来のエネルギー問題において有効的な活用が期待される蓄電池併設型太陽光PCSに対して、電力系統への逆潮流時の電圧上昇抑制対策としてPCSに力率一定制御を具備することが義務付けられているが、出力容量が皮相電力で決まるPCSでは力率制御で無効電力を注入することにより有効電力が減少する。また、現在の認証制度では逆潮流の有無に関わらずPCSが逆変換している時点で力率制御をおこなう必要があり、負荷への電力利用率が減少してしまう。本稿では、蓄電池併設型太陽光PCSにおいて、系統の受電電力を測定する外部トランスデューサーと、PCSの受電電力一定制御および力率調整機能を用いて、構内負荷等への電力利用率を向上するシステムを構築するとともに、実機により本制御方式の有意性を確認する。

6-276

大容量太陽光発電システムの配電線末端導入時におけるパワーコンディショナの挙動に関する実験的検討

○清水洋隆・松浦一平・川田吉弘（職業能力開発総合大学校）・松村年郎・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・立脇健人・横水康伸（名古屋大学）・飯岡大輔（東北大学）・石井佑弥・石川博之・松尾顕守・岩月秀樹（中部電力）

大容量の太陽光発電システムが配電線末端に導入された場合の配電線の電圧変動について実験的に検証した。また，パワーコンディショナ（PCS）の出力端子電圧の変動がPCSの制御に与える影響についても考察した。太陽光発電システムからの電力の増加にともない，PCSの端子電圧が増減することを実験的に確認するとともに，電気回路論に基づいて求めた理論値とほぼ一致することを示した。また，電力が大きくなるとPCSの制御が不安定となる可能性があることを明らかにした。

6-277

大型PCSのHILSテストシステムの構成検討

○小西博雄・大谷謙仁・橋本 潤・菅原秀一・鈴木正一（産業技術総合研究所）

太陽光のエネルギーは気象条件に左右され、安定なエネルギーとして活用ためには蓄電池との併設やその出力調整、DSMによる負荷との調整等が重要であり、産学官を挙げて研究開発に取り組まれている。系統との連系技術、制御・保護装置の開発や設置前の評価には、ディジタルシミュレーションやアナログシミュレータによる検討が欠かせない。課題解決の一助として、太陽光発電等を含む系統モデルをリアルタイムで解析する解析装置と、パワーコンディショナー(PCS)や制御・保護装置のハードとを組み合せて動作させ、解析・評価するHILS(Hardware in the Loop Simulation)システムを構築し検討した。

6-278

様々な地域の配電系統における電流制約がPV大量導入に及ぼす影響に関する統計的評価

○池上幸佑・松木徹哉・栗本宗明・舟橋俊久・加藤丈佳（名古屋大学）

固定価格買取制度（FIT）の施行により、太陽光発電（PV）の大量導入が進んでいる。PVが比較的多く導入される住宅地や農山村地などの配電系統では、特に需要の小さい昼間において配電線の電流容量を超過するような逆潮流電力が発生し、PV導入が制限される可能性がある。本論文では、愛知県内に想定した298個の配電エリアを対象とし、k-means法を用いてクラスタリングを行い、全配電エリアに配電系統モデルを模擬した。そして、それらの配電系統の端部において統計データに基づいた電力需要予測値とPV導入量予測値から、発生する逆潮流電力に基づき、端部の配電線の電流制約がPVの大量導入に及ぼす影響を統計的に評価した。

6-279

単独運転検出機能の設定値によるRoCoF耐量の簡易算出手法

◎白崎圭亮・天野博之（電力中央研究所）

再エネ導入量の増加に伴い，系統に並列された発電機の容量が減少していくと，系統全体の慣性エネルギーが減少していくため，系統事故時の周波数安定性が低下するおそれがある。大電源脱落事故時においては，慣性エネルギーの減少により発電機は減速しやすくなるため，周波数変化率（RoCoF：Rate of Change of Frequency）は増加傾向となる。一方で，PV連系に用いられるパワーコンディショナ（PCS：Power Conditioning Subsystem）には単独運転検出機能が備わっており，非単独運転時にも周期偏差による単独運転の判定が行われるため，大電源脱落時の周波数変動により再エネ脱落が併発し，さらなる周波数低下を招くおそれがある。RoCoFに対する検出感度は機種ごとに異なるため，本研究では単独運転検出機能の代表的な方式について，設定値からRoCoF耐量を簡易的に算出できる手法を考案した。

6-280

複数の系統情報を用いたPCS単独運転検出法

岩本 猛・◎鈴木宥一郎・川﨑章司（明治大学）

PVなどの分散型電源が連系した系統が事故などによって系統電源から切り離された場合、切り離された系統は分散型電源のみで他の需要家に電力を供給する単独運転状態となり、公衆感電などの危険性がある。そのため、単独運転はパワーコンディショナ(PCS)に備わっている単独運転検出によって迅速かつ確実に防ぐことが求められる。本研究では、複数の系統情報を用いて多面的に単独運転を識別する新たな単独運転検出法を提案し、単独運転時と外乱発生時のシミュレーションを行うことにより、提案法の有用性について検証した。

6-281

ステップ注入付周波数フィードバック方式の普及が無効電力変動方式の単独運転検出性能へ与える影響の検討

◎野々尻知弥・堤 謙介・小松宏明・高野浩貴・田岡久雄（福井大学）

PVに搭載される単独運転検出機能としてステップ注入付周波数フィードバック方式（FFB : A frequency feedback method with step reactive power injection）が日本電機工業会の規格となり(1)，標準化されている。したがって，今後は旧型能動方式が搭載されたPVが連系する系統に追加されていく形でFFB付PVが普及する。本研究では，FFB付PVの比率が大きくなっていった時，旧型能動方式を搭載したPVにどのような影響を及ぼすか検討した。

6-282

周波数フィードバック方式を有する太陽光発電の単独系統における導入限界の理論的検討

○金尾則一・山田誠司（北陸電力）

配電線に連系する太陽光発電（PV）には，保安上の面から単独運転検出機能が必須となっている。この機能のうち，能動的単独運転検出機能として周波数フィードバック方式が標準化されつつある。一般的に能動的単独運転検出方式は系統を不安定化させることでPVの単独運転を検出するものであり，このPVを大量に含む基幹系統が単独系統に移行できた場合においてでも，この機能により系統の単独運転が維持できないことが懸念される。 本稿では，周波数フィードバック方式を用いたPVの単独系統における導入限界について，線形化ブロック図を作成してナイキストの安定判別により理論的に検討し，その妥当性を電中研Y法によるシミュレーションで確認した。

6-283

出力変動を考慮した周波数調整機能付き太陽光発電システムに関する基礎検討

◎安原崇志・田中駿也・高野浩貴・田岡久雄（福井大学）

太陽光発電システム(PV)と電力系統とをつなぐ系統連系インバータの制御に同期発電機(SG)の動揺方程式を適用し，PVがSGの過渡特性と同様の特性を持った周波数調整を行うことを目的とした研究がなされている。これらの研究の多くは，PVと蓄電池と併設することを前提としたものが多く，PV本来の特性には左右されない形となっている。しかし，PVの出力変動をそのまま用いた周波数調整機能については検討されていなかった。蓄電池は，コスト面から積極的な導入は難しいため，蓄電池を用いずPV単独で周波数調整を実現できることが望ましい。そこで著者らは，蓄電池を用いず，既存のPVに新たな制御系を追加するのみで周波数調整機能を実現するPVを検討する。

6-284

太陽光発電の高速・低速出力応動のためのP - fデュアルドループ制御に関する実験的検討

◎金原佑樹・栗本宗明・舟橋俊久・加藤丈佳（名古屋大学）・杉本重幸（中部電力）

太陽光発電(PV)の大量導入に伴う同期発電機の発電比率の減少により、周波数調整力の低下が懸念されている。その対策として、PVに周波数調整力を持たせることが考えられ、平常時の負荷周波数制御や故障時の同期化力に貢献する出力制御について実証試験が行われている。一台のPVにこれらの制御を同時に実装することで、周波数変動に対する出力応動が同期発電機に準じた特性となる。そこで本研究では、周波数計測方法が異なる2種類のP – f ドループ制御をPV模擬電源に実装し、その動作を実験的に検証した。

6-285

スマートメータ等の計量値を用いたビッグデータ分析によるPV出力換算係数に関する考察

◎古謝健子・竹内康介・鶴岡 健・内山繁喜（関西電力）

平成24年のFIT制度導入以降，急速に普及が進む太陽光発電（以下，PV）の出力を正確に予測して適切な需給制御を行うべく，当社は，日射量短時間予測システム「アポロン」を活用したPV出力推定・予測システムを平成28年3月に中央給電指令所に導入し，スマートメータを対象とした膨大なデータ分析による最適なPV出力換算係数（以下，換算係数）の算出に取り組んでいる。これまではエリア全域で月別に1つの換算係数を算出してきたが，スマートメータ等の計量値は30分単位であるため，時間帯別の分析が可能となる。また，電圧階級毎にPVの規模が異なり，これにより発電効率も異なることが予想される。そこで換算係数の詳細分析を行ったので，その概要を紹介する。

6-286

風力発電設備の系統安定化技術の現状

○吉田浩士（ゼネラルエレクトリックインターナショナルインク）

欧米諸国では風力を始めとした再生可能エネルギーによる発電設備の普及が拡大するにつれ、周波数や無効電力といったアンシラリーサービスに分類される、汽力発電所の同期機が提供する系統安定化能力に相当する機能が求められ、風力発電機メーカはそれらに対応した技術を開発し、市場に投入してきた結果、風力発電設備は基幹電源の一翼を担うまでに成長した。本稿では弊社が提供する系統安定化機能について、シミュレーションや実事例を基に報告する。

6-287

模擬的な風力発電出力時系列生成方法での実績データに基づくパラメータ最適化

◎赤塚元軌・田中 惇（苫小牧工業高等専門学校）

気象庁が公表している風速データとNEDOの局所風況マップに記載されている風速の年間出現頻度分布を表すためのワイブル係数，および，風力発電機のパワーカーブに基づいて，風力発電機の出力時系列を推定する手法を先行研究で検討してきた。この検討の時点では出力実績の入手が難しく，精度検証は実績値を使わない方法で進めてきたが，「系統情報の公表の考え方（平成28年4月）」が示されたことで出力実績が入手可能となった。本稿では，北海道電力が公表している出力実績を利用し，提案手法で用いているパラメータの最適化を行った結果を報告する。

6-288

HP/BG併用熱供給システムによる風力発電出力ランプ変動抑制の検討-設備容量増設による変動抑制能力への影響-

◎秋岡竜太・原 亮一・北 裕幸・石川志保（北海道大学）

風力発電（WF）などの天候に依存する出力変動型のRE電源の大量導入は，電力系統の安定運用に悪影響を与える可能性があり，出力変動を抑制するための技術開発が必要である。このような背景から，著者らはNEDOによる「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」の一環として，ヒートポンプ(HP)とバイオガス発電機(BG)を組み合わせたHP/BG併用熱供給システム（以下，提案システム）を用いて，WF出力に含まれるランプ変動を抑制するための技術開発を検討している。今後，提案システムを全国的に導入・展開していくためには，個別の酪農家・バイオガスプラント（BGP）の事情を勘案しつつ，最大限の変動抑制能力が得られるような設備を設計する手順を明らかにすることが重要である。 本稿では，既設のBGPに対してHPおよびBGを増設することで提案システムを構成する状況を想定し，設備容量増加が変動抑制能力にもたらす効果を考察する。

6-289

HP/BG併用熱供給システムによる風力発電出力ランプ変動抑制の検討 -HP台数制御を考慮した計画発電の検証-

◎横山 凌・原 亮一・北 裕幸・石川志保（北海道大学）

著者らは、地球環境問題への考慮などを背景とした再生可能エネルギーへの関心が高まる中で、特に風力発電に着目し、その予測不確実性への対策として新たな蓄エネルギー装置であるHP/BP併用熱供給システムの開発・能力の評価を行っている(以下、提案システム)。提案システムを用いて、WFを持つ小売り事業者が売電を行う際に事前に通告する通告値と実際の発電量に生まれる差について補償していく計画発電の実現を目指している。前報では、提案システムの運用方法、またシミュレーションによる評価について議論しており、本報では、より実機に近いモデルを用いて精緻化したシミュレーションを行いその結果について議論する。

6-290

高時間解像度の風力発電出力データを用いた超短周期および短周期変動抑制制御

○占部千由・斉藤哲夫・荻本和彦（東京大学）

北海道エリアにある個別ウィンドファーム（WF）の発電出力データ（3秒値)を用いて、エリアにおける風力発電出力の超短周期および短周期変動を緩和するための制御検討を行った。風力発電出力データは2012年度の実績値を用いた。秒オーダーの変動を超短周期変動、分オーダーの変動を短周期変動と呼ぶこととし、移動平均を用いてこれらの変動を抽出した。これまで東北エリアのデータを用いて出力変動緩和制御検討を行ってきたが、北海道エリアは風力発電の設備容量が小さく、もともとの出力変動が大きいため、東北エリアと比較して変動緩和制御は難しくなるが、今回の検討においても一定の制御効果が得られることがわかった。

6-291

風力発電に対する統計的手法を用いた出力変動抑制法

◎石井智也・劉 康志・小岩健太・原池弘高（千葉大学）

近年，環境問題から風力発電が注目されている．しかしその出力は風況よって変化する．したがって電力系統に大量導入された場合，電力の需給アンバランスにより系統の周波数が変動してしまう．この背景から風力発電の出力変動を適切に抑制することが求められている．出力変動を抑制する手法として，ピッチ角制御等によりピークカットを行う方法がある．しかし，この手法は風力発電の出力を低下させることで周波数変動を抑制するため，風力発電から得られる電力が減少するといった課題がある．そこで本論文では，周波数変動と風力発電の出力抑制量の最適なトレードオフを実現すべく，風力発電出力の統計分布を利用したピークカット手法を提案する．

6-292

超伝導磁気エネルギー貯蔵装置による負荷近傍の風力発電出力変動抑制の基礎検討

◎長山航大・坂本織江（上智大学）

地球温暖化対策や低炭素化社会実現のため、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー電源の導入が世界中で広がっている。さらにわが国では、後者の達成のために水素インフラの導入が考えられている。なかでも液体水素を冷却材とした超伝導機器を電力系統に導入することによる、電力系統の安定性の向上が期待されている。本研究では再生可能エネルギー電源として風力発電を、超伝導機器として超伝導磁気エネルギー貯蔵装置（SMES）を想定し、SMESによる負荷端における風力発電出力変動抑制の向上効果を検証した。

6-293

風力発電の有効電力・周波数制御機能と特性

○斉藤哲夫・占部千由・片岡和人・荻本和彦（東京大学）・鈴木和夫（日本風力発電協会）

パリ協定の発効に伴い、エネルギー部門全体での低炭素化に向けて、再生可能エネルギー（再エネ）等の低炭素電源導入、新たな電源構成による電力需給運用、エネルギー部門全体の需給などに関する検討が、進められている。 再エネの大量導入対応として、国内では、従来電源の調整力を最大限活用した上で、再エネの出力抑制による需給運用方式が検討されているが、海外の再エネ導入先進国では、再エネの制御機能による調整力も活用した需給運用方式への移行が進められている。 本稿では、IECで審議中の風力発電の制御機能のうち、有効電力・周波数制御機能の概要と、制御特性の確認試験結果について報告する。

6-294

二重給電誘導発電機のコンデンサを用いた風力発電機出力制御の予備検討

◎山下隼矢・山口順之（東京理科大学）

FIT法により，太陽光，風力発電の導入が急速に進んでいる。再エネ電源の優先給電により，火力発電の出力抑制・停止が必要となるが，周波数調整力である火力発電の停止は，系統安定化の問題の一つである。風力発電は，政府目標である2030年に1000万kWを目指し，導入が進められている。しかし，系統連系には出力抑制の受け入れなど制約があり，日本風力発電協会は，系統連系拡大策の検討を進めている。本研究では，二重給電誘導発電機のAC/DC/AC変換器のコンデンサに注目し，そのコンデンサの充放電による出力制御を行い，出力を抑制することなく風力発電機の出力を安定なものとし，さらには周波数調整力として活用することの可能性について検討する。

6-295

可変速風力発電用フルコンバータの積分器を用いない制御方法

◎小岩健太・李 迎暁・劉 康志・残間忠直（千葉大学）・田村淳二（北見工業大学）

本稿では積分器を用いない可変速風力発電機用フルコンバータの制御方法を提案する．従来，フルコンバータの制御器には複数個の比例積分制御器が用いられており，所望の応答実現するためには試行錯誤的なチューニングが必要となる．さらに，事故等による系統電圧低下時に，積分器の状態を適切に管理しなければ，風力発電機は制御不能となり事故復旧時に電力を送電できず，需給アンバランスを引き起こし系統全体の停電を招く可能性がある．そこで本稿では，チューニングおよび積分器フリーの制御方法を提案する．

6-296

遠隔出力制御のための風力発電出力予測モデルの高度化とその予測精度検証

◎吉田健二・早﨑宣之（伊藤忠テクノソリューションズ）

筆者らは, 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の事業である, 電力系統出力変動対応技術研究開発事業／再生可能エネルギー連係拡大対策高度化において，自然変動電源の出力制御に向けた既存の風力発電出力予測モデルの高度化を実施している．既存モデルからの高度化として，予測の高頻度化と，風車・風力発電所単位での予測誤差補正を実施した．本報告では，高度化した風力発電出力予測モデルの概要とその予測精度について報告する．結果として，風車・風力発電所毎のモニタリングデータを活用することで，3日先までを対象とした短期予測で15%，6時間先までを対象とした短時間予測で19%のMAEの改善が確認できた．

6-297

風力発電設備群出力の短期予測に基づいた出力制御計画の決定方法に関する検討

◎野瀬淳平・飯岡大輔・斎藤浩海（東北大学）

電力供給過剰時の風力発電設備群に対する公平な出力制御量配分の決定手法について研究している。これまでに、出力制御に関する年間計画に基づき、翌日24時間分の予測データを用いて、最適化問題から出力制御計画をたてる翌日計画および当日の1時間分の予測データを用いて作成する当日計画を作成する方法を提案している。年間計画は1年分の発電と需要に関する予測データに基づいて作成するものなので、精度の点で課題がある。そこで、年間計画を用いずに翌日計画および当日計画を作成する方法を提案する。

6-298

オンライン出力抑制を考慮した風力発電計画手法に関する検討

◎溝畑裕一・吉田孝太郎・根岸信太郎・高山聡志・石亀篤司（大阪府立大学）

近年，再生可能エネルギー電源はクリーンエネルギーかつ発電単価が比較的安価であることから電力系統に対して急速に連系されている。一方で風況は刻々と不規則に変動するため，特段の措置なく大容量の風力発電が系統に連系されると電力品質に悪影響を及ぼす懸念がある。ここで，1分間単位で出力抑制の判断を行うオンライン制御により計画作成時の予測されたSOCとその計画を実際に運用するときのSOCの誤差調整を行う。本稿では出力抑制の判断をオンラインで行うモデル予測的な制御手法を用いた発電計画作成手法について提案し，シミュレーションを通して予測SOCと実測SOCに関するSOCの補正効果について評価する。

6-299

連系要件からの逸脱量低減を目的としたWFの確率論的発電計画

◎吉田孝太郎・根岸信太郎・高山聡志・石亀篤司（大阪府立大学）

著者らは風力発電における予測情報と蓄電池を活用した計画発電について検討しており，特に予測情報を確率変数として扱う確率論的計画発電手法について提案している。しかし，提案した発電計画作成モデルでは，ランプ変動時に蓄電池充電率の管理が十分に実行出来ない問題が見られた。そこで本稿では，上記の問題の解決策として，連系要件からの逸脱量に着目した発電計画作成モデルを提案する。加えて，年間シミュレーションにより提案手法の有効性を確認する。

6-300

SiCを適用した低圧配電系統用電圧変動抑制装置の開発

○窪田まど華・田重田稔久・丸山宏二・金子知実（富士電機）

太陽光発電の導入拡大に伴い、配電系統の電圧変動がこれまで以上に大きくなることが予想されている。この課題を解決するため、低圧配電系統用電圧変動抑制装置（AVRユニット）を開発した。AVRユニットの電圧調整機能を試験系統で検証した。検証より、電源側電圧低下時において、負荷側電圧が一定に維持されたことを確認した。

6-301

汎用保護リレーを用いた保護監視制御システムの構築に関する一検討

◎藤田真也・青木 睦・天雨 徹・大谷哲夫（名古屋工業大学）・小島一浩（中部電力）・小澤辰哉（名菱電子）

筆者らは，海外製の汎用保護リレーIEDおよび産業制御システムSCADAを用いた，配電用変電所および配電系統の保護・監視・制御が可能な統合システムの構築を目指している。 これまではIEDの保護機能に焦点を当てて，配電系統および配電用変電所の保護システムに関する研究を行ってきたが，実際に電力系統に適用することを想定した場合，監視や制御の観点も重要であると判断し，電力システムの監視・制御に関しても検討を行った。 今回は基礎検討として，システムに組み込む機能について検討したのち，実際にシステムを構築し簡易的な実験を行ったため報告する。

6-302

送電線保護装置の伝送路を活用した事故波及未然防止リレーシステム

◎黒瀬雄太・今井理裕（東芝エネルギーシステムズ）・中澤佳経・青山 昭・金子 力（東北電力）

東北電力管内に設置したSPCの仕様概要と伝送ルート構成について紹介したもの。送電線保護装置の伝送ルートを活用して端末装置から主装置へ事故検出信号を伝送することで，通信帯域の確保や通信設備を新設することなくシステムを構築した。

6-303

DMDを用いた監視・保護制御システムにおける時刻同期精度とシステム保守性の向上の検討

○遊佐博幸・大場英二・芹澤善積（電力中央研究所）・吉本早織・河原田 明（東芝エネルギーシステムズ）

我々は，保有する電力用通信ネットワーク技術と保護リレーシステム技術を基に，イーサネット方式の高速データ通信・時刻同期ネットワークと水平分散配置可能なモジュール型の監視・保護制御装置（Decentralized Modular Device；DMD）を組み合せた次世代型WAMPACシステム（以下，DMDシステム）を開発してきた。本論文では，DMDシステムの実導入を目指した，時刻同期精度とシステム保守性の向上についての検討状況を報告する。

6-304

電気学会電気規格調査会標準規格ディジタル形電圧リレー JEC-2520の概要

前田隆文（東芝エネルギーシステムズ）・兵藤和幸（日立製作所）・千原 勲（富士電機）・○金山哲也（明電舎）

電気学会電気規格調査会保護リレー装置標準化委員会では，「ディジタル形電圧リレー」JEC-2520の規格原案を作成し，平成29年12月12日の計測制御通信安全部会にて承認されたので，規格委員総会での審議を経て，平成30年3月の規格役員会にて承認となる予定である。 本規格は，電力機器，電力線の保護に使用されるディジタル形電圧リレーへの適用を目的として，JEC-2511およびIEC規格との整合について検討を加えながら制定されたものである。 本論文では，本規格の概要と附属書及び解説で記載した内容について報告する。

6-305

電気設備の不具合事象発見に対する状態監視の有効性について

○滝澤恒夫（関東電気保安協会）

電気設備を安全に機能させるためには，適切な維持管理を行って行く必要がある。そのためには，法令の定めにしたがって，保安規定を作成し，それに従った点検を実施する事が要求される。 関東電気保安協会では，2014年から，受託しているお客さま約95000軒の自家用電気工作物を対象に，点検のより一層の質の向上を目的として，常時監視を行う事で不具合事象を未然に発見し設備の稼働率を高める方法を研究し続けている。 また、監視装置の性能や有効性についても合わせて検討を行ってきたので成果を紹介する。

6-306

配電系統の計測の非同時性を補正する手法に関する一検討

○井上秀樹・足立昌宏・友部 修（日立製作所）・松田勝弘（東北電力）

近年太陽光発電(以下PV)の導入量増加により，時間当たりの潮流変動が大きくなっている。配電系統では，電圧等を適切に保つため開閉器等の箇所で電気量を計測している。前記の計測は配電用変電所設置の装置が，配下の多数の開閉器毎に順次ポーリングを行うことで実施している。よって，開閉器毎に計測時刻が異なるが，負荷のみの系統では計測時刻のずれによる計測値のずれは小さかった。しかし，PVが連系された系統では，短時間に大幅に潮流が変動するため，計測値のずれ量が増大しつつある。本報告では，変電所送り出し点にて短周期で計測している皮相電流を用い，上記時刻のずれによる計測値のずれを補正する方法を検討した結果を示す。

6-307

対称性原理に基づく交流瞬時位相角の計測

○関 建平（三菱電機）

高速かつ高精度に交流瞬時位相角を計測することは電力系統保護制御システムにとって非常に重要な技術である。これまで、交流信号の対称性を踏まえ、交流瞬時位相角のゲージ電圧群の加算特性計測式を提案してきた。本稿では、まずゲージ電圧群の減算操作による交流瞬時位相角の減算特性計測式を導出し、次に加算特性と減算特性とが対称性を有していることを利用して周波数に依存しない加減算ペア計測式を導く。最後に、数値シミュレーション例により提案式の有効性を確認する。

6-308

架空配電系統の事故未然防止を目的としたパルス波によるTDR測定

◎松井昌和・林 俊弘・森田智比古（関西電力）・和田修己・久門尚史・松嶋 徹（京都大学）

架空配電系統における事故点標定に、パルス波を用いたTDR測定技術の適用を検討している。これまでの研究から、事故前（通電状態）と事故後（停電状態）の波形を比較することで事故点を標定できることがわかっている。今回、このTDR測定技術による事故未然予防への適用可否についての検証結果について報告する。

6-309

配電系統の人工地絡試験省略拡大に向けた検討

◎青木圭太・田所 兼・野田 琢・市川路晴（電力中央研究所）・橋本将司・竹田正史（北陸電力）

北陸電力では，配電系統に変更が生じた場合に，配電用変電所の地絡事故検出リレーを再整定する目的で人工地絡試験を実施している。しかしながら，この試験は高圧活線作業であり，多大な労力も要することから，北陸電力では高機能なディジタルリレーを導入した変電所から，従来実施していた定期の人工地絡試験を省略している。今般，系統変更時の人工地絡試験の要否を検討するために，地絡事故検出リレーの動作感度を推定する式を導出し，シミュレーションにより検証したので報告する。また，モデル系統における実測対比によりシミュレーション結果の妥当性についても検証を行った。

6-310

変圧器励磁突入電流の解析手法

○臼井正司・戸津ユリ（三菱電機）

変圧器の励磁突入電流は，変圧器の励磁特性・残留磁束密度及び投入電圧位相によりその様相が定まるため，定量的に解析する場合には，EMTPなどの数値解析プログラムによることができる。ところが，励磁特性・残留磁束密度・投入電圧位相の各パターンの組合せは多様であり，一般には，経験に基づく条件設定となる。そこで，簡便に例えば最悪ケースを求める定性的解析方法が求められている。本稿では，正弦波をベクトル表記することにより，条件設定を可視化する方法を提案するものである。

6-311

Impact of Distributed Energy Resources to Protective Relaying of Distribution Network

◎Xiao Yan（Tokushima University）・Baohui Zhang（Xi'an Jiaotong University）・Masahide Hojo・Kenji Yamanaka（Tokushima University）

Traditional protective relaying in distribution networks is based on large increase of current during faults. Three-stage over current protection consisting of instantaneous, time delay instantaneous and definite time over current protection coordinately work together and have enough reliability, selectivity, speed and sensitivity. However, when more and more distributed energy sources (distributed generators, DGs) are connected to distribution network, traditional protection strategies face strict challenges. This paper is mainly for specifically explaining the impacts caused by distributed energy resources to protective relaying of distribution network and simply introduces some new idea about the protection relaying of new distribution network.