2015年度 日本物理学会 第11回Jr.セッション
Jr.セッションは中高生による物理的内容を含む理科の研究発表の場です。
2015年度 日本物理学会 第11回Jr.セッション
Jr.セッションは中高生による物理的内容を含む理科の研究発表の場です。
(回答) 物理学の対象は,森羅万象この世の中のもの全てです。ですから,最前線の研究は本当に多岐にわたっています。大別すると,宇宙の進化発展を探る宇宙物理学,物質の性質を理解しようとする物性物理学,物質の根源を理解しようとする素粒子・原子核物理学に分けられますが,生物物理学,経済物理学なども発展しています。何にでも「物理学」をつければ,学問分野になります。(渡邊靖志)
(回答) ずっと考えているとあるとき新しいアイデアが浮かぶということがよくあるようです。でも,そればっかり考えていると先に進まないということもあります。一時諦めて心に仕舞っておいて,たまに何か方策がないかと考えると機が熟して打開できるということもあります。(渡邊靖志)
(回答) 物理研究者が所属する機関は大別すると以下のようになるでしょう。
1. 大学
2. 研究目的に応じた大学共同利用研究所
3. 政府省庁付属研究所
4. 企業の研究所
1. について、大学の教員(教授、准教授、助教)は講義や実験の指導をするほかに、各自、自分の研究テーマをもって、研究室で日夜研究している。場合によっては、上記2.の共同利用研究所に行って、他の研究者と議論したり、大型研究装置を使った測定をしたりしている。または、3.の省庁の研究所や4.の企業研究所の研究者と共同研究をする。物理学の共同利用研究所は沢山あるが、代表的にものをいくつか挙げると、素粒子・原子核研究では、基礎物理学研究所(京都市)、高エネルギー研究所(つくば市)
物性物理学研究では、物性研究所(柏市)、原子力研究では、原子力研究所(東海村)高エネルギー光(X線やガンマ線)利用実験では、スプリング-8研究所(西播磨市)などがあります。
物理学研究者は基本的に、研究テ−マは自分で選びます。研究は理論研究と実験研究に大きく分かれます。理論研究者は、新しい理論を構築し、実験デ−タと比較して、理論が正しいかどうか判断します。そのためには、数学的計算力が要求されます。実験研究者は、調べるべき現象を測定する装置を自分で開発して、新しい測定をし、理論的に予測される値と比較して、正しいデ−タであるか判断します。
理論研究者と実験研究者は常に協力し合って、新しい分野を切り開いてゆきます。
また、省庁や企業の研究者は、省庁や企業の目的にあったテーマの研究を要請されますが、そこに研究者の興味が向けば、同様な研究生活になるでしょう。
また、物理学は自然科学一般の中では、最も基本的原理を研究する学問ですから、学部や大学院で物理を勉強・研究した人達が社会の広い分野で活躍することは、社会にとって有益なことであるし、社会一般の物理学への理解を広げる上にも大切なことと言えるでしょう。(江尻有郷)
(回答) 地震の予知は大変難しく,現段階ではほとんど不可能と思われているようです。計算ではなく,観測装置を多数の箇所に設置して地震の兆候を掴む必要がありますが,地震と言っても千差万別で,同じ兆候があっても地震が起きるとは限らないところが余地を難しくしていると聞いています。(渡邊靖志)
残念ながら回答者の中に専門家はいません。大学の地球科学の研究室等に相談してください。ホームページ等で調べてみるとどこの研究室に聞けばよいかわかると思います。(渡邊靖志)
(回答) カオスとは、方程式が決まっており、ノイズなどの確率的な要素がないにもかかわらず長時間先の予測が困難な運動のことをさします。蛇口から落ちる水滴の時間間隔、味噌汁の中などに見られる対流の動き、強制振動された振り子や電気回路、レーザーの発振、小惑星の運動までカオスの例は至るところにあります。カオスが起こるしくみは、運動の不安定性にあります。不安定性とは山の頂点にボールが置かれたような状態をさし、ほんのわずかな初期条件の違いで左右どちら側に落ちるかわからないような状態をいいます。カオスでは、軌道そのものが不安定でわずかの初期条件の差が時間とともに急速に(指数関数的に)増加してゆくために起こります。
現在、カオスの研究は物理や数学だけでなく、工学や生物学の分野でも広く行われています。物理の分野では、できるだけ理想化した条件でカオスを作り出しその性質を調べます。最近ではカオスへの移り変わりや多数のカオスが相互作用して生み出す新たな性質や量子カオスなどが盛んに調べられています。(佐野雅己)
(回答1) 一番手堅いのは大学の物理関連学科に入り,大学院に進み,博士号を取得して活躍することです。現代の世の中では,よほどの天才でない限り,独学で物理学者になることはできません。大学では,先人達の積み上げた膨大な知識と体系を学びます。それは本当に膨大ですが,学ぶだけではいけません。必要最小限な知識を身につけ,そして最先端の物理にできるだけ早く触れることです。さらに必要な知識は,必要に応じて学んでいくことです。知識を吸収するだけでは,それだけで一生が終わってしまいます。最先端,または未開の分野で新しい成果を出していくことで自信がつき,物理学者として自他ともに認められるようになります。活躍している物理学者の中には,企業で活躍している人もたくさんいるので,必ずしも大学や研究所に職を得なければならない訳ではありません。(渡邊靖志)
(回答2) 自然について興味を持ち続け、科学を勉強し、他人とコミュニケーションする能力を身につけることです。みなさんが現在受けている日本の教育のプログラムに沿って、努力していれば、物理学者になれると思います。大切なことは物理学者になりたいという夢を忘れずに、努力を続けることだと思います。一般には、大学の物理関連学科を卒業して、大学院に進み博士号を取得して、研究者になるというコースが普通です。現代では、多くの分野で物理学の知識やテクニックが用いられていますので、必ずしも物理学を専攻していなくても物理学者になれます。逆に物理学科を卒業しても、さまざまな分野で働くことが可能です。(鈴木康夫)
(回答1) 難しい質問です。まずは,研究対象の魅力に取り付かれ,それへの尽きない興味,片思い的な情熱をもつことでしょうか。不思議な現象や困難な課題をどうにかして解決してやろうとする粘り,その苦労が楽しいと思えるような境地? 直観力と信念を大事にし,でも頭を柔らかくしていろんな方向からその問題を考えてみる。先人には学びつつ,しかし,全部を信じるのではなく,思考回路を自分なりに組み立てなおしてみる。まずは,偉人の伝記に学んでください。(渡邊靖志)
(回答2) 自然を理解しようという謙虚な気持ちが大切だと思います。自分について正直になることも重要です。粘り強く研究していくことも大切かもしれません。
(鈴木康夫)
(回答) 私の研究仲間の間では、現在ソフトマターや生体物質における静電気力の効果についての研究が注目されていて、私もこの研究をしていますし、このテーマで国際会議もよく開かれています。(鈴木康夫)
(回答1) 本当に不思議ですね。自然界の現象が数式で表せてしまうのは! 数式の確立は先人達の血の滲むような努力や天才たちのひらめきのおかげです。理論家は「自然はこうであるべし」という観点から予言をし,それを実験で検証する。実験家による発見を理論家が解釈をし,定式化して新たな理論の枠組みを作る。そこからまた予言がなされる,というように理論と実験は車の両輪のように働き,物理学は発展して来ました。
たとえばニュートン力学や万有引力の法則。これは天文学者たちの作成した月や惑星の運行の詳細なデータをほとんど全て説明するほか,地上での物体の運動をも記述します。水星の近日点の移動など,ニュートンの予言からのわずかなずれが詳細な観測から明らかになり,それは相対性理論の登場で解決されました。マクスウェル方程式は,それまでのいろんな電期現象や磁気現象を説明し,さらに電磁波の存在を予言しました。
すなわち,数式の後ろにはおびただしい数の実験や観測データがあるというのが答えでしょうか。(渡邊靖志)
(回答2) 教科書には実験も紹介されていますので、よく読んでみてください。
(鈴木康夫)