超弦理論は,究極の理論TOE(Theory of Everything)の最有力候補として現在盛んに研究されています。自然界に働く基本的な力は4種類(日常よく知っている重力と電磁力に加えて,原子力エネルギーを生み出す「強い力」,ベータ崩壊などを引き起こす「弱い力」の4つ)あり,超弦理論は,この4つの力を統一する理論です。しかし,4つの力が統一されるエネルギーは,現在加速器で現在実現可能なエネルギーの十数桁上の超エネルギー領域であり,ほとんど検証不可能なエネルギー領域なのです。それで超弦理論は物理学ではなく,哲学あるいは「宗教」の一種であると揶揄する人もいます。でも,宇宙誕生のことは超高エネルギー状態だったはずで,宇宙誕生のころを解明できる可能性をもつ理論でもあります。 超弦理論は,その名の通り,自然界に超対称性も成り立っていると仮定します。理論の無矛盾性の要求から,次元も,空間の3次元に加えて6個(または7個)の余分な次元(余剰次元)を必要とします。回答23で述べたように,これらの余剰次元は全て小さく丸まっていて通常は見えません。 そもそもなぜ超弦理論と呼ばれるかというと,最も基本的な単位「弦」が,基本要素だからです。しかし,10次元(または11次元)の世界には1次元の弦だけでなく,2次元以上の面(「ブレーン」:membraneからの造語)も存在します。それで,私達は3次元のブレーンに閉じ込められているという描像になります。(渡邊靖志)