5月9日(木)〜 5月10日(金)
近年、分子による情報処理システム「分子コンピュータ」の開発が進んでいる。分子コンピュータは、生体分子のナノ構造や分子反応のネットワークによって実現されるため、通常のLSIとは異なり、水溶液中で自律的に動作し、極めて小さく、省エネルギーであるという特徴を持ち、分子を直接扱える情報処理システムとして注目されている。たとえば、がんのバイオマーカー分子や細胞などを電気や光のシグナルに変換せずに、直接インプットとして使え、計算結果を薬になる分子などとしてアウトプットすることができるなど、従来の電子コンピュータとは異なった場面で期待されている。その利点を活かし、「分子ロボット」や「人工細胞」を構築するための基盤技術として使われている。本講演では、このような分子コンピューティング技術の歴史と今後の方向性について基礎的なところから解説するとともに、分子コンピューティングと電子コンピューティングの融合の可能性についても議論する。