一般講演

1-001

倫理委員会と教育フロンティア技術委員会との特別企画を終えて

○中村 格（鹿児島工業高等専門学校）・田崎 稔（日本PE・FE試験協議会）・浦壁昭悟（ベザレル）・八坂保弘・石橋邦夫（日立製作所）

電気学会倫理委員会と電気学会教育フロンティア技術委員会との共催特別企画を、本年度は「SDGsを目指す技術者の技術倫理」とのテーマで実施した。中央教育審議会における「グローバル人材」の概念の中で、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークとリーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等、との記載がある。また、人類はいま、貧困や教育、気候変動など、多くの課題に直面しており、国連はSDGsを採択し、解決に向けて動き出している。今回の特別企画では、「公共の安全・健康・福祉に奉仕する」ために責任あるエンジニアに要求される、米国PEライセンスを取得する講師を招聘し、技術倫理の難しさについて実例を挙げてご講演を頂いた。本報告では、今回の特別企画を終えて、見えてきた課題等について考察する。

1-002

テキストマイニングソフト KH coder による陸上無線技術士国家試験問題の内容分析

○松田豊稔（熊本高等専門学校）

テキストマイニング用のフリーソフトウェアの KH Coder 2 を用いて、第一級陸上無線技術士の国家試験科目「無線工学B」の内容分析を行う。最初に、「無線工学B」の試験問題の中から指定する語句を出現回数順に抽出し、次にこの抽出語に対して共起性（同じ文の中に、語句が同時に出現すること）を求め、頻出語間の関連性を定量的に調べる。その分析結果から、試験問題に共通して出現する語句、また試験問題の各設問の特徴を示す語句を抽出し、さらに抽出語間の関連性（共起性）をネットワーク図として視覚的に表示する。

1-003

機械振動モデルにおける1自由度ハプティックデバイスの学習効果と有用性の評価

◎今西諒太・宮野 公・戸田 健（日本大学）

本稿は,機械振動モデルを再現した1自由度ハプティックデバイスを用いての学習効果と有用性について評価実験の報告,検討行っている.評価実験は学生24名を対象に行った.アセスメントテストの結果,デバイス使用の有無の差から平均スコアに差は出たが,優位な差はなく,触知覚のみの学習では有用性は見られなかった.

1-004

ステレオビジョンを用いたソレノイド磁場分布推定と磁力線描画

◎鈴木賢也・野村新一（明治大学）

現在、様々な分野で強磁場は利用されているがその一方でその強磁場を利用した装置での事故が起きている。事故の原因として磁場は人の目で直接観測できないためその危険性がわからないことが挙げられる。このような背景より本研究では磁場の可視化を行う。本研究の特徴として、一つの磁気センサかつ磁場の測定を1点としてその情報からソレノイド全体の磁場を推定した。ソレノイドの中心軸以外の磁場を計算するには膨大な処理になるため、1ターンコイルとモデル化することにより磁場を推定し、測定値とビオ・サバールの法則で計算した値と比較した。また推定した磁場を用いて磁力線を描画するシステムを構築した結果を本稿で報告する。

1-005

教育用模擬CT装置を用いた再構成画像のモーションアーチファクトの検討

◎中本 瑛・山口達也（日本大学）・小倉 泉・乳井嘉之・根岸 徹（首都大学東京）・篠田之孝（日本大学）

X線CT(Computed Tomography)装置は臨床現場において重要な検査手法になっている。 そのため，診療放射線技師を養成する現場では，実機のCT装置を用いた実習・教育が行われている。しかしながら，X線CT装置の高機能化にともない装置の構成や画像再構成の原理を理解することは容易でない。そこで，本研究の目的はX線をレーザー光で模擬することで被爆の危険がない教育用模擬CT装置を構築し，診療放射線技師の養育現場に導入することである。本文は被写体の体動によって生じる偽像（モーションアーチファクト）を模擬できる装置を構築し，再構成画像の基礎的検討を行った報告である。

1-006

福岡工業大学における電気主任技術者資格取得へ向けた取り組み

○田島大輔（福岡工業大学）

福岡工業大学工学部電気工学科では約20年程前から電気主任技術者等の資格取得支援事業を行っており，著者が着任した平成27年度以降から本学学生が4年連続で第三種電気主任技術者に合格した。また，平成30年度には本学大学院生が第二種電気主任技術者に合格し，本事業の取組効果が徐々に表れてきたものと推察される。本事業では，第二種，第三種の資格取得を目指す学生に講義・演習を行っている。電力関係の会社に入社を希望する学生にとっては就職試験で有利となる。また，入社後も優遇措置等があるので，是非取得しておきたい資格である。

1-007

小学生向けの再生可能エネルギーに関する教材開発と実践

◎團野美月・志賀あみ・石川結衣・江尻悠斗・根本結友・見田 萌・橋本慎也・山本敏和（福島工業高等専門学校）

近年、再生可能エネルギーに注目が集まっているが、その理解が深まっていないことは大きな問題の一つである。そのため、将来を担う子どもたちへのエネルギー教育は極めて重要な意義を有している。本研究では、小学中・高学年生を対象とした教材の検討を経て、太陽光発電の体験型教材を製作した。開発した教材を用いて小学生対象の出前授業を行い、アンケートにより講義全体の効果を確認した。その結果、講義の有効性を確認することができた。開発した教材は実感を伴いながら学べるものであり、講義全体では児童の高い関心度を保ちつつ再生可能エネルギーに関する理解度と興味を深めることができた。

1-008

電気回路の実験授業を支援するスマートパーツの試作

◎仲 里央奈・太田正哉（大阪府立大学）

小中高校において電気回路の実験授業を行う際，指導者は，生徒が正しい回路を作成して実験を行っているか，ショートなどの危険な回路を作成していないか等に注意を払う必要があるが，大人数の授業の場合，全員の回路を常時くまなくチェックすることは不可能である．回路シミュレータでの実験も提案されているが[1]，実体のある回路の配線作業を伴わず，実在感に乏しい．そこで本研究では，電気回路の実験授業を支援するための新しいシステムであるスマートパーツを提案する．

1-009

特別支援学校における電気の学習について

○四元照道（兵庫県立神戸特別支援学校）

特別支援学校高等部の授業の中で，基礎学習で学習した内容を作業学習で製作するものづくり教育の必要性があり本研究では，電波について基礎学習で学び，そして学んだことを生かして，作業学習に取り組み電波を受信できるラジオを製作した実習を通してものづくりの学習をおこなった。

1-010

松江高専の工作教室アンケート結果の分析

○宮内 肇（松江高専）

松江高専では，子ども達に理系ものづくりに興味を持ってもらうために、夏休みに学校開放事業として，夏の工作教室を実施している。令和元年度は，筆者がイベントWGの主査として，7学科20講座の工作教室の企画を取り纏めて実施した。各工作教室の終了後のアンケート結果を分析して，工作教室を実施する意義や今後の問題点等を分析したので報告する。

1-011

幼稚園と小学生を対象にしたArduino UNOを使ったロボットカー製作の評価

○鎌田憲嗣・Jitjumnong Kanyuma・Chujai Pasapitch（キングモンクット王工科大学トンブリー校）・Koul Ravinder（ペンシルバニア州立大学）

情報化の進展という社会の変化のなかで、これからの子どもたちに求められるのは、新しい力ということではなく、従来からも重視されてきている読解力や論理的、創造的思考力、問題解決能力、人間性等についての力の育成が教育課程全体を通して実現されることが強く求められる。これまで著者らは、2020年に小学校ではプログラミング教育が全面的に実施される事を意識し、プログラミングを使った実習用ロボットの開発に力を入れてきた。プログラミング的思考の基礎を育むことを目的とした実践に取り組み、子どもたちの成長を評価するためにアンケートを実施しを行ったので報告する。

1-012

比喩表現を用いた割り込み処理・排他制御教育の提案と評価

◎池本尚暉（大阪電気通信大学）・山崎貞彦・西村雄二（日本マイクロシステムズ）・南角茂樹（大阪電気通信大学）

近年、私達の生活では、様々な組み込み製品が存在している。その製品が近年不具合が多発している。その対策として、教育の見直しが行われているが、依然として製品の不具合が減少していない。その原因として私は、既存の教育は、技術者を対象としているものがおおく、また割り込み処理や排他制御などのリアルタイム性に焦点を絞った教育カリキュラムがない。そのため、本研究では、初学者向けの割り込み処理・排他制御を取り入れた組込みシステムの教育カリキュラムを提案し評価を行った。具体的には、割り込み・排他制御の仕組みを日常生活の行動の一部などに例えることによって仕組みの理解の容易さを重視した。

1-013

リーダ/ライタロック機能を備えたREMONの提案と検証

南角茂樹・◎寺戸勇大（大阪電気通信大学）

リーダ/ライタロック機能を備えたREMONを提案する。タスクのセマフォ獲得条件(P操作)とセマフォ解放条件(V操作)に共有データへのアクセス条件を追加することでリーダタスクとライタタスクの区別を行う。またバイナリセマフォから計数セマフォにすることで複数のリーダタスクがセマフォの獲得を可能にする。これにより、リーダ/ライタロック機能を、セマフォを用いて実現することができる。リーダタスクの不要な待ち状態がなくなり、リーダタスクの排他制御区間が短くなることでリアルタイム性の向上が期待できる。統合開発環境(High-performance Embedded Workshop:HEW)のwatcher機能を用いてリーダ/ライタロックのP操作、V操作が正しく動作していることを検証した

1-014

優先度変更機能を備えたREMONの提案と検証

◎村山 徹・南角茂樹（大阪電気通信大学）

私たちの身の回りには家電製品や自動車、自動二輪車など多くの組み込みシステムが使用され、日常生活に欠かせないものとなっている。組み込みシステムにはリアルタイムOS（RTOS）が使用されている。しかしながらRTOSを使用する場合、開発のためのリソースを多く使うことのできないものも存在する。そこで我々はリアルタイム組み込み簡易モニタ（Real-time Embedded MONitor : REMON）を提案した。REMONはリソースが限られRTOSを搭載できない小規模なシステムであってもRTOSと同等の排他制御を実現できる基本ソフトウェアである。REMONには優y先度変更機能はない。そこで、本研究ではREMONに優先度変更機能を追加することを提案する。優先度変更機能とは、ディスパッチャーが優先度配列の要素を参照し、特殊なケースがあった場合参照する順番をその要素順に変更する。これにより特殊なケースで低優先度処理によるデータ操作が必要になった場合、優先度変更機能を利用することで高優先度処理を行えるようになる。本研究ではHEWのウォッチャーという機能を使用し変数の値を見ることで優先度変更が行われているかの検証を行った。

1-015

スリープ機能を備えたREMONの提案と検証

◎森川和紀・南角茂樹（大阪電気通信大学）

我々が日常生活でよく目にする殆どの製品は組み込みシステムである。 組み込みシステムの開発にはRTOSを用いることが一般的である。しかしながらRTOSはISRの開始時間が保証されないなどリアルタイム性に問題点がある。この問題を解決するために我々はREMONを提案した。REMONはRTOS同等の動機排他制御を実現するシステムであり、上記の問題を解決しリアルタイム性を保証する。しかしながら現在のREMONには優先度変更機能が備わっていない。さらに優先度変更機能はリアルタイム設計の複雑化が懸念される。そこで本研究ではスリープ機能を備えたREMONを提案する。スリープを備えることにより他ISRに影響を与えず擬似的な優先度変更を可能とし、現在のREMONに比べ設計の単純化、さらに処理の効率化を図ることが期待できる。

1-016

REMON for AVRの提案と評価

◎岩本海斗・南角茂樹（大阪電気通信大学）

現在, 多くの家電製品や産業製品において組み込みシステム技術が使用されている.組み込みシステムでは, リアルタイム性が重要視される. リアルタイム性とは, 入力から出力までの処理に定められた時間的な制約を遵守する性質のことである. 組み込み製品は, このリアルタイム性の向上のためにRTOSが搭載されることが多い. しかしながら, RTOSは, OSの処理を実現するための割り込みによって, ISRの開始時間が遅れ, 割り込み応答性の低下に繋がる. そこでこの問題を解決するために, 我々は組み込みリアルタイム簡易モニタREMONを提案した. 本研究では, Atmel社の提供するAVR32用のREMONを提案し, 動作検証と速度の測定を行った.このAVR32へのREMON適用のために, 保存するコンテキスト情報の変更を行い, ロジックアナライザを使用して割り込み発生からISRが起動するまでの時間を測定した.

1-017

サインサークルマップの近似PCMに発生する分岐現象とカオス現象

山口尚宏・○太田垣博一（岡山理科大学）

本研究では，周期励振力を受けるマッシュー型振動子から導かれたサインサークルマップとその近似マップを用いることによって，この振動子の分岐現象やカオス振動の存在条件を判定する方法を提案し,その有効性を検討する。

1-018

分散性媒質中に周期的金属格子をもつパルス応答解析

◎賀川智弘・尾崎亮介・山﨑恒樹（日本大学）

著者らは，先に地中に埋設された金属散乱体を周期的な導体ストリップで近似し，導体幅を変化した場合に対してTM(磁界)波とTE(電界)波の応答波形による差分波形から導体部の影響について検討してきた．本文では，分散性媒質中に周期的金属格子が埋設された構造のパルス応答を両偏波(TM波とTE波)の電界成分についての差分波形から金属格子の影響を検討する．

1-019

チップレスRFIDを用いたセンサタグの開発

◎渡部雄太（東京都立産業技術研究センター）

本研究ではチップレスRFIDを用いた歪センサタグを提案した。チップレスRFIDではタグの後方散乱波の共振周波数を利用し、タグのデータを読み取る。提案タグはC型の形状を組み合わせた構造となっており、それぞれの間の距離が変化する。歪などによりタグの構造が変化した場合の後方散乱波の共振周波数の変化をFDTD法により解析し、共振周波数の変化がタグ構造の変化に依存することを明らかにした。提案タグの二つのC型の形状の距離が0.1mm～1.0mm変化した場合、共振周波数は50.7GHz～48.5GHzまで変化することが分かった。

1-020

波長変換シートの直達光に対する透過光スペクトル分析

○平田陽一・山本浩平・渡邊康之（公立諏訪東京理科大学）

太陽光を有効に利用する方法として、蛍光染料を用いて入射光の短波長を長波長に変換して、太陽電池などの分光感度に適したスペクトル分布に変化させるという手法がある。本研究室では、農業にも利用される赤色の蛍光染料を用いて、屋外における染料の吸光スペクトルと蛍光スペクトルを分析し、両者の関係や、直達光に対する吸光スペクトルと蛍光スペクトルをの変化を調べた。その結果、直達光比率の弱い付近では入射光よりも多くの赤色の蛍光が増加するが、直達光比率が強くなるに従って赤色の蛍光は減少し、入射光スペクトルより減少する程度にまで達した。染料には蛍光するための最適な入射光強度があるものと思われる。

1-021

放電現象評価のためのデジタルカメラ画像の色相値にRGB輝度値が及ぼす影響に関する検討

徳益 昂・樽本尚弥・○大塚信也（九州工業大学）・西 孝裕樹（SUBARU）

筆者らはこれまで、航空機雷撃試験等で発生するスパーク現象を光学測定システムを用いて評価しており、特定の線スペクトルを含むスパーク発生が着火に影響する事や、デジタルカメラの設定によって観測画像の色相が変化する事を明らかにしている。現在、航空機雷撃試験法の規格改訂が進められており、デジタルカメラで観測したスパーク発光像の色情報に基づく着火危険性の評価に関する国際的検討が計画されている。本論文では、デジタルカメラ画像のRGB輝度値が色相に及ぼす影響の基礎検討として、特に着火と関係が示唆される色相値42の発生機構を各輝度値の関係に基づき検討した。その結果、特定の色相値に色相分布が集中する条件を明らかとした。

1-022

磁気浮上鉄道から通信線への電磁誘導における線路構成依存性

○徳田正満（東京大学）・西方敦博（東京工業大学）

超電導コイルを搭載した磁気浮上鉄道が高速走行すると、ファラディーの電磁誘導によって、周囲に存在する通信線に誘導電圧が発生する。この現象をCOMSOL Multiphysics のAC/DCモジュールで解析している。磁気浮上鉄道の台車が2台の場合について、通信線の線路長に対する電磁誘導特性をシミュレーションした結果、線路長が台車間隔に等しい場合、通常の線路長で発生する誘導電圧を打ち消してゼロに近い誘導電圧になり、一方、線路長が台車間隔より少し長いかもしくは短い場合、通常の線路長で発生する誘導電圧の2倍に近い誘導電圧になるという特異な誘導現象になることを明らかにした。

1-023

SPICEと有限要素法を用いた建築物の雷サージ解析検討

◎井波伸英（NTTファシリティーズ）

建築物の直撃雷シミュレーションは、従来手法では計算の高負荷が課題であるため、建物及び設備ごとの直撃雷シミュレーションを用いた定量的な雷害リスク評価や雷害対策検討を行う手法が乏しい。本検討では建物各所の電気定数は有限要素法を用いて導出し、これを組み合わせて回路として扱う。任意箇所の電圧及び電流を汎用回路シミュレータSPICEを用いて計算する。この方法を用いることにより、中程度の規模の鉄筋コンクリート造及び鉄骨造の建築物における直撃雷シミュレーションについて低負荷で計算する方法を考案した。

1-024

電力線束上におけるPLC通信時のコモンモード電流に関する実験的検討

◎岩﨑未羽人・奥村浩幸・小池大一朗・松嶋 徹・福本幸弘（九州工業大学）

PLC(電力線搬送通信)は電力線を通信線としても用いる通信方式であるが、放射電磁界の懸念から利用が制限されている。現在、電力線1本での検討はされているが、実際の使用環境である複数の電力線が束となる条件での検討はされていない。そこで本稿では2芯VVFケーブル5本を一つの束とし、その内1本に信号を印加し、放射電磁界強度と相関のあるコモンモード電流を比較する測定を行った。その結果、コモンモード電流は電力線が複数になった場合でも1本の場合と比較して同程度であり、終端条件によっては低減するという結果となった。

1-025

間歇パルス測定の測定方法依存性

○中居倫夫（宮城県産業技術総合センター）

IoTセンサネットワーク技術の普及に伴い，工場の製造現場への無線センサの導入要望が拡大している。特に，製造工程の異常発生を予知したり，製造装置の動作状況をリアルタイムで検知したりするシステムが中小企業の現場で強く求められている。先の報告では工場内で発生するスイッチングノイズ等のパルス状ノイズを模擬して発生させた数百Hzの周期的な広帯域ノイズが920 MHzのセンサネットワーク通信にパケットエラーを生じさせる可能性があることを報告している(1)。本報告では，このような間歇パルスの各種測定装置における検出特性を確認することを目的に，様々な測定器の検出特性を比較したので報告する。 (1)中居 倫夫：「周期的パルスノイズの920 MHz帯GFSKセンサネットワーク通信への影響」，電気学会電磁環境研究会資料，EMC-18-089 (2018).

1-026

大型電気機器からの電磁雑音測定方法の検討

◎五日市 達・猪狩好司・石上 忍・川又 憲（東北学院大学）

本研究では，多数のDC/DC コンバータとAC/DC コンバータで構成されるシステムの電磁特性の基礎的検討としてコモン電流と磁界放射の関係性の分析を行い，大規模システムの放射測定代替法の妥当性の検討を行った．その結果，代替試験法において適正な測定点における測定距離と放射レベルの関係が明確になれば，代替試験法は適用可能であることがわかった．

1-027

ダイポールモデルに基づく同軸ケーブル用2線変換治具からの放射ノイズ特性に関する検討

◎大石雄介・Tuvshinbayar Bandi・大塚信也（九州工業大学）

電気電子部品のEMC対策として放射ノイズを理解することは重要である。本論文では、同軸ケーブルを芯線と接地線の2つの線路に分岐する変換治具(2WC)をプリント基板とSMA端子で作成し、この治具を対象に、バイコニカルログペリオディックアンテナを用いて放射ノイズ特性を調べた。さらにダイポールモデルに基づき放射ノイズ特性を検討した。その結果、2WCを同軸ケーブルに接続する事でノイズが放射されることを確認し、同軸ではないダイポール形状の部位があると、特定帯域に限定せず、全測定帯域でノイズが放射されることがわかった。また、放射ノイズのピークは治具の線路の長さによって決まることがわかった。

1-028

商用周波磁界の造血幹細胞分化への影響評価

○高橋正行・中園 聡（電力中央研究所）・古谷奈穂子（セレス）

商用周波（50／60 Hz）磁界へのばく露と小児白血病の発症について、その関連性が指摘されて以降、未だ因果関係の解明には至っておらず、更なる知見の蓄積が求められている。 本研究では、ヒト人工多能性幹（iPS）細胞を用いて中胚葉細胞から造血幹細胞への分化過程を模擬し、ヒト造血幹細胞への分化過程に及ぼす磁界影響を評価した。分化過程にある細胞に対し50 Hzの正弦波磁界（0～300 mT）を均一ばく露した結果、対照群と磁界ばく露群間で出現したヒト造血幹細胞の割合に統計学的有意差はなかった。この結果より、50 Hz、最大300 mTの磁界ばく露は、ヒト造血幹細胞への分化過程に影響を及ぼさないことが示唆された。

1-029

小麦粉粘土を用いた生体組織模倣材料の導電率の組成依存性

◎長瀬由佳・濱田昌司（関西大学）

人体への電磁界の影響を調査するために、生体等価ファントムが利用されている。主な生体組織模倣材料として炭素や寒天があるが、小麦粉と食塩水を混合した小麦粉粘土も使用例がある。しかし、小麦粉粘土を作成する際に、小麦粉と水分量の割合を固定し小麦粉粘土に対するNaClの割合が増加すると、粘土が固くなってしまう。そのため、ファントムとして使用するには難しくなってしまう。 そこで、本研究ではNaClの割合に対する、NaClと水分量を調整し、導電率の組織依存性を調査した。

1-030

電流知覚実験のための人体インピーダンス測定

上村佳嗣・松本尚也（宇都宮大学）・○佐藤 健（八戸工業高等専門学校）

近い将来に無線電力伝送の普及が大いに見込まれているが，一方で接触電流による間接作用の安全性評価が問題となっている。ICNIRP の防護指針では接触電流の参考レベルは110 MHzまで決められているが，電流知覚閾値の実験的研究は高々3 MHz までしか行われていない。 現在，1 MHz～10 MHzの電流知覚実験を計画しており，そのばく露装置開発のためには，対象となる指-手首間の人体インピーダンスを知ることが不可欠である．周波数1 MHz以下では4端子法を用いるインピーダンスアナライザによって測定していたが，1 MHz 以上においては冶具の特性が強く現れ，うまく測定できないことが分かった。そこで，ネットワークアナライザを用いて測定した結果，簡易推定値とおおよそ一致する結果が得られたので報告する。

1-031

ボクセルモデル用SCMによる傘持ち人体内静電誘導電流計算

○濱田昌司（関西大学）

電力設備・機器周辺の商用周波電界の人体ばく露に関し、ボクセルモデル用表面電荷法の二段階法による体内静電誘導電流計算法を開発している。今回、第二段計算を電極通電問題として扱い精度を改善し、人体が傘を持つ場合の解析を行った。傘の天蓋が濡れ完全導電性となったと仮定し乾燥時からの誘導電流の増加率を調査した。

1-032

根尖歯周炎治療を目的とした歯モデルへの通電による根管内温度上昇の数値解析

◎黒田清登・太良尾浩生（香川高等専門学校）・芥川正武・木内陽介（徳島大学）・富永敏彦（とみなが歯科医院）

根尖性歯周炎とは，細菌が根管内に感染し，さらに細菌および汚染物質による化学的刺激が根尖孔から溢出したことによって起こる炎症反応である。従来の治療では，ファイルと呼ばれる切削器具での感染物質の除去と薬液による殺菌が行われていたが，歯の根管は細く複雑であるため完全な除去は不可能であった。そこで，根管にファイル電極を挿入して500 kHz程度の電流を通電することでジュール熱によって殺菌する，新たな治療法が注目されている。本稿では，殺菌に最適な通電条件を検討するため，通電時における根管内の時間的・空間的な温度分布を数値解析によって検討したので報告する。

1-033

CNNを用いたレストランにおける卓割当ての自動化に関する基礎検討

◎清水 薫・松村太陽・小野 隆（日本大学）

飲食店業界は慢性的な人手不足のため，生産性の向上が課題となっている。そのため，店員は，回転率及び顧客満足度を向上させる卓割当てが求められている。しかし店員の入れ変わりは多く，熟練した技術の維持は困難である。そこで，本研究は，店員の卓割当てに模した入店客に対する自動的な卓割当てシステムの構築を目的としている。これまで筆者らは，畳み込みニューラルネットワークに，平日の繁忙時間帯の店員の卓割当てを学習させ，入店可能人数を比較検討してきた。今回は，平日と土休日の区別なく，また全ての営業時間に対し学習を行い，入店可能人数を比較検討した。その結果，曜日や時間帯による繁忙の影響を受けないことを確認し，本システムの有用性を確認した。

1-034

自動車の駐車支援技術の開発―超音波による側方物体の壁・縁石識別技術―

◎村上浩章・小野寺 裕・山下元気・井上 悟・原瀬真一・辻田 亘（三菱電機）

縦列の自動駐車において、駐車スペース奥の長尺物体（壁又は縁石）の高さがわかれば、ドア開閉のスペースを考慮した駐車制御が実現でき、自動駐車の利便性を向上することができる。我々は、長尺物体に対して多地点で複数回にわたり超音波を送受信し、各反射波形のエコー幅を抽出したとき、エコー幅の平均値及び分散値が物体の高さと相関を持つことを発見した。また、これらの特徴を用いて、物体高さを判別する手法を開発した。さらに、実車試験を実施し、提案手法により壁と縁石を高精度で識別可能であることを示した。

1-035

モーションキャプチャを用いた感情表現による鍵盤楽器の演奏動作解析の検討

◎松崎桃子・山口達也・三戸勇気・川上 央・篠田之孝（日本大学）

近年，「訓練によって身体が覚えた高度な技（身体知）」の研究では，モーションキャプチャによる動作解析が行われている．本研究の目的は鍵盤楽器奏者の感情表現と演奏動作との関係性について解明することである．本文は時系列で三次元座標情報を取得できるシステムである光学式モーションキャプチャを用いて演奏者のチェンバロ，グランドピアノ，電子ピアノの3種類の鍵盤楽器の感情表現による演奏動作を取得し，上半身の各身体部位の加速度について解析を行った報告である．

1-036

FBGセンサを使用したCFRPのヘルスモニタリングの検討

◎坂本翔平・小野寺大介・宇野雄輝・今城拓也・小山 潔（日本大学）

本研究では、光式センサの一つであるFiber Bragg Grating(FBG)センサという光ファイバセンサを用いたヘルスモニタリングに関する概要を述べる。従来は、検査したときに、欠陥や安全性などが判明するが、検査前の状態は不明である。よって継続的に検査できるヘルスモニタリングが重要である。そこで歪ゲージであるFBGセンサを用いて、機械学習であるニューラルネットワークを使って荷重とその位置を推定する。実験結果より、FBGセンサを格子状に設置して荷重を加えた測定データを用いてニューラルネットワークで学習させたところ荷重量では誤差が大きく生じてしまったが、位置推定は誤差が少なかった。 結果、ニューラルネットワークで荷重とその位置を推定することが可能であると確認できた。

1-037

二次元電気定位センサーを用いた水中センシングシステムの開発

◎高橋祐人・中島寛貴・堀川将太・木村俊也・三枝幹雄（茨城大学）

弱電気魚と呼ばれる魚は、自身の持つ発電器官により微弱な放電を行い、周囲に電界を形成する。電界内に物体が侵入してくると電界が歪められ、その電界の歪みを体表面上の電気感受器官で感知することにより、物体の位置を特定する能力を有しており、これは電気定位と呼ばれている。本研究室ではこの電気定位の原理を利用したセンシングシステムの工学的応用を目標にして研究・開発を行っている。 本研究では、研究室で製作した電気定位水中センサーのかねてよりの課題であった「物体距離の不確定性」に対する解決策として、実際に弱電気魚が用いている距離認識方法である「傾き/振幅比」を応用した距離予測システムを開発し、その検証を行った。

1-038

電界共振型WPTシステムの伝送効率計算

◎佐伯卓哉（日本大学）

駐車場での無線給電を想定し，電力伝送に用いる金属板を60cm×20cmとして，FDTD法によって伝送効率を計算した。 解析条件は、空間刻みΔを0.01[m]とし，解析領域は0≦x≦3[m]，0≦y≦3[m]，0≦z≦1[m]とした。 解析時間はtmax＝7×10-6[s]とした。電源は振幅V＝1000[Vp-p]とし，周波数は10[MHz]とした。 1次側回路には電源に抵抗(r＝50[Ω])を接続し，そのさきにコンデンサへ見立てた縦：0.6[m]，横：0.2[m]，厚さ：0.01[m](静電容量Cは約C＝20.1[pF])の金属板と共振するコイルL＝1.272×10-5[H]をおいた。 2次側の回路は1次側の回路から電源を取り払い，その位置に負荷抵抗(RL＝50[Ω])をおいたものとした。1次側と2次側の間隔は2~18[cm]とした。 シミュレーションの結果、距離5~15[cm]の伝送効率が90[%]以上となり，10[cm]の時には95[%]以上となった。 今後は，実際のWPTシステムの使用状況を想定した計算を行う予定である。

1-039

実用送電線における電磁界のE/H比に関する検討

◎須田祥平（日本大学）

IEC規格 CISPR TR18においては，電界Eと磁界HはE=120πHの関係にあり，磁界を計算あるいは，測定したのちに換算係数120πを乗じ電界を求めることとしている。 本稿では，単相送電線を高導電率大地上方に配置，この換算係数について検討を行った。 解析を行った空間は，高導電率大地の厚さは5[m]とし，その上空に単相送電線を配置し，その中心(y=500m)に波源を配置した。解析空間の境界面はLIAOの吸収境界とした。 今回は，高導電率大地において単相送電線，また波源を配置し，FDTD法を用いて計測された電界，磁界からE/H比を求め，その値がE=120πHに近づくのかどうかを検証した。

1-040

回転一様渦電流プローブによる溶接部の検出と追従機構の開発

◎今城拓也・小野寺大介・宇野雄輝・坂本翔平・小山 潔（日本大学）

石油備蓄タンクなどの構造物では、安全性を確保するために溶接部に非破壊試験法による保守検査が行われている。従来の保守検査では手間と時間を要するため、近年では塗装を剥がさずに塗装の上から保守検査を行える方法が望まれている。 溶接線を塗装上から検知する方法として電磁誘導による非接触で導体内に渦電流を誘導するプローブを用いる渦電流法がある。その中でも大きさが一様で方向が回転する渦電流を誘導する回転一様渦電流プローブは塗装の厚みの変化による検出信号への影響が小さいので安定した溶接線の検知を行うことができる。本報告では回転一様渦電流プローブを用いた溶接部の基礎的な検知実験の結果と溶接部追従実験の結果について報告する。

1-041

任意波形を用いた自己結合型距離速度センサの距離測定精度の向上

◎山田将成・大羽達也・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

近年、工場の自動化が進み、様々な物体を計測するセンサの需要が高まってきており、自動化をするためには多くの情報が必要である。そしてそれに伴い必要なセンサの数も増加すると考えられる。低コスト化、省スペース化が課題となるため、一つで多機能なセンサ、距離・速度同時測定センサを開発した。 距離・速度同時測定を行うにあたって、まずは距離測定の精度が安定しなければ、速度測定の精度も安定しない。また、投光回路のコンデンサ成分により、変調波形に歪みが生じていることが分かっている。そこで変調波形の歪みを打ち消すような任意波形を用いて、距離測定の精度を向上できないか検討した。

1-042

雷現象により富士山体表面上の接地線に流れる電流

○安本 勝（富士山環境研究センター）・鴨川 仁（静岡県立大学）・佐々木一哉（弘前大学）・土器屋由紀子（富士山環境研究センター）

雷現象により富士山体表面上接地線に流れる電流の測定装置を開発し、関連要因を明らかにしている。富士山測候所の電源は山麓より引き込む富士山体表面上の高圧ケーブルで得ている。この高圧ケーブル内蔵接地線は、山麓の低抵抗接地極に繋がり、雷現象により電流が流れる。筆者らは、2013年より、雷現象を適切に捉えられるようにロゴウスキーコイル電流測定装置の改良を進めながらこの接地線に流れる電流を測定している。測定電流波形とその積分波形から、電流との関連要因は、直撃雷、電磁誘導、落雷電流の捕集、静電誘導、山麓からの逆流、であることを明らかにしている。

1-043

コロナ帯電電位測定による樹脂薄膜の膜厚と絶縁性の評価

◎大友 涼・杉本俊之・松井弘之（山形大学）

導体材料上に塗布された塗膜の絶縁性を評価する手法として，コロナ帯電電位測定法がある。これは，帯電電位の減衰特性から塗膜の硬化度や劣化度等を推定するものであるが，電位の大きさから膜厚の測定も原理的に可能であることがわかっている。本研究では本方式による膜厚の測定精度を明らかにするため、数十~数百nmのパリレン薄膜の表面電位測定を行った。帯電電位の大きさeと膜厚dの関係を等価回路から求めると次式が導かれる。e=A/(1+B/d) （AとBは塗膜の体積抵抗率で決まる定数）パリレンのように十分に絶縁性の高い材料では，5μm以下の薄膜であっても十分な測定感度を持つことが分かった。今後は，絶縁性の低い他の樹脂材料に対する検討を行う。

1-044

ポッケルス効果を用いた雷インパルス印加空間の電界測定

◎荒岡信隆・高村紀充・坂井克成・水﨑雅之・佐々木佑樹・花井正広（福岡大学）

筆者らは放電が絶縁物を貫通する現象の主要因について継続して研究している。放電先端の電界は重要な要因の一つであるが，気中放電の電界に関する報告は少ない。本論文では，ポッケルス効果を用いた光電界センサにて球対平板電極における気中の雷インパルス印加空間中の電界を測定し，数値電界解析との比較を行った。その結果，200 mm以上遠方の各測定値において電界測定と数値電界解析の結果が一致した。したがって，本センサにより雷インパルス印加空間の電界を測定可能であることが示された。

1-045

天井クレーンの振れ角計測のためのマイクロホン配置の拡張

◎川本早織・松永美樹・中本昌由（広島大学）

When operating overhead crane, it is required to cancel unpreferable sway (anti-sway control). To achieve the anti-sway control, sway-angle estimation is needed. In this work, we consider a non-contact detector with acoustic signals obtained from multiple microphones. Furthermore, we propose extension of arrangement of microphones to enforce practicality of the sway angle estimation system.

1-046

波長掃引レーザによる光強度補正を用いた高速分光測定の検討

○遠藤 亘・山口達也・篠田之孝（日本大学）

筆者らは波長掃引レーザの光強度変動を補正できる高速分光測定システムの構築を目的としている。本文は波長フィルタであるファイバブラッググレーティング(FBG)を用いて高速分光測定を行った報告である。波長掃引レーザの掃引周波数f_mが50.7kHzであるため，周期19.7μs毎に分光測定が行え，FBG2のスペクトルの変化が測定できた。

1-047

高温で溶融する金属を利用した無給電型ガンマ線検出器

○岡田耕一・伏見 篤・村上洋平（日立製作所）

沸騰水型軽水炉(BWR : Boiling Water Reactor)の炉内に挿入する出力監視向けの検出器を無給電とすることは，故障リスクの低減，検査点数の削減などの利点がある。そこで電圧印加が不要な自己出力型ガンマ線検出器(SPGD : Self Powered Gamma-ray Detector)に着目し，炉内環境への適用性を検討した。課題は稼働中の原子炉内で想定される高温(288℃)，高中性子束環境でガンマ線を計測できる事である。対策として，ガンマ線の検出部を溶融物質とすることで高温で動作可能となるSPGDを考案し，原子炉出力と比例関係にある線量率に対する測定精度を評価した。

1-048

SS系鋼材の塩水腐食による磁束密度分布への影響

○坂元周作・加藤 陽（木更津工業高等専門学校）

近年、建築物の構造材として使用されている鉄鋼系構造部材の疲労蓄積や経年劣化等による破断・破損に起因する重大な事故が発生しており、社会的な問題になっている。特に塩水による腐食が懸念される海岸周辺における鉄鋼系構造部材の点検等については更なる技術革新が必要であると考えられる。本研究では、SS系鋼材について塩水腐食により錆を発生させ、発生前後の磁束密度分布について走査ホール素子マグネトメトリを用いて計測し、塩水腐食による磁束密度分布への影響等について検討を行った。

1-049

サブサーフェス磁気イメージングシステムの積層セラミックコンデンサへの適用

◎角 真輝・岡田英朗・佐藤宣夫（千葉工業大学）

電源回路の小型化や高効率化を図るためには，回路素子における材料物性の評価，素子形状の熱的最適設計などのほか，機電機能体の性能向上と安全性の両立，全部品の劣化や破損に伴う故障解析が不可欠となる．その一例として，数 µm オーダの設計ルールで電極と誘電体が積層されているコンデンサについて，その内部状態の非破壊による検査が求めらている．本報告では，サブサーフェス磁気イメージングシステム（FOCUS-001，IGS 社特注）を用いて，積層セラミックコンデンサ(日本ケミコン社製：470µF)を観測対象とし，正常時と故障時の電流の通電経路を可視化した結果について述べる．

1-050

超音波顕微鏡による生体細胞の音響インピーダンス解析の改善

○新谷太地・Prastika Edo Bagus・川島朋裕・村上義信・吉田祥子・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・小林和人（本多電子）

光学顕微鏡を用いた生体細胞の観察では，核などの各種構造物質を染色する[1]。しかし，生体機能が完全に失われるのみならず作業に多大の時間を要する。無染色かつ細胞の分化課程などをリアルタイムで観察する手法として超音波顕微鏡の研究・開発が行われている[2]。染色作業が必要なく非侵襲的に弾性評価が可能な超音波顕微鏡を用いれば，細胞の分化過程する様子や，薬品が細胞骨格や核等に与える影響をより詳細に理解できる。しかし，信号処理の過程で低周波成分の再現が不安定となり，正確な音響インピーダンスが算出できない。本研究では，この問題を解決するために新たな解析アルゴリズムを提案した。

1-051

超音波顕微鏡を用いた皮膚内部の音響インピーダンス解析の改善

◎居森厚志・Prastika Edo Bagus・小柴大雅・川島朋裕・村上義信・吉田祥子・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・小林和人（本多電子）

肌ケア用品の評価には，キュートメータによる弾性測定や光干渉断層計(OCT)(1)を用いた皮膚診断などがある。しかし，従来の測定方法では，肌ケア用品を評価するのに重要な指標となりうる弾性評価を定量的に行うことが難しい。近年，超音波を用いて皮膚内の細胞状態の可視化が可能になってきた。しかし，信号処理の過程において，低周波領域が不安定になり，正確な音響インピーダンスを算出できない問題がある。本研究では，低周波領域を安定させる解析アルゴリズムを提案した。

1-052

細線のクロスワイヤ抵抗溶接における溶込み量のインライン評価手法の検討

◎北岡雅則・川上達彦・遠藤 久（日立製作所）

電気回路製作等で必要となる細線のクロスワイヤ溶接では、溶込み量と継手強度にある程度の相関関係が報告されている。そこで，量産溶接での検査リードタイム短縮を目的に，細線同士の溶込み量をインライン評価する手法を検討した。溶接電流をクランプメータ，電極加圧力源の振動を加速度センサで計測し，得られた電流および加速度波形から溶込み量と相関するパラメータを抽出した。その結果，電流の最大値，立ち上がり時定数，電極加圧構造の固有周波数での振動振幅の3種を抽出し，溶込み量予測式を得た。0.127mmの細線を対象に電子顕微鏡での測定と比較した結果，誤差3.6μmで溶込み量をインライン評価可能であった。

1-053

差動検出渦電流探傷プローブを用いたCFRP板のきず検出に関する研究

◎宇野雄輝・小山 潔・小野寺大輔・今城拓也・坂本翔平（日本大学）

CFRPとは、炭素繊維を強化材とした複合材で剛性に優れ、軽量かつ高強度であり、錆びないという特徴を持つ。そのため航空機、自動車など幅広い分野に適用されている。しかしながら、CFRPは強い衝撃を受けると、力学的強度が低下する問題がある。そのため非破壊検査によりきずを検出する品質管理が必要である。現在CFRPに対して使用されている非破壊検査法では検査に長時間かかることや大掛かりな装置が必要であり、コストがかかるという問題がある。しかし、渦電流探傷法を適用することにより、高速かつ簡便に検査できるため検査効率の向上が期待できる。そこで、直交積層CFRPに対して差動検出渦電流探傷プローブを用いたきず検出の検討を行った。その検出結果とその検討について報告する。

1-054

レーザー技術を用いた浮石の遠隔検知手法の開発

◎倉橋慎理・島田義則・コチャエフオレグ（レーザー技術総合研究所）・新村 亮・鈴木健一郎・谷口信博・奥澤康一（大林組）

山岳トンネル工事において、岩石の落下等による労働災害が度々発生している。防止対策の一つである浮石落としを安全に実施するため、作業の遠隔、機械化が望まれており、これらを満たす技術として、レーザーを用いた浮石の遠隔探知技術の開発が期待されている。 トンネルの切羽と比較的近い構造をとる砕石場の切羽において、浮石を検知する実証試験を行った。ブレーカーを用いて切羽岩盤部を打撃し、離れた箇所の岩石の振動の様子をレーザー振動計を用いて計測した。打音検査で浮石と判定された箇所と、浮石でないと判定された箇所において計測を実施し、振動の様子を比較した所、結果に有意な差異が生じることを確認した。

1-055

積層構造を有する半導体デバイスの超音波による非破壊診断

◎林 隼也・辰巳功祐・松井拓人・川島朋裕・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・松本 徹（浜松ホトニクス）

半導体デバイスの故障解析では，レーザ加熱を用いたIR-OBIRCH(Infrared Optical Beam Induced Resistance CHange) [1]法が不良箇所の特定のために広く使用されている。半導体デバイスはレーザ光を遮断する樹脂に封止されているため，検査時に樹脂を取り除く必要がある。OBIRCH法のレーザ加熱を超音波に代替したSOBIRCH(ultraSOnic Beam Induced Resistance Change) [2]法は，樹脂を取り除く必要がなく，故障状態を維持したまま故障診断が可能である。しかし，近年主流となっている積層構造を持った半導体デバイスでは，超音波の減衰によって，到達パワーが低下し，SOBIRCH法が適用できない可能性がある。本研究では，積層構造を有する半導体デバイスに対してSOBIRCH法を適用し，共振現象を活用した信号強度の改善について検討した。

1-056

グラジオメータを用いた不飽和漏洩磁束法によるロングレールの非破壊検査

◎林 実・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）

レール継目を溶接により排除したロングレールは鉄道システムにおける重要な要素であり安全検査が必要である。しかし超音波法ではデッドゾーンと呼ばれる表面付近の領域の欠陥は検出できない可能性があり，多くの作業工程も必要である。そこで私たちは弱い交流磁場を用いる不飽和漏洩磁束法によるロングレールの検査法を開発した。この方法はレール上でセンサプローブを走査するだけで欠陥を検出でき，手早く簡単に検査が行える。また省電力であり装置自体も軽量化できる。本研究では磁場の検出部にグラジオメータを用いることで，特に欠陥が起こりやすいレール溶接部のデッドゾーンにおける内部欠陥と表面き裂を検出することができた。

1-057

深層学習を用いた超音波振動子によるコンクリート構造物の欠陥検査検証

◎森 遼太（愛知工業大学）・佐藤正典（本多電子）・岩月栄治・小塚晃透・津田紀生（愛知工業大学）

コンクリートを材料とする構造物の寿命は，約50年と言われており，長年使用されているコンクリート内部には，ひび割れなどの欠陥が生じる．現在，鉄道の橋梁やトンネルなどからコンクリート片の剥落が相次ぎ，列車の一部破損を招いてしまう事例が報告されている．そこで，適切な交換時期を見極められるよう，本研究では環境雑音に左右されない小型で安価な装置の開発を目的として研究を行った．本発表は，上述した装置を実現させるため，超音波振動子にて収録した音波データを深層学習にて判別することが可能であるかを検証したものである．

1-058

表面電位分布を用いた複合材料評価方法の検討

○菊永和也（産業技術総合研究所）

本研究では複合材料における面内の電気抵抗分布を評価する手法を開発することを目的とし、表面電位分布を用いて複合材料内における導電率の異なる材料の位置情報をイメージングする技術の開発を試みた。絶縁体と導電体が混在する複合材料において外部からポテンシャルを印加し表面電位電位分布を観測することで、導電体の位置を表面から特定することに成功した。本評価手法は導電率が異なる複雑な構造の材料評価において有効な手段になると考えられる。

1-059

Deep LearningによるBoltzmann方程式のグリッドレス直接数値解法

◎川口 悟（成蹊大学）・高橋一弘・大鎌 広・佐藤孝紀（室蘭工業大学）・村上朝之（成蹊大学）

Deep Learningを活用したBoltzmann方程式の直接数値解法を提案する。本手法においては，(1)Legendre多項式等の直交関数列による電子速度分布関数(EVDF)の展開が不要，(2)Boltzmann方程式とEVDFの離散化が不要であり，グリッドレスでBoltzmann方程式が解ける，という特長がある。提案手法によって得られたArガス中の電子エネルギー分布はMonte Carlo simulationによる計算値と一致することが確認され，提案手法の妥当性が確認された。

1-060

Air/Ar及びAir/He混合ガス中の電子・イオン平均ドリフト速度と実効電離係数の圧力依存性

◎佐々本 凌・田中直人・成瀬颯人・小田智一・西嶋喜代人（福岡大学）

近年、空気と供試気体が混ざるような条件下で生成されるプラズマ応用研究や開発が行われてきている。その場合、混合気体の混合率の違い及び供試気体の違いによってプラズマの挙動が異なる。このような空気と供試気体の混合中のプラズマ挙動を理解するために、電子やイオンのドリフト速度、電子の実効電離係数など基礎特性を明らかにする必要がある。本研究では、YAGレーザを供試気体に照射して弱電離プラズマを発生させるパルスレーザ電離法を用いて、Air/Ar及びAir/Heの電子と正負イオンドリフト速度V_de, V_dp, V_dnと実効電離係数(α - η)/Pの圧力依存性(P = 95 ～ 760 Torr)について報告する。

1-061

弱電離気体プラズマの解析(CLVII) HFO-1234yf/N₂混合ガスの電子輸送係数

◎末次泰基・髙橋一弘・佐藤孝紀（室蘭工業大学）・笹原涼子・吉村 学（三菱電機）

定常Townsend法を用いて，E/N = 50-300 TdにおけるHFO-1234yf/N₂混合ガスの電離電流を測定し，電子付着を考慮したTownsendの電流成長式を用いてカーブフィッティングを行うことで一次電離係数α，電子付着係数ηおよび二次電離係数γを導出した。今回の測定で得られた実効電離係数(α-η)/Nは，混合率k = 100 %(HFO-1234yfが100 %)かつE/N = 100 Tdにおいて最小値を示した。また，臨界電界(E/N)_limはk = 100 %において177 Tdであり，その値はkの減少に伴い直線的に低下することがわかった。

1-062

弱電離気体プラズマの解析(CLVIII) フロン系絶縁ガスを含む混合ガス中の電子輸送係数測定(2)

◎中田理幸・佐藤和志（室蘭工業大学）・川口 悟（成蹊大学）・高橋一弘・佐藤孝紀（室蘭工業大学）・笹原涼子・吉村 学（三菱電機）

二重シャッタードリフト装置を用いて低 GWP のフロン系絶縁ガスを含む混合ガス中の電子到着時間分布 (Arrival Time Spectra : ATS) を正確に測定し，ATS 理論を利用して実効電離係数，平均到着時間ドリフト速度および縦方向拡散係数を算出した。実験により得られた結果から，電子輸送係数と混合率は必ずしも比例関係になるとは限らないことがわかった。また，フロン系絶縁ガスを少量加えても電離増倍，電子の移動および拡散を抑制できることがわかった。

1-063

RF電界・直流磁界下のCF4中電子ドリフト速度ベクトル軌跡

◎中田裕也・佐藤 壮・菅原広剛（北海道大学）

RF電界直流磁界下で駆動し材料プロセスに用いられる誘導結合磁化プラズマは磁界による電子閉じ込め効果や材料損傷低減が期待される。ArとF2中の電子平均速度ベクトルWは同電磁界下では楕円軌跡を描くことが既報で確認され、このことは一定衝突周波数（CCF）モデル近似理論式でも示された。本稿では電磁界下の電子輸送特性を議論するため、CF4中のWの周期応答特性を解析、電界を一定にしたときの磁界強度依存性をガスの電子衝突断面積構成に基づき検討し、CCFモデルとのずれの観点からF2と比較した。F2中のWがCCFモデルの楕円軌跡とよく一致するのに対し、CF4中のWの軌跡は内側へずれることがその特徴として現れた。

1-064

大気圧アルゴンプラズマジェット内の励起種の実効寿命

○鈴木 進（千葉工業大学）・寺西研二・下村直行（徳島大学）・伊藤晴雄（千葉工業大学）

Arプラズマジェットの長さについて検討した。プラズマジェットを大気中に直接吹き出した場合とプラズマジェットの周りにカバー用ガラスを取り付けAr雰囲気中に吹き出した際の比較を行った。分光測定では母ガスとしてのAr（690-843 nm）と大気成分であるN2とH2Oに由来するN2 2nd pos. band(337 nm)とOH（309 nm）について観測した。

1-065

He/O₂狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマの酸素原子密度に及ぼすO₂混合比の影響

○中野俊樹・古田憲司郎・北嶋 武（防衛大学校）

本報告では、He/O₂狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマのO₂混合比を変化させた際のO原子密度の相対変化を発光分光法によって推定する手法について提案する。O原子密度の相対変化の推定にはHeおよびOの発光線強度を主に利用する。発光線強度を基底準位からの電子衝突励起、励起準位からの自然放出および周囲ガス粒子との衝突による脱励起を考慮したモデルから算出し、それを測定値と比較することによって、O原子密度の相対変化を推定した。その結果、O₂混合比を5%から15%に増加した際のO原子密度の相対変化量は、最大で1.8倍に見積もられることがわかった。

1-066

RF低圧テトラメチルシランプラズマにおける電極へ入射するイオンエネルギーの質量分析

◎鈴木 駿・石井晃一・小田昭紀（千葉工業大学）・太田貴之（名城大学）・上坂裕之（岐阜大学）・渡邉泰章（イノベーションサイエンス）

異なる不活性ガスで希釈されたCH4プラズマで成膜されたDLC膜は，希釈ガス種によって成膜速度や膜硬度が変化することや，TMSプラズマ中から基板に入射するイオンのエネルギーを外部パラメータによって制御することによる膜硬度の上昇が報告されている．しかし，Si-DLC膜の成膜に用いられるTMSプラズマの解析が不十分であるのが現状である．本研究では，異なる3種類の不活性ガス（He，Ne，Ar）で希釈されたTMSガスを用いて容量結合型RF低圧プラズマを生成し，四重極質量分析装置を用いSi-DLC成膜に寄与する電極に入射するラジカルやイオンおよびイオンエネルギーの質量分析を行った.

1-067

エキシマレーザにおける予備電離用コロナ放電の電界強度依存性

◎永井一喜・竹中 怜・佐々木陽一・柿崎弘司（ギガフォトン）

半導体リソグラフィ用光源としてのエキシマレーザには，出力エネルギーなどの安定性に厳しい要求がなされている。これらの安定性はレーザ励起放電の安定性と深い関係がある。リソグラフィの要求仕様を満足するレーザ性能を得るためには多くの均一な初期電子密度が必要である。リソグラフィ用エキシマレーザでは，励起放電前にコロナ放電の光を励起放電空間に照射することで初期電子密度を確保する予備電離が必須である。コロナ放電の発生には高強度で空間的均一性に優れる誘電体バリア方式が採用されている。我々は誘電体バリア構造に起因する電界強度とコロナ発光強度の関係に着目し、放電観察を通して両者の関係性を調べたので発表する。

1-068

電磁波検出による電子レンジ異常使用時の放電検出に関する模擬放電源を用いた基礎検討

◎古家広貴・大塚信也（九州工業大学）

2.4GHz帯の電磁波は国際的にISMバンドと呼ばれ、工学、科学、医療のほか様々な分野で使用できる。電子レンジでも2.4GHz帯の電磁波が使用されている。しかし、レンジ庫内に金属や炭化物が存在する異常使用時に放電が発生し火災に至る事故が発生することが報告されており、火災未然防止には、電子レンジ動作時にレンジ庫内で発生する放電を検知することが重要である。本研究では、電子レンジ外部に放電検出用のアンテナを配置し、電子レンジ動作時のノイズを測定した。次に、模擬放電源をレンジ庫内に配置して放電を発生させ、電磁波特性を同様に調べた。さらに模擬放電源をレンジ外部に配置して放電と共にレンジを動作させた時に放電放射電磁波を検出する手法を提案した。

1-069

レーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS)を用いたTi元素の粒子組成分析

◎紙井大輝・上杉喜彦・田中康規・石島達夫・中野裕介（金沢大学）

レーザ誘起ブレイクダウン分光法(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy, LIBS)とは，レーザーアブレーションにより生成されるプラズマプルームの発光を観測することによりターゲット材の組成分析を行う方法である．CF-LIBS法による組成分析では，元素の中性種およびイオン化種を考慮する必要がある．そのため，温度と電離度の関係を明らかにすることは，CF-LIBS法による組成分析において重要である．そこで，LIBS実験および計算によりTi元素の粒子組成の温度依存性を取得し，結果の比較を行った．粒子組成の計算では，系のGibbsの全自由エネルギGを最小化させることで，各原子，分子，ラジカルの数密度を計算した．

1-070

レーザの往復反射と飛行時間差を用いた2次元高精細トムソン散乱計測システムの開発

◎山口 遥・神谷 駿・姫野俊一・秋光 萌・小野 靖（東京大学）

プラズマの計測に不可欠なトムソン散乱計測は使用機器・コストの面から2次元への拡張が大きな課題となっている。本研究の目的はレーザを往復反射と飛行時間差を用いることによって分光器の台数を増やすことなく2次元への拡張を実現することである。

1-071

大気圧グロー放電用ダブルプローブ計測システムの開発

◎石橋 凌・大石 亮・牟田浩司（近畿大学）

大気圧グロー放電は真空装置無しに非平衡低温プラズマを生成できる方式であり、材料表面の高速処理や滅菌、さらには医療や農業の分野への応用が拡大している。これらの分野においてプラズマを最適化するには、電子温度や電子密度といったプラズマの基本的なパラメータを実時間に測定する計測システムが不可欠である。従来減圧したプラズマでの計測に多用されていた静電プローブ法をそのまま大気圧領域で適用することは通常困難である。そこで本研究では、荷電粒子と中性粒子の衝突を適切に考慮することで、測定を可能とする計測システムの構築を行う。具体的には、プローブに生じる衝突シースを詳細に数値解析し、測定値とフィッティングすることでプラズマパラメータを決定する。

1-072

共鳴光照射で生成されるセシウムプラズマの波長電離特性

○森 雄貴・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

熱電子発電は高温に加熱された電極からの熱電子放出を利用する直接発電方式であるため，損失が少なく次世代の発電方式として期待されている．しかし，エミッタから放出された電子は電極間で負の空間電荷を形成し，出力が抑えられるという問題がある．負の空間電荷を解消もしくは緩和するため，電極間にプラズマを生成し，空間電荷を中和する方法がある．電極間の電界を中和させるには，多くの電荷量を電極間に生成した方が良い事が今までの研究から分かっている．そこで，本研究ではセシウム蒸気中に852nm付近の共鳴光を照射し，セシウムの共鳴光電離特性を調べた

1-073

プラズマ可変キャパシタの静電容量値およびQ値に関する理論値と実測値の比較

◎西岡 宗・山浦真悟・内藤皓貴・西本研悟・西岡泰弘・米田尚史（三菱電機）

プラズマの誘電率可変性を活用したプラズマ可変キャパシタが提案されている。本可変キャパシタは、静電容量値の高速切替と高耐電力性の両立が期待されているが、実用上の課題として低損失化が挙げられた。これまで発表者らは、等価回路モデルを用いた理論検討より本可変キャパシタの低損失化手法を提案した。本発表の目的は、上記等価回路モデルの定量的な妥当性検証である。具体的には、本可変キャパシタの静電容量可変性およびQ値について、測定値および等価回路モデルによる理論値を比較した。その結果、両者は定量的によく一致した。また理論検討より、本可変キャパシタを可変容量ダイオード相当まで低損失化する条件を定量的に示した。

1-074

過渡接地電圧法および電磁波法による金属筐体内部分放電の検出に関する基礎的検討

◎羽渕雄堂・大津健太郎・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

部分放電(PD)を初期の段階に検知することは、機器の損傷等の回避に非常に有効である。現在比較的新しいPD検出法として、設備の外壁にセンサを取り付け信号を検出する、過渡接地電圧(TEV)法が注目されている。そこでPD現象を多角的に観測するため、金属筐体内で発生させたPDを、筐体の接地の有無で場合分けし、部分放電電流およびTEV・電磁波(EM)を測定し、比較・検討した。その結果、金属筐体の接地の有無によってTEV・EMおよび回路を流れる電流の周波数特性が変化することが分かった。これは、金属筐体ー接地線間に流れる電流が影響を及ぼしたためであると考えられる。

1-075

部分放電を介するmmオーダ沿面放電進展挙動のシミュレーション

◎佐野智哉・岩渕大行・大山 力（横浜国立大学）

近年、地球温暖化や石油枯渇等の問題から従来使用されてきたガソリン車に代わり電気自動車が注目されている。車両モータシステムは小型化が求められており、モータコイル線間等、高電位差が発生する箇所が広範囲に及ぶため、その詳細な絶縁設計が求められている。特に誘電体表面を沿って進展する沿面放電は気中放電よりも進展しやすいため絶縁破壊が起こりやすく、進展過程の解析が必要である。本稿では、部分放電を介する沿面放電進展挙動をシミュレーションによって行った。背後電極ありの沿面放電では、電圧が高い条件の方が早い進展となる。また、沿面部分放電が停止した後、電子密度が空間方向に広がっていく様子が確認できた。

1-076

繰り返しパルス電圧印加時における発泡エナメル線の部分放電開始電圧

◎丸山大輝・武川秀介・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・宮崎優伍・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年、モータの出力制御を行うために小型で高効率なインバータシステムが使われている。高速スイッチングによって急峻でかつ過大なサージ電圧がモータ巻線間に加わり、部分放電が生じ、それが継続するとモータの故障に繋がる可能性がある。部分放電を抑制する手法としてエナメル線の絶縁皮膜の発泡による低誘電率化がある。本研究では、繰り返しパルス電圧を印加した際の無発泡及び発泡エナメル線ツイストペアの放電電圧と放電発生時間の関係及び部分放電開始電圧（PDIV）の測定を行った。実験結果として電圧印加時間が短いほど放電電圧は高くなった。また、発泡率0％より30％の試料の方が高いPDIVを示し、印加電圧の極性による影響は小さかった。

1-077

ツイストペアサンプルの液中と気中の部分放電特性の比較

◎天野皓揮・宮嶋一浩・甲月甫明・葛籠立弥・永田正義（兵庫県立大学）

一般のインバータ駆動モータにおいて、モータ端におけるインピーダンス不整合により、インバータサージと称される繰り返しインパルスの高電圧が発生する課題がある。インバータ駆動モータはその用途によって、大気中だけでなく、水中や冷媒ガスと油の混合体など様々な環境の中にステータが置かれて運転される。この様な用途のモータの場合でも、同様にサージによって部分放電がモータ内に発生し、早期故障を引き起こすといった問題が発生している。水中の場合、電子・正負イオン発生機構、空間電荷効果、水中気化、気泡生成などの各要因が部分放電の発生に関与していると考えられる。本講演では、ツイストペアを気中・水中で発生する放電電荷量やPDIV特性について比較し、水中での部分放電の機構について調べた結果について報告する。

1-078

発泡エナメル線ツイストペアに対する長時間放電が部分放電開始電圧とφqn分布に与える影響

◎武川秀介・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・宮崎優伍・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年の産業用モータはインバータによって高電圧・高効率駆動されている。これに伴ってモータコイル内のエナメル線で部分放電が発生し絶縁破壊に繋がる恐れがある。絶縁破壊を未然に防止するため、部分放電抑制効果が有る発砲エナメル線が有効である。ここで、本研究では長時間放電後のエナメル線のPDIV及び部分放電劣化診断に用いられるφqn(位相、電荷量、発生頻度)分布測定を行い、発泡エナメル線と無発泡エナメル線で比較した。その結果、PDIVは両エナメル線共に長時間放電の影響を受けず、発泡エナメル線のPDIVが高かった。φqn分布は発砲エナメル線が長時間放電により、最大電荷量が減少し電荷量の小さな放電回数が増加していることが分かった。

1-079

CVケーブルに使用される半導電層のカーボンブラック含有率が部分放電に与える影響

◎岡嵜岳陽・中村 孝（大阪大学）

本研究では、約70kVを出力する高電圧モジュールの絶縁を研究対象とする。モジュール内部では、低圧側と高圧側間に70kVの電圧が印加されるため、マイカ板により絶縁を確保する。マイカを接着する際に接着層にボイドが形成され、高電圧印加時に部分放電の発生により絶縁破壊に至る恐れがある。本研究はCVケーブルに使用される半導電層を接着層として用い、部分放電を抑制することを目的とする。半導電層のカーボンブラックの含有量を変化させ作製した試料に交流高電圧を印加し、部分放電の挙動を観察した。結果より、半導電層はその含有率に応じた一定の電界で電荷を移動させることにより、部分放電を抑制することが出来るという事がわかった。

1-080

不平等電界下における加圧ドライエア中ストリーマ放電の分岐構造

◎李 陽・菊池祐介・永田正義（兵庫県立大学）・笹原涼子・吉村 学・武藤浩隆（三菱電機）

我々はこれまでに，大気圧及び加圧ドライエア中の不平等電界下におけるストリーマ放電のガス圧力特性について調査を行ってきた。ドライエア中におけるストリーマ放電は分岐しながら進展していくが，分岐構造のガス圧依存性や，絶縁破壊過程への影響は未解明である。本稿では，加圧ドライエアのストリーマ放電の分岐構造を画像解析し，特にガス圧力に対するフラクタル次元の変化について調査した結果を報告する。ストリーマ放電の平板到達時の分岐構造は，ガス圧力が高い方が複雑になる。一方絶縁破壊直前では，ガス圧力によってストリーマの分岐の数や太さは異なって見えるが，分岐構造の複雑さは同程度であることがフラクタル解析で分かった。

1-081

二重同軸管構造を用いた層流大気圧プラズマジェットの層流ガス種による液体照射効果

◎石橋一斗・渡辺和樹・西村理来・種田航大・伊藤弘昭（富山大学）

近年、大気圧プラズマジェットを用いた様々な応用研究が盛んに行われている。大気圧下でのパルス放電によりヒドロキシラジカルやオゾンなどの活性種を生成できるので、有機化合物を分解および除去することで知られている。本研究室では活性種やイオン種の増加を目的として二重同軸管構造のプラズマジェット発生装置を開発してきた。本研究では二重同軸管構造による層流プラズマジェットのガス種を変更して水溶液中の有機化合物分解を行ったので、その結果を報告する。

1-082

キャビテーションプラズマによる銀ナノ粒子合成メカニズムに及ぼすパルス電圧極性の影響

○岡 好浩・小川雄悟・倉田 怜・大塚健太郎・八束充保（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマ法は効率良く液中に低温プラズマを生成できる手法である。これまでに、本手法により銀ナノ粒子の合成に成功し、正極性パルス印加時の支配的な合成過程が明らかになっている。今回、パルス電圧の極性およびプラズマの有無による電極消耗量を比較し、銀ナノ粒子合成メカニズムに及ぼすパルス電圧極性の影響を調査した。両極性のとき、プラズマ発生時のみ両電極が共にわずかに消耗した。正極性および負極性のとき、プラズマ発生時は陽極側の電極が著しく消耗し陰極側もわずかに消耗したが、プラズマ未発生時は陽極側のみ消耗した。このことからパルス電圧の極性によって銀ナノ粒子の合成メカニズムが異なると考えられる。

1-083

キャビテーションプラズマの発生に与える入力エネルギーの影響

◎岡田 翔・上田真子・上田唯人・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマ(CBP)はキャビテーション現象を用いることで微小気泡群を生成し、そこにパルス電圧を高繰返しで印加することでプラズマを生成する技術で高効率なプラズマの生成が可能である。キャビテーションプラズマはキャビテーション現象によって電極間に気泡を供給するため、一般的な液中プラズマに比べて処理が可能な処理水の導電率の範囲が広い。そのため導電率を変えた際に生じる現象について正しく理解する必要があるが、キャビテーションプラズマ特有のパラメータであるため、知見が少ない。そこで本発表では処理水の導電率を変えた際のプラズマの発生について入力エネルギーの視点から検討を行う。

1-084

キャビテーションプラズマにおける放電開始位置に対する放電電流の影響

◎上田唯人・岡田 翔・岡 好浩・上野秀樹・上田真子（兵庫県立大学）

近年、液体が関与するプラズマが注目されており、有害有機物の分解やナノ粒子の合成などへの応用研究も進められている。その中でも、効率良く液中に低温プラズマを生成することができるキャビテーションプラズマ(CBP)が注目されている。我々は気液二相流中に生成されたCBPの複雑な放電現象の解明に取り組んでいる。これまでに、水流によって放電路が電極上部へアーチ状に伸展し、電圧パルスを印加する毎にプラズマの発生と消滅を繰り返すことまで明らかにしている。放電の発生・消滅を検討する上で放電が一番初めに電極のどこから発生するのかは重要な要素である。本報告では、放電の開始位置に対する電極の形状や放電電流の影響を調査した結果について述べる。

1-085

マイクロ波励起の水プラズマによるレジスト除去速度の面内均一性の改善

◎櫻井 匡・相澤 洸・島田大伸・石島達夫・田中康規・上杉喜彦・中野裕介（金沢大学）

我々は新規レジスト除去手法として，マイクロ波励起水プラズマアッシング法の研究開発を進めている。本手法は現在主流である薬液処理法及び酸素プラズマアッシング処理法に比べ，環境負荷が小さい，基板への熱的影響が少ない，高速なレジスト除去という利点がある。課題として，ウェハ面内のレジスト除去速度の不均一性がある。ウェハ中心部と外周部でアッシングレートに差があり，中心部ではレジストが除去された後の下地に過剰にプラズマが照射されることに伴うデバイスへのダメージが懸念される。本研究ではプラズマ照射距離を変更してレジスト付きウェハにプラズマを照射し，照射距離とレジスト除去速度の面内均一性との相関を評価した。

1-086

Erotion of High-Voltage Electrodes Used in Spark Discharge System for Preparation of Plasma Nutrient Water

◎川野航平・針谷 達・下村友人・滝川浩史（豊橋技術科学大学）・井出健太郎・日竎 勉・爪 光男（シンフォニアテクノロジー）

窒素は，植物の成長に欠かすことのできない栄養素の一つである。水に対して放電処理を行うことで，水中にNO3-を生成できる。この放電処理した水は，植物の成長を促進した。我々は，この放電処理水をプラズマ栄養水と呼び，プラズマ栄養水を安価かつ大量に生成するマルチスパーク放電装置を開発した。しかし，スパーク放電を用いた水処理は，放電による電極の損耗が懸念される。本研究では，プラズマ栄養水生成を行うスパーク放電装置へ異なる電極を用い，電極の変化および損耗状態を観察した。CuとSUSに比べて，酸化しにくく，損耗の少ないPtおよびPtRhは，高圧電極の材料として優れることが示された。

1-087

交流沿面放電により劣化菜種油中に溶解したガス成分の分析

○山本博法・桶谷 健・宮城克徳・花岡良一（金沢工業大学）

近年、変電設備において、高度成長期に導入された経年機器の合理的な維持運用が課題となっている。一方、電力用油入変圧器の絶縁油として一般的に用いられている鉱油は、石油資源の枯渇や原油の高騰、及び焼却処分時におけるCO2排出や漏洩時における土壌汚染など、環境保全に関わる問題もある。このような情勢に鑑みて、著者らは、鉱油の代替絶縁油として、植物由来の絶縁油に着目している。植物油は、枯渇の心配が無く、カーボンニュートラル効果が見込め、かつ生分解性が高いため、環境調和型の変圧器として注目が寄せられている。本研究では、菜種油、及び鉱油（いずれも新油と加速熱劣化油）中の交流沿面放電による油中溶解ガス成分を分析し、異常診断を試みたので報告する。

1-088

ミスト散布による球雷放電を用いた水処理性能への影響評価

◎浜名竜大・田代潤一郎・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

近年，環境への配慮や水資源の確保のために，工業廃水の再利用が進められている．廃水が含む難分解性有機物は，塩素やオゾンで分解できないため，OHラジカルによる処理が注目されている．水処理放電はOHラジカルを生成可能な処理手法である．球雷放電は長寿命・大体積な放電で，水処理への応用に向けて研究が行われてきた．しかし，従来の手法では水面上部に発生したOHラジカルを利用しきれていない可能性があった．本研究では，放電空間内に被処理溶液をミスト散布し，処理性能への影響を調べた．インジゴカルミン水溶液を用いた処理実験の結果，ミスト散布によって処理速度が向上することがわかり，ミスト散布の効果を確認することができた．

1-089

球雷放電を用いた酢酸分解に関する研究その2

◎田代潤一郎・浜名竜大・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

近年，廃⽔が河川へ流れ出ることによる環境汚染問題が深刻化している．廃⽔が含む難分解性有機物は，塩素やオゾンで分解できないため，OHラジカルによる処理が注⽬されている．⽔処理放電はOHラジカルを⽣成可能な処理⼿法である．球雷放電は⻑寿命・⼤体積な放電で，⽔処理への応⽤に向けて研究が⾏われてきた.本研究では、難分解性有機物である酢酸を対象に球雷放電を用いて処理を適用した.

1-090

水中キャビテーション放電処理の微細藻類への影響

◎片渕淳也・猪原 哲（佐賀大学）

近年，地球温暖化や地球資源問題により再生可能エネルギーへの注目が集まっている。微細藻類は細胞内に豊富な脂質やタンパク質を有しているため工業的にも有用とされ，バイオ燃料や医薬品，化粧品等への応用研究が盛んに行われている。一般的に微細藻類は陸上植物細胞の細胞壁と比較して強度が高い細胞壁を持つとされる。そのため細胞破壊をする際，細胞壁をオゾン等によって弱らせることが有効とされている。本研究では微細藻類からのバイオマス生体成分の抽出率向上において効果があるとされるオゾン処理と比較することで水中キャビテーション放電処理時のプラズマや放電によって発生したラジカルの細胞に対する影響とそれに伴うエタノール抽出効率への影響の調査を行った。

1-091

分割接地電極を用いた沿面放電進展時の誘導電流観測

◎二階堂慎一・杉本俊之（山形大学）・佐藤岳彦（東北大学）

接地平板の表面に帯電した薄い絶縁層があるとき，その上部から接地電極を近づけると進展性の高い沿面放電(PBD; propagating brush discharge)を引き起こすことがある。本研究ではこのPBDが進展する過程を誘導電流波形から調べる方法について検討した。高電圧-18 kVを印加した針電極を用いてコロナ放電を発生させ，それにより厚み0.1 mmの絶縁フィルムの表面を帯電した。その上部から接地された半球型電極を近づけPBDを発生させ，絶縁フィルムの下部に並べた4つの接地平板から導電流波形を観察した。この4つの波形はPBDが進展した順に立ち上がっており，この時間差からPBD進展時の電荷の移動速度が推定できた。以上より，PBD進展時の電荷の移動過程が確認できる可能性が示唆された。

1-092

真空中沿面放電における初期帯電迂回条件

西田歩成・◎小名木良太・小島寛樹（名古屋大学）・飯塚伸介・小林将人（日立産機システム）・早川直樹（名古屋大学）

真空中沿面放電(FO)に対して，突発的電子放出(EEE)がFOの起因となっていると考えられる電界値付近において初期帯電を迂回する条件を検討した．最短経路上において2次電子なだれが発生しうるδ≥1の領域が存在し，初期帯電のピークより陽極側に存在している場合，FOは初期帯電を乗り越え，最短経路を通る．一方，δ≥1の領域が初期帯電のピークより陰極側に存在している場合，FOは初期帯電を迂回したと考えられる．また，δ≥1の領域が初期帯電のピーク付近に存在する場合，どちらの経路も通る可能性がある．以上より，δ≥1の領域の存在する場所がFO経路を決定する条件になりうることを示唆した．

1-093

真空中交流部分放電による帯電形成時における固体絶縁物上の二次電子放出係数の時間推移

◎大木駿士朗・小島寛樹（名古屋大学）・竪山智博・浅利直紀・佐々木良輔（東芝インフラシステムズ）・早川直樹（名古屋大学）

真空中のアルミナ絶縁物を用いた電極系に交流電圧を印加すると，部分放電(PD)が発生し絶縁物沿面上に帯電を形成し，二次電子放出による帯電の進展，沿面放電の開始を経て，フラッシオーバ(FO)に至る．今回，FO直前の帯電形成について帯電飽和時，非飽和時における二次電子放出係数の時間推移の観点から考察した．実験結果から，飽和時，非飽和時，それぞれに対するFO直前の電圧印加における1サイクル中における沿面の二次電子放出係数δの半径方向分布の時間変化を検討した．ここから，非飽和時と比べて，飽和時における二次電子放出係数が大きいことが見て取れた．アルミナ沿面上に二次電子放出係数の大きい領域が形成されることで，飽和時には電極直下付近で電子が進展しやすくなり，帯電の飽和現象が起こったと考えられる．

1-094

真空-固体絶縁の複合絶縁系における浮遊電極の帯電電位と印加電圧の関係

◎草 龍太郎（埼玉大学）・山納 康（埼玉大学,筑波大学）・福田英昭・山村健太（明電舎）

真空機器の小型化・高電圧化を図る上で，真空中の絶縁物内面に沿って発生する沿面放電が問題の一つとなる。これらの機器では導体を支持するための絶縁体が必ず用いられ，場合によっては電気的に絶縁された浮遊電極が存在する複合絶縁体構造となることがある。耐高電圧の性能向上のためには，浮遊電極の帯電特性の把握が必要である。そこで本研究では，真空中浮遊電極の帯電特性を調査した。浮遊電極の帯電電位は，浮遊電極と電圧印加側の電極の陰極三重点からの電子放出におり帯電電位が変化することが示された。また，コンディショニング処理や電界緩和シールドを施すことにより，浮遊電極の帯電は抑制されることが明らかとなった。

1-095

低気圧領域におけるポリイミド皮膜エナメルツイストペアのPDIVおよび電荷量の評価

◎竹之内 将・西垣安貴・松添宇一・小迫雅裕（九州工業大学）・池田佳祐・武藤大介（古河マグネットワイヤ）・冨澤恵一（古河電気工業）・匹田政幸（九州工業大学）

近年の航空機の電動化や電動車の高地での利用では，低気圧環境下におけるインバータ駆動モータ巻線絶縁におけるPD現象の解明が重要である。本研究では，両極性インパルス印加に対するPDIV（Partial Discharge Inception Voltage）および電荷量の気圧依存性の評価を行い，その結果より，放電開始メカニズムについて検討した。

1-096

インバータ駆動回転機における亀甲コイルを用いたターン間絶縁RPDIVのパルス形状依存性

◎中村隆央・柄沢一成・井上良之（東芝三菱電機産業システム）・廣島 聡（東芝エネルギーシステムズ）

インバータ駆動回転機ではインバータサージによる絶縁劣化現象が懸念されており，2017年にはインバータ駆動回転機の型巻絶縁に関する国際規格が制定されている。本規格において印加する繰返しパルスの立上り時間は回転機運転時と同等の値を用いることと規定されているが，パルス形状の他のパラメータについては規定がなく，部分放電発生電圧との関連も未解明である。筆者らは繰返しパルス発生電源の抵抗値や亀甲コイルのインピーダンスを調整することでパルス形状のパラメータを可変として部分放電を測定できる手法を開発した。本稿では前記パラメータのうち繰返しパルスの立上り時間を変化させてRPDIVを測定した結果を報告する。

1-097

絶縁材料表面上に発生する放電の熱に関するシミュレーションの検討

○枦 健一（鹿児島工業高等専門学校）

本研究では、絶縁表面を導電率が異なった水電極間で放電させた時の熱の影響を評価するため、シミュレーションソフトを用いた絶縁材料表面上で発生した放電による熱流体の計算について検討した。

1-098

固体絶縁物接続界面における絶縁グリース膜厚と交流絶縁破壊電圧の関係

◎加藤正樹・村松一徳・三澤諒典・大澤直樹（金沢工業大学）・柳瀬博雅・増井秀好・岡本健次（富士電機）

高圧ケーブルの接続部では，二つの固体絶縁物の接続する界面（接続界面と略す）に微小空隙が形成され，絶縁性能が低下する。これを防ぐために，接続界面には，圧縮応力の印加や，電気絶縁用グリースの塗布が行われている。著者らは，接続界面にグリースを塗布していない状態で，接続界面への圧縮荷重と接続界面の交流絶縁破壊電圧（界面AC-BDVと略す）の関係を調べてきた。本研究では，面圧0.4 MPa～1.2 MPaの範囲において，接続界面への面圧がグリース膜厚や接続界面にグリースを塗布したときの界面AC-BDVに与える影響を調べた。実験の結果，面圧を高くすると，グリース膜厚は薄くなったが，界面AC-BDVは変わらなかった。

1-099

空気/固体複合絶縁系の直流定常状態における空気中導電率の空間分布

◎中根龍一・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）・大久保 仁（愛知工業大学）

信頼性のある直流電力システムの実現のため、直流ガス絶縁開閉装置（DC-GIS）内の固体絶縁物表面上における電荷蓄積の現象究明が求められている。今回は、大気圧空気の固体絶縁物PMMA上に針電極を配置した空気/固体複合絶縁系において、負極性直流電圧を印加し、直流定常状態におけるPMMA表面上の蓄積電荷密度分布ならびに空気中導電率の空間分布の検討を実験と解析の両面から行った。その結果、電荷供給源の起点となる針電極先端近傍からの電気力線に沿って、空気中導電率の活性化領域が形成されていることを定量的に明らかにした。

1-100

圧力測定フィルムを用いた気中放電の絶縁破壊電圧と最大圧力値の関係

◎坂井克成・荒岡信隆・高村紀充・水﨑雅之・佐々木佑樹・花井正広（福岡大学）

風力発電機のブレードへの落雷被害は，レセプタや避雷鉄鉄塔で対策を講じても完全には無くせないのが現状である。風力発電機のブレードへの落雷被害の例として，ブレードの繊維強化プラスチック部に雷が着雷して貫通することによるブレードの破損がある。このような放電による絶縁物の貫通メカニズムを解明するために，我々はこれまでに圧力に応じて変色する圧力測定フィルムを用いて気中放電の最大圧力値と圧力分布について調査してきた。本論文では，より正確に圧力を測定するために銅箔と接着させた圧力測定フィルムに負極性雷インパルス放電を着雷させて最大圧力値を測定し，測定波形から求めた絶縁破壊電圧と最大圧力値の関係を調査した。

1-101

気中放電発光と多重バリア放電孔の半径の比較

◎佐々木佑樹・荒岡信隆・高村紀充・水﨑雅之・坂井克成・花井正広（福岡大学）

現在，風力発電機のブレードへの落雷による貫通被害が問題となっている。未だに放電が絶縁物を貫通するメカニズムが解明されていないため，完全な対策を施すことができていない。そこで，筆者らは気中放電が絶縁物を貫通するメカニズムを解明するために，主要因と考えられる熱や圧力，電界および絶縁物貫通時の放電形態について調査を行っている。本論文では，以前から行っている電極間に配置したバリアを気中放電が通過した際に生した放電孔から放電の等価半径を推定する方法と新たに行った放電の発光画像から放電の等価半径を推定する方法を比較した。その結果、二種類の推定方法における等価半径はおよそ比例関係にあった。

1-102

冬季に仁賀保で観測された負極性雷のICC pulseに関する検討

◎林 昇平・道下幸志・横山 茂（静岡大学）・本庄暢之（電源開発）

日本海沿岸地域における風力発電設備の増加に伴い，冬季雷による被害の増加が報告されている。本報告では，冬季に秋田県の仁賀保高原風力発電所で得られた負極性雷のICC pulseについて検討した結果を述べる。

1-103

空気中チャネル加熱絶縁破壊における電流増加および高導電率領域進展過程

◎浅野竜大・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

大気圧空気中の短ギャップ不平等電界下では，1次・2次ストリーマが対向電極に到達した後，最短経路のチャネルが加熱されて絶縁破壊に至る．筆者らは，このチャネル加熱絶縁破壊発生直前において針電極近傍および平板電極近傍の導電率が上昇する過程の存在を明らかにした．本論文では，放電チャネルの軸方向に初期温度分布を与え，イオン密度分布を考慮した導電率の温度依存性を与えたモデルを構築し，有限要素法によってチャネル加熱絶縁破壊過程を計算した．その結果，放電チャネルの温度と導電率が上昇し，電流が増加して絶縁破壊に至る過程を再現し，針電極先端および平板電極近傍から軸方向に高導電率領域が進展していく過程を明らかにした．

1-104

楕円電極を用いた反射三極管型仮想陰極発振器における出力マイクロ波の電極材料依存性

◎田中稜大・春木亮太朗・伊藤弘昭（富山大学）

仮想陰極発振器とは、パルスパワー技術によって生成される高強度相対論的電子ビームを利用し、高出力マイクロ波を発生できる装置である。高出力マイクロ波は、宇宙空間で太陽光発電を行い、その電力を地球に無線で送電する無線電力送電の技術や、核融合燃料のプラズマ加熱など、様々な分野に応用が期待されている。この発振器は、他のマイクロ波発振器と比べると外部磁界が不要で構造が単純であり、高出力マイクロ波を発振できる利点があるが、変換効率が著しく低いため変換効率向上に関する研究が行われている。本研究では、電子ビームが作る仮想空胴によってマイクロ波の空胴共振が発生した事例を受け、三極管型において楕円電極を用い、電極材料依存性とマイクロ波発振特性の評価を行った。

1-105

両極性パルス加速器開発に向けたパルスイオンビームのエネルギー評価

◎石田治康・寺田匡志・伊藤弘昭（富山大学）

パルス重イオンビームは炭化ケイ素などの次世代半導体材料に向けた新しいプロセス技術として期待されている。この技術の実現に向け、多様なイオン種のビーム発生とイオンビームの高純度化がパルス重イオンビーム技術には必要である。本研究では、ビームの純度向上を目指し、これまでのパルス重イオンビーム技術に両極性パルス電源を融合させた両極性パルス加速器（Bipolar Pulse Accelerator：BPA）の開発を行ってきた。本発表では、パルス重イオンビームをトムソンパラボラ分析器で評価することで両極性パルス加速器の検証を行ったので報告する。

1-106

プラズマフォーカス装置における高強度パルスイオンビームの陽極形状依存性

◎佐賀野裕人・山本晃平・高尾美陽・伊藤弘昭（富山大学）

プラズマフォーカス装置は、比較的単純な構造で、高温高密度プラズマを生成することができ、荷電粒子ビーム、X線、中性子などの線源としての応用が期待できる。イオンビームに着目すると、数MeV程度のエネルギーを持った高強度イオンビームが確認されている。本研究でも、充電電圧が30 kVにも関わらず、数100 keVから数MeVの高エネルギーイオンビームが発生している。しかし、イオンビームは軸上のみならず、軸から外れた部分でも観測されている。本研究では、イオンビームの特性向上、及びイオンビームの発生機構解明に向け、電極形状に対するイオンビームの空間分布特性を評価したので報告する。

1-107

大気圧炭化水素パルスプラズマにおける電極への入射イオンエネルギーに及ぼす繰り返し周波数依存性の解析

◎小嶋正宏・木村勇太・小田昭紀（千葉工業大学）・太田貴之（名城大学）・上坂裕之（岐阜大学）

最近，ダイヤモンドライクカーボン（DLC）膜を成膜する方法の一つとして，大気圧プラズマCVD法が注目されている．本方法は，成膜速度や設備コストなどの点で優れている．しかし，低圧下で成膜された膜に比べ低硬度になることや熱プラズマに遷移しやすいなどの課題が存在するため，これら問題の解決が望まれている．このような中，印加電圧のパルス化が注目されており，実際に高硬度なDLC成膜が達成できたことが報告されている．本報告では，大気圧炭化水素（He希釈CH₄）パルスプラズマにおけるパルス電圧の繰り返し周波数が電極に入射するイオンの入射量およびエネルギーに及ぼす影響について解析を行ったので，その結果について報告する．

1-108

高温下におけるパルス放電の放電電流特性

◎日比野晃久・江原由泰（東京都市大学）

電気集塵装置の放電形態は, 一般的に直流コロナ放電が採用されている。船舶から排出される排ガスは400℃以上と高温である。直流コロナ放電は, 高温下において放電安定領域が狭く, スパークオーバが起こりやすくなり, 安定した集塵が行えなくなる問題が生じる。そこで, 直流コロナ放電の代わりにパルス放電を採用することにした。パルス放電は直流コロナ放電に比べて, ストリーマの形成が速く放電形成時間が短い特性を持っている。そのため, 高温下において放電形成の安定化を期待することができると考えられる。 本研究では, 高温下におけるパルス放電について電流測定を行い, 集塵を行う際の最良条件について考察を行う。

1-109

高電界パルス印加による酵母菌殺菌に及ぼすエタノール濃度の影響

◎髙森雅貴・村上祐一・村本裕二（名城大学）

本研究の目的は、日本酒などのアルコール飲料における火入れ処理を高電界パルス殺菌法で代替することであり、殺菌の可能性を検討することである。本研究では、酵母菌を含む実験試料にエタノールを加えてアルコール飲料を模擬し、高電界パルス印加による殺菌実験を行った。エタノール濃度は0～15 wt%とし、各試料に2 kVのパルス電圧を10回印加した。その結果、エタノール濃度が高くなるほどパルス電圧印加後の生菌率が低くなっているということがわかった。この結果は、パルス電圧を加えることで殺菌効果が高くなり、相乗的な殺菌が行われたことを示している。さらに、本相乗効果はエタノール濃度が高くなるほど大きくなることが示唆された。

1-110

沿面放電液中プラズマ殺菌におけるOHラジカルの影響検証

◎平原大地・安井晋示（名古屋工業大学）・景山幸二（岐阜大学）

筆者らは，沿面放電液中プラズマによる新たな植物工場水耕栽培養液殺菌技術の研究を行っており，先行研究においてOHラジカル等の活性種が殺菌に寄与していることを間接的に推定した。本研究では，その影響をより直接的に検証するために，テレフタル酸二ナトリウム(NaTA)にOHラジカルをトラップさせながらPythium属菌遊走子を対象に殺菌実験を行った。その結果，滅菌蒸留水による殺菌実験と比較して， NaTA溶液による実験では，遊走子へ作用するOHラジカル量が減少したために殺菌効果が低下したと考えられ，液中プラズマ殺菌へのOHラジカルの寄与が直接的に示唆された。

1-111

オゾン水のエアロゾル化による微生物の殺菌

○上野崇寿（大分高専）・古川隼士（北里大学）・勝木 淳（熊本大学）

高純水をエロゾル化し高電界によってオゾン水とすることで，平面や円筒形状といった物体に塗布した状態での殺菌を行った．その結果，高純水をエアロゾル状に噴霧し，高電圧を印加することで数ppm以上の高濃度のオゾン水を生成することができた．また，生成されたオゾン水はエアロゾル状となっており，平面板だけでなく円筒形状の物体の内側に塗布された菌に対しても，滅菌可能なことが示された．

1-112

木材高速糖化のための水中パルス放電衝撃波処理

◎中川雄介・大和田佑介・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）

木材を原料としたバイオエタノールは有用な再生可能エネルギー源であるが、実用化のためには木材→エタノール変換過程（糖化）の高速化が不可欠である。糖化速度向上のためには、木材の前処理による水素結合切断・断片化が重要となる。本研究では、水中放電で生じる衝撃波を木材に作用させ、断片化処理を行った。桧木粉を分散させた水中でパルス放電を起こし10分間処理した結果、断片化を促進できることが確認できた。また、糖化実験において糖濃度300 ppmを得るまでの時間は、未処理木粉で8日に対して処理木粉では4日となり、糖化の所要時間を半減できた。このことから、本手法は木材糖化の高速化において有効な手法と考えられる。

1-113

プラズマ切断トーチモデルにおける電流値を変更した場合のアークプラズマの電磁熱流体解析

◎三田村直紀・飯田桂吾・田中康規・上杉喜彦・中野裕介・石島達夫（金沢大学）

プラズマアーク切断は，高温アークプラズマによる加熱と被切断物の酸化燃焼反応による燃焼熱で被切断物を局所的に溶融させ溶断する熱切断法の一つである。プラズマ切断は船舶・橋梁などの大型構造物の切断工程において多用されている。プラズマ切断の課題の一つに，陰極やノズルの長寿命化が挙げられる。アーク陰極点への高い熱流入により，陰極材料は溶融・蒸発し損耗する。陰極損耗低減によるトーチの長寿命化のために，トーチ内部における温度場を把握する必要がある。本報では，電流値を変更した場合のトーチ内でのアークプラズマの温度場，ガス流れ場，陰極表面の温度を数値電磁熱流体解析により求めた。

1-114

Ar/N₂ループ型誘導熱プラズマを用いたSi基板窒化度の窒素流量依存性

◎杉山祐樹・大関元紀・田中康規・中野裕介・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィー・リサーチ）

筆者らはこれまでに，熱プラズマによる大面積処理を目的として，ループ型誘導熱プラズマ(loop-ICTP) 装置を開発している。ループ型誘導熱プラズマは，ループ型石英容器を円型コイルで挟み込み，ループ面に垂直に高周波の交番磁界を印加して，プラズマを維持するものである。このloop-ICTP の下流に基板を設置すると，横方向に長い熱プラズマを基板に照射することができる。これまでに，Si 基板， SiC 基板およびTi 基板の酸化および窒化試験を行っており，O2 あるいはN2/H2 などの分子性ガスを導入した場合においてもloop-ICTP を維持できることを確認している。本検討では，本装置による窒化表面処理を対象とし，Si 基板表面窒化度合いの窒素流量依存性を検討した。

1-115

Ar/CH₄/H₂誘導熱プラズマを用いた単結晶ダイヤモンド膜成長における原料ガス流量の影響

◎加納直樹・畑 和史・田中康規・中野裕介・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）

本報告では，単結晶ダイヤモンド基板にAr/CH₄/H₂誘導熱プラズマを照射し，単結晶ダイヤモンド膜成長実験をおこなった。誘導熱プラズマ(ICTP)は，高温かつ熱容量が大きく，クリーンな反応場を生成できるという利点から，超高速材料プロセスへの応用が期待されている。筆者らは，このICTP をダイヤモンド膜成長に応用することを考えている。今回，原料ガスであるCH₄/H₂の総流量を混合比CH₄:H₂=1:100一定のもとで変更し，ダイヤモンド膜成長に及ぼす影響を検討した。その結果，原料ガス流量を増加させた場合においてダイヤモンド膜がより高速に成長することが示唆された。

1-116

アブレーションアークの電磁熱流体解析における H₂O含有ポリマー混合物質の配置表現法の提案

○柴山正雄・中野裕介・田中康規・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）

低圧遮断器の消弧に樹脂の溶発が用いられているが，筆者らはH₂Oを検討している。H₂Oを，保水性能を有するポリアクリル酸PAAに吸水させゲルとする。このH₂O含有PAAゲルの消弧性能を明らかにするため，ゲルの溶発を伴うアークモデルが必要である。このアークモデルは溶発物質が2物質となる。本報告では2物質を扱う方法として2つの方法を比較検討した。一つは，H₂O含有PAA を混合された1種類の物質として溶発させるモデル。他はH₂OとPAA とを個別の2種類の物質として溶発させるモデルである。その結果，個別の溶発物質として取り扱い，これらを，交互に配置する方法の有効性を得たので報告する。

1-117

準大気圧直流ヘリウムアーク放電プラズマ生成と特性評価（II）

◎門脇和正・菊池祐介（兵庫県立大学）・青田達也・前中志郎・藤田和宜（ユメックス）・高村秀一（愛知工業大学/ユメックス）

タングステン（W）にヘリウム（He）プラズマを照射すると，W表面に繊維状ナノ構造が形成される。我々は準大気圧下の高密度Heアーク放電プラズマを用いて，繊維状ナノ構造を高速形成する技術を開発している。当初，ロングアーク生成が比較的容易な交流電源を用いていたが，プラズマパラメータが時間的に変動するため，結果の理解を困難なものとしていた。そこで，初期放電用の高電圧パルス電源と定常放電用の高速電力増幅器を組み合わせた放電回路を構築した。本稿では定常放電用電源を増強し，電極間距離35 mm，ガス圧力80 kPa，放電電圧108 V，電流16 Aの直流Heアーク放電を生成した結果を中心に報告する。

1-118

CO2/C2F6ガス吹付けアーク減衰過程の電磁熱流体解析

◎出村文俊・出村雄樹・田中康規・中野裕介・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

高電圧ガス遮断器において消弧ガスとして現在，SF6ガスが用いられている。このSF6ガスの使用量・排出量規制に向けた代替ガスの研究が進んでいる。欧州では，パーフルオロケトン(PFK)やパーフルオロニトリル(PFN)と，CO2との混合ガスを消弧ガスとして使用することが検討されている。一方これまでの筆者らの共同研究において，SF6ガスでは分子解離に伴う大きな質量密度変化による乱流様構造の形成が，遮断性能の向上に影響することが示唆された。本検討では，SF6と同程度の分子量をもち，C，Fから構成されるC2F6およびCO2/C2F6混合ガスアークに対し，フリーリカバリ状態におけるアーク減衰過程の数値解析を行った。

1-119

変調型Ar/CH₄/H₂誘導熱プラズマ照射により生成する多結晶ダイヤモンド膜に対する原料ガス導入位置の影響

◎畑 和史・加納直樹・田中康規・中野裕介・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

本報告では，変調誘導熱プラズマ照射による多結晶ダイヤモンド膜生成に対して, 原料ガス導入位置の影響を調査した。誘導熱プラズマ(ICTP)は，高温かつ熱容量が大きく，クリーンな反応場を生成できるという利点から，筆者らはこれをダイヤモンド膜生成に応用することを考えている。原料ガス導入位置の変更により, 原料ガスの解離度および基板に照射される粒子束が変化することが考えられる。本報告では, 3通りの原料ガス導入位置条件でSi基板に熱プラズマを照射し, 堆積膜を評価した。その結果，原料ガス導入位置が基板からより遠い条件が比較的高生成レートでより良質な多結晶ダイヤモンド膜が生成されることが示唆された。

1-120

タンデム型変調誘導熱プラズマを用いたFe3+-doped TiO2ナノ粒子生成における下段コイル電流のデューティ比の影響

◎古川颯大・隠田一輝・明石恵太・田中康規・中野裕介・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

誘導熱プラズマ(ICTP) は，その高いガス温度，高い化学反応性，クリーンな反応場の特徴から，ナノ粒子生成などの材料処理分野への応用が期待される．擾乱に対する不安定性，材料の大量処理化などの課題に対し，筆者らはタンデム型変調ICTP装置を開発した．タンデム型変調ICTPの下段コイル電流は，シングル型のものより大きく変動させることができ，ナノ粒子の大量生成に適する。この下段コイル電流のDFは熱プラズマの温度・流速に大きく影響するため，生成されるナノ粒子の粒径制御に重要と考えられる．本検討では，下段コイル電流変調のデューティ比（DF）を変更し，Fe3 + -doped TiO2ナノ粒子の生成実験を行った．

1-121

表面改質の大面積化に向けたレーストラック型誘導熱プラズマ装置の開発

◎大関元紀・杉山祐樹・田中康規・中野裕介・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィ・リサーチ）

筆者らはこれまでに，熱プラズマによる材料の大面積処理を目的として，ループ型誘導熱プラズマ(loop-ICTP) 装置を開発してきた。ループ型誘導熱プラズマは，ループ型石英容器を円型コイルで挟み込み，ループ面に垂直に高周波の交番磁界を印加して，プラズマを維持するものである。このループ型誘導熱プラズマ(ICTP) をさらなる大面積での表面改質に適用するためには，プラズマの安定性および一様性を向上させることが挙げられる。この目的のために，筆者らはレーストラック型トーチを新たに開発した。本検討では，開発したレーストラック型ICTP のプラズマ維持試験を行い，生成したAr プラズマおよびAr/N2 プラズマの安定性の検証をした。

1-122

変調型誘導熱プラズマを用いたSi/Cナノ粒子粒径への QG間歇導入位相依存性

◎明石恵太・隠田一輝・古川颯大・田中康規・中野裕介・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

現在，リチウムイオン電池(LIB) の負極材料として高容量を持つSiが注目されている．Siを用いたLIBの低サイクル寿命および低導電性の課題に対し，Si粒子表面にCを担持あるいはコートさせたSi/Cナノ粒子による解決策が考えられる．筆者らはこれまでに，パルス変調型誘導熱プラズマ(PMITP) および原料間歇供給(TCFF) を用いたSi/Cナノ粒子の大量生成に成功している(1)．本検討では，このPMITP+TCFFに加え，炭素源および冷却ガス(QG)としてAr とCH4を間歇導入する手法を検討した．コイル電流位相に対しQG導入位相差を様々に設定することで，時空間的に形成される変動温度場を変更し，生成されるSi/Cナノ粒子の組成および粒径に与える影響を調べた．

1-123

回転電極型の誘電体バリア放電装置を用いたポリエチレン粉体の表面処理効果の検討

◎木村拓磨・Paw Naw Rutha・石島達夫・田中康規・上杉喜彦・中野祐介（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

粉体材料は、産業において出発原料や製品として幅広く利用されている。この粉体材料をプラズマによって表面処理することで、表面へ親水性を付与することができる。本研究の目的は、回転電極型誘電体バリア放電装置(RE-DBDR)を用いたPE粉体の高速・高効率親水化処理である。本装置を用いたプラズマ照射による親水性効果の付与処理を導入ガスと処理時間を変化させ検討した。親水性の評価方法の1つとして液滴接触角の計測を用いた。結果としてプラズマ照射を行っていない粉体の液滴接触角は120°程度であるのに対しプラズマ照射を行った粉体は液滴接触角が90°程度まで減少する結果を得た。この結果より、プラズマ照射による親水性の向上が確認できた。

1-124

大気圧誘電体バリア放電を用いた窒化マグネシウム合成条件による影響

◎清水健人（東京工業大学）

近年、エネルギー貯蔵物質として、水素に注目が集まっている。しかし、水素を貯蔵する方法に問題があり、他の物質を検討する必要があるとされている。そこで、我々は、水と容易に反応して、有望なアンモニアを生成する窒化マグネシウムに注目した。我々は、バリア放電を用いて酸化マグネシウムの窒化を行うことで窒化マグネシウムの生成を行ってきた。しかし、反応経路が不明瞭であり、窒化処理量が微量である。それは、酸化マグネシウムには大気中の二酸化炭素が吸着しており、微量だが、炭酸マグネシウムが生成している。そこで、我々は、炭酸マグネシウムを使用して、窒化マグネシウムを生成し、炭酸マグネシウムの影響が少ないことがわかった。

1-125

マイクロ波励起大気圧プラズマジェットによる酸化イットリウムの製膜法の開発

◎田中島 優・石島達夫・田中康規・上杉喜彦・中野裕介・當麻哲也・大道拓人（金沢大学）

現在，半導体製造装置内壁のコーティング材料として耐腐食性，耐プラズマ性に優れた酸化イットリウム(Y2O3)が注目されている。本研究ではマイクロ波励起大気圧プラズマジェット(MW-APPJ)を用いた新規Y2O3製膜法の開発を目指す。Y2O3含有の前駆体材料を気化させ，プラズマ生成用のArガスに導入した。気化した前駆体をプラズマジェットと作用させ，基板に吹き付けることで製膜する手法を検討した。石英ガラスに対して製膜実験を行った結果、石英ガラス上に白い結晶が堆積した。堆積膜に対してSEM、XPSを用いて表面の分析を行った。XPS分析結果より石英ガラス上の堆積膜はY-O結合を有していることが分かる。このことはMW-APPJを用いて生成された堆積膜がY2O3であることを示唆している。

1-126

準大気圧高繰り返しナノ秒パルスグロー放電を用いた DLC 成膜（II）

◎井岡克也・菊池祐介・平野 涼・八束充保（兵庫県立大学）

DLCは高硬度，絶縁性などの優れた特性を有し，表面コーティング等に利用されている。従来技術では，低ガス圧プラズマCVD法を用いて成膜が行われているため，成膜レートが低いことが課題となっていることから，準大気圧・大気圧プラズマを用いた高速DLC成膜が期待されている。これまで，ガス圧1.2 kPaの準大気圧領域でDLC成膜を行ったところ，硬度13 GPa，成膜レート0.22 μm/min を得ている。本研究では，成膜メカニズムの解明と膜質の制御を目的とし，プロセスガスの窒素ガス混合率をパラメータとして成膜実験を行った。その結果，窒素ガス混合率の増加に伴い，膜質及び硬度の変化が確認された。

1-127

経皮ドラッグデリバリーに向けた大気圧マイクロプラズマによる皮膚処理の研究

青島知道・ヤハヤアハマド グジ・ムスタファファリハ・クリストフヤロスラブ・ブラジャンマリウス・○清水一男（静岡大学）

薬剤の経皮投与法は血中薬剤濃度の安定や初回通過効果の回避など利点を持つが，一般的に使用可能な薬剤は500Da以下の小分子，および親油性の薬剤に限られる．マイクロニードルやエレクトロポレーションなどの経皮吸収の促進手法は適応薬剤の条件を拡大するが，施術に伴う痛みと皮膚へのダメージが懸念される．大気圧マイクロプラズマ照射による表面処理は，痛みがなく低侵襲であり他の経皮吸収手法の代替手段となることが期待される．本研究では，低濃度オゾン条件の大気圧マイクロプラズマの照射をブタ皮膚に行ったところ， 43％の接触角の減少が認められた．低濃度オゾン条件において一定の皮膚処理能が得られた．

1-128

高電界型電気集塵装置におけるカーボンブラックの集塵

◎石塚大貴・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・金子貴之（富士電機）

電気集塵装置(ESP)は集塵性能が高く、工場などの排ガス、道路トンネル内などの空気を浄化するために広く利用されている。しかし、省エネ化の観点で改良の余地が残る。 ESPにおける電力消費の主な要因は、コロナ放電を利用していることにある。そこで、著者らは電界のみで捕集する新たな集塵方式を考案し、大気塵を用いてその効果を明らかにしてきた。 本研究では、ディーゼル排ガス微粒子の除去を想定し、カーボンブラック(CB)を用いて集塵性能を検討した。 その結果、電極長150 mm、電極間隔5 mm、電極間風速1 m/sのとき、63 %の集じん率が得られた。このとき電極間に流れる電流は検出限界の0.01 µA以下であり、単位流量当たりの消費電力は、0.49 W/(m3/s)以下であった。

1-129

超音波霧化を用いた帯電水滴による線香煙の集塵

◎矢澤拓海・安本浩二・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）

本研究では、超音波霧化器を用いて帯電水滴を発生させ、線香煙に対する集塵効果を検討した。実験装置は煙発生装置、霧化部、ファンによって構成し、ダクト内の風速を約0.5 m/sに調節した。高電圧印加用リング電極に、最大15.0 kVの正極性直流電圧を印加し、超音波霧化器によって帯電水滴を発生させた。その結果、リング電圧15 kVでは61 %の集塵率となり、0 kV時と比較し約50 ポイントの集塵性能の向上が得られた。これは、霧化水滴の帯電量が増加し、線香煙と凝集しやすくなったためと考えられる。

1-130

単一パルス放電を用いた電気集塵装置内の粒子挙動解析

◎袁 振東・江原由泰（東京都市大学）

電気集塵装置(ESP)は高集塵率・低圧力損失などの利点がある。しかしながら舶用のディーゼルエンジンからの排出ガス温度は高いため,従来のコロナ放電方式では放電が不安定となり，スパークオーバーといった問題が発生している。このことは，電気集塵装置及び集塵効率に大きく影響しており，実用化が難しくなっている。この問題の解決策の一つとしては，帯電部の電圧波形にパルス放電を用いて，その立ち下がりの特性を利用し，スパークオーバーを回避することである。 本研究では，パルス放電を用いた電気集塵装置内の粒子挙動に着目し，パルス放電特性及び1パルス当たりの粒子移動速度について検討した。

1-131

パルス放電を用いた電気集塵装置内のシミュレーション解析

◎杉山 諒・江原由泰（東京都市大学）

近年，深刻化する大気汚染の原因となる舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物，粒子状物質(PM: particulate matter)などを除去するために，電気集塵装置が注目されている。舶用ディーゼルエンジンの排ガスは高温であるが，従来の直流コロナ放電では高温下では安定して放電せず，すぐにスパークしてしまうといった課題がある。この対策として本研究ではパルス放電を用いることを提案している。パルス放電を用いることにより，高温下でも安定して放電できることが期待される。本稿ではこのパルス放電を用いた電気集塵装置内のシミュレーション解析結果について報告する。

1-132

パルス放電型の電気集塵装置内の粒子速度解析

袁 振東・江原由泰・◎大久保 旬（東京都市大学）

電気集塵装置は他の浄化装置に比べて，高濃度粒子の集塵率が高い，圧力損失が小さい，保守が容易などの利点がある。電気集塵装置の集塵効率には電気集塵装置内部の粒子挙動が深く関わっており，ESP内の粒子挙動と集塵率の明確な関係の解明が期待されている。また，高温，排ガス状況下での集塵率確保に必要な安定コロナ放電が困難であり，放電安定領域が狭いことが現状の課題として挙げられる。その解決策の一つとしてパルス放電に着目した。パルス放電を用いる事でスパークオーバーを回避し，放電安定領域が広がる事が知られている。 本研究ではパルス放電を適用した，電気集塵装置内部の粒子速度の解析を行った。

1-133

ブラシ状電極を用いた電気集塵システムの開発

◎南雲幹太・袁 振東・江原由泰（東京都市大学）・永吉健太郎・栗田加奈絵（富士通ゼネラル研究所）

電気集塵装置は高集塵率かつ，広範囲の粒子を捕集することが可能である。 ESPを室内用の空気清浄機に適用する場合，オゾンが発生しないことが望ましい。本研究では低オゾンESPを目指し，イオナイザなどに用いられているブラシ形状電極を採用し電気集塵システムを構築した。 初期特性としてブラシ電極の電流電圧特性、風速1m/sの大気塵における集塵性能、オゾン濃度の測定を行った。 電流値の増加により集塵率は増加した。放電電流41µAにおいて，約60％の集塵率を得た。 また，オゾン濃度は41μAにおいて0.03ppmとなり，それ以下の放電電流では，計測限界以下であった。

1-134

エアブラスト冷解凍イオン風の増速

○加藤正平・平瀬裕子（東洋大学）

イオン風の発生をエネルギー変換と考え、イオン風の増速化を電圧（電界）と電流の増加から考えた。エアブラスト冷解凍法として使用するイオン風の増速化のために、複数の電極ユニットを使用する方法と電界を制御する方法を検討した。その結果、イオン風でもエアブラスト冷解凍に必要な数m/sの風速が20kV以下の高電圧で得られることが明らかになった。

1-135

コロナ放電状態における針電極構成の影響

◎吉野明梨・江原由泰（東京都市大学）

電気集塵装置に利用されているコロナ放電は，雰囲気条件や電極の形状・材質等に影響されることがわかっている。そこで電気集塵装置を模擬した針―平板電極に正の直流電圧を印加し，放電電流の測定と，放電発光の観測を行い，その設置状態が放電特性に及ぼす影響について検討した。 針を平板に対して垂直方向に固定したものと，平板に対して水平方向に固定したもの，それぞれで測定を行った。 比較的低い電圧範囲では，垂直構成は水平構成に比べ，放電電流特性が良いことが分かった。しかし，垂直構成では，水平構成に比べ，スパーク電圧が低いことが確認できた。よって，一段式電気集塵装置では，水平構成が有効であることが示唆された。