一般講演

3-120

三次元誘電泳動デバイスにおける細胞分離特性の基礎検証

◎宮向秀緒・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）・円城寺隆治・脇坂嘉一・高野雅代（AFIテクノロジー）

誘電泳動（DEP）は不均一電界中にある誘電体微粒子をクーロン力で移動させる技術で、粒子の電気特性の違いで分離可能なため、生体細胞の高効率な分離手法として期待できる。しかし、DEP力は電極近傍でのみ効率的に働くため、従来の平面電極では分離処理量が低いという問題点を抱えていた。そこで、処理量の増加させるために立体的な微小円柱を電極として用いた三次元デバイスを試作した。デバイスの細胞分離性能をポリスチレン粒子とJurkat細胞の混合懸濁液を用いた実験で検証した結果、Jurkat細胞とポリスチレン粒子の分離距離に大きな差が生じ、本デバイスが粒子の電気特性の違いによる分離が可能であることが示された。

3-121

誘電泳動速度計測によるがん細胞の状態評価法の基礎検討

◎郭 宇桐・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）・円城寺隆治・脇坂嘉一・高野雅代（AFIテクノロジー）

近年,医療科学の発展に伴い,様々ながん治療技術が飛躍的に進歩している.一方で，治療の前段階においては,がん増殖状態の早期検出が必要となる. 本報では,がん特性計測システム開発の基礎的段階で, がん細胞のモデルとしてJurkat細胞を用い, 速度計測による迅速な細胞状態評価法の確立を目的とした.二乗電界勾配,粒子径及び印加電圧周波数とDEP速度の相関を検証した.二乗電界勾配の増加に伴い,誘電泳動速度が線形的に増加することが確認できた.また,周波数に依らず粒子径二乗の増加に伴ってDEP速度は線形的に増加することも確認できた.さらに,周波数を500 kHzに選定すると,Jurkat細胞のDEP平均速度が最大となることが分かった.

3-122

細胞の呼吸活性測定用デバイスとその応用

◎薛 安汝・佐藤達哉・朴 善浩・鈴木博章（筑波大学）・木下 学（防衛医科大学）

近年、微量なサンプルや試薬を用いて細胞の呼吸活性を測定する必要性が増加しており、演者らのグループでも、大腸菌の呼吸活性の変化から好中球の殺菌活性を測定するストレス診断デバイスを報告してきた。演者らは、ここで用いる微小クラーク型酸素電極の改良を段階的に進めてきた。今回は、このデバイスを用いて微生物の抗生物質耐性を調べた。その結果について報告する。

3-123

Transport Characteristic of High Surface Tension Liquid Through Picolitre Dispenser

◎ニックスフィ・パンディグアラブ・ロヒットブハルトワジ・鹿毛あずさ・柴田隆行・永井萌土（豊橋技術科学大学）

Previously, inkjet methods have been used to place pL-droplets on a well plate, but the inkjet methods have few limitations. Our research group has presented an idea of a picolitre-dispenser which consists of a microwell plate and micronozzle array. We found that ejection did not occur only by pressurization on nozzles. This research focuses on transport system of liquid inside a nozzle array, so that we can design a new improved nozzle array to support better ejection. This study will lead to the placement of liquid on well plates.

3-124

カリウムイオンイメージセンサ用ゾルゲルガラス感応膜のCMOSプロセスの適合性の検証

◎阪本宏太朗・川崎健吾（豊橋技術科学大学）・堀尾智子（豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究所）・高橋一浩・野田俊彦・服部敏明・澤田和明（豊橋技術科学大学）

本研究室では、細胞外の水素濃度分布をイメージングできるpHイメージセンサの開発を行ってきた。センサ上にK+感受性膜を成膜することで、同様に細胞や組織のK+濃度分布のイメージングが可能である。現在、生体適合材料であるゾルゲルガラスを用いたK+感応膜が注目されている。しかしセンサの微細化に対応するためには半導体プロセスに適合する必要があり、イオン感応膜の耐熱性や均一な薄膜化が求められる。そこで本研究では、ゾルゲル膜をスピンコートしベーク温度を上げて成膜をすることで、高精細K+イメージセンサを作製・検証することで耐熱性があり薄膜のゾルゲルガラス感応膜を作製し、半導体プロセス適合性をもつことが確認された。

3-125

人工視覚用ハニカム型-CMOS スマート電極アレイの実装工程の最適化

○福成由基・遠藤広基・春田牧人（奈良先端科学技術大学院大学）・寺澤靖雄（ニデック）・竹原浩成（奈良先端科学技術大学院大学）・田代洋行（九州大学）・笹川清隆・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

近年、長期埋植が可能な人工視覚デバイスが求められている。そのため、本研究では生体内で長期埋植が可能なセラミック基板を用いた人工視覚デバイスの開発を行っている。このデバイスは六角形の単位モジュールをアレイ状に配置することで、デバイスが眼球にフィットできるフレキシブルな構造を採用している。今回はセラミック基板を用いた人工視覚用ハニカム型CMOSスマート電極アレイの実装工程の最適化を行った。実装の際にセラミック基板を正確にアレイ状に配置し、薄膜配線によって単位モジュール間を接続する必要がある。そのため、配置方法の改善および配線プロセスを最適化することにより、デバイス実装効率の向上を目指した。

3-126

脳機能イメージング用角度選択画素搭載CMOSイメージセンサの特性改善

◎杉江謙治・笹川清隆・Mark Guint・竹原浩成・春田牧人（奈良先端科学技術大学院大学）・徳田 崇（東京工業大学）・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

超小型の生体埋植CMOSイメージセンサによって自由行動下マウスの脳機能イメージングが可能である．このセンサはレンズレス構造であるため，観察対象の距離と共に空間分解能は劣化する．本研究では斜め入射光を選択的に検出可能な角度選択画素搭載CMOSイメージセンサによる画像復元時の分解能の改善を目指して，垂直入射光成分の選択性を高めたセンサを試作した．画素アレイを構成する通常画素の開口部に金属層とビアを使用することで垂直入射光の選択性を高め，周囲の角度選択画素へ及ぼすクロストークの影響を抑えた．クロストークによるアーティファクトを減少させることにより，復元画像の分解能の改善が期待される．

3-127

げっ歯類・マカクザル脳用刺入型光刺激デバイスの作製と評価

◎長谷川真菜・川崎祐久・長沼京介・太田安美・竹原浩成・春田牧人・笹川清隆・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

オプトジェネティクスとは、神経細胞にChR2やChrimsonRなどの光感受性タンパク質を導入し、刺激によって神経活動を制御する技術である。しかし、この技術を霊長類へ応用する場合、既存の光ファイバを用いた光刺激方法では刺激範囲が狭く行動の変容に至らないという課題がある。本研究では、脳深部かつ広範囲の光刺激を目的としたμ-LED搭載デバイスを試作した。 試作デバイスの光刺激性能の評価として、光刺激によって誘発されるマウス脳内のドーパミン（DA）濃度変化をマイクロダイアリシス法で測定した。光刺激をした結果、刺激部位（腹側被蓋野）にあるDAニューロンの投射先（前頭前野）でDA濃度の増加を確認した。試作した光刺激デバイスが霊長類を用いたオプトジェネティクス実験に利用可能であることを示した。

3-128

1 mm3 埋植型光刺激デバイス用光電力伝送チップ

◎パクプワドンタネト・ウチベンジャポンチャイナッタカン・春田牧人（奈良先端科学技術大学院大学）・野田俊彦（豊橋技術科学大学）・笹川清隆（奈良先端科学技術大学院大学）・徳田 崇（東京工業大学）・竹原浩成・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

This research aims to develop a wireless power supply plat-form for ultra-small devices. We developed a CMOS-integrated optical power receiver chip that can generate electrical energy, which is enough for operating a small device. This time, the chip was applied to an implantable optogenetic stimulator. Optogenetics is a technology with which light-sensitive neural cells are realized utilizing genetics. We succeeded to realize a battery-less, implantable stimulator. With on-chip integrated photovoltaic (PV) cells, CMOS-based optical energy harvesting was achieved.

3-129

Wireless Attachable Health-monitoring Devices Operated by Optical Power Transfer

◎ウチベンジャポンチャイナッタカン・春田牧人・笹川清隆（奈良先端科学技術大学院大学）・徳田 崇（東京工業大学）・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

Wireless epidermal attachable devices attract interests and expectations as a tool for personalized, low-cost health monitoring technology. This work uses a glucose sensor as an example to develop a wireless attachable health monitoring device. The device consists of two functional parts: an optical power transfer and a functional part. The operation starts when the optical power transfer part accumulates power and supplies the power to the functional part. The functional part controls the oxidation voltage and measures a faraday current from the noninvasive sensor and displays the measured data by a LED. The device was successfully designed and evaluated.

3-130

有限要素法による経上皮電気抵抗値と測定誤差の電極パターン依存性の解析

◎宮崎貴史・平井義和・亀井謙一郎・土屋智由・田畑 修（京都大学）

経上皮電気抵抗（TEER）は、細胞単層のバリア機能を非侵襲、非標識かつリアルタイムに測定可能な指標であり、創薬スクリーニングにおける重要な評価項目である。しかし、デバイス構成によって、同一の細胞種を用いても測定値が異なるという問題が指摘されている。そこで、マイクロ流体デバイスでの正確なTEER測定を目的に、有限要素法による電流密度分布解析を行い、測定精度に関する指標である感度分布とインピーダンス測定結果から算出されるTEER値を比較した。その結果、TEER測定値が電極形状に依存し、感度変動を小さくすると測定誤差が低減されることを解析的に示した。

3-131

マイクロ配列電極を用いた局所増感型水晶発振回路式複素容量センサの開発

◎橋本祐希・灰野貴晶・寒川雅之・安部 隆（新潟大学）

本研究では、16 MHzの水晶振動子を使用したマイクロ配列電極からなる浮遊電極を平面展開した電極対上に配置し、局所増感と電極上での感度の均一性の向上を図った。駆動電極対の形状はディスクとリングの組み合わせとした。浮遊電極の電極パターンは、マイクロ配列電極があるものとないものを作製した。電極上に純粋を満たした1辺3 mmの正方形のシリコーン製セルを置いた時の周波数応答を様々な電極について評価した。結果、均一性の観点で見ると、マイクロ配列電極を使用した場合の応答値は各セルで近い値となり、均一性が改善した。以上の結果から、マイクロ配列電極からなる浮遊電極を用いることによって局所増感と電極上での感度の均一性の向上が可能となった。

3-132

多孔質TiO₂光電極を用いた水分解リアクターの高効率化

◎佐伯 翔・山本健輔・小林大造（立命館大学）

水の電気分解を利用した水素生成は小型な燃料電池や相変化を用いた圧力源などの応用が報告されている。TiO₂の光触媒反応を利用することで、水の電気分解と比べて低い印加電圧でも水素生成が得られる。光電池を用いてTiO₂光触媒へ電圧印加を行うことで、光照射のみでの水素生成がこれまでに報告されている。前述の水分解リアクターでは、スパッタ製膜した平滑なTiO₂薄膜を光電極として用いた。ゾルゲル法で得られた多孔質TiO₂薄膜を用いることで表面積を増加し、水素生成効率の向上を試みた。

3-133

リンゴ果汁の糖度・酸度と果肉複素比誘電率との相関

◎村山祐樹・阿部一誠・中野冬偉・三浦健司・村田健太郎・本間尚樹（岩手大学）

マイクロ波センサによる果実の遠隔非破壊品質評価手法を実現する上で把握が不可欠である果実の誘電率と糖度の相関について6品種のリンゴ（シナノゴールド、サンふじ、はるか、紅玉、王林、むつ）を対象に測定を行った。同軸管法でリンゴ果肉のマイクロ波帯複素誘電率を計測し、圧搾して得た果汁から糖度・酸度計を用いて糖度（Brix値）、酸度を測定した。その結果、測定した4部位（果皮付近、心皮付近、上部、下部）すべてにおいて、高糖度ほど誘電率実部の値が減少する負の相関が認められた。他の品種においても糖度や誘電率実部の平均値は品種ごとに差異が存在し、信頼楕円の大きさも異なっていたが、おおよそ負の相関を確認した。

3-134

放射線治療用ガンマ線検出システム

◎横山万緒・木村 慧・神田健介・藤田孝之・前中一介（兵庫県立大学）

放射線治療において，治療の安全を確保するため，ガンマ線の照射量をリアルタイムに検出することが強く求められている。本研究では，ガンマ線照射による温度上昇をMEMSバイメタルの変位によって検出することで間接的に照射量を検出するMEMSセンサの設計を行なった。感度とサイズは相反の関係にあるため，適切な構造を確認することを目的にバイメタルの直径を125 μm，900 μm，2 mmの3種設計し，それぞれ1 ℃変化あたり3.95 nm，0.731 μm，0.131 μm変位する。デバイス全体直径3 mmのデバイスで分解能0.01 ℃程度が得られることが期待される。

3-135

光学式ほこりセンサによる浮遊した砂塵の測定

◎宮下奏一郎・渡辺誠一・浅沼和志（長野工業高等専門学校）

長野県松本盆地南西部では，毎年1月から5月頃にかけて農地の土壌が飛散して砂塵が発生する。これにより，交通への障害や住民の健康への影響などが懸念される。砂塵の抑制については農家個人や地元自治体，農協などによって対策が検討されており，寒天の製造過程で出る搾りカスと米ヌカの混合物で農地を被覆する試みも行われている。本研究では，廉価な光学式ほこりセンサとマイコンを用いて砂塵の発生状況を即時に住民に知らせることのできるシステムの構築を目指している。本稿では，砂塵濃度計測システムの概要と，現地における測定結果について述べる。

3-136

圧電ダイアフラム型マイクロ超音波センサの下部電極引張力による高感度化座屈撓み制御

◎西川顕史・清田元一郎・山下 馨（京都工芸繊維大学）

ダイアフラム型圧電MEMS超音波センサを高感度化するための座屈撓み形状について，下部電極Pt膜の引張力により制御することを検討した。Ptの膜厚を変えてウェハの反りを測定することからPt膜の引張応力を算出し，現状の設計から膜厚を薄くすることにより最大で50%程度撓みを増大できることがわかった。

3-137

液体有機半導体を含有する伸縮性薄膜の作製

◎橋本賢弥・野村拓哉（法政大学）・大島寿郎（日産化学）・水野 潤（早稲田大学）・笠原崇史（法政大学）

本研究では、伸縮性ディスプレイの創生に向け、アクリルエラストマーと液状ピレン誘導体とを融合した伸縮性発光材料を調製し、2枚の透明電極付きガラス基板で当該材料を挟んだ有機ELを作製した。調製した材料は、もとの長さの約3倍の伸縮性を有し、スピンコート法により薄膜形成した発光層は直流電圧110V印加で最大ピーク波長が500nmの青緑色のEL発光を示した。これは、正孔および電子が発光層に注入され、液状ピレン誘導体分子上で再結合したことを示しており、調製した伸縮性膜が発光材料として機能していると結論付けられる。

3-138

タフMEMSのための絶縁層を有するチタン基板の開発

◎守屋赳利・長谷川穂高・佐々木朋裕・寒川雅之・安部 隆（新潟大学）

本研究では、Tiとガラス(Ti/PDMS/Glass板)あるいはTiとTiを柔軟な材料であるPDMSを介して接合した基板(TOI、Titanium-On-Insulator)を考案し、試作と評価を行った。評価は引張試験で行い、ヘキサンで薄層化したPDMSを被覆した場合とプラズマ処理をした場合について、その接合力への影響を検討した。 結果、Ti/PDMS/Glass板については、プラズマ処理を有した方が把持部のガラスが先に破断するほどの強度を示した。TOIについてもプラズマ処理を行い、薄層化したPDMSを塗布後にPDMS膜で接合した場合は、Tiが先に破断するほどの強固な接合を示した。これより、本研究で考案したPDMSを用いた接合法は、タフなセンサ・アクチュエータ(タフMEMS)用の絶縁層を有する基板の作製に適していることが示された。

3-139

ボンディングワイヤのUV硬化樹脂封止によるMEMS触覚センサの耐久性向上

◎高橋佑司・高橋拓海・安部 隆（新潟大学）・野間春生（立命館大学）・寒川雅之（新潟大学）

本研究では、MEMS触覚センサの耐久性向上のため、PDMSより高硬度のUV硬化樹脂を用いて配線接続部の保護を行い、垂直荷重に対するセンサの応答および耐久性を従来のセンサと比較した。荷重に対する本センサの応答に関しては、従来のセンサとほぼ同等の応答を示したことから、配線接続部における保護樹脂の有無による影響はほぼないと見られる。配線接続部の耐久性に関しては、PDMSで封止された従来のセンサでは過大な荷重がかかった際、短絡による著しい抵抗の低下が見られた。一方、UV硬化樹脂を用いて配線接続部を保護した本センサでは、このような現象が起きないため、より高い荷重への耐性を持つことが示された。

3-140

フォトリソグラフィ一括加工した微細パターン付き圧延ロールによるアルミ板の表面処理

弓削英翔・鈴木大瑛・○佐々木 実（豊田工業大学）

新しい三次元フォトリソグラフィ技術により、圧延ロール円筒面にリングパターンのアレイを微細加工した。新手法では、平面として扱えるシート状にてレジスト膜を用意するため、平面基板を想定するフォトリソグラフィ装置をそのまま利用できる上、マスクとレジスト膜を密着させて露光を済ますため、微細パターンの形成に適している。転写した形状は、従来のステンシルマスクではできないリング形状である上に、従来報告と比べて寸法がより微細であった。一括処理となる転写とウェットエッチングにより圧延ロールを加工した。ロール円筒面に尖った構造は見当たらなかった。形状転写されたアルミ板はむしれることなく、一様な艶消し面となった。

3-141

SOIウエハの内向面へのエレクトレット形成とMEMS静電アクチュエータ応用

◎佐野智華子・安宅 学（東京大学）・橋口 原（静岡大学）・年吉 洋（東京大学）

本報告では、SOIウエハの内向面にあたる、BOX層の厚みを介してシリコンが対向する部分に、エレクトレットを形成することに成功した。そして、電気機械特性の評価を通して、エレクトレットが対向電極との間に電位差を形成していることを確認した。この電位差はエレクトレット形成時に印加した－50 Vの電圧と同じ値であったため、帯電電圧を容易に制御できる有効なエレクトレット形成手法であり、マイクロスピーカー等、振動膜を有するMEMSアクチュエータに幅広く応用できる技術だと考える。

3-142

センサ・プラットフォームLSIを用いた近接・触覚センサモジュール開発とロボット実装

◎野本宗鷹・宮口 裕・邵 晨鍾・平野栄樹・室山真徳・田中秀治（東北大学）

現在開発が進められている社会性ロボットには,正確かつ安全な動作を行うために,全身分布型の触覚センサなどが求められる。そのために，省配線型のシリアル通信とイベントドリブン応答を可能とするLSIや，MEMSセンサを集積化した触覚センサデバイスなどを組み合わせた触覚センサネットワークシステムが提案されている。 ロボットが高速で安全に物体を把持するには接触前に物体の位置,角度を知る必要がある。しかし視覚センサのみでは死角による限界があるためそれを補助する近接センサが必要になる。本研究ではセンサ・プラットフォームLSIを利用した静電容量型近接・触覚センサアレイを作製,ロボットハンドに実装し,高速かつ安全な物体把持動作,そして触覚,近接センサから得られる情報を用いた把持物体識別の実証を行った。

3-143

パリレン常温真空封止を用いた静電容量式CMOS-MEMS圧力センサ

◎野口駿太・小松 聡（東京電機大学）

本研究ではサブミクロンの微細なパターンを形成できるCMOSプロセスを用いて静電容量式圧力センサを設計し、ポストプロセスによってセンサを製作する。真空封止にはパリレンを用いて室温で成膜することでLSIとの親和性が高いCMOS-MEMS圧力センサを製作する。設計には0.8µm CMOSプロセスを採用し、従来研究で使用された0.18µm CMOSプロセスよりも旧世代プロセスを用いることで安価な設計・製造手法を提案する。製作したセンサは40～100kPaの圧力範囲で感度は15.8 fF/kPa、非直線性誤差は±1.80%となった。今後はCV変換回路と圧力センサを集積させた集積化MEMSの評価を行う。

3-144

低消費電力バイタルモニタのためのモノリシック集積回路の開発

◎北田友嗣・嶋田倫太郎・藤原 潤・神田健介・藤田孝之・前中一介（兵庫県立大学）

本研究室では小型・省電力の貼付け型生体モニタリングシステムの研究・開発を行ってきた。先行研究では，心電や身体加速度を測定して特徴量を算出するASIC，生体モニタリングシステムに特化したペリフェラル構成を持つMPUの開発を行った。また，それらを統合した”D4CORE”を開発し，FPGAを用いて動作検証を行った結果，汎用部品で構築した従来システムと同等の機能を持ちながら10倍の駆動時間を実現した。本研究では，先行研究にて開発した要素回路を全て1つのICチップに集積して評価を行ない，その全てが正常に動作することを確認した。これにより，小型化・量産性向上を目的としたシステムのモノリシック集積の実現性が示された。

3-145

咬合圧を利用したBLEマウスガード型コントローラーによる外部機器操作に関する研究

◎稲毛崇之・戸本佳祐・横田くみ・當麻浩二・荒川貴博・関田俊明・水口俊介・三林浩二（東京医科歯科大学）

四肢麻痺患者は運動障害等、日常生活に重大な制約を受ける。患者のQOL向上を目的に、四肢を用いずに外部端末の操作を行う研究が行われてきた。本研究は、口腔機能による外部機器操作を目的とし、最近開発したマウスガード(MG)型バイオセンサの技術を応用し、圧力センサとBLEを組み込んだMG型コントローラーを開発した。口腔ファントムを用いて一定圧力で咬合した結果、良好な応答性と再現性を示した。また、コントローラーのセンサ部を手指で押し、アプリケーション上のポインタを操作したところ、直後に移動した。以上の結果、咬合による機器操作の可能性が示された。今後はセンサ位置の最適化を行い、咬合力による外部機器操作を実現する。

3-146

触覚センサ付き細径ガイドプローブの開発

◎臼井達也・長谷川義大・谷口和弘・式田光宏（広島市立大学）

当研究室では慢性閉塞性肺疾患における早期診断を目的とし，肺内部でのその場計測を可能とするプローブ状流量センサを開発している．本センサでは，先ずシース（ガイドチューブとして機能）を湾曲した気管支内に挿入し，シース内にセンサを挿入することで，肺内部での呼吸を計測する．これまでの研究では，シースと光ファイバをタンデム実装し，画像情報をもとに気管支内にシースを挿入していたが，本研究では，挿入時の更なる安全性の向上を目的として，シースシステムと生体組織との接触を検知するドーム状弾性部と，純水と空気からなる力伝達機構、その接触力を計測する圧力計測部からなる触覚センサ付き細径ガイドプローブを提案・開発した．

3-147

銅箔製熱式フレキシブル流量センサの開発

◎若原拓海・長谷川義大・谷口和弘・式田光宏（広島市立大学）

本研究室では，これまでにMEMS材としてポリイミド膜に銅箔を積層した銅張積層板を基板材料とした流量センサの開発に取り組み，フレキシブルな形態での熱線流速計を開発してきた．しかし，熱線流速計と基板との間に設けた熱絶縁用空洞構造が使用基板により決定され，任意に設計することが難しいという課題があった．上記課題を解決することを目的とし本研究では，銅箔の表裏両面に感光性ポリイミドを塗布した感光性ポリイミド付き銅箔基板を用いることで，熱線流速計下部に熱絶縁用空洞構造を任意に設計可能な熱式流量センサ構造を新たに提案し，その加工プロセスを開発した．今後，作製したデバイスの特性評価を行う予定である．

3-148

新規触媒電子デバイスの開発-外部電場を用いた銀ナノワイヤ配向分散層の形成-

◎柳 麻理子・山口乃輝・佐藤知正・松木伸行（神奈川大学）

我々が提案している電子触媒デバイスにはナノワイヤ（NWs）の密度・位置・配向性の制御が重要である。本研究ではくし形Au電極付きガラス基板を用いて、NWs懸濁液を静電スプレー（ES）法により噴霧後、外部電場（DCまたはAC）を印加し基板上に堆積した懸濁液中で誘電泳動力を利用して密度及び配向の制御を試みた。DC電圧の場合、誘電泳動的な振る舞いに反して正電極端・面上共に大多数のNWsが付着したが負極側ではNWsは少なかった。対してAC電圧の場合、誘電泳動的な振る舞いであり両電極端に垂直に配向したNWsが存在していたが電極面上のNWs付着は少なかった。ギャップ間のNWsについては、AC電圧よりDC電圧の方が付着密度が多く、また配向しているNWsの割合も多かった。

3-149

軟質材料物体の把持に関する研究

◎臼田裕希・坂口晴哉・野々村 裕（名城大学）

適切な把持の実現を目指し、軟質材料物体の把持において発生する特殊な滑り現象の研究を行った。分銅をぶら下げたシリコン樹脂製の試料を試験機で把持し、把持間距離を微小に広げていくことで把持力が減少し、試料が滑り落ちるまでに把持部が受ける力を計測した。把持部の突起の数を増加させたセンサカバーを用いた実験により、円形突起の個数の増加に伴い、特殊な滑り特性を示す現象エネルギーが増大した。軟質材料の粘弾性に着目し、粘弾性測定実験を行った。測定で得た試料の粘性成分とバネ係数との関係、現象エネルギーとバネ係数の関係は良く似た傾向を示した。今後は、各種形状のセンサカバーの作製、測定により、滑り現象の解明を進める。

3-150

ダブルミラー構造を有する小型光散乱式センサーの粒子検出シミュレーションモデル検証

○中井賢也・榎 望（三菱電機）

大気中の微粒子を高精度に計測する小型の光散乱方式のセンサーを開発している。本センサーは、粒子の散乱光を効率的に受光素子に導く2枚の非球面ミラーを搭載した構成（ダブルミラー構成）を有する。本発表では、センサーの粒子検出特性を評価するための光学解析モデルを検証している。本解析モデルは、センサー内部にある検出領域での粒子の空間分布、ダブルミラーの粒子散乱光の検出効率の空間分布、照射光ビームのパワー密度分布、粒子サイズに応じたミー散乱光強度分布を考慮し、実際のセンサーで出力される検出波形を求める。センサー試作機の特性と比較し、本モデルの検証について報告する。

3-151

アンテナ特性の変化に着目した近接センシング技術に関する一検討

○清水 聡・栗原拓哉・鈴木義規（国際電気通信基礎技術研究所）・久保賢治郎・岩井誠人（同志社大学）

携帯電話などにおいて筐体内部に実装されるアンテナは、筐体も含めた空間を想定して設計が行われる。アンテナの周囲には物がない場合と特性が異なるためである。これは、アンテナ特性を観察すれば、その周囲の空間の変化が把握できる可能性があることを示している。 我々はアンテナのインピーダンスや共振周波数などの特性の変化を用いて、人体やその他の物体の存在を把握する近接センシング技術の検討を進めている。本報告では、本センサの特徴を従来の近接センサと比較するとともに、基本原理も示す。また、測定結果の一例も紹介する。

3-152

FDTD法による人体が近接する環境におけるパッチアンテナの共振特性の解析

○久保賢治郎・岩井誠人（同志社大学）・栗原拓哉・清水 聡・鈴木義規（国際電気通信基礎技術研究所）

アンテナのインピーダンスや共振周波数の変化を用いて人体やその他の物体の存在をセンシングする検討が進められている。本報告では、このような方法の実現可能性の基本検証を目的として、電磁界解析手法であるFDTD (Finite Difference Time Domain) 法を用いて、人体が近接する環境におけるアンテナの共振特性を解析した結果を報告する。

3-153

ロボット指実装用温力感センサヘッド設計のためのFEM熱解析

◎大橋祐也・森 遼雅・土屋駿斗（名城大学）・室山真徳（東北大学）・野々村 裕（名城大学）

ロボットに実装するための力、温度、熱流を同時に測定可能な温力感センサヘッドを研究・開発している。熱流検知を行うことで人間と同じように触れたものの材質を識別できるようになる。熱流速定時の特徴的な値として接触してすぐの熱流ピーク値と時間が経過した後の熱流飽和値が実験から得られている。ロボットには応答性の速さが求められるため熱流ピーク値を用いて材質判別を行えるようにしたい。熱過渡解析の結果からセンサヘッドの体積を0.5倍にすると熱流ピークの時間が約35％早くなった。この結果から温力感センサヘッドを小型化することで材質判別の応答性が短くなり、実装容易性も向上することがわかった。

3-154

ピット型誘電泳動デバイス内での粒子輸送における界面動電効果の影響

河嶋涼介・○内田 諭（首都大学東京）・西川宏之（芝浦工業大学）

近年、ナノ粒子をアセンブリした機能性デバイスの開発が注目されている。実際、金ナノ粒子を平面配置した場合では温度センサ、三次元積層した場合はバイオセンサとして利用されている。著者らは上記アセンブリ技術の確立を目途として、ピット型誘電泳動デバイスにおける金ナノ粒子の捕集実験を行ってきた。最適な条件を精査し効率的なアセンブリを行うには、液中現象の正確な理解が必要である。しかしながら、界面動電現象を含めた流体中の駆動力に対する粒子挙動の詳細なメカニズムは未だよく理解されていない。そこで本報では、詳細なメカニズムが解明されていない界面動電現象を考慮した粒子挙動を数値的に検証した。

3-155

金ナノ粒子の三次元アセンブリにおける誘電泳動および電気泳動の作用条件の検討

◎山元 健（首都大学東京）

近年、ナノ粒子のバルク材料とは異なった性質を利用したナノ・マイクロ構造体のセンサが注目されている。本研究グループでは、構造体作成におけるナノ粒子の操作方法として、誘電泳動法や電気泳動法に着目した。電気的パラメータのみで制御が容易な反面、媒質中の粒子には様々な力が作用し、理想の挙動が得られないことが問題として挙げられる。本報では、コロイド状金ナノ粒子をピット型電極に集積させる実験を行った。誘電泳動法と電気泳動法を交互に入れ替えることで、ナノ粒子に作用する力を選択した結果を提示する。適当な段階に支配的にするべき力を選択することで、粒子の挙動を制御することができた。段階的に粒子に作用する力を選択することでより効率的なアセンブリができるという可能性を示唆した。

3-156

IoTによる一人暮らし高齢者住宅の玄関管理

○森田二朗（神戸高専）・山下 香（状況設計室）・赤対秀明（神戸高専）

これまで高齢者住宅内のリビング，トイレ等にIoTセンサを取付け，反応情報を時系列データとしてグーグルシート(Google Spreadsheets）に書き込むことによって，高齢者の行動パターンを読み取れるシステムを構築してきた．カメラを使わずIoTセンサを使うことによって，プライバシーを守れるというメリットがある．今回は，高齢者が外出，帰宅時等の玄関管理情報をIoTセンサの組合せによって得ることが出来たので報告する．

3-157

イオン選択性膜によるバイポーラ電極上での反応制御

◎Chia Chien Wu・Nurul Asyikeen Ab Mutalib・露木 健・鈴木博章（筑波大学）

Bipolar electrochemistry uses isolated electrodes immersed in a solution. Unlike ordinary electroanalysis using the three-electrode system, an electrical field is intentionally generated in the electrolyte solution employing the Ohmic drop to generate interfacial potential differences at the anodic and cathodic poles. Electrochemiluminescence (ECL) is coupled with the reaction to be detected to obtain the information about redox reactions. A problem with this method is that the electrodes are electrically floating and the interfacial potential difference cannot be controlled intentionally. To solve this problem, we used an ion-selective membrane (ISM) formed on one part of each electrode.

3-158

誘電泳動集積を用いて作製したCNT/SnOセンサの集積時間によるNO₂検出特性の変化

◎小田剛士・河野雅紀・稲葉優文・中野道彦・末廣純也（九州大学）

我々は以前にNO2検出を目的として、CNT/SnO2混合懸濁液を電極間に滴下させ誘電泳動集積を行うことでCNT/SnO2複合ガスセンサを作製し、懸濁液濃度比の最適化を行った。しかし、この方法で作製したセンサは集積量が少なく、検出部の抵抗変化による応答が測定系の検出上限に到達する問題があった。そこで本論文では、集積状況の改善を目的として、懸濁液を一定流入させながら誘電泳動集積を行う手法をとり、集積時間によるセンサ応答の変化を調査した。溶液は滴下で作製した際に最も優れた応答を示した条件で調製し、集積時間は5分から2時間で変化させた。結果、集積時間1時間で十分な量の複合物を集積させることができた。

3-159

環境中VOCによるエナジーハーベスターの基礎検討

◎宮本靖也・佐々文洋・林 健司（九州大学）

現在のセンサネットワークの電源などの物理的原理を用いたエナジーハーベスターの欠点・課題を克服するため、新たなエネルギー供給源として環境中に存在するVOCガスに我々は注目した。 環境中のVOCガスから電力を取り出すための原理・構造を検討し、VOCガスの電力変換デバイスの作製を行い、飽和させたエタノールを用いて起電力を測定し、実現可能性の基礎検討を行った。 結果、想定した原理に基づいた動作を作製したデバイス上で確認することは困難であった。 デバイス表面に堆積させた触媒などの材料について改良の余地があると考えている。

3-160

Characterization of Quartz Crystal Microbalance with Viscous Sensing Film for Odor Sensing Application

ナソンクラサウィット・○中本高道（東京工業大学）

QCM based odor sensing based heavily on the sensing film properties. To obtain good sensitivities and selectivities, the appropriate sensing films need to be selected vigorously. However, many sensing films with desirable properties are viscous. In this paper, a network analyzer was used to measure the conductance curve from a QCM. Then, we apply the curve fitting technique to extract R1, L1, and C1 from the conductance curve. Then, we used Mason equivalent circuit to describe the QCM response when viscous films with various thicknesses were deposited.

3-161

Fundamental study of electrochemical sensor to detect aroma compounds using structured atomic Au-PANI/Pt composite

◎Parthojit Chakraborty・Yu-An Chien（Tokyo Institute of Technology）・Wan-Ting Chiu（University of Tokyo）・Tso-Fu Mark Chang・Masato Sone・Takamichi Nakamoto（Tokyo Institute of Technology）

Odor sensors that can detect aroma compounds are useful in industries such as cosmetics, food industries etc. For electrochemical gas sensors, nanoparticles of noble metals have shown to improve electrocatalytic activity. In this research, the size of a metal electrocatalyst was reduced to atomic level size with polyaniline as substrate.

3-162

イオン移動度スペクトロメトリーを用いた混合ガスの濃度定量法の検討

◎望月祐輔・横式康史・中本高道（東京工業大学）

身の回りの匂いは，複数の匂い成分の混合ガスで成り立っている。そのため，匂い記録再生システムの実現に向けて混合臭の濃度定量が不可欠である。本研究では，イオン移動度スペクトロメトリーの一種であるFAIMS(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometry)を用いた測定系を検討した。FAIMSによる計測では，ガスの濃度が増すにつれ出力の変化が小さくなるため，高濃度のガスに対して誤差が生じやすい。そこで筆者らは正確な定量を可能にするため，二段階希釈が可能な計測系を構築した。従来の系と同一条件での計測結果をMSE(Mean Squared Error)の値によって比較し，希釈系を用いたことによる誤差が雑音レベルよりも小さいことを確認し，希釈系の有用性を示した。

3-163

センサ応答相関解析による匂いセンサ開発のための重要分子パラメータの抽出

◎千村 智・瀬政康平・佐々文洋・林 健司（九州大学）

ガスセンシング技術により匂い物質の検出は高精度になされている。しかしガスセンサによって得られる情報は特定の化学物質がどのくらい存在しているのかという情報であり、多種の化学物質を識別できるセンサの作製は困難である。 ここでは生物の感覚器応答やガスセンサ応答で得られるデータをセンサ応答と呼ぶ。本研究では匂い物質を特定するセンサの開発を目的として、重要な分子パラメータの抽出を行った。そのために493種の揮発性分子に対して、センサ応答と分子パラメータの相関を解析した結果を報告する。

3-164

ウシ血清アルブミンを用いたダイズ根のダイゼイン分泌分布計測システムの開発

◎宮崎春菜・李 心竹・王 ジン・矢田部 塁・田原祐助（九州大学）・細木 藍・櫻井 望（国立遺伝学研究所）・杉山暁史（京都大学）・小野寺 武（九州大学）

1 背景ダイゼインはダイズの根で最も多く分泌されるイソフラボンで、根と根粒菌の共生において重要である。蛍光を持たないダイゼインと蛍光物質であるウシ血清アルブミン（BSA）が相互作用し結合すると、BSAの蛍光強度が減少する現象を利用し、ダイズ根圏のダイゼイン濃度分布の測定を試みる。 2 実験化学結合によってガラスマイクロファイバフィルタにBSAを結合させた。このフィルタに、土から取り出したダイズの根を接触させ、その前後でフィルタの蛍光強度分布を撮影した結果、根が接触していた部分にダイゼインによるものと思われる蛍光強度の減少が見られた。 3 応用今後は、ダイゼインの濃度分布をより詳細に得るために、BSA固定化シートの改良および根とBSA固定化シートの接触方法の改良、撮影条件の最適化を行う。

3-165

SAW device with pH stable protein scaffold for repetitive immunoassay of house dust mite allergens

◎Sittinadh Wanotayan・當麻浩司・荒川貴博・三林浩二（Tokyo Medical and Dental University）

House dust mite (HDM) allergens is one of the major causes of allergic diseases in living environment. In this study, the focus is to develop a surface acoustic wave (SAW) immunosensor for incorporation into the on-site monitoring system for sensitive and selective measurements with a reproducible manner. The limit of detection (LOD) was determined to be 6.1 ng/mL which is equivalent to 240 pM and a broad dynamic range to 1000 ng/mL with high selectivity to HDM, Der f 1, allergens. In addition, 10 repeated measurement with C.V. of 5.6% demonstrated the reproducibility of the sensor.

3-166

皮膚ガスのリアルタイム可視化のためのUVLEDリングライト付きバイオ蛍光探嗅カメラ

○三林浩二（東京医科歯科大学）・飯田健太（日本学術振興会）・當麻浩司・荒川貴博（東京医科歯科大学）

皮膚表面に放出される血中揮発性成分（エタノール、アセトアルデヒド）を、高感度にリアルタム画像化が行える「バイオ蛍光イメージング装置（探嗅カメラ）」を開発した。本装置は酵素固定化メッシュ、高感度CMOSセンサ、UV-LEDリングライトアレイ、皮膚凹凸フィッティング装置などにて構築した。酵素にはアルコール脱水素酵素（ADH）を用い、緩衝液のpHにて酵素の酸化・還元反応を制御することで、気相系でのエタノールならびにアセトアルデヒドをそれぞれ選択的かつ高感度に画像化することが可能であった。本装置を生体ガスに用いたところ、飲酒後の血液由来の皮膚ガスをリアルタイム可視化計測することに成功した。

3-167

呼気アセトアルデヒドガスの可視化計測のためのバイオ蛍光式探嗅カメラ(Sniff-cam)

◎鈴木美華・飯谷健太・當麻浩司・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

皮膚や呼気から排出される生体ガスには、健康の指標となる揮発性有機化合物が含まれており、生体ガス計測によって非侵襲的で簡便な代謝評価や疾病スクリーニングが可能となる。さらに、可視化計測が可能となれば、放出動態や空間分布などの多様な情報が得られる。このため、本研究ではアルコール代謝能の指標であるアセトアルデヒド(AcH)ガスをバイオ蛍光法を用いて可視化計測用装置を構築し、呼気中のガス計測を行った。その結果、呼気中濃度を含む0.1–10 ppmの定量範囲が得られ、AcHに対する高い選択性も確認された。また、アルコール代謝能の異なる被験者に対しても可視化計測の応用が可能であった。今後はさらに多様なガス計測を目指していく。

3-168

呼気アセトン・イソプロパノールの間欠繰返し計測可能な生化学式ガスセンサ

◎石川 力・辻井誠人・當麻浩司・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

呼気や皮膚ガスなどの生体ガスに含まれる血中成分由来の揮発性有機化合物は、代謝・疾病の産物であるため、これらの計測が、簡便かつ非侵襲な代謝センシングや疾病スクリーニングに有用であると考えられている。本研究では、二級アルコール脱水素酵素を用いたアセトン・IPA用の「光ファイバ型生化学式ガスセンサ」を作製し、呼気中に含まれる両成分の間欠繰返し計測へと応用した。その結果健常者の呼気濃度（アセトン:200¬900 ppb, IPA:10¬30 ppb）を含む範囲（アセトン:10¬3000 ppb, IPA:2¬1000 ppb）で定量が可能であった。また本センサに健常者の呼気を負荷したところ、標準ガスと同様にアセトンとIPAの間欠繰返し計測が可能であり、本センサの呼気計測における有用性が確認された。

3-169

深層学習を用いた屋外環境におけるガス源探索―ガスセンサの個数の削減―

◎澤野真樹・Christian Bilgera・山本晃史（東京農工大学）・松倉 悠（大阪大学）・石田 寛（東京農工大学）

埋立地におけるメタンガスのモニタリングや，工場などにおけるガス漏れ箇所の特定のために，ガス源位置を推定するセンシングシステムの実現が求められている．本研究では測定領域にガスセンサを並べると共に，領域の中央に風向風速計を設置し，これらの応答の時系列データから，深層学習ニューラルネットワークを用いてガス源位置を推定することを目指す．前報では30個のガスセンサを格子状に並べたが，今回はガスセンサの数を領域の外周部のみに減らし，ガス源位置の推定を試みた．センサ応答の時系列データにLSTMネットワークを適用した結果，外周部のセンサのみを用いた場合でもガス源の位置をおおよそ正しく推定できた．

3-170

熱源障害物が匂い濃度分布に与える影響の数値流体シミュレーション

◎首藤悠汰・中本高道（東京工業大学）

バーチャルリアリティ(VR)において、嗅覚を提示するためのインターフェースとして嗅覚ディスプレイが開発されている。嗅覚ディスプレイは、コンピュータを用いて香料の種類と匂い濃度を制御することで匂いを提示する。そのため、バーチャル空間内に現実の環境と同様の匂い濃度分布を与えることが重要である。 そこで、本研究では数値流体シミュレーション(CFD)を用いて、匂い濃度分布の計算を行った。特にユーザー自身が熱源障害物となり、匂い濃度分布に与える影響をCFDによってシミュレーションした。

3-171

液滴霧化装置を用いた20成分調合型嗅覚ディスプレイの開発

◎安田雄大（東京工業大学）

多種類の匂いを再現できる嗅覚ディスプレイはVRや医療のサービスの質を高めるために有効である。また、我々は要素臭を用いた香り再現の研究により185の精油の香りを20の要素臭で再現できることを報告した。そこで、本研究では嗅覚ディスプレイを利用して多様な香りを要素臭から再現することを目指し、20成分調合可能な嗅覚ディスプレイを試作した。低揮発性の香料も安定して利用できるよう表面弾性波デバイスを用いて香料を霧化し、ユーザへ香りを提供する手段を採用した。試作した嗅覚ディスプレイで複数の香料を調合することによる匂い再現が可能であるか官能検査を行い、性能を評価した。

3-172

ガスの吸脱着に基づく匂い変調デバイスに関する基礎的検討

◎本田健斗・松倉 悠・岩井大輔（大阪大学）・石田 寛（東京農工大学）・佐藤宏介（大阪大学）

日常生活において嗅覚は重要だが，嗅覚を補助するデバイスは数少ない．また，吸着剤を用いて匂いを強める研究がなされているが未だ十分ではない．本研究では，特性の異なる複数の吸着剤を用いて周囲を漂う匂い物質の成分比を調整し，匂いを変調させ，匂いを選択的に嗅がせる嗅覚補助デバイスの作成を目的とする．実験では，バニリンとイソ吉草酸について2種類の吸着剤（モレキュラーシーブ5A，13X）での吸着特性をガスセンサで計測した．それぞれ，空気のみの場合とは応答に違いがあったが，センサ同士での応答の比を比較すると明らかな差は見られなかった．今回選定した吸着剤では，バニリンとイソ吉草酸のどちらも吸着特性に差がないと考えられる．今後は2つの物質を分離できる吸着剤を再検討していく．