一般講演

2-001

部分放電によるシリコーンゴム表面劣化の定量的評価

◎小松一輝・劉 浩・伊藤悠紀・水野幸男（名古屋工業大学）

高分子がいしとして用いられるシリコーンゴムに関して、耐部分放電劣化性能を評価するため試験を行っている。 部分放電試験により劣化したシリコーンゴム試料表面の表面粗さ測定により算術平均粗さRaと粗さ曲線のフラクタル次元Dを得た。これらによりシリコーンゴム表面の部分放電劣化の進行を定量的に評価し、絶縁破壊の指標となる物理量を検討した。試験が進行するにつれてそれぞれ値は増加するが、複数の試験結果から絶縁破壊時の値はRaにはばらつきがあり、Dはおおよそ同じ値を得た。

2-002

シリコーンゴムの部分放電劣化の評価（第6報）

◎劉 浩・小松一輝・伊藤悠紀・島田美月・水野幸男（名古屋工業大学）

高分子がいしの長期使用時の部分放電による劣化について理解を深めるため、種々の条件下で大気中の部分放電を介したシリコーンゴムの劣化実験を行った。今回は劣化シリコーンゴム表面化学分析結果の再現性を評価した結果を報告する。実験中で添加剤の含有量や処理方法の違う5種類のシリコーンゴムを用いて、大気中で交流電圧を試料に並列印加した。試料の表面粗さや赤外吸収スペクトルなど項目を測定して、先に絶縁破壊した試料BとEのデータを比べた。スペクトルから、添加剤ATHとシリコーンゴム側鎖の吸収の減少がみられた。これは先行研究の結果と同じ傾向を示した。

2-003

電力線搬送通信を用いた部分放電監視システムによる欠陥種特定の基礎的検討

◎吉川 雛・柿本康朝・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・里 秀文・田頭秀樹・副田正裕（九州電力）

現在，電力設備の絶縁診断として部分放電(partial discharge : PD)測定が注目されているが，安価で高精度なオンラインPD監視は未だ確立していない。本研究では，安価な電力線搬送通信(Power line communication : PLC)を応用した全く新しいPD 監視システムの構築を目指している。前報より，PLC が外乱によりエラーを生じる原理を利用して，PD検出及び監視システムを構築し，そのシステムを用いてPD信号が検出できることを示した。本報では，印加電圧位相の象限別でPLC通信を行ない，このとき取得した情報伝送速度(以降PHY rate [Mbps]と呼ぶ)の結果を観測することで，PD信号取得(PHY rateの変化)に加え，PD信号の位相特性による欠陥種同定を試みた結果を報告する。

2-004

金属バケツに取り付けた過渡接地電圧センサによる部分放電検出特性

○小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

マンホールに設置されたケーブル接続部の部分放電(PD)を検出するために、多くの方法が試されてきた。その中で，マンホールに降ろされた金属バケット内に取り付けられた過渡接地電圧（TEV）センサーによってPDを検出する試みが行われている。このPD検出方法を使用して、ケーブルジョイントの状態を診断し、マンホールに入る前に作業員の安全を確保できる。本報告では，ケーブル接続部のPDを模擬して，金属バケツに取り付けたTEVセンサによるPD検出特性について検討した。

2-005

変圧器の金属付属物が部分放電放射電磁波伝搬特性に及ぼす影響の数値解析的検証

○匹田政幸・藤村公大・城後達紀・小迫雅裕（九州工業大学）・山本尚史（東京電力ホールディングス）・中畑匡章（東京電力パワーグリッド）

筆者らは，ブッシング内で生じた部分放電(partial discharge : PD)による放射電磁波信号をブッシング外部に配置した電磁波センサによって検出することで，変圧器を停止することなく絶縁診断する手法について検討している。電磁波センサで検出された信号からノイズかPDかの識別，更にブッシング内か変圧器内のPDを識別するためには，変圧器とブッシング内の電磁波伝搬特性の理解が重要となる。これまで，時間領域差分法(finite difference time domain : FDTD)解析ソフトを用いてブッシング内部で発生したPD放射電磁波の伝搬特性を検討してきた。一方，ブッシング外に漏洩したPD放射電磁波が電磁波センサで検出されるまでの伝搬経路には，安全柵，コンサベータ，放熱器，防音壁や変圧器本体などの金属付属品が存在する可能性がある。そこで本報では，それらの変圧器の金属付属品がPD放射電磁波伝搬特性に及ぼす影響を，数値解析シミュレーションを用いて検討した結果を報告する。

2-006

ツイストペアサンプルの部分放電開始電圧におけるエナメル皮膜の温度上昇

◎林 亮平・梶 武文・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

ツイストペアサンプルに正弦波交流電圧を印加し，部分放電における放電電荷量およびサンプルの温度上昇を実測した．また，単位時間当たりの誘電損失による発熱および放電エネルギーによる発熱を，エナメル内の誘電損失および空気ギャップ中の放電による単位発熱量当たりのエナメル皮膜の温度上昇を用いた重みづけにより評価した．その結果，部分放電開始電圧近傍ではエナメル皮膜の温度上昇に対して誘電損失による温度上昇が大きく寄与していることがわかった．すなわち，エナメル皮膜の誘電損失に伴う発熱によって皮膜温度が上昇し，皮膜内の電子が熱励起や高電界によって初期電子として空気ギャップ中に放出されることで，部分放電に至ると考えられる．

2-007

低抵抗コロナ防止テープの部分放電劣化に関する基礎検討

◎安田拓実・馬渕貴裕（三菱電機）・池田竜志・櫻井孝幸・中村隆央・柄沢一成（東芝三菱電機産業システム）

高電圧回転機では、コイル絶縁材の外層に低抵抗テープを配置している。本研究では、コイル絶縁材と低抵抗テープとの間の部分放電による、低抵抗テープの劣化現象について調査した。 空気及び窒素雰囲気で放電劣化試験を実施し、テープ抵抗値を測定した。また、放電時に生成するオゾンの影響を調べるために、テープをオゾン雰囲気で劣化させた。 窒素雰囲気と比較し、酸素を含む空気雰囲気においてテープは放電により劣化し、抵抗値の上昇を示した。また空気雰囲気での放電劣化時と同様に、オゾン雰囲気のみでもテープは経時的に劣化した。 以上の結果より、低抵抗テープの劣化現象には、部分放電で生成したオゾンが関係する可能性を明らかにした。

2-008

外部部分放電信号に及ぼすモールド変圧器のインピーダンス周波数特性の影響

◎藤村公大・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・飯田和生・梅村時博（三重大学）・中前哲夫・前田照彦・東山雅一（東芝産業機器システム）

本研究では，モールド変圧器に対する部分放電(partial discharge: PD)検出を用いた絶縁診断技術の確立を目指している。配電設備は，複数の変圧器をはじめ多くの電力機器で構成されているため，PD発生機器を特定することは非常に困難である。前報では，モールド変圧器内部で発生したPD信号が固有のインピーダンス特性の影響を受け，数十MHz帯に主成分を持つことを示した。本報では，同周波数特性を用いて，複数の変圧器群からPDが発生している変圧器を特定する手法を提案すべく，変圧器外部のPD信号が変圧器を通過する際に受けるインピーダンス特性の影響を検討した。

2-009

パワーモジュールの配線パターンを模擬した基板試料の部分放電特性

◎葛籠立弥・天野皓揮・永田正義（兵庫県立大学）・博田知之・三嶋淳也（オムロン）・明石雄太（兵庫県立大学）

パワーエレクトロニクス技術の進展により，パワー半導体による超高速スイッチング動作が可能となった．そのことで，パワーモジュールはサージによる高電圧ストレスに曝されるようになり，絶縁破壊の前駆現象である部分放電の発生条件と挙動を把握する重要性が高まった．そこで，パワーモジュールの配線パターンを模擬した基板上に銅箔電極を形成した試料と積層基板内の背後電極として銅箔電極が存在する構造の試料の2種類を用いて，部分放電開始電圧（PDIV）の電極間距離依存性および温度特性について調べた．これにより基板上の放電形態を解明し，高速パワーモジュールの絶縁設計に活かすことを目標にしている．

2-010

PLA/LLDPEブレンドフィルムの交流電気トリーの進展特性

○信山克義・中居克介（八戸工業大学）

植物由来のポリ乳酸(PLA)に植物由来のLLDPEを50wt%ブレンドし、交流電気トリーの進展特性について調べた。PLAはマリモ状、LLDPEはブッシュ状、PLA/LLDPEはマリモ状とブッシュ状が混合したようなトリー形状になった。25ºCの場合、PLA < PLA/LLDPE < LLDPEの順にトリーが進展した。60ºCにおけるPLAのトリー長は、25ºCの場合より5倍以上進展した。一方、60ºCにおけるPLA/LLDPEおよびLLDPEのトリー長は、25ºCの場合より約2倍進展した。

2-011

電流積分電荷法を用いた高電圧課電中におけるエポキシ樹脂のトリーイング劣化診断

○藤井雅之・松下幸樹（大島商船高等専門学校）・福間眞澄（松江工業高等専門学校）・光本真一（豊田工業高等専門学校）

近年，再生可能エネルギーの大量導入に伴い高電圧直流送電への関心が高まっている。絶縁材料はこうした送配電の技術を支えているが，絶縁劣化が進行すると絶縁破壊に対するリスクが高まり，電力の安定供給が脅かされることになる。劣化診断の際には停電が必要となる場合もあるが，無停電で実施できることが望ましい。本研究では電流積分電荷法を用いて，直流電圧を印加したままの不平等電界下においてエポキシ樹脂の劣化診断を試みた。

2-012

炭酸塩・金属水酸化物によるトリー劣化抑制効果

◎中村恭太郎・青木裕介・飯田和生（三重大学）

炭酸塩や金属水酸化物での高温になると大きな吸熱を伴う分解反応により、トリーの進展が抑制され高分子絶縁体の寿命が改善される。本研究では様々な充填剤を用いて課電寿命を調査した結果、分解温度の違いによる課電寿命の傾向は見られなかった。トリーの先端温度は炭酸ストロンチウムの分解温度(830℃)より高いことが推測される。また、課電寿命に対する炭酸カルシウムの充填量依存性についても調査した結果、15phrまでは充填量が増えるに従い延びるが、20phrになると短くなった。これは充填剤の分散性が良い場合、充填剤の大きな吸熱を伴う分解反応によるトリー劣化抑制効果が、界面でのトリー進展促進効果を上回ることによって、結果的に課電寿命が延びたと推測される。

2-013

カードハウス構造がエポキシコンポジット材料のトリーイング絶縁破壊特性に与える影響

◎野田剛志・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

パワーモジュールの性能劣化等を防ぐため、許容できる絶縁性と高い熱伝導性を備えた放熱性コンポジット絶縁材料の開発が行われている。本研究室では、フィラーとして窒化ホウ素(BN)を連続的に結晶成長させた、異方性がなく高い熱伝導率をもつカードハウス構造の球状 BN(sBNch：三菱ケミカル製)をエポキシ樹脂(EP)に添加することにより、トリーイング絶縁破壊特性が向上することなどを報告してきた。今回は、カードハウスの構造そのものがトリーイング絶縁破壊電圧に与える影響を調査するため、sBNchの一次粒径と同一の粒径をもつ六方晶窒化ホウ素(h-BN)を添加したEP/h-BNコンポジットのトリーイング絶縁破壊試験を実施し、h-BNを50 wt%添加したEP 樹脂の試料の絶縁破壊電圧は sBNchを50 wt%添加したそれに比べ約 23 %程度低下する結果を得た。

2-014

60 kV級CVケーブルの水トリー観察とモデル化－過渡電界解析モデルによる交流損失電流の検討－

◎原 哲也・八島政史（東北大学）・栗原隆史・高橋俊裕（電力中央研究所）

CVケーブルの絶縁劣化の要因の一つとして水トリーが挙げられる。60kV級CVケーブルでは、細長く伸展した水トリーが絶縁性能低下要因として発見されることがあり，水トリーによる劣化状態を把握する劣化診断ではこのような水トリーに起因する劣化信号を検出する必要がある。本研究では，60kV級撤去CVケーブルから検出された細長く伸展した水トリーを電界解析ソフトウェアを用いてモデル化をし，有限要素法を用いた過渡電界解析を適用した。そして、水トリーの長さや印加電圧が変化したときの交流損失電流に与える影響について検討をおこなった。

2-015

Bi層状酸化物の多層効果による誘電率特性

◎愛川雅樹・濱﨑真一（福島工業高等専門学校）

Bi4Ti3O12（チタン酸ビスマス）をベースとした強誘電材料を作成し、室温下において応用できるよう、キュリー温度を室温に近づけることを目的とする。Bi4Ti3O12は、キュリー温度が約650℃の強誘電体で、酸化ビスマス層の間に、 3層のペロブスカイト構造層を持つことが知られている。今回は、混合の段階において、Bi4Ti3O12+nPbTiO3とモル比で PbTiO3の割合を増やし、4層以上の材料を作成する。その結果、層数が増えることにより誘電率の温度依存性において、キュリー点に伴う誘電率のピーク位置が、低温に移行することが確認できた。また、焼成過程における温度や時間を変化させ、比誘電率の温度依存性の先鋭度の改善がみられた。

2-016

純鉄粉含有率の異なる磁性誘電体材料の評価

◎平田雄也・小原 学・勝俣 裕（明治大学）

磁性粉末と樹脂を混合して作製する磁性誘電体材料は，モータやリアクトルコアなどの磁性楔材や鉄心材料として用いることで鉄損低減やトルクの改善をはかる等，様々な応用が検討されている。本研究においては磁性体誘電体材料に含まれている鉄粉含有量をパラメータに絶縁性能と磁気特性のトレードオフ関係の最適化を図ることを目的とし，インピーダンス測定を用いた絶縁性能の評価ならびに磁気特性評価を行った。その結果，鉄粉含有量が87 wt.%までは高誘電率と高透磁率を両立できるが，87 wt.%を超えると材料内部に発生するボイドの影響を受け，高周波領域での誘電率の低下および磁気特性の飽和が観測された。

2-017

水素中でのアルミナの絶縁特性および材料変性に及ぼす高温での課電の影響

◎三井雅史・石田政義（筑波大学）

固体酸化物形燃料電池の電気絶縁部は無機酸化物で構成され，高温の酸化還元ガスといった過酷条件に晒される。作動電圧の増加や燃焼に伴う温度上昇は材料変性および絶縁劣化を促進することが推測される。本研究では，通常より高温の水素中での高電圧課電がアルミナ絶縁材料の絶縁性能および性状に及ぼす影響を調査した。高温での経時的な課電によって部分放電は減少し，絶縁抵抗は増加したことから，本実験条件内では劣化しないことが明らかとなった。特に絶縁抵抗は課電温度が高いほど大きく増加し，微細構造にも変化が見られた。課電に伴って欠陥や不純物の状態が変化することで粒子の結合性や絶縁性能が向上したものと推察される。

2-018

可変容量誘電材料による圧力変化時の放電特性

○濱﨑真一・愛川雅樹（福島工業高等専門学校）

微小電圧を利用するためには電池への充電が一般的であり、それを補助する役割として様々なコンデンサが開発されている。本研究では、そのような充放電用のコンデンサの開発の一環として、酸化物誘電体を中心とした外部環境の変化により容量の変化を伴うものを用いて、充電済みのコンデンサがその変化に応じてどの様に放電の様子を違えるかを観察する。具体的にはリラクサー材料として有名な Pb(Mg1/3Nb2/3)O3を対象として、圧力下で充電し、放電中に圧力開放することにより、放電カーブがどの様に変化をするのかを観察した。その結果として放電途中で圧力開放を行うことで、素材の端子間電圧において昇圧効果を得ている。

2-019

バブル添加エポキシ樹脂の正極性雷インパルス絶縁破壊特性

○佐藤 糧・花井正広・高村紀充・荒岡信隆（福岡大学）

エポキシ樹脂にメソポーラスアルミナを充填したコンポジット材料は，無充填のものと比較して，電気的特性が向上することが報告されている。一方，我々は高粘度かつ気泡を含むエポキシ樹脂で高い正極性雷インパルス絶縁破壊電圧の結果を得た。そこで，エポキシ樹脂内に空孔を形成した気泡によって，絶縁破壊電圧が上昇する可能性があると考え，実験を行った。その結果，気泡を含むエポキシ樹脂が気泡を含まないものと比較して高い最大絶縁破壊電圧が得られた。

2-020

電界緩和材料効果と印加波形に関する検討

◎平井宏光・竪山智博・山崎顕一・岡本徹志（東芝インフラシステムズ）

電力機器の小型化と電圧化を両立させるため、発電機コイルなどで実用化されている非線形抵抗特性を利用した“電界緩和材料”を用いることを検討している。電界緩和材料を塗布することで、AC50Hzでは絶縁破壊電圧が約2倍上昇した。一方、雷インパルスでは、電界緩和材料の塗布により絶縁破壊電圧は1.06倍上昇したが、AC50Hzほどは上昇しなかった。これは、雷インパルスの立ち上がりが速く、高周波を含む波形であることが原因と考えられる。電位傾斜に対して、低周波の場合抵抗値の影響が支配的であるが、高周波になると静電容量による影響が大きくなるため、高周波を含む雷インパルスに対して電界緩和材料の効果が薄くなったとみられる。電界緩和材料の適用は、想定される印加波形の周波数、背後電極による静電容量など含め検討をしていく必要がある。

2-021

相対湿度が環動高分子材料の空間電荷特性に与える影響

◎板倉 佑・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

優れた伸縮性を示し各種アクチュエータ等へ適用が期待されている誘電エラストマー材料の誘電・絶縁特性を把握するために空間電荷分布測定を行った。 厚さ約100μmの環動高分子材料を試料として用い、温度30℃、相対湿度50%RH程度または16 %RH程度にて半電極側に上昇率10V/sの直流ランプ電圧を印加し、パルス静電応力法にて測定した。 実験結果は低湿環境下は常湿環境下に比べ蓄積電荷量のピーク値が大きくなり、絶縁破壊電圧も大きくなった。低湿環境下におかれたSRM中の水分量が減少し、空間電荷形成が抑制されたと考えられる。以上より、測定時の相対湿度はSRMの空間電荷形成および絶縁特性に大きく影響することがわかった。

2-022

直流高電圧印加時の昇圧速度が絶縁体中の空間電荷分布および絶縁破壊に与える影響

◎森川滉基・小倉康太郎・三宅弘明・田中康寛（東京都市大学）

ポリエチレン（PE）系材料の直流耐圧試験を実施する際に、印加電圧の昇圧速度が絶縁破壊に与える影響を調査するために、高電界下におけるPE内部に蓄積する電荷挙動を、PEA法を用いて観測した。実験は60 ºC、180 kV/mm下で試料をLDPEとして行った。その結果、昇圧速度が速いほど電圧印加後、数秒で大きなパケット状正電荷が対向電極へ注入され、大きな電界強調が発生し、絶縁破壊が生じた。一方、昇圧速度が比較的遅い場合には陰極から注入される負電荷が徐々に試料内部に広がり、パケット状正電荷の発生と移動が妨げられ、絶縁破壊は観測されなかった。すなわち、昇圧速度の増加は電界強調の増加を促進し、絶縁破壊に大きく影響を与えることが分かった。

2-023

LDPEの電圧-電流特性における飽和現象の温度依存性

◎三原貴大・弓達新治・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

低密度ポリエチレンに加える直流電圧を大きくしていくと，電流は電界の2乗に比例するSCLC伝導から外れて飽和さらには減少する。また，その時の空間電荷分布は，高電界を加えるほどに陰極近傍に正電荷が溜まっており，それに伴い電界分布も歪むことがわかっている。我々は，この電界の歪みが電流密度飽和に影響を及ぼしているのではないかと考えている。そこで今回は，電流密度飽和現象の解明を目的として，様々な温度における電圧-電流特性を調べるとともに，各温度における空間電荷分布を測定して両者の対応を調べた。

2-024

A Study on Space Charge Measurements in Two-layer Model for HVDC Cable Joint

○Chul-Ho Kim・Tae-Woo Nam・Young-Guk An・Ho Quang・June-Ho Lee（Hoseo University）・Seung Hwangbo（Honam University）

A typical example of a combination of dielectrics used in practice is found in cable accessories(i.e. joints and terminations), where a solid-solid interface is present between the insulation of the cable and that of the accessory. Especially under dc voltage stressing conditions, dielectric interfaces are a favorite location for charge build-up. In fact, according to the Maxwell-Wagner theory for interfacial polarization, charge accumulates at interfaces if the ratio of the conductivities and that of the permittivities of the two media in contact are not the same. In addition, because of the characteristic properties of the interface a more complex build-up of interfacial charge may occur[1]. In this study, we prepared samples to form a hetero interface with plate-type XLPE and LSR. The prepared samples were measured and analyzed space charge distribution according to time using PEA method.

2-025

高位置分解能空間電荷測定装置のS/N比向上

◎青木宏憲・榎 海星・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）

近年、電気機器・電化製品に使用される絶縁材料は極めて薄く設計されている。そこで、薄い絶縁材料の性能劣化の原因の一つである、空間電荷蓄積の影響を薄い材料について調査することが重要である。パルス静電応力(Pulsed Electro-Acoustic:PEA)法を用いた測定ではノイズ低減のため同期加算平均を用いているが、出力波形のS/N比が低いと信号波形取得に時間を要し、短時間で変化する電荷挙動の観測が出来ない。そこで本研究では測定装置のS/N比向上を図った。従来型ではアベレージング回数30000回でS/N比37 dBに対し、改良後はアベレージング回数500回でS/N比38 dBとなった。これにより従来型の高分解能測定装置と比べ高速で測定することが可能となった。

2-026

PZT-MEMSを用いた高分解能圧力波検出センサの開発

◎小林史也・小原昌悟・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）・神田健介（兵庫県立大学）

近年、多くの電気機器が普及し、機器の小型・高性能化により、使用される厚さ数マイクロメートルオーダーの絶縁材料の絶縁性能の評価が望まれている。当研究グループでは薄膜絶縁材料の評価を行うために、測定装置の位置分解能の向上を図ってきた。これまでに、厚さ25 m程度の試料の評価を行うことが可能である、位置分解能2.5～3 m程度の測定装置の開発に成功した。今回、測定装置のさらなる高位置分解能化に向け、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた圧力波検出用センサの開発を行った。パルス圧力波入力した際のPZTからの出力信号を計測・評価を行った。試験結果より、パルス圧力による応答性は確認する事が出来た。

2-027

PEA法による積層試料の空間電荷分布測定結果の校正法に関する調査

◎桐ヶ谷直己（東京都市大学）

これまで報告してきたPEA法を用いた積層試料内の空間電荷分布測定における信号処理では、1種類の試料の音速と比誘電率を用いて行っていたが、この方法では電荷の位置及び電荷密度が正確ではないため、2層の絶縁体積層試料それぞれの音速、比誘電率を考慮した校正法を新たに考える必要がある。本報告では試料を積層した状態で一方の試料のみに電圧を印加する測定装置を開発し、2層積層試料の校正に必要な信号の取得を試みた。結果より、積層試料の出力波形と陰極側試料の出力波形を用いて陽極側試料の出力波形を算出することが出来たが、妥当であるかは今回の測定だけでは判断はできないため、今後更なる調査を行う必要がある。

2-028

ポリイミドとポリアミドイミドの高温高電界下における空間電荷分布

◎田中佑尭・御子柴 渉・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）

代表的なスーパーエンプラとしてポリイミドやポリアミドイミドが挙げられ、これらはモータ巻線の絶縁材料として使われている。今後さらなる高温・高電界下での使用が来た期待されているがこのような環境下での空間電荷蓄積特性に関する研究報告は少ない。そのため我々は、パルス静電応力 (PEA) 法を用いて、この2種類の材料について、高温・高電界下における空間電荷蓄積特性を評価した。その結果、150 ℃に関してポリイミドは絶縁破壊が生じなかったが、ポリアミドイミドでは絶縁破壊が生じた。これは、ポリイミドに関して水分量が減少したために絶縁破壊が生じなかったためと考えられる。

2-029

低密度ポリエチレンを伝搬する圧力波の減衰挙動の解析

○尾崎良太郎・越智輝月・弓達新治・門脇一則（愛媛大学）

電力機器の大容量化に伴い，更なる絶縁性能の向上が求められており，空間電荷の挙動や蓄積メカニズムの解明のための研究が益々盛んに行われている。絶縁体内部に蓄積する空間電荷の観測には，パルス静電応力法（PEA法）が広く用いられている。しかし，高分子材料によっては伝搬する際の圧力波減衰のため検出精度が低下する場合がある。この減衰について信号強度の復元を目的としていくつか研究されているが，粘弾性などの物理的モデルに基づいた圧力波伝搬や減衰挙動などは著者の知る限り調べられていない。そこで，本研究では，低密度ポリエチレンを伝搬する圧力波の減衰挙動を明らかにするため粘弾性モデルを用いた解析を行った。

2-030

陽子線照射されたパワーエレクトロニクス絶縁材料の空間電荷分布測定

◎榎 海星・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）・宮路仁崇・田尻邦彦・塩田裕基（三菱電機）

パワーエレクトロニクス機器は様々な環境下で使用されており、放射線による材料劣化等が懸念される。本研究では放射線、特に陽子線による絶縁材料の絶縁性能の低下に注目し、パルス静電応力法を用いて、陽子線を照射した絶縁材料内の空間電荷分布測定を行った。その結果、陽子線照射により、直流課電時に絶縁材料内への正負ホモ電荷の注入量が増加した。正電荷の蓄積位置は陽子の飛程と概ね一致し、未照射時よりも材料内部へ侵入しており、直流電圧短絡後も正電荷が多く残留した。また、この電荷蓄積により材料内電界は未照射時と比較し1.3倍増加した。なお、正電荷の蓄積は、陽子線照射による分子構造や導電率変化等に起因すると考えられる。

2-031

電子線照射直後における絶縁材料内の電子正孔対の生成量評価

◎遠藤和樹・榎 海星・久保亘平・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）

宇宙機材料の絶縁特性評価の為、パルス静電応力(pulsed electroacoustic : PEA)法を用いて、電子線照射材料の電子正孔対生成量の評価を電子線照射15分以降に大気圧環境下で行ってきた。そこで、本研究では電子正孔対が最大だと考えられる照射直後に着目し、生成量の評価を試みた。その際に、試料に接触させた電極からの注入電荷により正確な生成量評価ができないといった問題が生じた。そこで、試料上方に金属箔を設置し、真空ギャップを介して電界印加を行うことで、電極からの電荷の注入を防ぐ新たな測定方法を提案し、その測定を試みた。その結果、電圧印加直後から試料内に負電荷、試料/真空ギャップ界面に正電荷が蓄積され、電子正孔対を観測することができた。

2-032

シラン架橋が低密度ポリエチレンの機械的特性に及ぼす影響

○山口 輝・平井直志・大木義路（早稲田大学）

シラン架橋剤を内在した低密度ポリエチレンを温水に浸漬し，架橋処理を施した。架橋処理の前後にインデンターモジュラス法と引張試験を行った処，架橋により，試料表面の硬さは変化しないが，試料全体の引張破断伸び(EAB)は低下し，引張破断強度(TS)は増加した。フーリエ変換赤外吸収分光と示差走査熱量測定の結果と合わせて，架橋により長距離秩序が乱れ，結晶部分が減少するとともに，構造的には硬くなるので，EABが低下し，TSは増加すると思われる。

2-033

電子線照射劣化FEPの吸光度測定によるエネルギーギャップ評価

◎堀口嘉弘・武田岳大・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）

宇宙機が運用される環境では、多層断熱材や太陽光反射材に用いられている高分子系絶縁材料に電子や陽子等の高エネルギー荷電粒子などが照射され、劣化する。これにより宇宙機材料は運用初期と後期で帯電状況が変化し、劣化状態が進行すると運用に致命的な放電を引き起こすものと考えらえる。したがって、宇宙機の運用信頼性向上のためには、宇宙機材料の絶縁特性の運用中の変化を把握する必要がある。本報告では軌道上での運用環境を模擬した電子線を試料に照射し、材料の絶縁物性の変化、特にバンドギャップがどの様に変化するかを、真空紫外から可視光の広いエネルギー範囲における吸光度測定により法を用いて、フッ素系絶縁材料の吸光度を測定し、HOMO-LUMO間のエネルギーギャップの変化を評価した。

2-034

陽子線照射による圧電性を有するフッ素系高分子材料の3次元構造体の形成

◎野尻佳孝・西川宏之（芝浦工業大学）・林 秀臣（NPOエコデザイン推進機構）・石井保行（量子科学技術研究開発機構）

近年、ウェアラブルデバイスの需要が高まり、デバイスに組込むセンサは安価で微細、軽量なものが必要とされている。本研究は圧力センサなどに使用される柔軟で動的適応性が優れているPVDF-TrFEを微細で高アスペクト比構造の加工が可能な陽子線描画で3次元構造体に形成し、加工幅および加工深さのエッチング時間および照射量依存性の調査である。加工した結果、加工幅変化はエッチング時間に伴い増加し、加工深さも照射量に伴い増加することおよびエッチング条件によって依存することも明らかになった。今後は加工幅を考慮し作製を行い、それのセンサ応用向けた圧電性評価を行う。

2-035

熱劣化および熱・放射線同時劣化架橋ポリオレフィンの諸特性（Ⅰ. 熱特性および構造）

◎周 昊龍・平井直志・大木義路（早稲田大学）

原子力発電所の低圧ケーブルに使われている架橋ポリオレフィン(XLPO)について、大気中100、135、155 oCで400～1000時間加熱、または100、135、155 oCで線量率100Gy/h の60Coガンマ線を400～1000時間照射した。その後、示差走査熱量計(DSC)およびフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により評価し、劣化機構に及ぼす劣化条件の影響を検討した。その結果として、結晶融解温度と再結晶化温度は100 oCまたは135 ℃の熱劣化の試料ではほとんど変化しないが、155 ℃の熱劣化では著しく減少する。また、155 ℃での熱劣化によりカルボン酸エステルの分解が見られる。

2-036

熱劣化および熱・放射線同時劣化架橋ポリオレフィンの諸特性(Ⅱ. 誘電特性)

宇土景梧・周 昊龍・平井直志・○大木義路（早稲田大学）

原子力発電所において電気ケーブルの絶縁に使われている高分子材料である架橋ポリオレフィン(XLPO)を，100，135，155℃で，熱のみ，および熱と放射線の同時付与により劣化させ，50Hzにおいて複素誘電率を測定した。室温測定において135℃での熱劣化試料が他の試料を超える変化を示し，温度特性測定においても135℃で熱のみで1000時間劣化させた試料が，同時劣化を含む全劣化条件の中で，最大の複素誘電率をもたらす。類似の特性が，伝導電流値や熱特性，機械的特性においても観測される。

2-037

熱劣化および熱・放射線同時劣化架橋ポリオレフィンの諸特性(ⅠⅠⅠ. 機械特性)

◎花房若奈・伊東清太郎・平井直志・大木義路（早稲田大学）

原子力発電所内低圧ケーブルに使われている架橋ポリオレフィン(XLPO)について，大気中100，135，155^oCで20～2500時間加熱，または100，110，120，135，155^oCで線量率100Gy/h の⁶⁰Coガンマ線を10～2500時間照射した。その後，引張破断伸び率(EAB)と引張強さ(TS)，およびインデンターモジュラス(IM)を測定した。その結果，全ての試料において，劣化時間の増大につれて，試料表面だけでなく試料全体が硬くなるが，135，155^oCでは，ガンマ線が照射されている場合より，照射されていない場合において，硬化の進行が速い。また，XLPOの劣化指標として，劣化初期はEAB，劣化後期はIMが有用である。

2-038

Q(t)メータを用いた積層セラミックコンデンサの漏れ電流と静電容量の測定

○福間眞澄（松江工業高等専門学校）・関口洋逸（住友電気工業）

年，積層セラミックコンデンサ（MLCC）の静電容量の大容量化は，1990年後半から急速に進んできた。MLCCの内，Class 2のコンデンサには，チタン酸バリウムを主材料とした高誘電率誘電体が使用されている。温度特性においてもJIS/EIA規格によるセラミックコンデンサの分類では，-55℃から125℃を超える温度範囲で静電容量の変化率または温度係数などが定められている。本研究では電流積分電荷法を基に作製した電流積分計[Q(t)メータ]の適用範囲拡大を目的に市販のMLCCの漏れ電流と静電容量の温度特性（室温から175℃）の測定を行ったので報告する。

2-039

外部電界印加による棒状TiO₂/シリコーンエラストマーコンポジットの高誘電率化

◎藤原亮介・田河和真・今中政輝・加藤丈佳・杉本重幸・栗本宗明（名古屋大学）・鈴置保雄（愛知工業大学）

誘電エラストマーを用いた電気-機械エネルギー変換デバイスの出力を増加させる方法の一つは，エラストマーの高誘電率化である。先行研究において，棒状TiO₂粒子をエラストマーに充填することによる高誘電率化を確認しているが，エラストマーシート成形時に加える押圧によって棒状フィラーが面方向に倒れ、高誘電率効果を妨げている可能性がある。これを解消するため、外部電界を印加しながら棒状TiO₂/シリコーンエラストマーコンポジットを成形し、電界印加試料を作製した。電界印加試料は電界未印加試料と比較して高誘電率化していることが確認できた。この原因を考察するため、試料の断面SEM画像観察を行い、外部電界印加によるフィラー配向の変化を確認をした。

2-040

フィルムコンデンサのtan δを支配する因子について

○藤城義和・日當和之・中田将裕・宮田忠和（王子ホールディングス）

フィルムコンデンサの誘電正接(tan δ)が，コンデンサの寸法や材料定数にどう依存するかを解析した．等価回路から理論式を導出し，実験によりそれらを検証した．実測値(フィルムの幅や厚さ，測定周波数に対する依存性)は理論値におおむね一致している．また，巻長には依存しないことも確認した．

2-041

電力ケーブルジョイント用ストレスコーンのの電界緩和に有効な誘電率傾斜分布のトポロジー最適化

◎妹尾亮哉・畑野太郎・今中政輝・加藤丈佳・杉本重幸・栗本宗明（名古屋大学）・梁 虎成（天津大学）・真鍋祐矢（中部電力）・鈴置保雄（愛知工業大学）

電力ケーブルジョイントの小型化に有効な方法の一つは、内部電界の緩和である。本研究では、ケーブルジョイント内部に用いられているストレスコーンの誘電率を空間的に傾斜させることで、特にストレスコーンと架橋ポリエチレン絶縁体 (XLPE)との界面電界(1)を緩和できることを電界シミュレーションで明らかにした(2)。本報告では、誘電体の形状を保ったまま電界を緩和する方法として、誘電率分布のトポロジー最適化を検討し、これにより得られた誘電率傾斜分布の一例を示す。

2-042

The Effects of Temperature and Electric field on Conduction Characteristics of Eco-friendly Polymers for HVDC Power Cable

○Tae-Woo Nam・Chul-Ho Kim・Young-Guk An・Ho Quang・Hyun-Woo Ham・June-Ho Lee（Hoseo University）

Recently, the demand for DC power cables is rapidly increasing due to the expansion of dispersed generation and long distance transmission. At this time, it is very important to understand the effect of the electrical conduction characteristics in the polymeric insulator in order to increase the insulation performance and achieve a high reliability insulation design. Therefore, in this study, the conduction characteristics of XLPE and eco-friendly insulation materials for power cables were measured and analyzed for their conduction characteristics.

2-043

非イオン性高分子および窒素ファインバブルの同時付加が純水の抵抗率に与える影響

◎美山正樹・高村紀充・荒岡信隆・大坪拓矢・花井正広（福岡大学）

環境にやさしく優れた冷却性能と絶縁性能をもつ新たな液体絶縁材料として、著者らは純水に着目し基礎研究を行っている。純水は周りの物質を溶かしやすい性質があり、絶縁油に比べて抵抗率が低く、そのまま液体絶縁材料として使用すると、電力の損失が大きくなる欠点がある。これまで純水に非イオン性高分子界面活性剤および窒素ファインバブルを付加した場合、抵抗率が上昇することを確認したが、非イオン性高分子界面活性剤の付加量を変えた場合の抵抗率は調査できていない。本論文では、各非イオン性高分子界面活性剤の付加量を変え、窒素ファインバブルと同時付加した純水の抵抗率を調査したので報告する。

2-044

シラン架橋ポリエチレンの熱劣化が光吸収・発光特性に及ぼす影響

◎増田俊平・遠山和之（沼津高専）・山口 輝・平井直志・大木義路（早稲田大学）

135℃で熱劣化したシラン架橋LDPEに対して可視・紫外光吸収（UV-Vis）分光、赤外吸収（FT-IR）分光、フォトルミネセンス（PL）の測定を行い、つぎのことを明らかにした。可視・紫外光吸収測定の結果、熱劣化時間の増大に従い禁制帯幅は減少し、波長300～340nm付近に吸収増が生じる。この吸収増はカルボニル基による。これに伴い、励起光を322nm（=3.85eV）に固定したときのPLスペクトルでは、3.1eV付近にピークを持つ幅の広いPLが出現する。このPL強度は劣化時間の増大に伴い増加する。さらに、FT-IRでは劣化に伴うカルボニル基の生成が確認できる。よって、DCP架橋LDPEと同様に酸化により劣化が進行する。

2-045

PENマイクロ発泡樹脂の交流損失電流波形

◎庄司悠汰・土屋優貴・遠山和之（沼津高専）・池田佳祐・武藤大介（古河マグネットワイヤ）・冨澤恵一（古河電気工業）

PEN試料と気泡径5～34mの気泡が均一に入ったPENマイクロ発泡樹脂試料を用い，交流ランプ電圧を印加したときの損失電流波形観測を実施した．その結果から，FFT解析プログラムを用いて，損失電流波形i(t)の第2高調波成分I_2f0・第3高調波成分I_3f0の開始電界E_iを求めた．さらにI_2f0・I_3f0のE_iについて，PEN（比誘電率3.75）と窒素（比誘電率1.0）の誘電率から，気泡とPEN樹脂の電界を推定し，気泡径の違いがPENマイクロ発泡樹脂の電気伝導に与える影響について考察した．

2-046

ライン電極による表面抵抗率の測定精度の検討

○前田孝夫（絶縁テクノ工房）・山野芳昭（千葉大学）

絶縁材料の表面抵抗率はIEC規格の改訂にともなって5種類の電極ごとに規定され，一意的に決まらない状況にある。その中から2種類のライン電極を取り上げ，制電性PCを用いて表面抵抗率の精度を比較検討した。表面抵抗率を算出する根拠となる面積は電極間10mm，電極長さ100mmとまったく同じでも表面抵抗には顕著な差があり，材料特性値として活かすには，ばね電極への荷重条件の規定やガード電極を適切に配置することの必要性が示唆された。

2-047

粉末試料の簡易誘電率測定手法の適用

◎真下貴文・髙橋俊裕（電力中央研究所）・Wiweko Banyuaji Primadika（バンドン工科大学）

CVケーブルのプレハブ式終端接続箱において、ケーブル半導電層端部の電界集中を緩和するストレスコーンに析出物が発生し、これが起因したと考えられる絶縁破壊事故が散見される。析出物は特定の場所で確認されていることからストレスコーンの不平等電界がもたらす誘電泳動力が析出物に働くことで凝集するといった可能性がある。誘電泳動力を導出する上で誘電率は重要なパラメータであるが、撤去品から採取可能な析出物は極微量であることや不定形であることから通常の測定法では多くの工数がかかる。そこで少量の粉末試料を加工せず簡易的に比誘電率を測定する手法を考案したので報告する。

2-048

電流積分電荷法による温度および密度の異なるLDPEの電気伝導測定

○光本真一（豊田工業高等専門学校）・藤井雅之（大島商船高等専門学校）・福間眞澄（松江工業高等専門学校）・栗本宗明（名古屋大学）

電力ケーブルの電気絶縁材料としてポリエチレンが広く用いられている。低密度ポリエチレン（LDPE）の絶縁破壊の強さは高密度ポリエチレンより低いことが報告されているが、そのメカニズムの詳細には不明な点が多い。一方、直流高電界領域における電気伝導特性を評価する方法として、電流積分電荷法が近年注目されている。本稿では、電流積分電荷法を用いて密度が異なるLDPEの電気伝導特性について測定温度を変化させて評価した。90℃におけるLDPEの電流-電界特性において、すべての電界領域において電流値の密度依存性は見られなかった。また50℃、70℃の電流-電界特性においても、電流値の密度依存性は確認できなかった。27℃におけるLDPEのショットキープロットにおいて、10 kV/mmから50kV/mmの範囲で得られた直線から求めた比誘電率は、2.0から2.3の範囲であった。

2-049

マルチプローブアレイ型沿面放電観測システムの開発に向けた基礎的検討

◎花本 翔・川島朋裕・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）

沿面放電の進展特性は，ストリークカメラを用いた放電発光像の観測や，ポッケルス素子等を用いた電気光学的計測によって議論されている(1)(2)。位置(μmオーダー)および時間(nsオーダー)分解能が高い一方で，何れも高度な計測技術が必要であり，導入コストが高いなどの問題がある。本研究では，上記の欠点を補って簡易に観測・解析を行えるマルチプローブアレイ型沿面放電観測システムの開発を目的とした。

2-050

エポキシ樹脂内の欠陥部におけるテラヘルツ反射波の数値解析的検証

◎城後達紀・藤村公大・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・水内理映子・久里裕二・長 広明・中村勇介・角本雄一・和田国彦（東芝インフラシステムズ）

本研究では，簡便な樹脂内部の検査方法の確立を目指し，テラヘルツ（THz）波（約0.1～10 THz の電磁波）を用いた非破壊検査技術の開発を進めている。エポキシ樹脂中の欠陥位置の特定にTHz 波が利用できる可能性を見出し，非破壊で欠陥の種類を判別する手法について検討を進めている。前報では，欠陥を模擬した樹脂サンプルについてTHz 波による内部観察を行い，欠陥の種類によるTHz 波の応答の違いを実験的に確認し，欠陥の種類の判別への有用性を考察した。そこで本報では，その検討を踏まえて，数値解析シミュレーションを用いて，欠陥部での反射波の特性に関して検討した結果を報告する。

2-051

熱と放射線により劣化させた硬質および軟質エポキシ樹脂におけるテラヘルツ吸収

池田早織・◎石井洋之・平井直志・大木義路（早稲⽥⼤学）

原子力発電所の電力設備に使用されている硬質及び軟質エポキシ樹脂に，100Gy/hのγ線照射下，80，90，100℃で100，500，1000，4000時間の熱・放射線同時劣化を施し，テラヘルツ時間領域分光（THz－TDS）により，試料内部の分子間振動を，中赤外線分光により試料表面の分子の官能基を観測した。軟質エポキシ樹脂は，劣化の進行に伴い，カルボニル基を生成するが，硬質エポキシ樹脂には，上記条件では検知しうる特性変化は生じない。

2-052

量子化学計算を用いたエステル油中の水分量とテラヘルツ吸収特性の関係に関する考察

◎工月佑太・松本 聡（芝浦工業大学）・加藤雅道（ユカインダストリーズ）

本研究では、量子化学計算を用いて脂肪酸エステル分子と水分子のテラヘルツ吸収スペクトルについて解析を行った。脂肪酸エステル分子に対して立体配座探索を行いボルツマン分布を求めた後、各配座に対し水分子を加えホスト-リガンド探索を行った。計算結果は水分子とエステル基の相互作用による影響が大きいことが分かった。また、脂肪酸エステル分子と水による吸収は、実際に水分量を変化させて測定した差スペクトルの極大波数と一致した。このことから実験でとらえられた水分量による吸光度の変化は、水分子とエステル基の相互作用によって生じていると考えられる。

2-053

グアニンのテラヘルツ吸収スペクトルの実測と密度汎関数法による再現

大家可純・◎関 智文・大木義路（早稲田大学）・水野麻弥（情報通信研究機構）

デオキシリボ核酸(DNA)構成塩基のグアニンにおいて，テラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)により16.7~167cm^-1にわたる吸収スペクトルを取得したところ，100，143，159cm^-1に吸収ピークが出現する。これらの吸収の帰属を明らかにするため，グアニンの3分子のモデルについて密度汎関数法(DFT)を利用した構造最適化および振動数計算を実施し，吸収スペクトルの再現に成功した。そして，実測スペクトルの各吸収と対応する，DFTによって再現された吸収スペクトル上の吸収の振動モードを確認し，100cm^-1はN²-H₂のねじれ振動とO⁶とN⁹H⁵の水素結合に起因する分子間振動，143cm^-1はプリン環のねじれ振動，159cm^-1はプリン環の面外振動による吸収であると推定した。

2-054

大豆エステル油の直流絶縁破壊に及ぼす触媒の影響

◎長井宏樹・山田卓哉・石黒泰誠・村上祐一・村本裕二（名城大学）

変圧器では化石資源由来である鉱物油に替わる液体絶縁媒体として、環境面に優れた植物由来エステル系絶縁油の適用が検討されている。しかし、国内での植物系絶縁油の使用実績は乏しく、諸特性のデータも少ないのが現状である。これまでに本研究室では、大豆エステル油の交流絶縁破壊特性について検討してきた。そこで本研究では、大豆エステル油の絶縁破壊機構の解明を検討するため、大豆エステル油の動粘度および直流絶縁破壊特性を調べた。これらの結果を以下に示す。(1)大豆エステル油の動粘度は、エステル交換反応前の大豆油の動粘度よりも低かった。(2)Mg(OH)₂を触媒として作製したエステル油が一番大きい直流絶縁破壊の強さを示した。

2-055

NaCl粒子添加による含水植物系絶縁油の交流絶縁破壊電圧の向上効果

◎平松悠史・長井宏樹・村上祐一・村本裕二（名城大学）

これまで我々は，マイクロサイズのNaCl粒子を植物系絶縁油に添加し，10～20ppmとわずかな量で交流絶縁破壊電圧が向上する結果を得ている。今回は0～600ppmの水を含んだ植物系絶縁油にNaCl粒子を0～200ppm添加し，交流絶縁破壊特性の調査を行った。その結果，400～600ppmの水が含まれていても，10～20ppmのNaCl粒子添加で破壊電圧が大きく向上し，NaCl量100ppmまではほぼ一定の値を示した。NaCl量200ppmでは，水0～400ppmが含まれていると破壊電圧は低下したが，水600ppmではやや上昇傾向を示した。破壊電圧が向上する要因としては，NaCl粒子が水分を吸着することで，破壊に寄与する電子もトラップされたことが考えられる。

2-056

生分解性電気絶縁油の加熱劣化検証

○佐野侑也・笹谷幸生・小倉慎太郎（日新電機）・鈴木貴志（ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ）

近年、パームヤシエステル油や菜種油、大豆油など生分解性に優れ、生態系への負荷が小さい脂肪酸エステル系絶縁油の変圧器への使用報告が増えてきている。2019年9月にJIS C2390「生分解性電気絶縁油」が制定され、今後更なる使用増加が見込まれる。 脂肪酸エステル系絶縁油を油入電気機器であるコンデンサに使用することは、部分放電特性や粘度などが問題となり難しいことが分かっている。そこで我々は、従来のコンデンサ用電気絶縁油が有していた特性を満足しつつ、生分解性や魚毒性に代表される環境特性に優れた電気絶縁油を開発した。本報告では、開発した電気絶縁油である分子構造に芳香環を有する脂肪酸エステル油の耐熱性について報告する。

2-057

電界緩和用非線形テープ抵抗材の抵抗率異方性

◎長谷川優貴・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・梅本貴弘（三菱電機）・中村隆央・柄沢一成（東芝三菱電機産業システム）

高圧モータでは、高電位になる型巻きコイルと接地電位である鉄心が近接し、高電界が生じる。高電界は部分放電を発生させ、絶縁材料の劣化をもたらす。そこで高電界を緩和するために主絶縁のマイカに加えて様々な材料を複合的に組み合わせた電界緩和システムが用いられる。この電界緩和システムの設計には、種々の構成材料の物理的特性を詳細に把握することが必要である。先行研究では電界緩和システムを構成する材料の一つであるCorona Armor Tape（CAT)の抵抗率に異方性があることが報告されており、テープの抵抗値に等方性を仮定して計算することは実際の現象に即していないと考えられる。本稿ではCATと同様に電界緩和システムの材料であるStress Grading Tapeについて抵抗率を測定し、異方性が確認されたため報告する。

2-058

モールド変圧器用シリコーン絶縁物の劣化診断技術

◎藤原宗一郎・梅村園子・三木伸介・今井雅之・齋藤博一（三菱電機）

モールド変圧器は電力流通に関する主要設備であり、安全かつ安定して稼働することが要求されるため、信頼性を支配する絶縁物を精度良く診断する技術が望まれている。これまで、モールド変圧器用ポリエステル絶縁物を対象に、絶縁物の化学的評価結果を多変量解析の一種であるマハラノビス・タグチ（MT）法で解析し、表面抵抗率の低下を精度良く評価する方法を開発してきた。本報告では、診断対象の拡大を目的に、モールド変圧器用シリコーン絶縁物への適用を検討した内容について報告する。

2-059

配電盤内モールド変圧器の長期間オンライン部分放電トレンド監視

◎柿本康朝・藤村公大・吉川 雛・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・佐藤正春・阿部宏行・廣川光晴・佐藤英章（東京電力パワーグリッド）

近年，配電用モールド変圧器の現場活線状態における絶縁診断技術の確立が求められている。本研究では，絶縁破壊の前駆現象である部分放電(partial discharge: PD)に着目し，配電用モールド変圧器の絶縁状態を，配電盤外から安全に診断する手法の確立を目指している。前報(1)では，現場活線状態における経年22kVモールド変圧器が配置された配電盤の内・外に複数のTEVセンサを配置し，それぞれのセンサの取得信号の特徴による配電盤内・外の信号識別を検討した。本報では，これまで取得した数か月間の複数センサの検出信号のトレンドを分析したので報告する。

2-060

アコースティックエミッション法によるパワーモジュールの劣化検出

◎宮下真虎・大幸裕介・本多沢雄・岩本雄二（名古屋工業大学）

我々はエポキシ樹脂で封止されたパワーモジュールの内部劣化をアコースティックエミッション(AE)法を用いて検出することに着目している。パワーモジュールのヒートサイクル試験時にAEを同時評価したところ、数多くの特徴的な音波が観測された。それぞれの音と劣化事象を明確に結びつけ、非破壊のin-situ測定において劣化検出を行うことができれば、製品評価の時短化やモジュール設計の改良に役立つと期待される。ここでは金属(電極を模擬)とエポキシ樹脂を接合した2層の棒状試料に対して数100回ヒートサイクル(HC)実施時に同時取得したAE波形の解析結果について報告する。AE法によってエポキシ樹脂が剥離する際の波形を同定することを目的とした。

2-061

MHz帯弾性波の波形解析によるパワーモジュール劣化の非破壊検出

◎大野拓也・大幸裕介・本多沢雄・岩本雄二（名古屋工業大学）

我々はエポキシ樹脂で封止されたパワーモジュール内部の劣化検出法に関する研究を行っている。アコースティックエミッション(AE)法では、剥離など事象発生時の音波を解析するため、AE取得時には既にモジュールに致命的な欠陥が発生していることも多い。クラックや剥離等の前兆を部材の物性応答から予測することができれば、モジュールの長期耐久性や寿命の評価に役立つと期待される。本研究では、部材の物性応答を検出するプローブとして、MHz領域の弾性波が試料を透過した際の透過波の強度に着目した。パワーモジュールを模倣した試料に対するヒートサイクル(HC)前後の入射波の減衰について解析した結果を報告する。

2-062

両極性繰り返しインパルス電圧課電におけるポリイミド/ベーマイトナノコンポジットエナメル線の絶縁破壊までのPD電荷量と皮膜厚減耗の評価

◎松添宇一・西垣安貴・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・藤本信貴・林坂徳之・加藤俊彦（住友精化）・菊池英行（Hide Technology）

筆者らは，既存の耐インバータサージ巻線を凌ぐ長寿命・高信頼性を有する新規巻線の開発を検討している。特にベーマイトアルミナ（AlOOH）系ナノフィラーを混入したナノコンポジット巻線の部分放電(partial discharge : PD)特性などの電気絶縁特性を検討してきた(1)。本稿では，(polyimide : PI)樹脂を皮膜とするベーマイトナノコンポジット線に対して，両極性繰り返しインパルス電圧を印加した際の絶縁破壊(breakdown : BD)までのPD電荷量および課電後の皮膜厚みを測定した結果を報告する。

2-063

ポリイミドナノコンポジットのフィラー充填率・分散性の評価

田口裕貴・◎長瀬えみり・平井直志・大木義路（早稲田大学）

3種類(水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベーマイトアルミナ)のフィラーを充填したポリイミドナノコンポジットの表面と断面の二次電子像と反射電子像を走査型電子顕微鏡(SEM)により得た。さらに、反射電子像から特性X線量を測定するEDS測定により各原子の重量％を求めた。各フィラーにおいて、試料表面よりも内部にフィラーが多く観測されること、異なる粒径のフィラーを含有しているナノコンポジットにおいては、測定される重量％が異なることなどが確かめられた。

2-064

エポキシ樹脂ナノコンポジットの交流高電界電界発光Ⅱ～分散性の影響～

○遠山和之（沼津高専）・飯塚智徳・巽 宏平（早稲田大学）・吉田成是・梅本貴弘・馬渕貴裕・武藤浩隆（三菱電機）

栗本らが、エポキシ／酸化チタンナノコンポジットの持つ耐圧向上効果とフィラー分散状態の関係を整理し、凝集体最大サイズが小さく充填率が少ないほど、耐圧が向上する傾向にあり、凝集体最大サイズが大きく充填率が多いほど、耐圧が低下する傾向にあると考えられることを報告している。今回、エポキシ樹脂に充填するTiO2ナノフィラーの充填率を変えたエポキシ樹脂ナノコンポジットについて、ナノフィラー充填量と電界発光開始・消滅電界の関係を調査した。その結果、ナノフィラー充填量1 vol%のエポキシ樹脂ナノコンポジットで15 kV/mm付近と40～50 %近く向上し、栗本らの報告と一致する結果を得た。

2-065

電極面積が静電吸着法を用いたtPI/配向h-BN複合絶縁材料の交流絶縁破壊強さに与える影響

◎南 亮輔・菊池晃生・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）・下野耕大・柳田憲史（三菱重工業）

エレクトロニクス機器等に使用される放熱性電気絶縁材料には高耐圧化や高熱伝導性などの特性の向上が求められており、複合絶縁材料の開発が各所で進められている。静電吸着法は、任意形状・形態の集積構造体を調整することができるため、電気的弱点となる充填材の接触及び凝集を極力抑えることにより、許容できる電気的特性と高い熱的特性を両立した材料を開発できる可能性がある。本研究室ではこれまで、静電吸着法を用いた熱可塑性ポリイミド（tPI）/配向六方晶窒化ホウ素（h-BN）コンポジット材料が優れた電気的・熱的特性を示すことなどを報告した。本論文では電極面積がtPI/配向h-BNコンポジット材料の交流絶縁破壊の強さ(AC-Fb)に与える影響を調査した。結果、電極面積に関わらず同様のAC-Fbとなった。

2-066

電子なだれ破壊モデルを用いた酸化チタンエポキシナノコンポジットの交流絶縁破壊強度の推定

◎田河和真・志村未来・加藤丈佳・栗本宗明（名古屋大学）・吉田成是・梅田貴弘・馬渕貴裕・武藤浩隆（三菱電機）

酸化チタンエポキシナノコンポジット(NC)の交流絶縁破壊強度は、その凝集体サイズが0.5μm以下であればエポキシ樹脂単体より高い場合があり、凝集体サイズが大きいほど低下する。このNC特有の絶縁破壊特性を、固体部分の本質的な絶縁破壊強度に近い強度を評価できるMcKeown電極系を用いた交流絶縁破壊試験（室温）において明らかにしている。本論文では、NCの絶縁破壊が電子なだれ破壊で起こると仮定してNCの交流絶縁破壊強度を推定するモデルを構築し、その凝集体サイズ依存性を推定した。

2-067

酸化チタンエポキシナノコンポジットの交流絶縁破壊強度と絶縁寿命を向上する凝集体サイズの閾値

○栗本宗明（名古屋大学）・吉田成是・梅本貴弘・馬渕貴裕・武藤浩隆（三菱電機）

ナノ粒子の凝集体サイズはエポキシナノコンポジットの絶縁性能を改善する重要なパラメータの一つであると考えられる。本研究では、遠心分離法を用いたフィラー分散制御技術を用いて凝集体サイズが異なる酸化チタンエポキシナノコンポジット(NC)を作製し、その絶縁破壊強度と絶縁寿命を評価している(1)(2)。本論文では、NCの交流絶縁破壊強度と絶縁寿命を向上する凝集体サイズの閾値について検討したので報告する。

2-068

エポキシ/シリカナノコンポジット中電気トリーの粒径依存性

○中村 信・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・平井宏光・今井隆浩（東芝インフラシステムズ）・中村隆央・大柏芳弘・吉満哲夫（東芝三菱電機産業システムズ）

近年，ナノコンポジット絶縁材料がその機械的，電気的，熱的特性から注目を浴びている。 ナノコンポジット絶縁材料中電気トリーは電圧，粒子量，温度などさまざまな影響を受ける。 本稿では，ナノ粒子の粒径が電気トリー進展に与える影響を明らかにするため，2 種類の粒径(12 nm, 80 nm)を用いて，エポキシ/シリカナノコンポジット中電気トリーの観察を行った。 80 nm粒子充填サンプルでは，どの電圧でもトリー抑制効果は見られなかった。 一方，12 nm粒子5 wt%充填サンプルでは，低圧ほどトリー進展が抑制された。 さらに，12 nm粒子10 wt%充填サンプルでは，どの電圧でもトリー進展が抑制された。

2-069

TiO2ナノフィラーの添加がエポキシ樹脂のトリーイング劣化寿命特性に与える影響

兒玉憲彦・川島朋裕・穂積直裕・○村上義信（豊橋技術科学大学）・吉田成是・梅本貴弘・馬渕貴裕・武藤浩隆（三菱電機）

エポキシ/酸化チタンナノコンポジット絶縁材料の電気手特性を把握するため、電気トリーイング劣化による絶縁寿命特性を測定した。その結果、ナノサイズ参加チタンを1 vol%添加したエポキシ樹脂の絶縁寿命は添加していないエポキシ樹脂のそれに比べ長くなった。

2-070

Volume-time理論を用いたエポキシ/シリカナノコンポジットのSF₆ガス中の放電開始特性

◎井上好之・阿部和馬・大角浩太郎・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

エポキシ/ナノシリカ試料のSF₆ガス中楔ギャップに起因した固体絶縁材料表面で発生する開始電圧のメカニズム解明の一考察として，Volume-time理論に基づく放電開始電圧の推定結果および測定結果との比較検討を行った。PD発生確率を計算値と実測値で比較したところ，固体絶縁物表面からの初期電子を考慮した場合，良好な一致を示した。この結果は，ナノフィラーの添加によりイオン化エネルギーを増大することでナノコンポジット表面を介した放電を抑制できることを示唆している。

2-071

GIS絶縁スペーサモデルにおけるSF6ガス中インパルスフラッシオーバ電圧の極性効果

◎阿部和馬・大角浩太郎・井上好之・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・増井秀好・満留 博・柳瀬博雅・岡本健次（富士電機）

ガス絶縁開閉装置（gas insulated switchgear: GIS）の小型化に向けて，著者らはGIS絶縁スペーサのナノコンポジット化を検討している。本稿では，GIS絶縁スペーサモデルを新規作製し，正および負極性インパルス電圧におけるSF6ガス中フラッシ―オーバ電圧（flashover voltage: FOV）を測定した。その結果，負極性の場合，FOVはほぼ同じ値となる一方で，正極性の場合，ナノフィラー添加に伴いFOVの向上効果が見られた。これらの極性効果は，陰極側の材料に依存し，固体絶縁物が陰極となる場合に大きなFOV向上効果が発現すると考えられる。

2-072

強く相互作用する分割リング共振器列の電磁波反射特性とその光制御

◎前田博史・五十嵐健太・胡桃 聡・鈴木 薫・松田健一（日本大学）

分割リング共振器（SRR）は、電磁メタマテリアルの基本構造としてしばしば用いられる。SRR間の相互作用が無視できない状況では、各SRR固有の共鳴条件とは異なる電磁波反射特性が得られることがあるり、この状態を積極的に利用することで新しいセンサーやデバイスへの応用が期待される。本研究では、共鳴条件可変なSRRの2層構造を作製し、SRR間の相互作用が強い状況下での電磁波反射特性を調べた。共鳴周波数がそろっている状況であっても、それとは異なる2つの共鳴条件が発言することがわかった。また、片側の固有共鳴周波数を変化させた場合でも同様の傾向があることがわかった。

2-073

可変配合注型法による誘電率傾斜絶縁スペーサの樹脂分布可視化

◎染谷竜太・保科好一（東芝エネルギーシステムズ）・今井隆浩（東芝インフラシステムズ）・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

誘電率を傾斜させることによって, ガス絶縁開閉器の縮小化が期待されている。2つの異なる誘電率を持つエポキシ注型樹脂の混合比を変化させて金型注型し, 誘電率が傾斜したスペーサを得る「可変配合注型法」が検討されている。今回, 粘度を低下させた新配合の樹脂を用い, 可変配合注型時の樹脂充填分布を改善したので報告する。

2-074

バイオセンシング多孔性炭素電極の電解触媒効果

○小野田光宜（兵庫県立大学）

graphiteをはじめとする炭素材料を用いた電解触媒効果（酸化還元反応）を検討した。その結果, graphite構造を有するpGr炭素電極では, basal面と分析物（対象物質）との－相互作用, 芳香環のstackingなどの相互作用, またedge面の酸素含有官能基（カルボン酸基, 水酸基など）と分析物（対象物質）との水素結合などによる相互作用により電気化学的応答特性が大きく変化し, 電解触媒効果が顕著に観測できるようである。尚, ここで言う相互作用は単純には分析物（対象物質）のpGr炭素電極への吸着で, 炭素電極表面の処理効果の原因については, 電極表面の粗面化, 表面あるいは側面に導入されたcarbonyl（C=O）基, carboxyl（COOH）基, hydroxyl（OH）基などが電極反応に関与するためと考えられる。炭素電極系材料（pGr, GO, rGO, etc.）表面が, リン酸緩衝液のリン酸基などの導入により修飾された結果, 測定対象物質（神経伝達物質として, dopamine, acetylcholine, 抗酸化剤（妨害物質）としてascorbic acid, uric acid）の吸着が誘発されて表面濃度が増加する。さらにその表面化学種が測定対象物質の酸化還元反応の触媒として作用し, 反応を促進すると考える。

2-075

導電性高分子/セルロースナノファイバーを用いたイオン濃度制御と骨芽細胞について

◎岡島洋介・藤井雅治・井堀春生・全 現九・岡野 聡・小林千悟・内村浩美（愛媛大学）

導電性高分子/セルロースナノファイバーを用いたイオン濃度制御と骨芽細胞について導電性高分子はイオンの注入・放出が容易なことから「電気-化学-電気信号」といった伝達システムを構築できることが示唆され、その1つにクロス電位法がある。これにより、神経伝達物質が扱えることが分かった。更に、導電性高分子の生体適合性に関する研究も行れてきている。また、導電性高分子の強度に関してセルロースナノファイバー(CNF)を用いる研究もなされている。 本研究では導電性高分子とCNFの複合材料の作製を試み、これを用いたイオン濃度制御及び骨芽細胞に対する生体適合性について調べた。骨芽細胞は骨組織の形成に必要で、その際各種イオン濃度が重要になってくる。

2-076

Preparation of activated carbon form corn grain for high energy density type of EDLC

◎ルンワチラ-チャットポン・田島大輔（福岡工業大学）・坪田敏樹（九州工業大学）

An electric double-layer capacitor (EDLC) is one of the supercapacitors that has fast charging-discharging rates, long cycles life and has very high-power density. In EDLC system it has 3 types of electrolyte, aqueous, non-aqueous or organic and ionic liquid. In this project organic electrolyte was used. Corn grain has a great specific surface (3,199 m^2 g^(-1)). Refer that the activated carbon from corn grain has a lot of among of specific surface, corn grain was selected as a material. The greatest result of energy density is 131 Wh/kg.

2-077

新規ラジカル捕捉型難燃剤を用いたハロゲンフリー難燃ケーブル

○中山明成・牛渡剛真（日立金属）・村木孝仁・岩崎富生（日立製作所）

地球環境保全の動きの中、電線ケーブル分野でもハロゲンフリー難燃電線の適用が拡大しており、その難燃性もより高レベルのものが要求されてきている。電線用ハロゲンフリー難燃材料としては、主に金属水酸化物の吸熱反応を利用した樹脂の熱分解抑制を中心とした難燃化手法であり、金属水酸化物の多量混和が避けられなかった。このため柔軟性や電気絶縁性などのトレードオフ特性が多く残るのが課題である。 今回ハロゲン系化合物の気相でのラジカル補足による難燃性発現機構に着目し、燃焼シミュレーションにより同様の効果を発揮する化合物を見出した。シート形状での燃焼性を確認後、ケーブルを作製・燃焼試験を実施することにより実用レベルの難燃性を有することを確認した。

2-078

ナノ粒子塗布法で作製した CZTSSe薄膜におけるNa添加効果の影響

◎澁谷謙司・安井 皐・小林正和（早稲田大学）

Cu2ZnSn(S,Se)4(CZTSSe)は構成元素の大半(Cu,Zn,Sn,S)が汎用材料であることから、材料枯渇の懸念が少ないという利点を持つ。そのため我々は光吸収層として太陽電池応用に足るCZTSSe薄膜の作製を目指している。 NaF添加量の制御が困難であるなどの課題が存在していた。真空プロセスではあるものの、この課題を解消できる真空蒸着法によるNa添加に着目した。 作製した塗布膜に対しNaF蒸着層が約600nm,300nm,150nm,0nmとなるように蒸着層の膜厚を変化させ、Se化アニールを施すことでNa添加量の異なるCZTSSe薄膜を作製した。それらに対し粉末X線回折法を用いて、XRDパターンからCZTSSe由来の回折ピークの半値幅を算出した。 Na添加量を大きくするほど半値幅が小さくなっていることが明らかとなった。算出された半値幅よりWilliamson-Hal法を用いて解析を行うことで薄膜内の結晶子サイズが大きくなり、結晶性が改善されていることが明らかとなった。

2-079

The surface morphology change of Ag2Te buffer layers during the two-step closed space sublimation of AgGaTe2

◎余 洋・小林正和・小林正和（Waseda University）

AgGaTe2 is a promising photovoltaic material available for using in high-efficiency solar cells. The growth of crystallized AgGaTe2 thin films by the two-step closed space sublimation (CSS) method has been successfully demonstrated. For the two-step CSS of AgGaTe2 thin films, an Ag2Te buffer layer was first deposited on a Mo/glass substrate by sputtering method. Then, the preparation of AgGaTe2 films was performed using a mixed powder source of Ag2Te and Ga2Te3. It was characterized in this study how the Ag2Te buffer layer surface morphology was changed during the second CSS step.

2-080

AgGaTe₂太陽電池構造の作製とGa拡散の制御

◎篠原慧哲・小林正和（早稲田大学）

太陽電池応用を目指し、Mo金属電極膜上に近接昇華法とスパッタ法を組み合わせてAgGaTe₂薄膜を作製しているが、断面を観察したところ、Mo電極界面が荒れた状態となるメルトバックエッチングが生じてしまうことや、AgGaTe₂層内にMo-Te化合物が生成されてしまうことが確認された。この原因の一つとして考えられるGaの異常拡散を防ぐため、AgGaTe₂薄膜の原料粉末の減量や、近接昇華法の成長時間短縮などを行うことで、Mo電極界面の平坦化に成功したものの、太陽電池構造として膜厚は不十分であった。 そこで本研究では、近接昇華法における原料仕込み量の見直しを行うことで、平坦なMo電極界面を保ったまま、従来のAgGaTe₂層と同程度の膜厚に増加することを検討した。

2-081

エポキシ系導電性コンポジットの陽子線描画によるパターニング

◎野原悠暉（芝浦工業大学）・林 秀臣（エコデザイン推進機構）・西川宏之（芝浦工業大学）

近年IoT化に伴い高機能かつ安価なセンサの開発のための微細化技術が求められている。そのために微細加工技術としてコンポジット材料に対する陽子線描画に注目した。本研究の目的は、エポキシ系感光樹脂への導電性付与および、その陽子線描画によるパターニング特性を明らかにすることである。エポキシ系感光性樹脂のSU-8と導電性を有するケッチェンブラックを配合し、それに対しI-V特性を調べることで導電性付与ができていることを確認した。ビームエネルギー1.0MeVの陽子線をビームサイズ1mmおよび1μmに集束し、描画後現像し、最小30μm角のパターニングができた。以上の結果から、導電性を有する微細パターンの直接描画が可能であることが示された。

2-082

電界整列を用いたダイヤモンド微粒子複合伝熱シートの熱伝導特性の向上

◎李 赫男・林 将平・稲葉優文・中野道彦・末廣純也（九州大学）

我々はサーマルマネジメント複合材料として、熱伝導性フィラーを電界整列させることにより、伝熱シートの熱伝導特性の向上を目指している。ダイヤモンド微粒子は高熱伝導率、高強度、絶縁性などの基礎物性を持つことから高熱伝導なフィラー材料に有望である。本研究では、母材の候補のひとつであるアクリル溶媒中で面内方向に電界を発生させ、ダイヤモンド微粒子を電界整列し、複合材料を作製し、さらに熱伝導率を測定した。