一般講演

2-083

Nd-Fe-B系焼結磁石における減磁挙動の磁界角度依存性

◎太田博之・大橋徹也・土井祐仁・中村 元（信越化学工業）

Nd-Fe-B系焼結磁石の減磁挙動の角度依存性について、配向方向を傾けた立方体の磁石を、B-Hトレーサと超電導コイルを用いて逆磁界を印加し測定を行った。同程度の減磁磁界を印加したが、減磁量と角度との関係が測定方法によって相反する結果となった。そこで、VSMの測定結果に対し、減磁量の逆磁界依存性について反磁界補正の有無を比較した。初期の減磁挙動とそれ以降とで逆転することが観測でき、また同じ磁界強度H_extであっても測定系の違いにより実効磁界H_effでは異なり、B-Hトレーサでは初期の減磁挙動を、超電導コイルではそれ以降の減磁挙動を観察していた。今後、材質や温度、形状によるパーミアンスの分布の影響についても調査する予定である。

2-084

ThMn₁₂型Sm-Fe系急冷薄帯における平均3d電子数がキュリー温度に与える影響

◎関口弘人・茂木裕太郎・小原 学（明治大学）

ThMn₁₂型磁石は組成比の19％が希土類元素であるため価格が比較的安いが，構造を安定化させるためTiなどの第3元素を加えると磁気特性が低くなるため，最近まであまり注目されていなかった。しかし，SmFe₁₂単相の薄膜がNd₂Fe₁₄B型磁石を上回る磁気特性を有することが報告され，注目を集めようになった。これまでに，SmFe₁₁TiのFeの一部を他の遷移金属で置換することによる磁気特性への影響に関する研究は数多く行われているが，各元素単体における議論にとどまっており，系統立てた議論は行われていない。そこで本研究では，遷移金属置換による平均3d電子数の変化に着目し，平均3d電子数とキュリー温度の関係性について明らかにすることを目的とする。

2-085

急冷凝固法によるSmFe₅系合金急冷薄帯の作製

○齋藤哲治（千葉工業大学）

本研究では新しいSm-Fe系金属間化合物相としてSmFe₅金属間化合物相の作製を急冷凝固法により試みた。得られたSmFe₅系合金急冷薄帯および急冷薄帯に熱処理を施した試料の構造と磁気特性について調べた。

2-086

3Dプリンタを援用した静磁界自動計測器の開発と永久磁石磁化分布逆推定への応用

◎高須大地・中村勢到・岡本吉史（法政大学）

電気機器設計の前段階で，永久磁石の磁化推定は，高品質な同期電動機設計の観点から重要な技術である．磁化ベクトルの同定方法として，EBSD，XRDを使用した結晶観察に基づく方法があるが，設計工期の観点から不向きである．そこで，永久磁石周囲の磁束密度を使用し，磁化分布を数値的に推定する手法がある．本稿では，組み立て式3Dプリンタを基にして，独自に自動磁界測定器を開発し，磁石周囲の磁束密度を計測し，参考データと比較することで，その妥当性を評価する．さらに，測定値を用いて，磁化推定を行ったので，それについて報告する．

2-087

フーリエ級数展開による磁化分布の三次元モデリングを用いた永久磁石内部の磁化分布逆推定手法に関する検討

◎宮原 駿・中村勢到・岡本吉史（法政大学）

永久磁石の着磁方向如何では，永久磁石同期電動機の実駆動状態において，予期せぬ振動が発生する場合がある．工学的に許容された時間内で磁化推定できること，さらに，永久磁石内部の磁化分布を非破壊的に推定できることから，永久磁石外側の磁束密度分布を用いて，逆問題を求解する手法が提案されている．本論文では，文献で提案されている磁化角をフーリエ級数展開する磁化推定手法を三次元方向に拡張し，さらに，磁化の大きさにもフーリエ級数展開を考慮し，方向，大きさ双方を推定できる手法を提案する．提案手法をラディアル配向磁石の磁化推定へ適用し，その結果を報告する．

2-088

磁区制御による低損失Fe基アモルファス薄帯MaDC-A^TM

○板垣 肇・黒木守文（日立金属）

近年、地球温暖化対策としてCO₂排出量削減が求められ、変圧器に関しても低損失な鉄心材料の開発が進められている。Fe基アモルファス薄帯は鉄損が低く、変圧器の無負荷損を小さくできるという特徴を持つ。このFe基アモルファス薄帯の磁区幅は広く、磁区細分化により更なる低鉄損化が期待できる。今回、レーザースクライブ処理を施し磁区を細分化させたFe基アモルファス薄帯MaDC-A^TM (Magnetic Domain Controlled - Amorphous Alloys)を開発し、本薄帯を用いた変圧器用鉄心は高効率化に有効であることが示された。

2-089

粒子径分散が異なる2種の磁性粒子を用いた磁性複合材料の透磁率評価

◎及川雄也・大友宣毅・小澤海斗・三浦健司・長田 洋（岩手大学）

本研究では粒子径分散が異なる2種の磁性粒子（Mn-Znソフトフェライト磁性粉，マグネタイト微粒子）を媒質とする磁性複合材料を作製して透磁率を評価し，磁性複合材料の透磁率向上の効果について検討した。測定結果と磁気回路モデルによって導出された曲線とを比較すると，磁性体体積割合45％以下においては測定結果が磁気回路モデルの曲線と同程度の増加率で比透磁率が増加しているものの，マグネタイト微粒子を添加した磁性体45％以上ではモデルから大きく外れることが確認できた。この結果より，マグネタイト微粒子がMn-Znソフトフェライト間の非磁性ギャップを埋めて反磁界を抑制し，比透磁率の値を増加させることに寄与していると考えられる。

2-090

周期多層膜構造の縦スピンゼーベック出力への影響

○中村雄一・滝川 新・後藤太一・内田裕久・井上光輝（豊橋技術科学大学）

周期多層膜構造とスピンゼーベック素子を組み合わせ、多層膜の周期性がスピンゼーベック効果による出力電圧へ及ぼす影響について検討した。YIGとSiO2を5ペア積層した周期構造体において、ある特定の膜厚の組み合わせで出力電圧がピークを持つ傾向が得られた。これは通常の熱伝導理論では説明できず、フォノンの伝搬を遮蔽できるようなある特定の構造を構築することで多層膜中の温度勾配が大きくなり、スピンゼーベック出力電圧を大きくすることができる可能性が示唆していると考えられる。

2-091

磁性グラニュラ薄膜の磁気光学センサへの応用に向けた検討

◎西本光佑・北原 旭（豊橋技術科学大学）・橋本良介（鈴鹿工業高等専門学校）・後藤太一・中村雄一・Pang Boey Lim・内田裕久・井上光輝（豊橋技術科学大学）

主要な構造材料である鉄鋼が破壊される原因の一つに疲労亀裂がある。傷探査法の一つとして磁気光学（Magneto-optical: MO）イメージング法があり，被検体表面に磁性光学薄膜を近づけて傷からの漏洩磁界を光で検出する．しかし，磁気光学薄膜（Bi:GIG）は保磁力が大きいため測定感度が不定であることと，磁気飽和により深さ方向のダイナミックレンジが制限されるという問題点があった．最近，小林らにより近赤外光域で大きな磁気光学効果が得られるFeCo-AlF3グラニュラ薄膜材料が開発された．そこで本研究では，磁性グラニュラ薄膜がMOセンサとして利用できるか検討し，深さ方向のダイナミックレンジが大きく，測定感度が一定なMOセンサを開発することを目指す．

2-092

正方配列Au粒子/Bi:YIG複合構造体におけるファラデー効果のFDTDシミュレーション

◎板橋悠人・Surya-Priasmoro Ilham・髙田一紀（豊橋技術科学大学）・水戸慎一郎（国立東京工業高等専門学校）・Andrey Fedyanin（Lomonosov Moscow State University）・後藤太一・中村雄一・Pang Boey Lim・内田裕久・井上光輝（豊橋技術科学大学）

透明な磁性ガーネットは磁気光学効果を利用した磁気イメージングセンサなどに用いることが可能である．周期配列させたAu粒子と磁性ガーネット(Bi:YIG)薄膜との複合構造体では，局在型表面プラズモン共鳴によってファラデー回転角を増大させることができる．本稿では，正方配列Au粒子とBi:YIGとの複合構造体についてFDTD （Finite Difference Time Domain）法を用いて，透過率・ファラデー回転角のスペクトルを求め，ファラデー回転角が何によって影響を受けるのか明らかにし，ファラデー回転角を増大させる材料の開発に向けた検討を行う．

2-093

Fe_85.1-xGa_xB_14.9薄膜における磁気特性のGa組成依存性

◎村松省吾・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

Fe-Ga二元合金薄膜は高い飽和磁歪量および優れた機械特性を有するため，磁歪薄膜材料として注目を集めている．我々はこれまでにFe-Ga多結晶薄膜の磁化ダイナミクスを検討してきた．その結果，強磁性共鳴線幅が広く，ダンピング定数が高いことを明らかにした．この結果は，Fe-Ga多結晶薄膜が高周波デバイスへの応用には不向きであることを示唆している．そこで軟磁気特性および高周波磁気特性の改善を目指してFe-Ga-B薄膜の特性を検討した．その結果，磁歪定数は49~67 ppm，ダンピング定数は0.006~0.010を達成した．以上の結果より，Bを添加したFe-Ga-B膜では，従来のFe-Ga膜に比べて，軟磁気特性および高周波磁気特性を著しく改善できることがわかった．

2-094

(Fe_0.75Ga_0.25)_100-xB_x多結晶薄膜における磁気特性のB組成による変化

◎川辺泰之・村松省吾・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

Fe-Ga-B多結晶薄膜の構造と磁気特性を検討し、そのB組成による変化について議論した。 Fe-Ga-B多結晶薄膜の静的磁気特性に関して、飽和磁気ひずみの値はB組成が9.4 at.%以上においてFe-Ga多結晶薄膜よりも高くなった。ピエゾ磁気ひずみ定数は、B組成の増加に関わらず最大で4 ppm/Oe程度となっており、Fe-Ga多結晶バルクよりも高くなった。 Fe-Ga-B多結晶薄膜の高周波磁気特性に関して、面内有効ダンピング定数の値はB組成が8.2 at.%以上においてFe-Ga多結晶薄膜よりも低くなった。 以上の結果から、Fe-Ga-B多結晶薄膜はFe-Ga多結晶薄膜よりも磁気ひずみ特性と高周波磁気特性の両者で向上していることがわかった。

2-095

Co-Fe-B薄膜における磁化ダイナミクスの下地層による影響

◎田中治憲・Thi Van Anh Nguyen・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

Co-Fe-B薄膜の磁化ダイナミクスに関する研究が盛んに行われている。スピントロニクスデバイスを創製するにあたり、磁化ダイナミクスの主要なパラメータの1つであるダンピング定数αについて理解することが重要である。これまでαに関する研究が多く行われてきたが、αと他の磁気パラメータとの関連性について言及したものはほとんどない。本研究では、Co-Fe-B薄膜における磁化ダイナミクスの下地層による効果を検討し、αと他の磁気パラメータとの関連性について議論する。 下地層がPtの場合、いずれの膜厚においてもαの値はTa下地層を用いた場合に比べて高くなった。飽和磁気ひずみλ_sは、下地層がTaの場合、λ_sは膜厚の増加にともない増加し、その後一定となった。下地層がPtの場合にはλ_sは膜厚によらずほぼ一定となった。また、いずれの下地層においても10 nm以下の薄い膜厚でλ_sが低下するとαが増加した。以上より、αとλ_sに関連性があることが示唆される。

2-096

窒素/水素混合プラズマ照射したパーメンジュールの構造変化

◎萩原 涼・田中源太郎・水上千博・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）

窒化鉄は窒素濃度により、異なる結晶構造をとる。東北大学の高橋博士らは抵抗加熱による真空蒸着を用いて作製したα-FeとFe系窒化物であるα”-Fe16N2の二相からなる窒化鉄薄膜が高飽和磁化値を有することを報告した。50%Feと50%Coの組成であるパーメンジュールは、磁性材料の中で最も高い飽和磁化を有している。これらより、パーメンジュール薄板に窒素プラズマ照射して、条件を変化させたときの結晶構造及び磁気特性の比較検討を行った。

2-097

非結晶合金材料の熱処理による検討

◎矢澤翔大・田中志弥・河村優里・工藤俊平・小嶋一希・堤 薫・坂野聖治・萩原 涼・新妻清純（日本大学）

現在，主流となっている車載用電子部品材料であるフェライトはキュリー温度が200 ℃程度と高温環境では磁気特性が劣化する問題がある。そこで私たちが着目したのは非結晶合金である。非結晶合金材料は磁性材料の軟磁性材料で、結晶構造を持たない合金であり、400 ℃程度で使用した場合にも磁性が失われない。磁性材料の磁気特性は磁気異方性に左右されるが、非結晶であるアモルファスは磁気異方性がないため、磁歪に基づく異方性の効果が顕著に現れる。 本研究では、アモルファス合金のノイズ除去性能、損失が少ないことによる高周波用途に注目し、熱処理温度を変化することによる特性を検討した。

2-098

三相変圧器鉄心の騒音・振動測定（1）

◎川村悠祐・溝上雅人（日本製鉄）

近年，市街地の拡大等によりトランス低騒音化のニーズが顕著に高まっている。トランス騒音は鉄心の機械振動によって生じ，鉄心の機械振動の一つの要因は方向性電磁鋼板の磁歪現象であると考えられている。このように，方向性電磁鋼板の磁歪が鉄心振動となり騒音となることは広く知られているものの，これらの間の関係性についての検討は多くない。そこで，本報告では，トランス騒音と振動，素材の磁歪の関係性を明らかとするため，それぞれの測定結果の周波数スペクトルを比較した。

2-099

温度測定による鉄損測定法の基礎検討

◎植田大輝・佐藤敏郎・曽根原 誠・南澤俊孝（信州大学）

鉄心の重要な特性の一つに鉄損が挙げられるが，高周波化かつ低鉄損になると，従来の代表的な鉄損測定法である二巻線法では測定が難しい．本研究ではMHz帯での鉄損測定法として，従来の電気的測定法ではなく，鉄心の温度測定による鉄損評価を検討し，その測定結果について発表する．

2-100

電磁鋼板の単板磁気特性試験法における最急降下法を用いた波形制御に関する検討

◎風見浩之・髙橋良彰・岡本吉史（法政大学）

磁気特性の標準測定法として，単板磁気特性試験法がある．この評価方法では，回路定数によって差異が発生せぬように，磁束正弦波条件を満足して，励磁電圧波形を適切に歪ませる必要がある．高磁束密度領域において，従来の波形制御法（従来法）では，測定時間の増大，各フィードバック係数による収束特性の差異等が問題となる．従来の最適化による波形制御では，準ニュートン法が使用されているが，本稿では，回路方程式に基づく波形推定後，最適化手法に最急降下法を実装し，波形制御を検討した．

2-101

セーフティーハイブリッドシステム用マグネットクラッチの検討

◎八巻快生・山田 洋（仙台高等専門学校）・玉川 晟（仙台高等専門学校専攻科）・高田健一（宮城県産業技術総合センター）・高橋智樹・鈴木浩一・佐々木 拓（東洋機械）

本研究は、鉄道保守用特殊車両で用いられる摩擦クラッチの構造を、永久磁石を使用する事により非接触で動力伝達を行う構造に変換した、大容量非接触式マグネットクラッチの研究を行ったものである。本報告では1/2サイズの2Dモデルのシミュレーションを行い、マグネットクラッチのトルク特性解析結果を報告する。

2-102

磁気計測における自動車の環境雑音の影響評価

◎齊藤大介・小嵐愛子・林 実・若林俊輝・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）

磁気計測技術は幅広い分野で活用され、使用される環境も様々であるため、磁気計測における環境磁気雑音の影響を考慮する必要がある。そこで代表的な環境雑音である、自動車や電車などの交通機関が発生している磁気ノイズを調査した。走行する自動車の磁気ノイズを測定した結果、自動車から一定方向の磁場が発生しており、その大きさがμTオーダーであることがわかった。また、自動車の速度と磁気ノイズの周波数成分に相関関係がみられ、その周波数帯域は極低周波であった。また自動車の磁気雑音は自動車自体の強磁性による地磁気の歪みでなく、自動車自体の磁化によるものだとわかった。

2-103

磁性テープ適用による高周波トランスの交流抵抗低減

◎橋本あかり・志村和大・佐藤光秀・水野 勉（信州大学）

電子機器の小型化に伴い，トランスの小型化が求められている。トランスは高周波化により小型化が可能であるが，高周波化により交流抵抗が増加する。そのために，高周波帯における交流抵抗の低減が求められている。 コイルの交流抵抗を低減させる技術として，銅リッツ線(Litz Copper Wire 以下LCW)に磁性テープを巻いた磁性テープリッツ線コイル(Magnetic tape Litz wire 以下 MLW)があげられる。 本論文では交流抵抗低減のため，巻線にMLWを用いたトランスを提案した。また，巻線にLCWを用いたトランスとの抵抗の比較を行った。巻線にMLWを用いた場合， LCWを用いた場合と比較すると交流抵抗を7.4%低減することができた。これよりトランスの巻線にMLWを用いた場合，高周波帯においてトランスの低損失化が期待できる。

2-104

扁平および球形磁性粉末コンポジット磁心からなるハイブリッド磁気回路プレーナパワーインダクタ

◎石田 嵩・梶原あさみ・白澤智寛・佐藤敏郎・曽根原 誠・宮地幸祐（信州大学）

近年，LSI等の集積回路は，低電圧・大電流駆動となっており，電源－LSI間の配線損失の増大が問題となっている．この配線損失の低減のため，電源をLSI近傍に配置する方式が取られており，パッケージ内にパワーインダクタを集積化したDC-DCコンバータが試作されている．本報告では，パッケージに集積化されるパワーインダクタの課題であるフットプリントの縮小，高Q値化を目的として，鉄系アモルファス合金粉末／エポキシコンポジットシートと低磁歪ナノ結晶合金扁平粉末／非磁性樹脂コンポジットシートを磁心に用いた有機インターポーザ内蔵平面スパイラルインダクタの構造を提案し，その特性解析を行った結果について述べる．

2-105

光プローブ電流センサの広帯域ランダム振動試験による耐振性能評価

◎古屋一輝・岩見晃希・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

本発表では，JIS規格で定められている航空機や宇宙船，地上車両などの使用環境下において生じるランダム振動に基づく広帯域ランダム振動試験（JIS C 60068-2-64:2011，環境試験方法 -電気・電子- 第2-64部）によるFaraday効果利用型光プローブ電流センサの耐振性能を評価した結果について述べる．

2-106

金属磁性扁平粉末を使用した基板埋込型トランスの結合係数の調整方法

◎白澤智寛・馬場海帆・石田 嵩・佐藤敏郎・曽根原 誠・南澤俊孝（信州大学）

近年のLSIは，小型で高効率なものを求められている．LSIの小型化に向けて電源を構成する受動部品の小型化が技術課題となっている．そこで筆者らは受動部品の中でもトランスに着目し，基板埋込型リーケージトランスの検討を行った．本稿ではトランスの性能指標の一つである結合係数の調整方法について述べる．一般的なリーケージトランスの結合係数80%を得るため，一次巻線と二次巻線の間を空気層及び磁性材料とし，その厚さを変更することで結合係数を調整した．その結果結合係数は，空気層モデルでは厚さ350 [µm]となる一方で磁性材料モデルでは厚さ100 [µm]で満足できることが明らかとなった．

2-107

測定対象との距離変動に対するロバスト性の高い鋼床版検査装置の検討

◎堀田明良・井上 甚・佐野恵美子・渡邊佳正・岡田泰行・澤 良次（三菱電機）

鋼橋の舗装下にある鋼床版の亀裂を効率的に検査するため、渦電流探傷装置を車載して一般車両と同じ速度で走行しながら点検を行う検査技術を検討している．走行時に亀裂を検出する場合、車両の振動や舗装の厚さが変動する影響で、検査を担う磁気センサと鋼床版の距離(ギャップ)が変動し、検出感度が低下するという課題がある．本発表では、検出感度がギャップ変動に対してロバストな装置の構成について、磁界解析を用いて検討した結果について報告する．解析で得られた磁界分布から、亀裂検出に最適なセンサ位置はギャップに比例すると分かった．ギャップに応じて適切な位置の磁界を検査に用いることで、ロバストな装置が実現できると考える．

2-108

FEM解析に基づく電力制御用可変インダクタの鉄損評価（その2）

◎関場陽一（電力計算センター）・有松健司・大日向 敬（東北電力）

可変インダクタの磁心を積層鋼板により構成する場合，設計上の最適構成の検討にあたっては積層方法による損失の変化等をシミュレーションにより評価できることが望ましい。筆者らは以前に，FEM磁界解析に基づき可変インダクタの鉄損を評価する手法について基礎的検討を行った。今回，前報に対する追加検証として，ヒステリシス損算定にプレイモデルを適用し精度向上を図るとともに，評価手法の更なる妥当性検証のため可変インダクタにギャップを挿入したケースに対して適用を行ったので報告する。

2-109

散乱体をランダム配置したFDTD法による筋血管内の近赤外光散乱シミュレーション

◎阿部直弥・野口 聡（北海道大学）

今日、健康の維持増進のための筋力トレーニングが注目されており、筋力トレーニングの運動処方を確立するために必要な要素を取り入れた拡散相関分光法（Diffuse Correlation Spectroscopy (DCS)法）を応用する研究が報告されている。DCS法は近赤外光を用いた血流速度の計測手法であり、体表面に近赤外光を入射させて計測を行う。また、近赤外光を入射する入射プローブと拡散光を取り入れる受光プローブとの距離(プローブ間距離)と血流動態を計測できる深さに関連があると言われている。本報告では、時間領域差分法(Finite Difference Time Domain (FDTD)法)による電磁場解析を行い、光散乱シミュレーションを実行することで、プローブ間距離と生体深部の血流計測の関係を明らかにすることを目指している。

2-110

3次元磁場ベクトルと永久磁石を用いたワイヤレス触覚提示手法に関する検討

◎佐野友輝・枦 修一郎・石山和志（東北大学）

3軸コイルと永久磁石を用いた触覚提示手法に関する検討を行った。本方式ではワイヤレス、バッテリレスかつ遮蔽物の影響を受けない。磁場勾配により磁石に力を加えたが、力が微小なため感じることはできなかった。次に回転磁場により磁石を振動させ、200Hz付近で最も大きな触覚を得られ、コイルと磁石を用いた触覚提示手法の可能性を明らかにした。

2-111

非線形時間調和渦電流解析を用いたかご形誘導電動機のトルク算定に関する基礎的検討

◎宇野 賢・藤原耕二・髙橋康人（同志社大学）

電動機の高度な制御系設計のために，高速・高精度に回路シミュレーションを実行できる非線形モータモデル（ビヘイビアモデル）が用いられている．しかしながら，誘導機の場合には電流および回転子位置の依存性に加えてすべりも考慮する必要があり，同期モータと比較してモデルの構築が容易ではない．そこで本稿では，誘導機の効率的かつ高精度なビヘイビアモデル構築を目的とした基礎検討として，非線形時間調和渦電流解析（jω法）を用いたトルク算定の妥当性を検証した．その結果，特に全閉スロットを有する誘導機では，非線形jω法を用いたトルク算定が有効であった．

2-112

準直流磁気特性測定における励磁電圧波形推定の有効性検証

◎梶原千聖・髙橋康人・藤原耕二（同志社大学）

磁気特性測定において，励磁部の回路定数に起因して測定結果に差異が生じないように，Bコイルの誘導起電力波形が正弦波になるように励磁電圧波形を適切な歪波に制御する必要がある．その制御方法として従来からディジタルフィードバックによる波形制御法が用いられている．しかしながら，極低周波における測定では，従来のディジタルフィードバックによる波形制御法は，測定時間が非常に長くなるため不向きである．そこで本稿では，構造材の準直流磁気特性測定において励磁部の回路方程式に基づく波形制御法を適用し，その有効性を検証した．

2-113

半導体基板による磁性薄膜インダクタの鏡像

原 健（リコー電子デバイス）・○山口正洋（東北大学）

半導体基板上にスパイラルコイルを置くと、半導体基板の導電性によって不完全な鏡像を生じ、空心インダクタンスが減少する一方で、磁性体によりインダクタンスが増加する効果も重畳すると考えられる。本論文では、片面磁性薄膜インダクタで磁性体の良否を推測する際、これら2要因を総合的に考慮する必要があることを報告する。

2-114

FPGAによる磁束波形制御の高速化手法

○相原 茂（ブライテック）・戸髙 孝（大分大学）・下地広泰・沓掛暁史・池田 哲（大分県産業科学技術センター）

電磁鋼板の交流磁気特性測定は磁束密度波形を正弦波にフィードバック制御して測定する必要がある。しかしながら、磁気特性の非線形性により、高磁束密度領域の磁束密度波形を正弦波に制御する時間が増大する。本研究では波形フィードバック制御をソフトウェアからFPGA(Field Programmable Gate Array)を使用したハードウェア制御をすることで測定時間の短縮が可能となった。測定には50A1300を使用し0.1Tから2.0Tまで0.05T刻みで39条件でFPGAのハードウェア制御で252秒で、ソフトウェア制御では12388秒ある。

2-115

軟磁性薄膜を有するCPW線路を用いた反射型磁気センサ

○早坂淳一・菅原和幸・植竹宏明・荒井賢一（電磁材料研究所）

心磁図等の生体磁気情報の計測を目的として，マイクロストリップやコプレーナ線路の伝送線路上に軟磁性薄膜を配した高感度な磁気センサが報告されている．これらの磁気センサは，外部磁場に対する伝送特性S21の変化を利用したものであり，センサ部が2ポート構成となっているため，センサヘッドの小型化，アレイ化が困難であった．本稿では1ポート構成によるコプレーナ伝送線路の反射特性を利用した磁気センサシステムの試作，評価結果について報告する．

2-116

磁気粒子イメージングにおける第五高調波磁化信号を用いた液相・固相サンプル識別法の開発

◎野口裕希・東 大路・圓福敬二・吉田 敬（九州大学）

磁気ナノ粒子の表面に検査試薬等を結合させたものを磁気マーカーと呼び、その生体への影響が極めて小さい点と粒子の小ささから様々な医療応用が期待されている。この磁気マーカーを体内に投与し、励起磁界を印加することで発生する磁化信号を検出し、疾患部位の特定を行う磁気粒子イメージング(MPI)が医療診断技術として注目されている。本研究では、300 µgの磁気ナノ粒子を水で希釈した液相サンプルと、接着剤で固定した固相サンプルを作成した。以前まで検出対象としていた第三高調波ではなく第五高調波の信号特性を解析することにより、これらの2種類のサンプルを同時に測定しながらも、識別して画像化することが可能であると明らかにした。

2-117

血清濃度変化による磁気ナノ粒子の磁気特性の影響

◎山下 慶・平松文太・神野克也・綱島健太・藤元佳代・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）・Mohd Mawardi Bin Saari Mohd Mawardi Bin Saari（Universiti Malaysia Pahang）

現在，磁気ナノ粒子による検査，治療の研究が進められており磁気ナノ粒子の磁気特性はこれらの応用利用のために重要な役割を担っている．本研究では，溶媒に血清を添加し，血清濃度が磁気ナノ粒子の磁気特性に与える影響を評価した．磁気特性評価のために振動試料型磁力計を用いて直流磁化曲線を測定し，得られた磁化曲線から磁気モーメント分布を解析した．さらに，磁気特性の違いをより理解するためにダイナミック光散乱光度計を用いて粒子径分布測定を行った．これらの結果から，溶媒中の血清濃度が増加するにつれて磁気ナノ粒子が凝集し，磁気特性に影響を与えることが確認された．

2-118

磁気ナノ粒子の固相/液相変化による周波数磁場応答特性の変化

◎平松文太・山下 慶・神野克也・綱島健太・藤元佳与・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）

磁気ナノ粒子は超常磁性を示すナノサイズの磁性粒子であり，生体への適合性から医療関連の分野での研究が盛んにおこなわれている．近年， Magnetic Particle Imaging (MPI)と呼ばれる，体内に注入したMNPsからの磁気信号を磁気センサで検出することで，癌などの疾患の画像化を行う新しいイメージング法が注目されており，検出方法の開発と用いる磁気ナノ粒子の磁気応答特性の最適化が行われている。実用化のためには，標的物質に結合したMNPsと未結合のMNPsの信号の分離が重要な課題と考えられ，本研究では，その分離のために磁気ナノ粒子の状態変化による周波数磁場応答特性の変化ついて調査した．