一般講演

3-001

送電線用高速ディジタル電力線搬送のシンボルタイミング生成に用いる自己相関器の検討

○花海 丞（通研電気工業）・鈴木英祐（東北電力）・佐々木範雄（通研電気工業）

送電線用電力線搬送での高速ディジタル伝送において，受信信号からシンボルタイミングを生成する際に用いる相関器について，伝送フレームに用いる符号系列（Zadoff-Chu系列）の偶対称性を利用した自己相関器を検討した。 シミュレーションによる相互相関器との比較検証の結果，検討した自己相関器は，伝送路の雑音や歪みの影響を受け難く，長遅延伝送路となる送電線用高速電力線搬送での高精度なシンボルタイミング生成に有効であることを確認した。また，相互相関器に比べて回路規模を小さくすることができ，実機製作においてコスト面でも有効である。

3-002

変電所を対象とした遠隔状態監視用無線ネットワーク構成法のフィールド試験

○遊佐博幸・石野隆一・白井正樹（電力中央研究所）・杉本敏文（中部電力）

変電所巡視において、可視画像や赤外線画像を撮影できるネットワークカメラを用いた省力化が期待されている。そのためには、変電所構内のネットワークカメラの利用において、無線LANを適用することが効果的である。我々は、無線LANを用いた遠隔状態監視用無線ネットワークの構成法を提案し、実際の77 kV変電所において無線ネットワークを構築して、約1年間のフィールド試験を進めている。本論文では、フィールド試験の途中経過結果を示すとともに、無線ネットワークの構成を改善する方策を検討し、その効果を評価した結果について示す。

3-003

地中送電線保守に向けたマンホール内部からの920 MHz帯電波伝搬特性に関する一検討

○宮下充史（電力中央研究所）

分散電源の大量導入に伴い、電力設備はより過酷な運転状況となることが想定される。このような状況において、設備の定期点検や保守に関わるコストの低減を実現するためには、IoT技術を活用したセンシングデータの遠隔自動収集により、設備の状態を適切に把握することが重要となる。本稿では、地中送電線保守に向け、マンホール内部のセンシングデータを地上に伝送するシステムを想定し、マンホール内外の電波伝搬損失をFDTD（有限差分時間領域）法により評価した。その結果、マンホールが2重蓋構成の場合の遮蔽損失量は30.0 dBとなり、1重蓋の11.9 dBより20 dB近く大きくなる可能性があることを示した。

3-004

IP化されたリレー情報のマイクロ波回線収容のための無線装置での滞留時間計測性能評価

○大場英二・小久保翔太・田中彰浩・遊佐博幸・芹澤善積（電力中央研究所）

IP化された保護リレー情報をマイクロ波回線に収容する際、遅延時間・遅延時間変動が問題となる。このうち遅延時間変動への対策として、電力中央研究所ではIEC 61588方式（PTP：Precision Time Protocol）を用いる方式を提案している。マイクロ波回線上において、PTP情報を適切に伝送するため、対向するマイクロ波無線装置間で精度よく通過時間（滞留時間）を計測する方法を考案し、試作・評価したのでその結果について報告する。

3-005

小型無人航空機が使用する周波数における電波環境に関する研究開発

○北沢祥一・谷口美緒・木村壮寛・渡辺拓哉・横山 稜・玉置理奈・上羽正純（室蘭工業大学）

小型無人航空機はホビー用途だけではなく、様々な産業用の活用が期待されている。小型無人航空機が利用する電波は、主に920 MHz帯、 2.4 GHz帯、 5.6 GHz帯、 5.7GHz帯のアンライセンスバンドであり、既存の自営無線システムや隣接帯域の無線システムが存在しており、これらの無線システムとの干渉が懸念されている。本研究ではこれらの周波数帯での電波環境測定について検討を行う。本報告ではその概要について述べる。

3-006

微細加工技術を用いたマルチチャンネル光免疫センサの作製

◎浅沼健太・菅原一輝・加藤 茂・鈴木誠一（成蹊大学）

疾病の検査において、一度に多成分を同時分析できる装置を定期検診に導入することができれば、疾病を初期の段階で発見することができるようになる。現在まで、多成分の免疫検査ができるセンサの開発が進められてきたが、いずれも非特異吸着の影響を受けるため、混合試料での測定は実現していない。本研究では、原理的に非特異吸着の影響を受けない蛍光異方性測定を用いて複数抗体を固定し、多くの病種を一度で判別できるマルチチャンネル免疫センサの開発を行った。先行研究では、蛍光修飾抗体溶液に粘性を付けることでマイクロスポット化に成功しているが、実用化の為にはスポットを微細化し、より多くの抗体を固定化する必要がある。そこで、今回は基板に高精度な微細加工をし、大量生産を可能にするために、フォトリソグラフィを用いた基板の微細加工について検討した。

3-007

視覚障がい者のナビゲーションにおける現地の状況を提示する視覚聴覚変換システムの開発

◎濱野聡史・菅原一輝・加藤 茂・鈴木誠一（成蹊大学）

本研究では街中での視覚障がい者のナビゲーションにおいて、視覚聴覚変換を利用して現地の詳細情報を提示する装置の開発を目指す。この視覚障がい者支援システムは、ネットワークに接続して、障がい者が装着したカメラにより撮影した画像から、看板の文字や道・駐車車両などの物体を抽出・認識、その内容を音声によって、使用者に伝達するものである。抽出、認識は、ネットワーク上のgoogle-cloudのサービスを利用する。このシステムは、被験者に役に立つこと、楽しさを感じてもらえることが重要なポイントとなる。このことから、上記のシステムを試験的に作成し実際に視覚障がい者に使用してもらい使い勝手のデータを収集した。

3-008

平面型免疫アッセイシステムのための高浸潤性マトリクスの開発

◎原田千聖・鈴木誠一・菅原一輝・加藤 茂（成蹊大学）

僻地におけるマラリア等の感染症拡大防止には、小型で可搬性が高い診断器機を用いた感染分布の把握が有効である。そこでμ-TAS技術を用いた微細流路型検査システムで、小型で低コストの検査キットを作製する。システムの流路にはガラス基板上に形成した薄膜型の多孔質シリカハイドロゲルを用いる。キャリア溶液は毛管現象によってゲル内部に浸潤する。ゲル流路は抗体などの固定化マトリクスとなるため、高い比表面積を持つ多孔質体であることが望ましい。本研究では多孔度の高いゲル薄膜の形成条件を検討した。

3-009

視覚障がい者補助のための仮想立体音提示システムの開発

◎石田春海・菅原一輝・加藤 茂・鈴木誠一（成蹊大学）

一般に、視覚障がいを持つ人は、健常者に比べて交通機関の事故に遭遇する確率が高い。理由として、視覚障がい者のおおよそは白杖で得られる触覚情報と、受動的な聴覚情報を頼りに歩行しているため、白杖では届かない距離の情報が得られず、危険察知が遅れることがあげられる。視覚を聴覚に置き換えることで、中距離以上の危険を察知すれば、視覚障がい者の事故確率を減少させることができる。本研究では、カメラ画像から障害物の位置情報を取得し、3次元的な位置情報を乗せた立体音として提示する、視覚聴覚変換システムを開発する。試作したシステムを用い、複数種類用意した音源サンプルを用いて、立体音の種類によって物体の位置がどれだけの精度で認識できるか被験者実験を行った。

3-010

水中放電後の放置時間が染色液の脱色に与える影響

○小松 真（岩手医科大学）

水中パルス放電で染色液を脱色し、放電後の放置時間ならびに放電点数の影響を実験的に確認した。10 mg/L インジゴカルミン溶液10 mL中にワイヤー状対向電極を設置し、放電電圧4 kV、コンデンサ0.2 F でパルス放電を30回作用させた。放電後の放置時間毎に溶液の脱色を計測し、さらに対向電極1組（1放電点）、対向電極並列2組（2放電点）の2条件で結果を比較した。30放電後数分では脱色の度合いは小さいが、6時間以上経過すると全条件で脱色され透明の精製水に近くなった。一方気泡は正極でのみ成長し放電点数による脱色に違いはなかった。この結果は染色液の脱色が瞬間的でなく、脱色に関わる反応が数時間以上継続する可能性を示唆していた。

3-011

齧歯類可聴域に周波数選択性を有する圧電性音響センサの開発

◎桑野拓巳・西川 淳（北海道大学）・佐藤和郎・村上修一（大阪産業技術研究所）・舘野 高（北海道大学）

本研究では，聴覚補綴システムのフロントエンド・デバイスとして実験動物の齧歯類可聴周波数域に応答する圧電性音響センサを微細加工技術により開発することを目的としている．音響センサの特徴として，高い応答感受性，優れた周波数選択性，および，低電力消費の特徴を実現するために，設計する構造物の物理特性を有限要素法によって解析した．次に，その数値計算の結果に基づき，圧電材料を用いた片持ち梁構造をもつ音響センサの一構成法を提案した．最後に，微細加工技術を用いて試作したセンサの物理的特性を音響計測により評価した．本システムの将来的な応用例として，齧歯類動物の聴覚皮質に対し電気的刺激を行う聴覚補綴システムがあげられる．

3-012

In vivo神経活動を誘発するマイクロ磁気刺激法の基礎的検討

◎須貝俊介・西川 淳（北海道大学）・佐藤和郎・村上修一（大阪産業技術研究所）・舘野 高（北海道大学）

経頭蓋磁気刺激法は近年神経疾患の治療法として広く注目されている．しかし，その刺激印加部は大型であるために，刺激における正確な脳領域とその誘発機序について不明な点が多い．本研究では，侵襲的に脳を磁場で局所刺激する刺入型マイクロコイルを製作した．まず，同心円形状のコイルに注目し，直径が異なる半円形状コイルの誘導電場を数値計算によって推定した．次に，その計算結果から同心円型コイルで神経活動を誘発するための最適なコイル直径を比較検討した．最後に，齧歯類生体脳の自家蛍光タンパク質イメージング法を用いて磁気刺激応答を計測し，数値計算の妥当性を評価した．本研究は，今後，神経細胞レベルでの磁気刺激機序の解明に寄与すると期待される．

3-013

臨床使用を念頭に置いた選択式脳低温療法のための温度管理装置試作機の特性

○本間 達・若松秀俊（東京医科歯科大学）

Selective brain hypothermia is discussed as a new clinical technique to prevent the secondary side effects. It controls temperature of a brain by cooling effectively a part of inflammation, keeping the upper trunk temperature within its appropriate range. In this study, we confirm the performance of our prototype system for its bedside application.

3-014

電荷駆動増幅器の最適設計方法

中根功太郎・○大畠賢一（鹿児島大学）

低電力な増幅回路として電荷駆動増幅器が知られているが、性能（利得、雑音、消費電力）と回路パラメータ間の関係は非常に複雑であり、最適設計を行うことが難しかった。本研究では利得、雑音、消費電力の簡易モデルを作成し、性能と回路パラメータの関係を整理した。また、このモデルを用いて所望の利得、雑音が与えられたときに、消費電力を最小化する最適設計法を提案した。

3-015

GHz帯用広帯域薄膜コモンモードフィルタの基礎検討

◎足立壮平・曽根原 誠（信州大学）・中山英俊（長野工業高等専門学校）・櫛田遥介・佐藤敏郎（信州大学）

安全安心の社会を目指す上で必要な機器の一つに高精細で小型軽量な監視カメラや車載カメラなどが挙げられる．カメラからの情報は差動信号伝送方式によるディジタル通信が用いられることが多く，コモンモードフィルタ (CMF) は必要不可欠であるが構造上集積化が困難である．我々は過去に薄膜CMFを開発したがディファレンシャルモードの通過帯域は狭帯域であるため筆者らは複数の異なる通過帯域の薄膜CMFの並列接続を検討した．本発表では 2 GHzを基本波とし第5次高調波までの10 GHzを目標周波数帯域とし3次元電磁界解析ソフトを用いた。特性解析の結果，2, 4, 6, 8, 10 [GHz]においてディファレンシャルモードの挿入損失は約5dBでコモンモードの減衰は約25dBであった．

3-016

電圧フィードバック制御回路の製作とその評価

◎山田晃嵩・土井敦史・佐藤宣夫（千葉工業大学）

半導体デバイスに代表される微細加工技術では，加工線幅が100 nm以下にまで到達し，従来の半導体素子に比べて10倍以上の大幅な微細化が期待できる．小型化するほど半導体デバイスの高性能化に繋がることから，ナノ領域での計測技術は重要性を増している．今後，様々な半導体デバイスの微細化において，解析技術の需要も高まると考えられることから，ナノスケールでの観測・評価が重要となる．特に，観測精度を決定する要因の一つとなるフィードバック制御回路は，試料を安定かつ高速に観測するために必要不可欠である．本研究では，走査型プローブ顕微鏡によるナノスケール観測の精度向上のため，新たに電圧フィードバック制御回路を作製し，その周波数特性による評価を行った．

3-017

2つのPLLによるピーク周波数自動追従回路とFSK変調回路とを備えた磁界共鳴方式電力・データ同時伝送回路の実装検討

◎藤田誉大・和田和千（明治大学）

磁界共鳴方式の無線電力伝送回路の送電部にFSK変調を適用することにより，電力とデータを同時に伝送するシステムの実装について述べる．同システムは，無線電力伝送回路の周波数特性における双峰性のピーク周波数を追従する2つのPLLを備え，それらの出力をデータに対応して切り替えることにより，FSK変調を実現する．受電側回路における負荷抵抗の両端電圧のスペクトルを測定することにより，実装したシステムが正しく動作することを確認する．