一般講演

4-001

1.2 kV SBD内蔵トレンチMOSFET(SWITCH-MOS)のターンオフ耐量解析

◎松井ケビン・戸高駿希・饗場塁士・大川雅貴・金森大河（筑波大学）・原田信介（産業技術総合研究所）・矢野裕司・岩室憲幸（筑波大学）

SBD内蔵SiCトレンチMOSFET（通称:SWITCH-MOS）は、内蔵されたSBDにより、SiC-MOSFETの課題の一つである順方向電圧特性劣化を解決している。しかし先行研究で、SWITCH-MOSは従来SiCトレンチMOSFET(IE-UMOSFET)に比べて負荷短絡耐量が半分程度であり、その負荷短絡耐量の低下が内蔵SBDからのもれ電流によるものであることが報告された。本実験では、SWITCH-MOSのターンオフ耐量を評価し、それに対する内蔵SBDの影響を解析した。その結果、負荷短絡耐量の場合とは異なり、SWITCH-MOSのターンオフ耐量はIE-UMOSFETとほとんど変わらなかった。これは、負荷短絡期間に比べターンオフ期間が短いため、ショットキー接合部の温度が上昇せず、内蔵SBDからのもれ電流がほとんど発生しないからであると考えられる。

4-002

損失アンバランスを考慮した並列接続SiCパワーモジュールの組合せ手法

◎安東正登・小暮浩史・河野恭彦・石川勝美（日立製作所）

インバータ大容量化の一手段として，パワーモジュールの並列接続がある。この場合，モジュール間の損失アンバランス低減が課題である。モジュール特性差起因の損失評価結果やアクティブゲート回路によるアンバランス低減手法は報告されているが，具体的なモジュール組合せ手法は十分に検討されていない。 本稿では，モジュールの特性差と損失アンバランスの関係から，並列接続モジュールの組み合わせを選定する手法を提案する。本手法評価用にSiCモジュールを試作し，モジュール2並列でのスイッチング試験を実施する。さらに，本試験結果から特性差と損失アンバランスの関係を関数化し，モジュールの具体的組合せマップを明らかにする。

4-003

SiC-MOSFETの高温動作時のスイッチング特性

○佐藤伸二・加藤史樹・宝藏寺裕之・佐藤 弘・山口 浩・原田信介（産業技術総合研究所）

SiCやGaNなどのワイドギャップ半導体を使用したパワーデバイスはSiデバイスよりも高い不純物濃度かつ薄いドリフト層で作製できるため、導通時の抵抗値を小さくできる。また、ユニポーラデバイスであるためスイッチング時間が短く、スイッチング損失を小さくできる。これらの特徴を利用することで電力変換器の低損失化や高周波動作が実現できる。さらに、高温動作が可能であり、400℃での動作も報告されている。 一般にMOSFET構造には逆並列方向にPN接合ダイオードが組み込まれている。PN接合ダイオードは温度上昇によってリカバリ特性が悪化しサージを発生する。上述の通り、SiC-MOSFETは高温でも動作可能であるが、リカバリ特性はあまり議論されていない。本報告では、SiC-MOSFETの動作温度とスイッチングサージの関係について考察する。

4-004

SiCトレンチ MOSFET内蔵pinダイオードにおける逆回復特性の負ゲートバイアス依存性

◎金森大河・饗場塁士・大川雅貴（筑波大学）・原田信介（産業技術総合研究所）・矢野裕司・岩室憲幸（筑波大学）

チャネル長の異なる1.2kV級SiC IE-UMOSFETを用い、内蔵pinダイオードの逆回復特性の負ゲートバイアスの依存性を評価解析した。その結果、チャネル長0.8µm素子の場合、負ゲートバイアスの値に依らず逆回復特性およびターンオン損失は変化しないが、チャネル長0.4µm素子は、チャネル部からのもれ電流により、逆回復損失は負ゲートバイアスを印加した方が印加しない方に比べ損失が26％、ターンオン損失が15％大きくなった。よってチャネル長0.4µm素子は、特性は負ゲートバイアスに依存することがわかった。

4-005

SiC p+/p-/n+ダイオードにおける逆回復特性の順方向動作依存性の解析

◎亀和田 亮・饗場塁土・矢野裕司・岩室憲幸（筑波大学）

高電圧・高速パルス発生用素子としてSiC p+/p-/n+ダイオードの研究を行っている。本報告では，シリコンとSiC n,pMOSFETのボディダイオードの測定から，ダイオードの順方向電流導通時の伝導度変調と逆回復特性の依存性について解析した。さらにTCADシミュレーションを用いてSiC p+/p-/n+ダイオードにおける逆回復特性のオン時間依存性を計算した。この結果から，SiC p+/p-/n+ダイオードにおいて高電圧・高速パルスを得るためには，p-層における少数キャリアのライフタイムや，オン時間を長くし，十分に伝導度変調させる必要があることが分かった。さらに，TCADシミュレーションを用いたオン時間中における素子内部の伝導度変調状態の解析結果についても議論する。

4-006

1.2 kV SiCトレンチMOSFETのRBSOA解析

○戸高駿希・松井ケビン・饗場塁士・大川雅貴・金森大河（筑波大学）・原田信介（産業技術総合研究所）・矢野裕司・岩室憲幸（筑波大学）

Short-Channel IE-UMOSFET はチャネル長がIE-UMOSFETの半分であり、しきい値電圧も約0.9 V低いため、飽和電流値が大きな値となった。そのためShort-Channel IE-UMOSFETの最大ターンオフ電流は、IE-UMOSFETの2.4倍、市販Si-IGBTの6倍という非常に大きな値を示し、RBSOA は実使用上問題の無いレベルにあるといえる。さらにShort-Channel IE-UMOSFETは特性オン抵抗が2.4 mΩcm² と十分低いオン抵抗特性を示すにもかかわらず、十分広いRBSOA 特性を示すことも併せて分かった。これはターンオフ時の素子内温度が388 Kと、SiC内で電子・正孔対が熱励起するほどの高温に達しないため、寄生npn トランジスタが動作しにくいことが原因であると考えられる。

4-007

SiC-MOSFET向け10MHz駆動回路の検証

◎髙久佳雅・吉田健人・中田修平（金沢工業大学）

SiCやGaNを用いた次世代パワーデバイスは、Siではできない低オン抵抗特性及び高速動作が可能である。これによりパワエレ機器を大幅に小型化できる。しかしSiデバイス向けゲート駆動回路では、10MHZを超えるような高周波駆動はできない。そこで本稿ではGaN-FETを使用したSiC-MOSFET向け10MHz絶縁ゲート駆動回路を試作し、昇圧チョッパに適用したので結果について報告する。 本稿で試作したゲート駆動回路ではSiC-MOSFETを駆動するために、プリドライバとしてGaN-FETを使用した。さらに負バイアスにより動作を安定させた。これによりスイッチング周波数10MHzでデューティ比がを30%から70%可変でき、SiC-MOSFETの高周波駆動が行えることを確認した。また昇圧チョッパ回路に適用し、10MHzスイッチングによる昇圧動作を確認した。

4-008

直列接続MOSFETを対象としたアクティブゲート駆動回路の検討

◎蔵野雅尚・和田圭二（首都大学東京）・小原秀嶺（横浜国立大学）・安部征哉（九州工業大学）

従来、MOSFETのONとOFFの制御には2値の電圧を印加する手法が採用されている。スイッチングの制御を行うためのアクティブゲート駆動回路も提案されており、これまでに比べてスイッチング波形の制御を行う研究開発も盛んに行われている。本稿ではアクティブゲート駆動回路を用いることによって直列接続されたパワーデバイスのスイッチング状態において、ターンオフ時のスイッチングロス低減効果と電圧バランスについて検討を行った。

4-009

SiC-MOSFETのデッドタイムレス制御―同期整流方式に関する基礎検討4―

◎和久井拓海（茨城工業高等専門学校）・二瓶颯斗（日立オートモーティブシステムズ）・長洲正浩（茨城工業高等専門学校）・秋山 悟・石川勝美（日立製作所）

SiC-MOSFETを同期整流回路に使用するとボディダイオードが導通することで高い導通損失を発生させることや正孔の注入による結晶欠陥の増加などの問題が発生する。この問題はデッドタイムを短くすることで軽減できる。 そのため同期整流回路において本研究室で開発されているデッドタイムレス制御を適用し負荷電流増加状態から還流状態への遷移時に発生するスイッチング損失を測定した。 その結果、最も大きい損失低減効果を得られる制御回路の条件を確認し従来の制御と比較して得られる損失低減効果を確認した。

4-010

誘電エラストマーアクチュエータの高速駆動にむけた駆動回路の開発および動作検証

◎上野元貴・中村 孝・舟木 剛（大阪大学）

優れた性能を持つ誘電エラストマーは次世代アクチュエータ材料として研究が進められている。筆者らはDEアクチュエータの高速応答特性に着目し、これを利用するための駆動回路を提案し、理想的なDEアクチュエータを仮定したときの回路動作および解析を行った。本論文では作成したDEアクチュエータに対して、提案回路による動作検証を行った結果を示す。作成したDEアクチュエータに提案回路によりパルス電圧を印加した際の、水平方向変位-周波数特性を顕微鏡およびUSBカメラを用いて測定した。直流電圧印加時に比べ伸長は小さくなったが、パルス電圧印加時に電極は水平方向へ伸長しており、提案回路によりDEアクチュエータの動作が確認できた。

4-011

マルクス回路の充電動作時におけるトランスを用いたゲート駆動電力供給法の実機検証

◎大内洋佑・日下佳祐・伊東淳一（長岡技術科学大学）

近年，排ガス(NOx)処理用，殺菌処理用，医療用のパルスパワー電源としてマルクス回路が研究されている。マルクス回路は高dv/dtの電圧を出力するためにコンデンサとパワー素子をカスケード構造で構成する。そのためパワー素子のゲート回路に高い絶縁電圧のDC-DCコンバータが必要であり高コスト化する問題があった。そこで著者らはマルクス回路のプラズマ発生に影響がない充電動作経路にトランスを用いてゲート駆動電力を供給する自己給電法を採用した回路構成を提案し，その解析を行ってきた。本論文では，実験機を試作し，提案したゲート駆動電力供給法の動作検証を行ったので報告する。

4-012

同期補償によるノイズ抑制制御の改善検討

◎埴岡翔太・家澤雅宏（三菱電機）・小笠原悟司・竹本真紹・折川幸司・小原峻介（北海道大学）

従来，二重巻線構造モータや2台のモータを，独立した2台のインバータで逆位相にスイッチング制御することで，ノイズフィルタのサイズへの影響の大きい数MHz以下の伝導ノイズを抑制する制御法が提案されている。しかしながら，ドライバIC，パワーモジュールの製造バラツキ，動作温度バラツキなどによってスイッチングタイミングに同期ずれが生じて，ノイズ抑制効果が低下する課題がある。 本稿では，各素子のスイッチングタイミングの同期ずれをインバータ出力端子電圧の立ち上がり，立ち下がりの検出信号に基づいて補償する制御方式を提案し，その有効性を実機検証した。

4-013

所望の周波数帯のEMIとスイッチング損失の両方を低減するIGBTのゲート駆動方法

◎森川隆造・崔 通・畑 勝裕・高宮 真（東京大学）

A new gate driving technique using a digital gate driver IC is proposed to reduce both EMI in user-defined specific frequency band and the switching loss in IGBTs to achieve a highly efficient power converter complying with EMI regulations. The reduction is automatically achieved by repeating the switching measurements and exploring optimum gate driving vectors of the digital gate driver using a simulated annealing algorithm. In the double pulse test of IGBT at 20 A and 300 V, compared with the conventional single step gate driving, the proposed digital gate driving reduces EMI by 38 dB at maximum in the 2 MHz to 4 MHz band at the same switching loss.

4-014

近接配線によるゲート電圧保持現象の検証

碓井璃菜・◎松本瀬名・七森公碩（舞鶴工業高等専門学校）

本研究では、回路パターン上の近接配線の磁気結合をシミュレーション上で再現し、Ls- Lssの結合係数を変化させることで誤点弧ロック現象を確認した。今回の条件においては、結合係数が0.4未満であれば誤点弧ロック現象を抑制可能である。また実機において主回路電流が流れる経路とゲート配線との距離を変えた場合におけるゲート・ソース間電圧を測定し、実際の回路上においてもLs - Lssの磁気結合の影響を確認した。以上より、近傍配線による磁気結合が誤点弧ロック現象の発生に関与していると言える。

4-015

ミリ波無線を用いたディジタル伝送方式によるゲート信号伝送評価

○堤 由佳子・北川裕之・秋田耕司（東芝）・鈴木健太郎（東芝インフラシステムズ）

パワーデバイスのゲートを制御するためのPWM信号の伝送にはフォトカプラ付きのメタルワイヤ、光ファイバなどが用いられている。絶縁耐圧向上、低コスト化を目的としてゲート信号伝送の無線化を検討している。ゲート制御には高信頼で低遅延な伝送が求められる。ディジタル方式での伝送とすることで、無線で誤りが生じた場合にも誤り訂正などを施して高信頼な制御が可能となる。ミリ波無線を用いたディジタル伝送方式によりゲート信号を低遅延で伝送する評価系を構築し、伝送評価を実施した。無線伝送時の遅延の最大値は773nsec、最大と最小の差は75nsecであり、ゲート制御に適用可能な低遅延伝送が可能であることを示した。

4-016

低電圧MOSFET用アクティブゲートドライバの動作検証

◎野下裕市・鄧 明聡（九州大学）

近年，低電圧MOSFETの性能向上により，データセンターや車載に向けた48 V電力変換システムの実用化が進展している。これらのシステムを高効率化するために，スイッチング損失の低減が大きな課題となる。大容量IGBT用の電圧・電流帰還型アクティブゲートドライバ(AGD)回路(1)が提案されている。筆者らはこの中の電流帰還回路のみを利用して大容量SiC-MOSFETモジュールに適用し，効果を検討してきた(2)。本論文では同様のAGD回路を低電圧Si-MOSFETに適用し，スイッチング動作特性を実験検証したので報告する。

4-017

ゲート駆動信号への狭パルス挿入によるドレイン電圧の高周波成分の抑制

○和田幸彦（三菱電機）

損失を増やすことなくSiC MOSFETのターンオン時のドレイン電圧の高周波成分を抑制した。 ミラー期間の終了時に一瞬だけ駆動力を弱めることを狙い、定格1200V、400AのSiC MOSFETモジュールを使用してターンオン指令の約200ns後に幅20nsの極めて短時間の“OFF”指令（ノッチ）を挿入して駆動すると、ドレイン電圧波形に含まれる高周波成分が30～80MHz領域で5dB低減される一方、損失は1%も増えないことが確認された。 ハードウェアに一切手を加えず、駆動信号への狭パルス挿入だけでドレイン電圧の高周波成分を低減できることは、ソフトウェアとしてのゲート駆動技術に工夫の余地があることを示していると言える。

4-018

太陽電池パネルの発電量を向上可能な，過電流保護機能付き直列共振形モジュラー補償器

◎佐々木優介・佐藤颯人・鵜野将年（茨城大学）

太陽電池パネルの多直列接続で構成される太陽光発電システムでは，部分影によるパネルの電気特性ばらつきにより，発電量の大幅低下や複数の最大電力点の発生による最大電力点追尾制御の誤動作が懸念される。これらの問題を解消するため，種々の部分影補償器が提案されているが，パネルの短絡故障時において過大電流により補償器が故障する恐れがあるため信頼性の観点で懸念が残る。また，パネル直列数を変更する際，回路の再設計を要するため拡張性に乏しいといった課題を有する。本稿では，過電流保護機能による高い信頼性を有しつつ拡張性に優れた直列共振形モジュラー補償器を提案する。実機検証により有効性を確認したので報告する。

4-019

USPM を用いたモジュラー・マルチレベル変換器の構成と指令値生成法の検討

◎冨田 青・芳賀 仁・伊東淳一（長岡技術科学大学）

電力変換器は様々な応用分野に合わせた設計を行う為要求の変更に迅速な対応することは困難である。そこで電力変換器の要素を持つ汎用素子(USPM:Universal Smart Power Module)の開発を行っている。本稿は個々のUSPMに搭載される制御器と全体を統括する制御器の指令値生成とそれを用いた際の基本動作について報告する。

4-020

3レベル多重変換器におけるキャリア位相の中性点電位への影響

○灘 香帆（三菱電機）・田口久徳（東芝三菱電機産業システム）

電力系統に連系される高電圧大容量変換器は、複数の電力変換器を直列または並列に接続して多重化して構成されることが多い。多重化構成により、出力を高電圧、大電流化すると共に、出力高調波を低減できるという利点がある。本稿では、3レベル変換器を多重化した変換器の中性点への影響について述べる。

4-021

MMCを用いた複数の風力発電機を有する風力発電システムの単相系統連系の検討

◎石橋広成・山田洋明（山口大学）

小型風力発電機を用いた風力発電システムは発電電圧が低く，高圧系統へ直接接続するためには個別にトランスが必要となり，システム全体の体積や重量が増大する課題がある．本論文では，モジュラーマルチレベルコンバータを用いた複数の小型風力発電機の単相系統連系について検討を行う．各セルごとに風力発電機を接続し，個別に発電を行う．この発電電力を各ブリッジセルを介して系統へ逆潮流する．これにより，フィルタレス，あるいは，小容量のフィルタで高圧系統への連系が可能となる．PLECSを用いた計算機シミュレーションより，各風力発電機が異なる発電状態の場合においても発電電力を系統へ逆潮流できることを明らかにする．

4-022

マルチレベルインバータにおける低次高調波低減1パルスの検討

○多田恵子・佐竹 彰（三菱電機）・鈴木寛充・中村雅史（東芝三菱電機産業システム）

インバータにおける一般的な三角波比較PWMで出力電圧の高調波を低減するには、PWM生成に用いるキャリアの周波数を大きくする必要がある。しかし、大容量のマルチレベルインバータのようにスイッチング速度の遅い素子を用いる場合は、PWMキャリアの周波数を大きくすることができない。この解決方法として、少ないスイッチング回数を最大限に利用し、特定の低次の高調波を消去するタイミングでスイッチングを行う、低次高調波消去PWMがある。だが、この方法では、高速運転などでスイッチング回数が非常に少なくなった場合、消去できる特定次数の高波の数が減ってしまうという問題がある。本稿では、2つの3レベルスイッチング回路を組み合わせた5レベルインバータにおいて、2つのスイッチング回路でそれぞれ1パルスを出力する場合を例とし、上記の高調波消去法よりも多い次数の低次高調波を低減するタイミングでスイッチングを行えるPWM手法を提案する。

4-023

コモンフライングキャパシタコンバータ方式(CFCC)の提案第一報

◎野田和寛（名古屋大学）

近年の電力変換器には、高電力密度化が求められている。高電力密度化に有効な手段としてマルチレベル方式やインターリーブ方式が知られているが、これらの方式は部品数の大幅な増加が問題として挙げられる。本論文ではキャパシタを共有することで部品数の削減を達成したインタリーブ3レベルインバータを提案し特徴をまとめる。キャパシタを削減することにより従来の方式と比較して、小型/軽量化、低コスト化に有効である。

4-024

単相MMCにおける疑似マルチレートデッドビート制御の基礎検証

◎栗田将伍・金井なつみ・安藤 聖・横山智紀（東京電機大学）

近年MMCのようなマルチレベル変換機に関する研究が進められている．MMCに対する従来の制御手法として，平均値制御とバランス制御を組み合わせたPI制御が提案されている．しかし，このような従来手法を適用する場合，パラメータ変動による応答性や追従性の低下が問題となる．本研究では，MMCに対する応答性及び追従性を改善する制御手法として，疑似マルチレートデッドビート制御を提案し，実機検証にて有効性を確認したため報告をする．

4-025

電流不連続モードで駆動する絶縁型AC-DC マトリックスコンバータの電流ひずみ改善法

○宅間春介・渡辺大貴・伊東淳一（長岡技術科学大学）

マトリックスコンバータを用いた絶縁形AC-DC変換器の変調法としてスイッチングリプルを考慮しない空間ベクトル変調が適用されているが，直流インダクタの小型化に伴い伴い系統電流のひずみと出力直流電流の低周波成分の重畳がする問題がある。そこで本論文では，電流不連続モード駆動したときのスイッチングリプルが系統電流に与える影響を打ち消すようなデューティの補償方法を提案する。スイッチングリプルを打ち消すために高周波電圧の負の期間のベクトルの選択順を従来と反転させる。本打ち消し操作とデューティの補償によって系統電流ひずみ83％改善し，出力電流に重畳する低次周波数成分を74%低減できることを示した。

4-026

波形組替を利用した昇圧型三相インバータの系統連系動作の実機検証

◎志茂亨輔・和田圭二（首都大学東京）・Pham Ha（University of Technology Sydney）・萬年智介（筑波大学）

再生可能エネルギー利用の普及・拡大のため、三相系統連系インバータの研究が盛んにおこなわれている。従来の三相系統連系インバータは昇圧チョッパと三相インバータで構成され，すべてのパワーデバイスが高周波動作するため，変換効率の向上に制限がある。さらなる効率向上のため，波形組替を利用した昇圧型三相インバータが提案されている。昇圧型三相インバータは抵抗負荷を用いた動作検証が行われ，従来の三相インバータよりも高い電力変換効率を示すことが報告されている。しかし，系統連系動作は未検証のため，本稿では三相交流電源に接続して実験検証を行い，系統連系動作が可能であることを報告する。

4-027

誘導加熱用マトリックスコンバータの負荷力率制御

◎渋谷颯希・濱口拓見・北川 亘・竹下隆晴（名古屋工業大学）・矢田詔久（浜松ヒートテック）

誘導加熱装置は，ガス炉や電気炉などの従来の加熱装置に比べ，安心安全で高効率，クリーンな加熱が可能であり，近年需要が高まっている。また，電源部にマトリックスコンバータを使用することで，商用周波数を直接高周波交流電圧に変換できるので，装置の小型化，高効率化を実現できる。ここで，誘導加熱コイルは加熱中にインダクタンス変化が生じる。それにより，負荷力率が変化し，効率低下，電力変化，ハードスイッチングによるスイッチロスの増加などの問題が発生する。そこで，インダクタンス変化に対し，負荷力率角を任意の値に追従させ，マトリックスコンバータの出力周波数にフィードバックする制御法を提案し，実験により提案法の有用性を確認した。

4-028

導入容易なUPS監視機能の実装

◎山崎隆弘・古嶋博之（東芝三菱電機産業システム）

近年のIoTに対する認知が、情報の見える化という形でUPS監視への関心に繋がっており、電気設備が中小規模である顧客においても導入ハードルの低いUPS監視が求められている。弊社では動作解析のためにUPSを内部的に監視する基板を標準搭載しており、この基板にネットワーク機能を付加することでUPS監視を提供可能にした。その中から今回提案するWeb監視とメール送信機能は、監視専用のソフトウェアやシステムが不要であり、顧客のネットワークへUPSを接続するだけで容易に監視を実装できる。これらの監視機能を普及させることで、UPSのさらなる電源高信頼化に寄与していきたい。

4-029

変換器のスイッチングに関する検討

○古関庄一郎（古関PE事務所）・綾野秀樹（東京工業高等専門学校）

自励の電圧形および電流形交直変換器は，降圧チョッパと昇圧チョッパとを組み合わせた電圧形または電流形の双方向チョッパで構成され，そのいずれかを逆極性で組み合わせてマトリクスコンバータになる。電圧形，電流形変換器のそれぞれのスイッチング制御について双方向チョッパを構成するチョッパから検討し，降圧，昇圧チョッパの区別なく動作することを示し，また動作条件を示した。それを基にマトリクスコンバータのスイッチング制御を検討し，電圧形，電流形変換器の動作に対応して考えられることを示した。

4-030

VVVF動作における直並列補償方式と単相BTBシステムの動作比較検討

◎山ノ口皓喜・渡辺大貴・伊東淳一（長岡技術科学大学）

直列形，並列形コンバータを併用した直並列補償方式は，単一の電力変換器をマルチセル構成とすることで柔軟に電力容量を設計可能という特徴から，UPSなどのCVCF用途で多くの研究が行われている。しかし，VVVF動作における定量的な検討はほとんどされていないように思われる。本論文では，主回路や制御回路，GDU等を含めてモジュール化したUSPM(Universal Smart Power Module)によるAC/AC変換器の基礎検討を目的に，VVVF動作におけるBTBシステムとの比較検討を行った。結果より，昇圧動作においては変換器容量の観点で単相BTBに対して優位性があることを明らかにしたので報告する。

4-031

マトリックスコンバータを用いた双方向絶縁形AC/DCコンバータの高周波リンク部波形改善法

◎住谷和馬（千葉大学）・徐 進・下里 昇（マイウェイプラス）・佐藤之彦（千葉大学）

自動車用バッテリと交流系統を接続するVehicle to Grid (V2G)を代表例に双方向電力変換器が近年盛んに研究されている。このような変換器の構成として、三相コンバータとDual-Active-Bridgeコンバータを組み合わせた方式が提案されている。当研究室では三相コンバータとDABの一部をマトリックスコンバータに置き換えた回路方式を検討している。しかし、この方式はトランス電流が系統周波数の6倍で脈動する問題点を持つ。トランス電流の脈動は偏磁を招き、変換器の効率を下げる要因となる。本論文では、デューティの外挿による低周波脈動の除去法を提案し、実験によって損失低減効果を検証する。

4-032

A study on Third-order Generalized Integrator in Active Rectifier Applications

◎恒川将輝・Nguyen Duy-Dinh・雪田和人（愛知工業大学）・伊藤創一郎・小栗和也（エナジーサポート）

グリッド接続の高電力コンバータは、電力品質に関わる様々な問題を引き起こす。三相の場合、アクティブ整流器を使用して電力品質を改善する。その時、アクティブ整流器の動作をグリッドに同期するにはPLLが不可欠である。しかし、PLLは主電源に高調波やオフセットがある場合、正しい結果を出力しない。TOGIを使用する事で、それらの問題を解決することができる。この研究では200V-60Hzの入力を使用する。制御システムはSTM32F303K8で実装し、周波数は20kHzである。実験結果は、入力信号に混ざっているすべての高調波の情報を保持しながらオフセットを除去することに成功した。これより、アクティブ整流器にTOGIを使用することによってグリッドでの良い電力品質を保証できる。

4-033

マルチセル型単相中圧SSTにおけるフライングキャパシタ形PFCを用いた電力脈動補償

◎渡辺大貴・伊東淳一（長岡技術科学大学）

近年，大型な商用トランスの小型化を目的にSolid-State-Transformer (以下SST)が研究されている。また素子数削減の観点から単相PFCと絶縁共振形コンバータを採用した方式が検討されている。本方式は大容量のエネルギーバッファを回路内に有さないため，交流側で発生する電力脈動は負荷側に接続される電解コンデンサによって補償される。しかし許容リプル電流の観点からコンデンサが大型化する懸念がある。 本論文ではパワーデカップリング機能を有するフライングキャパシタ形PFCを提案する。結果より，二次高調波成分を78%補償可能であることを確認したので報告する。

4-034

Pure Sinusoidal Interconnection To The Power Grid Using H-Bridge Multilevel Current-Source Inverter And Linear Current Compensator

○Eka Rakhman Priandana・野口季彦（静岡大学）

This paper proposes a new method of grid-connected photovoltaic (PV) system using H-bridge multilevel current-source inverters (CSI) and a linear current compensator. The proposed system consists of several H-bridge CSI which are incorporated to generate staircase multilevel current waveform and a current compensator that generates a linear compensating current. This battery-driven linear compensating current is then superimposed onto the staircase multilevel current waveform in order to reform the output current to a pure sinusoidal waveform. As a result, the power grid is fed with a pure sinusoidal current waveform and the power quality is being kept in good condition. The computer simulations confirmed the proposed system is able to deliver power with acceptable efficiency and give outstanding total harmonic distortion by only using small passive filter

4-035

大電流整流器へのCAE適用

◎宇田川育篤・田辺友章・清原豊彦・安藤彰修（東芝三菱電機産業システム）

パワーエレクトロニクス製品の開発設計では開発期間短縮・高密度実装(小型化)・耐震仕様などが求められており、構造部分の重要な設計要素としては、冷却、絶縁、機械的強度が上げられる。当社では、開発段階から3D-CAD/CAE を用いて設計を実施している。本論文では、大電流整流器 (数十kA 級、W 約5m、H 約3m)へのCAE を適用した事例を紹介する。

4-036

直流連系のための直列可変コンデンサを用いた電圧位相制御―サイリスタ変換器を用いた電圧容量の比較―

◎川村健太・野村新一（明治大学）

複数の風力発電機を連携した洋上ウィンドファームでは高圧直流送電（HVDC）が適用される．風力発電は電力潮流が一方向であり，従来の手法であるサイリスタ変換器や電圧型変換器などの交直変換器を無制御のダイオード整流器で構成可能である．しかし風力発電で使用される永久磁石型同期発電機は界磁制御が無く出力変動するため複数の発電機を連携するためには直流電圧の制御が必要となる．これまでに直列可変コンデンサを用いた直流電圧制御の実験を行ってきた．本報告では従来の手法であるサイリスタ変換器を用いた直流電圧制御を行い，直列可変コンデンサおよびサイリスタ変換器を用いた電圧位相制御による直流連系条件の比較検討を行う．

4-037

1MHz臨界モードPFCコンバータにおける昇圧ダイオードの損失に関する検討

◎青木奎典・齋藤 真（芝浦工業大学）

スイッチング電源には，高調波電流が生じて大きな皮相電力が必要となり，余分な電力が生まれてしまう。つまり，機器の電源の力率が悪いということである。そこで，力率改善回路(Power Factor Correction：PFC)を利用し，力率を高め高調波電流を抑制している。本論ではPFC回路の昇圧ダイオードの物性に着目し，従来，あまり考えられていなかった物性による損失の違いについて,ファストリカバリダイオード(FRD)とショットキーバリアダイオード(SBD)で実際に動作させ出力，温度も踏まえ検討した。

4-038

A Study for the Effect of Impedance Characteristics to Variable Capacitance Class-E Inverter

◎呉 昱忻・セナナヤケティラク・今岡 淳・山本真義（名古屋大学）

Class-E inverter is usually used because of the high efficiency by soft-switching. However, the soft-switching cannot be achieved easily when the load varies. Therefore, the auxiliary circuit with variable capacitance is proposed to achieve soft-switching in wider impedance variation range, but input power in the circuit topology is lower than designed value. In this paper, to find the reasons for low input power and the possible solution, the impedance characteristics are investigated. As a result, the input impedance of circuit in OFF state of main switch is found too high compared to conventional class-E inverter. Also, the resonant inductor is found to be an important role to improve the problem.

4-039

3巻線トランスを使った電力脈動補償機能を有する絶縁型DC-単相AC コンバータの実機検証

◎高岡 渚・渡辺大貴・伊東淳一（長岡技術科学大学）

近年，PVシステムの研究が盛んに行われており，PV-系統間のインターフェースとして絶縁型DC-単相ACコンバータが多く採用されている。一般に，DC-単相ACコンバータでは単相系統によって生じる電力脈動を補償する必要がある。電力脈動補償の方式としてアクティブパワーデカップリングがあるが，多くの従来手法では追加素子が必要となり損失増加及び小型軽量化の妨げとなる恐れがある。 本論文では，追加部品を必要としない電力脈動補償回路を用いた絶縁型DC-単相ACコンバータについて1 kWの試作機を用いて評価する。実験結果より，提案脈動補償方式により入力電流に重畳する脈動成分を79.2%低減できることを明らかにしたため報告する。

4-040

三相PWMインバータの高電力密度化を実現するACフィルタインダクタ設計法に関する検討

◎水谷大輔・松盛裕明・小坂 卓・松井信之（名古屋工業大学）・宮崎達也・大河内裕太（ローム）

本研究では三相PWMインバータを対象とし，はじめに，様々なスイッチング周波数に対して受動部品を設計する。その後，設計の妥当性を検証するためにスイッチング周波数f_sw=40kHzとf_sw=20kHz時のACフィルタインダクタを作成し，設計値と測定値の比較を行う。比較を行ったところ，設計手法を用いればインダクタ損失が概ね0.2Wの差異で計算できたため，電力密度と効率の関係を視覚的に示すパレートフロントカーブ(1)を作成したので報告を行う。

4-041

2電源HEECSインバータでの変換効率99.7%の実測

◎中﨑智志・那須祥樹・伊藤正悟（横浜国立大学）・永井栄寿（東京大学）・小原秀嶺・河村篤男（横浜国立大学）

極限効率の理学的追及を動機として，著者らは2電源HEECSインバータというDC－AC変換回路を提案している。先行研究では，LCフィルタの検討や，部分的な損失分離が報告された。本稿では，先行研究からいくつかの変更を行うことで，本提案回路によって効率99.7 %を実測したのでこれを報告する。

4-042

階調制御型インバータによる航空機向け電源の軽量化開発

◎城内悠輔・藤原賢司・小島鉄也・永井孝佳（三菱電機）・菅原正宏（三菱電機エンジニアリング）・大依 仁（IHI）

近年、航空機による輸送需要は年々増加傾向にあり、CO₂排出量増加が懸念されており、国際民間航空機関（International Civil Aviation Organization：ICAO）では民間航空機のCO₂排出量を2050年に2005年比の半減を目標としている。目標を達成するための方法として航空機に搭載される装備品の電動化(More Electric Aircraft：MEA)、推進系の電動化に注目が集まっている。MEAにおいて従来方式では2レベルインバータが採用され、ノイズを抑制するためのEMIフィルタ重量がインバータ重量の大半を占めており、EMIフィルタの軽量化が必要とされている。 本報では、MEAに着目し、航空機電動化の主要機器であるモータ駆動用インバータの重量を減らすために、マルチレベルインバータ方式として階調制御型（Gradationally Controlled Voltage:GCV）インバータを提案し、ノイズ発生に起因するコモンモード電圧と線間電圧dv/dtをシミュレーションにより検証し、2レベルインバータと比べてノイズ発生量を減らせることからEMIフィルタの小型・軽量化ができることを示した。

4-043

多重方形波インバータとアクティブフィルタを直列接続したマルチポートDC-ACコンバータの負荷分担範囲の明確化

◎宮下 充・日下佳祐・伊東淳一（長岡技術科学大学）・野下裕市（東京農工大学）・石橋正基（東京都立産業技術高等専門学校）

直列多重方形波インバータとアクティブフィルタを直列接続した回路を提案している(2)。本回路は，インダクタの個数を増やすことなくマルチポート化でき，従来回路に対してパワー密度の向上が可能である。本論文では，提案回路においてFCとバッテリの負荷分担ができる領域を明らかにする。シミュレーションにて負荷分担動作とバッテリの充放電動作を確認したので報告する。

4-044

三相デュアル電流形インバータによる誘導機電圧の一制御法

◎田中裕登・上田崇允・藤 清高・柴戸洋次郎・根葉保彦（福岡大学）

三相誘導機のトルク電流と励磁電流に対応した二相電流を出力する三相デュアルPWM電流形インバータシステムを先に提案した。本インバータは，周波数一定で誘導機負荷が変化する場合に，直流入力電圧がほぼ一定となる特性を有する。本稿では，直流電源としてPWM整流器を用い，トルク電流に対応した電流を出力するインバータのPWM変調率を調整して電動機端子電圧を制御する一方法を検討する。本文では，システム構成，PWM制御法を説明し，インバータの入出力特性を明らかにする。

4-045

電気推進船向けドライブ装置の制動制御開発

○椋木 誠・土井信明・松本和則（東芝三菱電機産業システム）

電気推進ドライブ装置は，減速時に船体の持つ慣性エネルギーにより，プロペラが遊転する場合があり，かご形誘導電動機に制動トルクを与えなければ減速に時間を要し，操縦性能が悪化する。かご形誘導電動機の制動方法として，すべり周波数を負にして，運動エネルギーを電源に回生する回生制動，回転磁界を逆転させ，運動エネルギーを回転子で消費させる逆相制動，すべり周波数を負にして，運動エネルギーを抵抗で消費させるDBR(Dynamic Braking Resistor)制動などがある。電気推進ドライブ装置では，装置小型化と電源高調波低減の目的で，多相化したダイオードコンバータが広く利用されているため，回生制動やDBR制動を採用せず，逆相制動を商船に適用したので報告する。

4-046

フローティングキャパシタ方式デュアルインバータのモータ低速度における電圧波形改善

◎水越彰仁・芳賀 仁（長岡技術科学大学）

電源電圧が固定のシステムでは，インバータ変調率が低くなる低速度領域において，基本波成分に対してスイッチング周波数成分の高調波が増加する。著者らは，異なる直流電圧を持つ二つのインバータを同相でスイッチングさせ，差の電圧をモータ巻線に印加することで相電圧波高値を低減する低速度領域に着目した波形改善手法を検討している。 本稿では，片側のインバータ直流リンクを固定電圧の直流電源，一方の直流リンクをキャパシタとするフローティングキャパシタ方式を対象に，差の電圧出力を積極的に用いるモータ低速域の波形改善を提案する。提案法の基本動作をシミュレーションにより検証したので報告する。

4-047

電流不連続モードを適用した連続電圧出力三相インバータによる誘導電動機定常運転時の実験検証

◎上杉俊太郎・寺田 陽・萬年智介・磯部高範（筑波大学）

モータ駆動用インバータの高スイッチング周波数化に伴い，コモンモード電圧の急峻な変化に起因する漏れ電流，ベアリング電流などの障害が問題視されている。この問題を解決する手段として，フィルタ回路を設置し負荷に急峻な電圧変化を与えない方法が有効である。しかしながら，汎用インバータ向けのフィルタ回路は一般的に重量・体積が大きなものとなり，導入には課題が存在する。このフィルタ回路を小型化するための一方式として，電流不連続モードを適用した三相インバータシステム（三相DCMインバータ）を誘導機駆動に応用した。本稿では，三相DCMインバータを用いた，連続電圧による誘導機の空間ベクトル制御が可能であることを確認した。

4-048

SiC-MOSFET三相PWM電流形インバータの効率特性

◎松本崚央・藤 清高・柴戸洋次郎・根葉保彦（福岡大学）

三相PWM電流形インバータのスイッチング素子としてSiC-MOSFETを適用し，静止負荷時について，SiデバイスのIGBTと比べて高効率な変換ができることを先に報告した。今回は，SiC-MOSFET電流形インバータに三相誘導電動機を接続した場合のスイッチング動作と特性を確認する。本稿では，誘導機無負荷駆動時の実測波形とインバータ周波数およびキャリア周波数に対する効率特性を報告する。

4-049

単相誘導機駆動3レグ電流形インバータの構成

◎小河純也・中牟田 光・藤 清高・柴戸洋次郎・根葉保彦（福岡大学）

補助巻線を有する分相始動式単相誘導機に二相正弦波電流，電圧を出力し，始動および可変速駆動が可能な3レグ電流形インバータシステムを報告した。今回は，インバータと誘導金の接続構成を変更し，出力波形PWMリプルの高周波数化を検討したので，定常波形と巻線電圧の高調波含有率について，従来の接続構成の場合と比較して報告する。

4-050

HEECSインバータによる三相モータ駆動のための基礎検討

◎那須祥生・中崎智志・小原秀嶺・河村篤男（横浜国立大学）

電力変換機器の一つであるインバータは我々の生活に欠かせないほど浸透している。インバータの変換効率の向上は冷却機器の簡略化やランニングコスト低減に重要な要素であり，社会全体にもたらす利益も大きい。 本稿は，既に報告されている高効率2電源HEECS単相インバータを応用し，出力の三相化と，三相モータを駆動するための基礎検討を行ったものである。 三相化の手法は2電源HEECS単相インバータのチョッパ部を3台並列にし，出力の位相を120°ずつずらしたDCオフセットつきの正弦波とし，出力の電位差を三相線間電圧とするものである。 PSIMによるシミュレーションでは三相交流の出力と，V/f一定での出力周波数の可変が行えることを確認した。

4-051

X線装置への適用に向けた高電圧パルス電源の小型化に関する一検討

◎野村優貴・中村 孝・舟木 剛（大阪大学）

近年、電線や配管などの産業インフラの老朽化が深刻な問題となっており、X線による非破壊検査が劣化診断技術として広く利用されている。従来のX線装置用の電源は大型であるが、最近では可搬型のX線装置も研究されており、電源の小型化が進められている。 電源の小型化には回路の高周波動作が有効であるため、本研究では、Siパワーデバイスよりも物性的性能が優れているSiCパワーデバイスを系の構成要素に適用することで小型軽量かつ高効率の高電圧電源を開発する。 乾電池電圧1.5Vから10kV, 1mA, 100msecの高電圧単パルス出力を多段昇圧回路方式により実現した。本研究では、インバータの駆動周波数が部品の周波数特性により制限されたため、より小型で昇圧比の高い電力変換器の実現のためには、用いる電子部品の周波数特性から再検討する必要があると結論付けられる。

4-052

カレントダブラと降圧チョッパに基づく2 kW絶縁形デュアルポートDC/DCコンバータ

◎松下由憲・野口季彦（静岡大学）・石居 真・田口範高（矢崎総業）

Hブリッジインバータ，高周波トランス，カレントダブラと降圧チョッパを統合した回路から成る絶縁形デュアルポートDC/DCコンバータを試作し，駆動周波数400 kHz，最大総電力2 kWの運転特性の評価を行った。27通りの電力条件全てにおいて想定された挙動を示したとともに，異なる出力電圧の同時独立制御が可能であることが示された。最大効率はカレントダブラ側の出力電力945 W, 降圧チョッパ側の出力電力148 Wのときの79.3 %であった。

4-053

GaN GITを用いた絶縁型E2級DC-DCコンバータに関する実験的検討

◎關 翔太・舟木 剛・福永崇平（大阪大学）

電力変換回路の小型化には駆動周波数の高周波化が有効であるが、駆動周波数の高周波化によってスイッチング損失の増加が問題となる。本稿ではスイッチング損失を低減可能なE級ソフトスイッチングを利用した絶縁型E2級DC-DCコンバータを設計、作製し、実験的検討を行った。E2級インバータの出力とE2級整流器の入力のインピーダンス整合を行い、適切な回路設計を行うことで絶縁型E2級DC-DCコンバータを用いてもソフトスイッチング動作が可能であり、スイッチング損失の低減が可能であることを実験的に示した。

4-054

リチウムイオン電池用フライバックコンバータのMHz帯動作とその並列化の検討

◎中山健太郎・佐藤宣夫（千葉工業大学）

LIB(リチウムイオン二次電池) は，他の二次電池と比較して優れた出力特性を持つため，他小型・軽量化への期待が寄せられている．その反面，その扱いに充分な保全機能が求められる．具体的には，短絡による過電流とその発熱に付随する事故を防ぐ必要があり，電気的絶縁が必須とも言える．本研究では，絶縁変換器の一種であるフライバック方式を採用し，電気的絶縁と昇圧機能を同時に満たす電源を開発する．具体的には，LIB を入力とし，電源としての出力電圧12V を達成させる．これらの電源回路は，小型・軽量化を達成するために2.1MHz での高速スイッチングを行う．さらに，出力電力量増加に対応させる回路の並列化について報告する．

4-055

DCDCコンバータ整流回路用二重共振スナバの実験検証

○王 啓臣・山田隆二（富士電機）・林 河・清水敏久（首都大学東京）

バレーフィルスナバを応用した、インダクタ平滑方式の絶縁DC-DCコンバータ整流回路に適用する、電力回生機能を持つ二重共振スナバ回路の検証結果を報告する。

4-056

カップルドインダクタ方式電流形スナバレスZCS直流昇圧コンバータの実機検証

◎宮崎竜成・三島智和（神戸大学）

近年，電動輸送機の急速に普及する中で，環境負荷が少ない燃料電池を適用した電動輸送機が注目を集めている。本研究では，駆動用インバータの前段部に適用するバッテリ昇圧コンバータとして有効なる電流型直流昇圧コンバータを新たに提案する。本稿では，直流インダクタにカップルドインダクタを適用することで磁気部品の小型化を図ると共に，並列共振と部分共振を併せた複合共振を利用したZCS動作による高効率・高昇圧動作が可能であることを明らかとする。 試作器検証では，サージレスZCS動作を達成し，11倍の昇圧効果，さらにカップルドインダクタの作用による入力電流の平滑効果を有する事ことが明らかとなった。

4-057

回生チョッパ自立運転の現地試験結果に対する評価

山口央人（東芝インフラシステムズ）・◎春日 衛・保科俊一朗（東芝三菱電機産業システム）

本論文では，都営地下鉄新宿線に回生電力蓄電システムを試験的に適用し，自立運転時の機能の実機試験を行った。その現地波形から，自立運転の動作の妥当性，および安定的に動作していることを確認した。

4-058

インターリーブ動作を適用したカスケード方式絶縁形DC-DCコンバータ

◎烏山翔太朗・水谷大斗・高原貴昭・森 修（三菱電機）

近年，自動車や航空機の電動化が急速に推進されており，搭載性の向上を目的として電源の小型・軽量化の需要がより一層高まっている。電源に搭載される磁性部品の小型化を目的に，変換器をカスケード接続する方式が提案されている。 本稿では，1次側のインバータをカスケード接続した絶縁形DC-DCコンバータと駆動方式を提案し，シミュレーションを用いてその動作原理を検証したので報告する。

4-059

広い電圧利得を得る単入力2出力LLCコンバータの軽負荷領域における高効率動作法

◎木下勇輝・芳賀 仁（長岡技術科学大学）

本検討では，多出力アプリケーション向けの単入力LLC変換器を提案する。提案回路は，1次側回路の回路構造を変更することで，2つの負荷に対して広範囲の電圧利得を実現する。2次側にはアクティブ整流器を用いており，1次側回路の駆動周波数制御と2次側回路の位相シフト制御を用いて制御を行う。本論文では，軽負荷領域における高効率動作法として，固定周波数制御と位相シフト制御を用い，従来の可変周波数制御，位相シフト制御との切り替え動作を実現する。軽負荷領域において2次側の位相シフト制御を用いることで，1次側の実効電流を低減できるため，回路の銅損を低減可能である。

4-060

インタリーブPWMコンバータとDABコンバータを統合した電動車両用マルチポートコンバータにおけるバッテリの制御検証

◎佐藤元基・多田喜耶・鵜野将年（茨城大学）

電動車両は電圧の異なる複数のバッテリを有しており，各バッテリの個別制御のために複数台のコンバータが必要となるためシステムが複雑化する。システムの簡素化を目的に，複数台のコンバータを 1 台に統合したマルチポートコンバータ（MPC）が提案されている。これまでに著者らは，フライングキャパシタの採用により高いトランス利用率と無制御での電流バランス機能を有する電動車両用 MPC を提案してきた。本稿では，PWM 制御と位相シフト制御の併用により，各ポートを個別に定電流–定電圧（CC–CV）充電を行う制御系を提案する。また，試作回路を用いた実機検証により複数のバッテリの同時制御，ならびに CC–CV 充電が可能であることを確認したので報告する。

4-061

DAB方式DC/DC変換器の起動制御方式に関する検討

◎梶山拓也・石橋卓治・地道拓志（三菱電機）

近年、送電系統や配電系統、洋上風力発電の集電系統を直流化する検討が進んでいる。当社では、DAB⽅式DC/DC変換器を多数直並列に接続することで、DC/DC変換器を高圧化する方式を提案している。この方式では、各ブリッジのゲートドライバやセンサ基板の電力を主回路コンデンサから電力を供給する主回路給電方式にて、供給することが想定されるが、起動時には、給電回路が動作しておらず、スイッチングや測定情報が制限されるという課題がある。本稿では、主回路給電方式を採用したDAB 方式DC/DC 変換器の起動制御方式について検討する。

4-062

Dual Active Bridgeコンバータの電力フィードバック制御における動的モデル

◎衛藤 易・庄山正仁（九州大学）

本研究ではDCマイクログリッド間の電力伝送を想定した，Dual Active Bridgeコンバータの電力フィードバック制御系も含めた動的モデルの検討を行う．Energy Management Systemによって系統全体の最適運用がなされるものと仮定して伝送電力の指令値がコンバータに送られるとして，コンバータの解析手法の一つであるGeneralized Averaging Modelingを用いて電流検出用ローパスフィルタやPI制御器の特性も含めたモデルの構築を試みる．電圧の変動に対する電流の挙動の，回路シミュレーションとの比較を行うことで検討したモデルの妥当性を確認した．

4-063

複数台の双方向コンバータと誘導加熱用インバータを一体化した電動車両用マルチポートコンバータの実機検証

◎小野寺 哲・佐藤元基・鵜野将年（茨城大学）

電圧の異なる複数のバッテリが搭載される電動車両（EV）では、各バッテリを個別に制御するために複数台の双方向コンバータが必要となりシステムが複雑化する。EV電源システムの簡素化を目的に，著者らはインタリーブPWMコンバータとDABコンバータを統合したEV用マルチポートコンバータ（MPC）を提案してきた。一方，エンジン廃熱を熱源として利用できないEVでは，ヒータを用いて熱源を確保する必要があるため高コスト化する。本稿では，EV電源システムの低コスト化の一解として誘導加熱用インバータを統合したMPCを提案し，実機検証により提案方式における誘導加熱用インバータの動作を確認したので報告する。

4-064

リチウムイオンバッテリ交流加熱機能を有する電動車両Dual Active Bridgeコンバータの実機検証

◎笹間裕太・五十嵐龍一・鵜野将年（茨城大学）

電動車両に搭載されるリチウムイオンバッテリは低温環境下にて放電容量が低下するためヒータ等による加熱を必要とする。加熱ムラがなく加熱効率が高い加熱方式として，バッテリに交流電流を流し内部抵抗から生じるジュール熱を利用する交流加熱方式が提案されている。しかし交流電流を生成するインバータを別途必要とするため，システムの複雑化と高コスト化が懸念される。 本発表ではバッテリの充放電を担うDual Active Bridge（DAB）コンバータと交流加熱用インバータの統合により，システムの簡素化と低コスト化を達成する電動車両用DABコンバータを提案する。実機検証により交流加熱の有効性を確認したので報告する。

4-065

電流バランス機能と高い電圧変換比を有する再生可能エネルギー向け高拡張性インタリーブ昇圧コンバータ

◎小山 翔・多田喜耶・鵜野将年（茨城大学）

太陽電池等の再生可能エネルギーは低電圧電源であるため，系統連系する際には大電流入力容量を有する高昇圧コンバータが必要となる。大電流入力に適した方式としてインタリーブコンバータが知られているが，各相の電流バランス制御が必要，昇圧比が不十分，様々な再生可能エネルギーに対する柔軟な適用が困難，等の課題を有する。本発表では，コンデンサの電荷バランスにより無制御で電流バランスが可能であり，且つ，少数の追加素子のみで昇圧比と相数を任意に変更可能なインタリーブ高昇圧コンバータを提案する。また300 W試作回路を用いた実機検証を行い，無制御での電流バランスと昇圧比の変更が可能であることを確認したので報告する。

4-066

インターリーブ昇圧回路の高周波化による効率改善

○吉野浩行・坂下友一（三菱電機）

車載用ヘッドライトのLED は複数個が直列接続される為昇圧回路が必要で、その小型化手法であるインターリーブ方式では従来、AM 帯域へのノイズ干渉回避と半導体スイッチの発熱を考慮し各相スイッチング周波数Fswの合計（等価周波数）Fa をAM 帯域より低くしていた為、周辺部品が大型化する課題があった。本稿では周辺部品や放熱器の小型化を目的に、Fa をAM 帯域より高くする効率改善手法を検討した。各相のFsw を従来の3.4 倍：850kHz、インダクタンス約1/3：3.3μHのインダクタLn として直流銅損低減を狙う。また低QgのGaN FET を用い、Fsw を高くした状態でも従来Si FET：250kHzよりスイッチング損失を低減させる。単相Fsw はAM 帯域内となるが2 相構成でFa をAM帯域外とする。シミュの結果、主回路効率は従来方式93.15％に対し本方式は95.07%と約1.9%の改善が期待できる。1相あたりLn は0.78W 、MOSFET（Qn）は0.57W の損失低減が期待できる。

4-067

High/Low電圧パルス出力のための二相インターリーブ降圧コンバータにおけるむだ時間補償型の半周期毎電流デッドビート制御

◎小袖義貴・小原秀嶺・河村篤男（横浜国立大学）・細山田 悠・末永豊昭・譲原逸男（京三製作所）

高電圧と低電圧によって生成されるHigh/Lowパルスをオーバー/アンダーシュートを抑制し実現する手法が公表されている。先行研究として、電流デッドビート制御(略称，電流DB制御)が提案され，単相降圧コンバータによる50 – 150 VのHigh/Lowパルスにおいてオーバーシュートなく500 μsの立ち上がり時間が，また二相降圧コンバータでは40 – 120 Vにおいて10.3 μsの立ち上がり時間が実測されている。 本論文では，状態変数の推定によるむだ時間補償を提案し，二相降圧コンバータにおける半周期毎DB制御をシミュレーションしたところ，整定時間とオーバー/アンダーシュートの低減が見られた。

4-068

ニューラルネットワークを用いた降圧型DC-DCコンバータの制御法

○長門秀一（三菱電機）

DC-DC コンバータの制御にPWM を用いたPI 制御を行うと、一般に、立ち上がり量とオーバーシュート（行き過ぎ量）を満足させる制御パラメータを求めることは容易でない。そこで、降圧型DC-DC コンバータにニューラルネットワークを利用して、立ち上がり量を優先させながら、オーバーシュートを軽減する制御法を検討した。

4-069

ピーク電流モード制御を用いた双方向DC-DCコンバータの電流制御

◎柏﨑貴司・居安誠二・重岡恵二（SOKEN）・赤間貞洋（デンソー）

V2H(Vehicle to Home) やV2G(Vehicle to Grid) の普及が予想され、これらの実現には双方向DC-DCコンバータが必要となる。その中でコスト低減のために、急峻な負荷変動による過電流を抑制し、電圧および電流を安定に制御しコンデンサやリアクトルの小容量化が求められている。本報では、負荷の電流方向が切替った場合において、過電流を発生させることなく高速応答可能なピーク電流モード制御を提案する。提案するピーク電流モード制御は、順方向および逆方向それぞれに対してコンパレータを備え、双方向の電流に対して上限ピーク電流値の制限または下限ピーク電流値の制限を実現でき、電流が順方向から逆方向へ切替わった場合の過電流抑制効果を実験により示す。

4-070

リチウムイオンバッテリ交流加熱機能を有する電動車両用セル選択式バランス回路の実機検証

◎菅谷礼央那（茨城大学）・吉野功司（茨城大学大）・鵜野将年（茨城大学）

電動車両用リチウムイオンバッテリでは，セル電圧のばらつきを解消するためのバランス回路に加えて，寒冷地における放電容量の低下を抑制するためのバッテリ加熱用ヒータが不可欠となる。バッテリに交流電流を与えて内部抵抗で生じるジュール熱を利用した加熱方式では，交流電流生成用のインバータの追加が必須となる。本稿ではDual Active Bridgeコンバータを基礎とするセル選択式バランス回路を利用した交流加熱手法を提案する。提案手法ではセル選択式バランス回路内の素子を利用し交流電流を生成することでインバータを省略できる。恒温槽を用いた交流加熱実験より提案手法の有効性を確認したので報告する。

4-071

タップトインダクタにより昇圧比を任意に決定可能な，車載湾曲太陽電池パネルの発電量を向上させる統合型コンバータ

◎鈴木 匠・佐々木優介・鵜野将年（茨城大学）

近年，太陽電池パネルを搭載したPHEVが開発されているが，車体屋根の湾曲により日射量が不均一となるためパネル内で電気特性にばらつきが生じる。これにより発電量の大幅低下や複数の最大電力点の発生による最大電力点追尾制御の誤動作が懸念される。補償器により上記の問題を解消可能であるが，パネル制御用の昇圧コンバータも別途必要となるためシステムの複雑化を招く。本稿では補償器と昇圧コンバータを一体化しつつタップトインダクタにより昇圧比を任意に決定可能な統合型コンバータを提案する。実車条件を模擬したシミュレーション解析の結果，最大電力点が1点に収束し，発電量が大幅に向上したことから提案回路の有効性が示された。

4-072

スイッチトキャパシタ変換器をベースとした双方向非絶縁形DC-DCコンバータの電流リプル解析

◎手崎和明・萩原 誠（東京工業大学）

筆者らは先に, スイッチトキャパシタ変換器をベースとした双方向非絶縁形DC-DCコンバータを提案した。これは, 補助変換器を用いてインダクタ電流を能動的に制御する点に特長があり, 主変換器バルブデバイスの零電流スイッチングが実現できる。先行研究では, 高圧側電圧と低圧側電圧の電圧比が0.5の場合における上記DC-DCコンバータのユニット数と直流電流に含まれる電流リプルの関係を評価した。 本論文では, 電圧比を変化させた場合の電流リプル評価を行う。「PSCAD/EMTDC」を用いた回路シミュレーションと「MATLAB」を用いた数値解析結果より, 電流リプルを評価したので報告する。

4-073

PHEV用湾曲太陽電池パネルの拡散容量を利用した補償器の効率向上に関する検討

◎本田和磨・鵜野将年（茨城大学）

一般的な太陽電池パネルは複数のセルを直列接続したサブストリングを更に複数接続することで構成される。パネルを車体屋根に搭載したPHEVでは湾曲により日射量が不均一になるためサブストリングの電気特性にばらつきが生じ，発電量が大幅に低下する。この問題を解決するために著者らは太陽電池セルの寄生素子である拡散容量を利用した補償器を提案してきた。しかし，回路中の寄生インダクタンスの影響による効率低下が問題となる。本稿では，効率向上を目的に平滑コンデンサを追加し，その効果について試作回路を用いた実機検証を行った。併せて，サブストリングあたりのセル数を変更した場合の効率の変化について実機検証を行ったので報告する。

4-074

コモンモードインダクタの体積最小化に関する一検討

◎安原崇志・高橋翔太郎・小笠原悟司・竹本真紹・折川幸司（北海道大学）・小林孝次・吉田 浩・柏原辰樹（サンデン・アドバンストテクノロジー）

本論文では，磁性材料の周波数特性を考慮したコモンモードインダクタ(CMI)の設計法について検討する。検討の結果，磁性材料にナノクリスタルを採用することで，すべての周波数帯域で従来のMn-Znフェライトを用いたCMIと比べて，インピーダンスを大きく，かつコア体積を削減できることを確認した。

4-075

直流給電電力変換システムにおけるディファレンシャルモードフィルタの体積最小化

◎高橋翔太郎・小笠原悟司（北海道大学）

本稿では，直流給電電力変換システムを検討対象とし，新しく，簡易なディファレンシャルモード(DM)フィルタの設計手順を提案する。提案設計手順は，DMフィルタの体積を最小化することを目的とする。計算結果から，適切にXコンデンサとディファレンシャルモードインダクタを設計することで，最小のフィルタ体積が得られることを示す。

4-076

複素透磁率を考慮した LC フィルタ特性の解析

◎嶋本椋太・清水敏久（首都大学東京）

半導体電力変換回路のスイッチング速度向上に伴い，スイッチングに起因するEMIノイズが高周波化し，EMIフィルタを構成する受動部品の周波数特性解析が課題となっている。本論では，インダクタに用いられる磁性材料の周波数特性を表記するために複素磁気抵抗率を使用し，磁壁移動と鉄損に基づき定式化する。また，MnZnフェライト，ナノ結晶軟磁性材料それぞれでLCフィルタを構成し，減衰特性の解析に複素磁気抵抗率を導入する。実測値と計算値を比較することで，インダクタの磁性材料が持つ特性がLCフィルタの性能に与える影響は，複素磁気抵抗率により容易に解析できることを示す。

4-077

スナバによる降圧コンバータの放射ノイズ低減効果の実測評価

◎南部 玄（京都工芸繊維大学）

近年、SiCパワーデバイスの実用化が進み、電力変換回路の高効率化、高周波動作化が実現されている。電力変換回路を高周波動作させることによって受動素子の小型化が可能である。しかしdv/dt、di/dtの増加により、放射ノイズが増加する。機器の製品化において、放射ノイズをCISPRなどのEMC規格によって規定されるレベル以下に抑えなければならない。スイッチング時のサージ電圧やリンギングを緩和するスナバ回路をDC‐DCコンバータに実装することによって、放射ノイズを低減することが可能である。 本稿では、RCスナバ回路による降圧コンバータ回路について放射ノイズの低減効果を電波暗室で実測評価した結果を報告する。

4-078

SiCデバイスを用いた2台の電力変換器による伝導性ノイズの重畳・干渉を考慮したシミュレーションの一検討

◎沓名俊哉（名古屋工業大学）

近年，SiCデバイスなどの電力用高速スイッチング素子が実用化され，広く普及すると考えられる．SiCデバイスは高速スイッチングを達成する一方で，電磁障害などの問題が悪化するため，EMI対策を再検討する必要がある．また，ノイズ源となる電力変換器を複数台動かすと，ノイズの重畳が起こる可能性がある．そこで，2台の電力変換器を同時に動かし，ノイズの測定を行い，ノイズの重畳が起きていることを確認した．また，ノイズの重畳を考慮したシミュレーションモデリングを作成し，ノイズの重畳をシミュレーション上で再現できることが確認できた．

4-079

半導体電力変換回路のスイッチング制御と連携したCAN信号処理によるEMI低減

◎白井 諒・和田圭二・清水敏久（首都大学東京）

半導体電力変換回路と通信機器が連携して動作する統合システムは，交通輸送機器や産業応用機器等で広く活用されている。しかし統合システムにおいて，電力変換回路が通信機器にもたらす電磁障害（EMI）が問題になっている。電力変換回路は比較的大きな電力でスイッチング動作するため，通信機器に電磁ノイズを放出・誘起する。これにより通信機器が誤動作するため，統合システムの信頼性を確保するためにはEMI対策が必要不可欠である。一般的にはEMIフィルタ回路やシールド線等が用いられるが，システム全体のコストや実装体積・重量の増加を招くため好ましくない。そこで本稿では，それらの従来手法を使用せず低コストで実現可能なEMI低減手法について検討する。

4-080

降圧チョッパ回路がCAN通信線に誘起するノイズ波形の解析

◎青島直輝・清水敏久・白井 諒（首都大学東京大学）

近年、半導体電力変換回路と通信機器との間に生じる電磁障害が問題となっている。このような課題に対し、降圧チョッパ回路のDCバス配線とCAN通信線を磁界結合させ、CAN通信線にコモンモードノイズを誘起させるテストベンチを作製し、CAN通信線のノイズ誤動作分析を行った研究成果が報告されている。しかし、そのようなテストベンチにおいて磁界結合部分の長さに着目しノイズ解析を行った研究は、筆者が知る限り報告されていない。そこで本論では、このテストベンチにおいて、近接配置されたDCバス配線とCAN通信線の長さがCAN通信線のコモンモードノイズ電流およびCAN側に誘起される線間電圧に与える影響について実機検証したため報告する。

4-081

WPTインバータの高調波電流抑制

◎青山晴香・清水敏久（首都大学東京）

電気自動車の給電システムへの非接触給電（WPT）において85kHz帯が電波法で認定されている。その場合に他の電子機器や放送機器等への電波障害を防止するため,WPTコイル電流の高調波成分抑制が極めて重要になる。 その対応手法としてLCフィルタを用いる方法があるがLCフィルタは受動デバイスの大型化や損失増大の問題が指摘されている。また,PWMインバータを用いる方法ではパワーデバイスの損失が大きくなり,高周波スイッチングが必要となるため装置効率が低下する。これらの課題を解決するために,PAMインバータを用いた低次高調波抑制手法の検討を行ったので報告する。

4-082

22kW三相12コイル非接触給電システムの漏えい電磁界評価

◎日下佳祐・楠居琳太郎・伊東淳一（長岡技術科学大学）・司城 徹・尾林秀一・石田正明（東芝）

本論文では，12個のソレノイドコイルを用いた大容量向け三相非接触給電システムの漏えい電磁界測定結果を報告する。本非接触給電システムは12個のコイルを用いることで，コイル間の不要結合の影響なく三相での電力伝送が可能であり大容量化に適する。しかしながら，大容量非接触給電では漏えい電磁界がCISPR（国際無線障害特別委員会）の定める漏えい電磁界ガイドラインを超過する恐れがある。ガイドラインへの適合を検証するため，22kW非接触給電システムを試作し，10m電波暗室にてCISPR11が定める測定を実施した。測定結果より，CISPR11クラスAグループ2のガイドラインを満足可能であることを確認したので報告する。

4-083

100 kW超級大電力ワイヤレス電力伝送におけるEMI低減技術の測定検討

◎宇野 皓・小川健一郎・鈴木正俊・司城 徹・兼清靖弘・井上和弘・小倉浩嗣・尾林秀一・石田正明（東芝）

ワイヤレス電力伝送は利便性・保守性・安全性の観点から注目されている。バスやトラックへの適用を目的とした大電力ワイヤレス電力伝送では、系から放射される電磁妨害波が放送や通信に影響を与えることが懸念される。電磁妨害波の高調波成分は各種フィルタを用いて低減させることが可能であるが、基本波はフィルタで低減できない。そこで、送受電コイル二対を並列接続し逆相励振運転させる方法や、ある帯域幅で周波数を拡散させエネルギーを分散させる周波数拡散を用いた方法で基本波放射磁界を低減させる方法を提案してきた。本稿では、今まで提案してきた技術を用いて送電100kW超級のワイヤレス電力伝送システムを構成した。その系を10m法電波暗室にて測定を行い、CISPRや電波法の高周波利用設備の許容値を比較した。

4-084

無線電力伝送システムにおける磁界曝露に対する周波数拡散の効果検証

○司城 徹・宇野 晧・鈴木正俊・井上和弘・兼清靖弘・小倉浩嗣・尾林秀一・石田正明（東芝）

無線電力伝送（WPT）システムから放射される電磁妨害波（EMI: Electro Magnetic Interference）が放送や通信へ影響を与えることが懸念されており、CISPRや電波法では電磁妨害波の許容値が定められている。大型車両向け大電力WPTシステムでは、電磁妨害波の許容値を満足するには、電磁妨害波の低減が不可欠である。無線電力伝送を行う動作周波数に対する電磁妨害波の低減技術として、逆相並列伝送や周波数拡散技術を採用し、低減効果を検証している。周波数拡散による磁界強度の低減効果は-8~-10dBあり、磁界強度が約1/3になっている。本稿では、EMI低減用の周波数拡散した場合において、磁界曝露に対する磁界低減効果を検証する。

4-085

急速充電を低損失で実現する高温超電導コイルを用いた鉄道用非接触給電システムの電力伝送特性

◎井上良太・五十嵐健太・一條裕貴・長﨑 陽・津田 理・松木英敏（東北大学）・宮城大輔（千葉大学）

近年，急速充電が可能な鉄道用非接触給電システムが検討されている。しかし，銅コイルを用いる場合は，送受信コイルの発熱および高周波磁界によるレール損失が増加するため，急速充電が難しい。そこで，本検討では，高温超電導（HTS）コイルを用いた非接触給電システムに着目し，1 kW級モデルシステムの実験および解析から，解析による評価方法の妥当性を明らかにした上で，実規模モデルの電力伝送特性を解析的に評価し，低損失かつ急速充電が可能な鉄道用非接触給電システムの実現可能性について検討した。その結果，HTSコイルを鉄道用非接触給電システムに適用することで，銅コイル使用時に比べて，高効率で充電時間を短縮できることがわかった。

4-086

PS共振磁気結合型海水中用ワイヤレス電力伝送システムの位置ずれ特性

○保田富夫（ワィティー）・貝森弘行（サイエンスソリューションズ）

海水中用ワイヤレス電力伝送システムでは海水中で発生する損失に起因する電力伝送効率低下を抑制し，潮流による位置ずれに対しても安定電力供給できることが必要になる。本稿では位置ずれに対して高効率で安定した電力伝送を可能にする手段として送電側は複数のコイル，受電側は2個のコイルが隔離配置構成されたPS共振磁気結合型海水中用ワイヤレス電力伝送システムを提案し，その有効性を実験及びシミュレーション解析で明らかにする。

4-087

ワイヤレス電力伝送システム用リッツ線コイルの電磁界解析による均質化法に関する検討

○貝森弘行・エブラヒミハサン・石原照正・栁澤一郎（サイエンスソリューションズ）・保田富夫（ワイティー）

ワイヤレス電力伝送コイルによく使用されるリッツ線コイルについて，有限要素法ベースであるCLN等価回路法を用いて均質化を試みた。リッツ線一本を対象（ユニットセル）として均質化を行い，等価複素透磁率を算出し，通常の有限要素解析のコイル領域に設定することで，実機相当の解析においてリッツ線コイルのインピーダンスの周波数依存性を考慮することが可能となる。特に交流抵抗は周波数依存性があり，コイル形状や周りの部材により発生する渦電流損が変化するため，本提案方法が有用であると考える。ワイヤレス電力伝送用サーキュラコイルの実測値との比較も行い，測定値と計算値がよく一致することを示した。

4-088

共振タンク直列接続構成の送受電コイルを用いた非接触給電システム

◎加藤孝祐・西谷拓人・米森秀登・竹野裕正（神戸大学）

近年、非接触給電への関心が高まっている。非接触給電には種々のメリットがあるが、システム全体の総合伝送効率や電力変換システムの設計において改善の余地が多く研究開発が進められているところである。また、送電コイル近傍に共振タンクを設ける方式では、電力伝送効率の改善に効果があるが検討課題も多い。 本稿では、送-受電コイル近傍に共振タンクを増設し、電気・磁気回路的に対称なコイル構成による磁界共鳴方式を提案する。この送-受電コイル構成による電力伝送特性に与える影響について比較検討を行ったので報告する。

4-089

受電側に電流形整流器を用いた非接触給電システムの電力制御法

◎吉田秀人・坂下友一（三菱電機）

近年普及が進む非接触給電技術の主な適用先として充電器が挙げられる。蓄電要素を負荷とする場合，エネルギー残量に応じて給電電力を制御するために，受電側の電力変換器で電力制御を行うことが望ましい。現在までに、受電側変換器による電力制御の研究報告は数多く存在するが, それら文献の多くは共振電流の通流率を制御する方法であり，大容量なフィルタCの接続が要求される。本稿では, 電圧源負荷に対して，電圧制御電流源と同様の動作で充電電流を制御する方式を提案し, 基本動作のシミュレーション検証を行う。前記シミュレーション結果から、大容量の平滑コンデンサを使用せずに充電動作可能であることを報告する。

4-090

走行電気自動車への非接触パルス給電の大容量化と特性評価

◎小池巧実（富山大学）

電気自動車には充電時間が長い、航続距離が短いといった問題点がある。これらの問題点の解消に向け、本研究では電気自動車への電磁誘導による走行中非接触パルス給電システムを提案する。電気自動車の非接触給電方法として、一度に大電力を送ることができる電磁誘導方式を用いた。コイルとコンデンサを使用した容量移行回路を用いることでコイルの結合を保持したまま、パルス的に短時間で給電を行うことができる。また本研究ではコイル間の空隙が大きくなり、トランスとして結合係数は低下するため、想定される結合係数k =0.3における電力を評価した。

4-091

SS補償方式非接触給電における位置ずれ時の出力電圧安定化に関する検討

○田倉哲也（東北工業大学）・松木英敏（東北大学）

電磁誘導を用いた非接触給電システムにおいて，効率改善や出力電圧の安定化のためにコンデンサを接続することが一般的となっている．特に，コンデンサを一次側，二次側ともにコイルに対して直列接続するSS方式において，漏れインダクタンスを補償することで出力電圧を安定化することが可能である．しかし，補償条件に相互インダクタンスが関係するため，コイルの位置ずれによって定電圧を維持できなくなってしまう．本稿では，SS方式における位置ずれ時も定電圧となる周波数を導出し，その降下についてSPICEによる解析を行った．結果として，位置ずれによる電圧変動を周波数調整によって抑制できることが確認できた．

4-092

鉄損を考慮した海中非接触給電システムの検討

◎古山和宜・金子裕良（埼玉大学）・保田富夫（ワィティー）

近年，海洋資源の探査・開発に注目が集まっている。現在の海洋探査機器は，母船とワイヤーで接続し電力供給を行っている。そこで，バッテリー充電に非接触給電技術を用いることで利便性・保守性の向上が期待できる。筆者らは海水中での非接触給電において鉄損が無視できないことを報告している(1)。そこで本稿では，SS方式における鉄損を考慮したコイル間の最大電力伝送効率の理論的検討を行い，実験により妥当性を確認する。

4-093

電圧分散型オープンコイルを用いた非接触給電システムの共振電圧低減に関する検討

◎一條裕貴・五十嵐健太・井上良太・長崎 陽・津田 理（東北大学）・宮城大輔（千葉大学）

近年, 電気自動車に向けた非接触給電システムの研究開発が盛んに進められている. しかしながら, 送受電コイル間の結合係数が小さく, 大容量の電力伝送が必要であるため, コイルやコンデンサに発生する共振電圧が過電圧となることが懸念される. そこで筆者らはオープンコイルにおいてインダクタ及びキャパシタを複数に分割する電圧分散型オープンコイルを提案する. 今回は初期検討として電圧分散型オープンコイルの特性を明らかにするための電力伝送実験を行った. その結果, 電圧分散型オープンコイルの分割数が多いほどコイルに発生する最大電圧が減少することが確認できたので報告する.

4-094

強力超音波応用非接触給電システム(UWPT)における送受電BLT等価回路の検討

◎菊田捷仁・三島智和（神戸大学）

海底資源無人探査機へ給電用途など，液体中におけるワイヤレス給電システムが注目されているが，磁界／電解共鳴方式で課題となる海水による電力損失や送受電カップラの堅牢なシールドが不要となる，超音波振動子を用いた水中非接触給電手法が基礎研究として報告されている。しかしながら，現状，強力超音波振動子を送受電媒体として詳細に検討した事例は少なく，とりわけインシュレータを介在し対向位置させた振動子の電気的等価回路を検証した研究事例は，筆者らの知る限り他にない。本稿では，ボルト締めランジュバン振動子(BLT)を用いた強力超音波応用非接触給電(UWPT)システムについて，送受電BLT等価回路を理論および実験により検証したので報告する。

4-095

負性抵抗発振回路を用いた非接触給電装置の周波数追従性

○石田弘樹（岡山理科大学）・古川裕人・経田僚昭（富山高等専門学校）

近年、パリティ・時間対称性の原理に基づいた新規の非接触給電（PT-WPT）が提唱され注目を集めいている。PT-WPTはParallel-Parallel (PP) 方式のWPT回路に負性抵抗回路を接続した簡素な構成でありながら、伝送距離に変化に対して最適な周波数が自動的に選択される。追従制御のためのコンピュータやセンサが不要となるため、小電力かつ低コストが求められるアプリケーションにとってメリットがあると思われるが、その実用性については十分な検討が進んでいない。本研究では、PP方式のWPT回路と負性抵抗回路で構成されたシステム（以下NRO-WPTと呼ぶ）の実用性について検討した。具体的には、駆動周波数の選択性、伝送性能の評価、周波数追従の応答速度について検討を行った。

4-096

ヘリカル共振器を組み込んだ電界共鳴ワイヤレス給電の試み

◎大矢根 蒼・山本真義（名古屋大学）

ワイヤレス給電の一種である電界共鳴方式は長い伝送距離と高い伝送効率を両立することが難しいとされていた。その理由の一つとして、電力伝送のためにキャパシタンスを持つ送受電極板を用いるためQ値向上に限界があることが挙げられる。そこで本研究では、27.12MHzの電界共鳴方式にQ=1000以上を実現できる「ヘリカル共振器」を組み合わせる試みを行った。共振周波数を狙った値にするための設計方法を考案し、回路シミュレーションによって検証を行った。その結果、Q値を向上するためには共振器の工夫だけでなく、送受電極板の損失などで生じうる抵抗の低減が必要であることが判明した。

4-097

磁気結合の変動を自動補償する中継共振器型6.78MHz磁界結合型ワイヤレス給電システム

◎藤木啓太・小西晃央・三島知浩・石原將貴・梅谷和弘・平木英治（岡山大学）

近年，ワイヤレス給電は広範囲に分散したモバイル機器への給電手段として注目を集め，6.78±0.015 MHzのISM (Industrial Scientific Medical)帯での実施が検討されている．広範囲のワイヤレス給電には伝送距離を広げる必要があるため，中継共振器の適用が研究されている．しかし，中継共振器による伝送距離の拡大は送電共振器との磁気結合に大きく依存し，ISM帯の狭い帯域では送電能力を大きく損なう問題が発生しうる．そこで本稿では，等価的に可変コンデンサとして機能する補償回路を用いて，磁気結合の変動を自動補償するシステムを中継器の独立性を損なわない形で実現するべく，ISM帯で動作可能な実用的な回路を考案し，シミュレーションで有効性を確認する．

4-098

建設機械に向けたワイヤレス給電システムとバッテリ給電のハイブリッド電源の開発

◎溝口洸輔・木下徹規・日下佳祐・伊東淳一（長岡技術科学大学）

これまで著者らは，レールに沿って移動する地下掘削機向けの15kW ワイヤレス電力伝送(WPT)システムを開発してきた(1)。本システムは，レールに沿って一定間隔で設置したWPT コイルから電力を供給しつつ，掘削作業を行う。しかしながら掘削機のアーム長の制限から，掘削可能範囲を広げるためには多くのコイルをレールに設置する必要があり，高コスト化が避けられない。上記の問題を解決するため，掘削機にリチウムイオン電池を搭載し，WPT システムにより電力供給が困難な区間ではリチウムイオン電池から電力を供給するシステムを検討し，実験機による検証を行った。本稿では，リチウムイオン電池を回生可能な直流電源により模擬し，実証試験を実施したので報告する。

4-099

パワーモジュールの熱伝導解析における接触熱抵抗・構造パラメータの一同定法

◎河内昂輝・杉原英治・舟木 剛（大阪大学）

近年、SiCをはじめとしたワイドバンドギャップ半導体を用いたパワー半導体デバイスが注目されている。特に高い電流密度でのSiCパワーデバイスの動作によりモジュールの小型化が期待される。しかし、同じ放熱設計のままでは発熱密度・動作温度が高くなり、接合材料の劣化が顕著となるため、モジュールはより詳細な熱設計を行う必要がある。特に材料間の接触熱抵抗は物性値だけでは決まらないため、実測に基づくモデル化の必要がある。本稿では、有限体積法に基づく熱伝導解析を行うため、PSOを用いた未知パラメータの同定法を提案する。また、得られたモデルの妥当性を、測定した冷却時の温度応答と比較することによって検討する。

4-100

Niメッキ接合を用いたSiCパワーモジューの高温環境下におけるスイッチング特性

◎江頭宏哉・糸瀬智也・川越彬央・今給黎明大・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・巽 宏平・飯塚智徳・森迫 勇（早稲田大学）

SiC素子は，低オン抵抗，高耐圧，高速スイッチングの特徴を持つ一方，高速スイッチングによりサージ電圧が大きくなる課題がある。この課題を改善するため寄生インダクタンスLp(1)の低減が必要である。本論文では，Niメッキ接合(2)を用いて接合したSiC-MOSFET(CPM2-1700-0045),SiC-SBD(CPW5-1700-Z050B)を用いたパワーモジュールのLpが高温環境下におけるスイッチング波形に与える影響を評価した。

4-101

Niメッキ接合SiCパワーモジュールを適用したインバータ出力電圧の温度依存性評価

◎川越彬央・糸瀬智也・今給黎明大・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・巽 宏平・飯塚智徳・森迫 勇（早稲田大学）

近年，EVおよびHEV用途の電力変換器に対し，SiCデバイス適用による小型・高出力化の需要が高まっており，今後さらなる高温環境下において駆動可能であることが要求される。著者らはこれまで，ジャンクション温度Tj = 200℃以上（250℃付近）における動作を目的とし，Niメッキ接合（NMPB）を用いたパワーモジュールを開発し，検討している。本稿では，開発パワーモジュールを三相インバータに実装した場合の高温環境下における出力電圧の温度依存性について実機を用いて検討した結果を報告する。

4-102

フラクタル的フィン形状を有する新規ヒートシンク構造による放熱性能向上効果の検証

◎池上翔悟・梅谷和弘・平木英治（岡山大学）・酒井 敏（京都大学）・東野 智（カシイ）

近年、高周波駆動によって電力変換回路の飛躍的な小型化が進んでおり，少ない放熱面積で効果的に放熱できるヒートシンクが求められている。この課題に対して，本研究では従来の平板フィンと同様の高い表面積を持ちつつも，効果的に乱流を発生させて空気の撹拌を促進する新しいヒートシンク構造を提案する。提案構造は、従来の平板フィンに短冊状に切込みを入れ、フラクタルのような概念のもと折り曲げることによって構成する。放熱性能の実機評価の結果、風速4m/sの条件において熱源の温度上昇を約20%低減する大きな性能向上を確認でき、提案構造の有望性を示すことができた。

4-103

平面および平行平板構造SiCパワーモジュールの放熱板に生じる渦電流の影響

◎糸瀬智也・川越彬央・江頭宏哉・今給黎明大・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

近年，電力変換器の高周波化に伴い，パワーモジュールパッケージの寄生インダクタンス低減手法が課題である。これに対してパワーモジュールの主回路から絶縁された放熱板に発生する渦電流を活用した手法が報告されている。本論文ではこの渦電流に着目し，電流経路構造の異なる二種のSiCパワーモジュールについて，電流経路の違いが放熱板の渦電流および主回路の寄生インダクタンスに及ぼす影響を電磁界解析により検討したので報告する。

4-104

有限要素法に基づくパワーモジュールの電気/熱解析に関する一検討

◎福永崇平・舟木 剛（大阪大学）

パワーモジュールはパワーエレクトロニクス機器の高性能化におけるキーコンポーネントである。SiCパワーデバイスを適用したパワーモジュールには、単に従来のSiパワーデバイスの代替だけでなく、その特長を活かすための低寄生成分化および高放熱特性が求められている。パワーモジュールの構造により生じる寄生成分および放熱特性の解析および設計手法として、数値解析が利用されている。しかし各特性について別々の手法あるいはモデルによる解析がほとんどであり、個々のモデル化が必要となる。しかしながら同一モデルで異なる物理現象の解析が行えれば、パワーモジュール構造の最適設計が容易となる。本論文ではパワーモジュールの寄生インダクタンスおよび過渡熱抵抗特性を、有限要素法（FEM）に基づいて同じモデルで解析し、その妥当性を検証した。

4-105

交流電気車トランスレス化回路用入れ子キャパシタ構造の基礎検討

○福田典子・小笠正道（鉄道総合技術研究所）

交流電気車の更なる省エネに向け，主回路機器の小型軽量化の一環として，Siでは実用が難しいが，SiCの特長である高耐電圧特性を前提とした，主変圧器を不要とする新たな交流車主回路方式の研究に取り組んでいる。ここでは，主変圧器の絶縁機能を代替する回路開発の第1ステップとして提案した回路において，パワーデバイスが同時点弧した場合でも成立するための方策として，キャパシタの新たな基本構造を提案し，その基礎実験を行った。

4-106

直流バイアス磁界下におけるギャップインダクタの低損失設計法

◎小島立寛・清水敏久（首都大学東京）

半導体電力変換回路に用いられるインダクタの低損失化にあたり，鉄損を定量的に把握する手法として，筆者らはロスマップ法を提案し，磁性体内部の直流磁界に対する鉄損の変化を表記する手法を提案した。しかし，チョッパ用インダクタなどでは直流重畳による磁気飽和を防止するために，磁路ギャップを挿入するが，磁路ギャップ長と全損失の関係について定量的考察は十分に行われていないと考えられる。そこで本論では，ギャップ長に対する鉄損および銅損の定量的な計算を行い，ギャップ付きインダクタの低損失設計手法に関する基礎検討を行ったので報告する。

4-107

インダクタの形状に関する検討

◎菊池菜乃・清水敏久（首都大学東京）

電力変換回路に使用されるインダクタの鉄損は磁界の直流バイアス成分に対して非線形に変化し，その特性は磁性材料に大きく依存するため，シュタインメッツ方程式や拡張シュタインメッツ方程式で鉄損を計算することは困難である。そこで筆者らは直流バイアス成分を考慮した損失表記法としてロスマップ法を提案し，その有用性を示してきた。一方，必要なインダクタ仕様を満たす磁性体寸法と巻線数には自由度が残されている。そこで，本論では降圧チョッパ回路に使用するインダクタの損失について，インダクタンス値一定の条件下において，磁性体寸法と導体巻数の組み合わせに対するインダクタ損失の比較を行ったので報告する。

4-108

ソース電圧クランプ型サージ電圧抑制回路に関する基礎検討

◎佐段田裕平・吉川直樹・松尾和也・進藤裕司（川崎重工業）

近年, 高速動作かつ導通損失が小さいスイッチング素子としてSiC-MOSFET が実用段階となっている。ただし、SiC-MOSFETには, 高速動作によりスイッチング損失を低減可能である一方で, ターンオフ時にドレイン－ソース間に高いサージ電圧が発生するというトレードオフが存在する。サージ電圧を抑制する手法としてクランプ回路を用いる場合があるが、高周波駆動時にはクランプ回路での損失による発熱が問題となる場合がある。そこで, クランプ回路での損失を低減するために, MOSFETのソース寄生インダクタンスに発生する電圧を利用するクランプ回路を提案する。本稿ではその有効性をシミュレーションにて検証したので報告する。

4-109

炭化珪素サージ吸収ダイオードの試作と評価

○山本真幸・小関国夫・中山浩二・田中保宣（産業技術総合研究所）

近年、パワー半導体デバイスのスイッチング速度向上により、回路の寄生インダクタンスに起因したターンオフ時に発生するサージ電圧の影響が無視できなくなっている。この問題を解決するため、我々は以前の研究において、サージ吸収を目的とした炭化珪素アバランシェダイオードを試作し、素子のアバランシェ降伏以降の電流密度-電圧(j-V)特性を評価することで、素子が400V以上の高電圧領域において優れたクランプ特性を持ちうることを示した。本講演では、電流100Aの回路における試作素子のサージ吸収特性評価の結果を発表する。

4-110

TMRセンサを用いたボンディングワイヤ電流測定法の検討

◎田守 建（芝浦工業大学）・赤津 観（横浜国立大学）

近年，排気ガスを排出しない電気自動車(EV) の需要が増加傾向にある。電気自動車の需要増加に伴い，性能向上のために駆動システムの小型化や高効率化が要求されている。一方で問題点として，インバータモジュールが小型化するほど発熱密度が上昇することが懸念される。発熱密度の上昇によってインバータモジュールが故障する恐れがあるため，フェールセーフの観点から，早期に故障を検出する必要がある。そこで本研究では，インバータモジュール内のボンディングワイヤにTMR(Tunnel Magnetic Resistance) センサを設置した断線検出法及び電流測定法を提案する。本研究はTMR センサを内蔵しつつ，かつサイズも小型であるインバータモジュールを実現することを目的している。

4-111

パワーエレクトロニクス用キャパシタの短時間耐量評価手法

◎瓶子裕貴・和田圭二（首都大学東京）

パワーエレクトロニクス回路において,コンデンサは様々な用途において使用されており，電圧平滑化のために必須の素子である。最近では，フィルムコンデンサの利用用途が広がってきており，直流平滑用にも使われるようになってきた\cite{key1}。電力変換回路においては，コンデンサはパルス電流を供給する素子として使用するため,パルス電流耐量の評価が必要となる。\\~~~一般にコンデンサのデータシートに記載されている電気的特性は定常状態でのパラメータが示されているだけであり，過渡的な使用状況下におけるコンデンサの特性評価については示されていない。\\~~~そこで,本研究では過渡的な用途におけるコンデンサの過電流耐量を評価する試験回路を示し，さらにPETとPPフィルムコンデンサの評価を行う。

4-112

配線インダクタンスと浮遊容量を低減する主回路構造の提案

◎石川光亮・小笠原悟司・竹本真紹・折川幸司（北海道大学）

SiCやGaNを用いた次世代パワー半導体デバイスの研究・開発が盛んにおこなわれている。一方で，電力変換器に存在する寄生成分によってスイッチング特性が悪化する。近年では，配線インダクタンスだけでなく，浮遊容量までもがスイッチング特性に影響を与えることが報告されている。 本稿では，配線インダクタンスと浮遊容量の双方を同時に低減可能な主回路構造を提案する。また，提案構造が従来構造で問題であったDCリンク正負極－出力極間の浮遊容量を低減可能であることを周波数特性測定から検証する。さらに，スイッチング遷移時間の測定結果から，提案構造において高速・低損失スイッチング動作が可能であることを示す。

4-113

ニューラルネットワークによるバスバーの寄生パラメータ推定

◎三井晃司・和田圭二（首都大学東京）

スイッチング速度の高速化に伴いサージ電圧を低減することを目的としたラミネートバスバー配線が一般的に使用され，配線構造に起因する寄生インダクタンスの低減が実現されている。一方，スイッチングに起因して生じる電圧・電流の振動周波数は数十MHz を超えるため，バスバーの寄生パラメータを直接調整・設計することが要求される。バスバーの寄生パラメータは構造によって複雑に変化するため，正確なシミュレーションに電磁界解析が使用され，解析毎に時間を要する。本稿では電磁界解析で計算したデータをもとに機械学習を行い，任意のラミネートバスバー構造と周波数を入力することで，寄生パラメータを予測するモデルを構築したため報告する。

4-114

DC-DCコンバータ整流回路用二重共振スナバ

○山田隆二・王 啓臣（富士電機）・林 河・清水敏久（首都大学東京）

絶縁DC/DCコンバータ整流回路用スナバとして、バレーフィル回路によりピーク電圧抑制と電力回生を両立するものを提案する。共振周波数を2つ持たせて充電時の電圧ピークを分散させ、単一の共振系では印加電圧の2倍まで達する電圧を、より低く抑制する。またバレーフィル回路の充／放電電圧の差異を利用して放電と再充電の繰り返しによる損失発生を防止する。

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高調波補償効果と高調波耐量の両立を目的とした直列インバータ付き進相コンデンサの制御法

◎Guilherme Cirilo Leandro・佐野憲一朗（東京工業大学）

高い高調波補償効果を持つ6%リアクトル付き進相コンデンサ(以降6LSC と表記) は，高調波電圧の高い地点で用いると過負荷になりやすい。一方，高い高調波耐量を持つ13%リアクトル付き進相コンデンサ(以降13LSC と表記)は，高調波補償効果の面では6LSC と比べて劣る。高調波共振の抑制を目的として進相コンデンサや高調波フィルタと直列にインバータを接続した装置(以降ISC と表記)が提案されている。本稿では，連系点電圧の高調波含有率に応じてISC の補償電流を変化させることで，高調波含有率が高い場合にも過負荷を回避する方法を提案する。これにより，6LSC 相当の高調波補償効果と13LSC 相当の高調波耐量を両立できることを，シミュレーションにより確認する。

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系統電圧不平衡時における3×4マトリックスコンバータ方式UPFCを用いた電圧変動補償と有効・無効電力制御

◎平尾光輝・山本吉朗・篠原篤志（鹿児島大学）

統合電力潮流制御装置（UPFC）は，FACTS機器であり，系統電圧の位相と振幅を制御することにより，電力系統の安定性を向上させる。本研究室では，大容量の電解コンデンサが不要で三相不平衡電圧を出力可能な三相3線入力三相4線出力マトリックスコンバータを用いたUPFCの開発を目指している。本稿では，系統電圧不平衡時における電圧変動補償と有効・無効電力制御についてシミュレーションで検討を行い，低下した電圧を補償しながら，受電端有効電力Pと受電端無効電力Qを指令値通りに制御できることを示したので報告する。

4-117

トランスレスSTATCOMによる配電系統電力品質の改善効果に関する検討

◎清川タカシ・呉 国紅（東北学院大学）

本研究では、配電系統において増加しつつある再生可能エネルギー発電や変動負荷による電圧不安定・力率低下などの配電電力品質の劣化問題を対処するために、小型・高効率の特性を有しており、配電系統の配置に適すると言われるトランスレスSTATCOMを用いて、配電電圧変動抑制と力率改善の効果を同時に得られるトランスレスSTATCOMの制御系を提案し設計した。また、本検討でMMC構造のトランスレスSTATCOMモデルを構築し、一般的な配電系統モデルにおいてシミュレーションを行い、配電電圧品質の向上効果を検討し、確認した。

4-118

直流キャパシタ電圧一定制御を用いた三相4線式配電用 APLC の高調波補償法

◎木原侑也・彦坂征汰・山田洋明・田中俊彦（山口大学）・池田風花・岡本昌幸（宇部工業高等専門学校）・Seong Ryong Lee（Kunsan National University）

著者らは先に，直流キャパシタ電圧一定制御を用いた三相4 線式配電用 Active Power-Line Conditioner (APLC) の制御法を提案し，計算機シミュレーションによって無効電流，不平衡有効電流および高調波電流の補償が可能であることを明らかにした。本論文では，直流キャパシタ電圧一定制御を用いた三相4線式配電用 APLC の制御法の有効性を縮小モデルを用いた実験により確認したので報告する。

4-119

複数の双方向チョッパを使用したメガソーラ用三相インバータの基礎実験

◎清水嘉文・萩原 誠（東京工業大学）

メガソーラ用三相PV(Photovoltaics) インバータの入力直流電圧(太陽電池電圧) は, パネル温度に応じて変動する。通年の運転を可能とするため, 一般に太陽電池電圧が最も低下する夏季の入力直流電圧を基準にインバータ交流側電圧を決定する。 筆者らは, 複数の双方向チョッパを使用した三相インバータの動作可能入力電圧範囲を拡大する手法として, 零相電流重畳を用いた手法を提案した。上記手法は, 入力直流電圧の低下に応じて変換器各相の電流に均等に直流電流を重畳することで, 低入力電圧時の変換器動作を実現する点に特長がある。 本論文では, 100 V ミニモデルを用いた実験を行い, 提案手法による変換器動作の有効性を実証した。

4-120

実際の単相3線式配電線を考慮した電気自動車用スマートチャージャの無効電力調整法

◎池田風花・岡本昌幸（宇部工業高等専門学校）・濱崎晃旗・山田洋明・田中俊彦（山口大学）

著者らは先に，実際の単相3線式配電線を考慮し複数の需要家が接続された場合において直流キャパシタ電圧一定制御を用いた電気自動車用スマートチャージャの制御法により，スマートチャージャを設置した需要家だけの電力品質が保証可能であることを明らかにした。本論文では，スマートチャージャの変換器容量を低減することを目的として直流キャパシタ電圧一定制御を用いたスマートチャージャの制御法に無効電力調整機能を不可する。複数の需要家が接続された場合において無効電力を調整しスマートチャージャの変換器容量を低減しながらスマートチャージャを設置した需要家だけの電力品質が保証されることを実験により確認したので報告する。

4-121

高速無線通信プロトコルを用いた電力変換回路制御用無線センサの検討

◎小原秀嶺（横浜国立大学）・永田裕二（三喜電機）・和田圭二（首都大学東京）

近年，中高電圧大容量用途へ応用が進んでいるマルチセル形の電力変換器や非接触給電用電力変換器の一次側回路と二次側回路の間の通信などにおいて，無線センサのニーズがある。このような背景から，著者らは，電力変換器のリアルタイムフィードバック制御に用いることの出来る高速な無線センサについて検討している。本応用における無線通信は，単にデータ転送が高速なだけでなく，データ転送の遅延時間（レイテンシ）が短いことが最も重要である。本稿では，無線通信の遅延時間が短い高速な無線モジュールを用いた無線センサについて検討したので報告する。

4-122

充放電電流を変化させた場合の電池モジュール温度分布の検討

○近藤敦美・木内麻紗子（東芝インフラシステムズ）

所望電圧、電流となる複数のリチウムイオン電池セルを直並列に配線、樹脂ケースに収納することで、電池モジュールは構成される。リチウムイオン電池のセルは、温度と充放電電流によって容量減少や内部抵抗上昇等の劣化速度が異なる為、モジュール内の温度分布把握が求められている。本研究では、電池モジュールの電気/熱回路モデルを構築、充放電電流に対する温度分布、勾配について検討した結果を報告する。

4-123

熱電素子の直流電源として特性評価

○髙木茂行・丸山 航（東京工科大学）

熱電素子を用いた排熱の再利用を目的として，熱電素子の直流電源としての特性を評価した。BiTe系の熱電素子を加熱して発電させ，外部抵抗を接続して発電特性を測定した。得られた結果から，熱電素子を直流電源と内部抵抗からなる等価回路でモデル化してシミュレーションし，実際の発電特性との比較から等価回路の妥当性を確認した。一方，インピーダンスアナライザによる交流法で内部抵抗を測定し，発電時等価回路の内部抵抗と交流法で内部抵抗は異なることが分かった。

4-124

IEC TC22 MT3の規格改正状況と今後の活動計画

○吉野輝雄（東芝三菱電機産業システム）

IECでパワーエレクトレクトロニクスの規格を担当するTC22傘下のMT3という規格のメンテナンスを行うチームの活動の一つとして，IEC TR 60146-1-2（半導体電力変換装置のアプリケーションガイド）の改正が終了し、新たなバージョンが発行されたので報告する。2019年全国大会での発表の続報となる。 本稿では，2章でTC22 MT3の位置づけ， IEC TR 60146-1-2の新バージョン発行までの経緯を報告し，旧バージョンとの差異などを紹介する。3章では，それに連動して2つの古い規格を廃止について説明する。4章では今後の活動計画を紹介する。

4-125

パワーエレクトロニクスのパラダイムシフトの提言

○木下繁則（IEEJプロフェショナル）

パワーデバイスと制御の進展によってパワエレ機器の小型・軽量化が大きく進んだ。近年、SiCやGaNの新デバイスの出現によって機器の小型・軽量化が更に進んだ。しかし、技術の現状はSiデバイス技術の延長戦上にあり、新デバイスの性能を十分生かし切っていないように思われる。パワエレ機器の出力密度は30年で100倍になるスピードで進化しており、近未来の小型・軽量化が危惧される。そこでここでは、パワエレのパラダイムシフトの構築を提言する。

4-126

N700S新幹線車両用バッテリ自走システムの開発

佐藤賢司・福島隆文・加藤宏和・○小田耕太郎・瀬尾哲平・山崎 実（東海旅客鉄道）

We developed an SiC applied traction system for the latest Shinkansen series N700S. This system caused weight reduction and compactness that increased the flexibility in designing the layout of the underfloor equipment. Due to the increased flexibility, we developed a lithium-ion battery self-traction system which is the first in the world in order to power the train at low speed in case of power outage or earthquake.

4-127

パワー半導体を用いた電動航空機へのシステムシミュレーションの応用

◎一柳直志・福岡智司・Samantha Voon・重松浩一・今岡 淳・山本真義（名古屋大学）

航空機の利用増加による二酸化炭素の増加を防ぐために航空機の電動化は急務である。本論文では電動航空機をシステムモデルとして表現し、シミュレーションにより各半導体スイッチング素子による損失を比較する方法を示し、その結果を報告する。