一般講演

4-128

CMG搭載型無人バイクの旋回走行制御

○小谷斉之・小野 治（明治大学）

近年，大規模かつ高頻度で自然災害が発生しており，物資搬送や現場探索など無人ロボットによる災害支援が強く望まれる。筆者は既に機動性と走破性に優れるバイクに，自ら力を生み出すことができるコントロールモーメントジャイロ（CMG）を搭載し，無人であっても自立走行が可能な無人バイクの開発に成功している。しかし，現時点では直進走行に対する制御系設計による安定性を確認しているのみである。本研究では，次段階として機動性を活かすためにステアリング操作を含めたCMG搭載楽無人バイクの制御系設計を構築し，旋回走行による自立制御の検証を行う。

4-129

ハイブリッドエアシリンダによる能動的なセンサレス力制御の検討

◎嶋田直樹（石川工業高等専門学校）

本研究では，外力に柔軟な新しいアクチュエータとして，ボールねじとエアシリンダを組み合わせた「ハイブリッドエアシリンダ」を提案し，センサレス力制御系について検討を行った。提案する力制御系は，同定試験によってモデル化したボールねじの逆モデルに基づく反力推定オブザーバによって推定された反力をフィードバックすることによって，エアシリンダの空圧制御のみでは困難な，手先先端での正確な力制御を可能にした。提案法の有効性は実機実験によって検証が行われ，提案するハイブリッドエアシリンダは接触の直後や力指令が変化した際に生じる反力応答の収束時間は短く，推定反力の誤差も低減されることが確認された。

4-130

冗長高次モデルを適用した2自由度制御系に対するFRITを用いたオートチューニング性能の評価

◎萱島一也（九州工業大学）・小代哲也（九州産業大学）・本田英己（九州工業大学）

近年産業界で用いられるメカトロニクス機器は，自由度を増やすために構造が複雑化する傾向にあり，指令高速化と相まって振動が発生し，生産性を高める上で問題となっている．振動抑制の制御則にはモデル追従制御に代表されるような制御対象の数学モデルを用いるものが多いが，その場合数学モデルの次数の決定が重要となる．そこで，低次な制御対象の同定を，より高次な数学モデルで行うと極・零点の相殺が起こることを利用し，高次な数学モデルを適用した2自由度制御系の制御パラメータを，Fictitious Reference Iterative Tuning (FRIT)を用いて調整した．その調整結果が極・零点相殺により最適な調整となるかを実験により検証したので報告する．

4-131

冗長脚を有する二足歩行ロボットのサイクロイド曲線に基づく足踏み動作

◎染野銀志・柴田昌明（成蹊大学）

本研究は二足歩行ロボットが人間の平均歩行速度で歩行を実現させることを最終目的とする。高速で歩行するためには歩幅を大きくするか歩行周期を短くすれば実現可能となるが、速度が大きくなれば足裏にかかる床反力が増大する為ロボットが転倒する恐れがある。先行研究では脚重心を制御して床反力を緩和する手法を提案したが、本研究は足先の歩行軌道に着目し、脚重心を制御せずにサイクロイド曲線を描くことで床反力を低減する手法を提案した。

4-132

魚眼カメラを用いた視覚フィードバックによる倒立振子の安定化制御器の設計

◎畑田和良（福岡大学）・平田健太郎（岡山大学）・増井詠一郎（大島商船高等専門学校）

従来より、視覚フィードバック制御に関する研究が進められている。一般的なカメラを計測に用いた場合、視野の制限により計測対象を見失うことがある。この問題には180度程度の視野を持つ魚眼カメラの使用が有効である。しかし、視覚フィードバックへの応用はあまり報告されていない。そこで、本発表では魚眼カメラを用いた台車型倒立振子の視覚フィードバック制御について考える。まずは、魚眼レンズを使用することによる計測値の影響をモデリングする。そして、このモデルを用いて安定化制御器を設計する。最後に、数値シミュレーションの結果より安定化の可否について述べる。

4-133

バイオリン演奏のためのイナータンス制御

◎藤崎広大・車谷大揮・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

300年以上昔よりバイオリンは人の手によって演奏されてきた。バイオリンに代表される擦弦楽器を演奏する際には，弓が弦に与える圧力，弓の速度，擦る位置などを精密にコントロールする必要がある。熟練者は，これら全てを精密に制御することで任意の音色を作り出している。これまでにもバイオリンを演奏する事が出来るロボットは研究されてきたが，いずれも熟練者の演奏を再現するには至っていない。バイオリンの演奏をロボットで行う際に問題となるのが，振動である。本研究では，マニピュレータの力ゲイン，速度，及びに力がどのように音に影響するかを明らかにすると共に，適切なパラメータ設計を探る事を目的とする。

4-134

地理情報システム（GIS）用いた想定される危険箇所にある太陽光発電所の抽出と想定される危険箇所を回避した太陽光発電所設置場所の提案手法の構築

◎権 童仁・Bunme Pawita（九州工業大学）・塩田 淳（北九州市役所）・三谷康範（九州工業大学）

本研究では、太陽光発電所の設置場所に着目し、地理情報システム（GIS: Geographic Information System）を利用して、既存の太陽光発電所が国や都道府県が作成、更新する土砂災害警戒区域、浸水想定区域（想定される危険箇所）に該当するエリアに設置されていないかどうか可視化する仕組みを構築した。さらに、これまで構築してきた日射量マップと想定される危険箇所を重ね合わせ、想定される危険箇所外で多くの日射量を得られる場所を抽出する仕組みを構築した。災害発生前に危険な場所に設置されている太陽光発電所を自治体が事前に把握し災害発生時の対応計画を立てられるともに、想定される危険箇所を避け、日射量を多く得られる場所を提案することを本研究の目的とする。

4-135

ソフトウェアベースの多機能インバータから構成されたスマート電力ルータ

◎グエン ヴァンチエト・田中謙司（東京大学）

本研究は安全性・信頼性を保ちつつ、再生可能エネルギーをさらに受け入れる電力システムを構築するため、ソフトウェアベースの多機能インバータやそのインバータから構成されたスマート電力ルータを開発する。現電力系統は、再生可能エネルギーの導入に限界があり、連鎖停電事故の発生可能性もある。その問題を解決するためにデジタルグリッドという新電力系統の構築は提案されたが、デジタルグリッドの実現のために取引システムと連携して電力を制御する電力ルータができていない。本研究は標準化した単一のハードウェアで、デジタル制御ソフトウェアのみで様々な機能を実現できるソフトウェアベースの多機能インバータを開発する。従来のパルス幅変調制御方法と異なる高速デジタル適応バンド幅ヒステリシス制御を提案する。スマート電力ルータが開発できるとこれまでボルトネックとなった電力ルータから開放され、新型電力システムの研究や実証が急激に進展すると考えられる。

4-136

蓄電池サービス（BaaS）における価値創造プロセスの提案

○田代洋一郎（東京電力ホールディングス）

This proposal considers a service value creation methodology in Battery solution service based on knowledge science. Recently, there are many services and business cases of using Battery. However, these services do not consider knowledge itself for creating Battery solution. The most important issue is taken a consideration of battery installation layer. Based on this approach, I propose the value creation process at Battery as a service.

4-137

契約電力制約を考慮した商業施設利用者に対するEV充電サービスの検討

◎宮原将太・芳澤信哉・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）・稲垣伸吉・川島明彦・鈴木達也（名古屋大学）

電気自動車（EV）の普及に伴って商業施設における充電サービスという新たなサービス形態が広まりつつある。このようなサービスを提供する上で，事業者は充電によって生じる電力需要をふまえた上で設備全体の契約電力を再検討する必要があり，また電気料金を抑えるためには商業施設の契約電力と最大負荷を鑑みた上でEV群の充電を制御することが求められることになる。一方，サービス利用者にとってはSOCが小さいEVほど多く充電されつつ，極力すべての利用者が恩恵を受けるようなシステムの構築が望ましいと考えられる。本稿では，契約電力の制約下で利用者の満足を達成する1つの充電制御方法として，接続されたEVのSOCに応じて時変の優先度に基づき充電を行う手法を提案し，実際の商業施設データを用いて評価する。

4-138

業務ビルスマートメータ模擬データからの需要家特徴の自動判別に関する基礎検討

◎藤田隆司・大藤建太（会津大学）

日本の業務ビルの1年分の電気使用量データを収録した環境共創イニシアチブ(SII)のBEMSオープンデータを用い、スマートメータデータの活用法として、需要家特徴の自動判別を試みる。多数の建物間で比較する際、時系列データでのスマートメータデータをそのまま使うと情報量が大き過ぎ、判別や異常検知の際に多くの時間を要する。筆者らは過去に、ロードカーブから特徴量を自動抽出し、データを圧縮して建物間比較などを行う方法を提案した。本稿はその続報として、ロードカーブ特徴量の改善と再選定を行い更に少ない特徴量で判別や異常検知が行えるかを検証した。

4-139

人体の気温記憶と省エネルギーについて

◎佐藤直人・酒井 清（福島工業高等専門学校）

福島高専における省エネルギー活動の一環としてデータを整理、評価していた。その中で、平均気温とヒートポンプシステムの使用エネルギーとの間には、冷房を使い出す頃の平均気温（気象庁の一日平均温度であって最高気温では無い）が17度近傍、冷房を使わなくなる頃は、20度近傍であった。このことから、人体には気温の記憶があり、その記憶を考慮して、気温の設定をおこなえば、エネルギーの使用合理化（省エネルギー）につながると考えている。学内での実験計画も含め、省エネルギーの可能性について報告する。

4-140

異物侵入防止を目的に換気を抑制したキュービクルにおける内部環境の評価

◎向井健太（関西電気保安協会）

一般にキュービクルには、排熱などを目的に換気口や換気装置が設置されているが、これは異物等が侵入することもあるため、電気事故や絶縁劣化の原因ともなりうる。そこで、通気孔、扉、床面などの隙間をできるだけ小さくし、小動物の侵入防止や換気を抑制することで埃等の異物侵入防止を可能とするキュービクルを開発し設置、運用を開始しているが、換気が抑制されるため、特に夏季の内部温度上昇が懸念される。対策として、キュービクル上部に二重屋根を設置することで内部温度変化の抑制及び侵入物による事故発生や機器劣化を防止すると同時に、高温・結露による機器劣化、発錆も防止することが期待できる。本稿ではこの換気を抑制した新キュービクルの内部環境を評価した。

4-141

山形新幹線通告伝達システム導入に伴う電界調整

◎佐藤綾乃・松山仁志・古賀寛人・中村健吾・森川景介・早野秀昭（東日本旅客鉄道カブシキガイシャ）

山形新幹線（福島～新庄）では、在来線地方デジタル列車無線に加え、東北エリアでは初の通告伝達システムを導入する試みがなされている。通告伝達システムとは、これまで列車無線等を使用して音声での連絡していた指令と運転士間の通告業務（運転規制・運転計画変更等）を、指令に設置する操作卓にて通告内容を列車番号単位で車上へデータ伝送し、車上の通告用モニターへ出力して承認操作まで可能にするシステムである。伝達するのに必要な電界値が得られない場合、情報を送ることができず、運転士に情報が伝達されるまでタイムラグが発生してしまう。本検討では通告伝達システム導入に向けて、弱電界区間及びゾーン境界で行った電界調整の内容について報告する。

4-142

気仙沼線大船渡線BRT整備工事について

◎佐藤瑛介・大倉孝治・太田稔夫・豊川宏之（東日本旅客鉄道）

東日本大震災の津波により、気仙沼線の柳津～気仙沼間と大船渡線の気仙沼～盛間は甚大な被害を受けたため、BRTによる復旧を行った。 JR東日本におけるBRT区間は元々鉄道の単線区間であった路線をBRT専用道路化（以下、専用道）しているため、幅が狭くバスのすれ違いができない。そこで要所に待避所を設け、そこですれ違いを行う有視界走行を基本としている。しかし、トンネルやカーブ、その他障害物等で見通しが悪い区間においては区間の両端に信号機を設けバス通過の制御を行うことで効率的な双方向通行を行っている。 気仙沼線BRTの清水浜駅は従来の信号機と異なる信号機を設置したので、その工事について報告する。

4-143

クレーン等の送配電線への接触等による感電災害防止の調査

○冨田 一（労働安全衛生総合研究所）

クレーン等の建設機械の作業では、作業中に誤ってクレーンのブームが送配電線に接触などして感電災害の発生することもある。本稿では、我が国を始め諸外国のクレーン等と送配電線との離隔距離の規程及びクレーン等が送配電線に接触することを防止する対策技術について現状をインターネットを通じて調査した。送配電線の電圧が同一であっても、国によって離隔距離に差があるものの、定性的には送配電線の電圧が高くなると離隔距離も長くなる傾向を示している。送配電線へのクレーン等の接近対策には、作動範囲制限装置、レーザスキャンによる測定システム、送配電線等監視システム、3Dクレーンブーム監視システムなどICTを活用したものが実用化されている。

4-144

無線通信式マンホール内水位センサの開発と評価

○歌谷昌弘（広島国際学院大学）・永田 武（広島工業大学）・山﨑 勇（マウンテック）・甲斐 健（デジコム）

高速道路では，舗装下の埋設管路内に設置されているケーブルの浸水による通信障害が問題となっている。そのため埋設管路の浸水状態を定期的にチェックし排水する必要があるが，テロ等のリスクもあるため容易にマンホール内に入ることができない。 本論文では，マンホールを開けることなく浸水状態を把握するために、無線通信式の水位センサを開発した。静電容量式の水位センサを試作し，学内のマンホールを用いた実験を行った。その結果，マンホールの中心から約半径8 m，高さ2m内では安定した通信状態で水位の計測に成功した。降雨の影響は不明であるが，本提案方式は無線通信方式でマンホール内のデータを検出する一手法を示すものである。

4-145

3次元Web監視画面のシンボル制御方法の検討

◎米田詠美・大崎雅代（三菱電機）

IoT化と3次元監視画面へのニーズ拡大に対応するため、3次元Web監視画面におけるシンボル制御方法の検討を行った。シンボルの各要素に監視データに対する振舞いルールデータを設定することで振舞い設定の簡易化が可能となった。振舞いルールデータと補間関数パラメータを考慮したシンボル制御により、視認性を確保しながら効率的に3次元シンボルを制御可能であることを確認した。今後の課題として、振舞いルールデータを設定するための支援画面の作成に向けて取り組むことを検討していく。

4-146

コレントロピーに基づくModified Brain Storm Optimizationを適用したPastingを用いたArtificial Neural Networkによるショーケースの故障判定

○大高直哉・福山良和（明治大学）・川村 雄・村上賢哉・Adamo Santana・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

コンビニエンスストアなどで利用されているショーケースでは，着霜や冷媒漏れ等によって庫内が設定温度に保てなくなる可能性が稀にある。従って，高精度の故障判定は，顧客サービスの継続には欠かせない。本論文では，異常値を含むデータに対するエンジニアリング業務軽減と共に，故障判定精度向上のため，コレントロピーを適用したModified Brain Storm Optimization（以下，MBSO）を用いたニューラルネットワーク(以下，ANN)にPastingを適用したショーケースに対する故障判定手法を提案する。従来のパラメータ学習法である最小二乗法を適用したStochastic Gradient Decent(以下，SGD) 及びコレントロピーを適用したMBSOとの比較シミュレーションにより，提案法の有効性を確認した。

4-147

機械学習によるIPMSMの磁場分布予測モデルの基礎検討

○町田 啓・坂本宏紀（明電舎）

EVなど応用分野の拡大につれIPMSMを高速かつ精度よく模擬するモデルの需要が高まっている。有限要素法をベースとした手法では構造を含めた解析が可能だが計算に時間がかかる。本手法はディープラーニングを用い、有限要素法によるIPMSMの磁界解析結果を学習することで、パラメトリックかつ高速に磁界解析結果を得るモデルの作成を目的とする。MLPを用いてまずベクトルポテンシャルを学習するモデルを作成し、次にこのモデルを転移学習して2軸電流と位相、機械角の三角関数を入力パラメータとする予測モデルを作成した。このモデルで磁場の予測を行い、良好な結果が得られた。

4-148

自動外観検査に向けた学習画像生成の検討

◎野間拓耶・浅野貴正・竹内 豊（富士電機）

近年、深層学習による自動外観検査システムの開発が進んでいる。一般的に、深層学習は大量のデータを必要とし、各クラス(認識したい属性)のデータ数が均等であることが望ましい。しかし、現場では理想的なデータ収集は困難である。これに対して、画像処理技術(回転、フィルタ処理等)や画像合成技術(Mixup)を用いて人工的に画像枚数を増やすことが出来るが、数の不均衡性は解消されない。本稿では、クラス内の2枚の画像を確率的な比率で混合することにより、新たな画像を生成する手法を提案する。本手法により、クラス間のデータ数を均衡にすることが可能になる。その効果を、複数の外観異常クラスを持つ半導体ウエハ画像を題材に検証した。

4-149

画像特徴データを利用した環境認識法とSLAMへの応用

◎木村海渡・日高浩一（東京電機大学）

自律型走行ロボットの作業ではロボットの自己位置と環境情報が必要となる.そこで環境情報を自己位置推定しながら取得するSimultaneouso Lcalization and Mapping(SLAM)が提案されて移動ロボットや自動運転等で利用されている．利用されるセンサは赤外線センサやLIDARなど光の照射・反射現象を利用して物体間距離や形などを認識する. そのため柵の様な隙間が存在する物体では光が通過してしまい，物体認識が困難である欠点がある．そこで光情報から取得した距離情報とRGBカメラの画像を組み合わせる事で，赤外線センサのみでは認識出来なかった柵を障害物として認識する方法を検討する.

4-150

BPF構成を用いたチップレスRFIDタグの検討

○佐川守一・牧本三夫・小野 哲・和田光司（電気通信大学）

バーコードによるIDタグは安価で広く普及しているが、秘匿性や改ざんなどセキュリティ上の課題も多い。これに対処するため、電磁波を利用したチップレスタグ方式が検討されている。これまではBSFを利用したものが提案されている。筆者らは1個のステップ・インピーダンス共振器（SIR）のマルチモードを用いた方式を提案している。今回、新たにバンドパスフィルタを用いたチップレスタグについて検討したので、概要を報告する。

4-151

ヒートバランス作成における設計自動化技術

◎山口大輔（東芝）・兼平祐己朗（東芝エネルギーシステムズ）

東芝エネルギーシステムズでは火力発電プラントのヒートバランス作成業務に独自開発した数値シミュレーションを用い、蒸気タービンの仕様策定を反映してプラント性能の評価を行っている。近年、性能の要求は高まる一方、需要増の影響から技術者不足が課題となっている。そこでタービンの仕様の中でも重要な蒸気入口圧および排気圧の設計プロセスにブラックボックス最適化技術を適用し、設計自動化のアルゴリズムを開発した。3件分の実例のデータを用いてアルゴリズムの評価を行った結果、従来のプロセスでは複数営業日を必要としていたのに対し7～20時間の妥当な実行時間で、プラント性能について熟練技術者と同等以上を達成することができた。

4-152

自立型電源を用いた冠雪観測装置

○伊藤憲彦（電力中央研究所）

電力会社では屋外設備の巡視効率化によるコスト低減および労務負担軽減が求められている。この巡視の中には、豪雪地域において、配電設備に形成される冠上の雪の塊(冠雪)などがある。降雪期は定期的な巡視と冠雪落とし作業を必要としている。 しかし、既存の画像監視装置は消費電力が大きく、長期間の撮影を行うには屋外で得にくい外部電源や大型の蓄電池が必要となり、設置自由度が低くなるという課題が存在する。今回、代表的な自立型電源である太陽光パネルと蓄電池の組み合わせによる電柱に設置可能な冠雪観測装置を構築したのでその結果を報告する。

4-153

パワーエレクトロニクス用センサネットワークへの同時送信型フラッディングの適用と通信性能向上手法の提案

◎加藤功夢・松崎頼人（東京工業高等専門学校）・和田圭二（首都大学東京）

パワーエレクトロニクス機器では一般的に有線センサ網を用いたセンシングを利用しているが，電気的絶縁の対応へのコストや大規模化に伴う配線の複雑化などの問題がある．そこで，同時送信型フラッディングと呼ばれる無線技術を取り入れることで，有線通信に対する無線通信の弱点であるパケット到達率やレイテンシへの影響を減らしつつ，有線センサ網の課題を克服することができる．本研究では，この通信技術によるパワーエレクトロニクス用無線センシングアプリケーションへの適用を検討するため，そのスループットの上限値を測定する．また，そのスループット向上を目的としたチャネル分割による性能向上手法について提案する．

4-154

一線接地系2レベルIGBTインバータの零相電圧重畳による接地検出手法

◎長山航大・白石 創・中村雅史（東芝三菱電機産業システム）

一線接地系の2レベルIGBTインバータの接地検出手法として、負荷モータ端での地絡発生時にできるコンバータ側仮想中性点とのループ電流を検出する方法がある(図1)。しかしこの方法では、出力電圧が小さいと接地電流が検出レベルより小さくなるため、コンバータの接地電流検出で検出できない恐れがある。そこで本稿では、出力電圧が小さいインバータ予備励磁時に、全相の電圧基準に同等の零相電圧(以下DCバイアスと呼ぶ)を重畳することで一線地絡時の接地電流を増加させ、低出力時でも地絡検出ができる手法を提案し、その実機での検証結果を報告する。

4-155

トルクリプルの主成分が高次調波成分の場合における埋込磁石同期電動機のトルクリプル推定法と低減法の評価

◎赤塚弘恭（名古屋大学）・長谷川 勝（中部大学）・道木慎二（名古屋大学）

埋込磁石同期電動機(IPMSM)は電動機の高効率化，高出力密度化の要求を満たす電動機として広く利用されている。しかしながら，IPMSM はその構造上トルクリプルが顕著となり，様々な問題が生じる。この問題に対し，筆者らはインダクタンスに不感かつ磁気特性に対する非線形性を補償したトルクリプル推定法ならびに等価トルク係数の適応同定に基づくトルクリプル低減法を提案している。しかしながら，提案法はこれまでトルクリプルの主成分が6次調波成分のみを低減対象としており，これ以外の調波成分に対する推定および低減に対しては未検討である。そこで，本稿ではトルクリプルの主成分が12次調波成分のIPMSM に対して提案法を適用し，トルクリプル推定および低減性能の評価を行う。

4-156

DIW-PMSMの非電圧制限下における最大力率電流指令法

◎澤田芳矢（神奈川大学）・新中新二

独立二重巻線永久磁石同期モータは，高効率駆動モータの一つとして研究されている。本モータは、独立の固定子巻線・インバータからなる二系統を有し，各系統への異なる巻線特性付与により，駆動領域を拡大できることが指摘されている。効率駆動には種々の方策があり，その一つとして最大力率駆動がある。本駆動は，所要のトルクを発生しつつ，力率の最大化を図るものである。駆動領域は、最大力率として力率1が達成可能な領域と，1未満に限定される領域とに2分される。いずれの領域においても，所期の最大力率駆動を達成するには，このための電流指令値を用意する必要がある。

4-157

Field Programmable System-on-a-Chipへの波動制御の実装

◎車谷大揮・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

多くの産業機械に導入されるサーボ機構の高性能化を目的として，Field Programmable Gate Array (FPGA)や，FPGAとプロセッサを一枚のチップに収めたField Programmable System-on-a-Chip (FPSoC)を用いたコントローラが開発されている(1)。FPGAおよびFPSoCを用いた制御系は，サーボ機構の制御帯域の拡大を達成すると共に，機械動作の高速化を実現する。これに伴い機械振動が発生し，機械動作の高速化による位置決め時間の短縮が困難となる場合がある。本問題に対して，振動抑制制御を導入によって位置決め時間の短縮を達成することが解決策として想定されるが，振動抑制制御のアルゴリズムの複雑性から，FPGAへの実装が困難である。本研究では，FPSoCを用いてプロセッサとFPGAを協調動作させることにより振動抑制制御を実装したため，その実装方法について報告する。

4-158

ロボット股義足の制御のための加速度センサを用いた歩行周期の推定

◎平佐堂晴・柴田昌明（成蹊）

電動股義足については研究が進んでいないため，現在の状況は電動股義足が規則的な動きをしてそれに装着者が合わせて歩行している状態である。それでは電動股義足を装着しているひとが身体的負担を発生している状態である。よって装着者に合わせて速度制御する必要がある。そのために歩行周期を推定しなければならない。ここで人間の歩行について説明すると，人間の歩行を決める要素は三つある。歩幅，歩行周期，そして歩行速度である。このうちの二つが決定されると最後の一つは必然と決定される。歩行速度を制御するには，歩幅と歩行周期を用いれば可能である。本論では，歩幅は身長により求まる適正な値として固定する。よって，装着者の歩行周期の推定することができれば，その人に合った歩行速度が制御できる。そのため歩行周期の推定方法を本論で提案する。本研究では，不規則な人間の歩行ではなく，規則的なロボットの動作の歩行周期を推定する。その推定方法として加速度センサでその歩行周期を推定することを目的とする。

4-159

無人搬送車のための紐状全方位近接センサの提案

○辻 聡史・小浜輝彦（福岡大学）

現在，工場を中心に様々な場所で無人搬送車(AGV)が利用されている。しかしながら，AGVは人と同じ場所を走行することから人との衝突の危険が伴う。本研究では，低コストで既存のAGVに後付け可能な全方位近接センサの開発を目的にする。本稿では，AGV周囲を紐状に複数の測距センサ(ToF(Time of Flight)センサ)で覆うことが可能なセンサシステムを提案する。AGVに実装したセンサにより，AGV周辺状況の測定を行ったので報告する。

4-160

推定値の信頼度を考慮したソフトセンサの開発

◎鈴木 聡・金田泰昌（地方東京都立産業技術研究センター）

近年、本来計測したい値を計測可能な他の値から推定するソフトセンサ技術が注目されている。 従来のソフトセンサは、あるシステムの入出力データから回帰モデルを構築することで未知の入力に対する出力を推定しているが、通常の回帰モデルでは出力された推定値がどれ程信頼できるかが分からず、ソフトセンサの実用における課題となっている。 本研究ではこの課題を解決するため、確率モデルとして近年注目されているガウス過程回帰をソフトセンサに導入し、ガウス過程回帰によって出力される分散の値を推定値の信頼度として利用することを検討した。 人工データおよび実データによる実験によって、推定値の分散は推定誤差の大きさと相関を持ち、信頼度を評価する指標として妥当な性質を持つことが示された。

4-161

Additionalthoughts about idears related to temperature distribution and thermal conduction presented in previous papers - 2 (Decoupling of a temperature system)

○多田利春（無所属）

加熱物体の温度分布は、無限に広がるのではなく範囲に限度があります。つまり、温度系の分離が発生します。今回、その温度系の分離について、今までに発表した考えを基に考察してみました。

4-162

Performance Evaluation of CSA Model Higher Capacity Medium Voltage Inverter

○モスタファマムン・デバラジマニマラン・斉藤俊悦・上谷賢司（東芝三菱電機産業システム）

In the response of expansion of global environment activities in industries, it is required for motor drive inverters to expand application to higher capacity and higher reliability with minimum footprints and safety certification. Compared with existing models of medium voltage inverter equipments, it has been developed from 500kVA to 2770kVA complying with safety standards (such as, UL 347A and CSA C22.2 No. 274-17). This paper introduces the features of a representative higher capacity, 2770kVA medium voltage inverter development and its performance evaluation satisfying the current market demand and requirements.

4-163

ワイヤレス電力伝送におけるコの字型キャンセルコイルを用いた遠方の漏洩磁界抑制の基礎検討

◎明石晃槻・居村岳広（東京理科大学）

走行中無線電力伝送の課題として漏洩磁界がある。近傍と遠方における漏洩磁界があるが、遠方における漏洩磁界が特に懸念されており、その抑制が必要になる。先行研究として、近傍磁界を抑制する方法としてキャンセルコイルを用いる方法や磁気シールドを用いる方法が検討されているが、遠方磁界に対する検討はあまりされていない。本論文では、遠方漏洩磁界を抑制するための新たなコイルを提案し、提案するコイルによる遠方磁界抑制の効果と電力伝送効率について電磁界シミュレーションを用いて検討する。その結果、電磁界シミュレーション上で提案するコイルによる遠方漏洩磁界の低減と伝送効率に対する影響が少ないことが確認できた。

4-164

ワイヤレス電力伝送におけるサーチコイルを用いた小型金属異物検出法の提案

◎上沼直輝（東京理科大学）

ワイヤレス電力伝送において、金属異物による伝送効率の低下や発熱は大きな課題である。現在異物検出の研究は進められているが、サーチコイル方式においては小さい金属異物が検出できないという問題がある。 本稿は、コイルサイズとパラメータ感度を考慮した異物検出法によって小さい金属を検出する方法を提案し、実際に検証を行った。サイズの異なるコイルをそれぞれ用いて、コイル単体での方式とと直列共振を用いた方式の2つの方法を検証し、2つの方法ともに異物の有無によってパラメータの変化が見られ異物を検出できることがわかった。また、2つの方法を比較して、異物の有無によるパラメータ感度、検出範囲ともに大きな差はなかった。

4-165

ワイヤレス電力伝送におけるフェライトレスかつコンデンサレスコイルの層間材料の誘電体損失による影響

◎塙 昂樹・居村岳広（東京理科大学）

走行中給電における磁界共振結合回路はコイルに大量の共振コンデンサとフェライトが用いられることにより、重量増加と高コスト化が課題となっている。そこで、本稿では送電コイルにコンデンサレスかつフェライトレスの2層式オープン型スパイラルコイル採用する。なお、動作周波数は85kHz帯とする。 本稿では実際にコイルを作製し、層間材料をPMMA,ABS,PVC,PC,PEの5種類の誘電体に変えていったときの電気的特性を測定し、比較した。その結果、tanδとQ値は負の相関、tanδと内部抵抗は正の相関にあることを示した。また、tanδと最大伝送効率は負の相関にあることが明らかになった。

4-166

ワイヤレス電力伝送における理論式と数値計算を用いた高効率コイル設計法

◎吹田幸将・居村岳広（東京理科大学）

近年、デバイスの増加に伴いワイヤレス電力伝送（Wireless Power Transfer：WPT）が期待されている。特に、コイルの磁界結合を用いる磁界共振結合方式によるWPTは数十cmから数mの伝送距離で高効率の電力伝送ができ、その最大効率はkQ積というコイル変数による値に大きく影響される。しかし、特定の周波数でkQ積を最大化するようなWPT最適コイルの設計方法は確立されておらず、先行研究では多くの電磁界解析を行う必要があるため時間がかかり、評価関数が不明瞭である。本論文では電磁界解析を用いず、数値計算のみを用いて、周波数とコイルサイズと巻数を変数としたkQ積の関数モデル化を述べ、正確かつ高効率なコイルの設計指針を示し、実証実験を行った。

4-167

ワイヤレス電力伝送における送受電コイルのパラメータ変化を用いた位置推定に関する研究

◎平 貴仁（東京理科大学）

本論分ではワイヤレス電力伝送を搭載したロボットの位置センサに向けた基礎研究を行った。従来ロボットの位置推定方法としてはGPS、ジャイロセンサ、カメラセンサ等が挙げられる。しかしロボットに別途位置センサを掲載するとシステムとして複雑になる。本論文では付属されたセンサを使わず、ロボットに組み込まれたワイヤレス電力伝送のコイルのみを利用して位置推定できる可能性について検討した。実験結果から、35cmまで位置推定可能であることが分かった。また理論値と実測値の比較により提案手法が有効であることがわかった。

4-168

マイクロ波によるカーボンブラックの燃焼における位置と進行波の影響

◎袴田大樹・渡久地崇磨・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・村上幸平・金子貴之（富士電機）

船舶排ガス中のPMを除去するためにESPの利用が検討されている。しかし、その実用化のためには、捕集されたダストを自動洗浄するシステムが必要となる。そこで、マイクロ波による燃焼に着目した。本研究では、配置位置に対して均一な燃焼率を得ることを目的とし、進行波の効果について検討した。実験装置はソリッドステート電源、ガス分析計、同軸導波管変換器、導波管によって構成し、定在波又は進行波を発生させた。カーボンブラック粉体を導波管の中心軸上と中心軸から壁面方向に36.6 mmの位置に配置し、燃焼が自然停止するまでマイクロ波を照射した。その結果、進行波を利用することで均一な燃焼となり、捕集ダストの燃え残りを抑制できることが示された。

4-169

鋳造Mgを用いた電解におけるアルカリ生成効率の検討

◎櫻井周伶・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・糸川和芳・金子貴之（富士電機）

電解によるアルカリ調整システムの開発を目的とし、鋳造Mgを用いて大容量型(134.5 L)電解装置による循環スクラバ水のアルカリ生成効率を検討した。実験装置は、電解槽にSUS電極(陰極)3枚、Mg電極(陽極)2枚をSUS電極が両端となるよう交互に40 mm間隔で挿入し、Na2SO4水溶液を134.5 L投入した。なお、Mg電極の浸漬面積は0.224 m2とし、Na2SO4水溶液の導電率は実スクラバ水と同等の50 mS/cmとした。その結果、Na2SO4水溶液のアルカリ度は電解時間に対し上昇傾向にあり、電解6000分で33.3 g-CaCO3/Lまで上昇した。電流値から理論アルカリ度を求めると、6000分後の理論アルカリ度は32.1 g-CaCO3/Lとなり、実験値とほぼ一致した。

4-170

電解によるNa2SO4水溶液のアルカリ化に対する電極直列接続の効果

◎岡沢 海・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・糸川和芳・金子貴之（富士電機）

本研究では、船舶排ガス循環システム用の循環スクラバ水のアルカリ化を目的として、MgとSUSの電極を直列接続した電解の効果を検討した。陽極と中間電極をMg、陰極をSUSとして、直列に接続し水槽内に配置した。電極間に電流を流し、アルカリ度を測定した。また並列接続した場合においても同様に測定した。その結果、直列接続した電極方式は、並列接続と同等のアルカリ度特性及び生成効率が得られるとともに、電流値を削減できることが示された。

4-171

RFプラズマ処理によるステンレスの窒化

◎田宮拓朗・金澤一生・原 健人・深田智久・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）

ステンレス鋼は鉄を主成分としてクロムを10.5％以上含む、錆びにくい合金であり、近年は使用用途の多様化に伴い、耐摩耗性を向上させる表面硬化処理技術の確立が望まれている。表面硬化技術として、ステンレス鋼表面に窒化層を生成する窒化処理を施すことで硬さや耐摩耗性の向上が見込めることが知られている。そこで、本研究ではRFプラズマ処理によるステンレス鋼(SUS304)の窒化による硬化を試みる。また、窒化処理条件を変化させて試料を作製し、表面硬度の観点からみた最適窒化処理条件を調べた。

4-172

等価回路モデルを用いた電気パルス印加時の鉱物での電界分布シミュレーション

◎福嶋恭介・小原直子・カビールムハムドゥル（秋田大学）・大槻 晶（ロレ-ヌ大学）

鉱物から金属類を抽出する際，ボールミルなどの摩擦や衝撃に基づく圧縮力による粉砕法が使用されている．しかし，この方法のエネルギー効率はわずか1%程度であるため，エネルギー効率の向上および選択粉砕を目的とし，電気パルスを用いて異種鉱物境界に直接作用する引張力を利用する新たな粉砕法が考案されている．電気パルスの印加による鉱物粉砕の際，鉱物内での電界分布との関係が重要となっている．本研究では，鉱物に電気パルスを印加する際，鉱物内での電界分布を，シミュレーション手法による調べることを目的とし，等価回路モデルを用いてシミュレーションを行った．

4-173

太陽光併設蓄電池システムにおける可変式出力変動緩和フィルタ制御技術

◎李 佳澤・景山 寛（日立製作所）・阿部佑亮・一瀬雅哉（日立インダストリアルプロダクツ）

太陽光発電（Photovoltaic:PV）の出力変動緩和対策として，蓄電池システム併設を検討した。蓄電池コストを低減するため，本研究では，電池kWh容量削減と電池の充放電劣化の抑制に着目し，可変式出力変動緩和フィルタ制御を提案する。本報告では，PV実測データで，提案方法の有効性を評価した結果を報告する。

4-174

空調機器内蔵アクティブフィルタによるビル全体の力率制御（第2報）

◎小嶋広幹・太田圭祐・川嶋玲二・河野雅樹（ダイキン工業）

オフィスビルや工場では、電力系統の調相や力率改善の目的で進相コンデンサが設置されているが、近年インバータ機器の増加等で負荷の平均力率が改善されていることもあり、軽負荷の場合に進み力率による電圧上昇等が課題となっている。一方、オフィスビルに設置される業務用空調機器において、空調機器内蔵アクティブフィルタの出荷台数は年々増加しているが、空調機器が中間期、夜間や軽負荷時にはほとんど動作してない。そこで、アクティブフィルタの余裕ある補償能力を利用し、受電点無効電力を零にする制御系により、中間期等における空調機負荷の低下を想定した空調機負荷変動試験を行い、所望の受電点力率を維持できることを確認した。

4-175

多重化変換装置における多相化変圧器の一検討

○加藤彰訓・吉田伸二・小西功次（河村電器産業）・ Duy-Dinh NGUYEN・雪田和人（愛知工業大学）

近年，脱炭素化に向けて太陽光発電など再生可能エネルギーと蓄電池を利用したシステムの導入が進んでいる。さらに，これらを有効活用するために直流給電システムが検討されている。本研究では，直流バスへ接続する大容量の交流/直流変換部の高効率化を目的とし，多重変換装置における変圧器の高効率な多相化技術を検討している。今回，通常よりも小型化された多相化変圧器の試作，評価結果を報告する。

4-176

電力変換器に多段接続された変圧器の磁気飽和解析

○海田英俊・川村逸生（富士電機）

3相出力の電力変換器に接続される多段の変圧器は、停止後に運転を再開すると2段目以降の変圧器が磁気飽和することがある。1段目変圧器の残留磁束を座標基準にした解析を行い、飽和動作する単相の等価回路を構築して、磁気飽和による電圧欠損の影響が2段目変圧器に伝搬する特性を導出した。

4-177

ユニット交換のみで最新機に更新可能な多段積インバータユニットの開発

◎桑原健人・金子和秀・岡本徹也（東芝三菱電機産業システム）

製紙業、荷役および鉄鋼産業向けに誘導電動機駆動用インバータとして数多く低電圧IGBTインバータを提供してきた。その中で旧機種はリリースしてから十数年経過しており、インバータの更新が必要な設備が出てきている。近年の製品ライフサイクルに対する意識向上もあり、継続使用可能な設備は極力流用して、更新が必要な機器のみを部分的に更新するニーズが高まっている。今回、既設収納盤を流用することができ、ユニット交換のみで最新機に更新可能な多段積インバータユニットを開発したので報告する。

4-178

SVMによるかご型誘導電動機のベアリング損傷診断

◎薄田晴嵐・エサキムトゥ パンダラコンシリナータン・水野幸男（名古屋工業大学）・中村久栄（トーエネック）・浅野恵介（名古屋工業大学）

幅広い分野で基幹動力として用いられている電動機は高経年のものが多数稼動しているが、経費削減の観点から十分な保守管理はなされていない場合が多い。 筆者らは、負荷電流の周波数スペクトルから抽出した特徴量と機械学習を用いた電動機の故障診断方法を提案し、ベアリングの傷の大きさや方向の違いを検出できることを示した。今回は、傷の位置を変えて提案手法の有効性を検討した結果を報告する。

4-179

誘導電動機の固定子巻線短絡時の電流特性

◎浅野恵介・薄田晴嵐・水野幸男（名古屋工業大学）・中村久栄（トーエネック）

工場では高経年電動機が多数使用されているが、経費節減の観点から十分な保守管理が行われていないことが多い。筆者らは負荷電流スペクトルから抽出した特徴量に機械学習を用いる故障診断手法を提案し、その有効性を評価してきた。 今回、インバータ駆動誘導電動機の固定子巻線短絡故障時における負荷電流特性について検討したので報告する。

4-180

誘導機の端子電圧と電流を用いたトルクリプル演算法の回転速度変動に対する検証

○小島鉄也・米谷晴之（三菱電機）・足立光央・坂田安生・増田博之（東芝三菱電機産業システム）

大容量ドライブ装置においては、負荷との機械共振による寿命低減などを防ぐために、トルクリプルを事前に評価する必要がある。しかしながら、トルクリプルを測定するためには大形回転機に見合ったトルクメータや負荷機械が必要になる。そこで、端子電圧と電流を測定してトルクリプルを演算する手法を提案し、正確な演算が実現できることを既に実証している。本稿では、回転速度が変動する場合でもその演算法が有効であることを、シミュレーションにより確認する。

4-181

低分解能LiDARを用いた高精度障害物検出手法に関する研究

◎山口正貴・高橋 久（静岡理工科大学）

LiDARは自動運転車両やロボット制御の分野で，障害物の検出や情報の取得に利用されている．これらの分野では，周辺に存在する障害物を正しく認識することが極めて重要であり，垂直分解能が高く，検出時間が短いLiDARが必要となるが高価である．本研究では，低速の自動運転車両向けに，安価な低垂直分解能のLiDARを用いて，高精度な障害物検出を行う手法を検討している．低垂直分解能のLiDARを用いて，LiDARの照射角度を変えながら，周囲の情報を取得し，得られたデータを組み合わせて分解能を高める方式について検討した．低コストで高精度な障害物検出が可能なシステムを製作し，障害物検出を行い，その有用性を確認したので報告する．

4-182

安全性と燃費を向上するタイヤ空気圧自律調整機構の提案

◎近藤諒也・浅野勝宏（名古屋工業大学）

タイヤ空気圧は、空気自然漏れにより時間と共に減少し、1カ月で約5％低下する。空気圧低下に伴い、タイヤバーストの危険性が高まると同時に、燃費も低下する。しかし、現状として日本自動車タイヤ協会の調査によると、乗用車の約29％は空気圧不足状態にあり、ロードサービス出動理由の約19％はタイヤ空気圧関係の理由である。このことから、乗用車は慢性的な空気圧不足状態にあり、安全性、燃費が低いと考えられる。 安全性と燃費を向上するタイヤ空気圧自律調整機構について検討した結果、タクシー等(月間走行距離約5000km)の場合、安全性の向上、燃費改善によるガソリン代年間約9000円節約、さらには空気補充の手間を省くことが期待できることが確認された。

4-183

電動カートにおける登坂での発進を考慮したスリップ抑制制御評価

◎高橋空路・美井野 優・高木茂行（東京工科大学）

登坂での発進時における電気自動車のスリップ抑制法として，バイアストルクを用いたトルク関数制御を提案し、その有効性をエコカーレース用の電動カートを用いて検証した。従来のトルク関数制御は，平地や下り勾配での利用を考慮している。従来手法を登り勾配での発進に用いると、トルクは指令値と0Nmを繰り返す。トルクが0Nmとなったときに車両が転動する可能性があり，加速することができない。しかし，提案手法を用いたところ，車両は後退することなく発進することができ，3秒後の車両速度は1.7m/sとなった。これらの結果は，提案手法が電気自動車の登坂での発進において，スリップ抑制と加速性能向上に対し，きわめて有効であることを示している。

4-184

EV大量導入に向けた電圧制御機器の整定値更新とEV充電器の進相力率一定制御による電圧品質向上効果の評価

◎平野和明・芳澤信哉・林 泰弘（早稲田大学）・石丸雅章・橋本茂男・杉本仁志（北陸電力）

エネルギーセキュリティの向上や環境制約への対応などから電気自動車（EV）の普及拡大が進められており，2030年までに新車販売の20-30%をEVとすることが目標として掲げられている。一方で，EVが普及した配電系統では，EV一斉充電による急激な需要増加やそれに伴う配電線電圧の大幅な変動など，電力品質への影響が懸念されており，EV充電が配電線電圧に与える影響を把握し、対策を行うことは系統運用上で重要である。本研究では，EV充電によって発生する電圧降下への対策とEV導入可能量の拡大を目的として，EV充電器による進相力率一定制御を想定し，配電線単位でのEV導入率や配電損失の観点からその有用性を評価したので報告する。

4-185

事業者共用型ディスパッチャブル充電システムの検討

○馬場博幸・吉村正昭・荻本和彦（東京大学）・天津孝之・増田 浩（東京電力ホールディングス）・松村 淳（IoT-EX）

EV充電サービスの採算性を改善し、電力システムの課題解決にも資する充電システムの構成について、東京大学生産技術研究所の検討を基に社会実装されたIoT-HUBを活用して実現する方法について検討した。

4-186

センサレスPLLを適用したフォークリフト充電器の実験検証

○篠原 翔・大井一伸・平尾邦朗・大野 誠（明電舎）

バッテリ式小型フォークリフトでは，省スペース化のため充電回路の小型化が求められるが，正弦波電流による充電には，交流電圧検出のためトランスや絶縁アンプが必要であり，小型化の阻害要因であった。本論文では，充電回路にセンサレスPLL(1)を適用し，実験により良好な充電動作結果を得られたため結果を報告する。 本論文ではフォークリフト用に検討したセンサレスPLLの有効性を実験により検証した。運転中は交流電圧の検出不要で正弦波電流による充電が可能であることを示した。

4-187

電気自動車の形態に関する一考察

○藤崎敬介（豊田工業大学）

自動車は電気自動車技術や自動運転技術の出現で、100年に一度の大きな変革期を迎えているといわれている。どういった変革になりどこに着地するのか、極めて重要なことである。そこで、少なくとも電気工学の視点から電気自動車がどのように変遷しうるかについて考察を試みた。

4-188

電気自動車の主電動機を用いたABSのための路面推定法の検討

◎中道京介・山中建二・北條昌秀（徳島大学）

近年の自動車には様々な安全技術が搭載されており，電気自動車にはその安全機能に加えて駆動用の電動機が搭載されている。エンジンと比較すると，駆動用電動機はトルク応答性が高いため，筆者らはこの駆動用電動機を安全面において利用したABSを発表してきた。 ABSでは，常に路面の摩擦係数を知る必要がある。提案する手法では，急制動時の車輪(電動機)の減速度より摩擦係数を推定している。しかし，これまで提案した手法では車輪が滑り出す瞬間の路面推定のみであった。これでは路面の変化に対応できないため，本稿では，供試車両を用いて路面の変化に対応可能なABSについて実験，検討を行ったので報告する。

4-189

地理情報システム(GIS)に基づいた電気自動車(EV、PHEV)の充電曲線による充電量を考慮した走行支援システム

◎岩井大輝（九州工業大学）・塩田 淳（北九州市役所）・三谷康範（九州工業大学）

近年、環境・エネルギー問題への対応策として、走行中に二酸化炭素を排出しないEV、PHEVが急激に増加している。課題としてガソリンスタンドの数と比較して、充電スポットの数が少なく、その整備が挙げられており、利用者の増加に伴う混雑が予想される。しかし、現在のカーナビゲーションシステムでは、それらを考慮した最適充電スポットの抽出、及び最適経路の選定が行えない。 本研究では、その前段階として、充電開始時のSOCに着目して三菱outlander PHEV の充電曲線を実測値から関数化し、今後、目的地までの時間や消費するエネルギーの費用などに関して最適な急速充電スポットの抽出、及び最適な走行経路選定を行うための手がかりを得ることを目的とする。

4-190

Real-Time SoC Estimation of Battery Storage System based on Scaled-Down Model through ANN Machine Learning Algorithm

○Minella Bezha・長岡直人（同志社大学）

The importance of rechargeable batteries is nowadays increasing from portable electronic devices and solar energy industry up to the development of new Electrical Vehicles (EV). A scale down simulator of the Battery Storage System has been developed, and the results of these tests are used to feed the ANN model for the training process. The feature of the SoC estimation was investigated by observing different parameters of a single cell or a battery pack. ANN model was reliable, with average accuracy of 1.5% and with maximum error of 2.7% completed within 15 seconds of calculation.

4-191

強化学習で作成された参照軌道を利用するステアリング操作のためのモデル予測制御

◎青木 駿・日高浩一（東京電機大学）

未来の動作を，モデルを利用で予測し最適入力をオンラインで求める最適制御設計であるモデル予測制御(Model Predictive Control:MPC)では参照軌道の設計と一致点が重要である．本研究では強化学習を利用した動作をMPCの参照軌道に使用し，強化学習とMPCそれぞれの出力結果, 制御入力とMPCの評価関数との関係により参照軌道設計の検討を行う.実験は自動車の車線変更運動を対象としてMATLAB/Simulinkを利用してシミュレーションを行っている．強化学習，MPCおよびPID各制御による目標位置までの移動軌跡を乗り心地の観点から検討し，入力値の違いと特徴を考察している．

4-192

駆動モータを用いたロール制御による電気自動車の車両運動制御の検討

◎橘 昌宏・山中建二・北條昌秀（徳島大学）

自動車の操舵走行において，遠心力を起因としたロールが発生する。この時，遠心力を起因としたロールにより左右の荷重移動が発生し，車両運動に影響を及ぼすという報告がある。筆者らは，電気自動車に搭載される駆動モータの回転数制御による慣性を用いた左右の荷重分配に着目した。またこの手法をロール制御として取り扱い，模擬試験装置によるロール制御の実験を行った。モータ回転数の減速領域において慣性により左側への荷重移動が正となることが確認できた。また，定常円旋回における車両運動シミュレーションではロール制御により遠心力の車両運動への影響を抑制することで余裕のある走行が期待できる結果が得られた。

4-193

オフラインデータを利用したモデル予測制御可変重み係数決定法

◎遠藤 快（東京電機大学）

二酸化炭素排出量の低減効果があるハイブリッド電気自動車HEV(Hybrid Electric Vehicle: HEV)が注目を集めている. HEVはエンジンと電気モータの併用で燃費向上を行い，結果CO₂を削減する．HEVの燃費向上には電気モータの使用が不可欠であり，エネルギー管理を考慮した制御設計が重要になる. そこで今回はSOCの戦略にECMS(Equivalent consumption minimization strategy)法の知見を利用し，高燃費走行データを利用して受電率，エンジン回転および燃費の関係を検討する.

4-194

テンソル分解手法を用いた都市における人の時空間挙動解析の検討

◎板場直人・金子奈々恵・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）

近年、都市が抱える様々な問題に対して、AI、IoTなどの新技術やデータを活用することで、全体最適化が図られる都市のスマート化が推進されている。電力システムを含め都市機能の全体最適を検討する上で、携帯端末などから取得可能で匿名化された都市の位置情報統計データから人の時空間的な挙動を明らかにすることは取り組むべき重要項目の1つである。また、人の移動が電力システムに与える影響が着目され、電力システム運用の観点からも、人の挙動の把握が重要視されつつある。本稿では、携帯電話の通信基地局やGPSから得られる匿名化された位置情報統計データを用いて都市における人の特徴的な時空間的挙動を解析するための手法の検討を行った。

4-195

道路交通シミュレーションを用いた自動運転車混在時の道路交通状況評価に関する一考察

○大場義和・上野秀樹（東芝インフラシステムズ）

高速道路において、自動運転車が普及してくる場合、ドライバ運転車と自動運転車が混在することが考えられ、混在の場合にどのような交通状況となるかを把握することは、交通状況を管理する上で重要である。この様な場合には、ドライバ運転車と自動運転車の差異が明確になるようなシミュレーションを行うことが重要である。本稿では、これらの差異を明確にするための手法を検討したため、その結果を一考察として報告するものである。特に遅れ時間による差異と、道路環境における影響を物理的な影響、ドライバ運転に起因する心理的な影響と分けて考慮することで差異を明確化することに関して検討した結果を報告する。

4-196

反応時間の違いを考慮した交通流セルオートマトンモデルの提案と解析

◎小平紘史・星野貴弘（日本大学）

先行研究においてAdaptive Cruise Control（ACC）を搭載したACC車両とACCを搭載していない一般車両が混在した交通流モデルの提案をしている。先行研究モデルは一般車両とACC車両の違いをランダムブレーキの有無で表現した。しかし，車両の違いはそれだけでなく，人間ドライバーの知覚に基づく運転とセンサ情報に基づく運転では反応速度が違うことは明らかである。将来，ACC車両の前方車両との車間距離を検知してから加減速や操舵に反映させるまでの周期が現状よりも短くなると考えられるため，反応速度の違いを考慮することは重要となる。よって，本研究では一般車両とACC車両の反応速度の違いを考慮した交通流モデルの提案を行った。 提案モデルでは一般車両とACC車両の速度変更周期を導入することで先行研究の交通流モデルを拡張した。

4-197

3D距離画像センサを用いた車両感知器の検討

◎渡邉信弘・川瀬英治・滕 琳・泉 隆（日本大学）

道路交通の安全，円滑，快適性を確保するため，交通管制システムが果たすべき役割は大きく，なかでも道路利用者に直結する渋滞情報等を作成するための，交通量や速度等を計測する車両感知器は重要な設備である．本研究では，外乱光や温度，風の変化に強く，路面の側面に設置する3D距離画像センサを用いた車両感知器を検討している．本稿では，手前側車線の車両検知に加え，奥側車線も含めた車両検知について検討したので報告する．

4-198

フラクタル画像解析を用いた二車線における走行車両の検出について

○黒岩 孝・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）

著者らは、安全な空域において道路を俯瞰して撮影した画像をフラクタル解析することで、特定の領域内の車両を検出する手法について既に報告している。本研究ではその応用として、交差点内における二車線上の車両が直進もしくは左折する場合の追跡について検討する。

4-199

斜面を走行中におこる車両の横滑りに関する研究

○笠原美左和（都立産業技術高専）・森 泰親（交通システム電機）

フォークリフトの転倒は、舗装路から未舗装路や乾燥路面から濡れた路面のように路面状況が急に変化した場合や、傾斜地を走行した場合に発生する。フォークリフトが横転すると、積載物のみならず、車両や運転手や周囲に大きな被害をもたらす。そのため、傾斜地での横転のメカニズムの解明や防止策の考案は重要な課題である。以上を踏まえ、本研究ではフォークリフトの特性を捉え、傾斜地での運動シミュレーションを簡便に行えるような車両モデルを構築することを目的とする。

4-200

太陽光発電電力の自家消費のための蓄熱式ヒートポンプ機器の利用方法の検討

◎宮脇諒我・佐竹昭泰・三谷康範（九州工業大学）・牛房義明（北九州市立大学）

固定価格買取制度の導入以降、一般家庭においても太陽光発電(PV)の導入量が増加しているが、売電期間の終了により、PV余剰電力の売電価格が低下する家庭の増加が見込まれる。そこで、家庭内の機器によるPV余剰電力の自家消費が期待される。本研究では、家庭における負荷機器の制御による、PV電力の有効利用法を検討する。制御する負荷機器として、ヒートポンプ式給湯器及び熱放射型冷暖房システムに着目する。 これらの機器を制御には、外部の状況による運転性能の変化の検討が必要である。本稿では、冷暖房や給湯器等の家庭内の様々な機器の制御のための物理条件に基づいたシミュレーションモデル作成のための基礎検討を行う。

4-201

電力不安定地域における太陽光発電装置用蓄電インバータの優位性についての実証事業（カナダオンタリオ州オシャワ市）

○鈴木勝幸・植田桂実・横田和雄（新エネルギー・産業技術総合開発機構）

近年、自然災害に起因する停電への対策として、バックアップ電源としての蓄電池活用が検討されている。住宅では蓄電池を用いることで停電中でも照明や家電品を使用でき、平常時も太陽光等再生エネルギーを自家消費電力として活用することが期待できる。一方、カナダ・オンタリオ州は冬季凍害による停電が発生しやすい地域であり、倒木や氷結により電線が切断され、停電が多発しており、地域電力会社にとって、停電対策は課題の一つであった。本発表ではオンタリオ州オシャワ市において、一般住宅に太陽光発電装置と蓄電池インバータを設置し、平常時運用と停電時バックアップ電源としての活用を実証評価した結果を報告する。

4-202

任意地域の住宅・事業所群を対象とした需要シミュレーションツールの開発

○上野 剛（電力中央研究所）

本研究では、統計データや独自のアンケート調査結果、また地域の気象データ等を用いて、町丁字レベル・コミュニティレベルの地域の需要カーブの特徴を表現でき、また各種のシナリオ分析等が可能な「需要シミュレーションツール」の開発を目指している。これまでに、国勢調査や経済センサス調査等の様々な統計データを用いることで、日本全国の任意の地域(町丁字レベル)の住宅・業務需要家群の日負荷カーブを推定するためのモデルを構築した。本稿では、モデルの入出力を簡易に行うためのGUIツールを開発したので報告する。

4-203

住宅内の空気環境を簡易に計測可能なセンサキットの試作

○服部俊一・岩松俊哉（電力中央研究所）

本稿では住宅内の空気環境を簡易に計測するためのセンサキットを試作し、複数世帯で計測した結果について報告する。高気密の住宅が増えてきたことやシックハウス対策が求められていることなどを受けて24時間換気システムの設置が義務化された一方で、適切に換気設備を利用するかどうかは居住者に委ねられている。換気が不足することで二酸化炭素や総揮発性有機化合物などの濃度が上昇し、居住者の健康や快適性に悪影響を与える可能性がある。そこで本稿では、これらの濃度を安価かつ簡易に計測するためのセンサキットを試作した。本センサキットを4世帯に設置し、計測結果を示すと共に暖房や換気の利用と濃度の関係について考察する。

4-204

スマートメーターBルートを活用した独居高齢者見守りシステムその2：見守り性能の評価

◎李 恬雅・瀬川輝斗・中野幸夫（関東学院大学）・慶野文敏（NextDrive）

筆者らは、スマートメーターのBルートデータを活用した高齢者見守りシステムを開発中である。この試作システムを実際の高齢者世帯（5世帯）に設置し、30秒毎の瞬時電力データを収集した。このデータを用いて、システムに実装している「平均法」、「パーセンタイル法」および「変動評価法」の3種類の見守り手法についてシミュレーションを行い、システムの見守り性能を評価した。具体的には、実際に発生した長時間の不在（連続24時間および連続48時間）を検出できることを確認した上で、発生した誤報数をまとめている。3種類のアルゴリズムのうち、「変動評価法」は誤報をほぼ抑えることができ、最も見守り性能が優れていた。

4-205

回路中の寄生抵抗がLC直列回路方式セル電圧均等化回路の電圧推定精度に与える影響に関する一考察

◎佐藤大記（公立諏訪東京理科大学）

著者らはこれまでに，蓄電池の容量低下防止を目的としたLC直列回路方式セル電圧均等化回路（以下，提案回路）を提案し，その有用性について検討してきた。提案回路の特徴として，電圧センサを1つ追加することでセル電圧均等化動作とセル電圧監視動作の両立が可能である。しかしながら，提案回路では各蓄電セルとLC直列回路の切り替えにスイッチング素子を用いているため，スイッチング素子のオン抵抗が寄生抵抗としてセル電圧の推定精度に影響を与える可能性がある。本稿では，これまで考慮されていなかったスイッチング素子のオン抵抗に着目し，オン抵抗がセル電圧の推定精度に与える影響についてシミュレーションにより検証したので報告する。

4-206

静電吸着式ロールクリーナーの吸着性能評価

◎古屋佑樹・杉本俊之（山形大学）

床に落ちたゴミやホコリを除去する方法として粘着式ロールクリーナーが使われている。捕捉したゴミを粘着シートごとはがして廃棄するのは衛生的にも環境的にも問題がある。筆者らは簡単にゴミの処理が出来る静電吸着式ロールクリーナーを試作し，吸着モデルを構築してきた。モデルの妥当性を評価するために木綿糸の吸着特性を調べた結果，基準電極を改良することで木綿糸の捕集率を100%まで高められた。また，吸着モデルから導出した理論式と実験結果の傾向が一致したことから吸着モデルの妥当性が確認できた。今後は，捕集率を高めるために吸着面の絶縁被膜の厚さや材質の検討などを進め，吸着したほこりを脱着する機構の検討を行う予定である。

4-207

半断線電源コードの着火現象と検出手法の検討

○竹中清人・水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

家庭用電気製品の半断線した電源コードや延長コードは、電気設備機器から発生する火災の主な原因の一つである。コードに過度な曲げやねじり、挟み込み等の外力が加わることにより素線が半断線状態となり、局所的に抵抗が高くなることにより発熱し、火災が発生したとの報告がある。この報告では、50本の素線導体のうち1本だけを残して切断し、最も苛酷な半断線状態を模擬した。通電により素線が半断線状態から断線に至る際に発生するアーク放電による可燃物着火の再現および電圧波形の歪みに基づく検出法を検討した。

4-208

半断線電源コードの短絡遮断器の試作と評価

◎石川由祐・水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

東京消防庁管内では、電気火災は1,205件発生しており、緩やかに上昇の傾向にある。電気火災の中では電線が短絡するという原因が最も多い。全国的にも同様の傾向であり、この理由として電気製品の増加、多様化、老朽化が挙げられている。 このような状況に鑑み、電源コードの短絡による火災防止技術の開発が喫緊の課題となっている。本報告では半断線電源コードの短絡遮断器を試作し、その動作を評価した結果について述べる。

4-209

接触不良による金属接続部の温度上昇の基礎検討

◎杉山稜輔・水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

東京消防庁の調べによると，金属の接触部の過熱は電気設備機器火災の主要原因の1つであり，毎年多くの人命が失われている。このような火災を最小限にとどめるために導体の接触不良により生じる放電に起因する火災の検出技術の確立が望まれており，火災の未然防止が喫緊の課題となっている。本報告では，ねじの緩みによって生じる，接続端子の微小間隙で発生した放電の，接触部過熱の温度上昇との関連についての結果を報告する。