一般講演

3-122

パルス変調方式グルコースセンサ向けUWB-IR送信回路

◎前田大輔・三浦 良・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

糖尿病患者のための血糖値測定法として、指先から採血を行う方法(SMBG)や連続血糖測定技術(CGNS)が普及しつつある。現行のCGMSセンサは上腕等に張りつけた30~40mm程度のデバイスと皮膚貫通型フレキシブルグルコースセンサによって実現されている。我々は独自に開発した光給電技術を用いてバッテリレスにすることにより大幅な小型化を目指している。本研究では、グルコース濃度情報を送出するためのUWB-IR(Ultra Wide Band - Impact Radio)送信回路について報告する。

3-123

光電力伝送用CMOS制御回路の改善

◎竹内瑞希・深町賢人・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

これまでの太陽電池を用いた光電力伝送回路には、回路内の基準電圧の発生にも太陽電池を用いていたため、光量依存性がある、小型化が難しいなどの問題があった。そのため本研究では、太陽電池を用いずに基準電圧を発生可能な回路と、基準電圧によってスイッチング可能なCMOS制御回路の実現を目的とする。 基準電圧の発生は、ダイオード接続したPMOSを直列接続したダイオード接続PMOSラダーによって実現させた。CMOS制御回路は発生した基準電圧を用いて、入力電圧によってON/OFFが切り替わるよう設計した。 設計した回路は求めていた基準電圧を発生し、その基準電圧を用いたCMOS制御回路のスイッチング動作も確認することができた。

3-124

光駆動型ワイヤレス生体光刺激デバイスの構造改善

◎Jiawen Li・深町賢人・竹内瑞希・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

バイオ分野におけるオプトジェネティクスは、光による神経刺激を実現する技術である。オプトジェネティクス研究では多様な光刺激技術が求められているが、我々は光電力伝送を利用した体積約1mm3、重量は2.3mgの超小型光刺激デバイスを実現した。   このデバイスは非常に小型・軽量であるというがある一方で、高コストなCMOSチップ上に太陽電池を形成しており、実装プロセスも複雑であった。本研究ではデバイス構造を変更し、小サイズを維持しながら太陽電池を別チップとして、汎用性と実装性の向上を行ったので報告する

3-125

粒子誘電泳動DNA検出法の自動化とその効果

◎吉田 諒・陳 晧・重本 真・稲葉優文・中野道彦・末廣純也（九州大学）

筆者らの研究グループでは、微粒子の誘電泳動現象とインピーダンス計測を組み合わせた迅速かつ簡便なDNA検出法としてDEPIM法を提案してきた。従来の手法ではDNA増幅や微粒子とDNAの結合、DEPIM法による検出の各プロセスで別々の反応容器を用いており、ピペッティングによるサンプル移送が必要であったため、プロセス間でクロスコンタミネーションや試料のロスなどが生じる恐れがあった。本研究では、一連の操作をワンチップ上で行うデバイスを作製するプロセスとして、微粒子とDNAの結合、検出の2ステップを統合し同一チャンバ内で連続的に行うとともに、2ステップ操作をプログラムによって自動化したデバイスの検討を行う。

3-126

リポソームの誘電泳動特性に関する基礎検討

◎陳 皓・吉田 諒・山川 翼・稲葉優文・中野道彦・末廣純也（九州大学）

不平等電界下で誘電体に作用する誘電泳動は、微粒子や細胞などの操作に利用されている。リポソームはリン脂質二重膜に囲まれた微小液滴で、膜組成や内包物を自由に変えることができ、構造の類似性から細胞の模擬物質として用いられることがある。また、近年では細胞から放出されるリポソーム様細胞外小胞が着目されている。これまでにリポソームに関する研究は少ない(1)。本研究では、リポソームの誘電泳動に関して、特に表面コンダクタンスに着目した。表面コンダクタンスは表面電荷密度に依存しており、これはリン脂質の親水基の電荷に依存する。

3-127

微小円柱電極を有する誘電泳動デバイスにおける腫瘍細胞種の分離性能の評価

◎宮向秀緒・八木一平・内田 諭（東京都立大学）・高野雅代・脇坂嘉一・円城寺隆治（AFIテクノロジー）

循環腫瘍細胞（CTC）の正確な分離と濃縮は、癌の早期発見に不可欠である。特に、三次元誘電泳動デバイスは効果的な細胞分離器として期待されている。本研究では、マイクロピラー電極を備えた誘電泳動デバイスにおいて、細胞の電気特性の違いによる分離性能を評価するために、乳がん細胞株のMCF-7とヒトT細胞性白血病由来のJurkat細胞を用いた実験を行った。当該デバイスにおいて細胞挙動の観察の結果、MCF-7とJurkat細胞の挙動に明確な変化が生じた。これにより、ピラー電極を有した電極構造が腫瘍細胞と腫瘍細胞以外の細胞との高精度の分離に有効であることが示唆された。

3-128

誘電泳動速度計測によるがん細胞の薬剤誘導変化の簡易判定

◎郭 宇桐・八木一平・内田 諭（東京都立大学）・高野雅代・脇坂嘉一・円城寺隆治（AFIテクノロジー）

ライフサイエンスの分野では、細胞の生死状態に対する評価技術の実現が求められている。一方、過酸化水素などの薬剤添加により、様々な細胞死を誘導される。そこで、著者らは細胞の生死状態を簡便に判定するため、Jurkat細胞の誘電泳動速度における薬剤濃度依存性を検証した。 高H₂O₂ 濃度（500 μM）の場合、死細胞の7割がネクローシスであることが確認され、誘電泳動速度は周波数に対して正の相関を示した。アポトーシスが誘導されるH₂O₂濃度（150 μM）の場合、速度は凹型の周波数特性を有する。一方、未処理（生細胞）および低濃度（50 μM）の場合、山型の傾向が見られた。以上より、生死細胞の生理状態を定性的に判別できる可能性があると考えられる。

3-129

Fabrication of Thin and Wide Hybrid Emission Filters Using a Plasma Etching Technique

○Erus Rustami・Kiyotaka Sasagawa・Thanet Pakpuwadon・Yasumi Ohta・Hironori Takehara・Makito Haruta（Nara Institute of Science and Technology）・Hiroyuki Tashiro（Kyushudaigaku）・Jun Ohta（Nara Institute of Science and Technology）

The complementary structure of interference and absorption filter plays a crucial role in achieving a high rejection ratio for lens-less fluorescence imaging systems. However, such hybrid filters for implantable devices that require a low-invasive feature remain a daunting task. This report proposed a novel method to fabricate thin and wide hybrid emission filters through plasma etching, which relies on a specific reaction between SF6 gas and silicon as a hybrid filter substrate. The sintered filter has a uniform surface profile over millimeter range and transmits light close to the green fluorescent protein (GFP) emission.

3-130

AC駆動型人工視覚デバイスに向けたCMOS整流回路の設計と評価

◎塩谷涼太・長谷川 諒・森 康登（奈良先端科学技術大学院大学）・鐘堂健三・寺澤靖雄（ニデック）・竹原浩成・春田牧人（奈良先端科学技術大学院大学）・田代洋行（九州大学）・笹川清隆・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

集積回路による多点刺激人工視覚デバイスのAC駆動化を目指し、CMOS整流器搭載チップの設計を行った。眼内に埋植する人工視覚デバイスにおいて、安全性・低侵襲性は非常に重要な点である。従来はDC駆動により機能実証をしてきたが、デバイスの電源ケーブルが破損した時の漏電等による生体組織の損傷のリスクがあり、本課題解決のためにAC駆動化が求められる。本研究では、矩形ACパルス反転時の誤動作を回避するため、ロジック部を整流器から切り離すスイッチおよび電源電圧を保持するコンデンサを搭載した。これにより、パルス反転の過渡期間に対して十分に長い時間ロジック部の情報を保持し、安定して電流刺激出力が得られることが実証された。

3-131

人工視覚用CMOSスマート電極搭載フレキシブルデバイスの実装工程最適化

◎萩田瑞生・左 貺之・福成由基・春田牧人（奈良先端科学技術大学院大学）・高野拓郎・寺澤靖雄（ニデック）・竹原浩成（奈良先端科学技術大学院大学）・田代洋行（九州大学）・笹川清隆・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

本研究では，脈絡膜上に電極を埋植する脈絡膜上経網膜刺激(Suprachoroidal-Transretinal Stimulation: STS)  方式を用いた人工視覚用CMOSスマート電極搭載フレキシブルデバイスの開発を行った．CMOSスマート電極搭載した複数のモジュールをフレキシブル基板で接続することにより，眼球に密着するデバイス構造を実現する．フレキシブル基板のベース材料は，生体適合性と絶縁性に優れ柔軟性を持つパリレンCを用いた．パリレンC薄膜上にプラチナ配線を成膜し，柔軟性を持つフレキシブル基板を作製する．フレキシブル基板を用いた人工視覚用CMOSスマート電極搭載フレキシブルデバイスを試作する事に成功した．

3-132

水晶発振回路式複素容量センサを用いたシール材料の化学耐久性評価

◎齋藤響太（新潟大学）

近年、工業分野におけるFA化に伴い自動で機器の劣化管理を行うためのセンシング技術が注目されており、本研究では溶剤による材料の劣化を簡易的な手法で評価できないか検討した。本研究では溶剤としてアセトン、エタノールなどを使用し基板材料として使用し、水晶振動子を用いたセンサで劣化の測定を試みた。実験結果は、溶剤により変性（膨潤）した材料において溶剤の滴下前と比較して発振周波数の変化が確認された。本センシング技術では基板上における塗膜などの乾燥過程や化学的耐性などの総合評価が可能なことが示された。

3-133

水晶発振回路式容量センサを用いた土壌の性質の非接触モニタリング

◎JIANI LIU・吉田 晃・寒川雅之・安部 隆（新潟大学）

土壌状態のセンシング技術は農作物生産の自動化や生産性向上のために重要である。本研究では、水晶発振回路式複素容量センサを用いて、土壌の種類別含水力の測定を行った。本実験は、体積の等しい黒土、黄土と腐葉土の3種類の土壌に純水を加えた時の周波数変化を測定し、土壌の種類による違いを調べた。純水を加えた時、黒土の場合は周波数は急激に減少したがその後の周波数変化は徐々に減少した。黄土の場合は黒土と同様に周波数が急激に減少したがその後の変化はより緩やかに減少した。腐葉土の場合は純水を加えた後の周波数変化はゆっくり変化するが時間を経るごとに周波数変化が大きくなった。土壌の種類による違いが明確に示された。

3-134

TOIウェハを用いた表面マイクロマシニング

◎長谷川穂高・守屋赳利・土田和弥・寒川雅之・安部 隆（新潟大学）

本研究では、TiとTiを柔軟な材料であるPDMSを介して接合した基板(TOI、Titanium-On-Insulator)を用いて、PDMS層の犠牲層エッチングを行った。TOIウェハはSOI（Sillicon-On-Insulator）ウェハに対応するもので、耐衝撃性を有しながらフレキシブルであるSOIウェハにない特徴を有する。エッチャントにはNMPを溶媒とした25％のTBAF溶液を使用した。 TOIウェハのエッチングの結果、エッチャントが非プロトン性であるため、PDMSのみを選択的に除去し、Tiを腐食しなかった。PDMS層の犠牲層エッチングによるアンダーカットが発生し、パターニングされたTiウェハがカンチレバー形状に浮いた構造になっていた。 Tiを用いたタフなセンサ・アクチュエータのための中空構造の作製が可能であることが示された。

3-135

航空機用音響式油量計の基礎研究

○小松勝彦・菊池良巳（信州大学）

航空機用燃料タンクの油量計は静電容量方式が大半を占めている。しかし，静電容量方式では電極間に電圧が印加されているため発火が懸念され，電気回路が燃料に非接触で計測できる油量計への需要がある。非接触型の液面センサとしては，光やミリ波を利用したものなどがあるが，精度向上とコストはトレードオフの関係にある。筆者らはより低コストで簡便なセンサとして音響を用いた油量計を提案する。本研究では筒状の内部の液面と容器蓋との間の距離に由来する共鳴周波数を計測することにより，液面高を精度よく推定できたので報告する。

3-136

屋内環境計測システムの構築と応用

○坂元周作（木更津工業高等専門学校）

近年のIoT技術の進展に伴い、各種機器をネットワークで接続し、データを収集して解析や制御等を行うシステムが注目されている。本研究では、屋内環境における快適性の評価や新型コロナウィルスの対応で重要視されている三密の推定を目標に、市販されているセンサとマイコンを組み合わせた環境計測回路およびマイコンによるサーバを用いた屋内環境計測システムの構築および改良を行った。計測する項目としては、気温、湿度、気圧、二酸化炭素濃度とし、環境計測回路で測定を行った。本システムで各種環境データを測定可能であり、特に二酸化炭素濃度を用いて3密の推定が可能か検討を行う。

3-137

イリザロフ法創外固定器用ネジ絞め圧力計測器の開発

◎長谷川杏樹・瀧 雄盛・村上裕二（静岡理工科大学）・五谷寛之（大阪掖済会病院）

本研究ではイリザロフ法創外固定器におけるナット締め圧を簡易計測するための感圧抵抗膜(FSR)を有する治具構造の提案と試作を行い，その特性を調べた。本提案の治具部分にPDMSとカーボンブラックの混合物と電極を挟み，テスターに接続した。1本のネジを治療中の骨と仮定してイリザロフ創外固定器模型を組み立て，模型上部のナットを外側へ移動するよう回転させ，同軸で圧縮応力がかかることを利用して自作FSRの抵抗値計測を行った結果,本提案の治具で安定した応力計測が可能であった。実際の骨延長は創外固定器のナットを患者自身が回転させて実施しているものの自宅で実施可能な評価装置がなかったが，その簡易評価につながる部材を開発できた。

3-138

生体インピーダンス法を用いて骨形成度合いを推定するための骨折モデル製作および原理検証

◎増田治輝・安原京介・村上裕二（静岡理工科大学）・五谷寛之（大阪掖済会病院）

本研究では，生体インピーダンス法(BIA)を用いた骨形成度合いを推定するための小型計測器開発に向け，骨折モデル構築およびその原理検証およびを行った。本実験ではインピーダンス測定用アナログ・フロント・エンドの1チップLSIを用いて，計測を行った。人体の指のモデルとして内径17mmのアクリルパイプ、骨のモデルとしてアクリル棒を用いて，その中に生理食塩水や食肉を詰めた。アクリル棒のギャップを変化させ，各ギャップにおけるインピーダンスを計測した。肉と骨のインピーダンスが明らかに異なり，ギャップがmmオーダーで増加するとインピーダンスが有意に減少することがわかった。よって，BIAを用いて骨形成度合いを推定することができると考える。さらに現在使用中の当該LSI評価ボードでもハンドヘルドサイズであるため，今後，より小型の計測器の開発が可能であるといえる。

3-139

座屈ダイアフラム上圧電MEMS超音波センサの振動モード解析

◎出井 航・藤井翔太・山下 馨・西岡知記（京都工芸繊維大学）

高感度化のための座屈撓みを持つ圧電MEMSダイアフラム型超音波センサの共振振動の解析を試みた。座屈撓み形状および振動形状を両端固定梁のモード形状を用いて近似したところ, 実測に近い共振挙動を得ることができた。

3-140

ダイアフラム型MEMS超音波センサ高感度化のための座屈撓みの解析と設計

◎吉田琢真・西川顕史・山下 馨・清田元一郎・中島将太（京都工芸繊維大学）

我々は空中超音波での3次元計測を目的として圧電MEMSダイアフラム超音波センサを開発しており，ダイアフラムが座屈して静的撓みを呈することで感度が向上する。これまで圧電層のPZTの応力を制御することで撓み量の増加を図ったが同時に圧電性能が低下した。今回はダイアフラム各層が座屈撓みに与える影響を解析し，PZT以外の層により座屈撓み量を向上させる設計を試みた。MEMS積層ダイアフラム構造について座屈撓み量の算出を試みた。残留応力，曲げ，軸伸長による歪みエネルギーを考慮すると，撓み量の計算値は実測値によく一致した。

3-141

高感度集音デバイスを用いた呼吸モニタリング

◎滝本将大・水口龍太・松村雅史（大阪電気通信大学）

睡眠時無呼吸症候群は血管障害を引き起こす独立因子であり、受診率が低いため日常生活下でのモニタリングが切望されている。本研究では低呼吸・無呼吸を検出するウェアラブルデバイスの開発を目的とする。咽喉マイクロフォンを用い、口腔咽頭音による無呼吸・低呼吸の自動検出を報告しているが、SN比が低く、低呼吸の検出の性能向上が課題であった。 本研究では、頸部皮膚表面に装着する高感度集音デバイスを開発した。皮膚表面での音波を超小型アンプ内蔵マイクロフォンICに集音・検出する。このデバイスを用いて計測した口腔咽喉音と鼻気流の同時計測を行い、口腔咽喉音の振幅と鼻気流の振幅の相関があることを確認した（相関係数0.97）。

3-142

無拘束口腔温計測のためのBLEマウスピース型センサに関する研究

◎趙 于民・戸本佳佑・當麻浩司・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

体温は身体の状態を診断し、治療につなげる重要なバイタルサインであることから、如何なる疾患においても検温が行われる(1)。現在の日本においては、腋下温を測定する手法が一般的に用いられているが、ヒトの体温分布は温度環境により大きく異なる。口腔温は外気の影響が小さく身体の中心温度に近いため、より正確な体温を把握できることから、基礎体温を測定する場合、一般的に口腔温が用いられる。そこで本研究では口腔温の無拘束計測を目的として、「小型サーミスタ」と「無線送信機」を組み込んだマウスピース型温度センサを作製し、また計測データの受信・蓄積のためのタブレット用アプリケーションの開発を行い、生体計測へと適用した。

3-143

圧力センサとBluetooth送信機を用いた無線式マウスガード型コントローラ

◎馬 一博・戸本圭介・當麻浩司・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

四肢麻痺は脊髄損傷や染色体異常により発症し、四肢麻痺の患者は運動障害等、日常生活に重大な制約を受ける(1)。四肢麻痺患者のQOLの向上を目的に近年、四肢を用いずに外部端末の操作を行う研究が行われている。例えば、頭皮に装着した電極から獲得した脳波を検出し、脳波のパターン解析により機器操作を行うBMI (Brain Machine Interface)の研究もその一つである(2)。しかしながら、脳波のパターン解析に時間がかかる等の改善点も多い。一方で、四肢麻痺患者の多くは咬合や舌の動きは維持されていることが多い。本研究では、口腔機能による外部機器操作を目的とし、最近開発したBLE搭載型の無線式マウスガード(MG)型センサデバイスの技術を応用することで、マウスガード内に圧力センサを組み込んだBLE無線式マウスガード型コントローラを開発した。

3-144

接触部を交換可能としたMEMS触覚センサ

◎川崎雄記・髙橋佑司・安部 隆（新潟大学）・野間春生（立命館大学）・寒川雅之（新潟大学）

本研究では、MEMS触覚センサの汎用性向上のため、PDMS突起を取り外せる構造とし、接触部の交換を可能とした。垂直力とせん断力それぞれに対するセンサのカンチレバー上ひずみゲージの抵抗変化率を従来のセンサと比較した。垂直力に関しての感度の差異はセンサの個体差の範囲内とみなせる。せん断力に関しては、同じ横変位でも印加されるせん断力が異なり、接触部の形状・高さによるものである。同じせん断力に対しては、今回作製したセンサの感度が大きく、接触部の形状・高さと接着層の有無が影響していると考えられる。また、接触部を交換し測定した結果、ほぼ同一の感度を示したことから、接触部が交換可能なセンサが実現できた。

3-145

皮膚診断のための MEMS 触覚センサの接触部最適化

◎門田秀人・小河原 周・南部泰生・安部 隆・寒川雅之（新潟大学）

本研究では、実際の診断に近い状況を想定し、皮膚の中にしこりがあるモデルに対し、より高感度な検出を可能とする為、皮膚モデルとの接触部形状の最適化を行った。その為に、プリント基板上に実装した触覚センサをPDMSで封止し、その上へ半径4 mmの半球状のPDMS、もしくは半径3 mmの円柱状PDMS上に同形状のアクリルを重ねて接着し、接触部とした2つのセンサを皮膚モデルに接触させ、1 mmの垂直変位を各位置に印加し、センサの位置依存性を比較した。両者を比較すると、円柱状の接触部を有するセンサの方が、人肌ゲルに対する応答及びモデル内部のしこり対する応答が良いことから、より皮膚診断に適していると見られる。よって、接触部を円柱状にし、先端を硬くすることで接触部最適化を実現した。

3-146

ステンレスメッシュを用いたプラズマの高密度化

◎田中康平・池永訓昭・中川嵩也・高橋宏典（金沢工業大学）

DLC(Diamond-Like Carbon)膜は高硬度、耐摩耗性、平滑性に優れた硬質アモルファス状炭素薄膜であり, 現在では切削工具や自動車用部品などの機能膜として使用されている.本研究では,DLC膜の成膜速度と密着強度の改善目的とし,PBII法を応用したPBII&D法で成膜を行ってきたが,ステンレスメッシュで作成した箱内に被処理物を設置して成膜することで,DLC膜の成膜速度が大きく改善されることを確認した.本研究でプローブを用いてメッシュ箱内のプラズマに流れる電流を測定した結果,メッシュ箱内の電流値はメッシュ箱を使用していないときの約15倍となっていた.このことから,ステンレスメッシュを用いることでプラズマが高密度化したと考えられる.

3-147

0.8µm CMOSプロセスを用いた静電容量式MEMS加速度センサ

◎清水優作・小松 聡（東京電機大学）

現在MEMS加速度センサは自動車やスマートフォンなど様々な製品に応用されているが、それらの高機能化・多機能化に伴いコスト削減や高集積化のために小型化が要求されている。本研究では、CMOSプロセスを用いて1軸と2軸の静電容量式加速度センサの設計を行い、Post CMOSプロセスを用いて製作する。Post CMOSプロセスを用いることでCMOS LSIとの親和性が高くなるため、センサと回路を同一基板上に製作することも容易となる。加速度センサの設計にはオンセミコンダクター社の0.8µm CMOSプロセスを採用した。先行研究では、0.18µmプロセスや0.35µmプロセスが採用されているが、旧世代のプロセスを用いることで、安価に設計・製造することができる。

3-148

CMOSプロセスを用いたMEMS加速度センサの感度見積り

◎上村直義・小松 聡（東京電機大学）

MEMS加速度センサはウェアラブルデバイスでの転倒検知や自動車の自動運転など、幅広い分野で用いられており、これらの高性能化や小型化に伴い、搭載されるセンサにも小型化が要求されている。集積回路用であるCMOSプロセスを用いることで、微細パターンを高い信頼性で形成でき、小型化が実現可能である他、センサとCMOS回路との集積が容易となる。本研究ではCMOSプロセスを用いて静電容量式MEMS加速度センサを設計し、ポストプロセスにて加速度センサを製作する。また、設計にはオンセミコンダクター社の0.8μm CMOSプロセスを用いる。先行研究の0.18μm CMOSプロセスや0.35μm CMOSプロセスと比べ古いプロセスを用いることで、ウェハコストを抑えることができ、より安価な加速度センサを実現できる。

3-149

アンテナ反射特性の変化を用いたセンシング技術の検討とシミュレーション

○清水 聡・新谷一貴・久保賢治郎・岩井誠人・衣斐信介（同志社大学）・栗原拓哉・鈴木義規（国際電気通信基礎技術研究所）

新型コロナウイルスへの対策の一つとして、近接センシング技術が注目されている。我々はアンテナ周辺に他物体がある場合のアンテナ特性変化を利用したセンシング技術を検討してきた。本稿では、検出回路を説明し、それを用いた測定とシミュレーションの結果を比較する。

3-150

アンテナ反射特性の変化を用いたセンシング技術のFDTD法による解析

◎新谷一貴・久保賢治郎・岩井誠人・衣斐信介（同志社大学）・清水 聡・栗原拓拓哉・鈴木義規（国際電気通信基礎技術研究所）

アンテナ周辺に他物体がある場合のアンテナ特性変化を利用したセンシングが検討されている．本稿では人体および紙を対象物として、この方式の特性をFDTD (FDTD: Finite Difference Time Domain)解析により示す。人体検出についてはアンテナ中心軸方向からの位置のずれに対する特性を、紙検出については金属構造物近接環境に適したアンテナの選択を、それぞれ評価する。

3-151

光制御を用いた分割共振列の相互作用による電磁波反射特性の変化

◎前田博史・五十嵐健太・胡桃 聡・鈴木 薫・松田健一（日本大学）

分割リング共振器は電磁波に対して特有の振る舞いをすることで知られている。我々の研究ではこの分割リング共振器を従来の配置方法とは異なり、十分に近い位置に配置させることで単体の分割リング共振器とは異なる電磁波応答を観測できた。また、外部光源によって各分割リング共振器毎の特性を変えることで同じ枚数で構成された分割リング共振器列でも異なる電磁波応答を観測した。この現象は分割リング共振器間の相互作用が関係していると考えられ、この相互作用のメカニズムなどについて考察する予定である。

3-152

TiO₂窓層の結晶構造制御による結晶Se薄膜光電変換素子の高効率化

◎川岸稜也・足立悠輔・小林大造（立命館大学）

結晶セレン(c-Se)は可視光領域で結晶Siの約100倍の高い光吸収係数を示し、可視光用薄膜光電変換素子のp形光吸収層として有望である。これらの特徴から可視光センサや室内照明によるエネルギーハーベスティングへの応用展開が期待されている。また、p形Seとヘテロ接合を形成する際に相性の良いn形窓層の一つとして高い可視光透過率と光導電効果を有するTiO₂が報告されている。屋内照明条件では、a-Siおよびc-Siを用いた場合よりc-Se光電変換素子は高い光電変換効率(LED照明の場合に13％)を達成しているものの、理論限界効率(約60％)よりも遥かに低い。本稿では、TiO₂窓層の結晶構造制御による光電変換素子の変換効率の向上を試みた。

3-153

毛細管効果により形成したカラーフィルタをフォトダイオードに一体化したカラーセンサ

◎道垣内公介・足立悠輔・小林大造（立命館大学）

我々は可視光波長と適合性が高く、光吸収係数の極めて高いセレン薄膜を用いたフォトダイオードの研究に取り組んできた。本稿ではフォトダイオードに一体化させるRGBカラーフィルタのパターニングについて述べる。カラーフィルタはフォトリソグラフィ法やプリンティング法によるパターニングが報告されている。従来のカラーフィルタは各色のパターンを主にフォトリソグラフィ法を繰り返して作製されている。一方、インクジェット等のプリンティングによるパターニングでは、カラーフィルタ上下面に平滑表面を得ることが難しい。ソフトリソグラフィで作製した上下面平坦な流路へRGB色素を添加した未硬化PDMSを毛細管効果により充填する手法を提案する。

3-154

逆磁歪効果を用いた歪センサの高周波振動特性の測定

◎高野 凌・枦 修一郎・石山和志（東北大学）・星 貴之（ピクシーダストテクノロジーズ）

これまで我々は、逆磁歪効果を用いた歪センサを応用する研究を行い、先行研究において2kHzまでの振動周波数を検知出来るセンサとしての特性を測定した。しかし，我々のセンサは更に高い振動周波数帯域でも特性を損なわず数ppmオーダーの歪を検出することが可能だと推測される。本稿では，振動源として20kHz近傍を共振周波数とするランジュバン型振動子を用いた装置について検討結果を述べる。予備実験において、センサに約10ppm程度の歪を印加できることを確認しており、先行研究で得られているセンサの感度から出力が検出可能であると推測されている。実際にセンサを振動させた時の結果については講演で発表する。

3-155

航空機用円筒型静電リニアセンサの直線性の検討

◎萩本雄規（信州大学）

著者らは, 差動トランスのコイルの機能をコンデンサで置き換えた静電リニアセンサの研究をしている。 本稿では電極間距離を変化させたときの円筒型静電リニアセンサの直線性特性について述べる。 評価として各測定点と回帰直線との横軸の差を測定範囲で割った百分率を直線性と定義した。 直線性特性は正弦波状となり, これは可動子と対向している電極部分との平行な電束以外の電束の関与などが考えられる。また, 誘電体が空気で電極間距離を0.8, 0.6, 0.4, 0.2, 0.1mmとした場合を測定し, その結果, 電極間距離による直線性特性の傾向は見られなかった。加えて, 電極間距離が0.1mmの場合では測定値に大きな変動が生じた。

3-156

非接触無給電電流力率センサの開発

◎吉竹隆也・水戸慎一郎（東京工業高等専門学校）

非接触・無線・バッテリーレスの交流電流・力率センサを開発した。カレントトランスを電流測定だけでなく、センサの電源としても用いることでバッテリーレス動作を実現した。ピエゾフィルムを用いて、電線被膜の上から、真値との相関係数0.99で交流電圧波形を測定できた。この電圧波形測定方法は単一プローブで外来ノイズの影響を受けにくいというメリットがある。これらの入力を力率に変換するために、電流波形と電圧波形を矩形波にして比較し、電圧として出力する低消費電流(約10μA)な測定回路を開発した。開発したセンサから得られたデータと市販の力率ロガーのデータとの相関係数は0.80であり、力率を測定できた。この成果は、産業界での省電力化や二酸化炭素削減に貢献できると考えられる。

3-157

低コスト高速二次元電気化学測定装置の研究

◎佐藤貴晃・内田秀和・長谷川有貴・清水麻希（埼玉大学）

本研究室ではアンペロメトリ型の二次元電気化学測定装置であるLight Addressable Amperometric Sensor (LAAS)の開発に成功しており、センサ表面にストライプ状の電極を作製することで複数のウェルを同時に並列測定する技術の提案、検討を行っている。並列測定にあたって障害となるのが測定系の費用であり、本論文は並列測定で使用される新たな測定系の設計、評価を軸とし、従来のLAAS測定システムより安価で検出下限濃度（LOD）が低い測定システムを開発することを目的としている。実際に開発されたシステムは従来のものと比較して同じ費用で29倍の測定数を可能にし、検出下限濃度もより改善される結果が得られたので報告する。

3-158

バイポーラ電極アレイによる化学イメージング

◎薛 安汝・Nurul Asyikeen Ab Mutalib・鄧 懿・鈴木博章（筑波大学）

バイポーラ電気化学系は、外部装置と接続されない孤立した電極（バイポーラ電極（BPE））が溶液中に浸漬された構成を取り、3電極系に代表される従来の電気化学系と比べ、一括同時検出に適している。通常、BPEのカソード端で進行する反応を、アノード端の電気化学発光（ECL）により検出する。バイポーラ電気化学系は、当初BPEが一つの溶液中に浸漬された「開いた」系が用いられてきたが、近年はカソード、アノード端を収容する溶液を分離した「閉じた」系が多く用いられている。「閉じた」系は、両端での電極反応の他端への影響を抑える点では効果的であるが、一括検出のための多数の電極の集積化が困難となる。従来の研究例では、単純な長方形状BPEが用いられてきたが、実際に検出に関わるカソード、アノード極は、単純にリード線で電気的に接続されていれば、それで十分である。そこで、本研究では、BPEのアノード端とカソード端を細いリード線で接続したBPEアレイを作製し、過酸化水素の一括定量及び拡散による濃度のイメージングを試みた。

3-159

LSPR2次元センサの応答特性分布を利用した複数種のガス濃度分布の推定

◎澤田 新・佐々文洋・林 健司（九州大学）

金ナノ粒子(AuNPs)に銀を成長させて作製されたAuAgコアシェル型のLSPRセンサは銀のシェルの厚さが変化することによって応答特性が変化することが分かっている．今回はLSPR基板上に銀を不均一な厚さで成長をさせることによって基板上の各点に置けるガス応答を変化させることで複数種のガス濃度分布を測定することが可能になっている．LSPR基板にガス曝露時の透過光を画像で一度に取得し，線形回帰法を用いて計算することでガス濃度分布を推定することできる．今研究ではエタノールと酢酸の混合気体を用いてガス濃度分布推定を行った．問題点として水蒸気に応答してしまうことや濃度分布が確認できなかったことがあげられるが曝露したガス種に対してガス濃度の勾配が確認でき濃度分布推定への可能性を示した．

3-160

ペルチェ素子を用いた酵素センサ用呼気凝縮液採取方法の検討

◎比嘉瑞葵・長谷川有貴・内田秀和（埼玉大学）

ヒトの呼気診断が注目されており、呼気中のVOC等を検出するための高い選択性と高感度を両立する手法として、呼気凝縮液を酵素センサで測定する手法が有望と考えられる。本研究ではペルチェ素子により酵素センサを冷却し、センサ表面に直接呼気を凝縮させ微量凝縮液を測定する小型の呼気分析装置の製作を試みた。被験者飲酒後の呼気中アルコール濃度を20分ごとに測定した結果、0~60分後まで出力電流値が上昇しその後緩やかに減少していく傾向が見られ、製作した呼気分析装置により被験者の呼気中アルコール濃度の時間変化を測定可能であることを確認した。

3-161

熱電(TE)モジュールを用いた熱検出型土中水分量計測方法に関する研究

◎坂本貴章・佐藤晴紀・大多哲史・平野陽豊・二川雅登（静岡大学）

従来の電気式水分計は土壌中のイオン濃度の影響を受けてしまい、測定値に誤差が生じてしまう。これにより正確な土壌水分量の測定が困難であった。本論文では、土壌中のイオン濃度の影響を受けにくい、ペルチェ効果を利用したサーモエレクトリック(TE)モジュールを用いた熱電型土壌水分量センサの開発を行った。温度センサをTEモジュールの表面に貼り付けることで、土壌水分の違いによる表面温度変化の違いを観測した。その結果、土壌中の水分量と温度変化量に関連性を見出すことができ、計測手法の確立に成功した。

3-162

表面プラズモン共鳴免疫センサを用いたピペリンの検出

◎平山裕貴・矢田部 塁・田原祐助・小野寺 武・都甲 潔（九州大学）

コショウの辛味成分であるピペリンは，さまざまな健康増進作用があり，食品やサプリメントへの応用が加速している。それに伴い，辛味成分を活用した商品の開発に際して，簡単な評価法の確立が期待されている。本研究では，抗原抗体反応を利用した表面プラズモン共鳴（SPR）免疫センサを用いることで，ピペリンの検出を試みた。センサチップ表面には，ピペリン類似物質である5-(1,3-Benzodioxol-5-yl)-2,2-pentadienoic acid（BPA）を固定化し，抗BPA-CCHポリクローナル抗体を用いて間接競合法により測定した。その結果，検量線から求めたピペリンの検出限界は7 ppmとなった。

3-163

表面プラズモン共鳴（SPR）センサによるコエンザイム Q10 の検出

◎梶田遼一・小野寺 武・都甲 潔（九州大学）・仁科孝一・松尾和彦（カネカテクノリサーチ）

コエンザイムQ10(CoQ10)はうっ血性心不全症の治療薬や機能性表示食品として流通しており、生体内で合成される脂溶性の物質である。還元型CoQ10は体内での生理活性として、ミトコンドリア賦活効果と抗酸化効果を持つ。体内のCoQ10濃度の測定を迅速かつ簡単に行い、データを蓄積し健康状態との因果関係を明らかにできれば、その数値を健康のバロメーターとして利用可能と考えられる。 そこで本研究では、表面プラズモン共鳴センサを用いて、CoQ10に結合するペプチドをセンサ表面に固定化し、CoQ10試料溶液を流入したときの濃度変化による共鳴角変化量の違いから検出を試みた。CoQ10単体の試料溶液について測定を行い検量線を作製し、検出限界は1 ppmとなった。

3-164

味覚センサの無電荷苦味物質に対する感度の向上

◎趙 澤誉・石田 岬・田原祐助・矢田部 塁・劉 元昌・都甲 潔（九州大学）・池崎秀和（インテリジェントセンサーテクノロジー）

無電荷苦味物質に対する膜電位変化が小さいため、無電荷苦味物質用味覚センサの開発が求められている。カフェインは、様々な医薬品に含まれる無電荷苦味物質である。カフェインの検出を検討することで、無電荷苦味物質検出のセンサ開発指針を模索したい。本研究ではカフェインのような無電荷苦味物質に対するセンサ感度を向上するため、味覚センサを異なるヒドロキシ安息香酸で修飾し、カフェインに対するセンサ応答を調査した。分子内水素結合を持つヒドロキシ安息香酸とカフェインに対する味覚センサの感度の関連性を評価するために、分子内水素結合を2つ有する2,4,6-THBA安息香酸、1つのみ持つ2,3-DHBA安息香酸、有しない3,4-DHBA安息香酸を膜修飾材料とした

3-165

嗅覚受容体応答パターンを用いた要素臭探索方法の研究

◎藤本順也・Prasetyawan Dani・横式康史・中本高道（東京工業大学）・松波宏明（Duke University）

近年、メディアの多様化に伴い、嗅覚の情報を含むマルチメディアの研究が行われている。嗅覚ディスプレイは、用意した匂いサンプルを調合して多くの匂いを提示することができる。この用意した匂いを要素臭と呼ぶが、多様な香りをカバーするために適切な香りを要素臭として選択する必要がある。要素臭の探索には質量分析器がよく使われてきたが、生体嗅覚のデータを使用した方が適切な要素臭が得られる可能性がある。そこで、本研究ではマウスの嗅覚受容体応答データを用いた。そして、要素臭による近似精度を評価するコスト関数を用意し、それが改善するように構成比を繰り返し変更することで、適切な要素臭セットを求める方法を提案した。

3-166

嗅覚受容体を用いた匂いバイオセンサの応答時間の短縮

◎永吉慶人・横式康史・中本高道（東京工業大学）・光野秀文・二木佐和子・神崎亮平（東京大学）

生物は嗅覚受容体を用いて匂いの識別を行う。匂いを投与すると蛍光を発する嗅覚受容体発現細胞を用いて、匂いを液相で検出するセンサの開発に取り組んでいる。しかし、匂いを細胞に投与して蛍光がピークに達するまでに時間がかかるという問題がある。本研究では、チャンバ内の細胞を浸すリンガー液量を減らすことで匂い応答の時間を早める方法について検討した。

3-167

Gas Phase Odorant Detection System Based on Insect Olfactory Receptor

◎Hongchao Deng（東京工業大学）・光野秀文・神崎亮平（東京大学）・中本高道（東京工業大学）

We have developed a gas phase odorant detection system based on insect olfactory receptor (OR) and tested it with some fundamental experiments although we previously reported the detection in liquid phase. Considering that some Drosophila ORs—such as Or13a—have wide ligand repertoires, we compared the OR responses when stimulated by various target odorants, also the Or13a response under different volume of 1-octen-3-ol.

3-168

Odor Exploration with Independent Component Analysis

◎DANI PRASETYAWAN・中本高道（東京工業大学）

Odors can cause sensation of an odorant which stimulates olfactory receptors in living things. Currently, odor samples are widely distributed everywhere. However, chemical compounds (fixatives) are needed to preserve the odor samples for longer storage and use time. These fixatives are odorless and can cause difficulties in odorant analysis. Especially in odorant analysis using mass spectrometry because of unwanted interference in mass spectrum data space. Therefore, it is essential to separate the fixatives from the original odor samples to find out true odor data for odor analysis. 

3-169

スマートフォン顕微鏡を用いた匂いセンサ細胞の蛍光イメージング

◎藤林駿佑・光野秀文・祐川侑司・Haupt Stephan・皆川慶嘉・野地博行・神崎亮平（東京大学）

高性能かつ小型の匂いセンサデバイスは, オンサイトでの環境計測などで応用が期待されている. これまでに昆虫の嗅覚受容体を機能発現させて匂いを蛍光変化として検出する「センサ細胞」と呼ばれる匂いセンサ素子を開発してきた. センサ細胞の応答検出には現在, 蛍光顕微鏡を用いているが, 寸法, 重量ともに大きく, 可搬性の点で課題があった. そこで, 本研究では, センサ細胞とスマートフォン顕微鏡を組み合わせることで, 小型で高性能な, 匂いセンサデバイスの構築を目的とした. W169×D97×H58mmで340gの顕微鏡を構築し, 匂い応答を調べた結果, 確かに輝度強度変化が確認できた.

3-170

Modified microelectrode for dopamine detection via fast-scan cyclic voltammetry

◎Nicha Sato・Yasumi Ohta・Makito Haruta（Nara Institute of Science and Technology）・Hitoyuki Tashiro（Kyushu Univeristy）・Kiyotaka Sasagawa（Nara Institute of Science and Technology）・Oratai Jongprateep（Kasetsart University）・Jun Ohta（Nara Institute of Science and Technology）

This study aimed at examining usage of iron oxide (Fe₂O₃) and silicon oxide (SiO₂) as electrochemical sensors for dopamine detection. Nanoparticulate Fe₂O₃ and SiO₂ were synthesized by the solution combustion technique and evaluated for electrochemical activities via fast-scan cyclic voltammetry technique (FSCV) in dopamine solutions with concentrations between 0 to 50 µM. The oxidation peak of Fe₂O₃ and SiO₂ were found at an applied voltage of 0.43 and 0.58 V, respectively. The peak currents corresponding to oxidation reactions between dopamine and microelectrodes were detected. Therefore, microelectrodes have exhibited sensing ability and good candidates for non-labeling sensors towards application in neuroscience research.

3-171

ブリッジ型Pt超薄膜水素センサの感応部形状の検討

◎森 貴啓・小部寛人・王 璡・堺 健司・塚田啓二（岡山大学）・近藤健二・高橋琢哉・中川 眞・上田尚宏（リコー電子デバイス）

温室効果ガスの排出や枯渇の可能性から化石燃料等の代替となるエネルギー源として水素が注目されている．しかし，水素は小さく軽いため漏洩しやすく，燃焼範囲が空気中濃度4～75%濃度の広範囲であり危険性がある．よって漏洩検知用の水素センサが必要である．我々は水素に対して触媒作用があり耐久性の高い白金を用いた超薄膜水素センサを開発してきた．本研究ではセンサの一部を被覆してブリッジ回路にすることで温度等の環境要因の影響低減を開発した．さらに出力電圧の感応部表面積依存性を評価した．実験の結果としてセンサ部表面積が増加するとともに出力電圧が増加することが示された．今後センサ構造の最適化による感度向上を目指す．

3-172

誘電泳動集積法を用いたFET型両極性カーボンナノチューブガスセンサのNO₂に対する応答

◎中原正太・森田貴文（九州大学）・大町 遼（名古屋大学）・稲葉優文・中野道彦・末廣純也（九州大学）

カーボンナノチューブ(CNT)は比表面積が大きく、半導体・金属両方の特性を持ちうるナノ材料であり、ガスセンサへの応用が期待されている。我々はこれまで、誘電泳動集積法により半導体CNTを電界効果トランジスタ（FET）のチャネルに集積したFET型ガスセンサを作製してきたが、n型の挙動は観測できなかった。本研究では、半導体単層CNT懸濁液を変更しデバイス作製NO₂応答を取得した。結果としてゲート電圧によりp型/n型が切り替わる両極性の特性と、電流ヒステリシスが観測された。NO₂暴露により、全体がゲート電圧正の方向に推移した。ゲート電圧が正の領域（n領域）では、負の領域(p領域)より大きく減少し、p領域だけでなくn領域でもNO₂曝露による電流値の変化を確認できた。

3-173

ショットガス吹き付け方式を用いたチタニアナノチューブ型ガスセンサの性能

○阿部宏之（宮城県産業技術総合センター）・岩田一樹（東北福祉大学）・馬 騰・但木大介・平野愛弓（東北大学）・木村康男（東京工科大学）・庭野道夫（東北福祉大学）

我々は，肺機能の検査に用いられる呼吸機能検査装置での検査時間の短縮を目指し，応答時間と回復時間が短いチタニアナノチューブ型ガスセンサの開発を行っている。これまで，原子層堆積法でガス感応部であるチタニアナノチューブの膜表面及び内壁面に触媒となる白金微粒子を均一担持することで検出時間の短縮を実現した。一般にガスセンサでは，検出対象ガスに対する応答出力が飽和する値でガスの濃度が同定されるが，検出対象ガスを数秒間，ガスセンサに吹き付け，その後，空気を数秒間吹き付ける「ショットガス吹き付け方式」により応答出力の立ち上がりの値でガス濃度が同定可能であることを確認したので，その結果を報告する。

3-174

マルチモーダルガスセンシングに向けたガス透過性制御素子の作製

◎和田凌明・和田 武（豊橋技術科学大学）・水谷学世・鈴木誉久（新東工業）・崔 容俊・高橋一浩・澤田和明・野田俊彦（豊橋技術科学大学）

環境計測等の分野で多種多様なガスをセンシングする要求が高まっているが，従来の高感度・高選択性ガスセンサでは対応が困難になっている．本研究では，ガスセンサ上に組み合わせることでガス透過量や時間応答など，ガスセンサの応答特性を変化させるためのグリッド状の素子を提案，試作し，その特性を評価した．提案したガスグリッドは，ガスセンサのガス感応部直前に配置するものである．測定対象ガスはアンモニア，酢酸，エタノールとした．それぞれのガスにおいて，グリッドの有無やグリッドの寸法によって出力電圧や立ち上がり時の傾き，時間応答が変化していることを確認した．

3-175

嗅覚受容体発現細胞を利用した水晶振動子匂いセンサの気相測定に関する基礎検討

◎三村向陽・横式康史・中本高道（東京工業大学）・光野秀文・神崎亮平（東京大学）

嗅覚センサの1つとして水晶振動子に匂い物質を吸着する感応膜を塗布する水晶振動子匂いセンサがある。生体の嗅覚機構は優れた感度および選択性を有していることから、これを感応膜として利用することで生物に近い特性を持った匂いセンサが実現できる可能性がある。我々は昆虫の嗅覚受容体発現細胞を塗布した水晶振動子匂いセンサによる気相での匂い物質の検出を試みたが、水晶振動子上の水分が蒸発するという問題があった。そこで、水晶振動子上の共振周波数をモニタしながら水分を補充するシステムを構築した。

3-176

匂いセンサの湿度依存特性の評価

◎青沼 葵・淀 優介（長野工業高等専門学校）・前野権一・橋詰賢一（アロマビット）・澤田和明（豊橋技術科学大学）・秋山正弘（長野工業高等専門学校）

人間の五感である視覚や触覚に対応するセンサはいくつか開発されているが，嗅覚に対応するセンサは開発途中であり，人間の感覚に近いセンサはまだない．そこで本研究では人間の鼻により近い匂い識別センサの開発を目指した．本研究では表面に匂い検知膜を作製したQCMとCMOSの2種センサで匂い測定を行い，応答の湿度依存性を評価する．従来型のQCMセンサでは電極表面に匂い分子が付着するとその質量に応じて共振周波数が変化するが，この共振周波数は大気中の水分によっても変化することが明らかとなっており，湿度が変化する場所での利用に課題があった．一方我々が提案するCMOSセンサは対象の付着による電位変化を読み取り動作する．そのため，QCMセンサが抱える問題を解決できる可能性があるが，これまで詳細な湿度依存性評価は行われていなかった．そこで本研究では2種類のセンサの湿度依存特性の評価を行う．

3-177

深層学習を用いた屋外環境におけるガス源探索－環境変化の影響の低減－

山本晃史（東京農工大学）・◎松倉 悠（大阪大学）・石田 寛（東京農工大学）

気中のガスをセンシングし，その発生源位置を特定するシステムの開発が行われている。筆者らはこれまでに，深層学習ニューラルネットを用いたガス源位置推定手法を提案し，2ヶ月程度の期間で取得したデータを用いて8割以上の精度でガス源位置の特定に成功した。しかし，データの取得がより長期間にわたると，ガス源位置の推定精度は17%に低下した。そこで，取得したデータに前処理を施し，環境変化の影響を低減することを試みた。今回は，バウト検出と標準化をそれぞれ適用したデータを用いた。その結果，ガス源位置の特定精度は，前者では改善できなかったが，後者では62.4%まで向上することができた。

3-178

新規温度変調技術を用いた単一センサ素子でのガス識別における機械学習モデルの検討

◎大倉裕貴・佐伯真彬・吉河武文・岩田達哉（富山県立大学）

においセンサは、食品の品質検査や日常の体調管理など広く用いられ始めており、特にオンサイトで利用可能な、小型低消費電力なセンシングシステムの実現が望まれる。におい識別には多次元データが必要なため、一般にセンサアレイが用いられるが、多次元データを単一素子で取得し、これによる識別ができればシステムの大幅な小型化が可能となる。そこで我々は、半導体ガスセンサにおいて、ヒータ加熱電圧に新規変調波形を用いることで、ガス識別に有用な多次元情報を単一素子のみで得ることを提案している。本発表では、この新規温度変調手法を用いて取得した8種のガスに対するセンサデータについて、種々の機械学習モデルを適用し識別精度を検討した結果について述べる。

3-179

分子記述子を用いた昆虫嗅覚受容体発現細胞の匂い応答強度予測手法の検討

◎伊藤龍一郎（東京大学）

昆虫の嗅覚受容体を発現させたSf21細胞による匂いセンサ（センサ細胞）の開発を行っている。現在、匂い物質に対するORの応答特性データベースが使用できるが、よりセンサ細胞に適した予測を行うためにはセンサ細胞での応答実測値が重要である。本研究ではセンサ細胞の応答実測値および匂い物質の分子記述子（MD）を用いて、サポートベクトルマシンによる匂い応答特性予測手法を検討した。学習時にMDの感度解析結果に基づく特徴量選択を行い、選択されたMDをセンサ細胞の応答特性を表す最適なMDとみなしモデルを作成した。このモデルにおいて検証用データの応答予測値と実測値の相関係数が先行研究と比較して向上した。

3-180

高粘度材料を用いた化学抵抗ガスセンサーの製造

◎蔣 天舒・叶 笑・葛 霊普・佐々文洋・林 健司（九州大学）

This article mainly introduces a new method that can be used to manufacture gas sensors with gas sensing materials whose rheological properties are not suitable for printing. For high-viscosity and low-temperature-resistance sensing materials, the sensor can be manufactured by using the methods mentioned in this article. Although the response of the examples currently used for demonstration is not obvious, it greatly expands the limitation of sensing materials in gas sensor manufacturing.

3-181

バイオ蛍光式探嗅カメラを用いた皮膚アセトアルデヒドガス可視化計測システム

◎佐川行哉・飯谷健太・當麻浩司・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

本研究では、飲酒後の皮膚ガス中のアセトアルデヒド(AcH)を対象成分として、アルコール脱水素酵素(ADH)の反応にて生成され、自家蛍光を有するNADHを高感度カメラで検出し、AcHガスの時間的・空間的な変化を動画像として捉える「探嗅カメラ」を開発した。開発したシステムにAcHガスを負荷したところ、負荷点を中心とするガス濃度に応じた蛍光の減少が観察され、0.1–10 ppmの濃度範囲でAcHガスの定量が可能であった。次に、本システムを皮膚ガス計測に応用した結果、飲酒後の手掌皮膚から放出されるAcHガスの可視化が可能であった。以上ADHによるAcHの還元反応に伴うNADHの酸化消費により、蛍光減少を動画像として撮影することが可能で、皮膚ガスの可視化の有効性が確認できた。

3-182

リング型UVLED光源を用いた経皮ガスイメージング装置

○三林浩二（東京医科歯科大学）・飯谷健太（早稲田大学）・當麻浩司・荒川貴博（東京医科歯科大学）

エタノールとアセトアルデヒドについて、アルコール脱水素酵素(ADH)の還元（または酸化）反応にて消費（生成）され、自家蛍光を有するNADHをバイオ蛍光法にて検知し、リアルタイム動画像として捉える「ガスイメージング装置」を、①ADHメッシュ、②UV-LEDリング光源、③CMOSセンサ、そして④皮膚凹凸用フィッティングユニットを組み合わせて開発した。エタノールやアセトアルデヒドの標準ガスにて基礎特性を調べたところ、両ガスのリアルタイム可視化およびガス濃度の定量を行うことができた。また皮膚表面にフィッティングユニットを介して本装置を適用したところ、飲酒後の皮膚ガス中に含まれるエタノールとアセトアルデヒドのリアルタイム動画像化に成功した。