一般講演

2-084

重希土類元素フリーNd-Fe-B 焼結磁石の磁気特性評価

◎岩﨑亮人・中野善和・中村泰貴（三菱電機）

NdFeB 磁石は、永久磁石の中でも優れた磁気特性を有しており、サーボモータやハイブリッド自動車用モータなど様々な用途に使用されている。これらの製品において、高温下でも正常に動作させるべく重希土類元素(Dy・Tb)を添加することによる保磁力向上が行われてきたが、重希土類元素は産出地域が限られているため調達リスクが高い。今回、La,Smを添加したNdFeB 焼結磁石を作製し、これらの添加元素が磁気特性に与える効果を検討した結果、La, Sm 添加が保磁力の温度係数に優れていることがわかり、重希土類元素に代わる耐熱性付与元素としてLa 及びSm が有用である可能性を見出した。今後は、La,Sm の添加量など検討し、さらなる特性の向上を目指していく予定である。

2-085

放電プラズマ焼結法によるSm-Fe-N磁石の作製

○齋藤哲治（千葉工業大学）

放電プラズマ焼結法によりSm-Fe-N合金粉末が固化成形できるかどうかについて検討したところ、高温で分解するSm-Fe-N合金粉末も放電プラズマ焼結法により固化成形できることがわかってきた。そこで本研究では、Sm-Fe-N合金粉末の放電プラズマ焼結法条件について検討を行い、等方性Sm-Fe-N磁石と異方性Sm-Fe-N磁石の作製を試みたので報告する。

2-086

ThMn₁₂型Sm-Fe 系急冷薄帯においてHf置換が結晶構造及び磁気特性に与える影響

◎綱島幸哉・小原 学（明治大学）

希土類永久磁石において、Nd₂Fe₁₄B 型磁石に代わる存在としてThMn₁₂型構造を有する磁石が注目されている。実用化された場合、希土類の含有量が少なく安価で、高温下での磁気特性が優れているとされる。ThMn₁₂構造を得るためにTiなどの第3元素をFeの一部と置換する必要があるが、磁気特性が劣化する。過去の論文から希土類であるSmの一部をZrで置換すると構造が安定しTi必要量が減少することで磁気特性が向上することが報告されているため、Zrに近い性質のHfで置換しTi量を減少させることを目的とし実験を行った。Hf置換を行うと低い熱処理温度でThMn₁₂型構造が現れるが、α-Fe量の抑制はできなかった。また、Hf置換を行うと保磁力が向上するという結果が得られた。

2-087

スパース正則化による磁化分布推定のコスト削減に関する検討

◎渋江 航・若尾真治（早稲田大学）・岡本吉史（法政大学）

永久磁石の磁化分布は電気機器の性能に大きな影響を与えるため、機器設計の前段階で磁石の磁化分布を把握しておくことが重要となる。しかし、永久磁石の着磁を行う際には、予期せぬ製作誤差が発生し所望の磁化分布を得られるとは限らない。永久磁石の磁化分布推定では、非破壊的な推定手法として、空気中の多数の観測点における磁石が作る磁束密度分布を用いて、逆解析を行う手法が提案されている。磁束密度を測定する際には、機器の性能などにより観測誤差が混入してしまうことは避けられない。本論文では、スパース正則化による磁化分布推定手法を提案し、観測誤差を考慮したより少ない磁束密度の観測値を用いた磁化分布推定の結果を報告する。

2-088

Ga組成の異なるFe_85.1-xGa_xB_14.9膜における磁気特性の膜厚依存性

◎村松省吾・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

Fe-Ga二元合金は高飽和磁歪および優れた機械特性を有するため，磁歪材料として注目を集めている．我々はこれまでの研究でFe-Ga多結晶膜はダンピング定数が高いことを明らかにした．これらはよりFe-Ga多結晶膜が高周波デバイスへの応用には不向きであった．そこで磁気特性の改善に向けてBを添加したFe-Ga-B膜を作製し，それらの膜厚依存性について議論した．飽和磁歪は膜厚の増加にともない増加し，最高98 ppmと高い値を示した．また，ダンピング定数は膜厚の増加にともない減少の傾向にあり，最小0.005と小さくなった．以上より，飽和磁歪およびダンピング定数は膜厚に大きく依存し，Fe-Ga-B膜はFe-Ga膜に比べて磁歪性能および高周波性能のどちらも改善することがわかった．

2-089

Co-Fe-B薄膜におけるダンピング定数と飽和磁気ひずみのCo組成依存性

◎田中治憲・宮崎孝道・枦 修一郎・遠藤 恭（東北大学）

Co-Fe-B薄膜はスピントロニクスデバイスに用いられており，重要なパラメータの1つであるダンピング定数（α）について盛んに研究が行われている．さらに，近年では高TMR比と高飽和磁気ひずみ（λ_s）をもつMTJ素子を利用した新規デバイスの開発が行われている．これらのデバイスを実現するためには，Co-Fe-B薄膜におけるαとλ_sについて詳細に理解する必要がある．したがって本研究では，Co_xFe_80-xB₂₀薄膜におけるαとλ_sのCo組成（x）依存性について検討を行った．αはx = 30, 65 at.%のとき，他の組成に比べ増加した．また，λ_sはCo組成の増加にともない減少した．この結果はバルク値の傾向と類似している．以上の結果より、αとλ_sはCo組成に大きく影響を受けることがわかった．

2-090

ベクトル磁気特性によるパーメンジュールの回転磁束条件下における磁気特性評価

◎黒澤雄司・祖田直也（茨城大学）・榎本裕治（日立製作所）

我々はこれまでに、モータ用鉄心材料の磁気特性調査として有用なベクトル磁気測定器を用いて電磁鋼板のベクトル磁気特性を調査してきた。しかしながら、モータの高出力密度化には電磁鋼板よりも飽和磁束密度の高い磁性材料が有用である。そこで、高飽和磁束密度を有するパーメンジュールに着目した。また，パーメンジュールは電磁鋼板と比べて磁気異方性が少ないためモータ鉄心として最適である。本研究ではパーメンジュールのベクトル磁気特性測定を行い無方向性電磁鋼板との比較を行った。

2-091

ナノグラニュラー(FeCo)-(BaF,SiN)膜の巨大ファラデー効果

○小林伸聖・池田賢司・岩佐忠義・荒井賢一（電磁材料研究所）

巨大ファラデー効果を示すFeCo-BaFおよびFeCo-SiNナノグラニュラー膜について報告する。これらの膜は、ナノメートルサイズのFeCo強磁性顆粒がBaF₂またはSi₃N₄マトリックスに分散している微細な構造を有している。 FeCo-BaF膜は、結晶化したBaF₂マトリックスに起因する優れた光透過性を有し、また、FeCo-SiN膜は、Si₃N₄マトリックスに金する大きな屈折率を有する。これらの特性は、ナノグラニュラー膜の光学デバイスへの実用化に貢献すると考えられる。

2-092

SiNをマトリックスとしたナノグラニュラー薄膜の磁気光学効果

○池田賢司・小林伸聖・荒井賢一（電磁材料研究所）

反応性スパッタによって作製したSiN 系ナノグラニュラー膜の、磁性金属組成とファラデー効果および屈折率の関係等について解析した。FeCo-SiN膜は波長の増加に応じて符号が反転する波長依存性を有するファラデー効果を示し、ファラデー効果の絶対値は、磁性金属含有量に応じて増加する。ファラデー効果の符号反転は、構造に起因していると推定されることから、マトリックス界面近傍の磁気モーメントのエンハンスなどによって大きなファラデー効果が発現したと推測できる。屈折率は波長に応じて増加する波長依存性を有し、磁性金属含有量に応じてその絶対値が高くなる。高い屈折率は、SiNの屈折率および磁性金属微粒子が分散した構造に由来すると考えられる。

2-093

圧電素子を用いた面内等方応力印加下における電磁鋼板の磁気特性

◎渡邉正義・枦 修一郎・石山和志（東北大学）・山本健一（琉球大学）

モーターの鉄心材である無方向性電磁鋼板の損失が増加する要因に、製造プロセスで発生する応力によって鋼板の磁気特性が劣化することが挙げられている。本報告では電磁鋼板の磁気特性と外部応力の関係解明のため、圧電素子を用いた面内等方応力印加機構を組み込んだ単板磁気試験機で無方向性電磁鋼板の磁気特性測定を行った。またHコイル法と探針法を用いた鋼板の局所的な磁気特性測定法の確立を試みた。圧縮応力の際は板厚方向へ磁気モーメントの回転がおこり鋼板の磁気特性が劣化することがヒステリシスループの形状の変化、鉄損値の増加から観測された。引張応力印加時は圧縮応力の場合と比較して明瞭な変化は観測されなかった。

2-094

LabVIEWによる波形自動制御機構を実装した単板磁気特性試験法に基づく磁気測定システムの開発に関する検討

◎風見浩之・大倉寛ノ介・角 和樹・岡本吉史（法政大学）

磁気特性の自動測定方法は，各計測器を制御ソフトウェアにより操作し，人為的干渉を最小限にして運用されており，Keysight製のVEE等に基づく磁気測定の自動制御が行われている．波形制御ソフトウェアに，グラフィカルプログラミング言語で計測環境の製作が容易，計測器制御に特化した機能を持つNI社のLabVIEWを採用する事は，測定条件を柔軟に変更し，システム全体の簡易化を可能とする．本稿では，単板磁気試験器の波形制御部に，LabVIEWを活用した自動制御を実装し，磁気測定の測定システムを構築したので報告する．

2-095

磁界中熱処理したFe-Si-Alナノ結晶材の磁気特性

○松岡 孝・神山 望（日本ケミコン）・尾藤輝夫（秋田県立大学）

結晶磁気異方性がゼロに近いFe-Si-Al合金のナノ結晶材Fe_67.5Si_15.5Al₆Nb₃B₇Cu₁に、磁路に直角方向に磁界を印加して熱処理を施したところ、100[kHz]で極めて高い透磁率57000を示した。熱処理中に印加した磁界方向に、ストライプ状の磁区が観察され、磁気誘導異方性が確認された。Alを含まない材料に比べて、磁区は細分化し、磁路方向単位長さあたりの磁壁数が4～5倍となった。また、磁壁は磁性箔の幅方向に対してやや角度を持ち、緩やかに湾曲している。磁化の過程で、ストライプ状の磁区の多くの磁壁が一斉に移動することが確認され、透磁率が大幅に向上した原因と考えられる。

2-096

ナノクリスタル磁性材料の高周波特性

◎佐久間穂崇・井口 諒・小川蒼一郎・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）

ナノクリスタル材料は Fe-Si-B系アモルファス材料にNbとCuを添加した材料であり、熱処理により無数のCuの分散場所が核となり磁気特性の良いFeSi結晶が生成し、高濃度のNbが粒界アモルファスに濃縮してFeSiの結晶の成長を抑制し、ナノサイズの無数のFeSi結晶粒が集合組織として生成する。また初期のアモルファス構造を、高温の熱処理によって試料全体がナノ結晶化された結果、優れた軟磁気特性を保有しており、高温度環境に対する磁気特性の劣化が小さく車載用のコアとして多様な磁性部品への適用が進められている。 本研究では、ナノクリスタル材料の熱処理温度と熱処理時間を変化させたときの高周波特性について検討した。

2-097

強磁性形状記憶合金を用いた振動発電の基礎検討

◎小澤海斗・枦 修一郎・石山和志（東北大学 電気通信研究所）

IoTデバイスの自立電源として活用するための振動発電の新たな原理として、本研究では強磁性形状記憶合金の応力誘起相変態を利用する手法を提案する。Fe-Mn-Al-Ni系形状記憶合金は超弾性を有し、母相が強磁性、マルテンサイト相は反強磁性とされているため応力により相変態を起こさせ、それに伴う磁化の差分を検出すれば電磁誘導により発電できる可能性がある。応力誘起相変態を利用した振動発電デバイス開発を目的としてFe-Mn-Al-Ni系合金の磁気特性を検討した。試料に対して、応力を印加した状態でBH曲線の測定を行った結果、相変態は起こらなかったが応力無印加時と圧縮応力印加時では約110 mTの磁束密度差を得ることができ、算出した理論的な発電電力は約0.31 µWとなった。

2-098

IGBTとSiC素子のインバータが磁性材料に及ぼす影響

◎道家大貴・尹 己烈（岐阜大学）

インバータには主にIGBT(Si-IGBT)とSiC素子(SiC-MOSFET)を使ったものがある。現在はIGBTを使ったものが主流だが、様々な利点からSiC素子が注目されている。そこでIGBTとSiC素子のインバータを同じ条件で使用し、素子の違いが磁性材料に与える影響を明らかにすることを目的とした。 入力電圧は最大磁束密度Bmaxの大きさに関わらず、ほぼ一定の大きさの差があり、鉄損値はBmax=1.5[T]の場合で1.1%、1.0[T]で2.1%、0.5[T]で3.6%の差が生じた。これはIGBTインバータがSiC素子のインバータと比べ、オン電圧が大きいため入力電圧が大きくなったと考えられる。さらに入力電圧の違いによってメジャーループ幅が異なった。鉄損値はメジャーループ幅にほぼ比例しているので、IGBTとSiC素子のインバータで異なることによって鉄損値にも違いが現れたと考えられる。

2-099

逆磁歪効果型振動発電への応用を目的とした珪素鋼板の応力下磁化特性評価

○枦 修一郎・長内史也（東北大学）・山本健一（琉球大学）・石山和志（東北大学）

磁歪定数は小さいが，2Tの高飽和磁束密度を有する電力用磁性材料である珪素鋼板の振動発電材としての可能性について検討を行っている。応力印加機構を有するB－Hループトレーサーを構築し、B－H曲線の測定を行うことで評価した。応力の印加方向とB－H曲線の測定方向は、ともに試料長手方向とした。引張（27 MPa）および圧縮応力（－65 MPa）印加時の磁束密度の差より，約1.1 kA/mの低磁界印加時に最大で0.5 Tの差が得られた。試料の飽和磁束密度から考慮すると、変化幅として大きくはないが，低バイアス磁界での振動発電が期待できる値である。

2-100

超磁歪材料GaFeによる衝撃発電に関する実験的評価

秋山 肇・石原大也（福井工業高等専門学校）・○藤井高志（立命館大学）

超磁歪材料であるGaFeを用いて逆磁歪効果による発電実験を行った。機械的ストレス源として錘の自由落下による衝撃力を用いた。実験に用いたGaFeは単結晶素材であり、＜001＞方向の切片に対して衝撃力を与える設定とした。衝撃エネルギーの増加に対して瞬間最高起電圧と衝突発電量は共に増加する傾向を示し、単発の衝突イベントにより100[μWs]を超える程度の発電量が確認された。今回の実験結果は予備的なものであるので引き続き衝撃に関する条件の最適化を図りたい。

2-101

高透磁率・高損失磁性材料を用いたBeyond 10MHz伝導ノイズ抑制フィルタの基礎検討

◎梶原あさみ・南澤俊孝・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

近年，Beyond MHzスイッチングが期待されるGaNパワーデバイススイッチング電源ではスイッチングノイズが高周波化し，ノイズ抑制フィルタにも大幅な高周波化が必要である．そこで，筆者らは，高透磁率で高損失なシート磁性材料を開発し，磁性材料のインダクタンス成分とロス成分を用いた伝導ノイズ抑制フィルタの開発を試みた．フィルタの減衰特性の高いLCL型フィルタを採用し，三次元電磁界解析でフィルタ特性を検討するとともに，実際にフィルタを試作して10MHzスイッチングDC-DCコンバータへの適用評価を行った．本報告ではフィルタの構造，フィルタ伝送特性などの解析結果，作製工程，DC-DCコンバータに接続した際の出力ノイズスペクトルなどについて述べる．

2-102

10~20MHz帯スイッチングLLC共振コンバータ用プレーナトランス型リーケージトランスの基礎検討

◎馬場海帆（信州大学）

近年,コンバータ用リーケージトランスの小型化を目的として扁平磁性紛末積層シート磁心を採用した有機インターポーザ内蔵埋込型トランスの検討が行われている.本稿では,GaN-FETやCMOSスイッチを主スイッチに採用した20MHz帯スイッチングLLC共振コンバータ用の基板内蔵型プレーナトランスの小型化,低背化を目的に,扁平磁性粉末積層シート球形紛末積層シートおよび非磁性のシートを使用しトランスの設計に関わる基礎検討を3次元電磁界解析によって行った結果を述べる.

2-103

3Dプリンタを援用した静磁界自動計測器の開発と永久磁石の非破壊磁化推定への応用

◎高須大地・島 嘉宏・中村勢到・岡本吉史（法政大学）

電気機器設計の前段階における永久磁石磁化推定は，高品質な同期電動機設計の観点から重要な工程である．磁化ベクトルの同定方法として，EBSD，XRDを活用した結晶観察に基づく方法があるが，設計工期の長期化から不向きである．一方，永久磁石周囲の磁束密度を使用し，磁化分布を数値的に推定する手法では，短時間の磁化推定が可能で，実用的である．本稿では，組み立て式3Dプリンタを礎として，静磁界自動磁界測定器を開発し，位置決め誤差の影響軽減のため，非磁性体による磁石固定板を装荷した．この静磁界自動計測器を用いて，電気学会Dモデルに配備されている永久磁石相当のネオジム磁石周囲の磁束密度を計測し，既存の手法により，磁化推定を行ったので報告する．

2-104

強磁性プレートを用いた磁気シールドルームのシミング設計

◎金 世旭・桑波田晃弘・隣 真一（東京大学）・波多野睦子（東京工業大学）・関野正樹（東京大学）

In this research, a new approach to improve residual magnetic field uniformity inside magnetic shield room is proposed. We solve the inverse problem by using Tikhonov regularization to  determine the amount of shimming  plates and according to our results, the method of shimming steel tiles on magnetic shield room will control the uniformity of magnetic field inside magnetic shield room, which shows the feasibility application in wearable MEG system in the future.

2-105

薄膜磁気センサと強磁場を用いたインライン検査装置の磁性破片検出特性

○中居倫夫（宮城県産業技術総合センター）

粉砕機や加工工具の破片など製造装置の微少な欠損部材を検出することは，製造品への異物混入による不良品発生を防ぐ他，製造装置の破損発生を迅速に検出して不良品の拡大を防ぐ目的でも重要である。本報告では，大型部品の検査を想定した大型磁場発生装置（磁場強度：約370 G，均一磁場領域：幅600 mm，奥行き方向400 mm, 高さ140 mm）に薄膜磁気インピーダンスセンサを設置して工具鋼破片の検出を試行した結果を報告する。

2-106

コプレーナ型薄膜磁界センサの電磁界解析

◎石原知弥（東北大学）・植竹宏明（電磁材料研究所）・岩崎千里・薮上 信・山口正洋（東北大学）

筆者らは，伝送線路と磁性薄膜を一体化した薄膜磁界センサについて研究してきた。本稿では，伝送線路および磁性薄膜を薄膜プロセスにより一体化したコプレーナ構造の集積化薄膜磁界センサを作製し，このセンサについて電磁界解析を行い，実測値と比較を行った。センサの測定には，ネットワークアナライザの透過係数法を用いた。また，電磁界解析にはANSYS Electronics Desktop 2020 R1(ANSYS社)の3次元有限要素法による電磁界解析ソフトウェアHFSSを用いた。比較の結果，キャリア周波数に対する透過係数のゲインおよび位相の変化の傾向は，測定値と解析値でおおむね一致しており，電磁界解析を用いて実際のセンサの動作解析および設計が可能なことを示した。

2-107

マイクロマニピュレータ機能を持つ蛍光センサの磁気ビーズ収集特性

◎市川亮介・田中俊輔・淀 優介・秋山正弘（長野工業高等専門学校）

医療分野では、蛍光磁気ビーズの磁気収集と蛍光測定を組み合わせた高速・高感度な免疫測定システムの開発が求められている。しかし、蛍光は励起光と混ざっているため、分光をする必要があり且つ微弱であるため高感度な装置が必要となり、装置は大型・高価になってしまう。この問題に対して、半導体に磁気収集を行う磁気マニピュレータおよび、蛍光検出を目的としたアバランシェフォトダイオード（APD）を集積化することを提案する。本論文では磁気ビーズの磁気収集を行う磁気マニピュレータを作製し、シミュレーションおよび実測を行うことで磁気ビーズの収集特性の評価を行った。結果として、磁気マニピュレータである四角型収集コイルを用いて、磁気ビーズの収集が可能であることが分かった。

2-108

磁気ナノ粒子トモグラフィへのミニマムバリアンス空間フィルタの適用

◎岡村直樹・笹山瑛由・吉田 敬（九州大学）

近年、磁気ナノ粒子のイメージングは​​、癌などのイメージング手法として注目を集めており、我々も多数の検出コイルでイメージングする磁気ナノ粒子トモグラフィを提案している。先行研究では、従来の磁気ナノ粒子のイメージングでよく用いられる非負最小二乗法による逆問題解析によって磁気ナノ粒子の位置推定をしたが、アーチファクトが生ずる課題があった。そこで本稿では、脳磁図の逆問題分析でよく使用されるミニマムバリアンス空間フィルタを適用した。その結果、深さ25 mm～40 mmの位置に配置した鉄含有量100 µgのResovist磁気ナノ粒子サンプルの位置を、アーチファクトを検出することなく推定することができた。

2-109

電解質による水の磁気特性変化

◎山下 慶・坪田美咲・平松文太・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）

現在，磁気を用いた医用診断が広く使われている．しかし，生体には電解質が溶解した水分が大部分を占めている．そのため，高精度な診断を実現するためには，電解質が溶液の磁気特性に与える影響について明らかにする必要がある．一般的な振動試料型磁力計では試料寸法が非常に小さいため測定値のばらつきが懸念される．本研究では試料寸法の大きい開発したHybrid magnetometerを用いて純水，NaCl，KCl水溶液の直流磁気特性を測定することにより電解質による水溶液の磁気特性への影響を調査した．その結果，電解質により溶液の磁気特性が変化することが示された．