一般講演

3-001

対向電極の水中絶縁破壊による脱色の定量計測

○小松 真（岩手医科大学）

本実験では単純形状の対向電極間で放電電圧4 kVのパルス絶縁破壊を発生させ，10 mg/L インジゴカルミン溶液 12 mL に30回作用させた．生じた脱色の程度を可視光 610 nmを用いた吸光分光法により定量計測した．電極は染色液を封入するPMMA容器の壁面に設けた穿孔を通して設置し，電極が露出し染色液に接触している長さ（露出長さ）をパラメータとした．計測から，少なくとも電極間距離 20 mm 以内の条件では，露出長さ 3 mm 以下で確実に脱色がなされ，2 mm 以下で溶液中の染料がほぼ確認されないという結果が得られた．パルス放電を周期的にできれば迅速な脱色も期待される結果で，作用体積・放電後の経過時間と脱色効果の関連を今後解明すべきと考えた．

3-002

頸部心電図の電極配置と SN 比の向上

◎谷 国門・水口龍太・水野裕志・松村雅史（大阪電気通信大学）

日常的な身体モニタリングの方法として頸部で心電図を測定するネックバンド型心電計（関電極：頸部左右、不関電極：頸部後ろ）があるが、運動時になどに筋電図が混入しSN比が悪いなどの問題点があった。 本研究ではネックバンド型心電計の電極配置の変更（関電極：鎖骨中線上部、不関電極：頸部後ろ）を行ったところ、安静時は大きなSN比の変化は確認できなかったが、頸部運動時の筋電図混入が軽減しSN比の改善、またエルゴメータ運動時において心電図R波を測定することができ心拍数の推移を確認することができたのでこれを報告する。

3-003

姿勢変化での脈波伝播時間と最高血圧

◎水口龍太・谷 国門・水野裕志・松村雅史（大阪電気通信大学）

高血圧性疾患は、自覚症状が少ないため日常生活下で心疾患や脳卒中を起こすことがある。本研究では日常生活下で血圧変化を計測可能なネックバンドデバイス型血圧計測の開発を目的とする。脈波伝搬時間を計測するため、心電図は鎖骨中線上部、頸部に光電脈波センサを装着する。心電図R波から光電脈波の立ち上がり点までの時間を脈波伝播時間とした。頸部心電図と光電脈波で計測を行い、安静端坐位60秒間カフ式血圧計測を行い、運動を90秒間行い、運動後1分間隔、合計10分間カフで血圧を計測する。仰臥位でも同様の方法で計測を行った。結果より最高血圧と脈波伝播時間の関係は、姿勢の影響で脈波伝搬時間も変化するということが示された。

3-004

血流障害判定における熱入力に対する皮膚の温度応答の違いについての検討

◎大宮誉史・須永雄貴・喜田晃一・顧 剣・富岡容子・岡崎 睦・関野正樹（東京大学）

組織移植手術においては、術後に血栓による血流障害が発生する可能性がある。血流異常の早期発見のために研究室ではウェアラブルデバイスを開発し、光学センサとして脈波・色・温度センサを用いた血流モニタリングを行ってきた。本研究では、特に温度計測の部分に着目し、積極的に皮膚に熱入力を与えたときの皮膚温の応答の違いによって血流異常を判定する方法を検討する。組織血流量を変化させた皮膚組織モデルに対して熱入力を与えたシミュレーションを行うことで、血流量の違いによる皮膚温の応答の比較をした。このとき皮膚温の回復時において差が見られた。今回の検討は，ウェアラブルデバイスの血流状態判別アルゴリズムの判定精度向上につながる。

3-005

生体の聴覚システムに基づく音源方向検出用遅延回路の構築

◎沼 千智・大田美優・西尾公裕（津山工業高等専門学校）

監視システムやロボットは視覚センサを用い、視野内にある物体に対応した動作を行っている。しかし、対象物が視野外に出た場合、暗い環境に置かれた場合など、対象物を検出できないことがある。一方、生体は聴覚など視覚以外の機関を併用することによって、視野外の物体を認識することを可能にしている。 本研究では、生体の聴覚システムに基づく音源方向検出回路の遅延線を構成するシンプルな遅延回路を考案した。考案した回路は、電子回路シミュレータ(SPICE)を用いて評価した結果、低電流で動作することが確認できた。また、ブレッドボード上にテスト回路を作製し、良好に動作することを確認した。

3-006

呼吸量計測器に使用するオペアンプの低電圧化に関する検討

田中大輝・○深井澄夫（佐賀大学）

近年、高度な医用工学機器が様々な医療現場に導入されており、近代医療において生体計測機器は必要不可欠である。さらに、生体計測機器を医療現場だけではなく、一般家庭へ導入し在宅医療機器として用いる場合、自身の健康管理が可能となる。一般家庭で日常的に生体計測を行う場合、小型で可搬性に優れている生体計測機器が求められており、先行研究では呼吸量計測器の検討をしていた。本研究では呼吸量計測器の電圧検出回路に使用するオペアンプの検討をしている。先行研究では一般的なオペアンプを使用していたため、オーバースペックであった。したがって筆者は、電源電圧±2.5[V] GBWが1[MHz] 入力電圧範囲が±0.5[V] 出力電圧範囲が±2.4[V]のオペアンプを検討している。

3-007

Miniaturized multi-modal sensing system using implantable CMOS imager and temperature sensor

◎Ronnakorn Siwadamrongpong・Mark Christian Guinto・Makito Haruta・Hironari Takehara・Hiroyuki Tashiro・Kiyotaka Sasagawa・Jun Ohta（Nara Institute of Science and Technology）

With the development of the fluorescent markers and optical system, fluorescent imaging has become a powerful tool for observing the neural activities related to behavior or stimulation. The body status is also the important information to be measured. In this work, small imaging system was developed with the temperature measuring function. It contains a data conversion device with a size of 35×45 mm and a small thermocouple with the amplifier circuit. The simultaneous observations of the temperature and optical image by a 124×269-pixel image sensor at the maximum frame rate of 160 fps was achieved.

3-008

ガードリングにNwellを用いたCMOS_APDの高耐圧化

◎北村樹麗・高橋 青・淀 優介・秋山正弘（長野工業高等専門学校）

近年、様々な分野で小型・高感度な分光技術が必要とされている。我々は分光イメージセンサとして、増倍率の波長依存特性を利用した、CMOS_APDを用いた分光を提案してきた。しかし、我々が製作したCMOS_APDはブレークダウン電圧が低い、という欠点があった。そこで、CMOS_APDの構造を変形することで、ブレークダウン電圧を高くし、高耐圧化されたCMOS_APDを製作することにした。本研究では、ブレークダウン電圧の上昇に有用とされるガードリングを、Nwellを用いて製作し、高耐圧化が可能であるか検討した。

3-009

ZnOマイクロバリスタの電気特性の温度依存性に関する研究

◎須賀達哉・小倉一歩・カビールムハムドゥル（秋田大学）・箕輪昌啓・田中 忍（昭和電線ケーブルシステム）・春日靖宣（東芝エネルギーシステムズ）

バリスタは，電流－電圧特性が非線形性を示す電気素子の総称であり，金属バリスタの中でもZnOバリスタはその優れた非線形性のため，回路の保護素子として広く利用されている。しかし，過度の電流ストレスによるジュール熱の影響によってZnOマイクロバリスタ表面に粒界部が表出することが示唆されたことから，温度上昇によるZnOマイクロバリスタの非線形特性に変化があると思われる。そこで，本研究では，ZnOマイクロバリスタの電流－電圧特性を計測する装置を構築し，温度上昇によるZnOマイクロバリスタの電気特性への影響を検討した。

3-010

液晶マイクロレンズアレイにおける液晶分子のダイレクタ分布(Ⅰ)

◎山平大喜（秋田大学）

電界による液晶分子の再配向効果を用いた二分割・四角形状電極を有する液晶マイクロプリズムアレイ(LC-MPA)及びレンズアレイ(LC-MLA)を提案し、二分割電極に印加する電圧を変化させたときの干渉縞写真から光学位相差分布及び偏向特性について報告してきた。 本研究では、二分割・四角形状電極構造を有するLC-MLAについて、有限差分法を用いた液晶分子配向シミュレーションを行い、液晶分子のダイレクタ分布及び光学位相差分布について求めた結果について報告する。

3-011

高機動車搭載型埋設物探知装置の試作と評価

◎木全哲也・中島弘朋・大間茂樹・重松康祐・森田淳子（防衛装備庁）

地雷や即製爆発装置（IED）等の爆発物を極力離隔した状態で探知する装置の開発を目指し，防衛装備庁陸上装備研究所は，自衛隊車両である高機動車に地中探査用に設計したアレイアンテナを搭載することで，車両前方の埋設物を走行時に探知する装置を試作した．車両走行及び動揺が得られるレーダ画像を劣化させるため，送受信位置情報を高頻度に更新することで走行・動揺の影響を補正している．本発表では，この走行・動揺の影響を補正する機能（動揺補正機能）の効果について評価した結果を紹介するとともに，走行時における埋設物探知結果についても発表する．

3-012

エッジ端末用低コスト発振器のホールドオーバ動作に関する一検討

○桑野 茂（大同大学）

システムに対して高精度な時刻・周波数同期を端末で実現することは効率的な収容を行う上で重要である。本研究では、外部の基準周波数に同期する端末に対して、基準信号が途絶えた場合でのホールドオーバ性能について検討している。低コストなVCTCXOを用いた場合においても、同期確立時の制御情報を基に制御を行うことにより、OCXOと同等な±10ppb程度の同期性能を、数時間にわたって維持できることを示している。

3-013

LoRaの伝送速度別長距離特性

○宮下充史（電力中央研究所）

近年、IoT（Internet of Things）を用いたDX（Digital eXchange）等の各種アプリケーションに対するLPWA（Low Power Wide Area）技術の適用検討が多数行われている。電気事業においても、広範に敷設されている各種電力機器の保守・監視等に対する適用が期待される。その際、送受信間における見通しの有無等により接続可能距離は大きく異なる。そこで、高所に通信端末を設置し、広いエリアに対して見通しを確保することが考えられる。本稿ではLoRaを評価対象とし、異なる伝送速度に対する長距離接続時における通信特性について実測評価した結果をまとめる。

3-014

電源種別判別のためのカレントトランスを用いた信号重畳の基礎検討

◎杉浦太一（東京理科大学）

病院の手術室，集中治療室等では，商用・非常用電源，無停電電源の電力が供給されている。万が一これらに誤接続があった場合に人命に影響を及ぼす危険がある。接続の確認は電源種別ごとの配線ラインや該当回路の入り切りなどによる目視を中心とした確認に頼っており見落としてしまう可能性が残されている。そこで，目視に頼らない手法の開発が望まれる。我々は過去の研究で電源側の送信機で電源種別ごとに異なる信号を重畳し，それをコンセント側の受信機で復調し判定する手法を提案している。本研究ではカレントトランスにより微小信号を重畳することを検討した。そして高速フーリエ変換によって周波数解析し，正しく信号が重畳できているかどうか調査した。

3-015

帯域重畳伝送を適用した無線LAN高効率チャネル割り当て方式の効果

◎荷川取 大・津波 琉（沖縄工業高等専門学校）・渡部康平（長岡技術科学大学）・中平勝也（沖縄工業高等専門学校）

ユーザー間で通信チャネルの帯域の一部を重ね合わせる帯域重畳伝送の研究開発が行われている。無線LANは、ユーザー間でチャネルを共有するベストエフォート型の通信規格を採用しており、帯域重畳伝送と親和性が高い。 そこで、本稿では、2.4GHz帯無線LANに帯域重畳伝送を適用することで、各ユーザーのスループットを増大し、かつ各ユーザーのスループットの公平性を確保できるチャネルの割り当て方式を提案する。

3-016

バス通信FPGAを対象とした三重化冗長回路によるソフトエラー対策法

◎棚瀬智仁・石飛裕基・吉田幸一（東芝三菱電機産業システム）

SRAM型FPGAには、ソフトエラーによる誤動作リスクがある。有効な対策法の一つとして三重化冗長回路（Triple Modular Redundancy 、以下TMR）の構築があり、信頼度向上に効果的である。一方で、回路内に順序回路が含まれる場合に単純に本手法を適用すると、冗長化したロジックの動作が揃わず問題が発生する恐れがある。そこで、本報告では、順序回路を含む回路としてバス通信を行うFPGAを例に、TMR手法を実施した際の問題点および対策法の一案を説明した。結果、冗長化回路の動作を揃えるためには信号入力部に2段D-FFが必要であり、またこれにより生じるアクセス遅延を最小限に抑える方法を示した。

3-017

弱反転動作を活用したCMOSべき乗変換ICの信号ダイナミックレンジの拡大

西山直哉・新井将広・○佐野勇司（東洋大学）

入出力素子として一般的な各種センサやアクチュエータ等の非線形特性の補正に適した「べき乗変換回路」を提案し、試作ICにより性能確認した。本回路はCMOS ICであるマイコンチップに入出力インターフェース回路として搭載することを目標に、MOSFETの弱反転動作における非線形性を利用した小規模回路により実現した。回路を対数変換回路と乗算回路、指数変換回路の従属構成とした。乗算回路の乗算値である「べき指数値」を可変とすることで、凹凸の滑らかな非線形補正を実現した。 今回の研究においては、MOSFETの電流密度の最適化とオペアンプ回路の導入により、信号ダイナミックレンジの拡大を図った。試作ICを性能確認した結果、べき指数値1.0において48.0 dBに拡大した。

3-018

修正節点解析法を用いたC言語による設計自由度の高い回路シミュレータ

谷口穂香・末次澄香・中谷太一・竹辺和磨・小山蒼維・北正貴大・○中田俊司（近畿大学）

近年電気エネルギーを、スーパーキャパシタに蓄電する方法が注目されている。リチウムイオンキャパシタはラミネート形のもので24 Wh/kgで市販されている。この値は、テスラ社が「モデル3」に搭載するリン酸鉄リチウムイオン電池の100 Wh/kgと比較し、近い値となっている。また動作温度も−20～70℃であり、リチウムイオン電池の動作温度0～45℃より広い範囲で動作可能である。こうした特徴を有するリチウムイオンキャパシタを、電気エネルギーの蓄電に用いた場合、キャパシタの電位予測が重要となる。今回、無数のキャパシタが接続される直流ネットワークにおいて、キャパシタ電位の時間変化予測を目的として、C言語を用いた回路シミュレータの設計を検討したので報告する。

3-019

成分波形の包絡線を用いる零クロス周期の予測 ―磁界共鳴方式電力伝送回路の入力周波数遷移時の過渡解析を目指して―

◎藤田誉大・和田和千（明治大学）

磁界共鳴無線電力伝送回路に2値FSKを適用した電力・データ同時伝送システムにおいて，データの遷移時に受信号の符号が反転する時刻の周期（零クロス周期）が非周期的に変動し，復調誤りが発生してしまうことが明らかになっている．本稿では，まず，この非周期的な変動を定量的に捉えることを目的として回路のステップ応答を求め，その応答が2つの減衰振動の和で表されることを示す．そして，変動の大きさが，2つの信号成分の包絡線の大小関係に依存するという仮説を述べる．最後に，数値解析によりこの仮説の検証を行うとともに，その結果から非周期的な変動が大きくなる時間を予測できることを述べる．

3-020

小型位相検波回路を具備した活線警報器の開発

◎高橋快聖・角 真輝・佐藤宣夫（千葉工業大学）

電力需要の増進によって近年増加しつつある感電死傷事故の低減を図るため、我々は磁気センサに位相検波回路を具備した活線警報器の開発に向けた実験を行いました。本報告では、実験より得られた結果について述べます。

3-021

走査型プローブ顕微鏡用の電圧フィードバック制御回路の小型化とその周波数特性

◎山田晃嵩・土井敦史・佐藤宣夫（千葉工業大学）

半導体微細加工技術は，加工線幅が10 nm 以下にまで到達しており，情報通信分野における記録演算用の電子デバイスに留まらず，パワーエレクトロニクス分野でも基盤技術になっている．このことは，素子の小型化が高性能化に直結していることに他ならず，ナノスケール領域でのデバイス評価技術の重要性が増すことにもなる．そのような中で，観測精度を決定する要因の一つとなるフィードバック制御回路は，試料を安定かつ高速に観測するために必要不可欠である．本報告では，走査型プローブ顕微鏡によるナノスケール観測の精度向上のため，既存の電圧フィードバック制御回路よりも，小型化が図られた同回路を設計・製作，その周波数特性評価について述べる．

3-022

容量型センサに用いる容量・電圧変換回路の精度改善に関する研究

◎水島航太・小川覚美・佐藤隆英（山梨大学）

容量型センサは圧力、変位検知などの幅広い用途に用いられており、医療・介護分野において人体の荷重変化を検知する用途が例として挙げられる。この際に、呼吸や寝返り等の微小な体動変化を検知する必要があるが、一般的な容量・電圧変換回路では回路上のオペアンプやCMOSアナログスイッチの非理想的な特性により、変換精度が制限されてしまう。本発表では、センサの容量値をそれらの同じ誤差を含む3つの電圧値として出力し、演算することで素子の非理想的な特性の影響を軽減する信号処理回路の提案する。提案回路を0.18µm CMOSプロセスで試作集積化し、実験により評価を行った。

3-023

USB-PDハブによる電力配信の効率化に向けた制御検討

◎高家和暉・田村光汰・戸辺義人（青山学院大学）・川喜田佑介（神奈川工科大学）・横川慎二・市川晴久（電気通信大学）

電力分配装置であるVGHub自体の損失電力を定量化することで,入力電力に対する負荷への出力電力を自動的に制御するシステムの構築に貢献している.VGHubによる電力フローはポートに対して最大電力値を設定することで操作されるが,その設定値を決定するための情報が欠けており,その解決手段として,損失の定量化に取り組む必要があった.損失測定ではVGHubの損失は線形傾向にあることが明らかになり,電力フローに対して損失関数の適用が可能になった.結果,ポートの設定値を自動的に決定するVGHubの新たな制御機能が実装された.