一般講演

6-001

実器 GIS スペーサ内ボイド部分放電の進展と部分放電特性

◎山本尚史・田村周一・石川 渉（東京電力パワーグリッド）・松下 崇・星野俊宏・下河内 侑・小田島研祐（東芝エネルギーシステムズ）

GIS の長期使用に伴う絶縁性能低下や劣化に伴う部分放電特性の詳細な把握をするため，実器スペーサにボイド欠陥を埋め込み，課電試験データを取得した。本研究では，UHF センサを用いた部分放電監視システムを用いて，劣化進展ごとの部分放電信号の電荷量，位相，回数の特性を把握した。ボイド欠陥の劣化進展に伴う放電様相の特徴として，初期段階では断続的な電荷量の大きい放電を生じ，劣化中期では電荷量の小さい放電を 1 サイクルに何度も連続的に生じ，最終的には UHF センサでは検出不可となり絶縁破壊に至ることが判明した。今後の課題として，今回得られた様相に基づく，診断手法の提案と状態保全への活用が挙げられる。

6-002

GISスペーサ内ボイド部分放電のクラスター分析および状態基準保全への適用

松下 崇・○星野俊弘・下河内 侑・小田島研祐（東芝エネルギーシステムズ）・山本尚史・田村周一・石川 渉（東京電力パワーグリッド）

実製品相当の550kVエポキシ樹脂スペーサにボイドが存在した場合の部分放電パターンをクラスタリングし，クラスターIDを時系列として配置することで放電劣化プロセスの各状態を可視化できた。これにより，放電劣化プロセスに紐づけされたCBMの基礎手法を築くことができた。

6-003

直列型三相GIS内部伝搬電磁波のTEモードの電界分布と遮断周波数についての基礎検討

◎藤本樹貴・大塚信也（九州工業大学）・四蔵達之（富士電機）

ガス絶縁開閉装置(GIS)の診断に部分放電(PD)放射電磁波を検出、評価するUHF 法の適用が進められている。密閉された同軸円筒構造であるGISでは伝搬するPD放射電磁波はTEやTMモードを含むため、モード特性の理解は重要である。これまで単相や三角配置型三相GIS内部のTEモード特性は検討されているが、直列型三相や異物によるTEモード特性への影響は不明な点がある。本論文では直列型三相GIS内部のTEモードのfc特性や左右対称位置の異物による電界分布の変化を数値解析により検討し、単相GISの特性と比較検討した。その結果、異物の存在によりTEモードの電界分布は歪むが、遮断周波数は左右対称系の異物位置に依っては変化しないことが明らかになった。

6-004

SF₆ガス中FGM絶縁スペーサの最適絶縁性能を目指した誘電率分布逆求解技術

○加藤克巳（新居浜工業高等専門学校）・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）・増井秀好・柳瀬博雅・岡本健次（富士電機）・大久保 仁（愛知工業大学）

筆者らは、SF₆ガス絶縁機器のコンパクト化を目的として、誘電率傾斜機能材料(FGM)の適用を目指している。これまで、機器内部で最大限電界強度を低減させる、FGMの誘電率分布逆求解計算技術の開発を行ってきた。今回これを発展させ、ガス中絶縁特性と固体絶縁物の絶縁特性の両者のバランスを考慮しながら機器の最適な絶縁性能を目指して誘電率分布の逆求解を行う計算技術を開発した。計算の結果、SF₆ガス中におけるFGMスペーサの最適絶縁性能を目指し、ガス中の絶縁特性と固体絶縁物の絶縁特性の両者のバランスを考慮しながら誘電率分布の逆求解を行う計算技術の有用性を検証することができた。

6-005

Electric Field Grading on HVDC GIS Spacer by SiC-filled Permittivity and Conductivity Graded Material (ε/σ-FGM)

◎Rachmawati Rachmawati・小島寛樹（Nagoya University）・加藤克巳（National Institute of Technology, Niihama College）・早川直樹（Nagoya University）

This paper reports the electric field simulation results around permittivity and conductivity graded material (ε/σ-FGM) spacers with various shapes of ε/σ grading under superimposed lightning impulse (LI) voltage on DC steady state by taking into consideration the temperature- and electric field-dependent σ and ε of SiC-filled epoxy composites. The results show that under both positive and negative superimposed LI voltage, graded-to-lower conductivity (GLC)-FGM with ε/σ distribution is the most effective for electric field relaxation, with the largest maximum electric field (Emax) reductions compared to that of uniform spacer by 14.3% and 20.6%, respectively. 

6-006

抵抗率の温度依存性を考慮した酸化亜鉛バリスタのFDTD解析

◎田中督也・西村充希・馬場吉弘（同志社大学）・辻本義将・塚本直之（音羽電機工業）

避雷素子として広く用いられている酸化亜鉛（ZnO）素子に仕様以上の大電流や繰り返しインパルス電流が流れると，素子内部にピンホールなどの部分的な劣化が生じうる。これらを起点として，電流集中や局所的な温度上昇がさらに進み，溶融による貫通破壊や割れなどに至る可能性がある。このようなZnO素子の破壊メカニズムについて検討を行う上で，雷電流流入時にZnO素子内部に生じる熱（温度）の空間分布の時間変化を解析できれば有用である。本論文では，ZnO素子に雷電流が流入した場合に生じる電磁界と熱をFDTD法を用いて連成解析するために必要な電界Eと温度Tの関数で表されるZnOの抵抗率を提案する。

6-007

低圧SF6ガス中アルミ鋳物電極の絶縁特性

○佐藤和弘・佐藤 隆（日立製作所）・小林将人・菅井大介・仲野秀作（日立産機システム）

キュービクル形ガス絶縁開閉装置（C-GIS）は、遮断器、接地開閉器などの機器を、低圧力のSF₆ガスを充填した箱型のガス容器に収納した設備である。各機器に接続される大型かつ複雑な形状となる電界緩和シールドや導体は、アルミ材の鋳造で製作され、機械加工やバフ研磨などの表面平滑化処理が適宜施される。本稿では、低コスト化を目的に、低圧SF₆ガス中におけるアルミ電極の表面処理が、絶縁性能に及ぼす影響について検討した。その結果、ショットブラスト処理電極とサンドブラスト処理電極の破壊電界は機械加工電極と比べて約10 %低減すること、破壊電界のばらつきが大きい機械加工電極は放電発生エリアが広いことを確認した。

6-008

550 kV GIS用ポリマーガスブッシングの開発

濱邊真輝・羽柴靖人・武田康一（関西電力送配電）・◎足利泰紀・中内慎一朗・塚尾康宏・芳友雄治・笹森健次（三菱電機）

1970年代から1980年代に関西電力の基幹系統に導入された第一世代550 kV GISには, 磁器がい管を使用した油浸紙コンデンサ（OIP）形ブッシングが多数適用されている。当該GISの今後の信頼性維持と長期使用の観点から, 高経年化が進んでいるOIP形ブッシングにレトロフィット可能な信頼性・経済性に優れたブッシングの開発が望まれている。そこで, 既に開発・製品化が完了した550 kV変圧器用ポリマーブッシングの基本構造を踏襲した550 kV GIS用ポリマーガスブッシングを開発したので, 設計構造, 検証試験結果の概要を報告する。

6-009

真空中高周波交流コンディショニングにおける多重絶縁破壊の抑制による耐圧向上効果

◎小名木良太・小島寛樹（名古屋大学）・飯塚伸介・小林将人（日立産機システム）・早川直樹（名古屋大学）

真空中交流コンディショニングにおいて，半周期内に複数回絶縁破壊(BD)するような多重 BD が発生する．多重 BDは直前の BD の残留金属蒸気が起因と考えられ，電極表面の突起溶融に寄与せず，コンディショニングに悪影響を及ぼす可能性がある．筆者らは，真空中交流コンディショニングを高周波化することによって多重 BD を抑制し，飽和電圧が向上する可能性を示した．本稿では，高周波交流コンディショニングの耐圧向上効果を BD 間隔の観点から検討した．

6-010

真空中コンディショニングの飽和過程における対向電極材料の付着

◎北 直樹・小島寛樹（名古屋大学）・福田英昭・榊 正幸（明電舎）・早川直樹（名古屋大学）

真空中スパークコンディショニング過程において陰極表面に陽極材料が付着し，陰極表面の特性が推移していくことが示唆されている．本稿では，陰極をステンレス(SUS304)，陽極をCuとしてコンディショニングを行い，陰極への陽極材料の付着が飽和電圧に与える影響について検討した．陰極・陽極の電極材料の組み合わせの異なる同条件における実験結果を比較することでコンディショニング特性の推移を実験的に確認し，その指標となる陽極材料の付着厚さをSEM-EDS分析により推定した．これにより，コンディショニング特性の推移を定量的に評価した．

6-011

真空バルブの縦磁界設計法確立に向けた電極表面温度計測

◎粟飯原直也・道念大樹・川田将司・三木真一（三菱電機）

電流遮断時に生じるアークに電流と同方向の磁界を与えアークを拡散する縦磁界方式を用いる真空遮断器では、電極設計のためアーク拡散に必要なAMF強度が重要となる。しかし、実際の遮断試験では磁界と電極間の距離が時々刻々と変化し、解析とアーク挙動の整合性を取るのは容易でない。本研究ではでの電極間距離を固定した状態で電極表面温度を観測し、磁界解析との整合性を確認した。

6-012

真空遮断器を用いた直流遮断後の絶縁回復特性

◎江尻 開・菊池 諒・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・諏訪晃弘・松井芳彦・榊 正幸（明電舎）

逆電流重畳方式と真空遮断器を組み合わせた直流遮断器の高信頼化と小型化には直流遮断後の真空ギャップの耐電圧回復特性を明らかにする必要がある。本研究では直流遮断を模擬した電流波形でアークを点弧させた後にインパルス電圧を印加し、耐電圧回復の時間と電圧極性、及びギャップ長の依存性を測定した。その結果、負極性と比較して正極性の耐電圧回復には長時間を要することが明らかになった。電流波形の比較から耐電圧の回復は負極性では残留プラズマにより、また正極性ではカソードスポット周囲の高温金属突起により支配されていることが明らかになった。

6-013

フットポイントモード真空アークにおける電子および中性粒子密度分布

◎平野雄一・菊池 諒・江尻 開・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・稲田優貴（埼玉大学）

本研究では，シャックハルトマン法を用いて真空アークの電子密度と中性粒子密度の二次元分布を測定し，フットポイントモードとアノードスポット（タイプ1）モードにおける密度分布を比較した。その結果，電子と中性粒子の両者とも，アノードスポット（タイプ1）モードに比べフットポイントモードの方が電極間全体にわたり線積分密度が小さく，カソードから約2 mmの位置でその差は最大であった。アノードスポット（タイプ1）モードに比べフットポイントモードではアノード材の蒸発量が少なく，蒸発した中性粒子がイオン化される回数も少ないために，電子密度が電流瞬時値の割に小さくなると考えられる。

6-014

145kV乾燥空気絶縁タンク形VCBの開発

◎山本秀治・片山晴理・菅野哲也・菊地徳明・縣 祐介・鶴田豊久・長竹和浩（明電舎）

昨今、温暖化への影響から温室効果ガスの規制がより強まっている。真空遮断器（以下、VCB）は絶縁及び消弧に温室効果ガスであるSF6ガスを用いないため、国内外でその需要が高まっている。明電舎では過去にSF6ガスを充填した168kVタンク形VCBと72.kV乾燥空気絶縁VCBを開発している。今回は前述の機種をベースに、技術的課題の他、製造面、コスト面を総合的に判断した上で2点切りVI方式を採用し、145kV乾燥空気絶縁タンク形VCBを開発した。

6-015

真空遮断器の合成短絡試験におけるアーク延長手法

◎中山明彦・高橋哲仙・青木 功・塩崎光康・齋藤 仁（明電舎）

遮断器の合成試験ではアーク時間の長い領域の検証が出来ない。その場合、遮断器の開極後最初の電流零点直前に非振動波形の電流を重畳させて、強制的に次の半波も電流が流れるようにして検証を行うのが一般的である(アーク延長)。しかし、供試器が真空遮断器(VCB)の場合、ガス遮断器の検証では有効な汎用手法でもアーク延長を成立させるのが困難である。落合らは上記の課題を解決するために振動、非振動波形を組み合わせた電流を重畳させるアーク延長手法を提案している。この手法はVCBのアーク延長の成功率を高めることが出来るが、供試器や試験条件によって成功率が変動する。今回定量的な評価を行ったので報告する。

6-016

AgWC接点における材料組成が及ぼす消耗過程の検討

◎山本真司・浅沼 岳・立川裕之・恩地俊行（富士電機）

接点材料の組成をパラメータとしてアークによる接点の消耗過程について検討した。接点の表面全体にアークが広がり電極への入力エネルギーに対する電極内部の熱伝導損失が小さいため消耗量の電流依存性は大きく2乗となった。また、Ag含有量が少ない場合ではWC粒子の飛散により消耗量が増加することが示唆された。

6-017

ICCDカメラとI.I.を用いたCu電極間真空アーク減衰過程の二次元分光観測

◎畑中佑斗・宮崎貴充・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）・浅沼 岳・恩地俊行（富士電機）

真空遮断器では電流遮断時に電極間に真空アークが発生する。真空遮断器の電流遮断性能の向上のためには，真空アークの挙動を詳細に検討する必要がある。本報告では直流電流源とIGBTを用いて真空アークを生成，減衰させる実験系を構築した。そしてICCDカメラとイメージインテンシファイアを用いることで銅電極間に発生する真空アークの二次元分光観測を実現し，減衰過程での銅原子の分布の変化を検討した。その結果，アーク電流が約20 Aでカソードからの発光が観測されなくなり，さらに電流が減少すると電流波形に高周波信号が現れた。アーク電流の減少に伴った銅蒸気の蒸発量の減少とアークの拡散により転流完了前に裁断が生じることが考察された。

6-018

大電流インパルスアークによるOPGWの溶融深さの推定

◎中野智之・神足将司・岩田幹正（電力中央研究所）

当所では，OPGW の溶断対策を講じるため，これまでに継続時間の長い高エネルギー雷撃を模擬した直流アーク試験および夏季雷の第一帰還雷撃等を模擬したインパルス性の電流波形を有するアークを用いたアーク試験（インパルスアーク試験）を実施している。インパルスアーク試験においては電流波高値を 50 kAとしたが，実際の雷撃の電流波高値はさらに大きい場合があると考えられる。本稿では，インパルスアークによる OPGW の素線の溶損量を計算する手法を用いて，電流波高値 400 kA までのインパルスアークによる OPGW の素線の蒸発量および溶融の深さを推定した結果を報告する。

6-019

アークレス直流スイッチの試作と遮断試験

◎加藤剣人・山口作太郎・芳村幸治（中部大学）

直流利用は、変換器での損失が交流利用より実質的に少なくなるため消費電力が10％〜20％ほど節約できると言われている。直流利用での課題は、スイッチにある。電流ゼロ点が存在しないため遮断が困難になる。直流スイッチの原理は色々と提案されているが、機械接点を使う方式では、接点間に通常はアークが発生する。この接点間に発生するアークが接点を傷付けて、寿命を短くする原因になっている。また、半導体を利用した無発弧の直流遮断器は挙げられているが、半導体のみではスイッチ損失が大きく、スイッチ自身も拡大化するため最終的に高コストになる。このため、機械スイッチを並列に接続し、遮断時のみ半導体スイッチを利用するアークレス直流スイッチを考案した。

6-020

低圧直流過渡アークの蓄積エネルギーに着目したアークパラメータ推定手法の提案

◎北村拓真・津坂亮博・松村年郎・雪田和人・七原俊也・後藤康之（愛知工業大学）・酒井智康・宮本淳史・伊藤裕幸（日東工業）

筆者らは，直流遮断過程の解明を目指して，簡易アーク実験装置を用いた直流アーク遮断実験を行い，アークパラメータの推定方法に関して検討を行っている。本稿では，アーク陽光柱の蓄積エネルギーとコンダクタンスの変化に着目したアークパラメータの推定手法を提案し，アーク装置が同じであれば，遮断電流の大きさに関わらず，kは同じであると仮定してアークパラメータの推定を行った。その結果，アークパラメータは，適切なkの値を用いることで，遮断すべき電流が異なる場合においても，一貫して表されることを明らかにした。

6-021

受配電設備のアーク検知技術の検討

◎谷口 裕・大登正敬・山内芳准・浅沼 岳（富士電機）

受配電設備で短絡事故が起こると、短絡点でアーク（アークプラズマ）が発生する。検知対象として、筆者らはアーク光に着目して検知技術の開発を行っている。ただし、数kA 程度のアーク光は、光の強さ(光量)の判定では、アーク光以外の光(外乱光)との区別が難しい。このため、アーク光と外乱光の波長スペクトルの差に着目し、アーク光のみを検出する方法について、検討した。今回アーク光のピークが含まれる短波長側の帯域、アーク光のピークが含まれない長波長側の帯域を選定し比を取ることで分離を試みた結果、アーク光のみ検出できることを確認した。

6-022

絶縁油中アークによる銅電極損耗量の調査

○田所 兼・神足将司・大髙聡也・岩田幹正（電力中央研究所）

送配電系統などで使用される電力機器には，変圧器のように内部に絶縁油を含む密閉状態の機器がある。このような機器の絶縁油中においてアークが発生した場合，急激な内部圧力上昇に伴う機器の損傷や漏油などが懸念される。このため，当所では，絶縁油中の銅電極間に発生させたアークによって生じる圧力上昇現象の解明を進めている。本稿では，その一環で得られた銅電極損耗量の通過電気量依存性について報告する。なお，絶縁油中アークによる銅電極の損耗は，運転状態の変圧器で変圧比を調整する抵抗式（アーク接点）の負荷時タップ切換器の保守に重要と考える。

6-023

消弧砂形状がヒューズ内部アークに与える影響の高速度ビデオ撮影

◎塚本幸佑・山納 康・稲田優貴（埼玉大学）・松本章史・橋本伸久（エス・オー・シー）

近年の電気自動車の普及に伴いバッテリー電圧の上昇とヒューズの小型化が同時に求められており，高電圧でも機器が耐えうるようにヒューズの消弧性能自体を向上させる必要がある。 本研究ではヒューズ内部に発生するアーク放電を高速度ビデオカメラにより観察を行うことで，消弧砂の形状がアーク消弧に与える影響を調査した。 実験結果から消弧砂のかさ密度が高い方が，アーク放電の収束が速く，遮断も速かったことが確認できた。これは磨鉱処理により角を取った砂では，単位体積あたりの消弧砂が多く，かつアークに曝される消弧砂の表面積が大きいため，より多くの熱が消弧砂に奪われアーク経路の抵抗が速く上昇するためと考えられる。

6-024

高分子製狭隘部を設けたヒューズケースにおける直流アーク消弧実験

◎兒玉直人・横水康伸・中村晃也・竹中 湧（名古屋大学）・山村直希（太平洋精工）

EV用DCヒューズの遮断容量向上のためには，アーク抵抗r_arcの上昇および電流遮断後の高い絶縁抵抗R_insの確保が必須である。本報では，ヒューズエレメントのアーク点弧開始位置の近傍に高分子製の狭隘部を設け，さらに珪砂を充填したヒューズケースを用いて1000 AのDCアーク消弧実験を行った。比較のために，珪砂を充填したチャンバー内にエレメントのみを配置した実験も実施した。 実験の結果，狭隘部付きケースを用いた条件でのr_arcは，エレメントのみ条件よりも2倍以上に上昇した。また，R_insは1000倍以上に向上した。この結果は，高分子製狭隘部付きのケースを用いることで，ヒューズの高いr_arcとR_insの両立が可能なことを示している。

6-025

整流子片摺動におけるブラシ電流減少過程の理論計算-転流回路インダクタンスに対する残留電流の依存性-

◎川端大海・横水康伸・福塚隆司・兒玉直人・渡邉幹太・小椋陽介（名古屋大学）

直流モータでは，アーク放電がブラシと整流子片との間に発生することがある。アーク放電は残留電流を初期値として形成され，アーク継続時間は残留電流に比例的に長くなる。したがって，残留電流はアーク継続時間を決定するための重要な要素である。筆者らは，電気接点の摺動過程では，電気的，機械的，熱的および材料的要因が関わることを考慮し，摺動中の電気接点を流れる直流の転流推移を理論的に導出する計算手法を構築してきた。残留電流は，直流の転流過程の最終値である。本稿では，模擬装置の転流回路インダクタンスをさまざまな値に設定し，直流の転流推移を計算によって導き，次いで，各インダクタンス条件下での残留電流を示している。

6-026

電磁熱流体解析による大電流空気アーク挙動の電極直径依存性の検討

◎堀川将太・田中康則・中野裕介・石島達夫（金沢大学）

高エネルギーアーク損傷（HEAF: High Energy Arcing Fault）と呼ばれる大規模アーク放電事故が，原子力発電所の電気設備で発生する場合がある．本研究では，大電流空気アークの基礎特性の理解によるHEAFの規模や挙動の解明を目的とし，電磁熱流体解析によりアーク挙動と混入する金属蒸気の影響を明らかにする．本報では，モデルの電極直径変更時の大電流空気アークの挙動の違いを検討した．

6-027

外部磁界環境下での直流アーク挙動に関する三次元電磁流体解析と輻射解析の連成解析

◎吉田航己・猪野健太・藤野貴康（筑波大学）・吉野智之・前島 啓・森 正（東芝エネルギーシステムズ）

本研究では，ガス遮断器内のCO₂アークに及ぼす外部磁界の影響を電磁流体解析と輻射解析の連成解析によって明らかにする。本稿ではその予備検討として，2 kAの直流電流が流れるアークに対して解析を行った。その結果，固定電極近傍では磁界の印加によりアークがロータリ構造をとる一方で，棒電極近傍ではアークはロータリ構造をとりにくく2次元軸対称的な構造をとることがわかった。また，固定電極付近では輻射の放射支配領域の周囲を吸収支配領域が覆うのに対して，棒電極周辺では吸収支配領域が形成されにくいことがわかった。放射支配領域では，主にC原子やO原子の束縛-束縛遷移によって輻射が放射される。一方，吸収領域ではCO₂分子によって輻射が吸収される。

6-028

N₂/O₂/HFO-1336mzz(E)混合ガスにおける衝突電離係数および電子付着係数－温度300~3000 K, HFO-1336mzz(E)混合率4%－

◎杉田武弘・横水康伸・兒玉直人（名古屋大学）・佐藤基宗・中村泰規（三菱電機）

高電圧電力機器の分野では，SF₆ 代替ガスの候補として，CO₂ ガスあるいはN₂/O₂ 混合ガスが考えられている。さらに，これらガスを主ガスとして，他種ガスの混合による電気絶縁能力の向上が期待されている。他種ガスとしてはHFO-1336mzz(E) (C₄H₂F₆)が考えられる。しかし，断路器・遮断器では，アーク消弧過程によって，もともとの分子は熱解離・結合反応を経て，300~3000 K で別の分子種に結合することがあり，ひいては，高温ガスの誘電破壊特性は常温下とは異なってしまう。そこで，本報告では，75％N₂/21％O₂混合ガスに4％C₄H₂F₆ガスを添加したものに関して，熱解離・結合反応を経た300~3000 K での生成分子種を示し，次いで，誘電破壊特性として衝突電離係数𝛼/N および電子付着係数𝜂/N を述べる。

6-029

CO₂高周波アークのアーク電圧に関する検討

◎小川正洋・伊賀弘明・腰塚 正・日髙邦彦（東京電機大学）

分路リアクトルを開閉する際、開閉器が再発弧すると高周波電流が開閉器に流れる。この高周波電流をすぐさま遮断し(高周波消弧)、ふたたび再発弧が発生する(多重再発弧)と、大きな過電圧の発生につながる(1)。高周波電流の遮断可否を検討するには、高周波のアーク放電の特性が必要になるが、アーク電圧などの実測例がほとんどない。本論文では、CO2雰囲気内に点弧する高周波アークのアーク電圧について実測した。高周波電流の周波数を変化させてアーク電圧の特性を調査し、真空中のアーク電圧の様相とも比較したので、その結果を報告する。

6-030

2種類のセンサを用いたPD発生源の方向推定に関する検討

◎小川知良・野下聖仁・加藤健太・村瀬 洋（愛知工業大学）・大竹泰智・菅 健一（三菱電機）

電力機器の絶縁診断において、絶縁破壊の前駆現象である部分放電(PD: Partial Discharge)によって発生する電磁波の検出が有効な手段として挙げられる。本研究では、GIS(Gas Insulation Switchgear)の絶縁診断を対象に、GIS内部の部分放電により生じた電磁波を、機器外部に設置したセンサにより検出し診断する方法を検討している。これまで、面電流磁気センサの実用化に向けて平面波の伝搬方向を推定する手法を検討した。しかし、面電流磁気センサは放電極性を判別できない為、前後方向の推定を行うことはできない。今回、電界センサを併用し、極性判別を行うことで前後方向の判別を可能とした平面波の伝搬方向を推定する手法を検討し、全方向の推定が可能であることを確認した。

6-031

矩形筐体内部分放電における指向性面電流センサによる面電流到来方向推定

◎大竹泰智・菅 健一（三菱電機）・小川知良・野下聖仁・加藤健太・村瀬 洋（愛知工業大学）

電力機器の絶縁診断において、絶縁破壊の前駆現象である部分放電の検出が有効である。これまで、金属筐体内部の部分放電により生じた面電流を機器外部に設置の面電流センサで検出および到来方向の推定手法を検討した。今回、C-GIS  (Cubicle-type  Gas  Insulated Switchgear)への適用を想定し、矩形筐体内で実際に部分放電を発生させ、生じた面電流の検出と到来方向の推定を外部設置の指向性面電流センサを用いて行ったので報告する。 

6-032

高速検知型サージカウンタの技術開発

○佐藤 淳・小田康雄・福井昭圭（NTTファシリティーズ）

サージカウンタについて、従来製品の課題を、時間応答性と故障しやすさの面に分類し、課題解決の対策技術の検討、ならびに試作を行った。その結果、従来技術では困難であった、マイクロ秒レベルの高速検知が可能なサージカウンタ技術を実現できたため、その技術検討結果について報告する。

6-033

音響によるガス遮断器のストローク推定

◎岩田 健・遠藤 隆・高橋祐貴・西村隆浩（日立製作所）

変電機器における保守点検の自動化・省力化を目的として、非接触で安価に測定可能な音響診断技術を開発している。今回、ガス遮断器(GCB)の開閉動作における主要な動作時刻を音響により推定する測定システムを構築した。音響とともにGCBの主要信号を取得し、正常状態における動作開始・終了時刻を推定した。その結果、誤差約2%で主要な動作時刻を推定できた。

6-034

機器動作振動による開閉極時間トレンド監視の一考察

○中臺洋史（東京電力ホールディングス）・金山哲也・栗原世治（明電舎）

電力設備の保安品質向上と徹底的なコスト削減を両立するために，スマートメンテナンスのニーズは依然高い。 このためSISを対象に既設設備への振動センサの後付けにより、機械的な開閉時間のトレンド把握を目的とした取り組みを実施した。 今回、検証設備への加速度センサ取り付けにより得た波形情報と、開閉時間の真値との比較により、機械的動作時間を算出した。その結果、世代の異なる設備に、一定程度の実用的な機械的動作時間のトレンド変化を安定的に取得できる見通しを得た

6-035

変電設備におけるサギ飛来の時間的特徴

◎白井正樹・小林 聡・石野隆一・中屋 耕（電力中央研究所）・中西嘉人・津田その子・杉本敏文（中部電力）・晴山貴行（東北電力ネットワーク）・瀧根健志（電源開発送変電ネットワーク）

変電設備では、サギ類の粘性の高いフンが碍子に付着することで停電故障を起こす事例が知られているが、サギ類がいつ変電設備に飛来しているかについてはよくわかっていない。本研究では、サギ類による変電設備の停電故障事例を解析するとともに、変電設備での飛来状況を現地観測し、停電故障の予測・対策に資するサギ飛来の特徴を明らかにすることを目的とした。事例解析および現地観測の結果から、停電故障が6月から10月の夜間にのみ発生していること、およびサギ類が変電設備をねぐらとして利用している可能性があることが示された。今後は、夜間のサギ撃退を効率的に実現するための監視技術や対策技術が必要となると考えられた。

6-036

ハシブトガラスの音声コミュニケーションに着目した聴覚刺激の作成と忌避効果の検討

○池田恭佑・山本麻希（長岡技術科学大学）・白井正樹（電力中央研究所）

ハシブトガラス（以下、カラス）は、送電設備の故障や農作物被害などで人との軋轢が生じている。軋轢の解決手段として光や音を用いた対策が行われてきたが、有効性に疑問がある。長期的かつ確実な対策のためには、カラスが本能的に忌避する方法を検討する必要がある。カラスを含む鳴禽類は音声を用いて情報伝達をしており、音声の聞き取りづらい環境を忌避する傾向がある。本研究では、カラスの音声[白井1] に着目した対策について忌避効果を評価した。カラスの音声を考慮した聴覚刺激を作製し、刺激の有無による飼育カラスでの採餌量の変化を観測した。その結果、今回作成した聴覚刺激には飼育カラスの採餌行動を阻害する効果があることが確認された。

6-037

空気操作式ガス遮断器における操作圧力変動の考察

◎櫻田賢悟（中部電力パワーグリッド）

空気操作式ガス遮断器は，期待寿命の長期化により当面は継続使用する見込みとなっており，保全コストを抑制しながら設備信頼度を維持していく必要がある。 そこで，一定期間で手入を実施する従来の保守方法に対し，必要に応じて手入を行う状態監視保全に着目し，弁体に不具合を模擬した空気操作装置における操作圧力変動について考察した。

6-038

電圧係数の異なる投入と遮断を組み合わせた進み電流開閉試験法の開発

◎赤星卓勇・宮本祐也・木村 涼・常世田 翔・皆川忠郎（三菱電機）

交流遮断器の単相回路での進み電流開閉試験において、試験設備の都合で投入(C)-遮断(O)動作試験を、電圧係数1.0のC動作試験と、電圧係数1.4あるいは1.7のO動作試験に分けて実施する場合、試験回数がCO動作試験の2倍になるだけでなく、試験遮断器によっては、遮断性能に対する投入時のプレアークの影響を含めた検証が十分ではない可能性がある。一方、単一電圧係数1.4あるいは1.7でCO動作試験を実施する場合、試験遮断器に対し過大な負荷を与えることになる。そこで今回、CO動作で、より実系統の現象に近い条件での性能を検証しうる、電圧係数の異なる投入と遮断を組合わせた進み電流開閉試験法を開発したので、報告する。

6-039

閉極位相制御装置による500kV送電線投入サージの抑制

◎下河内 侑・丸山志郎・松本詠治・齋藤 実・小田島研祐（東芝エネルギーシステムズ）・多藝彰規・吉田一輝・塚尾茂之（東京電力パワーグリッド）

遮断器を商用周波数の1サイクル中の適切な位相タイミングで投入または開放する位相制御開閉技術は、遮断器開閉動作時に発生する過電圧や過電流による電力流通設備の絶縁や寿命、系統の安定運用に対する悪影響を低減する技術として適用が拡大しつつある。 国際大電力システム会議（CIGRE）の調査によれば位相制御開閉技術は1980 年代後半から適用され始め、欧米を中心に投入サージを抑制できる経済的な手段として普及してきた。筆者らは、海外の420kV ガス遮断器の架空送電線回路において、投入サージ電圧抑制を目的として、閉極位相制御装置を適用している。 今回、投入抵抗ならびに抵抗接点を省略し、遮断器タンクの細径化を図った新形500kV GISの開発に対応して、 500kV線路回線に閉極位相制御装置を適用し、現地据付を完了した。本論文では、この装置の概要と据付試験結果について報告する。

6-040

SiC-MOSFETによる低圧直流大電流遮断過程と限流部端子間電圧・遮断部接合部温度上昇の評価

◎渡邉幹太・横水康伸・小椋陽介・小川拓真（名古屋大学）

筆者らはIGBTやSiC-MOSFETを用いた低圧直流モデル遮断器を試作し，その特性評価を行ってきた。また，近年は数値シミュレーションによる遮断特性の解明を試みており，限流抵抗を具備したモデル遮断器に関して，電源電圧120V，突入電流2000Aにおける遮断特性を示してきた。本報告では，電源電圧を380Vに設定し，過電流検出値を130A，100A，60Aと変化させ，突入電流の遮断過程を計算した。また，遮断特性として，SiC-MOSFET素子の端子間電圧および接合部温度上昇を評価している。

6-041

MCCB 鉄グリッド加熱時の特性変化

◎仁科智裕・腰塚 正・日髙邦彦（東京電機大学）・山口直哉・長崎豊毅（戸上電機製作所）

負荷開閉器や配線用遮断器(MCCB)には消弧装置として消弧グリッドが備え付けられている。消弧グリッドの材質は主に鉄が用いられている。これまでに同一消弧グリッドでの多数回遮断によって消弧グリッドの消弧性能が低下することが報告されている。これはアークによる消弧グリッドの表面の溶損によるものであると考えられている。 強磁性体がキュリー温度以上に加熱された場合磁性を失い比透磁率が低下することが知られている。しかし冷却した際の比透磁率の変化については不明な点が多い。消弧グリッドはアークによって溶損した部分はキュリー温度以上となっている。そのため本研究では、鉄の加熱、冷却後の励磁特性について調査した結果を述べる。

6-042

電磁操作式低圧気中遮断器ACB の開発

◎相良雄大・出口智也・舛田真一・岩下説志・信太秀夫（三菱電機）

工場等の受配電盤内に用いられる低圧気中遮断器ACB（Air Circuit Breaker）は、リモート操作の市場ニーズが高く、標準機能化が求められている。従来機種の場合、投入バネを用いたバネ操作機構に加えて、別途、バネの蓄勢および開放操作が必要となる。このため、付属品として蓄勢用にモータ、開放用に投入コイルが用いられていたが、標準機能化にはバネ操作機構含めて、これらの機能を集約する必要があった。そこで、筆者らは電磁ソレノイドを用いた電磁操作機構を開発し、上記機能を集約することでリモート投入操作の標準機能化を実現した。本報告では、この電磁ソレノイドの高出力化技術について述べる。

6-043

配線用遮断器における限流遮断時の内圧解析手法

◎田畑 裕・浅沼 岳・恩地敏行（富士電機）

配線用遮断器には，故障電流を遮断する責務がある。遮断時に発生するアークは遮断器内部圧力（内圧）を上昇させ，筐体の破損を引き起こす恐れがある，そのため，筐体設計において，アークによる内圧上昇に耐えうる構造強度が要求される。当社では，汎用熱流体解析ソフトを用い，内圧推移を解析してきたが，短時間での解析は困難であった。本稿では限流遮断時における内圧推移を簡易的に短時間で解析可能な手法を構築し，解析値と実測値の比較を行った。比較の結果，解析手法の妥当性を確認でき，筐体設計において手法の有効性を確認した。

6-044

CO2/SF6とCO2/C2F6混合ガス吹付けアーク消滅後における疑似過渡回復電圧印加時の再発弧特性

◎出村文俊・甲斐広将・中野裕介・田中康規・石島達夫（金沢大学）

現在，超高圧ガス遮断器には消弧媒体として主にSF6ガスが使用されている。SF6ガスは温暖化係数が大きいため，その使用・排出規制に向けた代替ガスの研究が進んでいる。欧州では，CO2と10%程度のパーフルオロケトン(PFK)やパーフルオロニトリル(PFN)との混合ガスを消弧ガスとして使用することが進められている。一方，筆者らの共同研究から，高分子量の分子解離に伴う大きな質量密度変化による乱流様構造の形成が，電流遮断性能を向上する可能性が示唆された。本報では，PFK系代替ガス候補と同様にC, Fから構成されるCO2/C2F6混合ガスに着目した。同混合割合のCO2/SF6混合ガスでも実験を行い，電流零点後に疑似過渡回復電圧印加時の遮断成功率を検討した。

6-045

CO₂/SF₆吹付けアークの減衰過程に対する吹付け流量依存性の数値解析

◎甲斐広将・出村文俊・中野裕介・田中康規・石島達夫（金沢大学）

ガス遮断器で消弧媒体として用いられるSF₆ガスの使用および排出削減のため，現在，CO₂ベースの代替ガスが検討されている．本報では80%CO₂/20%SF₆混合ガスに対し，フリーリカバリ状態におけるアーク減衰過程の数値解析を行い，ガス流量に対する温度減衰とアーク抵抗上昇過程を検討した．今回，ガス流量を3通り(100, 200, 300 L/min)に設定し，直流電流50 Aにおける定常解析を行い，その結果を初期値として，時刻t = 0 sにおいて電流を50 Aから0 Aに変化させた．その結果，アークの対流損失の増加により流量200 L/minで温度減衰が最も速くなり，アーク抵抗も急激に増加した．一方，300 L/minでは対流効果の飽和傾向がみられた．

6-046

CO₂ガス遮断器の遮断シミュレーション

天神将太・○新海 健（東京工科大学）

フリーバーニングアークの実験でアーク時定数を求め、Mayrアークモデルを用いた系統シミュレーションで近距離線路故障遮断特性の検討を行った結果について報告する。測定結果から算出した時定数はO₂が最も低く33μs、次いでCO₂が77μsであった。Mayrアークモデルを用いたシミュレーションの結果、CO₂ではアーク損失を33倍にしてようやく遮断成功し、冷却能力を相当向上しなければならないことが分かった。

6-047

CO2/O2ガス遮断器の消弧ピーク近傍の導電特性

○真島周也・井上 徹・内井敏之・森 正（東芝エネルギーシステムズ）・横水康伸（名古屋大学）

送変電機器における環境低負荷技術の一環としてCO₂／O₂混合ガスを用いた遮断器の開発が進められている。同ガスはSF₆ガスと比べて冷却能力が低いため熱的遮断性能の向上が課題となる。その熱的遮断現象を解明し性能を向上させるためには、大電流遮断過程において、どのタイミングで遮断成否の傾向が出現しているか確認することは重要である。今回、遮断試験で得られた電流・電圧波形から電流零点前の消弧ピーク近傍におけるアークコンダクタンスの値を算出し、同値が遮断成否の評価指標となりうることを確認することで、消弧ピーク値の上昇を促すことが性能向上に対するアプローチとして有効であることを示した。

6-048

CO2 内の高周波アーク放電に関する検討

◎伊賀弘明・小川正洋・腰塚 正・日高邦彦（東京電機大学）

Cassie モデルや Mayr モデルなどのアークモデルを組み合わせることにより気中や SF6 ガス中のアーク放電の特性を模擬できることが分かっており、直流および商用周波のアーク放電について検討が進められているが、CO2 内の高周波アーク放電について検討された例は少ない。本研究では、インパルスジェネレータを用いて、CO2 内に発生する高周波アークについて実測に基づく基礎的な検討及びアークモデル構築に関する検討を行ったので、その結果を報告する。

6-049

SF₆代替ガスとしてのC₄F₇N / CO₂混合ガスの短時間領域絶縁破壊特性

◎阿部剛志・新開裕行・五島久司（電力中央研究所）

近年，GIS（Gas Insulated Switch-gear）に代表されるSF₆代替ガスとして，F-ケトンやF-ニトリルを対象とした研究が活発になされている。GISで発生する雷サージや断路器サージのような過電圧は，急峻な立上りを有するため（ナノ秒～数十ナノ秒），1 µs以下の短時間領域の絶縁破壊特性に関する知見を得ることは重要である。我々は，これまで電力中央研究所横須賀地区に設置された高電圧パルスパワー発生装置“SPARK”を用いて，SF₆ガスやN₂およびCO₂などのSF₆代替ガスを対象とした短時間領域における絶縁破壊特性を報告してきた。今回，SF₆代替ガスとしてF-ニトリルであるC₄F₇N（3M^TM Novec^TM 4710絶縁ガス）とCO₂を用いた混合ガスを対象として実験を行ったので報告する。

6-050

高温CO₂/O₂/C₅F₁₀O混合ガスの臨界電界におけるO₂ガス混合効果に関する一考察

◎横井俊哉・津坂亮博・松村年郎・七原俊也・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・横水康伸（名古屋大学）

本稿では，C₅F₁₀O混合率10%の高温CO₂/O₂/C₅F₁₀O混合ガスにおける臨界電界の温度依存性を示し，O₂ガス混合の影響を考察した。その結果，CO₂/O₂/C₅F₁₀O混合ガスにおいて，O₂混合率を高めても臨界電界は，残念ながら低下する温度領域があることが得られた。

6-051

PTFE溶発蒸気が混入したCO₂/O₂混合ガスの衝突電離・電子付着反応－3,000 K, CO₂:O₂=0.8:0.2の場合－

◎津坂亮博・横井俊哉・松村年郎・七原俊也・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）・横水康伸（名古屋大学）

ガス遮断器において，CO₂/O₂混合ガスはSF₆ガスに替わる絶縁・消弧ガスの候補の一つとして挙げられている。筆者らはこれまで，高温のCO₂/O₂ガスにノズル材料であるPTFEの溶発蒸気が混入した場合に対して，臨界電界を数値計算により求めてきた(ガス圧力: 0.8 MPa)。本稿では，臨界電界を算定する過程で求めた衝突電離係数および電子付着係数に着目して，臨界電界に影響している主要要因について考察を行った。その結果，高温CO₂/O₂混合ガスにPTFE溶発蒸気が混入した場合，混入率が高くない場合は，臨界電界の上昇／低下は，電離係数の低下／増加および電子付着係数の増加／低下の相乗効果によってもたらされていることを明らかにした。

6-052

低圧開閉器の多数回開閉における接点消耗予測

◎堀田克輝・稲垣省吾・竹本智彦・稲口 隆（三菱電機）

低圧気中開閉器には負荷電流の多数回開閉責務があり，その接点寿命性能を推定する技術が接点設計に必要である．今回，接点厚みの変化によるアークエネルギ推移を考慮することで，多数回開閉における接点消耗を予測できることを明らかにした．

6-053

高効率モータ対応遮断機能付きコンタクタの試作研究

○稲口 隆・堀田克輝・五十嵐勝俊・高橋和希（三菱電機）

ブレーカとコンタクタの機能を統合化した遮断機能付きコンタクタを試作し、部材削減と高遮断性能化により小形化が可能であること、高効率モータの始動電流遮断に対応できる定格20倍電流、25回の遮断を確認することができたので発表する。

6-054

スイッチギヤ導体の発熱抑制技術の開発

○後藤研吾・佐藤 隆（日立製作所）・佐藤深大（日立産機システム）

スイッチギヤ小型化の課題である温度上昇の抑制を目的として、電磁界解析と熱流体解析により、損失と放熱性を評価した。従来、放熱面積を確保するために採用される積層導体は、近接効果により通流面積が低減し、損失が増大する可能性があった。本論文では、積層導体の対向面に凹形状を設けることで導体の電流密度を制御し、電流集中を抑制することで、導体損失を2.7%低減させた。さらに、凹形状採用による放熱面積の確保により、温度上昇を最大14%低減できる見通しを得た。

6-055

太陽光発電所引込用柱上気中開閉器(PAS)遮断についての試験的検討

○谷口謙悟（日本高圧電気）・雪田和人（愛知工業大学）

太陽光発電所においても故障・事故などの報告が増加しつつある。高圧での系統連系においては、引込用の柱上高圧気中開閉器（PAS）が多く用いられている。このとき、引込用のPASにて遮断が失敗するという事象も発生している。そこで、本稿ではこの事象について、試験的に検証を行った。試験の結果PCSによっては過電圧が発生が確認された。これより、PAS遮断が出来ない可能性があることを確認した。

6-056

屋外直流給電システムにおける短絡保護手法の検討

◎花岡直樹・中村尚倫・樋口裕二・田中憲光・田中 徹（NTT宇宙環境エネルギー研究所）

通信ビルに接続された自営線を長延化（高インピーダンス化）した屋外直流給電システムにおいて，短絡事故が発生した場合のゲートブロックとヒューズの動作特性を明確化する方法について検討を行った結果を報告する.

6-057

軽量型大容量(600/800A)電磁接触器の開発

◎五十嵐勝俊・高橋和希・小林篤志・堀田克輝・稲口 隆（三菱電機）

大型パワコン等の電源開閉制御に用いられる大容量電磁接触器は重く，据え付け作業の容易化や据え付け部の耐重量負荷低減のために軽量化が求められている．今回，特に高重量な電磁石と導体の軽量化を行い，製品全体で17%の軽量化を実現して2020年10月に製品化した．    

6-058

銅・珪砂混合蒸気における定圧比熱および抵抗率の理論計算による導出

◎中村晃也・兒玉直人・高橋明里・横水康伸（名古屋大学）・山村直希（太平洋精工）

電気自動車用DCヒューズの遮断容量の向上が求められている。従来，DCヒューズには消弧剤として珪砂が用いられてきた。筆者らは，珪砂に加えて高分子材料を配置することで，DC遮断過程でのアーク抵抗の上昇を目指している。最近では，DCアーク抵抗の上昇要因分析に着手している。現在，その分析の一環として，銅，珪砂および高分子(PMMA，PA66など)混合蒸気における抵抗率や定圧比熱といった熱力学・輸送特性を計算している。本報告では，基礎特性の把握を目的とし，特に銅および珪砂混合蒸気の抵抗率および定圧比熱を述べる。

6-059

珪砂-高分子材併用時の直流アーク抵抗上昇効果の検討 −Silicone平板設置条件−

◎竹中 湧・中村晃也・兒玉直人・横水康伸（名古屋大学）・山村直希（太平洋精工）

電気自動車用 DC ヒューズの遮断容量の向上が求められている。筆者らは，これまでに，珪砂-高分子材料(PA66,PMMA,Silicone)製円筒併設によってアーク抵抗を上昇できることを示してきた。さらに，アーク抵抗上昇要因として (i) 円筒孔壁によるアーク導電径の制限および (ii) 高分子蒸気混入によるアーク導電率の低下の 2 つを示してきた。本報では，高分子材(Silicone)を配置した条件での DC アーク消弧実験を行った。形状は平板型のものを用いた。ゆえに，(i) アーク導電径を制限する効果がない。実験結果から，(ii) 高分子蒸気によるアーク抵抗上昇効果について検討したので報告する。

6-060

系統慣性等の低下に対応するための基盤技術開発（その1～事業概要～）

○草柳儀隆・保坂直貴・吉山和宏・森 健二郎・本庄昇一（東京電力ホールディングス）・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

再生可能エネルギーの導入量が拡大することによる課題として，電力系統の瞬間的な変動に対応する系統慣性（以下，慣性）等の低下が挙げられる。慣性等が低下すると，系統事故時の安定性が損なわれ，広域停電へとつながる恐れがある。再生可能エネルギーの導入拡大と電力系統の安定維持を両立するため，慣性等を推定して系統運用に活かすことのできる手法を取りまとめる必要がある。 将来の再エネ大量導入社会に向けて目指すべき電力運用形態として，電力系統の安定性，とりわけ慣性等の状態を推定して系統運用につなげる視点から，慣性等の低下に対応するための基盤技術開発について検討を進めている。本論文では本事業の検討内容の概要について報告する。

6-061

系統慣性等の低下に対応するための基盤技術開発－（その2～系統慣性等常時監視システムの開発～）

○立松正幹・澤崎正明・前川友哉（関西電力）・上田順一（近計システム）・神崎龍造（関西電力送配電）・吉山和宏（東京電力ホールディングス）

再生可能エネルギーの導入量が拡大することによる課題として，電力系統の瞬間的な変動に対応する系統慣性（以下，慣性）等の低下が挙げられる。慣性等が低下すると，系統事故時の安定性が損なわれ，広域停電へとつながる恐れがある。再生可能エネルギーの導入拡大と電力系統の安定維持を両立するため，慣性等を推定して系統運用に活かすことのできる手法を取りまとめる必要がある。  これまで，慣性の推定・安定度の監視は，オフラインでかつ散発的に行っていた。今回，東日本50Hz系統・西日本60Hz系統の状態をより正確に把握するために，慣性の推定・安定度の監視をオンラインで行うシステムの開発を行った。

6-062

系統慣性等の低下に対応するための基盤技術開発（その3～系統慣性推定手法の精度向上について～）

○伊是名篤志・本郷賢和（九州電力）・守末 奨（九州電力送配電）・草柳儀隆（東京電力ホールディングス）・佐藤智彦（東京電力パワーグリッド）・中地芳紀（中部電力）・松原 貢（中部電力パワーグリッド）・三谷康範（九州工業大学）

再生可能エネルギーの導入量が拡大することによる課題として，電力系統の瞬間的な変動に対応する系統慣性（以下，慣性）等の低下が挙げられる。慣性等が低下すると，系統事故時の安定性が損なわれ，広域停電へとつながる恐れがある。再生可能エネルギーの導入拡大と電力系統の安定維持を両立するため，慣性等を推定して系統運用に活かすことのできる手法を取りまとめる必要がある。慣性をリアルタイムに把握するため，2020年4月からオンラインデータの蓄積と分析を開始しているが，慣性推定に用いる位相角データの組み合わせにより慣性推定値が過大となるケースが見られたことなどから，推定精度の向上に取り組んだ結果について報告する。

6-063

系統慣性等の低下に対応するための基盤技術開発（その4～多項式近似によるRoCoFおよび系統慣性の推定結果について～）

○保坂直貴（東京電力ホールディングス）・佐藤智彦（東京電力パワーグリッド）・伊是名篤志（九州電力）・守末 奨（九州電力送配電）・中地芳紀（中部電力）・松原 貢（中部電力パワーグリッド）・三谷康範（九州工業大学）

電力系統の慣性を推定する手法については国内外で様々な検討がなされている。その中で電力中央研究所報告書にあるように電力系統に電源脱落等のイベントが発生した際の周波数の変化を5次の多項式によって近似することで，事故直後の周波数変化率（RoCoF：Rate of Change of Frequency）およびRoCoFを用いた慣性の推定を行う手法もある。そこで，電力中央研究所の報告にある手法（以下、本手法）を本技術開発事業の中で設置したPMU（Phasor Measurement Unit）から得られる周波数データを用いて電力系統に発生した系統イベントを対象にRoCoFおよび慣性の推定を実施した。以下にその結果を報告する。

6-064

系統慣性等の低下に対応するための基盤技術開発（その5～系統慣性推定手法による推定結果の評価～）

◎山崎 渉・久芳史朗（中国電力ネットワーク）・飛田雄一（東北電力ネットワーク）・中地芳紀（中部電力）・松原 貢（中部電力パワーグリッド）・三谷康範（九州工業大学）

再生可能エネルギーの導入量が拡大することによる課題として，電力系統の瞬間的な変動に対応する系統慣性（以下，慣性）等の低下が挙げられる。慣性等が低下すると，系統事故時の安定性が損なわれ，広域停電へとつながる恐れがある。再生可能エネルギーの導入拡大と電力系統の安定維持を両立するため，慣性等を推定して系統運用に活かすことのできる手法を取りまとめる必要がある。 これまでの研究において，位相計測装置から得られる位相情報と系統間の潮流情報から広域動揺モードを観測し，系統慣性を数値化することを可能とした。本論文ではオンラインで並列状況が把握できる発電機データを基に慣性の積上げデータを作成し，位相・潮流情報を用いた系統慣性推定結果との比較，考察を行う。

6-065

系統慣性等の低下に対応するための基盤技術開発（その6～系統安定度推定結果の傾向～）

○栄田真吾・中地芳紀（中部電力）・佐藤 慧（中部電力パワーグリッド）・山崎 渉（中国電力ネットワーク）・飛田雄一（東北電力ネットワーク）・三谷康範（九州工業大学）

再生可能エネルギーの導入量が拡大することによる課題として，電力系統の瞬間的な変動に対応する系統慣性等の低下が挙げられる。系統慣性等が低下すると，系統事故時の安定性が損なわれ，広域停電へとつながる恐れがある。再生可能エネルギーの導入拡大と電力系統の安定維持を両立するため，系統慣性等を客観的に計測して系統運用に活かすことのできる手法を取りまとめる必要がある。 NEDO委託事業「再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代電力ネットワーク安定化技術開発」では50Hz系，60Hz系それぞれ PMUによる計測データを用いた常時観測システムを構築し，常時の広域動揺モードから慣性エネルギーの他，系統安定度（微小外乱に対する同期安定性）についても推定を試みている。 本稿では，上記常時監視システムによって得られた中西60Hz 系統の系統安定度推定結果から，平休日や天候による違いなどの傾向について考察を行ったので報告する。  

6-066

系統慣性等の低下に対応するための基盤技術開発（その7 ～系統安定度推定結果の評価方法～）

○中地芳紀・栄田真吾（中部電力）・佐藤 慧（中部電力パワーグリッド）・山崎 渉（中国電力ネットワーク）・飛田雄一（東北電力ネットワーク）・三谷康範（九州工業大学）

NEDO委託事業「再生可能エネルギーの大量導入に向けギーの大量導入に向けた次世代電力ネットワーク安定化技術開発」でPMUによる計測データを用いた常時観システム構築し，常時の広域動揺モードから系統安定度（微小外乱に対する同期安定性）について推定を行っている。本稿では、上記常時監視システムによって得られた中西 60Hz 系統の系統安定度推定結果の妥当性について，同期発電機の運転状態を考慮した指標を用いて評価した結果について報告する。

6-067

仮想同期発電機制御による多機系統過渡安定度分析と指標化

◎上﨑和沙・大内和樹・平瀬祐子（東洋大学）・織原 大・喜久里浩之・橋本 潤（産業技術総合研究所）

系統安定化機能を備えた系統連系インバータ(スマートインバータ)経由の分散型電源導入が急速に拡大し，電源間の相互影響は複雑化し，系統安定性の定量化と評価が困難になっている。したがって本研究では，系統安定性を過渡理論によって定量化するため，仮想同期発電機制御による複数分散型電源のシステムを想定し，主電源とそれ以外の電源の2機系統に縮約した。双方の電源の機械的トルクを，慣性，減衰，同期トルク，およびガバナ効果に数学的に分解し，これらの要素によって決定される系統周波数と，主電源の機器定数やインバータの制御変数の間の定量化指標を作成した。MATLAB / Simulinkを使用して過渡時間領域と周波数領域の両方で解析を行った。

6-068

電圧安定度向上のためのFACTS機器最適配置法

◎髙橋朋章・森 啓之（明治大学）

近年、主に米国でFACTS(Flexible AC Transmission System)機器の系統への積極的導入が進んでいる。FACTS機器は新規の送電線を設置せずに動態安定度、過渡安定度、電圧安定度の向上及び電力潮流、母線電圧の制御を高速に行うことが可能である。FACTS機器の課題として非常に高価であるために、大量導入に向かない点がある。そのため、設置場所と出力をどのように決定することが問題となっている。本稿では、系統の電圧安定度の向上を目的とし、高性能進化的計算であるBSO(Brain Storm Optimization) を用いたFACTS機器最適配置法を提案する。

6-069

位相計測を用いた系統慣性推定手法における制動の影響評価

◎西川倫太郎・林 優樹・玉木貴裕・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

近年，太陽光発電などの慣性を持たない再生可能エネルギーの導入増加により電力系統の不確実性の増加が懸念されており，擾乱が発生した際の対策のために系統の状態をリアルタイムで把握する必要がある。本研究では位相計測装置から得られる位相情報と系統間の潮流情報から広域動揺モードを観測し、系統慣性の推定を試みている。  本稿では，西日本電力系統において推定された系統慣性が発電機制動にどのような影響を受けるかを確認，評価している。WEST10機系統モデルを用いて発電機の制動係数を変化させた場合の推定系統慣性の変化を確認した。その結果、制動係数の増加に伴い同期化力が増加することにより推定系統慣性が増加することが分かった。

6-070

臨界トラジェクトリー法の高速化に関する検討

◎稲見啓生・餘利野直人・造賀芳文・佐々木 豊（広島大学）

過渡安定度の指標の一つとして，臨界故障除去時間（CCT）がある。CCTとは、系統に生じた故障の除去を行う際、再び安定な運用状態に戻ることができる限界の故障除去時間のことである。CCTを正確に求めることによって、電力系統の過渡安定度を定量的に評価できる。 著者らは、CCTを高速かつ高精度に求めることができる臨界トラジェクトリー法を提案した。さらに、新たな終端条件（PEBS条件）を導入した解法を提案し、シミュレーションによりその有効性を示した。 本稿では、新たな終端条件を導入した解法において、臨界トラジェクトリーの分割数と計算精度、及び計算時間等の関係を検討し、高速計算の可能性を検証する。

6-071

広域電力系統の過渡安定性解析モデルの検討

◎山下大輔・福井伸太（東洋大学）

2050年を想定した将来の電力システムの過渡安定性を解析し、太陽光発電などの慣性力を持たないインバータ/コンバータ依存電源（Inverter-Based Generation：IBG）が大量導入された広域系統において系統の過渡安定性を確保する手法を検討する。 本研究では、3つの系統が広域的に連系されたモデルを構築し、広域系統における過渡安定性の定式化を行い、シミュレーションによって解析を行う。これによって、IBGが大量導入された広域電力系統の系統擾乱時の様相を解明するとともに、そのような電力系統で過渡安定性をどのように確保するのか、既存の同期発電機と再エネ電源の最適な制御と運用方法を検討し実効性のある手法を明らかにする。

6-072

太陽光発電導入時のPEBS法を用いた同期化力の推定

◎水野優希・田中和幸・小出 明（富山大学）・杉本仁志（北陸電力）

近年，再エネの大量導入に伴い，既存の同期発電機の並列台数が減少し，系統全体の同期化力の低下が懸念されている。同期化力の低下によって安定送電可能電力や周波数制御への影響が懸念されており，その定量評価が課題となっている。そこで本研究では，PV連系に伴う同期発電機の同期化力係数を容易に求めるため，過渡安定度解析の高速解法の一つとしてよく知られているエネルギー関数PEBS(Potential Energy Boundary Surface) 法の適用を検討した。本稿では，その結果を報告する。

6-073

SSIを用いた定態安定度向上効果に関する検討

◎小石純平・餘利野直人・造賀芳文・佐々木 豊・関崎真也（広島大学）

近年，太陽光発電(Photovoltaic Power Generation; PV)の導入量が拡大し，電力系統の安定性が関連する様々な課題が発生している(1)。その対策としてGFMインバータの活用が提唱されている。著者らは単相インバータに擬似的な同期化力を持たせたGFMインバータ，単相同期化力インバータ(single-phase synchronous inverter:SSI)を提案した(2)。 研究目的はPV大量導入により安定度への影響が懸念される系統において同期化力インバータなどの安定化装置が定態安定度に与える影響を検討することである。本稿では，定態安定度解析の手法について検討し，提案型SSIによる定態安定度の評価手法を提案する。また，発電機模擬方法によるSSIの効果をシミュレーションにより検証する。

6-074

PCSの無効電力制御のパラメータ設定による電力系統の過渡安定性への影響

◎梅村一輝・辻 隆男（横浜国立大学）

地球温暖化対策の一環として太陽光発電(PV)などの変動性再生可能エネルギー(VRE)の導入が拡大し、電力系統の安定運用の観点から様々な問題の生じることが懸念される。一方で太陽光発電(PV)を系統に接続する際に用いられるパワーコンディショナー(PCS)は有効電力・無効電力を高速に制御できる機能を有しているため，PCSを用いて系統内の需給バランスや電圧変動を補償する手法が提案されてきた。本論文ではPCSによる無効電力制御のドループの値の設計が過渡安定性に与える影響について電力系統瞬時値解析のプログラムによる解析を行い、その結果ドループの値が高すぎても低すぎても安定性に影響が出た。つまりドループの値を適切に設計する必要がある。

6-075

系統慣性評価へのクープマンモード分解の適用に関する一検討

○薄 良彦（大阪府立大学）・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

本報告では系統慣性のデータに基づく評価をクープマンモード分解により実行する方法を紹介する．

6-076

大規模な発電機起動停止計画問題に対する部分問題分解に基づく高速解法

◎松永龍弥・柴田秀哉（三菱電機）

<p>需給バランス及び発電機運転上の制約を満たしつつ発電コストの低い運転計画を求める問題は，起動停止計画問題と呼ばれ，多くの研究が行われている．起動停止計画問題は混合整数計画問題であるため，発電機台数が増加すると計算時間が大幅に増大する．そこで本研究では，大規模な起動停止計画問題を短時間で求解可能な手法を提案する．提案手法では，計画対象の発電機を複数の発電機グループに分け，グループ毎に問題を分解することで，解くべき最適化問題の規模を低減させ，短時間での求解を図る．数値実験により，提案手法と単純な混合整数計画法との比較を行い，その有効性を確認した．</p>

6-077

周波数変動を考慮した動的確率潮流計算

◎高木育博・中西要祐・岩村一昭・周 意誠（早稲田大学）・鈴木亮平・藤本 久（富士電機）

主電力化に向けて電気系統への再生可能エネルギーの大量導入が推し進められている。しかし、再生可能エネルギー源の一つである風力発電は「出力が確率的に変動する不安定な電源」という特徴を持つ。これにより、大量導入時には電力系統内で上位系統における周波数調整力の不足、配電系統における電圧の上昇などの課題が発生することが懸念され、これらに対する対応策の技術開発が行われるようになっている。 本稿は電力系統における出力変動、不確実性を考慮した「確率的潮流解析」を提案し、系統の周波数変動を考慮に入れ、発電機特性、負荷特性も含めた潮流計算である「動的潮流計算」に組み込み、シミュレーションを行った。

6-078

An Online Inertia Estimation Method of Power System Using Optimization During Disturbance Based on PMU Measurements

◎Yukai Wang・Akihiko Yokoyama（The University of Tokyo）

In recent years, a large number of renewable energy power generations with no inertia are connected to the power grid. Therefore, it is necessary to know inertia information of power system, so as to evaluate the potential instability risk of power system and deal with it accordingly. This paper presents a method of online estimation of system inertia during disturbance using simple optimization, which is able to achieve accurate estimates using data from parts of the disturbance period. Then the effectiveness of the method is demonstrated by performing simulations of multiple scenarios for the IEEE New England 39-bus test system.

6-079

風力発電連系量の変化を考慮した基幹系統における調相設備の配置に関する基本的検討

◎石黒雄貴・斎藤浩海（東北大学）

風力発電等の再生可能エネルギー電源（以下、再エネ電源）が大量に系統連系された場合、再エネ電源の出力変動や、再エネ電源普及に伴う稼働火力機台数の減少により、電圧品質の維持が難しくなり、調相設備の増強が必要になると考えられる。本稿では、電力潮流計算を用いて、風力発電の連系量増加が、基幹系統各所の電圧に及ぼす影響を明らかにし、調相設備の配置と電圧制御効果に関して基本的な検討を行った。その結果、風力発電の連系量増加により、系統各所の電圧が低下することを確認した。また、ある特定の風力発電連系量のみを想定して調相設備の容量及び配置を決定することは、連系量の時間的推移を考えると不十分であることが分かった。

6-080

アンサンブルニューラルネットワークを用いた電力系統の動的状態推定法

◎三輪陸人・森 啓之（明治大学）

本稿では，電力系統におけるアンサンブル学習(1)を用いた動的状態推定法を提案する。近年，電気自動車，再生可能エネルギーの普及，デマンドレスポンス，電力市場などの不確定な要因により，電力系統のセキュリティの劣化が懸念されている。この様な環境下では，動的状態推定が重要な役割を果たす(2)。電力系統の動的状態推定による予防制御は，その問題を解決できる有効な手段の一つである。本稿では，電力系統のリスクの特徴を抽出するパイロットバス(3)の考えに基づき，ノード電圧の動的状態推定を行う。

6-081

架空送電線のダイナミックレーティング適用による送電容量向上評価

◎添田彰人・熊野照久（明治大学）

現在一般に用いられている送電線の電流容量は、気象条件等を固定して算出されている。しかし、実際の架空送電線において気温や風速、日射量などは全て常に変動しているため、これらの影響によってその容量は時々刻々と変化しているものと推測される。ダイナミックレーティングとはそれらに追随して時間変化する電流値を算出する手法であり、従来では賄いきれない運用を実現できるという期待がある。本研究では仮想的な系統を考えることで24時間分の潮流計算を行い、過去の気象条件を用いつつダイナミックレーティングの有効性について結果を示している。

6-082

縮小空間法によるTSCOPFの高速化に関する研究

◎藏田遼介（広島大学）・久保川淳司（広島工業大学）・餘利野直人・造賀芳文・佐々木 豊（広島大学）

電力系統は安全かつ経済的に運用されることが望まれる。当研究室では慣性中心に対する位相角の大きさを制約条件に加えることにより，想定故障後の過渡安定度を考慮した最適潮流計算法(TSCOPF)の研究を行ってきた。 現在，内点法と数値離散化法の組み合わせはTSCOPFを解くために利用されている。しかし，数値離散化後のTSCOPFは大きな非線形計画問題であり，計算時間が長くなる問題がある。 縮小空間法は大規模な非線形計画問題の内点法へ適用され，計算時間の短縮が行われている。本研究では，計算負荷を取り除く方法として縮小空間法を用いることでTSCOPFの計算時間の短縮を目的とする。

6-083

電力関係の用語について

古関庄一郎（古関PE事務所）・○大島正明（大島研究所）

無効電力は送電で重要な役割を果たすのに無用なものであるように「無効電力」と呼ばれるのか。「無効電力」という用語が決められた経緯を調べた。電気学会電気工芸委員会発行の「電気工学術語集」で明治37年発行の第1版にはなく，大正14年発行の第3回増補で”reactive power”の対応用語として定められていることが分かった。「無効電力」とされたのは”wattless power”という英語によるものと推定された。”reactive power”という本来の性質が表されていない残念な用語になっている。 このほかにも電力関係の用語には不適切に思われるものがあり積極的に見直していく必要があると思われた。

6-084

複数のインバータを含む瞬時値解析における計算時間の評価

◎堀内俊太郎・佐野憲一朗（東京工業大学）・野田 琢（電力中央研究所）

インバータを含む瞬時値解析では，計算時間刻みを小さく設定する必要があり，電力系統大の解析に適用しようとすると計算量の増加が課題となる。これに対し，計算時間刻みを大きく設定できる線形補間法や電圧補間法が提案されている。本研究では，複数台のインバータを含む解析対象に対し，これらの手法を適用した場合の計算時間を評価した。線形補間法では補間処理に伴う求解計算数が増加するため，インバータの台数の二乗に比例して計算時間が増加した。一方，電圧補間法では求解計算数は増加しないため，インバータの台数に比例して計算時間が増加することを明らかにした。

6-085

限流リアクトル段数と小水力誘導発電機系統並列時の電圧低下低減効果に関する関係性

◎吉田 匠（関西電力）・田畑 啓（エネゲート）

小水力発電所には低廉な誘導発電機が採用されることが増えてきている。同発電機は系統並列時に大きな突入電流が生じるため，系統条件によって瞬時電圧低下対策が必要になる。しかし， 1段の限流リアクトルでは電圧低下を規定値以内に抑えることができず，限流リアクトルを2段，3段と接続することで1段時より電圧低下を低減させて系統接続した事例もある。そこで，一般的な電圧低下対策である限流リアクトル導入にて，系統の諸条件と電圧低下率の関係性をEMTPシミュレーションにて明らかにした。リアクトルの段数を増やすことで電圧低下率低減効果は向上するが，配電線のインピーダンスを小さくした場合と比較して効果は小さいことが判明した。

6-086

同期発電機の軸トルク解析におけるXTAPとEMTP-RVの結果比較

○宜保直樹・菊間俊明・青木 廉（電力中央研究所）・前島 努・関場陽一・竹村昌彦（電力計算センター）

本稿では，紀伊水道HVDCにかかわる検討を含め，長年用いられて実績のあるEMTP-RVとの比較により，同期発電機の軸トルク解析におけるXTAPシミュレーション解析結果の妥当性について検討した結果を報告する。

6-087

鉄道き電系統を活用したPV導入時の系統混雑低減効果の評価に向けた特高系統モデルの構築

◎中村 将・福田嵩大・芳澤信哉・林 泰弘（早稲田大学）・林屋 均（東日本旅客鉄道）

特高系統では，系統混雑による容量制約から新たにPVを導入できない箇所がある。一方で，鉄道き電系統を鉄道負荷以外で活用することが近年注目されている。鉄道き電系統は特高系統から受電しており，また比較的，特高系統と併設していることから，鉄道き電系統を活用することによる系統混雑の軽減や，さらには PV 導入量の拡大が期待できる。 しかしながら，特高系統の情報は多くが非公開であることなどから，送電線の混雑緩和を評価するのが困難となっている。そこで本研究では，鉄道き電系統との連系を見据え，公開データに基づき，系統混雑が発生している地域を模擬する特高系統モデルを構築し，大規模PV発電の導入による電力潮流変化を評価した。

6-088

系統連系変換器の高調波共振安定解析と補償制御

◎関口 慧・真木康次（東芝インフラシステムズ）・石黒崇裕（東芝エネルギーシステムズ）

系統連系変換器では，系統インピーダンスと変換器制御の相互作用によって電圧共振が発生し，運転継続困難になる問題がある。共振様相は連系する系統状態に大きく依存するため，事前に得られる情報から共振発生リスクを十分に把握し，有効な対策を講じる必要がある。本論文では，系統連系変換器の高調波共振安定解析法を示し，ディジタルフィルタと仮想直列インピーダンスを用いた補償制御の効果を論じる。

6-089

水文ネットワークを活用したマイクロ水力発電における時空間情報に基づいた発電ポテンシャル評価法

◎栗木 涼・中村洸喜・岩村一昭・中西要祐（早稲田大学）

未電化地域における電化率改善に向けて、未電化地域に未開発の水資源が豊富に存在していることから、低廉で環境負荷の低いマイクロ水力発電の導入が注目されている。一方で、マイクロ水力発電の発電量は河川流量に依存しているため、季節変化や地形条件によって発電ポテンシャルが変化し、発電量の安定性に欠けることが導入の障壁となっている。時間・地形を同時に考慮した複数の発電所をクラスターとして活用したネットワーク型の運用方法によって電力の安定供給が可能である。本研究ではマイクロ水力発電ネットワークによる電力供給を想定し、発電所の適地検討に有効な時間・地形を考慮した発電ポテンシャルの評価法を提案した。

6-090

JR東日本の自営電力系統における送電損失低減に関する一検討

○吉永 孝・西 健太郎・松﨑俊太郎・橋本 慎（東日本旅客鉄道）

東日本旅客鉄道株式会社（以下、JR東日本）は、水力および火力発電所を有しており、水力発電所の電力は架空送電線を経由して、主に首都圏エリアの負荷へ供給している。また、水力発電を有効に活用しながら送電線における無効電力の消費に対応させるため、送電元の水力発電所を高い電圧、受電側の首都圏エリアの電圧を公称電圧より低い電圧で運用している。しかし、送電距離が長いため送電損失が発生しやすくなっており、これまで送電損失を低減する方法について検討を行ってきた。本稿では、JR東日本の自営電力系統における現状の送電損失量を把握すると共に、首都圏エリアの電圧を高く変更した場合の送電損失の低減効果を明らかにするため、シミュレーションによる検討した結果について報告する。

6-091

主変圧器の励磁突入電流による調相設備への影響解明

◎小豆畑一成・齋藤雅史・鎌形公範（東日本旅客鉄道）

JR東日本自営系統は、自社で発電所を有しており、154kV機関送電線を中心に主に首都圏の鉄道、駅、駅ビル等に電力を供給しているが、変電所の変圧器を投入する際に、自営電力系統内に設置している静止形無効電力補償装置（STATCOM）に影響を及ぼす事象があった。当該変電所において、変圧器を加圧した際の応動を測定することで、当該事象の原因究明と対策の検討を行い、自営電力系統の品質向上について検証したので報告する。

6-092

MILPとLPを用いた需給運用モデルにおけるCO₂排出量算出の精度評価

○戸塚奈保子・森田和美・山口順之（東京理科大学）

今後の日本では、出力変動の大きい再生可能エネルギーの導入拡大が期待されているとともに、CO2ネット・ゼロ社会に向けて、さまざまな対策が検討されている。これらの対策を定量的に評価するためには、日本全国の少なくとも一年間を対象にした、将来の電源構成シナリオに対する大規模な電力需給運用モデルのシミュレーションを行うことが必要である。本論文では、詳細モデルで使用されることの多いMILPと、簡易モデルのLPそれぞれで需給運用におけるシミュレーションを計算する。LPでは0-1のバイナリ変数表現を、0から1の実数変数で表して計算を行い、CO2排出量の値を比較することで、精度の評価をしている。

6-093

電源起動停止計画問題における LP 緩和法を用いた燃料費の推計

◎山下 諒・戸塚奈保子・山口順之（東京理科大学）・真鍋勇介・益田泰輔（名城大学）

再エネの導入が進めば進むほど，稼働率が低い発電所であっても「調整する能力」を持っている発電所は，停電なく電気を供給する上で重要な役割を担う観点から評価する必要がある。調整力のある電源を定量的に評価するためには発電機起動停止計画分析手法を用いて市場シミュレーションをする必要がある。近年は太陽光発電の大量導入や電力自由化が進み考慮すべき事項が増加し，より複雑な問題になっている。20年後の発電起動停止計画を解くと仮定した場合，少々の精度を犠牲にしても多くのシナリオで分析した方が政策的含意を得やすい。そこで本論ではより複雑なMILPのUC問題を高速な近似法であるLP緩和法で解いて精度を比較する。

6-094

リスク鋭感的価値尺度に基づく電力系統の供給信頼度評価

◎嶺川宙貴・宮内 肇（熊本大学）・三澤哲也（名古屋市立大学）・廣山康貴（熊本大学）

供給信頼度の指標として、停電時間の確率分布の期待値であるLOLEなどが一般的に用いられる。しかし、近年の再生可能エネルギーの大量導入による電力系統運用における不確実性の拡大のために、停電時間の確率分布が従来とは変わることが想定され、期待値だけで供給信頼度を評価することがリスク評価として不適切になるかもしれない。そこで、我々は確率分布を考慮することができるリスク鋭感的価値尺度(RSVM)を用いた供給信頼度指標を提案している。今回は、再生可能エネルギーを含む系統に対し、RSVMを用いた供給信頼度指標を適用し、提案している供給信頼度指標の有効性を検証する。

6-095

蓄電池システムと火力機による需給計画更新・運用手法の改良

◎吉岡大晶・高橋康平・益田泰輔（名城大学）・Udawalpola Rajitha（ルフナ大学）・大竹秀明（産業技術総合研究所）

将来の電力系統の需給均衡維持のため，太陽光発電(PV)の不確実性を考慮し，PV抑制電力を削減する必要がある。先行研究では，蓄電池システムの充放電計画と発電機の起動停止計画を用いた需給計画更新・運用手法について提案・評価を行い，特定の日間の需給運用シミュレーションの結果より，提案手法によって需給不均衡の発生する可能性を削減することが可能であることを明らかにした。本研究では，先行研究で提案した需給計画・運用手法の有効性を長期間のシミュレーションで確認する際に発生した不具合を解消するため，計画・運用手法の改良を行った。あらゆる条件・時間断面においても適用可能な計画・運用手法の確立を図る。

6-096

自然変動電源と蓄電池の導入拡大が非同期電源比率に及ぼす影響評価

○矢部邦明・林 泰弘（早稲田大学）

インバータを介して系統に連系される自然変動電源や蓄電池は，一般に同期機のような慣性力を持たないので，導入量の拡大によって，系統事故後の周波数維持が困難になる恐れがある。このため，2030年以降の電源構成等を想定し，全国9地域の1時間平均1年分の非同期電源比率(SNSP)を計算した。現状では，九州と北海道で60%程度が最大となっているが，太陽光・風力発電が2029年度供給計画の1.5倍となった状況で，コスト最小となるように火力・揚水式水力・蓄電池の出力や，出力抑制量等を最適化したところ，九州においてSNSPの最大値が76%となり，年間1,343時間で60%以上となるなどの結果が得られた。

6-097

低炭素・脱炭素時代を見据えた電力・エネルギー需給分析

○本田敦夫・手塚孔一郎（大阪ガス）・荻本和彦・岩船由美子・片岡和人（東京大学）

東京大学エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門（ESI）は、当初の設置期間 (Ⅰ期＝2018年度～2020年度)も終了が近づき，Ⅱ期目(2021年度～2023年度)へと活動が継続することとなった。本稿では、ESIにおける東京大学と大阪ガスの共同研究について、Ⅰ期での大阪ガスの活動を振り返るとともに、Ⅱ期での今後の活動を展望する。また、低炭素・脱炭素時代を見据え、Ⅱ期に向けて既に開始している予備的検討として、ESIの最新の電力需給モデルを用いて、将来の再エネの導入量に応じた複数のシナリオで電源運用や電力需給を分析した結果を紹介する。

6-098

一般家庭の電力消費傾向の統計的分析に関する一考察

○松田勝弘・山口哲一（東北電力）・友部 修・渡部瑞貴・足立昌宏・永井雅彰（日立製作所）

近年，スマートメータの普及により，その計測データの配電系統の運用管理高度化や需要家を束ねて運用するアグリゲータの運用管理への活用が期待されている。特に，配電系統ではフィーダ単位だけでなく，柱上変圧器や区間単位といった需要家軒数の異なる単位での需要予測ニーズがあり，それぞれの軒数規模に応じた精度の高い需要予測が必要となっている。アグリゲータにおける需要予測についても，束ねる需要家軒数が異なるため，同様のことが言える。本予稿では，需要予測の学習データとなる需要家個々の需要データの日々のばらつきと束ねる需要家軒数毎の平滑化効果の分析例を紹介し，需要家の軒数規模に応じた予測精度への影響について考察する。

6-099

広域多地点の気象データを活用した電力需要予測技術と季節性の評価

◎志賀慶明・進 博正・柿元 満・倪 放・喜 楽楽・宮地祐樹（東芝）

本発表では、広域多地点の気象データを活用した電力需要予測について報告する。電力需要は、気象量に大きく影響を受けることが知られている。エリア全体の需要予測の場合、広域の需要家の合計値として需要量を扱うため、広域の気象量を考慮する必要がある。本研究では、広域の気象量を考慮するため、機械学習の技法である一般化加法モデルとスパースモデリングを組み合わせた予測手法を提案する。提案手法の予測精度を需要の実績データおよび気象予測データを用いて評価した。気象量が電力需要に影響を及ぼしやすい夏季において、一地点の気象量を考慮した場合よりも広域の複数地点を考慮することにより、予測精度が改善していることを確認した。

6-100

需要シミュレーションツール住宅モデルの将来需要予測機能の開発

○上野 剛・篠原靖志（電力中央研究所）

著者らは、統計データや独自のアンケート調査結果等を用いて、町丁目レベル・コミュニティレベルの地域の需要カーブの特徴を表現でき、また各種のシナリオ分析等が可能な、新たなツールの開発を目指している。これまでに、国勢調査等の統計データを用いて日本全国の任意の地域の住宅部門を対象とした電力需要シミュレーションモデル並びに事業所モデルを構築し、試算を行うと共に、住宅用モデルについてはスマートメータデータを用いた精度検証を行ってきた。本論文では、全国500m地域メッシュの人口予測データを用いることで、任意の小地域の世帯数の推移等を考慮して将来電力需要を予測するための機能を開発し、試算結果を報告する。

6-101

実測データ類型化に基づく短期間の学習データを用いた商業需要家の翌日電力需要量予測手法

◎檜山勇人・植田 譲（東京理科大学）

再生可能エネルギー普及拡大に伴い，電力需要予測によるエネルギーマネジメントが必要である。本研究では少ないデータ数と計算量で予測を行い，かつ運用者が理解しやすい予測手法の開発を行った。 提案手法では電力需要データを固定成分，周期性成分，気温応答成分の3要素で分析し，スコアリングを行うことで需要家の類型化を行った。更に類型化した後の集団毎に，翌日予測値に用いる参照日の決定や気温応答による補正割合などを決定し，最適な予測モデルを構築した。 直近過去30日間のデータを用いて翌日の電力需要を予測したところ，最大電力需要付近で誤差が見られたが，需要家の業種やその規模に関わらず概ね予測できることを確認した。

6-102

季節別クラスタリングとニューラルネットワークを用いた住宅地域の翌日電力需要予測

◎吉岡 淳（東京理科大学）

この数年で，再生可能エネルギーによる発電が世界中で盛んになっているが，気象条件に左右される太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーでは，余剰電力や逆潮流などの問題がある。これらの問題を解決する1つの手段として，需要家アグリゲータや蓄電池の利用が有効である。したがって，蓄電池の運用計画やデマンドレスポンスの達成のために精度の高い需要予測が必要となる。本研究では，ニューラルネットワーク（NN）と季節ごとのクラスタリングを用いて数百世帯の住宅地域における翌日の1時間ごとの需要予測を行った。その結果，季節ごとに入力変数やクラスタリングを変更することで予測精度が向上した。また，季節ごとに学習期間を変更することで短い学習期間だが，若干精度の向上が確認できた。

6-103

電力地産地消に向けたスマートメータデータに基づく都市需要の日周期性を考慮した空間分布予測

◎明 祥吾・宮澤歩夢・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）

近年，都市においても家庭用太陽光発電を中心とした分散型電源の普及が進んでいる。太陽光発電の大量導入は日中の余剰発電による過度な逆潮流を促し，既往の電力系統運用において新たな課題を生み出しつつある。電力の地産地消は，上記の課題を回避するための有望な考え方として現在注目を集めており、その効果的な実現には都市の電力需要の遍在状況を正確に予測することが重要となる。本稿では、近年導入が進んでいるスマートメータによって計測される電力量の過去実績を用いて都市内における電力需要の空間的分布を予測する枠組みを検討し、地域特性と予測精度の関係性を議論する。予測にあたっては、電力需要の日周期性に注目することにより、予測精度の向上を図る。

6-104

人の行動データを活用した電力需要予測の高精度化に関する一検討

◎岩本美帆・香西将樹・南 裕也・田中 徹（日本電信電話）

近年，再エネの大量導入に向けて発電量に合わせて分散型リソースを制御し，発電したエネルギーを地産地消するような需要家側での需給調整に期待が高まっている．従来，電力需要予測は電力会社管内など広域を対象とした予測が多く実施されているが，エネルギーの地産地消を考えると，ビル単位など，より狭域で需要を精度よく把握し制御することが重要となる．しかし，狭域になると含まれる需要家特性が需要に大きく影響し，従来の予測では昨今のコロナ禍における在宅勤務の急増など過去に経験のない状況には追従できない．本稿では人の行動が電力需要に与える影響を評価し，電力需要予測の高精度化に有効であることを明らかにした．

6-105

季節を考慮した最大電力需要予測

◎佐々木秀彰・浦野昌一（明治大学）

私達の日常生活は電力で成り立っている。その電力は日々、電力会社が需要想定を行って発電計画されている。電力は貯めることのできない性質を持つため、余剰電力を減らすためにも需要予測は重要である。 そこで本稿では、予測特性の異なる統計学的手法の重回帰モデルと機械学習的手法のランダムフォレストを組み合わせて、季節ごとの予測モデルを構築し、1日の最大電力需要量予測を行い、リスク低減を目指す。

6-106

変動型自然エネルギー電源の調整力を活用した需給調整による周波数変動低減の効果検証

◎辻井佑樹・黒田英佑・逢見翔太（日立製作所）

変動型自然エネルギー（VRE）電源が連系される系統では，VREの出力変動や同期発電機の連系量減少により周波数変動が増加する可能性がある。そこで，従来は出力調整されていなかったVREにも，出力調整機能を備えることが求められてきている。基本的にVREは日射量や風速による最大出力で運転しているため，出力の下げ調整は常に可能である。一方で，出力の上げ調整はできないという課題がある。本稿では自端制御と負荷周波数制御において，VREでも上げ調整と下げ調整の双方が可能な運転をした上で出力調整した場合の検討結果を報告する。

6-107

風力発電とのバランシンググループにおける可変速揚水発電機の調整力としての運転手法 ―30分計画値同時同量のための出力制御―

◎稲垣舞子・金子曜久・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）・簑津真一郎（電源開発）

主力電源として風力発電機を活用するためには，その不安定な出力に対する調整力を確保し，計画発電を実現する枠組みの構築が必要となる。筆者らはこれまで，調整力として可変速揚水発電機に着目し，風力発電機群(WF)とのバランシンググループを対象に，WF出力の不確実性を考慮した計画値作成手法を検討してきた。本稿では計画値同時同量の達成に向け，作成した計画の下，WF出力予測誤差を補償するための可変速揚水発電機の出力制御手法や制御周期が，インバランスへ与える影響の評価を行う。数値計算結果から，蓄積したインバランスおよび次断面で発生し得るWF出力予測誤差を考慮した制御を1分周期で行うことで効率的なインバランスの低減が可能であることを確認した。

6-108

電力系統における需給制御信号の電気自動車への2-レベル割当法の検討

◎武 彧丞・横山明彦（東京大学）

近年、環境問題により、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギー電源が電力系統に大量導入されている。このような電源の出力は気候条件に依存するため、予測が困難であり、需給バランスが崩れる可能性が高くなっている。この問題を解決するために、最近導入量が増加している電気自動車の蓄電池を大量に利用できるものとし、需給バランスのための制御信号を、アグリゲーターを介して電気自動車へ配分する2-レベル割当法を提案する。本稿では、再生可能エネルギーを導入した系統において、通勤用電気自動車の走行状況に基づいた割り当て法を提案しシミュレーションを行い、提案した方法の有効性を確認している。

6-109

PVおよび風力発電の出力制御と既設発電機のLFC制御との協調に関する経済性の検討

○片岡和人・占部千由・荻本和彦（東京大学）

太陽光発電および風力発電の出力制御について、その効果と経済性について述べる。AGC30モデルを使用し、PVと風力のdroop制御の調定率・不感帯と既設発電機の負荷周波数制御との組み合わせについて検討した。

6-110

UKFを用いたモデル予測形負荷周波数制御に関する研究

◎王 偉朝・餘利野直人・造賀芳文・佐々木 豊（広島大学）

太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの導入により，近年の電力システムの周波数制御は難しくなりつつある。このため電力システムの複雑さと過酷な環境に基づく多くのシステム制御手法が登場した。MPC（Model Predictive Control）は，内部モデルに基づいて将来の状態を予測しながら現在の制御を決定する手法である。

6-111

緊急時電源制限と復旧時再給電を活用した信頼度制約付経済負荷配分制御

◎加藤大地・黒田英佑・小海 裕・渡辺雅浩（日立製作所）

再生可能エネルギー導入拡大に伴い，その適地偏在性から送変電設備の容量不足が顕在化している。風力発電の導入が進む英国では混雑管理コストが高い比率を占めている。国内でも先着優先に代わる新たな混雑管理方式が議論されており，今後，国内外で混雑管理の高度化に対する重要性は高まると考えられる。本稿では，故障直後の緊急時の電源制限と故障経過時の復旧制御を活用した信頼度制約付経済負荷配分制御方式を提案する。本方式により，平常時の送電容量を拡大し，信頼度維持とメリットオーダーを両立する混雑管理が可能となることを，将来の英国系統モデルを用いたシミュレーション検証で確認した結果を報告する。

6-112

DER群による需給調整力の提供可能量評価手法- 他社DERの調整力発動量の不確実性の考慮 -

◎久井智晴・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・酒井誠二・西島栄伺・平尾宏明（エナリス）

現在，需給調整市場に向けて需要家所有の蓄電池などの分散型エネルギー資源（以下DER）に注目が集まっている。DERは個別には小容量ながらも，多数・多種のリソースを集約することで，ある一定の調整力を提供できる可能性を秘めていると考えられる。著者らは今まで，同一配電系統内に存在する複数のDER群をある一つのアグリゲータ（以下AG）が統括管理している状況を想定し，電圧や電流容量制約の範囲内で当該DER群が提供可能な需給調整力を評価する手法を開発した。しかし将来的には，複数のAGが管理するDERが混在している状況も考えられ，あるAGによる評価に際して，他社のAGに属するDERの挙動を完全に把握することはできない。そこで本稿では，他社AGのDERによる調整力発動量の不確実性を考慮しつつ，自社のDER群の提供可能量を評価する手法を提案する。

6-113

風力発電統合電力システムにおける周波数と電圧品質を向上させる火力発電出力の決定法

◎孫 博強・斎藤浩海（東北大学）

従来では、火力発電出力を決定する際に、燃料費を重視する方法がメインである。ただし、風力発電を統合した電力システムにおいて、風力発電の導入により火力発電の稼働台数が減少し、系統の周波数·電圧調整能力の低下が問題になる。本稿では、潮流計算を含む周波数制御系モデルを用い、電力システムの周波数·負荷電圧変動を同時に評価指標として、モンテカルロシミュレーションにより火力発電出力の決定方法を提案している。提案法にて、火力発電出力の減少と同時に並列台数を変更し、慣性定数とガバナゲインが変わることを考慮している。シミュレーションで提案する決定法を試算した結果も本稿にて紹介する。

6-114

周波数変動対策インバータ制御アルゴリズムのオフラインシミュレーション比較

○上村浩文・高野幸雄・原田 慈（富士電機）・松浦隆祥・宮崎 聡・濱田 拓・森 健二郎（東京電力ホールディングス）

近年，再生可能エネルギー電源の導入量が急速に増加している。大量導入時の課題として，「電力系統の低慣性化」およびそれに伴う「電力系統の周波数変動の増大」が盛んに議論されている。多数の周波数変動対策インバータの制御アルゴリズムが提案されているが，それらの周波数変動対策効果を網羅的に比較した報告は少ない。今回，オフラインシミュレーション(PSCAD)により，対策制御アルゴリズムの内，電圧制御形のものを2種，電流制御形のものを3種抽出し，その周波数変動対策効果の比較を行なった。

6-115

インバータ電源への慣性模擬機能の実装手法の違いが周波数変動抑制効果に与える影響

◎織原 大・喜久里浩之・橋本 潤・大谷謙仁・高松尚宏・大関 崇・田岡久雄・竹中 清（産業技術総合研究所）・松浦隆祥・宮崎 聡・濱田 拓（東京電力ホールディングス）

インバータ連系電源(Inverter-Based Resource, IBR)の連系量増加に伴い，今後並列電源に占める同期発電機の比率が低下していくことが予想され，慣性減少による電力品質，系統安定性の劣化が懸念されている。これを補償する手段の一つとして，IBR による慣性模擬が注目されており，さまざまな実装手法が提案，検討されている(1)。実装形式はGrid- Following タイプ(GFL)とGrid-Forming タイプ(GFM)に大別される。本稿ではIBR の導入率と，GFL およびGFM の系統周波数の変動抑制能力の関係について数値シミュレーションにより評価した結果について報告する。

6-116

FFR制御を用いた系統連系インバータによる系統安定化効果の基礎検討

◎出口慶太・中島達人（東京都市大学）・三ツ木康晃・橋口 弘（東芝三菱電機産業システム）

再生可能エネルギーや電池電力貯蔵装置に用いられる系統連系インバータは，同期発電機とは異なり慣性を持たないため，系統事故時等に系統安定度を低下させる懸念がある。解決策としては，系統周波数偏差(Δf)と系統周波数の時間変化率(Rocof):に応じて系統連系インバータ出力電力を調整するFFR(fast frequency response)制御が提案されており，高速な系統安定化効果をもつものと期待される。本論文はFFR制御を用いた系統連系インバータの系統事故時の系統安定化効果を，シミュレーションで確認した結果を報告する。

6-117

メリットオーダーに基づくLFCにおけるEDC出力応動を考慮した指令値配分の効果

◎斉田 賢・笹田直希・今中政輝・栗本宗明・杉本重幸・加藤丈佳（名古屋大学）・山口 遼・秦 幸一郎・中地芳紀（中部電力）

大量導入が進む再エネ電源の出力変動に対応するため、負荷周波数制御（LFC）の性能向上について様々な研究が行われている。筆者らも、経済負荷配分制御（EDC）への出力応動中は同方向のLFC指令値は実質的に機能しないことを考慮し、EDC指令値に応動して出力がランプレート（RR）で変化する間、EDC指令値と同方向のLFC指令値をブロックする手法（以下、ブロッキング手法）を提案している。一方で、2021年度の需給調整市場の開設に伴い、LFCにおいても、kWh単価順（メリットオーダー（MO））を考慮した指令値配分が適用されることになる。そこで本研究では、MOに基づくLFCに対してもブロッキング手法が周波数制御上有効に機能することについて検証する。

6-118

メリットオーダーに基づく負荷周波数制御における蓄電池導入効果に関する基礎検討

◎笹田直希・斉田 賢・今中政輝・栗本宗明・杉本重幸・加藤丈佳（名古屋大学）・山口 遼・秦 幸一郎・中地芳紀（中部電力）

需給調整市場の開設に伴い、負荷周波数制御（以下、LFC）においても、kWh単価順に指令値を配分するメリットオーダ（以下、MO）が適用される予定である。一方で出力が不確実な再生可能エネルギー電源が大量導入された電力系統における周波数制御の向上方策として、現在、蓄電池の活用への期待が高まっている。そこで本研究では、MOによるLFCにおいて火力機と蓄電池とを組み合わせることを想定し、LFC指令値配分を行う際の蓄電池への配分順に応じた制御効果に関して検討した。電気学会AGC30を用いた数値解析により、LFC指令値のゼロクロス付近で蓄電池のみが応動するように制御すれば、周波数変動の抑制に効果的であることを示している。

6-119

周波数変動抑制を目的とした静的・動的量子化器を含む負荷制御系の性能と量子化幅の関係

◎佐藤明巳・斎藤浩海（東北大学）

周波数変動抑制のための負荷制御において、著者らは、負荷機器のオンオフの切り替えによる負荷制御方法(以下、オンオフ負荷制御)を検討している。オンオフ負荷制御は静的量子化器を用いた離散値入力制御であり、先行研究では、動的量子化器を応用することで周波数変動抑制効果が向上する可能性を示した。本稿では周波数制御シミュレーションにより、静的・動的量子化器を含むオンオフ負荷制御系の周波数変動抑制効果と量子化幅の関係について検討した。これにより、量子化幅の増加とともに静的量子化器を含むオンオフ負荷制御系の性能は低下するが、動的量子化器を含むオンオフ負荷制御系の性能は低下の度合いが小さいことが分かった。

6-120

Grid-Forming インバータ導入による系統周波数安定性への影響評価の基礎検討

◎志熊亮佑・金子曜久・芳澤信哉・石井英雄・林 泰弘（早稲田大学）・Hieu Nguyen Xuan・中島達人（東京都市大学）

電力系統の周波数安定性は，火力発電機などの同期発電機の慣性力や同期化力によって保たれているが，再生可能エネルギーの大量導入に伴い同期発電機の並列運転数が減少し，系統周波数安定性が低下することが考えられる。本稿では，この対策として研究が進められている，Grid-Forming（GFM）インバータ導入時の系統周波数安定性評価の基礎検討として，(1)PV未導入時，(2)従来インバータ導入時，(3)GFMインバータ導入時の3ケースに対し，発電機脱落による擾乱発生時の周波数時間変化を比較評価する。数値計算では，一般的に用いられる初期周波数変化率，最低周波数に加え，最低周波数に達するまでの時間，周波数変化率の時間変化などの観点からGFMインバータの系統安定性への寄与を評価した。

6-121

JSCAにおけるPCSの系統周波数調整支援機能に関する調査研究

○高野浩貴（岐阜大学）・合田忠弘（愛知工業大学）・串間洋喜・松井良輔・岩佐正明（スマートコミュニティ・アライアンス）

近年，自然変動電源に併設されるパワーコンディショナに，慣性や同期化力を模擬する機能を搭載する取り組みが精力的に推進されている。スマートコミュニティ・アライアンス（JSCA）では，2019年度に「再生可能エネルギーの大量導入時の電力系統の課題にかかる研究会」を設置し，電力系統の周波数維持に貢献する機能を備えた自然変動電源システムの現状と今後の動向について調査している。本稿では上記研究会の取り組みについて紹介する。

6-122

電力市場参加者の利益を高める入札行動を前提とした市場取引結果の簡易モデルによる考察

◎石川幸一郎・馬場旬平（東京大学）

電力自由化により、発電機の投資は電力市場からの収入に依存するようになる。電力市場の収入のみで、電源を経済的に維持できるか検討した先行研究では、多くの火力発電機の維持が難しくなることが示唆されている。しかしながら、先行研究においては、限界費用ベースの入札を前提に電力市場の収入を算定している。事業者が自らの利益を高めようとする入札行動を前提とすると、市場の取引結果は、限界費用ベースの入札を前提とした場合と異なる可能性がある。本稿では、簡易な電力市場モデルを用いて、各事業者が利益を最大化した際に均衡（ナッシュ均衡）したケース、供給コスト最小化（限界費用ベースの入札）したケース、社会効用が最大化されたケース、の3ケースの市場取引結果を算定して比較を行った。

6-123

カーボンニュートラル社会の実現に向けた日本のCO2排出削減戦略における分散型エネルギー源の普及に関する分析

◎神戸健太郎・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

気候変動問題や大気汚染問題の顕在化によって、世界各国で温室効果ガス削減への取り組みが進んでいる。日本においても、2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が発表され、2050年においてエネルギー起源のCO2排出量をネットゼロにする目標が掲げられている。この目標を達成するためには、住宅用PVなどの分散型エネルギー源の普及とCO2を回収・利用するCCUSが必要不可欠となると考えられる。一方で、分散型電源の大量導入下においては、現状の託送料金制度では送配電設備費用を適切に回収できないデススパイラル問題が起こると考えられている。本研究では、家庭部門を詳細化した技術選択モデルを用いて、CO2排出量制約下において、分散型電源とCCUS技術が低炭素化社会へ果たす役割を定量的に評価する。併せて、技術選択モデル内で託送料金制度を考慮することで、分散型電源の大量導入下における適切な託送料金制度を分析する。

6-124

時間的・地理的分解解法を適用した地域細分化型世界エネルギーモデルの開発

◎谷 佳樹・藤井康正・小宮山涼一（東京大学）

地球温暖化のような長期的な気候変動対策の評価にあたり、エネルギーモデルがこれまでに用いられてきた。その中でも世界エネルギーモデルは、様々な事象（エネルギー生産、転換・消費、輸送等）を考慮して、モデルに取り組む必要がある。そのため、既存の多くの世界エネルギーモデルは地理的解像度や時間的解像度の面で簡略化されてしまっている．時間的・地理的解像度を向上させようとすると、モデルが大規模化してしまい、計算処理困難に陥ったり、計算時間が長大化したりしてしまう恐れがある。そこで本研究では、モデルの大規模化に対応するために、時間的・地理的分解解法を適用した世界エネルギーモデルの構築を行った。

6-125

スクリーニングカーブ法に基づく需要家側の経済分析:太陽光発電および蓄電池の最大導入量に関する検討

◎入江陽介・星野 光・古谷栄光（兵庫県立大学）

近年，太陽光発電(PV)等を対象とした固定価格買取制度(FIT)の終了を見据え，PV普及政策の見直しが議論されている。そこでは，従来のような余剰買取ではなく，蓄電池を用いた自家消費の増大を促す政策が期待されている。従って蓄電池の導入を増大させる料金設計の検討のために，PVと蓄電池を組み合わせた際の需要家側の経済性に関する分析が多数報告されている。その中で筆者らは，系統レベルでの電源計画問題に対して用いられるスクリーニングカーブ法を需要家側に適用した手法を提案した。同手法においては，電源毎のコスト曲線を考え，その交点から各電源の最適導入量を算出する。しかし，PVや蓄電池の経済メリットが著しく大きい場合には，コスト曲線同士の交点が存在しない場合がある。本報告では，これがPVや蓄電池が最大限導入される場合に対応することを指摘し，その最大導入量の算出方法を示す。そして，蓄電池の価格が低い場合における分析の一例を示す。

6-126

需給比に基づくP2P電力取引の評価に関する基礎検討

◎廣田敦也・高山聡志・石亀篤司（大阪府立大学）・井上 忍・松岡武彦・石田文章（関西電力）

これまで太陽光発電システムを持つ住宅(プロシューマ)による余剰電力は、固定価格買取制度(FIT)により10年間電力会社に買い取られることが約束されていた。一方、2019年11月より買取期間を満了するプロシューマが出現し、これらは新たに契約を結び売電する必要があるが、FIT単価より単価が安くなってしまうことが問題である。そこで、新たな売電の選択肢として他の需要家住宅(コンシューマ)とのP2P電力取引が提案されている。 本検討では、多住宅間のP2P取引を円滑に行う場としてプラットフォームを提供する際の事業性評価において、参加者の電力需給比を利用した参加者操作について検討を行ったので報告する。

6-127

DEPSOを用いたDSM負荷シフト最適化手法

勝山大輔・○森 啓之（明治大学）

本稿では，デマンドサイドマネジメント（以後, DSMと略記）を最適化する手法として進化的計算の離散型EPSO(Discrete Evolutionary Particle Swarm Optimization; 以後、DEPSOと略記)を提案する。DSMは, 電力需要パターンと効率的な電力使用を最適化する重要な役割がある。本稿ではDEPSOを用いて翌日の1時間毎の負荷パターンの総和の電気料金を最小化する手法を提案する。

6-128

スポット市場を活用したPV発電所の利益最大化のための発電計画と蓄電池運用

◎山田航平・植田 譲（東京理科大学）

2012年に固定価格買取制度が導入されたことによりPVの大量導入が進んでいる。一方，FIT法終了後は電力システム改革に伴い，事前に提出した需給計画と実際の需給計画を一致させる計画値同時同量が求められることとなった。太陽光発電事業者は電力受け渡しの前日に発電量を予測し，その値をもとに最適な発電計画を作成する必要がある。本研究では，計画値同時同量制約のもと，将来の市場を想定した上で実験的に蓄電池の利用可能な容量と発電計画の抑制具合を変化させ，売電収益と不足インバランスによるペナルティを算出した。その結果，売電収益増加と不足インバランスの削減のためには，コストのかかる蓄電池容量の増加と同様に，前日発電計画の適切な抑制が有効であると確認できた。

6-129

回帰分析によるPV大量導入時の卸電力市場価格の簡易推定モデル

◎煤ヶ谷拓実・植田 譲（東京理科大学）

  日本卸電力取引所の取引規模は2015年度では全体の2％程度であったが2018年12月までに34％程度まで増加している。またJEPXでは近年，再エネ特に太陽光の市場への増加によりシステムプライスが0[JPY/kWh]に近い値をとることもある。   本論文では、2016年度から2019年度の各年度に対してPV発電量推定を行いシステムプライスに対して、求めたPV発電量を考慮した簡易的な回帰式を構成して回帰分析を行うことによりPV大量導入時の卸電力市場価格の簡易推定モデルの検討を行った。   回帰分析結果では、決定係数においては各年度0.61以上である程度の相関が見られt検定ではt値は1パーセント点以上で回帰式の各係数は重要であることが示された。

6-130

改良型デノイジング・オートエンコーダを用いた深層ニューラルネットによる電力価格予測

◎山田航大・森 啓之（明治大学）

本稿では、事前学習法として改良型デノイジング・オートエンコーダを用いた深層ニューラルネットによる電力価格予測法を提案する。複雑な電力市場では高精度な予測モデルの開発は、市場プレイヤーにとって利益の最大化とリスクの最小化をもたらし、その要求は高まっている。

6-131

再生エネ大量導入時のスポット市場価格分析

○荻本和彦・岩船由美子・占部千由（東京大学）・東 仁・礒永 彰（J-POWRビジネスサービス）

再生可能エネルギー発電の大量導入のもと、ドイツなど海外のエネルギー市場と同様に、日本のJEPXのスポット市場も活発化している。さらに、各エリアの市場価格の低下や、需給制約による再エネの出力制御に伴うゼロ価格の発生も頻度が増している。このようなスポット市場の価格の変化は、将来の集中型電源やPVや風力を含む分散電源、さらには小売り料金、アグリゲーションビジネスなど広範な影響を与える。 本検討では、2030年の市場価格の解析・分析の結果として、電力需給解析から得られるFull-max費用により、JEPXスポット市場価格の分析を行い、再エネ大量導入のもと市場価格の漸減とゼロ価格の頻度が増加の傾向を確認した。

6-132

電源計画における従来電源と太陽光発電の建設優位性に関する検討

◎長江 翼（名城大学）

日本全体で太陽光発電の導入量が増えており、太陽光発電の供給量は変化する。それに伴い火力発電での売上は変化するため、発電事業者は最大利益を得るための行動を検討する必要がある。そこで本研究では、太陽光発電の日本全体での占有率が変化したときに、発電事業者が太陽光発電所または火力発電所を建設するのか、発電気事業者にとって最適な行動の検討をする。

6-133

非同期計測と外れ値を考慮した複数のカーネルサイズ及び各サブ集団を並列化した並列複数集団型GBSODEによるコレントロピーに基づく配電系統状態推定方式の提案

◎東 大智・福山良和（明治大学）・関 孝二郎・大井章弘・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

本論文では，非同期計測と外れ値を考慮するために，複数のカーネルサイズ及び各サブ集団を並列化した並列複数集団型GBSODEによるコレントロピーに基づく複数時間断面を用いた配電系統状態推定方式を提案する。従来の配電系統状態推定の研究では，配電自動化システムのポーリングによる非同期計測を考慮していなかった。そのため，著者らは，実用性を考慮し，非同期計測に対応した状態推定方式を既に提案している。また，定式化の目的関数に最小二乗法を利用しているが，計測データに外れ値が計測された場合に，最小二乗法だと外れ値に影響を受けて全体の推定結果が悪くなってしまう。シミュレーションにより，提案法が非同期計測を考慮し，且つ外れ値の対応ができる可能性があることを示した。

6-134

配電系統における大容量負荷新設に伴う標準系統最適化

◎寺山正剛・関崎真也・林田智弘（広島大学）・彦山和久・野々山公亮（中部電力パワーグリッド）

配電系統運用において，高圧需要家など大容量負荷の新設の際には，設備形成制約（電圧降下量，常時許容電流，故障発生時の迂回送電の可否）を考慮して負荷新設可否の判定を行っている．制約を違反した場合，系統変更や設備投資を実施するが，可能な限り設備を追加せずに標準系統を変更するには人間系では検討に限界がある．先行研究では，工事時の系統切替最適化アルゴリズムを開発したが，負荷新設時の標準系統最適化には対応していなかった．また，故障発生時における逆送可否判定を含む設備形成制約を考慮した研究は多くない．そこで本論文では，負荷新設に伴う設備形成制約の違反に起因する設備投資額を抑制することを目的として，標準系統最適化を行った．

6-135

太陽光発電が連系された配電線実負荷をLSTMで推定する手法に関する検討

○飯岡大輔（東北大学）・田中俊生・張本 毅（九州電力）・長江大輔（九州電力送配電）

配電系統への太陽光発電の導入量は年々増加しているが，設備計画，電圧負荷管理のベースとなる負荷電力のみ(実負荷)を正確に把握することは従来から変わらず重要である。センサ内蔵開閉器(SwS)の測定データから配電線潮流を算出できるが，配電線に太陽光発電(PV)が連系されている場合，実負荷とPVからの発電電力が合成されるため，実負荷のみを推定することが課題となっている。 そこで筆者らは，近年幅広い分野で応用されている機械学習に着目し，実負荷を推定することについて検討している。本稿では，リカレントニューラルネットワークの一種であるLSTM(Long short-term memory)を用いて，SwSの計測情報や気象情報から実負荷の時間変化を推定する方法について検討した内容を述べる。

6-136

進化型多数目的最適化アルゴリズムを用いた配電系統における故障復旧手順の最適化

◎加藤輝之・関崎真也・西崎一郎・林田智弘（広島大学）・彦山和久・野々山公亮（中部電力パワーグリッド）

配電系統内で故障が発生した際は，探査等によって健全性が確認できた区間を系統切替により送電することで停電区間を縮小している。先行研究では時限順送・自動開閉器操作後の系統に対して，故障点が未知の場合の最適な系統切替手順を導出する進化型多数目的最適化アルゴリズムを開発し，負荷二分割探査と呼ばれる探査手法と比較した際の効率的で供給信頼度の高い故障復旧手順を発見している。しかし，解の探索が不十分な可能性があり，また実運用手法である開閉器2分割探査との比較ができていないという課題があったため，本研究ではより広範囲な探索を行える進化型多数目的最適化アルゴリズムを開発した上で開閉器2分割探査との比較を行い，最適化アルゴリズムの有用性を確認した。

6-137

アグリゲータによる太陽光発電と蓄電池システムの需給計画に基づく配電系統運用

◎兵藤文哉・益田泰輔（名城大学）・Tayjasanant Thavatchai（Chulalongkorn University）

現在，我が国では太陽光発電（Photovoltaic power generation：PV）の大量導入が進んでいる。本研究グループでは，電力系統全体に関する研究として，蓄電池システム（Battery Energy Storage System：BESS）を利用した需給バランス維持に関する検討を進めてきた。また，配電系統に関する研究として，複数のアグリゲータが同一の配電系統内に存在する場合の需給計画と運用についても検討を進めてきた。本稿では，先行研究と同様に配電系統に注目し，アグリゲータの作成した需給計画の一致を制約として配電事業者（Distribution System Operator：DSO）が運用を行うのではなく，アグリゲータの需給計画と実際の運用の差異を最小にすることを目的としてDSOが運用を行う手法を提案し，シミュレーションによって評価する。

6-138

オフグリッド配電系統における電圧プロファイルを考慮した最適運用手法

◎鈴木隆之介・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・佐藤知一（東京電力ホールディングス）・赤木 覚（東京電力パワーグリッド）

人口の少ない離島や過疎化地域などに対しては，大規模系統に接続しないオフグリッドを構成することが一つの選択肢として考えられる。オフグリッド化された配電系統（以下，OG）において太陽光発電（PV）などの自然変動電源を供給力の一部とし，また，地理的に分散された電源や蓄電池等を用いて需給調整を行う場合，系統内の潮流の大きさや向きが通常の配電系統よりも大きく変化し，それに伴いOG内の電圧分布もより大きく変動してしまうことが考えられる。そこで本稿では，電圧プロファイルに与える影響を考慮したOG内機器の運用計画手法を提案する。

6-139

スマートメーターを活用した変圧器接続相判定技術の判定結果可視化の検討

◎下山田 俊・北島弘伸・柏⽊哲也（富士通）・服部沙里・横⼭由⾥⼦（富士通九州システムズ）・宮崎 輝（東京電⼒ホールディングス）・宮里善貴（東京電⼒パワーグリッド）

スマートメーターの30分使⽤量Pとセンサ付開閉器の相電流Iを活⽤した変圧器接続相判定技術の研究を進めてきた．本判定手法は高圧三相それぞれのIとPの相関定量化値を評価するが，その特性を三次元でモデル化できる．しかし，多くの配電系統や変圧器へ適用するには，視認性や理解しやすさの向上が欠かせない．そこで判定結果の特性を失うことなく二次元で可視化する手法を考案した．実配電系統のデータを用いて本手法を評価することで，判定結果の評価や，配電線特性の分類ができる可能性が示された．

6-140

スマートメータ等活用による配電系統負荷接続相の推定：簡易配電系統モデルによる検証への着手

◎彦山和久（中部電力パワーグリッド）・横水康信（名古屋大学）・野々山公亮（中部電力パワーグリッド）

配電系統に接続された需要家にはスマートメータ（以下SM）が設置されており，消費電力等が計量されている。筆者らは，SMの計量値とセンサ付開閉器の計測値から，配電系統の電圧・電流分布等を推定することを目指している。第1フェーズでは，配電系統の地点ごとの三相平均電流・電圧分布を推定する手法を提案してきた。第2フェーズでは，三相個別電流・電圧分布推定による負荷接続相の推定を目的として、簡易配電系統モデルによる検証に着手した。シミュレーションによる検証の結果、SMの電圧計測値との乖離が少ない電圧推定値の相が当該負荷の接続相であることを検証できた。

6-141

センサ内蔵開閉器の潮流から得られる特徴量について

○田中俊生・張本 毅（九州電力）・飯岡大輔（東北大学）・長江大輔・太田淳一（九州電力送配電）

配電系統に設置しているセンサ内蔵開閉器は、様々な需要家の負荷あるいは調相設備による潮流から太陽光発電等の発電による潮流を差し引いた残余需要を潮流として計測している。 この潮流には、気温の影響を受ける空調、可動時間や可動日（平日・休日）に影響を受ける工場等の潮流といった様々な情報が含まれている。これらの情報は、配電系統を構成する設備の諸元、地理的情報及び需要家の契約情報からは把握することができない特徴として活用できると考えられるが、潮流と相関のある因子を分析しなければ特徴を表すことができない。 そこでは筆者らは、センサ内蔵開閉器が設置している配電系統（区間）の特徴把握を目的に、センサ内蔵開閉器から得られる潮流と相関のある因子を機械学習により分析する方法について検討を行なっている。 今回、複数のセンサ内蔵開閉器から得られた潮流を、それぞれ時系列データとして2つにクラスタリングし、各クラスタを構成するデータの曜日について分析を行った。その結果、平日と休日（土・日・祝祭日）に分類されやすいものとそうでないものがあること及びその分類されやすさは、外気温の影響を受けている可能性についてわかったので報告する。

6-142

3 軸加速度センサを用いた電柱損壊検知手法の検討

○佐藤知一・馬渕裕之（東京電力ホールディングス）・泰間智也（東京電力パワーグリッド）

2019年度の台風による電力設備の甚大な被害を踏まえ、設備状況を迅速に把握し早期復旧に資することを目的に、配電設備の要である「電柱」の損壊を迅速に検知する手法について検討した。電柱損壊検知器として選択した3軸加速度センサを現場の電柱に取り付け現場実証を行い、平常時に電柱にかかる風や人為的な荷重による電柱傾斜幅を加速度センサにて計測できることを確認した。そして、平常時の電柱傾斜幅の最大値を電柱損壊有無の閾値と定め、この閾値を超える傾斜幅を計測した場合、電柱損壊有りと検知する手法を提案した。

6-143

コレントロピーによる外れ値を考慮した柱上変圧器接続相判定へのタブサーチの適用

◎松本海智・福山良和（明治大学）・関 孝二郎・大井章弘・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

柱上変圧器は電柱上の三相から接続相二相を選択し，接続される。接続相が管理されている場合，地絡を伴わない断線事故での事故点の特定などでの活用が期待されているが，接続相は，電力会社で管理されていない。従来，相関を用いた統計学的手法や列挙法を用いた手法が提案されている。しかし，これらの手法センサ内蔵開閉器の計測情報の外れ値に，対応できないかあるいは判定精度が不十分となる。また，列挙法を用いた手法は柱上変圧器の数に応じて計算量が大幅に増加することが考えられる。この課題に対し，本論文では，コレントロピーとタブサーチを用いた外れ値を考慮した柱上変圧器接続相判定手法を提案し，その有効性を示す。

6-144

インバータ機器導入系統における配線路探査器開発の基礎的検討-活線時実証試験-

○雪田和人・一柳勝宏・細江忠司・松村年郎・後藤泰之（愛知工業大学）・谷口和彦・森田祐志・久保直也（きんでん）

筆者は以前，インバータ機器が接続される配線路探査について，機器ノイズのFFT結果により，探査信号周波数fsの選定手法を提案し，死線状態における配線路探査結果を報告した。本研究では活線状態での高周波電流注入によるFFT結果から配線路探査手法を提案し，実証試験を実施した。本研究で用いる配線路探査器は，送信器にIoTマイコンを使用して5kから30kHzの高周波電流（最大200mA）を消費させ，受信器では高周波電流信号をFFT結果により回路探査する。その結果，活線時における探査信号周波数fsの切り替え手法による配線探査法の有効性が確認できた。

6-145

線路インピーダンスが不平衡な配電系統における逆相電圧に関する考察

◎二村洋輝・青木 睦（名古屋工業大学）・國井康幸・上田 玄（中部電力）

配電系統において，単相負荷機器や単相の太陽光発電設備の接続相の偏りにより，電圧不平衡が発生することがある。近年では，メガソーラーが配電系統に接続されることにより，電圧不平衡が生じることも報告されている。メガソーラーは三相連携となるため，接続相の偏りが生じることは考えにくく，線路インピーダンスの不平衡が原因となり電圧不平衡が発生したと考えられる。 本論文では，まず，不平衡な線路インピーダンスを有する配電系統における逆相電圧の簡易計算式を導出する。そして，系統の末端に大容量のPVが連系されたケースでのシミュレーションを行い，逆相電圧の大きさに関して考察を行った結果を述べる。

6-146

高低圧配電系統の許容最大電圧降下の配分比を変更した際の設備形成コスト評価方法の提案

◎佐々木和穂・飯岡大輔（東北大学）・金沢由樹・原田 圭・野々山公亮（中部電力パワーグリッド）

配電系統では，供給電圧を適正範囲(101±6V)に収めるために電圧の許容変動幅である12Vを高圧系統と低圧系統に分担して設備を形成することがある．電圧分担比を変更すると高圧系統・低圧系統それぞれで電圧の許容変動幅が変わるので配電系統の設備形成コストに影響を与えると考えられる．筆者らは配電系統の設備形成コストを適正電圧維持に必要な機器の設置台数から算出し，電圧分担比の変更が設備形成コストに与える影響の定量的分析を試みている．本研究では，中部電力管内の高圧系統・低圧系統の実データを用いて系統の最大電圧降下値を算出し，電圧分担比の変更が設備形成コストに与える影響の検討を行った．

6-147

複数台インバータの並列運転における横流抑制および電流分担に関する研究

◎湯浅隆之・川﨑章司（明治大学）

再生可能エネルギーを主要なエネルギー源にするにあたり，複数の様々な分散型電源が並列接続されることが想定される。複数のインバータ電源が並列運転するためには，同期状態を維持するためにインバータ間で横流が発生せず，定格容量に応じた電流分担が必要になる。本研究では，インバータ電源間に流れる横流の抑制法を提案する。更に，インバータ電源の電源特性を考慮し，インバータの並列運転において定格容量に応じた電流分担を行う制御法を提案した。また，シミュレーション及び実験により提案法の有用性を検証した。

6-148

住宅地配電系統における出力制御を考慮した最適な蓄電池併設型住宅用太陽光発電システム導入の検討

◎大渕崇弘・馬場旬平（東京大学）

再生可能エネルギー普及のために，自家消費を行える住宅用太陽光発電（PV）や蓄電池の導入促進が望ましいが，住宅用PVが導入される配電系統は抵抗が大きく逆潮流による電圧上昇の影響を受けやすい。PVの導入量を増やしても出力制御量が増加しては発電機会が制限され経済性が悪化する。蓄電池も高価なので計画的な導入が求められる。本稿では，住宅地配電系統モデルを対象に，どのようにPVや蓄電池を導入すれば出力制御量を最小限にできるのかを検討した。その結果系統の特徴を考慮し，PVは配電用変電所に近いノードに，蓄電池はタップ切替点よりも末端側に導入するなど，計画的な導入により出力制御量を減少できることを確認した。

6-149

需要家機器制御による配電系統電圧上昇抑制効果のシミュレーション評価

○八太啓行（電力中央研究所）・山城 知・大城匡晶・平良康秀（沖縄電力）・比嘉直人（ネクステムズ）

太陽光発電（PV）導入量の増大に伴い、配電系統においては電圧変動の発生が電圧管理面での課題となっている。これに対する低コストな対策として、系統側の制御に加えて需要家機器制御を有効活用することが考えられるため、沖縄県宮古島市において、需要家機器制御によるPV電力の安定化や余剰電力の吸収を実証することを目的とした沖縄県事業「宮古島市島嶼型スマートコミュニティ実証事業」が行われている。本論文では、将来的に需要家機器制御が普及することを想定し、実証事業と同様の需要家機器（PV、給湯機、蓄電池）制御を行った場合の配電系統における電圧上昇抑制効果をシミュレーション解析により評価した結果を報告する。

6-150

周波数・有効電力制御機能を有するスマートインバータ群を含む配電系統の縮約 -スマートインバータ連系点における周波数検出モデル-

◎川島伸明・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

スマートインバータ（SI）の普及により系統安定化効果がどの程度得られるかを検証するためには，SIの多くが連系するであろう配電系統から基幹系統までを含めた，全系を対象としたシミュレーションが必要になるが，詳細モデルを用いたシミュレーションは計算負荷の観点から難しい。そのため著者らは，周波数・有効電力制御機能を有するSIを含む配電系統の縮約手法を検討している。大きな周波数変動が生じた場合，それに対応して各SIが出力を調整し，各SIの連系点電圧の位相は異なって変化することになる。結果的に検出周波数はSIごとで変わるため，縮約点周波数による代用では正確な模擬ができない可能性が考えられる。そこで本稿では，縮約点の電圧・周波数情報から，個別SIによる周波数の検出モデルを提案する。

6-151

スマートメータデータを利用した自動力率調整装置を設置した需要家のSC容量推定手法

◎阪井雄真・藤田 悠・小林 浩（トーエネック）・青木 睦（名古屋工業大学）・吉江 学・水野佑哉・濱田康佑・深江隆之（中部電力パワーグリッド）

大部分の高圧需要家ではSCを常時接続した状態であるため，軽負荷時において配電線の力率が進み状態となり，フェランチ現象による配電線の電圧上昇が課題となっている。この対策としてSC容量の適正化が有効である。適正化のためには，需要家の設置しているSC容量を把握することが望ましく，高圧需要家の受電点などの有効・無効電力の散布図からSC容量を算出する手法が提案されている。しかし，一部の需要家では，力率適正化などを目的に自動力率調整装置などを設置して接続するSC容量を調整しているため，SC容量ごとで区別する必要がある。そこで，本研究ではスマートメータデータをもとにSC容量の調整を実施している高圧需要家のSC容量を推定する方法を提案する。

6-152

配電系統末端に導入された太陽光発電装置の進み力率運転時における無効電力潮流に関する一検討

◎磯部由佳・津坂亮博・松村年郎・雪田和人・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）・横水康伸（名古屋大学）・清水洋隆（職業能力開発総合大学校）・飯岡大輔（東北大学）・岩月秀樹・國井康幸・石川博之（中部電力）・深江隆之・峯田雄斗・吉江 学（中部電力パワーグリッド）

近年，再生可能エネルギーの利用の促進に伴い，高圧配電系統の末端に大容量太陽光発電装置の導入される事例が増加している。筆者らはこれまで，電力の有効利用の観点から，主に配電用変電所に流入する有効電力に関してベクトル図を用いた回路論的検討を行ってきた。本稿では，高圧配電系統の末端に大容量太陽光発電装置が導入された場合における無効電力についてベクトル図上から検討を行った。その結果，無効電力においても，有効電力の場合と同様に三角形の面積で相対的に表されることがわかった。

6-153

大容量PV装置が連系された長距離配電系統における連系点電圧表現式および逆潮可能電力 —負荷連系考慮—

◎夏梅翔平・横水康伸・椿 直也（名古屋大学）・松村年郎（愛知工業大学）・深江隆之・濱田康佑・水野佑哉・峯田雄斗・吉江 学（中部電力パワーグリッド）・石川博之・岩月秀樹・國井康幸（中部電力）

長距離高圧配電線に，大容量の太陽光発電装置(PVS)が連系されるケースが増えている。しかし，PVSが，予期せず，運転中に解列してしまうことがある。この原因として，PVSの発電電力が配電系統の逆潮可能電力を超えてしまうことが考えられる。逆潮可能電力を数値計算によって算出することは可能であるが，理論式を用いた定量的な算出には至っていない。筆者らは，逆潮可能電力やPVSの連系点電圧を配電線路特性(すなわち，配電線抵抗およびリアクタンス)，PVS特性(すなわち，発電電力および発電力率)，負荷特性(すなわち，消費電力および力率)の関数として表すことを目的としている。本報告では，PVSと負荷が1地点ずつ連系された状況を対象とし，定電力負荷連系時について連系点電圧を定式化し，逆潮可能電力を算出している。

6-154

EV大量導入に向けた柱上変圧器の接続相変更による配電系統の電圧不平衡率低減効果

◎平野和明・芳澤信哉・林 泰弘（早稲田大学）・石丸雅章・橋本茂男・杉本仁志（北陸電力 技術開発研究所）

低炭素社会の実現に向けて,EVの導入が促進されている。EV充電方法は普通充電と急速充電に分かれ, 普通充電の場合には多くが低圧系統に接続されるため, EV一斉充電による急峻な電圧低下の発生やEV充電相が偏ることによって高圧系統の電圧不平衡率が悪化することが懸念されている。電圧不平衡率が悪化すると, SVRやLRTの監視相と他相の電圧とが乖離し, 適切な電圧管理が行えなくなる他, モーターなどの三相負荷を損傷させるなど, 様々な問題が生じる可能性がある。そのため，EV大量導入時には高圧系統の電圧不平衡率を改善する必要がある。本研究では，EV大量導入の電圧不平衡率の悪化問題に対して，柱上変圧器の接続相変更による低減効果を実配電系統モデルにて評価し，その有用性を報告する。

6-155

回帰木を用いた配電系統の電圧推定

◎内田文也・青木 睦・大堀良介（名古屋工業大学）・彦山和久・野々山公亮（中部電力パワーグリッド）

近年，太陽光発電システム(PV)等の再生可能エネルギー利用電源(RES)の導入が急速に進んでいる。これらの電源は，出力が不安定であるため，電圧適正範囲の維持が困難となることが課題となっている。複雑化した電力潮流の状況で電圧を適正範囲に維持するためには，系統内の電圧分布を把握することが有効である。本論文では，既存の設備状況下において精度よくリアルタイムに配電線路の電圧推定を行うことを目的として，機械学習のうち回帰木を適用した電圧推定手法を提案する。オフラインでのシミュレーションよって学習データを生成し，ある地点で実測された電圧，電流情報を用いて，推定対象の地点の電圧推定を行った。その推定精度の検証を結果について報告する。

6-156

エリア分けした配電系統における地点別PQ価格に基づく電圧管理手法

◎妙中宏行・餘利野直人・造賀芳文・佐々木 豊（広島大学）

近年，太陽光発電などの大量導入が進み，配電電圧の管理が非常に難しくなってきている。先行研究では，黒板メモリを用いてシステム情報を共有するマルチエージェントシステム手法に基づき地点別PQ価格，電圧上限値を各需要家PCSに提示する手法を提案した。需要家サイドでは売電収入の最大化と均等化，系統サイドでは電圧管理，全体としてPCS総発電量の増加というメリットが得られる。しかし，需要家を4地点に集約化した小規模系統モデルを用いてきたため，提案システムの拡張性について課題が残っていた。本稿では，拡張した配電系統モデルを用いて，シミュレーションを行うことで，提案する電圧管理手法の有効性を確認することを目的とする。

6-157

スロベニア共和国におけるスマートコミュニティ実証事業での電圧調整手法の評価

◎内田健志・丸山良雄（日立製作所）

欧州では、各種エネルギー政策により、再生可能エネルギー導入，エネルギー効率化，分散電源の活用などの動きが活発化している。このような背景のもと、NEDOプロジェクト「スロベニア共和国におけるスマートコミュニティ実証事業」において、スロベニアの配電会社向けに配電系統の制御システム（DMS：Distribution Management System）を構築し、実証事業を進めている。本事業の第1フェーズでは、高度な電圧調整機能，事故復旧機能およびDR(Demand Response)機能などを実装した高度配電自動化ソリューションを、スロベニアの複数の配電会社が共有して使用できるクラウド型DMSとして開発し、その効果を実証事業で検証した。本稿では、実証事業の概要と実証テーマの1つである配電系統の電圧調整機能の成果について報告する。なお、本実証事業の成果は、NEDOからの委託業務の結果得られたものである。

6-158

スマートインバータのVolt-Var制御機能が配電用変電所LRTのタップ制御と配電損失に及ぼす影響

◎草野謙一・飯岡大輔（東北大学）・松浦隆祥・濱田 拓・森 健二郎（東京電力ホールディングス）

配電系統において太陽光発電の導入量が増加すると電圧上昇の問題が懸念されるが，その対策の一つとしてスマートインバータ(SI)のVolt-Var制御機能の効果が期待されている。しかしながら，Volt-Var曲線(VV曲線)のパラメータ設定を誤ると電圧品質が悪化する可能性があるため，適切に設定する必要がある。特に配電用変電所LRTなどのタップ切替で配電線の電圧分布が変化する場合，VV曲線に基づくSIの応答が変わるため，タップ制御を考慮したパラメータ設定が求められる。そこで本稿では，実系統に近い二つの配電系統モデルに，形状が異なる360パターンのVV曲線を適用してシミュレーションを行い，LRTのタップ制御と配電損失に及ぼす影響を明らかにし，VV曲線の設定に対する制御特性について検討した結果を述べる。

6-159

低圧セルに直流電源を用いたトランスレスSTATCOMの配電系統における電圧補償効果に関する検討

◎小野寺大斗・三角素史・清川 崇・呉 国紅（東北学院大学）

本論文では、トランスレスSTATCOMの低圧セルに安定化直流電源回路より電力供給を行う新たなトランスレスSTATCOMの構成回路について提案した。従来、低圧セルにはコンデンサを用いて直流電圧を供給しているが、提案する安定化直流電源回路では配電系統の交流電圧を整流して電力を供給しているため、低圧セルで行っているPWM制御の安定化やセル間でのエネルギーバランス制御の簡素化を図る。さらに相間バランス制御・段間バランス制御により、各セル間でのエネルギー授受の安定化制御を実現した。このときのトランスレスSTATCOMの無効電力補償機能による配電電圧の安定化効果をシミュレーションによって検討し、提案した回路の有効性を確認した。

6-160

オンライン型強化学習を用いたPV-PCSによる自律分散型電圧制御

◎吉田拓矢・高山聡志・石亀篤司（大阪府立大学）

近年，太陽光発電(PV)等の分散型電源導入に伴う電圧上昇対策として，PVシステムのパワコンによる力率一定制御が運用されている。ただし，力率一定制御は不要な無効電力量の増加が懸念されており，将来的に電圧上昇を抑制しつつ，無効電力量を最小とした運用が望まれる。その対策として，PVシステムのパワコンの無効電力決定に対して機械学習の一手法である強化学習の利用が提案されているが，実制御の適用には事前学習を通して適切な行動を学習する必要があるため，系統情報が事前に必要となる。そこで本検討では，事前学習を行わずにオンラインで得られた経験をもとに行動決定するオンライン型強化学習による無効電力決定手法を提案する。

6-161

PVオーナーの公平性を考慮したLRTとPCSの協調による配電系統電圧制御方式

◎武縄 陸・永田 武（広島工業大学）

現在，低炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの導入が世界的に進んでいる。日本では，太陽光発電システムの導入目標として2030年までに6,400万kWという政府目標が掲げられている。PVが大量導入された状況では，PVの出力変動に伴う電圧変動が各所で発生し，その結果，配電線フィーダの電圧プロファイルに与える影響が非常に複雑になると予想される。著者らは，再生可能エネルギーを考慮した配電系統の自律的電圧制御としてLRT制御とPCS制御を組み合わせた方式を提案しているが，PVオーナーの公平性については充分に考慮されていなかった。そこで，本稿では公平性を考慮したLRT制御とPCS制御の電圧制御方式を提案する。

6-162

強化学習によるVolt-Var曲線決定手法を用いたオフグリッド電圧制御に関する基礎検討

◎中矢寛之・高山聡志・石亀篤司（大阪府立大学）・橋川一功・桑下敬康（関西電力送配電）

近年，PV大量連系や蓄電池の利用によって，災害などで配電系統が停電した際に一時的に配電系統から切り離し，グリッド内に設置された分散型電源を電圧源として自律的に系統運用を行うオフグリッドでの運用が注目されている。オフグリッドの電圧品質の管理には，スマートインバータのVolt-Var制御機能の活用が期待されている。しかし，Volt-Var制御の特性を表すVolt-Var曲線の適切な設定は，系統状態や日射・負荷条件などによって様々に変化するため，それらに応じて動的に曲線設定を変更する必要がある。以上の背景から本検討では，系統状態の変化や分散型電源の不安定な出力に対応するために，強化学習によりVolt-Var曲線を動的に決定する手法を提案する。

6-163

PV発電大量導入時の高圧及び低圧配電線の電圧制御方式に関する一考察

◎佐藤雅紀・加藤亘輝・合田忠弘・雪田和人・松村年郎・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）

近年の太陽光発電(PV)の普及によりこれまで以上に配電系統における電圧問題が顕著になってきている。この対策として配電系統用の電圧調整機器である配変用変圧器及び柱上変圧器タップやSVC，PV用インバータなどが考えられる。これらの電圧制御機器の役割分担を明確にし，PV発電システム等の有効利用を可能とする配電系統用電圧制御方式の開発が重要となる。そこで本稿では，これら電圧調整機器が高圧及び低圧配電系統に与える影響を検証し，PV大量導入時の高圧及び低圧配電線の電圧制御方式に関する考察を行う。その結果，高圧側電圧と低圧側電圧を別の制御機器で制御するのが有効であることが明確になった。

6-164

PVが大量連系された配電系統における低圧STATCOMの三相不平衡改善効果と容量削減の検討

◎戸上裕基・川崎章司（明治大学）

昨今,PVの導入による配電系統の逆潮流状態により,系統電圧は一般的には上昇,場合によっては低下することや住宅用PVの大量連系により三相不平衡を起こし電圧のバランスが悪くなることが懸念されている。このため,系統電圧の適正範囲からの逸脱抑制だけでなく三相不平衡の改善など系統電圧の適正な制御が重要となっている。PVは低圧系統にも連系されるが,高圧系統側からの制御では低圧系統全体の電圧を制御することが困難となる。そこで，本研究では，自励式無効電力補償装置（STATCOM）の低圧系統への導入を検討し，導入した場合の電圧逸脱抑制効果と三相不平衡改善効果，さらにSTATCOMの必要容量について検証した。

6-165

低圧PCSに起因する電圧フリッカとSTATCOM導入後のフリッカ周波数に関する一考察

◎東谷拓馬・仲尾聡起・松村年郎・雪田和人・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）・飯岡大輔（東北大学）・石川博之（中部電力）・深江隆之・濱田康佑・水野佑哉・峯田雄斗・吉江 学（中部電力パワーグリッド）

近年，太陽光発電装置（PV）が配電系統に大量導入される中，パワーコンディショナ（PCS）の単独運転検出機能の一つであるステップ注入付周波数フィードバック方式に起因する電圧フリッカが確認されている。これを解決する為，STATCOMの導入を試みたところ，STATCOMの制御条件によってはSTATCOM導入前の電圧フリッカとは異なる周波数の電圧フリッカが発生することが確認された。この事象の要因を学理的に明らかにする為に本稿では，XTAPを用いた瞬時値シミュレーションを行い，ステップ注入付周波数フィードバック方式に起因する電圧フリッカとSTATCOM導入後の電圧フリッカについて調査した。

6-166

新型能動的方式PCSに起因する電圧フリッカの周波数に関する検討

○張本 毅・長嶋 洋・田中俊生・長尾 潤（九州電力）・本山順平・太田淳一（九州電力送配電）

近年の太陽光発電の大量連系に伴い、軽負荷時の快晴日などに新型能動的方式（ステップ注入付周波数フィードバック方式）からの無効電力に起因する電圧フリッカが発生する場合がある。先行文献では、新型能動的方式を具備する単相PCSと低圧回路で構成されるシステムの各部の変数を定式化し、システムの1巡伝達関数のボード線図を用いた安定性判別手法によって、フリッカ周波数が6Hzになること等を導出している。しかし2020年から、九州南部で新たに3Hzのフリッカが発生している。そこで本稿では、フリッカ時のPCS実機の特性に基づき、PV連系量が増加した場合などにフリッカ周波数が低下する可能性について検討した結果を報告する。

6-167

ΔV10計算モデルと次数間高調波に関する考察

○岡田有功（電力中央研究所）

本論文では，IECフリッカメータとの比較によりΔV10の詳細を定義した計算モデルを示す。本計算モデルを用いて，新たな回路技術により生じる次数間高調波がフリッカに与える影響を考察する。

6-168

MMC方式を用いたトランスレスSTATCOMによるRESを含む配電系統の電力品質改善効果に関する検討

◎清川 崇・呉 国紅（東北学院大学）

本論文では、トランスレスSTATCOMの低圧セルに直流電源を用いた新たなトランスレスSTATCOMの回路構成を提案した。従来、すべてのセルにおいてコンデンサを用い直流電圧を供給するため、コンデンサ電圧が変動してしまう可能性が考えられた。そこで提案するモデルでは直流電源を用いるため、相間バランス制御・段間バランス制御による、セル間でのエネルギーバランスの安定化を実現し、コンデンサ電圧を一定とすることを実現した。また、このときのトランスレスSTATCOMの無効電力補償機能による配電系統電圧の安定化効果をシミュレーションによって検討し、提案した回路の有効性を確認した。

6-169

高調波発生源が複数存在する状況下での適応フィルタによる高調波分析

◎井浦直樹・金城優樹・渡邊政幸・三谷康範（九州工業大学）

パワーエレクトロニクスの発展にともない，様々な障害を引き起こす高調波の発生が増加している。高調波による障害へ対策を講じるためには，各次数における高調波の発生量とその発生箇所を知る必要がある。本稿では，電源をはじめとする高調波発生源が3つ存在する状況において，電源に含まれる高調波成分が一定であるという仮定のもと事前に引くことで，各発生源より発生する高調波成分の推定を行っている。これに基づき，高調波発生源が複数存在する状況において，各発生源から発生する高調波成分を適応フィルタを用いて推定する手法を提案する。また、提案手法で得られた結果の精度について検討を行ったものを報告する。

6-170

低圧配電系統における複数台のPCSを用いた高調波電流抑制法の構築と実験検証

◎白石竜士（明治大学）

パワーエレクトロニクス技術の進展による非線形負荷の多様化や分散型電源の配電系統への連系台数の急激な増加に伴いこれらの機器から発生する高調波が系統の電力品質に及ぼす影響が懸念されている。高調波抑制機器の設置や管理は非常に高価であり，高調波の発生源も様々であるため，導入しやすく系統全体を考慮した高調波電流抑制を行うことが望ましい。筆者らは複数台のPCSにアクティブフィルタ機能を加えることで系統全体での高調波電流抑制を行う。本稿では，配電系統モデルを用いた数値解析と低圧配電系統模擬設備を用いた実験により，提案法の有用性を検証する。

6-171

気象予測モデルGSMを用いたPV発電量予測による蓄電池充放電の週間運用最適化検討

◎黒澤裕也・植田 譲（東京理科大学）

世界全体が脱炭素化へと向かう中、RE100に加盟する企業が増加傾向にある。今後この動きは中小規模の企業や工場にも波及することが予想されるため，太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーを活用する団体が益々増加することが見込まれる。本稿では，中小規模の工場需要に対して，気象予測モデルGSMを用いて毎日1週間先までの太陽光発電量を予測し，短期の貯蔵に適する二次電池と中長期の貯蔵に適する水素蓄電の充放電電力を最適化して週間運用を想定した充放電計画を作成する。そして，毎日1週間先までの予測データを用いて最適化した結果を，毎日3日先までの同データを用いて最適化した結果と比較し，評価期間中における蓄電池の充電容量について検討する。

6-172

電力地産地消を目的とした地域エネルギーマネジメントシステムにおけるメガソーラー導入への可制御電源の寄与効果検証

◎宮澤歩夢・飯野 穣・藤本 悠・光岡正隆・林 泰弘（早稲田大学）

地域内分散型電源の発電電力を集めて同地域の需要家へ供給する地域EMSは、電力地産地消による再エネ電源の有効利用に寄与する取組として期待されている。一方、不安定な再エネ電源の導入量に比例して地域EMSの運用は困難になる。運用リスク低減と再エネ電源導入量最大化の観点から、可制御電源が需給インバランスを相殺可能な範囲における最大PV導入可能量を評価する。需要予測には予測区間付きの推定手法を採用し、インバランス発生量を確率分布で表現することで再エネ電源の変動性を考慮する。本検討では、地方都市の複数の発電設備を仮定した地域EMSをモデルケースにシミュレーションを行い、可制御電源のPV導入への貢献価値を評価する。

6-173

低圧配電系統における効果的なEV群協調充電実現に向けた制御対象のグルーピングに関する検討

◎小倉大誠・芳澤信哉・藤本 悠・光岡正隆・林 泰弘（早稲田大学）・木内寛允・村井謙介・鈴木健太（日産自動車）

低圧配電系統において電気自動車が集中的に導入された状況下では，近隣の複数のEVによる充電行動によって，電圧逸脱や柱上変圧器の容量超過などの問題が発生し得る。著者らはこれまで，近隣のEV充電状況の情報をHEMSを介して共有することによる協調的なEV充電マネジメントの検討を行ってきた。上記検討では同じ低圧系統に連系されている需要家群が把握できていることを前提としていたが，制御対象需要家グループを適切に与える必要がある。そこで本稿では，スマートメータで観測される各需要家端の情報に基づいて，低圧系統の上記問題を緩和するための適切な需要家のグルーピング法を論じ，その上でEV充電マネジメント効果を評価する。

6-174

多目的価値の実現を目的とした住宅需要家群向け DER 最適配置計画の検討

◎笠原亮太・飯野 穣・林 泰弘（早稲田大学）・金子 雄（東芝）

筆者らはDER群の系統貢献の視点で調整力ポテンシャル評価の基礎検討を行ってきた。そこでは筆者らが着目するDERが普及することで, 相応の調整力を確保可能であることを低圧需要家モデルに基づき定量評価した。しかし, 地域の最大調整力創出, 運用コスト低減の限界評価を目的にDERの全機種を全需要家に設置することを想定したため, 過剰な設備投資となっていた。投資対効果を考慮したDERの限定的な機器配置が現実的であるが、DERの機種選定を考慮した先行研究は, 筆者の知見内ではこれまでに見られない。 そこで本研究では, 個々の需要家負荷特性に応じた需要家群へのDER最適配置計画手法を提案し, 多目的価値視点での各種指標の評価を試みる。

6-175

深層強化学習を用いた家庭用蓄電池のエネルギーマネジメントシステムにおけるファインチューニングの導入

◎森口大雅・片山 昇（東京理科大学）

太陽光発電は一般的な住宅への普及が進んでおり，売電価格の低下とともに蓄電池を導入するケースも増加している。そこで先行研究では，実際の測定データを使用した，深層強化学習によるエネルギーマネジメントを行い，複数の目標の同時達成を実現した。しかし先行研究では，特定の住宅用エネルギーシステムに対して学習モデルのパラメータを決定するため，他の住宅に適用するには再学習が必要となり,学習に時間がかかるという課題がある。これに対し，学習済みモデルのパラメータを初期値とし学習を行うことで，パラメータを微調整することができるファインチューニングという手法がある。本研究では，ファインチューニングを用いることで，学習時間の短縮が可能であることと，正常に学習ができることが確認できた。

6-176

深層強化学習を用いた実データによる家庭用蓄電池のエネルギーマネジメント

◎梅田拓史・片山 昇（東京理科大学）

太陽光発電（太陽光発電）は、今後のエネルギー政策において最も重要なエネルギー源の一つである。太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、より安定した電力供給と電力の売買が可能となり、経済的なメリットがあるが、経済性、ロードシフト、蓄電池の維持・運用など、すべての目標を同時に達成することは難しい。本研究では、需要や太陽光発電などの時間推移による多次元入力を計算するのに適した、深層強化学習を用いた太陽光発電と蓄電池の組み合わせによる新たなエネルギーマネジメント手法を提案する。シミュレーションデータや計測データのシステム入力に深層強化学習を用いることで、これら複数の目標を同時に達成することが可能である。その結果、既存のマネジメント方法と比較して、蓄電池を維持・運用しながら30日あたり900円近い利益を生み出すことができた。

6-177

スマートメータデータを用いた節電傾向にある需要家の抽出方法の基礎検討

◎岩瀬徳寿・中江 莞・高野浩貴（岐阜大学）・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）・國保友佑・東山昇一（関西電力送配電）

スマートメータの設置台数の増加による電力分野のデジタル化が進展している。それに伴い，取得したデータの活用方法が活発に検討されるようになった。検討内容の中には，スマートメータデータから，電力需要管理（DSM：Demand Side Management）に役立つ情報の抽出を試みるものがある。著者らは，需要家の節電意識に着目し，スマートメータデータから節電傾向にある需要家を把握することを考えている。本稿では年度間における気温の条件の違いを考慮して，消費電力量が気温に影響を受ける需要家の中から節電傾向にある需要家の抽出を試みた結果を紹介する。

6-178

再エネ大量導入時の熱効率の非線形性を考慮した熱貯蔵システムの最適運用に関する分析

◎川村知隼・藤井康正・小宮山涼一（東京大学）

近年, 脱炭素社会実現のため再エネ大量導入が進んでいる。再エネ大量導入時の余剰電力対策は重要な課題であり，様々な電力貯蔵技術が存在する中，熱貯蔵(蓄熱発電)は蓄電池に比べ低コストである点で注目されるが，熱を電気へ変換する際，熱電変換効率は蓄熱温度に依存し，高温蓄熱時に熱電変換効率が高くなるため，熱電変換効率の非線形性を考慮することが重要になる。本研究では, 熱電変換効率の非線形性を考慮した電力需給モデルを作成し，動的計画法を用いて最適需給運用を分析し，再エネ大量導入時の熱貯蔵システムの挙動及び経済性を評価した。その結果，熱電変換効率の非線形性の考慮が経済性評価に影響を与えることが分かった。

6-179

配電系統における需要家リソース活用に関する簡易的な実験装置構築

◎星野紘輝・加藤丈佳・杉本重幸・栗本宗明・今中政輝（名古屋大学）

電力システム全体の需給調整力を補うため、配電エリアにおける需要家リソースを調整するデマンドレスポンス（DR）が期待されている。DRの大規模利用のためには、DR非対象機器の利用も含めた実質的な需給調整への貢献、DR発動量の正確な計量、配電運用への影響などの様々な課題に対応する必要がある。その対策として蓄電池の活用が期待されている。例えば、受電点の潮流変動をDR発動量に一致させるように充放電することで需要家として実質的に需給調整への貢献することや、下げDRに伴う電圧上昇による周辺PVの出力抑制を回避するための電圧調整などが期待される。本稿では、実験装置の概要を示すとともに、下げDR時の電圧上昇模擬の方法について概説する。

6-180

寒冷期における需要家利便性を考慮したヒートポンプ給湯機による系統周波数制御手法

◎久原雅史・馬場旬平（東京大学）

太陽光発電による出力が増加する昼間の時間帯では、火力機容量が減少するため、LFC による出力調整が困難となる。このため、昼間の時間帯の可制御負荷としてヒートポンプを運転することで火力機容量を底上げし、LFC 容量の確保を検討する。加えて、需要家の利便性、つまり各家庭の給湯需要を考慮し、湯切れを極力避けることが可能な運転計画について取り扱う。特に、寒冷期ではヒートポンプの給湯需要が多いため、多くの電力量が確保可能だが、湯切れのリスクが高くなる。よって本稿では、運転時間の分割や可制御負荷としての運用台数の変更によるヒートポンプの運転計画について検討し、その有効性を確認した。

6-181

一次調整力提供のための家庭用燃料電池と蓄電池のアグリゲーション手法

◎金子奈々恵・藤本 悠・広橋 亘・林 泰弘（早稲田大学）・平井友之・田嶋翔太（大阪ガス）

電力系統において周波数制御や系統安定化業務等のアンシラリーサービスは電力の需要と供給を瞬時に一致させる「調整力」により維持される。現在、調整力は主に火力発電によって提供されているが、近年の脱炭素化や再生可能エネルギーの導入拡大を背景に火力発電への過度の依存を避けることが求められ始め、系統管理をする上で分散型電源による調整力の調達は取り組むべき重要な項目になっている。本研究では、需要家に設置された分散型電源のアグリゲーションによるバーチャルパワープラント（VPP）技術の活用を前提に一次調整力提供のための固体酸化物形燃料電池（SOFC）と蓄電池の協調運用手法を検討する。

6-182

エネファームによる系統周波数制御と蓄電池を併設した調整力の確保

◎中住秀喜・山本周平・三谷康範（九州工業大学）・牛房義明（北九州市立大学）

太陽光発電(PV)の大量導入により、これまで調整力を担っていた火力発電が停止することから、周波数調整電源不足が問題となっている。調整力の調達のために本論文ではエネファーム(EF)と蓄電池(ES)に着目し、PV変動電力による周波数変動と発電機の脱落時のような急激な周波数低下を想定して周波数制御を行う。PV変動電力による周波数変動の制御にはEFのガバナフリー制御を適用する。急激な負荷外乱により周波数が大きく低下した際には、EFとESに一次調整力の要件である10秒以内の応動を持たせ、DRの形で電力を供給し、周波数の制御を行う。これらの制御が周波数の抑制にどの程度効果を示すか検証する。

6-183

デマンドレスポンスにおけるベースライン推計誤差が報酬に及ぼす影響の基礎検討

◎橋本滉大・吉田尚洋・高野浩貴（岐阜大学）・浅野浩志（電力中央研究所）

需給逼迫を緩和するための方法としてデマンドレスポンス(DR: demand response programs)が注目されている。インセンティブ型DRはDRに協力した需要家に対して報酬を支払うDRであり，消費電力の変化を評価するためには基準となる電力を定めることが必要となる。基準となる電力は，「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドライン」にて‘標準ベースライン’として定義されている。このベースラインは推計値の集合であり，実際の消費電力との間に推計誤差(誤差)が生じる。これにより，DRへの協力を過大あるいは過小評価する可能性がある。本稿では，社会的余剰最大化問題の枠組を用いて理論的に報酬単価を算出し，ベースラインの誤差が報酬に及ぼす影響を検討する。

6-184

空調機及びIoT技術を用いた自動デマンドレスポンス実証

◎川畑莉恵子・中川浩一・フォンセカルイ・中尾拓哉・瀬口哲平・藤本修二・古井秀治（ダイキン工業）

ビル等での消費電力量及びピーク時消費電力におけるその占める割合の比較的大きい空調機をデマンドレスポンス（DR）における需要家電力資源として活用において、その調整余力の推定には困難をともなうことからDRリソースとしての活用は現時点において広くは実施されていないのが実情である。加えて、個々の空調機から創出され得る調整力は数kW程度と小さく、多数の機器をアグリゲートしたうえでの活用が前提となるため、調整余力推定や機器管理・制御に対するノウハウが必要となる。本稿では、NEDO国際実証事業として実施した「ポルトガル共和国における自動ディマンドレスポンス実証事業」において、自動デマンドレスポンスとバーチャルパワープラントのためのリソースとしての空調機の機能の実証を、加えて蓄冷機器を備えた空調システムによる調整力創出の実証、評価を行ったのでここで報告する。

6-185

マイクログリッド最適運用計画問題における差分進化法の解析特性に関する研究

◎小山春香・呉 国紅（東北学院大学）

本研究では、マイクログリッドの最適経済運用計画問題について検討した。マイクログリッドモデルとしては、太陽光および風力発電、変動する電力負荷、予備電源であるディーゼル発電機および電力貯蔵装置のバッテリを想定した。マイクログリッドの単独運用において、変動する再生可能エネルギー発電および日電力負荷パターンに合わせ、バッテリのSOC制約条件を満たしながら、ディーゼル発電機の燃料コストの最小化を図り、差分進化法（DE）を用いてC言語で実装して最適解析を行った。また、DE法のパラメータの変化によるマイクログリッドの最適運用計画の解析特性への影響も考察した。研究結果として、DEアルゴリズムにおけるスケーリング係数Fおよび交叉確率CRがその最適解析性能に対する影響を明らかにした。

6-186

蓄電池とディーゼル発電機の協調制御による再エネ活用オフグリッドの運用手法

◎長澤和輝・飯野 穣・児玉安広・林 泰弘（早稲田大学）・赤木 覚・吉永 淳（東京電力パワーグリッド）

現在離島ではディーゼル発電機を主体として電力供給が行われているが，運用維持費が高額，発電時に多量のCO₂を排出するため，経済面と環境面の問題が顕在化している。そこで，再生可能エネルギーを導入することにより経済性と環境性の向上を目指す。しかし，再生可能エネルギーは天候状況により出力変動が生じるので，蓄電池や既存のディーゼル発電機を上手に活用することが重要となる。よって，蓄電池とディーゼル発電機を蓄電池の充電状態により協調制御する運用手法を提案する。本検討は，実在島嶼の実計測データを使用したシミュレーションにより実施し，導入・運用コストが最小となる設備容量・運用パラメータ，再エネ比率等が評価される。

6-187

配電線内のマイクログリッドにおける地絡点推定

○児玉安広・林 泰弘（早稲田大学）

新たなエネルギーシステムの形態として蓄電池，コジェネ，太陽光発電などを利用した電力系統から電力の供給を受けずに特定区間内に電力を供給する地域マイクログリッドが構想されている。更に，マイクログリッドにおいては，災害時のレジリエンス強化の観点からも期待されており，供給支障が発生した際の早期復旧が必要とされる。 そこで，著者らは配電線内のマイクログリッドおいて，地絡が発生した場合の地絡点の早期発見を目的に共同接地線を用いた地絡点推定手法を検討する

6-188

電源・連系線容量の影響を考慮したセミオフグリッド系統の供給信頼度評価

◎関野敬太・田村 潤・馬場旬平（東京大学）

農山村地域において水力発電やディーゼル発電機による発電などの分散型電源を活用し，地域内で電力の需給制御をある程度行う考え方が注目を増している。 本稿では水力発電所が存在し小容量の連系線により大規模系統と接続されている農山村地域の系統を想定し，供給信頼度が一定となるような水力発電所，連系線の容量について検討している。 連系線で余剰電力を全て送電する場合と余剰電力については出力抑制で対応する場合の検討を行った。 供給信頼度がある基準値を満たす水力発電所，連系線の容量の関係は線形ではなく，季節による需要の推移や連系線の送受電の制御等の影響を受けて変化することが分かった。

6-189

Fundamental Study for Intelligent Battery Scheduling of a Microgrido with Solar Power Generation and Trading with Utility Grid

◎Mahmoud Mohamed・辻 隆男（横浜国立大学）

Battery energy storage system (BESS) can support microgrid’s economic operation. In this paper, the optimal capacity of BESS is determined for economic operation of microgrid with solar generation and connected to the utility grid. The battery scheduling is solved using linear programming (LP) optimization technique. Optimal Battery capacity was chosen by running optimization on different sizes with different prices per kwh for different months and choosing the best economical. Through a year, using battery for trading with utility grid proved its benefit comparing with no-battery case.

6-190

ハイブリッドマイクログリッドシステムにおける加重移動平均フィルタによる電圧変動抑制効果の評価

◎石田聖也・呉 国紅（東北学院大学）

本研究ではハイブリッドマイクログリッドにおいて、加重移動平均の公式に基づいたフィルタを提案し、これを加重移動平均フィルタと呼ぶ。また、協調制御および直流母線系統の安定化実験をシミュレーションにより行った。ハイブリッドマイクログリッドシステムの電源を太陽光発電と風力発電として、負荷側に電力を供給する。これらの電源は、天候により出力が変動するため直流母線系統の電圧が不安定になる。そこで、鉛蓄電池と電気二重層キャパシタで構成された電力貯蔵装置により電力の補償を行う。電力の補償時に加重移動平均フィルタのパラメータを変更したときのそれぞれの波形の評価を行う。

6-191

MaaSを活用したマイクログリッド間の広域連携ー提案手法の定式化ー

◎李 一達・原 亮一・大澤拓門・北 裕幸（北海道大学）

Mobility as a Service（MaaS）は机上検討から実運用のステージに以降しつつある。現在の自家用車主体から，バスやカーシェアリングなどの公共交通を主体とするモビリティ形態へのパラダイムシフトがMaaS社会で実現される可能性は高い。また，ここ数年の各国・地域におけるガソリン車販売規制の流れから今後の主流は電気自動車（EV）になっていくことは想像に難くない。このような観点から，MaaSとしての拠点と，エネルギー供給としての拠点とを融合させ，シェアリングされた EVを活用した新しいマイクログリッド（MG）の運用形態を模索している。本稿では，EVの利用予約情報への対応と，エネルギーの地点（MG）間輸送とを協調可能なスケジューリング手法を提案する。

6-192

マイクログリッドの電力需給管理を考慮した蓄電池容量最適化手法

◎林 亮佑・後藤瞭太・高野浩貴（岐阜大学）・浅野浩志（電力中央研究所）

近年,自然エネルギー利用電源の増加や電力システム改革によって蓄電池の導入が注目されている。しかし,蓄電池はコスト面では大きな負担となるため,最適運用と経済性を考慮した蓄電池容量を選定する必要がある。そこで,本研究では可制御電源と非可制御設備(需要家負荷,太陽光発電設備)によって構成されるマイクログリッドを対象として,需給運用計画に基づいて運用コストと蓄電池容量コストの和を最小化する蓄電池容量を導出する手法を提案する。また,蓄電池容量が既に決定されている場合と比較することで提案手法の有効性を確認した。

6-193

特高系統における強化学習を用いた電圧制御手法の提案

◎大堀良介・青木 睦・中村湧人・内田文也（名古屋工業大学）・上田勝久・Suresh Chand Verma・山口 遼・下野晃裕（中部電力）

太陽光発電システム(PV)をはじめとした分散型電源の大量に導入により，配電用変電所ではバンク逆潮流が生じ，上位の特高系統の電圧管理に影響を及ぼすおそれがある。現在の特高系統の電圧管理はタイムスケジュールを基本とした電圧・無効電力制御(VQC)にて行われており，PV等の出力変動による複雑な潮流の変化は想定されていない場合が多い。一方で，特高系統では配電系統のように送電線路中に電圧制御機器を設置することは難しく，一箇所の変電所で線路全体を管理しており，これに強化学習を適用した事例は少ない。そこで，本論文では，VQC制御の一部である変電所の負荷時タップ切替変圧器(LRT)のタップ制御に強化学習を適用した結果について報告する。また，筆者らがこれまでに提案してきた機械学習による需要家端の電圧推定手法と組み合わせた際の結果についても示す。

6-194

電圧・無効電力制御における電圧推定を用いた目標値の決定手法

◎中村湧人・青木 睦・大堀良介・内田文也（名古屋工業大学）・上田勝久・sureshChand Verma・山口 遼・下野晃裕（中部電力）

送電系統の電圧を維持するため，変電所では，変圧器のタップや調相設備を制御する電圧・無効電力制御(VQC)が行われている。近年，太陽光発電システム(PV)の導入が進み，需要家端の電圧変化がこれまでと異なったものとなるため，従来の制御方法では，電圧の適正維持が困難になることが予想される。このため，系統内の電圧分布を把握して制御を行うVQCの高度化が必要となると考えられるが，新たに通信線などを設置するとコストの増加となる。このようなことから，筆者らは，機械学習を用いて需要家端の電圧を推定する方法について検討を行ってきた(1)。本論文では，この電圧推定結果を用いて，VQCにおける電圧の目標値を決定する方法について検討を行った結果について述べる。

6-195

架空送電線の弛み及び電流の多点磁気計測に基づく推定法の検討

◎眞野 空・濱田昌司（関西大学）

架空送電線における弛み及び電流の多点磁気計測に基づく推定法の検討を行った。磁束密度の瞬時値データを用いた方法の中で既に提案されている方法は各時刻にソルバーを呼び出す。これとは異なり、ある期間の磁束密度の瞬時値データを蓄積し、一度ソルバーを呼び出す方法についてこれまで検討してきた。今回、センサ数と配置を工夫することによる推定精度の変化を検討した。送電線温度の区別を10℃程度とした場合、センサ78個を半円形にかつ送電線方向に並列に配置した際、許容可能な磁気計測誤差が18.7%となり、実系統への適用に近付くことができたと考える。

6-196

平常時の電力系統の階層型電圧制御の高度化を目的としたコーディネートVQCの提案

○小関英雄（横浜国立大学、電力中央研究所）・辻 隆男（横浜国立大学）

これまで電力系統は、各電圧階級において各電圧調整機器（発電設備・調相設備・変圧器等）を活用して系統の電圧維持を階層的に行ってきた。一方で、分散型エネルギー電源（以下、DER）の導入拡大に伴い、これまで系統電圧を支えてきた基幹系の発電設備の並列台数が減少していくと考えられ、系統全体として無効電力リソースを確保し、電圧を維持、管理していく必要があると考える。 本稿では、電圧面から系統状態を指標化し、変電所の電圧調整機器やMV系統におけるDERに対して、制御整定値、制御目標値をコーディネートするVQCを提案する。開発したVQCツールを用いて、提案制御と従来制御を組み合わせた電圧管理システムの制御効果について検証した。

6-197

出力制御方式の異なる風力発電機群の容量比が出力制御の公平性と抑制量に及ぼす影響分析

◎菅原大知・斎藤浩海（東北大学）・佐藤宏樹・佐々木和人（東北電力ネットワーク）

風力発電機(WF: Wind Farm)などの再エネ電源が大量導入された系統では, 全系で発電過剰となる場合, 需給平衡を保つため優先給電ルールに従ってWFの出力制御が実施される。既往の研究において, 抑制量を最小限に止めつつ, WF電源間に出力制御の機会を公平に配分するようなWF電源の出力上限値の決定方法と, 公平な配分が成立するための条件が明らかになっている。本稿ではWFの総容量を一定として, 構成する電源の出力制御方式の内訳が異なるとき, WF電源間の公平性と抑制量にどのような違いが生じるのかを数値計算により確認した。この結果, オフライン制御電源比率が小さいと公平になりにくいが抑制量は小さくなることがわかった。

6-198

感度分析に基づくグルーピングを用いたNF電源の出力抑制率決定手法の検討

◎丹野祐次郎・芳澤信哉・林 泰弘（早稲田大学）・飛田雄一・佐々木和人（東北電力ネットワーク）

我が国では，日本版コネクト＆マネージの一環として，系統混雑発生時にノンファーム電源（以降NF電源）を抑制するノンファーム型接続を検討している。系統混雑時のNF電源の出力抑制は，電力系統におけるNF電源の総出力抑制量を最小限に抑える一方で，NF電源間で発電機会の平等性を確保しなければならない。本稿では，NF電源の発電機会の最大化と平等性確保の両立化を目的として，感度分析結果に基づくグルーピング化を用いたNF電源の出力抑制率決定手法を提案する。また，東北系統の北部系統を簡易的に模擬したモデルにおいて，NF電源の発電機会の最大化や平等性の確保を目的とする2つの比較手法と提案手法を適用し，合計出力抑制量と出力抑制の偏りの観点から提案手法の有用性を評価する。

6-199

分散型エネルギーリソースの更なる活用の検討

○岩佐正明・前野武史（新エネルギー・産業技術総合開発機構）・三浦大助（三菱総合研究所）・大山雅之（関西電力送配電）・渡辺慶一（東京電力パワーグリッド）・石井英雄（早稲田大学）

2020年10月，2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことが宣言され，太陽光等の再生可能エネルギーの導入を加速する必要がある。現在の系統では一部地域で空き容量が不足しているため，時間及びコストを要する系統増強することなく再生可能エネルギーの導入を進める必要がある。そのためには配電用変電所配下の分散型エネルギーリソース（DER）を積極的に制御して、系統混雑を解消し再生可能エネルギーの更なる導入拡大を図る必要がある。そこで、これらの先進的な海外におけるDERの管理・制御方式を調査し、それらを我が国に適用するための課題やその効果を整理した結果及び今後の展開について報告する。

6-200

日本版コネクト＆マネージ実現に向けたフィージビリティスタディについて（その1）

○高瀬英和・湯浅卓也・内野雅行（東電設計）

本フィージビリティスタディは、154kV以上の特別高圧系統におけるノンファーム型接続の導入ポテンシャルを検討し、ノンファーム型接続適用を特別高圧系統に拡大することの可能性について検討を行った。検討対象線路は、全国10社の一般送配電事業者が公開している空き容量マッピングで空き容量が無い線路などの条件で抽出し、この送電線にノンファーム型電源が連系された場合の抑制率について試算を行った。その結果、4つの特徴が明らかになり、この内、放射系統にミドル電源または変動電源が連系されている系統では、ファーム電源の運用状況で抑制率が大きく変わるものの比較的ノンファーム接続がしやすいと言えることが明らかになった。

6-201

日本版コネクト＆マネージ実現に向けたフィージビリティスタディについて（その2）～配電系統でのノンファーム接続の導入ポテンシャルの試算～

◎安藤希美・大竹宏明・入江 寛・中村俊哉（三菱総合研究所）・吉永 淳・石橋一成・高橋和紀（東京電力パワーグリッド）

「日本版コネクト＆マネージ」に関わる技術的検討を進めるにあたり，配電系統におけるノンファーム（以下，NF）型接続の導入ポテンシャルを検討し，NF型接続適用を配電系統に拡大することの可能性について検討した。配電系統においてNF型接続を適用した場合は，全国において，NF型接続適用の対象候補となる線路数は50本あり，約34,000MWhの発電エネルギーを抑制するという条件のもと，約226MWのNF電源を連系することが可能となることが明らかとなった。一方で，系統増強とNF接続のコスト比較を行った結果，系統増強の方がコストは低いという結果となり，現段階では配電系統においてNF型接続を適用するメリットは乏しいということがわかった。

6-202

送配電連携計画に向けた配電系統における負荷切替余力の指標化に関する検討

○市川 翼・末永晋也・多田泰之（日立製作所）

本研究は送配電部門で連携した設備計画により、信頼度は維持しつつも最大限コストは低減する合理的な設備投資を実現することを目的とする。送配電連携計画として、配電系統の構成変更による負荷切替に着目し、老朽化および電力需要が減少している配電用変電所（配変）の統廃合を検討する。配変廃止により設備更新を回避し設備投資の抑制が期待できる。本稿では、配変統廃合を判断するために、配電系統の構成変更により切替可能な負荷量（負荷切替余力）を指標化する方式を提案する。また、モデル系統における机上検討を行い、負荷切替余力を算出することにより配変の廃止が可能であることを示し、提案の有効性を確認する。

6-203

系統設備計画における意思決定支援のための対策候補抽出アルゴリズムの基礎検討

◎西村大貴・多田泰之・岡本佳久（日立製作所）

近年，再生可能エネルギー電源の普及，電力システム改革による市場原理導入の中で，系統設備形成計画における信頼性と経済性の両立がより一層求められている。これに対し我々は，設備形成・運用を統合的に考慮し，長期の経済合理的な判断を可能とする意思決定支援アルゴリズムを開発した。これは、最適潮流計算とその過程で得られるシャドープライスを用いて，系統信頼度を満たしていない，あるいはさらに目的関数を改善可能な系統対策候補を，対策群の中から抽出するものである。IEEE14bus系統を用いた検討により，当アルゴリズムが合理的な対策を抽出可能であることを確認した。

6-204

地域間電力融通設備増強に関する試算ツールの開発

○坂東 茂（電力中央研究所）

2050年の再エネ主力電源化に向けて、地域間連系線の必要増強量がどの程度の規模になるのかを早期に検討することは、リードタイムが長い送電線敷設の検討には必須である。本検討では、将来の地域ごとの再エネ導入量、地域間連系線と地域ごとのエネルギー貯蔵の必要容量を検討するためのツールを構築した。

6-205

道路交通センサスデータに基づいたEVアグリゲータビジネスの検討

◎高橋 知・田村 滋（明治大学）

EV is expected to be one of flexible sources because it will spread explosively in the future. EV can charge and discharge electric power through V2G in the same way as stationary batteries, but the difference between EV and stationary batteries is uncertainties in the usable time and usable amount of the EV battery due to the operation of the EV owner. In this paper, those uncertainties are modelled by analyzing road traffic census data. Furthermore, stochastic programming is applied to maximize the profit of the EV aggregator by procuring electricity from the spot market for V2G.

6-206

太陽光発電出力抑制緩和のためのV2Gを用いた翌日計画の検討

◎金井翔平・田村 滋（明治大学）

The surplus problem of RE(Renewable Energy) at off-peak electric power load actually occurs and the output of RE is being suppressed. In order to prevent global warming, it is desirable to reduce the amount of RE output suppression as much as possible. In this paper, Valley-filling optimization problem is applied to V2G daily planning because EVs are expected to spread in the future. Since there are uncertainties regarding the available time and available amount of EV, this paper proposes a method for solving the RE output suppression mitigation problem by V2G using stochastic Valley filling.

6-207

電気設備から見た蓄電池システムへの安全要求（その2）

○田代洋一郎（東京電力ホールディングス）

ここでは、韓国火災事故における第2次の事故調査委員会の調査結果から蓄電池システム火災事故の要因分析を実施すると共にその対策を確認し、国内における蓄電池設備の安全性確保の課題を洗い出す。

6-208

PV発電所における電力市場のインバランスリスク低減のための蓄電池運用

○崔 錦丹・植田 譲（東京理科大学）・大関 崇（産業技術総合研究所）

本稿では，FITによる全量買取り終了後における売電計画のインバランス回避に向けた蓄電池併設型PV発電所を対象に，インバランスリスク低減を行うためのヘッドルーム制御と蓄電池運用を検討した。PV発電出力のヘッドルームを予測値の1割から4割まで1割ずつ増やした4つのケースと，PV発電出力1kWに対して蓄電池容量を1kWh，3kWh，6kWh，9kWh，12kWhの5パターンを設け，PV発電の過小予測日と日中予測大外れの日を代表日としてヘッドルームと蓄電池容量の変化によるインバランス低減評価を行った。

6-209

Coordinated control of Air-conditioning system and BESS to improve FastADR performance - Impact of BESS's recharge rate on indoor temperature

◎Rajabu Myovela・Masaki Imanaka・Muneaki Kurimoto・Shigeyuki Sugimoto・Takeyoshi Kato（Nagoya University）・Miwako Fujita（Chubu Electric Power）

Heating Ventilation and Air-conditioning (HVAC) load is a potential resource for Demand Response (DR). However, its response delay to reference control signals limits its suitability for the application in Fast Automated Demand Response (FastADR). A novel HVAC-BESS coordinated control by which BESS discharges to cover the delay of the HVAC units'response to FastADR signals was proposed. Once all the HVAC units have started to respond, their power consumption is curtailed even further so as to recover BESS's energy during the DR period. This study investigates the impacts of BESS's recharge rate on indoor temperature comfortability in the proposed control.

6-210

自動車走行データに基づく電気自動車の急速充電需要曲線の推計

◎柳川剛貴・安芸裕久（筑波大学）

近年普及が進んでいる再生可能エネルギー（再エネ）の多くは変動電源であるため、再エネの大規模導入により電力系統の需給バランスを維持する系統調整力が不足する恐れがある。そこで蓄電池式電気自動車（BEV）の充電需要を系統調整力として活用することが期待されている。本研究はBEV急速充電に焦点を当て、実走行データを活用してBEVの充電量と充電時間帯を最適化するモデルを構築し、数値シミュレーションの出力結果を積算することでBEV急速充電需要曲線を推計した。推計結果から曜日別、時間帯別の充電需要が示された。また、充電料金等により充電行動を間接的に制御することで、BEV急速充電需要が系統調整力として活用出来ることが示唆された。

6-211

PV出力予測誤差による小売電気事業者インバランス削減のための蓄電池利用に関する一検討

◎中村美友・今中政輝・栗本宗明・杉本重幸・加藤丈佳（名古屋大学）・原田耕佑・森田 圭（ENEOS）

 小売電気事業者の採算性向上のためには需要の計画値と実績値の差（インバランス）に対するペナルティコストの削減が重要である。小売事業者が太陽光発電（PV）を保有する場合、その出力予測誤差はインバランスの主要な要因となりうる。インバランスの解消策として、小売事業者の顧客がピークカット等の目的で導入している蓄電池を余力のある時間帯に小売事業者側が利用できる可能性がある。この構想に関する第一段階の検討として、本研究ではPV出力予測の大外れの予見に基づく蓄電池運用を想定し、年間を通じた計算機シミュレーションにより、その効果を検討した。

6-212

太陽光発電の積雪時における発電開始メカニズムに関する考察

○町田伊宣・滝波 力・佐野常世（東京電力ホールディングス）

太陽光発電の普及により，PV発電量を予測するニーズは高まっている。しかし，太陽電池モジュール上の積雪により，『発電しない期間』や『発電量が減少する期間』が発生することで，発電量の予測精度が低下する課題がある。 本稿では，熱収支法を用いて太陽電池モジュール上の積雪量と融雪量の関係を検討し，発電開始タイミングの推定に関する考察結果を報告する。

6-213

不平衡系統側外乱による単独運転時電圧位相跳躍の評価

○榎谷大志・馬場旬平（東京大学）

系統連系規程において受動的方式と能動的方式の両手法による単独運転検出装置を具備することが義務付けられているが、このうち従来の能動的方式は、有効電力や無効電力による能動信号の相互干渉による検出性能の低下が問題となっている。また受動的方式には不感帯と呼ばれる単独運転を検出することのできない領域が存在する。そのため、受動的方式に加えて、単独運転発生時に系統側から外乱を系統に与えることで、この不感帯の問題の解決を試みている。本提案の検討のために系統事故を瞬時値解析によるシミュレーションで再現し、受動素子による系統側外乱を挿入した際の、位相跳躍の算出を行ったので報告する。

6-214

座標変換によるインバータ制御を適用した太陽光発電用パワーコンディショナの出力電圧低下時における挙動

◎山中光樹・清水洋隆・川田吉弘（職業能力開発総合大学校）

大容量の太陽光発電システムが配電線末端に連系された場合に逆潮流電力が増加すると，パワーコンディショナ（PCS）が制御不能に陥る可能性がある。今回，多くのPCSで適用されている座標変換を用いた電流制御の場合に，PCSがどのような挙動を示すかについて，計算機シミュレーションにより検討した。その結果，PCSからの出力電力P_ACが増加して出力電力の限界値P_limitに達すると，出力電圧V_ACおよびP_ACが大きく乱れて制御不能となった。大容量の太陽光発電システムが配電線末端に連系された場合，PCSのインバータ制御が座標変換による電流制御であっても，瞬時電流制御と同様に制御不能となることが明らかとなった。

6-215

低圧PCSに起因する電圧フリッカの家電機器に及ぼす影響に関する実験的検討

仲尾聡起・東谷拓馬・○松村年郎・雪田和人・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）・飯岡大輔（東北大学）・石川博之（中部電力）・深江隆之・濱田康佑・水野佑哉・峯田雄斗・吉江 学（中部電力パワーグリッド）

近年，太陽光発電装置（PV）が配電系統に大量導入される中，パワーコンディショナ（PCS）の単独運転検出機能の一つであるステップ注入付周波数フィードバック方式に起因する電圧フリッカが確認されている。これを解決する為，STATCOMの導入を試みたところ，STATCOMの制御条件によってはSTATCOM導入前の電圧フリッカとは異なる周波数の電圧フリッカが発生することが確認された。そこで，異なる周波数の電圧フリッカが家庭用電気機器に及ぼす影響を実験的に調査した。その結果，照明機器に対して，電圧フリッカの影響が高いことが確認できた。

6-216

調整力確保に向けた太陽光発電所における出力抑制を用いた前日発電計画手法の検討

◎皆井健太・植田 譲（東京理科大学）・大関 崇（産業技術総合研究所）

近年の再生可能エネルギーの導入量増加に伴い、電力系統の安定性が課題として考えられる。また、2021年に開設を予定している需給調整市場での3次調整力の調達もはじまる。 本研究では、将来の電力市場を想定した太陽光発電所における調整力創出手法およびその実現可能性について検討を行った。手法として発電計画にあらかじめ出力抑制を考えることで発電出力を上げる余力を与えた。この手法によりどれだけの調整力が確保できるかのシミュレーションを行った。また、予測通りに売電を行った場合との収益の差を比較することで調整力確保のコストを検討した。その結果、調整力確保のコストは実際の調整力発動の有無によって変化することがわかった。

6-217

スマートメータの計測情報を用いたエリア内家庭用太陽光発電総量把握手法の検討

◎村山拓海・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）

持続可能な都市を実現するため期待が寄せられている電力の地産地消を効果的に実施するためには地域内の太陽光発電、および電力需要の偏在状況を詳細に把握することが必要となる。将来的に地産地消を促進する地域新電力においても利用の見込めるスマートメータの購入電力量と太陽光発電の売電量の集計データは、自家消費量を鑑みた本来把握したい電力需要や発電量を正確に計測するものではない。本稿ではこのような性質を持つスマートメータのデータから地域の発電量推移を見積もり、自家消費量を把握する手法を検討し、精度検証を行った。検証の結果、太陽光発電に大きく寄与する日射量より、日々の生活リズムに関する制約を付けることで良い精度の推定が行えることが確認された。

6-218

太陽光発電における低電圧側動作点最大出力推定手法の実験的実証

◎清水優孝・馬場旬平（東京大学）

近年、再生可能エネルギーの増加による調整力不足及び系統容量の圧迫の懸念から、太陽光発電を出力抑制下で調整力として利用することが考えられている。しかし、太陽光発電は日照量や気温などの条件の変化により、最大出力が変動するため、調整可能な出力幅を正確に把握することは難しく、このままでは太陽光発電を調整力として利用できない。このため、太陽光発電の出力制御を行っている時点の最大出力可能電力を正確に把握することが必要となる。この推定手法のうち、正確性の面で利点のある、太陽光パネルを低電圧側のV-Iカーブの線形領域で運転し、その時の電圧と電流の値を用いて正確に把握する手法について、実際の太陽光パネルを用いた実験を行い、その実用性を実証した。

6-219

QRNNを用いた日射量予測

◎奥村祐斗・熊野照久（明治大学）

近年地球環境を考慮し、再生可能エネルギーの導入が進められている。その中でも国内では太陽光発電について注目されている。しかし、太陽光発電は天候に供給力が左右されやすいというデメリットがあり、大量導入時に問題となる。そこで本研究ではニューラルネットワークの一種である QRNN(Quasi-Recurrent Neural Network)を用いた予測手法を提案する。 結果について、他の手法であるCNN,LSTM,勾配ブースティングと絶対平均誤差で比較した時、予測誤差を減らすことができた。

6-220

メソアンサンブル予報による日射量予測の大外れ事例

○大竹秀明・大関 崇・高松尚宏・高根雄也（産業技術総合研究所）・森 友輔・若尾真治（早稲田大学）・計盛正博（気象庁）・仲江川敏之（気象研究所）

気象庁ではMSMに基づき複数の予測を行うメソアンサンブル予報システム（MEPS: Meso-scale ensemble prediction system）が開始された。本稿では、取得されたMEPSの予測データの中から予測が大きく外れた事例を選び、予測誤差の分析の事例解析を報告する。

6-221

上げDRのためのスマートメータを用いた太陽光発電システム発電量予測の予備検討

◎河浦崇人・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）・高野浩貴（岐阜大学）・國保友佑・東山昇一（関西電力送配電）

変動性再生可能エネルギーの増加による需給インバランスを解消するため，デマンドレスポンス（DR）が提案されている。本研究では，住宅のPV出力制御を用いた上げDRに着目し，アグリゲータがDR可能量を把握しておくためのPV発電量予測を行うが，住宅用スマートメータ（SM）の計測値は，PV発電量と負荷消費電力が合成されているため，分離は難しい。本研究では，上げDRのため機械学習を用い，SMによる計測値からPV発電量を予測する手法の検討を行う。本論文は，予備検討として住宅一軒，評価期間一週間でシミュレーションを行った。その結果，RMSEは0.201kWhであった。今後は，軒数と評価期間を増やし，気象予報の追加を検討する。

6-222

海外の数値気象予報を用いたマルチモデルアンサンブルの日射量予測への適用について

○吉田健二（伊藤忠テクノソリューションズ）・細越秀男（東北電力ネットワーク）

これまでは気象庁の数値予報（GSMやMSMなど）と機械学習を組み合わせた日射量・発電出力予測を検討してきたが、数値気象予報モデルの誤差に着目すると、機械学習では系統的な誤差は修正できても、数値気象予報モデルに起因するランダムな誤差は十分に修正できない課題があった。そこで本研究では、海外気象機関の数値予報モデルの太陽光発電出力予測への適用可能性に関する検討の端緒として、日射量予測への海外気象機関の数値気象予報モデルの適用と、マルチモデルアンサンブルによる平均的な予測精度の向上と過大予測誤差の低減についての検討を実施した。

6-223

機械学習を使用した予測と地理的な発電分布の変遷からの予測を組み合わせた太陽光発電出力予測

◎塚﨑紀貴・呉 大輝・小平大輔・亀田祐介・近藤潤次（東京理科大学）

太陽光発電の出力予測の従来の方法は、ニューラルネットワーク(NN)などの学習方法を使用することが多い。しかし、NNのような機械学習による手法では、過去のデータを使用して学習をし、予測を行うため、短期的な出力変動を予測するのは困難である。本研究では、過去の天候データを使用した3種の機械学習，すなわちNN、k-meansクラスタリング(k-means法)、長短期記憶(LSTM)による予測と，地理的な発電分布の変遷（オプティカルフロー）からの予測を組み合わせて予測を行う。悪天候日の予測の結果、提案手法は機械学習のみの予測に比べ、Root Mean Square Error (RMSE)が0.163向上した。また、晴天日の予測結果はRMSEが0.407向上した。以上の結果から、提案手法は機械学習のみの予測に比べて優れていると言える。

6-224

地理情報システムと雲画像を用いた日射量推定の精度向上

◎梶村奎慈・佐竹昭泰・三谷康範（九州工業大学）・塩田 淳（北九州市役所）

近年、環境にやさしい太陽光発電が普及しているが、その発電量は雲や周囲の建物などの影により大きく変動する。その変動の大きい電力が電力系統に流入すると、電力系統が乱れ安定した電力の供給が難しくなるおそれがある。そこで、雲については地上から直接撮影した全天画像を用い、影については地理情報システムを用いて日射量への影響を解析することで、太陽光発電の発電量を予測するシステムを構築する。これにより、太陽光発電の変動量を考慮した電力の供給ができ、電力系統の安定化への貢献を目指す。本研究では、雲が太陽まわりに入ったときの日射量の推定において、先行研究で構築した推定式の改善、精度向上を目的とする。

6-225

プルーニングを用いたニューラルネットワークの構造再設計に関する基礎的検討

◎榎本 翔・佐々木 豊・造賀芳文・餘利野直人（広島大学）

日射量の正確な予測ができれば，既存火力機や蓄電池(BT)の効率的な運用計画が実現できる。さらに，予測誤差やその分布を解析することで安定な需給運用に向けた予備力確保も実現可能である。これまでに著者らも再エネ発電量予測法の開発に加え，予測に基づく高度な発電機最適運用を行う需給マネージャを開発してきた。特に，太陽光(PV)発電量予測法では，一般に公開されている気象データを用い，ニューラルネットワーク(NNs)による学習を用いてきた。本稿では，気象庁で一般公開の1時間値の気象観測データを用いた改良したPV発電量予測法を提案し，さらなるシミュレーション時間短縮を目的に，Iterative Pruning Algorithmを適用した結果について報告する。

6-226

MEPSを用いたSVMの分位点回帰モデルによる地域日射予測

◎高松尚宏・大竹秀明・大関 崇・高根雄也（産業技術総合研究所）・森 友輔・若尾真治（早稲田大学）・仲江川敏之（気象研究所）・本田有機・計盛正博（気象庁）

今回、我々は、日射過大予測の低減を目的としてMEPS予報データを用いる機械学習モデルへサポートベクターマシン（SVM）による分位点回帰を適用し、関東5地点の平均日射量の予測誤差について評価を行った。その結果、MEPS予報データにSVMの分位点回帰モデルを用いることで、日射の過大予測を低減するとともに過少予測幅の抑制と予測精度の向上が可能であることを示唆する結果が得られたことを報告する。

6-227

二次励磁誘導発電機式風力発電と高インピーダンス送電線による電力変動現象の抑制手法

◎竹内大貴・雪江彩斗・川上周造・中島達人（東京都市大学）・太田 豊（大阪大学）

再生可能エネルギー電源は, 地球温暖化防止や燃料資源保護の観点から, 国内外で導入が進んでいる。しかし, 山地・沿岸・洋上などの風力発電の適地は, 電力系統から離れていることが多く, 風力発電から電力系統にアクセスするための送電線が長距離化しやすいため, 風力発電と高インピーダンスの送電線の相互作用により, 発電出力や送電線電圧が不安定に変動することが懸念される。著者らは, 風力発電と高インピーダンス送電線との相互作用による電力変動現象を, 実験室に設置した小容量の風力発電模擬装置を用いた実験を通じて検討することに取り組んでいる。本論文では, 研究室保有の風力発電模擬装置に準じた回路と制御系をEMTDC/PSCADで模擬して, 高インピーダンス送電線に連系した際の電力変動現象の抑制手法を検討し,シミュレーションで効果を確認した結果を報告する。

6-228

風力発電の長周期変動緩和要件対応のための予測を用いた蓄エネルギー装置による指定時間帯一定制御の基礎検討

◎後藤立真・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）

再生可能エネルギーによる電力の供給は天候に左右される。そのため，急激な出力変動が起きると，系統の運用が困難となる可能性がある。そこで，送配電事業者は変動緩和のための連系要件を設けることがあり，発電事業者はそれを満たすために蓄エネルギー装置等を用いるが，それらは一般的に高価である。本研究では，連系要件を満たしつつ蓄エネルギー装置の所要容量を減らす指定時間帯一定制御を提案する。本手法では予測を用いて長周期変動を緩和する時間帯に合成出力目標値を設定し，蓄エネルギー装置の出力を制御する。このシミュレーションを行った結果，連系要件からの逸脱時間が0.27%以下となる最小の蓄エネルギー容量は，本手法を適用することで33%削減することができた。

6-229

発電機群のコヒーレンシーを利用した過渡安定度評価に基づく風力発電連系系統の同期発電機出力配分の決定法

◎本木 諒・斎藤浩海（東北大学）・佐藤宏樹・佐々木和人（東北電力ネットワーク）

風力発電の連系量増加に伴う火力機等の同期発電機の減少は、系統の過渡安定度に悪影響を及ぼす可能性がある。この対策として同期発電機の起動台数を減少させないよう、風力発電の出力に応じた出力調節が必要である。本稿では、発電機群のコヒーレントな性質を表す指標を定義し、その指標と過渡安定度の関係を利用して同期発電機群の出力配分を決定する方法を提案する。

6-230

電力基幹系統を考慮した最適電源構成モデルによる洋上風力発電の導入可能性評価

◎蟹谷壮一朗・藤井康正・小宮山涼一（東京大学）

2015年のパリ協定採択以降, 地球温暖化対策の機運は一層高まっており, 2020年には政府より2050年カーボンニュートラル，脱炭素社会の実現を目指すことが表明された。現在，わが国では再生可能エネルギーの主力電源化ならびに電力の脱炭素化に向けた動きが加速しており，その中で，洋上風力発電はわが国の再エネの中でも最大の導入ポテンシャルを有しているため注目が集まっており，浮体式洋上風力発電の実証実験をはじめとした取り組みが積極的に行われている。本研究では, 電力基幹系統を詳細に考慮の上，複数のCO2排出制約の下で，洋上風力発電の導入可能性を評価する。

6-231

自励式周波数変換設備の運転モード切替制御に関する基礎検討

◎山口 遼・Suresh Chand Verma（中部電力）

異なる周波数の電力系統間の連系には，一般に交流の電気を直流に変換する高圧直流送電（HVDC：High Voltage Direct Current）技術を用いた周波数変換設備（FC：Frequency Converter）が用いられている。この技術にはこれまで他励式FCが多く利用されてきたが，近年では，自励式FCも採用されつつある。自励式FCは片系統の電力喪失時でのブラックスタート機能や分離系統移行・維持機能の実現が可能であるが，これら機能の適用に関する検討例は少ない。そこで，本発表では，デジタル解析用モデルによる，自励式FCの分離系統移行時の運転モード切替制御に関する検討結果を報告する。

6-232

多端子直流送電システムを対象とした直流事故時のブレーキングチョッパ動作検証

◎金子恭大・関口 慧・新井卓郎・水谷麻美（東芝インフラシステムズ）・石黒崇裕（東芝エネルギーシステムズ）

多端子直流送電システムにおいて直流事故が発生すると，変換所（端子）の直流コンデンサが過電圧となる問題がある。直流コンデンサが過電圧に至ると当該変換所は長期間停止し発電機会の損失を生じるため，過電圧停止を回避するのが望ましい。直流コンデンサの過充電を抑制する装置として，変換所直流側にはブレーキングチョッパ（BC）が接続される。一般的に，BC は交流系統事故時に動作し直流側電力を消費することで直流コンデンサへの過充電を抑制できることが知られている。本稿では，直流事故時にBC を用いることで直流コンデンサの過充電を抑制する手法を検討した。本手法の有効性をシミュレーションで確認したので報告する。

6-233

大容量洋上風力発電システムの構成方式に関する検討 -直列接続ウインドファーム（WF）の多端子直流送電システム-

○西方正司・竜田藤男・杉元紘也（東京電機大学）・山下健一郎（サレジオ工業高等専門学校）

地球温暖化抑制の方策として洋上風力発電が注目されており、好風況の海域にウインドファーム（WF）を建設する場合は長距離直流送電が採用される。本稿では洋上直流送電システムとして、メンテナンスを含めたコスト低減の可能な方式として、風力発電機の直列接続方式WF を洋上に設置し、発電した電力を多端子洋上直流送電システムにより陸上系統に送電する場合のシステム構成について検討する。また、陸上側に過負荷耐量の大きいサイリスタインバータと同期調相機より構成される変換器を採用した場合のシステムの特徴を従来のLCCやVSCと比較し、本方式は出力フィルタが不要でブラックスタートが可能であるなどの長所を有することを示す。

6-234

他励式直流連系に併設された自励式直流連系による高調波インピーダンスの変化に関する検討

◎羽賀大佑・中島達人（東京都市大学）

2011年に発生した東日本大震災により, 多くの発電所が被災し大幅に供給力が低下した。これを踏まえ, 供給力不足解消の一案として, 東西系統間周波数変換設備の増強が計画されている。現行の周波数変換設備としては, 他励式変換器(LCC: Line Commuted Converter)を用いた直流連系(以下, 他励式直流連系)が一般的である。しかし, 他励式直流連系には, 交流系統との相互作用現象に注意が必要であるなどの技術課題がすでに報告されている。このため, 他励式変換器の技術課題を解決できる自励式変換器(VSC: Voltage Source Converter)を用いた直流連系(以下, 自励式直流連系)が, 設備の増強には有望である。他励式直流連系の技術課題には高調波不安定現象が挙げられるが, 高調波不安定現象の発生を抑制するため, 他励式直流連系にSTATCOMを併設することにより, 系統側インピーダンスを減少させる手法が提案されている。本稿では, 自励式直流連系を他励式直流連系に併設した際の, 系統側インピーダンスの変化について報告する。

6-235

電力系統と自励式BTBの高調波相互作用検討(その2)

宮本光曜・山本友麻・羽柴靖人・武田康一（関西電力送配電）・○正城健次・天満耕司・藤井俊行（三菱電機）・森島直樹（東芝三菱電機産業システム）

STATCOMや自励式BTBに用いられる自励式変換器は，他励式に比べ制御性が高く，連系する系統や運転上の制約が少ないため，活用が広がっている。一方，自励式変換器を系統に適用した際に，変換器の電流制御系と交流系統との相互作用による高調波共振現象が報告されている。 本論文では，自励式変換器の電流制御系に関する原理と，電流制御系の高調波共振への影響を簡易モデルによる理論検討を行い，具体的な解析モデルで有効電流制御または無効電流制御ゲインをそれぞれ独立に変更したときの特性を評価し，自励式BTBの電流制御系の有効電流制御または無効電流制御のゲインを変更することで高調波共振の抑制が可能であることを示した。

6-236

路面電車電力線によるPV直流集電システムに関する研究-季節・天候を考慮した連系変換器の最適配置-

◎川野温輝・下町健太朗・三島裕樹（函館工業高等専門学校）・北條昌秀（徳島大学）

近年，太陽光発電(PV)が再生可能エネルギー発電の1つとして注目を集めている。 著者らは、路面電車沿線に位置する公立小中学校に導入されるPVの出力を、停留所付近に設置したDC/DC変換器(連系変換器)で直流のまま集電し、直接的に路面電車電力線へ供給するシステムを提案している。本稿では，このシステムの設置費用ならびに便益について，年間を通したシミュレーションを行い，PV出力の季節や天候による影響および電車負荷の時間変化を考慮して，連系変換器の最適配置を決定したので，その結果を報告する。

6-237

自励式SVCのPゲインカーブ制御による遠方母線の電圧安定化

○芦崎祐介・板谷陽平・相原雄也・奥山涼太（東芝三菱電機産業システム）・鈴木健一・近藤正佳（東京電機産業）

再生可能エネルギー発電所向け自励式SVCにおいて、遠方母線の電圧安定化に有効な「Pゲインカーブ制御」について概説する。固定ゲイン値で運用されるPゲイン制御に対し、本方式は、発電機の電力に応じ、遠方母線の電圧が安定となるPゲインを潮流計算で求め、それに基づくPゲインカーブでSVC無効電力を出力するものである。

6-238

需要家間取引を想定した配電系統のIEC 61850短絡保護リレーシステムの基礎検討

◎岡本理輝・青木 睦・林田弘太朗（名古屋工業大学）・小島一浩（シーテック）・岩丸明史（三菱電機）

現在の配電系統では，主に過電流リレーを用いた系統保護を行っているが，分散型エネルギーや需要家間取引の活用によって潮流が複雑となり，系統保護が困難になることが想定される。そのため，将来的な配電系統の保護リレーとして，両端電源系統の100%区間保護が可能な電流差動リレーの適用が考えられるが，高精度のサンプリング同期機能と専用の情報伝送路が必要となるため，そのコスト削減が求められている。 本論文では，電流差動リレーが高額となる原因であるサンプリング同期機能を不要とするIPネットワークを適用した電流差動リレーを，既存のIEC 61850対応のIEDを活用して構築し，開発検証を行った結果を述べる。

6-239

発電機制御用IEC 61850情報モデルの現状

○大谷哲夫（電力中央研究所）

IEC 61850は、電力流通分野における保護制御システムを主な対象とする国際標準であり、保護制御機能を表す情報モデル（論理ノードや共通データクラス）、制御やレポートに用いる伝送方法や通信プロトコル、保護制御装置の設定や主回路構成を表すための言語などを定めている。IEC61850の適用範囲は年々拡張されており、拡張対象の一つに発電機制御機能が含まれている。本論文では、発電機制御用のIEC 61850 情報モデルである論理ノードの現状と、その改訂に関する最新動向を報告する。

6-240

汎用・標準技術を活用したマルチベンダ保護リレーシステムの開発と時刻同期の基礎評価

○遊佐博幸・田中彰浩・大場英二（電力中央研究所）・飯田信吾・河原田 明・大成高顕（東芝エネルギーシステムズ）・下藤圭吾・高橋祥平・遠藤隆倫（日立製作所）・鳥海正純・清水利憲・鍋野恭宏（三菱電機）

次世代の保護リレーシステムの実現において、新しい保護機能の実現や導入コストの低減に向けてIEC 61850やIED（Intelligent Electronic Device）、MU（Merging Unit）、IPネットワークの活用が検討されている。本稿では、次世代システムの構成を提案するとともに、マルチベンダによるプロトタイプの構築およびその時刻同期精度を評価した結果について述べる。

6-241

国際標準IEC 61850適用に向けた電気所サーバの論理ノード検討

荒巻 聡・新久保 翼・◎梶原伸司・江島宏樹・中村優太（正興電機製作所）・黒木光弘・林 亮太・中野泰輝（九州電力送配電）・田中立二・大谷哲夫（電力中央研究所）

<p>国際標準であるIEC 61850の国内での普及に伴い、変電所オートメーションシステムを見据え、制御ケーブルのLAN化、通信仕様のIEC 61850適用により建設コスト削減と通信仕様の標準化が見込める為、監視制御装置である電気所サーバのサーバと入出力ユニット間、入出力ユニットと保護装置、現場機器間にIEC 61850を適用する場合の論理ノード（LN）の検討を行った。 LNの検討を進めていく中、IEC 61850の規格で準備されているLNに対応しないデータ項目（電力会社固有のデータ項目など）が出てきたが、LNを新規作成、もしくは既存LNの拡張する事で対応することとした。但し、様々な製品と相互接続するには新たに定義したLNを標準化しないと相互接続が出来なくなる可能性がある為、今後、新たに定義したLNを国際標準に追加する働きかけをし、電気所サーバのIEC 61850の標準仕様の策定、及び統一を推進していく。</p>

6-242

配電用変電所LAN型監視制御システムの154kV，275kVの変電所への採用に向けた検討

○丸山健治・武田康一・羽柴靖人（関西電力送配電）・藤岡克彦（三菱電機）・堀越和彦（日新電機）・滝山田昌文（エネゲート）

高度経済成長期に数多く設置された変電設備の更新時期を迎えており、その設備更新工事におけるマンパワー不足が大きな課題となっている。一次電圧77kV変電所において、マンパワーの大きなウェイトを占める制御ケーブルの切替に伴う確認作業時間の大幅な削減を目的に、新しいLAN型監視制御システムを開発、採用している。一方、一次電圧154kV、275kVの変電所においても同システムを適用することで制御ケーブルの切替に伴う確認作業時間の削減が期待されている。しかし同システムを適用するにあたりインターフェイスユニットの開閉サージ耐量が課題となるため、今回開閉サージの測定と評価を行い、適用可否の検討を実施した。

6-243

配電変電所向け次世代配電用保護制御ユニットの開発

◎斉藤竜一・松岡 渉（東芝エネルギーシステムズ）

電力事業における効率的な運用、省力化や保守性向上に対応する為、ディジタル技術を適用する流れは配電用変電所においても広く適用される状況となってきている。弊社としてもこの動向に対応するべくユニット/システムを提供してきたが、今後も継続して安定的な供給、長期保守性を確立するべく、最新のハードウェア・ソフトウェア技術を適用した次世代配電用保護制御ユニットを開発したので紹介する。

6-244

ディジタル形保護リレー劣化評価研究

○泰中禎仁・宮嶋 勲・武田康一（関西電力送配電）・中井聖孝・西坂駿亮・宇野信治（エネゲート）

新品と実運用されたディジタル形保護リレーを合計8台用いて、経年50年までの加速劣化試験を行いリレーの劣化部位について評価した。結果として、経年50年の加速劣化および評価試験において特性試験に変化や逸脱はなく、不具合については常時監視機能により全て発見できた。確認した不具合については、加速経年36年で「電源装置不良」が1件発生し、原因は電解コンデンサの不良であった。また加速経年38年で「整定値不良」が2件発生し、原因は「不揮発性メモリ」の不良であった。

6-245

ディジタル形母線保護用比率差動リレーJEC-2521の概要

○兵藤和幸（日立製作所）

母線保護リレーは，内部事故・外部事故判定性能が高い差動リレー方式が適用されていたが，母線至近端外部事故時は事故電流の集中によりCT鉄心の飽和による誤動作問題があった。その後，ディジタル形リレー技術が実用化されると，CTの二次出力から飽和現象を検出する技術の検討が進められ，差動電流の波形で飽和現象を検出してリレー動作をロックする方式が開発された。その他適用系統，事故検出性能なども同じくして検討され普及したため，今回，この規格を制定することとした。また，今回の制定に際してディジタル形リレーの長所を最大限に生かし，機能・性能の明確化，検査・試験方法の統一と簡素化を考慮した規格としたため，本制定の主なポイントを説明する。

6-246

対称性原理に基づく電圧位相差の計測

○関 建平（三菱電機）

これまで，対称性原理に基づく4象限化の交流電力計測式を提案した。そして，電力の電圧電流間位相角の計測と両端電圧位相差の計測に相似性があるため，対称性原理を電圧位相差の計測に適用することを試みた。まず，90度間隔を有する四つの自端電圧ベクトル及び他端電圧ベクトルによりゲージ双電圧群を構築し，それぞれ双有効電圧及び双無効電圧を計算し，更にATAN2関数により電圧位相差を算出する。本稿では，具体的な計測式を導出した後，電圧フリッカ実波形を用いて，提案手法と一般的な直角2サンプル演算法との比較計測を行った。その結果，提案手法は電圧位相差の4象限化を実現し，基本波の変動を忠実に再現し，耐高調波ノイズが大幅に改善されたことを確認した。

6-247

慣性機能付きインバータに関する単独運転検出機能の検討

◎宮代 匠・野呂康宏（工学院大学）・松浦隆祥・宮崎 聡・濱田 拓・森 健二郎（東京電力ホールディングス）

近年では再生可能エネルギーの注目が増え、インバータによる電源も増加すると考えられる。しかし従来のインバータは慣性機能を有していないため、周波数変動の増加などが懸念され、その解決策としてインバータに慣性機能を具備して同期発電機と同等制御する方法が提案されている。ここで、慣性機能付きのインバータ電源で系統連系をするにあたり、保護機能との干渉が懸念される。 本報告ではインバータに慣性機能を設けたシステムを実用化するにあたり、課題となる、単独運転検出機能と慣性機能の干渉についてシミュレーション検討をした。今回、試験をした単独運転検出方式については評価信号の変化が認められることから適用の可能性が示された。

6-248

慣性機能付きインバータに関する短絡電流低下に伴う影響の検討

◎水間大五郎・野呂康宏（工学院大学）・松浦隆祥・宮崎 聡・濱田 拓・森 健二郎（東京電力ホールディングス）

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、同期発電機を模擬したインバータの研究が進められている。しかし、インバータは過電流を抑制する必要があり、これにより短絡電流が減少して保護リレーに影響が生じる。 本研究では、事故発生時に慣性機能付きインバータ電源の過電流を抑制しつつ運転継続したときに生じる事故電流を、従来の同期発電機と比較することによって影響を明らかにして対策の要否を検討する。 シミュレーションを用いて研究を行い、事故種別や事故点を変化させて保護リレーの評価を行う。 結果、慣性機能付きインバータの場合の事故電流は従来と比較して小さくなっていたが、保護リレーの評価としては検出可能であった。

6-249

共振周波数方式を用いた配電線地絡事故点標定手法の検討

◎安居昂紀・宮崎 輝・馬渕裕之（東京電力ホールディングス）

配電線地絡事故が発生した場合、作業員が現地へ出向し探査装置や巡視により事故点を特定する必要がある。配電線の全長は数km〜数十kmにおよび事故原因は非常に多岐にわたるため、事故点の特定には多くの時間と労力を費やしている。これまで、迅速な事故点発見を目的として様々な事故点標定手法が検討されてきたが、共振周波数方式による事故点標定手法では、事故毎に異なる地絡抵抗の影響で大きな標定誤差が生じることが懸念されている。そこで今回、地絡抵抗の影響を除外可能な事故点標定手法の検討を行った。

6-250

地中系統の3線TDR測定における接地線の影響

◎大麻純季・東山昇一・稲岡優子（関西電力送配電）・久門尚史・和田修己（京都大学）・松嶋 徹（九州工業大学）

地中配電系統における事故点評定にパルス波を用いたTDR測定技術の適用を検討している。これまでの研究から、地中配電系統に複数存在する多回路開閉器について、多回路開閉器の反射波は接地線でのインダクタンス成分が支配的である事、多回路開閉器をインダクタンスで簡易的にモデル化できる事を確認している。しかし、1線注入の条件下のみでしか評価できていなかったため、3線同時注入でのTDR測定における影響を明らかにすることを目的に、今回は、パルス波の3線同時注入における多回路開閉器の接地線の影響を検証したため報告する。

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AI技術を用いた送電線故障原因分類

○森 直樹（日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット）・牛田一洋・上田勝久・下野晃裕（中部電力）・中村守男・和知 功・碇 真佐夫（日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット）・山口淳太（日立産業制御ソリューションズ）・曹 未偉（日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット）・吉田順一（日立産業制御ソリューションズ）

送電線故障の早期解消のためには，早期の故障原因の特定が必要であり，様々な技術開発が進められている。故障原因の特定は，故障発生時の気象データ，送電線周辺環境データ，オシロ波形データから総合的に判断しているが，作業者のスキル依存となる点，また原因解析に時間を要する点が課題である。本研究では，これらの課題を解消すべく，AI技術を用いた送電故障原因分類手法方法を検討した。送電故障発生時のデータを統計的に解析し，故障原因分類に有用な学習データを抽出しAIに学習させ，特定原因に対して高い分類精度を持つモデルを設計した。