一般講演

1-001

マインドフルネス瞑想を用いた幼児児童向けカリキュラム

○鎌田憲嗣（東京電機大学）・Kanyuma Kamata（King Mongkut's University of Technology Thonburi）・Yuwarat Srisupawong（国家放送通信委員会）・Koul Ravinder（ペンシルバニア州立大学）

幼児や児童にマインドフルネス瞑想における心のトレーニングを行った場合，子どもたちは集中力を高める事ができるのかどうか。また，発達障がいを持つ子と一緒に過ごす中でモンテッソーリ教育の中にマインドフルネスの瞑想を入れることで子どもたちにとってどの様な教育効果が得られたのか。そこで，著者らはこれまでモンテッソーリ教育における敏感期を過ごす子どもたちを中心に自閉症の子どもたちや発達障がいの子どもたちと一緒に3年間生活をしてきた。本研究では敏感期を過ごす子どもたちから低学年の子どもまでを対象にマインドフルネスの瞑想を取り入れた場合の子どもたちにどの様な効果が現れるのかを実践指導したので報告する。

1-002

コロナ禍における小学生向け出前授業の紹介Ⅰ ～小学校低学年生向けエネルギー教材の紹介～

○橋本慎也・秋元竣丞・木下心平・佐藤彩那・草野登志弥・関根彩夏・仲谷月桜・山本敏和（福島工業高等専門学校）・下山田明也乃（東芝インフラシステムズ）

持続可能な社会の構築には環境問題や再生可能エネルギーについての理解を深めていくことが重要である。特に，今後を担う子どもたちへの環境・エネルギー教育は極めて重要な意義を有している。我々は数年前から小学生を対象とした出前授業に携わっており，教材についても検討・製作を行っている。昨年度に小学校低学年生向けのエネルギー教材として，絵本，すごろく，トランプを製作し，出前授業で活用した。ほとんどの出前授業で参加生徒は希望者のみであったため授業前から意欲・関心は高い傾向だったが，どのケースでも授業後は向上していることから，環境・エネルギー教育への導入において本製作物は役割を十分に果たしているものと考える。

1-003

コロナ禍における小学生向け出前授業の紹介Ⅱ ～「遡り水車」実験キットの紹介～

○山本敏和・大竹蒼空・荻津桜子・高田 奏・馬場未來・坂野遥子・安田杏菜・橋本慎也（福島工業高等専門学校）・中西恒雄（いわき環境研究室）

将来の再生可能エネルギー普及に向けて小学生を対象とした学習の機会を設けることが肝要である。また生徒の発達段階に応じた授業および教材が重要である。今回，小学校高学年生向けに水力発電で利用される水車に関する教材として「遡り水車」の実験キットを製作した。流水に逆らって水車が傾斜路を上って行くという意外性とスピード競争が小学生の意欲をかき立て，水車の特性を学ぶのに最適な体験教材となった。再生可能エネルギーに対する授業と体験を終えた後の再生可能エネルギーに関する興味・感心は授業と体験の前に比べて概ね向上していた。コロナ禍の制約下においても，生徒が集中力を維持して学習に取り組んでいた姿が印象的であった。

1-004

再生可能エネルギーへの興味喚起に向けたデジタル教材に関する研究

◎橋本まゆり・橋本慎也・山本敏和（福島工業高等専門学校）

近年，再生可能エネルギーが注目を集めている。そのため，日本の将来を担う子どもたちへのエネルギー教育は重要である。しかし，エネルギー教育教材の開発は進んでいないのが現状である。本研究では，エネルギー教育教材の開発・検討を目的として，「エネルギーのベストミックス」をテーマに学習アプリケーションの開発を行った。そして，小学生を対象に，開発した学習アプリケーションの体験学習を実施し，アンケートで教材効果を確かめた。アンケートの結果から，開発した学習アプリケーションは，エネルギー学習への意欲，再生可能エネルギーへの関心の高まりが確認できた。今後は，システムの改善とオンライン教材への発展を検討する。

1-005

鹿児島高専電気電子工学科における本科編入学試験での試み

○中村 格（鹿児島工業高等専門学校）

2020（令和2）年2月に設置された社会連携委員会には，現在，傘下に7つのワーキンググループ（以下，WG）がある。その一つである動画WGでは，電気の基礎的知識普及のための動画教材の制作及び動画に関連するオリジナルな実験・実習機材と解説書の提供を行っている。それらの中から磁石落下実験教材「ふわっと君」を採り上げ，鹿児島高専電気電子工学科の本科編入学試験における口頭試問での使用を試みた。

1-006

三角関数を電気工学に応用する授業実践～三相交流と振幅変調を題材とした数学的モデル化～

○毛利 哲（東京都立白鴎高等学校）

初等・中等教育段階における数学教育では，現実社会を数式などで表し，その解決を図る数学的モデル化の導入が提唱されている。特に工学の習得には数学的知識・技能が必須であるが，高等学校段階では目的意識が希薄となりがちで，数学学習に興味や関心をもてない者も多い。そこで本研究では三相交流は振幅変調を題材として，数学的モデル化を導入した授業を実践したので，報告する。

1-007

植物栽培に必要な水分補給を計測する

○四元照道（兵庫県立神戸特別支援学校）

直流電圧計（DCミリボルト計）のメーターで表示する電池不要の土壌水分計を製作した。この水分量計の原理としては，異種金属間に流れる電気の流れを考えて，僅かに生じる電圧を計測して土壌の水分量を計測するのでイオン化傾向の原理を利用している。土の中の水分量を測定することで，枯れや根腐れなど水やりの失敗を防ぐのに役立てている。

1-008

数学教育を目的とした3Dモデルによる面積が不均一なサイコロの解析

◎水島アキラ・星野貴弘（日本大学）

現在，高校数学の確率の分野は，理解するのが難しい分野の1つである。多くの学生は，確率が大量偶発現象の実験による相対度数の安定化によるものであるという理解が不十分であると言われている。そこで視覚的にも感覚的にも分かりやすい3Dモデルシミュレーションを開発することで，確率教育の促進を図ることができると考えた。本研究の目的は，Unityを使用して面積が不均一のサイコロを分析し，大量回数のサイコロを振る3Dモデルの開発及び，確率と大数の法則との関係を把握できる3Dモデルを開発することである。

1-009

サイバーセキュリティ演習システムの開発

○石原 学・干川尚人（小山工業高等専門学校）

最近の情報機器の高度化，導入の低学年化に伴い，求められる基礎知識としてコンピュータリテラシはもとより，ネットワークリテラシ，セキュリティ及ぶまで幅広い内容が求められるようになってきた。そこで本論では，知識ベースの学習法から実体験を中心とする演習方式を検討し，ネットワークセキュリティを中心に「不正アクセス」「迷惑メール」「情報漏えい・改竄」「過剰負荷攻撃」の分野について演習を中心に学習できる演習システムを試作したので報告する。

1-010

オンライン授業におけるAIを用いたコミュニケーション方法の拡張

◎住谷英祐・神戸英利（東京電機大学）

COVID-19の影響でオンライン授業に注目が集まっているが，オンライン授業は現実の授業に比べると，コミュニケーション方法の種類が少ないという問題がある。また，教育にAIを用いる際には利用者同士のコミュニケーションを促進することが望ましいので生身の教師は必要であると考えられる。
よって，本研究ではXR技術を用いたVR教室上で生徒のノートの状態を確認・指導ができる机間指導システムを実装することで教師と生徒のコミュニケーション方法の拡張を行う。また，生徒がノートに間違いを記入した際にはAIから先にヒントを提示することで自己解決を促し，自己解決できなかった生徒を教師に通知することで，教師をサポートする形でのAIを実装する。

1-011

陸上無線技術士国家試験問題のテキストマイニング - KH Coderによる階層的クラスター分析 -

○松田豊稔（熊本高等専門学校）

テキストマイニング用のフリーソフトウェアKH Coder 3を用いて，第一級陸上無線技術士国家試験の試験科目「無線工学B」の問題の内容分析を行う。最初に，過去36回の試験問題から無線工学を学習するのに必要な語句（これを学習項目と呼ぶ）を抽出し，出現パターンの似通った学習項目，すなわち共起の強い学習項目を線で結んだ共起ネットワークを求める。さらに，共起性をもとに学習項目を分類しその系統性を示す階層型クラスター分析を行った結果を示す。

1-012

TOPPERS/ASPにおける並行処理教育カリキュラムの提案と評価

◎石川遼斗・南角茂樹（大阪電気通信大学）

近年組み込みシステムでは，組み込み技術者が不足している。その主な原因として組み込み技術の難易度が高いことである。そこで組み込み技術の初学者に対して，排他制御・セマフォ，タスク間通信，並行処理の三分野の教育カリキュラムを作成し，指導を行った。並行処理では，割り込み処理と排他制御などを取り入れ，容易に仕組みの理解が出来るよう日常生活内での例えも追加した。また，ボードでの実習を行い，処理の仕組みだけでなく実際の動作確認を行うことで，より深く仕組みを理解することが可能になる。評価には，授業内課題やアンケートを行い，評価を行った。この教育カリキュラムで組み込み技術の理解力向上，技術者不足の問題解決が期待できる。

1-013

TOPPERS/ASPにおけるタスク間通信教育カリキュラムの提案と評価

◎武田 昴・南角茂樹（大阪電気通信大学）

近年組み込み製品のソフトウェアによる不具合が増加しており，その防止策として技術者の再教育が推進されている。しかしながら，組み込み技術を習得するための難易度は高く，初学者向けの教育カリキュラムがほとんど存在していない。そこで本研究は組み込み技術の初学者に対して，排他制御・セマフォ，タスク間通信，並行処理の三分野の教育カリキュラムを作成し，指導を行った。タスク間通信の分野では様々な通信オブジェクトの相違点を明確にしながらそれぞれの特徴について図や表などを用いて並行して説明するよう講義をした。また，視覚的に理解するためにデータキュープログラムを用いて実習も行った。本研究で提案するカリキュラムにより，組み込み技術の習得，組み込みに対しての興味を持ってもらうことができれば，組み込み技術者不足の問題の解決が期待できる。

1-014

TOPPERS/ASPを用いたセマフォによる排他制御教育の提案と評価

◎若林波琉・南角茂樹（大阪電気通信大学）

組み込み技術を学ぶには習得に至るまでの難易度が高く，初学者のための教材や教育カリキュラムが少ない。主な要因として，ソフトウェア知識と，ハードウェア知識の両方が必要とすることが挙げられる。そこで本研究では組み込みの重要な分野である排他制御とセマフォ，並行処理，およびタスク間通信を三つの分野に分け，カリキュラムとして提案し評価を行った。最初に，プログラムの基礎を学んだ学生に対し授業を実施し教育効果を測定した。最後に，三つの分野の授業を行った後，理解度チェックとしてテストを実施し，評価を行った。これにより，組み込みシステムについての知識の習得が可能になり，人手不足の解消を期待できる。

1-015

電気的現象の可視化に着目した3Dモデルを用いた電気回路学習支援システムの開発

◎岩﨑匠良・星野貴弘（日本大学）

2012年度に国立教育政策研究所が行った「学習指導要領実施状況調査」によると，電気に関する単元は生徒・児童が興味を持ちやすい単元であることがわかる。その一方で生徒・児童が理解しにくい単元であると感じる教師は多く，実際に理解できないことを理由にこれらの単元を嫌いになる生徒・児童が増加している。このような課題の背景として，一般的な力学現象と違い電気現象は目に見えないため，直感的な理解を得ることが難しいという点が考えられる。そこで本研究では，電気回路における電流，電圧，抵抗といった物理量を視覚的に捉えることができる電気回路の学習モデルを出力し，電気回路に対する直感的な理解を促す電気回路学習支援システムの開発を行う。

1-016

テキストマイニングを用いた高電圧実験の目的と学生の理解との相関

○佐藤公俊・岩尾 徹・森下穂香・高木真宏・鈴木祐輝・任 振威・根本雄介・宮下善郎（東京都市大学）

本研究は，遠隔授業や動画等を活用した事前学習で代替可能な内容を整理するとともに，学修ログによる学生の学修内容や理解度をデータとして可視化して教育効果を評価，教育改善に向け，課題を検討するものである。今回は，高電圧に関する実験レポートを題材にして，テキストマイニングすることで，実験の目的と学生の理解の相関性の可視化を図った。その結果，目的と考察に相関はみられるが，目的と感想では，意図した目的に対しての共通の点が少ない。また，本来の実験目的をシラバスや事前学習等で理解せずに行っていることが見受けられ，本来実験の場で得るべき教育効果との乖離が認められた。今後の実験において，目的や達成目標を明確にし，言語化していく必要がある結果となった。

1-017

木材表面のトラッキング現象を題材とした高電圧教育

◎川島朋裕・吉川敢大・歌川真生・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）

高等専門学校（以下，高専）等において，情報工学や電子制御を専門とした学生の増加に伴い高電圧を取り扱った経験を有する学生が減少傾向にある。一方，電力・自動車・医療機器をはじめとする産業界からは，ハードウェア，とりわけ高電圧の取扱いに長けた技術者のニーズが高く，特に高専・技科大出身者にこの期待が寄せられている。
豊橋技術科学大学では，高専生を対象とした研究実習や，高大連携事業の一つとして，「豊橋技術科学大学Summer TECH-CAMP」を実施している。本報告では，Summer TECH-CAMPでの実施結果を基に，木材表面のトラッキング現象を題材とした高電圧教育の一例を紹介する。

1-018

モジュール型同期発電機実験システムの構築および測定

◎関口哲史・宋 子恒・田村鴻樹・藤田吾郎（芝浦工業大学）

【背景】現在使用されている教育用電力装置は，一般的に大型であり，組み換えの自由度が低く，装置ごとに決まった模擬や実験しか行うことができない。また非常に高価であるという問題点が存在する。
【目的】本研究では，容易に組み替えができ，自由度の高いモジュール型装置を用いた，実験を構築し，その中でも，机上において，タービン特性から発電機特性を学習することが可能である小型発電機システムの構築を目的とする。
【方法】実際のタービン発電機を模擬した，インバータモジュール，IM-SGモジュール，コントローラモジュールの三台のモジュールを使用し，短絡実験を行なった。
【結果】短絡後，突発短絡電流が流れ，その後，突発短絡電流と持続短絡電流との間に，数サイクル間，持続短絡電流に比べて，電流が低下している。

1-019

電力系統シミュレータを用いた短絡事故時の遮断器とアーク現象の教育

○宮下善郎・森下穂香・高木真宏・鈴木祐輝・任 振威・根本雄介・佐藤公俊・岩尾 徹（東京都市大学）・佐藤博昭・杉山博昭（東芝エネルギーシステムズ）

本学では，サイバーフィジカルDX も柱としながら，より実践的な授業のもとで問題発見，課題解決能力を養うことを目標としている。特に，電力エネルギー分野では，各種知識や知見を座学や実験で教えたり，設備見学など実機を間近に見られる機会を設けたりしながら，学生の理解を促進できるように工夫してきた。しかし，各々の授業につながりがなかったために，電力機器個々の知識は身につくが電力系統全体の深い理解に結び付かない問題点があった。学生自らが，電力系統全体を見渡す形で問題点把握しながら全体最適解を導き，学びの統合させるため，電力系統運転操作訓練教育用シミュレータを導入することとした。本稿では，この教育効果を検討するため，電力系統シミュレータを用いた短絡事故時の遮断器の動作とアーク現象の教育の進捗について述べる。

1-020

風力による浮上機構を用いた制御工学学習用装置の開発

◎真土凪人・星野貴弘（日本大学）

制御工学では，制御対象の数理モデルの構築や解析方法について学ぶが物理現象を数式により表現することや解析する必要があるため座学のみで深い理解を得ることは難しい。そのため，制御方式の違いなどの理解を深めるための教育実験が重要となる。教育実験の代表的な例として温度制御の実験が挙げられるが，見ているだけでは制御方式の違いについて理解することが困難であるといった問題点が挙げられる。そこで，先行研究では風力の浮上機構を用いて実際に現象を目で確認し，測定時に変化の様子がわかる実験装置を開発した。本研究では先行研究でパイプ内で浮遊する物体が引っかかってしまう問題の改善や，実際に学習者が使用するためのインターフェースを追加し機能の拡充を行う。

1-021

ベルト―ロ整流器に関する調査　ー現存器体と開発・製造資料の確認状況ー

○秋山 肇（福井工業高等専門学校）

ベルト―ロ整流器（Vertoro Rectifier）は機械式整流器の一種である。交流を変圧し，固定した整流子面上に回転刷子を同期させることで直流を出力させることが可能である。この整流器は旧第八高等学校の出身である椎尾詷氏によって1918年（大正7年）に発明された。その後，1936年（昭和11年）に設立された中央製作所株式会社にて実用化された。このベルト―ロ整流器は主に低電圧・大電流用途の直流電源機器として1968年（昭和43年）に生産を終了するまで計7,545台（海外輸出含）が出荷された旨記録されている。
本調査により，椎尾氏出願に係る特許明細を確認し，名古屋大学博物館に続き中央製作所株式会社内にも現存器体の存在が確認されたのでその状況を報告する。

1-022

ポテンシャルエネルギー関数の勾配により駆動される電圧受動型グリッドフォーミングインバータ

○石崎孝幸・西野 択（東京工業大学）・川口貴弘（群馬大学）・河辺賢一（東京工業大学）

本論文では，ポテンシャルエネルギー関数の勾配により駆動される電圧受動型グリッドフォーミング（GFM）インバータを提案する。このGFMインバータは，内部電圧フェーザの位相に関する1次元の動特性と絶対値に関する1次元の動特性で構成される。この構成により，動揺方程式に起因する周波数振動を抑制することが可能となる。また，回転子の運動エネルギーが模倣される代わりに，内部電圧と母線電圧のポテンシャルエネルギーが模倣される。理論解析結果として，電気的なサブシステムが平衡点に依らない受動性をもつこと，および，ポテンシャルエネルギー関数の凸領域に平衡点が近いほど，その平衡点の安定度が低くなる傾向にあることを示す。

1-023

高電圧回路によるオゾン生成に向けたエネルギーハーベスティングに関する一検討

○佐藤宣夫・阿久津友哉・鶴岡智彦・星田光一・小田昭紀（千葉工業大学）

環境電波によるエネルギーハーベスティングの応用として，高電圧生成とそれによる放電現象を利用したオゾン生成を行うために，本報告では，アンテナとダイオードから構成されるレクテナにより，電磁波を直流電力に変換する。具体的には，FM ラジオ波の受電に際して，コッククロフト・ウォルトン（Cockcroft-Walton; CW）回路を設計・製作し，その段数特性の実験的検討を述べる。

1-024

電磁界エネルギーの海水粒子への輸送過程

○吉田 弘・出口充廉（海洋研究機構）・江口和弘・小柳芳雄（パナソニック）・前澤 祐（先端力学シミュレーション研究所）

近年あらたな海洋産業の創出を目指し，ICT技術を海中に適用する試みがなされている。海中のワイヤレス技術では，音波・光・電磁波がメディアとして考えられている。周知のとおり，マイクロ波領域の電磁波は海中では全く利用できない。低周波領域になると利用価値が出てくるが，海水の電磁波物理は誘電率，導電率，透磁率の3パラメータにより規定されており，海水と低周波電磁波の相互作用についての詳細な検討はなされていない。
ここでは，古典分子動力学を用いた粒子シミュレーションによる，電磁波から海水へのエネルギー輸送過程の実験的研究内容について報告する。

1-025

バッファ型波長掃引レーザを用いたファイバブラッググレーティング計測の時間分解能に関する検討

◎山口達也・篠田之孝（日本大学）

ファイバブラッググレーティング（FBG）は防爆性や低損失性に優れた光ファイバ型の振動センサとして知られ，工学や科学などの幅広い分野で利用されている。筆者らは，FBGの多点かつ高速計測の実現を目的に波長掃引レーザを用いた計測システムの開発を進めてきた。これまでに，フィールドプログラマブルゲートアレイ（FPGA）による信号処理の高速化などを報告している。本報告では，バッファ型波長掃引レーザによる測定時間分解能の改善について検討し，FBGによる動的ひずみ測定を試みた。

1-026

脳波による照明とコミュニケーションの関係

◎植地勇太・石亀篤司・森光隼平・中田悠斗（大阪府立大学）・片桐眞子（大阪産業技術研究所）

人はコミュニケーションにおいて，言語だけでなく，表情などの視覚による情報を汲み取る。それに基づく相互作用が十分であると，自身と他者は同期状態となり，円滑なコミュニケーションの実現に繋がる。そこで本研究では，視覚に影響を与える照明環境と2者間のコミュニケーションにおける相互作用の関係を調べた。測定では複数の照度環境やコミュニケーション内容を被験者に行わせた。相互作用を検討する上で，脳波に蔵本モデルをあてはめ，同期状態について考察した。その結果，照明環境やコミュニケーション内容が，視覚からの非言語情報による相互作用に与える影響や各コミュニケーション課題での最適条件が示された。

1-027

LiDARを用いた小型ドローンの検出について

◎今井淳史・矢澤翔大・新妻清純・黒岩 孝（⽇本⼤学）

近年，手軽に空撮できるドローンの普及に伴い事故が多発し，航空法の改正を余儀なくされているが，一方で航空法の規制対象外となる様な小型ドローンも数多く開発・販売されている。ドローンは有人航空機に比べ遥かに小さく，レーダーでの検知は困難であるため，違法な飛行や企業施設への自爆攻撃等も発生している。そのため，飛行するドローンの検出に対する需要がかなり高まっている。本研究では，光学的にセンサ周囲の深度情報を取得できるLiDAR（Light Detection and Ranging）を用い，ドローンの飛行軌跡を測定できるか検討を行う。

1-028

視野中心部および周辺部に呈示した動画像の時空間周波数が眼球運動に与える影響

○横田正恵（名古屋文理大学）・横田康成（岐阜大学）

眼球運動は，形や動きの認知機構を知る手がかりとして，また，集中やストレスなどの指標などとして，様々な場面で使われている。近年は，ゲーム等の場面で，高精細であり急峻に動く動画像を，高リフレッシュレートのモニタで目にすることが多くなった。動画像が持つ空間周波数，時間周波数などの物理的性質が，ヒトの眼球運動に与える影響を知ることで，動画像の物理的性質がヒトに与える影響を理解できる。本研究では，空間周波数，時間周波数を一定の帯域幅で制限した動画像を作成した。動画像は，それぞれ，視野中心部，周辺部に呈示されるよう準備した。これらを被験者に見せたときの眼球運動を計測し，その結果を報告する。

1-029

電界誘起第二高調波発生法に基づく電界復元手法の適用条件

◎十亀正考・中村 信・佐藤正寛・藤井 隆・熊田亜紀子（東京大学）

本研究では，電界誘起第二高調波発生（E-FISHG）に基づく電界復元アルゴリズムの適用条件の検討を行った。我々のグループが提案したアルゴリズムでは逆計算と光路方向に沿った第二高調波信号の多点計測に基づいており，従来の方法に比べ高精度の電界校正を行うことが可能である。本研究では，点電荷対が作る電界分布を仮想電界とし，電界分布とレーザの焦点深度を変化させた際の校正誤差の評価を行った。この結果，復元したい電界の広がりが小さい場合は，レーザを集光するレンズの焦点距離を短くすることで校正誤差が小さくなることが明らかになった。

1-030

肺気管支モデルの自動生成及び接触電流通電時の電界計算

◎坂本 亮・濱田昌司（関西大学）

電界・磁界・電極電圧を人体に印加した際，人体内には静電誘導電流・電磁誘導電流・接触電流が流れ，医療分野や電力分野において体内電流の情報が必要となる。体内電流の影響を考慮すべき臓器の中でも本研究では心臓への影響を考慮するために肺の導電率の検討を目的とした。本研究では肺気管支ボクセルモデルを数値シミュレーションにより自動生成した。モデル生成にあたり，2分枝データ構造・北岡の気管支成長基本ルールを用いつつ気管支同士または肺境界面との衝突回避を考慮した。生成したモデルを基に電界分布・電流密度分布・電位分布の数値解析を行った。

1-031

箱型導電性物体を保持する人体モデルの静電誘導接地電流解析

◎石田優樂・濱田昌司（関西大学）

我々は普段の生活において送電線等による商用周波電界にさらされている。これによる接地電流の値を，人体ボクセルモデルに様々な形状の導電物体を保持させた状態で数値計算を実施することで調査してきた。今回は箱型の導電物体を保持する場合の接地電流値を調査し，導電物体の幅，奥行き，高さが分かれば接地電流値が求められる完全5次多項式を，表面電荷法による数値計算結果に対して最小二乗フィッティングを行うことによって算出した。1辺1m～10mの範囲内にある箱型導電物体を保持した場合に限り，この式は表面電荷法で求めた接地電流計算値と-2.43%～0.76%以内の相違で計算でき，異なる保持点高，周波数や印加電界にも直ちに対応が可能である。

1-032

ワイヤレス給電式電動歯ブラシの磁界測定

○木下浩一・表 智康・大久保千代次（電気安全環境研究所）

近年の蓄電池技術の進歩とともに一部の小型家電製品では，金属接点を介さずに非接触での電力供給を可能にするワイヤレス給電（WPT）技術を用いた充電方式が採用されている。本研究では，既に小型家電製品で実用化され販売されている電磁誘導方式によるWPTシステムを実装した電動歯ブラシについて磁界測定を実施した。その結果，電動歯ブラシから発生している磁界は，主に商用周波数である50Hz成分とWPTシステムから発生する中間周波帯域の成分であることがわかり，いずれもICNIRP2010の一般公衆への参考レベル（50Hzでは200µT，中間周波帯域〈3kHz～10MHz〉では27µT）より十分小さい値であることが確認できた。

1-033

安心安全を目指す電磁波シールドの研究

◎鈴木皓大（東京工科大学）

Since there are concerns about health hazards caused by electromagnetic waves, studies on shielding electromagnetic waves are performed. We focused on those of smartphones and evaluated the effectiveness of the electromagnetic shielding. The effects of the two types of shield materials were measured in an anechoic chamber using electromagnetic wave measuring instruments. As a result, it was confirmed that the wire mesh has a shielding effect of 77% and the sheet for cloths has a shielding effect of 93% at the 2.5 cm point, and that the electromagnetic wave can be completely blocked at a position 5 cm or more away.

1-034

Temperature at multiplex thermal sources

○多田利春（無所属）

The two thermal sources; PⅠ and PⅡ are located at the center of the substance 1 and on the interface between the substances 1 and 2, with which the spherical double layer model is constructed. In this situation, when PⅡ was used alone, and PⅠ and PⅡ were placed, two temperature distributions were discussed.

1-035

酵母懸濁液を流れる電流波形の非線形性と電圧印加時間との関係について

◎田村慶太・村治雅文・田中健司・白藤 立（大阪市立大学）

本研究では，懸濁液を流れる電流波形の非線形性と電圧印加開始からの時間との関係について検討した。
生存および死滅酵母懸濁液の電圧印加開始から5秒後，10秒後，30秒後，90秒後における電流波形および，各時間における生存および死滅酵母の電流波形の第3高調波含有率の平均とその値のt検定の結果を示した。
電流波形の非線形性をみることで，生存酵母と死滅酵母の判別が可能で，生存酵母懸濁液を流れる電流波形は，時間と共に歪みが顕著になることがわかった。

1-036

OPMを用いたキャップ型脳磁図計測システムの開発

○廣江総雄（国際電気通信基礎技術研究所）・武田祐輔（国際電気通信基礎技術研究所/理化学研究所）・鈴木啓大（国際電気通信基礎技術研究所）・山下宙人（国際電気通信基礎技術研究所/理化学研究所）

脳磁図計測（MEG）は脳神経活動に伴う磁場信号を高い時間分解能で測定可能であり信号源電流の推定が正確であるため非侵襲の測定方法として非常に優れている。しかし従来のSQUID型MEGは液体ヘリウムを必要とするため装置が大型となりコストも非常に高くなる。また被験者も装置に拘束されるなど負担が大きい。
そこでSQUIDに替わる高感度磁気センサーとして光ポンピング磁気センサー（OPM）を利用して脳波測定のような容易さで脳磁図を測定できるキャップ型のMEG測定システムを開発した。
開発した装置で基本的なMEG測定実験を行いその有効性を確認できた。本件では独自に開発した測定方法と脳磁図測定の結果を報告する。

1-037

CNNを用いた多波長顔画像に基づく眠気検出のための一般モデルの構築

◎鳥居拓海（青山学院大学）・宮田晃次（ソニーセミコンダクタソリューションズ）・南雲健人・大岩孝輔・野澤昭雄（青山学院大学）

レベル3の自動運転車はドライバーモニタリング等の機能を有するヒューマンマシンインターフェイスを備えることが義務化されている。畳み込みニューラルネットワーク（Convolutional Neural Network, CNN）を用いて遠隔計測が可能な熱画像から眠気を推定する研究が行われている。また，可視・近赤外・赤外帯域で計測した多波長顔画像の空間的情報の利用により，眠気を精度良く推定できると期待できる。本研究では，多波長帯域の情報に基づき眠気を遠隔で検出可能なセンサの開発を目指し，CNNを用いた多波長顔画像に基づく眠気推定一般モデルを構築した。さらに，眠気に関する特徴部位の特定を試みた。

1-038

多波長顔画像に基づく視聴覚コンテンツに対する情動推定

◎李 浩（青山学院大学）・宮田晃次（ソニーセミコンダクタソリューションズ）・南雲健人・大岩孝輔・野澤昭雄（青山学院大学）

AIや IoTなどの技術の進展に伴い情動センシングに対するニーズが高まっており，非接触・非拘束な情動推定技術の確立が望まれる。近年，可視・赤外帯域で計測した顔画像に基づく遠隔バイタルサインセンシングの研究が行われており，中でも顔面赤外画像から抽出した鼻部皮膚温の時間変動に基づく情動推定が行われている。可視・赤外帯域の中間に属する近赤外帯域は「生体の窓」と呼ばれるように生体組織に対する深達度が高いことが知られている。本研究では，視聴覚コンテンツ視聴中の可視・近赤外・赤外帯域で計測した多波長顔画像に対し，畳み込みニューラルネットワークを適用することで，コンテンツ視聴に対する情動推定を試みた。

1-039

陽子線誘起二次電子計測システムの構築およびAuを用いた実測

◎矢島大幹・小森あかね・三宅弘晃・田中康寛・羽倉尚人（東京都市大学）

月面における太陽からの高エネルギー陽子線は宇宙機の帯放電の原因となり故障に繋がる。陽子線誘起二次電子放出係数（Proton induced Secondary Electron Emission Yield: P-SEEY）は宇宙機開発における帯電解析に必要な物性値であるが，実測報告例は非常に少ない。また，既報ではエネルギー範囲によって別報となっている為，一元的な解析が出来ていない。そこで，本研究では広エネルギー範囲でのP-SEEYを測定可能なシステムの構築を行い，AuのP-SEEY測定を試みた。

1-040

基板上の配線パターンを利用したツインコイル式電流センサの開発

○栗原 晋・山内芳准・小泉和裕（富士電機）・原山滋章（富士電機メーター）

高精度で耐ノイズ性能に優れた電流センサを実現するため，プリント基板上に配線パターンで形成したコイル（以下パターンコイル）を用いた電流センサを検討した。
本電流センサは，電流線に対して矩形状の磁性体コアを上下に配置し，その磁性体コアの空隙の中央に，2つのパターンコイルを配置した構成である。
本電流センサは，電流線に対して左右にコイルを配置することで外部磁場の影響をキャンセルし，耐ノイズ性能を向上可能である。また，電流線の中央に形成した貫通穴にパターンコイルを配置することで，位置ずれによる感度変動を低減できる。
以上の構成にてパターンコイルの出力を解析した結果，電流センサとして十分な性能が得られた。

1-041

音響インピーダンス顕微鏡を用いた積層塗膜の内部モニタリング

◎磯辺悠斗・川島朋裕・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・小林和人（本多電子）

エポキシ樹脂は，主剤と硬化剤の混合比率，攪拌方法，硬化時間などの条件によって硬化後の特性が大きく変化する。例えば，局所的な硬化進展の相違によってエポキシ樹脂内部に密度分布が生じ，硬化後に残留応力が発生する。これにより，所望の機械的強度や電気的特性などが発揮されない場合がある。
超音波は，音響的な性質が異なる媒質の境界面で反射するため，反射波を解析すると厚さ方向に沿った物性値（密度や音速）の分布が得られる。センサを2次元走査することで，3次元の立体的な分布として評価が可能である。
本研究では，超音波顕微鏡を用いて，混合条件が異なる室温硬化型2液混合エポキシの硬化ムラを音響インピーダンス断層像として観察した。

1-042

レーザーを用いた異径微粒子の特性評価

○眞銅雅子・徳永隆志・廣瀬幹也・長田昭義（大阪工業大学）・吉村信次（核融合科学研究所）

大気中には，花粉や排ガス由来の粒子状物質など直径数ミクロンの微粒子が幾種類も浮遊しており，その粒子径や密度分布の特性評価が必要不可欠である。その有用な手法の1つに，レーザー散乱光または遮蔽光の強度変化から微粒子径と個数を計測するレーザー散乱光計測が挙げられるが，この手法はレーザー光路内に入射する微粒子の軌道が不安定で，観測データの再現性に乏しい。そこで我々は，微粒子軌道を安定させ，粒子特性評価精度を向上させる装置を開発した。さらに，顕微鏡写真による試料の可視化を行い，レーザー光遮蔽信号との相関をとることによって，異径微粒子特性の評価を行うことができた。

1-043

超音波によるコンクリート内鉄筋の劣化判定に関する研究

◎荒井翔太・岩月栄治・小塚晃透・津田紀生（愛知工業大学）・疋田智美（本多電子）

本論文では，コンクリート内鉄筋の劣化判定に関する研究である。
研究の方針としては，鉄筋を入れずにコンクリートのみの供試体，鉄筋の入った供試体，傷のある鉄筋の入った供試体，鉄筋を対象とし，ソレノイドに衝撃を与え伝播する弾性波を超音波振動子を用いて計測した。主な分析手法は，FFTを用いた。
実験結果としては，（1）5000Hz以下ではコンクリートの特徴となる周波数を観測すること，（2）10kHzから20kHzでは鉄筋の状態によって反応が変化すること，この2点がこの実験によって判明した。
この結果をもとに，円柱型コンクリート構造物を対象とした実験を行い，比較検証していく。

1-044

周波数分解空間平均処理による超音波物性量顕微断層像の低周波ノイズ除去と細胞観察への応用

◎村上 舞・新谷太地・川島朋裕・村上義信・穂積直裕・小林和人（豊橋技術科学大学）

超音波顕微鏡は，ヒトの皮膚や培養細胞等の薄い生体組織を非破壊・非汚染での観察に適している。筆者らが提案する生物用音響インピーダンス顕微鏡では，高分子基板に接する標本に対し基板背面から集束パルス超音波を送波し，その反射から深さ方向の断面音響インピーダンス分布を計算する。反射係数を音響インピーダンスに変換する操作を時間軸上で繰り返すため，低周波ノイズが時間軸上で積算され大きな誤差をもたらす。このノイズは，隣接する走査点間での波形の空間平均により低減するが，空間分解能が低下する。そこで，ビームの拡がりの周波数依存に着目した解析手法を提案する。本報告では，ヒト繊維芽細胞を用いた基礎検討の結果を述べる。

1-045

真空アークにおける陰極からの T-F 電子放出を考慮した3次元電磁熱流体解析

◎髙木真宏・鈴木裕斗・森下穂香・鈴木祐揮・根本雄介・任 振威・岩尾 徹（東京都市大学）

真空アークで発生する陰極点は，電流密度が高く，高速で動き回るという特徴があり，産業応用へ向けてシミュレーションによる陰極点の理論的な移動の予測が重要である。陰極点における高い電流密度を精度良く算出するため，本論文では，真空アークにおける陰極からのT-F（Thermo-Field）電子放出を考慮した3次元電磁熱流体解析を行った。T-F電子放出を考慮することにより，陰極温度がFeの融点である2000 K程度の場合においても，10^9.7 V/m 程度の電界が加わることにより熱電子放出の式よりも約100 倍大きい電流密度が計算され，高い電流密度の再現が可能となった。これにより陰極への入熱が増加し，多量の金属蒸気の発生と拡散により1500 m/s 程度の高速な陰極ジェットが生じた。以上より，真空アークシミュレーションの改善が達成された。

1-046

プラグ－コンセント接続部での放電火花によるLPGの着火条件

◎市川俊和・岡本勝弘・本間正勝・柏木伸之・藤本純平・山﨑宏樹（科学警察研究所）

プラグ－コンセント接続部でプラグ引き抜き時に発生する放電火花により可燃性ガスに着火する場合があり，火災・爆発原因調査の観点からプラグ－コンセント接続部での放電火花による可燃性ガスへの着火条件を理解することは重要であるが，これまでプラグ栓刃－コンセント受刃間を活線側，非活線側ごとに分けての検討はなされていない。本研究では，LPGを充満させた容器内においてプラグを引き抜いた際の放電火花について，活線側，非活線側で分けてオシロスコープを用いて放電火花特性を測定するとともにLPGの着火特性を観測した。放電が位相13度から130度の間で開始した場合に着火が認められ，放電火花エネルギーと放電火花開始位相が15度から140度まで比例関係にあることが分かった。

1-047

大気圧非平衡Arプラズマの放電電流特性の周波数依存性

◎竹村将沙樹（東京工業大学）

Although non-equilibrium atmospheric-pressure plasmas are expected to be applied to industries such as medicine and agriculture, there are still many unknowns about their specific basic characteristics. In this experiment, for non-equilibrium atmospheric-pressure Ar plasma, we measured how the discharge current characteristics change by adjusting the frequency of the applied voltage.
As the frequency of the supply voltage was increased, the frequency of the current pulses generated by the atmospheric-pressure discharge also increased, and the frequency dependence was confirmed. It was also found that when the frequency exceeded around 55 kHz, the discharge suddenly became more intense and the current pulses became seven times larger.

1-048

ヘリウム高希釈酸素狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマ中の酸素原子密度変化の推定

○中野俊樹・北嶋 武（防衛大学校）

Heによって高度に希釈された条件において，発光分光法を利用して He/O₂狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマ中のO原子密度変化を推定した。O原子密度変化の推定は，HeおよびOの発光スペクトル強度の測定値を，電子衝突励起と酸素分子との衝突によるクエンチングを考慮したモデルによる発光スペクトル強度の計算値と比較して行った。発光効率の算出式の近似はO₂混合率が5%以上の条件では誤差が少ないが，O₂混合率5%以下では精度が悪くなる。このため，この近似を見直すことによってO原子密度変化の正確な診断を試みた。さらに，発光効率の算出式の近似の見直しが診断結果に与える影響について検討した。

1-049

大気圧膜状グローコロナ放電の気体温度を考慮した窒素発光強度比から導出した電界強度

◎佐々本 凌・白水暁大・花井正広・篠原正典（福岡大学）

放電中の電界は，放電の形成と進展に決定的な影響を与える。従って，放電中の電界計測は重要である。本稿では，大気圧正極性膜状グローコロナ放電の電界強度を導出するために，窒素の1st positive system band（3, 1）と2nd positive system band（0, 0）の発光強度比を用いる。まず，発光強度比と換算電界E/Pの関係は，平等電界中に発生させた均一な発光を計測することで確認した。次に，正極性膜状グローコロナ放電中の発光強度比を測定し，発光強度比をE/Pに変換した。ここで，導出したE/Pは，気体数密度Nで換算したE/Nに変換する必要がある。結果，発光分光法から推定した正極性膜状グローコロナ放電の気体温度を考慮することで，発光強度比から放電中のE/Nを得ることを可能にした。

1-050

ギャップ長を変化させた大気圧正極性膜状グローコロナ放電の電界強度の遷移過程

◎白水暁大・佐々本 凌・花井正広・篠原正典（福岡大学）

放電中の電界は，放電の発生と進展に大きく影響する。従って，放電中の電界強度を測定し，放電の進展とその要因を理解することは重要である。本稿では，棒対平板電極の棒電極先端に生成した大気圧正極性膜状グローコロナ放電内の電界強度を導出する。電界強度の導出には，窒素の1st positive system band（3, 1）と2nd positive system band（0, 0）の発光強度比を用いる。また，電界導出において，窒素の2nd positive system band（0, 0）の発光強度と数値解析によって導出した理論スペクトルから推定した正極性膜状グローコロナ放電の気体温度を考慮した。結果，電極間のギャップ長d = 5, 10, 15 mmの3つの条件において，正極性膜状グローコロナ放電の生成から破壊直前までの換算電界E/Nの遷移過程を明らかにした。

1-051

誘電体バリア放電におけるストリーマ放電の分散性評価方法の開発

○大澤直樹・渡部佳月（金沢工業大学）・田口正樹・青木未知子・河井茂充（メタウォーター）

誘電体バリア放電（DBD）式のオゾン発生装置では，DBD空間で同時多発するストリーマ放電の発生様相を明らかにすることにより，オゾン生成効率を更に高くできる可能性がある。本研究では，平行平板型DBD装置において，DBD空間で同時多発するストリーマ放電の分散性を画像解析により定量評価する手法を開発し，印加電圧の周波数や接地電極の冷却温度がストリーマ放電の分散性に及ぼす影響を調べた。その結果，オゾン生成効率の高くなった条件では，ストリーマ放電の分散性が高くなっていることが確認された。

1-052

RFバイアス付き誘導結合プラズマにおける容量結合

Ivan Ganachev・○中野晴香（芝浦メカトロニクス）・中村圭二（中部大学）

RFバイアス付きICPにおいて，アンテナとバイアスの干渉が知られてうて，位相差を360°を変えると2種類（一瘤および二瘤）の特性がでて，後者は容量結合対策を講じた場合しか出ない。一方，今までの我々の解析は二瘤特性しか出ていなかった。二瘤特性の原因は容量結合と仮説し，プラズマ解析で検証した。

1-053

高繰り返しナノ秒パルスグロー窒素放電プラズマ生成と数値解析

◎飯田雅之・政井瞭平・峯 卓馬・菊池祐介（兵庫県立大学）

ガス圧力0.5 kPaの高繰り返しナノ秒パルス窒素グロー放電を用いた金属材料の窒化や放電現象の基礎的な特性の解明を行っている。繰り返し周波数600kHzにおいて，アフターグローが減衰する前に次のパルス電圧が印加されることから，準定常的にプラズマが生成される。時間分解分光計測から，アフターグロー中でも窒素分子イオンと窒素原子発光が持続していること，振動温度，ガス温度の時間変化を明らかにした。また，流体プラズマモデルをCOMSOL Multiphysicsによる有限要素法を用いてシミュレーションした結果と実験結果との比較を行った。

1-054

O₂中における水和クラスターイオンの移動度および反応速度定数の検討

◎安沢友花・奥山 由（苫小牧工業高等専門学校）・菅原広剛（北海道大学）

イオン輸送係数やイオン・分子反応に関する基礎データの多くは低ガス圧力中の場合が多く，高ガス圧力中においては十分でない面がみられるため検討が必要である。本稿では，O₂中のH₂O濃度を変化させた際に，シミュレーション上における反応速度定数とイオン移動度がH₂O濃度に対する移動度の変化に与える影響について検討した結果，反応速度定数については，各H₂O濃度において支配的なイオン種が変化し，それに伴いH₂O濃度に対する移動度の変化が観測された。個々のイオン移動度を変化させると，そのイオンが形成されるH₂O濃度範囲の移動度のみに変化が現れ，他の範囲においてその影響はないことが明らかとなった。

1-055

機械学習を用いた連続の式に基づく電子到着時間分布の解析

◎川口 悟（成蹊大学）

二重シャッタードリフト装置を用いて測定される電子到着時間分布（ATS）を連続の式に基づいて解析する新たな方法を提案する。ここでは，電子群の時空間分布をニューラルネットワーク（NN）によって表現し，連続の式およびATSの実測値を満足するようにNNの訓練を行う。連続の式に現れる電子輸送係数（電離衝突周波数R_i，重心の位置の移動速度W_r，縦方向拡散係数，3次の係数）をパラメータとして扱い，NNの訓練と同時に最適化する。これにより，電子群の時空間分布および一連の電子輸送係数をATSの測定値から得ることができる。窒素中のATSの実測値を提案方法によって解析することにより，窒素中のW_rおよび170 Td以上における電離衝突レート係数（R_i/N，N: 気体分子数密度）の測定値を初めて得ることができた。

1-056

絶縁体-空隙-絶縁体電極系における絶縁体間の接触点数が部分放電開始電圧に与える影響

◎和田隆寿・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

絶縁体間を接触させた絶縁体-空隙-絶縁体電極系を複数個並列に並べ，交流PD開始電圧（AC-PDIV）は絶縁体間を橋絡しAC-PDIVを測定した。電極数を増加させた場合のAC-PDIVの平均値は減少し，その値は電極数が1個の場合のAC-PDIVの最低値に近くなった。

1-057

バリア絶縁構造における放電特性の湿度依存性

◎髙木謙一郎・鈴木大輔・山田哲也（SOKEN）

モータ，インバータからなる電駆動システムの絶縁設計に重要なバリア絶縁構造において，部分放電開始電圧（PDIV）の湿度依存性を実測により評価した。DC電圧（0.1 kV/sでランプ状に変化）を印加したところ，25℃において，10~70%RHではPDIVはほぼ一定（約2.3 kV）であるが，80%RH以上ではPDIVが上昇した。特に90%RHでは，3.9 kVまで部分放電が発生せず，3.9 kV以上でアーク放電（火花を伴う全路短絡破壊）が発生した。PDIV上昇の推定要因として，絶縁体の表面導電率低下により表面電荷量が増大し，印加電界を緩和していることが考えられる。

1-058

インバータ駆動電動機の固定子コイル端部電界緩和システムの温度上昇に関する基礎検討

◎鴨下優太・セーナーナーヤカシャシカ（埼玉大学）・櫻井 登・中村佑大・明石康行（明電舎）・山納 康（埼玉大学）

高圧回転機では固定子コイルエンドでの部分放電を防ぐため，コロナ防止層と導電率が非線形的な変化を持つ電界緩和層からなる電界緩和システムが設けられている。しかしインバータ駆動による高電圧・高周波化にともない，固定子コイルエンド電界緩和部での電界集中や発熱現象が問題となっている。これらによる劣化現象の評価に先立ち，固定子コイルエンドサンプルのコイル導体に10kVrmsの正弦波高電圧を印加し，発熱を観察した。800Hz-10kVrmsで電圧を印加した場合，コロナ防止層の端部近傍で発熱した。また発熱状態の熱伝導解析を行なった結果，コロナ防止層の端部近傍以外に鉄心付近でも発熱が見られた。これは計算に放熱の影響が加味されていないことが原因として考えられる。

1-059

エナメル線ツイストペアでのφ-q-n分布におけるPDIV過電圧率の影響

◎泉 壮鴻（兵庫県立大学）

近年の産業用モータはインバータが用いられ高電圧で駆動している。しかし，モータコイルに使用されるエナメル線に高電圧が印加されると部分放電が発生し，エナメル線が損傷する可能性がある。本研究ではエナメル線ツイストペアのPDIVに対して過電圧率20%，30%，50%の電圧を印加して過電圧率が部分放電特性に与える影響を測定した。なお部分放電特性に与える影響は-q-n分布を用いて評価した。その結果，印加開始9-11秒後の最大放電電荷量を基準とした場合50%では時間経過により最大放電電荷量は減少したが，30%では59-61秒後まで増加が見られその後減少に転じた。また，20%では119-121秒後まで増加が見られ，その後減少に転じた。

1-060

エナメル線の部分放電開始電圧におけるパルス電圧の繰り返し周波数の影響

◎丸山大輝・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・太田槙弥・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年，モータの出力制御は小型で高効率なインバータ駆動が使われている。高速スイッチングによるサージ電圧がモータ巻線間に加わり，部分放電が生じ，モータの故障に繋がる可能性がある。部分放電を抑制するために開発された発泡エナメル線のサージに対する部分放電特性の解明が必要である。本研究では，パルス電圧の繰り返し周波数変化時の無発泡及び発泡エナメル線ツイストペアの部分放電開始電圧（PDIV）及び繰り返し部分放電開始電圧（RPDIV）への影響を検討した。実験結果として，無発泡・発泡試料共に繰り返し周波数変化によってPDIVはあまり差が生じなかった。RPDIVについては無発泡・発泡試料共に繰り返し周波数5・10kHzは0.5kHzに比べて低くなった。

1-061

過渡接地電圧法を用いた部分放電信号の距離依存性

◎中山めぐみ（兵庫県立大学）

近年の電気設備の保守において，部分放電（PD）を早期に検知することは重要である。PD検出方法の中でも，過渡接地電圧法（TEV）は，設備停止の必要がなく，設備に容易に設置できるという点で注目されている。一方で，取得するTEV信号のPD源からの伝搬原理が不明瞭であることから研究が進められている。そこで本研究では，PD源とTEVセンサの距離変化時のTEV信号の変化について検討を行った。取得したPD発生時のTEV信号波形をみると，TEVセンサがPD源から遠くなるにしたがって負の立ち下がりのTEV信号は減衰していた。この時，周波数解析より，負の立ち下がり信号と同様に，共振周波数45 ~ 48 MHzでの信号強度も距離が遠くなるにしたがって減衰していく傾向となることがわかった。

1-062

電力設備の部分放電監視用TEVセンサに関する研究　―設備スケールを考慮した部分放電検出特性の検討―

◎白石幸範・三浦拓朗・八島政史（東北大学）

筆者らは電力設備の劣化診断技術として，絶縁破壊の前駆現象である部分放電を検出するためのTEVセンサに着目し，実設備への適用可能性を検討している。TEVセンサは設備筐体の外部に内部磁石で装着することが可能である。本稿では3次元電磁界解析ソフトを用いてTEVセンサを装着する鉄板の大きさを変化させ部分放電検出信号に対してフーリエ変換を行い，結果を比較した。検出信号には電磁波由来の高周波成分と接地線由来の低周波成分がある。高周波成分は鉄板の大きさによって変化はなかった。低周波成分は鉄板を縦方向および横方向に長くするとさらに低周波になり，相対強度は縦方向に長くすると大きく，横方向に長くすると小さくなることが分かった。これらの知見から実設備で検出できる信号を推定することができた。

1-063

氷中の直流電圧印加による酵母及び枯草菌の殺菌

◎彦坂由貴子・渡邉聖人・村本裕二・村上祐一（名城大学）

本報告では，直流電圧印加による氷中の酵母，枯草菌殺菌について検討した。枯草菌はグラム陽性菌に分類される。グラム陽性菌はグラム陰性菌に比べて細胞壁が厚いという特徴がある。実験試料は，酵母または枯草菌を含むNaCl溶液である。実験試料を-20℃で40分凍結させた後，直流電圧100Vを印加した。実験の結果，酵母及び枯草菌は凍結による生菌率の低下が確認された。さらに，どちらの菌も直流電圧印加による生菌率の低下が見られた。

1-064

高電界パルス殺菌に及ぼす水溶液粘度の影響

◎板倉光優・村本裕二・村上祐一（名城大学）

本報告では，高電界パルス殺菌に及ぼす水溶液粘度の影響を調べるために大腸菌の含めた試料粘度を変化させ，高電界パルスを印加し，それぞれの生菌率を比較検討した。その結果，どの粘度においても殺菌効果は確認された。さらに水溶液の粘度が約3,000 mPa・sより高くなると，生菌率が水溶液粘度2,000mPa・sより低いものよりも高くなる傾向を示した。また，水溶液粘度を変化させた試料での生菌率は，濃度未調整のものと比べて高くなった。水溶液粘度が増すことで，電気伝導率が低下し，細胞膜周辺のイオンの挙動が変化することで高電界パルスによる殺菌効果が小さくなったと考えられるが，現在，さらに検討中である。

1-065

球雷放電を用いたインジゴカルミンの分解に対する温度の影響

◎横倉健児・渋谷侑平・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

近年，工業廃水の処理に反応性が高いOHラジカルでの処理が注目されており，その効率的な生成方法として大体積で長寿命の球雷放電が期待されている。本研究では，球雷放電を使用して難分解性有機物の疑似物質であるインジゴカルミン（IC）水溶液を分解し，その過程での温度変化を観察し，影響を調査した。放電による温度上昇を制御にした場合はそうでない場合と比較して，分解速度はほぼ一定で，平均的な分解速度は遅くなるという結果が得られた。これは，温度上昇に伴う水溶液の導電率の上昇が抑えられ，放電の際に消費される電力が小さくなったためであると考えられる。また，ICの分解過程において温度に大きく依存する反応があることが考えられるため，質量分析装置を用いて，ICの分解生成物の観測を行う予定である。

1-066

キャビテーションプラズマ処理水を用いたメチレンブルーの分解に及ぼす保管温度の影響

◎北村太輔・宇圓田隆成・岡田 翔・岡 好浩（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマ法は効率よく液中に低温プラズマを生成できる手法である。キャビテーションプラズマによって処理された水はメチレンブルーを分解する効果が長期間持続することがわかっている。今回，キャビテーションプラズマ処理水を用いたメチレンブルー分解に及ぼす保管温度の影響を調査した。処理後経過時間1時間から5，25，40，70℃の環境で保管したMB水溶液の吸収ピーク値の減少速度は，保管温度を上昇させると増加することがわかった。経過時間2 - 8時間の範囲から算出した反応速度定数はそれぞれ4.5×10^-6，9.7×10^-6，1.4×10^-5，1.0×10^-4 s^-1となった。

1-067

低周波平等電界中の生理食塩水の解凍特性

○加藤正平（東洋大学）

高電圧技術の応用として食品の冷解凍が改善されるとする冷解凍機器が市販されている。その高電圧の効果に水分子運動を電界で制御するという一見科学的な説明がされている。しかし，高電圧によって発生するコロナ放電の効果（イオン風，オゾン）と考えられる研究結果を示してきた。本研究ではコロナ放電を生じない電界における生理食塩水の解凍現象を調べた。高電圧の有無による解凍特性の変化は認められなかった。食品の冷解凍に高電圧を使用する科学的根拠は，冷解凍対象物内の分子の電界による制御ではなく，気体分子の制御であるイオン風による気流の変化，熱伝達の変化によるものである。

1-068

スパーク放電を用いたプラズマ栄養水合成におけるオゾン濃度変化

◎高橋勝之心・椎葉京介・坂東隆宏・針谷 達・滝川浩史（豊橋技術科学大学）・井出健太郎・大石智明・爪 光男（シンフォニアテクノロジー）

切り花の課題として，日持ち性向上がある。水に放電処理（スパーク放電）を行うことによって，植物の栄養となるNO₃^-や殺菌効果を持つH₂O₂，O₃を含む水（プラズマ栄養水）を製造する技術開発を進めている。これまでの研究では，スパーク放電時のNO₃^-，H₂O₂の濃度測定を行ってきたが，本研究では新たにO₃の濃度測定を行う。実験方法として，プラズマ栄養水生成装置を用いて，水道水に放電を行った。その処理水のpH，水温，導電率，NO₃^-，NO₂^-，H₂O₂，O₃濃度を測定した。溶存オゾンは30分で0.75 ppmまで増加した。一方，大気中のオゾンも測定し20分で0.5 ppmとなりその後飽和した。溶存O₃は，空気中で生成したO₃の溶け込みと，気液界面での反応による生成が考えられる。

1-069

キャビテーションプラズマにおける入力エネルギーに及ぼす溶液導電率の影響

◎中原健太・森岡 慧・岡田 翔・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマは，減圧沸騰現象を用いて液中に気泡を発生させることで，効率的なプラズマの生成が可能である。これまでに，プラズマ発生率における溶液導電率の影響を調べてきたが，入力エネルギーも変化することが判明した。プラズマ生成パラメーターの詳細を検討するために入力エネルギーに及ぼす溶液導電率の影響を調査した。放電未発生パルスについて，2 µS/cmのときの入力エネルギーは0.10 mJ/pulseであり，導電率の増加に伴い増加し，300 µS/cmのとき4.4 mJ/pulseである。放電発生パルスについて，2 µS/cmのときの入力エネルギーは0.53 mJ/pulseであり，導電率の増加に伴い増加し，300 µS/cm のとき1.7 mJ/pulseである。

1-070

キャビテーションプラズマにおける起点数と連続放電回数に及ぼす溶液導電率の影響

◎森岡 慧・中原健太・岡田 翔・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマ法は減圧沸騰現象を用いて生成した大量の微小気泡を含む溶液に高繰り返し高電圧短パルスを印加することで，液中に効率よく低温プラズマを生成する手法である。これまでに，溶液導電率が増加すると，電極間に印加する電圧を一定にした影響によって投入エネルギーが増加し，プラズマ発生率が上昇することがわかっている。今回，その要因を明らかにすることを目的として，起点数と連続放電回数を調査した結果，導電率の増加に伴い起点数は直線的に増加し，連続放電回数はわずかに増加する傾向があることがわかった。溶液導電率の増加に伴うプラズマ発生率の上昇は起点数の増加の影響が大きいのではないかと考えられる。

1-071

低温プラズマによる活性化を念頭に置いた液相化学のモデリング

○村上朝之・瀬戸寿之・若杉健一（成蹊大学）

低温プラズマの生体医療分野への応用研究においては詳細な液相化学の理解が求められている。ここでは，大気成分が溶解した大気飽和水および生理的食塩水に対して低温大気圧プラズマを照射することで活性化される液相化学の解明を念頭に置き，液相化学反応ネットワークの解析を行い，反応系の構造的な特徴を明らかにした。

1-072

ZrO₂ナノ粒子分散液に対する非熱平衡プラズマの効果

◎高木 駿・里 佳彦・王 斗艶・浪平隆男（熊本大学）

近年，ナノ粒子を利用した製品が幅広い分野で応用されている。しかし，粒子の凝集による性能劣化が問題視されており，凝集を防ぐ手法に関する研究が行われている。先行研究にて，ZrO₂ナノ粒子分散液液面に非熱平衡プラズマを照射すると液中のZrO₂ナノ粒子の凝集が抑制された。しかし，その詳細なメカニズムは判明していない。そこで，プラズマ処理による分散液のpHと粒子の等電点の変化を調査した。その結果，プラズマは分散液のpHを5.4から3.9まで低下させ，同時に2.8未満であった粒子の等電点を5.0まで上昇させた。このことから，ZrO₂ナノ粒子はプラズマ処理によって正に帯電しやすい状態となり，粒子間の静電的反発力が強化されたことで凝集が抑制されたと考えられる。

1-073

直流電圧重畳によって電位差のある2並列気中ギャップの同時フラッシオーバ特性

◎中根龍一・三木 貫・三木 恵（電力中央研究所）

送電線における信頼性の高い多相雷事故の評価技術の確立のため，塔頂雷撃時に複数のアークホーン（AH）が同時にフラッシオーバ（FO）する多相FO現象について調査を進めている。これまで，AHを模擬した棒-棒ギャップを並列に配置した実験系において，気中ギャップの放電様相から同時FOに至る条件について検討してきた。本稿では，実際の送電線では交流電圧の位相差により，各相で異なる電位差において雷撃が発生する点に着目した。直流電圧重畳により，予め電位差のある2つの気中ギャップに短波尾雷インパルス電圧を印加した時の同時FO特性を取得した。その結果，各気中ギャップ間の絶縁格差が大きくまたは小さくなるほど，同時FO率が低下または上昇することを実験的に検証した。

1-074

真空アーク遮断後の微小粒子に起因したNSDD現象の観測

◎地主勇輝・稲田優貴・前山光明・山納 康（埼玉大学）・山納 康（筑波大学）・大坊 昂・浅利直紀・丹羽芳充（東芝インフラシステムズ）

真空遮断器では電流遮断後にNSDDが発生する事がある。NSDDには微小粒子起因のものが存在するが詳細なメカニズムは分かっていない。
本研究では電流遮断後に電極間を飛散する粒子の観察を行ない，どのように放電を発生させるかを観察した。また，試験後の電極表面をEDXで観察した。
今回の観察ではシャドウグラフ法を使用し，電極間を飛散する粒子の観察を行なった。
陽極から放出した微小粒子が陰極に接触した後，別の粒子が陰極から放出された。1つはゆっくりと陽極へ向かったが，もう1つの粒子は陰極表面に複数接触したのち放電した。
微小粒子をEDX分析した所，電極の場所にかかわらず，Wの組成が約9割を占めていた。
この事から，NSDDを引き起こす粒子はWC粒子が原因であると考えられる。

1-075

超臨界CO₂中のパルスアーク放電プラズマのナノ秒時間分解分光計測

◎新田聖輝・古里友宏（長崎大学）・稲田優貴（埼玉大学）

超臨界流体は高密度かつ反応性が高い流体であり，抽出・分解・染色などに応用される環境に優しい媒質である。近年，高エネルギーで反応性の高い放電プラズマを超臨界流体に付加することで，ナノ材料合成や高繰返しパルスパワースイッチ等の研究成果が報告されている。しかし，超臨界流体を用いた応用技術の発展に不可欠なプラズマの基礎研究の報告は少ない。本研究で扱う超臨界CO₂中のパルスアーク放電は数百ナノ秒オーダーで過渡的に変化するため，分光器と高感度ICCD検出器を組み合わせたシステムでナノ秒時間分解分光計測を行った。本報告では分光計測結果からプラズマの生成から消滅までの連続・線スペクトル（発光種）の経時変化を報告する。

1-076

高気圧乾燥空気下における沿面放電特性

◎風間勇希（東京電機大学）・鈴木遥登・佐藤正寛・熊田亜紀子（東京大学）・日髙邦彦（東京電機大学）・髙野 翔・早瀬悠二・山城啓輔・高野哲美（富士電機）

SF6ガスが排出規制の対象となってから，GISに用いる代替ガスの検討が進められている。自然ガスは環境負荷が小さく毒性がないことから代替ガスとしての利用が望まれている。本研究では代替ガスとして，乾燥空気に着目した。
乾燥空気を用いたGISと相性の良い遮断器に真空遮断器がある。真空遮断器を乾燥空気下に設置する場合，真空バルブの金属蓋部，セラミックス絶縁筒，乾燥空気の三重接触点が弱点となり沿面放電が進展することが危惧されている。
本稿では高気圧乾燥空気下における沿面絶縁特性解明を目的に，絶縁破壊電圧と部分放電開始電圧を測定した。その結果，絶縁破壊電圧は高気圧域で飽和し，部分放電開始電圧は線形に増加した。

1-077

電極移動を利用した気流による低圧直流アーク消弧過程に関する検討

○宮本淳史・酒井智康・味岡日和・伊藤裕幸（日東工業）・松村年郎・津坂亮博・北村拓真（愛知工業大学）・横水康伸（名古屋大学）

これまで著者らは遮断器内部に発生するアークを早く消弧するため，開発した簡易アーク実験装置を用いて気流による直流アーク消弧の有効性を調査してきた。
本実験では，アーク周辺に気流を集中させ，流速と直流アーク消弧の関係を検討するため，2次元気流解析およびアーク遮断実験を行った。
傘形状の電極カバーを設計・製作し，2次元気流解析を行い，開極速度によって流速が変化することを確認した。次に，遮断実験を行い，流速を変化させることでアーク遮断距離の変化を測定した。
その結果，アーク周辺の流速を速くすることで，遮断距離を30mm短くすることができた。
アーク周辺に流速の速い気流を集中させることで，アーク消弧の促進が期待できる。

1-078

準大気圧ヘリウムアーク放電照射による繊維状ナノ構造タングステン形成における 試料バイアス電圧効果

◎多司馬光夫・菊池祐介（兵庫県立大学）・青田達也・前中志郎・藤田和宜・高村秀一（ユメックス）

タングステン（W）等の金属にヘリウム（He）プラズマを照射すると表面に繊維状ナノ構造が形成され，黒色化することが知られている。我々はこれまでにガス圧力5 kPa 下のHe アーク放電プラズマ照射により繊維状ナノ構造を形成することに初めて成功している。
本研究ではW 試料表面に入射されるHe イオンエネルギーを制御するため，試料バイアス電圧Vb が繊維状ナノ構造形成に与える効果を詳細に調査した。実験では Vb = -52 ~ -242 V としたところ，Vb 上昇により表面のW 繊維直径が細くなること，繊維状ナノ構造の成長速度が速くなることを明らかにした。

1-079

100 kV級低ジッター単発パルス発生装置の検証

◎中野智之（電力中央研究所）

高電圧実験等において，インパルス性の電圧印加によって100 mm程度の気中ギャップを絶縁破壊する際には，100 kV級の波高値が必要である。当所は，1パルスにつき10 J程度のエネルギーを出力する高電圧単発パルス発生装置によるフラッシオーバを起点として無ヒューズでアークを発生する技術を開発しており，100 mmの気中ギャップでの適用を目指している。しかし，既存の高電圧単発パルス発生装置は低ジッターで動作する一方，出力電圧波高値は最大約60 kVであるため，100 mmのギャップをフラッシオーバさせるには不十分である。この装置を複数直列接続し，同時に動作させて出力電圧波高値の向上を試みた。

1-080

高電圧パルス装置を利用したリチウムイオン電池の正極材リサイクルプロセスの検討

◎武藤翔輝・後藤聡汰・櫻畠宏礎・田中正志・柳平丈志（茨城大学）・平山智士・乾 義尚（滋賀県立大学）

リチウムイオン電池のリサイクルをするために，大気圧高電圧パルス放電によるスパッタ装置を利用して，リチウムイオン電池の正極活物質を回収する方法の検討を行った。検討にあたり今回は，放電装置のシミュレーションとスパッタリングのための予備的な放電実験実験を行った。

1-081

反射三極管型仮想陰極発振器の電極配置に対する出力マイクロ波の放射角度分布特性評価

◎深田悠晴・伊藤弘昭・竹崎太智（富山大学）

仮想陰極発振器は高出力マイクロ波の発生が可能な装置の1つである。この装置は他のマイクロ波源と比べ外部磁場が不要であることから単純な構造を持ち，GW級のマイクロ波が発振可能で，周波数の選択性を持つ。その反面，マイクロ波変換効率が低い，発振周波数が広帯域という欠点があり，電力変換効率および発振強度の向上，周波数の制御に関する研究が行われてきた。先行研究では楕円形電極が従来の円形電極より，導波管軸上における発振マイクロ波強度の優位性を確認した。本研究ではさらなる出力の改善に向け，導波管軸に対し回転させた楕円形電極と円形電極による発振マイクロ波の放射角度分布特性を調査した。

1-082

超低周波交流電界印加による氷中の大腸菌殺菌に及ぼす水溶液中の塩化ナトリウム濃度の影響

◎渡邉聖人・彦坂由貴子・村上祐一・村本裕二（名城大学）

冷凍保存技術の普及により，食品の保存期間の延長や食中毒発症件数の減少が進んできたが，冷凍のみでは食品中の菌を滅菌することはできない。本研究室では，冷凍時に直流電界を印加して殺菌を行う冷凍電界殺菌技術に関する研究を実施してきた。本報告では，氷試料に超低周波交流電界を印加し，氷中の大腸菌殺菌に及ぼす水溶液中の塩化ナトリウム濃度の影響を調査した。実験試料は，大腸菌を含むNaCl水溶液である。－20[℃]で凍結させた試料に超低周波交流電圧を印加した。その結果，大腸菌生菌率はNaCl濃度が高くなると共に低下した。NaCl濃度が増しても電流はあまり流れなかったが，電気分解等が確認されたため殺菌効果があらわれたものと考えられる。

1-083

低電圧ナノ秒パルス電界の周波数解析に基づくがん細胞のアポトーシス誘導評価

◎杉浦 廉・蜷川悠斗・八木一平・内田 諭（東京都立大学）

ナノ秒パルス電界はがん細胞にアポトーシス細胞死を誘導するため，新たながん治療として注目されている。本研究は，パルス電界の幅200 µmの電極を用いて，低電圧下でのパルス電界を生成し，がん細胞への電界処理を行った。細胞膜リン脂質の膜外部化およびカスパーゼ活性をアポトーシスの指標とした。また，がん細胞等価回路およびパルス波形の周波数解析により細胞ストレスを定量化した。計算および実験の両方から，ナノ秒パルス電界が持つ周波数成分によって，細胞内部の核に与えられるストレスが変化し，それによって異なる生体反応をもたらすことが示された。

1-084

プラズマジェット照射による液中ROS輸送に供給ガスが与える影響

◎史 合平・沈 克成・川崎敏之（西日本工業大学）

大気圧プラズマの工業，農業，医療への応用において，プラズマと液体の相互作用に関する研究が活発に行われている。本研究ではゲル状の試薬を用いて，プラズマ照射が液中に供給する活性酸素（ROS）の二次元分布可視化を行ってきた。今回，プラズマ発生用ガスが液中へのROS供給に与える影響について調べた。プラズマ発生用ガスとしてHeまたはArを使用した。Arの場合は深さ2 mmの水底までROSが供給されたが，Heの場合は水底までに到達しないことがわかった。発表では，ArとHeで発生させたプラズマを照射した水の水質分析結果との関連性についても発表する。

1-085

粉体ターゲットによる3元素混合薄膜の作製I

○佐竹卓彦（崇城大学）・大島多美子（佐世保工業高等専門学校）・青木振一（崇城大学）

本研究では酸化インジウム（In₂O₃），酸化ガリウム（Ga₂O₃），酸化亜鉛（ZnO）の混合粉末ターゲットを用いて，スパッタリング成膜によりIGZO薄膜をワンステップで作製する方法を提案する。作製した薄膜の特性を調べた結果，作製した薄膜の元素濃度比は，ターゲットとして用いた混合粉末の混合比により制御できることがわかった。

1-086

高繰り返しナノ秒パルスグロー放電プラズマを用いたダイヤモンドライクカーボン成膜におけるガス種依存性

◎川口瑞稀・峯 卓馬・政井瞭平・菊池祐介（兵庫県立大学）

ダイヤモンドライクカーボン（DLC）の低コスト成膜を目指して，ガス圧力1.2 kPa下の高繰り返しナノ秒パルスグロー放電プラズマを用いたDLC成膜実験を行った。パルス電圧の周波数（30~250 kHz）と基板温度をパラメータとして膜質を調査した。また，ガス種をHe/CH4，H2/CH4，He/H2/CH4の3種類とした。その結果，H2/CH4では基板温度上昇により膜中の水素含有量が低下するとともに膜硬度は上昇し，最大で17 GPaの硬度が得られた。一方，He/CH4では水素含有量の変化が最も大きく，He/H2/CH4では水素含有量および膜硬度は概ね一定値を示した。

1-087

DLC成膜用準大気圧He/CH₄RF変調パルスプラズマ特性に及ぼす変調周波数依存性の数値解析

◎藤田 諒・木村勇太・小田昭紀（千葉工業大学）

近年，ダイヤモンドライクカーボン（DLC）膜の成膜法の一つに，大気圧プラズマCVD法が注目されている。低コストで高速成膜処理が可能といった特徴があるものの，アーク放電への転移，膜の低硬度化が課題となっている。DLC膜は，プラズマ中で生成された正イオンとラジカルの基板への入射比率の向上で高硬度になることが知られており，印加電圧波形の変調による粒子の入射量制御を通じた高硬度なDLC成膜を着想した。本報告では，準大気圧条件下でのパルス変調された炭化水素プラズマによるDLC成膜に着目し，流体モデルに基づくシミュレーションによって，パルス電圧の変調周波数が電極への炭化水素イオン種やラジカル種の入射量に及ぼす影響を解析した。

1-088

シース電界を考慮した誘導結合プラズマ中の対向発散磁界共鳴域における電子エネルギー利得解析

◎岡崎凌大・菅原広剛（北海道大学）

プラズマ閉じ込めや材料損傷低減などの機能性が期待される対向発散磁界を印加した誘導結合磁化プラズマ中では，共鳴域（強度が共鳴磁界の0.5～1.5倍の磁界領域と定義）で電子が加速され易い部分共鳴が観察される。本研究は部分共鳴をプラズマ維持に積極利用するための電磁界設計指針に繋がる知見の獲得が目的である。今回シース電界を新たに考慮した系と導入前の系の共鳴域における電子エネルギー利得（EEG）をモンテカルロ法により観察した。高EEGは前者器壁付近シース中でも見られたが，RFアンテナ付近と器壁から離れた共鳴域の高EEGは両者共通だった。シース電界導入前の部分共鳴に関する基礎的知見は有効と考えられる。

1-089

対向発散磁界分界面上下領域における誘導結合磁化プラズマ中の周方向電子流の指向性

◎林 秀虎・野原直人・菅原広剛（北海道大学）

本研究では誘導結合型X点プラズマの駆動の際に印加する対向発散磁界における電子流の指向性に着目している。対向発散磁界の共鳴磁界域で起こる部分共鳴による電子エネルギー獲得と指向性の関係を調べるために，粒子モデル計算機解析により共鳴磁界域内滞在中に生じる単電子運動の円筒容器中心軸周りの周方向変位の期待値を定義し算出した。上下領域で反転するgrad－Bドリフトの方向や上部励起源アンテナに近いほど強い誘導電界を反映した期待値が得られた（上部領域で負，下部領域で正，上部領域での変位がやや大）。部分共鳴発現機構に指向性がどのように関わるかを評価する上で有用な評価指標が導入できたと考えられる。

1-090

発散型ワイヤアレイで生成されるZピンチプラズマにワイヤー特性が及ぼす影響

◎高尾美陽・布目宇範・宮本淳矢・伊藤弘昭・竹崎太智（富山大学）・高杉恵一（日本大学）

これまで中性子線源の開発を目指してプラズマフォーカスや発散型ガスパフZピンチを利用した中性子の研究が行われきた。特に，後者の装置においては原子番号が大きいガスを混合すると，プラズマへの投入エネルギーが増え，高温になることが分かっている。また，高温ピンチプラズマを生成するため，気体以外の重元素を用いたワイヤアレイZピンチの研究も行われている。ワイヤーがプラズマ化する前に蒸発することを防ぐため高速パルスパワー電源が必要であったが，本研究では装置構造が簡易なコンデンサーバンクを用いており，新しいタイプのワイヤアレイZピンチを実現することができた。そこで，より高温なピンチプラズマの生成に向け，ワイヤーの材料および直径，本数に対する発散型ワイヤアレイZピンチの発生条件やX線放射について調べたので報告する。

1-091

プラズマフォーカスの陽極形状に対するプラズマシート進展への影響

◎山田拓歩・大村陽輔・伊藤弘昭・竹崎太智（富山大学）

プラズマフォーカス（PF）装置は，プラズマを流れる電流が周囲の磁場の影響で自己収縮（Zピンチ）する高温・高密度プラズマの発生装置である。主に，荷電粒子ビーム，X線，中性子などの線源としての応用が期待できる。特にイオン源として，核融合ドライバー，材料へのイオン注入，薄膜堆積などへの応用が期待される。PF装置は，30 kVの充電電圧でも数MeV程度の高エネルギーイオンビームが発生している。しかしながら，イオンの加速機構の解明には至ってない。本研究ではPF装置をイオン源として応用するために，イオンビームの特性向上及びイオンビームの加速機構解明に向け，陽極先端形状に対するプラズマシートの進展への影響を調査した。

1-092

ループ型Ar/N₂誘導熱プラズマを用いたTi基板表面二次元窒化に対する基板掃引速度依存性

◎原 弘也・杉山祐樹・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィー・リサーチ）

筆者らは熱プラズマによる大面積にわたる超高速表面改質を目指し，ループ型誘導熱プラズマ（Loop-ICTP）装置を開発している。この装置では，ループ型トーチを円型コイルにより挟み込み，トーチ面に垂直な交番磁界を印加して誘導熱プラズマを維持する。このループ型誘導熱プラズマの一部を基板上に直線に生成し，基板を垂直方向に掃引することにより二次元高速表面処理が可能となる。この二次元表面窒化においては，基板の掃引速度は，基板表面温度および窒素の拡散に影響すると考えられる。本報告では，掃引速度を変更してTi 基板表面の窒化処理を行い，照射後Ti 基板表面のXRD（X 線回析法）により窒化度を評価した。

1-093

減圧大流量Ar/CH₄/H₂変調誘導熱プラズマを用いた単結晶ダイヤモンド膜成長のCH₄/H₂ガス流量依存性

◎東 泰造・加納直樹・田中康規・石島達夫・中野裕介（金沢大学）

筆者らは独自開発した変調型誘導熱プラズマ（MITP）に よるダイヤモンド膜高速成長を検討している。MITPでは基板に照射する熱流束・ラジカル粒子束を詳細に制御できる。本報告では，減圧大流量条件のAr/CH₄/H₂ MITPを単結晶ダイヤモンド基板へ照射し，単結晶ダイヤモンド成長を試みた。さらに本プロセスに対し，投入する原料CH₄/H₂ガス流量の変更が成長レートに与える影響を検討した。CH₄/H₂=0.01/1,0.02/2および0.04/4 slpmで実験を行った。CH₄/H₂=0.01/1 slpmでは単結晶ダイヤモンド成長およびグラファイトの堆積が観測され，CH₄/H₂=0.02/2および0.04/4 slpmでは単結晶ダイヤモンド成長が観測された。単結晶ダイヤモンドの膜成長レートは，CH₄/H₂=0.02/2 slpmの場合が最も高かった。

1-094

原料間歇導入を伴うタンデム型Ar+H₂変調熱プラズマで生成したSiナノ材料特性評価

◎長瀬有理奈・古川颯大・不破知哉・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）・太田遼至・神原 淳（東京大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

Siナノ粒子（Si NPs）は，大容量リチウムイオン電池の負極材への利用が期待されている。筆者らは，これまでにタンデム型変調誘導熱プラズマ（Tandem-MITP）と原料粉体の時間制御供給（TCFF）との組み合わせを用いた機能性ナノ材料の大量生成法を開発している。Tandem-MITPでは，2つの独立した電源と2つのコイルにより熱プラズマを安定に維持でき，効率的なナノ粒子生成が期待できる。さらに，比エンタルピー・熱伝導率が大きいH₂ガスをシースガスに加えることで，より多くのナノ粒子が生成可能と考えられる。本報では，Tandem-MITP+TCFF法を用いてシースガスへのH₂ガス導入流量を変更した時の生成Si粒子の粒径および組成を評価し，さらに負極半電池を作成し充放電サイクル特性を測定した。

1-095

ナノ粒子生成用変調誘導熱プラズマ下流チャンバでの温度場への冷却ガス導入位相依存性の数値解析的検討

◎不破知哉・古川颯大・長瀬有理奈・田中康規・石島達夫・中野裕介（金沢大学）・中村圭太郎・渡邉 周・末安志織（日清製粉グループ本社）

筆者らはこれまでに，パルス変調熱プラズマ（PMITP）と原料間歇同時導入法（TCFF）とを組み合わせた新ナノ粒子大量生成法「PMITP+TCFF法」を開発している。本法では，電力変調による原料蒸発過程と，プラズマトーチ部およびトーチ下流チャンバ部の変動熱流動場における原料蒸気の急冷過程とが重要な役割を果たすことが判明している。このPMITP+TCFF法における冷却過程に加え，さらに冷却ガスを変動導入する手法を考察した。本報では，PMITPの電流変調位相に対するQG導入位相が，チャンバ下流温度に与える影響を検討し，効率的な原料蒸気の冷却手法を提案する。

1-096

TIGアーク溶接における縦磁束密度が及ぼす陽極の溶融深さ

◎根本雄介・高木真宏・森下穂香・鈴木祐揮・任 振威・岩尾 徹（東京都市大学）

TIGアーク溶接では，溶融池を安定させるため陰極を回転させるローリングという手法がある。しかし，ローリング手法の取得は難しい。このため，磁界によりアークを回転させることでローリング手法を再現し，溶融池を安定させることを考えた。アークに縦磁界を印加した場合，アーク姿態は回転することが報告されている。本論文では，縦磁界によるアーク姿態と溶融形状の変化の知見を得るため，TIGアーク溶接における縦磁束密度が及ぼす陽極の溶融深さの解析を行った。

1-097

高電界型電気集塵装置における捕集粒子の電子顕微鏡観察

◎棚橋優樹・伊藤圭亮・石塚大貴・和田理征・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・山城啓輔・佐久間義弘・金子貴之（富士電機）

浮遊粒子状物質（PM）の対策として電気集塵装置（ESP）の利用が検討されている。しかし，あらゆる電気機器と同様に，ESP にも省エネルギー化が必要と思われる。そこで，筆者らは ディーゼル排気微粒子の自然帯電を利用し，高電界のみで捕集することを試みた。本研究では，高電界型ESPにおける集塵プロセスを検討するため，接地及び高圧電極上の捕集粒子の捕集状態を走査型電気顕微鏡を用いて観察した。その結果，高圧電極上の粒子の捕集状態が接地電極上とほぼ同様となり，ディーゼル排気微粒子が両極性に自然帯電しているため，高電界のみで集塵可能であることが明らかとなった。また，従来の ESP と同様に，集塵時に電極上で数珠状の凝集粒子を形成することが分かった。

1-098

円盤電極を用いたナノ粒子の集塵に対する円盤直径の影響

◎杉山裕俊・寺沢 翔・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・余 増強・大栗延章・早瀬悠仁・松本 伸（富士電機）

低オゾン濃度でのナノ粒子の集じんを目的とし，直径28，45，60 mmのナイフエッジを有した円盤電極を利用した二段式電気集塵装置を試作した。オゾン濃度が約0.015 ppmとなるように，円盤電極に12.6 kV ~ 20.4 kV電圧を印加し，放電電流を0.34 mAに調整した。集塵率は粒子濃度計数装置を用いて粒径24 nm ~ 212 nmの粒子濃度を測定し，算出した。
その結果，集塵率はいずれの電極長でも粒径212 nmで90%以上となった。また，円盤直径が短いほど集じん率は高く，直径28 mmにおいて粒径44 ~ 212 nmで約96%となった。円盤電極を用いることで低オゾン濃度で高集じん率を得られることが分かった。

1-099

高温ディーゼル排ガス処理におけるパルス放電型電気集じん装置の開発

◎袁 振東・南雲幹太・岩尾 徹・江原由泰（東京都市大学）

舶用ディーゼルエンジンからの排出ガスは，海洋大気汚染となり，排出する前に浄化する必要がある。現在，排ガス浄化装置の一種である電気集じん装置（ESP）の適用が，研究開発されている。舶用ディーゼルエンジンからの排出ガス温度は高いため，直流コロナ放電方式では放電が不安定となり，制御が非常に困難となっている。本研究では，高温度でも高い集じん率を確保するために，帯電部に直流でなくパルス電圧を印加した。ESPの集じん性能に関して，印加する電圧極性，排ガス温度及びパルス繰返し周波数などについて検討した。

1-100

ガラス上および空気中のマイクロギャップにおける絶縁破壊電圧特性

◎比田悠斗・三ツ橋昂起・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

近年，微細加工技術の発達により，微小ギャップにおいて発生するESDによる機器の故障が問題とされており，絶縁破壊特性の解明，機器をESDから保護する対策部品の開発が求められている。しかし，実誘電体上に電極を配置したマイクロ沿面ギャップにおける放電遅れ時間についての報告はあるものの未解明な点も多いのが現状である。
本研究ではマイクロギャップにおけるガラス上および空気中ギャップの絶縁破壊電圧特性の差異を調査した。
絶縁破壊電圧特性はギャップ長が増加するとフラッシュオーバ電圧が増加傾向を示した。空気中に比べ，ガラス上ギャップの方が破壊電圧が低く，電圧立ち上がり時間の長い方がより低い電圧で絶縁破壊した。

1-101

インバータ駆動モータのダブルインパルス電圧印加による絶縁評価法

◎葛籠立弥・永田正義・福本直之（兵庫県立大学）・梅津 潔（電子制御国際）

将来，インバータ駆動モータの高効率化に向け高速スイッチングが可能な次世代パワー半導体素子の利用が進むと，より急峻な立ち上がり時間のサージ電圧が高繰り返し周波数で発生し，それがモータ内に伝搬すると内部の電圧分布がより不均一に時間変化することになる。その場合，各相の第1ターンコイルにかかる分担電圧が大きくなり，対地間，相間に比べて絶縁耐力の弱いターン間での部分放電（PD）の発生が危惧される。
本研究は，高繰り返し電圧印加した際のインパルス電圧波形の伝搬解析から，PD発生の場所と時刻の予測，各コイル電圧の変化，部分放電開始電圧について調べ，高周波化にも対応可能な絶縁評価法の確立を目指している。そのため先ず，2つの同じインパルス波形を用いて，両パルスの印加タイミングを制御できるダブルインパルス試験法を提案し，その有用性について報告する。

1-102

マイクロギャップにおける絶縁破壊電圧のギャップ長特性と電極材料の影響

◎三ツ橋昂起・比田悠斗・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

近年，静電気放電から電子機器を保護する重要性が増している。そのため，マイクロギャップでの放電形態を知る必要がある。現在の研究報告では，マイクロギャップにおいてSiとAl電極での絶縁破壊電圧（BDV）-ギャップ長特性が異なることが知られている。我々の研究グループでは，銅電極のみの報告のため，本研究では，マイクロギャップのBDVのギャップ長特性とそれに及ぼす電極材料（タングステン，真鍮，銅）の影響を調査した。実験結果として，すべての電極において，概ねギャップ長が増加するとともにBDVも増加した。電極ごとにBDVを比較すると，概ね，銅＞真鍮＞タングステンとなった。一方，いずれの電極においても印加電圧の極性差は見られなかった。

1-103

不平等電界下におけるCO₂/N₂混合ガス中絶縁破壊メカニズムの混合比依存性

尾﨑脩平・○小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

大気圧空気中の不平等電界下において，短ギャップ長では電極間を橋絡した放電チャネルの加熱によってチャネル加熱絶縁破壊が，長ギャップ長では導電性の高いリーダ放電の進展によってリーダ型絶縁破壊が発生することが知られている。本稿ではCO₂/N₂混合ガスにおいて絶縁破壊形態・メカニズムの類別を行い，その混合比依存性を検討した。CO₂/N₂（20%/80%）中では，同ギャップ長の範囲においてはリーダ型絶縁破壊の発生は見られなかったが，CO₂/N₂（40%/60%）中においては発生した。CO₂/N₂（40%/60%）中ではCO₂/N₂（20%/80%）中よりも同程度の瞬時電圧値における2次ストリーマ電流値が低い傾向にあり，残留電荷による電界緩和の影響が小さいため，リーダ型絶縁破壊が発生したと考えられる。

1-104

シリコーンゲルにおける絶縁破壊前駆現象のアンテナによる検出に関する基礎検討

◎木下慎悟・大石雄介・大塚信也（九州工業大学）

近年，パワーモジュールの小型・高性能化が進んでいる。パワーデバイスの封止材としてシリコーンゲルが使用されているが，信頼性やデバイス診断の観点から，シリコーンゲル中の絶縁破壊に至る放電進展特性の理解は重要である。筆者らはこれまで，不平等電界下におけるシリコーンゲル中の放電路電界解析を行い，放電路が導電路になることで自己進展することを明らかにしている。本研究では，絶縁破壊の予兆検知と機器の遮断を目的に，二種類のゲルを用いて放電路の撮影と電磁波の同期測定を行った。