一般講演

7-001

パルスレーザ駆動MHD発電の作動気体依存性

◎十亀孝彰・後野陸斗・奥野喜裕（東京工業大学）

本研究では，パルスレーザ駆動MHD発電において，異なる作動気体における発電性能を明らかにすることを目的として，アルゴン，ネオン，ヘリウムを用いて発電実験を行った。その結果，アルゴンにおいて最も高い性能が得られ，ネオン，ヘリウムの順に低下することが明らかとなった。これは，アルゴンはモル質量が大きく，流速が低いものの，電離エネルギーが小さく，実効的な電気伝導度が高くなることによる。加えて，アルゴンでは高い実効的な電気伝導度が得られる持続時間が長いことから，発電時間も長くなる。すなわち，より高い実効的な電気伝導度をより長く持続できる作動気体を用いることで，発電性能の向上が期待できることが示唆された。

7-002

高周波予備電離アルゴンプラズマMHD発電機の発電特性

◎小寺義伸・糸川海斗・奥野喜裕（東京工業大学）

本研究では，高周波誘導コイルのターン数や配置が異なる6種類のMHD発電機を用いた高周波予備電離アルゴンプラズマMHD発電実験において，予備電離電力を電子の流入エネルギーとして評価し，エンタルピー抽出率の予備電離電力依存性について考察を行った。その結果，同じ予備電離電力割合で比較すると，全ての発電機において概ね同程度のエンタルピー抽出率が得られることがわかった。これは同程度の電子の流入エネルギーを持つプラズマが発電チャネル内に流入した場合，発電性能は同程度となることを示しており，高周波誘導コイルのターン数や配置が異なる場合においても，統一的に発電性能を議論することが可能であることを示唆している。

7-003

DBDプラズマアクチュエータの誘電体表面温度と交流電圧印加に伴う入力エネルギーの関係

◎浅和幸樹（筑波大学）・西山和哉・久保徳嗣・田中元史（産業技術総合研究所）・藤野貴康（筑波大学）

DBDプラズマアクチュエータを用いて高レイノルズ数翼周り流れの気流制御を行う風洞実験を行った。電極間電圧条件が一定であるにもかかわらず，入力エネルギーが迎角によって変化することがわかった。本研究では，要因の一つとして誘電体温度に着目し，DBDプラズマアクチュエータを1200秒間駆動したときの誘電体表面温度と入力エネルギーの経時変化を調べた。その結果，誘電体表面温度は約40 K上昇し飽和する様子が見られ，同様に，入力エネルギーも時間とともに上昇し飽和することがわかった。この要因として，誘電体の温度上昇による誘電率や誘電体表面の水分量が変化し，放電形態の変化を介して，充放電電流に影響を与えたためだと推測される。

7-004

Xeをシードした希ガスプラズマMHD発電の実験的検討

◎増田 龍・糸川海斗・小寺義伸・Kimsor Ork・奥野喜裕（東京工業大学）

本研究では，NeにXeを少量添加した混合気体（Ne/Xe）を作動気体とする予備電離希ガスプラズマMHD発電の実験を行い，発電特性を明らかにした。その結果，Ne/Xe（シード率1.0%，5.0％）を用いることで，純Arや純Neと比較して，予備電離電力の低減とエンタルピー抽出率の向上が実現できることが示された。これはXeシードにより少ない予備電離電力で高い電気伝導度が得られたことによるものと考えられる。また，Ne/Xe（5.0%）では，Ne/Xe（1.0%）と比較して予備電離電力割合に対するエンタルピー抽出率が低下した。これは電子の衝突周波数の増加によるホールパラメータの低下によるものと考えられる。

7-005

大型非平衡ディスク形MHD発電機の基本仕様の入口全温度依存性

○藤野貴康（筑波大学）・仲安 陸（東京工業大学）・佐々木 亮（筑波大学）・奥野喜裕（東京工業大学）

本研究では，電磁流体方程式に基づく高温駆動非平衡ディスク形MHD発電機の数値設計手法により，熱入力1 GW級の低温駆動大型非平衡ディスク形MHD発電機の基本仕様の設計を目的に数値解析を実施した。本講演では，その解析から示された発電機の基本仕様と入口全温度の関係性について概説する。

7-006

Ne/XeプラズマMHD発電機内のプラズマ挙動に関する数値解析

◎Kimsor Ork・奥野喜裕（東京工業大学）

本研究では，MHD発電機内のNe/Xeプラズマ挙動をr-θ二次元非定常数値解析により検討し，プラズマ挙動および発電機性能に与えるXeシードの効果を明らかにした。純Ne（シード率0.0%）では，最大出力を与える適正負荷抵抗においても，不均一なプラズマ構造が生じるが，シード率0.1%，1.0%ではプラズマ構造が発電機内全域で均一となる。ただし，シード率5.0%では弱い不均一性がみられた。これらのことからNeにXeを添加することでプラズマ構造の均一性を向上させることができることが示唆された。一方で，低負荷抵抗および高負荷抵抗では，不均一なプラズマ構造が生じ，発電機性能の劣化をもたらすことがわかった。

7-007

物理モデルとVI-SVRによる短期間の気象データを用いた翌日の太陽光発電電力量推定

◎佐々木健人・植田 譲（東京理科大学）

固定価格買取制度により，太陽光発電システムの普及拡大が進んでいる。太陽光発電による発電量は季節や天候の影響を大きく受けるため，エネルギーマネジメントとして発電量を最大限に活用するためには，太陽光発電量を正確に予測する必要がある。
本研究では，気象計測架台による水平面全天日射量，気温，風速の計測値を用いて，物理モデルとVI-SVRを組み合わせることで，発電量を5分値で予測する。物理モデルで，温度損失，入射角損失，最大出力低下損失を推定した後に，VI-SVRを用いて補正する。その結果，物理モデルでは損失分離できなかった日陰などの損失を取り除くことができ，高い精度で予測することができた。

7-008

全天球カメラを用いた多層雲の観察および移動方向の判定

◎坂東隆宏・伊藤 翼・佐野絃貴・宮原由紀・相澤 毅・針谷 達・滝川浩史（豊橋技術科学大学）・平塚元久・真木志郎（エイム）

太陽光発電が大量に導入された際の電力系統の安定化を目指し，雲の地上観測に基づき太陽光発電量の変動を予測する手法が研究されている。本手法では，連続する天空画像から雲の移動方向を推定したうえで日射強度の変動を予測する。この時，通常，雲は単一の層で単一の方向に移動すると仮定する。しかしながら，実際には，雲が多層を成し（多層雲）かつ異なる方向に移動しうる。より高い精度の予測のためには，多層雲がどの程度観測されているか評価し，多層雲を考慮した移動方向の推定法の開発が必要である。本研究では，全天球カメラを用いて撮影した天空画像から，東海地方における多層雲の季節変動を評価し，加えて，多層雲の移動方向の判定手法を開発した。

7-009

動き推定によるPVシステム群の出力予測におけるパラメータの最適化

◎土屋億ダニエル・呉 大輝・小平大輔・近藤潤次（東京理科大学）・亀田裕介（上智大学）

太陽光発電（PV）は出力変動が大きく，大量導入時に電力の需給調整への影響が懸念される。この解決策として，高精度なPV出力予測が有効である。PV出力予測としては機械学習を用いた手法等が研究されているが，筆者らは地理的に分散したPVシステム群のリアルタイム出力データから動き推定により短期出力を予測する手法を提案した。今回この予測手法において，予測精度に大きな影響を与えるパラメータの最適化を図った。その結果，本手法は持続予測と比較し，最適化した動き推定用パラメータにおいて誤差を約20% から約10% へと10ppt程度改善できた。

7-010

太陽光発電システムにおける蓄電装置導入に関する実験的一検討

○雪田和人・松村年郎・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）・谷口和也・森田祐志・久保直也（きんでん）

近年，低炭素社会をも目指し再生可能電源を主力電源とするため，様々な取り組みがなされ始めている。特に再生可能エネルギーの導入にあたっては，発電電力が不安定なために，蓄電装置の導入も必要不可欠な状況である。この蓄電装置の導入は，蓄電装置にも系統連系装置を導入し再生可能エネルギーによる発電装置と系統に対して並列に導入されている場合，太陽光発電装置の系統連系装置と一体にした場合（1）など，そのシステム構成に応じて導入されている。
本論文では太陽光発電装置と蓄電装置の導入に関して，蓄電装置の導入位置に関して，実験的一検討を実施したので報告する。

7-011

地域PV余剰電力の最大利用とCO₂排出量最小化のための電動バス充電計画最適化手法

◎加藤夏乃・富澤勇輝・飯野 穣・児玉安広・井原雄人・林 泰弘（早稲田大学）

脱炭素化を目指す環境政策により，交通部門では電動バスの利用が世界的に拡大している。本研究では，バス充電による地域の再生可能エネルギーの有効利用のための実運行データに基づく充電計画の最適化を目的とする。先行研究を拡張し，あらゆる天候におけるPV余剰電力の利用最大化と，時刻別CO₂排出係数を用いた商用電力充電の最適化を同時に考慮した多目的最適化による電動バス充電計画手法を提案し，数値シミュレーションを実施した。結果として，最適化を行わない充電計画と比較し，晴天日では余剰電力利用率は29pt向上，CO₂排出量は61.4%減少した。曇天日では余剰電力利用率は100％に到達，CO₂排出量は6.06%減少した。よって，余剰電力利用率の向上とCO₂排出量削減の効果が確かめられた。

7-012

スペインの風力発電・国内の太陽光発電の出力変化と調整力電源

○白川晋吾（IEEJプロフェショナル）

2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ目標，脱炭素に向けてカーボンニュートラルが期待されている。風力発電・太陽光発電の出力は気象条件で大きく変動する。これら再エネ電源の出力変化に対してどのような電源で調整されているのかを探求することは電力安定供給の観点で有用に資する。風力発電は先進の欧州スペインでの例，太陽光発電は国内主要電力エリアでの発電状況を例にして述べる。

7-013

大規模太陽光発電所におけるストリング電流頻度分布図の閾値判定を用いた故障ストリング検出

◎瀧野航平・植田 譲（東京理科大学）

2050年までのカーボンニュートラル達成に向け，再生可能エネルギーの重要性が注目され，大規模太陽光発電所（メガソーラ）の導入が進められてきた。太陽光発電システムを長期運用するためには，不具合を検出することが必要である。しかし，大規模太陽光発電所において，現地での詳細な故障検出は多くのコストがかかってしまう。そこで，測定データの遠隔監視による不具合検出が有効である。本論文では，日射強度，気温データを使用せず，ストリング毎に1枚計測されているモジュールの電流値のみを用いた，閾値判定による故障検出手法を提案する。これにより不具合の可能性があるストリングを検出し，現地調査の負担を軽減することが期待できる。

7-014

PV遠隔安全診断システムの開発

○戸田祐介（アイテス）・有松健司（東北電力）

太陽電池発電設備における直流部の電気的異常を検出し遠隔から監視するシステムの開発を進めている。このシステムは，太陽電池発電設備に設置する通信機能を搭載したセンサー部，センサー部が測定したデータの収集および異常判定するサーバー部から構成される。システムは太陽電池発電設備の各ストリング回路に並列に接続され，太陽電池モジュールのバイパス回路の健全性確認と，セルストリング回路の健全性確認をするものである。今回，検証試験として人為的に電気的異常状態とし，各測定データより各種異常状態の有無を検出できることを確認したので報告する。

7-015

絶縁抵抗の測定時間短縮に向けた対地電圧推定方法の検討

○髙島 工・池田一昭（産業技術総合研究所）

自己バイアス法において絶縁抵抗の算出に必要な対地電圧を短時間で推定する方法を検討し，3つの再現関数の外挿値の平均を対地電圧の推定値とする方法を採用した。本方法により10秒間の対地電圧実測値から30秒後の対地電圧を推定し絶縁抵抗値を算出した結果，62MΩ以下の領域では実測値よりも平均で5.6MΩ大きく推定され，そのばらつきの幅は6.6MΩ程度であった。

7-016

インピーダンス計測による太陽電池モジュールのバイパス回路の故障検出技術の基礎検討

◎豊田丈司・横澤康汰・西川省吾（日本大学）

太陽光発電の利点としてメンテナンスフリーという点が挙げられてきた。しかし，実際には太陽電池モジュールの保護回路であるバイパス回路の故障や太陽電池のセルの故障，ストリングの直列抵抗増加といった様々な故障があり，太陽光発電システムにおいて故障検出は重要なものとなっている。本研究では，太陽電池のインピーダンス計測による故障の有無，種類を知るための検出技術の確立を目的としている。本稿では，バイパス回路の故障検出について基礎検討結果を示す。
試験内容としてバイパス回路の開放故障と短絡故障を，インピーダンス計測により検出している。

7-017

赤外線カメラによる太陽電池モジュールのバイパス回路の開放故障検出技術 ー移動物体の映り込みによる外乱除去技術の検証―

◎窪田 洸・西川省吾（日本大学）

本研究は，太陽電池モジュールの保護回路であるバイパス回路が，開放故障した位置を検出できる技術の確立を目的としている。本研究では，赤外線カメラを用いてモジュール表面の温度を計測するが，周囲の建物などの映り込みの影響を除去するため，周期性のある電圧をストリングに印加していた。しかしながら，移動する多数の小さい雲が存在する天気では，映り込みの影響が大きく残る場合があった。このため，雲の映り込みの影響軽減のために，太陽電池ストリングへの印加電圧の周波数が2種類の合成波を印加した。
その結果，2種類の周波数を合成して解析することで移動する雲の影響を軽減できることが確認できた。

7-018

キセノンランプの位置ずれが太陽光発電の故障診断指標であるキャパシタ電圧に与える影響

◎柿本伸之介・石村真也・田中正志（茨城大学）・乾 義尚（滋賀県立大学）

太陽光発電は，脱炭素社会に向けた取り組みとして設置が急速に進んでいるが，その運用中にモジュールが故障した場合には発電効率の低下や火災の危険性も伴う。そこで，著者らは，キセノンフラッシュランプと診断用キャパシタを用いたモジュールの性能評価装置を開発している。その故障診断プロセスは確立できているものの，モジュール表面のフラッシュ光の照度分布やフラッシュランプの照射位置ずれが診断に与える影響までは十分に詳しく検討していなかった。本研究では，モジュール表面照度分布を明らかにし，フラッシュ光照射装置の設置位置ずれによって発生する照度分布の変化が診断用キャパシタの電圧に与える影響を検討する。

7-019

垂直設置した両面PVモジュールの影と天空率を考慮した裏面日射強度の推定

◎嶋田圭吾・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）・津野裕紀・大関 崇（産業技術総合研究所）

地球温暖化を解決するために，再生可能エネルギーの導入が推進されている。その中で，両面PVモジュールは，価格が片面PVモジュールと同等で，発電量の増加が期待されるため注目されている。しかし，PVモジュールの影によって，モジュールの裏面に入射する地面反射日射強度が減少するため，影を考慮しない既存の均一反射モデルでは，発電量を多く推定してしまう。影を考慮した裏面日射強度の推定モデルとして，先行研究では角度表現モデルと形態係数モデルを検討した。本稿では，先行研究のモデルに天空率を追加し，裏面日射強度の推定手法を検討したので報告する。

7-020

メガソーラにおけるPV発電設備の健全性評価手法の提案

○井上芳範・福島宗次（富士電機）・篠沢秀幸（富士アイティ）

PVモジュールは故障，経年劣化，汚れ等で性能が低下する。PCSは故障やコンデンサなどの経年劣化で性能が低下する。今回，SA法というPVアレイ効率計算アルゴリズムと統計解析手法を使ったPCS効率計算アルゴリズムを開発し，両者を組み合わせてPV設備効率を算出する手法を紹介した。過積載，力率運転，日レベルで変動するアレイ負荷ミスマッチ損失，分光応答変動，過渡的日陰損失等の影響を取り除き，PV設備効率を20年の長期スパンで安定的に性能変化を確認できることを事例で示した。日データから異常判定も行えるので妥当性を検証中である。

7-021

メガソーラー発電量データを用いた除草効果の評価

◎中川寛太・原 重臣（佐賀大学）・吉岡達也（佐嘉吉野ヶ里ソーラー）

メガソーラー発電所の運用・保守において，雑草の成長が問題になっている。除草作業を頻繁に行えばこの問題は解決できるが，メンテナンス費用の増大につながる。本発表では，メガソーラー発電所で測定された過去の発電量と気象のデータを用いる。除草作業前の期間におけるデータに対して最小二乗法を適用することにより，標準試験条件における発電量と温度係数を推定する。推定した標準試験条件における発電量の時系列に対して，再び最小二乗法を適用して近似直線を求める。この直線を除草後の期間に延長して，除草をしなかった場合の発電量を推定することで，除草効果を評価する。

7-022

雑草写真を用いた太陽電池アレイ発電量への雑草影の影響評価

◎池田晃樹・原 重臣（佐賀大学）

メガソーラー発電所において，除草費用が無視できないものになっており，最適な除草スケジュールを決定する方法が求められている。我々は，雑草の生育と太陽電池アレイ発電量への影響をシミュレーションすることによって，この問題に答えることを目標にしている。太陽電池アレイ南側から複数枚の雑草写真を撮影する。それらを画像処理して雑草領域を抽出し，三角測量的な計算を行って雑草物理モデルを作成する。日射計を用いて計測した日射強度と，この雑草物理モデルを使って任意の日時におけるアレイ上の日射強度分布を計算する。それを太陽電池ストリング回路モデルに入力して，雑草影を考慮した発電量を推定する。

7-023

光合成促進シートをアーチ状に設置した際の透過光スペクトル分析

◎大西康介・吉澤大聖・舟橋和樹・平田陽一・渡邊康之（公立諏訪東京理科大学）

現在，太陽光発電と農業の両立といった研究が進められている。最近ではソーラーシェアリングといった形での太陽光発電と農業の両立が行われている。しかし設置費用という点や農作物の育成の妨げにならないような設置方法という点が課題となっている。そこで考えられているのが有機薄膜太陽電池（OPV）を用いた太陽光発電と農業の両立である。
OPVの特徴として薄型で軽量，柔軟性に優れており裏面空間の使用が可能ということが挙げられる。そこに光合成促進シートを使用することにより，透過光を植物，反射光をOPVの裏面発電に使用することが考えられた。しかし，光合成促進シートの吸光・蛍光特性に不明な部分が多い。本研究では，光合成促進シートの吸光・蛍光特性を分析し，基礎特性を明確化することにより，有効利用に役立てる。

7-024

PCECを用いたメタン混合ガス製造システム構成及び効率の検討

◎青柳 徹・辻 健太郎・直井和久・塩野光弘・吉川将洋（日本大学）

近年，再生可能エネルギー等から生じた余剰電力から水素を製造し，製造した水素と一酸化炭素や二酸化炭素を反応させメタンを合成する技術が注目を集めている。本研究では，水素を製造する装置としてプロトン伝導形電解セルを用いて，サバティエ反応を利用したメタン混合ガス製造システムと，フィッシャー・トロプシュ法を利用したメタン混合ガス製造システムを構成し，エネルギー効率及びメタン製造効率について検討を行った。その結果，サバティエ反応を利用したシステムのエネルギー効率及びメタン製造効率はそれぞれ83.1%，79.4%となり，フィッシャー・トロプシュ法を利用したシステムのエネルギー効率及びメタン製造効率はそれぞれ86.8%，82.7%となった。

7-025

スタック構成を考慮した燃料電池電気回路シミュレーション分析

◎伊関裕生・秋元祐太朗・岡島敬一（筑波大学）

固体高分子形燃料電池（PEFC）の課題解決に向けた内部診断技術は単セルを対象とした研究開発が多くを占めている。しかし，実システムではセルを複数積層させたPEFCスタックが用いられており，一部セルでの局所的な不具合が他セルにも影響を与える可能性が報告されている。そのため，スタックを対象とした内部診断に向けたシミュレータ開発が求められ，信頼性・耐久性の向上に寄与できると考えられる。本研究では，実スタック構成に基づき，電気回路モデルにPEFC電気化学モデルを素子として組み込んだ3次元PEFC電気回路モデルを構築した。さらに，PEFC運転時の不具合の一つであるドライアウトを実際の試験結果に基づいて模擬し，スタック内部の電流変化を3次元的に分析・評価した。

7-026

簡易等価回路を使った円筒横縞形SOFCの数値解析

◎藤道喬介・吉田 俊・田中正志（茨城大学）・乾 義尚（滋賀県立大学）

固体酸化物燃料電池（SOFC）は，動作温度が高いため，実験を行う前にシミュレーションによりあらかじめ発電特性を検討することが多い。しかし，円筒横縞形SOFCは単セル内の電流経路が複雑であるため，多数の局所抵抗を用いて等価回路を構成して計算する必要があり，計算時間が長いという問題があった。
本研究では，等価回路を構成する抵抗に補正係数を導入することによって，セル内部の複雑な電流経路での電力損失を計算で正確に考慮することができる，簡易等価回路を用いた円筒横縞形SOFCのシミュレーション手法を提案する。また，提案手法と従来手法の計算結果と計算時間を比較して提案手法の有効性を確認した。

7-027

水電解装置が接続された自励変換装置による系統安定化制御―負荷の非線形性を考慮したシステム―

◎中村勇太・青木 睦（名古屋工業大学）・加戸良英（旭化成）・壹岐浩幸（富士電機）

太陽光発電などの自然変動する分散型電源の大量導入により周波数変動および電圧変動といった，系統不安定化の増大が懸念されている。対策として，電力系統に連系されている自励変換装置を用いた系統安定化制御が数多く検討されている。また近年は，電力を水素に変換・活用する技術が注目されており，著者らはこれまで，水電解装置のような可制御負荷が接続された，自励変換装置による系統安定化制御を行うシステムについて検討した。本稿では，既報で開発したシステムにおける電流源負荷モデルを，水電解装置の静特性を模擬した非線形性を有する負荷モデルに改良し，そのシステムの動作について検証する。

7-028

南オーストラリア州におけるグリーン水素製造ポテンシャル評価

◎寺師彩俊・馬場旬平（東京大学）

太陽光発電や風力発電の大量導入に伴い，系統連系要件における制約から発電量を抑制する出力抑制が生じており，出力抑制によって生じる余剰電力の活用が注目されている。このうち，エネルギーキャリアとして期待されている水素を再生可能エネルギー由来の余剰電力により製造するグリーン水素が検討されている。
本稿では，再生可能エネルギーの導入率が6割を占めている南オーストラリア州を対象に，グリーン水素のポテンシャルについて検討を行った。同州の電力市場のデータから余剰電力量を算出し，水素製造装置の容量を仮定することにより，装置の稼働状況および水素製造量についてシミュレーションを行った。

7-029

直流給電による宅内消費電力の一検討

◎田中 蒼・雪田和人・松村年郎・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）

近年，ゼロカーボン社会を目指すため様々な取り組みがなされている（1）。この中で，直流スマートハウスは，交流給電を実施したときよりも，約5％の消費電力の削減効果があるとの報告（2）がある。しかし，文献（2）での報告は2013年における報告であり，各機器においても性能向上が現在図られている状況であるものと想定される。
そこで本論文では，文献（2）に基づき，最新機器の性能を考慮した宅内直流給電化時の消費電力量について試算をしたので報告する。

7-030

系統連系/自立運転モードによる複数台インバータの並列運転に関する研究

◎河端晋平・湯浅隆之・川﨑章司（明治大学）

近年，再生可能エネルギーの大量導入が多くの国で検討されているが，大量導入時には多くの懸念がある。これらの問題を解決するために，デジタルグリッドという新しい電力供給網が提唱された。デジタルグリッドでは複数のインバータ電源が並列接続されることが想定される。
これらのインバータの運転方法はSAモードとGCモードがある。本稿ではSAモードで運用されているインバータに途中からGCモードのインバータを投入して並列運用していく方法を提案し，その妥当性や投入方法による影響をシミュレーションにより検証した。
シミュレーション結果から提案法の妥当性は確かめられた。また，GCモードのインバータの投入はステップ的に行うよりもランプ的に行う方が，共振現象を抑えられることが確かめられた。

7-031

脱炭素社会における電力急変対策としてのキャパシタの期待

○木下繫則（IEEJ プロフェショナル）

現在，電気エネルギーの大半は石炭や石油の石化燃料を燃やして蒸気を作り，この蒸気でタービン発電機を回し，発電している。負荷（需要）急変は発電機の慣性が吸収している。脱炭素社会では，太陽光発電や風力発電など自然エネルギー（再生エネルギー）による発電する割合がより高まると予想される。脱炭素社会では，タービン発電機の割合が低下するので，発電機の慣性エネルギーによる短時間の電力変動吸収が期待できなくなるので回転機の慣性体に相当するエネルギーの吸収・放出と等価な電力安定化が求められる。ここでは，脱炭素化がより進展した社会における電気エネルギーの展望とキャパシタへの期待について述べる

7-032

近似確率動的計画法を用いた停電リスクを考慮した分散型エネルギーシステムのレジリエンスに関する定量的分析

◎西倉寛太・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

太陽光発電やコージェネレーションシステムをはじめとする分散型電源の普及の背景には，エネルギー効率や送電ロス，再生可能エネルギー導入だけでなく，分散型電源が災害時，停電時に発揮するレジリエンスへの期待がある。本研究においては，分散型電源，系統電力，都市ガス，及び水道インフラを総合的に勘案し，分散型エネルギーシステムのレジリエンスに関する定量的な分析を行う。本文では主に，災害拠点病院を含む複合商業施設を例にとり，災害などによる不確実性の高い供給途絶リスクを考慮した場合の最適設備計画及び最適運用に関する，近似確率動的計画法を用いた分析手法について詳説する。

7-033

都府県の太陽光発電および電気自動車の充放電ポテンシャルの時系列評価

◎秋元祐太朗・岡島敬一（筑波大学）

2018年に閣議決定された地域循環共生圏において農村部は自然エネルギーを，都市部は資金や人材を提供することが想定され，この相互補完関係の構築が日本の再生可能エネルギーの増加による自立分散型のエネルギーシステムの形成に期待されている。また，多くの自治体では再生可能エネルギー100%を将来目標として掲げているが，時間別の変動性を考慮し目標達成に向けて事業を推進していくことが重要である。そこで，本研究では各地域の連携可能性について定量的に明らかにするために，公開データをもとに隣接連携可能な東北から九州地方の45都府県に対してエネルギー需要，太陽光発電ポテンシャル，電気自動車ポテンシャル，県内自給率の観点から時系列評価を行った。

7-034

MaaSを活用したマイクログリッド間の広域連携―EVによるエネルギー融通の成立条件の考察―

◎李 一達・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

著者らはMaaSの拠点とMGとを融合させ，シェアリングされたEVの利用予約対応と自動運転といった移動と，MG間のエネルギー融通を含めたエネルギーマネジメントとの協調計画手法（“EV and Energy” Management System: E2MS）を提案し，シェアリングされたEVを移動型蓄電池として，MG間の広域連携に活用する経済メリットを明らかにした。本稿では，MG間のエネルギー融通はEVと託送供給の双方を活用できるものとし，EVによるエネルギー融通距離と送電線による託送の関係性を数値試算から示す。この結果からE2MSの効果が及ぶ領域について考察する。

7-035

核燃料サイクルと再生可能エネルギーの大量導入を考慮した長期最適電源構成モデルによる日本の発電部門脱炭素化に関する分析

◎湊本穂高・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

近年，2030年時点での温室効果ガス排出削減目標として2013年比での46%減といった数字が掲げられたことをはじめとし，発電部門の低炭素化への需要は今後ともに明らかである。その上で，本研究においては低炭素電源でありエネルギー自給率の向上に寄与し得る原子力発電や再生可能エネルギーに関して核燃料サイクルの導入に加え，発電量や電力需要の時間的変動を合わせて詳細に考慮した上で日本国内の今後100年間にわたる最適な電源構成を算出することを目指した。結果として，原子力発電を基幹電源とした上で将来的に高速増殖炉などにおけるMOX燃料の利用が増加することの経済的優位性が示唆されうる計算結果となった。

7-036

コーニング制御による風力発電の出力特性最適化

◎枦山英史・金井陽亮・平田陽一（公立諏訪東京理科大学）・幸地保秀（日乃出建設）

世界的に活発となっている風力発電には課題が多くある。その最たる例として，風向き，風速により発電量が不安定なため，安定したエネルギー供給を行いにくいということが挙げられる。風力発電のメリットとして，再生可能エネルギーであるため，供給源が無くなることがない，発電時にCO₂を排出しない，といった利点が挙げられる。デメリットとしては風速が強い場所や安定して風が当たる場所でないと発電効率が悪く，設置場所が限られてしまう，強風時に破損してしまうということが挙げられる。本研究では，強風時にもブレードを閉じて回転を止めないというコーニング制御を用いることにより，強風時にも発電を止めることがなく，一定の電力を発電し，エネルギーを安定して供給することを目的とする。

7-037

波力による始動トルクを用いた風力発電装置の実用化に向けた研究

◎田村一樹・鈴木拓海・生田目直哉・山本敏和・橋本慎也（福島工業高等専門学校）・中塚敏均（北拓）

本研究では360度どの方向からの風にも対応することができる垂直軸型風車を対象としている。ブレードには周速比の高い揚力型を用いているが，欠点として低風速における自己起動性が乏しいことがあげられる。それに対しブレードの形状変更ではなく外力からの補助として，海洋エネルギーである波力を利用することで始動トルクを生み出し起動性を改善できることがこれまでに確認できている。本年度は発電効率上昇のためのブレードの軽量化と発電した電力を利用できるようにするための充電回路の作成を行った。その内容に関して報告する。

7-038

SRMを用いた小型風力発電システムにおける高効率駆動回路に関する検討

◎柿沼 凜・山村直紀（三重大学）

永久磁石型同期発電機や誘導発電機が小型風力発電システムには多く利用される。永久磁石型同期発電機はレアアースであるネオジムを材料に用いられる事から発電効率は高いがコストも高い。誘導発電機は回転子構造が簡単かつ堅牢で材料費も安価という利点が存在するが回転子に二次電流が発生するため効率が低い欠点を持つ。以前の研究では回転子構造が簡単かつ堅牢で高効率を特徴とするSRMを用いた発電システムに関して励起電流を制御することによるMPPT（最大電力点追従）法とインピーダンス制御回路を使用する負荷制御法を提案した。本稿では提案システムと一般的にSRMの駆動で多く用いられる非対称Hブリッジ回路の比較を行う。

7-039

小形風力発電機のための蓄電池切替手法の基礎検討

○岩﨑祐翔・細江忠司・雪田和人・池田和樹・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）

近年，地球規模の取組として注目されているSDGs。その7つ目にあたる，「エネルギーをみんなに，そしてクリーンに」を念頭に，著者らは未電化地域でも有用な小形風力発電機に着目し，発電方法についての研究を進めてきた。本研究では，低速回転から高速回転という幅広いパワーバンドを有する極数変換装置を用いた発電機と蓄電池を利用した小形風力発電システムについて取組んでいる。本論文では開発中の発電システムのうち，蓄電池部分に焦点を当てその基礎的検討を行った。シミュレーションでは，蓄電池切替による充電可能な回転数の増加を確認した。また，蓄電池切替装置を実際に作成し，定格600Wの風力発電機を使用した実験でも，同じ効果が得られた。

7-040

螺旋水車を用いた浮体式小水力発電装置の出力向上に関する研究

◎荒川稜太・下遠野愛得・蛭田匡祐・吉野優太・橋本慎也・山本敏和（福島工業高等専門学校）

2021年に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では，2030年度までに電源構成における再生可能エネルギーの割合を36～38[%]にまで増加させることを目標としている。再生可能エネルギーの1つとして水力発電が挙げられる。近年は設置面積が小さく小規模な場所で発電可能な小水力発電が新たな発電方式として注目されている。本研究室では小水力発電装置に関する研究を継続しており，本年度は水車の取り付け位置の見直しによる出力向上を図った。実験では，小水力発電装置の螺旋水車全体を水中に沈めた状態で発電することで，水流の力を効率よく電力に変換できることが確認できた。今後の展望としては水車に当たる水量を増やす機構を検討し，更なる出力の向上を目指す。

7-041

水車出力一定制御で運転する潮流発電における発電最大流速・一次電流に対するシステム諸量の検討

◎辻 健太郎・塩野光弘（日本大学）

本稿では，水車出力一定制御方式で運転するDFIGを用いた潮流発電システムにおいて，発電最大流速，発電機一次電流の一定値を変化させた場合，発電機が過負荷とならず年間発電電力量を最大とする増速比および発電機の定格容量について検討を行った。その結果，発電最大流速が低下するにつれて，増速比は増加する傾向となり，発電機の定格容量は減少する傾向となることを明らかにした。

7-042

河川土砂と土砂摩耗の関係性評価に関する一考察

◎伊東孝晃・山中淳平（東京電力ホールディングス）・土田高嗣（東京電力リニューアブル・パワー）

水力発電所は台風のような河川土砂が増える状況になると，設備の摩耗懸念から発電を停止している。少しでも発電量を増やすには最適な運転停止時期の設定が必要であるが，それには河川土砂と摩耗速度についての関係性を把握することが必要不可欠である。
本論文では河川土砂と摩耗速度の関係性とその算出方法について検討した。
IECの関係式を利用してシンプルな摩耗速度と河川土砂との関係式を求めた。未知数である定数については土砂摩耗試験を行い実際の摩耗速度を得ることで決定することが可能である。このことから，各発電所における摩耗速度の関係性と河川粒子濃度を把握することで摩耗速度の予測が可能である。

7-043

事故事例から学ぶ蓄電池システムへの安全要求と対策

○田代洋一郎（東京電力ホールディングス）

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて蓄電池活用の期待は高まっている。一方で蓄電池の普及に伴う火災・爆発事故は世界各国で継続しており，2021年には死亡者が出る大災害も発生するなど安全に対する課題も山積している。ここでは中国・北京で発生した死傷者4名に及ぶ爆発事故の事例を解説すると共に，その事例を踏まえた国際標準規格の活用について述べる

7-044

負荷・太陽光発電プロファイルを適用したときのバッテリー特性評価

◎西原智也・臼井琉斗・北沢慧大・濵 健斗・渡辺由太郎・平田陽一（公立諏訪東京理科大学）

近年の災害時の大規模停電により系統全体の調整力が低下し，再生可能エネルギーは火力発電が復帰するまで再稼働できないという状態に陥った。2011年の東日本大震災の際は中長期間の停電や，計画停電が行われ，80％の家屋が復旧するまでに3日間要した。これらの解決手段としてマイクログリッドが挙げられる。マイクログリッドを運用するには，バッテリーの性能等が大きく影響することが考えられる。本研究では災害時に3日間電力供給を維持することを目的としたリチウムイオンバッテリーの容量推定を行う。

7-045

廃Liイオン電池から再生したLiNi_1/3Co_1/3Mn_1/3O₂の電気化学特性

◎澤 賢佑・安部勇輔・熊谷誠治（秋田大学）・渡邊亮栄・淀瀬達也（DOWAエコシステム）

Liイオン電池（LIB）の正極活物質には，レアメタルであるコバルトを含んだ遷移金属酸化物が一般的に用いられる。LIBの需要は年々増加しており，製品寿命となったLIBの数も増加している。コバルト等のレアメタルを有効活用するため，正極活物質のリサイクルが注目されている。本研究では車載用の使用済みLIBからリサイクルされた正極活物質（再生品）の特性について評価した。再生品と市販品のハーフセルを組み立て，Liイオン脱離挿入試験を実施した。その結果，再生品はLiイオン脱離挿入が行われたものの市販品よりも低い比容量であった。一方，サイクル特性に関しては再生品の容量維持率が80.7 %，市販品が32.0 %であり，再生品が優れた特性を示した。

7-046

リチウムイオン電池多孔質電極（正極）の1-10C放電特性に及ぼす電解液濃度の影響

◎藥師寺康平・川瀬 龍・河野昭彦・藤田洋司・漆畑広明・小山正人（金沢工業大学）

我々は，10Cレベルの大電流放電特性が解析可能な3極セルを開発し，リチウムイオン電池（LIB）多孔質電極の性能を解析してきた。以前，正極における大電流放電時の急激な電圧降下は，多孔質電極細孔に浸透した電解液中のLiイオンの消耗に伴う濃度分極の増大によることを報告した。そこで本研究では，塩濃度の異なる電解液（1000，2000mol/m³）を使用した3極セルを作製し，LIB正極放電特性を解析した。電気化学インピーダンスの分布定数等価回路解析より，前述の電解液濃度の相違に関わらず，電荷移動反応速度が電極全体の反応を制限していることを明らかにした。1~10C放電曲線の解析より，電解液濃度を高くすることで4C以上での放電容量の減少が抑制出来た。

7-047

水コンデンサによる高電圧パルス測定法の検討

◎後藤聡汰・櫻畠宏礎・武藤翔輝・田中正志・柳平丈志（茨城大学）・平山智士・乾 義尚（滋賀県立大学）

従来のリチウムイオン電池リサイクルには，環境負荷の高い排水が発生するという問題がある。環境にやさしい高電圧パルス放電によるスパッタリングを利用したリサイクルプロセス実現に必要な正極材料回収に最適な放電条件特定のために，高電圧パルス放電測定法が必要がある。そこで，水コンデンサを利用した高電圧パルス測定法を提案する。実際に，水コンデンサを設計・製作し，作成済みの高電圧パルス放電発生装置に接続し測定実験を行った。結果として，84.14kVの波高値で25nsのパルス放電波形が測定できていたと確認できた。今後は，水コンデンサを使用し，スパッタリングによる正極材料回収のための最適な放電条件を検討していく予定である。

7-048

レドックスフロー電池による電力卸売市場運用およびマイクログリッド運用の実証

○大岡俊夫・北野利一・長岡良行・藤川一洋・柴田俊和（住友電気工業）

電力卸売市場での運用結果の続報とともに，マイクログリッド運用に向けての設計検討，配電網での模擬負荷を用いた構内試験の結果を報告する。また，電力卸売市場での運用を通じてRF電池が著しい容量低下を伴わないこと，高い設備稼働率を達成したこと，について約4年間の実績を示して報告する。

7-049

MgB₂線材を用いたSMES用コイルの開発

◎恩地太紀（鉄道総合技術研究所/上智大学）・富田 優（鉄道総合技術研究所）・猪俣 涼・高橋雅史・谷貝 剛・高尾智明（上智大学）・平野直樹（核融合科学研究所）・槙田康博・新冨孝和（高エネルギー加速器研究機構）・駒込敏弘（前川製作所）・濱島高太郎（東北大学）

近年，世界的に脱炭素に向けた政策が加速し，消費時に二酸化炭素を放出しない水素燃料が注目され，近い将来水素社会の実現が期待されている。一方，液体水素の冷熱（20 K）の利用については議論が薄い。
そこで，超電導磁気エネルギー貯蔵装置（SMES），燃料電池，電気分解装置等から構成される複合ハイブリッドシステムである先進超電導電力変換システム（ASPCS）を提案し，SMES用のMgB₂コイルは，ポンプなどの動力無しで冷媒を循環させる，サーモサイフォン方式による液体水素間接冷却方式を適用する。
ASPCSで提案する数10 MJ級のSMESを実現するために，10 kJ級の実証小型ASPCS用SMESコイルを設計製作したので報告する。また，他の電力貯蔵装置との比較についても報告する。

7-050

GISの線路用遮断器と母線端部の発生過電圧および雷インパルス耐電圧仕様に関する検討

◎山本尚史・横畠系典（東京電力パワーグリッド）・坪井敏宏（東京電力ホールディングス）

発変電所の耐雷設計では雷サージ解析により電力設備に発生する過電圧を評価し，機器の雷インパルス耐電圧の仕様を決定する。ガス絶縁開閉装置においては，線路用遮断器開放時に雷が侵入した場合が最も過酷な条件と想定される。一方，遮断器投入時に母線端部に生じる過電圧は，線路用避雷器と母線端部との距離が遮断器との距離に比べて遠いため，雷サージ過電圧の大小関係が逆転する可能性がある。上述の母線端部，遮断器端の過電圧を定量評価した例は少なく，耐雷設計における母線端部の発生過電圧の検討要否は明確になっていない。本研究では，一例として275 kVガス絶縁変電所を対象に，耐雷設計業務の効率化を指向し，複数の条件でGISの母線端部および遮断器端の過電圧を定量的評価した。

7-051

異なる電圧波形に対するがいしのスパークオーバモデルの配電線雷事故率計算への適用性評価

◎山口宜大・石本和之・河野丈治（電力中央研究所）

従来の配電線雷事故率計算では，がいしのスパークオーバ（以下，S.O.）モデルとして電圧スイッチモデルもしくは積分法モデルにより模擬される場合が多く，これらのモデルの定数は，比較的取得が容易な標準雷インパルス電圧に対するがいしのS.O.特性に基づく場合が多い。一方で，実際の配電線で発生する波尾が極めて短い雷過電圧を基にS.O.モデルを作成した方が現実に近いと考えられるが，このような電圧波形の違いがS.O.発生率に与える影響の検討は十分になされていない。本論文では，異なる電圧波形に対するがいしのS.O.特性を示すとともに，この結果を基に作成したS.O.モデルを用いて雷インパルス電圧波形の違いがS.O.発生率に与える影響を評価した。

7-052

CVVケーブルの開閉サージ伝搬特性

◎都築詩織・道下幸志（静岡大学）・小椋陽介・伊佐治宏子・吉田昌展（中部電力）

電気所の低圧制御回路では，電力機器の開閉サージに起因する障害が発生している。開閉サージの抑制対策を検討する上で，低圧制御ケーブルにおける開閉サージの伝搬特性の評価が必要とされる。そこで，FDTD（Finite Difference Time Domain method）法に基づく汎用サージ解析コードVSTL（Virtual Surge Test Lab.）における低圧制御ケーブル（CVV）の模擬方法について検討したので報告する。

7-053

屋外直流給電における雷サージ対策の一検討

○中村尚倫・花岡直樹・樋口裕二・田中 徹（NTT）

NTTグループでは，通信ビルから近隣ビルに直流380Vの電力を給電する屋外直流給電技術の検討を行っている。本技術は，通信ビルに設置された太陽光発電設備で発電した電力を蓄電池に蓄え，DC/DCコンバータを介し，近隣ビルに給電する。主に，災害時の利用を想定しており，給電の信頼性や電気的な安全性を十分に確保する必要がある。本発表では，通信ビル内に設置したDC/DCコンバータの雷サージ対策の課題と対策手法について検討した内容を報告する。

7-054

電力ケーブルのサージ解析用FDTDモデルの検討

◎吉田洸太・山本和男（中部大学）・廣井英幸（関電工）

太陽光発電設備に雷撃があった際，雷電流が設備内の電力ケーブルに侵入し，故障してしまう恐れがある。中でもパワーコンディショナーは最も深刻な被害を受けている機器の一つである。このような雷被害の原因を究明するためには，電力ケーブルを伝搬する雷電流のサージ伝搬特性を把握する必要がある。そこで，太陽光発電設備で広く用いられているCVTケーブルのサージ伝搬特性試験を行い，そのサージ伝搬特性を，FDTD法に基づいた解析ソフトを用いて，詳細に再現できる高密度メッシュモデルと計算時間を大幅に削減できる低密度メッシュモデルの構築を試みた。そして，実験結果と高密度メッシュモデルと低密度メッシュモデルの比較検討を行った。

7-055

FDTD法に基づく変電所低圧制御回路の雷サージ解析-金属シース付制御線の模擬手法の開発-

○立松明芳・山中章文（電力中央研究所）

落雷による雷サージ等に起因して，発変電所等の低圧制御回路にサージが発生し，機器が損傷あるいは誤動作に至ることがある。このようなサージに対して，低圧制御回路において合理的な保護対策を実施するためには，発生するサージを予測することが重要となる。
本論文では，FDTD（finite-difference time-domain）法に基づくサージ・過渡電磁界現象解析プログラム VSTL REV（Virtual Surge Test Lab. Restructured and Extended Version）を用いて，金属シース付制御線で構成された変電所低圧制御回路を模擬して，接地構造物に侵入した雷インパルス電流によって制御線に誘導される電圧を計算し，実測結果と比較した結果について述べる。

7-056

Proposal of Unit Step Response Time Calculation Technique

○里 周二（宇都宮大学）・清水博幸（日本工業大学）・西村誠介（横浜国立大学）

According to IEC 60060-2:2010, lightning impulse measuring system's performance was evaluated using numerical convolution technique, which uses unit step response of the system. Although abolished, IEC 60060-2:1994 recommended to evaluate the system's performance by measuring unit step response time (T_N: T in this paper), partial response time (T_a) and settling time (t_s) It was well known to make the step response time as close as zero in designing a measuring system. From this point of view, if the step response time is calculable for a given measuring system, it would help to design a fine measuring system with CAD. The problem is that the value of T is hard to evaluate for a given system. Authors have find a quite easy technique to evaluate the step response time and its details are explained and its effectiveness is also demonstrated in the paper.

7-057

Switching Impulse Waveform Parameters Evaluation for The Forthcoming IEC 60060-1 ed.4

里 周二（宇都宮大学）・○清水博幸（日本工業大学）・西村誠介（横浜国立大学）

It has been almost concluded that switching impulse parameters definition is completely altered in the forthcoming IEC 60060-1 ed.4.
The parameters are to be evaluated using the same manner as lightning impulse parameters in IEC 60060-1:2010 ed.3. The time parameters are to be denoted as “T1/T2 impulse” like lightning impulse parameyers now.
Auhtors applied our own package developed for ligighning impulse to switching impulse. The results are shown in the paper and necessity of k-factor in the switching impulse analysis is disscussed.

7-058

北陸地方における2020年度の落雷観測結果

◎馬場隆彰・河合一誠・箕輪昌幸（愛知工業大学）

風車の雷対策を目的に北陸地方の上越市風力発電施設1号機と3号機，内灘町風力発電所，稲葉山風力発電所1号機で落雷観測が行われている。本講演では，北陸地方における2020年度の落雷観測結果，及び同日に3地点で落雷を観測できた日の落雷観測結果について報告する。また，2020年度の落雷観測数は以前に比べて少ないように感じたため，2020年度も含めて過去10年間の平均落雷数，直近5年間の平均落雷数と2020年度の落雷数とを比較し検討する。

7-059

2021年に東京スカイツリーで観測された落雷

○三木 貫・齋藤幹久・工藤亜美（電力中央研究所）

東京スカイツリーでは，高さ497mに設置したロゴスキーコイルによる雷電流波形観測を2012年2月末に開始し，2013年3月に地上の脚部にもロゴスキーコイルを追加して，以降タワー上層と低層での同時観測を実施しており，さらに光学観測と放射電磁界についても同時観測している。本報告では，2021年に観測された東京スカイツリーへの落雷を一覧として速報する。

7-060

LENTRAを用いた東京スカイツリーへの雷撃の位置標定および電荷量推定

◎工藤亜美・齋藤幹久・三木 貫・三木 恵（電力中央研究所）

現在，各電力会社では雷撃による損傷箇所を迅速に知るためLLS（Lightning Location System）が運用されている。しかし，現行のLLSは位置標定誤差が数百 m程度であり，雷撃点や損傷機器の捜索にかかる労力が未だ大きい。また，架空地線等の損傷を引き起こす可能性が高い100 C以上の大電荷量を伴う雷撃などをいち早く判別できることが望ましいが，現行のLLSには電荷量の推定機構が存在しないため難しい。
そこで，電力中央研究所ではそれらの課題を解決する新たなLLSとしてLENTRA（Lightning parameters Estimation Network for Total Risk Assessment）を開発し，実証機による検証を行っている。本報告では，LENTRAの実証機を用いた東京スカイツリーへの雷撃の位置標定および電荷量推定の評価結果について報告する。

7-061

汚損したシリコーンゴムの絶縁回復特性に及ぼす添加剤の影響

◎川村太郎・杉本俊之（山形大学）・奥田剛史（東北電力ネットワーク）・増田雅芳・溝江弘樹（東北電力）

電気学会共通試料である5種類（A~E）の添加剤の異なるシリコーンゴム（SiR）を用いて，汚損からの時間経過による絶縁回復特性の違いを非接触型表面抵抗率測定装置を用いて調べた。
砥の粉と人工海水粉末の質量比が5：1のとき，汚損直後はいずれのサンプルでも，絶縁性が大きく低下していることを示した。一方，汚損から158日経過後には，絶縁性の回復が見られた。特に，サンプルAとBでは清浄なSiRに近い絶縁性を示した。これは，SiRの低分子成分が時間をかけて汚損層に滲みでてくるためであると考えられる。
よって，添加剤の違いによってSiRの汚損時の絶縁回復特性には違いが見られ，特にサンプルCでは回復速度が遅いことが分かった。

7-062

シリコーンゴム表面汚損後の絶縁回復が注水時局部放電の開始に及ぼす影響

○杉本俊之・鈴木友也（山形大学）・奥田剛史（東北電力ネットワーク）・増田雅芳・溝江弘樹（東北電力）

シリコーンゴムの表面は不溶性物質で汚損されても，十分な時間が経過することで撥水性や絶縁性が回復することが知られている。本研究では，その絶縁性の回復の度合いが注水時の局部放電の発生に及ぼす影響を明らかにするため，砥の粉と海塩によるシリコーンゴムの汚損度が異なるサンプルに純水を注水したときに発生する局部放電の特性を調べた。絶縁性が回復したサンプルの方が広範囲で局部放電が起きやすいことが分かった。

7-063

ポリマーがいし外被材の表面撥水性低下過程に関する研究ーDynamic Drop Testによる水滴挙動と撥水性の観察ー

◎辻 知耀・石関智哉・八島政史（東北大学）

外被材にシリコーンゴムを使用したポリマーがいしは撥水性による耐汚損性能が良好であり，電力流通設備への導入が国内でも進んでいる。しかし，撥水性の喪失や放電発生による経年劣化が危惧されており，長期性能の解明が必要となっている。本研究では，DDT試験における電解液を通常の食塩水から蒸留水に変更して試験を行い，シリコーンゴムシートの撥水性が低下する過程・要因を分析した。試料の表面撥水性の変化を定量的に評価するために，水滴長・滴下間隔・水滴の落下速度を動画・画像から測定した。それぞれのパラメータにおいて，撥水性低下による変化が見られた。本研究により，撥水性低下は電界・水分・塩分の3要素が組み合わさることで起きると考えられていたが，電界・水分の2要素だけでも撥水性低下に寄与することが確認できた。

7-064

送電用がいしの着雪特性について（その1）－実線路におけるフィールド観測－

○増田雅芳・溝江弘樹・米竹浩気（東北電力）・奥田剛史（東北電力ネットワーク）・辻 幸人・坂田 学（日本カタン）

架空送電線路において，塩分を含む湿雪ががいしに圧密着雪し発達することで，フラッシオーバが発生し停電につながることがある。このような雪害事故抑制の観点から，送電用がいしの着雪特性や耐電圧特性の評価が求められており，様々な研究が進められている。その一方で強風時の湿型着雪については，その発生が稀なことから，これまで十分な知見が得られていない。このため，自然環境下での課電状態におけるがいしへの着雪の発達様相解明を目的として，実設備においてフィールド観測をしたため，その概要について報告するもの。

7-065

送電用がいしの着雪特性について（その2）－強風域における着雪事例－

○溝江弘樹・増田雅芳・米竹浩気（東北電力）・奥田剛史（東北電力ネットワーク）・辻 幸人・坂田 学（日本カタン）

送電線路の雪害事故の原因となるがいし着雪について，自然条件下かつ課電状態における発達様相の解明を目的として，実設備においてフィールド観測を行った。この観測において，課電下でのがいしへの強風域圧密着雪を確認することができた。この圧密着雪では，着雪が発達して笠間が橋絡する過程のほか，着雪が風に押されて風下側に回り込みながら発達する過程が確認された。

7-066

塩雪害を模擬した着雪がいしのフラッシオーバ試験

◎三好雅仁・本間宏也（電力中央研究所）

これまで，がいしの着雪課電実験について，無課電の状態でがいしに一度人工雪を着雪した後，課電を開始する「着雪先行型」のフラッシオーバ実験を行われてきた。この「着雪先行型」の実験は，過電流検知等により一旦送電が停止された後，再送電（課電再開）までにがいしへの着雪が進んだ状況を模擬しているとも考えられるが，活線状態においてがいし着雪が進んだ場合（「着雪先行型」）の塩雪害発生状況とは，そのフラッシオーバ発生機構が異なることが推測される。そこで本研究では，これら「着雪先行型」と「課電先行型」における着雪・課電方法の違いが，がいしへの着雪形成や放電進展過程，耐電圧特性に与える影響について検討を行った。

7-067

架空送電用がいし金具および架線金具への溶融亜鉛アルミニウム合金めっき適用検討

◎伊地知弘光・吉野恵一・岸垣暢浩・龍岡照久（東京電力ホールディングス）・大橋一斗・土田陽一・久保田邦裕・白石智規（東京電力パワーグリッド）

東京電力では，架空送電用のがいし金具や架線金具には一般的な防錆対策として溶融亜鉛めっきを標準適用している。しかし，海岸地域では，山間地域と比較して金具の溶融亜鉛めっきの腐食速度が非常に大きいため，電線の張替え時期より先にがいしや架線金具を取替える場合がある。このため，海岸地域では，溶融亜鉛めっきより防食性能が高いとされる溶融亜鉛アルミニウム合金めっきや溶融亜鉛アルミニウムマグネシウム合金めっき（以下溶融亜鉛合金めっき）を一部適用している実態にある。しかし，溶融亜鉛合金めっきの防錆効果の定量的な評価は十分でなく，適用範囲を決定する目安は明確になっていない。今回，実環境での腐食に最も近いとされるISO16539に準拠する複合サイクル試験を用いてこれらの防食効果を評価したので，その結果を報告する。

7-068

多導体架空送電線に沿った自律飛行における電線画像撮影

○岸垣暢浩・太田大介（東京電力ホールディングス）・川村友明・石川健太郎・齊藤寿幸・白石智規（東京電力パワーグリッド）・千葉 剛・Wiktor Piwowarczyk・熊田雅之（ブルーイノベーション）

架空送電線は，地上からの高倍率スコープを使用した目視，作業員が電線に乗り出しての目視や，ヘリコプターから空撮された電線画像の観察により点検されているが，これらはそれぞれかなりの時間と労力を必要とする。これらの課題に対処するため，著者らは，ドローンが弛みのある単導体送電線の電線に沿って飛行しながら電線を撮影する送電線自動点検システムを開発し，実設備の点検の一部で使用している。今回，これまで開発してきたシステムを，多導体送電線の電線へも適用できるように拡張し，飛行試験を実施した。

7-069

ドローンによる送電設備自動点検飛行アルゴリズムの開発

◎丸目裕樹・村田秀樹（中部電力パワーグリッド）・益田尚弥・深見兼太郎（センシンロボティクス）

架空送電設備は日常的な地上，塔上からの目視点検やヘリコプター搭載のカメラによる点検により設備の状態を確認している。送電線の経過地によっては，急峻な山岳地への出向や鉄塔上での高所作業となることから，安全性の向上や業務効率化として，ドローンの自動飛行による巡視や点検作業について各所で取り組まれている。
ドローン機体は，日進月歩で技術開発が行われており，機体改良も短い周期で実施されていることから，今回，特殊な外付センサ類が不要かつ，高度な操縦技術に依存せず，安全に飛行可能な「送電設備自動点検飛行技術」を開発したため報告する。

7-070

送電線点検ドローンの墜落リスクに関する考察

○谷口 栄・富木洋一・三村尚稔・太田大介（東京電力ホールディングス）・川村友明・齊藤寿幸・白石智規（東京電力パワーグリッド）

近年，ドローン産業利用に向けた検討が活発化しており，送電線点検へのドローン活用が各所で検討されているが，ドローンの耐風性能維持や送電線を点検するために必要な送電線追従機能を付加する等の理由よりドローンは大型化する傾向にあり，送電線下に建物が密集する環境での適用には，墜落時リスクの観点から課題が残る。本報告では，ドローン墜落時リスクを定量的に把握するため模擬ウエイトを用いた落下衝撃試験による重量別のリスク評価を実施し，建物への影響を考慮すると500g以下が望ましいことを示した。

7-071

単独GNSS測位ドローンによる送電設備を対象とした写真測量の精度確保手法

○中屋 耕・橋田慎之介（電力中央研究所）

ドローンを用いた写真測量は低コストで高精度な三次元情報が得られるが，その精度確保のために地上基準点（GCP）が必要である。しかし，送電設備が設置されている箇所には山林も多く，地上にGCPを設置することが困難である。このため，鉄塔上のパーツをGCPとして用いて測量精度を確認し，地上にしたGCPと同等に機能することを確認した。また，撮影高度の異なる写真画像を用いてSfMを実施する際，高度差が大きいと鉛直方向の推定誤差が大きくなる恐れがあることが分かった。

7-072

架空送電設備で発生する故障アークによる電力線ACSR 410mm²の素線溶断特性の解析的検討

○岩田幹正・大高聡也・合田 豊（電力中央研究所）

架空送電設備の電力線として使用されている鋼心アルミより線ACSRは，がいし連の接地側ホーンまたは支持物と電線の間のフラッシオーバ（地絡）や，ギャロッピングやスリートジャンプによる電線どうしのフラッシオーバ（短絡）で発生する故障アークにより素線が溶断することがある。この素線溶断の防止策を検討するためにこれまでに交流アーク試験が実施されている。本論文では，筆者らが開発した素線溶断特性計算手法を用いて，電線の溶損・溶断の過酷条件も考慮しつつ電線内の伝熱条件がACSR410mm²の素線溶断特性に与える影響について検討を行った結果について述べる。

7-073

配電機材における樹脂材料の劣化評価

○北爪 光・市場幹之（東京電力ホールディングス）・田中 徹・山上真太郎（東京電力パワーグリッド）

配電機材の筐体には，近年コストダウンや軽量化を目的として，樹脂材料が使用されている場合もある。現在一部の配電機材で使用されているPC/ABSより，安価なABSの長期耐候性評価をしてきた結果，両者には劣化による引張強さの変化に差異が確認された。
そこで本稿では，上記原因を解明するために，促進耐候性試験を行った試料断面におけるSEM観察とIR測定を実施した結果を報告する。

7-074

短絡接地器具の小型・軽量化について

○藤川 純・安立昌司（古川電機製作所）・武村順三（中部電気保安協会）

短絡接地器具は感電の危険から作業者を守るために法令で取付することが義務付けられている。作業の場所は高層ビルの屋上などであり，器具類は階段で運搬することから小型・軽量化と作業性を向上させ労力を軽減して効率化を図ることが必要である。これまでに短絡接地器具の仕様を合理化するため，短絡電流の実態をシミュレーションした結果，中部電気保安協会の作業現場では短絡電流は12.5kA0.3秒通電から11.0kA0.2秒に変更できることを確認している。これにより短絡アークエネルギーが減るため短絡接地器具の小型・軽量化を実現したこと，耐寒性の高い絶縁電線を用い低温環境や狭隘な場所における作業性が向上することを確認したので報告する。

7-075

数値流体力学と統計手法を用いた海岸線近傍と山岳地における飛来海塩量分布の推定

○須藤 仁・木原直人・服部康男・平口博丸（電力中央研究所）

地形等の影響を受ける飛来海塩量の予測に有効な数値流体解析と長期間の累積海塩量を効率よく推定するための統計手法を用い，海岸線近傍と山岳地における期間平均飛来海塩量を推定した。推定された飛来海塩量は海岸からの距離に応じて低下するとともに，地形起伏により局所的に変化した。その地点間の増減傾向は付着海塩量の観測値と一致した。ただし，海岸付近において海岸からの距離に応じた推定飛来海塩量の低下率が過大となる傾向や，内陸の山岳地において局所的に推定精度が低下する傾向も認められた。このことから，海岸線近傍での砕波を考慮した海上濃度分布モデルや地形による局所的な飛来海塩量の変化に関わる解析モデル等に改善の余地があることも示唆された。

7-076

ガルバニック対型センサを用いた急速塩分付着解析～串本地区での評価結果～

○布施則一・竹山真央・木原直人・朱牟田善治・堀 康彦・谷 純一（電力中央研究所）・清水慶一・東頭延浩（関西電力）

電力設備が強い海風にさらされて生じる急速汚損に対しては，きめ細やかな環境観測が求められる。ガルバニック対からなる大気腐食モニタリングセンサは常時暴露型の環境観測機である。さらに，大気湿度も同時測定すれば，観測瞬時値から付着海塩量Wsを逆推定することができる。本稿では，和歌山県串本地区での観測結果に基づき，この急速汚損評価の有効性を議論した。

7-077

保全履歴データを活用した柱上変圧器外箱の劣化傾向分析

◎藤井良治・内田訓夫（中国電力ネットワーク）・田中利明・楠本 学（日本電気）

配電設備の高経年化は喫緊の課題であり，今後，大量の配電設備の経済的かつ効率的な維持・管理が求められている。当社では，将来的な保安のスマート化に向け，蓄積した配電設備の巡視記録等の保全履歴データを活用し，設備保全の高度化に向けて取り組みを行っている。本稿では配電設備のうち柱上変圧器に着目し，保全履歴データから外箱の劣化傾向分析を行った。その結果，柱上変圧器外箱の発錆は設置環境に大きく依存することを明らかにした。また，累積ハザード分析による定量評価により，地域別に取替目安を設定できる可能性があることが分かったため，これらの知見を基に，高経年化対策として計画的な設備更新を行う予定である。

7-078

予防保全的更新実績を考慮した設備故障率推定

○高橋紹大（電力中央研究所）

近年，電力流通設備の高経年化進行が国内外で課題として認識されており，その解決のためにアセットマネジメント技術を導入する動きがある。そこでは多くの場合設備リスク評価を行うが，その際精度よく故障率を推定する技術がポイントとなる。その一つの手法として，実フィールドにおける設備運用実績の統計解析があげられるが，一般に予防保全を前提としているため，単純に故障実績のみを解析して得られる故障率は相当程度過小評価となる恐れがある。予防保全的更新実績も併せて考慮するためにはそのためのデータ調査，蓄積が必要となるが，本稿では過去に実施された電気主任技術者会に対するアンケート結果を利用した解析例を紹介する。

7-079

渦電流探傷法による実線路の導体腐食検出

○滋野弘崇・田澤和俊・市川博章（矢崎エナジーシステム）・佐藤英章・清水優希・原田芳裕（東京電力パワーグリッド）

銅導体の架空配電線の課題として応力腐食断線が広く知られており，既に布設されている電線に対して健全性の評価や点検を行うことが重要である。有効な診断方法の1つとして渦電流探傷法が提案されている。本稿では渦電流探傷法を用いた非破壊での銅電線の導体腐食検出の有効性及び実線路での測定を実施した。
渦電流探傷法を用いた銅腐食検出装置において難着雪型架橋ポリエチレンSN-OC線（80 mm2）の実線路を測定した結果，目視観察と測定箇所の正誤判定は78％であった。この差異においては配線路の長手方向に錆がまばらに発生しており，隣接する測定箇所で測定結果が大きな違いが確認されたため，自走機による検出精度向上を図る予定である。

7-080

送電鉄塔用防錆塗料の長期性能評価（その2）

○吉野恵一・伊地知弘光・岸垣暢浩・龍岡照久（東京電力ホールディングス）・山戸祐貴・石川健太郎・山崎智之・白石智規（東京電力パワーグリッド）

東京電力では1994年以降，耐候性に優れたふっ素樹脂系塗料を上塗，密着性に優れたエポキシ樹脂系塗料を下塗とする塗装を標準適用しているが，工数減による塗装の作業効率向上を目的とした1回塗りの超厚膜形エポキシ樹脂系塗装の現場への適用検討を行っている。本報告では同塗装の長期性能について，経年による塗膜減耗を見込んで塗膜厚さを調整した塗装試験片を用いて，紫外線劣化に対する高い促進性を有するメタルハライドランプ式促進耐候性試験で短期間に評価した結果を報告する。

7-081

電気設電気設備診断へのサーモカメラ活用について

○武村順三（中部電気保安協会）・芦田和毅（長野工業高等専門学校）

電気設備は膨大な量が広範囲に厳しい自然環境下で使用され，生命・財産・契約の根幹を成すため，電気事業法にもとづく調査・点検による診断で健全性が保たれている。一方，電気設備は，高経年化や調査・点検に従事する人材の高年齢化・長期的不足などの課題が顕在化しているため国主導のもとでIoT/AIを活用したスマート保安が検討されている。このキーデバイスのひとつであるサーモカメラを活用した診断システムの技術開発状況について報告する。実験室レベルでは十分満足できるシステムが構築できたので実現場で検証を行うとともに，AIを組み合わせて異常の自動判定や劣化予兆の把握が可能となるシステム開発を進めていく。

7-082

ニオイセンサを用いた油種識別手法の検討

◎田尻隼也・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

変圧器やコンデンサ等の油入機器周辺で油分を発見した場合，その油が機器から漏油した油であるのか，それ以外の油であるのかをその場で判断することは困難である。したがって，その場で簡単に油種を識別できる手法を開発することで，保守業務の効率化に貢献可能と考えられるため，本研究では「ニオイセンサ」を用いて油種の識別を試みた。絶縁油を含む4種類の油を加熱し，気化させることによりニオイセンサで測定を実施した。測定結果は主成分分析（PCA）により散布図にすることで，違いを見やすくした。結果としては，試料ごとに概ね同じエリアにデータが集まり，ニオイセンサを用いることで油種の違いを見分けられることが分かった。

7-083

画像分類技術を用いた高圧地絡波形の原因判別

◎追良瀬利也・坂東広嗣（中部電力）・武村順三・梅村正人（中部電気保安協会）

高圧配電線事故は13,292件/年（全国10年平均）発生しており，中部電気保安協会は一割程度の停電影響がある。なお，自家用電気工作物の他社事故波及はこの約3％で減少傾向である。これに加え自家用構内の高圧事故は中部電気保安協会で1,222件/年（7年平均）発生しており，地絡50%，短絡30%，ヒューズ動作20％である。配電線事故や構内事故による要請で24時間365日の体制で対応しており，事故原因の早期究明や劣化予兆を把握して事故の未然防止が必要である。事故の過半数を占める地絡故障に対して30年以上前から様々な取り組みがされており，今回新たな手法としてAIの画像分類技術を用いて地絡電流波形から原因判別を試みたので取り組み状況を報告する。

7-084

変電所制御回路のデジタルツイン実現に向けた検証研究

◎藤山はるか・羽柴靖人・武田康一（関西電力送配電）・川本真也（東芝エネルギーシステムズ）

現在，高度経済成長期に導入した設備の更新が継続する一方で，少子高齢化による働き手の減少により将来的なマンパワー減少は避けられない状況となっている。そういった状況から，業務の効率化が求められる中で，変電設備取替の電気工事における制御ケーブル切替作業では，切離・接続箇所のチェックやケーブルの接続状態を把握するための接続表の修正が，請負協力会社や当社工事監理者の負担になっている。また，人の手によって膨大な量の情報を記載するため，記載ミスを起こしやすく，ヒューマンエラーに繋がる懸念がある。
そこで，本研究では，限られた人員で同じ水準の保全業務を遂行していくために，DX技術を用いて，機器間のケーブル接続の見える化や工事で用いる帳票の半自動作成が可能なツールを作成し，検証を行った。

7-085

送電用鉄塔の強風災害に鑑みた風況観測の取り組みについて

○山崎智之・村上慧斗（東京電力パワーグリッド）

2019 年9 月，台風15 号の襲来により，千葉県房総半島に設置された送配電設備に甚大な強風災害が発生した。送電設備にあっては，千葉県君津市に位置する2 基の送電用鉄塔が倒壊した。筆者らは，鉄塔の被害メカニズムを明らかにするとともに，倒壊原因に基づく再発防止対策を立案し，類似条件の設備対策を実施した。
上述した送電用鉄塔の強風災害の発生に鑑み，弊社送電部門では，①強風発生時における鉄塔の状態監視，ならびに②風速予測技術の精度向上（研究要素）を二つの目的とし，送電用鉄塔に風向風速計を設置し，風況観測を実施することとした。
本論では，送電用鉄塔への風向風速計設置による風況観測の取り組み状況について述べる。

7-086

過熱接続管の点検効率化検討

○磯崎正則（フロントラインアシスト）

接続管は，同長電線抵抗比が200～300%に至った時に取替えることが推奨されているが，本線電流が小さい場合には，同長電線抵抗比が高くても，接続管の温度は低く，運用上問題ないと考えられるので，接続管温度に着目した点検基準の検討を行った。また，接続管が過熱する割合を考慮すれば，更なる点検延伸化の可能性があることを示した。

7-087

交流重畳法における単相測定の判定基準

◎村田 薫・田澤和俊（矢崎エナジーシステム）・佐藤英章（東京電力パワーグリッド）

交流重畳法の単相測定において交流重畳電流が3nAを超え，かつ1Hz信号の周期性が確認される場合においても絶縁状態が良好であるケーブルが確認されている。これは，過去の調査結果より，未橋絡トリーからの信号であることが考えられるため，判定基準の妥当性について再度検討した。
交流重畳電流が3nAを超え，かつ1Hz信号の周期性が確認されたケーブルに対して前駆遮断試験による最弱点部の位置標定を行った結果，未橋絡トリーが検出された。そのため，交流重畳電流が10nAを超えた場合，劣化判定とする基準とし，3～10nAについては，橋絡トリーの初期状態または未橋絡トリーを検出している可能性があることから要注意とする基準を設けた。

7-088

60kV級CVケーブルにおける水トリーのモデル化－撤去ケーブルにおける微小ボウタイトリーの観察と交流損失電流の推定－

◎木榑 翼・板垣航大・八島政史（東北大学）・三浦信也（東北電力ネットワーク）・米竹浩気（東北電力）・栗原隆史・高橋俊裕（電力中央研究所）

60kV級の経年撤去CVケーブルに実施された絶縁破壊前駆遮断試験の結果から，局所的に存在する未橋絡の水トリーが絶縁性能の低下要因となることが報告されている。本稿では60kV級撤去CVケーブルの架橋ポリエチレン（XLPE）絶縁層において，多数の微小ボウタイトリーの存在を確認するとともに，交流損失電流の推定を試みた。60kV級撤去CVケーブルのスライス片をマイクロスコープで撮影し，画像解析ソフトで微小ボウタイトリーの個数と長さを計測してその関係を整理した。また，微小ボウタイトリーを電界モデルで再現し，ケーブル内に占めるボウタイトリーの総体積を推定して交流損失電流の評価を試みた結果，実測値のオーダーに近い値が得られた。今後も実ケーブルにおける微小ボウタイトリーの発生状況の調査とともに，交流損失電流や絶縁性能への影響について検討する。

7-089

500 kV級複合がい管ケーブル終端接続部での地絡発生時の圧力解析

◎富田雄大・森 大樹・八木正史（古河電気工業）

電力ケーブルの終端接続部で地絡が発生した場合，がい管内部の圧力が上昇し，がい壁破損の危険があるため，放圧機構の搭載が要求されることがある。本報告では，66 kV級の複合がい管で地絡模擬実験を行い，圧力の測定と放圧弁動作を確認した後，数値解析で500 kV級の終端接続部での地絡発生時の圧力を推定した。
実験の結果，放圧弁は正常に動作し，最大圧力が9.0 MPaとなり，その後の圧力も放圧弁無しの試料に比べ速く低減した。
500 kV級の終端接続部の数値解析では放圧機構なしの場合，圧力が20.0 MPaまで上昇するのに対し，放圧機構を搭載することで圧力が6.9 MPaまで低減すると推定された。

7-090

複合がい管の可視コロナおよび人工汚損交流耐電圧特性

○森 大樹・石寺啓一・成田真弘（古河電気工業）

ケーブルの気中終端接続部に用いられるがい管は，従来磁器製が一般的であったが，近年FRP製のコアにシリコーンゴム笠を被覆した，軽量かつ防爆性等に優れる複合がい管が注目され，国内外の実線路に適用が広がっている。電気協同研究第72巻第4号に基づき，複合がい管の可視コロナ試験を実施し，275kV級の電界においてもシリコーンゴム笠部に可視コロナが発生せず合格という結果が得られた。また，JEC-5202に基づく人工汚損交流耐電圧試験にて，超重汚損地区相当の汚損に対して66kV級と275kV級の複合がい管のいずれも合格という結果が得られた。これらの結果から，複合がい管は実用に十分な性能があることが分かり，今後さらなる納入が期待される。

7-091

OFケーブルに対する漏油点特定手法の開発

◎望月祐希・吉岡智也・永田健一（東京電力パワーグリッド）

OF ケーブル において漏油が発生した場合，絶縁油が外部に流出し，周辺環境の汚染に繋がること，漏油の発見が遅れ大漏油へ発展 した場合，ケーブルの絶縁破壊に至り，大停電や火災など社会に多大な影響を及ぼすことが懸念される。したがって早期に漏油を発見することが重要である。
そこで O F ケーブルの線路において，漏油区間を早期に特定するため，同一線路の同一箇所の接続部における健全相と漏油相の油圧差を複数箇所で測定し，その油圧差の傾向から漏油区間 を特定する手法を開発した。

7-092

絶縁紙を介した油中ガス拡散係数の温度依存性

◎牧野裕太・栗原隆史・髙橋俊裕（電力中央研究所）

OFケーブルは接続部の絶縁油に対する油中ガス分析に基づいて保守管理されている。異常・劣化で絶縁体内側に生じた絶縁油の分解ガスは，採油・分析対象となる絶縁体外側の油層まで拡散して初めて油中ガス分析で検出可能となる。よって，油中ガスの拡散様相の把握が重要である。また，OFケーブルでは通電時に導体発熱による温度上昇が生じるが，これに伴い油中ガスの分子運動が激しくなり，拡散しやすくなると考えられる。そこで，本研究では絶縁紙を介した油中ガス拡散係数の温度依存性を測定した。

7-093

OFケーブルの課電劣化における硫化銅と絶縁性能の関係

○杉本 修・小山勇人（東京電設サービス）・相原靖彦・三由 透（東京電力ホールディングス）

OFケーブルの課電劣化について，その温度特性をこれまで模擬実験により検討してきた。その結果，30 ～40 ℃を境に温度が高くなるほど，課電劣化により生成した酸化スラッジが絶縁紙上広範囲に堆積したが，絶縁破壊は起きなかった。そこで絶縁破壊させるため絶縁紙の積層方向への酸化スラッジの堆積を加速させる目的で，絶縁油に硫黄粉末を添加させた結果，課電100時間前後で絶縁破壊した。ただし積層方向への堆積ではなく，硫黄粉末添加により酸化スラッジでなく，硫化銅が広範囲に堆積したため絶縁破壊していた。つまり，酸化スラッジより硫化銅の堆積が絶縁性能に大きく影響することがわかったので，その結果を報告する。