一般講演

2-062

Hコイルによる直流磁気特性測定の検討

○沓掛暁史・池田 哲・城門由人（大分県産業科学技術センター）

電磁鋼板の直流磁気特性は，その交流磁気特性と共に，産業用や自動車用モータ，変圧器など電気機器の開発で広く活用される重要なパラメータである。本稿では，交流磁気特性の測定に用いられるHコイル法を直流磁気特性の取得に適用するために，単板試験器にて低周波数励磁下での測定を検討した。その結果，0.2 Hzの低周波数の励磁下において，Hコイルによる直流相当の磁気特性の測定が可能であることを明らかにした。

2-063

Deep Neural Networkを用いた初期波形推定による単板磁気試験器における磁束波形制御の高速化に関する検討

◎角 和樹・岡本吉史（法政大学）・藤原耕二（同志社大学）・佐々木秀徳（法政大学）

主要鉄芯材料である電磁鋼鈑の磁気特性を測定する有力な試験法として単板磁気特性試験法がある。当該試験法は，磁束正弦波条件を満たすため，基本波に対して高調波成分を多く含む歪波電圧を励磁巻線に印加することで磁束波形制御を行う必要がある。特に，高磁束密度領域での波形制御法（従来法）では，励磁電圧波形を反復し，修正を行うことから，フィードバック回数が著しく増加してしまい，測定時間の増大が懸念される。本稿では，Deep Neural Network（DNN）を用いて励磁電圧波形を初期波形として推定する波形制御機構を磁気測定システムに実装し，波形制御の高速化および有用性について検討したので報告する。

2-064

電磁鋼板の磁気特性測定装置間の機差評価

◎佐竹幸栄・下地広泰・沓掛暁史・城門由人・池田 哲（大分県産業科学技術センター）

モータやトランスなどの電磁力応用機器に用いる最適な磁性材料を選定するため，正確な磁気特性を測定し，評価する試験器が必要である。そこでIEC，JISの標準規格であるエプスタイン試験器や単板磁気試験器と，大分県産業科学技術センターでこれまで独自開発してきた各種高精度磁気特性測定装置を用いて，同一ロットから切り出した電磁鋼板の磁気特性を測定し，その測定データを比較評価し各試験器の特徴を定量的に解明する。

2-065

無方向性電磁鋼板の板厚と結晶粒径の変化に伴う磁区構造変化

◎川久保洋輝・竹澤昌晃・森本祐治（九州工業大学）・市江 毅（日本製鉄）

無方向性電磁鋼板（モータ用鉄心材料）の磁気特性は基本的には組成による結晶構造，磁気異方性や磁歪，電気抵抗率で決まるが，多結晶体であるため，磁化容易方向の分布と結晶粒径に大きく依存する傾向がある。また，鉄損の一つである渦電流損を低減する目的で板厚条件を調整し改良が進んでいる。そこで本研究では，無方向性電磁鋼板の結晶粒径と板厚の変化が磁気特性に与える影響を明らかにするため，同一試料の板厚変化に伴う磁区構造観察，並びに，結晶粒径の異なる各試料の磁区構造観察を行い，各条件の変化に伴う磁区構造変化を調査することで高特性な電磁鋼板の開発指針の確立を目指している。

2-066

鉄系非結晶磁性材料の熱処理条件検討

◎木村祐太・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）・佐々木紀夫・渡邊 洋（東静工業）

軟磁性材料である鉄系非結晶磁性材料は，磁壁の移動を妨げる粒界が存在しないため磁気異方性が限りなく零に近く，高周波での比透磁率が高く磁心損失が小さいため良好な磁気特性を有することが知られている。また鉄系非結晶磁性材料は熱処理をすることである温度以上になると結晶核が生成され結晶化が起こる。
本研究では，鉄系非結晶磁性材料の熱処理条件を熱処理保持時間と保持時間別に磁心損失Pcvを比較し熱処理条件を検討した。

2-067

Fe-Si-Bアモルファス磁性材料の高温熱処理による磁気特性

○佐々木紀夫・渡邊 洋（東静工業）・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）

Fe-Si-Bアモルファス磁性材料において結晶化温度より高い温度で熱処理を行いその磁気特性と構造について検討を行った。高温熱処理後にFe-B化合物を含まないαFe（Si）結晶が生成された場合に良好な軟磁性が得られた。

2-068

Fe系アモルファス磁性材料を用いた積層磁性体の特性評価

◎守谷 陸（日本大学）・外塚 充（東静工業）・矢澤翔大（日本大学）・渡邊 洋（東静工業）・新妻清純（日本大学）

現在，主な非接触給電の材料としてフェライトが使用されているが，焼結材料であるため衝撃に弱く割れやすいという欠点を持ち，極端な大型化が難しい。また，キュリー温度が低いため，高温環境で使用することが困難である。そこで，フェライトより耐衝撃性があり，かつ高効率で高安全性のある新材料として積層磁性体が期待されている。本研究では，Fe系アモルファス磁性材料を用いた積層磁性体の磁気特性を評価することで，適切な熱処理条件を検討した。

2-069

Fe-Pt電析膜の磁気特性に与える塩化物イオンの影響

○柳井武志・伊野拳太朗・楢林龍太・山下昂洋・中野正基・福永博俊（長崎大学）

Fe-Ptに代表される白金系磁石は，材料コストこそ高価であるものの，電解めっき法により作製でき，かつ優れた磁気特性を有する磁石の一つである。本研究室ではこれまでにクエン酸をベースとするめっき浴から作製した数十um厚のFe-Pt磁石膜について報告を行ってきた。従来検討の中で，めっき浴内の塩化ナトリウム濃度を変化させたところ，塩化ナトリウム量の増加に伴い保磁力が増加することを見出した。論文内ではNaイオンが保磁力増加に寄与すると推察したが，塩化ナトリウム量の増加は同時にClイオンの増加も招くため，Naイオンが保磁力増加に寄与すると結論付けるにはClイオンの影響に関する検討を行う必要があった。本稿では，Clイオンが磁気特性に与える影響を中心に検討を行った。

2-070

Nd-Fe-B熱間加工磁石に対する添加元素の影響

○齋藤哲治（千葉工業大学）

急冷凝固法で作製されたNd-Fe-B合金急冷薄帯を放電プラズマ焼結したNd-Fe-B焼結体に熱間塑性加工を施してNd-Fe-B熱間加工磁石を作製した。また，Nd-Fe-B合金急冷薄帯に亜鉛などを添加した試料も同様に放電プラズマ焼結でNd-Fe-B焼結体に成形した後，さらに熱間塑性加工を施してNd-Fe-B熱間加工磁石を作製した。得られたNd-Fe-B熱間加工磁石の組織と磁気特性について調べたところ，Nd-Fe-B合金急冷薄帯より作製したNd-Fe-B熱間加工磁石よりも亜鉛などを添加した試料は高い保磁力を示すことがわかった。

2-071

逆問題的アプローチによる磁場空間一様性の高い永久磁石形状の最適化

◎田中治樹・村田祐眞・薮上 信・桑波田晃弘（東北大学）

ダイヤモンドNVセンタを搭載した磁気センサは，磁場の高感度な検出が可能である。生体への侵襲性を低くすることや更なる磁気感度向上の為，小型かつ磁場一様性の高い磁石形状の設計が重要である。一般に磁石設計では，既存の手法では革新的な磁石形状を設計することは困難である。本研究は，目的の磁場一様性から磁石の形状を決定する逆問題的アプローチによって，ダイヤモンドNVセンタに一様な磁場を印加する小型磁石の形状を最適化する手法を開発した。逆問題最適化の結果，磁場一様性誤差が40％から0.01%まで飛躍的に向上した。この結果から，本提案手法により磁石形状を決定することで，磁場一様性の高い磁石が設計可能なことがわかった。

2-072

真空アーク放電を用いたNd-Fe-B系磁石膜の作製

◎日笠山航也・大塚鴻介・山下昂洋・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

スパッタリング法で作製したNd-Fe-B系磁石膜の「リニアモータ」や「エネジーハーベスト」への応用など，永久磁石の小型デバイスへの応用が期待されている。我々はPLD（Pulsed Laser Deposition）法で作製した250 μm厚Nd-Fe-B系磁石膜を用いて，超小型ステッピングモータを開発した。上記のPLD法では，真空雰囲気下で数～数10 μm径の磁石粒子を生成できる条件を用いており，5 mm角の基板面積において，スパッタリング法より速い成膜速度で小型磁石を作製できる点に特徴がある。ここでは，PLD法と同様，真空雰囲気下でNd-Fe-B系磁石粒子を生成でき，PLD法に比べ紫外線レーザなどの大掛かりな装置を必要としない真空アーク蒸着法に着目した。現状，5 mm角基板に作製した等方性Nd-Fe-B系磁石膜のヒステリシスループには2段化が生じ，PLD法で作製したループに比べ角形性が悪く，同等の，（BH）maxを得られていない。そこで本稿では，デバイス応用に向け，（BH）max値の向上を鑑みたNd-Fe-B系磁石膜の作製に取り組んだ。

2-073

PLD法で作製した異方性Nd-Fe-B系磁石膜の膜厚が磁気特性に与える影響

◎花田真一郎・山下昂洋・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

本研究では，成膜中の基板加熱によりNd-Fe-B系磁石膜の異方化を試み，その成膜時間（磁石膜の厚み）が結晶構造や磁気特性に与える影響を検討した。成膜時間増加に伴い磁石膜厚が4 µmから48 µmと厚くなっており，どちらの試料も硬磁気特性を発現している様子が確認でき，膜厚の薄い試料は厚い試料に比べて保磁力の値が大きくなっている。X線回折結果は膜厚が薄くなるにつれて，（105）や（006）面のピーク強度が大きくなっていることから，本実験条件では，膜厚（成膜時間）の薄い（短い）試料の方が面直方向への異方化が進む結果となった。

2-074

数MHz帯における高磁場磁化過程測定法の開発

◎金井雄平・森 賢太郎・萬年智介・磯部高範・喜多英治・柳原英人（筑波大学）

電力変換器の高周波動作により受動素子のパワー密度が増加している。これに伴い，高周波帯でも低損失なインダクタ用軟磁性材料の開発が求められている。しかし現在，高い磁束密度かつ数MHz以上の高周波における磁気特性を直接評価する方法は確立していない。そこで本研究では，多段LC直列回路とインバータを組み合わせて，4 MHz，0.5 Tの大振幅で励磁可能なソレノイドコイルを作製した。さらにフレキシブルプリント基板を丸めて作った1次微分型ピックアップコイルを組み合わせることで高周波磁化測定システムの構築を試みた。作製した装置の較正用標準試料として，粉末Dy₂O₃および球状Y₃Fe₅O₁₂を用いると計測系の時間遅延の補正と測定磁場及び磁気モーメントの較正が現実的に可能であることを確認した。

2-075

POL電源用カルボニル鉄粉コンポジット／グラニュラー磁性薄膜ハイブリッド磁心インダクタの高Q化の検討

◎松永温加・野口大輔・曽根原 誠（信州大学）・直江正幸（電磁材料研究所）・佐藤敏郎（信州大学）

100MHz前後を駆動周波数とするPOLスイッチング電源用のパワーインダクタとして，カルボニル鉄粉／エポキシコンポジット磁心とグラニュラー磁性薄膜によるハイブリッド磁心を装荷したインダクタを提案した。カルボニル鉄粉／エポキシコンポジットにエンベットされたスパイラルコイルを高透磁率のグラニュラー磁性薄膜でサンドイッチする構造のインダクタは高いインダクタンスをとる一方，高周波では磁性薄膜の面内方向で発生する渦電流による損失が大きくなることが分かっている。本報告では，渦電流損失を抑制しQ値を高くするために，磁性薄膜にスリットを入れたハイブリッド磁心インダクタを検討し，三次元電磁界解析を用いた解析結果について述べる。

2-076

複合材アンテナの加圧依存性

◎吉峯 潤・矢澤翔大（日本大学）・外塚 充・渡邊 洋（東静工業）・新妻清純（日本大学）

電波受信アンテナは小型軽量化が求められている。アンテナに使用されている磁性材料としてフェライト材料が広く用いられている。しかしながら焼結材料であるため衝撃に弱く割れやすいという欠点をもち，極端な小型化は必ずしも十分とは言えない。電子部品の小型化を実現する磁性材料としてFe基アモルファス材料，ナノクリスタル材料などの金属磁性材料が注目されている。本研究では，低コスト化が期待できる磁性粉と樹脂の複合材料を用い，加圧力を変化させ成型した複合材アンテナの性能を検討した。複合材アンテナの電気特性は，ある一定の圧力で最も高い値を示し，それ以降では低下する傾向が見られた。

2-077

Fe系ナノクリスタルの磁場中熱処理による材料の厚さ依存性

◎佐久間穂崇・髙橋優太・村上裕和・庄子寛人・矢澤翔大（日本大学）・渡邊 洋（東静工業）・新妻清純（日本大学）

近年，磁性部品開発においては，高周波化することで小型化，高効率化する傾向にある。高周波での性能が求められている中，ナノクリスタル磁性材料において，磁場中熱処理を行い薄帯の幅方向にわずかに誘導磁気異方性を付与することで，低角型比のB-Hループを示し1），高周波において，高い透磁率が得られることが報告されている。
本研究では，組成比が同一で厚さの異なるFe-Si-Nb-B-Cu系ナノクリスタル材料を用いて，薄帯幅方向に磁場中熱処理を行い，誘導磁気異方性と磁気特性から材料の厚さ依存性について検討を行う。

2-078

膜厚の異なる(Fe_0.75Ga_0.25)_100-xC_x膜における磁気特性のC組成依存性

◎村松省吾・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

Fe-Ga二元合金は高飽和磁歪および優れた機械特性を有するため，磁歪材料として注目を集めている。一方で，強磁性共鳴線幅が広くダンピング定数が高いことも同様に知られており，高周波デバイスへの応用には不向きである。そこで，我々はこれまでにBを添加したFe-Ga-B薄膜がそれらの磁気特性を改善できることを報告した。本研究では，新たな第三元素としてCを選択し，Fe-Ga-C膜を作製して，それらのC組成依存性を検討，議論した。その結果，飽和磁歪に関してはC組成に依存せず一定となった。また，ダンピング定数はC組成の増加にともない減少し，最小0.006の値とFe-Gaに比べて低い値となった。このようにFe-Ga-C膜はFe-Ga膜に比べて高周波性能を改善することがわかった。

2-079

局所BHループを利用した歪センサの異方性のばらつき評価

◎豊田恵伍・石山和志（東北大学）

磁性膜と導体膜の積層構造からなる逆磁歪効果を用いた歪センサを高感度化するための手法として，異方性の均一化が挙げられるが，今までは均一性を評価できなかった。そこで，カー効果を利用して局所BHループを取得することにより，磁性膜の局所の異方性を測定して均一性を評価した。また，異方性が均一になるよう構造を最適化したセンサの歪-インピーダンス特性を評価し，均一性とセンサ感度の関係について検討した。実験の結果，磁性膜のエッジ部分で異方性が増大することが分かり，エッジを使わず異方性が均一な部分のみを用いた構造のセンサにすると，より高感度であることが確認できた。異方性の均一化がセンサ感度に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。

2-080

Co₇₀Fe₃₀薄膜における磁気特性の組成依存性

◎榎木 颯・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

薄膜磁歪材料はセンサやアクチュエータなどの実用デバイスや新規高周波磁気デバイスへの応用が期待されている。本研究では，次世代高周波磁気デバイスの創製に向けて膜厚の異なるCo₇₀Fe₃₀薄膜の構造と磁気特性について検討し，飽和磁歪と高周波磁気特性について議論する。λ_sは膜厚の増加にともない急激に増加し，10 nm厚以上でおおむね減少した。αに関しては膜厚の増加にともない0.008から0.04まで増加し，10 nm厚以上では0.02まで減少した。αの増大は異方性分散やtwo-magnon散乱などによる磁気的不均一性に由来するものと考えられる。以上の結果からCo₇₀Fe₃₀薄膜を用いた新規高周波磁気デバイスの創製のためには膜の磁化ダイナミクスを改善することが課題であることがわかった。

2-081

方解石を用いたリング型干渉計による光プローブ電流センサの小型・高感度化

○宮本光教・須江 聡・久保利哉（シチズンファインデバイス）・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

近年，省エネルギーや脱炭素社会の構築が望まれ，電子機器の高効率化が進む中で各機器に搭載するインバータ用スイッチング半導体素子は，大電流・高周波化している。著者らが提案する光プローブ電流センサは，挿入インピーダンスが小さく，超小型センサヘッドを有しており，局所における電流計測が可能である。更なる小型化，高感度化を目指し，方解石を用いた空間結合型干渉計を作製した。これにより，従来比でセンサシステム全体の容積は54.9%低減し，単位磁界当たりの電圧出力は116.7%向上することができた。

2-082

Bi:YIGの磁区反転を利用した高感度光プローブ電流センサの開発

◎須江 聡（信州大学）・宮本光教・久保利哉（シチズンファインデバイス）・寺岡祐恭・村上拓也・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

これまでに筆者らはCT（Current Transformer）やロゴスキーコイルといった電流センサに代わる新たな電流センサとして，グラニュラー磁性膜を用いた光プローブ電流センサを開発してきた。しかしながら，微小電流磁界に対しては感度が低く，信号がノイズに埋もれてしまい測定することができなかった。本稿では，感度向上のためセンサヘッドにBi:YIG結晶を用いて光プローブ電流センサを試作し，評価した結果を報告する。グラニュラー磁性膜およびBi:YIG結晶を用いたセンサヘッドで，スキュー校正器を流れる電流をそれぞれ計測し比較したところ，Bi:YIG結晶を用いた場合の方がより大きなFaraday回転角を得ることができるため，従来の光プローブ電流センサシステムに比べ，感度が約18.2倍向上した。

2-083

3D磁界検知用AMRスイッチ

○堤 弘毅・坪川 雅・栃下 光・前田 豊・小西隆寛・秋山 修（村田製作所）

盗電防止のため，3D磁界を検知する磁気スイッチのニーズがある。既存技術では，磁気スイッチの複数配置や複数素子を1パッケージ化した3Dホール素子などがあるが，1つのAMR素子を用いて3D磁界を検知する磁気スイッチを開発したので，ここに報告する。
3D検知のため，検出抵抗に全方向の水平磁界を受けられるパターンを採用し，固定抵抗は磁性体めっきでシールドした。更に，磁性体めっきにより垂直磁界が水平化される位置に検出抵抗を配置した。磁性体めっきの効果をシミュレーションで確認して抵抗の配置位置を最適化し，typ感度：水平2.3mT及び垂直7.0mTで設計した。結果，狙い通りの特性が得られ，サイズ1.45mm×1.45mm×0.55mmにて製品化を実現できた。

2-084

2周波磁気を用いた鉄鋼材の内部き裂の検出

◎安藤雄人・足立祥哉・川上太聖・王 璡・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）・石川敏之（関西大学）・廣畑幹人（大阪大学）

現在のインフラは完成から50年以上経過したものが多く，経年劣化した構造物のき裂や腐食の早期発見が必要とされている。本研究では磁気非破壊検査法の漏洩磁束探傷法を用いて2つの周波数における差分磁気ベクトルにより，き裂信号以外のドリフトやノイズを低減し，き裂信号の明瞭化を検討した。
磁気センサプローブに2つの周波数の電流を印加し，1～5 mmのスリットが裏面にある鋼板上をスキャニングして漏洩磁束を検出した。
5.8 Hzから92 Hzを差分した磁気ベクトルを用いた場合，単一周波数の場合と比較して，き裂部分における信号変化量が大きくなり，2周波数での差分ベクトルによりき裂信号を明瞭化できることが分かった。

2-085

電磁界分布測定による回路品質の評価に関する研究

◎苅田健徳・石田竜太・石山和志（東北大学）

電⼦機器の⾼周波化に伴い，信号線の不均⼀性や⽋けなどによるインピーダンス不整合が不要電磁妨害波の放出を引き起こすとされている。これらに起因する不要電磁妨害波の測定は従来，分解能や侵襲性等の課題により有効な測定⽅法がなかった。本研究では，伝送線路の不均⼀性や⽋け，素⼦のハンダ付不良によって発⽣する電磁界分布を磁気光学結晶とパルスレーザーを利⽤し，⾼周波交流磁界の位相・強度を測定可能な計測システムを⽤いて測定する⽅法を提案する。
MSL に RF 信号を印加した結果，MSL近傍の磁界を正確に計測できていることがわかった。これを利⽤し，線路の物理的⽋損等による不要電磁妨害波の計測が可能であり，回路品質評価に利⽤できると考えられる。

2-086

導体シールド性能向上のための導体接合法の選択

◎小田原峻也・榊原 満（オータマ）

磁気シールドルームにおいて，高い周波数の磁気ノイズを遮蔽するために導体シールドが併用される。導体シールドは複数枚の導体板を接合して構成されるが，接合方法により導通性能が変化し，これに伴い渦電流による遮蔽性能も変化する。しかしながら，どの接合方法が遮蔽性能向上に有効であるのか明らかでないため，ここでは，まずビス止めと超音波接合を選択し，アルミニウムの角筒を用いた実験と解析から導通性能および遮蔽性能を評価する。結果として，各接合方法での導通性能および遮蔽性能を数値で表すことができたことから，導体シールド性能向上に有利な工法を定量的に選択できるようになった。

2-087

高調波磁化を用いた磁性ナノ粒子の状態識別と鉄量推定

◎山村柊哉・五藤仁哉・安武茉子・圓福敬二・吉田 敬（九州大学）

ナノメートルサイズの磁性ナノ粒子は，その磁気的特性や粒子の小ささから様々な医療応用が考えられている。その一つに，磁性ナノ粒子の表面に検査試薬等を結合させた磁気マーカーを体内に注入して検出対象と結合させ，励起磁界を印加することで発生する磁化信号を検出，画像化する磁気粒子イメージング（MPI）がある。本研究では，MS1，Synomag，Perimagという三種の磁性ナノ粒子について，精製水で希釈した液相状態と接着剤で固定した固相状態のサンプルを作製した。鉄量を入力，検出信号電圧を出力とする線形システムに対する逆問題を解くことでそれぞれの状態の鉄量推定を行った。さらに特異値分解手法により逆問題を解析し，鉄量推定に対する評価を行った。

2-088

医療応用における鎖状マルチコア磁性ナノ粒子の磁化応答に関する基礎研究

◎張 昊晨・池田一貴・笹山瑛由・吉田 敬（九州大学）

磁性ナノ粒子（MNP）を用いた磁気粒子イメージングや磁気的免疫検査などの医療応用が注目されている。MNPにはシングルコアと複数のコアが凝集体を形成するマルチコアがあるが，マルチコア型のMNPの磁気特性は定量的に未解明である。本研究では，鎖状マルチコア磁性ナノ粒子（CMNP）とそれと等価な鉄量をもつシングルコア磁性ナノ粒子（SMNP）の交流磁化特性について数値解析を行った。行った解析条件下では，CMNPはSMNPと比べ高周波領域まで磁化応答できていることがわかった。これは，医療応用におけるMNPの高性能化の可能性を示している。

2-089

磁気粒子イメージング装置の大型化に向けた超伝導傾斜磁界コイルの開発

◎森岡大陽・吉本昌史・笹山瑛由（九州大学）・竹村泰司（横浜国立大学）・吉田 敬（九州大学）

磁気粒子イメージング（MPI）は，磁性ナノ粒子を用いて疾患領域の画像化を行う医療診断技術である。MPIにおいては，直流傾斜磁界を用いることで高分解能を実現している。しかし，一般的に直流傾斜磁界発生に用いられる永久磁石や銅コイルでは，大型MPI装置に十分な磁界が発生させられない。本研究では，人体サイズMPIの実現に向けた1/5モデルの大型MPI装置の開発に取り組む中で，超伝導コイルを用いて直流傾斜磁界を発生させることを考えた。超伝導コイルを試作して直流傾斜磁界測定を行い，測定値と理論値の比較を行うことで，超伝導コイルを導入した適切な設計によって大型MPI装置に十分な大きさの直流傾斜磁界の発生が期待できることを示した。

2-090

矩形波励磁の磁気ナノ粒子トモグラフィにおけるFPGAを用いた高調波抑制の検討

◎東野光宇太・岡村直樹・笹山瑛由・吉田 敬（九州大学）

磁気ナノ粒子トモグラフィは特定の疾病領域を画像化する医療診断技術である。我々は低濃度・深部の磁気ナノ粒子の検知のために矩形波インバータを用いて強磁場を生成する励起システムを開発している。矩形波の第3高調波は信号の検知を妨害するため，インバータのスイッチング位相を特定の角度でずらすことでその抑制を図っているが，ゲート信号を生成するデバイスの動作速度の制約から理想スイッチングとのずれが生じ第3高調波が発生する。そこで本研究では高いクロック周波数で動作するFPGAを用いて厳密な時間制御でのゲート信号の生成を検討した。その結果，これまで用いていたデバイスに比べ第3高調波/基本波の標準偏差が約1/4倍に減少した。

2-091

磁気ナノ粒子に対する磁気力場を設計する逆問題的推定手法

◎吉岡 輝・劉 爽・伏見幹史（東京大学）・桑波田晃弘（東北大学）・関野正樹（東京大学）

磁気力を発生させるデバイスを設計する際，磁気力の空間的分布（磁気力場）が重要となる応用がいくつか存在する。たとえば，マグネトジェネティクスと呼ばれる研究は，磁気力によって特定の細胞のみを活動させることが目標のため，デバイスによって作られる磁気力場は非常に重要である。そこで本論文では，あるターゲット領域における磁気力場に基づいて，デバイスが生成すべき磁場を推定する新しい手法を提案する。本手法では，磁気モーメントを磁場の関数とみなすことで，磁気力場と磁場を一対一に対応させている。シミュレーションの結果，与えられた磁気力場に対して，物理的な制約を満たす範囲でそれを作り出す磁場分布が推定できた。

2-092

超伝導誘導モータにおける出力密度のコイルピッチ依存性

◎城間洋人・中村亮太・佐々滉太・吉田 敬（九州大学）

現在，資源問題や環境問題などの要請からエネルギーの化石燃料の割合を減らし，電力化割合を増やすことは必要不可欠であり，特に電気推進航空機の実用化は現実味を帯びてきている。航空機用モータは高出力密度であることが求められるため，銅線の100 倍程度の電流を理想的には無損失で通電可能な超伝導線材を固定子巻線に用いた超伝導モータが期待されている。そこで本研究では電気推進航空機での使用を目的とした超伝導誘導モータにおいて，出力1 MW，出力密度10 kW/kgを目標として二次元有限要素法解析を行った。固定子巻線のコイルピッチを180 deg，90 deg，60 degとした3つのモデルでヨーク厚みを変えることで高出力密度化を行い，その結果を比較した。

2-093

Effectiveness of Vibration Reduction using Bearingless Motor Drive

○Theeraphong Srichiangsa・藤井勇介・千葉 明・清田恭平（東京工業大学）・杉元紘也（東京電機大学）

This paper presents the effectiveness of vibration acceleration reduction using a bearingless motor drive. In experiment, a ball bearing motor and the proposed bearingless motor are driven at rotational speed of 1000 to 25000 r/min. The experimental verification proves that using bearingless motor drive effectively reduces the vibration at high-speed region. At 25000 r/min, the vibrations of the proposed bearingless motor have significant reduction. The reduction is 1/10 and 1/15 at the 1st and 3rd frequency components, respectively.

2-094

自転車の走行中に生ずる振動を利用した磁石揺動式波力発電機の提案

◎武村拓都・佐藤光秀・水野 勉（信州大学）

振動を利用した発電は，環境負荷軽減やメンテナンスコストの削減が期待され，環境発電の1つとして注目されている。自転車の走行中には定常的に進行方向に微小振動が発生しており，振動がもつ運動エネルギーは電気エネルギーに変換できる可能性がある。そこで，本研究では水を媒体にして微小振動を大きな波に変換し，発生した波が磁石を揺動させることによって発電するデバイスを考案した。発電デバイスを自転車に搭載して等速走行を行ったところ，最大で2.1Vの出力電圧があり，LEDの点灯を確認した。本研究の結果により，水を媒体とする発電デバイスによって自転車走行中の微小振動を利用した発電が可能である。

2-095

高磁束密度永久磁石配列同期モータにおける高出力密度化と熱特性について

◎裴 英宸・福田恭志郎・吉田 敬（九州大学）

航空機の電気推進化や空飛ぶクルマの研究開発が注目を浴びている。これらを実現するためには，モータの高出力密度化が必要であり，10-20 kW/kg以上が必要とされている。これまで高磁束密度永久磁石（PM）配列界磁を用いたPM同期モータに関して二次元有限要素法により解析を行ってきた。本研究では，実用化に向けて三次元に拡張しPM同期モータの最適化を行った。また，熱解析を導入することでPM同期モータの適切な冷却方法を検討した。三次元有限要素法解析の結果，出力密度は電流密度が10 A/mm²時に4.7 kW/kg，20 A/mm²時に6.9 kW/kgとなった。冷却に関しては電流密度が10 A/mm²には水冷（自然対流）で耐熱温度以下となった。

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磁性テープを用いた走行中非接触給電システムの伝送効率向上

◎柴田和尚・卜 穎剛・佐藤光秀・水野 勉（信州大学）

電気自動車のバッテリー容量低減と航続距離伸長を目的とした走行中給電では，送受電コイルの相対位置が走行によって変化するため，位置ずれの大きい位置で伝送効率が低下する。本論文では，走行中給電時の伝送効率向上のため，磁性テープを適用したコイルを提案する。伝送効率の低下は，位置ずれが150mmの位置において，磁性テープ適用していないコイルとm r'=10，20，30の磁性テープを適用したコイルで位置ずれなしのときと比較してそれぞれ24.4%，17.3%，14.6%，13.5% であった。磁性テープの適用によって位置ずれ時の結合係数低下が抑制され，伝送効率の向上ができる。