一般講演

3-001

パワーダイスタ―を用いたEV制御とDC/AC変換

岡本賢一郎・○岡本研正・森下和功（京都大学）

10年ほど前に発明されたが，まだ知名度は低いダイスターという画期的なトランジスタがある。ダイスターとは，高光力の発光ダイオードを3個直列につないだLED光源と1枚の単セルシリコン太陽電池（光起電力0.5V）を直列につなぎ，両者を数mm～10mm程度の間隙で近接対向させただけのデバイスである。このようにきわめて簡単な構成のデバイスであるにもかかわらず，従来のバイポーラSiパワートランジスタと同等の増幅動作やサイリスタのようなスイッチング動作を行う。ダイスターは容易に高出力化できるので，EVなどの電力制御が可能である。このような観点から筆者らはダイスターのEVの等の制御への応用を提案する。

3-002

放電による染色液脱色に対する対向電極距離の影響

○小松 真（岩手医科大学）

公衆衛生などの観点から水中放電による染色液脱色の実験的研究を行い，特定の電極形状で対向電極間放電だけで十分脱色できる結果を得てきた。本研究では形状の最適化の一環として対向電極間距離を変化させ脱色に対する影響を調査した。テーパ面に細いSUS304ワイヤーを対向配置し，高導電率の濃度10mg/Lインジゴカルミン溶液 5 mLに放電を10回作用させ吸光分光にて濃度計測した。その結果濃度1 mg/L 以下まで大幅な低減がみられ，当方の過去の類似実験と比べても効果が大きい条件を得た。これは近傍壁面形状も脱色性能に関わる可能性を示唆した。また電極間距離 5 mm あたりではストリーマと火花放電の両方の放電電圧波形がみられ脱色性能への影響が疑われた。

3-003

半導体レーザーにおけるメラニン色素の透過特性

○河本敬子（近畿大学）・桒島史欣（福井工業大学）

赤外のレーザー光は，皮下に存在するメラニン色素に対して選択的に吸収され易いため，良性の色素性疾患治療に有効であり，レーザー脱毛にも応用できる。しかし，同じ用途に対して様々な波長のレーザーが用いられており，最適な波長も明らかとなっていない。また，これまでのレーザー装置は巨大，高価かつ使用に専門的知識を必要とする。一方，個人向けに売られている商品は，波長，出力，照射範囲などが曖昧となっている。
本研究は，複数の半導体レーザー素子の透過率の変化を調査することで，脱毛における半導体レーザーの最適波長を検討することを目的としている。

3-004

FDTD法を用いるUAV搭載用小型円偏波アンテナの設計と放射特性評価

○山本真一郎・宮城紀花・江原隆太・相河 聡（兵庫県立大学）

近年，山やビル等の遮蔽物が原因で情報通信機器類から放射される電波の送受信が正常に行えない問題が発生している。この問題を解決するため，送信局と受信局の間に中継器を設置する方法が用いられている。本研究では，中継器としてUAV（無人航空機）を用いることにより上記問題を解決することを目的としている。しかしながら，それを実現するためには以下の二点の問題が考えられる。一つ目として，送信局が移動することにより中継器から送信される電波と送信局から直接送信される電波同士が干渉してしまうことである。二つ目として，中継器が動くことにより電波の放射方向を正確に設定することができないという問題がある。本研究では上記問題点に対処するために，中継用固定翼UAVで用いられる169MHz帯無線通信システムで用いる見通し内，見通し外通信に対応した小型円偏波用アンテナを設計した。さらに，FDTD法を用いた電磁界解析により設計した円偏波アンテナの放射特性を評価した。

3-005

エッジ端末用発振器のホールドオーバ動作でのネットワークベースの周波数オフセット削減

○桑野 茂（大同大学）

無線信号を活用して周波数同期を行いネットワークベースで時刻同期を行う同期システムにおいて，受信状況が不良の場合発振器はホールドオーバ制御となる。この際，周波数オフセットが存在すると経時的に大きな時刻オフセットを生じてします。本検討では，ホールドオーバ時の周波数オフセットをネットワークベースで検出される時刻オフセットから統計的に検出し，それに応じて周波数オフセットを削減する方法について検討を行い，シミュレーションで良好な特性を得たので報告する。

3-006

LoRaの伝送遅延時間特性

○宮下充史（電力中央研究所）

近年のIoTの発展に伴い，様々な箇所におけるセンシングデータの取得や機器の制御に対するLPWA（Low Power Wide Area）の適用が検討されている。LoRaはLPWAの一つであり，伝送速度を変更可能であるという特長を有し，最も遅い伝送速度（146 bps）では見通し環境において20 kmを優に超える伝送距離が確保可能である。
本稿では，伝送遅延時間に対する要件のあるアプリケーションに対するLoRaの適用を想定し，LoRaの伝送遅延時間を室内実験により評価した結果をまとめる。

3-007

複数アンテナを用いた平行二線路における伝送特性の実験的検証

◎窪田拓未（奈良先端科学技術大学院大学）

短距離無線通信（NFC）は，無線区間の距離を極めて短く制限することで他システムへの干渉や情報漏えいを防ぐメリットがある。一方で，アプリケーションに合わせて複数の標準化が行われており，周波数はkHzからMHzなどの様々な周波数を割り当てられている。本研究では，短い無線区間長のメリットを損なうことなく，異種のNFC端末が通信可能なアンテナ基盤として平行二線路を導入し，近傍磁界を介した伝搬路の構成が可能かどうかを実験的に検証する。現在，NFC端末における負荷依存性について検討を進めており，ベクトルネットワークアナライザを用いて平行二線路-NFC端末間における通信路利得を測定した。検討の結果，端末による負荷依存性はなく，線路の伝送状態による影響が大きいとわかった

3-008

複数のFPGAを用いた幅広2値符号の探索

◎木村圭吾・神林 龍・高瀬浩史（日本工業大学）

本研究では，複数のサブパルスに圧縮する幅広2値符号を対象に，時間サイドローブの小さな符号を探索した。符号の全ての組合せを探索する全探索の場合，探索時間は符号長が大きくなるにつれ，指数関数的に増えていく。今回，複数のFPGAを用いて全探索を行った。符号長51および52において探索を行った結果，圧縮比24～34において従来2値符号よりサイドローブのピーク値とメインローブのピーク値の比（Sp/Mp）の小さな符号を見出した。また，圧縮比によってはSp/Mpが従来2値符号に比べ，約4.8[dB]改善できることが分かった。

3-009

人体の静電気回収における効率向上回路

◎橋本賢人・太田裕己（アドヴィックス）

将来の自動運転車では乗員の生体情報をモニタリングするセンサが重要になる。乗員接触型センサの電源には，様々な環境発電技術が検討されているが，発電機分サイズが大きくなってしまう。そこで，乗員とシート間で発生する静電気の活用を検討している。ただし単純な回収回路では効率が極めて低いことが課題である為，今回効率向上回路を検討した。その結果，単純な回収回路に比べて効率が1000倍向上した。幅広いアプリ応用を考慮するとさらなる回収効率の向上が必要となる。

3-010

弱反転動作を活用したCMOSべき乗変換ICのべき指数値の誤差解析

◎松井文也・西山直哉・佐野勇司（東洋大学）

入出力デバイスの非線形特性を補正するため，信号変換特性を変更できるアナログべき乗変換ICの開発を進めてきた。本論文においては，試作したべき乗変換ICの特性の実測誤差を理論解析した。実測値の誤差がペアMOSFETのゲート・ソース間電圧のバラツキで最大70mV，S値で最大5.63mV/decとなり，試作ICとしては十分にとり得る値に収まっていることを確認した。今後は，今回の解析結果を踏まえて，素子バラツキの影響の小さい（素子感度の低い）ICの開発を目指していく。

3-011

弱反転動作するCMOS-ICのチップ面積の縮小と信号ダイナミックレンジ拡大に関する研究

◎西山直哉・松井文也・佐野勇司（東洋大学）

入出力素子として一般的な各種センサやアクチュエータ等の非線形補正の補正に適した「べき乗変換回路」をMOSFETの弱反転動作を活用した小回路により提案し，CMOS ICを試作してきた。べき乗変換回路は弱反転領域で動作する必要があるため，対数変換回路が合計736倍の面積の並列MOSFETにより構成されており，レイアウト面積の縮小が課題であった。
今回，多段のカレントミラー回路を用いて入力信号電流を低減することにより，対数変換回路のレイアウト面積を従来の1/10以下の70倍に縮小した。また，MOSFETの並列数を削減したことによりサブスレッショルドリーク電流を低減して対数変換回路の信号ダイナミックレンジを53.0dBから59.0dBに拡大できることをシミュレーションにより確認した。

3-012

金属薄膜のIH加熱設計手法の開発

◎田丸英駿・佐野勇司（東洋大学）

冬にカーブミラーが結露し，安全確認しづらい状況が発生する。その解決策として，昼間の充電エネルギーを活用して，電力効率の高い誘導加熱を用いて鏡面加熱する結露防止システムを提案した。鏡面膜の誘導加熱の実現と設計手法の確立を図った。トランスの2次側の負荷薄膜を1次側から見た等価負荷に置き換え，1次側及び2次側の等価並列抵抗の周波数特性を測定することで，加熱電力に応じた駆動電圧を設計することができる。鏡の加熱実験により設計した誤差が14%に抑えられていることがわかった。加熱コイルに2.0Wを加えたところ，1.73W以上の誘導加熱電力が得られた。

3-013

RGB色有機EL照明を用いた光信号通信に関する研究

◎長島直輝・佐野勇司（東洋大学）

RGB色有機ELの3色照明を活用することで，照明機能は維持したまま，広い照明下での多重通信を実現するシステムを提案する。RGB色有機EL照明を用いた光信号通信システムを提案し，現状の照明パネルの測定からシステムの実現性を検討した。現状の発光パネルを用いることで，提案システムが実現できる可能性があると考えられる。発光の遮断周波数を4.5kHzまで高くすることができた。今後の課題としては，発光周波数のさらなる高周波化が挙げられる。

3-014

監視カメラ向け適応型HDRシステム

◎楊 陽・韓 奥・佐野勇司（東洋大学）

本研究の目的は，Webカメラなどの小型カメラが搭載され普及している簡易監視システムへの適用に向けて，カメラにも実装できる小規模な適応型HDR（High Dynamic Range）システムを提案することである。小型カメラ素子を用いた小規模な監視システムにおける映像劣化の解消に向けて，適応型HDRシステムを提案した。撮影映像の平均輝度値に応じてガンマ補正値を制御することにより，概ね映像劣化を補正できることを示し，変換式を提案した。
今後は，黒潰れと白飛びの混在する映像劣化の改善が課題である。

3-015

監視カメラ向け適応型HDRシステム用ガンマ補正回路の開発

◎韓 奥・楊 陽・佐野勇司（東洋大学）

Webカメラなどの小型カメラが搭載され普及している簡易監視システムに適用すべく，適応型HDRシステムを提案した。本研究の目的は，本HDRシステムに搭載するガンマ補正回路を開発することである。適応型HDRシステムに搭載するガンマ補正回路を試作し，べき指数値が設計通り制御できることを確認した。今後の課題は，回路の遮断周波数を5MHzまで向上することである。

3-016

リセット回路方式によるアナログ信号センシングの高精度化

◎西嶋 潤・桑原 崇・明星慶洋・大和田 哲（三菱電機）

産業用途の制御・監視機器などで使用されるアナログ信号センシング装置は一般に厳しい環境下での使用を想定し，大地（アース）などを介したグランドループに起因する障害を避けるため，絶縁の措置が必要となる。絶縁のためにパルストランスを用いる手法が知られている。パルストランスをスイッチング駆動することで，直流を含む低周波信号の入力に対しても回路の小型化が実現できる。本稿ではスイッチング駆動する際に生じる波形歪みの低減を目的に，後段の回路が信号を取り込んでいないタイミングで抵抗素子の接続を切り替えてトランスコアを消磁するリセット回路方式を提案し，回路解析によりその効果を検証した。