一般講演

4-116

位置決め精度の高い全方向移動ロボットの開発

◎橋谷 翼・岡田明也（香川高等専門学校）・大浦 翼（長岡技術科学大学）・三宅真生・向井公人・津守伸宏・石井耕平（香川高等専門学校）・筒井琢也（TKG）

複数のノズルにより同時造形できる3Dプリンタの実現は，造形物の大型化が進む3Dプリンタにとって，重要な要素である。全方向移動ロボットに造形用ノズルを搭載することができれば，ひとつの造形エリア内で自由にノズルを移動させることが可能となり，複数ノズルによる同時造型が可能となる。本研究では，駆動輪にねじ歯車を用いた全方向移動ロボットを2次元的に拡張したラックの上で走行することにより，高い位置決め精度の実現を目標とした。実験よりロボットが同一経路を複数回往復した際の，走行位置の繰返し誤差は歯車のバックラッシュ（0.5mm）以下であり，高い位置決め精度を期待できることが示された。

4-117

変動反力フィードバックに基づく柔軟マニピュレータの打撃動作制御

◎志方鴻介・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

スポーツの動作のように，ロボットにしなやかで人間らしい運動を再現させることが求められている。人間は手元の力を上手に制御して打撃対象に力を伝達する。ロボットにおいても，モータがロボットアームの柔軟性を利用することが可能であれば，人間らしく，なおかつ理にかなったしなやかな運動が可能になると考える。本稿では，柔軟構造の制御の知見に基づいて，柔軟性を積極的に活用したしなやかな運動の実現を目指す。振動制御の手法である二慣性共振系の反力フィードバックがモータの見かけの慣性を変化させることに着目し，人間の動作に則った打撃動作の制御法を提案する。

4-118

モーションコピーシステムのための環境のモデル化

◎小林遼太郎・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

近年，少子高齢化が進行し労働人口の減少による労働者不足が問題となっている。そのためロボットによる代替，協働作業が進められている。その解決策の一つとしてモーションコピーシステムを用いた動作の継承が挙げられる。保存された動作の位置や速度，力情報は加速度次元で統合することで同時に再現することができる。しかし，モーションコピーシステムには保存時と再現時の環境が異なる場合の再現が難しいという問題点がある。したがって位置や速度データ等と力の関係をより高精度にモデル化することが重要となる。本研究では書道動作を対象とし，物理的に筆のモデル化を行い，一般的なモデルの構造の場合との比較を行う。

4-119

水中ロボットのための2チャンネルバイラテラル制御の実験的検証

◎岡田大河・元井直樹（神戸大学）

This paper develops a two channel bilateral control for an underwater manipulator. The bilateral control system consists of the leader and follower systems. The follower system is placed underwater. The two channel bilateral control uses only position information of the leader and follower systems. This is the advantage for the underwater manipulator, since it is not necessary to estimate the external force in the follower system. The experimental results were shown to confirm the validity of the two channel bilateral control for the underwater manipulator.

4-120

外乱オブザーバを用いた電磁摩擦クラッチのロバスト速度制御

◎竹内政樹・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

近年，少子高齢化により介護補助のためのリハビリテーションのアシストロボットが注目されている。リハビリテーションでは安全のため機構的に装置が暴走することがないクラッチが注目されている。電磁摩擦クラッチはパウダクラッチに比べて強い伝達トルクがあり，小型化ができるといったメリットがある。一方で，伝達トルク特性に非線形性があるため，制御性能が落ちるおそれがある。本研究では，リハビリテーションのアシストロボットのための電磁摩擦クラッチの特性を考慮したモデル化誤差および外乱に対してロバストな速度制御を提案する。

4-121

画像ベースのビジュアルサーボによる二足歩行ロボットのZMP外乱推定

◎松森 一・小田尚樹（公立千歳科学技術大学）

二足歩行ロボットの視野画像平面上に画像空間オブザーバを用いた画像ベースのビジュアルサーボを構築し，画像空間オブザーバの推定外乱とロボットのZero Moment Point（ZMP）との関係性を実機実験により検証することを目的とする。具体的には，視野画像の変位の主たる要因がZMPの変動であることを利用し，加速度次元のZMP外乱として画像空間オブザーバにより推定できることを実験により示す。

4-122

災害を考慮した業務ビルの確率的コスト評価における計算負荷削減効果の検証

◎木下創太・山口順之（東京理科大学）・佐藤冬樹・大谷晋一郎（三菱電機）

近年，レジリエンスを強化するために建物に太陽光発電や蓄電池を導入する研究が進められている。その中で設備導入，運用の際に生じる最小の総コストを求める必要がある。しかし，業務ビルに対し，モンテカルロシミュレーションを用いて平常時コストと災害時コストを合わせた総コストの確率分布を求める際に，計算負荷が高くなってしまう問題がある。そこで，本研究では平常時と災害時に発生する総コストの確率分布を求める際に生じる計算負荷を軽減するための方法として，2つの手法を提案する。そして，これらの方法が従来手法よりも，どのくらい計算負荷を減らしつつ，精度の高い結果が得られるのかを実際のビルのデータを用いて検証する。

4-123

業務ビルにおける停電を考慮した年間運用コストの確率分布の高速算出方式

◎木村雄太・木下創太・山口順之（東京理科大学）・佐藤冬樹・大谷晋一郎（三菱電機）

災害による停電が多く発生していることから，レジリエンスが注目されてきた。実際のオフィスビルのデータを用いて，停電が発生した場合を想定した年間の運用シミュレーションを行い，線形計画法によって発生するコストを最小化し，確率分布を得る。ここで，PVと蓄電池の不確実性を考慮するためにモンテカルロシミュレーションを用いたが，それでは計算負荷が大きくなってしまう。そこで，畳み込み積分を用いることによって計算負荷が軽減されたことを示し，その結果について考察する。

4-124

キャンパスにおけるゼロエネルギー化シミュレーションに関する研究

◎安武直朗・川﨑章司（明治大学）

本研究は大学キャンパス内の建物を対象に省・創エネルギー技術の検討及び，エネルギー需給のシミュレーションを行い，ZEBの実現可能性及び課題について考察した。

4-125

実用的な生産シミュレータとModified Brain Storm Optimizationを用いた最適生産計画手法の実規模問題への適用

◎高橋賢二郎・福山良和・川口嵩平（明治大学）・川口嵩平・佐藤隆臣（三菱電機）・佐藤隆臣（東京大学）

COP26の温室効果ガス削減目標を達成するには，各分野で脱炭素化やカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを強化していく必要がある。産業分野では，Industry4.0等の製造業の技術革新を中心として，脱炭素化等の取り組みを強化しており，著者らは，現実の生産現場を忠実に再現した生産シミュレータと進化計算手法によるブラックボックス最適化を用いた生産計画最適化の研究を進めている。本論文では，上述の生産計画最適化手法を実規模問題へ適用した結果について報告する。

4-126

実用的な生産コストシミュレータと整数型Population Based Incremental Learningを用いた最適生産順序導出手法の適用

◎川口嵩平・福山良和（明治大学）・佐藤隆臣（三菱電機）

世界的に脱炭素に向けたカーボンニュートラルへの取り組みが活発化しており，国内外の製造業はエネルギー効率や環境負荷を優先した生産にシフトする必要がある。そこで著者らは，三菱電機が開発した生産性・エネルギー効率・環境負荷という3つの指標をコストとして算出する生産コストシミュレータとメタヒューリスティック手法の一種である整数型PBILを用いて，製品毎の生産順序を最適化することで生産性・エネルギー効率・環境負荷を考慮した評価指標を最小化する最適生産順序導出手法を提案する。

4-127

分散電源向けWeb APIのクライアント及びサーバコード自動生成技術の活用に向けた検討

◎澤田明日香・佐藤弓子・佐古田健志・前川智則（東芝）

分散電源をクラウド経由で制御する方法として，WebAPIを用いたエネルギーマネジメントシステムがある。WebAPI開発工程の効率化のため，API仕様を機械可読な文書で定義し，クライアント及びサーバのコードを自動生成する手法があるが，文書に記載できない詳細な仕様は自動生成できない等の扱いが難しい一面も持つ。本研究では，WebAPIを含むシステムを構築する過程においてコード自動生成技術を実際に使用することでその特徴を理解し，開発効率化に向けた活用方法を検討した。現在までに，自動生成されるコードはAPIの枠組部分に限られ，処理内容等の詳細部分は手動で追記する必要がある等の特徴が明らかになってきた。

4-128

介護老人福祉施設の事業継続における停電対策に関する一検討

◎山崎陽平・竹本泰敏（日本工業大学）・香月壮亮（旭化成ホームズ）

介護老人福祉施設では，老化により身体能力の低下，体温調節能力の低下，適応能力の低下等の特徴を持つ入居者が利用している。そのため，停電時には空調等の建築設備を稼働させて事業継続を行う必要がある。よって，停電時の事業継続可能な設備構成が求められている。また，厚生労働省では，災害発生から72時間を乗り切ることができれば，外部からの支援を受けることができると想定されている。そこで本研究では，最低限72時間以上の電力供給可能な電源設備構成を明らかにした。また近年，環境問題の観点から建物の省エネルギー化が進んでいる。そのため，停電時の事業継続に外皮性能，建築設備性能の向上が有効であることを検証した。

4-129

太陽光発電の地産地消に向けた域内余剰電力の融通のポテンシャルに関する時空間的解析

大崎文暉・明 祥吾・宮澤歩夢・藤本 悠・○林 泰弘（早稲田大学）

都市への導入が進む太陽光発電（PV）の地産地消は非化石な価値の創出による都市の持続可能性の向上と，送配電線への新規PV接続可能量の増加を両立し得る取組みとして脚光を浴びている。このような地産地消の促進にあたり技術導入価値を把握することが重要である。本稿は狭域間でのEV群による充放電による時空間的融通と同一領域での蓄電池による時間的融通を想定し，域内余剰電力の正味需要への時空間的融通による地産地消のポテンシャルを簡易に定量化する手法を示す。これにより余剰電力の域内利用可能量を見積もり，二酸化炭素排出削減量へ換算して都市の持続可能性を表す。加えて電力系統に対する都市全域の需要削減効果の可能性を示す。

4-130

分極特性に基づく水素利用率向上のための固体高分子形燃料電池における予防制御手法の検討

◎都築祐人・秋元祐太朗・岡島敬一（筑波大学）

燃料電池の水素利用率を高めるためには，無駄な水素消費を減らす運転となるため，燃料の流量が相対的に低い運転条件となる。しかし，このような運転条件では水素，空気の分圧の低下および発電時に生成される水分の滞留が想定される。これらの不具合が生じた場合，パージ制御が行われることにより，不具合を回避し，出力を向上させる。しかし，パージ制御による運転は，未使用の水素まで除去されることから水素利用率が低下する。そのため，水素消費を抑え，不具合を事前に回避する制御が必要である。そこで，本研究では分極特性に基づいた制御手法を提案し，従来の制御手法と発電効率を指標に比較検討を行った。

4-131

ガスケットやシーリング材で密閉された電気部品および電子部品の格納箱の吸湿特性と環境腐食性の評価

○龍岡照久・伊地知弘光・慶野太一（東京電力ホールディング）

大気環境に曝される電力設備や橋梁等の鋼構造物，その他の設備は，風に運ばれた海塩粒子，SOxガス，塵埃等の付着物と，雨，雪，霧および高湿度環境で生じる表面のぬれ状態によって腐食を生じることから，塗装やめっき等の腐食対策を施している。同様に，これらの電力設備等に電源供給し，運転制御し，状態監視するための電気・電子部品は，制御箱，制御盤，分電箱，分電盤等の格納箱内に設置されているが，格納箱内に侵入した付着物や湿分によりぬれた状態になり，腐食や絶縁性能低下を生じる場合がある。このため，格納箱内の環境の腐食性を知り，機能低下のリスクを知ることは設備保全の観点で重要となっている。
本報告では，防湿処理を施した格納箱内外に（Atmospheric Corrosion Monitor）型センサと温湿度センサ等を設置し環境を評価した結果を紹介する。

4-132

人間の聴覚を加味したダクトの騒音抑制制御

◎田村一真（東京工科大学）

近年，低周波音による騒音被害は増加傾向である。低周波音とは100 Hz以下の音波のことを言い，日常的にはっきり聞こえる音ではないが，不快感や窓の揺れにより眠りを妨げる健康被害が報告されている。本研究では等価入力外乱手法を用いた騒音の能動的抑制システムを作成し，空間における低周波音の抑制を目的としている。等価入力外乱手法を用いることで高価なデジタルプロセッサーを使わない騒音抑制システムの提案を目標としている。今回作成したシステムのシミュレーションでは騒音外乱を10分の1に抑える成果が得られた。また，人間の聴覚のモデルを作成し，能動的抑制システムの抑制結果を評価する方法も提案する。

4-133

一線接地系2レベルIGBTインバータの零相電圧重畳による接地検出手法の現地適用

◎市川聡一朗・中村雅史（東芝三菱電機産業システム）

一線で接地されている2レベルIGBTインバータの接地検出手法として，地絡発生時に仮想中性点に発生するループ電流を検出する方法がある。しかしこの方法では，出力電圧が小さいと接地電流が小さくなるため，十分な検出電流が得られない場合がある。筆者らは，出力電圧が小さいインバータ予備励磁時であっても，全相の電圧基準に同等の零相電圧を重畳することで一線地絡時の接地電流を増加させ，低出力時でも地絡検出ができる手法を提案した。本稿では，本手法の現地適用結果について報告する。

4-134

ストリーミングレイテンシの簡易測定法の検討

○綾田アデルジャン・佐々木大三・丹 健二（秋田県産業技術センター）

近年，IoT技術の普及に伴い多様なエッジデバイスが開発され，用途が広がってきた。小型カメラを用いた動画ストリーミングはその一つであり，監視カメラ以外にも，配信コンテンツに画像処理をかけて利用するケースも増えつつある。ストリーミングの性能指標に，レイテンシがある。遅延を精度良く測定・評価するには，専用機器を要する。一方，簡易的な方法として，ストップウォッチを撮影・ストリーミングし，再生動画と撮影中のストップウォッチから求める方法もある。しかし，この方法では遅延の統計処理に多くの労力と時間が必要となる。そこで，本稿でストリーミングレイテンシの簡易測定法を提案し，この方法で実施した実験結果を報告する。

4-135

機械学習に基づいた誘導電動機のベアリング損傷診断

○中村久栄（トーエネック）・水野幸男（名古屋工業大学）

本論文では，誘導電動機におけるベアリング損傷の早期診断を目的として機械学習を適用した結果を報告する。
はじめに，回転数が変化する電動機の負荷電流に対して周波数解析を行う。次に，周波数解析により診断に有用な特徴量を抽出する。そして，その特徴量を用いて機械学習を適用したベアリング損傷診断手法を提案する。
最後に，提案手法の有用性を実験により検証する。

4-136

走査型プローブ顕微鏡を用いた電流近因磁場観測の基礎検討

◎大山祐生・角 真輝・佐藤宣夫（千葉工業大学）

交番磁気力顕微鏡は，試料下部から探針に対して，特定の変調周波数を有する交番磁場を印加，その周波数成分を位相検波することで，従来では困難であった表面磁場の極性，ゼロ検出を実現する優れた手法である。先行研究例では，交番磁場の印加対象である探針と大きな間隙があることから，具体的な磁場均一性も距離2 mmに対して±6 mmと報告されている。我々は，比較的簡易的な電磁石付属試料台を設計・開発した。特に，探針－磁場源間距離を極限的に縮小できたことにより，探針に対して良好な磁場垂直性と磁場均一性が期待される。そのため本報告では，交番磁場発生源である電磁石付属試料台の周波数特性，磁場均一性について議論する。

4-137

Mgビーズを電解装置における水溶液のアルカリ化

◎太田康翔・岡沢 海・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・當山広幸・中川 匡・金子貴之（富士電機）

本研究では，船舶排ガス循環システム用の循環スクラバ水のアルカリ化を目的として，Mgビーズを用いた電解槽を開発し，アルカリ度上昇量の関係について検討した。両極にカーボンを配置し，中間電極としてMgビーズを浮遊させ，硫酸ナトリウム水溶液を電解した。水溶液をポンプで循環させることにより，2つの電極の間にマグネシウムビーズを浮遊させた。電極間に電流を60分間流し，アルカリ度を測定した。また，同一条件で電圧を印加しない場合においても同様に測定した。その結果，陰極と陽極間の各ビーズが電気的に直列接続され電流が流れることで，アルカリ成分が生成されていることが示された。

4-138

スリット板を用いたマイクロ波照射によるカーボンブラックの燃焼

◎久保田航平・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・當山広幸・中川 匡・金子貴之（富士電機）

ESPで集塵したディーゼル排ガス中PMのマイクロ波による燃焼処理を目的とし，実験を行った。装置内はスリット板によって導波路部と反応部に分かれ，スリットを通して反応部のPMにマイクロ波が照射される。スリット板には，スリット状に同一サイズの開口が設けられている。反応部の6か所にカーボンブラックを配置し燃焼させた結果，燃焼率は2 ~ 64%であり，マイクロ波の入射口から遠い位置ほど低い燃焼率であった。これは，入射口近くのスリットからMWが燃焼部に照射され，遠い位置ほどMW強度が弱くなっていたためと考えられる。このことから，スリット板形状の最適化が今後の課題といえる。

4-139

船舶向け電気推進ドライブ装置の海水冷却ヒートシンクの構造検討

◎中村周平・加々美 明（東芝三菱電機産業システム）

環境負荷低減と経済性を目的として，船舶への電気推進ドライブ装置（以下，船舶ドライブ装置）の導入が進んでいる。船舶ドライブ装置の冷却系は通常，熱交換器を介して独立した構成の純水冷却装置を使用している。しかし，船舶は工場と比較して電気室のスペースが狭く，冷却システムも可能な限り単純化されたものであることが望ましい。また，船内機器の冷媒として海水が使われているため，純水冷却装置を使用せず，海水によりドライブ装置を冷却することで冷却システムの小型化が期待できる。本論文では，船舶ドライブ装置の海水冷却を実現のため，海水冷却ヒートシンクの試作評価を行ったため報告する。

4-140

電界結合による高効率8kWワイヤレス電力伝送

○増田 満・鶴谷直樹・山崎広行・武脇広和（古河電気工業）

非放射型のワイヤレス電力伝送として磁界結合方式は普及期に入っているが同じ物理現象を使用している電界結合については研究が進んでいない。このため磁界結合に比較して送受電間隔が短い，大電力が送電できないなどの負のイメージがある。本研究では電界結合を用いて高効率に8kWのワイヤレス電力伝送実証できたのでこれを報告する。

4-141

MBDによるPMSM位置センサレス短時間起動のための直流励磁電流FB型制御の開発

◎矢崎裕一朗・上前 涼・舟山智歌子・井村彰宏（三菱重工業）

世界的に環境技術開発が進むなか，弊社においても油圧やエンジンで構成していた各種機械システムの電動化を進めており，
ターボチャージャ用電動コンプレッサ，電動船舶推進装置といった様々なコンポーネントに適用可能なPMSMのセンサレス制御技術の開発を進めている。
PMSMのセンサレス制御には，ゼロ速から低速域に適した制御法と中高速域に適した制御法を，回転数に応じて使い分けることが一般的である。例えば上記で挙げた電動コンプレッサにおいては，低速から所定回転数まで素早く起動したのち高性能の中高速センサレス制御に切り替えればよい。
本研究では，低速域での演算の複雑さを抑止する起動方法に着目し，円滑に中高速センサレスへ移行可能とするPMSMの制御切り替え法を開発した。

4-142

電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタの援用効果に関する検討

◎建本拓海・小川裕太・佐藤宣夫（千葉工業大学）

リチウムイオン・ポリマー電池（Li-Po; Lithium ion polymerbattery）は，高いエネルギー密度を有する蓄電素子として幅広い用途で活用されている。ただし他の蓄電素子と比較すると，瞬時的な高出力用途には必ずしも適していない 。一方，電気二重層キャパシタ（EDLC; Electric Double-Layer Capacitor）は，大きな電流通電による充放電が可能であることから，瞬時的な出力動作に適した蓄電素子である。本報告では，これらの蓄電素子の特性の違いに着目し，蓄電素子を複合することで，LI-Po の寿命向上のための実験的検討を述べる。その際，EDLC よりもエネルギー密度が高いとされるリチウムイオンキャパシタ（LiC; Lithium-ion Capacitor）も検討に加えることで，様々な用途に向けた蓄電システムの設計指針の一助とする。

4-143

電動航空機用スイッチドキャパシタコンバータシステム

○岩田明彦（大阪産業大学）

航空機の電動化では数MW～数10MWの軽量DCグリッドの採用が検討されており，発電機で得られた直流電圧やバッテリーの電圧を安定化するDC/DCコンバータが必要とされる。しかし，従来のPWM方式のDC/DCコンバータはリアクトルの重量が大きく航空機への搭載には不向きである。筆者らは，航空機向けとして5段階の昇圧が可能な階調制御型スイッチドキャパシタコンバータを提案し，配線程度のインダクタでも安定した昇圧動作が可能なことを既に報告している。本発表では，発電機後段のAC/DCコンバータを模擬したPWMチョッパと階調制御型スイッチドキャパシタコンバータとを組み合わせたコンバータシステムについて報告する。PWMチョッパとスイッチドキャパシタコンバータとの連携制御により，チョッパの入力電圧が大きく変化した場合でも安定したDC出力が得られることを示す。またスイッチドキャパシタコンバータの昇圧切替え動作時にチョッパによる電流限動作モードを利用することで，切替え時過電流を許容範囲内に抑制できることを示す。

4-144

電力系統シミュレーションを用いたEV充放電制御のCO2排出量削減効果の定量化

◎木内寛允・村井謙介・鈴木健太（日産自動車）・向井 克・中田駿平・齊藤朋世・宇田川佑介（構造計画研究所）・岩船由美子・荻本和彦（東京大学）

カーボンニュートラルなどの持続可能な社会の実現に向けて，太陽光発電と風力発電の発電電力が大量に導入されると，電力需給の一致や負荷周波数制御（LFC: Load Frequency Control）調整力不足の回避を目的に，発電を抑制する時間が増加する。電気自動車（EV: Electric Vehicle）は，充放電制御により需給調整やLFC調整力供給を行うことができ，CO₂排出量を削減する効果がある。本研究では，電力系統シミュレータに乗用車のテレマティクスデータから作成したEVモデルを組み合わせ，EV の充放電制御によるCO₂ 排出量削減効果を評価した。これにより，REとEVの普及が進んだ2050年において，EVの充電制御および充放電制御は，REの稼働率を高めCO₂排出量を削減する効果があることを示した。

4-145

トルク関数制御により電気自動車の操舵の研究

◎董 浩（東京工科大学）

We are studying on inner wheel control method using torque function. In the torque function, the torque keeps constant when the slip ratio of the vehicle is less than some constant value, and the torque becomes smaller when the slip ratio is larger. We conducted experiments using EV cart using the torque control method. It was shown that energy of 1369J can be saved in cornering with torque function control compared to that without the control.

4-146

走行中のEVへのワイヤレス充電と新規WO₃蓄電池の有効性

○髙木茂行・川村 卓（東京工科大学）・佐々木亮人・平林英明（東芝マテリアル）

Li-ion蓄電池の負極をグラファイトからWO₃に変え，高速充電が可能でパワー密度の高い新型蓄電池を開発している。走行中の電気自動車に充電する蓄電池として適用する応用を検討した。ワイヤレス給電で，Liイオンキャパシタ，鉛蓄電池，EDLCとの充電性能を比較し，WO₃電極蓄電池の優位性を確認した。

4-147

駐車支援に向けた符号変調による超音波距離計測

◎増田雄希・福田真将・吉澤拓未・於保 茂（日本工業大学）

近年，自動車では運転支援・自動運転技術の研究開発が進んでいる。駐車支援はその一つであるが，駐車場所に対する車両の相対位置を計測し，車両を誘導する方法が検討されている。屋内駐車場ではGNSSが使用できず，また立体駐車場では精密な測位が必要になる。本報告ではリアルタイムに車両位置を決定するため，符号変調による超音波を用いた距離計測手法を検討する。本実験では双方向の超音波送受信系を構築，対向させた状態で移動側端末から符号変調された捜索信号を送出しそれに反応した固定端末が応答信号を返すまでの時間から距離を計測した。距離5.55mの計測では誤差-0.7%，距離15.6mでは誤差-9.4％となった。

4-148

Development of Reliable & Fast SoH Estimation of Li-Ion Battery Pack based on DMSP- ANNs

◎Minella Bezha・長岡直人（同志社大学）

This study introduced an innovative state of health (SoH) estimation of deteriorated Battery Storage System (BSS) with high accuracy and short calculation time. The proposed Deep Multi Series Parallel Artificial Neural Networks (DMSP-ANNs) model is reliable, with an average error of 0.96% and a maximum error of 1.19%, completed within 29 seconds of calculation, and uses 78% fewer data than the previous work. The behavior of independent cells is included in the estimation while observing different parameters of a single cell or a battery pack.

4-149

合流ランプ部における車群形成に関する研究

◎顧 光裕・星野貴弘（日本大学）

高速道路の合流ランプ部では，側線上の車両が本線に合流することで本線に渋滞が発生しやすい。CACC車両によって合流するための最適な車群形成をすることで，このような渋滞の緩和効果について検討することを目標とする。本研究では，車間制御機能を搭載しないかつCACC機能及び車車間通信機能を持ってない一般車両とCACC車両を混在させた合流ランプ部における交通流を対象とする。想定する合流ランプとして，片側一車線のOff lane が片側一車線の本線道路に合流ランプ部において一般車両とCACC車両が混在する交通流での車群形成が渋滞に及ぼす影響について検証する。

4-150

画面手前の障害物を考慮した走行車両の追跡について

◎呉 一帆・矢澤翔大・新妻清純・黒岩 孝（日本大学）

近年，あおり運転や酒気帯び運転等の危険運転が社会問題となっている。危険運転を行う車両は監視カメラで発見可能と思われるが，設置場所が限定され自由に動かせないなど使い勝手は悪い。高精細カメラと機動力を備えるドローンであれば車両の追跡も容易と思われるが，道路上の飛行は禁止されている。また，道路脇などの安全な飛行空域には街路樹等があり，車両を追跡する際に視界を遮る障害物となる。著者らは，動画像のフラクタル解析により車両を検出する手法を報告しているが，本研究では，その際に問題となる画面手前の障害物の影響を軽減する手法について検討する。

4-151

電源ブレーカのねじ緩み検出の基礎検討（第2報）

○竹中清人（あいち産業科学技術総合センター 産業技術センター）・水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

電気設備機器火災において，金属の接触部過熱は主要な原因の1つであり，ブレーカや電磁開閉器等のねじの緩みや変形，破損等により接触抵抗が増加し，ジュール熱により出火する事例が報告されている。この報告では，電源用分岐ブレーカと電源ケーブルの接触部を対象とし，ねじの緩みと伝導性ノイズの関連について解析した結果を報告する。

4-152

磁界によるブレーカのねじの緩み検出の基礎検討

◎宮澤柊哉・水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

金属の接触部の過熱による火災は，電気設備機器火災の主な原因の1つである。接続端子でねじの緩みがある場合には300℃を越える過熱の報告もされており，接触抵抗の増加に伴うジュール発熱により過熱し，発火すると推定される。
筆者らは，ブレーカのねじの緩みにより導体接続部に形成される微小間隙で発生する放電が，温度上昇に大きな影響を与えることを報告した。本報告では，磁界によるブレーカのねじの緩みや放電の検出について基礎検討を行った結果について述べる。
導体接続部のねじが大きく緩んだ状態や接続部の空隙で放電が発生する状態を，磁束密度により検出できる可能性を示した。今後，種々の条件下で実験を継続し，火災防止の観点からのねじの緩みや放電の検出手法の検討を進める。

4-153

半断線電源コード通電時の伝導ノイズ解析（その2）

◎近藤拓馬・伊藤悠紀・島田美月・水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

電気機器による火災は全火災件数の約30％を占めており，主な電気火災の要因の1つに電線の短絡が挙げられる。短絡の発生原因はいくつかあり，外力によって電源コードの導体素線の一部が切断された状態の半断線も原因となる。
筆者らは実験室で半断線電源コードの短絡を再現するとともに，電圧・電流波形による検出方法を検討してきた。ここでは，前報に引き続き，伝導ノイズ解析による半断線電源コードの短絡検出の基礎実験を行った結果を報告する。

4-154

インパルス応答波形の特徴量による電動機巻線の熱劣化検出の検討

◎三輪大和・水野幸男（名古屋工業大学）・中村久栄（トーエネック）

工場では高経年の誘導電動機が数多く使用されているにもかかわらず，コスト削減のため適切な保守管理が行われないことが多く，簡易かつ高信頼性の故障診断技術の確立が求められている。筆者らは，インパルス電圧印加時の応答波形の変化に基づく巻線故障診断法を提案した。前報では，模擬コイルへの課電による絶縁劣化を提案手法で検出できる可能性を示した。今回は，実機として電動機巻線を対象とし，通電による熱劣化の検出について検討を行った結果を報告する。

4-155

差込みプラグのトラッキング進行過程の解析

○林 文移（河村電器産業）・水野幸男（名古屋工業大学）

差込みプラグのトラッキング現象は電気火災に発生する要因の一つである。差込みプラグのトラッキング火災を未然防止するためのより信頼性の高い手法を確立するための第一段階として，実験室においてトラッキング進行に伴う電流値や電流波形の変化特徴量を詳細に調べた。トラッキング進行の各段階において，それぞれパルス状の電流の特徴が確認された。また，適切な検出時期や検出方法の検討を行った。

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車載用インバータ製品評価の試み

○乾 成里（日本大学）

現代社会では，電化製品が広く普及しており，災害時などにも商用電源の需要は大きい。しかし，可搬形発電機は普及には難がある。EV車両から電源を得ることも可能であるが，広く普及するには至っていない。一方，一般的なガソンリンエンジンの車両でもDC12Vの電源があり，これをAC100Vに変換する車載用製品がある。
本研究では，これらインバータ製品が，規定の電圧値，正弦波形の交流を生成できるか検証することを目的に，検証方法を試行し，一製品を例に性能評価を行ったので報告する。今後は，低力率負荷などの試験項目を追加するとともに，多くの機種やポータブル電源なども対象に知見を広めて行きたい。

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ワンシャント電流検出方式を適用可能なレシプロ型圧縮機の停止時の振動低減法

◎塩井太介・熊谷崇宏・伊東淳一（長岡技術科学大学）

本論文では，直流側ワンシャント電流検出方式に対応した圧縮機停止時の振動低減法を提案する。圧縮機は負荷トルクの脈動に伴い運転時だけでなく停止時も振動が発生する。著者らはこれまで，短絡制動を用いた圧縮機の低振動停止法を提案している。しかし，提案法では短絡制動時の電流を制御するために交流側に電流センサが2つ必要となりコストが増加する。そこで，本稿では直流側電流検出を適用可能な停止時の電流制御法を提案する。提案法ではキャリア1周期ごとに1相のみ上側スイッチをONにすることで，直流側電流センサを用いてモータ電流を検出する。提案法により，従来使用されるフリーラン停止時と比較して停止時振動振幅を71.9%低減できることを実機実験により確認した。

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アオコを用いた微生物燃料電池(MFC)におけるセル内電極位置の検討

◎山城屋陽大・蛯谷 創・小原直子・カビールムハムドゥル（秋田大学）

今日ではSDGsにも掲げられているクリーンなエネルギーの生産方法として微生物燃料電池に注目が集まっている。アオコは藍藻類を主体とした微生物が湖に大量発生し，環境に様々な影響を与える現象である。先行研究より，アオコを用いた微生物燃料電池で電位の生成が可能であることが示された。本研究では，アオコを触媒として微生物燃料電池（Microbial Fuel Cell ; MFC）を作製し，そして，セル内の電極の位置によって出力電力がどう変化するか検証することを目的とする。

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回帰分析による空調機器の消費電力量に関する一検討

◎西谷 強・田中 蒼・雪田和人・後藤時政（愛知工業大学）

近年，ゼロカーボン社会の実現のために，空調機器に関して様々な研究が報告されている（1）,（2）。これまでにも，電気エネルギー分野では省エネルギー化を実施してきているが，さらに高効率化や消費電力の削減が要求されてている。そこで，家庭やオフィスなどにおいてのエネルギー消費に注目すると，空調機器の消費が大きいものと思われる。本研究では，特に建物内の空調機器の消費電力に注目し，消費電力にどのような要素が影響しているのかの検討を実施した。具体的には機器の消費電力量と平均気温，稼働時間と平均気温，消費電力量と稼働時間のそれぞれの関係性について回帰分析を用いて検討したので報告する。

4-160

空調機の冷媒量と消費電力の関係性調査

○石野隆一（電力中央研究所）・杉本敏文（中部電力）

変電所主要機器の巡視省力化の検討は各種行われているが，主要機器を安定して動作させる補機についての巡視は未着手な場合が多い。本報告は，民生用空調機の簡易点検の省力化の可能性を検討するために，冷媒量の減少と消費電力の関係性を調べた結果を報告するものである。

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二次電池をパック内で緊急放電する部分直列化回路の開発

○志村重輔（村田製作所）

リチウムイオン二次電池の発火原因の一つに，内部短絡がある。例えば，内部短絡は，デンドライトなどによって生じるが，体積が小さい事が多く，そのため局所発熱となり急激に温度が上昇し，短時間で発火温度に到達し易い。内部短絡起因の発火リスクを低減させる方法として，筆者らはこれまで，内部短絡部位で発熱低減させる緊急放電に注目してきた。なお緊急放電を行うには，取り出したエネルギーの行き先の確保が必要である。今回，エネルギーの行き先を同一パック内の別のリチウムイオン二次電池とする，部分直列化回路を開発したので，詳細について紹介する。

4-162

自立供給源としての蓄電池の負荷に対する電圧・電流特性

○児玉安広・長澤和輝・飯野 穣・林 泰弘（早稲田大学）

DERの導入が進む中で，地域マイクログリッドのような独立した電力系統のみならず，PVを利用した一般家庭内への電力をインバータ機器のみで供給することが可能になると想定される。
そこで，著者等は家庭用蓄電池（以下，BESS）から一般家庭への電力供給を想定し，負荷電流に対するBESSの電圧特性の調査を行った。負荷変動に対するBESSの電圧・電流特性の把握は，インバータ電源のみで構成されるマイクログリッドの課題を調査することにもなり，今後の基礎的な知見となりうる。

4-163

電力調達行動における運転計画単位の差異による経済性評価

◎具 利晟・渡辺健一・馬場 朗・田中裕司（パナソニック）・岩船由美子・荻本和彦（東京大学）

昨今の再生可能エネルギー導入増加に伴う各エリアの市場価格低下により，需要家群単位で運転計画を立て，市場価格に応じて電力調達コストの最小化を図る需要家アグリゲーションが注目されている。このような群単位の運転計画では，個別機器の実運用との乖離により，小売電気事業者の経済損失が発生する可能性がある。そこで本稿では，日単位の市場価格上昇/下落が頻発する条件下において，電力調達行動の運転計画単位による調達費用の乖離が発生する条件/重要因子の特定を目的とし，需要家群単位の運転計画と，需要家単位の運転計画による電力調達行動の経済性評価結果について報告する。

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DERの情報多様性要求への対応策検討

○馬場博幸・石田慶樹（東京大学）・松村 淳・小畑至弘（IoT-EX）

自然変動電源を取り多く導入するため，分散エネルギー資源（DER）の積極的活用が期待されている。筆者らは，先行研究に於いて多様なDERをプロトコルフリーで接続するインフラの開発研究を報告したが，それに引き続き，複数のアグリゲーターが異なるスタイルの情報をDERから希望する場合の効率的な対応策を開発したので報告する。