一般講演

1-001

幼児期の子どもたちの集中力を向上させるマインドフルネス瞑想とヨガ体操

○鎌田憲嗣（東京電機大学）・Kanyuma Kamata（King Mongkut's University of Technology Thonburi）・Yuwarat Srisupawong（国家放送通信委員会）・Koul Ravinder（ペンシルバニア州立大学）

文部科学省において平成29年3月に改訂された幼稚園教育要領によると，第5の特別な配慮を必要とする幼児への指導において障がいのある幼児などへの指導に当たっては，集団の中で生活することを通して全体的な発達を促していくことに配慮し，個々の幼児の障がいの状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。となっている。著者らは，これまで幼稚園の現場で，自閉症の子どもたちと数年間を通して一緒に生活をした。運動会や発表会など行事を共にし，多くの困難を乗り越えてきた。本研究では，園児に集中力を高める方法としてマインドフルネス瞑想とヨガの体操を行い園児たちの集中力が高まったので報告する。

1-002

光学式モーションキャプチャを用いた指揮動作の教育支援システムの検討

◎塚田湧太・柴田直樹・山口達也・三戸勇気・吉田行地・駒沢大介・川上 央・篠田之孝（日本大学）

近年，高度な技能の継承・保存は各分野で重要な課題になっている。音楽教育の現場において，指揮動作の指導は難しい課題となっている。そこで，本研究の目的は指揮者の指揮動作の解析並びに指揮者の教育支援システムの構築である。本文は光学式モーションキャプチャシステムを用いた指揮者の指揮動作の計測を行った報告である。

1-003

オブザーバ-ベースト-最適状態フィードバック －システム制御教育に対する可能性－

○鈴木昌和（東海大学）

システム制御工学は，いわゆる横糸型の学問として工学のみならず広く自然科学，社会科学に応用できる基礎的な学問である。文理を問わず広く教授すべきだが，現実はそうなっていないばかりか増々その学習機会が減っている。本稿では，その現状を変える一助とするべくオブザーバ-ベースト-最適状態フィードバックを1つの有用なトピックスとして提案する。まずシステム制御工学の有用性にも関わらずその教育が難しくなりつつある現状に触れ，オブザーバ-ベースト-最適状態フィードバックを導入する。そしてそれが基礎工学を学ぶところから高度な人工知能を構築する際に至るまで有用なツールとなりうることを述べる。

1-004

IoTプロトタイプ演習におけるオンラインピアティーチング支援システムShareHandyの改善と拡張機能提案

○関口知生・中島 毅（芝浦工業大学）

オンラインで開催される演習課題，特にIoTプロトタイピングのようにモノを取り扱うグループ演習においては各々の作業状態や正確な意思の疎通が難しい。これを解消するため，各々の手元の映像を配信し，描画やポインティングをリアルタイムに共有するピアティーチング支援システムShareHandyが提案された。我々はShareHandyの課題を抽出し，演習サポート用の機能を追加した統合版ShareHandyを実装した。本稿では，統合版ShareHandyで実装した機能や想定シナリオ，評価方法について述べ，ピアティーチングの活性化・高精度化の効果を検証する。実験の結果，提案システムは従来手法と同等の満足度があり，内容の濃いピアティーチングが可能であることがわかった。

1-005

Arduinoを用いた割り込み処理教材の提案と評価

◎加藤雅陸・南角茂樹（大阪電気通信大学）

近年，組み込みソフトウェア技術者の需要は高まっているにも関わらず，技術者の数は不足している。その主な要因として，組み込みシステムはハードウェア，ソフトウェア両方の知識を必要とするため，組み込み技術の習得難易度が高いことが挙げられる。そこで本研究では，割り込み処理を取り入れた組み込みシステムの教育教材を提案し，評価を行った。提案するカリキュラムでは，日常生活において身近な赤外線リモコンの作成を通じて，組み込みの基礎知識や割り込み処理の実装を学ぶことができる。教材は理解度テストと最終課題の結果で評価を行った。この教材により，組み込みシステムについての知識の習得や技術の向上が見込め，技術者不足の解消が期待できる。

1-006

Arduinoを用いたプッシュスイッチによる割り込み教材の提案と評価

◎今吉真優・南角茂樹（大阪電気通信大学）

社会には，電化製品やインフラ整備などといったリアルタイム性や割り込み応答性を必要とした組み込みシステムを用いた製品が数多く存在している，これらの製品の開発には割り込み処理や排他制御といった専門的な知識を持つことが求められる。本研究では赤外線リモコンの作成を通じて割り込み処理の必要性やポーリングとの違いを学習する教育教材の提案と評価を行った。また，本研究では外部割り込みに限定するスイッチなどの外部イベントを知らせる方法が割り込み処理であり，電化製品では当たり前のように使われているためである。組み込みシステムの開発に必要な専門的知識の向上を目指すことで，組み込みシステム技術者の育成が期待できる。

1-007

コミュニケーションロボットによる学生実験の教育支援に関する検討

◎小貫純一郎・矢澤翔大・新妻清純・黒岩 孝（日本大学）

電気電子実験の経験が乏しい初学者には，結線に必要な機器の取り扱いを事前学習させる必要があり，大抵の場合，口頭の説明だけでは理解しにくい事が多い。そこで本研究では，コミュニケーションロボットに疑似的な画面表示の機能を付加し，実験に用いる各種機器の使用方法を学習させることで，被験者が正しく結線作業を行えるか検討を行う。

1-008

高専における有限要素法の教育研究

◎遠藤健太・菊池翔太・板谷年也（鈴鹿工業高等専門学校）

有限要素法（Finite Element Method）とは，微分方程式の近似解を求める数値計算手法の一つであり，この手法はCAE解析（Computer Aided Engineering）の中で用いられている。CAE解析は工学技術者の間で広く使われており，多くの利点をもたらしている。しかしながら，高等専門学校における卒業研究や特別研究では，CAE解析ソフトウェアの使い方が研究の主流となっており，数学的な原理をよくわからないまま使用しているのが現状である。そのため，CAE解析ソフトウェアを正しく使用できないといった問題も生じている。そこで，高専機構の教育研究プロジェクトである「Gear 5.0」の活動の一環として，有限要素法のオンライン講義を行なっている。本講演では，この教育研究活動の概要について発表を行う。

1-009

有限要素法によるプレーナ型ダイオードを題材とした教育用アプリケーションの開発

○堂本航一（計測エンジニアリングシステム）

半導体を用いた設計を行う際は，素子を簡略化した数式モデルを一般的に使用する.しかしながら，回路動作中のデバイスの物理的な動作および内部の場の理解は重要である.一方，場を容易に理解するには視覚化が必要であり，このような計算は複雑である.これらを解決するために有限要素法を使用し，容易に場の状態を可視化するCAEアプリを開発し，その理解を一層深める教育的な効果が期待することが目的である.本稿ではダイオードを題材とし素子の寸法や物理パラメーターの設定により電子濃度やVI特性が表示できることを確認した.今後CAEアプリを実施する。

1-010

モジュールによる同期発電機の並列運転の構築および計測

◎戸張善章・田村鴻樹・関口哲史・藤田吾郎（芝浦工業大学）・安藤英一（無所属）

現代，再生可能エネルギーによる発電が増加している。 それにともない，電源が多様化し，電力系統がより複雑化している。電力技術関係者の需要が増加し，効率のよい実習が必要である。しかし，既存の市販されている教育用電力実習装置は大型，高価，決まった実験しか行えないといった問題点が挙げられ，効率のよい実習を行うのが難しい。 そこで小型かつ容易に組み換えが可能なモジュール型電力系統実習装置を用いることにより，机上で様々な実験を効率よく行うことができる。本研究では船舶などで使われる発電機の並列運転をモジュール型電力系統実習装置で模擬し，実習を可能にすることを目的としている。 実験結果では負荷分担していることを確認でき，並列運転が可能である。

1-011

どうなるSF6ガスの行方（地球環境化学の課題）

○小野田光宜（姫路市消防局）

六弗化硫黄（SF6）を使用している電力設備，半導体製造などの各産業では，大気放出量を厳格に管理，抑制することで地球温暖化に対するSF6の影響を全体の0.2%程度に抑えている。SF6の地球温暖化係数（GWP）はCO2の25,200倍（IPCC第6次報告書，2021）と極めて大きく，大気へ漏洩した場合の環境リスクは非常に大きいと言える。SF6代替ガスは低圧機器向けで開発されているが，高圧機器向けは絶縁が難しくまだ実使用には至っていない。 このような背景と筆者の実験結果を用いて，SF6の高電圧機器への将来的活用を考える。

1-012

MR技術を用いた磁場可視化教材の開発

◎瀬野涼太・眞鍋知久・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）・日高勇気（長岡技術科学大学）

本論文では，MR（複合現実）技術を用いた磁界可視化教材を提案する。一般的に，MR技術を用いたシステムは現実世界と仮想世界を同時に観測することができる。この特徴により，提案システムはARのようにマーカーの位置に拘束されることなく，複数のモデルを現実空間に対応付けて任意の位置に描画することができる。提案システムでは，ユーザーはボクセルで構成された解析対象のモデルを自分の指で設計することができ，磁界はカラーマップやベクトル場の形式で描画される。すべてのボクセル上でベクトルを描画するのではなく，任意の平面上のベクトルだけを描画することで，より明快に可視化することができる。

1-013

3次元回路設計学習システムの基礎検討

大島心平（小山工業高等専門学校）・○羽山哲彩（長岡技術科学大学）

高周波回路技術は，3次元構造を考慮した設計を行う必要があるため，その習得には実地経験を含めた多くの時間を必要としてきた。本研究では，効果的に3次元回路設計技術を習得できる学習システムについて検討を行った。

1-014

計量テキスト分析によるHISTELCONにおける研究動向

○岡部 忠（東京都立産業技術研究センター）

IEEE HISTELCONシンポジウムで発表された論文タイトルに対して，計量テキスト分析を行い，同シンポジウムにおける研究動向の把握を行った。

1-015

ミリ波アンテナ遠方界放射再構築ための近傍界シミュレーションプラットフォーム

◎郭 晟・Zolboo Byambadorj・小池良吾（東京大学）・浅見幸司（アドバンテスト）・Nguyen Ngoc Mai-Khanh・肥後昭男・藤田昌宏・飯塚哲也（東京大学）

Validation of near-field scan with a practical antenna as a probe in simulation environment is presented in this paper. The AUT (antenna under test) for mmWave (millimeter wave) communication is tested at 28 GHz band to obtain the far-field pattern at its radio transmission path. When applying the practical antenna to near-field scan, there are difficulties in achieving the best reconstruction accuracy. Therefore, the mechanism of related algorithm and effects of probe can be validated using this simulation platform, which can be a guide when deploying the actual near-field measurements setup.

1-016

層状媒質による電磁波の反射特性解析

◎板谷健成・尾崎亮介・山崎恒樹（日本大学）

多層構造媒質系による電磁波の散乱問題は，多層膜フィルターや電磁波メタマテリアル等への応用が期待されているため活発に研究が行われている。中でも特に多層構造系による電磁波散乱解析には従来，行列法が知られている。他方，行列法に対し連分数展開法（CFEM: Continued Fraction Expand Method）も層状媒質系を解析可能な手法の1つである。本文では，CFEMの有効性を検討するため不均質性を考慮した誘電率分布による反射特性をTE波とTM波に対して比較検討する。

1-017

ストリップ導体配列間に誘電体層を有する平面格子による電磁波の散乱

◎干川雄太・尾崎亮介・山崎恒樹（日本大学）

周期構造系による電磁波散乱問題は，フォトニック結晶やテラヘルツ導波路等，光学分野の中で大変注目が集まっている。また，誘電体と導体が混在した物体（構造）による電磁波の散乱・導波問題は，混合境界値問題として大変重要な研究課題となっている。著者らは，先にストリップ導体配列による分散性媒質の過渡散乱問題について検討している。しかし，ストリップ配列を多段にすると解くべき次元数が増大する難点があるため計算精度等を含め散乱問題を再検討する必要があった。本文では，ストリップ導体配列間に誘電体層を装荷した平面格子の散乱問題を解析し，電力透過係数の基本特性を検討する。

1-018

FILT法による伝送回路網解析

◎内田悠聖・古川慎一（日本大学）

本研究では，伝送線路網の過渡解析に数値逆ラプラス変換として優れた手法であるFILT（Fast Inverse Laplace Transform）法を用いて，複数のnodeから時間差で入力された進行波の過渡応答を計算した。具体的には，実用的なモデルとして11か所のノードを有する放射状伝送線路網について解析した。

1-019

3バッファ型波長掃引レーザを用いたファイバブラッググレーティングの多チャンネル計測の検討

◎山口達也・篠田之孝（日本大学）

ファイバブラッググレーティング（FBG）はひずみや温度などの物理量に応じてブラッグ波長が変化する性質を持つ光ファイバセンサであり，幅広い分野に応用されている。しかし，FBGの計測器は感度，計測スピード，センサの搭載数などで課題が残されている。本報告では，3バッファ型波長掃引レーザを用いた多チャンネルのFBG計測システムを開発し，時間分解能3.3μsにおいてFBGの高速かつ多点の同時計測を試みた報告である。

1-020

電界誘起第二高調波発生を用いた電界リモートセンシングに向けて

◎中村 信・佐藤正寛・藤井 隆・熊田亜紀子（東京大学）・大石祐嗣（電力中央研究所）

放電現象の重要なパラメータの一つである電界を遠隔測定できれば，電力機器の開発，保護，診断技術に大きく貢献するだろう。近年，電界誘起第二高調波発生（E-FISHG）を用いた手法が，非侵襲な電界測定手法として脚光を浴びている。E-FISHG法では測定対象の電界にレーザを照射し，非線形分極により生じた第二高調波発生（SHG）から電界を測定する。本稿ではE-FISHG法を用いた電界遠隔測定手法を提案する。測定対象の電界にレーザを照射し，生じたSHGを測定対象の後方に置いたミラーで反射させ，測定対象の前方でSHGを受光するだけの単純な光学系で，測定対象から距離1mを確保して電界測定可能であった。

1-021

光ファイバーを用いたLEDサインボードの試作とその視覚評価

◎篠原 輝・岸本彩希・橋本日菜子・香西貴典・鄭 涛・小西智也・釜野 勝（阿南工業高等専門学校）・浅野時宣（シルバーメイキング）

背景：LEDサインボードは近年，明るさだけでなく，表現する文字や絵の質も求められている。目的：LEDサインボードの視認性を向上させるために，光ファイバーで縁取りしたLEDサインボードの有用性や将来性について検討する。方法：試作機を作成し，縁取りがある場合とない場合での実験を実施し，アンケート形式による主観評価を行った。 結果：被験者とLEDサインボードの距離が短い場合は効果が確認できるが，長くした際には確認できなかった。 考察：距離が長くなることでの縁取りの照度の不足が考えられる。 結語：照度不足を改善できれば光ファイバーを用いた縁取りは，十分LEDサインボードの視認性の向上につながると考える。

1-022

赤外分光領域の吸光度スペクトル情報を用いた絶縁油中のフルフラール含量の推定手法の提案

◎大島誠一郎・伏見文也・中村久栄（トーエネック）・末原憲一郎・橋本 篤（三重大学）

本研究では，赤外分光領域の吸光度スペクトルに基づいて，油入変圧器の絶縁油に含まれるフルフラールを推定する手法を提案する。まず，現場からの採取，加速劣化試験，混合攪拌により採取・作成した絶縁油の分光測定を行った。次に，吸光度とフルフラールの相関係数から波数を選択した。最後に，選択した様々な波数パターンを用いて，PLS回帰によりフルフラールを推定し，その結果を比較して，どの波数パターンが有用か検証した。

1-023

Incorporation of radiant heat into the temperature equation

○多田利春（無所属）

The radiant heat proportional to the square of temperature was newly incorporated into the temperature equation that was used to evaluate the thermal conduction along with the temperature distribution in the previous study, according to the law of energy conservation. Hence, there was reasonable.

1-024

垂直積層型結合ループを用いたESLキャンセル回路の高周波特性の劣化要因検討

◎小林玲仁（三菱電機）

垂直積層型結合ループを用いたESLキャンセル回路は，広帯域でシャントコンデンサのフィルタ性能を改善することが可能である。一方で，特定の周波数においてフィルタ性能が急峻に劣化し，この周波数がESLキャンセル回路の有効周波数の上限となっている。本報告では，寄生成分を考慮したESLキャンセル回路の等価回路を作成し高周波数領域におけるフィルタ性能劣化要因を検討した。その結果，ループ間の寄生容量による共振がフィルタ性能劣化要因となっている可能性があることを明らかにした。

1-025

中間周波数帯における人体インピーダンスの周波数特性

近田光琉・小松崎聖紘（宇都宮大学）・佐藤 健（八戸工業高等専門学校）・○上村佳嗣（宇都宮大学）

近い将来に無線電力伝送の普及が大いに見込まれているが，一方で接触電流による間接作用の安全性評価が問題となっている。IEEEの防護指針（Std C95.1-2019）では接触電流のばく露参考レベル（ERL）は，110MHzまで決められているが，電流知覚閾値の実験的研究は高々3MHzまでしか行われていない。そのため現在100kHz～10MHzの電流知覚実験を実施しており，100MHzまで計画している。実験で用いる電流ばく露装置開発のためには，対象となる部位の人体インピーダンスを知ることが不可欠である。本研究では中間周波における電流知覚実験と接触電流計に用いる模擬回路設計のために，指先から各部位までの人体インピーダンス測定を行った。

1-026

小麦粉粘土を用いた電気的生体組織模倣材料の低周波導電率特性

◎曽我友海・濱田昌司（関西大学）

人体への低周波電磁界の有効利用および影響調査を念頭におき，生体組織の電気特性を模倣するファントム材料の検討を行っている。前報においては，材料の入手・作成・廃棄が容易で自立可能な小麦粉粘土を用い，適度な粘りと固さを維持しつつ100Hzでの導電率を5.4e-2 Sm-1から2.9 Sm-1の範囲で調整できることを示し，この際の小麦粉・水・NaClの配合率を簡単な実験式で示した。一方，人体組織の導電率は100Hzにおいて，例えば4.6e-4 Sm-1～2 Sm-1程度の範囲であるため，小麦粉粘土による低導電率組織の模倣は困難であった。そこで今回，低導電率の組織模倣を可能にするため，小麦粉・水・オイルを配合した小麦粉粘土につき，100Hzの導電率を計測した。この結果，適度な粘りと固さを維持しつつ，2.1e-5 Sm-1～4.1e-2 Sm-1の範囲の導電率を扱えることを示した。さらに，所望の導電率を実現する配合率を与える簡単な実験式を整備した。

1-027

送電線下の樹木近傍人体の静電誘導電流計算

◎田中裕己・濱田昌司（関西大学）

送電線下の人体には商用周波電界ばく露による静電誘導電流が流れ，不快感や痛みを及ぼすことがあり，健康影響が懸念される場合もある。樹木にはそのような電界を遮蔽する効果があり，樹木による遮蔽効果の数値シミュレーションも行われている。しかし，樹木モデルとしては全体的な輪郭を簡単な幾何形状で表したものが使用され，樹木形状を緻密に考慮した計算例は見当たらない。そこで本研究では，2分木に基づく樹木モデルを計算機上で自動成長させて作成し，ボクセルモデル化した上でボクセルモデル用表面電荷法により電界計算することで，送電線下の樹木近傍人体内の静電誘導接地電流を数値解析し，樹木による電界遮蔽効果を定量計算した。

1-028

可逆圧縮ボクセルモデル作成時間計算量の削減

○濱田昌司（関西大学）

ボクセルモデルに基づく表面電荷法（SCM）は，複合媒質の複雑形状モデルに対しても容易に面要素を生成できる長所を有し，筆者はボクセルモデル用高速多重極SCMを用いて電力設備や人体に関する電界計算を行っている。モデル領域の1次元当りの分割数代表値をDとして，関連するメモリと演算量は，面要素でO（D²），ボクセルデータでO（D³）となり，Dが増加する程後者の負荷が増大する。前報では可逆圧縮ボクセルモデル（LCVM）を導入し，モデル作成時間を除外して関連メモリと演算量をO（D²）あるいはO（D²logD）に削減できることを示した。今回，八分木を導入することでLCVM作成時間もO（D²）に削減できたので報告する。なお，八分木の作成に要するメモリ使用量もO（D²）で納まる。

1-029

架空送電線に流れる潮流と磁界の関係

◎佐々木大輝・南 典宏・表 智康・大久保千代次（電気安全環境研究所）

ビオ・サバールの法則によると送電線に流れる電流の大きさに比例するとされている。実際に送電線に流れる電流値（潮流値）は，電力系統の運用と密接に関係しているため非常に機微な情報とされ，これまで広く公表されていなかった。しかし近年の日本における電力自由化に伴う再生可能エネルギーの導入拡大により，2016年4月から一部の超高圧送電線路等における30分毎の潮流値が公表されるようになった。このデータへのアクセスは誰でも可能であり，容易に送電線の潮流値を把握できるようになっている。今回，送電線から発生する磁界について，一般市民が抱く漠然とした不安の軽減および理解・促進を目的に，潮流と磁界の関係の調査を実施した。

1-030

高強度ミリ波ばく露の生体作用の基礎的検討

○池畑政輝（鉄道総合技術研究所）・鈴木敬久・水田瑛土・児山 諒（東京都立大学）・福成雅史・立松芳典（福井大学）

30GHzを超える，いわゆるミリ波帯の電磁波については，生体へのばく露による本質的な作用やその特徴については，作用の有無，あるいは作用を生かした積極的な利活用の可能性の探索は進んでいない。本研究は，これまでに例のない0.1-0.5THz帯の電磁波，特に高電力密度のばく露（数十から数百W/cm²）による生体への作用とその医療等への利活用を探索するため，非熱的ばく露によるこれまで未知の作用の有無や，熱的ばく露の作用の程度を細胞の応答や活動への影響として把握することを目的とし，そのための基礎的なステップとして，大腸菌を用いて検討を行った。その結果，熱作用以外の点突然変異の誘導などの作用は無い可能性が高いことが示された。

1-031

10kV級雷インパルス電圧測定用標準測定システムの開発

◎小林良旗・脇本隆之（千葉工業大学）

筆者らが開発した我が国の最上位に位置するインパルス電圧計測システムは，電圧と時間にトレースして妥当性評価が行われている。本システムを多方面から妥当性評価するために，インパルス波形から比較試験を通して直接評価するための高性能な計測系を開発している。本稿では定格電圧10kVの分圧器を試作し，その応答特性について計測を実施した。 測定の結果，3.4nsの応答時間，56nsの安定時間などが得られた。 デコンボリューションを適用した結果，これらの数値が増加したためさらなる改良が必要であることを示した。

1-032

TEVセンサによるモールド機器の部分放電検出特性

○半田 功（電源開発）

TEVセンサを用いて模擬電極や実機（運用中と撤去品）に印加された際に検出される部分放電特性を得たことについて報告する。 撤去機器に対し，運用中よりも高い電圧を印加させて放電が増大する際の部分放電特性，さらに結合コンデンサによる部分放電値とTEVセンサ計測値の関係性が得られたものである。

1-033

パターン認識を用いた分布誘電率推定手法の提案

◎小森彩実・相知政司（千葉工業大学）

本論文では，静電容量を用いて分布誘電率の推定を行うために大きさの異なる3つの測定電極を配置したモデルで，有限要素法による数値電界解析を実行し静電容量を計算した。なお，測定電極間に設置した誘電体のパラメータを，円柱形誘電体の直径2r，実験装置中心からの誘電体中心までの距離d，比誘電率εの3つを変化させた。静電容量の計算時に測定電極間の被測定物を回転させ，回転角度に対して静電容量に増減が発生した。この数値解析結果をもとにパターン認識を用いた分布誘電率推定手法を提案した。あらかじめ収集した静電容量と推定したい静電容量の一致率を算出し，一致率の高いパラメータを順に5つ算出したのでその結果を報告する。

1-034

市販品を活用したブッシング部分放電診断装置の開発

○勅使川原俊和・鬼頭 豊・前川俊浩（東京電力ホールディングス）

昨今，部分放電信号（高周波帯域）に対応した小型のオシロスコープが安価に手に入るようになってきたことから，これを活用し，変電機器の停止を伴わずに簡易に部分放電測定が可能な部分放電診断装置の開発を開始した。 装置の構成は，センサ類を面電流センサおよびロゴスキーコイル。計測器をUSBオシロスコープ＋ノートPCとし，ソフト部はPythonを用いて開発を行った。 変電所の実機にて試作品のテストを行い，放電発生位相（φ），放電電荷量（q），放電発生回数（n）が十分取得できることを確認した。 今後，放電波形から放電電荷量への変換部の改良や，φqnの発生分布様相から放電形態を自動判別するアルゴリズムの開発を進める。

1-035

数MHzの交流磁化過程測定装置の開発

◎田中大暁・森 賢太郎・金井雄平・萬年智介・磯部高範・喜多英治・柳原英人（筑波大学）

パワーエレクトロニクス分野では，SiCやGaNなどの高速スイッチングが可能な半導体デバイスの活用が進んでいる。これに伴い，回路で用いられるインダクタなど受動素子にも高周波動作が求められるようになっている。高効率なインダクタ素子を実現するためには，従来の高周波磁性材料に代わる新奇な磁性材料の開発が避けられず，このため磁性材料の高周波かつ大振幅磁界における磁化過程の評価が不可欠である。先行研究では，LC共振を利用した低インピーダンスの励磁コイルと1次微分型ピックアップコイルを組み合わせて，3.7MHz，振幅0.15Tの交流磁界に対するY3Fe5O12（YIG）の磁化過程を測定した（1, 2）。しかし，この測定系は試料の磁化信号に対するノイズが大きく，磁化曲線を正確に描画することが難しかった。本研究では，装置の電源であるインバータの駆動回路を見直すことで，測定信号に含まれるノイズを低減する。また，磁化信号を検出するピックアップコイルとオシロスコープを特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルで接続し，オシロスコープの入力インピーダンスを50Ωに設定することで，ノイズ（寄生信号）も低減できることを確認したので報告する。

1-036

二つのファイバブラッググレーティングアレイによる振動の実時間測定の検討

◎松田裕貴・川島裕人・山口達也・篠田之孝（日本大学）

本研究は光ファイバセンサであるファイバブラッググレーティング（FBG）を用いた多点かつ高速な振動測定システムを開発することが目的である。本文はFBGセンサの多点化を図るため，二つの低反射率FBGアレイを用い，振動の実時間測定を行った報告である。

1-037

モーションキャプチャと床反力計を用いた指揮動作計測の基礎実験

◎柴田直樹・塚田湧太・山口達也・三戸勇気・吉田行地・駒沢大介・川上 央・篠田之孝（日本大学）

近年，高度な技能の継承・保存は各分野で重要な課題になっており，モーションキャプチャによる研究が盛んに行われている。本研究の目的は指揮者の指揮動作の解析並びに可視化システムの構築である。本文はモーションキャプチャシステムと床反力計を用いた指揮者の指揮動作計測の実験報告である。

1-038

電磁トモグラフィによる金属箔の非接触二次元温度分布計測の基礎評価

◎林 実朝・吉元俊輔・山本晃生（東京大学）

本研究では金属箔の非接触二次元温度分布計測を目的とし電磁トモグラフィと金属の導電率-温度特性を利用した手法を提案する。提案手法では金属表面の温度分布計測に適した平面状コイルアレイを検出器とし，複数の励起条件下で計測されるコイルの誘導電圧データから逆問題を解くことで金属の二次元導電率分布を推定する。そして金属の導電率と温度の関係から温度分布に換算する。本手法は放射熱が遮蔽される環境の測定対象や物体間の境界面などの観察への利用が期待される。本発表では16個のセンサコイルで構成されるアレイを用いた120mm四方のアルミニウムシートの非接触温度分布計測を実証した結果を述べる。

1-039

OPMを用いたキャップ型脳波-脳磁図同時測定システムの開発

○廣江総雄（国際電気通信基礎技術研究所）・武田祐輔（国際電気通信基礎技術研究所/理化学研究所）・鈴木啓大（国際電気通信基礎技術研究所）・山下宙人（国際電気通信基礎技術研究所/理化学研究所）

脳波計測（EEG）と脳磁図計測（MEG）は脳神経活動に伴う電気信号と磁場信号を高い時間分解能で測定可能であり信号源電流の推定が正確であるため非侵襲の測定方法として非常に優れている。しかし従来のSQUID型MEGは液体ヘリウムを必要とするため装置が大型となりコストも非常に高くなる。また被験者も装置に拘束されるなど負担が大きい。 弊社ではSQUIDに替わる高感度磁気センサーとして光ポンピング磁気センサー（OPM）を利用して脳波と脳磁図を同時に測定できるキャップ型のEEG-MEG同時測定システムを開発した。 開発した装置で基本的なEEG-MEG測定実験を行いその有効性を確認した。本件では独自に開発した測定システムによる脳波-脳磁図測定の結果を報告する。

1-040

レーザー遮蔽光信号解析による微粒子配列評価

○眞銅雅子・長田昭義（大阪工業大学）

アクリル微粒子（30ミクロン）群の密度分布を評価するために，レーザー光を照射しその遮蔽信号強度を測定した。信号は微粒子密度が高いほど複雑化し，FFT解析を用いて信号のスペクトル強度特性を評価したところ，高周波帯（150～300kHz）のスペクトルが，2つに分岐した光強度信号に対応した。そこで観測されたピークは微粒子2個分のピークの重畳であると推定し，モデリング計算を行った。2個の微粒子を適切に配列することによって観測されたピークはほぼ再現できたことから，観測された光信号とモデリングを併せて考察することで，微粒子試料の微粒子径や配列を明らかにできることが分かった。

1-041

接触型電極を用いた電気的手法による固体内菌検定

柳澤佑太・◎池田陽紀（奈良工業高等専門学校）

本検討では，固体検体に対して非加工かつ非破壊のまま菌検定を実施するため，挿入電極の代わりに接触電極を用いて検体のインピーダンスを測定し，菌検定が可能であるかについて検討した。実験結果より大腸菌を含有する場合，検体の等価並列キャパシタンスの増加が確認され，接触電極を用いた場合においても菌の増殖傾向が確認された。無菌検体を同様の条件で測定した場合，キャパシタンスの増加は確認されず，菌が増殖していないことが確認された。このことから，インピーダンス検出法により接触電極を用いた場合においても菌検定が実施可能であることを確認した。

1-042

大気圧イオン移動度測定における短ドリフト長でのイオン・分子反応の影響

○奥山 由・仲川真生（苫小牧工業高等専門学校）・菅原広剛（北海道大学）

本研究では，これまでに検討してこなかった短ドリフト長，即ち，非平衡状態におけるイオン・分子反応の影響について，実験的に観測することが難しい0.001 ≤ d ≤ 1.00cmについてシミュレーション結果より検討した。その結果，d = 0.001cmの短いドリフト長においては電子の影響が観測され，ドリフト長の増加と共にイオン・分子反応の進展過程に伴う移動度スペクトルが観測された。

1-043

低解離度水素分子プラズマのFulcher-α bandにおける分光定数の再検討

◎砂川晃伯・菅波賢也・根津 篤・赤塚 洋（東京工業大学）

水素分子の振動・回転構造を調べるために広く用いられている波長590nm-640nmで，可視域で比較的強度の高いFulcher-α bandスペクトルを理論計算でシミュレートした。水素分子のFulcher-αbandで許される遷移はΔJ=0,±1（Qブランチ，Pブランチ，Rブランチ）である。そこで，実験データとスペクトルシミュレーションのフィッティングによって回転温度を決定するために必要な，分子のエネルギーを決定する分光定数と呼ばれるパラメータの再検討を実験データとシミュレーションのフィッティングを行う方法により，特に分子の回転運動に関する部分でのみおこなった。その結果として，分子の回転エネルギーについてスペクトルシミュレーションの精度が向上したためこれを報告する。

1-044

高繰り返しナノ秒パルスグロー窒素放電プラズマの流体シミュレーション

◎飯田雅之・菊池祐介（兵庫県立大学）

これまでに高繰り返しナノ秒パルス窒素グロー放電を用いた金属材料の窒化や放電現象の基礎的な特性の調査を行ってきた。本研究ではCOMSOL Multiphysicsによる有限要素法を用いて流体シミュレーションを行った。計算では実験条件と合わせて，ガス圧力0.5kPa，平行平板電極間（ギャップ長：30mm）に生成されるプラズマを解析した。その結果，窒素分子と電子衝突による解離に加えて，窒素分子の解離性再結合が窒素原子生成に重要な反応となることを示した。

1-045

対向発散磁界下共鳴磁界域における電子加速過程の観察

◎村中伶羽・林 秀虎・菅原広剛（北海道大学）

我々は磁界下のプラズマ維持のための電子へのエネルギー供給手段の一つとして考えられる部分共鳴（一時的電子サイクロトロン共鳴）に注目し，効率的・機能的な利用を目指しその仕組みの解明とともに発現に適した条件の探索を行っている。本報告では共鳴域内の一点から初期電子を全方位に放出し獲得エネルギーの高い電子に注目して軌跡を観察した。獲得エネルギーが大きい電子は放出方向が磁界と垂直に近いものであった。電界が作用する方向の電子の行動範囲が大きくなることで，電界との間のエネルギー授受も増えるためと考えられ，電子のエネルギー獲得量を決めるパラメータの一つとして電子放出方向と磁界のなす角が重要との示唆を得た。

1-046

交流電界・直流対向発散磁界下共鳴磁界域における電子エネルギー増加へのRFアンテナ電流由来交流磁界の影響

◎林 秀虎・菅原広剛（北海道大学）

本研究はⅩ点プラズマの材料プロセス応用に向け，電子エネルギー獲得機構の一つ共鳴磁界域における部分共鳴に着目している。先行研究では粒子モデルシミュレーションを用いて共鳴磁界域中で電子を全方位に放出し，その際の初期電子条件を変化させることで電子エネルギー獲得の条件依存性を調査してきた。本解析ではRFアンテナ電流による交流磁界をモデルに組み込み，交流磁界が電子エネルギー獲得に及ぼす影響を調べた。交流磁界によりエネルギー獲得量の微減が見られたが，従来モデルで観察された電子エネルギー獲得の条件依存性は定性的にはなお有効と考えられる。今後はこの新モデルによって定量的にもより実際的な解析が行えると期待される。

1-047

RF交流磁界を考慮した誘導結合磁化プラズマ中の対向発散磁界における電子エネルギー利得の解析

◎岡崎凌大・菅原広剛（北海道大学）

プラズマ閉込が期待される対向発散磁界を印加した誘導結合磁化プラズマ中では共鳴磁界域（共鳴磁界強度の0.5～1.5倍の領域と定義）において電子加熱が起き易い部分共鳴現象が観察される。本研究の目的は部分共鳴の現象解明と，部分共鳴と電子閉じ込めの両立のための電磁界設計制御指針獲得である。今回RFアンテナによる交流磁界を新たに考慮した系の電子エネルギー利得（EEG）をモンテカルロ法で算出し考慮前と比較した。RFアンテナ付近と共鳴磁界域の高EEGは共通で微減だったため交流磁界考慮前に得られたEEGに関する基礎的知見は定性的にはなお有効と考えられる。EEGは全体的に小さくなり，高EEG領域は広がった。

1-048

部分放電による電流信号と過渡接地電圧信号の時間差に及ぼす距離の影響

◎中山めぐみ・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

近年の電気設備の保守において，絶縁破壊の前駆現象である部分放電を早期に検知することは重要である。部分放電検出方法の中でも過渡接地電圧（TEV）法は，電気設備を停止する必要がなく，電気設備に容易に設置できるという点で注目されている。一方で，TEV信号の取得原理や部分放電発生源からの伝搬原理などが不明瞭であることから研究が進められている。本稿では，TEVセンサを用いた部分放電発生源の位置特定を目的とし，部分放電発生源とTEVセンサの距離を変化させたときの電流信号とTEV信号の時間差について検討を行った。結果として，TEV信号の負方向の最初の信号の発生は部分放電の発生によるものと考えられた。

1-049

電力設備の部分放電監視用TEVセンサに関する研究 －部分放電信号の到来方向検知のための電磁波伝搬特性の解析－

◎梅村竜吾・白石幸範・八島政史（東北大学）

電力設備の高経年化が進みつつあり，常時監視をベースとする劣化診断手法が求められている。筆者らは絶縁破壊の前駆現象となる部分放電（PD）が検出可能な簡易センサとして，設備筐体の外面に後付け可能なTEVセンサに注目している。TEVセンサは設備筐体に複数のセンサを分散配置し，TEVセンサ検出信号の差異を比較することでPD信号の到来方向検知への活用の可能性がある。基礎検討として，本稿では1台のTEVセンサとPD源との距離を変えて電磁波伝搬解析を行い，検出信号の立上り点，波高値，周波数成分の3要素について比較した。距離の変化によって3要素について減衰や変化が生じることを確認した。従って複数のTEVセンサ検出信号を比較することで，PD信号の到来方向検知への活用の可能性があると考えられる。

1-050

部分放電解析への動的モード分解適応へ向けた基礎検討

◎津屋朋花・岩田晋弥・木谷亮太（大阪産業技術研究所）

電気絶縁材料の劣化現象のひとつとして，部分放電の発生が知られている。一般的に，部分放電は絶縁体内の不純物や微小な空隙に起因して発生する。そのため，放電信号は，劣化の形態や進行を推定する目安となるが，解析には熟練した技術者の経験が必要になる場合が多い。そこで，近年は人工知能の活用による自動化が期待されているが，劣化形態の精緻な識別のためには，測定対象の状態や印加電圧条件に応じた放電波形の特徴量の抽出が必要である。本研究では，部分放電波形の高周波成分低減と特徴量抽出を念頭に，動的モード分解の適応を検討した。部分放電の測定回路から得られた信号に対して動的モード分解を用いた結果，信号の高周波成分が軽減された。

1-051

シリコーンゲルで絶縁されたプリント配線パターン電極の繰り返しESD試験における絶縁破壊電圧回復特性に及ぼす環境温度の影響

◎木下慎悟・大塚信也（九州工業大学）

筆者らはこれまで，パワーデバイスの封止材として使用されているシリコーンゲル（以下ゲルと呼ぶ）に対して，ゲル自体の絶縁特性やゲル中トリー進展メカニズムあるいは絶縁破壊前に発生する前駆信号の検出等を幅広く検討している。ゲル中の絶縁破壊は破壊部にボイドが発生するが，ボイドは時間経過と共に消滅することがあり，絶縁特性も回復することを確認している。本論文では，ゲルで絶縁されたプリント配線パターン電極で繰り返しESD試験を行い，試験前のボイドの大きさと絶縁破壊電圧の関係を調べると共に，繰り返し試験を行う休止期間（回復時間に相当し，本研究では1日と設定）の試料環境温度依存性を調べた。

1-052

気中・油中部分放電におけるTEVセンサ信号の解析

◎石田陽太郎・上野秀樹・岡田 翔（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

電力供給の主幹設備である発電機，変圧器などの点検では絶縁劣化の原因である部分放電の検出が行われる。部分放電検出の手法の一つとしてTEVセンサがあるが，信号取得の原理について未解明の部分が多い。本研究ではTEVセンサを用いた部分放電箇所の特定を目的とした。実験では針－平板電極を用いて，気中，油中等の絶縁媒体中の部分放電を観測し比較を行った。その結果，放電電流波形，TEVセンサ信号波形が気中と油中で異なり，TEVセンサ信号波形をSTFTで解析したところ，油中放電では100MHz以下の周波数成分が長時間観測されることが分かった。

1-053

背後電極を有するマイクロギャップの放電特性における電極材料の影響

◎三ツ橋昂起・比田悠斗・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

近年，半導体の微細化により，静電気放電などのサージが問題視されている。そのため，マイクロギャップでの放電現象とそのメカニズムの解明は重要である。しかし，マイクロギャップでの放電現象は未解明な点が多く，放電発生・進展メカニズムは必ずしも明確にはなっていない。そこで，本研究は，背後電極を有するマイクロギャップにおいて電極材料（銅，真鍮，タングステン）が放電機構・放電特性に及ぼす影響について調査した。結果として，絶縁破壊電圧の大きさが銅，真鍮，タングステンの順に小さくなった。また，いずれの電極材料においても，ギャップ長d ≦ 35 µmでは極性差はほとんどないが，d = 50 µmでは極性差が明確に生じた。

1-054

酸化亜鉛上のマイクロギャップにおける絶縁破壊電圧特性

◎比田悠斗・三ツ橋昂起・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

近年，半導体の微細化により，ESD（静電気放電）による機器内部の故障が問題とされている。また，デバイスのESDからの保護においては，誘電体沿面に形成されたマイクロギャップ中での放電現象とその原理解明が重要である。そこで，酸化亜鉛セラミックス（4.0eV）の基板を用いることで電子放出が容易となり，放電機構が変化する可能性がある。そこで本研究では酸化亜鉛上マイクロギャップにおけるインパルス電圧を印加した際の絶縁破壊電圧-ギャップ長特性を調査した。結果として，ZnO上ではギャップ長が変化しても絶縁破壊電圧はほぼ一定の値となった。これはZnOの非線形特性が寄与し，基板側に電流が流れたため，電圧値は一定になった可能性がある。

1-055

キャビテーションプラズマ処理水によるカイワレ大根種子の発芽促進要因の検討

◎川野宏太朗・岡野竜也・貫名沙紀・北村太輔・岡 好浩（兵庫県立大学）

液中プラズマの一種であるキャビテーションプラズマによって水だけを処理したキャビテーションプラズマ処理水にカイワレ大根種子を浸漬させることによる発芽促進要因を検討した。処理水には過酸化水素および放電電極が消耗して生成されたナノ粒子，それらが溶けたイオンが存在するため，処理水および同程度の濃度である過酸化水素水を用いて発芽率の経時変化を調査した。発芽率が50%に達するまでの経過時間は，未処理の水および過酸化水素水の場合は12hとなるのに対して処理水の場合は10hとなった。過酸化水素と金属ナノ粒子・イオンが共存することによって，発芽促進効果が現れるのではないかと考えられる。

1-056

水溶液中でのプラズマ現象によるヨウ素酸化能力の検証

◎鶴岡智彦・岩井光太（千葉工業大学）・浅倉 聡・吉田勝正（伊勢化学工業）・佐藤宣夫（千葉工業大学）

本研究では，ヨウ素酸化技術の1つとして，プラズマ現象により生成させたオゾンを用いたヨウ素酸化法を検討することを目的とし研究を行った。プラズマ現象により生成させたオゾンによりヨウ素が酸化されることを実験的に明らかにした。今後は，ヨウ素の酸化剤として使用されている薬品のコストと放電による消費電力によるコストとを比較しこの手法の有用性を検討する。また，オゾンによるヨウ素の酸化度合いの数値化にも取り組んでいく。

1-057

球雷状放電の電極材料による水処理への効果

○前山光明・横倉健児・稲田優貴（埼玉大学）

球雷状放電は，活性種であるヒドロキシラジカルを大体積，長時間生成可能で，これを用いた水処理への適用を研究している。 従来の放電を用いた水処理方法に比べ，1回ごとの放電時間，流れるクーロン数も多いことが原因で，電極材料の処理溶液への溶融があり，これにより用いる電極材料によって分解性能が大きく変化することが分かった。複数の電極材料を用いて比較した実験結果および考察を発表する。

1-058

AgまたはCu電極を用いて作製したキャビテーションプラズマ処理水によるアオコ類の増殖抑制

◎貫名沙紀・川野宏太朗・岡野竜也・北村太輔・岡 好浩（兵庫県立大学）

水耕栽培では，増殖したアオコの死骸によって病原菌が繁殖し，栄養や酸素の供給が妨げられることによる根腐れが問題となっている。アオコの増殖を抑制する方法の一つとして，金属イオンを利用する方法が提案されている。今回，液中プラズマの一種であるキャビテーションプラズマ法によって作製したAgまたはCuナノ粒子を含むキャビテーションプラズマ処理水によるアオコ類の増殖に及ぼす影響を調査した。5日間培養したアオコ溶液のクロロフィルa濃度はAg濃度の増加に伴い減少し，0.8ppm以上のとき，0となり，アオコの増殖は完全に抑制された。一方，Cu濃度が1.0ppmにおいてアオコの増殖は抑制されなかった。

1-059

水面へのキャピラリスパーク放電における水成分の経時変化

◎手島脩作・高橋勝之心・坂東隆宏・針谷 達・滝川浩史（豊橋技術科学大学）・井出健太郎・大石智明・爪 光男（シンフォニアテクノロジー）

切り花は，贈答・観賞用途として広く流通しているが，日持ち性を向上することが課題として挙げられる。本研究室では，水に放電処理を行うことで，植物の栄養となるNO3-や殺菌効果を持つH2O2を含む水を製造する技術開発を進めている。本研究では，電極に細管を取り付けてスパーク放電を行い，放電処理後の水成分分析を行うことを目的とした。大気中配置の高圧電極に細管を取り付け，水中に電極を設置した。放電ギャップ長を5mmとして，連続放電を行い，放電処理後に水成分分析を行った。その結果，細管を取り付けることでpHの減少が緩やかになり，亜硝酸イオンの増加および過酸化水素の分解を抑えることが確認された。

1-060

水中放電を用いた糖化前処理における衝撃波圧力の影響

○中川雄介・上田 航・杤久保文嘉（東京都立大学）

再生可能エネルギー源として有望な木材原料バイオエタノールの生成過程において，前処理による糖化促進が有効である。本研究では水中放電衝撃波による木材糖化前処理について，衝撃波圧力と処理効果の関係を評価した。円筒リアクタ内の水中放電で木粉を処理した結果，放電エネルギー0.85J/pulse以上では放電エネルギーを増加しても糖化加速効果は変化しなかった。また，衝撃波圧力の放電エネルギー依存性を調べたところ，0.85J/pulse以上ではほとんど依存性が無かった。よって，木材断片化による糖化加速効果が放電エネルギーに依存しない理由は，放電エネルギーを増加させても衝撃波圧力が変化しなかったためと推定される。

1-061

キャビテーションプラズマ処理水作製中のプラズマ発生率に及ぼすギャップ長調整回数の影響

◎岡野竜也・貫名沙紀・川野宏太朗・北村太輔（兵庫県立大学）・髙野秀樹・橋本智裕（大日製作所）・岡 好浩（兵庫県立大学）

液中プラズマの一種であるキャビテーションプラズマによって処理された水（キャビテーションプラズマ処理水）には殺菌効果が長時間持続することがわかっている。処理水を実用化するために大容量化した装置を開発しているが，従来の小容量装置と同等の水質を得るには処理時間を5minから60minに延ばす必要がある。処理時間が長くなると放電により電極が消耗してギャップ長が広がるためプラズマ発生率が低下する。処理時間の合計を60minとし，その間のギャップ長調整回数を2および6回に増加した結果，プラズマ発生率の最小値が15%から72%に増加した。

1-062

Nebula色プラズマによる水の高効率電気分解

○清水尚博・Britun Nikolay・Ranjit Borude・田中玲子・小田 修（名古屋大学）・細江広記・伊能 悟・井上陽介（本田技術研究所）・堀 勝（名古屋大学）

パルスパワー（RTP法）と濡れセラミック電極（Wet電極法）を用いた水のパルスプラズマ電気分解における高効率水素発生について調査した。十分なWet電極への純水供給時のみH2が検知され，Nebula色プラズマとOESのHα, Oピークが同期して検知されたことより，活性なHα生成がH2高効率発生の一因との結論を得た。

1-063

キャビテーションプラズマ発生に及ぼす印加電圧パルス幅の影響

◎中原健太・森岡 慧・岡田 翔・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマは，減圧沸騰現象を用いて液中に気泡を発生させることで，効率的なプラズマの生成が可能である。これまでに，繰り返し周波数の増加に伴いプラズマ発生率が増加することがわかっており，さらなる高繰り返し化が期待される。しかしながら，低温プラズマの維持という観点から，更なる高繰り返し化のためには，パルスの重畳を避けるべく，短パルス化を検討する必要がある。そこで，本報告では，プラズマ発生率に及ぼすパルス幅の影響を調査した結果について述べる。プラズマ発生率は，1～0.8µsの間ではパルス幅に依存せず17%程度だが，パルス幅0.72µsのとき減少し13.4%である。

1-064

自動アーク溶接に向けた画像処理を用いたアーク長が及ぼすビード幅の計測

◎草刈雄己・一瀬 謹・鈴木裕斗・サイゴウ謙伸・森下穂香・高木真宏・鈴木裕揮・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

TIG溶接は溶接中にスパッタが生じない，全姿勢での溶接が可能，あらゆる継手形状に適用が可能，という利点からよく使用されている溶接手法である。しかし，電極間距離を変えると，電圧が上昇し熱伝導が不安定になってしまう。このため入熱量の調整をする必要があるが職人では入熱の調整・制御に限界がある。また，溶接の自動化は進められているが，課題として一定のゆがみのある母材に自動化が適用できない問題がある。本研究では，アーク姿態を撮影し，画像処理技術を用いてフィードバック制御でアーク長を調整し，過入熱の防止を目的に実験を行った

1-065

磁気駆動アークのリストライク直前における電極間の高速多点分光計測によるアーク温度算出

◎西郷謙伸・鈴木裕斗・一瀬 謹・草刈雄己・森下穂香・高木真宏・鈴木祐揮・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

磁気駆動アークは，配線用遮断器や直流高速度遮断器に使用される技術である。磁気駆動アークの絶縁破壊要因を解明するために，絶縁破壊現象であるリストライク現象直前に電極間を先行する高温金属蒸気に着目した研究が行われている。しかし，リストライク直前に次の陽極点から発生する輝度や，陰極点，陽光柱に関する検討がなされていない。このため本研究では，磁気駆動アークにおいて，リストライク直前の陽極点，陰極点，陽光柱の分光計測を行い，アーク温度算出を行った。具体的には，電圧波形からリストライクが起こる時間を特定し，分光器と高速度ビデオカメラを用いた多点分光測定を行い，線強度法を用いてCu Iアーク温度算出を行った。

1-066

ループ型Ar/O₂誘導熱プラズマの分光観測による基板上酸素原子スペクトル分布形状評価

◎不破知哉・原 弘也・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィー・リサーチ）

筆者らは，ループ型誘導熱プラズマ装置（Loop-ICTP）を開発している。これを用いて大面積・超高速表面改質を実現するためには，基板上での酸素原子が広く高密度で分布する必要がある。その一手法として，コイル電流値を増加させることが挙げられる。これに対して，電流増加時，基板に対する酸素原子の分布を検討する必要がある。電流を変更することで，酸素原子の分布に偏りが出る可能性があるためである。本報告では，電流値を変更した際の基板上Ar/O₂誘導熱プラズマに対する分光観測を行い，酸素原子発光スペクトル強度分布を評価した。この結果から，電流値の変化に伴う酸素原子の基板上における分布の変化を一考察した。

1-067

誘導熱プラズマを用いた単結晶ダイヤモンド成長における電力変調に対する原料ガス間歇供給遅れ時間依存性

○東 泰造・細井大和・田中康規・石島達夫・中野裕介（金沢大学）

筆者らは独自開発した，電力変調と原料ガス間歇導入を伴う誘導熱プラズマ（MITP）によるダイヤモンド膜高速成長を検討している。MITPでは基板に照射する熱流束・ラジカル粒子束を詳細に制御できる。本報告では，電力変調と原料ガス間歇導入を伴うMITPを単結晶ダイヤモンド基板へ照射し，単結晶ダイヤモンド成長を試みた。さらに本プロセスに対し，誘導熱プラズマを用いた単結晶ダイヤモンド成長における電力変調に対する原料CH4/H2ガス間歇供給遅れ時間を変更し，成長レートに与える影響を検討した。遅れ時間が0ms，1.875msおよび3.75msの場合に基板が単結晶ダイヤモンド成長し，遅れ時間が1.875msの場合に最も単結晶ダイヤモンド成長レートが高かった。

1-068

加圧ドライエア中トリプルジャンクションに起因する沿面放電の時間分解分光計測

倉本康佑・◎羽岡透哉・菊池祐介（兵庫県立大学）・笹原涼子・吉村 学・武藤浩隆（三菱電機）

加圧ドライエア中におけるトリプルジャンクションに起因する沿面放電の時間分解分光計測を行った。窒素分子の第一正帯及び第二正帯の発光を2台の光電子増倍管と光学バンドパスフィルタで構成される分光器で測定した。それぞれの遷移エネルギーの違いから，放電中の電界強度が大きくなると第二正帯の発光が相対的に大きくなる。この関係を利用することで，0.11MPaでは高い電界強度を有する1次ストリーマが発生した後に2次ストリーマが発生していることを明らかにした。一方，0.3MPaでは2次ストリーマは検出されなかった。この傾向は針-平板電極系のストリーマ放電と類似していることが分かった。

1-069

陰極と絶縁体の凹凸形状が真空中の沿面微小放電に与える影響

◎辻 大雅（埼玉大学）・山納 康（埼玉大学/筑波大学）

真空を用いた科学分析機器では，固体絶縁体表面で発生する沿面放電やその前駆現象の微小放電が機器の安定的な運用の妨げとなっている。過去の研究[1][2]では，陰極と絶縁体の接触状態が真空中沿面放電に与える影響について調査されてきたが，マイクロアンペア程度の微小放電について調査した論文は少ない。本研究では，陰極及び絶縁体に凹凸部を設けた電極構成が微小放電特性に与える影響を調査した。その結果，陰極側に凹部を設けた試料が平坦な試料や絶縁体に凹部を設けた試料と比べて微小電流は小さく，絶縁破壊電圧も大きい結果となった。この結果から，微小電流や絶縁破壊の抑制にはCTJの電界強度を抑制することが重要だといえる。

1-070

真空アークにおける横磁界が及ぼす電子と重粒子の流速分布

◎鈴木裕斗・髙木真宏・石原のぞみ・森下穂香・鈴木祐揮・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

真空アーク陰極点は表面処理への応用が期待されており，真空アーク陰極点の逆行運動要因の解明が求められている。高真空下では，電子と重粒子の衝突が起こりづらく，異なる流速の分布となる。本研究では，陰極点の逆行運動は電子と重粒子の電荷分離により生じるシース電界による電界電子放出であるという仮説に基づき研究を行った。しかし現状の解析では電荷中性を仮定しているため，電荷分離を考慮することができない。したがって，本論文では，電子と重粒子の電荷分離を考慮した解析の開発に向けて，電荷中性ではあるが，電子と重粒子の流速の違いに着目した電子と重粒子の2温度2流体（2T-2F）モデルを構築した。

1-071

真空アーク陰極点の移動速度が及ぼす陰極点の電子電流密度の解析

鈴木裕斗・◎磯見滉人・石原のぞみ・高木真宏・森下穂香・鈴木祐揮・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

⾼真空下の放電現象では，微⼩かつ⾼輝度な陰極点が⾼速かつ不規則に移動する性質を持っている。この真空アーク陰極点は酸化膜処理の分野で産業応⽤が期待されており，ニ次廃棄物を排出しないというメリットがある。しかし，実⽤化には陰極点の移動を制御する必要があり，真空アーク陰極点の移動要因の解明が求められる。シミュレーションによる研究では，局所熱平衡を仮定したものが主流で，陰極点の移動要因とされるイオン雲の移動が考慮できない。このため，イオン雲の移動を仮定した陰極点の移動シミュレーションの開発を⾏い，真空アーク陰極点の移動速度が及ぼすThermo-Field電⼦放出を明らかにした。

1-072

ダイヤモンド膜成長用の三角形状波に変調した減圧Ar/CH₄/H₂誘導熱プラズマの電磁熱流体解析

◎細井大和・東 泰造・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）

筆者らは，独自開発した変調型誘導熱プラズマ（MITP）によるダイヤモンド膜の高速成長を検討している。MITPでは基板に照射される熱流束・ラジカル粒子束を詳細に制御することができる。本研究室でのこれまでの実験結果から，より低い圧力下でAr/CH₄/H₂プラズマを照射するとダイヤモンド膜の成長速度が向上することがわかっている。本報告では，減圧下におけるダイヤモンド膜成長に寄与しうるラジカルと入力電力波形の関係を検討するため，三角波の立ち上がり時間の周期に対する比（RR）および変調波形電力の最大値HPCLと最小値LPCLの比（SPCL）を変更し，電磁熱流体解析により温度場・流速場・化学組成場を求め，さらにラジカル粒子束を計算した。

1-073

ナノ粒子生成用タンデム変調熱プラズマの熱流動場に対するキャリアガスO₂導入の影響の数値解析

◎岡野里桜・長瀬有理奈・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）

SiOナノ材料は，高いサイクル特性と高いクーロン効率を実現できるため，リチウムイオン電池（LIB）の負極材料として注目されている。このSiOナノ材料を大量に生成するため，本研究室ではタンデム型変調誘熱プラズマ（Tandem-MITP）を用いた手法を検討している。Si原料粉体とともにO₂を導入することで，Siの蒸発蒸気または生成ナノ粒子を酸化し，SiOナノ粒子やナノワイヤの大量生成を期待できる。今回，Tandem-MITPに対する電磁熱流体解析においてArキャリアガスにO₂を導入した効果を計算し，ガス温度（T_g）分布およびO₂質量分率分布を算出した。T_g分布から，原料の蒸発および蒸気の冷却過程を議論でき，O₂質量分率から蒸気の酸化を期待できる。本報では，キャリアガスに導入するO₂流量を変更した際のT_g分布を比較し，O₂ガス導入がSiOナノ材料生成に与える影響を検討した。

1-074

電子追跡シミュレーションによる真空中沿面放電の初期進展メカニズム

◎杉浦拓真・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

真空中沿面放電の初期進展過程において，固体絶縁物上に過渡的な帯電が蓄積されることが実験的に明らかになっている。しかし，過渡帯電測定用の静電プローブ（10×10mm2）が沿面上の帯電分布勾配に比べて大きいため，過渡帯電分布が正確に推定できていないと考えられる。そこで，電子追跡シミュレーションによって過渡帯電分布を再現し，沿面放電の初期進展メカニズムについて検討した。結果として，本シミュレーション方法で推定した過渡的に蓄積する帯電電荷と，実験により取得された電荷が一致したことから，定量的な妥当性が示された。また，沿面放電進展初期過程では，陰極直下に急峻な過渡帯電分布が形成されることが推測される。

1-075

磁気駆動アークの電極間距離が及ぼす陰極点移動速度とリストライク幅の計測

西郷謙伸・◎密山洋平・鈴木裕斗・一瀬 謹・草刈雄己・高木真宏・鈴木祐揮・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

直流送電が行われている回路では，健全回線への事故波及を防ぐために，直流遮断器が設置されている。直流遮断器には，磁気駆動アークの技術が大きく寄与している。しかし，アークの停滞やリストライクなど磁気駆動アークの駆動性にかかわる現象ついては，ほとんど解明されていない。直流遮断器の性能を向上させるためには，磁気駆動アークにおける物理現象を明らかにする必要がある。このため，本研究では磁気駆動アーク姿態をハイスピードカメラで撮影することにより，磁気駆動アークの駆動時における物理現象を明らかにした。具体的には，磁気駆動アークの電極間変更時にける陰極点移動速度とリストライク幅を算出した。

1-076

溶接トーチの移動時における横風流速が及ぼすアークの温度分布

◎孫 影・根本雄介・高木真宏・森下穂⾹・鈴⽊祐揮・任 振威・岩尾 徹（東京都市⼤学）

TIG溶接は，アークの入熱により母材を溶融させ接合する技術である。熟練技能者は，母材条件に合わせて電流や溶接速度，シールドガスの設定を行っている。しかし，近年，熟練技能者は減少しており，TIG溶接のDigital twin化が望まれる。実際の溶接では，風などの外乱がある。先行研究において溶接トーチの移動を考慮した解析が報告されているが，移動時における外乱による影響は解析されていない。外乱として横風がある場合，アークは風により揺らされるため，横風流速によりアークが偏向し入熱量が変化する。以上より，本論文では，溶接トーチの移動時における横風流速が及ぼすアークの温度分布の解析を行った。

1-077

Super cascode方式半導体スイッチを用いた高電圧パルス電源

◎余 増強・華表宏隆・早瀬悠二・山城啓輔（富士電機）

カーボンニュートラルの実現に向け，省エネ・高効率のインバータ駆動回転機の適用が拡大している。しかし，インバータ駆動時のサージ電圧は，回転機の絶縁寿命を縮めることが報告されている。IEC規格は回転機絶縁評価について試験電圧仕様を規定している。また回転機の認証試験についてインパルス電圧絶縁クラスIVICを定め，試験電圧はストレスカテゴリ（IVIC-A～IVIC-D）によって定格電圧の数倍から十数倍が要求される。この絶縁評価試験を実施するために，試験用パルス電源が求められている。本報では，駆動制御が簡単な単駆動式Super cascode半導体スイッチを用いて，低圧モータを対象としたIVIC-C試験を実施可能なパルス試験電源を構築した結果を報告する。

1-078

半導体開放スイッチとパルス形成線路を組み合わせたスパイカ-サステイナ回路の開発

◎賀 陽・石山泰聖・任 小晶・日下佳祐・須貝太一・江 偉華（長岡技術科学大学）・長尾和樹（小山工業高等専門学校）

In this study, a spiker-sustainer circuit combining SOS and PFN applied for glow discharge was studied. Experimental results show that the higher pumping voltage of SOS is, the higher peak foward current and reverse current are, however, the cut-off rise time of reverse current gets longer, the reverse-forward charge ratio via SOS becomes stable.

1-079

無線給電技術を活用した半導体化インパルス発生器

◎佐藤正騎・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

半導体化マルクス発生器はスパークギャップスイッチを半導体スイッチに置き換えることで高い制御性を実現可能な高電圧パルスパワー電源である。しかし，半導体化マルクス発生器の放電動作時にはスイッチング素子の電位が各段ごとに異なってしまうため，駆動には段数分の絶縁電源が必要となり，回路が複雑化してしまうという問題がある。そこで本研究では無線給電の技術を活用することで，低コストで高い絶縁性を有する絶縁電源を生成することにより，容易に半導体化マルクス回路を多段化する手法を提案した。講演では提案手法により作成したマルクス発生器の実験結果について報告する。

1-080

繰返し高電圧パルスを印加する電極間を流れる導電性流体における局所過熱

◎顔 秉宇・梶原賢士・角屋亮輔・中村朋広・勝木 淳（熊本大学）

液状の食品や医薬品等の次世代殺菌技術として期待されるパルス電界（PEF）殺菌は，現行の加熱法に比べて成分劣化が小さく，かつ省エネルギーである。しかし，大流量化する上でPEF処理槽内の液体局所加熱が課題となっている。著者らは，PEF処理槽内の流体の流れと温度分布を可視化でき，パルス因子や液体の流速などを調整可能な実験装置を構築した。本論文では，様々な条件下の液体の挙動と局所加熱のメカニズムについて述べる。また，局所加熱を抑制する方法についても議論する。

1-081

パルス電界処理による有効成分の抽出の検討

○大山尚也・レーフォン・福永龍生・齊藤安貴子・民田太一郎（大阪電気通信大学）

本研究ではPEF（パルス電界処理）による細胞内の有効成分の抽出を目的に，実験方法および効果検証について検討した結果を報告する。PEFとは，細胞膜に強電界パルスを印加することにより，細胞膜に孔を開ける技術であり，これによって細胞質を細胞の外に取り出したり，細胞を死滅させたりすることが出来る。今回，成分抽出に適した電解液を選定し，効果の検証方法としてポリフェノール量の測定及び乾燥時の重量変化率を評価した。この結果，ポリフェノール抽出量が約4~5倍に増加し，重量変化率が約2倍減少したことから，PEF処理による成分抽出効果を定量的に確認することができた。

1-082

反射三極型仮想陰極発振器における出力マイクロ波の電極材料依存性

◎長谷川太星・深田悠晴・伊藤弘昭・竹崎太一（富山大学）

【目的】仮想陰極発振器はマイクロ波変換効率の低さ，発振周波数が広帯域という欠点がある。それらの改善のため本研究では電極材料に着目し，ベルベット，グラファイト，カーボンファイバーで発生した出力マイクロ波の電力測定・周波数解析を行った。 【方法】出力マイクロ波は導波管出力窓の後方1200mmに設置した方形同軸導波管変換器で受信し，オシロスコープで計測した。電力測定はマイクロ波吸収体であるカーボンと温度測定用のK熱電対を用いた。 【結果】出力マイクロ波の時間周波数解析結果よりグラファイト電極では時間の経過と共に周波数が上昇していく傾向を持つ。一方，ベルベットとカーボンファイバー電極では周波数が一定で安定したマイクロ波発振であることが分かる。

1-083

パルスマイクロ波照射が小松菜種子の発芽に与える影響

○橋本好幸（神戸市立工業高等専門学校）

パルス電磁波が植物の生長に与える影響について研究を行っている。今回は，周波数9.4[GHz]，電力20[kW]，パルス幅約1[μs]，繰り返し周波数1[kHz]のパルスマイクロ波小松菜の種子に照射し，その照射時間と発芽率の関係について評価を行った。その結果，未照射時よりも10秒間程度パルスマイクロ波を照射する方が，小松菜種子の発芽率が高くなる傾向が観察された。

1-084

水滴噴霧中パルス放電による殺菌における噴霧水量の影響

◎深澤勇樹・高橋陸人・齋藤高輝（山形大学）・澤田 亮（極洋）・南谷靖史（山形大学）

農産物や海産物を取扱う食品工場では，これらを洗浄する工程において大量の水が使用される。1度洗浄に用いた水には農産物，海産物に付いている菌が含まれるため，安全性を考慮し，再利用されずにそのまま捨てられる場合が多い。これにより水道代が高くなり，製造コストに影響を与える。 洗浄水の殺菌処理の方法として，加熱殺菌が考えられるが，海産物などを対象とした場合，洗浄水内には菌の他に魚などのタンパク質などが溶け込んでおり，加熱によりこれらが変性し，凝固する恐れがある。 本研究では，水滴噴霧パルスパワー気中放電水処理法の適用を検討する。空気中において放電を起こすとオゾン，OHラジカルなどの活性種が多く発生し，噴霧水中の菌に作用し殺菌される。噴霧水量を変えたときの殺菌効果について報告する。

1-085

CA状態で包装されたカット野菜のパルスプラズマ殺菌におけるパルス幅の影響

◎崔 鵬程・木村 好・齋藤高輝・南谷靖史（山形大学）

我々はCA状態（10％程度の低酸素状態）で包装されたカット野菜のパルスプラズマによる殺菌を検討しているが，パルスプラズマは印加するパルス幅により発生状況が異なるため，プラズマにより発生するオゾン，活性種などの状況も異なる。したがって，同じ電圧で長短パルス幅の放電による殺菌効果の違いについての検討が必要である。そこで，100nsと5ns幅のパルスを用いて殺菌効果を比較した。

1-086

高周波バーストパルスの出力パルス列数に対する細胞死割合の比較

◎伊藤俊輝・強瀬隆慶・南谷靖史（山形大学）・横井愛加・中野 晃（一正蒲鉾）

本研究ではがん治療や食品を包装状態のまま殺菌することを目指して高周波バーストパルスによる細胞死の特性を調べている。これまで，5連続のバーストパルスを印加した場合，シングルパルスより効率よく細胞死を起こせることを示している。効率が良くなればより低い電界強度，より少ない印加回数で同じ効果を得ることが可能となる。そこで本研究ではバーストバルス連続数をさらに7，10としたときの細胞死率の調査を行った。結果，5連続パルスより7連続パルスの方が死亡率は高くなったが，10連続は7連続と同程度にとどまった。

1-087

癌細胞に対するナノ秒パルス電界印加の条件選定実験

◎小林祐大（徳島大学）

本研究の最終目的は新たな癌治療法として応用および確立することである。実験条件最適化や装置開発を目的に発育鶏卵法を用いたパルス電界印加の動物実験を計画している。この前段階として，癌細胞懸濁液とキュベットを用いたパルス電界印加実験により，パルス印加条件の最適化を行う。 本実験では，ブルームラインパルス形成線路の負荷部にキュベットを接続し，パルス電界を印加した。印加24時間後の細胞生存率を調査する。 電界強度を大きくすること，また印加回数を多くすることで細胞生存率は減少していた。今後アポトーシス検査に加えて，実験技術の向上，実験回数の増加によるデータの信頼性向上を行う必要がある。

1-088

水中のクモノスカビ胞子の不活化処理における水上パルス放電とオゾンバブリングとの比較

◎片岡洋志・弓達新治・尾崎良太郎・野澤 彰・門脇一則（愛媛大学）

植物工場における栽培溶液に菌類が混入することで，植物の成長阻害や収量低下を引き起こす。そこで我々は，植物のオゾン障害を抑えつつ水中の菌類を不活化するために，水柱電極を用いた誘電体バリア放電による手法を試みている。今回は，水中のクモノスカビ胞子の放電に対する耐性を確認するために，水上パルス放電処理とオゾンバブリング処理を比較した。クモノスカビは高いオゾン耐性をもっているため，オゾンバブリング処理では30分後の残存率はほとんど変化しなかった。水上パルス放電処理では減少傾向にあるものの，30分後の残存率はおよそ1/4であった。水上パルス放電により生成した過酸化水素がクモノスカビ胞子の不活化に関与したと考えられる。

1-089

減圧下の飽和水蒸気環境で生成したマイクロ波励起プラズマによる照射対象物に対する温度評価と温度低減効果の検討

◎榧森悠介・Paing Khant Nyar・越山海陸・石島達夫・田中康規・中野裕介（金沢大学）

半導体デバイス製造におけるレジスト除去（アッシング）は，リソグラフィ工程で繰り返し用いられる重要な工程の一つであり，我々は，半導体デバイス製造における環境負荷及びダメージ軽減のため，独自のマイクロ波励起水蒸気プラズマアッシング法（Water Plasma Ashing: WPA）の研究開発を進めている。 今回，シース熱電対とラングミュアプローブを用いて，基板表面付近の温度および電流密度の測定を行った。 また，基板への冷却効果を検討するため基板ホルダを変更し，レジスト除去を行った。熱容量が大きい基板ホルダを用いることで，ポッピングと呼ばれる欠陥を発生させることなくレジスト除去を行うことが出来た。

1-090

誘電体バリア放電の放電面積測定

◎菅沼亮太・高根直也・久保貴恵・村田隆昭（東芝インフラシステムズ）

オゾン発生装置は誘電体バリア放電に酸素を含むガスを供給することで，酸素からオゾンを生成させる。バリア放電は直径100um程度のマイクロ放電の集合によって形成されるため，マイクロ放電の挙動を調査することはオゾン発生効率を向上するうえで重要である。筆者らはマイクロ放電を考慮したシミュレーションモデルの構築を行っている。本報告では，オゾン発生装置の印加電圧を変化させた際に，マイクロ放電の集合体としての変化がどのように起こるのかをI.I.（イメージインテンシファイア）を用いた放電観測とQVリサジュー波形をもとにした等価回路の変化について調査した。10kVで放電面積が100%となり，非放電面積を考慮した等価回路は不要であることを確認した。

1-091

アルゴンガス中における大気圧高電圧パルス放電シミュレーション

◎川口大貴・平山智士・乾 義尚（滋賀県立大学）・田中正志・柳平丈志（茨城大学）

今後，リチウムイオン電池の需要増加に伴い，廃棄リチウムイオン電池の増加が予測される。そこで，本研究では，リチウムイオン電池正極活物質のリサイクルにおけるアルゴンガス中の大気圧高電圧パルス放電を対象に，シミュレーションを行った。放電中の物理・化学過程において，極板間に高電圧を印加することにより，電子数密度群は頭部の強電界で電離衝突を引き起こし，電子を生成させながら進展した。その後，極板間の中心軸付近に高電子数密度のチャネルが形成され，そのチャネルに電圧を印加し続けると，実験で観測されたようなスパーク放電へと移行すると推測した。

1-092

小型の回転電極型誘電体バリア放電装置の放電特性と粉体材料への表面処理効果の検討

◎逢坂 瞭・山口拓馬・石島達夫・田中康規・中野裕介（金沢大学）

本研究では粉体材料の親水化に用いられている回転電極型誘電体バリア放電装置のサイズを変更し，粉体材料の処理効果に対する影響を検討することを目的とした。処理効果の検討方法として，投入電力の測定，発光分光計測によるプラズマ中の励起種の計測，X線光電子分光による結合状態の解析，液滴接触角計測による親水性の評価を用いた。結果として，小さなサイズのリアクターでは，粉体処理量を減らし，処理時間を長くすることで従来機と同等の処理効果が得られることがわかった。

1-093

大気圧プラズマジェットによる医療用Mg合金に適した酸化被膜形成の調査

◎米谷理玖・竹下大貴・市來龍大（大分大学）・中谷達行（岡山理科大学）・園田正樹（大分県産業科学技術センター）・林 信哉（九州大学）・古木貴志・金澤誠司（大分大学）

近年，疾患部の治療後に体内で分解・吸収され，最終的に消失する生体吸収性ステントとしてMgの利用が期待されている。しかし，Mgは耐食性の低さから疾患部の治癒よりも早く分解してしまうという問題がある。本研究は，耐食性の向上を目的とした酸化被膜をパルスアーク型大気圧プラズマジェットによって形成し，ステント材料に適した酸化被膜の形成条件を調査するものである。実験にはAZ31-Mg合金を使用し，プラズマの照射距離および処理温度を変化させることで，形成される酸化被膜の照射距離依存性および処理温度依存性を調査した。 その結果，大気圧プラズマによるMgの酸化処理は溶融しない程度に低温で近距離での処理が望ましいことが判明した。

1-094

風車ブレード保護材の接着力制御に向けた大気圧プラズマによる金属表面の改質

◎山内素明・大澤泰樹・山崎顕一（東京工業大学）・田中元史（産業技術総合研究所）・沖野晃俊（東京工業大学）

風車の大型化に伴い，ブレード先端のエロージョン対策が必須となっている。対策の一つとして，耐エロージョン性に優れた保護テープを設置することが多いが，粘着界面の特性がエロージョン特性に大きな影響を与える可能性がある。そこで我々は大気圧プラズマを用いて，保護テープとブレード界面の粘着力の制御を行っている。本研究では，大気圧プラズマをアルミニウム平板に照射し，ポリイミドテープとの粘着強度の測定を行った。また，水とジヨードメタンを用いた接触角測定結果から，表面自由度エネルギーを求めた。本発表では，ガス種や照射距離などの照射パラメータが，表面自由エネルギーや接着強度へ与える効果について報告する。

1-095

高繰り返しナノ秒パルスAr/CH₄グロー放電を用いたプラズマを用いたDLC成膜

◎玉越順也・川口瑞稀・菊池祐介（兵庫県立大学）

ダイヤモンドライクカーボン（DLC）の低コスト成膜を目指して，ガス圧力1.2kPa下の高繰り返しナノ秒パルスHe/CH4グロー放電プラズマを用いた成膜を行ってきた。本実験ではさらなる低コスト化のため，希釈ガスをArに置き換えて成膜を行った。ガス圧力を0.36kPa～1.2kPaで変化させたところ，He/CH4プラズマでは膜中の水素含有量は約30％でほぼ一定であったが，Ar/CH4プラズマでは1.2kPaで57％と高く，0.36kPaで26％と低くなった。この結果から，ガス圧力を調節することで，Ar/CH4プラズマでもHe/CH4と同様のラマンスペクトルを有するDLC膜を成膜できることが分かった。講演ではナノインデンターを用いた硬度計測結果についても報告する。

1-096

スロットアンテナを用いた矩形導波管モデルにおける電界強度シミュレーション

◎浦谷寛愛・Erdenezaya Bat Orgil・石島達夫・田中康規・中野裕介（金沢大学）

ガス内で製膜材料にマイクロ波励起プラズマを照射し，基板に材料を吹き付けることで製膜が可能である。製膜速度の向上及び膜の大面積化にあたって，スロットアンテナ部に直接原料ガスを供給するために，矩形導波管にT字管を組み合わせたモデルを考案した。本検討では，スロットアンテナにおけるプラズマを最大化するために，電界シミュレーションを用いて最適なT字管の位置の探索を行った。本検討では，CST Studio Suite 2020を用いて電界シミュレーションを行った。電界強度のピークの値，電界強度のピークが現れるスロット長の値，グラフの急峻の度合のそれぞれについて，今回の電界シミュレーションの範囲ではT字管の位置との相関関係は見られなかった。

1-097

角筒型電気集塵装置におけるイオン風と粒子軌道のシミュレーション

◎貴島勇希・安本浩二・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・川田吉弘（職業能力開発総合大学校）

電気集塵装置（ESP）には，四角筒型，円筒型や六角筒型等様々な形状が存在しているが，最適形状を詳細に検討した研究は見掛けない。そこで，3次元の四角筒型ESPモデルを作成し，シミュレーションによりイオン風を考慮した気流と粒子軌道について汎用解析ソフトCOMSOL Multiphysicsを用いて検討した。その結果，解析モデル内に流入した粒子は，空間の負イオンと電界分布の影響により発生したイオン風の影響を受け，モデル内を螺旋状の軌道を描きながら下流側へ移動することが示された。

1-098

高電界型電気集塵装置における集塵率の粒径特性

◎棚橋優樹・伊藤圭亮・安本浩二・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）

ディーゼル排気微粒子の自然帯電を利用し，高電界のみで除去する高電界型電気集塵装置（ESP）における集塵率の粒径特性について検討した。ESPは平行平板電極構造とし，電極間に電圧を加えて静電界を発生させた。粒径0.3〜5μmの粒子個数濃度を測定し，電圧印加前後の比から集塵率を測定した。その結果，全粒径の範囲においてほぼ80%以上の集塵性能が得られた。放電電流は，検出限界の0.01mA以下であった。すなわち，高電界型ESPはほとんど電力を消費することなく，粒径0.3～5μmの粒子を除去できることが示された。

1-099

電気集塵装置における高電圧給電構造の検討

◎星野流河・安本浩二・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）

本研究では，電気集塵装置の高圧給電碍子における新たな防塵装置を提案し，その性能を表す反射率とエアーパージ流量の関係を検討した。また，本装置の絶縁性能を確認した。その結果，エアーパージ流量が多いほど反射率は高くなり，20L/minで平均97%の高い値が得られた。このことから，本装置によって碍子を防塵できること，必要なエアーパージ流量が20L/minであることがわかった。また，本装置の火花電圧は-17.5kV（23kV/cm）であり，空気の絶縁破壊強度（約30kV/cm）の2/3以上の値が得られた。

1-100

集塵電極表面の撥水性が電気集塵装置のウイルス捕集に与える影響

◎木原聖次・菅野竜矢・安本浩二・吉野秀吉・高村岳樹・和田理征・澤井 淳・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・松本雅弘・松本 伸（富士電機）

筆者らはこれまでに，電気集塵装置（ESP）を用いることで浮遊ウイルスを捕集できることを確認してきた。本研究ではESPの集塵電極表面の状態として撥水性に着目し，浮遊ウイルスの捕集性能に与える影響を検討した。ESPは二段式とし，集塵電極表面の撥水角を52°から117°に調整したのち，ミスト状の浮遊ウイルスの捕集率を測定した。その結果，粒子個数濃度及びプラーク数のいずれの評価法においても，撥水角によらず捕集率はほぼ一定となり，集塵電極表面の撥水角が捕集率に与える影響はほとんどないことが示された。また，捕集率は，98.8%から99.6%であった。

1-101

集塵機用コロナ放電の風速による影響と負イオンの移動度

○高野哲美・広瀬禎弥（富士電機）

船舶などの大型エンジンの排ガスのPMを処理する電気集塵機において，その帯電特性を決定するコロナ放電電極について，排ガスの風速に対する放電特性を実験的に取得した。我々の設計による条件下では風速に対してはコロナ放電の電圧－電流特性はほとんど影響されないが，電界方向と直角な方向の送風により電流値は印加電圧に対し明確な依存性を有する。またスパーク電圧に近い実用条件での負イオンの移動度を実験的に得ることができ，従来の実験値の延長上にあるものと推定された。

1-102

イオン風により流動する微粒子のシミュレーションの表現手法に関する研究

◎二宮成哉・尾崎良太郎・門脇一則・弓達新治・守本 潤（愛媛大学）

電気集塵装置に用いられるイオン風の観測方法として近年，ハイスピードカメラによって微粒子の個々の動きを観測する方法が報告されている。その際，シミュレーションでは粒子を連続体的ではなく離散的に表現することで上記の実験との比較に適する。したがって，本研究ではイオン風により流動する微粒子を粒子として表現するシミュレーションを検討した。 まずイオン風を発生させ，煙を用いてそれを観測する実験をした。次に，それをシミュレーションで再現し，実験と比較した。 結果として，実験とシミュレーションで同じような挙動を示すことが確認できたが，次元の違いなどによる差異も認められた。