一般講演

7-001

電子ビーム照射によるプラズマ加熱装置の提案

○安カ川 誠（センリョウ）

電子ビーム照射による水素ガスの電離によって発生させたプラズマ粒子をラザフォード散乱や電界などの電気力によって閉じ込め，さらなる電子ビーム照射によってこれを加熱することにより超高温のプラズマを生成する方法が原理的に可能なことを発見したので報告します。この装置を使用すれば容易に核融合反応を起こせることが期待できます。疑問点や詳しい説明は当方にお問い合わせください。

7-002

CCMHD発電機における出力調整幅の作動気体温度依存性

◎十亀孝彰（東京工業大学）・藤野貴康（筑波大学）・奥野喜裕（東京工業大学）

MHD発電機の大規模・高速出力調整用発電機としての適用可能性を明らかにするために，従来の高温作動気体による高効率クローズドサイクル（CC）MHD発電機に加え，比較的低温で駆動するCCMHD発電機を対象として，r-z二次元非定常電磁流体解析により発電機の性能評価を行った。作動気体をAr/Cs，入口全温度を高温駆動で2200K，低温駆動で1300Kとして，特にシード率および負荷電圧による出力調整能力に着目し，その作動気体温度依存性について検討した。その結果，低温駆動MHD発電機では，高温駆動MHD発電機に比べ，より低い負荷電圧においても安定して出力調整が可能であり，出力調整幅が広いことがわかった。

7-003

回転デトネーション駆動ディスク形MHD発電機の発電特性における全圧とスワール角依存性

◎増田 龍（東京工業大学）・松本正晴（福島大学）・川﨑 央（静岡大学）・奥野喜裕（東京工業大学）

本研究では，回転デトネーション駆動ディスク形MHD発電機において，入口全圧および入口スワール角がその発電特性に与える影響を数値計算に基づく検討により明らかにした。結果として，高い入口全圧の条件で発電出力が低下することがわかった。これは，入口全圧を大きくしても流速がほとんど変化しない一方で，Hallパラメータの低下によってHall起電力が低下することによる。また，発電出力の観点から最適なスワール角が存在することがわかった。これは，入口スワールの導入により円周方向流速が増大し，高いFaraday起電力が得られる一方で，過度なスワール角の場合にはHall効果に伴う損失が発生することに起因する。

7-004

Ne/XeプラズマMHD発電実験機の発電特性に関する数値解析

◎Kimsor Ork・奥野喜裕（東京工業大学）

本研究では，Ne/XeプラズマMHD発電実験機の高性能化に向けての指針を得ることを目的として，実験に沿った条件における発電機内のプラズマ挙動および発電特性をr-θ二次元数値解析により検討した。シード率（S.F.）0.1%，1.0%，5.0%における入口電離度0.78×10^-4（入口電子温度6500K），1.70×10^-4（6280K），1.98×10^-4（5950K）でのプラズマ構造はそれぞれ実験で観測されたRF投入電力7.37kW，7.42kW，6.81kWでの不均一プラズマ構造と類似し，エンタルピー抽出率（E.E.R.）は実験結果と近い。E.E.R.はS.F.=0.1%の場合は入口電離度5.0×10^-4～2.0×10^-3（8000～10400K），S.F.=1.0%の場合は入口電離度6.0×10^-4～2.0×10^-3（7000～8000K）で20%を超え，S.F.=5.0%の場合は入口電離度5.0×10^-4～1.5×10^-3（6400～7100K）で10%を超えることが示唆された。

7-005

ノンシールポンプを用いた回転発熱機の熱変換効率の検証

◎齋藤博起・三浦友史（長岡技術科学大学）・今盛 聡（富士電機）・岡崎 徹（エネルギー総合工学研究所）

再生可能エネルギーによる発電需要が増加しているなか，余剰電力の貯蔵の方式の1つとして熱に変換する蓄熱方法があり，熱変換機として回転発熱機が考えられている。今回の研究では市販のノンシールポンプを改造した回転発熱機を用いて，機械入力に対する熱出力の変換効率について検証した。結果から，適切なすべりで動作させることで入力エネルギーの大部分を機械エネルギーにできることが分かった。また，今回の実験装置では1次側の損失は熱媒に伝わらないことが分かり，1次銅損を他の損失より小さくなるように設計を行うこと，エネルギー変換効率が高い外部モータを選定することで，回転発熱機の熱変換効率を向上が期待できるとの知見を得た。

7-006

鉄球を用いた位置エネルギーの貯蔵と発電装置

○松本 聡（芝浦工業大学）

鉄球を用いた位置エネルギー貯蔵システムを提案した。本システムは，ビルや高層構造物あるいは地下空間が有する落差は有望であることが試算された。リニアコイルの配置や設計の自由度が極めて大きいため，コンパクトかつ高効率な運転が可能である。また，環境負荷が小さく出力の平準化が需要地の近くで可能であること，個々のユニットの標準化を図ることにより経済性も高まること，構造が簡単であるため運転保守管理が容易であることが特徴である。

7-007

NEを用いた日射量予測に関する研究

◎石部晃史・川﨑章司（明治大学）

近年，環境問題や原子力発電依存度の低減などの観点から分散型エネルギーシステムが注目されている。その中でも太陽光発電システムは大きく期待されており，連系台数が今後ますます増加することが予想される。しかし，太陽光発電出力は気象条件に大きく左右されるため安定した電力供給が困難である。上記の背景より，太陽光発電出力に起因する日射量の予測が非常に重要になってくる。そこで，本研究では気象庁が発表している気象データを基にNeuro Evolutionを用いた日射量予測手法を提案する。従来手法であるニューラルネットワークに比べてRMSEの年間平均において約19%の精度向上に成功した。今後は用いるデータの検討を行い，更なる精度向上を目指す。

7-008

Day Snow-Fog RGBを用いた雲画像の予測による積雪地域の日射量予測

◎山口雄大・川﨑章司（明治大学）

近年，太陽光発電（以下，PV）の導入が進んでいるが，PVは気象条件により発電量が左右するため，需給バランスを一定に保つことが困難である。従って，PVが大量導入された電力システムの安定運用には日射量を精度良く予測することが必要である。本研究は積雪地域における高精度な日射量予測手法の提案を目的とする。予測手法の1つとして衛星画像の可視画像を用いた手法があるが，積雪地域では上空の雲と積雪が区別できず，予測精度が悪化する。本研究では，Day Snow-Fog RGBを利用し，上空の雲と積雪の区別を可能にした。さらに，畳み込みLSTMを用いて雲画像を予測し，日射量予測に利用した。結論として，雲のみを正確に抽出することが可能となり，積雪地域における日射量の予測精度が向上した。

7-009

太陽電池モジュールの直並列構成検討による発電効率向上

◎三木大和・福嶋純一・菅野純弥・滝波 力（東京電力ホールディングス）

太陽光発電では太陽電池モジュールの直並列構成を最適化することで，モジュール1枚あたりの発電量を最大限引き出し，大きな出力電力を得ることが重要である。 既設太陽電池モジュールの一部を高効率太陽電池モジュールに交換する際，直列に交換した場合と並列に交換した場合とで出力電力が異なることを前稿で示した。 本論文では前項で得られた直並列構成検討結果に対する考察を行い，概略計算により，直列交換時に発電量を高めるための最低限必要な交換枚数を示した。加えて，太陽光発電所新設時のモジュール直並列構成を検討により，モジュール1枚あたりの発電量を高められることを示した。

7-010

衛星画像と地理情報システムを用いた土地利用情報と突発雲の関係性の検討

◎Nurin Amira Binti Ahmad Remy・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）

カーボンニュートラル実現のために，PVの大量導入が必要である。しかし，太陽光発電システム（PV）の出力は雲などの気象状況に左右され，電力系統安定性低下が懸念されている。一方で，土地の利用方法により雲のできやすさが変わると考えられることから，ここでは土地利用情報と突発雲の関係性を検討するため，ひまわり8号の衛星画像と地理情報システム（GIS）を用いた。2021年における晴れの日を対象に，ひまわりの可視画像から曇天率や雲の発生率を算出し，土地利用情報と比較した。結果，曇天率は夏から秋に向けての時に高くなると確認できた。また，建物用地の曇天率と雲の発生率は他の土地に比べて高いため，雲が発生しやすいと考えられる

7-011

太陽光発電システムのHeadroom制御による上げ調整力確保に関する実験結果

○大関 崇・大竹秀明・高松尚宏・中島 虹・橋本 潤・大谷謙仁（産業技術総合研究所）・植田 譲（東京理科大学）・大場健史・志賀慶明（東芝エネルギーシステムズ）

PVによる上げ調整力創出の検討として，Headroom制御の実証実験結果の一部を報告する。

7-012

エピタキシャル・リフトオフ法によるⅢ-Ⅴ族化合物多接合太陽電池の薄膜化の検討

◎岩澤英宜・岡田至崇（東京大学）

Ⅲ-Ⅴ族化合物多接合太陽電池は高い変換効率が得られるが，製造コストが高価であり宇宙用途の他に幅広い利用まで至っていない。そこで，基板を再利用することで低コスト化を図り，またセルの薄膜化・軽量化を可能とするエピタキシャル・リフトオフ（ELO）による，Ⅲ-Ⅴ族化合物多接合太陽電池の薄膜化プロセスについて検討した。太陽電池薄膜層の剥離に要する時間の短縮化の観点から，HFエッチング液の温度・濃度・溶媒を変化させてELOの実験を行った。その結果，格子整合2接合のInGaP/GaAs太陽電池構造（LM2J）において，HFの溶媒を水からアセトンへ変更することで所要時間を6割程度まで短縮できることが分かった。

7-013

ストリング電流監視による線間短絡故障の判定基準に関する基礎検討

○西川省吾・千脇伸仁・窪田 洸（日本大学）・谷村晃太郎・浅尾芳久（住友電気工業）

一部の太陽光発電システムには異常ストリングの検出のため，全ストリングの電流を常時監視する装置が備わっている。しかしながら，現状の装置では異常の判定基準が明確ではない。本研究では「線間短絡故障」を対象として実験によりストリング監視による判定基準について基礎検討を行った。実験においては，線間に挿入した模擬抵抗の値を変化させ短絡故障の度合いを変化させた。そして，判定のための基準として隣接するストリング間での故障発生前後の電流変化率を求め，短絡抵抗値と電流変化率の関係を調査した。さらに，電流変化率と電気設備に関する技術基準を定める省令の第58条に示される絶縁抵抗値との関係について検討した。

7-014

参照基準I-Vカーブの実用化に向けた統合型ソフトウェアの開発

◎金成雄太・植田 譲（東京理科大学）

本研究では，太陽電池モジュールの故障検出の基礎技術となる，参照基準I-Vカーブの実用化を目的とし，複数の機能を統合したソフトウェア開発を行った。 先行研究の参照基準I-Vカーブ算出アルゴリズムを厳密に搭載しただけでなく，実測I-Vカーブとの比較機能の搭載や，様々なI-Vカーブトレーサに対応できる汎用性，データの自動読み込み機能など，ソフトの使いやすさも重視して開発を行った。 作成したソフトウェアによって，簡単に参照基準I-Vカーブを作成できるようになった他，参照基準I-Vカーブと実測I-Vカーブを比較することで，故障が発生しているモジュールの確認や判断が簡単に行えるようになった。

7-015

ストリングI-Vカーブと特徴量抽出を用いたk-means法によるPVシステムの不具合判定

◎藤澤晃多・植田 譲（東京理科大学）

本研究では，近年急拡大している太陽光発電（PV）システムの不具合を迅速かつ正確に発見することを目的として，PVシステムの不具合判定法を提案した。手法としては，ストリング単位でのI-Vカーブから特徴量を抽出し，k-means法によるクラスタリングで正常と不具合を分類する方法である。今回の検討ではセル電流低下不具合の判定を行ったため，不具合の特徴である段付きを検出するよう，特徴量として電流の2階微分の最大値に常用対数をとった値を抽出した。シミュレーションで不具合判定用のクラスタを作成し，そこに実測データを1データのみ加えてクラスタリングすることで不具合判定を行った。実測データを用いた検証の結果，14/14データ判定に成功し，高精度な不具合判定を行うことができた。

7-016

機械学習を用いた太陽光発電システムの混合不具合の推定

◎岩佐太雅・戸谷 颯・大河勇斗（トウキョウアナリティカ）・川崎憲広（東京都立産業技術高等専門学校）・岡本将輝（トウキョウアナリティカ）

太陽光発電システムの不具合は，場合によっては火災等の重大事故を引き起こす可能性があり，原因の早期発見・対処が求められる。先行研究にて，不具合を発生原因から4種の不具合モードに分類し，それらを判別する手法が提案されているが，これらの手法は不具合が単独で発生することが前提であり，混在する不具合を正しく判別できなかった。本研究では，複数の不具合が同時に発生した場合に，「どの不具合が」「どの程度深刻に」発生しているかを推定することを目的とし，シミュレーションによって再現したデータを用いて，機械学習モデルの作成と精度の検証を行なった。結果，不具合の発生と深刻度を測るには十分な精度が示された。

7-017

赤外線カメラによる太陽電池モジュールのバイパス回路の開放故障検出技術 －印加電圧の大きさが故障検出精度に与える影響－

◎千脇伸仁・窪田 洸・西川省吾（日本大学）

太陽電池モジュールの保護回路であるバイパス回路が開放故障するとホットスポットの原因となるため，早期に故障位置を検出する技術の開発を目的としている。筆者らは，これまでストリングに周期性のある電圧を印加し，温度変化を赤外線カメラで観察する方法で，日射に関係なく故障位置の検出が可能な技術を開発してきた。しかしながら，移動する小さな雲の映り込みがある場合はモジュール表面の熱画像に影響を及ぼし，正確な温度変化の把握が困難だった。この課題を解決するため，印加電圧の大きさの影響について調査し，高日射，低日射ともに印加電圧を大きくすることで映り込みの影響を除去し，故障検出が可能になることを確認した。

7-018

太陽電池モジュールに流れる電流を用いたモジュール故障診断

○伊藤憲彦（電力中央研究所）・菅野純弥（東京電力ホールディングス）

太陽光発電所では，飛来物や，自然災害等の影響により，度々，太陽電池モジュールの故障が発生している。故障時の修理や交換を行うため，故障した太陽電池モジュールを特定する必要がある。太陽電池モジュールの故障等を把握するためには，ストリング単位で電流を測定するストリングモニタと呼ばれている計測システムがある。しかしながら，この計測システムは複雑であり，コストアップにつながるため，ほとんど使用されていない。このため，簡便で効率的な故障モジュールの特定方法が望まれていた。本報告では，太陽電池モジュールに流れる電流を計測することでモジュールの故障を判定する方法を提案する。

7-019

キセノンフラッシュ光とキャパシタを用いた100W PVモジュールの劣化原因判別法の検討

◎柿本伸之介・石村真也・倉持汰翔・小川大士・田中正志（茨城大学）・乾 義尚（滋賀県立大学）

本研究では，著者らが開発を行ってきたキセノンフラッシュ光とキャパシタを用いたPVモジュールの劣化診断手法に対し，今まで実用化に向けて検討していた100W PVモジュールに対応した光源に対して照度の非一様性の改善に向けた改良を行い，さらに30Wのモジュールで実証していた劣化原因判別法を100Wのモジュールを用いて有効性を確認した。その結果，ランプ配置の最適化により照度の空間変動量を再検討前の光源の約1/2倍に抑え，フラッシュ照射時のキャパシタ電圧の時間微分値を導入することで100Wのモジュールでも表面の汚れによる劣化を判別できることがわかった。

7-020

PVパネルの方位および傾斜角に自由度を持たせた設置による想定発電量の評価

○田上敬祐（ダイダン）・Haihan YU・藤田吾郎（芝浦工業大学）

カーボンニュートラルを目指すにあたり，再生可能エネルギーを利用した太陽光発電がますます注目を浴びている。本研究ではPVパネルの設置方向や傾斜，過積載率に自由度を持たせ，電気事業者が定めている夏季期間に発電量を増すことを目的に，NEDOが公表している年間時別日射データベースを用いて発電量の試算を行った結果を報告する。東京の7～8月では，傾斜36°はどの方位角においても，傾斜60は方位角45°以上，傾斜90°は方位角70°以上で平均月以上の発電量が期待できる。傾斜36°と60°で過積載した場合，平均年以上の発電量が期待でき，過積載率200%以下では比較的比例関係にあり，費用対効果が期待できる。

7-021

影とクラスタを考慮した地上設置型両面太陽光発電システムのライフサイクルアセスメント

◎高橋沙里・伊藤雅一・重信颯人（福井大学）

両面受光型太陽光発電システム（BiPV）は，モジュールの裏面でも発電が可能なため，発電量の向上が期待されている。BiPVの生産性や経済性については多くの研究がなされているが，環境性能についてはほとんど評価されていない。本報告では，BiPVとMPVの環境適合性を，影とクラスタの影響を考慮した上でエネルギーペイバックタイム（EPBT），CO2排出原単位について評価した。EPBTは約1.6～1.8年となり，どのシステムでも寿命を大幅に下回っていた。またCO2排出原単位は16～22g-CO2eq/kWhとなり，火力発電等と比べ非常に低い結果が得られた。一方で，MPVと比べてBiPVの方がやや大きい結果となったが，異なるアレイ設計のためと考えられるため，様々な構成についても今後検討していく。

7-022

磁場印加型アルカリ水電解における電解液濃度の影響

◎兒玉 学（東京工業大学）

電力から水素を製造する水電解のうち，アルカリ水電解では，電解槽に磁場を印加することで電解効率が向上することが先行研究より明らかとなっている。また，使用する電解液の水酸化カリウム濃度もまた，水電解特性に影響を与えることが，磁場を印加しない研究より知られている。そこで本研究では，磁場印加型アルカリ水電解における電解液濃度が電解特性に与える影響を実験により検討した。その結果，電解効率は磁場を印加しない場合と同様に電解液濃度の増加に伴い増加した。また，生成される酸素ならびに水素気泡の大きさは磁場無しの場合には電解液濃度に依存しないが，磁場を印加する場合には電解液濃度の増加に伴い小さくなることが示された。

7-023

実システムに向けた固体高分子形燃料電池における予防制御手法の適応

◎都築祐人・秋元祐太朗・岡島敬一（筑波大学）

近年，水素エネルギーを用いた社会である水素社会が注目されており，その根幹を担う燃料電池のさらなる普及が必要とされている。そのためには燃料電池を安定稼働しつつ発電効率を向上させることが重要となっている。著者らは，フラッディングやドライアウトなどの不具合の前兆を捉え，事前に制御を行うことで運転全体の水素消費，補機の消費電力を抑え，出力を維持する予防制御手法を検討している。これまでは不具合を模擬した運転に対して制御を行っていた。本稿では，実システムに向けて高効率かつ高出力となる条件下の運転において予防制御手法を適応し，不具合回避について評価を行った。

7-024

プロトン伝導セラミック燃料電池の初期性能低下に伴うDRT波形の変化

◎辻 健太郎・吉川将洋（日本大学）

本研究では，開発中の固体電解質にプロトン伝導体を用いたプロトン伝導型燃料電池（以下PCFC）の高性能化や耐久性向上に向けて，PCFC発電時の性能決定要因であるオーミック損による電圧降下，燃料極及び空気極過電圧に分離評価し，性能劣化要因を特定することを目的とし，抵抗分離式の導出に取り組んでいる。本稿では，PCFCボタンセルを用いて，1000時間耐久試験を行った際における任意の経過時間に得られたEISデータを緩和時間分布（DRT）解析し，DRTスペクトルにどのような変化を及ぼすかについて検討した結果を報告する。

7-025

風車ブレード風切り音のドップラー効果

○佐藤 学・太田延幸（ユカインダストリーズ）・長島久敏（風力エネルギー研究所）・田中元史（産業技術研究所 FREA）・松本 聡（芝浦工業大学）

音響カメラを用いて300kW風車ブレードの風切り音を実測した。その結果，ドップラー効果が観測された。提案した解析モデルによる理論と実測値はよく一致しており，風力発電設備に対する音響診断が有用であることを実証できた。

7-026

小形風力発電機の共振現象における高速フーリエ変換解析結果

◎岩﨑祐翔・細江忠司・池田和樹・雪田和人・七原俊也・後藤泰之（愛知工業大学）

小形風力発電機は，効率良く運用するために需要家の近くに設置することが適当であるが，システム導入に際して様々な問題点が挙げられる。特に直接的な人への影響として騒音や振動の問題がある。小形風力発電機を用いた共振現象特性を調べるために，実験室において試験回路の構築と試験を実施し，共振現象発生時の電圧電流波形，音および振動データの測定を行った。試験にて得られた各出力波形を，高速フーリエ変換（FFT: Fast Fourier Transform）し周波数特性を算出した結果，発電機からの発生音には音の性質の一つである倍音がみられ，その基音は電圧電流波形で最も振幅の大きい周波数の数値と一致することが分かった。

7-027

周辺地域の気象データを用いたLSTMによる短期風力発電出力予測に関する研究

◎藤原真樹・陳 柏同・川﨑章司（明治大学）

脱炭素や脱原子力への取り組みとして再生可能エネルギーの主力電源化が目指されている。本研究ではわが国では普及があまり進んでいない風力発電に着目し，気象に大きく左右され，不確実性が高い風力発電出力の高精度な予測手法の開発を行うことを目的とする。予測対象は鳥取県北栄町に位置する北条砂丘風力発電所とし，その実測データおよび気象庁より入手した北栄町の東西南に位置する市町の風速データを用いる。本稿では発電出力を直接予測する手法1，予測した風速を発電出力へ変換する手法2の2手法による予測をLSTMによって行い，両手法の予測結果に対してMAEおよびRMSEを用いて誤差の比較および検討を行った結果について報告する。

7-028

自然エネルギーによる創電開発に注力を

○木下繁則（IEEJプロフェショナル）

2050年の時点での大気の温度上層を産業革命以前に比べ1.5℃以下にする目標を掲げて各国，各地域で行動が進められている。2015年にパリで開催されたCOP21で具体的な温度上昇値が掲げられ，各国，各地域で温暖化抑制の試みが進められている。地球温暖化の現状を見ると地球温暖化抑制は待ったなしの状況にあり，人類は英知を結集して取り組まなければならない状況にあると言っても過言ではない。そこで，本稿では更なる自然エネルギーからの創電に注力すべきことを提案する。

7-029

太陽光発電の出力変化・原発と電力安定供給

○白川晋吾（IEEJプロフェショナル）

電力・エネルギー分野では分散電源として太陽光発電が大量導入され，火力発電の統廃合新設，カーボンニュートラル（1），新規制基準による原発再稼働，脱炭素化GX（グリ－ントランスフォーメ－ション）等が進行している。本稿では太陽光発電の出力変化，電力需要，電力安定供給，原発動向，電気料金・電力10社の2022年上期収支を包括して述べる。

7-030

風力・太陽光発電設備の事故統計データ

◎山田 怜・山本和男（中部大学）

近年，地球温暖化の進行に伴い温室効果ガス排出低減のための対策が講じられるようになっている。その対策の一つとして温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを用いた発電システムの普及がある。NITE（独立行政法人製品評価技術基盤機構）は製品安全分野，化学物質管理分野，バイオテクノロジー分野，適合性認定分野，国際評価技術本部の5つの分野で構成された機関であり，電気工作物に関する全国の事故情報が一元化されたデータベースを提供している。本稿では，詳報公表システムの風力発電に関するデータをまとめ，整理・考察した結果を報告する。

7-031

再生可能エネルギーによる地域型電力供給の可能性

◎根橋大輔・野呂康宏（工学院大学）

従来，再生可能エネルギーを促進させる動きが活発になっているが必ずしも電力需要エリアと発電箇所が一致するとは限らない。特に日本において東京都を含む関東地方では電力需要が非常に高く，第6次エネルギー基本計画より未来の再生可能エネルギーが発展した電力システムでは東北地方と北海道地方から長距離送電により電力供給を受ける想定がされている。しかし，長距離送電は電力損失が生まれコストもかかり非効率的である。そこで，特に電力需要の高い関東地方において再生可能エネルギーの導入ポテンシャルの高かった太陽光発電（PV）及びこれからの発展が期待されている洋上風力発電（PW）を用いて電力需給が完結するかどうかを検討してみた。

7-032

電力分野のレジリエンス指標によるエネルギーシステムの定量評価手法の検討

◎神場千穂・秋元祐太朗・岡島敬一（筑波大学）

近年，大規模地震や大豪雨などの自然災害が頻発化し，その度に被災地における停電といったエネルギー供給途絶事例が問題となっている。現在，災害時の電力需要は主にディーゼル発電機によって賄われているが低炭素化の観点から災害用の電源についても見直す必要がある。そこで太陽光・蓄電池システムは低炭素かつ災害時でも安定した電力供給を可能とするエネルギーシステムとして導入検討が進んでいる。本研究では，レジリエンスの多面的な特徴を考慮した定量評価を行うために，電気学会の「電力分野のレジリエンス指標 R4：Robustness, Rapidity Redundancy, Resourcefulness」を施設単位のエネルギーシステムの評価項目として適応し，定量かつ時系列のレジリエンス評価を行う。

7-033

再生可能エネルギーとZEV導入に向けた複合的評価手法の検討

◎岡野礼夢・秋元祐太朗・岡島敬一（筑波大学）

近年，電気自動車などゼロエミッション車両（ZEV）の開発・導入が進んでおり，エネルギーの有効利用の観点から，再生可能エネルギー（再エネ）由来の余剰電力をZEVに貯蔵することでエネルギーバッファとしての役割を果たす研究も進んでいる。ただし，再エネ導入にあたって「空間偏在性」や「時間間欠性」といった課題も多く存在しているため，導入地の地域性を考慮したZEVと再エネの併用における検討が必要である。そこで本研究では，送電インフラや地域ごとの電力需要，EVタクシーやEVバスなど導入が期待される交通インフラに関しても考慮し，当該地域における再エネ・ZEV導入可能性に関して順位による複合的な評価を行う。

7-034

首都圏住宅建物設備構成と防災レジリエンスに関する一検討

◎松村拓哉・竹本泰敏（日本工業大学）

持続可能な開発目標にともなって住宅建物においては，ZEH LCCM住宅などの省エネルギー住宅が政府によって提唱されている。これらを背景に，住宅建物において太陽光発電設備などの再生可能エネルギーを用いた創エネルギー設備の導入が増加傾向にある。一方，わが国は，エネルギー資源が乏しくエネルギー自給率が12.1%と低く，他国からの輸入依存度が高い（このため，世界情勢の影響でエネルギー価格が高騰する場合は，家計に大きく影響する。さらに，近年震災や集中豪雨などの激甚災害によりエネルギー供給支障を生じることが増加する傾向にあるため，住宅建物には，災害時にレジリエンス性が求められているそこで，本研究では，住宅建物における創エネルギー設備，蓄エネルギー設備，住宅設備機器などの設備機器構成によるエネルギー自給率向上を数値解析により明らかにするさらに蓄エネルギー設備構成によるエネルギー供給支障に対する防災レジリエンスを評価することを目的とする。

7-035

コンバータを用いない全DC化オフグリッドEV充電器の基礎検討

○井上秀樹（日立製作所）

昨今，半導体をはじめとするサプライチェーンの機能不全が顕在化しており，地政学的リスクの増大とあいまって，対策が急務となっている。本報告では部品点数の多いコンバータを使用せず，単純なスイッチ素子のみで構成するEV向け充電器を提案する。提案方式では，PVから充電器に内蔵する蓄電池にDCのまま疑似的にMPPT充電し，さらにEVへDCのまま充電を行う。電圧の調整は蓄電池の直列段数をスイッチで切り替えることで行う。本報告では，初歩的な概要の検討を行った結果を示す。

7-036

Wavelet変換を用いたDCシリーズアークの電流波形解析の試行 －DC設備における故障アーク検出技術の開発に向けて－

◎西山直希・岩田幹正・横水康伸・兒玉直人・M. S. S. Danish（名古屋大学）

2050年カーボンニュートラルを目指し，再生可能エネルギーを用いた発電の普及が進む中で，直流技術の開発が期待される。一方で，直流電流には交流電流と比べて遮断が困難であり，アークが継続しやすい。直流系統内で負荷に対し直列に発生するDCシリーズアークの検出を行うための取り組みとして，本報告ではアーク発生装置で得られた電流に対し連続Wavelet変換を用いた解析を行った。さらに振幅スカログラムを作成し，時間-周波数特性を示した。また，特定の周波数における時間-振幅特性を調べ，ステップ関数を含む関数の解析結果と比較した。これらの特徴に着目することによりアークの発生を検出できると考えられる。

7-037

直流給配電における電力品質に関する一検討 －特殊巻線構造12相変圧器を用いた場合－

◎田中 蒼・池田和樹・岩﨑祐翔・西谷 強・雪田和人（愛知工業大学）

2050年のカーボンニュートラルの実現のために，2030年において2013年度比から46%の温室効果ガスを削減に向け，本検討では，特殊巻線構造12相変圧器を用いた直流電力が機器に与える影響を把握し，直流電力の品質改善について検討をした。

7-038

RES-based Unbalance Compensator for Single-Phase Railway Power Circuits- Implementation of Co-phase Active Power Transfer Function

◎Chaitanya Kosuru・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

The Indian Railways (IR) traction network adopts single-phase AC circuits, which are supplied by single-phase Traction Sub-Stations (TSS). Consecutive circuits are connected to the different phases of the three-phase utility grid and isolated from each other by the Neutral Sections (NS). Since the traction loading varies with the time and the locations of locomotives, unbalanced loading at the utility grid is observed and would cause a significant power quality problem. The authors have proposed a unbalance compensator, which consists of a back-to-back inverter system with photovoltaic generation (PV) incorporating Steinmetz circuit theory for the reactive power compensation. Further, the proposed control scheme incorporates the co-phase active power transfer function for an effective unbalance regulation. The effectiveness of the proposed compensator is demonstrated by the computer simulation on the Matlab/Simulink environment.

7-039

地域マイクログリッド用50kVA LPガス発電機の開発

○宮本裕介・喜舎場朝士・秋吉亮佑・石橋一成（関電工）

長期間停電時の新しい電源供給形態として，「地域マイクログリッド」が注目を浴びつつある。再生可能エネルギー電源のみでは，継続的な電源供給は困難であるため，一般的には蓄電池を併設することになるが，例えば太陽光発電＋蓄電池システムでは曇天日が続くと電源供給能力が大幅に低下するなどの弱点がある。株式会社関電工は，地域マイクログリッドの課題である長時間・大規模停電発生時に安定して電源供給が可能なLPガスを燃料とする発電システム（以下，LPガス発電機）を開発し，千葉県いすみ市に導入した。本稿では，いすみ市地域マイクログリッドに関する一連の開発の一部としてLPガス発電機について報告する。

7-040

日中のヒートポンプ運転と冷排気を利用した太陽電池の高効率化に関する一考察

◎西村慶太・髙橋将人・山田一心・永井 淳（日本電子専門学校）

FIT制度の買取期間を終えた太陽光発電設備は年々増加し，今後電力の自家消費増加が見込まれる。一方で，太陽電池は温度の上昇により発電効率が低下し，自然冷媒ヒートポンプ給湯器は外気温の低い夜間に運転するため効率が低下する問題が存在する。そこで本研究では，日中にヒートポンプを運転し，その冷排気を太陽電池の冷却に活用する事で得られる効果について述べる。Simulinkを用いて，夏季・中間期・冬季における発電電力量の増加率，及びヒートポンプの消費電力量削減率を評価した。シミュレーションの結果，発電電力量が最大で5.1％増加し，消費電力量は年間を通して約14[%]程度削減出来る事を示せた。

7-041

リチウムイオン電池多孔質電極の解析（Ⅰ） －3極セル方式による高負荷特性の解析－

○河野昭彦・佐藤颯太・藥師寺康平・鈴木勇士・藤田洋司・漆畑広明（金沢工業大学）

本発表では，リチウムイオン電池の高負荷特性を明らかにするため，実際の電池に使用される黒鉛多孔質電極（負極）の単独の1C～10C放電特性を3極セル方式を用いて解析した結果を報告する。電解液中の塩濃度をパラメータに放電特性を解析し，過電圧，容量維持率が液相（電解液）側の影響を強く受けていることを示す。

7-042

リチウムイオン電池多孔質電極の解析（Ⅱ） －正負極応答の2極セルインピーダンスへの寄与の解析－

◎鈴木勇士・河野昭彦・藤田洋司・漆畑広明（金沢工業大学）

本発表では，リチウムイオン電池を正極と負極でインピーダンス解析を行い，各応答の2極セルへの寄与を解析した結果を報告する。インピーダンス解析の後，伝送線モデルを等価回路としたインピーダンスシミュレーションを行い，負極では単独の解析であってもオーバーラップした軌跡を示し，二極セルでは正極細孔内イオン伝導抵抗の応答に負極応答がオーバーラップしていることを示す。

7-043

ハイニッケル系リチウムイオン電池における正極活物質塗工層の高密度化

◎熊谷悠希・安部勇輔・富岡雅弘・熊谷誠治（秋田大学）

Ni含有量の高いLiNi_0.8Co_0.1Mn_0.1O₂（NCM811）は高い比容量を示すため，電気自動車などに用いられる車載リチウムイオン電池の正極材料として注目されている。しかし，車載用途で重要視される出力性能に関して，NCM811は他の三元系正極材料に劣り，その性能改善が要求されている。電極の厚みや活物質目付量は電池の充放電特性に大きな影響を与える。本研究では，正極製造時のプレス圧力を高めて，電極活物質を含む塗工層を高密度化し，NCM811正極のLiイオン脱離挿入特性を評価した。塗工層の高密度化により，NCM811正極の電流密度増加時のLiイオン脱離挿入特性が改善された。

7-044

大気圧高電圧パルス放電によるラミネート型リチウムイオン電池正極活物質の回収

◎大﨑亀太郎・後藤聡汰・武藤翔輝・田中正志・柳平丈志（茨城大学）・平山智士・乾 義尚（滋賀県立大学）

現在，実用化されているリチウムイオン電池のリサイクルプロセスは酸浸出によるものであり，このプロセスでは環境負荷の高い廃水が生じてしまう。この問題を解決するために，筆者らは，大気圧高電圧パルス放電による環境に優しいリチウムイオン電池リサイクルプロセスを提案・検討している。本研究では，大気圧高電圧パルス放電を用いてラミネート型リチウムイオン電池の正極材から黒色の粒子を回収し，回収した黒色の粒子にICP発光分析法による元素分析を行った。そして，粒子がリチウムイオン電池の正極活物質であること確認し，大気圧高電圧パルス放電の利用によりラミネート型リチウムイオン電池の正極材から正極活物質を回収可能であることを確認した。

7-045

電気化学インピーダンス特性を考慮した劣化リチウムイオン電池の温度および電圧過渡応答解析

◎加藤隆太・平山智士・乾 義尚（滋賀県立大学）

リチウムイオン電池は，劣化状態が進行すると発煙・発火といった危険性を持っており，安全性が危ぶまれる。そのため，電池の劣化が発熱挙動に与える影響について十分把握する必要があると考えられる。本研究では，電気化学インピーダンス特性を考慮した電池内部等価回路を作成して電池温度と電圧過渡応答を解析し，実測値との比較を行うことにより解析手法の妥当性を確認すると同時に，電池の劣化が充放電時における発熱量に対して与える影響について検討を行った。結果として，電池温度および電圧過渡応答解析値は実測値と良い精度で一致し，また，劣化度が増加するのに比例して電池の内部抵抗成分における発熱量も大きくなることが確認できた。

7-046

拡散時間分布計測に基づく活物質拡散係数の評価手法の検討

◎曽我篤志・平山智士・乾 義尚（滋賀県立大学）

高エネルギー密度化されたリチウムイオン電池を安全かつ長期間に運用するには，発熱による熱暴走や早期劣化の問題を解決するための電池の状態推定技術が必要とされている。著者らは，電気化学インピーダンスを測定し，低周波領域の拡散インピーダンスに対して，拡散時間分布法を用い，分析を行ってきた。本研究では，低周波領域の拡散インピーダンスを評価する拡散時間分布法に基づき，電気化学モデルの電池解析に用いられる活物質拡散係数の評価を行った。拡散時間分布法により，拡散インピーダンスを正極の活物質由来と負極の活物質由来の成分に分離し，正極の活物質拡散係数は10⁻³の値，負極の活物質拡散係数の値は10⁻⁵の値となった。

7-047

異種活性炭添加による電気二重層キャパシタ電極の劣化抑制

◎遠藤幸太郎・安部勇輔・富岡雅弘・熊谷誠治（秋田大学）

本研究では，電気二重層キャパシタ（EDLC）の長寿命化を目指した。EDLC電極に使用される活性炭が有する細孔より，やや幅の広い細孔を有する異種活性炭を20 mass%添加することで，その細孔内に分解残さを吸着し，絶縁性堆積層の成長を抑制することで，長寿命化を図れるか検証した。主剤活性炭にメソ孔を多く含む異種活性炭を20 mass%添加したEDLC電極のサイクルおよびフロート安定性を評価した。異種活性炭，特にもみ殻から製造したメソ孔主体の活性炭を添加することで，EDLCセルの長寿命化の可能性があることが分かった。

7-048

多重直撃雷を考慮した500kV単体遮断器の耐雷設計に関する検討

◎村北慶輔・山本尚史・横畠系典・加川博明・塚尾茂之（東京電力パワーグリッド）

先行検討により，現状の変電所設計では，波頭峻度の高い直撃雷から500kV遮断器を保護できない可能性が示された。本稿では，第一に，多重直撃雷による遮断器の極間閃絡発生確率の推定結果，当社エリアにおける年間落雷日数の推移を示す。第二に，多重直撃雷に対する設備対策の提案内容，雷サージ解析による対策の有用性検討結果を示す。解析結果から，高性能避雷器を遮断器の近傍に追加設置することにより，電流波高値23kA，波頭長0.2μsの急峻な雷サージに対しても，遮断器の極間に発生する過電圧をJEC規格値2249kV以下に抑制可能となることを示した。検討結果から，多重直撃雷による遮断器極間閃絡防止とし，本対策は有効であると考えられる。

7-049

110～154kV系統の送電線を対象とした2並列気中ギャップの同時フラッシオーバ特性

◎中根龍一・三木 貫・三木 恵（電力中央研究所）

送電線の多相事故は供給支障に至る可能性のある重大な事故である。筆者らは塔頂雷撃時に複数のアークホーン（AH）が同時にフラッシオーバ（FO）する多相FO現象について調査を進めている。これまで，AHを模擬した棒－棒ギャップおよび直列ギャップ付きの送電用避雷装置を組み合わせ，気中ギャップを2つ並列に配置した実験系において，塔頂雷撃時の雷過電圧を模擬したインパルス電圧印加時に2つの気中ギャップが同時FOに至る条件について検討してきた。本稿では，110～154kV系統の送電線で用いられる気中ギャップ長を対象とした同時FO特性について検討を行った。その結果，2つの気中ギャップ間の絶縁格差に応じて，同時FO率が低下または上昇することを実験的に検証した。

7-050

等価回路による雷撃シミュレーションを用いた等電位化の効果検証

○井波伸英・斉藤景一（NTTエナジー）

同一敷地内にある複数の棟間に跨るシステムにおける雷対策として，棟間を連接することによる等電位化が一般的に採用されている。しかしこの雷対策効果について定量的に評価する技術が乏しく，これを評価したものは乏しい。数ある雷撃シミュレーションの中では，等価回路を用いた方法では落雷時に装置に発生する過渡電圧を導くことができる。建物，土壌，配線，装置及び帰還雷撃を等価回路として扱う雷撃シミュレーションにより，当該システム内の装置に発生する過渡電圧を導いた。その結果，この等電位化による雷対策では装置に発生する過渡電圧十分に抑制することはできないことが分かった。

7-051

風車ブレードの保護に向けた避雷塗料に関する研究

◎桶川雄生・全 俊豪・竹内 希（東京工業大学）・鈴木悠也・秋元哲也（武蔵塗料）

風力発電設備における風車ブレードの雷からの保護手法には避雷鉄塔やレセプタ等があるが，完全な保護には至っていない。そこで本研究では，蓄積エネルギー1.6kJの雷インパルス電圧出力に対し必ず絶縁破壊を起こして破損する絶縁物試料を用意し，この表面に塗布することで保護を可能とする2種類の避雷塗料を調査した。一つは導電性塗料であり，放電は塗料内部を通って進展していた。もう一つは表面において導電性粒子同士が間隙を保った非導電性塗料であり，放電は沿面放電のような形で進展していた。また追加実験により，前者はより大電流・高電圧からの保護において，後者はメンテナンス頻度において優位性を持つという結果を得た。

7-052

Proposal of LI Voltage Parameters Calculation Technique using Normalised Two Exponential Functions

○里 周二（宇都宮大学）・清水博幸（日本工業大学）・西村誠介（横浜国立大学）

In the forthcoming IEC 60060-1 ed.4, SI waveform notation is to be defined not by “Tp/t50 impulse” but by “T1/T2 impulse” used with LI. Then exponential impulse parameters, and will be required to realise the impulse time parameters, T1 and T2. Such necessity can be found in measuring system’s performance evaluation: convolution of unit step response and the sum of two exponential functions, e^(-αt)-e^(-βt). Authors propose a new simple algorithm to evaluate precise values for α and β in this paper. The algorithm can be applied to evaluate the parameter values not only for LI but also for conventional SI style Tp/t50 impulse.

7-053

高電圧プローブの複数接続による測定への影響

◎小椋陽介・伊佐治宏子・吉田昌展（中部電力）

電気所の機器開閉に伴って発生するサージのような高電圧・高周波信号を測定する際に，静電容量の小さなプローブを用いて測定するものの少なからず波形に影響を及ぼし，サージ波形を忠実に測定できない場合がある。とりわけ，サージの伝搬特性を測定する場合など，同一の回路上に複数のプローブを接続することが求められる場合には，電気所で発生するサージの実状を正確に把握することを困難にしている。本稿では，高電圧プローブを複数台接続することによる被測定回路の信号への影響を調査し，7種類のプローブにおける評価結果を示した。

7-054

数値解析に基づく海面着雷時における表皮厚さ

◎奥 海聖・池田陽紀（奈良工業高等専門学校）

洋上に落雷すると，雷電流は表皮効果により海面に集中して拡散し，近傍の船舶に被害を与える恐れがある。その対策のために，海水中の電流分布を把握したうえで，効果的な対策を検討する必要がある。表皮効果による導体表面への電流集中度合を表す指標として表皮厚さが定義されその導出式もあるが，媒質が海水であることやサージ電流のような過渡特性を有する電流が想定されておらず，雷サージ解析に適用してよいのかが不明確である。本研究では，数値解析の結果を元に海水の表皮厚さを算出した。その結果，海水中を伝搬する電流が一定周波数の交流であれば既存の表皮厚導出式が適用できることが分かった。一方で，サージ電流の場合の表皮厚さは，着雷点からの距離と経過時間に依存するため，既存式の適用には注意が必要である。

7-055

避雷器処理エネルギーと雷電流波高値に関する一検討

○道下幸志・秋本達郎・横山 茂（静岡大学）・高野浩二・生田昌輝（九州電力）

著者らは，九州で発生した雷事故発生時にJLDN（Japanese Lightning Detection Network）により推定された雷電流波高値の比較を行い，架空地線がある線路に生じる避雷器被害の原因となった雷電流波高値の50%値（137kA）は架空地線がない場合の雷電流の50%値（45kA）と比較して3倍程度大きいことを明らかにした。本報告では，シミュレーションによりこの結果の妥当性を定性的に検討する。

7-056

雷電流処理に伴う配電用避雷器のエネルギー耐量低下を考慮した避雷器耐量超過発生率計算

◎杝 将実・石本和之（電力中央研究所）

我が国の配電線において，雷事故の未然防止を目的に施設されている避雷器や避雷装置は，落雷により処理する雷電流のエネルギーが大きい場合に耐量超過で故障に至る。一方で，故障に至らなかった場合，外観上問題が見られなければ設備の更新は行われていない。避雷器については，雷電流を繰り返し処理することでエネルギー耐量が低下することが指摘されているが，実際の配電線においてこのような事象が発生する頻度については未だ検討がなされていない。本論文では，電力中央研究所で開発した高圧配電線雷事故率計算プログラムを用いて，雷電流の繰り返し処理に伴う避雷器のエネルギー耐量低下が耐量超過事故の発生率に与える影響を評価した。

7-057

風車落雷データを用いた落雷位置標定システム検出精度の検証

◎山香 巧・山本和男（中部大学）

風車は雷被害の増加が問題となっており，風車周辺の落雷状況の把握に各種の落雷位置標定システムが用いられるようになっている。そこで広く利用されているLIDENの捕捉精度を落雷検出装置で観測された風車への落雷データと比較・検証した結果を報告する。また，LIDENで捕捉されたデータと落雷検出装置で計測された最大電流値・電荷量値との関係も調査した。その結果，LIDENの捕捉精度は20％〜40％程度であり，風車周辺の落雷状況だけでなく，風車への落雷の検証に利用するには捕捉精度のさらなる向上が必要となることがわかった。また，落雷の最大電流値及び電荷量値が高い方が捕捉確率も向上することが明らかとなった。

7-058

冬季雷観測を目的とした静電界計測網の構築

○山下幸三（公立小松大学）・藤坂浩史（藤坂技術事務所）・岩崎博之（群馬大学）・皆巳幸也（石川県立大学）

本研究は地上静電界の多点計測による雷電荷量の遠隔推定の簡易化を目的としたものである。2022/2023年冬季，石川県域に約10km間隔で6観測点を構築した。各観測点には，小型化，省電力化した回転型静電界計測器（フィールドミル）および容量性センサー（スローアンテナ）を設置した。本発表では，2022/2023年の冬季雷活動を観測した多点静電界計測の初期結果を報告する。

7-059

落雷エネルギー測定システムの開発

○高野浩二（九州電力）・松井倫弘（フランクリン・ジャパン）・道下幸志（静岡大学）

著者らは，電力設備への雷害対策の検討を目的として，風力発電設備へ落雷する雷電流波形の直接測定や，その周辺での雷電磁界観測による間接測定を実施してきた。その結果，間接測定で得られた電界波形から，精度よく雷電流波形を推定する手法を構築した。そこで得られた知見を基に，雷エネルギーを計算するシステムを開発したので，その概要を紹介する。

7-060

大地伝搬遅れ補正適応後のJLDNによる夏季雷の位置標定誤差

○松井倫弘（フランクリン・ジャパン）・道下幸志・横山 茂（静岡大学）・本庄暢之（ジェイウィンドサービス）

JLDN（Japanese Lightning Detection Network）の位置標定精度は長い間議論されてきた。しかし，その議論の大部分は，冬季に風車から上向きに伸びるリーダを持つ落雷に関連したFast Pulseまたは帰還雷撃についてであった。夏季雷の位置標定精度の議論は，鹿児島県南部の風車への被雷についてのみである。2016年と2021年に，JLDNには大地伝搬遅れ補正が適用され，位置標定精度は改善されたが，それ以後の夏季雷の位置標定精度に関する議論は，ほとんどされていない。そこで，本書では，大地伝搬遅れ補正後にJLDNによって観測された夏季雷の位置標定誤差を評価しその精度について議論する。

7-061

連接接地線を有する送電線路の雷サージ特性

○加藤正平（東洋大学）

送電線路の雷害対策に雷遮蔽として機能する架空地線がある。雷遮蔽と同時に隣接する鉄塔間を電気的に接続することから低周波において接地抵抗の低減にも効果を示す。しかし，鉄塔を結ぶ地表あるいは地下に設ける導体（埋設地線）を含む線路のサージ特性に，埋設地線の位置や大地の固有抵抗，誘電率がどのように影響するか不明なことが多い。そこで数値電磁界解析法を使用して鉄塔雷撃時の電力線電圧を求めて鉄塔雷撃時の雷サージ発生における接地線の影響を調べた。その結果，地表面近くの接地線は，サージ伝搬への影響は小さいが，雷撃鉄塔の初期過電圧の減少効果が認められた。

7-062

伝搬時間を考慮した相互接地抵抗模擬方法

○関岡昇三（湘南工科大学）

接地は定常接地抵抗値で管理されているが，波頭長が急峻な電流に対しては電極間の誘導電圧が発生するのに土中伝搬時間を要する。電磁界解析手法ではこの伝搬時間は自動的に考慮されるが，電気回路論的手法では考慮されることはなかった。本稿では電気回路的手法において接地極間の誘導電圧を取り扱う際に伝搬時間を考慮する手法の提案を行う。

7-063

送電線追従飛行における最適な離隔距離の考察

○岸垣暢浩・太田大介（東京電力ホールディングス）・竹内紀晶・宮島拓郎・齊藤寿幸・白石智規（東京電力パワーグリッド）

筆者らはこれまで電線からの離隔距離を確保しつ，電線の弛度に沿って追従飛行を行いながら電線を撮影する送電線点検用ドローン自律飛行システムを開発してきた。 今回，筆者らの開発した自律飛行システムを適用する機種を新たに追加したことから磁界イミュニティ試験によりコンパスエラーの発生する磁束密度を測定し，電線からの必要な離隔距離を計算により求めるとともに電線追従飛行に最適な離隔距離を検討したので報告する。

7-064

市街地架空地線点検用小型ドローンの開発

◎谷口秦蔵・高橋翔平・富木洋一・太田大介（東京電力ホールディングス）・竹内紀晶・齊藤寿幸・谷口 栄・白石智規（東京電力パワーグリッド）

近年送電線点検へドローンを活用する検討が各所で進められている。一方，市街地をはじめとする送電線の線下に建物が密集する環境での適用は，墜落時のリスクが大きいことが懸念される。 そこで，市街地における架空地線点検にターゲットを絞り，墜落時リスクを軽減した小型ドローンの開発を進めることとした。模擬ウェイト落下衝撃試験による評価などから仕様を検討し，ウェイポイント飛行と追従アシスト機能を組み合わせ，架空地線追従飛行が可能な小型ドローンを開発し，検証飛行から架空地線点検への適用は可能であることを確認した。 機体開発および検証飛行に多大なご尽力をいただいた㈱Liberawareに深謝の意を表します。

7-065

ドローンによる電線自動追跡撮影技術の開発

◎丸目裕樹・山田竜司（中部電力パワーグリッド）・益田尚弥・小川雅弘・深見兼太郎（センシンロボティクス）

従前のドローンの自動点検飛行技術における電線（架空地線，電力線）点検では，電線の弛みに沿った自動飛行により動画撮影を行うが，撮影角度の微調整は手動操作であった。 そこで，ドローンの撮影画像をリアルタイムで解析し，撮影角度を自動制御する「電線自動追跡撮影技術」を開発した。

7-066

66kV変圧器基礎のプレキャスト化

◎大久保 洵・中村直樹・清水博文・吉本正浩（東京電力パワーグリッド）

屋外変電機器の基礎は，現場打ちコンクリートで構築するのが一般的であるが，比較的小規模な配電用変電所での基礎工事においてもコンクリート養生が必要であるため，必要工期が長くなる課題がある。そこで，工期短縮を目的に，とくに工事量の多い66kV変圧器基礎の直接基礎についてプレキャスト化を志向した。開発においては，施工性の検討として，狭隘かつ充電部が近接する変電所構内でのプレキャスト部材の運搬や据付方法について検討した。本稿ではプレキャスト基礎の施工方法の検討結果と，実現場に試験適用した際に得られた工期短縮効果について報告する。

7-067

デジタル技術による送電用洞道の点検効率化

◎梶原 誠・吉本正浩（東京電力パワーグリッド）・藤原孝明（東設土木コンサルタント）

東京電力パワーグリッドは約430kmの送電用洞道を保有しており，目視点検を主体に洞道躯体の維持管理を行っている。老朽化に伴う対策数量の増加や，熟練技術者の不足等も危惧されることから，点検業務の効率化が必須であり，画像撮影とAI検知による洞道の点検効率化を計画している。既往技術と比較し，洞道内にはケーブルが存在するため，ケーブル等が遮蔽物となり適切な画像が得られないという点が大きく異なり，洞道に適した撮影と合成処理方法の実用化が課題であった。一方，取得画像から変状状況の作図，変状程度の判別には多くの時間を要する。これに対しAIを用いた変状自動検知を開発し洞道点検へ適用することで，業務効率化と品質向上を志向した。

7-068

油中ガス分析の時系列データを用いた油入変圧器の異常予兆推定に向けた基礎的検討

○服部俊一・三国康佑・村田博士・本間大成・宮嵜 悟・水谷嘉伸（電力中央研究所）

電力用油入変圧器（以下，変圧器）の内部異常監視のため，これらの内部異常で発生し絶縁油中に溶存するガスを分析する油中ガス分析が行われている。油中ガス分析結果からの内部異常様相診断のために電気協同研究会では保守管理基準を定めており，当所でも機械学習による異常様相判定手法の開発を進めている。一方で，異常様相判定の高精度化だけでなく，異常予兆を推定する手法の開発が必要と考える。変圧器の状態に応じて点検および改修の要否を適切に判断できれば，事故を未然に防ぎつつ設備保全の効率化への貢献が期待できる。本稿では，油中ガス分析結果の時系列データを用いて機械学習により算出した異常への分類確率から，予兆推定手法構築に向けた基礎的検討を行った結果について述べる。

7-069

送電用鉄塔の部材補強における設計耐力に関する検討

○山崎智之・村上慧斗（東京電力パワーグリッド）

近年，電力レジリエンス強化に対する社会的要請を背景とした，新たな荷重設計法の導入や，経年劣化による部材減肉などに対する耐力確保の観点から，鉄塔の建て替えや部材取替によらない部材補強のニーズが高い。鉄塔の部材補強の方法としては，添接材による補強や炭素繊維強化プラスチック等による補強が実用化されている。鉄塔の部材を補強するためには，作用荷重に対して被補強部材の発生軸力を補強部材に分担させることが必要であるが，既設鉄塔の場合，補強工事の施工時において自重や架渉線張力の影響により，既設部材には初期軸力が発生している。部材の補強にあたり，初期軸力の影響を考慮した補強設計が必要となることから，本稿では，既設鉄塔の被補強部材の初期軸力の影響を踏まえた設計耐力の基本的な考え方について述べる。

7-070

自励式電力変換装置におけるCAEを用いた耐震ブレース構造強度設計

◎元林大昂・重満優志・中林重幸（東芝三菱電機産業システム）

近年，長距離・大容量送電に適した高電圧直流送電の利用が拡大している。MMC方式のHVDCシステムは小型変換器モジュールを複数直列接続することで直流電圧を所定電圧まで高くできる一方，タワー構成のため耐震性能が求められる。高圧の電力変換器では，電気的な絶縁が必要なため耐震補強材であるブレースを絶縁材にする必要がある。本稿では絶縁物と金属を組合せたブレースに関して耐震解析および試験により強度評価を実施した。衝撃応答解析結果を基にブレースにかかる最大引張荷重を算出すると131.7kNであった。引張試験でのブレースの破断荷重は140.6kNであり，強度上問題ないことを確認した。また解析で弱いと推定された絶縁材と金属材の接続部で引張試験でも破断しており，CAEによる検討が有効であることを確認した。

7-071

汚損SiRへの注水が絶縁回復特性に及ぼす影響

◎眞淵達也・杉本俊之（山形大学）・市川亮太（東北電力ネットワーク）・増田雅芳・溝江弘樹（東北電力）

電力設備で使用されるシリコーンゴム（SiR）は汚損時の降水等により絶縁性能が低下する。本研究の目的は汚損したSiR表面への注水およびそのタイミングが絶縁回復特性に及ぼす影響を明らかにすることである。汚損からの経過時間が異なるSiR表面に注水を行い，注水時の撥水性の評価と注水前後の絶縁性の評価を行った。汚損直後の注水では絶縁性，撥水性は大きく低下したが，汚損から24時間後における注水の影響は小さかった。注水から充分時間経過後における同様の測定では時間経過による回復特性が見られたが，汚損直後に注水があると回復速度は低下した。SiR表面汚損時の注水による汚損粒子同士の凝集は，回復効果を阻害する可能性があることが示唆された。

7-072

RTV塗布懸垂がいしの汚損耐電圧特性評価

◎大橋亮介・前田元宏（日本ガイシ）

セラミックス製がいしへRTVシリコーンゴムを塗布したがいしは世界各国で適用が拡大しており，CIGRE WG B2.69で各国の架空送電線・変電所での実績，試験方法などがまとめられた技術報告書が2021年6月に発行され，その中で塩霧法にて急速汚損時の懸垂がいしRTV下面塗布の汚損耐電圧向上効果が示されている。しかし，鉄道線等のトンネル内での実績報告は無く，屋外に対し不溶性物質の付着が多く，汚損環境が異なるため効果が不明である。今回，トンネル内の汚損状態も模擬可能な霧中法を用いて，RTV塗布懸垂がいしの耐電圧に及ぼすRTV塗布部の影響を調査したので，その結果を報告する。

7-073

日本海側エリアにおける配電用ポリマーがいしの課電曝露試験 －気象条件に基づく塩分付着量の評価－

◎田中庸介・辻 知耀・八島政史（東北大学）・佐藤智之・渡部卓也（東北電力ネットワーク）

ポリマーがいしは，従来の磁器がいしに比べて耐汚損性能が良好であることなどから，電力流通設備への導入が進んでいるが，外被に高分子材料を使用しているため経年劣化に懸念があり，長期性能を明らかにすることが重要な課題となっている。筆者らはNeural Networkモデルを用いた漏れ電流発生量を予測する手法を提案しているが，一部ケースで予測精度が低下することが課題である。この課題に対して，がいし表面の塩分付着量や撥水性の状態をモデルに組み入れることで，予測精度の向上が図れると期待している。 本稿では，気象条件に基づいたがいし表面のESDDの評価手法について検討を行い，西風による塩分付着と降雨による塩分雨洗を考慮したESDDを評価した。

7-074

過酷環境下によるアルミ配電線の腐食劣化評価

○金本憲明・市場幹之（東京電力ホールディングス）・戸嶋悟志・佐藤正春（東京電力パワーグリッド）

腐食環境の厳しい三宅島において，酸害および塩害環境で6年間暴露試験を行った配電用アルミ電線の腐食状態の調査結果について報告する。導体表面の劣化様相を確認するためにアルミ電線試験体を作成し，6年間暴露試験を行った試験体を調査した。アルミ導体表面の孔食は進展が鈍化していること，およびアルミ被覆のすきま腐食は進展が継続することを確認した。アルミ被覆の消失は鋼芯とアルミ導体の異種金属接触により腐食を加速することから，すきま腐食が電線寿命に影響する腐食形態と推定される。

7-075

架空配電環境での亜鉛系めっき鋼材の腐食速度

○市場幹之・金本憲明・佐藤正春（東京電力ホールディングス）

海岸地域にある架空配電設備の設置環境での溶融亜鉛めっき，溶融亜鉛アルミニウムめっき，および鋼材の腐食試験片について，北海道，千葉県，沖縄県の海岸に面した地域での3年間の暴露試験と促進試験を行い，腐食速度などの得られた知見について報告を行う。千葉，沖縄では溶融亜鉛アルミニウムめっきは溶融亜鉛めっきに対して長期耐久性が期待できる。

7-076

鋼部界面の劣化を考慮した接続管抵抗計算

○磯崎正則（フロントラインアシスト）

直線スリーブは，径間内部で傾いていることから，水の浸入が顕著であると考えられるので，アルミ部界面の劣化に加え，鋼部界面の劣化も考慮した，同長電線抵抗比の計算を行った。同長電線抵抗比は，鋼部界面の劣化が顕著でない時には概ね500％程度であり，劣化が進むほどに2000％程度以上にまでなることを明らかにした。また，鋼界面劣化の経年変化を定率減少と仮定する場合の定式化を提案した。

7-077

塗膜下腐食による鋼管部材の腐食進展メカニズムの推定

○吉野恵一・伊地知弘光・岸垣暢浩・龍岡照久（東京電力ホールディングス）・山戸祐貴・石川健太郎・山崎智之・白石智規（東京電力パワーグリッド）

送電用鉄塔の部材には，一般的に溶融亜鉛めっき処理された鋼材が用いられている。東京電力では，鉄塔建設後，亜鉛腐食速度マップによる亜鉛めっきの減耗予測や現場劣化診断を行い，亜鉛めっきが消失する前に防錆塗装を実施することで鉄塔の健全性維持に努めている。防錆塗装を行う前工程として，部材表面の腐食生成物や海塩等の付着物を除去する素地調整が行われるが，素地調整の品質が塗膜の耐久性に及ぼす影響（寄与率）が50%との報告もあり，不十分な素地調整によって，早期に塗膜下腐食が発生したとみられる事象が一部の鉄塔で確認されている。本報告では塗膜下腐食が発生した鋼管の断面観察を行い，腐食進展メカニズムを推定した。

7-078

IoTを活用した高圧針状波零相電流の計測装置

○武村順三・柿山竜治（中部電気保安協会）・家城 英・永里壮一（メカトラックス）

高圧配電系統は非接地であり地絡電流は数mA～数Aで放電を伴う故障原因の場合，零相電流は正弦波だけでなく周波数の高い針状の波形になる。これまでは針状零相電流を計測するために高価な計測装置で現地に出向きデータの収集をする必要があった。高精度ADCとラズベリーパイを組み合わせて，IoTを活用した針状波零相電流の計測装置を開発している。人工地絡試験により性能検証を行い数百万円の測定器と同等の波形を取得でき，さらにLTE-Cat.4を利用した遠隔監視が可能であることが確認できた。課題はノイズ対策と様々な種類（インピーダンス値）が施設されているZCTに対する最適なマッチング方法の確立であるが，2023年度も人工地絡試験を行って改善をしたい。

7-079

高圧スマートメーターのBルートデータ利活用

武村順三（中部電気保安協会）・須藤久和（中部精機）・○藤岡浩司（大崎電気工業）・松永岳人（ソラコム）

スマートメーターSMは2014年から全国導入され，Aルートデータで遠隔自動検針，Bルートデータで電力データ可視化等エネルギー基盤を支える重要な役割を担っている。また経済産業省の主導のもと次世代SM制度検討会で2022年5月には2025年度から導入される標準機能が公開された。Bルートデータのさらなる利活用に向けて試作器を作り検討した。配電系統では無効電力（進み）の問題が注目されており，配電系統電力損失の問題が懸念される。この実態把握は高価な測定器が必要であったが，今回のシステムは比較的小型安価で長期設置が可能なので，これを有効活用できるようにしたい。また次世代高圧SM向けのデマンド監視システムの開発も進めていきたい。

7-080

非常用発電機等に付属するアナログメータの自動計測に関する試み

○石野隆一（電力中央研究所）・杉本敏文（中部電力）

スマート保安の実現には遠隔地にある既設のアナログメータの自動読み取りも必要となる。屋外，屋内のメータがあるが，本研究では，屋内のメータについて自動読み取りの実証試験をおこなった。屋内では，照明がないため，設備稼働時または計測時には照明が無いことが想定される。そこで，測定時にLED照明を投射するようにし，設備起動時の振動をトリガーにして撮影するシステムを構築した。アナログメータの読み取りについては，画像中のメータの指針は直線成分で構成できるため，直線成分を検出する既存の手法であるハフ変換を使って指針を検出し，指針の傾きから速度や圧力を計測するようにした。約4ヶ月のフィールド試験において自動読み取りが可能なことを確認できたことを報告するものである。

7-081

小型・軽量化した短絡接地器具の実用化

武村順三・鈴木聡志（中部電気保安協会）・○藤川 純・安立昌司（古川電機製作所）

短絡接地器具は停電作業時，労働安全衛生規則第339条により電路へ取付して作業者の安全を守ることが義務付けられている。筆者らはIoT/AI/3Dプリンタ等の新技術を活用して56年前制定の仕様を合理化して，短絡接地器具の小型・軽量化，コストダウン等の実用化したので報告する。高圧需要家受電点の短絡電流分布をAIで解析して仕様の合理化をして熱積分は49%，3φアークエネルギーは41%低減した。電気設備の保安従事者は人材不足であり国を挙げて産官学のスマート保安の検討が進んでいる。女性や年配者に活躍してもらうためには今回実施したような小型・軽量化は益々必要になってきているので現場の意見要望を聴き取って作業改善の取り組みを進めていきたい。

7-082

電気設備の調査・点検作業の安全見守り

武村順三・大嶋 学・○竹林記久代・堀込実文（中部電気保安協会）

電気設備は山頂，離島等あらゆる場所に施設されている。需要家数と電気事故は年々増加しており，電気事故を未然防止するため電気事業法に基づき，電気設備の調査・点検を行っている。遠隔地の調査・点検では周囲に人が少なく連絡の手段が限られ，事故遭遇時に発見遅れ，状況把握や救助に時間がかかる。当管内は中部山岳地帯があるため道迷いや滑落，転倒，急病，疲労，熱中症，蜂刺されや毒蛇，クマ等の野生動物との遭遇リスクが高い。GPSマルチユニットで安全見守りを1年間かけて試行・検証しており，今後これを利用して①熱中症の警報，②転倒/滑落の警報，③過去に災害が発生場所や危険箇所に近づいた場合に警報発報ができないか検討をする。

7-083

人工気候室における心電図モニタリングと熱中症兆候の関連

◎福井あやか・大深元輝・早川聡一郎・池浦良淳（三重大学）・杉本敏文・八尾健一朗（中部電力）

夏場に屋外の作業現場で働く作業員は作業負荷の高い作業では熱中症のリスクがある。本稿の目的は，生体情報に基づいて作業中に作業者の熱中症の前兆現象を捉えることである。夏の高温環境と室温環境を模した人工気候室で心電図のモニタリングを行い，心電図のR波間隔変動のスペクトルの高周波（HF）成分の振幅値の変化と実験協力者の自覚初期症状の調査を行った。WBGT値が小さい室温環境下ではHF振幅値の急上昇と熱中症の前兆現象は確認されず，WBGT値が大きい高温環境下ではHF振幅値の急上昇と熱中症の前兆現象が確認された。今後は様々な条件下で人工気候室での実験を行い，HF振幅値や熱中症の前兆現象との関連の検討を続けていく。

7-084

ポリプロピレン系非架橋絶縁体の特性評価

○三枝哲也・三ツ木伸悟（古河電気工業）

電力ケーブルの絶縁体として主に使用されている架橋ポリエチレン（XLPE）はリサイクル性に困難がある。ポリプロピレンをベースとした非架橋樹脂はXLPEに比べてリサイクルが容易なだけでなく，架橋に関連する工程を省略できるので，炭素排出量の低減にもつながる。また，融点がXLPEよりも高く，より多くの電力を輸送することが可能となる。本研究ではポリプロピレンとエラストマーからなる絶縁性樹脂組成物の各種特性を評価した。このポリプロピレン系非架橋絶縁体は，XLPEと同等のハンドリング特性を維持しつつ，より高温での使用に耐えられる絶縁体として適用できる可能性を示した。

7-085

TR-XLPE絶縁海底ケーブルシステムの開発

◎阿部優樹・榊原広幸・劉 勁・森 大樹（古河電気工業）

洋上風力風車間ケーブル（inter-array）は，島嶼連系線より施工簡易性が求められる。そのため，従来の海底ケーブルに用いられていた鉛被を省略することにより，作業性，耐久性に優れたTR-XLPE（Tree Retardant-XLPE）絶縁体を用いた海底ケーブルおよびシステムを開発し，各種試験を実施したので報告する。今回TR-XLPE絶縁材ケーブルのタイプテストと長期浸水課電試験を実施した結果，各種要求性能を満足し，実線路へ適用できる性能を有することを検証した。また付属品サプライヤーのトレーニングを受け，施工サービスの提供も可能となった。タイプテストと加速劣化試験は第3者機関の認証を取得，今後洋上風力向けのインターアレイケーブルとして貢献できると考える。

7-086

ケーブルの伸び出し量算出式について

○鴨志田博史（無所属）

電力ケーブルの伸び出し量算出式について，新たな算出式を導出したので報告する。

7-087

橋梁部送電容量設計における日射による影響の計算手法の高精度化

◎瀧 文彦（東京電力パワーグリッド）

橋梁添架管路部における送電容量設計において日射による温度上昇は過大に評価されている可能性があることから，路盤の熱容量と日射の変動成分を考慮し，より実態に合った許容電流値を算出する手法を提案するもの。 なお，提案手法での計算値と実測値を比較し，最高温度がほぼ一致していることを評価することにより妥当性を確認している。 本手法により日射の影響を正しく評価できることから，より適切なケーブルサイズの選定が可能になる。

7-088

ホース反転工法を用いたケーブル拘束装置

○岡 滋晃・篠口冴子・中島 陽（東京電力ホールディングス）・岩崎公裕（東京電力パワーグリッド）・井出勇人（エステック）・倉田正博（芦森工業）

車道の直下に埋設されている管路内の地中送電用ケーブルは，走行する車両の進行方向に合わせて移動する。この現象は「波乗り現象」と呼ばれる。波乗り現象を放置するとケーブルの移動量の蓄積が発生し，マンホール内のジョイント部分に過大な負荷が発生することがある。従来，この波乗り現象に対しては，マンホール内に「クリート」と呼ばれる金物を設置しケーブルを拘束して対応していた。しかし，クリートを設置するスペースを確保するためには，マンホールの内空を大きくする必要があり，設置コストが過大となるおそれがあった。そこで今回，管路内でケーブルを拘束できる装置を開発した。

7-089

完全乾式気中終端接続箱77kV実線路適用に向けた性能評価の実施と施工方法の検討

◎井口久美子・山本悟之・岡本 岳（住友電気工業）・真崎秀朗・小川友也・脇本雄平（中部電力パワーグリッド）

66/77kV級CVケーブル用気中終端接続箱は，従来磁器製がい管が適用されており，現地にてがい管内部へのシリコーンオイルの充填が必要であったが，近年開発された完全乾式気中終端接続箱は，エポキシとシリコーンゴムの複合がい管ではこれが不要であり，軽量で施工性・耐震性に優れ需要が増加している。今回77kV用としての形式試験および2019年にJEC-5202「ブッシング」が改訂され新たに追加された「界面と把持金具接合部の試験」を実施し合格した。また，完全乾式EB-Aはスリップオン構造を採用しているため，ケーブル許容曲げ半径を考慮したケーブル差し込み作業が必要であるため，施工方法についても検証を行い問題ないことを確認した。

7-090

直列アーク故障時に発生する電流信号による故障箇所の推定に関する一検討

◎長谷川壮良・中山朝陽・津坂亮博・雪田和人・後藤泰之（愛知工業大学）

直流利用時の安全性向上のために，直流アーク故障を検出する装置の開発が急務である。一般的に，直流回路で直列アークが発生した場合，回路上に高周波ノイズが重畳することが知られている。本検討では，三種類の直流電源を用いてアークを発生させ，そのときのアークノイズを測定した。その結果，スイッチング電源を用いた直流回路とトランス電源装置を用いた直流回路において発生したアークノイズが，太陽光発電装置を用いた直流回路において発生したアークノイズと異なることが明らかとなった。この結果は，アーク故障発生箇所の推定に活用できる可能性を示している。

7-091

直流漏れ電流試験の判定基準に関する一考察

◎袴田将哉・二川和弘（東京電力パワーグリッド）・佐藤英章（関電工）・村田 薫・田澤和俊（矢崎エナジーシステム）

直流漏れ電流試験の判定基準に関する一考察

7-092

遮水層付きCVケーブルの撤去品調査

◎木村祐介・相原靖彦（東京電力ホールディングス）・小山勇人（東京電設サービス）

当社では，遮水層付きCVケーブルの余寿命評価を目的として，経年の古いものを中心に撤去品調査を実施している。まず，遮水層の性能を定量的に評価する指標となる透湿度に着目し，経年17～36年の14サンプルの調査を実施した。合わせて，遮水層の接着力測定・絶縁体の水分量測定・水トリーのスライス調査を行った結果について報告する。

7-093

POFケーブルコア移動の予測分析手法の検討

◎松崎太亮・岩崎公裕・福田 聡（東京電力パワーグリッド）

地中送電に使用されるPOFケーブルは，鋼管にケーブルコア3本を引き入れ，鋼管内を多量の絶縁油で満たした構造であり，最長50年程度使用されている。POFケーブルコアは，主に車道下の埋設管路に布設された地中ケーブルが車の進行方向に移動する波乗り現象や傾斜部による滑落現象などにより鋼管内で移動する。鋼管内でケーブルコアの移動が進展すると，ケーブルの接続部においてケーブルコアが鋼管内部と接触し，絶縁破壊に至る恐れがある。ケーブルコア移動による絶縁破壊事故の未然防止のために，放射線撮影によるPOF接続部のコア移動量点検や，放射線撮影画像の鮮明化による内部状況の確認を行い，改修の判断を行っている。一方で改修対象箇所が増加した場合の改修優先順位を定量的に評価する手法が確立されていない。そこで本稿では，改修優先順位を定量的に評価するために，ケーブルコア移動に関するデータを用いた予測分析を行ったので，その手法について報告する。

7-094

銅化合物付き絶縁紙の絶縁破壊電界の測定結果

◎牧野裕太・髙橋俊裕（電力中央研究所）・永田健一・京極智輝（東京電力パワーグリッド）

OFケーブルの劣化現象として，絶縁紙への硫化銅などの銅化合物の堆積が報告されている。本研究では，これらが絶縁性能に与える影響を検討するため，銅化合物付き絶縁紙の交流および開閉インパルス絶縁破壊電界を測定した。その結果，各絶縁破壊電界は銅化合物の堆積が進展するにつれて低下すること，交流絶縁破壊電界では油圧の影響が確認されたが，開閉インパルス絶縁破壊電界では油圧の影響は明確に確認できなかった。

7-095

超高圧OFケーブル線路部分放電監視システムにおける開閉サージ影響の評価

◎三由 透・相原靖彦（東京電力ホールディングス）・池田裕介・栗原正樹・青木 望（東京電力パワーグリッド）

東京電力パワーグリッド管内で運用している275kV OFケーブル線路においては，部分放電（以下PDと呼ぶ）測定が行われている。PDの検出手法は，接続部のクロスボンド線から高周波変流器を使って，遮蔽層を伝搬するPDを検出するものである。今回，PD測定装置の定期点検において，複数箇所で保護回路故障が確認された。本検討では，この原因を開閉サージによって遮蔽層に流れるサージ電流と推定し，EMTPによるシミュレーションを行い，故障発生箇所における開閉サージ電流を計算した。開閉サージ電流の計算値が故障した回路素子の耐電流値より大きい箇所と，実際の故障発生箇所が一致していることを確認した。

7-096

直流海底ケーブルの鉛被余寿命予測とその対策

○榎本格士・立花浩史（関西電力送配電）

直流海底OFケーブルの揚陸部の渚人孔では，これまで複数回の漏油障害が発生している。この中で，渚人孔内に設置した鉄線鎧装の引留装置端部がケーブル熱伸縮の固定端となり，鉛被歪が大きく鉛被の弱点箇所となることから，対策を講じない場合，今後数年で漏油が再発するとの評価を得ている。また，これまでの漏油補修により，海底側からのケーブル伸縮を吸収するケーブルのオフセット可動域が短くなっており，さらなる漏油補修を想定した場合，固定端での鉛被歪が増長することで補修後の鉛被余寿命が短くなるなど，現状の渚人孔の施工環境下では，従来手法を用いた対応が困難な状況であった。このため，当該ケーブルの適切な維持管理のため，鉛被余寿命を考慮した恒久対策を検討・実施したので報告する。