一般講演

3-121

時系列解析を用いた光硬化性ゲルの細胞毒性評価技術の開発

◎Suhayl Azmin Bin Zulkipli（豊橋技術科学大学）

病気に対するワクチンと薬の有効性は，人間の臨床試験で評価される。人体では評価数を増やすのが困難で，腫瘍の疾患における治療開発が妨げられる。そのため，効率的な治療法の調査には，細胞生体外環境で疾患をシミュレートする実験が有効である。目的の細胞を特定の波長の光照射でゲルを重合させる光硬化で細胞を配置することは，一つの実用的な方法である。しかし，ゲル自体の細胞毒性，光毒性により細胞の損傷または死を引き起こす恐れがあるので，細胞毒性の調査が必要となる。従来法では，硬化プロセスの後，細胞をCalcein-AMやPIの蛍光溶液で染色して，瞬間的な画像から細胞生存率を評価する。この方法を適用することで，細胞観察による経時変化を追うことが難しい。これに対し，本研究ではタイムラプス顕微鏡の使用により，細胞の挙動を長時間かつ容易に観察することで，細胞毒性を調査・解析することを目的とする。

3-122

光駆動方式連続血糖センサの機能評価

◎田崎広都・清水尭之・深町賢人・横式康史・德田 崇（東京工業大学）・柴原卓哉・河浦大悟・工藤寛之（明治大学）

糖尿病患者の血糖測定装置として連続血糖測定器（CGMS）が普及しつつある。現行技術では30~40mm程度のデバイスが実現されているが接触事故等の危険性がある。そこで本研究では電源部分を超小型太陽電池とした光電力伝送技術を用いて，10mm以下のバッテリーレス超小型CGMSセンサの実現を目指している。この間欠駆動型グルコース測定回路の光電力伝送部分では，超小型太陽電池を利用しキャパシタに蓄えた電力を矩形波としてグルコース濃度測定回路へ供給する。グルコース濃度測定回路では電気化学測定で得られる電流値が濃度に対して単調増加するため濃度に相関したキャパシタの放電時間が得られる。測定からグルコース濃度を反映したパルス幅を得ることに成功した。

3-123

光駆動型CGMSセンサの通信部の実現

◎岩崎秀栄・山中風葵・清水尭之・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

糖尿病患者の血糖値の測定方法として，連続血糖測定技術（CGMS）が普及しつつある。我々は審美性，機能性の観点から，光給電技術を用いてバッテリレス化することにより大幅な小型化を目指している。本発表では通信部に関する報告を行う。 0.18µm標準CMOSプロセスによる発振器の試作と評価を行った。設計した発振器はCMOS型LCVCOと整合回路から構成される。測定の結果，1V駆動時の発振周波数は4.69GHz~5.03GHz，電流は平均3.4mAであった。また，汎用のソフトウェア無線システムを受信機として用いて1Mbps，100bitの非同期データ通信を実現した。

3-124

分散型光電気BMIデバイスの実現に向けた0.18μm CMOSチップ設計

◎高松洸佑・衛 亦誠・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

近年，脳神経科学の発展に伴って，研究の中で行われる動物実験の形態も多様化が進んでいる。そこで我々は主に動物実験への応用を想定して，電気刺激・電気計測・光刺激・光計測の4つの機能を持ち，多様な動物と用途に対応できるBMI（Brain Machine Interface）の実現を目指している。 システムは，刺激・計測を行うごく小さいデバイスを脳表面の各所に埋め込み，それらを一本のケーブルで接続し給電と通信を行うことによって実現する。 デバイスの実現には，各機能を担う回路を一枚のCMOSチップ上に集約して搭載することが必要となる。今回，この回路群の設計と評価を行ったので報告する。

3-125

環境光駆動超小型IoTエッジ向けエナジーハーベスティング回路の動作評価

◎吉本海生・竹内瑞希・深町賢人・山中風葵・高松洸佑・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

IoTはSociety5.0の中核を担う重要な概念であり，その中でも非エレクトロニクス物の情報化は課題の一つである。 我々は，太陽電池を用いた超小型の光電力伝送システムによるマイクロIoTエッジデバイスの開発を行っている。従来のシステムでは能動的光照射が必要であるため環境光で駆動可能なシステムの開発が課題であった。 本研究では，電力供給用のキャパシタと判定電圧供給用の2つのキャパシタを搭載した回路を設計した。本回路はスイッチング中に判定電圧が低下しないため，従来回路において低電流時に問題となっていた課題を解決することを狙った。 本回路をTSMC0.35um標準CMOSプロセスで試作し，最低1nAで回路の駆動を確認した。更に太陽電池を用い，環境光駆動にてLEDを光らせることに成功した。今回はそれらの報告を行う。

3-126

マイクロアレイの高感度検出に向けたマイクロアレイ蛍光画像のノイズ補正方法の検討

○宮内祐樹・蓼沼 崇・田口朋之（横河電機）

DNAマイクロアレイ法は，サンプル中の蛍光修飾されたターゲットDNAを，マイクロアレイのDNAプローブとのハイブリダイズ反応により測定する手法である。蛍光画像の画像解析によりDNAプローブスポット部の光量を算出することで，ターゲットDNAの有無の判定や量を測定することができる。検出下限は，スポット部の光量が背景ノイズを上回るターゲットDNA濃度であり，背景ノイズを低減することにより高感度化できる可能性がある。センサノイズ，装置ノイズ，マイクロアレイ基板ノイズの固定パターンノイズの影響を除去する蛍光画像取得方法を提案し，ノイズを補正した画像によるDNAマイクロアレイ検出の高感度化を確認した。

3-127

バイポーラクラーク型酸素電極アレイによる抗生物質の有効性評価

◎白𡈽裕介・薛 安汝・鈴木博章（筑波大学）・木下 学（防衛医科大学校）

細胞工学の進展に伴い，細胞の呼吸活性評価の必要性が高まっており，その指標として溶存酸素濃度は特に有効である。従来，溶存酸素濃度の測定には，内部電解液と試料溶液を隔てる酸素透過膜を有するクラーク型酸素電極が用いられ，その微小化も進められてきた。しかし，多くの試料の同時測定を行う場合，酸素電極のアレイ化には接続端子の増加が問題となる。本研究では，外部機器に接続が不要なバイポーラ電極を用いることで，デバイス上に酸素電極アレイを形成し，電気化学発光による溶存酸素濃度の一括測定を実現した。さらに，このデバイスを用いて，微生物の呼吸活性の一括測定及び抗生物質存在下での呼吸活性の変化の測定を試みた。

3-128

周波数変調信号を用いた誘電泳動における腫瘍細胞のクロスオーバー周波数測定

◎張 晴・加藤英子・八木一平・内田 諭（東京都立大学）・高野雅代・脇坂嘉一・大代京一・円城寺隆治（AFIテクノロジー）

腫瘍細胞を早期検出するため，誘電泳動法（DEP）によるクロスオーバー周波数（COF）計測法に着目した。ヒト白血病T細胞由来のJurkat細胞の懸濁液に周波数変調信号を印加し，独自に開発した細胞追跡プログラムにより単一細胞のCOFを算出した。本手法により，細胞挙動を高精度かつ高速に解析することが可能になった。また，細胞懸濁液の導電率を変化させることで，COF値の平均値および標準偏差が大きく影響されることを示した。本手法により単一細胞の電気特性から細胞種別および生理状態が判別される可能性を示唆した。

3-129

唾液中尿酸計測のためのマウスガード型バイオセンサの開発

◎恩知滉輝・大石琢史・飯谷健太・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

近年，食生活の欧米化や飽食により，高尿酸血症の患者数が増加している。尿酸値は，日内変動を生じ，日間変動も認められているため，連続的な計測を行い，尿酸値の推移を評価できることが望ましい。そこで本研究では，口腔内に着脱可能な唾液中尿酸測定用マウスガード（MG）型バイオセンサを開発した。まず，MG材料上に電極を成膜し，歯列型石膏模型にて吸引成型を行った。その後Bluetooth Low Energy計測送信回路と接続を行い，最後にセンサ感応部にウリカーゼを固定化し，触媒反応により生ずるH2O2を電極での電気化学反応により検出し，酸化電流にて尿酸濃度を測定した。無線計測による人工唾液中の尿酸測定を行ったところ，尿酸濃度に応じた出力増加が確認できた。

3-130

ヒト由来エクソソームの誘電泳動特性の評価

◎中林 龍・髙山理衣・稲葉優文・中野道彦・末廣純也（九州大学）

エクソソームは，細胞から分泌される小胞（直径：30–120nm）の1つで，疾患の有力なバイオマーカーになりうると考えられている。我々はこれまでに，誘電泳動を用いたエクソソームの特性評価として低周波クロスオーバー周波数を測定し，その電気的特性の一部を推定した。本研究では，エクソソームの電気的特性をさらに詳細に調べるために，高周波クロスオーバー周波数について検討した。エクソソームを導電率と浸透圧を調製した溶液に懸濁させ，キャッスルウォール電極上に滴下後，周波数を変化させながら交流電圧を印加した。実験では，ヒト母乳由来，ヒト乳がん細胞由来エクソソームの高周波クロスオーバー周波数の存在を明らかにし，その測定を行った。

3-131

CMOSスマート電極搭載フレキシブル人工視覚デバイスの防水性能向上を目指した作製プロセスの開発

◎潘 愷鴿・萩原隆仁・欧陽鑫垣（奈良先端科学技術大学院大学）・高野拓郎・中野由香梨・寺澤靖雄（ニデック）・竹原浩成・春田牧人（奈良先端科学技術大学院大学）・田代洋行（九州大学）・笹川清隆・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

加齢黄斑変性や網膜色素変性症は視細胞が機能しなくなる病気であり，失明の主な原因の一つである。これら疾患の治療法の一つとして，人工視覚デバイスが注目されている。本研究では脈絡膜上経網膜刺激方式の次世代型人工視覚デバイスとして，CMOSスマート電極アレイを搭載したフレキシブル人工視覚デバイスの作製プロセスを開発した。生体内における安定性の評価として擬似生体環境における防水試験を行い，試作デバイスが正常に動作することを確認した。今後は生体内における試作デバイスの長期安定性を評価し，in vivo実験での電気刺激による視覚の誘発を目指す。

3-132

生体埋植イメージセンサ空間分解能向上にむけた角度選択画素構造の検討

◎鎧 圭吾・杉江謙治・春田牧人・竹原浩成・田代洋行・笹川清隆・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

本研究では，角度選択画素を搭載したレンズレス生体埋植イメージセンサにおいて，画素開口形状による入射角を制限することで，空間分解能の改善を図った。生体埋植CMOSイメージセンサではレンズレス構造とすることによりデバイスを薄型化し，観察対象となる細胞等の近傍への刺入を可能としているが，距離とともに空間分解能が低下する。これに対し，斜め方向からの入射光を選択的に検出し，画像処理を行うことで分解能の改善が可能となる。これまでに入射光の傾きに対する角度制限が実現されていたが，本研究ではセンサ面内方向についても角度制限する構成を検討した。

3-133

電気化学回路により構成されるポテンショスタット

◎牧谷 涼・羽賀勇人・鄧 懿・鈴木博章（筑波大学）

演者らはこれまでバイポーラ電気化学系における電位制御の手法の開発を進めてきた。この過程で，電流を流さないポリマーイオン選択性膜をバイポーラ電極と結合することにより，バイポーラ電極の両極での酸化還元反応を制御できることを示した。ここで用いた手法は，より高度な電気化学回路を構築するための基礎となりうる。本研究では，電気化学回路により構築されるデバイスの一例として，電池を一体化したポテンショスタットを作製した。イオン選択性電極を含む電位制御系の電位差を操作することにより，作用極電位を調節し，電気回路により構成されるポテンショスタットと同様の挙動を示すことを確認した。

3-134

P（VDF/TrFE）を用いたフレキシブル圧電型MEMS超音波センサ

○田中恒久・小森真梨子・宇野真由美（大阪産業技術研究所）

MEMS技術を用いて，ポリイミドフィルム上に圧電型超音波センサ構造を有するフレキシブル超音波センサを開発した。受信特性を評価した結果，基材にシリコン基板を用いて作製した超音波センサと同等の特性を示した。開発したセンサは，配管等の曲面での計測が可能なフレキシブルセンサとしての応用が可能である。今後は本構造を用いた高周波超音波センサアレイの開発を行い，内部探傷センサ等への応用を目指す。

3-135

電界発光デバイス用液体有機発光層の直接塗布法の検討

◎山田悠太朗（法政大学）・水野 潤（国立成功大学）・笠原崇史（法政大学）

電界発光デバイス用液体有機発光層の直接塗布法の検討を報告する。近年，液体有機半導体を発光層とする液体有機ELが報告されている。我々はこれまで，1つの基板上に複数の液体有機ELを集積するために，マイクロ流体有機ELを提案し，電極付きマイクロ流体デバイスの作製技術を確立している。これらの研究では，発光層のパターン形成において，フォトリソグラフィによって作製される流路構造や異種材料接合技術が用いられていた。本研究では，より簡易的な発光層のパターン形成手法を確立するため，ニードル式ディスペンサによる成膜を検討した。2枚の透明電極で発光層を挟み込む簡易液体有機EL素子にてEL発光特性を評価した。その結果，液状ピレン誘導体由来のEL発光を観測できた。

3-136

単一プローブによる非接触力率測定の周囲環境影響の低減

◎吉竹隆也・佐藤 証（電気通信大学）・水戸慎一郎（東京工業高等専門学校）

我々は，接地が不要で原理的に単一プローブで測定可能で，電池やコンセントが不要な電流・力率センサを開発してきた。電流電圧波形をそれぞれカレントトランスとピエゾフィルム用いて測定し，接地なしで力率を測定できたが，電圧波形は浮遊インピーダンスの影響を大きく受けたため位相ずれがあった。フィルムに並列コンデンサを配置することで位相ずれを低減したが，不十分であった。本研究ではフィルムに並列コンデンサを10uFとし，周囲環境の影響のさらなる低減をした。また，容量を増やしたことによりフィルムの出力が小さくなったので，計装アンプの数を増やし増幅率を高くした。

3-137

曲げ押し込み触診用マイクロフィンガーのための接触部突出化設計

◎堀 祐登・小西 聡（立命館大学）

内視鏡手術では知覚情報が制限されるため術者の負担の増加が課題となっている。本研究では術者の触覚支援を行う曲げ押し込み触診用マイクロフィンガーの開発を行っている。本デバイスは圧力印加によるバルーンの膨張力を力変換機構によって変換して曲がり，集積されたひずみセンサによって触診した際に対象の硬さを判別することが可能である。先行研究では弾性体内に埋設された硬さ特異部を検知することに成功した。本研究では触診性能向上が期待できる接触部突出化の検討結果を報告する。突起部はセンサ集積部の変形を妨げないよう設計した。シミュレーションの結果から突起部導入と検出感度を両立可能な設計を確認した。

3-138

金ナノ粒子の三次元アセンブリにおける相乗的動電効果に対する導電率特性の数値検証

○荒井修作・八木一平・内田 諭（東京都立大学）・関 宏範・西川宏之（芝浦工業大学）

動電効果を利用したナノ粒子のアセンブリ手法は，量産化の観点から新たな三次元ナノ構造作成法として注目されている。本報告では，三次元ピット型動電デバイスの解析モデルを作成し，電界解析および粒子挙動解析により，粒子捕集の導電率特性を評価する。導電率が増加すると誘電泳動力が低下し，7.0× 10−3 S/m以上では負の値を示し，粒子がピットから反発する方向に移動した。また，導電率が低下するとPMMA膜に対し垂直方向に電界が生じ，3.0× 10−3 S/m以下では電気泳動によりPMMA膜表面での粒子の堆積が観測された。誘電泳動と電気泳動を相乗的に利用するには，導電率の閾値が存在する可能性が示唆される。

3-139

テトラセン誘導体を用いた緑色マイクロ流体電気化学発光素子

◎羽田祥真・加藤えみり・笠原崇史（法政大学）

本研究では，テトラセン誘導体を用いた緑色マイクロ流体電気化学発光（ECL）素子を試作した。ECL溶液は，緑色蛍光材料で知られているテトラセン誘導体（DPT）および発光補助ドーパントを有機溶媒に溶解させることで調製した。測定に使用したマイクロ流体ECL素子はMEMSプロセス，真空紫外線を用いた直接接合技術により作製した。調製した溶液をマイクロ流体ECL素子で評価したところ，直流電圧4.0V印加時に，目視による明瞭な緑色発光が観測された。DPTのフォトルミネッセンススペクトルと概ね一致するECLスペクトルが得られた。本成果は柔軟性などの固体では実現が困難な機能を持ったディスプレイの創生に期待できる。

3-140

機械的誘導型長周期光ファイバグレーティングにおける線形的な圧力推定手法の検討

◎福井つぐみ・横井秀樹・渡邉良祐・村野倫也（芝浦工業大学）

シングルモードファイバ（Single mode Fiber, SMF）を用いた機械式LPFG（Mechanically induced Long Period Fiber Grating，機械式LPFG）センサの歪み検出の有用性を向上させるために，センサに加圧された圧力を線形的に推定可能にする手法を検討することを目的とする。本研究で用いる機械式LPFGの圧力センサとしての感度特性には荷重依存性が見られ，センシングシステムとしての応用を実現するための課題を示した。そこに材質を併用することで外部要因から応答特性を制御できることが分かった。この着手手段によって線形的な荷重推定を可能にした。

3-141

光吸収体の配置による範囲制御型オプトポレーション方法の開発

◎Bin Mohamad Arshad Muhammad Azim（豊橋技術科学大学）

再生医療では，患者の細胞を体外で機能制御し，体内に移植して機能を回復させる。高い品質管理と細胞の大量生産が必要だが，現在の技術ではその両立は困難である。本研究では，この問題を解決するオプトポレーション法を用いた多層構造デバイスを開発している。この方法では光エネルギー吸収体に㎱パルスレーザを照射し，発生する衝撃波により細胞を穿孔し，核酸を細胞内へ導入し，細胞の機能を制御する。将来的には，ラインスキャン時に均一な処理を目指している。従来では一つの光吸収体から放射状に衝撃波を発生しており，距離依存性により近傍と遠方で結果が異なった。本研究では，パターンを分割配置し，範囲制御型オプトポレーション法を開発した。

3-142

結晶異方性ドライエッチングにおけるマイクロローディング効果

◎岩成 優・横田隆人・横松得滋・神田健介・藤田孝之・前中一介（兵庫県立大学）

結晶異方性ウェットエッチングは幅広く用いられるSiのプロセス技術であるが，我々の研究室ではレシピの調整によってDeep-RIE装置で結晶異方性ドライエッチングが行えることを見いだしており，シリコンへの漏斗型スルーホールの形成や表面テキスチャの生成などに応用してきた。本研究では，結晶異方性ドライエッチングの特性をより良く理解するため，結晶異方性ドライエッチングにおけるマイクロローディング効果（マスク開口面積の縮小に従いエッチング速度が低下する現象）の検証を行った。また，アスペクト比やアンダーカット量の条件に対しても検証を行った。

3-143

露光ギャップを許容する位相シフトマスク

○佐々木 実・田辺悠真（豊田工業大学）

超解像露光技術の1つである位相シフトマスクを活用し，マスクから10μm離れた位置でも幅0.87μmと，通常の白黒マスクで得られる2μmよりも微細なパターンが得られることを明らかにした。

3-144

現場計測に向けた電流印加型土中水分量・電気伝導度センサ用周波数計測システムの開発

◎瀧本壮平・重桝竜希・藤園幹樹・大多哲史・二川雅登（静岡大学）

農業において土壌の水分量・電気伝導度を計測することは重要である。本グループでは従来センサより小型でノイズに強い水分量・電気伝導度センサ実現のために土壌に電流を印加して電圧の過渡特性を検出し，周波数情報に変換する回路を開発している。従来は実験室での計測は可能であったが，現場計測に向けた出力周波数の計測システムが確立していない。本研究では，システムの小型化・自動化に向けてマイコンによる周波数カウンタを設計し，高精度な周波数計測が可能であることを確認した。また，計測システムに組み込んで目標誤差範囲内での土壌等価回路の計測に成功した。そして，モデル土壌の計測を行い，水分量の変化を捉えることに成功した。

3-145

誘電泳動法により捕集されたマイクロプラスチック量の定量評価手法の開発

○山岡英彦・永田晃基（東京都立産業技術研究センター）・舟橋昌哉・八木一平・内田 諭（東京都立大学）

プラスチックごみの海洋流出による生態系・健康への影響が懸念されており，世界中で研究・対策が進められている。その中でプランクトンネットでも採取不可能な約300μm以下のマイクロプラスチック（MP）は，計測技術が確立していないため，流出量の把握さえも困難な状況にある。昨年，我々はMP流出量のモニタリングに必要な濃縮技術および捕集量評価技術の確立を目指し，濃縮手段として誘電泳動法を用いた開発に着手した。本報告では，櫛歯型電極に捕捉したMP群に透過光を照射し，その減衰量を用いてMP捕集量を簡易的に光学検出する評価系を構築し，その妥当性を検証したので，ここに報告する。

3-146

3自由度インチワームの壁面走行

◎高島颯太・鳥井昭宏・元谷 卓・道木加絵（愛知工業大学）

これまでに圧電素子と電磁石を用いたインチワーム型マイクロ移動ロボットを製作してきた。製作したインチワームは多自由度位置決め装置としての応用を目指している。このインチワームは自走可能であり，圧電素子の伸縮による微小動作が可能である。筆者らは微小動作と同時に長距離ストロークの粗動が可能な移動機構の実現を目指している。インチワームはクランプ機構として電磁石を用いており，壁面や曲面磁性材料基板上への動作範囲拡大が可能である。そのため，本稿では動作範囲拡大に伴い壁面走行への応用範囲の拡大を目指し，インチワームの壁面走行について述べる。

3-147

光音響分光を用いた小型・高感度香りセンサ

◎高武直弘・古後健治・宮本 洋・川村邦人（日立製作所）・土橋一浩・山梨良幸・伊藤 誠（日立グローバルライフソリューションズ）

近年，世界的な人手不足を解決するために，製造業ではロボティクス導入による人手作業の自動化・省人化が進められている。人手作業の自動化・省人化には，人の感覚をセンシング（デジタル化）し，その結果を設備機器へフィードバックすることが重要である。視覚と聴覚については，カメラやマイクロフォンの高機能化，AI技術の進展でデジタル化が進んでいる。嗅覚に関しては，酸化物半導体や香り分子を吸着する感応膜と，機械学習を用いた高精度なセンサが提案されている。これらのセンサは化学反応が用いられているため，多種多様な香りを検出できる一方，温度や湿度で吸着膜の反応性が変わるため，環境に応じてセンサ素子と機械学習のパラメータを最適化する必要がある。このため，現場ごとに環境が異なる製造現場には適さない恐れがある。そこで我々は，分光技術として利用されている光音響分光[1]を用いた小型で高感度なセンサの開発を進めている。本報告では，提案する光音響香りセンサの基本構造と，試作プロトを用いた食品腐敗臭の測定結果について報告する。

3-148

エネルギー消費に着目した指曲げ動作の解析

○室山真徳・齋藤翔馬（東北工業大学）

日常動作，スポーツや仕事における指の動作を詳細に知ることで，コツを早く習得することが可能になる。本研究では，カメラなどでは詳細な把握が難しい指の曲げ動作に着目し，動作時のエネルギー消費の観点から解析を行った。指に取り付けた曲げセンサから各指の回転速度を取得し，そこから回転エネルギーを得るモデルを開発した。右手が利き手の被験者が箸およびはさみを左右で操作した際の指の曲げによる消費エネルギーを実験により比較し指ごとの使い方に大きな違いがあることが判明した。特に，ハサミ作業では非利き手の運動エネルギーと作業時間が利き手と比べてそれぞれ38%，41%大きい結果となった。

3-149

無人航空機搭載用障害物探知ミリ波レーダシステムの基礎検討

◎菅沼 周・久保匠矢・小松勝彦・曽根原 誠（信州大学）

無人航空機の自動航行において障害物探知は極めて重要であり，筆者らは山岳地域用の物資輸送用無人航空機向けの，雲霧等の気象条件を考慮しミリ波を用いた障害物探知システムを検討している。このシステムの構築のため，送電線，鉄塔，樹木の3種類の目標に対してレーダ反射強度を測定した。測定結果から，航空法に定められた無人航空機の対人・対物件接近距離の下限である30m以遠にて，送電線と鉄塔によるピークを観測した。樹木に関しては，葉を散らした裸木の初探知距離が30m未満となる可能性が危惧されるも，レーダ強度による障害物探知システムは有効であると考え，システムの構築に向け検討を続けている。

3-150

神経網型センシングシステムを用いた自動車用シートセンサ

◎神谷祐輔・古田彰謙・小川優希・畑 良幸（名城大学）

自動運転車において，緊急時に運転者へ操作の交代を促す際，円滑で連続性のあるやりとりを行うためには，人の着座状態を検知する必要があると考えられる。このため，荷重センサを多数取り付け，荷重の分布や大きさの変化から，人の着座状態を検知するシートセンサ・システムの研究を行っている。本研究では，閾値発火機能によってデータ量の増大を抑制する神経網型センシングシステムを用いてシートセンサ・システムを構築した。また，イベントに応じた集中的センシングとデータ量抑制を両立する動的閾値制御を組み込んだ。人の重心移動にともなったセンサ出力を得ることができ，データ送信頻度を約40%低減することができた。

3-151

ニューラル比較器による傾斜角判別システムの応答時間 －反射光を用いた場合－

○下尾浩正・寺村正広（佐世保工業高等専門学校）

筆者らは，生物の情報処理法を応用したシンプルな構成をとるニューラル比較器を用いた高速判別システムを提案しており，光学系のセンサーと組み合わせた傾斜角判別システムの開発を進めている。傾斜角は，常に鉛直を向く1個の発光素子と，傾斜に応じて傾く平面上の2個の受光素子を用い，傾斜に伴う受光量の差から判別する。これまで，発光素子と受光素子を対面に配置していたが，素子への給電の問題を解消するため，全素子を同一平面上の配置に変更した。システムを試作して実験を行った結果，傾斜角判別可能であった。本報告ではシステムの応答時間の計測結果を示す。実験の結果，約22μsであり，素子の応答時間に大きく影響することがわかった。

3-152

補助電極を用いた航空機用静電リニアセンサの直線性に関する基礎検討

◎萩本雄規・菊池良巳・脇若弘之・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

従来の円筒形差動変圧器LVDTの直線範囲は短いものが大部分であり，円筒形のため形状変化の自由度も少なく，磁場などによる影響を受けやすい。そのため本研究では，差動トランスのコイルの機能をコンデンサで置き換えた静電リニアセンサの研究をしている。コンデンサやセンサ回路の因子による直線性への影響はわかっていないため，JMAGやLTspice等を用いて解析を行った。電極間の対向面以外の電束を低減するため，印加電極の両端に接地された補助電極を配置した場合，解析と実験において直線性は低減した。また印加電極と補助電極間の距離が大きいほど印加電極の端の電束が増加し，直線性は低減した。またセンサ回路のセンサコンデンサ以外のインピーダンスが減少した場合，寄生容量等の影響により直線性は減少した。

3-153

MOSFETのチャネル抵抗を用いたピエゾ抵抗型MEMS圧力センサの試作と評価

◎前澤龍平・小松 聡（東京電機大学）

MOSFETに応力を加えるとチャネル抵抗が変化し，キャリア移動度が変化する。キャリア移動度が変化することによってドレイン電流が変化するため圧力を検出する素子としてMOSFETを用いることができる。本研究ではセンサ部分であるホイートストンブリッジ回路とセンサの出力を増幅させる増幅回路である計装アンプを組み合わせた圧力センサをオンセミコンダクター社0.8μmのCMOSプロセスを用いて試作を行った。シミュレーション結果での感度は，回路図レベルでは15.4mV/kPaであり，寄生抵抗と寄生容量を考慮した場合では8.10mV/kPaであった。今後はチップが届き次第プロセスと測定を行う予定である。

3-154

無線通信信号を用いた近接センサの検討

○清水 聡・長友浩大・新谷一貴・岩井誠人・衣斐信介（同志社大学）・栗原拓哉・芹澤和伸・坂野寿和（国際電気通信基礎技術研究所）

新型コロナウイルスへの対策として，非接触でのセンシング技術が注目されている。我々は，その一つの方法として，アンテナ入力インピーダンスの変化を用いた近接センサを提案してきた。それらの構成では，信号としてCWを用いてきた。本稿では，アンテナ入力インピーダンスの変化を用いる点は維持しつつ，CWの代わりにWi-FiやWi-SUNなどの一般的な無線通信信号を用いた近接センサを新たに開発した。その構成や回路について説明する。

3-155

アンテナ特性の変化を用いたポリプロピレンシートのセンシングの検討

◎栗原拓哉・芹澤和伸・清水 聡・坂野寿和（国際電気通信基礎技術研究所）・長友浩大・新谷一貴・岩井誠人・衣斐信介（同志社大学）

我々はこれまで，アンテナの特性変化を用いた紙厚センシングに関する検討を行っている。本稿では，提案センシング技術の紙以外への活用の可能性を検討するために，ポリプロピレン（PP樹脂）のシートを対象にアンテナ特性の変化を測定し，センシングの実現可能性に関して論じる。

3-156

静電容量型MEMS加速度センサの自動生成

◎佐藤優大・小松 聡（東京電機大学）

従来のMEMS加速度センサの設計ではシミュレーションを使うため，ソフトウェアのライセンス使用料などのコストが必要となっている。しかし本論文では，シミュレーションを用いずに，限定された形状の加速度センサをシンプルなモデルに置き換え，計算モデルから加速度を印加した時の静電容量を算出した。さらにそれを加速度センサのパラメータの自動生成に適用する手法を提案した。提案した自動生成のシステムでは，入力した各パラメータに対して，その制約下で適したパラメータが出力されることを確認できた。今後の展望としては，試作したセンサの実測結果と計算モデルから算出した結果の比較が挙げられる。

3-157

単一パルス信号処理を用いた自己結合型距離速度センサのリアルタイム測定

◎佐藤大輝・水嶋大輔・五島敬史郎・津田紀生（愛知工業大学）

自己結合型センサは，対象物にレーザー光を照射した際，戻り光とLaser Diode（LD）活性層内の光が干渉することにより生じる光ビート信号を利用した干渉計である。自己結合干渉であるため，外部に複雑な光学系を必要とせず低コストに製造可能である。本研究ではLDを三角波変調駆動することで発振波長を線形変化させており，この際に光ビートによって光出力上に生じる信号（Mode Hop Pulse: MHP）の周波数を検出することで対象物までの距離及び対象物までの移動速度を求める。また，本研究では，センサのリアルタイム測定を実現するために，1のみからデータを取得する信号処理法を提案し，更に信号処理を部分的にハードウェア化し，距離速度測定の検証を行った。

3-158

近接した非線形分割リング共振器間の電磁相互作用と共鳴周波数分裂

◎山本翔太・中村颯汰・渡邊啓太・胡桃 聡・鈴木 薫・松田健一（日本大学）

本研究では，バラクタダイオードを用いた非線形分割リング共振器（nSRR）を二層重ねた構造を作製し，その電磁波反射特性を実験的に調べた。nSRRが近接しているときのnSRR間の相互作用には主に①電気双極子的相互作用，②磁気双極子的相互作用の二つが考えられ，これらによって本来nSRRが示す共鳴位置から，共鳴ピークが分裂して高周波側と低周波側に現れることが理論的に指摘されている。本研究では，その共鳴ピークの分裂を観測し，また実際にどのような機構がnSRR間に働いているのかを検討した結果を報告する。

3-159

20成分調合型嗅覚ディスプレイの液滴射出電磁弁の性能評価

◎林 寛人・Dani Prasetyawan・伊関方晶・中本高道・中本高道（東京工業大学）

人に匂いを提示する嗅覚ディスプレイには，提示できる匂いの種類に限りがあるため，用途が限られてしまうというの問題点がある。この問題点を解決するために，20成分調合型嗅覚ディスプレイを開発した。20個の要素臭を任意の比率で調合することで185の精油の香りを再現でき，液滴射出電磁弁から要素臭をSAWデバイスに射出し，霧化させることで匂い提示を行う。調合比率を調整する電磁弁は，駆動時の安定性や吐出の様子から，吐出量に違いがある可能性があるため，嗅覚ディスプレイに使用する電磁弁の1開閉あたりの吐出量を調べた。その結果，1開閉あたりの吐出量が電磁弁ごとに異なることが明らかになり，各電磁弁の吐出量で補正することでより正確な調合が可能になった。

3-160

Odor Reproduction Analysis with Essential Oils and Perfumes

◎Dani Prasetyawan・中本高道（東京工業大学）

The sense of olfaction is one of the primary senses of living organisms. Therefore, it also plays an essential role in daily human life. Nowadays, a wide variety of odorant samples can be obtained. There are pure odorant samples and also odorant samples with chemical compounds (fixatives) to prolong shelf life. However, those fixatives are odorless and cause interference in odorant analysis. Therefore, odorant analysis that can be performed regardless of odorant samples with or without interference by fixatives becomes essential.

3-161

Modified Planar Electrodes with Polyaniline and Atomic Gold to Enhance Butanol Isomers Gas Sensing

◎Anifatul Faricha・Shohei Yoshida・Parthojit Chakraborty・Keisuke Okamoto・Tso-Fu Mark Chang・Masato Sone・Takamichi Nakamoto（Tokyo Institute of Technology）

Biobutanol has great potential as a biofuel due to its higher energy and compatibility to blend with gasoline. Four isomers exist but only three isomers are promising candidates i.e., 1- butanol, isobutanol, and 2-butanol [1]. Isomer compound has exactly the same molecular formula and molar mass. Hence isomer discrimination is challenging. Amperometric gas sensor (AGS), one type of electrochemical sensor, has been massively used in gas measurement due to its good selectivity and commercial availability. However, conventional AGS suffers from volatile electrolytes and bulky experimental setup which is difficult to be integrated into a single chip. In this study, room temperature ionic liquid (RTIL) was used to substitute the conventional aqueous electrolyte. In addition, we developed a tiny planar electrode using interdigitated array electrode (IDA) by modifying its working electrode with polyaniline (PANI) and two atomic gold (Au2) as a catalyst to enhance the gas sensing measurement.

3-162

Factorization Machine Deep Neural Network for transfer binary keyword odor descriptor to continuous value descriptor

○Manuel Aleixandre・中本高道（Tokyo Institute of Technology）

One of the main challenges in odor science is the lack of high-quality data of chemical compounds odor descriptors. Two databases were used in this work, Leffingwell binary odor keywords descriptors (2377 molecules) and DREAM continuous odor descriptors (437 molecules). A Deep Neural Network with Factorization Machine (FM-DNN) to translate from Leffingwell to DREAM data was studied. The trained network was able to predict DREAM odor descriptors with a R2 of 0.895 for the 367 cross-validated molecules common to both databases. This allows to extend the DREAM database from its original 437 molecules to 2377 molecules.

3-163

無電解メッキを用いたメルトブロー不織布SERS基板の開発

◎山本純也（信州大学）

近年の化学分析分野では，機械学習技術の進歩に伴い，多量かつ良質なデータ収集が求められている。そこで表面増強ラマン散乱（SERS）を用いたラマン分光法が注目を集めている。SERS分析の際に用いるSERS基板は既に市販化されているが，製造過程が複雑なことからコストが高く，再現性が低いことから，汎用化への課題を抱えている。そこで我々は，一度に大量生産が可能なメルトブロー法による不織布に，銀の無電解メッキを施すことで，新規SERS基板の開発を行った。また，p-aminobenzenethiolのラマンスペクトルを測定し，市販のSERS基板の測定結果と比較した結果，市販基板と同程度のピーク強度を得られ，高感度を維持したまま簡便，低コストのSERS基板の作製に成功した。

3-164

ザリガニを模倣した水中化学探査ロボット開発 －噴流がもたらす推力の検討－

◎伊藤博斗・木村祐太・石田 寛（東京農工大学）

本研究では，匂いを辿って餌を探すザリガニの探索行動を模倣し，水中の化学物質漏出源を探索する水中ロボットの開発を目指す。ザリガニは口元の顎脚を振って噴流を作り，その結果生じる流れを利用して周囲から嗅覚器官に匂いを引き寄せていると考えられている。一方，ザリガニは歩行の助けとなる推力を得るためにも噴流を利用している可能性がある。そこで，噴流がもたらす推力を求める実験を行った。ザリガニの頭胸甲を模した噴流生成装置から，ザリガニが作る流れ場と同様の流速が得られるように噴流を放出した結果，推力が1.3mNと求められた。実際のザリガニの歩行と比較すると，噴流だけでも十分な加速度が得られる計算となり，噴流がザリガニの歩行の助けにもなっていることが示唆された。

3-165

ガスセンシング用ドローンの開発 －斜面におけるガス巻き上げ効果の検討－

◎長谷川瑠星・吉田佳純・山下恭平（東京農工大学）・松倉 悠（電気通信大学）・石田 寛（東京農工大学）

本研究では，ごみの埋立地で発生するメタンガスの発生量をモニタリングするため，ガスセンシング用ドローンの開発を目指す。クアッドコプタの四つのロータから吹き下ろされる気流同士を地表で衝突させ，中央に一つの上昇気流を作る。この上昇気流で地表付近を漂うガスを巻き上げることにより，クアッドコプタに取り付けたセンサでガスを検出する。今回は，地面が20度傾いている場所でクアッドコプタがホバリングしている状況を想定し，四つのロータをアルミフレームに固定して実験を行った。この程度の傾きであればロータの回転数が等しい状態のまま飛行でき，想定した揚力が得られることをロードセルにより確認した。また，斜面上でも機体の高度までガスを巻き上げて検出できることを示した。

3-166

アルコール代謝評価のための呼気二成分のバイオ蛍光同時イメージング

◎篠原利樹・早川悠暉・飯谷健太・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

本研究では，エタノールとアセトアルデヒドを対象成分とし，可逆酵素であるアルコール脱水素酵素（ADH）を，並列に配置したメッシュに固定化することで各ガスの動画像化が可能なイメージングシステムを構築し，飲酒後のアルコール代謝評価に応用した。本装置ではADHと各ガスが酸化（又は還元）することで増（減）するNADHの蛍光を高感度カメラで捉え，時空間的に変化する各ガス濃度を計測する。本システムの特性評価を行ったところ，飲酒後の呼気中濃度を含む範囲で定量が可能であった。また，被験者による飲酒後呼気を適用したところ，呼気中の両成分の同時イメージングが可能で，被験者のアルコール代謝評価の可能性が示唆された。

3-167

Real-time Monitoring of Transdermal Ethanol Vapor from The Ear Using Bio-fluorometric Sniffer

◎鐘 雪君・鈴木翔太・張 耿・飯谷健太・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

To provide continuous measurement of human transcutaneous ethanol vapor concentration after alcohol consumption, we developed a biochemical gas sensor based on the alcohol dehydrogenase (ADH) catalyzed oxidation reaction of ethanol. A coenzyme nicotinamide adenine dinucleotide (NADH) is the product of this reaction. The developed sensor quantified the ethanol concentration by detecting the increase in the autofluorescence (ex:340 nm, em: 490 nm) intensity from NADH.Comparing the ethanol concentration between breath and external ear canal, we found they have a correlation. Those results suggested that blood ethanol concentration can be evaluated non-invasively on the ear skin surface.

3-168

フェニルボロン酸を用いた味覚センサの糖応答

◎野元大智・王 佳音・趙 澤譽・劉 元昌・木村俊輔・矢田部 塁・小野寺 武・都甲 潔（九州大学）・巫 霄（福岡工業大学）・池崎秀和（インテリジェントセンサーテクノロジー）

無荷電甘味用のセンサ（GL1）は実用化されているが，測定は糖類と脂質高分子膜の直接的な相互作用を利用したものではない。そこで，本研究では，糖類を直接的に測定するため，糖認識物質としてフェニルボロン酸（PBA）を用いた甘味センサの開発を行った。脂質としてTetradodecyl ammonium bromide（TDAB），可塑剤としてDioctyl phenyl-phosphonate（DOPP），支持材としてポリ塩化ビニル（PVC），添加剤として（4-Pentylphenyl）boronic acid（PBA）をテトラヒドロフラン（THF）に溶解させた。その後，溶解した物質をシャーレに流し込み，溶媒を揮発させ，PBA混合膜を作製した。味認識装置（TS-5000Z）を用いて，pH変化におけるPBA混合膜の糖溶液への応答性とpH10緩衝液における糖濃度依存性を調べた。その結果，pH6～9緩衝液では高い応答が得られなかったが，pH10緩衝液ではフルクトースで10mVの応答が得られた。pH10緩衝液では糖濃度依存性があった。

3-169

アルミニウム腐食検出のためのヘテロコア光ファイバセンサの時間応答評価

◎姜 棹元・長尾裕司・渡辺一弘・西山道子（創価大学）

本研究ではアルミニウムの腐食過程をヘテロコア光ファイバ表面プラズモン共鳴（SPR: Surface Plasmon Resonance）センサを利用して測定した。SPRは外界の屈折率変化に鋭敏に反応し，わずかな腐食でも透過光のスペクトルの変化が観測可能と期待できる。本稿では，ヘテロコア光ファイバに，Au，Ta2O5，Alの3層多層膜薄膜を成膜し，光ファイバSPRセンサとして機能させ，腐食する過程の透過光スペクトルの変化を測定した。結果として，センサを海水に浸漬させる時間に応じて，SPRスペクトルのシフトが観測され，波長900nmにおける光損失が海水浸漬時間に比例して変化することを確認した。

3-170

RFスパッタリング導入ガスによるITO薄膜ヘテロコア光ファイバセンサの屈折率感度への影響

◎中村優奈・長尾裕司・渡辺一弘・西山道子（創価大学）

近年，酸化インジウムスズ（ITO: Indium Tin Oxide）は透明電極として多くの産業分野で利用されており，また光ファイバ屈折率センサの感受性膜としても提案されている。しかし，ITO薄膜は，スパッタリング成膜時に酸素欠損が生じることが課題であった。本稿では，ITO（In2O3:SnO2 = 90:10）成膜における高周波（RF: Radio Frequency）マグネトロンスパッタリング導入ガスを，Ar100%と，酸素欠損を補填するためのAr99% + O2 1%の混合ガスの2種類で光ファイバ屈折率センサを試作し，透過光スペクトルを実験的に評価した。結果として，酸素を含む混合ガスを導入ガスとして採用したことで，感度の向上が見られたので報告する。

3-171

pH Sensing using Hetero-Core Optical Fiber Sensor coated with Polymer Multilayer

◎Deepro Banerjee・渡辺一弘・関 篤志・西山道子（創価大学）

A newly developed hetero-core optical fiber pH sensor has been developed using pH sensitive multilayer polymer films. pH monitoring is essential for quality control of areas like agriculture, food and beverage, healthcare etc. Hetero-core optical fiber has several advantageous properties over other optical fiber-based sensor. In this paper we have demonstrated the hetero-core fiber pH sensor coated with alternate layers of Poly Glutamate and Poly-L- Lysine fabricated by the Layer-by-Layer method. This sensor can detect changes in pH values from 5.05-6.51 with a sensitivity of 0.0668 dB/pH when coated with 30 layers of each of the alternating films.

3-172

永久磁石を用いた小型NMRセンサシステムによる水素イオン微小信号検出の実現

◎野村智哉・三浦健太郎・大多哲史・二川雅登（静岡大学）

本研究は，永久磁石を用いた小型NMRセンサシステムによる水素イオン微小信号検出の実現です。磁気を利用した原子固有の挙動を観測する方法であるNMRを用いた現場計測を目指しています。しかし現在，計測に使用している電磁石では大型となり現場計測には不向きです。そこで本研究では，永久磁石を用いた電磁石と同等の磁束密度と高い均一性を持つ構造の設計を行いました。そして，永久磁石を用いて自作したシステムによる水素のNMR信号計測を行いました。

3-173

動く電子回路技術のための両方向屈曲・多自由度モノリシックフィルムロボット

◎大塚 陸・張 詩芸・林 健司・佐々文洋（九州大学）

近年，柔らかい材料で構成されたソフトロボットが注目されている。圧力駆動流体アクチュエータで駆動されたソフトロボットが多く開発されており，これは3Dプリントや組み立て作業が必要となる。そこで，我々はモノリシックプロセスで作製され，組み立て不要・電気信号のみで動く，動く電子回路技術を開発してきた。これは，樹脂製の熱駆動バイモルフアクチュエータフィルムを基板とし，トップダウン的に2次元加工により各種機能層を積層形成することで構成される。本研究では従来一方向にのみ屈曲したアクチュエータフィルムの双方向屈曲を可能とし複雑かつ高い自由度をもった動作を実現した。

3-174

表面修飾表面増強ラマン散乱ガスセンサによるVOCの検知と識別

◎松尾拓哉・陳 林・佐々文洋・林 健司（九州大学）

本研究は，Agナノ粒子型の表面増強ラマン散乱（Surface Enhanced Raman Scattering: SERS）ガスセンサを分子修飾し，多種のVOCガスを識別することを目的とした。 ガラス基板上にAgスパッタでAgナノ粒子を形成し，それを4-アミノチオフェノール，4-メルカプト安息香酸で修飾し表面修飾SERSガスセンサを作製した。そのセンサで4種の類似な分子構造の単体ガスと10種の混合ガスを検知した。測定した14種のガスのラマンスペクトルから，修飾基板のベースラインを減算した差分スペクトルを機械学習で識別した。また，生データのほかに主成分分析（PCA）・線形判別分析（LDA）で特徴抽出したデータの識別を行い，LDAで前処理したデータは他のデータに比べ識別精度が高くなり，高精度識別を達成した。

3-175

2次元LSPRガスセンサを用いた複数ガスの時空間分布の可視化

◎松岡真聖・佐々文洋・林 健司（九州大学）

匂いを可視化する技術は災害現場での人探索や危険物の特定など様々な用途に応用できる可能性がある。こうした嗅覚に代わる技術として現在は半導体ガスセンサなどを用いたガスの測定が行われているが，これらのセンサは応答が遅く，センサの回復時間が遅いなどの問題があり，また空間分布を測定することは難しい。一方で，局在表面プラズモン共鳴（LSPR）を利用したガスセンサはガスの吸脱着などを必要としないためリアルタイムで高速な応答を示し，高速回復が可能なためガスのイメージングや識別を行うことが可能となる。ここではLSPRを利用したセンサ基板とハイパースペクトルカメラを利用して複数ガス（3種類）の時空間分布の可視化に成功した。

3-176

グラフェン/銀ナノワイヤを積層した透明導電膜の作製と光電変換デバイスへの応用

◎赤阪美保・野口雅彦・足立悠輔・小林大造（立命館大学）

曲げや伸縮への耐久性の高い透明導電膜としてグラフェンと銀ナノワイヤを積層させた透明導電膜に注目した。銀ナノワイヤインクの塗布による透明導電膜は導電性に優れているが，デバイス作製のために熱やプラズマを加えると高抵抗化が問題となる。グラフェンと銀ナノワイヤを積層させることで低抵抗なフレキシブル透明導電膜を目指す。1層グラフェンで保護した銀ナノワイヤではスパッタ工程後にダメージにより導通を確認できなかったが，3層グラフェンで保護した場合は330ohmの抵抗値を確認できた。グラフェン／銀ナノワイヤ透明導電膜のセレン薄膜光電変換デバイスへの応用についても述べる。

3-177

セレン薄膜を用いた光発電デバイスの窓層作製条件の検討

◎緒方亮太・髙橋輝樹・足立悠輔・小林大造（立命館大学）

結晶セレン（Se）は可視光領域で高い光吸収係数を有するp形光吸収層として有望な材料である。これまでにTiO2やZnMgOなどのワイドギャップn形窓層とのヘテロ接合による可視光領域での光電変換デバイスが報告されている。関連の先行報告ではこれらのn形窓層は200⁰C以上の基板温度において成膜されている。本稿では低耐熱なポリマー基板上へのデバイス応用を視野に入れて，基板温度を含めたTiO2窓層の作製条件とデバイス光電変換性能の関係を調べた。基板温度を350℃から150℃と変化して作製したTiO2窓層を用いて結晶セレン光電変換デバイスの性能変化を調べ，基板温度150⁰Cの場合でもTiO2/Seヘテロ接合デバイスで疑似太陽光照射時の光電変換効率が平均で3.1%が得られた。

3-178

誘電泳動インピーダンス計測法によるマイクロプラスチック数量測定デバイスの検討

◎舟橋昌哉・内田 諭・八木一平（東京都立大学）・山岡英彦・永田晃基（東京都立産業技術研究センター）

近年，水域におけるマイクロプラスチックの増加が懸念されているが，モニタリング技術が身確立であることが課題となっている。そこで我々は微粒子の制御に適した誘電泳動を用いたマイクロプラスチックの捕集および数量調査を行うデバイスの開発を目指す。本報告では，捕集デバイス断面図の等価回路を作製し，インピーダンスおよび位相を導出し，周波数特性分析器を用いて測定した実験値と比較および検討を行った。その結果，粒子捕集量増加に従いインピーダンスおよび位相が減少する傾向の一致が確認され，誘電泳動を用いた数量測定デバイスの開発可能性が示唆された。

3-179

MEMS圧電薄膜による飛翔デバイスの試作

◎田中雄樹・神田健介・前中一介（兵庫県立大学）

現在，飛行ロボットの小型化研究として，数cmオーダーで110-120mWの消費電力で実現した例がある。更に小型化することで，配管内などの狭所でのガスの発生源探査センサ等として利用できるため，今後も更なる小型化が期待されている。そこで，本研究ではMEMS圧電薄膜を用いて，数mmオーダーのMEMS圧電薄膜による飛行ロボットの作製を試みた。しかし実際の昆虫の羽ばたき運動は，羽の変形も含めた複雑な機構である為，本研究ではまず，羽状のMEMS圧電薄膜素子を作製し，素子の動作を羽の駆動に着目して評価した。

3-180

超小型モータ用ボンドレス厚膜磁石

◎堀川 誉・曽我部泰地・山下昂洋・柳井武志・中野正基（長崎大学）

我々は，形状を鑑みた磁石の動作点を考慮して，大きな異方性磁界（保磁力）を有するPr2Fe14B相に着目し，小型モータ用として，ボンドを必要としない0.25mm厚Pr-Fe-B系厚膜磁石をPLD（Pulsed laser Deposition）法を用い開発してきた。更に，その磁石を搭載した3mm径を切る小型ステッピングモータの動作も確認した。 本研究では，（1）Pr-Fe-B系厚膜磁石の「磁気特性の温度依存性」や「機械的性質」に対する改善を鑑みたNd-Fe-B系，ならびに（2）次世代の硬磁性相として期待されるSm1Fe12相（3）に着目したSm-Fe系といった各厚膜磁石をPLD法により作製し，既報のPr-Fe-B系厚膜磁石と比較検討した。

3-181

無人航空機着陸誘導のためのミリ波レーダ追尾フィルタの検討

◎久保匠矢・菅沼 周・小松勝彦・曽根原 誠（信州大学）

筆者らはミリ波レーダを用いた無人航空機の着陸誘導システムを研究しているが，複数の誤検出が発生する場合が確認されている。そのため，本稿では目標に与える移動コマンドに着目して不要な目標を除去するフィルタについて提案する。 着陸誘導成功時のデータにノイズを想定したダミーデータを加え，元データとフィルタ処理実行後のデータを比較し，フィルタを評価した。フィルタは現在位置と移動コマンドから推定された移動範囲内に収まっている物標を採用する。 評価の結果複数物標検出時において，元データともほぼ一致していることが確認された一方で，移動距離が長いほどフィルタ幅が大きくなり誤検出する可能性が高くなるため，今後より精度の高い着陸誘導アルゴリズムを検討する。

3-182

40個のカンチレバーを用いた高集積触覚センサ

◎細川陽史・川﨑雄記・安部 隆（新潟大学）・野間春生（立命館大学）・寒川雅之（新潟大学）

本研究ではカンチレバー型MEMS触覚センサに関して検知素子の数を40個に増やし，直径4mmと7mmの2周に渡って環状に並べることで検出範囲の広範囲化および高集積化を行った。人間の指先の触覚受容器の密度は最大で140個/cm²とされているため，今回設計したセンサはそれに倣い約100本/cm²以上の密度となるようカンチレバーを配置した。垂直・せん断力印加実験を行い，カンチレバー上のひずみゲージの抵抗変化を測定したところ，接触点検知型センサと比較すると感度は下がっているが，十分な検知が可能であることが確認できた。