一般講演

2-001

酸無水物硬化剤の差異が高温下のエポキシ樹脂含浸ツイストペアのPDIVに与える影響

◎池之俣諒央・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

加工性や電気絶縁性などの観点から絶縁材料として，高分子絶縁材料であるエポキシ（EP）樹脂が広く用いられる。一般的に電力機器は高温に晒される場合が多く，この場合，絶縁材料であるEP樹脂も高温となり，絶縁劣化等の問題が生じる可能性がある（1）。本研究では硬化剤の差異が高温下における部分放電特性に与える影響を調査するため，各種酸無水物硬化剤を用いて含侵したツイストペア試料のサージ電圧下における部分放電開始電圧（Surge-PDIV）を測定したので報告する。

2-002

絶対湿度がCIGRE Method-Ⅱ型絶縁体-微小空隙-金属電極系の部分放電開始電圧に与える影響

○斉藤修平・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

CIGRE Method-Ⅱ電極系（CM-Ⅱ型）絶縁体-微小空隙-金属（IGM）電極系を用いて，絶対湿度が交流電圧下における部分放電開始電圧（AC-PDIV）のpd積依存性に与える影響を調査した。大気圧下においては絶対湿度がAC-PDIVに与える影響は小さいが，pd績が小さくなると絶対湿度の差が空隙のAC-PDIVに与える影響が徐々に大きくなった。絶対湿度が高いほどO2－負イオンあるいはO2（H2O）m－クラスタ負イオンが増加し，初期電子発生確率が上昇したためと考えられる。以上より低気圧下においてAC-PDIVは絶対湿度の影響を受け，空隙のAC-PDIVがパッシェン電圧以下においても部分放電が発生する可能性があることがわかった。

2-003

ケーブル終端接続部等価回路を用いた部分放電波形の復元

◎竹田彼方・吉川敢大・川島朋裕・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）

高度経済成長期に大量導入された電力ケーブルの劣化が増加すると共に，終端接続部における劣化現象も顕在化している。保守や診断を目的とした部分放電（PD）計測が頻繁に行われている。しかし，放電点から計測点に至る電気回路が複雑な伝達関数をもたらすため，放電波形そのものを観測できない。放電点におけるPD波形は放電空間における電荷挙動を反映する。放電電荷量の正確な較正を行い，各種模擬欠陥の部分放電波形と照合することで欠陥の状況を把握できると考えた。本研究では終端接続部を対象としたモデルを構築した。モデルの伝達関数を等価回路による計算取得し，逆畳込み処理により放電点におけるPD波形を復元した。

2-004

長期課電による模擬ボイドにおける部分放電の電荷量-位相特性と発光分布の変化

○青木裕介・竹内勇貴・榊原天翔・飯田和生・梅村時博（三重大学）・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・伊藤大貴・中前哲夫・大山公治・前田照彦・尾崎多文（東芝産業機器システム）

高電圧機器における絶縁劣化原因として，絶縁システムにおける樹脂あるいは樹脂複合体内部での欠陥由来の部分放電が原因となることが知られている。欠陥を含む電極/樹脂/電極系において透明電極を利用することで放電領域を可視化して，q-Φ-n特性との相関が調べられている。本研究では，密閉ボイドおよび開放ボイドを模擬した試料構造における長期課電時のq-f-n特性およびボイド内部の放電領域の変化を調べることで，長期課電時の絶縁体の劣化状態の変化の把握を試みた結果を報告する。

2-005

部分放電波形の時系列特徴量解析による放電空間の状態推定

◎山田拓海・川島朋裕・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）

電圧絶縁系の劣化要因の一つである電気トリーは，部分放電（PD）を伴った局所的な劣化現象である。一般的な絶縁材料であるエポキシ樹脂（EP）に無機フィラーを添加したコンポジット材料が開発されており，耐トリーイング特性の向上が認められている。フィラーと電気トリーイング現象の関係は，PD特性の観点から調査されてきた。しかし，従来の共振型の検出器で計測されるPD波形は，放電の大きさを反映した特定の周波数成分の強度と等価な値を反映しているに過ぎないため，劣化の情報を反映した本来の放電波形の特徴量を定量的に読み取ることが困難であった。本研究では，時系列解析したPD波形の特徴量から放電空間の状態を考察した。

2-006

60kV級CVケーブルにおける水トリーのモデル化 －ボウタイトリーに対する等価回路モデルによる交流損失電流の評価－

◎山田文斗・木榑 翼・八島政史（東北大学）

筆者らの60kV級撤去CVケーブルに対する水トリー劣化状態調査から，架橋ポリエチレン（XLPE）絶縁層内に無数のボウタイトリーが存在する例があることを報告している。筆者らは電界モデルを用いてボウタイトリーに対する交流損失電流の評価を試みているが，XLPEの絶縁厚に比してボウタイトリーの寸法が小さい場合，解析が不安定となることを経験している。本稿では実ケーブルで観察されたボウタイトリーを念頭に，等価回路モデルを作成して交流損失電流評価を行った。ボウタイトリーの長さと太さを変化させた場合の交流損失電流を算出した結果，筆者らの電界モデルによる解析結果と定性的に整合することが確認できた。今後はCVケーブルの3次元構造を考慮した等価回路モデルの3次元化に取り組む予定である。

2-007

温度が複合層試料の界面付近におけるトリー開始電圧に与える影響

◎角南昴恭・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）・塩田裕基・門脇和丈（三菱電機）

電力機器の長期絶縁破壊の要因の一つに電気トリー現象がある。実際の電力機器や電力ケーブルの絶縁にはコストや製法上の理由から複合絶縁系が用いられることが多く（1），その界面が電気的弱点となることが懸念される。筆者らは界面に対して垂直および断面方向から連続的にトリーイング特性を観測できるシステム（2）を開発し，室温におけるトリー開始電圧は界面の接着強度等により決定されていることなどを報告した。今回は，界面付近のトリーイング特性を更に把握するため，異なる温度下において複合層界面付近で発生するトリーのトリー開始電圧を測定したので報告する。

2-008

教師なし学習を用いた電気トリーイング画像の分類

◎汐崎悠大・井堀春生・全 現九（愛媛大学）

高電界下に置かれた高分子絶縁材料中を進展する電気トリーイング現象に関する研究は古くから行われており，膨大なデータが蓄積されている。我々も種々の条件下で得られたトリーイング画像を数多く所有しているが，これらのデータを機械学習を用いて分類・判断させることによってトリーの進展予測に繋げたいと考えている。今回はクラスタリングによってトリー画像の分類を行ったところ，有意性のある結果が得られたためこれを報告する。

2-009

フェーズフィールド・シミュレーションにおける電気トリー形状のパラメータ依存性に関する研究

◎立花友也・弓達新治・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

電気トリーイング現象は，高分子絶縁材料の主要な絶縁破壊現象であり，絶縁破壊した樹枝状の絶縁破壊路のことを電気トリーという。近年，電気トリーのシミュレーションは，破壊現象を相変化とみなし，相の自由エネルギーに基づき電気トリーの形成をシミュレーションする方法が開発されている。本研究では，フェーズフィールド法を用いたシミュレーションにおけるトリーの導電率を変化させたときのトリー形状の違いなどを調べた。このときトリーの導電率は，誘電率の上昇で疑似的に再現した。結果から誘電率が高くなるほどトリー先端の電界集中がより高くなり分岐が多くより広がっていることが確認できた。

2-010

シリコーンゲル中に発生した電気トリーの進展距離と放電発光量との関係

石坂太志・汐崎悠大・竹本光輝・全 現九・○井堀春生（愛媛大学）

固体絶縁材料の劣化現象の1つとして知られている電気トリーに関する研究は古くからなされているが，いまだ不明な点も多い。我々がパールチェーン型トリーと名付けた電気トリーは，シリコーンゲルなどのゲル中において枝状のトリーとバブル状のトリーが交互に進展する興味深い現象であり，このトリーの進展機構の解明が固体中の電気トリーの解明にもつながると考えている。しかしながら電気トリー現象は微細で複雑な現象であることから，トリーの進展と関連付けられる物理量の定量測定が非常に難しい。 そこで我々は，放電時の発光現象に注目し，局所的な放電発光像を時系列的に測定することでトリー管内での発光量を相対的に見積もり，その値とトリーの進展との関係について検討することを試みた。その結果を報告する。

2-011

シリコーンゲル中の電気トリーの画像処理解析

◎加藤 豊・村上祐一・村本裕二（名城大学）

シリコーンゲルは，パワーモジュールの封止剤として幅広い分野で用いられている。その使用の際に，局所的な高電界下でゲル中に電気トリーが発生し，進展と収縮を繰り返す。そのトリー発生機構は複雑であり，いまだ不明な点が多い。本研究では，ゲル中に交流ステップ電圧を印加してトリー進展の様子を撮影した動画を画像化して，針電極先端からトリーの最大長さを画像処理により観測した。その結果，電圧印加と遮断時でのトリー長が著しく変化することや電圧遮断後，トリー長が緩やかに短くなることがわかり，さらに撮影動画を，画像処理解析することでトリー進展の様子の特徴を捉えることが可能となった。

2-012

エポキシ/窒化ホウ素コンポジット試料の空間電荷特性

◎濵田直峰・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

コスト低減の要求からこれまでのセラミックスに変わる放熱性コンポジット絶縁材料の開発が行われている。この種のコンポジット材料においては充填剤とペース樹脂の界面が電気的弱点となる可能性があることが報告されている。一方，直流電界下において空間電荷が蓄積し，その空間電荷が各種絶縁性能に影響を及ぼすことが知られている。本研究では，放熱性コンポジット絶縁材料であるエポキシ（EP）/窒化ホウ素（BN）コンポジット絶縁材料の基礎電気特性を把握するため，パルス静電応力（PEA）法を用いてEP/BNコンポジット材料の空間電荷分布を測定したので報告する。

2-013

空間電荷顕微鏡による界面電荷形成過程の観察

◎安田かな・李 暁欣・川島朋裕・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）

電力ケーブルなど直流高電圧で駆動する機器においては，絶縁体内に蓄積する空間電荷が問題であり，局所電界の変歪が絶縁性能の低下を招く。一般に絶縁設計は空間電荷を形成していない状態を仮定して実施されているため，実際の電界分布が絶縁設計電界との相違を知ることは絶縁性能評価において重要である。空間電荷測定は，通常フィルム状の試料を用いた一次元測定となっている。しかし，今後は複雑な構造をもった絶縁系の空間電荷測定が必要となる。そこで，筆者らは高分子基板の上に絶縁系を置き，パルス静電応力法と集束型の超音波振動子を用いた空間電荷顕微鏡を検討した。本研究は，空間電荷顕微鏡を用いて，界面電荷形成過程を観察した。

2-014

積層形成されたアクリル樹脂の印加電界10kV/mm以下の空間電荷特性

◎犬塚通子（豊田工業高等専門学校）

3Dプリンタで積層して電気絶縁部材を成形する場合，材料内部に積層界面を生じる。これまでに筆者らは，光造形式3Dプリンタを用いて，積層方向の異なるアクリルエラストマーシートを作製し，これらの空間電荷特性について調査してきている。これまでにエラストマーの積層界面が印加電界に対して垂直になる場合に，陽極付近に正電荷が蓄積されやすいことを示唆する結果が得られている。 絶縁材料が異なる場合でもこの現象が確認されるか調べることを目的として，10kV/mm以下の電界印加時における積層形成されたアクリル樹脂の空間電荷特性について調査したので報告する。

2-015

陽子線照射過程による電荷蓄積挙動の調査

◎森田尚斗・上田 薫・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）

近年アメリカのALTEMIS計画をはじめとする月や惑星探査が世界的に注目されており，これらに使用される宇宙機は地球磁気圏外での運用となる。そのため絶縁材料に陽子線が照射されたことによる帯・放電現象を把握することは非常に重要である。本研究ではPEA法を用いた陽子線照射中の空間電荷分布測定を，照射フルエンスが一定となるように条件を変更して測定し，各照射フラックスによる電荷蓄積過程について調査・比較する。 FEPを用いて高フラックス・短時間，低フラックス・長時間で照射を行った。その結果，高フラックス照射と低フラックス照射で照射中において正電荷の蓄積挙動に違いが見られた。

2-016

低密度ポリエチレンの空間電荷蓄積挙動の金属酸化物添加量依存性

◎長瀧優人・矢野太一・弓達新治・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

ナノフィラーを添加したLDPEでは，直流高電圧印加時の空間電荷蓄積が抑制されることが知られている。しかしそのメカニズムは未だ明らかになっていない。一方，我々はLDPEの空間電荷挙動の再現に成功している。本研究ではLDPEに酸化第二鉄を0~0.5wt%の範囲で添加し，実験結果とシミュレーションを比較することで物性値の変化を推定する。まず0.05wt%の試料ではLDPEとほぼ同じ結果になったが，フィラー濃度を増加させていくことで試料内の空間電荷密度は低下していった。しかし一定以上フィラー濃度を増加させることで電流値は上昇した。よってフィラー添加により電荷の移動度が上昇すると考えられる。実験結果より物性値を推定しシミュレーションをおこなった。

2-017

コロナ放電により直流電界下の高分子シートに注入された空間電荷と電流の過渡応答

◎加地貴登・弓達新治・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

高分子における高電界伝導機構は複雑で不明な点が多い。そこで我々は，任意の電荷群を高分子シートに注入できるように針とメッシュと平板からなる三電極型コロナ帯電装置を製作した。今回は，針対メッシュ電極間の電位差を大きくした時に高分子シート内に注入される電荷群に起因する過渡電流と空間電荷分布の時間変化を観察した。その結果としては空気中での正極性の場合，電荷注入直後に電流は上昇し，その後指数関数的に減少し，30秒後にはおおよそ元の値に戻った。また注入電荷分布の時間変化を観察したところ，30秒後には消滅し注入直前の基準状態に戻った。この結果から，電流減衰の時定数と空間電荷挙動はおよそ対応していることが考えられる。

2-018

6.6kV用CVケーブルの空間電荷分布と直流漏れ電流の同時測定

○門脇一則・加地貴登・伊藤伸弥・弓達新治・尾崎良太郎（愛媛大学）

CVケーブル内の空間電荷と漏れ電流との関係を詳しく調べることを目的として両者の同時測定装置を構築した。これを用いて6.6kV用CVケーブルに直流高電圧を印加した場合の測定結果を紹介している。ケーブルの絶縁層をアルミニウム製クランプで挟み込んだ状態のもと高温下でDC20kVを印加した。架橋剤分解残渣を含むCVケーブルに直流高電圧を印加すると，絶縁層内で空間電荷が蓄積される。この時の漏れ電流は時間と共に減少せず，ある時間に極大値を取ることが報告されている。今回の同時測定結果では，両極近傍でヘテロ空間電荷の蓄積が確認されたものの，電流波形は極値を有さずに時間と共に減少する傾向を示した。当日は極性効果についても言及する。

2-019

Miller-Abrahams モデルを用いた低密度ポリエチレンの移動度の電場依存性の検討

◎金光泰輝（愛媛大学）・大野 玲・飯野裕明（東京工業大学）・弓達新治・尾崎良太郎・門脇一則（愛媛大学）

低密度ポリエチレンは，高電界領域において，移動度の負の電場依存性を仮定するとパケット状空間電荷が再現できることが報告されている。しかし，移動度の負の電場依存性のメカニズムは明らかになっていない。本研究では，どのようなエネルギー状態をもつ材料が負の電場依存性を示すのかを調べるため，Miller-Abrahams方程式を用いてモンテカルロシミュレーションを行い，移動度の電場依存性を解析した。ポリエチレンの移動度は低電界領域で正の電場依存性を示した。電界の増加により障壁が下がり，電界方向へのホッピング確率が大きくなるためである。高電界領域では負の電界依存性を示した。電界を大きくしてもホッピング確率が上がらず，電荷の速度が飽和したと考えられる。

2-020

金属/絶縁ポリマー界面のバンドアラインメントに対する双極子モーメントの影響

◎片瀬大祐・鈴木遥登・好永るり佳・小林正起・熊田亜紀子・佐藤正寛（東京大学）

電力機器や電子デバイスの劣化を引き起こす，金属から絶縁ポリマーへの電荷注入現象を解明するため，金属/絶縁ポリマー界面の電子準位接続（バンドアラインメント）を明らかにする必要がある。我々はX線光電子分光法（XPS）と第一原理計算を組み合わせたバンドアラインメントの調査手法を提案し，Auと無極性ポリマーであるポリプロピレン（PP）との界面およびAuと極性ポリマーであるポリイミド（PI）との界面のバンドアラインメントを解明した。その結果，ポリマーの極性の有無によらず，金属/絶縁ポリマー界面では両者の真空準位が一致するようにバンド構造が決定される可能性が示唆された。

2-021

非晶質金属への電気絶縁性DLCコーティング

◎桒山創太・平栗健二（東京電機大学）・桑原大樹・安中 茂（仲代金属）・林 俊郎（エムスリー・コンサルティング）

近年，カーボンニュートラルへ向けた目標から電子機器の省エネルギー要求が高まり，基幹部品であるモータなどの小型軽量化および高機能化の開発需要が高い。そこで，本研究ではモータの構成部品であるヨークの小型低損失化に着目した。 本実験では，ヨーク材料である非晶質金属に極めて薄い電気絶縁層としてDLC薄膜を成膜した。DLC薄膜の電気絶縁層としての性能を評価するため，DLC/α-Metalの電気特性の測定を行った。DLC薄膜は，既存の電気絶縁層よりも約1/10の薄さであった。さらに，電気絶縁性は，小型電子部品の使用耐圧に対して十分な値を有していた。 実験結果より，DLC薄膜をヨークの電気絶縁層として適用することで電子部品の小型化に寄与できることが示唆された。

2-022

h-BNの粒子配向が金属と静電吸着法を用いた放熱性tpPI/h-BNコンポジット材料間の密着強度に与える影響

◎一場悠仁・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

静電吸着法を用いた放熱性熱可塑性ポリイミド（tpPI）/配向六方晶窒化ホウ素（h-BN）コンポジット電気絶縁材料において，h-BNの粒子配向が基板との密着強度に与える影響について調査を行った。高分子電荷質を用いてtpPI（D50:11μm）とh-BN（45μm）の表面電荷の極性が相反するよう調整し静電吸着させた後，遠心力等を用いてh-BNを配向させ，ホットプレスすることで試料を作製した。銅基板に試料を熱圧着し，プリンカップ試験を実施した。結果として，h-BNを試料厚さ方向に対し平行になるよう配向させた試料のせん断方向の平均最大荷重は他の試料と比べ高くなる傾向を示した。銅基板と試料の接合面において，銅基板に対して垂直に配向したh-BNがアンカーとして作用した為と考えられる。

2-023

窒化アルミニウム絶縁基板材料の電気的特性に与える焼成時間の影響

○奥村大吾・濵砂享平・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・長見知史・山本光一（トクヤマ）

本研究の目的は，パワーモジュール用絶縁基板開発の指針確立への貢献である。これまで，我々はパワーモジュール用絶縁基板材料として広く用いられているAlNについて室温から450℃までの高温領域における誘電特性について調査してきた。そこで，本論文では，室温から450℃までの高温領域におけるAlN試料の誘電特性および絶縁特性に及ぼす焼成時間の影響について調査した結果を報告する。その結果，焼成時間が増加するに伴い絶縁性能が優れることがわかった。また，インピーダンスプロットを行うことで，バルクにおける各部のイオン伝導の抵抗値を明確化することができ，焼成時間が増加するほど粒内および粒界における抵抗値が高くなることがわかった。

2-024

EOL条件における二次電子放出係数の計測と酸化劣化の影響

◎劔持祥星・天水皐輔・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）

宇宙機の材料選定では帯放電を考慮する必要があり，本研究では二次電子放出係数に着目し軌道上で衛星運用後の状況を考慮し負荷処理を施した後の衛星材料のSEEY変化について研究を行っている。近年，環境負荷照射とSEEYを測定する設備が異なることから生じる大気暴露がSEEYに与える影響について検証が必要となっている。本報告ではGEO 9年運用時相当の電子線を照射したポリイミドを用い大気の有無によるSEEYの変化を調査した。劣化照射後に真空保持した状態でのSEEYは上昇するが劣化後大気暴露をする事で未劣化と同様のSEEY値に回復する傾向が得られた。この結果からSEEY評価を正確に行うには真空保持した測定となると考えられる。今後，再現性の取得とともに，定量的な劣化評価を提案していく。

2-025

時間領域核磁気共鳴による高分子の架橋度推定

○大木義路・平井直志（早稲田大学）・岡田漱平（千代田テクノル）

原子力関連を含む，如何なる産業においても，エネルギー供給，電力輸送，機器の運転や制御，状態監視，情報伝送などを支える電力は，最も重要な基幹インフラストラクチャーであろう。有機高分子は，この電力を伝えるケーブル類や電位差を保持する絶縁を担う最も普遍的な材料の一つである。したがって，新規な高分子絶縁材料の研究開発や多くの電力機器などで絶縁に使われている高分子材料の状態監視などのために，機器分析や計測が行われている。本報では，汎用されていない手法として，時間領域核磁気共鳴（TD-NMR）を用いて難燃エチレンプロピレンジエンゴムの架橋度を計測した結果を報告する。

2-026

摩擦帯電型ナノ発電機における誘電体表面のマイクロ構造による高効率化

◎山崎 匠・髙嶋晴也・Kosumsupamala Kunpisit・関 宏範・Puttaraksa Nitipon・西川宏之（芝浦工業大学）

近年さまざまなエネルギーハーベスタの使用が増加している。そこで機械的エネルギーを効率よく電気に変換する摩擦帯電型ナノ発電機（TENG）が注目されている。そしてTENG表面のマイクロ加工は電圧出力を向上させることが報告されている。誘電体表面に様々なマイクロ構造を作製し，異なる誘電体の接触・分離時の電圧出力を評価することを本研究の目的とする。PMMA上にPBWによって円形，三角，四角の異なるパターンのマイクロ構造を作製し，もう一つの誘電体としてPTFE，電極として銅板を使用し，ソレノイドで接触・分離させて電圧を計測した。その結果，誘電体表面のマイクロ構造により電圧出力が向上し，異なる形状のマイクロ構造間で出力の有意な差異が見いだされた。

2-027

フィラー分散状態のSEM画像処理・解析のコラボ企画ダイジェスト

○栗本宗明（名古屋大学）・小迫雅裕（九州工業大学）・今井隆浩（東芝インフラシテムズ）

本企画は，ポリマーコンポジット絶縁材料（硬化物）の電子顕微鏡画像データを企画参加者に事前に配布し，その画像処理・解析結果を学会の場で発表，評価結果がどの程度違うかを議論し，参加者の画像処理・解析アルゴリズムの改良に活かすことを目的とするコラボ企画である。第1回を電気学会誘電絶縁材料研究会（2022年12月16日）で開催し，名古屋大学と九州工業大学が参加した。本稿では，コラボ企画で発表した結果のダイジェストと得られた知見の一部を紹介する。

2-028

エステル油中不平等電界におけるインパルス放電に及ぼす溶存水の影響

◎本田修隆・中村勝海・宮城克徳・花岡良一（金沢工業大学）

近年では，変圧器について環境面の配慮が議論されており，油入電気機器についても非化石資源の活用が検討されている。その中で，現行の鉱油の代替絶縁油としてエステル油が期待されている。本研究では，絶縁油中の不平等電界における正極性および負極性雷インパルス特性に及ぼす溶存水の影響を調査した。その結果，エステル油と鉱油で発光開始から全路破壊に至る放電挙動に鉱油とエステル油で違いが見られたので，その結果を報告する。結果からは鉱油およびPFAEともに，正極性では負極性の約半分の電圧で全路破壊に至ることがわかった。また，エステル油では%RS（相対水分飽和度）が高いほど，印加電圧に対して進展長が大きくなる傾向が見られた。

2-029

3種の生分解性エステル油の絶縁破壊特性の温度依存性

◎岡本空大・濵砂享平・小迫雅裕・匹田政幸・土江基夫（九州工業大学）・Maharana Mrutyunjay（Xi'an Jiaotong University）・Olmo Cristian（University of Cantabria）

最近では，持続可能な社会実現のため，優れた絶縁耐力と高い生分解性を有する環境に優しいエステル油系絶縁油の関心が高まっている。これまでの筆者らの一部は，絶縁破壊電圧（以下BDVと称す）の温度依存性に焦点を当て，油の温度のみを変化させて特性の把握を行ってきた。そこでの調査では温度が上がるにつれて相対的な水分量が増加したことがBDV値の変化に影響しているとして検討している。本論文では，生分解性エステル油の高い水分量の条件でBDVの温度依存性を検討した。

2-030

窒素ファインバブル付加がパームヤシ脂肪酸エステルの密度と動粘度に及ぼす影響

○高村紀充・荒岡信隆・藤村仁大・花井正広（福岡大学）

油入変圧器用の電気絶縁油には，高い絶縁性能と冷却性能が求められている。パームヤシ脂肪酸エステル（PFAE）は，鉱油に比べて一部の性能が低いため，著者らはPFAEの性能向上を目的として，これまでに窒素ファインバブル（FB）の付加による影響を調査してきた。本稿では，冷却性能に関わる密度と動粘度への影響について調査した。その結果，窒素FBの付加時間の増加に伴い，密度と動粘度がわずかに低下する傾向が確認でき，冷却性能が高くなる可能性が示唆された。

2-031

せん断方式ファインバブル付加装置による紫外線硬化エポキシ樹脂中の気泡径分布

○荒岡信隆・高村紀充・土谷和輝・花井正広（福岡大学）

固体絶縁物の絶縁特性向上のブレークスルー技術としてナノコンポジット絶縁材料の開発が進められており，著者らはファインバブル（直径100µm未満の微細気泡。以下，FB）を付加したエポキシ樹脂の研究を行っている。本論文ではエポキシ樹脂中にFBを付加できるFB付加装置を開発し，これによりエポキシ樹脂中に付加した気泡について，動的光散乱法を用いた多検体ナノ粒子径測定システムにより気泡径分布を測定した。その結果，主に直径が約60～300nmの気泡が観測された。一方，真空脱泡のみを行ったエポキシ樹脂では検出可能な量の気泡が存在せずに測定できなかった。今後は本装置を用いた試料の絶縁破壊特性を調査していく。

2-032

脂環式エポキシ樹脂の絶縁破壊強度に及ぼすカーボンブラック少量添加の影響

◎篠﨑圭祐・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

脂環式エポキシ樹脂は，低粘度，高耐熱性，耐候性，透明性，ハロゲンフリーなどに特長がある。その用途は電子部品のポッティング封止，高電圧電子機器の絶縁封止材やUV硬化塗料等が主であるが，今後はLED封止材や光硬化用途での展開も期待されている（1, 2）。一方，黒色顔料としてカーボンブラック（CB）が良く用いられているが，その少量添加による電気絶縁特性は未解明である。そこで本報では，脂環式エポキシ樹脂にCBを少量添加した複合材料を作製し，その絶縁破壊強度におけるCB添加の影響を評価した結果を報告する。

2-033

直流GISコーン型絶縁スペーサにおける表面帯電分布の測定および進展過程の検討

◎十二綱輝・嶋川 肇・佐藤正寛・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）・安岡孝倫・保科好一・椎木元晴（東芝エネルギーシステムズ）

直流ガス絶縁開閉装置（DC-GIS）では，導体を支持する絶縁スペーサに表面帯電が発生し，絶縁性能が低下する問題が報告されている。これまでにスペーサ表面の帯電測定が行われてきたが，帯電機構の定量的な評価には至っていない。そこで，本研究では帯電電荷の供給源・輸送経路の解明を目指し，新たに実機形状に近いコーン型モデルスペーサについて帯電測定を行った。得られた帯電分布では凹凸両面に電極と同極性の帯電が生じた一方で，帯電の進展過程は凸面と凹面で異なった。さらに帯電電荷の供給源・輸送経路について検討を行い，スペーサ表面のトラップを介した電荷輸送による非線形な電荷蓄積過程を考慮する必要が示唆された。

2-034

ナノコンポジットエナメル線ツイストペアの繰り返しインパルス電圧印加における絶縁破壊寿命特性の検討

◎児玉翔太・善田優希・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

本論文では，寿命試験が長時間にわたるナノコンポジット材料の寿命予測を目的として，部分放電開始電圧に近い低電圧領域におけるnBA/PIツイストペアにおける絶縁破壊寿命t_ℓについて，PI皮膜厚dを40mmから23.5mmに減少させ，さらに繰り返し周波数f_rを10kHzから50kHzに加速させた場合について，実験検討を行った。V_a = 1.5kVでは，最大10倍の差があるものの，寿命t_ℓについて周波数加速等価性があるといえる。一方，Va=1.7kVでは，50kHzの換算寿命t_ℓは10kHzのt_ℓより，すべて短くなっている。この結果は，f_rにより部分放電発生特性とそれに伴うPI皮膜厚減耗量が異なっていることを示唆している。

2-035

Analysis of Surface Degradation Layer on Silicone Rubber

◎May Thin Khaing・Kosei Yoshimura・Tatsuya Sakoda（University of Miyazaki）・Shigehiko Goto・Tomikazu Anjiki・Tomoki Chiba・Yasunori Kasuga（Toshiba Energy Systems & Solutions）

To investigate the degradation characteristics owing to the natural factors, it is necessary to collect a lot of aged specimens. However, it is difficult to collect aged SiR insulators used for more than several decades. Therefore, we tried to fabricate an artificial degradation layer, which is similar to ones obtained from actual fields. In this study, considering natural factors, the degradation layer on the SiR surface was fabricated by red clay, UV ray irradiation and surface heating. The characteristics of the artificially degraded specimens and actually aged specimens were evaluated by using SEM and ATR-FTIR.

2-036

誘電体表面加工を施した摩擦帯電型センサのフレキシブル化に関する研究

◎高嶋晴也・山﨑 匠・Kosumsupamala Kunpisit・関 宏範・Puttaraksa Nitipon・西川宏之（芝浦工業大学）

私たちの生活を向上させる為にセンサの需要が拡大している。摩擦帯電型ナノ発電機（TENG）は機械エネルギーを電気エネルギーに変換するの技術であり，セルフパワータッチセンサに応用することができる。また，誘電体表面を加工することでセンサのパフォーマンスを向上させることが報告されている。本研究ではフレキシブルな銅テープを電極とした摩擦帯電型センサを作製し，集束陽子線描画装置（PBW）により誘電体表面にマイクロ加工を施し，出力の向上を図ることである。PMMA上にピット構造を作製し，もう一方の誘電体をPTFEとし垂直方向に接触と分離を繰り返し電圧を測定した。その結果，誘電体表面を加工することで電圧出力が向上した。

2-037

陽子線描画による誘電体マイクロ構造の作製とフォトニックナノジェットの形成

◎戸邉惠斗・Kunpisit Kosumsupamala・Nitipon Puttaraksa・関 宏範・西川宏之（芝浦工業大学）・辻 諒比路・瀬谷大也・松井龍之介（三重大学）

環境中のナノスケールの粒子を可視化する技術として超解像技術があり，その一つとしてフォトニックナノジェット（PNJ）がある。円柱状の誘電体アレイ構造をポジ型レジストであるPMMA上にPBWによってガラス基板上に作製し，PNJの観察を目的とする。ガラス基板上にドーナツ状パターンを10×10のマトリクス状に照射した。PMMAはポジ型レジストであるため，照射部分が現像によって溶解し，円柱状の誘電体のアレイ構造が形成され，直径1.4mmの円柱構造の場合，約1割程度のパターンが倒壊したのに対して，直径2.4mmの場合は，すべてのパターンが残存した。この原因は，基板と接する面積の違いに起因しており，PMMAとガラス基板の密着性を向上させる必要がある。

2-038

光学特性と機械学習を用いた絶縁樹脂の機械的強度推定方法の検討

○長 広明・高田翔平・藤井祐樹・中村勇介・山崎顕一・竹内美和（東芝インフラシステムズ）

電力機器の経年化が進んでおり，突発的な故障による停電のリスクが懸念されている。電力機器においては各種の絶縁材料が使用されるが，この絶縁材料は構造的な強度部材としても用いられることが多く，絶縁性能に加えて機械的強度も重要な性能の一つである。一方で，機械的強度の評価には破壊試験が必要であり，実器の状態を評価することは一般的には困難であるが，機械的強度を非破壊で評価する試みが報告されている。本報では，非破壊で測定可能な特性を用いて，絶縁樹脂の機械的強度を推定する試みを行った結果を報告する。

2-039

補助リレー銀メッキ接点の塩化銀皮膜生成・固着メカニズムの推定

◎伊東孝晃・山中淳平（東京電力ホールディングス）

近年経年劣化に伴い制御用の補助リレー銀メッキ接点に関する動作不具合が発生している。接点の不具合は様々ではあるが，一般的に皮膜が生じることによる導通不良が知られている。しかしながら，本事象では銀メッキ接点に塩化銀皮膜が生じることによりリレー接点が固着する不具合が生じていた。 本論文では補助リレーを分解調査し，塩化銀皮膜の生成と固着のメカニズムについて推定した。 塩化銀の生成には塩素が必要であるがどこから発生したのか疑問が残った。そこで，密閉型のリレーケース内部で使用していたポリ塩化ビニル（以下PVC）のケーブル被覆に着目した。劣化具合を確認するためFT－IRにてPVCケーブル被覆の分析を実施したところC-Cl由来の吸収に減少が見られた。このことから，常時通電により熱が発生しておりPVCケーブル被覆劣化の進行により微量の塩素が離脱していき，かつ密閉されたリレーケース内で塩化銀を生成したものと示唆された。 塩化銀は絶縁体であるが今回の事象では導通不良ではなく固着であった。導通していたのは発生塩素が少ないことや常時接点しており接触部には厚い被膜ができなかったためと推察される。また，固着の要因としては接点中心のすき間に向かい反応が進み，上下接点が塩化銀で接着したものと推察される。

2-040

PLA樹脂製短絡防止治具の塑性変形原因調査

武村順三・○堀込実文・竹林記久代（中部電気保安協会）・黄 彦韜・安井晋示（名古屋工業大学）

3Dプリンタを用い植物由来ポリ乳酸樹脂PLAで治具や部品を試作して研究開発のスピードアップ，軽量化等を図りつつ，耐久性や実用化課題等の知見を収集している。2022年4月から151枚の短絡防止治具を試行検証しているが9カ月経過時で3件の塑性変形が発生した。PLAは電気的特性に優れているが機械的特性の維持等で課題があり世界中で研究がなされているが，塑性変形事例報告は少ない。化学分析装置でフィラメント状のPLA樹脂から3Dプリンタで成形した短絡防止治具の材料と塑性変形品の基礎的な調査を実施した。治具の塑性変形原因は成形時における残留応力と考えているが，今回の化学分析で他の原因を消去することができた。より詳しく調査を進めたい。

2-041

静電吸着法で作製したtpPI/hBNコンポジット材料のQ（t）法による絶縁特性の測定

◎佐藤佑介・川島朋裕・穂積直裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

エレクトロニクス機器等の小型化に伴い，使用される電気絶縁材料には耐圧特性や高熱伝導性などの特性の向上が求められている。この要求に対して，電気絶縁性かつ高熱伝導性を示す充填材と高分子材料からなる放熱性コンポジット電気絶縁材料の開発が行われている。筆者らは，高放熱特性と許容できる電気的特性をもつコンポジット材料を開発するため，静電吸着法を用いて熱可塑性ポリイミド（tpPI）/配向六方晶窒化ホウ素（hBN）コンポジット材料を作製し，hBNの鱗片面を試料の厚さ方向に対して水平に配向させたCMP試料の方が，垂直に配向させたCMV試料よりも劇的に熱伝導率が高くなることなどを報告してきた。今回は，更にhBNの配向方向が異なるtpPI/hBNコンポジット材料の絶縁特性を把握するため，tpPI/hBNコンポジット材料の絶縁特性を電流積分電荷（Q（t））法を用いて測定したので報告する。

2-042

繰り返し台形波電圧印加時のPPフィルムのQ（t）変化

○福間眞澄（松江工業高等専門学校）・関口洋逸（住友電気工業）

絶縁材料の電気伝導の測定に電流積分電荷法を利用したQ（t）メータが利用されている。ここでは，Q（t）測定時に，印加電圧を繰り返し試料に印加した場合に，Q（t）が徐々に変化し，安定になる場合があることがわかったので，その現象について調査を行った。本報告では，ポリプロピレン（PP）フィルムについて，繰り返し台形波電圧印加時のQ（t）の変化と空間電荷分布を測定し，関連性に調査を行ったのでその結果を報告する。

2-043

Q（t）メータによるエポキシ樹脂の繰り返し課電による劣化診断

○藤井雅之・三浦 聖・篠原 匠（大島商船高等専門学校）・福間眞澄（松江工業高等専門学校）・光本真一（豊田工業高等専門学校）

絶縁材料の劣化が進行すると絶縁破壊に対するリスクが高まり，電力の安定供給が脅かされたり，機器が故障したりすることになる。また，絶縁材料は高温不平等電界下で使用されることも考えられ，劣化診断の精度向上には様々な条件で劣化情報の収集が必要である。本研究では，繰り返し課電による劣化情報の収集を目的としており，Q（t）メータを用いて高温不平等電界下において直流電圧5kVを繰り返し課電することにより，エポキシ樹脂の劣化診断を試みた。

2-044

アルミナ添加量によるエポキシ試料の複素比誘電率の変化

◎放生一馬・遠藤隆久・植原弘明・岡本達希（関東学院大学）

筆者らは，これまでベクトルネットワークアナライザを使用して0.5～13GHzのスマートフォン等で特に重要となるGHz帯におけるアルミナ添加エポキシ試料の周波数特性を検討してきた。しかしながら，計測している周波数帯が狭帯域であったため，誘電分散や誘電吸収を捉えられておらず，比誘電率および比誘電損率の広帯域での周波数特性を計測できていなかった。 そこで本研究では，10Hz～5MHzではLCRメータを使用し，0.5～13GHzではVNAを使用して，アルミナ添加量によるエポキシ試料の複素比誘電率の変化を計測し，周波数特性を検討したので，その結果を報告する。

2-045

A Broadband Dielectric Spectroscopy of Thermally Stressed Eco-friendly Polymeric Insulators for Power Cable

○June-Ho Lee・Hana Kim・Ji-Ho Park・Chukl-Ho Kim（Hoseo University）

Recently, due to changing social awareness of the environmental issue, the interest in the recyclable and eco-friendly insulators for power cable applications has increased. It has also been reported that the actual power cables insulated with the eco-friendly materials are installed and operated. Since this type of new insulators have short experience in use, there are still many research topics to be studied, one of which is ±the evaluation of mid- and long-term performance under the thermal stress. In this work, the polypropylene (PP) based eco-friendly material was prepared and degraded by the thermal stress for 18 months. The broadband dielectric spectroscopy (BDS) of the virgin and 18-month degraded samples were measured and analyzed. As a conclusion, it could be said that the slope of log w vs. log tand at the low frequency range can be used as the parameter to analyze how the eco-friendly insulating materials are degraded by the thermal stress.

2-046

菜種油中における沿面放電発光の波長計測

○直江伸至・花岡良一・宮城克徳・藤田洋司（金沢工業大学）・西川精一・久住政喜（かんでんエンジニアリング）

油中の沿面放電は発光を伴うが，支配的な発光波長の計測例は少ない。発光波長の明確化は油中放電の検知に有用であり，油入変圧器の保守の観点から重要である。著者らは以前に油中沿面放電の温度依存性と放電に伴う発光スペクトルについて報告した。しかし，コロナ発生から破壊に到る過程の沿面放電による発光波長については示していない。本稿では，菜種油中の沿面放電過程における発光波長について計測結果を示す。

2-047

金属試料と無アルカリガラスの摩擦帯電量の測定方法

○三浦 崇（労働安全衛生総合研究所）・安田興平（AGC）

静電気の発生原因や低減手法の研究において，摩擦静電気量を正確に測定することは重要である。本研究では，摩擦における真の接触面積を測定しながら，発生する静電気量を同時測定する。摩擦は放電による中和を防ぐため，真空中で行う。講演では，実験方法の詳細を説明し，無アルカリガラスとアルミニウムの測定例から，電荷分離や帯電量について，これまでに報告されている（電学論A 125巻 p179 2005年）研究結果を踏まえて議論する。

2-048

PETフィルムへのインパルス電圧印加が部分放電特性へ与える影響（1）

○藤井祐樹・長 広明・中村勇介（東芝インフラシステムズ）・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

長期間の運転が期待される電力機器において，過電圧（サージ電圧）の侵入によって突発的に故障する事象の理解が求められている。本稿ではサージ侵入時の現象理解のための基礎的な検証として，PETフィルムに対してインパルス（Imp）電圧を印加した前後の部分放電（PD）特性を調査した。Imp電圧印加直後のPD開始電圧（PDIV）は初期値に対して10%前後低下した。ここで上部電極を接地しない条件では1週間経過後においてもPDIVは変化せず，一方接地した条件では1日経過後に5%前後回復するが1週間経過後も初期特性までは回復しなかった。以上，PDIVの低下はImp電圧印加にともなう材料表面や内部に残存した電荷によるものであり，またPDIVの回復（上昇）は試料を接地したことによって電荷が外部に流失し電荷の総量の減少が影響していることが示唆された。

2-049

PETフィルムへのインパルス電圧印加が部分放電特性へ与える影響（2）

◎佐藤孔亮・田中駿也・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）・藤井祐樹・長 広明・中村勇介（東芝インフラシステムズ）・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）

長期間の運転が期待される電力機器において，過電圧（サージ電圧）の侵入によって突発的に故障する事象の理解が求められている。前報（1）では，PETフィルムに対してインパルス（Imp）電圧を印加するとき部分放電開始電圧（PDIV）が低下したが，この特性低下が試料の表面及び内部に蓄積した電荷による可能性を示した。本稿ではImp電圧を印加したときの試料内部への空間電荷の蓄積を調査したので報告する。

2-050

球/平板電極系を用いたPETフィルムのインパルス部分放電による絶縁劣化の一検討

◎善田優希・宮崎光生・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・三宅弘晃・田中康寛（東京都市大学）・藤井祐樹・長 広明・中村勇介（東芝インフラシステムズ）

筆者らは，これまで，モールド変圧器や変圧器巻線モデル試料におけるインパルス電圧の前課電による交流電圧下の部分放電開始電圧（partial discharge inception voltage: PDIV）の低下現象について調査してきた。本稿では，ポリエチレンテレフタレート（PET）フィルムに前課電としてインパルス電圧を複数回印加した後のAC-PDIVを測定した。インパルス電圧印加時の印加回数とインパルスPD電荷量によるAC-PDIVの関係について検討した結果を報告する。

2-051

Changes in Partial Discharge Characteristics in a 22kV Cast Resin Transformer due to Lightning Impulse Aging

◎Yuanhang Yao・Mizuki Miyagawa・Ryota Koresawa・Masahiro Kozako・Masayuki Hikita（Kyushu Institute of Technology）・Katsutoshi Takei・Teruo Shibata・Tamotsu Uzuki・Kazuhiro Futakawa（TEPCO Power Grid）

To evaluate partial discharge (PD) characteristics of an aged cast resin transformer (CRTr) before dielectric breakdown. Multiple lightning impulses (LIs) of positive and negative polarities were applied to the high voltage windings of 22 kV CRTr to further accelerate the degradation. ACPD measurement was also performed after LI applications to analyze PD characteristics. Experimental results reveal that larger PD activities occurred at impulse voltages of 100 kV, and PD charge Q_imp at 100 kV up to microcoulomb level; PDIV decreased after the multiple impulses of alternating polarities; in the PRPD patterns, PD maximum charge increased and the phase width in one cycle increased after impulse applications. PD under LIs has significantly accelerated degradation in this CRTr.

2-052

22kVモールド変圧器の長期課電中の絶縁破壊までの部分放電特性

◎宮川瑞輝・Yao Yuanhang・是澤亮太・小迫雅裕・河野英昭・匹田政幸（九州工業大学）・武井勝俊・柴田輝雄・卯月 保・二川和弘（東京電力パワーグリッド）

近年，電力設備の更新時期を決定すべく，オンライン絶縁診断技術の確立が求められている。本研究では，絶縁破壊の前駆現象である部分放電（partial discharge: PD）に着目し，配電用モールド変圧器（CRTr）の絶縁状態を診断する手法の確立を目指している。前報（1, 2, 3）に続き，本報では経年劣化した22kV CRTrにおいて，実験室にて周波数・電圧加速の条件にて課電開始から絶縁破壊までのPD特性の長期トレンドを評価した結果について報告する。

2-053

高周波等価回路計算を用いた6.6kVモールド変圧器における部分放電電流解析

◎是澤亮太・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・青木裕介・飯田和生・梅村時博（三重大学）・伊藤大貴・大山公治・中前哲夫・前田照彦・尾崎多文（東芝産業機器システム）

本研究では，モールド変圧器（cast resin transformer: CRTr）に対する部分放電（partial discharge: PD）検出を用いた絶縁診断技術の確立を目指している。筆者らは，これまで6.6kV-VTに対して高圧端子に電圧を加える誘導式試験を行い，接地線に取り付けた高周波CTにより検出されるPD電流の支配的周波数成分が19.8MHzであることを示した。本報では，巻線レヤ間で発生するPDの周波数特性の取得を目指し，部分放電発生時の変圧器の分布定数モデルにおける高周波等価回路を提案した。同等価回路より巻線レヤ間の部分放電信号伝搬特性を解析し，測定された部分放電電流波形スペクトラムと比較検討を行った結果を報告する。

2-054

EVモータ用シート絶縁材料の高周波V-t評価

芳賀弘二・武笠晋一郎・○塚本能之（日本理化テクノロジーズ）

電気⾃動⾞⽤モータでは，モータの⾼電圧化に伴うインバータサージによる部分放電とその絶縁劣化が課題となる。本稿の⽬的は，集成マイカを使⽤したシート絶縁材料を新規開発し，従来エナメル被覆巻線を超える耐コロナ性と⻑寿命化を狙う。評価は，繰返し周波数5kHz，⽴上り時間100nsの⾼周波パルス電圧を使⽤し，シート材1層分で部分放電開始電圧PDIVと課電寿命特性を確認した。⽐較でポリイミドフィルムを同時試験したが，PDIVでは両者とも顕著な差異は⾒られないが，V-tラインより推定した課電寿命ではマイカシートが⼤幅に⻑い結果となった。今後，アローペア試験⽚での評価や，実機を模擬した⾼温，⾼湿度下での特性確認を検討する。

2-055

エナメル線の部分放電開始電圧における繰り返しパルス電圧印加時の極性変化による影響

◎堀内淳司・泉 壮鴻・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・宮崎優伍・太田慎弥・溝口 晃・中島晋吾（住友電気工業）

近年の産業用モータはインバータにより制御され高速スイッチングによるサージ電圧が加わることで巻線間に部分放電が発生する可能性がある。本報告では一連のパルス電圧の繰り返し印加時における極性反転による影響の検討を行った。試料はエナメル線ツイストペアを用い，正極性パルスあるいは負極性パルスを10パルス印加した後，逆極性のパルスを10パルス印加し，合計20パルス印加した。PDIVと20パルス中半数以上放電した電圧のRPDIV，最初に印加した極性のパルス電圧10パルス中半数以上放電した電圧の単極性RPDIVを測定した。その結果について比較検討した。

2-056

エナメル線ツイストペアにおける放電位相経時変化のPDIV過電圧率依存性

◎泉 壮鴻・堀内淳司・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・宮崎優伍・太田慎弥・溝口 晃・中島晋吾（住友電気工業）

近年の産業用モータはインバータが用いられ高電圧で駆動している。近年ではPDIVを高めるため，皮膜に気泡を導入した発泡エナメル線が開発されている。本研究では発泡率0%（無発泡），30%及びWコート（内側30%，外側0%）エナメル線ツイストペアのPDIVに対して過電圧率1.3の電圧を印加して過電圧率が部分放電特性に与える影響を測定した。なお部分放電特性に与える影響はφ-q-n分布を用いて評価した。その結果，発泡率が高い試料ほどより低角度側に放電が集中する傾向が見られた。また，発泡率30%では時間経過に伴い，0%及びWコート試料に比べて早く単位時間あたりの放電電荷量が減少することが確認できた。

2-057

SiC-MOSFETインバータ電源を用いたエナメル線ツイストペアにおける部分放電の湿度特性

◎岸本颯流・松末 潤・山田楓真（兵庫県立大学）・奥田貴史・西村芳実・中村 孝（ネクスファイ・テクロノジー）・菊池祐介（兵庫県立大学）

インバータ駆動モータにおけるインバータサージ絶縁の課題は産業用モータから電気自動車分野まで広く注目されている。本研究ではSiC-MOSFETインバータ電源（最大電圧：5kV，スルーレート：100kV/μs，最高周波数：1Mpps，最小パルス幅：150ns）をエナメル線ツイストペア中の部分放電実験に適用し，繰り返し部分放電開始電圧（RPDIV）の湿度特性を調査した。その結果，繰り返し周波数10kpps以上になると，湿度上昇によるRPDIVの低下率が減少することが分かった。高周波で測定を行うことで，実フィールド試験の周囲湿度に起因するPPDIVのばらつきを低減できると考えられる。

2-058

薄型高放熱パワーモジュールの開発

○原田隆博・山本晋也・黒田洋史・西川敦准・小坂 弥（住友ベークライト）・赤津 観（横浜国立大学）

パワーモジュールは，さらなる小型軽量化や高性能化が求められている。弊社で開発した高熱伝導の樹脂絶縁シート（18W/m・K），チップ接合用の銀シンタリング材（260W/m・K以上）および高信頼性のエポキシモールド封止樹脂（耐トラッキング性CTI 600V以上）を組み合わせた革新的なヒートシンク一体型の薄型高放熱モジュール構造を提案する。モジュールを組立，実装して電気特性および熱特性評価を行った。従来のセラミック基板，チップおよびヒートシンクの接合材に半田，外枠にケースを取り付け，液状樹脂封止したモジュールに比べて，高さが従来比40％，導通損失，熱抵抗が約20%低減し，400アンペア導通時の温度上昇を約10℃低下することができた。

2-059

電動推進航空機用モータにおける流動潤滑油の部分放電開始特性

鎌田泰任・◎中澤尚輝・小島寛樹（名古屋大学）・有賀信雄・卯辰清志・渡邉瞬也（シンフォニアテクノロジー）・早川直樹（名古屋大学）

筆者らは，電動推進航空機用モータの高出力密度化に向けて，モータ巻線部の冷却を兼ねた絶縁材料として航空機用潤滑油の適用可能性を検討している。本稿では，実機モータスロット部のコイル絶縁構造を模擬したモデルについて，流動潤滑油中における部分放電（PD）開始特性の流量依存性を検討した。高流動状態における部分放電開始電圧（PDIV）は静止状態の63%と低くばらつきが大きい。また，PD信号より，いずれの流量においても平角線間ではなく，平角線-コア間でのPD開始が顕著であった。高流動状態では平角線-コア間の油隙またはスペーサ界面が絶縁上の主な弱点となり，流動油中の気泡等の影響により，PDが発生しやすくなったことが示唆された。

2-060

電動機の型巻固定子巻線のインピーダンス特性評価と高周波等価回路の検討

◎宮崎光生・善田優希・久野 勉・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・岡本徹志・井上良之・財前昴平・山田拓郎・岩永拓実（東芝三菱電機産業システム）

筆者らは，インバータ駆動電動機に印加される各種サージが侵入する際の巻線内部分担電圧分布，電動機巻線内部で生じた部分放電（PD）の発生源の特定するためのシミュレーション技術の構築と実験による実証を目的として研究を行っている。電動機の高周波領域でのシミュレーション回路の構築のためには，巻線の抵抗R，インダクタンスLと相互インダクタンスM，およびキャパタンスCの値を評価する必要がある。本報告では，電動機の型巻固定子巻線を対象として，回路定数を導出，高周波回路モデルに基づき巻線インピーダンスZの周波数特性Z（f）を回路シミュレーションにより求めた。これらのZ（f）の計算結果を実電動機固定子巻線のZ（f）の測定値と比較して，等価回路モデルの妥当性の実証を試みた。

2-061

金属薄膜配線を用いた高圧機器絶縁物の劣化度推定技術

◎藤原宗一郎・三木伸介・梅村園子（三菱電機）

事故を未然に防ぎ，適切な設備更新のためには，高圧機器の寿命を決定する絶縁物の劣化診断技術が必要である。現在当社では，現地に作業員が赴き絶縁物表面からイオン量等の測定を行うことで診断を実施しているが，機器の電力停止が必要という問題があった。本報告では，通電状態での診断を簡易に実施するため，大気中の腐食性ガス（NOx等）により絶縁物の表面抵抗率が低下することに着目し，金属薄膜配線の抵抗値変化から絶縁物の劣化度（表面抵抗率）を推定する方法について検討した内容を報告する。

2-062

スパッタリング法によるアモルファスシリコン薄膜の膜特性のタグチメソッドによる最適化の検討

◎味田皓平・田畑彰守（名古屋大学）

高周波（RF）マグネトロンスパッタリング法を用いて，優れた特性を有するBドープ水素化アモルファスSi（a-Si:H）膜の作製を目指した。タグチメソッドと分散分析を用いて，各特性に最適な因子の値および各因子が特性に与える効果の度合いを調べたところ，水素分圧比は低いほど，RFパワーは高いほど電気伝導度が高くなることが分かった。これを元にガス圧を調整したところ，ガス圧が8Paのときに最も大きな電気伝導度の値7.7×10^-3S/cmが得られた。電気伝導度が増加した原因として，構造秩序が低下することにより，B原子の膜中への取り込みが増加したことが考えられる。

2-063

グリッド式コロナ電極を用いた半導体ウエハの抵抗測定

◎杉本優雅・杉本俊之（山形大学）

SiCに代表される高抵抗半導体ウエハの検査方法として，コロナ放電を用いた非接触抵抗測定法が検討され，体積抵抗率10⁸～1013Ω・cmのウエハの測定が可能になってきている。そこで，108Ω・cm以下の低抵抗側に測定領域を拡張するため，新規で針対グリッド電極を用いた測定装置を開発し，異なるグリッド電圧Vgにおいて測定物電流Iや推定されたウエハの体積抵抗率について調べた。107Ω・cm以下では，Vgが小さいほど理論値から離れる傾向がみられた。これは，グリッド電圧を上げることで，高精度の推定をするのに十分な大きさの電流が流れるためであると考えられる。本方式により106～108Ω・cmのウエハの非接触測定が可能であることが示唆された。

2-064

Investigation of Relationship Between Contact Resistance and Insulating Coatings on Carbon Nanotube Coils

◎瞿 義俊・遠藤 央（東京工業大学）・中村裕司（東京工業大学/安川電機）・上柳太一・佐藤 廉・千葉 明・清田恭平・藤井勇介（東京工業大学）

The contact resistance of CNTs can be very high when they are in contact with each other. Therefore, to explore the feasibility of making CNT coils directly from CNT yarn without using insulating film based on CNT’s high contact resistance property. We performed two experiments with different CNT yarns, one experiment was that warp one loop of CNT yarn around a plastic lot, and the other was to wrap the CNT yarn into contact and non-contact coil. Finally, based on all the above experiments, the conclusion is that if CNT yarn is to be coiled, an insulating coating is required.

2-065

ふく射伝熱モデルに基づくCNT導線の破断条件推定指標の提案

◎上柳太一・遠藤 央（東京工業大学）・中村裕司（東京工業大学/安川電機）・佐藤 廉・源元颯人・Yijun Qu・森 伸介（東京工業大学）・田中真平（安川電機）

本研究ではCNT糸の導線としての実用化を目指し，本稿では温度の値を用いない温度特性についての議論に取り組んだ。CNT糸の温度特性についての研究例は多いが，CNT糸は寸法が小さいため温度の計測が困難である。そこで，温度を直接計測することなく温度特性について議論できる指標を提案した。そのために，通電時のCNT糸の発熱とふく射伝熱をモデル化し，理論的な温度特性の関係式を導出した。評価指標を用いてCNT糸が破断する電流密度を推定，推定値を通電実験で確認し，指標の有効性を示した。この指標を用いることでモータ設計における電流密度の上限を定めることができ，現実的なモータ設計が可能になる。

2-066

ダストフリー導電性シートの開発

◎池田理紗・山内光典・杉山則順・大橋祐二・幸 廉也・渡辺清志・田澤和俊（矢崎エナジーシステム）

静電対策として使用されている導電性床材料は，塗床と導電性シートを接着させる方法がある。導電性シートの場合，施工時間を短縮できるが，基布を使用しているためクリーンルーム等では使用できない。他方，塗床は基布等を使用しないためクリーンルーム等で使用可能であるが，施工時間が長いという欠点がある。そこでクリーンルームでも使用できるダストフリー導電性シートを開発したのでこれを報告する。

2-067

PLA法による銀ナノ構造の生成とSERS基板への応用

◎竹田直希・志村祐輔・鈴木 薫・松田健一・胡桃 聡（日本大学）

光と金属ナノ構造の相互作用が引き起こす局在表面プラズモン共鳴（LSPR）は著しい光電場増強をもたらすことが知られている。LSPR由来の光電場増強を利用した現象として，表面増強ラマン散乱（SERS）が挙げられる。これは通常のラマン散乱と比べて，LSPR由来の光電場増強によって非常に高いラマン散乱が得られる方法であり，新しいバイオセンシング等の応用が期待される。我々はパルスレーザアブレーション（PLA）法によって，可視光領域に吸収ピークを持つ銀ナノ構造の作製を試みた。本発表では，先行研究の金ナノ構造と製作した銀ナノ構造の物性を比較し，これらをSERS基板として応用した結果について報告する。

2-068

光線追跡シミュレーションによるUV防御剤の開発環境構築

◎高橋大輔・柏尾知明（近畿大学）・伊藤智海・武田 怜・久保田敦子（住友大阪セメント）

本研究では，光線追跡シミュレーション上で，UVの波長域から可視光の波長域までの光の透過率が実サンプルに近くなるように，酸化亜鉛粒子をモデリングすることでUV防御剤の開発環境を構築する。シミュレータLightTools上で，弱分散，中分散，強分散の3種類の分散状態に分けて酸化亜鉛のモデリングを行った。弱分散，中分散においては濃度2vol%の条件で実サンプルに近いモデルを得ることができた。また，強分散の波長370nm以下の波長域における粒子の濃度を，回折現象を考慮し，1 ~ 4倍に設定してシミュレーションを行った。その結果，濃度が4倍の時に実サンプルに近い結果を得ることができた。

2-069

メニスカス法と転写法による積層型光電変換素子の作製と効率改善に向けた検討

○伊東栄次・鎌田泰成・中島陽紀（信州大学）

低温・塗布プロセスで製造可能な塗布型の有機ELや有機太陽電池の高性能化が進む中で材料コストの増加が懸念される。スピンコート法では90%以上となる材料ロスを低減すると同時に大面積化や高性能化を両立するプロセス開発とデバイス実証が重要である。本研究ではメニスカス法の改良による材料ロスの低減やピンホールの低減を行った。また，転写法と組み合わせた積層技術によるバルクヘテロ接合型太陽電池や高分子系有機発光ダイオードの高性能化の検討と性能実証を行った。

2-070

フェムトリアクターによる有機薄膜太陽電池作製に向けた活性層の成膜およびデバイス化による性能評価

◎江頭雅之・山口大貴・前田昇吾（公立諏訪東京理科大学）・矢澤翔大・工藤祐輔（日本大学）・渡邊康之（公立諏訪東京理科大学）

静電噴霧法の新しい応用技術であるフェムトリアクターは，異なる極性に帯電させた液滴同士を空間で衝突させ化学反応を促進させる有望な技術である。本研究では恐らく世界でも報告例がないとされる有機薄膜太陽電池の活性層の成膜にフェムトリアクターを適用し，気相中でpn接合された液滴を生成しITO電極上に堆積させ有機薄膜太陽電池としてデバイス化を行った。その結果，本研究で初めてこの手法により有機薄膜太陽電池として発電特性を得ることが出来た。本学会では，その手法ならびにデバイス特性について報告する。

2-071

局在表面プラズモン励起を用いた光電気化学バイオセンサの検討

○馬場 暁・奥内直人・ペットサンソピット・新保一成・加藤景三（新潟大学）

太陽光などの光照射のみで動作する光電気化学バイオセンサは，自己給電型センサとして近年注目を浴びている。自己給電型センサとして太陽光で動作させるための増感効果向上のため，表面プラズモン励起により生じるホットエレクトロンを利用した方法も報告されてきている。局在表面プラズモン共鳴は，100nm程度以下の粒径の金属微粒子に光を照射した時に金属微粒子周囲に局在して大きな電界増強効果を伴う現象で，この局在プラズモンの励起・緩和過程で生じるホットエレクトロンを光電気化学反応に利用することで，センサの高感度化を行うことが可能である（1）。本報告では，金属微粒子を用いた光電気化学バイオセンサの高感度化について検討を行った。

2-072

配向マイクロファイバー／ネマティック液晶複合体装荷100GHz帯テラヘルツ波可変移相器の特性評価

○森武 洋・Trong Nghia Lang・井上 曜（防衛大学校）

エレクトロスピニング法により作製した配向マイクロファイバーとネマティック液晶の複合体を用いた100GHz帯のテラヘルツ波可変移相器を作製し，その印加電界に対する位相変化及び応答時間と，損失の特性評価を行った。複合体の配向マイクロファイバーの材料としてポリアクリロニトリルを使用し，移相器の線路長が10mm，周波数が100GHzの時の最大位相変化量が180度，電圧を除去した時の応答時間が230ms，移相器の損失が2.7dBのテラヘルツ移相器が実現できた。

2-073

ピレン誘導体の電気化学発光における電子移動距離について

○石松亮一・中野幸二（九州大学）

電気化学発光では，電気化学的に生成したラジカルカチオンとアニオン間で電子移動が起こり，励起状態（とその近傍に基底状態）が形成され，発光が観測される。この生成する励起状態と基底状態の距離が近いため，エキシマー発光がしばしば観測されるが，これまで，電気化学発光における電子移動距離についての詳細な報告は無い。今回我々は，ピレン誘導体のミリ秒程度の時間分解電気化学発光スペクトルを取得することにより，モノマー発光とエキシマー発光の成分を初めて同時に測定し，さらに，このモノマー/エキシマー強度比から電子移動距離についての詳細な検討を行った。

2-074

液滴型摩擦発電機における液滴濡れの違いが出力に及ぼす影響

◎永沼良太・青木裕介（三重大学）

液滴型摩擦発電機（Droplet-based electricity generator: DEG）が注目されている。DEGは誘電体膜の表裏に金属電極を配置した構造でµWからmWオーダーの出力電力を取出せる。DEGでは，帯電した誘電材料に落下した水滴が金属電極に接触することで静電誘導により金属電極間で電荷の移動が生じ，外部回路への出力が発生する。DEG出力は誘電材料表面の帯電分の電荷量が水滴内での分極を介して外部にとりだされるもので，液滴の誘電材料上での電極接触時の接触面積Sおよび接触面積の時間変化dS/dtによって影響を受ける。一方，同じ液滴条件，例えば水滴の滴下は同じであってもDEG出力にばらつきが生じる。本発表では電極接触時の水滴/誘電材料間の接触面積とDEG出力の関係を調べ，DEG出力ばらつきの原因について考察する。

2-075

金属ナノ構造上の蛍光材料の成膜と表面プラズモン共鳴による蛍光発光増強の検討

◎納谷慧祐・鈴木 薫・松田健一・胡桃 聡（日本大学）

近年，光と金属の相互作用による表面プラズモン共鳴を利用した高輝度の発光デバイス開発が進められている。これまでに我々はパルスレーザアブレーション（PLA）法によって1工程で周期的な金属ナノ構造を基板上に作製することに成功し，これによる光電場増強効果を利用した応用研究を試みている。本稿では表面プラズモン共鳴による蛍光発光の増強を目的として，PLA法によって作製した金属ナノ構造が堆積された基板上へ蛍光材料を成膜をし，その発光特性の評価を行った。石英基板上に成膜した試料と金ナノ構造上に成膜した試料の蛍光発光の強度を比較すると，金ナノ構造上の試料のほうが強い傾向が認められた。

2-076

タンパク質の結晶化における溶液中の電極距離の影響

◎坂井勇磨（福島工業高等専門学校）

タンパク質の機能を利用するためにタンパク質の単結晶を利用した立体構造を解析する研究が行われている。タンパク質の単結晶の結晶化促進に関しての理論は確立していない。本研究では電場印加による結晶化の原理解明を目的として，今回は印加距離に着目した。結晶化セルの内部から直接印加する方法での結晶化の促進実験を行い，印加距離1.0・1.5・2.0mmにおける結晶化効果と結晶サイズを観察した。印加間距離が離れるほど結晶サイズが大きくなることと2.0㎜を境に電場印加の効果が見られない結果が得られた。これより電場印加されている電場印加界面で準安定度領域が変化している可能性と電束密度の変化が影響をもたらせている可能性が見受けられた。