一般講演

2-077

Fe-Si多結晶膜における高周波磁気特性のSi組成依存性

◎蒋 曄・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

不揮発性メモリなどのスピントロニクスデバイスにおける省エネ化を実現するために，臨界電流密度と比例関係にあるダンピング定数（α）を低減させることが必要である。しだかって，デバイスを構成する磁性材料のαを詳細に理解することが重要である。我々はこれまでにFe-Ni合金薄膜においてαと磁歪が相関関係にあることを示した。本研究では，新たにFe系二元合金としたFe-Si合金を選択し，これらの薄膜における構造と磁気特性のSi組成依存性について詳細に検討した。その結果，α_//はSi組成の増加とともに減少し，Si組成13.7at.%で最小となった，さらに増加した。また，磁気的不均一線幅（∆H（0））はSi組成の増加とともに線形的に減少し，Si組成17.7at.%以上でほぼ一定となった。

2-078

(Fe-Ga)_100-xLa_x薄膜における磁気特性のLa組成依存性

◎西名竜哉・宮崎孝道・遠藤 恭（東北大学）

Fe-Ga合金（Galfenol）は高い飽和磁歪量と優れた機械特性を有しており，磁歪材料の一つとして基礎物性からデバイス応用まで幅広く研究が進められている。我々はこれまでにFe-Ga多結晶薄膜の磁気特性を改善する方法の一つとして，軽元素添加したFe-Ga薄膜における磁気特性の検討を行い，これらの特性を改善できることを提案した。本研究では，新たに添加元素として希土類元素であるLaを選択し，Laを添加したFe-Ga多結晶薄膜における構造と磁気特性の検討を行い，それらのLa添加効果について議論する。

2-079

マイクロマグネティックスを用いたナノコラムナーとナノグラニュラー磁性薄膜の磁気特性の比較

◎坂本 魁・村松和弘（佐賀大学）

近年，高周波材料であるナノグラニュラー磁性薄膜のパワエレ用インダクタ磁心への適用が検討されている。今回，この磁性薄膜の磁気特性の優位性を検討するため，マイクロマグネティックスを用いて，ナノコラムナー磁性薄膜との磁気特性の比較を行い，ナノグラニュラーの方が，磁界が小さい領域では透磁率が高くなるが，占積率が小さいため飽和磁化も小さくなってしまう。しかしながら，ナノグラニュラー化で生じる磁化の増大を考慮すると，透磁率及び飽和磁化ともにナノコラムナーよりも優れた磁気特性になることを明らかにしたので報告する。

2-080

無電解めっき法を用いてポリイミド基板へ成膜したFe-Ni膜

◎塩川 諒・日髙勇祐・山下昂洋・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

本研究室では，電解めっき法を用いたFe-Ni系軟磁性めっき膜に関する報告を数多く行ってきた。電解めっき膜の形成には，導電性基板が必要であり，基板を含む磁性めっき膜を高周波励磁すると，基板にもうず電流が流れ，損失が増加する。そこで本稿では，無電解めっき法を用いた非導電性基板であるポリイミド（PI）基板へのFe-Ni膜成膜過程に関して，主に浴温度とPI基板の厚みに着目した検討を行った。めっき浴温度に関する検討では浴温度を80℃以上の高温にすることで，高い成膜速度（本研究室既報値の約1.5倍）が得らえることを確認した。

2-081

バイモルフ型磁気デバイス用負磁歪軟磁性材料の開発に関する基礎検討

◎阿部宏恒・石山和志・後藤太一（東北大学）

近年検討されている逆磁歪式振動発電デバイスは，正磁歪材料を用いたユニモルフ型が主流だが，正磁歪材料の裏面に負磁歪材料を接合しバイモルフ型にすることでより多くの磁化変化量が得られると考える。ところが，多くの材料開発が進められている正磁歪材料に比べて，負磁歪材料の応用へ向けた検討は行われていない。そこで我々は，-10^-3を超える磁歪定数を有するSmFeの軟磁気特性を改善しバイモルフ型磁気デバイスを実現するための検討を行っている。本報告では，SmFeを非晶質薄膜化し，さらに成膜時の不均一な応力により誘導される異方性や残留応力除去を目的とした回転磁界中熱処理を施し軟磁気特性の改善を試みた。

2-082

希土類フリー鉄窒化物の磁気特性

○齋藤哲治（千葉工業大学）・山本日登志（ネオジコンサル）

近年高飽和磁化を有する鉄窒化物α”-Fe₁₆N₂磁石が注目されるようになってきた。そこでこの実用化過程に或る新規磁石材料の鉄窒化物α”-Fe₁₆N₂磁石の可能性を実証検証することとした。本研究では，第1報として鉄窒化物粉末の構造と磁気特性について調べたので報告する。まず，原料に使用した鉄窒化物粉末の構造をX線回折法で調べたところ，鉄窒化物粉末はα”-Fe₁₆N₂相からなることが確認できた。そこで，鉄窒化物粉末の磁気特性を振動試料型磁力計で測定したところ，鉄窒化物粉末は希土類を含まない鉄窒化物であるにもかかわらず，高い保磁力を示すことがわかった。

2-083

消磁条件と平均粒子径がM型フェライト磁石の磁区模様に与える影響

◎大竹 響・小原 学（明治大学）

我々はこれまで，MFMを用いて磁区構造と粒子径の関連性について議論を行ってきた。今後さらに保磁力を議論していくためには，外部磁界に呼応した磁化の反転による磁区構造の変化を評価する必要があると考えられるため，我々は，外部から加わる磁界を変化させることで消磁状態に至る交流消磁に着目した。 本報告では，Sr系M型フェライト磁石を観察対象として交流消磁を施し，各交流消磁条件における磁区構造を，複数距離観察法を用いて観察した。その結果，消磁条件や試料の平均粒子径によって消磁後の磁区構造に変化がみられた。また，この結果をもとに平均粒子径と磁区構造，及び保磁力の関係について考察した。

2-084

Fe-Pt磁石めっき膜の磁気特性に与える基板と低温熱処理の影響

楢林龍太・○柳井武志・伊野拳太朗・山下昂洋・中野正基（長崎大学）

白金系磁石は，材料コストこそ高価であるものの，電解めっき法により作製でき，かつ優れた磁気特性を有する磁石の一つである。本研究室ではこれまでにクエン酸をベースとするめっき浴から作製したFe-Pt磁石膜について多くの報告を行ってきた。成膜直後のFe-Ptめっき膜はfcc構造を有し，高保磁力を示さない。硬磁気特性を発現させるためには700°C程度の規則化熱処理が必要である。最近の研究で，規則化熱処理の前段階に300°C程度の熱処理（低温熱処理と表記）を施すと，その保持時間に応じて，規則化熱処理後の磁気特性が変化することが確認された。本稿では，主に基板に着目し，低温熱処理がFe-Pt磁石めっき膜の硬磁気特性に与える影響を検討することにした。

2-085

PLD法で作製した異方性Nd-Fe-B系磁石膜の磁気特性と結晶構造に与える成膜速度の影響

◎花田真一郎・山本将輝・山下昂洋・柳井武志・中野正基（長崎大学）

Nd-Fe-Bに代表される希土類磁石膜は，優れた磁気特性を有することから，小型モータやMEMSデバイスへ搭載されている。本研究室ではこれまでに，PLD（Pulsed Laser Deposition）法成膜時に基板へ直流電流を通電させた基板加熱を用いて異方性Nd-Fe-B系磁石膜を作製してきた。具体的には，基板へ通電させる電流値や成膜時間，レーザパワーを変化させることで，PLD法における異方性Nd-Fe-B系磁石膜の最適な作製条件を検討してきた。 本稿では，レーザパワー変化が試料の結晶構造に与える原因として，基板上でNd₂Fe₁₄Bへと結晶化していく過程で，ターゲットから基板に飛散する原子・分子の量（密度）が影響しているのではないかと考え，成膜速度が異方性Nd-Fe-B系磁石膜に与える影響を検討したので報告する。

2-086

深層学習を用いた非破壊による永久磁石の磁化逆推定

◎五十嵐一輝・佐々木秀徳・塩山将英・中村勢到・岡本吉史（法政大学）

本発表では深層学習を用いた磁化逆推定手法を提案する。永久磁石は永久磁石同期モータの特性に大きな影響を及ぼすことから，着磁状況の把握が重要である。そこで，着磁状況を非破壊で推定する手法が提案されているが，永久磁石内部磁化の減磁などを考慮した分布の場合，非破壊による推定は一意に推定できない場合がある。深層学習により，現実的な解を学習させることで，本問題を回避できる可能性がある。 本発表では深層学習モデルを用いて，解析モデル周囲の磁束密度分布を入力とし，永久磁石内部の各磁化方向成分を出力するモデルを構築した。さらに，深層学習をパラレル配向と多極配向に着磁した永久磁石に適用し，本手法の有用性を議論する。

2-087

頭部サイズの励磁・検出コイルを用いた磁気粒子の検出

◎Hyuna Ahn・鈴木健太・Trisnanto Suko Bagus（横浜国立大学）・大多哲史（静岡大学）・吉田 敬（九州大学）・竹村泰司（横浜国立大学）

磁気粒子イメージングは交流磁界に対する磁気粒子の応答を検出する新しい画像診断技術である。人体を対象とするため，交流磁界の強度・周波数には留意する必要がある。他方，人体サイズで印加できる交流磁界強度・周波数には電源やコイル等から制約もある。頭部に対しては，より低強度，低周波が望ましい。本研究では，頭部の画像診断を想定し，頭部サイズの励磁コイル及び検出コイルを用いた磁気粒子の検出を行った。磁気粒子イメージングにおいて，微量の磁気粒子の検出（検出感度），及び画像分解能（磁気粒子検出の空間分解能）を向上すること，さらにそれを人体サイズ，頭部サイズで実現できることが課題である。

2-088

磁気ナノ粒子トモグラフィにおける直接磁場補償回路の高感度化に向けた検討

◎藤本美咲・二川直矢・東野光宇太・笹山瑛由・吉田 敬（九州大学）

磁気ナノ粒子トモグラフィ（MNT）は，磁性ナノ粒子（MNP）を用いた画像診断法である。MNPからの信号を取得する際，検出コイルはMNPを励起する磁界の影響を受ける。先行研究では，D/Aコンバータと分圧回路を用いて検出信号から基本波信号を除去していた。しかし基本波信号は時間経過で変動し，分圧回路の分圧比調整の必要がある，基本波信号の変動が測定に影響を与えると入った問題があった。本研究では，基本波抽出回路を用いて基本波信号を除去し，直接磁場変動の影響を低減する回路を提案し，検討を行った。その結果，信号処理回路を用いて得た信号から分布画像の取得に成功し，提案手法によるMNTの実現可能性が示された。

2-089

磁気ナノ粒子の磁化応答を考慮したシステム行列の取得

◎二川直矢・藤本美咲・東野光宇太・笹山瑛由・吉田 敬（九州大学）

磁気ナノ粒子トモグラフィは医療用画像診断法として提案された，磁気ナノ粒子の位置と量を推定する手法である。磁気ナノ粒子トモグラフィの実用化に向けた課題として，逆問題解析に使用するシステム行列の取得時間が長いため，システム行列に雑音が含まれることが挙げられる。本稿では，上記の雑音を除去するために，交流磁化計で計測した磁化応答を基に電磁界シミュレーションによりシステム行列を取得した。計測した磁化応答を用いることで，雑音を除去するだけでなく実際の磁気ナノ粒子の磁化応答をシステム行列に組み込むことができた。取得したシステム行列を用いて逆問題解析を行うことで磁気ナノ粒子の位置を正しく推定することができた。

2-090

超伝導傾斜磁界コイルを用いた磁気粒子イメージング装置の開発

◎亀井裕太・森岡大陽・長野竜也・笹山瑛由（九州大学）・竹村泰司（横浜国立大学）・吉田 敬（九州大学）

磁性ナノ粒子からの磁化信号を検出し，疾病領域を高感度・高分解能にイメージングする磁気粒子イメージング（MPI）が注目されている。人体サイズMPIの実現に向けた課題の1つとして，傾斜磁界コイルの開発が挙げられる。本研究では，超伝導傾斜磁界コイルを用いたボア径12cmの1/5モデルMPIスキャナーの設計・開発を行った。

2-091

金属製カプセルによる封入を想定したハイパーサーミア用発熱素子の試作

○田倉哲也（東北工業大学）

がんの治療方法の一つである温熱療法（ハイパーサーミア）の加温方式の中で，患部に発熱素子を埋込み加温する方法がある。素子を埋め込むため侵襲的な加温ではあるが，局所加温が可能であり，効果的に患部を加温できる。感温磁性体，金属環，そしてLC共振器を用いた発熱素子は，高い発熱と温度制御を両立することが可能な方法である。しかし，LC共振器を構成するコイルやコンデンサが剥き出し状態となっており，現状，そのままでは埋込みに適していない。今回，カプセルを想定した蓋付きの金属環を試作し，その内部に感温磁性体とLC共振器を配置した発熱素子の特性についてこれまでのものとの比較から検討を行った。

2-092

磁気抵抗効果素子を用いた矩形波渦電流探傷試験

◎郭 子維・笹山瑛由（九州大学）

矩形波渦電流探傷試験（RECT）では低周波と高周波信号を多数同時に取得できる特長があり，金属厚板の表裏面きずの同時検知などといった応用が期待されている。一方，磁気抵抗効果素子（Magneto Resistive sensor: MRセンサ）は高感度に低周波と高周波の磁界を検出できる。そこで本稿では，MRセンサを用いた矩形波渦電流探傷試験を提案する。検証として，厚さ12mmのアルミ板の表面または裏面に大きさがΦ3mm，高さ2mm，4mm，6mmの三種類のドリル穴を設けた試験片でRECTを行い，提案手法により表裏面きずを全て検出できるか否か検討を行う。

2-093

高周波近傍磁界測定によるクロストーク観察

◎菅原祐介・石山和志・後藤太一（東北大学）

電子基板の高密度化や電流の高周波化，低電圧駆動が進むに伴い，誤動作を防ぐためのEMI対策がより重要になっている。そこで本研究では磁気光学効果を用いた高周波近傍磁界測定により，ノイズ源とノイズ電流の伝搬経路を特定する手法の検討を行っている。今回はクロストークノイズを模し，2本のマイクロストリップ線路間で誘導させた電流の発する磁界を磁気光学効果を用いたプローブで測定した結果を述べる。2本の線路を加害者，被害者とし，加害者には+24dBm，1GHzの正弦波を入力し片側を50Ω終端，被害者は両端を50Ω終端した。MSLの磁界分布を測定したところ，被害者に誘導された電流によって作り出された磁界を測定することができた。

2-094

フェムト秒レーザーと磁気光学効果を用いた高周波近傍磁界計測

○枦 修一郎（東北学院大学）・齊藤悠一（ランカスター大学）・石山和志（東北大学）

高集積回路基板などの位相情報を含んだ高周波近傍磁界の測定法として，短パルスレーザーと磁性ガーネットの磁気光学効果を組み合わせた計測法について検討を行っている。今回，より高い時間分解能を有するフェムト秒レーザーを導入することで，従来の測定上限であった約6GHzを大幅に超える高周波数帯域においても，位相情報を含んだ近傍磁界の測定を実現した。

2-095

対向ターゲット式スパッタで作製したCoFeB-SiO₂薄膜を用いた長方形スパイラルインダクタ

◎仁田帆南・金子忠幸・河原和馬（東京工業大学）・石戸亮祐・宮崎達也（ローム）・細田尚揮・藤﨑敬介（豊田工業大学）・中川茂樹・高村陽太（東京工業大学）

高周波動作可能な小型インダクタに用いる透磁率が高い磁性膜として，面内に大きな磁気異方性有するCoFeB-SiO₂薄膜を対向ターゲット式スパッタ法（FTS）を用いて成膜し，さらにそれを磁芯とした長方形スパイラルインダクタを試作した。 磁性膜の困難軸方向とスパイラルコイルの長辺を直交させることで，スパイラルコイルのインダクタンスは空芯に比べ20％増大した。 この技術はインダクタの小型化に寄与し，延いてはパワーエレクトロニクス回路の高効率化，カーボンニュートラルに資する。

2-096

シグモイド関数を援用した勾配法（SiGrad）を用いた固体高分子形燃料電池の電流源推定

◎山口俊輔・中村勢到・塩山将英・岡本吉史（法政大学）・後藤雄治（大分大学）

比較的低温で作動する固体高分子形燃料電池は，燃料電池自動車に用いられ，既に一部の企業により商用化されている。今後，普及拡大のためには，電池内部の電流分布を評価する技術が必要でとなる。その一つの評価手法として，磁気センサを燃料電池内部に挿入する手法があるが，燃料電池の構造変更による発電状態の悪影響が懸念される。その一方，燃料電池外部の磁界から，膜電極接合体（MEA）内部の電流密度分布を推定する技法が考えられる。本論文では，永久磁石磁化推定手法として提案されているシグモイド関数を援用した勾配法（SiGrad）を用いて，MEAの一部が減衰したモデルの電流源推定を行ったので，報告する。

2-097

Wiegandセンサを受電コイルとするチップ形電気二重層キャパシタへのワイヤレス充電

◎ラワットアドウェット・飯島榛史・竹村泰司（横浜国立大学）

A Wiegand wire is a vicalloy (FeCoV) which produces an electric pulse when magnitude of applied magnetic field changes more than a threshold value. This phenomenon is called Wiegand effect and can be used to transfer power at lower frequencies as the induced Wiegand pulse magnitude is independent of magnitude and frequency of the applied magnetic field. In this study, we will be proposing use of Wiegand sensor and chip-type electric double layered capacitor (EDLC) to store energy wirelessly at extremely low transmission frequency.

2-098

自己電源機器に応用するWiegandワイヤのパルス出力特性

◎鈴木丈士・梶原颯太・竹村泰司（横浜国立大学）

WiegandワイヤはFeCoVの強磁性線に熱ひねり加工を施して作製されるものであり，保磁力の高いハード層と低いソフト層の磁気的二層構造を形成している。外部磁界の印加によりソフト層を反転させた際に大バルクハウゼンジャンプと呼ばれる急峻な磁化反転が生じる。ワイヤ外周に検出コイルを取り付けることで磁束変化に伴う起電力パルスを得ることができる。この磁化反転は外部磁界の時間変化率に依存しないため，一定電圧のパルス出力を得ることができるという特長があり，無電源のロータリーエンコーダーに実用されている。本研究ではWiegandワイヤのパルス出力特性としてパルス波高値，半値幅，面積などの，特にそれらのワイヤ位置依存を明らかにした。

2-099

アモルファスリボンを用いた歪センサの静特性評価

◎千田健太・後藤太一・石山和志（東北大学）

近年，橋梁等の健全性診断を目的として軟磁性磁歪薄膜の逆磁歪効果を用いた高感度歪センサの研究が行われている。薄膜は断面積に依存する磁束変化量がバルク材に比べて極めて小さいことから歪をインピーダンス（もしくは抵抗）の変化として検出する手法を取らざるを得ない。一方，軟磁性のバルク材を用いることで，僅かな歪に対して大きな磁束変化を得ることができ，高感度な歪センサが実現できる。本研究では，軟磁性バルク材であるアモルファスリボンを用いて，歪センサの静特性評価を行った。その際，直交フラックスゲートセンサに着想を得た新しい検出方式を採用し，変化量が0.95mV/ppmと大きな値になった。

2-100

ヘルムホルツコイルを用いた二次元磁気特性測定用Hコイルの誤差角度測定に関する検討

◎黒田優輝・塩山将英・岡本吉史（法政大学）

電磁鋼板の有力な磁気特性試験法として単板磁気試験法がある。当該試験法により，二次元磁気特性を測定するためには，励磁方向と磁界強度検出用Hコイルの直交度を把握することが重要となる。その誤差角度を測定する手法として，ソレノイドコイルやレーザーユニット等を用いた機構が提案されている。本稿では，従来法よりも，安価でかつ，容易に測定する方法として，ヘルムホルツコイルとステッピングモータを用いた磁界強度測定用Hコイルの誤差角度測定を提案したので報告する。

2-101

磁界センサによる鋼材の微小欠陥検出の可能性

小野寺翔太・浦崎光史・安達渓人・○菊池弘昭（岩手大学）

鋼材を磁化して表面から漏れる磁束を磁界センサで検出することで非破壊的に鋼材の微小欠陥検出が可能となる。本報告では，微小欠陥周辺の磁場分布とそれらを通常の磁界センサ及び磁場勾配センサを使用して得られる出力との関係について磁場解析結果に基づき計算し，実験結果との比較を行ったので報告する。FEMを用いた磁場解析により求めた磁場分布に基づきセンサ出力分布を予測した結果と実験的に検出した磁場分布は良い一致を見た。この結果に基づき，数10ミクロンサイズの微小欠陥検知の可能性について検討した。

2-102

磁気光学センサを用いた動的磁区観察システムの構築

○若林大輔・内山智己・岡 茂八郎・榎園正人（日本文理大学）

高効率・低損失な電気機器の開発には，電気機器内部にある鉄心の低鉄損化が必須で，鉄心材料である電磁鋼板の詳細な磁気特性評価が重要になる。強磁性を示す電磁鋼板は磁区構造を持ち，磁区構造の変化が磁気特性として現れることは知られている。そのため磁区観察により電磁鋼板の状態を知る研究も行われている。著者らは簡易的に磁区観察を行える磁気光学センサ（MOセンサ）を用いた磁区観察システムを構築した。本発表では，構築したシステムに励磁機構を追加し交流励磁下（低周波数）の動的磁区観察結果を報告する。

2-103

機械学習を用いた磁気粘性流体ブレーキの最適設計

◎彦坂岳志・菊池良巳・曽根原 誠・佐藤敏郎・脇若弘之（信州大学）

現在，著者らは非接触型ハイブリッドブレーキを研究開発している。中型航空機に搭載するのを目標としているが，先行研究で設計された実験機では制動力が不足している。制動力を増加させるには，より多くの磁束を磁気粘性流体に印加する必要がある。そこで，従来の実験機よりコイルの数を増やした新モデルを提案し，磁束密度の最大化を目的とした最適設計を行った。その際，2種類の機械学習を用いた最適化を行い，結果を比較した。2つの最適化の結果に大きな差は見られなかったため，今回の最適化の結果が最適値で間違いないと考えられる。今後は，最適化の結果をもとに実験機の作成を行う予定である。

2-104

筒状アモルファスリボンを用いた振動発電の基礎検討

◎上倉拓郎・後藤太一・石山和志（東北大学）

近年，IoTデバイスの動力源として注目されているのが環境発電である。本研究では，アモルファスリボンが持つ逆磁歪効果を利用した振動発電に注目した。さらに，筒状にリボンを成形した新しい構造を提案する。この構造は，周波数帯域が広い上，筒の中心部に磁石を設置することでリボンに均一なバイアス磁界をかけられる。 初めに試料に対して磁場中熱処理を施した。 次に，試料に対し軸方向に圧力を印加しながら，同方向に交流磁界を印加することでBH曲線の測定を行った。 結果，圧縮応力印加時と無印加時の磁化の差は40Oe近傍で280mTとなり，700Hzの振動下での理論的な発電量を算出すると約0.48mWとなった。これは，Zigbee等のIoTデバイスの消費電力を想定しても充分な電力である。

2-105

インバータ励磁における高周波成分の測定

◎亀山諄弥・尹 己烈（岐阜大学）

インバータ励磁下での磁気測定において，回路にシャント抵抗を挿入して電流を測定すると測定対象とフィルタ回路を形成し，測定に影響を及ぼすと考えられる。このシャント抵抗の測定への影響を検討するための実験を行った。 今回の研究ではリング試料に励磁コイルと検出コイルを巻いてインバータで励磁し，磁界の強さと磁束密度を測定した。電流波形の基本周波数50Hz，キャリア周波数10kHzの振幅と鉄損について電流プローブとシャント抵抗を使用した場合を比較した。その結果，電流プローブに対して鉄損は約-0.54%の差であったが，電流の50Hz成分の振幅は約-6.4%，10kHz成分の振幅は約+24%の差があった。 以上より，シャント抵抗では高周波成分を正確に測定できないので，磁気測定には電流プローブが必要と考えられる。

2-106

機電一体形電磁調理器の開発を目的としたPCB IH-Coilの検討

○青山真大（静岡理工科大学）・Thimm Wolfgang（E.G.O. Elektro-Gerätebau GmbH）

本研究は新たな意匠を創作できる次世代電磁調理器の開発を目的に，IHコイルと駆動回路の機電一体化を目指し，IHコイルをプリント基板（PCB）で構成して同基板に駆動回路を構成することを目指している。本稿では非対称磁界分布を形成できる空芯構造のPCB IHコイルの提案をし，電磁界シミュレーションによる磁束分布の確認とPCB IHコイルの試作を行った。実機を用いて非対称磁界分布形成の実証とIH実験を行った結果を報告する。さらに実験結果に基づきコイルパターンの改善案についても検討した結果を報告する。

2-107

確率共振系を利用した浮体式波力発電機に関する基礎検討

◎佐藤孝洋（室蘭工業大学）

四方を海に囲まれた日本では海洋エネルギーの活用が有望と考えられ，特に，波エネルギーを活用した様々な発電方法が検討されている。なかでも有望な並進動揺型の波力発電方式の1つであるポイントアブソーバー型の波力発電機は，基本的には線形振動系の共振現象を利用して波からエネルギーを回収するため，発電可能な波の条件が限られる。そこで本研究では，波力発電システムを非線形系に拡張して発電可能な波条件の拡大する，新しい構造について検討する。

2-108

超伝導誘導モータの出力密度におけるヨークと回転子導体の厚み依存性

◎藏原昂平・佐々滉太・吉田 敬（九州大学）

現在，資源や環境問題などから輸送機のエネルギーにおける化石燃料の割合を減らし，電力化割合を増やすことが必要不可欠である。特に電気推進航空機の実用化は現実味を帯びてきており，注目を集めている。航空機の推進用モータは高い出力密度を必要とするため，銅線と比べて理想的には100倍以上の高電流密度を無損失で通電可能な超伝導線材を用いた超伝導モータが期待されている。本研究では全節巻の超伝導誘導モータにおいて，旅客機クラスの推進用モータに必要とされている出力密度20kW/kgを達成することを目標として，固定子ヨーク，回転子ヨーク，回転子導体の厚みを最適化することで高出力密度化を行った。