一般講演

4-143

フィードフォワード制振制御とねじりトルクフィードバック制御を併用した2慣性位置制御

○林 崇・大盛秀仁・高山哲也（富士電機）

2慣性系を良好に制御する1手法としてねじりトルクを検出してフィードバック（FB）する方法が知られているが，この構成だけでは任意の目標値応答を与えることはできない。また，フィードフォワード（FF）による制振制御も知られているが，それには共振・反共振周波数を正しく設定する必要がある。 共振・反共振周波数設定ずれの影響を低減しつつ任意の目標値応答を実現することを目指してFF制振制御とねじりトルクFB制御を併用した位置制御法を検討し実機検証を行った結果，2慣性系振動抑制一手法としての効果を確認できた。

4-144

上限値付き非対称Backlash演算子を用いたヒステリシス特性のモデル化

◎相原祐紀・関 健太・岩崎 誠（名古屋工業大学）

ヒステリシス特性は，物体の応力と歪み，磁性体の磁界と磁束密度，空気圧人工金の圧力と変位の間などに存在し，高精度な制御を実現するためにはこれらの特性をモデル化し，補償する必要がある。モデル化の手法の一つとして，Prandtl-IshlinskiiモデルをベースにしたUnparallel Prandtl-Ishlinskiiモデルが挙げられるが，このモデルでは入力の増大に伴って出力の傾きも増大する特性がある。そのため，このモデルでは入力の増大に伴って出力の傾きが減少する特性を表現することが難しいが，本論文ではBacklash演算子に上限を設けたモデルを提案し，モデル化した結果を報告する。

4-145

からくり機構及び電子制御による無人搬送車の消費電力量の比較

◎小林聖英・内田敬久（愛知工業大学）

本論文では，からくり機構による機械的な操舵制御をもつ無人搬送車を開発した。無人搬送車には，比較のためマイコンやサーボモータ等を使用した電子的な操舵制御も搭載した。2つの操舵制御方法について消費電力量の比較実験を行い，評価検討した。実験結果よりカムによる機械操舵制御は電子制御と比較して消費電力量が低減できることがわかった。これは，電子的操舵制御は旋回時に操舵用サーボモータにより消費電力が増加すること，また，カムによる操舵制御は，トルクがギア比により増幅されたDCモータの出力を使用しているためであることがわかった。からくり機構による無人搬送車が消費電力量の低減に有効であることがわかった。

4-146

ワイヤ駆動ハプティックグローブの張力検出および張力制御に関する検討

◎榊 邦男・小田尚樹（公立千歳科学技術大学）

屈曲動作のみのワイヤ駆動ハプティックグローブの開発を目的とし，自由運動時に弛みなくワイヤ駆動するために微小な張力制御の検討を行った。グローブの使用者が自由に指を動す際にワイヤの弛みが生じる場合があり，弛みは力覚の提示を妨げる要因になる。このワイヤの弛みの解消を目的として薄膜力センサを用いたワイヤの張力制御を行った。取り付けたセンサはワイヤが張るとセンサ上面の凸状部品により加圧され張力を検知できる。モータトルクを制御し検知した張力が微小な張力目標値になるよう張力の制御を行う。実験としてワイヤの他端を固定した状態における張力制御を行い，その応答結果から張力制御の有効性の確認を行った。

4-147

深層学習によるピエゾアクチュエータのヒステリシス特性補償に関する研究

◎南 舜祐・元井直樹（神戸大学）

近年，微小な物体を高精度にマニピュレーションする技術が希求されている。医療分野においては細胞を操作することにより病理診断が行われ，産業分野においては微小電気機械システム（MEMS）の製造などに用いられる。この様な微細な動作を行う上で，ピエゾアクチュエータは高出力，高精度，小サイズなど様々なメリットがあり，広く利用されている。しかし，ピエゾアクチュエータにはヒステリシス特性が存在する。この特性によって位置決め精度が大幅に低下してしまう。そこで，本研究ではピエゾアクチュエータの位置決め精度の向上を目指し，深層学習を用いたヒステリシス特性の補償方法を提案する。

4-148

バイラテラル制御を用いた穿刺動作の解析

◎河野伸一・小林聖人・元井直樹・石井豊恵・大西鮎見（神戸大学）

臨床上頻繁に実施されている静脈穿刺においては，神経損傷などの後遺症リスクが存在する。そのため，訓練者全員が正しい穿刺動作を習得することが望まれる。しかし，正しい穿刺動作の習得度は人の感覚のような定性的評価に依存しており，訓練者によって差がある。そのため，訓練者への正しい穿刺動作習得のために，穿刺動作の定量評価が希求されている。本研究では穿刺動作の定量評価のための基礎検討として，4chバイラテラル制御により穿刺動作における位置・力情報の抽出・解析を行った。

4-149

単純適応制御に基づく速度脈動を抑制するペダリングアシスト制御

○畑田和良（福岡大学）・平田健太郎（岡山大学）

我が国で市販されている電動アシスト自転車には，ヒトにより生成されたペダリングトルクに比例したアシストトルクを加える踏力比例制御が採用されている。ヒトの筋骨格系の制約によりペダリングトルクは脈動を伴うことから，踏力比例制御は自転車の速度の脈動を増幅する。先行研究において，著者らはエネルギー効率の意味で最適となるのは，速度の脈動が抑制された場合であることを数理的に示し，周期外乱オブザーバ（PDO）等を応用したアシスト系を構築して，実験によりバッテリ電圧低減の抑制を実証している。そこで，本研究では駆動系モデルが変化する状況においても速度領域を維持することを目的に，適応制御に基づくアシスト制御系の設計について考える。

4-150

再生可能エネルギーを大量導入した離島系統におけるVPPを用いたエネルギーマネジメントに関する研究

◎安武直朗・川崎章司（明治大学）

近年，地球温暖化対策や脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの導入が進んでいる。また，環境に配慮した電気自動車などの様々なエネルギーリソースが需要家側に設置されている。そのため，電力系統はより複雑化しており，複雑な系統に対応できる柔軟性のある電力システムの構築が求められている。このような背景から，VPP（Virtual Power Plant）という仕組みが注目されている。本稿では，VPPの仕組みを用いて，再生可能エネルギーを大量導入した離島における最適な電力需給計画手法の提案を行う。タブーサーチを用いて，内燃力発電の変動量及び内燃力発電機の起動停止回数を最小化し，提案手法において離島系統におけるVPPの有用性を検証する。

4-151

創蓄エネルギー設備を有するビルの需要設備に着目した停電時電力管理最適化手法の提案

◎木村雄太・木下創太・山口順之（東京理科大学）・佐藤冬樹・峰行拓馬・川野裕希（三菱電機）

停電発生時には系統からの給電が停止するため，設置された創蓄エネルギー設備からの給電となり，電力は不足傾向にある。本研究では，オフィスビルの停電時に発生する損害を最小限にとどめて，事業継続を行うためのエネルギーマネジメント方式を提案する。フロアごとの在室人数と需要設備の稼働状況を制御変数とした設備起動停止計画問題として定式化し，停電時に発生するコストを最小化する。シミュレーションでは，実際のビルデータを用いて停電時を想定した数値実験を行い，損害を最小化する設備の稼働状況と在室人数について得られた解の妥当性を検証した。

4-152

業務ビルの総エネルギーコスト確率分布を用いた創蓄エネルギー設備導入量決定法の提案

◎木下創太・木村雄太・山口順之（東京理科大学）・佐藤冬樹・峰行拓馬・川野裕希（三菱電機）

近年の災害が原因の大規模停電による社会的損害は極めて甚大である。そのため，わが国ではレジリエンスの強化に注目が集まっている。筆者らは，これまでの研究でレジリエンスを強化する際のコストを確率分布で示すことができた。本研究では，確率分布からレジリエンスをできるだけ高めつつ，コストが小さくなる最適な設備導入量を決定する方法を提案する。提案手法ではモンテカルロシミュレーションによって求められた様々な投資コストの組み合わせをある程度幅を持たせて複数の投資方策に結果を分類し，その中で平均コストが同じ投資方策を取り出した。この取り出した各投資方策の特徴を提示することで意思決定者の投資の手助けをする。

4-153

バス配線型屋外直流給電システムにおける短絡保護方法の検討

◎花岡直樹・砂田裕志・樋口裕二・中村尚倫・田中 徹（日本電信電話）

NTTでは，通信ビルと近隣ビルを自営線で接続し，ビル間で直流380Vの電力を融通する屋外直流給電システムの検討を行っている。複数の近隣ビルをバス配線で接続することで，通信ビルと複数の近隣ビルをスター配線で接続するより低コストで構築可能である。しかし，バス配線の場合，短絡によりバス電圧が低下するとバスに接続された全ての負荷への給電が停止する。そのため，短絡点のみを選択遮断する手法が必要である。本稿では，半導体遮断器を用いてバス配線型屋外直流給電システムにおいて短絡点を選択遮断する手法について検討した結果を報告する。

4-154

Web APIを活用したGHG排出量のリアルタイムな見える化の要件検討

◎澤田明日香・佐藤弓子・佐古田健志・川添博史・前川智則（東芝）

カーボンニュートラル実現に向け，現状の把握手段の一つとしてGHG排出量の見える化がある。街や国といった大規模な範囲の排出量をリアルタイムで見える化できれば，脱炭素対策の実施・効果検証・改善というサイクルを短期間で回すことができ，より早くカーボンニュートラルに近づいていける。本稿では，ユースケース例として，再エネで発電する創エネ機器及び創エネ機器で発電された電力をためる蓄エネ機器を導入した場合に，GHG排出量をリアルタイムに見える化するシステムの要件を検討した。また，検討結果を基に，Web API経由で収集した各機器の計測値と排出原単位からGHG排出量を算出し可視化するシステムを設計した。

4-155

電気と熱エネルギーのセクターカップリング用論理ノードの設計方針

○大谷哲夫（電力中央研究所）・小澤 浩（アズビル）・田中立二（産業技術総合研究所）

IEC TC 57 WG 17において，電気と熱エネルギーのセクターカップリングに用いる論理ノード（SC用LN）の作成が行われており，筆者らはその活動の中核を担っている。論理ノードとは，電力リソースの保護や制御に関する機能を実現する基本単位としてIEC 61850にて定められているものであり，システムには基本的にソフトウェアとして実装される。本稿では，SC用LNの設計方針を説明した後，それらに基づいて定義した各種SC用LNを報告する。

4-156

実用的な生産シミュレータと整数型Population-Based Incremental Learningを用いた組立加工工場の生産計画最適化

◎片桐瑠星・福山良和（明治大学）・川口嵩平・高橋賢二郎・佐藤隆臣（三菱電機）

本論文では，ある組立加工工場の研磨工程を題材に，ライン毎の生産割合，ライン毎の生産順序，製品毎の生産開始時間の3つを決定変数とし，実用的な生産シミュレータと離散型進化計算手法である整数型Population-Based Incremental Learningを用いた生産計画最適化を提案する。本手法を適用することで，熟練者の取り組みを模倣して立案した計画よりも生産コストが削減でき，3つの決定変数を同時に最適化できることを確認した。

4-157

NaBH₄とクエン酸を燃料とする可搬型水素エンジン発電機システムの燃料投入量決定法

◎末川知弥・星 伸一（東京理科大学）・福田一人（デイトナ）

数ある水素キャリアの中でも高い体積エネルギー密度で運搬等に特殊な容器が不要なNaBH₄とクエン酸を燃料とする可搬型水素エンジン発電機システムの発電機出力電圧に応じた燃料投入量決定法を提案した。具体的には，発電機出力電圧を電圧センサ回路・A/D変換器を介してマイコンへ入力し，得られた情報を元にPID制御を行うことでチューブポンプの回転数を変化させ，燃料投入量を操作した。検証実験より，電圧降下及び振動が発生するが，低出力発電装置の要求項目等で規定された範囲に収まることが確認でき，一定水素流量を供給する非制御時と比較して約20%の燃料投入量の低減を確認した。

4-158

地域内で利用される電気自動車のSoC分布推定 ～車両・用途・充電選好・充電出力の影響～

○小田拓也（東京工業大学）・河野俊介・森 一之（三菱電機）

災害発生時に電動車から外部に給電し，救命や生命維持，BCPや生活支援などに活用することが期待されている。しかし電気自動車（EV）の充電率（SoC）は様々な理由で変化するため，災害発生時の保有電力量を把握することが難しい。そこでEVの時刻別充電需要を推定するシミュレータを用いて，車両の用途，蓄電池容量，普通充電や急速充電（QC）の出力，充電場所などの違いを考慮した複数のシナリオを与え，各シナリオにおけるSoCの出現頻度を推定した。その結果，地域内にあるEVを平均的にみると，どのような時間断面でも蓄電池容量の50%以上の電力量を有していると考えられた。

4-159

自律分散制御型直流マイクログリッドのBEV急速充放電器を用いた実証実験

◎阿部飛鳥・野呂泰平・室伏規雄・可知純夫・笠原淳一・松井剛生・若菱忠高（古河電気工業）・森 純一（トヨタ自動車）

再エネおよび電気自動車（BEV）の普及に伴い急速充電器の大量導入が予測される。我々は，再エネおよびBEVを最大限に生かせる直流マイクログリッド（DC-MG）を社会実装するための課題を検証するために，自律分散制御型DC-MG実証実験設備を構築し，実験を行った。DC-MGは，交流系統，太陽光発電，鉛蓄電池，2台の急速充放電器，負荷で構成され，各コンバータには電圧マージン方式を用いた自律分散制御機能が搭載されている。 交流系統，鉛蓄電池，BEV1台，太陽光発電を供給側，BEV1台を急速充電として，BEVのみでDC-MG電圧を安定化させる実証実験を行い，直流マイクログリッドの電圧を自律分散的に維持安定化させることに成功した。

4-160

外部モジュール活用による汎用SCADA機能高度化手法の検討

◎田中暉之・柳原慎太郎・上野洋平（三菱電機）

水処理などのプラントやビル管理分野において，中央で一元的に管理が可能なSCADA（Supervisory Control And Data Acquisition）の導入が進んでいる。SCADAでは案件ごとに専用の構成や機能の開発がなされてきたが，近年は汎用的なSCADAソフトウェアが登場してきている。本講演では，既存のSCADAの運用支援機能を汎用SCADAで利用するためのシステム構成について検討を行った内容について述べる。本構成により，漏水検知や管路の破断検知の機能以外も外部モジュールとして汎用的に利用可能となることが期待される。今後は漏水検知や破断検知以外の運用支援機能の汎用化検討も行い，汎用SCADAの高機能化を図っていく。

4-161

DER遠隔制御機能の整理と配置

○馬場博幸・今中政輝（東京大学）

リソースアグリゲーターの制御システムとDERの相互接続には，通信プロトコルなどの技術的な擦り合わせに加え，数値情報の桁や補助単位，制御命令の送出順序の整理など，差異・処理等に関する利害調整的な擦り合わせも必要となる場合が多い。本研究では，DER活用の円滑な社会実装に資することを目指して，どのような擦り合わせ項目が存在するかをリストし，その機能配置の在り方を検討するための基本的整理をした。

4-162

災害時における二次集積所の最適配置・配送エリアを考慮した最適ロジスティクス －最適ロジスティクスの並列化検討－

◎小野田紗羅・福山良和（明治大学）

日本は数々の自然災害に見舞われている。また，それら自然災害は近年大規模になり日本国民は脅威にさらされている。そのような自然災害発生時に，物資提供者から集積所を経由し避難所へ緊急支援物資を送るシステムである緊急支援物資ロジスティクスはなくてはならない。最悪の場合，被災者の生死に関わる緊急支援物資ロジスティクスは正確かつ迅速に送ることが重要である。本論文では，緊急支援物資ロジスティクスを統合的に解くことを可能にするアルゴリズムの並列化の範囲を広げ，エリア毎の計算の粗粒度並列化による高速改良型リアクティブタブーサーチの適用を提案する。

4-163

災害時における二次集積所の最適配置・配送エリアを考慮した最適ロジスティクス －並列改良型RTSのパラメータ感度解析－

◎阿部拓海・小野田紗羅・福山良和（明治大学）

近年，台風や地震などの大規模災害が全国各地で発生している。災害時に支援物資を避難所に早急かつ公平に配送する緊急支援物資ロジスティクスが欠かせない。緊急支援物資ロジスティクスは人命に関わる問題であり，各自治体が有事に備えて事前に検討すべき問題である。本論文では，実際の災害発生時に使用される予定である千葉市のデータを用いた緊急支援物資の最適配送計画に対して，並列改良型リアクティブタブーサーチのパラメータ感度解析を行った結果について報告する。

4-164

ウェアラブルマイコンを用いた機械学習による工場作業の可視化

◎辻 翔太・水戸慎一郎（東京工業高等専門学校）

主に重工系溶接工程の簡便な可視化を目指し，作業者の腕に装着した小型ウェアラブルマイコンによる作業分類を行った。マイコンで取得した加速度と音を，マイコン内部の機械学習モデルにより分類し，Wi-Fiで送信した。また，デバイスによって判定した作業履歴データの欠陥の修正やデザインの改善および実際の溶接工程での実証実験を行った。3種類のハンドツールに対して作業分類を行ったところ，最大4秒程度の誤差で作業タイミングと時間を可視化できた。実際の溶接工程を対象にしても約90％の精度で作業推定できるモデルを作ることができた。

4-165

Detection of Unauthorized Usage of Mobile Phone in a Large Examination Room Considering Distance Characteristics

○Tsolmon Myagmarjav・Tuvshinbayar Bandi・松嶋 徹・大塚信也（Kyushu Institute of Technology）

The authors have investigated people flow properties in urban areas around the JR stations as a part of “Project PLATEAU” by detecting Wi-Fi and 4G/LTE signals from mobile phones. In recent years, there has been a problem with unauthorized usage of mobile phones during exams. According to the previous study, we found that the mobile phone signals in the exam room drastically decreased after the start exam, and when we emitted artificial signals, the signals were detected as soon as they were emitted. In this paper, we focused on detection characteristics of the signals from a mobile phone in a large room with a capacity of about 300 people, and investigated signal intensity depending on the distance between the mobile phone and the detection system.

4-166

宇宙線中性子のLiBシステムへの影響

◎砂田裕志・花岡直樹・樋口裕二・中村尚倫・田中 徹（日本電信電話）

高いエネルギーを持つ宇宙線中性子は，さまざまなデジタル制御機器の誤動作を起こすことが知られている。電力システムの信頼性の向上を検討する一環で，高エネルギー中性子によってLiBシステムが誤動作を起こす可能性について実験的に調査した。粒子加速器を用いて高密度の高エネルギー中性子をを照射しながらLiBシステムの充放電を行ったところ，動作の停止が確認できた。また，照射した中性子の総量と充放電停止の回数から自然中性子によってLiBシステムが停止する頻度を推定した。

4-167

水車発電機のセンサデータ分析による異常兆候検知

○松井暁彦・半田 功・鈴木悠太（電源開発）

水力発電所の水車発電機の運転中センサデータに対しデータ分析を適用し，異常の兆候を検知する手法を構築した事例を報告する。検知アルゴリズムとしてオートエンコーダを採用しており，教師無し学習モデルによって発電設備の異常を早期に検知し事故・停止を回避するものである。

4-168

自動販売機における残数検知技術の検討

○真鍋 章・矢﨑敬祐・浅野貴正・堀口剛史・神谷圭亮（富士電機）

現状，飲料自動販売機の商品補充は，ルートマンが手動入力した商品投入数から推定した「理論在庫（商品残数）」をもとに最適化したルートを参考に行っている。しかしながら，①商品投入数の入力が手間，②人的ミスが発生する等の各種課題もあり，必ずしもルートが最適化されているとは言えない状況である。 そこで，商品搬出時に生じる在庫飲料とラック部品との衝突音が飲料自動販売機庫内の商品残数によって異なることに着目し，商品販売音データをAIに学習させることで，商品残数検知が可能となるかどうかを検討している。 本稿では，実際に集音した商品販売音データで，商品残数検知精度を評価したので，その結果を報告する。

4-169

物販自動販売機における売切れ判定手法の検討

◎髙橋洋輔・浅野貴正・堀口剛史・神谷圭亮（富士電機）

物販用の自動販売機で取り扱う多様な商品に対して汎用的に売切れ状態を判定することを目的に，販売機庫内を撮影した画像に対して深層学習による異常検知を適用したシステムを検討している。深層学習による異常検知には，複数枚の正常画像から深層学習モデルを用いて抽出した特徴量の分布をあらかじめ作成し，その分布からの距離に応じた異常度を入力画像に対して出力する手法が知られている。商品のない状態を異常検知における正常，商品のある状態を異常と定義すると，多様な商品の画像を事前に用意する必要がなく，商品画像に対する異常度によって汎用的に売切れ状態を判定することが可能と考えられる。本発表では，上記の異常検知を応用した売切れ判定手法の開発とその評価結果について報告する。

4-170

モデルスケーリングによる組込向けCNNの構築

◎野間拓耶・能登大輔・浅野貴正（富士電機）

畳み込みニューラルネットワーク（CNN）を組込機器に実装するためには，計算リソースに合わせてモデルを設計する必要がある。しかしながら，明確な設計方法は確立されておらず，技術者の経験やスキルに依存するため，自動的に最適なモデルを構築する技術の開発が求められている。 CNNの1つであるEfficientNetでは，「層数d/チャネル数w/解像度r」をバランス良く拡大するスケーリングルールを提案し，効率的に性能を向上させている。このルールにより，指定した計算リソース内で性能が最大化するモデルを自動的に構築する。 本発表では，EfficientNetのスケーリングルールをモデルが縮小するように応用し，組込実装に対応したモデルの構築可能性を検証した。

4-171

小規模農家向けハーブ栽培支援システム

○歌谷昌弘（福山大学）

現在，農業従事者が高齢化し減少する傾向にあり，IoT・ICTを活用し農作業の省力化や効率化を進めるスマート農業を国や自治体が積極的に支援している。実際に農作業の負担を軽減するシステムやサービスを提供する企業も増えている。しかし導入コスト等の問題もあり，小規模な農家が個人でこうしたサービスを利用するまでには至っていない。 著者らはこれまで無線シリアル通信ユニットを使用して，マンホール内の環境データを収集するシステム等を提案してきた。本研究では，これまで蓄積してきたノウハウを応用し，小規模なハーブ農家向けの栽培支援システムの構築を目指す。

4-172

インパルス試験に基づいた固定子巻線の熱劣化検出に関する検討

○中村久栄（トーエネック）・水野幸男（名古屋工業大学）

電動機は産業の基幹動力源として広く用いられている。しかしながら，コスト削減のため適切な保守管理が行われていないことが多く，安価で簡易的な診断方法の確立が望まれている。著者らはこれまでの研究において，インパルス試験時に巻線両端で観測される電圧波形に基づいた巻線の故障診断手法を提案した。今回，通電により巻線の絶縁を熱劣化させたときの検出法について検討した。

4-173

LSTMを用いたへら絞り技能再現システムの加工対象の厚みに対する汎化性能評価

◎久米駿弥・漆原史朗・吉岡 崇（香川高等専門学校）

ものづくり産業を下支えしている熟練技能は，少子高齢化による継承者減少や熟練者の高年齢化などの問題を抱えており，早急な対応が望まれている。一方で，第4次産業革命時代を迎えている今日，IoT技術の普及とともにビッグデータや人工知能が至る所で活用され成果を上げている。本稿では，熟練技能の永久保存と技能継承の円滑化を見据え，深層学習およびクラウドを用いた熟練技能再現システムを提案する。熟練技能としてへら絞りに着目し，時系列に特化した深層学習モデルであるLong Short-Term Memoryの作業条件に対する汎化性能について検証を行った。検証の結果，モデルの入力に作業条件である加工対象の厚みを加えることによってそれに対する汎化性能が改善することを確認した。

4-174

腐食検知センサの開発

○福永哲也・小林宏規・千林 暁・野口優弥・宇都宮里佐（日新電機）

当社は，一般的な需要家である工場・ビル等以外に，水処理施設など腐食性ガスが発生する施設にも電気設備を納入している。水処理施設で特に問題となる腐食性ガスは硫化水素である。硫化水素による不具合を防止するため，当社は硫化水素ガス対策を施し，納入してきた。今回，設備運用のさらなる安心の実現を目的として，硫化水素による機器故障リスクを推定できる機器を開発したので紹介する。

4-175

複合環境センサ統合アプリの開発

◎小林宏規・福永哲也・千林 暁・石倉定幸（日新電機）

将来的な電気保安人材不足の対策として，設備メンテナンスにデータを活用する取組みが経産省で進められている。当社は，受配電設備など電気機器の設置環境の「見える化」を目的とした複合環境センサについて順次ラインアップの拡充を行っている。今回，各センサの表示・設定アプリについてリニューアル開発を行い，ラインアップ共通の統合アプリとするとともに，簡易診断機能を追加した。本稿ではその概要を紹介する。

4-176

室内区画を考慮した複数地点への最短移動経路作成法

○日高浩一・水谷優介（東京電機大学）

近年の人手不足の問題からロボットを利用した自動作業の運用が期待されている。特に天井施工では長時間同じ姿勢での作業となることから，自動化が要求されている。作業をロボットなどで自動化する場合，複数の作業位置を効率的に移動する経路設計が重要となる。そこで我々は施工図面の壁などの情報を考慮した最短の自動経路設計アルゴリズムを提案し，2種類の施工図面データを利用した経路作成の結果より性能評価を発表する。

4-177

車載工具荷下ろし作業の負担評価と負担軽減手法の検証

◎米谷 麟・岩塚 武・池浦良淳・早川聡一郎（三重大学）・杉本敏文（中部電力）

変電所作業には筋力を要する作業や狭い場所で行う作業があり，技能系作業に慣れていない者にとっては負担を感じやすく，健康被害につながることが懸念されている。本稿では，変電所作業のうち車からの車載工具荷下ろし作業を取り上げ，負担評価を行った。車載工具荷下ろし作業の中で特に負担が大きいと考えられる，約20kgの荷物を荷台から持ち上げる瞬間と地面から持ち上げる瞬間の2つの姿勢について，椎間板圧迫力と脊柱起立筋力を推定することで作業改善の必要性が確認できた。また，負担軽減の手法を提案し，そのときの作業姿勢の椎間板圧迫力と脊柱起立筋力を推定した。この結果，椎間板圧迫力と脊柱起立筋力が4～5割程度低減することがわかり負担軽減手法の有効性が確認できた。

4-178

3慣性振動系を対象とした2自由度制御系の加速度センサを用いたオートチューニング手法

◎山下公志郎（九州工業大学）

近年，産業用ロボットマニピュレータの振動の対策として数学モデルを用いた振動抑制制御が多く用いられている。これらの数学モデルの同定手段として，多慣性系モデルを用いた2自由度制御系の振動抑制制御則を構築し，Fictitious Reference Iterative Tuning（以下FRIT）を用いて調整結果が最適なパラメータに自動調整できることを検証している。本研究では先行研究で用いたシミュレーション環境での2自由度制御系の調整方法を考案し，また多慣性ロボットへの適用を見越して加速度センサによる加速度情報を用いたFRITによる調整が可能であるかをシミュレーションにて検証したので報告する。

4-179

限定極配置法によるオブザーバ制振制御の解析

○浦川禎之・ンガムラマイシリチャイ（日本工業大学）

モータ位置決めシステムはギヤなど低剛性要素により共振特性を持つ。ねじれトルクセンサや負荷側エンコーダを用いる制振制御系もあるがオブザーバによるセンサレス制振制御もコストや手軽さから必要性が高い。ディジタル実装時にはサーボ帯域を上げようとすると演算時間遅れのため振動が生じるが，本格的対応では制御器変更が必要なため，演算時間遅れを0とした試行錯誤のパラメータ調整対応も多い。筆者は演算時間遅れを考慮した制御パラメータ決定法である限定極配置法を提案しており，これを用いてオブザーバ制振制御のパラメータを算出しサーボ帯域限界の定量的評価やPID制御との比較などの解析を行った。

4-180

遊星歯車機構を備えたフライホイール電動発電機のリングギア回転速度制御による充放電装置

○加藤修平（日本大学）・塩島大輔・川口卓志（シグマエナジー）

フライホイール装置は従来，電動発電機とフライホイールの両軸は直結されていた。本稿では両軸を遊星歯車機構で接続（サン軸がフライホイール，キャリア軸が電動発電機）する方式を提案する。これによりリングギアを外部から回転させ速度制御することで主たる電力ルートにインバータ・コンバータ等の半導体電力変換器を用いず機械エネルギと電気エネルギを変換する方法について停電保護を目指し実機検証を行ったので報告する。

4-181

トランスファクレーン向けハイブリッド型蓄電システム

○清水雅裕・門田行生・森島洋一（東芝インフラシステムズ）

港湾のコンテナ移動で利用されるトランスファクレーンではエンジン発電機と併設して二次電池を適用することで，回生エネルギーの再利用や，エンジン発電機の小型化の検討が進められている。その一方，蓄電装置はトランスファクレーンに搭載されることから一層の小型化が求められる。蓄電装置の小型化を目的として，トランスファクレーンに二次電池と電気二重層キャパシタEDLCを併用したハイブリッド型蓄電システムを提案した。クレーン負荷のピーク電力を出力特性に優れたEDLCを用いた。二次電池・EDLCの電力分担と蓄電装置体積との相関を明らかにし，二次電池のみで構成する蓄電システムと比較して，蓄電装置の体積を31%低減できる見通しを得た。

4-182

セル段数を低減した高電圧マルチレベルインバータ

◎清水嘉文・松本 圭・李 天健（東芝三菱電機産業システム）

産業分野において，高電圧電動機を高電圧インバータで可変速駆動する応用がある。高電圧インバータの方式としては，広範な出力電圧・出力電流へ対応可能かつ出力高調波低減に有効であるセル多重方式マルチレベルインバータが適用されている。セル多重方式マルチレベルインバータはセル段数を増加するほど出力高調波が低減される一方，セル制御装置数増・セル筐体数増によるコスト・サイズの上昇と，主回路電流の通過素子数増加による装置損失増加が問題となる。本稿では，コスト・サイズ・装置損失の低減を目的とした，従来品に比べ同出力定格電圧でセル段数低減が可能な新製品の開発結果について述べる。

4-183

磁気粘性流体ブレーキの温度に関する基礎検討

◎野村 仁・彦坂岳志・菊池良巳（信州大学）

著者らは航空機の次世代のブレーキとして，渦電流ブレーキと磁気粘性流体ブレーキを組み合わせた非接触型のハイブリッドブレーキの研究開発を行っている。このブレーキは電流を印加して制御するため，航空機の電動化の一端を担うことができる。また，非接触式にすることで，軽量化や整備性の向上が期待されている。本稿では磁気粘性流体ブレーキを高温下で使用した際の基礎検討について述べる。また，航空機のディスクブレーキはアンチスキッドブレーキシステムが適応されているため，過渡特性の研究が必要となり，時定数についても検討した。発表では，平均粒径を8，25，45µmで変化させたときの時定数-温度特性，および温度を変化させたときのそれぞれの粒径におけるせん断応力-温度特性について説明する。

4-184

Mgビーズを用いた電解装置におけるアルカリ度と電流の関係

◎眞下史樹・太田康翔・安本浩二・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）

本研究では，スクラバ水のアルカリ化を目的に，陽極をMg，陰極をSUS，そして中間電極をMgビーズとした直列接続型電解装置による水溶液のアルカリ化について検討した。Mgビーズの直径は6mm，数量は354個とし，電極間隔100mmの陽極と陰極間に浮遊させた。電極間電圧は最大10V，電流は最大8Aとし，アルカリ度を塩酸滴定法にて測定した。その結果，電流2A以下においては見られなかったが，4A以上において水溶液のアルカリ化に対するMgビーズの効果が得られた。すなわち，Mgビーズが電気的に直列接続と同等の状態となり，アルカリ物質を生成していることが明らかとなった。

4-185

無線給電を適用した高圧インバータのゲートドライブ回路

◎山本晴登・新海 健（東京工科大学）

大型産業用モータや，HVDC変換器に使われている，6.6kV以上の高圧インバータ等のパワー素子を駆動する場合，ゲートドライブ回路へ供給する制御信号と電源のインターフェースに高い絶縁性が必要である。非集積型フォトカプラや，高圧の絶縁型DC-DCコンバータに比べ安価でシンプルな絶縁方法が求められている。本研究では，高圧側からゲートドライブ回路を排除し，ゲート信号そのものを絶縁を兼ねた無線給電で高圧パワー素子に供給する方式を提案する。本方式の懸念点である，高周波電流を低圧側で1kHzでスイッチングして間欠波形に成形できるか，片側極性ゲート信号で高圧側IGBTの安定したOFF動作を行えるかを検証し，単相インバータの作成，動作確認を行った。

4-186

搬送ロボットへの電界共鳴型ワイヤレス給電の適用

◎矢持多聞・新海 健（東京工科大学）

人間と協働で行動する搬送ロボットの研究，開発導入などが盛んになってきている。継続的な走行を可能にするため搬送ロボットに組み込むワイヤレス給電のシステムを目指すために1/40スケールモデル（ミニ四駆）で電界共鳴型ワイヤレス給電システムを検討した。今回はその実験結果と効率向上の結果について報告する。受電電極寸法を変えて受電電力の周波数特性を測定する実験，電界共鳴型ワイヤレス給電を用いた走行実験を行った。実験結果から誘電率の高い材質を用いれば車体面積程度の電極でも1/40スケールミニモデルを継続走行できることが分かった。

4-187

電気，電子部品の格納箱内環境と屋外環境の腐食性比較

○龍岡照久・伊地知弘光（東京電力ホールディングス）

大気環境に曝される電力設備は，海塩粒子等の大気浮遊物質からなる付着物と，雨，雪，霧の高湿度環境で生じる表面のぬれ状態によって腐食を生じるため，塗装やめっき等の腐食対策を施している。これらの電力設備に電源供給する電気部品，運転制御し状態監視するための電子部品等は，制御箱，制御盤，分電箱，分電盤等の格納箱内に設置されており，付着物侵入・堆積と湿潤環境により表面はぬれた状態になり，長期的には腐食や絶縁性能低下を生じる場合がある。しかしながら，格納箱内への大気浮遊物質と湿分の侵入・蓄積に関する定量的な評価結果は少なく，長期的な対策が不十分になっている可能性がある。本報告では，格納箱内外にACMセンサ，温湿度センサ，気圧センサを設置し比較した結果を紹介する。

4-188

バイオマスFPSEGとPV発電によるアーバン・エコ・モビリティ対応プロトタイプ電源車の開発

◎横田孝浩・高見 弘・章 方成（芝浦工業大学）

近年，化石燃料の大量消費や森林減少による地球温暖化や地震や台風といった自然災害が多発しているという問題がある。そこで，バイオマス燃料を用いたフリーピストンスターリングエンジン（FPSEG）発電による電源車を開発し，太陽光発電（PV）を併用した災害対応型移動式電源車の試作を行った。さらに，発電した電力を有効活用するためにLi-ionバッテリーを搭載した。さらに，環境との調和を図りつつ都市におけるヒトやモノの円滑な移動，居住者から来訪者に及ぶ多様な交流を支える「アーバン・エコ・モビリティ技術」の開発に取り組んできた。本稿では，アーバン・エコ・モビリティに対応したプロトタイプ電源車を開発したので報告する。

4-189

2軸PI電流制御系の2軸平面上での追従軌跡解析

塚越昌彦・○新村直人・伊藤拓巳・戸林俊介（東芝三菱電機産業システム）

誘導電動機のベクトル制御などに一般的に用いられているdqの2軸上の電流制御系において，その追従性についてはすでに多く検討されている。このモデルにおいては，dqのインダクタンスによる相互干渉の影響で，自身のPI制御系だけでは，基準に対するフィードバックの追従性を確認できない。そこで様々な追従性の確認方法がある中で本稿では，2軸平面での追従軌跡を描くことで，より視覚化しやすく，これを理解する手法について述べる。

4-190

SAWフィルタを用いたインバータ駆動システム受信回路の性能向上

◎大井滉也・五箇繁善・福岡政大・和田圭二（東京都立大学）

電力変換回路で使用される制御信号において，配線数低減（信号多重化）・高温動作・高信頼性の実現を目指したSAW（Surface Acoustic Wave）フィルタを用いたゲート駆動回路を提案している。このゲート駆動回路は，制御信号と駆動電力を同時に伝送できることに特長がある。本研究では，SAWフィルタを用いたゲート駆動システムの受信回路側についてインピーダンス整合を行う事で伝送効率を向上させ，受信機側のCW回路の時定数を最適化することで高速化を図った。整合により伝送エネルギーを向上させることで，CW回路の時定数を低下させることが可能となり，加えて波形形成回路（論理ゲート）への電力供給も可能とした。計測結果よりMHz帯でのゲート駆動伝送へ目途がついたため報告する。

4-191

ETCレーン内カメラ夜間動画像における車種判別の検討

◎近藤歩夢（日本大学）

現在ETCにおいてナンバープレートや車載器の改竄などにより，不正な価格で通行する車両が発生しており，各高速道路会社でETC不正通行に対する方針が示されている。本研究では，ETCレーン内のカメラを利用して，画像処理による車両検出および車種判別を目的としている。Yolov5により検出した値からラベリングを手動で行うものを半自動アノテーションと定義し，全手動アノテーションの2種類の方法で学習データを作成し制度の確認を行った。結果として半自動では未検出台数は多いもののYolov5のモデルより成功率が高くなる結果が得られた。また全手動では，学習時間のみでは半自動と同様の時間で未検出車両もなく97.8%と，高い精度の回答率を得られた。

4-192

ETCカメラ動画像を用いた車種判別の検討 －検出率向上のための前処理と判別クラスの細分化について－

○櫻井航太・滕 琳・泉 隆・香取照臣（日本大学）

ETCは路側アンテナとETC車載器との間で無線通信を行うことにより車両を停止することなく料金収受を行うことができるシステムであり料金所周辺の渋滞緩和や利便性向上などの効果が見込まれる。しかし，このETCにおいてETC車載器を載せ替え不正な価格で通行する車両が存在し，各高速道路会社でETC不正通行に対する方針が示されている。 本研究ではETC不正通行に対する対策として，ETCレーン内に設置されたカメラの動画像に着目し，物体検出モデルYolov5を用いた車種判別を検討している。 本稿では検出率向上のための前処理としてヒストグラム平坦化の適用を提案し，また判別精度向上のため，判別クラスの細分化を行い判別精度の検証実験を実施した。

4-193

加減速度の制約を考慮した目標車間距離をもつ追従モデルの解析

◎高木勇樹・星野貴弘（日本大学）

サグやトンネルなどのボトルネックでは，無意識のうちに加速や減速が起こり，それが後続車両へと伝搬し，車間距離の維持がなされずに渋滞が発生している。先行研究では，複数のACC車両を車群として交通流モデルに導入することで，ボトルネック周辺での渋滞緩和に効果的な車群形成の可能性について検討した。本研究では，先行研究で問題点とされていた，現実とは乖離した車両の挙動に対して，加減速度への制約と逆走を防ぐ処理を追加した交通流モデルを提案し，より現実的な挙動となるように改良を行った。本稿では，提案モデルに対するシミュレーション結果について述べる。

4-194

自動運転車の性能を考慮したマイコンカーの開発

◎真土凪人・星野貴弘（日本大学）

交通流解析におけるアプローチ方法はコンピュータシミュレーションを用いる方法と，道路で実際に車両を走らせ，得られたデータを解析する方法の二種類に大別される。前者はシミュレーション条件によっては現実的でない急加速や急減速などの挙動が起こってしまうといった問題があり，後者は現実的な結果が得られるものの，非常に高いコストがかかる他事故などの安全性の問題がある。以上の背景から，新たなアプローチ方法として，実際の車両の性能を考慮したマイコンカーを用いた交通流シミュレーションを提案する。本発表では開発したマイコンカーの仕様や構成についての説明と，走行実験の結果について検討を行う。

4-195

複数車線道路における群知能を応用した車線選択方法の最適化に関する検討

◎岡村 翼・星野貴弘（日本大学）

複数車線高速道路では走行車線の車両が車線変更を行うことで，追い越し車線との間に交通量に偏りが生じ，渋滞の原因となる。対策として，追い越し車線と走行車線の車線利用率を平準化させることで渋滞緩和に繋がることが判明している。本研究では群知能の一例である蟻の採餌行動をモデル化したAnt-trail-modelを参考にし，フェロモンを利用した車線選択方法を提案する。また，既存の複数車線道路を対象とした車線変更ルールと比較することで車線選択方法による渋滞改善効果について定量的に評価する。

4-196

Vehicle Navigation using UHF RFID System -Recovery from Uncomunicable Area-

◎Gabriela Maria Castro Gonzalez・弘内颯太郎・島越冠多・川村 武（北見工業大学）

We investigate vehicle navigation using a RFID system to prevent lane out in low visibility conditions during the winter. RFID tags are buried at 2 m intervals on a straight lane. Sometimes, drivers make large steering wheel actions that lead the vehicle out of the driving lane before reading the next tag. Our previous study instructed the driver to stop before this occurs, but when the vehicle makes the stop action, sometimes it loses communication with the RFID tags. In this study, we develop the recovery process from an uncommunicable area of our system. We create a recovery condition, run an experiment, and obtain positive results.

4-197

RTK-GNSSに基づく自転車の安全走行に向けた挙動分析

○川迎和輝・森岡一幸（明治大学）

近年，自転車の関係する交通事故が増加傾向にあり，特に交差点での事故が多くなっている。この問題を解決する方法のひとつとして，自転車走行時の運転者の挙動を測定し，その行動分析を行なうことで事故の発生要因等を考察し，運転者の安全運転意識を向上させることに繋げることが考えられる。近年，RTK-GNSS（Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System）という，誤差数cmの高精度な測位が可能なシステムが普及しつつある。本研究ではRTK-GNSSを用いた位置情報に基づく自転車走行時の行動分析を行ない，実際の走行に対応した交差点での停止や走行経路などが取得できることを示す。また，RTK-GNSSにより得られる走行結果と市販のサイクルコンピュータのGPSから得られる情報と比較し，その効果について考察した。

4-198

交差点事故情報を用いた運転支援システムにおける事故データ分析機能の高度化

◎安齊康人・中島 毅（芝浦工業大学）

日本における自動車の事故は近年減少傾向にあるものの，いまだに全国各地で事故が多発している。また全事故のうち半数以上は交差点内で起きている。そのため，交差点における交通事故の低減が最も重要であると考えた。本研究の目的は，交差点事故を減らすために，過去の交通事故情報を用いて運転を支援するシステムの提案と実装，そのシステムの有用性の評価である。運転経路上の各交差点において，事故データと現在の運転状況を比較して事故危険性をファジィ推論によって推定するシステムを提案した。提案システムを使用した実車実験の結果，交差点の300m手前で事故の注意喚起が行われ，本システムの実現性が確認できた。

4-199

列車運行における許容可能な列車位置誤差の検討

◎望月駿登・工藤 希・長谷川智紀・山口大助（交通安全環境研究所）

過密線区における鉄道の運行では，運行本数を多くするために列車同士の間隔を狭めている。一方，閑散線区では，運行本数が少ないために列車同士の間隔が広くなる。そのため，閑散線区での鉄道の運行においては，列車の位置検知の誤差が過密線区に比べ大きいことは問題ないと考えるが，安全に運行が可能な位置検知の誤差は定式化されていない。また列車の位置情報を用いる装置よって，要求される列車の位置検知の精度は異なるため，場所毎，路線毎に要求される位置検知の精度を明確にすることで，新しい装置の導入が容易になると考える。 以上を踏まえて本研究では，列車が安全に運行するために要求される位置誤差を定式化することを目的とする。その一環として，まず列車の位置検知をする際に生じる位置誤差について整理した。そして踏切道を例に位置誤差を加味した列車運行を想定したとき，現在の運行と同等の運行が可能な位置誤差を検討した。

4-200

衛星測位による路面電車位置検知の車上での測位精度評価

○山口大助・一柳洋輔・長谷川智紀（交通安全環境研究所）・植田 慎・堤 敦彦（広島電鉄）

路面電車の走行位置把握には架線上に設置したトロリーコンタクター（トロコン；架空接触器）を使用している。トロコンではピンポイントで路面電車の走行位置を検知できるが，トロコンから次のトロコンまでの間の走行位置を連続的に把握することはできない。そこで，連続して位置を検知できる衛星測位を路面電車に利用することが考えられるが，衛星測位は周辺環境によって測位精度が大きく変化するため，事前に測位精度の評価が必要である。筆者らは路面電車における衛星測位の精度を車上で評価する手法について検討したので報告する。

4-201

電駆動システムの損失を低減するモータ巻線切替手法

◎橋爪瞭弥・金城博文・岡本亮太郎・林 裕二（SOKEN）・赤間貞洋（DENSO）

近年，BEVの航続距離延長のため，モータ・インバータで構成される電駆動システムの損失低減技術が広く研究されている。BEVで求められる広範囲な速度-トルク特性と実用的なモード走行（低速・低トルク）領域での損失低減を両立するため，モータ巻線を切り替え，モータ特性を使い分ける手法が検討されている。これら手法では多くの半導体スイッチを必要としており，システム体格が増加すると共に高価になるという課題がある。本論文では1つの半導体スイッチでモータ巻線ターン数を等価的に切り替える電駆動システムを提案し，200kWシステムにおけるWLTC走行時の効率について，従来システムに対し損失19%低減，電費2.7%改善するという有効性をシミュレーションにより確認した。

4-202

永久磁石併用誘導モータの効率向上

◎張 秋実・高木茂行（東京工科大学）

今回は，永久磁石を誘導電動機に組み込むことによって誘導電動機の効率が向上することを検証した。磁石の残留磁束密度と保磁力の増加に伴いトルクも増大し，同時に変動も増大した。磁石の極数を増やすことでトルク変動幅を小さくなることができることが確認した。この後，磁石の磁束密度もっと高く設定してから，磁力を強くして，極数を増やすによって，変動は小さいまま，トルクを高くする方法を検討する。

4-203

永久磁石同期モータによる全電気ブレーキに関する研究

◎藤森 豪・髙木茂行（東京工科大学）

永久磁石同期モータの全電気ブレーキの実用性について基礎検討を行った。 先行研究によって得たモータの慣性モーメントなどを基に，PSIMのモータモデルを構築し，逆回転指令を徐々に増加させた時のシミュレーションを行った。逆回転指令によってモータ停止時間は早くなっているが，時定数付近では飽和する可能性が確認された。また今回は，インバータの昇圧動作を再現するためのシミュレーションモデルを構築できた。

4-204

電気自動車の回生ブレーキにおける昇圧回路による回生失効の抑制

◎三宅晃平・野中大輝・江口拓真・藤田晋太郎・大橋俊介（関西大学）

本論文では，昇圧回路を用いた回生回路にPI制御を導入し，減速度制御の精度およびエネルギー回収効率を向上させる方法を提案する。回生回路に流れる電流をPI制御で制御することによって減速度を目標減速度に追従させる。また，回生用モータの発電電圧が電気二重層キャパシタ（EDLC: Electric Double layer Capacitor）の充電電圧を下回った場合，昇圧回路によって回生用モータの発電電圧がEDLCの充電電圧より高くなるように昇圧する。提案法は，減速度1.3[m/s²]で回生ブレーキをかける条件で，従来法より減速度維持時間が0.8[s]長く，回収できるエネルギー量は49.7[%]向上する。

4-205

バイアストルク関数制御を用いた電気自動車の駆動制御

○髙木茂行・董 浩・小林諒人（東京工科大学）

電気自動車の制御方法とし，車輪のスリップを指標としたトルク関数制御が提案されている。スリップ時のトルクを0Nmとしていた従来のトルク関数に対し，有限の値をとるバイアストルク関数制御を新たに導入し，あらゆる走行状態で電気自動車を制御する方法を提案する。その検証として，濡れた路面の平地で加速する条件での実験を行い，制御が無い場合に比べ，可変のバイアストルク関数でのスリップ率は低く，バイアストルク関数による制御の有効性が確認した。

4-206

EVカートを用いた回生電力向上に関する研究

◎友部太一・髙木茂行（東京工科大学）

EVカートの回生性能向上を目的として，近年注目されているGaNデバイスをインバータ回路に適用した。今回の報告では，GaNデバイスの立ち上がりの速さと，インバータに適用して正常に動作することを確認した。今後は，EVカートにインバータ回路を搭載し，走行試験を行う予定である。

4-207

各市区町村のEV充電需要に応じた充電設備導入に関する一検討

◎渡邉雅俊・占部千由・加藤丈佳（名古屋大学）

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて，電気自動車（EV）が期待されているが，航続距離と充電インフラの不足が問題となっている。特に今後の充電インフラの大量導入には大きなコストがかかるため，各地域の充電需要に応じた効果的な導入が求められる。 筆者らはこれまでに，道路交通センサス自動車起終点調査（ODデータ）に基づき，各市区町村におけるEV充電需要を計算するモデルを構築している。本稿では，これまでの結果に基づき，EVの基地（自宅等）以外に必要なEV急速充電器の導入量について検討した。その結果，充電促進時間帯を導入し，充電タイミングを分散することで，充電器の必要台数を減らすことが可能であることが示唆された。

4-208

走行電気自動車に対する非接触パルス給電回路の大容量化に向けた回路パラメータの検討

◎力 香湖・伊藤弘昭・竹崎太智（富山大学）

昨今，地球温暖化は重要な社会問題であり，温室効果ガスの大幅な削減が求められている。対応策の一つとして純ガソリン車から電気自動車（EV）への移行がある。しかし，EVには給電時間の長さや航走距離の短さなど問題点があり，これを解消するために本研究では電磁誘導を用いた走行EVへの非接触パルス給電システムを提案してきた。本発表では給電エネルギーの大容量化に向け，回路パラメータであるコイルとコンデンサの値についてシミュレーションを行った。シミュレーションでは送電側のパラメータ固定の場合，受電側はコンデンサが小さく，コイルのインダクタンスが大きいほど高効率となることがわかった。また，実際の給電実験でも相違ない結果を得た。

4-209

EV用バッテリのオンボード電気化学測定に向けた取り組み

◎加藤晃太・小川 誠・井深重夫（いすゞ中央研究所）・横島時彦（物質・材料研究機構）・戸ヶ崎徳大・逢坂哲彌（早稲田大学）

いすゞ自動車はカーボンニュートラル達成に向け，商用車の電動化を推進している。 商用車には高い信頼性が求められ，そのためには電動車のバッテリ性能の維持・把握が重要である。 高精度なバッテリ状態推定を目的として，電気化学インピーダンス法を車載バッテリに適用する手法について検討を行っている。オンボード測定のために，バッテリセル監視回路の機能を活用した入力波形生成と，同一基板上で動作する測定回路の搭載により，机上試験において対象セルの交流インピーダンス特性を得ることができた。 今後は実際の車載バッテリでのオンボード測定に向けて精度検証やバッテリ状態推定手法の確立を目指す。

4-210

Accurate SoH Estimation for Multi-Chemistry Li-Ion Battery Based on AdvancedDMSP-ANNs through Internal Parameters Analyzes

Minella Bezha・○Naoto Nagaoka（Doshisha University）

This research proposes an innovative SoH estimation with high accuracy and fastcalculation time. The proposed ANN model is highly accurate and reliable fordiff erent chemistries NMC, NCA & LFP with an average error of 2.1% and amaximum error of 5.19%, completed within 52 seconds of calculation, and uses74% less data than the previous work. All the results are confi rmed throughrigorous benchmarks test and experimental data for a low-cost system, applicablefor vast industrial applications.

4-211

電動機ベアリングの電食診断

◎三輪大和・ダオバン トウアン・水野幸男（名古屋工業大学）・中村久栄（トーエネック）

筆者らは，誘導電動機のベアリング外輪の傷の故障診断手法として負荷電流の特定周波数成分を特徴量とする方法を提案し，その有効性を評価してきた。今回はベアリングの電食を対象として，提案する3つの特徴量を用いる手法を適用した。その結果，ベアリングの電食検出ができる可能性を示した。

4-212

半断線電源コード通電時の伝導ノイズ解析（その3）

◎近藤拓馬・島田美月・水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

筆者らは実験室で半断線電源コードの短絡を再現するとともに，電圧・電流波形による検出方法を検討してきた。前報ではカッターナイフで導体素線を切断した半断線試料の伝導ノイズ解析を行った。今回は，電源コードの曲げ試験により作製した半断線試料を用い，伝導ノイズ解析による半断線検出の基礎検討を行った結果，2～6MHzの領域の伝導ノイズレベルが上昇することが分かった。

4-213

導体接続部の緩みに起因する伝導ノイズ解析

杉山智嘉等・近藤拓馬・○水野幸男（名古屋工業大学）・林 文移（河村電器産業）

導体接触部の過熱による火災は，電気設備機器火災の主な原因の1つである。火災防止技術確立のための基礎研究として，導体接続部のねじを緩めたブレーカを用いて伝導ノイズの解析を行った。ねじの緩み箇所で放電が発生すると伝導ノイズのレベルが上昇することから，伝導ノイズによりねじの緩みを検出できる可能性がある。

4-214

エネルギー密度40Wh/kgを有するリチウムイオンキャパシタの放電特性

谷口穂香・○中田俊司（近畿大学）

近年電気エネルギーを，電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタといったスーパーキャパシタに蓄電する方法が注目されている。これまでにリチウムイオンキャパシタはエネルギー密度が20Wh/kg程度の製品が市販され実用化されている。一方，最近Cornell Dubilier（CDE）社より220Fのリチウムイオンキャパシタが市販された。今回このCDE社のキャパシタを充電した後，放電特性を調べることによりエネルギー密度が42Wh/kgであることを確認したので報告する。

4-215

白色LEDにおける高屈折率ナノ粒子の発光効率上昇効果への封止樹脂の透過率低下の影響

◎梶谷崚太・柏尾知明（近畿大学）・伊藤智海・武田 怜・久保田敦子（住友大阪セメント）

近年，白色LEDの研究開発において開発項目は多くあるが，中でも発光効率の向上は重要な項目の1つである。これまでの研究で，封止樹脂内に少量の高屈折率ナノ粒子を封入することで光が適度に散乱し，全光束が上昇することが確認されている。しかし，封止樹脂は使用した際に発生する熱や光が原因で劣化し，透過率が低下していく。本研究では樹脂が劣化し透過率が低下した際に，高屈折率ナノ粒子が全光束に与える影響を検証した。実験はシミュレーションで行い，シリコーン樹脂の透過率を0.6から1.0に変化させたときの全光束を調査した。実験結果より，透過率が低下すると高屈折率ナノ粒子は全光束を低下させることがわかった。

4-216

液体浸漬冷却におけるファン風量が放熱性能に与える影響

◎飯島直輝・佐藤大記・枡川重男（東京電機大学）

The number of ECUs installed in automobiles is increasing, and the demand for smaller and denser in-vehicle power supplies is expected to increase to secure more space in the car. Since downsizing and densification lead to an increase in heat generation density, we focused on liquid immersion cooling, which is different from conventional thermal countermeasure methods. Since air and water cooling are currently the mainstream, design methods for the parameters necessary for cooling by liquid immersion cooling are not clear. In this study, the effect of fan air rate on heat dissipation performance was examined using overall heat coefficient. As a result, it was found that the fan air rate and the overall heat coefficient are linear.

4-217

液体浸漬冷却における熱流体解析の活用と実機との比較検証

◎新井勇斗・飯島直輝・山下克也・佐藤大記・枡川重男（東京電機大学）

回路の効率的な冷却方法として，熱伝導率が高い絶縁性液体のHFE（ハイドロフルオロエーテル）に回路を直接沈める液体浸漬冷却が検討されているが，HFEを用いた液体浸漬冷却の設計手法は未だ不明瞭な点が多い。そこで著者らは，熱流体解析にて高い精度でHFEの冷却特性を再現し，液体浸漬冷却の熱設計をシミュレーション上で行う方法を検討している。本稿では，実際に液体浸漬冷却システムを試作し，冷却槽の出口側温度を実測値と熱流体解析の解析値とで比較した。その結果，誤差率は最大で3.54%となり，精度良く一致することを確認した。また，異なるHFEを用いて冷却性能を比較したところ，熱伝達率の大きいHFEの方が高い冷却性能を有することが示唆された。

4-218

高圧需要家の冷暖房需要推定に関する一検討

紺野秀俊・大山尭音・○松田勝弘・渡邊 亮（東北電力）・比護貴之・小松秀徳（電力中央研究所）

ビル全体の電力消費量を削減するため，ビル内の電力使用状況や設備の運転状況をきめ細かく監視・制御するBEMSへの期待が高まっている。特に，電力需要を用途別（空調，照明，・・・）に把握できれば，電力消費量を削減する機器を絞り込めるなど，より効果的な対策が可能となる。本研究では，電力需要を用途別に把握する手段として，装置の価格が高くならないように，各機器にセンサを取り付けるのではなく，取引用メータ等で計量される総需要データから用途別に需要を推定する手法を検討している。その中で，総需要と気温の関係性から，冷暖房需要を比較的容易に推定できる見通しが得られたので，その概要を紹介する。

4-219

リカレントニューラルネットワークを用いたセントラル空調の消費電力推定

◎武田航平・石川 潤（東京電機大学）・川野裕希・太田恵大・峰行拓馬（三菱電機）

本研究では，セントラル空調を対象とした消費電力の推定問題において，空調のシステムモードを入力に加えた一推定手法を提案する。これによりシステム内で稼働する機器台数を反映させることができるため，推定精度向上が期待される。ただし，未来のシステムモードは実運用中に直接観測できないため，推定する必要がある。提案手法では，リカレントニューラルネットワークを2段構成で用いて，システムモードを推定した後，システムモードの推定値を用いて消費電力を推定する。その結果，システムモードを入力に加えていない手法に比べて，外挿条件も含む評価ではRMSE値で0.0087kW，消費電力誤差率で0.271%改善できることを確認した。

4-220

リカレントニューラルネットワークによるビル空調システムの設定温度決定手法

◎吉川怜央・武田航平・石川 潤（東京電機大学）・川野裕希・太田恵大・峰行拓馬（三菱電機）

ZEBの実現のためには，ビル空調の適正運用による省エネが求められる。本研究では，快適性を保ちつつ，ビル空調の消費電力を目標値以下に収めるため，リカレントニューラルネットワークにより消費電力制限を満たす設定温度を推定する手法を提案する。対象とする空調は，個別空調とセントラル空調とし，実証棟とシミュレータのデータを使用する。推定結果からは，カセット空調よりセントラル空調のMAPE値が低くなることがわかった。原因として，室内人数の熱負荷変動などがシミュレーションのモデルより実際の方が複雑だったということが考えられる。今後は，シミュレータを実測データに変更するなどより現実的な推定を目指す。

4-221

省エネルギー行動誘発のためのナッジによる空調設定温度変化傾向に関する一考察

◎西谷 強・池田和樹・岩﨑祐翔・田中 蒼・雪田和人・後藤時政・水野勝教・後藤泰之（愛知工業大学）

近年，電気エネルギー分野では省エネルギー化が求められており，さらなる機器の高効率化や消費電力の削減が要求されている。その中で機器の高効率化などだけではなく，種々の電力消費機器を扱う人に対して情報やアドバイスを与えることによって省エネ行動の誘発・節電促進を行う手法として行動経済学におけるナッジが注目されている。 本研究では，行動経済学におけるナッジに注目し，行動経済学に基づいた消費エネルギー削減のための有用なナッジを見つけ，省エネルギー行動の誘発を行うことを目的としている。本論文では，特に家庭や事務所などにおいてエネルギー消費が大きいと思われる空調機器を対象として，ナッジによる空調機器の設定温度変化傾向について検討を行った。

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DCリンク型6kW高効率V2Hの開発

○山口英正・河合伸哉・猿田健一・金澤秀俊（東京電力ホールディングス）・六車圭孝・落合真人・大塚幸二郎・井手之上 伸（ダイヤゼブラ電機）

当社はカーボンニュートラル実現に向け，電力のゼロエミッション化・エネルギー需要の電化促進を進めるため電気自動車推進を行ってきた。EVを蓄電池として活用する為，Vehicle to Home（V2H）を含み，太陽光発電，蓄電池を統合制御する多機能パワコンシステムの開発を進めてきた。 多機能パワコンシステムによりPV余剰電力をEVもしくは蓄電池に充電し，それを家庭に供給する。充放電動作を行う度に損失が発生する為，V2Hでは高効率である事が求められる。今回，広い容量帯で高効率が実現できているV2Hを開発したので報告する。

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介護ロボット開発におけるニーズ・シーズ連携法の構築：簡易モデルのラピッドプロトタイピングツールの改良とAR活用

◎平良繁幸・安里健太郎（沖縄工業高等専門学校）

著者らは，介護ロボット開発におけるニーズ・シーズ連携の新しい方法論の整備・構築を行っている。これは，開発介護ロボットの実際に行う働きを再現できるようにした簡易モデルを活用し，ニーズとシーズが協働で開発介護ロボットのコンセプトについて議論・検討することで，介護ロボット開発プロセスにおけるコンセプト設定までの一連の流れの洗練化を行うものである。本論文では，ニーズ・シーズ連携を行う際に活用する簡易モデルを製作するのための，駆動系，センサ系，知能制御系モジュールからなるラピッドプロトタイピングツールの開発について述べる。さらに，製作した簡易モデルのAR活用についても検討する。

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弦楽器用演奏補助装置の開発

◎長内裕樹（九州工業大学）

障害者へのQuality Of Lifeの向上は現在社会において喫緊の課題であり，昨今では様々な支援技術が開発，紹介されている。本稿では，上肢機能障害者が弦楽器を演奏する際の支援装置，特にギターの左手のコード（和音）を構成する代替機能を備えた装置の紹介を行っている。まず，従来のいわゆる「ギターロボット」の課題を抽出し，そこから上肢機能障害者がギターを演奏しようとする際に支援装置に備わるべき仕様を検討している。次に，その仕様を実現するための機構構造を紹介することで本装置の特徴を示し，続けてそれを駆動する電送部のシステム構成を示している。最後に装置の無負荷試験の結果を示すことで有効性を検討し，今後の課題をまとめている。