一般講演

6-001

機械学習によるFGMスペーサの誘電率分布の計算

◎野村隆斗・尾藤颯哉・加藤克巳（新居浜工業高等専門学校）

筆者らはこれまで，傾斜機能材料（FGM）をガス絶縁開閉装置（GIS）の絶縁スペーサに導入することで，GISの電界緩和を目指してきた。また，できるだけ大きな電界緩和を達成するための，誘電率分布逆分解手法の開発を行ってきた。一方，FGM絶縁スペーサの電界解析事例の蓄積が進んでくると，これらのデータを機械学習させることにより，機械学習済のニューラルネットワーク（NN）を用いた誘電率分布の最適化が実現できる可能性がある。そこで今回，第一段階として，コーン型絶縁スペーサを対象として，各種の誘電率分布と電界分布の関係を機械学習させ，これを用いた誘電率分布の計算を試みたので報告する。

6-002

三相一括GISにおけるFGMスペーサ適用による電界緩和に関する基礎検討

◎尾藤颯哉・野村隆斗（新居浜工業高等専門学校）・増井秀好・岡本健次（富士電機）・加藤克巳（新居浜工業高等専門学校）

筆者らはこれまで，ガス絶縁開閉装置（GIS）内部の電界緩和を目指し，誘電率分布を傾斜させた傾斜機能材料（FGM）を絶縁スペーサに適用する研究を行ってきた。今回，あらたに三相一括GISを対象として，簡易的なスペーサの形状に対して，誘電率分布を変化させたときの，FGMによる電界緩和の基礎検討を行った。その結果，三相一括GISにおいて，電界緩和をできるだけ最大化するための，誘電率分布の与え方について求めることができたので報告する。

6-003

三相一括GISの電界緩和を目指した誘電率傾斜機能材料（FGM）の適用

○加藤克巳・尾藤颯哉・野村隆斗（新居浜工業高等専門学校）・増井秀好・岡本健次（富士電機）

筆者らはこれまで，ガス絶縁開閉装置（GIS）内部の電界緩和を目指し，絶縁スペーサに，誘電率に関する傾斜機能材料（FGM）を適用する研究を行ってきた。これまでの検討は単相GISを対象としたものであったが，今回，三相一括GISの電界緩和について，電界解析により検討を行った。その結果，三相一括GISについても，FGMによる電界緩和が認められ，今回用いた計算事例では，18%の電界緩和効果が得られることが確かめられたので報告する。

6-004

TR-GIS直結用ガス絶縁ブッシングの開発

◎足利泰紀・仙田義一・中内慎一朗・坂田祐馬・森 剛・笹森健次（三菱電機）

これまで変圧器（TR）とガス絶縁開閉装置（GIS）を接続するブッシングにはコンデンサコアと絶縁油，および磁器がい管からなる油浸紙コンデンサブッシングが適用されてきた。油浸紙コンデンサブッシングは設計構造が複雑で，また油面管理，パッキンの経年劣化に伴うブッシングのオーバーホールなどが必要とされることから，構造の簡素化・軽量化，保守点検の省力化を図る観点から，絶縁媒体をSF6ガスとしたTR-GIS直結用ガス絶縁ブッシングの開発を行った。本ブッシングの設計構造と特長，検証試験結果の概要を報告する。

6-005

新形ポリマー形避雷器の開発

○安食富和・後藤成彦・千葉智基・春日靖宣（東芝エネルギーシステムズ）

近年，気中変電所には，従来の磁器碍子と比較して大幅に小形・軽量化が可能なポリマー材料を使用したポリマー形避雷器の適用が進んでいる。このような背景により，ポリマー形避雷器が規格化（JEC-2374: 2020）され，ポリマー特有の検証試験が追加されるとともに，IEC規格（IEC 60099-4: 2014）との整合性も図られた。また，変電機器の耐震設計指針（JEAG5010-2019）では，東日本大震災の経験を踏まえて従来の正弦三波共振加振から応答スペクトル法に改訂された。 今回，新たに規格化されたJEC規格並びにJEAG指針及び，国際規格であるIEC規格に準拠した新形ポリマー形避雷器を開発したため報告する。

6-006

新形ポリマー形避雷器用ZnO素子の高性能化

春日靖宣・◎鈴木智裕・千葉智基・安食富和・後藤成彦（東芝エネルギーシステムズ）

変電機器に適用される絶縁碍子として，従来の磁器碍子と比べて大幅に小型・軽量化が可能なポリマー材料の適用が拡大している。変電用避雷器においても磁器碍子形避雷器からポリマー形避雷器への切替えが進められておリ，避雷器の国内規格では，JEC-2374: 2020にてポリマー形避雷器が追加された。今回，JEC-2374: 2020および IEC 60099-4: 2014の両規格に準拠した新形ポリマー形避雷器の開発に伴い，適用するZnO素子の高性能化エネルギー耐量特性及び熱安定性の向上を実現したので報告する。

6-007

エステル系絶縁油での避雷器用酸化亜鉛素子の課電寿命試験

◎小針真一郎・野中強也・小松龍矢・高田雅之・田上幸雄（明電舎）

酸化亜鉛素子を内蔵した酸化亜鉛形避雷器は小形で直列ギャップを必要とせず，絶縁油に直接浸漬することが出来るため，従来の炭化ケイ素を使用した避雷器では困難であった電力用変圧器への内蔵が可能になった。鉱物油においてはこれまで広く寿命特性の評価がされてきたが，エステル油中での報告はほとんど見られない。今回，エステル系絶縁油である大豆油を用いて課電寿命試験を実施したので，その結果を報告する。本研究では，大豆油中で酸化亜鉛素子の課電寿命試験を実施し，7,000h課電してもパワーロスの上昇が無く，IEC規格を満足する結果が得られた。今後，大豆油以外のエステル油においても酸化亜鉛素子の油中寿命特性を確認していく。

6-008

84kVリアクトル用開閉器へのVCB適用研究

○長綱 望・菊地徳明・長竹和浩（明電舎）・愛知慎也・亀井 聡・伊藤保則（中部電力パワーグリッド）

リアクトル負荷用の既存開閉器は，絶縁ガスにSF6を用い，過電圧抑制のため真空バルブの接点材料に発孤サージ低減用の材質を用い，かつ接点間の開極速度と距離を大きくしている。今回，低速開閉かつ接点間距離を縮小した上記VCBを使用して試験した際の開閉現象調査結果について報告した。 電極材質，定格容量ごとの評価結果より，電極材はCu割合の小さい電極がより過電圧の高い結果となった。また，ケーブル条件よりも架空線条件の方が良好な結果が得られた。リアクトル開閉時の再発弧に起因する過電圧特性は，過電圧発生は裁断し易さやアークの維持のし難さが影響する。電極材による対策は今後の課題である。

6-009

VCBの小電流遮断時における電流さい断特性

◎赤星卓勇・木村 涼・中村泰規・常世田 翔（三菱電機）

遮断器による小電流遮断時には自然零点前に電流が消滅する電流さい断が発生することが知られている。電流さい断レベルは，さい断過電圧とその後の再発弧過電圧の推定評価に必要となることから，電流さい断特性の把握は重要である。本稿では，84kVクラスVCBの小電流遮断試験で得られた電流さい断特性について報告する。

6-010

真空中コンディショニングの放電電荷量依存性における電極初期表面状態の影響

◎北 直樹・小島寛樹（名古屋大学）・福田英昭・山村健太（明電舎）・早川直樹（名古屋大学）

真空中スパークコンディショニングによって得られる絶縁耐力は，放電電荷量に依存することが示唆されている。本稿では，電極の初期表面状態の違いがコンディショニング特性に与える影響について，放電電荷量の観点から検討した。酸洗浄および熱処理を施した電極と施していない電極での実験結果を比較した結果，前者のほうがコンディショニング後の絶縁耐力が高くなり，放電電荷量が小さい場合に特にその差が顕著であった。一方，放電電荷量が大きい場合は，両者に絶縁耐力の差が見られなかった。これは，大きな放電電荷量によって電極が大きく溶融したことで，電極の初期表面状態の影響が無効化されたためと考えられる。

6-011

84kVコンデンサバンク用開閉器へのVCB適用研究

○菊地徳明・長綱 望・長竹和浩（明電舎）・愛知慎也・亀井 聡・伊藤保則（中部電力パワーグリッド）

明電舎では84kVコンデンサバンク向けVCBを製品化してきたが，一般用途向けと比較して大型で高操作力装置を搭載していた。本研究では小型・低操作力型・SF6代替という特徴を持つ乾燥空気絶縁型VCBをコンデンサバンク開閉へ適用するための基礎試験を実施した。JEC-2300（2020）のコンデンサバンクClass C2 BC2 責務と，実使用を想定したランダム位相開閉にて試験を実施し，再点弧確率とアーク時間，先行放電時間を確認した。結果，遮断アーク時間の短い領域で投入時先行放電時間が長い傾向にある。最短アーク時間の開極が連続すると電極クリーニング効果が期待できず再点弧に至ると推測される。

6-012

72/84kV Dry air絶縁VCBの開発

武田康一・貞廣光紀・川野慎也（関西電力送配電）・◎杉野一樹・中村泰規・芳友雄治（三菱電機）

今回新たに開発した72/84kV真空遮断器では，真空バルブの可動側を低ガス圧，その他の部分を高ガス圧と区分を分けた。この構成により，ベローズの耐久性を確保しながら，高気圧Dry air絶縁方式に変更し，更に最適設計によるガス中絶縁距離の短縮でタンクサイズを縮小した。 IEEE/IEC/JECに規定された開閉試験，耐電圧試験，電流遮断試験などの一連の形式試験を実施し，全試験で良好な結果を得た。 今後より高定格の真空遮断器開発を進めていく。本真空遮断器は国内向け初号機を2023年4月に関西電力送配電株式会社長田野変電所に納入する予定である。

6-013

真空中交流コンディショニングにおける粒子起因による多重絶縁破壊

◎小名木良太・小島寛樹（名古屋大学）・飯塚伸介・小林将人（日立産機システム）・早川直樹（名古屋大学）

真空中交流コンディショニングにおいて，半周期内に複数回絶縁破壊（BD）するような多重BDが発生する。多重BDが発生する原因として，直前のBDによる残留金属蒸気とBD時に発生した粒子の対向電極への衝突・付着の2つが考えられる。本稿では，Al製球電極とCu製平板電極を用いてコンディショニングを施し，Cu電極上のAl粒子の付着状況を観察することで，粒子起因による多重BDの可能性を検討した。その結果，Cu平板電極表面にΦ10μmオーダーのAl粒子が付着していた。また，推定した全Al粒子数は多重BD回数よりも大きいことから，直前のBDにより発生した粒子が対向電極に衝突することにより，多重BDが誘起されている可能性を示唆している。

6-014

MPS法＋FVMハイブリッドモデルによるTRV印加時の真空アーク再発弧過程の数値解析

◎香水大亮・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）・浅沼 岳・山本真司・恩地俊行（富士電機）

真空遮断器の性能向上のためには，真空アークの挙動や特性を理解することが欠かせない。筆者らは電子挙動を粒子法のひとつであるMPS法で，重粒子挙動を格子法のひとつである有限体積法（FVM）でそれぞれ計算する，独自のハイブリッド真空アーク数値解析モデルを開発している。本報ではこのハイブリッドモデルにおいて，電流を低下させ真空アークを減衰させたのち電極間に急峻な電圧を印加することで，過渡回復電圧（TRV）印加時の真空アーク再発弧過程をモデル化した。その結果，TRVの印加によって陰極点温度が急上昇し，陰極点から再び電極が蒸発した。また，TRV印加によって重粒子も24000K程度まで急加熱された。

6-015

真空インタラプタから発生するX線測定における試験容器の影響

◎福田英昭・山村健太（明電舎）

真空インタラプタ（VI）のX線測定に関し，SUS, Fe, Al₂O₃, Al, PMMAのX線の透過率を測定し，主に試験容器に使用されるPMMAの厚さがVIのX線測定に与える影響を調査した。真空チャンバー内に配置した電極に直流高電圧を印加し，発生するX線をX線透過用のベリリウム窓と測定する材料を介して電離箱式サーベイメータにより測定した。 材料単体の場合，原子番号が大きい材料程わずかな厚みで急激に透過率は低下した。厚さ1mmのSUSと30mmのPMMAを重ねて透過させた場合，SUS 1mm測定時の結果とほぼ同じだった。PMMAのX線の透過特性にステンレスの透過特性の重み付けを行うと，重ね合わせた時の実効的な材料厚さがステンレス単体の材料厚さから変化しないためだと考えられる。

6-016

真空遮断器における電流ゼロ点後のアノード表面温度

◎髙林拓海・Yandi Lin・前出裕亮・佐藤正寛・熊田亜紀子・日髙邦彦（東京大学）

真空遮断器は，環境負荷が小ささやメンテナンスの容易さからガス遮断器に代わり広く普及しており，その大容量化が進んでいる。しかし，過渡回復電圧印加時に電極ギャップ間の金属粒子が原因で起きる再発弧が問題視されており，金属粒子の供給は電極面からの蒸発によるものが支配的である。本研究ではこの蒸発量を評価するため，電流ゼロ点後におけるアノード表面の温度減衰を2色温度計にて測定した。ギャップ長が長くなるとアークが局在的に生じ，短いギャップ長では見られた融点付近での温度減衰の停滞は観測されなかった。また大電流遮断時には，アノードスポットモードが移行すると温度減衰の時定数は大きくなるといった関係性が示唆された。

6-017

空気吹付がアブレーションへ与える影響

◎大森健斗・腰塚 正・日髙邦彦（東京電機大学）

ガス遮断器のノズル部にはPOM等の高分子材料が使われている。電流遮断時において，アークの熱によりノズル部の内壁は損耗する。これにより生じるガスをアブレーションガスと呼び，アークの消弧に影響を与えることが報告されている。実際のガス遮断機の状況を再現し，実験を行うことでアブレーションによる効果について検討した。アーク部をPOM製のパイプで覆い，空気を吹き付けて実験を行うことで損耗量を測定した。吹付流量を増やすごとに損耗量は減少した。漏電遮断器などの吹付のない状況ではアブレーションによる効果を期待できるが，ガス遮断器のように空気の吹付がある場合では，その効果は低下すると考えられる。

6-018

鉄パイプによる高分子パイプ内アークの磁界

◎寺田樹生・腰塚 正・日髙邦彦（東京電機大学）

代替ガス遮断器機の研究開発が進められているが，空気やCO2など自然由来のガスでは，SF6ガスに匹敵するような遮断性能を得るのは非常に難しい。代替ガス遮断器機では，ガスの遮断性能にアブレーションや磁界などを付加し，性能を上げることが考えられる。筆者ら高分子材料のパイプ内でアークを点弧させ，パイプの外側の一部を鉄で覆うことで，磁界の効果を用いて電流遮断性能を向上させることを検討している。本論文では，軸方向に八分割した鉄パイプのうち4つを均等に高分子パイプの外側に同心円状に且つ高分子パイプの長さに配置した構成にして電流遮断実験を行った。鉄を配置することで電流遮断零点前のアーク電圧が最も高くなった。

6-019

気中・CO₂ガス中・N₂ガス中におけるアーク特性

◎岩﨑耀詩・加藤瑠真・鈴木将司・腰塚 正・日髙邦彦（東京電機大学）

ガス遮断器の消弧媒体として使用されているSF₆は地球温暖化への影響が懸念されており，SF₆の代替ガスに関する研究は多く行われている。そこで筆者らは代替ガスとして注目されているCO₂およびN₂を消弧媒体に用いて，実際に電極を開極して交流遮断実験を行い，空気中での場合と比較した。その結果CO₂，N₂，空気の順にアーク電圧が高く，消弧性能が高いことが確認できた。また，CO₂の場合はポストアーク電流が小さく，電流零点後速やかに遮断されることを確認した。

6-020

高温ガス電気絶縁特性計測用の誘導熱プラズマによる高温CO₂ガス温度のArシースガス流量依存性

◎石之腰昂弥・長瀬有理奈・岡野里桜・中野裕介・田中康規・石島達夫（金沢大学）

ガス遮断器での交流電流遮断時においては，電極間にアークが発生する。この電極間に電流零点後，過渡回復電圧が印加され，残留した高温ガスを介して再発弧する可能性がある。そのため高温絶縁ガスの絶縁特性を明らかにすることは，電流遮断現象把握のために重要である。本手法では，タンデム型誘導熱プラズマ装置を用い絶縁ガスを高温化する。さらにプラズマトーチ下部のチャンバに電極ギャップを設け，電圧を印加することで高温絶縁ガス中の絶縁破壊特性を取得する。本報では，Arシースガスの総流量を変更し，高温CO₂ガスの分光観測を行った。C₂分子スペクトルの回転・振動温度を算出し，生成した高温場の温度に対するArシースガス流量依存性を検討した。

6-021

C₂F₄溶発蒸気が混入したドライエア消弧ガスの耐電界特性 －C₂F₄混入率10%および30%－

◎山本伊織・横水康伸・兒玉直人（名古屋大学）・佐藤基宗・中村泰規・江戸貴広（三菱電機）

電力機器の分野では，SF₆代替ガスとして，CO₂ガスあるいはN₂/O₂混合ガスに高い電気絶縁耐力を持つC5-FKなどを混合することが検討されている。我々の研究は遮断器・断路器でのアーク遮断過程で形成される高温ガスを対象としている。第1段階としてN₂/O₂/HFO-1336mzz（E）混合ガスなどを消弧ガスとして検討し熱分解・結合反応を経て高温化で生成される気相化学種，耐電界特性を明らかにしてきた。第2段階として，自然由来ドライエアを消弧ガスとし，高分子材からの溶発分解蒸気が混合した高温ドライエアを検討している。本報告では，高分子材（C₂F₄）_nからの分解蒸気が混入した高温ドライエアの耐電界特性を述べ，N₂/O₂/HFO-1336mzz（E）混合ガスの耐電界特性と比較している。

6-022

200kV超級低ジッター単発パルス発生装置の検証

◎中野智之（電力中央研究所）

当所は，1 パルスにつき10J程度のエネルギーを出力する高電圧単発パルス発生装置によるフラッシオーバを起点としてアークを発生する技術を開発している。高電圧単発パルス発生装置を複数直列接続し，同時に動作させることでフラッシオーバ可能なギャップ長を拡大できる。本稿では，6直列の高電圧単発パルス発生装置により長さ80mm~110mmのギャップに高電圧パルスを印加し，高圧コンデンサを直列に接続した高圧プローブおよび高圧プローブ単体で同時に電圧測定し，続いて長さ200mm~350mmのギャップをフラッシオーバさせ，コンデンサ接続プローブによる測定結果からフラッシオーバ電圧を推定した。

6-023

ループ電流開閉用断路器における過熱検証

◎松原明澄・伊藤 堅・伊藤保則（中部電力パワーグリッド）

ループ電流開閉用断路器は，ループ電流を遮断する「遮断部」と電路を切り離す「断路部」の構成となるが，これまで遮断部の抵抗が増大する事象が多数報告されていることから，定期的に遮断部の接触抵抗測定を行っている。そこで本稿では，遮断部の抵抗増大を模擬し，電流通電による過熱様相の状態変化ならびに事象発生時の発見方法に関する検証を行った。その結果，真空バルブと座板間の接触抵抗の増加により過熱が生じると，碍管内圧力が増加することが確認できた。そのため，機器を停止させて接触抵抗を測定せずとも，付属する圧力計により日常の巡視で確認が可能となった。

6-024

投入・遮断時アークエネルギー特性を考慮した低圧開閉器の累積接点消耗量の予測

◎堀田克輝・稲口 隆（三菱電機）

低圧開閉器の多数回開閉による接点消耗は開閉器寿命を決める重要な要素であるが，その詳細な現象は未解明である。筆者らはこれまで，投入時の電気的負荷が大きい条件での接点消耗現象を明らかにしてきた。今回は遮断時の電気的負荷が大きい場合の接点消耗現象を調査し，累積接点消耗量の予測技術について検討した。その結果，接点消耗により投入時の接触荷重や遮断時の開極速度が低下してアークエネルギーは増加するが，遮断時アークエネルギーに与える影響は小さく，遮断時の電気的負荷が大きい条件では累積接点消耗の加速的増加はほとんど見られないことが分かった。この特性を考慮することで累積接点消耗量を予測できることを明らかにした。

6-025

過渡接地電圧センサによる部分放電発生源分離方法の検討

○額賀 淳（日立製作所）・佐藤深大（日立産機システム）

実使用条件における配電盤の劣化を診断するため，部分放電により発生する過渡接地電圧（TEV）に着目して，タンク内外の部分放電の分離法と部分放電とノイズの判別法を検討した。タンク壁面とタンク外の接地した金属板にそれぞれTEVセンサを配置し，タンク内外で部分放電を発生させて評価することで以下の結論を得た。①部分放電による漏れ電流に起因し，タンク壁面のTEVセンサのみで信号が発生した場合にタンク内で部分放電が発生したと判定できる。②信号波形をフーリエ変換し，500MHz以下の領域においてノイズと信号波形を比較することで部分放電と判定できる。

6-026

SVMを用いた部分放電特性によるエポキシ樹脂中ボイド放電の劣化度推定

◎大竹泰智・松山幸太郎・梅本貴弘（三菱電機）・小野田 崇（青山学院大学）

電力機器の絶縁診断では一般に絶縁破壊の前駆現象である部分放電の検出を行う。また，部分放電は交流電圧位相における発生分布（φ-qパターン）と放電発生要因とに相関があるため，保守の指標に用いられる。今回，経年劣化の要因となるエポキシ樹脂中のボイド放電劣化に着目し，部分放電の発生位相特性を機械学習手法の1つであるSupportVector Machine（SVM）で学習させることで劣化度推定を行ったので報告する。

6-027

5気圧Dry air中PD放射電磁波特性のSF6/Dry air混合ガスとの比較による基礎検討

○新竹将治・大塚信也（九州工業大学）・井波 潔・羽馬洋之（三菱電機）・中臺洋史（東京電力ホールディングス）

筆者らはこれまで，SF6代替ガスとして注目されているC4-FNやC5-FKなど新しいF系混合ガスの絶縁特性や絶縁診断技術の基礎検討として，0.1MPa_absのSF6/Dry air混合ガスを対象にSF6混合率を変化させて，部分放電（PD）特性ならびにPD放射電磁波特性を検討している。SF6代替ガスとしては負性ガスを含まない自然系ガスも注目されていることから，本研究では，高気圧空気として0.5MPa_absのDry air中でのPD放射電磁波特性を，UHF帯とVHF帯に感度を有する2つのアンテナで同時に取得し，SF6/Dry air混合ガスの特性と比較検討した。

6-028

開閉機器の操作電流解析による劣化診断

○酒井 晃・山口泰希・鈴木大輔・酒井敏至・安達哲也（北海道電力ネットワーク）

電力設備の保守点検効率化に向けて，高経年機器の劣化診断と保全管理が現場の課題となっている。特に開閉機器の不応動が発生した場合，現地運転操作の対応が必要となるなど安定供給に影響をおよぼす場合がある。 機器の状態監視を目的にIoT・ICTを活用したセンサーモニタリングやデータをAI診断する「スマート保安」に取り組んでおり，従来の定期点検手法（TBM）からコンディションベース（CBM）へ保守高度化を進めている。 本稿では，断路器と遮断器の操作電流を計測し，波形データによる劣化診断の基礎調査を実施した成果を報告する。

6-029

自然由来ガスを用いた72kV GISの実用化

◎中村圭佑・石川 渉・塚尾茂之（東京電力パワーグリッド）・今泉堅太郎・小池 徹・笠原規宏（東芝エネルギーシステムズ）・鶴田豊久・立川慎吾（明電舎）

本稿では，六フッ化硫黄（SF6）ガス代替として自然由来ガス（ドライエア）を封入した電力用としては国内初の72kVガス絶縁開閉装置（GIS）を適用したため，機器構成及び特徴について報告する。 SF6代替ガスの選定については，安全性やガス供給リスクゼロ等のメリットを総合的に勘案すると自然由来ガスが優れ，また大気放出が可能であり，中毒や窒息の危険もない自然由来ガス（ドライエア等）が最適と判断した。 機器の大型化に対する課題に対しては，GISの内部導体の高電界部に絶縁塗装を施すことや放圧装置の採用すること等により小型化を図り，既設高経年SF6ガス絶縁GISと同等の据付面積で，地下変電所を含め既設設備のリプレースが可能なGISレイアウトを実現した。

6-030

自然由来ガスを用いた72kV GIS用避雷器の開発

◎久保克隆・千葉智基・春日靖宣（東芝エネルギーシステムズ）

地球環境保全の観点から，弊社では地球温暖化係数（GWP）がCO2の25,200倍であるSF6ガスを全く用いない自然由来ガスを適用したガス絶縁開閉装置（GIS）の開発を進めている。 今回，上記GISに適用する自然由来ガスを用いた72kV GIS用新形避雷器の開発が完了したため報告する。

6-031

ドライエアを消弧媒体とする吸込みパッファ型接地開閉器の電流遮断性能の検討

○佐藤基宗・江戸貴広・鍋倉航平・中内慎一朗・森 剛（三菱電機）

高電圧開閉装置の接地開閉器を対象として，高圧力ドライエア中での遮断性能を検討した。従来高電圧開閉装置の絶縁・消弧媒体として用いられてきた六フッ化硫黄（SF₆）ガスは，地球温暖化係数（GWP）が極めて高く，代替手段の開発が望まれている。また，開閉装置のSF₆ガス代替手段として，真空バルブによる電流遮断および高圧ドライエア（乾燥空気）絶縁方式を採用する複合方式が開発されている。同方式の開閉装置では，遮断器以外の断路器や接地開閉器は高圧力のドライエア中に配置される。そのため，SF₆ガスより電流遮断性能の低いドライエア中で必要な遮断責務を満足するために，遮断性能を向上させる消弧室構造の検討と評価を行った。

6-032

ドライエアがGIS接点材料に与える影響調査

◎今澤優子・小池 徹・松本純平・加藤紀光（東芝エネルギーシステムズ）

SF₆ガスは優れた絶縁性能を持つが，地球温暖化係数がCO₂の25,200倍と非常に高いガスである。東芝エネルギーシステムズでは，地球環境保全の観点から絶縁媒体にSF₆を全く用いないドライエア絶縁の72/84kV GISを開発した。ドライエアは酸素を21％含むことから，ドライエア中で使用される材料の酸化などが懸念される。そこで，SF₆用GISで使用している接点グリースと銀めっきをドライエア中で劣化させて性能を評価した。評価の結果，グリースと銀めっきのいずれも顕著な劣化が見られないことを確認した。このことから，ドライエアを絶縁媒体とした自然由来ガスGISではSF₆用と同じ接点グリースと銀めっきを適用できると考える。

6-033

ドライエア0.55MPaにおける絶縁破壊特性 －電極表面粗さの影響と絶縁コーティング効果－

○安岡孝倫・蒲原聖也・青木香代子・高尾修平（東芝エネルギーシステムズ）

近年の地球環境問題への関心の高まりから，ガス絶縁開閉装置（GIS）においてもSF6フリー機器の開発が世界中で行われている。筆者らはSF6代替ガスとして自然由来ガス（ドライエアやCO2/O2混合ガス）に注目している。今回，ドライエア0.55 MPa-absの絶縁破壊特性（電極表面粗さの影響と絶縁コーティング効果）を取得したので報告する。

6-034

高ガス圧ドライエア中の部分放電検出

○宮下 信・藤岡克彦・中内慎一朗・森 剛（三菱電機）

環境負荷低減の観点から高ガス圧ドライエアによるガス絶縁開閉装置の開発，実用化が進められている。信頼性向上の観点から，部分放電（PD）診断は有効な手段として認知されて多くの研究が進められているが高ガス圧ドライエア中の部分放電現象の調査や検出法の研究は十分では無い。本稿ではPDの基礎現象を調べるとともにUHF検出法の適用可否を調査した。その結果，PD電流の波頭時間と波尾時間は高ガス圧になるほど小さくなる事がわかった。この現象はPD電磁波に影響を与え，0.8MPa条件にてUHFセンサで2.5GHzに及ぶ周波数帯の信号出力が得られた。SF6機器で実績のあるUHF技術がドライエアでも適用可能であり，3pCの微小PDも感度良く検出できる事がわかった。

6-035

Dependence of CO₂/O₂ Mixing Ratio on Particle Composition of CO₂/O₂/C₄F₇N Gas Mixtures

◎Htut Aung Tat・Hiromasa Kai・Yasunori Tanaka・Yusuke Nakano・Tatsuo Ishijima（Kanazawa University）

Gas Circuit breakers (GCB) are critical components of electric power systems, responsible for interrupting current in the event of a fault. During this interruption process, an arc plasma is formed between the GCB's electrodes. For blasting this arc plasma, sulfur hexafluoride (SF₆) gas has been widely used due to its high dielectric strength and arc quenching ability. However, SF₆ has a very high global warming potential of 25200 and is being phased out in some countries due to emissions reduction goals. In this work, we investigate the potential use of a CO₂/O₂/C₄F₇N as an eco-friendly alternative to SF₆.

6-036

CO₂およびCO₂/O₂混合ガス減衰アークの反応論的非平衡モデルの構築

○田中康規（金沢大学）・飯島崇文（東芝エネルギーシステムズ）

本報では，100%CO₂,70%CO₂/30%O₂混合ガス吹付け減衰アークを対象として反応論的非平衡モデルを構築（4）し，アーク減衰過程における温度変化・組成変化を検討した。

6-037

急峻方形波インパルスを用いたF-ニトリルの絶縁破壊特性 －光学観測による放電時間遅れおよび放電進展速度の検討－

◎阿部剛志・新開裕行・五島久司（電力中央研究所）

近年，ガス絶縁開閉装置（GIS）に適用するSF₆代替ガスとして，C₄F₇NやC₅F₁₀OといったF-ニトリルやF-ケトンが注目されている。GISでは，雷サージのような急峻な立上り（～数十ns）の過電圧が生じるため，短時間領域の絶縁破壊現象に関する知見は重要である。前報では，急峻方形波インパルス電圧発生装置"SPARK"を用いて，F-ニトリルやF-ケトンを含む混合ガスの短時間領域V-t特性，V₅₀，放電時間遅れの簡易的な評価法であるラウエプロットおよびγ線照射による初期電子供給が絶縁破壊特性に与える影響を報告した。今回，光電子増倍管を用いて，F-ニトリル混合ガスの放電形成時間遅れ：t_fおよび平均放電進展速度：v_aveを取得した。SF₆ガスとの比較も併せて，報告する。

6-038

Development of Gas-blast Operation in Model Gas Circuit Breaker to Evaluate Fundamental Interruption Performance of SF₆ Alternative Gases

○神足将司・中野智之・岩田幹正（電力中央研究所）

SF₆代替ガス固有の基礎的な消弧性能を取得・比較するためには，モデルガス遮断器に具備された「ガス吹付機構」を精度良く制御することが重要となる。当該機構は，交流電圧源を動力とする電磁弁を介し，高圧の空気を吹き込むことでピストンを動かし，容器内に外気が流入することなく，シリンダーからガスを噴出する仕組みとなっている。本研究では，実験回路を構成する各設備と当該機構の動作との同期を試みた。その結果，設定通りに各設備とガス吹付機構の動作が同期していることを確認するとともに，交流電圧の立上り位相差は実験上無視できる範囲であると考えられる。以上の結果から，今後，より再現性の高い実験が実施できると見込まれる。

6-039

自然由来系CO₂/O₂混合ガスの高温下における耐電界特性 －10%C₂F₄と10%Cuの2種蒸気混入－

◎内山隼輔・横水康伸・兒玉直人・杉田武弘（名古屋大学）・真島周也・森 正・井上 徹（東芝エネルギーシステムズ）

高電圧遮断器による大電流遮断過程では，高温ガスが遮断器内に形成される。我々の研究プロジェクトでは，自然由来系CO₂/O₂消弧ガスについて，第1段階として，ノズル材C₂F₄溶発蒸気の混入状態を対象として，3000〜300Kにおける反応生成物，ひいては耐電界特性を明らかにしてきた。最近では，第2段階として，C₂F₄溶発蒸気とともにアーク接触子材料からのCu蒸気（以下，C₂F₄/Cu蒸気と記す）が混入した状態を対象として，研究を進めている。本報告では，例として，10%C₂F₄/10%Cu蒸気が混入した高温ガスについて，反応生成物を述べ，次いで，換算臨界電界E_cr/Nを述べている。

6-040

乾燥空気中におけるコーン型ε-FGMスペーサの絶縁破壊特性

加藤拓夢・◎杉本遼次・小島寛樹（名古屋大学）・柳瀬博雅・岡本健次（富士電機）・早川直樹（名古屋大学）

誘電率傾斜機能材料（ε-FGM）を適用したGISスペーサの実用化に向け，245kV級コーン型ε-FGMスペーサを作製し，適用効果の検証を行ってきた。一方，環境問題を背景として，ε-FGMのSF₆代替ガスへの適用が検討されている。今回，乾燥空気中のε-FGMの適用効果について実験的・解析的に検証した。その結果，乾燥空気中でもε-FGMの適用が有効であり，0.4MPa-absにおける実測値ではUniformスペーサと比較して30%の絶縁破壊電圧向上効果があることが検証された。また，SF₆ガス中の結果と比較したところ，乾燥空気中の絶縁破壊電圧はSF₆ガスの40~50％であり，いずれも実測値と推定値が概ね一致することも検証された。

6-041

SF6代替ガスの電流遮断後の絶縁回復特性

◎周 博豪・新海 健（東京工科大学）

SF₆ガスは良好な絶縁性と消弧性などの特性を有しており，様々な電力設備に広く使用されている。現在，SF₆代替ガスの遮断器やGISの研究開発が進められている。文献の少ない断路器や接地開閉器のループ電流・進み小電流・誘導電流遮断に注目した[1]。これらの遮断では遮断後の熱ガス領域での絶縁回復特性が重要と思われる。レーザープラズマを用いて絶縁回復特性を研究した事例[2]では，SF₆, CO₂, N₂の順に絶縁回復が速いことが述べられている。また，ガス流中で遮断後0～数10μsで電圧を印加して熱的遮断性能を研究した事例[3]も見られる。本稿では，文献[3]の実験方法を参考に，ガス流の無い状態での電流遮断後の絶縁回復特性を測定したので報告する。

6-042

ガス遮断器におけるAIモデルを用いた再点弧の画像分類

◎鈴木祐揮・布施 航・森下穂香・髙木真宏・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

電流遮断時，電流零点以降消弧室内に高温ガスが残留した場合，電極間に印加される過渡回復電圧によりアークが再点弧する。現在，多くの研究者により再点弧の抑制に向けた数値解析による研究が行われている。しかし，数値解析は収束解を得られるまでに多くの時間を要するという課題がある。このため，電流零点後の再点弧の可否についてAIを用いて判断することにより，遮断器設計の効率化に繋がると考えた。以上より本研究では，ガス遮断器におけるAIモデルを用いた再点弧の画像分類を行った。

6-043

ガス遮断器の開極過程におけるノズル角度が及ぼすアークの温度分布

布施 航・◎生沼寛翔・鈴木祐揮・森下穂香・髙木真宏・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

ガス遮断器において，電流零点後で消弧室内部の温度が十分に低下しない時，過渡回復電圧の発生に伴って電流が再び流れる熱的再点弧の問題がある。このため，電流遮断過程における，消弧室内部の温度や流速などの物理量の理解が求められる。しかし，現在まで遮断器のシミュレーションは既に開極し，電極間距離を一定の状態とした，アークのシミュレーションが多い。実際の遮断器では，電極とノズルが時間に伴い開極される。したがって本論文では，ノズル角度により，時間経過ごとの対流損失が変化するという仮説に基づき，ガス遮断器の開極過程におけるノズル角度が及ぼすアークの温度分布の算出を行った。

6-044

ガス遮断器における開極速度変化時のアーク流速分布

布施 航・◎飯田千哉・鈴木祐揮・森下穂香・高木真宏・任 振威・根本雄介・岩尾 徹（東京都市大学）

高電圧用のガス遮断器には，主にパッファ式が用いられる。この方式のガス遮断器は，遮断過程において，可動電極と連動して動くピストン装置で高圧力のガスをアークへ吹き付けて消弧する。遮断性能の向上には，吹き付けガスの圧力を高め，吹き付け流速を高めることが求められる。このため，ガス遮断器の設計には開極速度に対する圧力特性の把握が必要である。しかし，実験による実現象の把握は困難であり，ガス遮断器設計のDigital twin化が望まれる。したがって本論文では，ガス遮断器のDigital twinの実現と開極速度変化時の吹き付けガス流速の解析の開発に向けて，ガス遮断器における開極速度変化時のアーク流速分布を解析した。

6-045

輻射輸送を考慮したSF6アークプラズマの3次元数値解析

◎信木 慎・平山智士・乾 義尚（滋賀県立大学）

SF6ガス遮断器は高電圧系統の電流遮断に使用されている。遮断時に発生するアークプラズマの数値解析において，輻射の吸収を考慮した議論は十分にされていない。SF₆ガスの輻射スペクトルから吸収係数を周波数平均化した。散乱項を無視した輻射輸送方程式を解くことで，輻射パワーを計算し，輻射輸送項として3次元電磁流体解析に組み込み，アークプラズマの挙動を調べた。ラバルノズルを解析対象とし，上流側でアーク温度が上昇し，下流側では圧力が減少するため，アーク温度が減少した。輻射が圧力に寄与しているため，上流側で輻射パワーが大きく，下流側で輻射パワーが小さくなった。

6-046

磁界印加環境下での超音速ノズル内ガス吹付アークの時間依存電磁流体解析

◎宮城博也・猪野健太（筑波大学）・前島 啓・吉野智之・森 正（東芝エネルギーシステムズ）・藤野貴康（筑波大学）

著者らは電力用ガス遮断器の消弧性能の向上を目的に，外部磁界利用ガス遮断器に関する研究を実験と数値解析の両面から進めてきた。本研究では，高圧力かつ超音速状態にある強いガス吹付環境下において，アーク及び周囲ガスの特性に及ぼす磁界印加の効果の理解を深めるべく，簡易な円筒形超音速ノズル内の高圧力ガス吹付アークを対象に，非定常・軸対称2次元電磁流体解析を実施した。その結果，磁界を印加することでアークが回転し，電極間電流が一定であっても，アーク形状やその周囲ガスの熱流体場が時間的に優位に変動することを確認した。本発表では，磁界を印加した場合におけるアーク及び周囲ガスの熱流体特性の動的挙動について説明する。

6-047

量子化学計算を用いた酸素原子間の衝突に対する散乱角の導出 －輸送特性の高精度導出に向けて－

◎笠井 豪・兒玉直人・横水康伸・杉田武弘・M. S. S. Danish・岩田幹正（名古屋大学）

本研究では，高温下における代替消弧ガスの輸送特性の高精度導出に向けて，化学種間の衝突積分の理論計算を目指している。 一般的に，衝突積分は衝突する化学種間で作用する相互作用ポテンシャルϕ（r）を用いて求められる。そこで筆者らは，量子化学計算によって様々な化学種間の衝突における分光定数を導出し，Hulburt-Hirschfelderポテンシャルに代入することでϕ（r）を理論計算してきた。 本稿では，まず衝突積分の理論計算式および計算式に含まれる散乱角χ（E, b）について述べる。次に，散乱角が報告されていないO原子間に対する，量子化学計算を併用したϕ（r）の導出について述べる。そして，O原子間の衝突におけるχ（E, b）の計算結果を示す。

6-048

500kV単体遮断器の極間閃絡事故様相の推定

◎山本尚史・村北慶輔・横畠系典・加川博明・塚尾茂之（東京電力パワーグリッド）

本稿では，多重直撃雷による雷過電圧の特徴把握を目的とし，実際に発生した多重直撃雷による500kV単体遮断器の極間閃絡事故様相を検討した事例を紹介する。第一に，事故発生時の雷観測結果，変電所のリレー動作履歴，オシロ波形，送電線巡視結果から雷撃様相を推定した結果を説明する。第二に，遮断器極間に発生する雷過電圧を雷サージ解析により推定した結果を示す。解析結果から，波頭が急峻な第二雷撃に対して，遮断器を保護するための避雷器が有効に作用せず，遮断器極間に過大な電圧が生じた可能性が示された。検討結果から，現状の変電所設計では，波頭の急峻な直撃雷から遮断器を保護できない場合があると考えられる。

6-049

窒化ホウ素パウダーと珪砂を併用した大電流アークの限流・遮断プロセス －窒化ホウ素30wt%混合－

◎兒玉直人・横水康伸・竹中 湧・岩田幹正・M. S. S. Danish（名古屋大学）

限流ヒューズ内部では，直流アーク消弧に対するアーク抵抗上昇のために珪砂（SiO₂）が用いられている。 筆者らはこれまでに，珪砂蒸気が銅アーク中に混入することでアークの抵抗率が低下することを見出しており，限流ヒューズの更なる高遮断容量化のためには新たなアーク消弧媒体が必須であることを示してきた。 本報告では，まず最初に，いくつかの条件の下で新規アーク消弧媒体を選定した。その結果，窒化ホウ素粉体を選定した。次いで，選定した窒化ホウ素粉体を用いた1000Aの減衰直流アーク遮断実験を行った。その結果，珪砂使用時と比較して，窒化ホウ素を用いることでアーク抵抗の顕著な増加が可能であることがわかった。

6-050

珪砂とSilicone樹脂を併用したDC遮断過程で生成されるアークに対する消弧材蒸気濃度推定

◎竹中 湧・兒玉直人・横水康伸・岩田幹正・M. S. S. Danish（名古屋大学）

DCヒューズの遮断容量を高めるためには，遮断過程で生じるアークの抵抗上昇が重要である。筆者らは，珪砂とsilicone樹脂を併用したDC遮断において，アークに対するsilicone蒸気の混入率が増加することで，アークの抵抗率ρ_Rおよびアークコラム抵抗r_colが上昇することを見出してきた。Silicone樹脂を用いた更なるr_col上昇を検討するためには，アーク中のsilicone蒸気濃度を定量的に求める必要がある。本報告では，珪砂とsilicone樹脂を用いたDCアーク遮断実験を行った。実験により測定されたr_colと理論計算により得られたρ_Rを回帰分析的に比較することで，アーク中のsilicone蒸気濃度を推定した。

6-051

高温Cu/SiO₂混合蒸気の耐電圧特性 –化学組成および主要化学種の電離断面積–

◎中村哉太・兒玉直人・竹中 湧・横水康伸・岩田幹正・M.S.S Danish（名古屋大学）

直流ヒューズは，動作過程で生じた銅（Cu）アークを珪砂（SiO₂）の蒸発を用いて消弧させると共に，アーク消弧後にはヒューズの両端子間を電気絶縁する役割を担う。本報告では，Cuアークに珪砂（SiO₂）蒸気が混入したCu/SiO₂混合蒸気を想定して，耐電圧特性について検討している。まず最初に，高温Cu/SiO₂混合蒸気の化学組成を計算し，その1例を示している。次いで，Cu/SiO₂混合蒸気を構成する主要化学種のうちCu，SiOおよびSiO₂に対する過飽和温度の計算結果から，導電性がある凝縮相Cuの生成温度について検討している。最後に，主要化学種であるCu，SiO₂，SiOおよびO₂について，電子衝突電離断面積を示し，気相状態における耐電圧特性を考察している。

6-052

X線CTによるヒューズ発弧後のフルグライト内部の空洞形成と消弧砂の性状の関係調査

◎塚本幸佑・山納 康・稲田優貴（埼玉大学）・松本章史・橋本伸久（エス・オー・シー）

本報では，かさ密度の異なる2種類の消弧砂を使用してX線CTにより発弧直後のフルグライトを3次元的に撮影することで，潜熱の観点から消弧砂の冷却効果を調査した。 電圧電流波形から，かさ密度が高いとアーク電圧が高く，ヒューズ電流の限流も速かった。さらにX線CT撮影から，フルグライトの空洞が大きく潜熱損失による冷却が大きいことが，限流の速さにつながったと考えられる。また，かさ密度が高いサンプルでは，注入されたエネルギーと潜熱損失がほぼ同量であったことから，アーク発弧後のエネルギーが効率的に消費されたと考えられる。

6-053

ハイドロフルオロエーテル中アークの限流効果の研究

◎山澤啓斗・大塚巧巳・新海 健（東京工科大学）

HVDC遮断器向けに液中アークの限流効果を研究している。これまでに水中アークの限流効果を検証してきた。今回は分解ガスの負性効果の期待できるハイドロフルオロエーテル中のアークの実験結果について報告する。密閉容器にハイドロフルオロエーテルを充填し，ギャップ2㎜の電極間に2kA500Hz程度の交流状電流を流しアークを発生させた。アーク電圧は第3半波で0.06Ωであった。次にアークに直交する方向の磁界を印加したところアーク電圧は2.3Ωまで向上した。高速カメラで観測したところ，磁界によりアークが著しく伸びていることがわかった。

6-054

整流子片の摺動・開離過程におけるDC整流プロセスの理論計算 －摺動速度および配線インダクタンスの残留電流に対する依存性－

◎川端大海・横水康伸・兒玉直人・渡邉幹太・福塚隆司（名古屋大学）

直流モータの整流子片摺動過程では，ブラシからの開離直後にアーク放電が接点間に発生してしまう。アーク放電は残留電流を初期値として点弧し，アークエネルギーは残留電流の2乗に比例し大きくなる。したがって，残留電流はブラシ寿命を決める重要な要素である。筆者らは，電気接点の摺動過程において，電気的，機械的，熱的などの要因を考慮し，摺動中の電気接点を流れる直流の転流推移を理論的に導出する計算手法を構築し，整流過程と残留電流を示してきた。本稿では，複数の摺動速度および配線インダクタンスにおいて，直流の転流過程を理論的に導出し，次いで，残留電流を示している。

6-055

直流アーク放電の消弧性能向上に関する検討

◎森 俊樹・中島駿介・腰塚 正・日髙邦彦（東京電機大学）

配線用遮断器には消弧グリッドが備わっており，このグリッドによりアークを消弧させ遮断を行っている。先行研究からグリッドの配置を一部変えることで，消弧性能向上が見込めた。本研究では，通常配置と30°交互にずらした左右交互配置で測定を行いその結果を報告する。通常配置は電流零点近傍でのアーク電圧は約200Vであるのに対し，左右交互配置は約200～250Vであった。通常配置の横から見たアーク様相は直線的でなのに対し，上から見た左右交互配置はジグザグで，アーク長が伸長しているのが見て取れた。一般にアーク電圧はアーク長に比例なので，通常配置よりも左右交互配置はアーク電圧が上昇したと考えられる。故に，左右交互配置は通常配置よりも遮断性能向上が見込める。

6-056

円柱導体におけるAC・DC通電時の温度上昇の解析 －電力DC機器の短絡性能の検証方法の開発に向けて－

◎重村優介・横水康伸・岩田幹正・兒玉直人・M. S. S. Danish（名古屋大学）

今後の電力系統では，高電圧DC開閉機器の新規設置が予想される。そこで，統一された試験規格の下で温度上昇試験や短時間耐電流試験を行う必要があるがその規格がまだ制定されていない。また，温度上昇試験や短時間耐電流試験を行うための高電圧・大電流DC試験設備が国内外で不足している。これらのことから，IEC規格においては，DCではなくACによる代替試験を行うことが検討されているが，設定するACの電流値などの試験条件・方法などはまだ決まっていない。本報告では，その代替試験に向けたACの電流値の設定手法を検討するにあたり，銅の円柱導体に負荷電流が流れた際の温度上昇の解析を行う。

6-057

SiC-MOSFET素子を用いた低電圧DC遮断 －減衰振動性電流の生成による限流とその基礎検討－

◎長谷川海渡・横水康伸・兒玉直人・渡邉幹太（名古屋大学）

SiC系MOSFET半導体のスイッチング機能を用いた低電圧DC遮断方法として，電気抵抗による限流機能を具備したモデル遮断器の回路構成・仕様を検討してきた。さらに，同モデル遮断器によるDC電源電圧120～380V下での電流遮断および過渡的発生電圧のプロセスを提示し，さらに接合部温度上昇も明らかにしてきた。次段階として，筆者らは，同半導体を用いた低電圧DC遮断として，DCを減衰振動電流に変化させ，ひいては電流を遮断する方式を検討している。この方式を用いたモデル遮断器の回路構成を提案し，電流遮断できる見通しを得てきた。本報告では，遮断器回路内抵抗をいくつかの値に設定し，モデル遮断器によるDC遮断プロセスと半導体端子間電圧の推移を述べている。

6-058

低しきい値カスコードデバイスを適用したゲート制御不要ハイブリッド遮断器の実験検証

◎藤崎祥弘・磯部高範・萬年智介（筑波大学）

筆者らは，直流用遮断器として，機械接点と半導体スイッチを組み合わせて動作するハイブリッド遮断器に着目し，半導体スイッチのゲート端子を受動部品を介して主回路と直接接続することで，半導体スイッチの制御を不要とした回路方式を提案している。提案方式に用いる半導体スイッチは，しきい値電圧値が低く，ゲート-ソース間電圧に対してドレイン電流値が大きいデバイスが望ましい。そこで本稿では，低しきい値特性を持つ低耐圧MOSFETと高耐圧のJFETをカスコード接続することで，高い耐圧を持ちながら低いしきい値電圧値を有するデバイスを構成した。この低しきい値カスコードデバイスを提案回路に実装した遮断実験により有効性を確認したので報告する。

6-059

電源脱落時の発電機負荷分担の時間的変化を考慮したRoCoF簡易推定法

◎中野太陽・小出 明・井上俊雄（富山大学）

近年，再生可能エネルギーの導入拡大が進むことで系統内の火力発電などといった慣性力，同期化力をもつ同期電源の台数割合が減少している。その結果，系統事故による電源脱落時に，同期電源1台あたりの分担が増加する。これはRoCoF（周波数変化率）増加の要因となるため，再生可能エネルギーの連鎖脱落が懸念されている。連鎖脱落によって，大規模停電のリスクが増加するため，対策が必要である。RoCoFは電力系統詳細動特性シミュレーションで算出は可能であるが，実規模系統での初期状態の作成に多大な労力と時間を要する。従って，RoCoFを効率的に推定する簡易手法を提案する。

6-060

需給不均衡発生事故時の平均周波数変動の推定 －簡易周波数モデルの適用－

○井上俊雄・小出 明（富山大学）

シミュレーションで得られた地点別周波数変動の時系列データを使用して，需給不均衡発生時の系統平均周波数変動を簡易に表現した周波数モデルのパラメータ（振幅や減衰時定数など）を同定することで，平均周波数変動の推定を試みた結果を報告する。

6-061

電源脱落直後のRoCoF低減に資する可変速揚水機の制御方式に関する基礎検討

◎青木 廉・菊間俊明（電力中央研究所）

再エネ導入拡大により，電力系統の同期発電機の並列容量が減少すると，電源脱落直後の周波数変化率（Rate of Change of Frequency，RoCoF）の増大により一部の太陽光発電（PV）の単独運転検出機能が不要動作して脱落し，周波数低下が助長される懸念がある。こうしたPVの不要脱落を回避するには，電源脱落発生から数百ms程度の短い時間領域のRoCoFを抑制する必要があると考えられる。一方で，可変速揚水機が電源脱落直後のRoCoFに及ぼす影響については明らかとなっていない。本論文では，従来の可変速機の励磁制御が電源脱落直後のRoCoFに及ぼす影響について検討するとともに，電源脱落直後のRoCoF低減に資する可変速機の励磁制御を提案し，その基本的な効果を検証する。

6-062

風力発電機の疑似慣性制御手法 －風速変動時における解析－

◎原田浩輔・伊藤晟雅・秋田俊祐・石井隆暉・七原俊也・雪田和人（愛知工業大学）

電力系統への再生可能エネルギー電源の増加により，系統の慣性の低下が懸念される。系統の慣性の低下により電源脱落のような系統事故時に周波数低下が大きくなり，広域的な停電に進展するなど，系統安定性に悪影響を与える可能性がある。一方，風力発電機には回転体があり，系統事故時にはインバータを制御することで，回転体に蓄積されていたエネルギーを放出し，疑似的に慣性を具備できる可能性がある。著者らはこれまでに，風速一定条件下での疑似慣性制御の解析を行った。しかし，実際には風速は不規則に変動する。そのため，本論文では風速変動時の解析を行い，風速変動が疑似慣性制御にどのような影響を及ぼすかについて分析する。

6-063

低慣性系統の周波数低下に対する直流送電用変換器制御の影響

◎上田拓海・佐野憲一朗（東京工業大学）

現在，再生可能エネルギー由来の電力を輸送する手段として直流送電（HVDC）システムの大規模な導入が検討されている。しかし，インバータで連系されることの多い再生可能エネルギーが大量に導入された系統に対して大容量のHVDCシステムを連系すると，系統慣性の不足により周波数安定性が低下するおそれがある。本稿では，インバータ電源が大量に連系された系統に大容量のHVDCシステムが連系する場合を想定し，当該HVDCの変換器制御が発電機脱落事故時の系統周波数に与える影響をシミュレーションで評価する。結果，HVDCに系統形成型仮想慣性制御を適用することで低慣性系統においても同期発電機との負荷分担を行いつつ周波数低下を抑制できることを示す。

6-064

電力変換器の蓄積エネルギーを用いた仮想慣性制御による直流送電の系統周波数制御性の向上

◎加藤竜樹・佐野憲一朗（東京工業大学）

非同期系統間の電力融通に直流送電システム（HVDC）が使われている。多くの場合，自動周波数制御（AFC）が備えられ，系統周波数の安定化に寄与している。近年，インバータ型電源の増加により系統慣性が低下し，電源脱落や負荷急変時における周波数最下点（Nadir）や周波数変化率（RoCoF）が増大しつつある。そこで，HVDCに対する周波数制御能力の向上が期待されている。本稿では，非同期系統間連系用のHVDCに対し，AFCに加えて，交直変換器の直流コンデンサに蓄積されたエネルギーを用いた仮想慣性制御を適用することにより，蓄電池を用いることなくNadirやRoCoFの低減効果を得られることを確認した。

6-065

再エネ電源大量導入時の電力系統におけるSNSPと周波数の関係の検討

◎宮崎理人・青木 睦・sureshChand Verma（名古屋工業大学）

再生可能エネルギー電源の普及拡大に伴うインバータ電源の増加により，火力発電などの系統の安定化に作用する同期発電機の割合が減少している。そのため，系統慣性が低下し，発電機脱落などの擾乱発生時に電力系統の安定性が低下することが考えられる。よって再生可能エネルギー電源普及による系統への影響を検討する必要がある。そこで本研究では，非同期電源比率（SNSP: the System Non-synchronous Penetration）増加に伴う，同期発電機割合の減少を想定し，負荷急増時の周波数変化について述べる。これにより，負荷変化分の大きさごとにFRT要件を満たすことが可能なSNSPの目安を明らかにした。

6-066

再生可能エネルギー電源導入拡大に伴う給電運用者向け電力系統の定態安定度観測システム開発

港 雅広（四国電力送配電）・○宍戸 厚・只野貴光・正岡寿夫（四国計測工業）

再エネ導入増加により系統に並列された同期機が減少すると系統全体の同期化力や慣性力が低下するため，電力系統の安定性が保てなくなることが懸念されている。今回，基準電気所と監視対象発電機に着目して関連電力系統の実潮流および再エネ発電出力の変化に伴う電力系統の安定性の指標として，内部相差角をPーδ曲線のイメージで可視化した給電運用者向け，当直者向け定態安定度観測システムを開発し，実運用に供したことから報告する。

6-067

事前演算に基づく発電機励磁制御に関する検討 －複数機脱調を考慮した手法改善－

◎山岡史周・河辺賢一（東京工業大学）

電力系統への再生可能エネルギー電源の導入拡大は，送電系統の潮流状態の事前把握，ひいては過渡安定性の維持を難しくする可能性がある。先行研究では，過渡安定性向上を目的とした緊急制御手法として，広域情報を用いた事前演算に基づく同期発電機の励磁制御手法を提案した。しかし複数機の加速脱調が危惧されるケースに対しては，手法改善の余地があることも明らかになっていた。本論文では，複数機の脱調が危惧されるケースに対する過渡安定性向上効果を高めるため，先行研究の改善手法を提案した。また，複数機の脱調が危惧されるケースに対してシミュレーションを行い，改善手法が先行研究より高い安定化効果が期待できることを示した。

6-068

インバータ電源が連系した電力系統における同期調相機による過渡安定度向上効果

◎柳澤一輝・斎藤浩海（東北大学）

太陽光発電や永久磁石型同期発電機（PMSG）を用いた風力発電などのインバータ電源は系統事故除去後に出力を復帰させる際，機器保護の観点から復帰までの時間が短い方が良い。しかし，太陽光発電の出力復帰が遅い方が同期発電機（SG）の減速領域が大きくなるので過渡安定度は向上する。これはインバータ電源の出力復帰時間に関してインバータ電源の機器保護とSGの過渡安定度の間にトレードオフの関係が存在し得ることを示している。多数のインバータが連系した今後の電力システムにおいて，このトレードオフを解消する過渡安定度向上方策が重要であると考えられる。 インバータ電源としてPMSG風力機を対象に同期調相機（SC）がSGの過渡安定度向上に効果があることに基づいてインバータ電源の出力復帰時にSCの慣性がどの程度過渡安定度の向上に貢献でき得るのかの基礎的検討の結果を報告する。

6-069

SVCの多目的最適化による長距離送電系統安定化におけるファジィ理論の効果

◎片田拓己・熊野照久（明治大学）

近年，脱炭素社会の構築に向けて，太陽光発電のような非同期電源の導入に伴い，同期電源の割合が減少し，電力系統の同期化力の低下が見込まれる。その結果，送電線に落雷が生じた場合，発電機が脱調して，大規模な停電が起こる恐れがある。一方，静止型無効電力補償装置（Static Var Compensator: SVC）が導入され電圧の安定化や電力動揺の抑制に用いられている。そこで，知識と経験に基づき柔軟な制御が行えるファジィ制御を用いて，ファジィ制御を行う際に，決定されるMF（メンバーシップ関数）のパラメータが電力系統やSVCの容量に及ぼす効果について検討し，シミュレーションを行った。

6-070

N-1電制時における蓄電池を活用した再生可能エネルギー導入可能量決定手法

◎大竹壱也・小出 明・井上俊雄（富山大学）

近年，エネルギー対策問題の観点から，風力発電などの再生可能エネルギーの注目が集まっており，今後さらなる導入量の増加が予想される。しかし，再エネ導入量の増加に伴い，送電線の容量不足が導入拡大における支障のひとつになっている。このような背景から，近年はコネクトマネージの施策として，系統事故時に容量を超過した際に，電源を解列するN-1電制が期待されている。著者らはこれまでにN-1電制を活用した再エネ導入可能量算出手法を開発してきた。本稿では，火力発電機による出力変動補償に加えて新たに，蓄電池を活用したN-1電制適用の再エネの導入可能量決定手法を提案することで再エネのさらなる導入拡大を検討した結果を報告する。

6-071

ブラックスタートにおける最適な電力系統復旧手順の基本的検討

◎伊藤大紀・斎藤浩海（東北大学）

電力管内での電力系統の大停電が起きると，系統内の水力発電所を起点としてブラックスタート（BS）という復旧が行われる。その際，電力系統運用者は迅速にBSの復旧を成功させるため，復旧を失敗させる地絡事故などの要因を発生させないように復旧手順を踏む必要がある。 災害の多い日本では，今後大規模な災害などにより大停電が起こりうると考えられ，大停電後のBSを迅速に行い早期に復旧させるシステムが求められている。 本稿では，単純な電力系統のモデルを用いて迅速なBSを実現するための送電線路の投入手順と最小台数の分路リアクトルの配置について基本的な検討をした。その結果，復旧手順の妥当性を数値計算により確認した。

6-072

ダイナミックラインレーティングを考慮した発電計画の経済性評価

○下尾高廣・山嵜朋秀・宮﨑健二・佐伯尚志・加瀬高弘（東芝エネルギーシステムズ）

近年，再エネの大量普及による系統混雑などへの対策の観点から，OCCTOのマスタープラン等で長期的な系統増強の計画が検討されているが，系統増強計画には多大な期間とコストを要するため，系統増強に至るまでの過渡期や，または系統増強自体の代替手段として，ダイナミックレーティングが期待されている。広義には，架空送電線・地中ケーブル・変圧器それぞれに対するダイナミックレーティングが存在するが，適用実績と，風の冷却効果による増加容量が大きいという観点から，架空送電線への適用（ダイナミックラインレーティング，以下DLR）に我々は着目しており，本報告ではDLRを制約として考慮した最適潮流計算（以下，OPF）を定式化し，DLRを考慮した発電計画の経済的便益を計算した。

6-073

基幹系統へのダイナミックラインレーティング導入効果に関する研究 －再エネ電源に対する出力抑制回避効果の評価－

◎渡邊将太・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

再生可能エネルギー（RE）電源の導入拡大の障壁の一つに，既設送電線容量が不足する「送電線混雑」の問題がある。送電線の容量は従来，最過酷気象条件を基準として設計された固定値が用いられてきたが，運用当日の気象実態に合わせて動的に送電容量を管理するダイナミックラインレーティング（DLR）の考え方も検討されている。本研究ではDLRの基幹系統への導入効果を定量的に評価することを目的としている。本稿ではその基礎的な検討として，DLR導入によりRE電源の出力抑制がどの程度回避可能となるかを定量的に評価した。試算の結果，DLRによる送電線運用容量の拡大効果と合わせて電圧面での検討も必要になる可能性を例示した。

6-074

感度分析に基づく再エネ電源のグルーピング粒度が混雑緩和時の出力制御へ与える影響

◎丹野祐次郎・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）・糸田祐樹・和山 亘・高橋長衛（東北電力ネットワーク）

我が国では系統混雑の対策として，ノンファーム型接続の再エネ電源の出力制御を導入している。再エネ電源の出力抑制では，事業者間の平等性確保を確保しつつ，再エネ電源の総出力抑制量を最小化する必要がある。著者らはこれらの指標の両立を目的として，感度分析に基づくグルーピングを用いた再エネ電源の出力抑制率決定手法を提案してきた。本手法はグルーピング粒度の調整により，プロラタ制御に近い運用から，抑制量を最小化する個別制御に近い運用まで設計することができる。そこで，本検討ではグルーピング粒度による再エネ電源の抑制量や電源間の平等性への影響を，東北北部エリアの系統を対象とした年間シミュレーションにより評価した。

6-075

風力発電機群の出力上限を公平に決定する電圧制約付きNLPベース手法の提案

◎菅原大知・斎藤浩海（東北大学）・田口公陽・和山 亘（東北電力ネットワーク）

全系での発電過剰が予見された場合に実施される再生可能エネルギー電源を対象とした出力抑制に関して，筆者らはこれまでに風力発電機群（Wind Farm，以下WF）の出力上限を公平に決定する線形計画法ベースの計算法を開発してきた。しかし，この方法では系統の電圧上下限制約が考慮されていないため，母線電圧が適正範囲内に収まらない可能性がある。本論文では，電圧を考慮した非線形計画問題ベースの風力出力上限決定法を提案し，その妥当性および効果を数値計算で確認した。WFの大量導入に伴う従来型系統電源の解列により系統の電圧維持能力低下が見込まれる将来の電力システムにおいて，本手法の使用が期待される。

6-076

電力系統の各種制約を柔軟に追加可能な無効電力源の最適配置計画手法

○中山靖章（日立製作所）・逢見翔太（日立ヨーロッパ）・川本直輝（日立製作所）

再生可能エネルギー電源の導入が進むが，その適地は自然環境によるため偏在しやすい。偏在により再エネ電源が局所的に電力系統へ導入されると，送変電設備の熱容量制約などの問題により，その電力が十分に送電できない懸念がある。この懸念に対し，無効電力源を電力系統内に適切に配置することで，電力系統の電圧安定度を維持・向上させることが有効である。将来に渡り変化する電力系統構成に応じて柔軟に制約を追加できる無効電力源の配置計画アルゴリズムが望まれる。本稿では，送電容量拡大に資する各種無効電力源について，それらの配置計画を導出する最適化アルゴリズムと数値シミュレーションによる概念実証の結果について述べる。

6-077

SVCなどの高速な電圧制御機器と変電所の低速な電圧制御機器との協調に関する研究

○小関英雄・野本悟史（電力中央研究所）

基幹系統における平常時の電圧・無効電力制御（VQC）は，同期発電機（SG），調相設備（ShR/SC），負荷時タップ切換器（OLTC）を主体として行われている。カーボンニュートラルを実現するため，電力系統では今後も再生可能エネルギー電源の導入は増加し，需給バランスを保つためにSGの並列台数は減少し，平常時の電圧変動は増加する可能性がある。このため，変電所（S/S）では将来的に高速制御可能な電圧制御機器（SVC/STATCOM/Battery）の導入が考えられるが，従来のShR/SC，OLTCとの協調を考える必要がある。本稿では，高速な電圧制御機器（SVCを例に）と低速な電圧制御機器との制御協調について提案し，平常時を対象とした電圧シミュレーションにより提案制御の有効性を検証する。

6-078

周波数偏差と連系線潮流偏差を用いた系統定数の推定

◎山本浩輔・小出 明・井上俊雄（富山大学）

近年，脱炭素化に向けた取り組みとして太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が拡大している。再エネの増加によって系統定数が変化すると予想されるが，系統定数を正しく推定できないと需給アンバランスやLFC適応時の制御性能が悪くなることが懸念される。 本研究では，把握が困難である系統定数を，連系線潮流偏差と周波数偏差の分散，共分散から推定し評価することを提案する。

6-079

メリットオーダに基づく負荷周波数制御における蓄電池の優先順位および容量に関する基礎検討

◎笹田直希・伊勢貴洋・斉田 賢・占部千由・加藤丈佳（名古屋大学）・山口 遼・中地芳紀（中部電力）

導入拡大する再生可能エネルギー電源の出力変動に対応するため，出力応答速度の速い系統用大型蓄電池の活用が期待されている。また，需給調整市場の開設に伴い，負荷周波数制御（LFC）についても各発電機のメリットオーダ（MO）順に地域要求量を配分する手法が検討されている。筆者らも，MOに基づくLFCにおける蓄電池の適用について，制御性とコストの関係を評価している。本稿では，MOに基づくLFCに蓄電池を導入することを考え，蓄電池の優先順位が最も低い場合と最も高い場合についてLFCに占める蓄電池の割合を変化させ，蓄電池の制御効果についてシミュレーションを用い比較検討した。

6-080

系統用蓄電池kW容量のLFCとGF利用による周波数変動の抑制効果

◎伊勢貴洋・笹田直希・斉田 賢・占部千由・加藤丈佳（名古屋大学）・山口 遼・中地芳紀（中部電力）

導入拡大する再生可能エネルギー電源の出力変動に対応するため，出力応答速度の速い系統用大型蓄電池を負荷周波数制御（LFC）やガバナフリー（GF）に活用することについて，様々な検討が行われている。さらに，LFCとGFの双方に利用することで，周波数変動を効果的に抑制できる可能性が指摘されている。 これらの検討では発電機特性（ランプレート）に基づく従来のLFC手法が前提となっている。一方，今後は，需給調整市場においてメリットオーダ（MO）に基づくLFCが適用される。そこで本稿では，MOに基づくLFCが適用される場合を想定し，系統用蓄電池のkW容量をLFCとGF双方に利用した場合について，蓄電池のkW容量におけるLFCとGFの配分比の違いによる周波数の仕上がりを比較した。

6-081

周波数変動短周期成分抑制のための蓄電池制御方式の提案 －周波数制御ゲイン自動調整機能の付加－

◎高道 翼・小出 明・井上俊雄（富山大学）

電力系統の常時の周波数変動は主に中周期の周波数変動と短周期の周波数変動から構成されている。このうち短周期の周波数変動については従来からのGF運転の火力機よりも出力応答が速い蓄電池を適用することでその変動を従来よりも効果的に抑制することが可能になると期待される。また今後の蓄電池の技術進展によって充放電速度の高速化が進めばPCS定格出力に対してコンパクトな蓄電容量を持った蓄電池が利用可能となる。 本稿では蓄電池の制御ゲイン（周波数偏差からPCS出力指令への換算ゲイン）を周波数変動に応じて自動調整機能の付加を検討し，数値計算例を通じて検証した結果を報告する。

6-082

負荷周波数制御におけるAR周期性を考慮した発電コストと速応性を協調する指令値配分手法

◎梅沢里玖・斎藤浩海（東北大学）

再生可能エネルギー導入拡大と並行して電力システム改革のもと負荷周波数制御において，系統運用者は経済性を重視するようになる。そのため2024年から発電機の性能に応じて出力を決めていた方法から発電機の発電コストに応じて出力を決定する予定である。しかし，この決定手法では電力系統の系統周波数が悪化する可能性がある。この課題に対し需要変動の周期性に着目し周波数安定性と経済性を両立する手法を提案した。評価結果から提案手法は周波数安定性を維持しつつ燃料費を削減できることが明らかになり，提案手法のパラメータを変えることによって運用者が狙った結果を得ることができることを示した。

6-083

経済負荷配分制御の性能向上 －EDCの制御周期が需給制御の制御分担に与える影響－

◎山口麗雄・木股渓一郎・稲塚大祐・青木 祥・七原俊也・雪田和人（愛知工業大学）

再生可能エネルギー電源の出力は大きく変動するとともに正確な予測が難しいため，再エネ電源の大量導入が進めば，電力系統の需給制御はより難しくなる。一方，再エネ電源の出力変動には周期十数分以上の変動が多く含まれるため，負荷変動のうち周期20分程度以上を分担する経済負荷配分制御（EDC）の重要性が増している。著者らは先行研究で，AGC30モデルを用いたシミュレーションにより，重負荷期断面（夏季平日）ではEDCの制御周期を短くするとEDCの性能が向上することを明らかとしてきた。本論文では，軽負荷期断面（秋季休日）においてEDCの制御周期が需給制御に与える影響について，AGC30を用い，EDCと負荷周波数制御（LFC）の制御分担に注目して検討する。

6-084

V2G制御されたEVの導入量による需給運用への影響検討

○日高和弘・中島達人（東京都市大学）・松田俊郎（熊本大学）・篠田幸男（東京電力ホールディングス）

著者らは，運輸部門の脱炭素化のため，需給運用面から電気自動車（EV）へ転換を進めるための検討を行っている。本稿では，環境省委託事業にて実証試験されたEVバス走行データと道路交通センサスデータを基に，著者が開発した需給運用シミュレーションモデルにてEV導入量による需給運用への影響検討を行った。 本検討では，冬期最大需要の一週間について現在からOCCTOのマスタープラン検討における前提条件となる再生可能エネルギー比率5～6割までと，関東圏の乗用車，トラック，バスについて全てEV化した場合までについて，それぞれ需給調整コスト削減効果を計算し，評価した。 どのケースにおいても，EV導入による需給調整コスト削減効果が確認された。また，冬期の特徴としてRE比率が低いほどその削減効果が大きくなる傾向も確認された。本稿では，これらについて報告する。

6-085

風力発電出力変動を考慮した積雪によるPV出力予測誤差の電力需給運用への影響評価

◎小室拓翔・山口順之・真鍋勇介（東京理科大学）・大竹秀明（産業技術総合研究所）

太陽光発電（PV）及び風力発電（WF）が大量導入された2040年度を想定し，様々なWF出力において，積雪によるPV発電出力低下が電力需給運用に及ぼす影響について，発電コストや供給支障発生量の観点から分析を行う。乱数を用いてWF出力のシナリオを大量に発生させ，そのシナリオに対して発電機起動停止計画UCモデルを解き，発電機燃料費や供給支障を算出するというモンテカルロ・シミュレーションを実施する。積雪によるPV出力誤差が電力需給運用に及ぼす影響について，蓄電池増強，北海道-東京間の連系線新設，PV出力予測の的中といった対応策について前日計画と当日運用の電源運用の観点から比較分析を行う。

6-086

PVオンライン制御の導入率が電源運用コストとPV出力制御に及ぼす影響評価

◎北村芳野・山口順之・真鍋勇介（東京理科大学）

太陽光発電（PV）の出力は天候によって変動し，PV大量導入による出力変動量増加は電力不足を引き起こす可能性がある。本研究ではPV出力変動に柔軟に対応可能なオンライン制御において，導入率を3通りに変化させた際の電源運用コストとPV出力制御量を比較した。シミュレーションに発電機起動停止計画UCモデルを使用し，前日計画によって比較した。対象は全国9エリアとし，現在を想定した2021年と再エネを大量導入した将来を想定した2040，2050年の5月第1週目を代表週とした。その結果，PVオンライン制御導入率増加に伴い，2040，2050年の再エネ大量導入時において電源運用コストの削減がみられた。また，各年度においてPV発電機会の増加がみられた。

6-087

風力発電大量導入時における需給逸脱リスクを考慮した需給運用手法

◎永源碧葉・小出 明・井上俊雄（富山大学）

近年，資源問題や環境問題の対策として再生可能エネルギーの導入量増加が期待されている。しかし再生可能エネルギーは発電量が安定しない問題点がある。需給バランス維持のため，予備力が必要となる。しかし再生可能エネルギー増加に伴い火力発電の休廃止が続き需給運用上のリスクをゼロにすることは困難となる。一方，確率的な視点では再エネの出力が定格となること，予測が大きく外れることは稀である。運用計画段階において，一定程度のリスクがあったとしても実需給の段階で解消できると考えられる。以上のような背景から再生可能エネルギーの出力変動によって生じる需給リスクを対象に，一定程度のリスクを考慮した需給運用手法を提案する。

6-088

全国9エリアの2021年度電力需給実績値を用いたUC最適化モデルの評価

◎大河原翔希・山口順之・真鍋勇介（東京理科大学）

近年，日本の電力需給運用において，カーボンニュートラル実現に向けた様々な政策議論がされている。将来の議論を進めるにあたって，電力需給実績をもとに多様な観点からの評価が重要である。手法の一つとして，UCを用いたシミュレーション方法がある。本研究では，2021年度を対象に，三次調整力とGF & LFC調整力を考慮したUCによる最適化計算結果が電力需給実績とどの程度一致するかを比較した。比較の結果，東北のシミュレーション結果が実績値とほぼ等しい数値となった。これにより，本研究のUCモデルは運用条件を適切に設定することで，電力需給実績に近いシミュレーション結果が得られると考えられる。

6-089

需給逼迫時の運用を考慮した需給計画の推定手法の検討

◎田邊裕隆・服部光輝・益田泰輔（名城大学）・河辺賢一（東京工業大学）

電力システム改革によって発送電が分離された我が国の系統運用では，一般送配電事業者は，発電事業者が作成した需給計画が系統制約・需給制約に違反がないかを確認する必要がある。ここで，一般送配電事業者がスポット市場および需給調整市場における約定結果を事前に予想し，発電事業者の作成する需給計画を推定することができれば，違反の発生を予見できる。よって，違反が起こりうる計画が作成されないように，あらかじめスポット市場や需給調整市場の入札に制限をかけることが可能となる。そこで本論文では，需給調整市場とスポット市場で決まる各発電事業者の発電計画を予想し，系統全体の需給計画を推定する手法を提案する。

6-090

大規模電源脱落事故発生時の再エネ連系を想定した確率的解析手法の提案

◎前川元志・志村勇一・岩村一昭・中西要祐（早稲田大学）・服部 昇・福嶋純一・春日 衛（東京電力ホールディングス）

再エネの主力電源化に向け，遠隔地で発電された大量の再エネ電力を受電する関東系統について，その再エネの変動出力分に対応する調整電源の最適な位置及び系統運用面で様々な検討の必要性が高まっている。そこで本論文では大規模な電源脱落事故発生時に再エネを予備力として導入し，変動出力分に対しての調整電源により需給バランスをとる運用計画を検討する。解析には確率潮流計算を用いる。得られた結果から調整電源の調整量と系統全体の送電損失の算定および送電線空き容量の頻度分布及び累積分布関数の分析を行った。その結果事故に対する予備力として再エネを有効に用いるための適切な調整電源位置が明らかになった。この分析手法を用いることで，実際の電源脱落事故時の発電機運用の検討が可能になる。

6-091

同期発電機詳細モデルを適用した電源運用の条件設定

◎服部光輝・田邊裕隆・益田泰輔（名城大学）・河辺賢一（東京工業大学）

我が国では再生可能エネルギーの大量導入と電力システム改革が実施されている。しかし，分散電源は電力潮流を複雑化させ，系統制約違反の要因となりうるが，我が国の電力市場制度において，系統制約向け調整力を調達することは困難である。 先行研究ではセキュリティチェックによって系統制約違反を検出し，電源の入札を事前に制限（電源運用の条件設定）することで，系統制約違反を回避する手法を提案してきた。しかし，セキュリティチェックにおける過渡安定度解析は同期発電機簡易モデルで実施したため動的制約違反の検出精度は低かった。本論文では同期発電機詳細モデルによる違反結果から電源運用の条件を設定し，有効性を検討する。

6-092

2030年度の需給シミュレーションに基づく系統慣性評価指標の考察

○矢部邦明・林 泰弘（早稲田大学）

同期機に対してインバータ電源の比率が増加しており，系統慣性の不足による周波数維持の困難化や，対策としての自然変動電源の出力抑制増加が予想される。系統慣性確保の指標として，海外ではインバータ電源比率や，系統慣性の積み上げ値といった指標が採用されているが，それぞれ課題がある。2030年度の全国大のコスト最小運転を模擬し，特に系統慣性の減少が予想される九州を対象に，蓄電池の導入容量を変えた複数ケースで，系統慣性指標の変化を評価した。インバータ電源比率として，並列同期機容量合計を考慮した新たな指標も提案しているが，系統慣性が小さいこととの相関は小さく，両者を監視する必要があることなどが分かった。

6-093

合成メタン利用を考慮した最適電源構成に関する検討 －グリーン水素の直接利用の影響－

◎川野温輝・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

これまでに著者らは，合成メタン利用を考慮に入れた動学的最適電源構成モデルを構築し，電気事業の視点から長期的な電源ベストミックスを検討するとともに，合成メタン利用の導入がもたらす効果を定量的に評価した。一方で，グリーン水素の利活用は脱炭素社会の実現に向けた政策の重要項目として位置づけられており，現在，大規模な水素サプライチェーン構築を目指した技術開発や実証が進められている。また，グリーン水素はメタン化を経て利用するよりも，水素のまま直接利用した方がエネルギー効率や設備コストの観点で優位である。将来的にグリーン水素の大規模な直接利用ができるような環境が整うと，合成メタン利用のメリットが薄れる可能性がある。そこで本稿では，将来的な水素市場規模の拡大が合成メタン利用の導入に与える影響について，分析結果を踏まえて考察する。

6-094

変換器の近接同期機への影響解析とRSDTによる対策

○宜保直樹（電力中央研究所）

本稿では，変換器と近接する同期発電機間で運転に関わる協調が図られていない条件下におけるシミュレーション解析を行い，変換器出力動作の同期安定度への影響を解析検討した結果を報告する。また，デジタルツインをベースとしたRSDTを活用した制御による対策を提案する。

6-095

電力系統デジタルツインへの期待

○加瀬高弘・佐伯尚志・大成高顕・鶴見慎吾（東芝エネルギーシステムズ）

今後はカーボンニュートラル実現のために，再生可能エネルギーの接続量を大幅に増やす必要があり，系統の大規模な増強とともに系統運用がより複雑になることが予想される。久しぶりの大きな系統増強の中で，様々な電力系統に関するエンジニアリング力や運用力が必要とされるはずである。一方で日本では少子化が進んでおり，技術承継も大きな課題となることが予想され，エキスパートのスキルに大きく頼る従来のやり方の延長では行き詰まる可能性がある。 本稿では，このような難しい状況に対し，電力系統に関するエンジニアリングや運用をサポートする手段として，電力系統へのデジタルツイン適用によって期待される諸効果を整理し，実装に向けたロードマップを提示する。

6-096

北海道2018ブラックアウトにおける需要変動に関する検討

○伊与田 功（系統解析技術研究所）

北海道2018ブラックアウトにおける需要変動について，OCCTOで公開されているデータを用いて検討した。個々の発電機出力より，系統全体の総需要を算定し，その変動の要因と系統周波数に与える影響を検討した。その結果，以下の2つの知見を得た。1．北本連系変換器による周波数制御が有効であり，火力発電は応答が遅くて機能は低く，水力も活用されていなかった。地震後の系統の解析は将来予想される分散電源大量導入により変換器が増加した状況の周波数制御の参考になる。2．地震などで，大量の発電機脱落と負荷脱落が同時に発生した場合は，系統電圧上昇とそれに伴う需要増が深刻な影響を与える可能性がある。

6-097

進化的計算BSOを用いたパイロットバス選択法

◎三輪陸人・森 啓之（明治大学）

本稿では，Brain Storm Optimization（以後，BSOと略記）を用いた二次電圧制御のためのパイロットバス選択のための手法を提案する。二次電圧制御は系統全体の電圧変化を表す母線を制御することで，系統全体の電圧変動を抑える制御である。二次電圧制御を行う際に制御対象となる母線はパイロットバスと呼ばれ，その選択方法には線形手法，非線形手法がある。線形手法は各シナリオの感度行列を用いた手法である。一方で非線形手法では，貪欲法によるパイロットバスの初期解の生成と，包括的大域探索による最良解の決定を行う手法が提案されている。本稿では非線形手法の解探索手法として高精度進化的計算手法であるBSOを用いた手法を提案する。

6-098

改良型PPBSOによるD-STATCOMの出力変数の最適化

○染谷直寿・森 啓之（明治大学）

本稿では，配電ネットワークの電力損失を最小化するために高性能進化的計算であるPredator-Prey Brain Storm Optimization（PPBSO）を改良しD-STATCOMの出力変数をロバスト最適化する。近年，脱炭素化に向けた動きが活発になり，それに伴い不確実性が増加している。不確実性を考慮するために，不確定なデータが生じる範囲をあらかじめ設定し，系統状態を複数作成し，その中で最悪な状態を最適化するロバスト最適化を行う。電力系統における最適出力問題の従来法としては，GAやTSなどが挙げられるが，解の質が不十分である。そこで，本研究では高性能進化的計算であるPPBSOにマルチスタートローカルサーチを導入することでPPBSOを改良し適用する。

6-099

メソアンサンブル予報による基幹系統運用のダイバーシティに関する分析（第2報）

◎山嵜朋秀・豊嶋伊知郎・犬塚直也（東芝エネルギーシステムズ）・加藤大樹・森 友輔・若尾真治（早稲田大学）

近年電力系統に再生可能エネルギー（再エネ）が大量に導入され，送電線や変圧器の有効電力潮流が局所的に過大となる系統混雑が問題となっている。そこで再エネ出力の予測値を入力とする最適潮流計算（OPF）に基づき適切な系統制御を計画することが重要である。一方，再エネの出力は天候に応じて変動するため，予測値には不確実性が含まれ，OPFの計算結果にも不確実性が生じる。本稿では不確実性を考慮した21メンバーの気象情報である，気象庁のメソアンサンブル予報GPV（MEPS）の活用を検討する。MEPSの日射量予測値からPV出力を推定し，各パターンでOPFを実行する実験を1か月間を対象に実施し，結果を分析する。

6-100

任意カオス多項式展開法による確率的電力潮流計算プラットフォーム構築

○金崎 翼・岩村一昭・中西要祐（早稲田大学）

本研究では多回数の繰り返し計算を大幅に抑えられる任意多項式カオス潮流計算に基づく確率潮流計算プラットフォームを構築した。コマンドライン入力で計算プロセスが簡便に設定できる点に加えて，膨大なデータによる解析がメモリ圧迫を防ぎ，新規確率的要素を導入しやすくするべく，インメモリ処理内でガベージコレクションにおける省メモリ化も行った。任意多項式カオス潮流計算の基本的な理論，その計算プログラムのプラットフォーム構築についての利点を述べた後，作成したプラットフォームでの計算時間，精度，メモリ使用量比較を行った。

6-101

需給調整市場に参加する蓄電池付きPVバランシンググループにおける調整力発動割合と運用利益の感度分析

◎沖 駿吾・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

再エネ電源は今後FIP制度への移行が進み，スポット市場での取引が主体になると予想される。この場合，インバランスに対して一定のペナルティが発生するため，これを回避することが事業性向上のためには重要となる。また，近年では需給調整市場が開設され，複数の市場を考慮する事業者が現れることが予想される。事業者は，需給調整市場で約定されたΔkWに対して系統運用者から要請された調整力を発動し，発動量分の利益を得る。このため，需給調整市場に参入した場合の運用利益は調整力発動要請量に依存する。本稿では，調整力の発動要請量に着目し，事業者の運用利益などに与える影響を評価し，それらの関係を示した。傾向としては発動要請の頻度が増すほど，運用利益が改善されることを示した。

6-102

インバランスリスクを考慮したDERの需給調整市場入札戦略の基礎検討

◎今井龍之介・飯野 穣・林 泰弘（早稲田大学）・宮澤歩夢・今枝大和（東京ガス）

調整力を確保する際には，需給調整市場や分散型エネルギー資源（DER）による下げDR余力を活用することが期待されている。DERの普及促進のために，その市場価値を最大化する適切な市場入札戦略が求められている。一方で，DERの余力を用いた需給調整市場への入札戦略の検討やインバランスリスクを考慮したDERの運転計画に関する検討事例は少ない。そこで，本研究では需要家への電力供給インバランスリスクを考慮したDERの需給調整市場3次②への入札戦略手法を提案し，市場データを用いた入札シミュレーションによる評価を試みた。

6-103

平均増分費用価格による価格形成に送電ロスが与える影響

○簑津真一郎・馬場旬平（東京大学）

我が国の再エネ導入は太陽光に偏り，昼間の発電余剰への対応として，揚水発電機による揚水に加え，火力発電機の昼間の一時的な解列や最低負荷までの出力抑制が行われている。再エネの主力電源化の進展に伴い，非凸性制約を含む発電余剰への対応の頻度は今後も増加が見込まれている。電力市場では通常，各参加者の入札で得られる利益がゼロ以上であることが保証され，ゼロ未満となる場合はUpliftにより補填される。本稿では，Chenらの提案する，Three-Part Offerの下で最適な起動停止を計算する電力市場における，各参加者のMWPs（Make-Whole Payments）がゼロとなる平均増分費用価格による価格形成手法（AIC Pricing: Average Incremental Cost Pricing）について，送電ロス費用が与える影響を検討した結果を報告する。

6-104

個人間電力取引エージェントシミュレーションにおける太陽光発電予測の重要性

◎高橋光騎・富田基裕・瀬戸寿之・若杉健一・村上朝之（成蹊大学）

エージェントベースモデリング（1）により個人間電力取引（P2P取引）シミュレーションを行った。これまでに，太陽光発電装置（PV）および蓄電池を備えた電力生産消費者を売り手需要家，それらを備えない電力消費者を買い手需要家とし，各需要家がP2P市場に入札・約定することで個人間電力取引を実施する様相を明らかにしてきた（2, 3）。ここでは，売り手需要家がP2P取引において，より合理的判断を下すために急な天候の変化に対応する，すなわち太陽光発電量の予測が重要であることが示唆された。本研究では，売り手需要家に対して翌日のPV発電量を予測する機能を持たせた場合に現れるP2P取引挙動の評価を行う。

6-105

近距離取引優先マッチング方式が個人間電力取引の配電系統に与える影響

◎富田基裕・高橋光騎・瀬戸寿之・若杉健一・村上朝之（成蹊大学）

標準的な配電用変電所1バンクおよび高圧フィーダ7系統からなる規模の需要家群を対象として，近距離取引優先マッチング方式を採用する個人間電力取引（P2P取引）を実施した場合に配電系統が被る影響を数値シミュレーションにより明らかにした。このマッチング方式によりP2P取引市場の系統管理者が配電線路用自動電圧調整装置などを用いなくても，送電網のバスにかかる電圧ピーク値および逆潮流を抑えることが可能である。本研究では従来のオークション方式に従った入札価格順マッチングを比較対象として近距離取引優先マッチングの影響を評価した。

6-106

PV未導入施設においてもストレージパリティを可能にする分散型電力市場の提案

◎松本優也・渡邊政幸（九州工業大学）

PV未設置施設においても蓄電システムを導入した方が経済的に有利な状態を指すストレージパリティを可能にすることを目的とした分散型電力市場を提案する。3種類の取引方法を用いることでストレージパリティの達成，蓄電池の調整力としての活用，電力安定供給の保障を両立させる。北九州市城野地区で測定された消費量・発電量のデータを元にした1年間のシミュレーションによると1年を通して電力需要平準化に寄与しており，1サイクルあたりの経済効果はPV設置住宅で92円，未設置住宅で84円とPV未設置住宅においても経済効果を得ることができた。一方で無駄な蓄電池の動きが多く劣化の進行を速めてしまうという問題があることがわかり，今後の課題である。

6-107

慣性を考慮した電力市場が電力供給力に及ぼす影響の基礎検討

◎加藤啓太・斎藤浩海（東北大学）

同期電源の減少による慣性の低下は，最悪の場合に系統崩壊を引き起こす。この慣性の調達方法の一つに市場の活用が考えられている。このことから，著者らは，慣性を考慮した電力市場ルールを提案する。そこで，事後精算に慣性価値を考慮した理想的な電力市場モデルを用いて，電力系統の電力供給力と慣性に及ぼす影響に関する基礎検討を行った。この結果，慣性価値取引を行うことによって慣性を確保することができた。しかしながら，調整力と慣性を提供するために発電機を最低出力で運転することになり，需給平衡維持の点から再エネの出力制御が行われることになった。この出力制御の対象電源の決定方法にセキュリティ対価を用いることが考えられる。

6-108

仮想慣性取引市場の経済効率性に対する周波数低下許容度と分散電源導入量の感度分析

○横田健剛・山口順之（東京理科大学）

近年，再生可能エネルギー発電の普及が進んでいるが，従来の発電機における回転慣性の喪失という問題がある。これは，システムの慣性が小さいため，系統事故や予測外の需要に対し大きな周波数変動を抑制することができないためである。このために，分散電源出力を用いて従来の発電における回転慣性を模倣する仮想慣性という技術が注目されており，先行研究では動揺方程式をノルム性能指標に置き換えてシステム性能の計算が行われた。また，仮想慣性を取引する市場メカニズムが提案されている。本研究では，仮想慣性を取引する市場において，周波数低下許容度や分散型電源導入量が経済効率性に及ぼす影響を検証した。

6-109

JITモデリングをスポット市場に適用した電力市場価格予測に関する基礎検討

◎増田達矢・石橋直人・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

2016年の電力小売全面自由化以降，日本卸電力取引所（JEPX）での電力取引量は増加傾向にある。それに伴い，系統用蓄電池を用いて，市場価格が安い時間帯に発電・買電し，高い時間帯に蓄電池を介し売電するなどの電力市場取引（裁定取引）のニーズが高まっている。電力取引市場を最大限活用するためには，予測した電力市場価格に基づいて取引計画を立案し，最適な売買を行う必要がある。本稿では，JEPXのスポット市場を対象として，JITモデリング技術を適用した電力市場価格予測の基礎検討を行った結果を報告する。

6-110

売り買いの入札差を説明変数として用いたJEPXシステムプライスの回帰分析

○宮内 肇・井戸祟博（熊本大学）・三澤哲也（名古屋市立大学）

電力市場の価格構造を明らかにすることを目的に，我々は，日本卸電力取引所（JEPX）のシステムプライスの回帰分析を行ってきた。以前は買い入札量を説明変数とする回帰分析を行ってきたが，2020年の研究会で，買い入札量よりも買いと売りの入札量差を説明変数に用い，区分線形回帰で解析する方が，より当てはまりがよいことを明らかにしている。 この報告から既に約3年経過し，最近は需給ひっ迫や市場価格の高騰など，電力市場を取り巻く環境が大きく変化している。そのため，本報告は，2020年度以降現在までのデータに対し，買いと売りの入札量差を説明変数とする区分線形回帰モデルを作成した結果について報告する。

6-111

価格感応度により入札状況を考慮した卸電力市場価格の予測モデル

◎広田慎治・方 雪・崔 錦丹（東京理科大学）・大関 崇（産業技術総合研究所）・植田 譲（東京理科大学）

本研究では，太陽光発電が増加していき価格の変動が大きい卸電力市場に対して正確な予測を行うことを目的とした。 JEPXが公開している価格感応度が入札の状態を示していると考え，それに関する分析を行った。そして価格感応度を説明変数のひとつとしてニュートラルネットワークにより2022年の9月1日から9月7日までのシステムプライスの予測を行った。 価格感応度は学習期間が1年の場合が，より短い期間に対し価格との相関が大きく，同時に仮想増加量が多いほどスポットを通して相関が大きいことが分かった。予測に関しては仮想増加量5000MWの買いと売りの価格感応度を用いることによって若干の精度の向上が見られた。

6-112

2030年のスポット市場の値差分析

○荻本和彦・岩船由美子・竹内知哉・瀬川周平（東京大学）

カーボンニュートラルを目指す電力・エネルギーシステムの大きな変化においては，出力が変動する太陽光発電・風力発電の，従来電源とは異なる場所への大量導入とそれらを連系するための送配電網の増強が必要となり，送電容量が不足してエリア間の連系線が混雑すると，スポット市場のエリア価格に値差が生じる。本検討では，2030年の日本における送電網の増強の指標として利用されるエリア間の市場価格の値差の分析結果について報告する。

6-113

スポット市場で成立する発電計画の最適性に関する考察

◎岡田 剛・長江 翼・益田泰輔（名城大学）

2013年に始まった電力システム改革により，電力市場を通した電力の取引が活発になっている。1つの地域で1つの発電業者が地域全体の需要を考慮して作成する発電計画と，1つの地域で複数の事業者の市場取引結果として成立する発電計画には違いが存在する。本論文では，その2種類の発電計画を提案するモデルによって作成し，最適性を考察する。7日間のシミュレーション結果より，いずれの日付においても市場なしが市場ありよりも運用費が安くなった。つまり，地域内の全発電機を1社が運用する発電計画が社会コスト最小の観点では最適である。しかし，この結果は市場参加者の電源構成や市場によっては差が変化する可能性があるため，今後は構成が異なる場合等について検討していきたい。

6-114

太陽光設備導入モデル毎のシミュレーションによる事業性評価

◎渡辺孝祐・黒田 健・川村遼海・土居優希・田中雄一郎（富士通）

脱炭素社会実現に向けCO₂削減手法として，効果的なモデルを用いて太陽光設備の導入を加速させることが望まれる。本稿では，太陽光導入導入する主要なモデルである，自社導入，オンサイトPPA，オフサイトPPA，自己託送の4つのモデルについて事業コストについてシミュレーションを実施および整理し，報告する。

6-115

住宅地マイクログリッドにおける需要予測誤差の及ぼす小売電気事業者への影響

○野崎航平・熊野照久（明治大学）

2016年における電力小売全面自由化施行により，発電事業者と小売電気事業者の運転制約の代表として従来の実需同時同量制度が終了し，計画値同時同量制度が開始された。現行の計画値同時同量制度は，小売電気事業者と発電事業者があらかじめ電力広域的運営推進機関に30分単位の発電計画と需要計画を提出することで，発電計画及び需要計画と発電実績及び需要実績を一致させる必要がある。そして計画値と実績値の差分であるインバランス電力量に基づき，系統運用者である一般送配電事業者にインバランス料金が支払われる。そこで本論文では，小売電気事業者の立場から誤差関数の作成やニューラルネットワークを用いた予測を行い，インバランス分の電力量を評価した。

6-116

スマートメータデータを活用した需要家レベルの逐次需要予測

○友部 修・足立昌宏・三宅俊之・永井雅彰（日立製作所）・渡邊 亮・松田勝弘（東北電力）

近年，スマートメータの普及により，その計測データを活用した配電系統の運用管理高度化や，需要家を束ねて運用するアグリゲータの運用管理への応用が期待されている。配電系統やアグリゲータの運用管理を適切に行うことを目的に，需要家単位でのミクロ的な観点からの需要予測研究に取り組んでいる。本稿では，スマートメータデータを活用した逐次需要予測方式を提案し，予測に活用するデータ期間（日数・時間）等の予測精度への影響について検証した。検証の結果，データ期間（日数・時間）を適切に設定することで予測精度を高められる見通しを得た。今後は，気象条件を加えたときの予測精度，一定の軒数規模での予測精度検証を予定している。

6-117

DERを用いた配電用変電所の混雑緩和に向けたデータ近接性の学習に基づく調達必要量予測の検討

◎設樂竜士・藤本 悠・金子曜久・飯野 穣・林 泰弘（早稲田大学）

太陽光発電（PV）の導入増加に伴い，逆潮流に起因した配電用変電所の設備容量超過（混雑）の問題が顕在化しつつある。現況設備の持続的な活用とPV発電ポテンシャルの社会的活用の両面から，配電系統内に存在する分散エネルギー資源（DER）の制御を適切な時間帯に誘導し，需要を増やすことによる混雑回避の枠組みの整備が期待されている。本研究は，このような課題意識の下，配電系統内に導入されたDER群（狭域DER群）の活用による配電用変電所の混雑解消効果の定量的な議論を目的とする。狭域DER群を混雑緩和のためのローカルな調整力とみなし，狭域DERを対象とした調整力市場の枠組みを想定し，前日に混雑緩和に必要なDER量を予測する手法を検討する。特に調達不足につながる過小予測を極力回避しつつ過度な調達も削減できるよう，予測に際して参照する過去事例の明示的な選択を目的としたデータ近接性の学習に基づき，このような予測の実現を試みる。

6-118

改良整数型Population-Based Incremental Learningを用いたねん架による配電系統の電圧不平衡抑制のためのねん架地点最適化手法

◎小林優斗・福山良和（明治大学）・関 孝二郎・大井章宏・吉田武尊・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

本論文では，配電系統における電圧不平衡を抑制する方法であるねん架工事を実施する地点を最適化する問題に対して，組合せ最適化手法の一つである整数型Population-based Incremental Learning（I-PBIL）を改良し，初期確率に偏りをつけた改良I-PBILを用いた手法の適用を提案する。最大不平衡率が3.5%を超えるような実規模に近い系統を対象に提案法によるシミュレーションを実施し，その有効性を検証した。

6-119

スマートメータを用いた配電用負荷時タップ切替変圧器の最適タップ位置決定方法

◎井上純也・斎藤浩海（東北大学）

近年，配電系統における太陽光発電（PV）の連系が増加し，潮流の複雑化による適正電圧範囲の逸脱や電圧制御機器への影響が問題となっている。本稿では，特に負荷時タップ切替変圧器（LRT）のLDC方式が太陽光発電の分布に依っては適切に電圧制御を行えない場合があるという点に着目し，スマートメータを用いた新たなLRT制御方式の提案を行っている。シミュレーションにより，従来LDC方式はPV分布が偏っている場合に適正電圧範囲から上限逸脱することを確認した。一方，提案法ではスマートメータ計測情報の活用と最適タップ位置を決定する制御により，PV分布に依らず電圧を常に適正範囲内に収めることが可能であると示した。

6-120

アクティブ配電ネットワーク再構成のためのBSO基づくロバスト最適化手法

◎河内勇裕・森 啓之（明治大学）

本稿では，アクティブ配電ネットワーク再構成のためのBrain Storm Optimization（BSO）に基づくロバスト最適化手法を提案する。近年，アメリカを中心に配電自動化の研究が盛んに行われてきた。配電自動化の分野は多岐に渡り，電圧無効電力制御，ネットワークロス最小化，ネットワーク再構成などがある。本稿では再生可能エネルギー電源の不確定性を持つネットワーク再構成に着目し，提案法の有効性を示す。

6-121

アーカイブを有する進化型多目的最適化アルゴリズムを用いた標準系統候補列挙手法

◎佐藤周也・寺山正剛・関崎真也・西崎一郎・林田智弘（広島大学）・武藤貴昭・國井康幸（中部電力）

配電系統に大容量負荷新設の申込があった場合，設備形成制約を用いて実行可能性を確認し，設備形成制約を違反する場合は，標準系統の変更や配電線の太線化などの設備投資といった対策により設備形成制約違反を解消する。このとき意思決定者に設備投資のコストと改善される目的値のトレードオフ関係を提示することが重要となる。本論文では，配電線の太線化を考慮した上で提案する進化型多目的最適化アルゴリズムと外部アーカイブを併用し，標準系統候補の見直しおよび配電線を太線化することで良好な標準系統候補を発見できることを実規模配電系統モデルを用いた数値実験により検証する。

6-122

PV・EV普及時の柔軟性制御による配電ネットワークの設備効率化への効果検証

◎本木佑典・太田 豊・山口容平・下田吉之（大阪大学）

配電系統への太陽光発電（PV）と電気自動車（EV）の普及拡大に伴い，配電設備の増強や複雑な運用制御が必要とされる可能性があるが，EVの柔軟性提供による設備増強回避の効果については，これまでに十分な議論がなされていない。本研究では，将来の配電系統の設備形成費用を定量評価することを目的として，日本の地域性を考慮した配電系統モデルにPV・EVが普及したシナリオを想定し，容量超過に対する増強費用とEV充電のデマンドレスポンス（DR）による増強回避の効果量について検討をおこなった。結果，柱上変圧器と配電用変圧器の双方に対してDRを実施することで増強費用削減効果を見込める一方，DRに必要なEV台数が他手法に比べて増加することを確認した。

6-123

Quantum Brain Storm Optimizationを用いた配電系統状態推定

◎伊藤亮朗・森 啓之（明治大学）

本稿では，進化的計算法であるBrain Storm Optimizationに量子行動を導入したQuantum BSOを用いた配電系統状態推定を提案する。近年，効率的な系統運用や制御を行うためには配電自動化が重要である。本稿では，配電自動化において系統運用者が効率的な系統運用を行うために重要である状態推定に着目する。評価関数は非線形最適化問題であるため，その解法として進化的計算を用いる。本稿では，BSOの改良手法であるQBSOを用いた手法を提案する。提案法をIEEE33ノード配電系統へと適用し，従来法との比較を行うことで有効性を示す。

6-124

柱上変圧器の接続相判定手法の有効性検証

◎小山創央・福山良和（明治大学）・関 孝二郎・大井章弘・吉田武尊・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

柱上変圧器の接続相が明確になると，ねん架を含む様々な方法で三相不平衡状態を解消し，配電系統の運用改善が可能となる。計測間隔が異なる2つのデータを用いる柱上変圧器の接続相判定について，相関による手法とMaximum Correntropy Criterionを用いた整数型Population Based Incremental Learningによる手法により有効性検証を行った。柱上変圧器9個のモデルを使用して両者の手法の比較シミュレーションを行ったところ，後者の手法の方が正しい接続相を判定する数が多かった。これより後者の手法がより正確に接続相を判定できる事を確認した。

6-125

非同期計測と外れ値を考慮した並列複数集団型GBSODEによるコレントロピーに基づく配電系統状態推定方式のパラメータ感度解析

◎髙橋 琉・福山良和（明治大学）・関 孝二郎・大井章弘・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

著者らは，非同期計測に対応し，つじつまが合わない系統データに対応可能な配電系統状態推定手法を開発してきたが，実用化の際にどのパラメータを注意深く調整すべきかということが明確ではなかった。よって，本論文は，非同期計測と外れ値を考慮した並列複数集団型GBSODEによるコレントロピーに基づく配電系統状態推定方式のパラメータ感度解析を行った。ベースのパラメータを決め，その中から1つだけ値を変更して，試行100回の目的関数値の平均を比較した。すべてのパラメータを0.6以上に設定すれば良質な解が得られること，クラスタ数が8を超えると精度が悪くなることがわかった。

6-126

柱上変圧器の保修判断を支援するモデルの構築

◎中山夏実・岩瀬徳寿・高野浩貴（岐阜大学）・浅野浩志（電力中央研究所）・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）・金成宇輝・西廣雄介（関西電力送配電）

配電設備の多くは高度経済成長期を中心に新設されており，老朽化が進展している。設備の長期利用は不具合，事故リスクの増加につながるため，経年に従って計画的に更新する必要がある。しかしながら，経年に応じた設備更新を続けると，ある時点で更新が必要な設備が急増し，対処しきれなくなる可能性がある。こうした背景から，既存の設備の徹底活用や計画的な設備更新が重要となってくる。本稿では，実データを用いて，点検結果から柱上変圧器の保修の要否を自動的に判定するモデルを構築した結果を紹介する。モデルの作成には，決定木学習を用いることにした。また，保修要否を判定した結果を地図上に描画しする方法を検討した結果も紹介する。

6-127

状態推定を用いた配電系統の電圧分布推定 －スマートメータの計測情報と推定精度の関係－

◎赤坂莉空・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・杉村修平・後藤誠弥・栗原世治（明電舎）

太陽光発電の配電系統への連系量増加に伴い，電圧管理がこれまで以上に難しくなっている。より高度な電圧管理を実現するために配電系統内の電圧分布をこれまでよりも精度よく把握することが重要である。スマートメータ（SM）はエネルギーマネジメントの高度化などを目的として，現行SMから次世代のSMへの取り換えが予定されている。次世代SMでは有効電力の他に無効電力，電圧の情報を，現行SMより短いサンプリング周期で計測する予定である。そこで本稿では，配電系統の電圧分布推定に次世代SMデータを利用した場合推定精度に関して検討する。

6-128

配電系統における実負荷推定に関する一考察

○後藤泰希・若尾真治（早稲田大学）・井上華那・長谷川匡彦・唐澤利史（東京電力ホールディングス）

配電線切替時等には実需要の把握が必要となるものの，配電系統内に分散設置されているPV出力を全てリアルタイムで計測することは現実的とは言えない。そこで本研究では，空間的に広がりのあるPV出力を，同エリア内に設置された代表的なPV発電所の出力を用いて簡易的に評価した。そして，評価したPV出力を複数配電線の見かけ上の需要に重畳した値を実需要推定値とした。 本検討では，複数配電線における6月の実需要推定波形を，波形の変化に着目してクラスタリング分析した。結果として波形は2つのクラスタに分類され，その特徴は電灯とその他契約の2種類の特徴に対応して類似していた。配電線内には様々な契約種別が混在しているが，本例題で実需要推定波形をクラスタリングした結果，各配電線のより支配的な契約種別の特徴に基づき，2種類に大別されたと考えられる。

6-129

停電復旧の最短手順を算出するアルゴリズム

川原 純・山岡宙太（京都大学）・○伊藤健洋・鈴木 顕（東北大学）・飯岡大輔（中部大学）・杉村修平・後藤誠弥・田邊隆之（明電舎）

系統事故により停電が発生した際，周辺の供給余力を用いて停電を早期に復旧するために，開閉器の切替手順を算出するアルゴリズムを提案する。本アルゴリズムは，多段融通にも対応し，切替手順の最短性を理論保証する。本稿では，組合せ遷移のアルゴリズム理論とゼロサプレス型二分決定グラフというデータ構造を活用することで，これを実現する。また，配電網の標準解析モデル（ベンチマークデータ）を用いて，提案アルゴリズムの検証も行う。

6-130

需要家内機器の損失を最小化する配電電圧調整法に関する研究

◎知識 凜・芳賀 仁（長岡技術科学大学）・有松健司（東北電力）・伊東洋一（GSユアサインフラシステムズ）

IoTの普及から需要家内の機器を制御することで省エネルギーを目指すHEMS等のシステムが導入されている。 しかし，今後さらなる省エネルギーを目指すためには抜本的な変更が必要となる。 そこで，本稿では既存系統にこだわらず，電力品質を維持する新たなエネルギーマネジメントを提案する。 提案手法は需要家内の誘導機，PMモータ，照明の各機器の損失特性を取得し，運転状況に応じて配電電圧を積極的に変更することで需要家内機器の損失を最小化することが目的である。 その結果，シミュレーションで，あるパターンにおいて既存の200V固定の電圧に比して提案手法は10.5%の損失低減することを確認し，提案手法の有効性を示すことができた。

6-131

近隣PV計測値を用いたSVR整定値決定手法の初期検討

◎渡部鴻人・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）・岩本泰典・彦山和久・野村英生・福田徳浩（中部電力パワーグリッド）

配電系統では，PV導入量増加に伴う電圧逸脱発生への対策が喫緊の課題である。中部電力パワーグリッド管内では，容量の大きいPVに対し，短周期の出力を計測可能なPV引込センサ付開閉器（PV引込センサ）を設置している。この計測値により，配電系統内の各需要家PVや容量の小さいPVの短周期的な出力変動の傾向を再現でき，電圧制御に活用できると考えられる。そこで本稿では，短周期出力未計測地点のPV出力を，複数の近隣PV引込センサ測定値から短周期な値として推定し，それを用いたSVR整定値決定手法を提案する。さらに，数値計算では，中部エリアの実系統モデルを用いて，PV出力推定精度と提案手法の有用性を電圧制御性能の観点から評価した。

6-132

動的確率潮流計算を用いたスマートインバータにおける無効電力調定率の検討

◎有江洋太・中西要祐（早稲田大学）・鈴木亮平・藤本 久（富士電機）

再生可能エネルギーの導入が進められるにつれて，制御不可能な出力の変動によって，配電系統の適正電圧範囲を逸脱する可能性について懸念されている。そこで，太陽光発電設備などに備わるPCSの機能として注目されている，無効電力調定率制御による電圧上昇抑制効果を検討したい。そのため，本研究では先行研究の周波数調定率制御を組み込んだ動的確率潮流計算を，無効電力調定率制御を組み込んだ動的確率潮流計算へと拡張した。また，例題系統にて無効電力調定率を組み込んだ動的確率潮流計算を行うことで，それぞれの電圧を計算することで，無効電力調定率制御の効果を検討した。

6-133

LRTとの協調に向けたスマートインバータのVolt-Var制御パラメータ決定に関する初期検討

◎馬 喬・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）

太陽光発電（PV）が連系された配電系統では，電圧を適正範囲に管理する手法の開発が喫緊の課題である。配電系統の電圧は，負荷時タップ切替変圧器（LRT）により制御されてきたが，近年，スマートインバータ（SI）による電圧制御が検討されている。SIの電圧制御機能の一つであるVolt-Var制御（VV制御）の電圧制御性能は，予め決定する制御パラメータに依存する。この制御パラメータをLRTとの協調も加味して決定しておくことで，効率的な電圧制御が可能であると考えられる。そこで，本稿では，LRTとの協調に向け，系統電圧幅の低減を図るVV制御パラメータ決定手法を提案し，その有用性を6フィーダ高低圧配電系統モデルを用いた数値計算で評価する。

6-134

燃料電池型コージェネレーションシステムを用いた自律的な配電系統電圧変動補償制御

◎山本周平・渡邊政幸（九州工業大学）・牛房義明（北九州市立大学）

太陽光パネルの大量導入が配電系統電圧変動を引き起こし，既存電圧制御機器の保守管理費増加が課題となっている。本稿は，既存電圧制御機器の負担軽減のために，導入が進み，通信機能が搭載され，昼間帯に制御余力をもつ燃料電池型コージェネレーションシステムに着目し，電圧変動要因の電力変動を直接かつ自律的に補償する制御手法の提案を行った。提案手法は，対象電圧変動を減少させ，既存電圧制御機器の動作回数を減少させた。また，特徴でもある直接補償より，過剰な電圧制御を自律的に回避させた。本稿は，燃料電池型コージェネレーションシステムの潜在能力を活かすことで，既存電圧制御機器の保守管理費増加課題の解決策として貢献することを明らかとした。

6-135

フルブリッジ型直列補償装置を用いたループ状配電系統の潮流制御の検証

◎田村快士・磯部高範・萬年智介（筑波大学）

日本の配電系統では太陽光発電などの分散型電源の導入が進んでおり，逆潮流による系統末端の電圧上昇が問題となっている。分散型電源の普及による不適切な潮流および電圧の不安定性を適正化する手段としては，配電線をループ状にし，各回線の潮流および無効電力を積極的に制御することが有効である。そこで，パワーエレクトロニクス技術を用いてループ状配電系統の潮流および電圧のネックを解消する潮流制御装置の研究が進められている。本研究では，フルブリッジ回路を電線に直列に接続することで潮流制御を行う「フルブリッジ型直列補償装置」を提案し，実験室モデル回路を用いてループ状配電系統における潮流制御の検証を行った。

6-136

遺伝的アルゴリズムを用いた蓄電池配置手法による，PVが大量導入された配電系統の電圧適性範囲維持に関する検討

◎淺田 浩・馬場旬平（東京大学）・河原克樹・藤井和也（九州電力送配電）・張本 毅・長尾 潤（九州電力）

PVが大量に導入された配電系統の電圧適性範囲逸脱問題を解決するために，遺伝的アルゴリズムを用いた蓄電池の配置手法を提案しました。この手法に基づいた蓄電池の配置手法を配電系統モデルによってシミュレーションしたところ，配電系統の電圧が適性範囲に維持できることが確かめられました。

6-137

配電系統の部分ループ化によるPVおよびEVの導入可能量向上効果の評価

◎蔵口桜子・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）・村本大輔・飯田義和・山口大翼（関西電力送配電）

持続可能な社会の実現に向け，太陽光発電（PV）や電気自動車（EV）の導入およびエネルギーの効率的な活用が必要である。これまで配電系統の構成は放射上系統構成の下で運用されてきたが，PVやEVの導入に伴う線路容量超過や電圧逸脱の発生が懸念されており，PVやEVの導入可能量を最大化する上で，この課題への対策が必要である。その対策の一つとして，送電系統で適用されている系統のループ化が挙げられる。ただし，ループ運用では，短絡電流の適切な検出などへの影響も配慮する必要がある。本稿では，筆者らがこれまで検討してきた放射状系統を部分的にループ化する部分ループ配電系統の有用性を，現在から2050年相当までのPV/EV導入状況を対象に，PV/EV導入可能量向上効果の観点から評価する。

6-138

PVS・負荷が1地点に接続された高圧配電線での電圧表現式を基盤とする複数の接続点電圧の導出方法 －2地点負荷接続－

◎金森涼太朗・横水康伸・荒木竜也（名古屋大学）・松村年郎（名古屋産業科学研究所）・佐野真也・深江隆之・濱田康佑・水野佑哉・吉江 学（中部電力パワーグリッド）・岩月秀樹・國井康幸（中部電力）

太陽光発電装置が再生可能エネルギー利用の1つとして進み，近年ではメガワット級のPVSが高圧配電線に連系されることがある。しかし，PVSの出力電力が供給可能電力を超過した場合，PVSの発電が停止してしまうことが考えられる。これまでにPVSの接続地点数F_Pおよび負荷の接続地点数F_Lが，（i）F_P=2かつF_L=0あるいは（ii）F_P=1かつF_L=1の状況下では，電圧表現式は接続点電圧を未知数とする8次方程式で記述できることを導き，接続点電圧およびP_limの計算結果を示してきた。次段階では，複数のPVS・負荷を一時的に一つに集約することによって，1地点接続下での電圧表現式を適用し，その後，反復計算を通じて，複数の接続点電圧を導くことを目論んでいる。

6-139

長距離高圧配電線を介して遠方から連系されたPVSとその出力可能電力 －PVS・負荷の力率を考慮した電圧表現式の導出－

◎荒木竜也・横水康伸・金森涼太朗（名古屋大学）・松村年郎（名古屋産業科学研究所）・佐野真也・深江隆之・濱田康佑・水野佑哉・吉江 学（中部電力パワーグリッド）・岩月秀樹・國井康幸（中部電力）

太陽光発電装置が再生可能エネルギー利用の一つとして進み，PVSの導入量は増加し続けている。長距離高圧配電系統にメガワット級のPVSが連系されることもあり，PVSの出力電力が配電線路の供給可能電力を超えてしまった場合，PVSの発電が停止してしまうことが考えられる。筆者らは，これまでに，PVSおよび負荷が接続された高圧配電線について，接続点電圧の代数方程式を導出すること，ひいては，この式を解くことによって，PVSの出力可能電力の上限値P_limの提示を進めてきた。その一状況として，配電用変電所と負荷とを接続する高圧配電線の途中から分岐した高圧配電線で，遠方のPVSを連系した状況を検討している。これまでに負荷とPVSの力率が1の場合について報告してきた。本報告では，負荷の力率およびPVSの運転力率を導入した負荷接続点電圧V_L1に関する電圧表現式を導き，P_limの算出結果例を述べている。

6-140

PV導入配電線における有効電力と無効電力の関係

○児玉安広・林 泰弘（早稲田大学）・池田欧世・宗像大介（東京電力パワーグリッド）

配電線へ大量にPV発電が導入された際の課題として，PV発電から配電線への逆潮流を起因とした適正電圧の上限逸脱と電線の許容電流の超過が懸念されている。PV発電からの逆潮流による電圧逸脱を回避するために，力率一定運用を行っている。一方で，高低圧に連系されたPV発電からの電圧上昇を回避するための無効電力の寄与を示す実データはあまり示されていない。 そこで，東電PG管内においてPVが導入されている配電線の立上りで測定された，線間電圧，各相電流，有効・無効電力と力率値を基に，PV発電の力率一定制御と電圧の関係を示す。これらの結果は，PV発電が大量連系された際の電圧，電流特性を評価するためのモデル構築に必要な知見となる。

6-141

配電系統末端PVの発電限界電力に負荷が与える影響とそのメカニズムの解明

◎中津井紳司・岩月秀樹（中部電力）・松村年郎（名古屋産業科学研究所）・横水康伸（名古屋大学）・清水洋隆（職業能力開発総合大学校）

逆潮流による電圧安定限界が存在し，PV発電容量に限界があることが明らかとなっている。筆者らはこれまでに，末端PVの発電限界電力に関する検討を行ってきた。その中で，線路途中に負荷を設置した場合に，負荷による電力消費で末端PVの発電限界電力が上昇すると思われるところ，接続位置によっては発電限界電力が低下するという不思議な現象を確認した。本稿では，ベクトルを用いてこの現象のメカニズムを解明したため報告する。

6-142

二つの太陽光発電システムが連系された配電系統における安定出力限界値の実験的検討

◎山中光樹・斉藤王嵐・清水洋隆（職業能力開発総合大学校）

配電系統に連系された太陽光発電システムの出力電力は，安定出力限界値以下に制限される。これまでに，二つの太陽光発電システムが連系した配電系統における安定出力限界値を算出している。今回，その妥当性について実験的に検証した。太陽光発電システムの出力電力が安定出力限界値に近づくとPCSが制御不能となることから，実験においては，PCSが制御不能となるときの出力電力を安定出力限界値として測定した。その結果，実験結果と計算結果とが同様の特性をとなることが明らかとなった。

6-143

配電系統制御に向けたDER出力の決定手法

◎弓木翔太・河野俊介・松田啓史（三菱電機）

送配電系統において，太陽光発電，蓄電池等の分散型エネルギーリソース（DER）の普及が拡大している。しかし，DERを電力系統へ導入すると，過負荷問題や電圧管理の困難化が懸念される。この課題に対し，従来では，過負荷に備えた配電線増強や電圧調整器による電圧管理の高度化が行われてきた。一方，近年では，DERを活用し，一時的な過負荷や電圧逸脱の解消を行う，分散型エネルギー資源管理システム（DERMS）が検討されている。本報告では，設備増強を回避し，PV発電出力変動に備えた配電系統制御の実現を目的とし，その目的を達成するDER制御量配分と電圧調整器への指令値を決定する手法を提案する。また，数値シミュレーションにより，提案手法の有効性を検証する。

6-144

Optimal Management of PV Prosumers Powers for Voltage Control and Profit Maximization Using Nodal Prices

○Ahmed Bedawy・Naoto Yorino・Yoshifumi Zoka・Yutaka Sasaki・Ryuta Kubo・Satoshi Taoka（Hiroshima University）

Recently, the increase in the number of countries around the world, which have committed to reaching a net zero carbon, led to an increase in the installation of renewable energy sources (RESs) in the distribution systems (DSs), particularly solar photovoltaic (PV) has overgrown to reduce CO2 emissions. However, the high penetration of RESs causes various DS problems for the DSs, such as voltage violations, and affects power system stability. The voltage violations problems restrict the RESs hosting capacity and increase the generated power curtailment. Therefore, the PV sources’ output powers are curtailed in specific feeder nodes to mitigate the DS overvoltage problems, which causes unfair profit distribution among prosumers and decreases the hosting capacity of the PVs. This paper proposes a novel approach for optimizing the output powers of the PV sources in the DS. The optimal proposed approach aims to maximize the power generation of the PV prosumers while enhancing the network voltage profiles. First, an optimal power flow (OPF) technique is carried out to compute active and reactive PV power’s shadow prices to mitigate voltage violations. Then dynamic pricing is performed online for the PV powers in DS using a multi-agent system.

6-145

配電系統におけるSTATCOMの設置位置の簡易的な検討手法

◎庄司智昭・佐々木直行・長谷川匡彦・唐澤利史（東京電力ホールディングス）・赤木 覚・山本良太（東京電力パワーグリッド）

太陽光発電が系統連系する際にはパワーコンディショナ（Power Conditioning System: PCS）を介して接続されており，接続するにあたり求められる電力保安及び供給信頼度維持のための保護機能の一つに単独運転防止機能がある。単独運転防止機能として新型能動的方式を具備したPCSが低圧系統を中心に普及しており，これらのPCSから系統に注入される無効電力は同期する特徴を有するため，大規模な電圧フリッカを誘発することがある。本稿では，電圧フリッカを防止する系統側の暫定的な対策として急峻な電圧変動を抑制するSTATCOMの設置位置に関する簡易的な検討手法を提案とATP Drawを用いた系統解析結果と比較することで，提案手法の有効性を検証した。

6-146

広域電圧フリッカへのPV-PCS有効電力制御の影響とSTATCOMによる抑制

◎小野里航平（東芝三菱電機産業システム）・西田圭吾・押川博亮（九州電力送配電）・藤井俊行・高橋達也・谷 直樹（三菱電機）・奥山涼太・森島直樹（東芝三菱電機産業システム）

電力系統における太陽光PCSの単独運転検出機能が原因の電圧フリッカについては，配電系で6Hz程度のフリッカが発生していることが確認されており，STATCOMを用いた抑制制御の研究が行われている。一方，近年では3Hz程度のフリッカが広域的に発生するようになった。筆者らは，このフリッカの6Hzから3Hzへの低周波化に対してPCSの有効電力制御関与の可能性を報告したが，本論文では，有効電力制御のフリッカ周波数への影響を，固有値や周波数特性解析，およびシミュレーションにより検討し，さらに有効電力制御が広域フリッカを誘発する可能性や，提案したSTATCOMのフリッカ抑制効果を検討した。

6-147

低圧用STATCOMによる配電系統の電圧フリッカ抑制システムの開発と効果検証

◎星 舞樹・戸上裕基・川﨑章司（明治大学）

近年，太陽光発電と低圧用パワーコンディショナの連系量が急増しており，その影響で系統電圧の上昇や電圧フリッカの発生などの問題が生じている。本研究では，系統電圧の上昇及び電圧フリッカ対策としてSTATCOMの低圧系統への導入を検討し，抑制効果をシミュレーションにより検証することを目的とする。 本研究では，約4秒間のシミュレーションを行い，2秒時点から低圧用STATCOMを作動させた。系統には1kWの住宅負荷，定格出力3kWのPV，PCSを4件分配置した。PVは一定出力とし，PCSによる無効電力の注入量としてPVの出力の25%の振幅，かつ6Hzで発振するものを選定した。STATCOM作動後は，系統電圧の低下と電圧フリッカ抑制による電圧変動の振幅の抑制が確認できた。

6-148

ステップ注入付周波数フィードバック方式に起因する低周波数電圧フリッカの実験的基礎検証

◎中西俊貴・高橋尚之・上村 敏（電力中央研究所）

パワーコンディショナ（PCS）に搭載された単独運転検出機能の能動的方式に起因する無効電力の周期的振動，それに伴う電圧フリッカの発生が報告されている。本問題に対し，低圧配電線に連系するPCSを対象に，制御理論に基づく安定性解析によって5～10Hz付近におけるシステムの不安定化と無効電力振動継続の発生メカニズム解明が報告されている。一方，近年，従来よりも低い周波数帯での発生事例が報告されている。本事象は能動的方式に起因すると考えられるが，低周波数電圧フリッカの発生メカニズム解明だけでなく，実機を用いた事象再現も報告されていない。本稿では，低圧配電線に連系するPCSを用いた実機検証の手法および検証により当該事象を再現したので報告する。

6-149

空調用アクティブフィルタを用いた無効電力注入によるPV大量導入系統でのSVC削減効果

◎松田響生・馬場旬平（東京大学）・河野雅樹・太田圭祐・川嶋玲二（ダイキン工業）

近年，配電系統に大量の分散型太陽光発電設備が接続され，系統末端での電圧逸脱が深刻化している。これまで電圧逸脱の解消にはSVCなどの無効電力補償機器が用いられてきたが，本稿では業務用パッケージエアコンの高調波抑制に用いられるアクティブフィルタ（AF）の空き容量に着目した。エアコンの部分負荷運転時や未稼働時に存在するAFの余剰能力を用いて系統に無効電力を出力することで，配電系統の電圧調整に貢献できると考えられる。そこで，配電系統モデルを用いたシミュレーションを通じて，AFがもつ電圧抑制能力としての「価値」を，配電系統末端に設置されるSVCの削減効果として定量化することを試みたので報告する。

6-150

5段MMCC構成を用いた6.6[kV]配電用トランスレスSTATCOMの構築に関する研究

◎田村祐介・呉 国紅（東北学院大学）

本論文では，再生可能エネルギー発電やEVなどの変動負荷の大量導入による6.6[kV]級高圧配電系統の電圧変動を抑制するための，新型トランスレスSTATCOMの回路構成および制御系を提案し，検討した。この装置は，5段構成複数電圧MMCC-SSBC方式を採用することにより，IEC規格の電圧階級における低圧区分の機器として扱えることが可能となる。本研究では，提案したトランスレスSTATCOMモデルを構成し，段間バランス制御の研究を行い，提案したSTATCOMモデルを用いた単体動作に関するシミュレーションによってその有用性を示した。

6-151

系統連系用インバータに起因する高次高調波電圧に対する需要家負荷の影響の実験的検証

○福島健太郎・岡田有功（電力中央研究所）

本稿では抵抗負荷を模擬配電系統に接続し高次高調波電圧への影響を実験的に検証した。その結果，抵抗負荷を接続することにより，高次高調波電圧が無負荷時よりも減少することが明らかとなった。さらに，同一の負荷の大きさでも，接続地点でその減少する割合が変化することが明らかとなり，模擬配電系統の中間のコンデンサと並列に接続する方が効果的であることがわかった。

6-152

需給調整市場におけるヒートポンプ給湯機の調整力の検討

◎董 昊坤・馬場旬平（東京大学）

本稿では，需要側機器（可制御負荷）のヒートポンプ給湯器（HPWH）を利用した需給調整市場へ参入するため，HPWHの実機特性，実需要データを基に三次調整力①，②，二次調整力②への適用可能性について検討した。加熱能力指令を変更可能な実験機を研究対象として，応動時間，継続時間，指令間隔及び入札量の要件を検討した。また，調整力供出手法の検討を検討した。HPWHの運転時間によって複数のグループを組み合せ，運用することとした。三次調整力②，①供出のシミュレーションの提供期間において，HPWHが調整力約定量の範囲内で指令に従い調整を行った。二次調整力②供出のシミュレーションにおいて，HPWHと蓄電池を併用することで調整力を供出した。

6-153

周波数変動抑制を目的とした負荷制御への深層強化学習の応用

◎古田雅大・斎藤浩海（東北大学）

系統周波数の変動を抑制する手段として，需要側の負荷機器の消費電力を制御する負荷制御が考えられているが，複雑化している電力システムの特性を把握し多数の負荷機器を適切に制御することは容易ではない。そのため，試行錯誤を通じて環境に適応した行動方策を獲得することができる強化学習を用いた負荷制御について検討されている。本稿では，強化学習と比べ必要となる記憶容量や学習時間を抑えることができる深層強化学習を，周波数変動抑制を目的とした負荷制御へ応用することについての基本的な検討を行った。シミュレーションの結果，正弦波のような単純な負荷変動を入力し学習した場合には，深層強化学習を用いた負荷制御に周波数変動抑制効果があることを確認した。

6-154

需要家グループの受容度を考慮した目標負荷曲線の分配に関する研究

◎井上耀一朗・船木亮平・村田純一（九州大学）

蓄電装置を備えていない需要家に対するデマンドレスポンスの目標需要を設定する方法を提案する。ある需要家グループのある時間帯の需要は，時間帯が同じであっても日によって変動する。この変動の大小を需要の変更がどれだけ可能なのか意味するとし，過去の需要データから求めた平均値と標準偏差を基に正規分布にならって受容度として表現する。 1日24時間分の各需要家の目標負荷曲線を合計値が各時間帯の総需要と一致するように分配する。受容度の公平性を確保するために，受容度が最小の需要家グループの受容度を最大にする需要を求める。 計算例から受容度が一定の数値を保ったまま各需要家の目標負荷曲線の算出が可能であること確認した。

6-155

デマンドレスポンスに利用する短期電力需要予測の検討

◎畑井良文・羽根佑歩・松井康人（京都大学）

近年，デマンドレスポンスが需給バランスに重要な役割を果たすことが知られている。インセンティブに基づくデマンドレスポンスにはベースライン計算が必要である。ベースラインを用いた短期電力需要予測には様々な手法が提案されているが，その精度を評価した論文はほとんどない。そこで，本論文では，ベースライン手法の精度を評価した結果，自己回帰移動平均モデルが最も精度が高いことがわかった。今後は，LSTMなどの深層学習モデルに基づく予測の精度を評価し，精度を基にさらなる包括的な課題を抽出する必要がある。

6-156

上水道システムにおける送水ポンプの最適運転計画策定手法の一検討

◎杉村修平・林 泰弘（早稲田大学）・田邊隆之・伊藤孝充（明電舎）

カーボンニュートラル実現に向けて，分散型電源の連系拡大が不可欠であるが，分散型電源の大量連系時には配電線への逆潮流増加による電圧上昇や系統混雑の発生が懸念されている。これらの課題に対応するため，需要家設備としてインフラ設備である上水道における送水ポンプの制御に注目した。送水ポンプの運転時間を制御することで，「上げDRによる配電系統への貢献」や「ポンプ使用電力によるCO2削減」が期待できる。本稿では，DRやCO2削減効果が評価できる送水ポンプの最適運転計画策手法構築を目的として，非線形性をもつポンプ特性の線形化の検討を行い，最適運転計画を混合整数線形計画問題として定式化し，数値計算を実施したので報告する。

6-157

需要リソースのモデルベースアグリゲーション制御法

○岩渕一徳・久保田雅之・渡並洋介・坂田将典・志賀慶明・糸山竜一（東芝エネルギーシステムズ）

自家発電設備や需要設備の運用調整で受電量の抑制を可能とする需要リソースを活用したVPP（仮想発電所）による調整力の創出が期待されている。リソースごとの応答性を考慮するモデルベースのアグリゲーション制御法をもとに，リソース需要レベルの偏差を外乱オブザーバで推定して需要増に伴う供出可能量の低下を他リソースへの再配分で補うように構成した需要リソースのアグリゲーション制御法を検討した。調整力指令に追従するVPP運用のシミュレーションでアグリゲーション制御法の動作を検討した結果，制御指令・計測情報伝達のむだ時間特性や需要の変動，需要増による供出量低下を含む需要リソースを対象に，制御安定性と応動追従性を示すことを確認した。

6-158

スマートハウス内の温度制御高度化を目的としたモデル予測制御パラメータの最適化

◎田崎貴一（琉球大学）

近年，持続可能でより良い社会を目指すための国際目標であるSDGsでも再生エネルギーの導入拡大，気候変動に対する適応や対策などがあげられており，脱炭素は大きな課題である。 地中熱は，温暖な気候での適用やシステム研究の事例が少なく，従来のエアコンと比較し，導入コストが高いことが原因として挙げられる。 本研究では，スマートハウスにおける地熱ヒートポンプの投資回収期間の短縮と温度制御の向上を目的として，モデル予測制御を適用した空調制御手法を検討した。 追従誤差の重みを増加させることで平均絶対温度誤差を減少させ，制御入力の変化率や制御入力の大きさの重みを加えると，消費電力量を減少させることができると考えられる。

6-159

停電レジリエンス価値の評価モデルの構築（3） ～分散型電源を有する複合施設における評価～

◎當房拓朗・堺 紀夫・髙橋玲子・羽深俊一（東芝エネルギーシステムズ）・飯野 穣・矢部邦明・林 泰弘（早稲田大学）

近年の自然災害頻発を受けて，インフラのレジリエンスが社会的課題となっている。電力のレジリエンス向上には，供給側に限らず需要家側の対策も有用であるが，停電対策としての分散型電源の導入は十分に進んでいない。また，需要家側に注目した定量的なレジリエンス評価例は少ない。本稿では，分散型電源が設置されている複合施設に，地震による停電が生じた際のレジリエンス評価例を報告する。停電頻度と電力需給バランスの評価から，年間電力不足率の期待値を算出し，損害の分散型電源による軽減額（レジリエンス価値）を定量評価した。今後，地震以外の災害や投資対効果の評価へ展開する予定である。

6-160

BCP対応設備設計シミュレータの開発

○林 巨己・近藤英幸・石上雄太・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

本論文では，電力供給設備の最適導入量を算定するシミュレータについて報告する。本シミュレータは，電力供給を行う負荷に対して，電源設備ごとにその最適な導入容量と運用形態（運用計画）を算出することができる。評価対象の電力供給設備は，燃料を必要とする発電設備（自家発電機，燃料電池など），再エネ（太陽光：PV），および蓄電池である。本シミュレータを用いた評価例として，（1）電力系統停電時に地域の需要に電力供給を行うケース，および（2）カーボンニュートラルを踏まえ停電時に蓄電池とPVを用いて公共施設に24時間電力供給を行うケースについて述べており，その有効性を確認した。

6-161

非常時のレジリエンス性を考慮したマイクログリッド設備計画手法の基礎検討

◎澤邉剛志・河野俊介・北村聖一（三菱電機）

近年，電力インフラのレジリエンス性強化策の一つとして，再生可能エネルギー電源や蓄電池，小型発電機等の分散電源（以下DER）を活用した分散型エネルギーシステムであるマイクログリッド（以下MG）が注目されている。MGは，非常時においても，MG内のDERを活用し，災害時拠点等の重要施設や需要家に電力を供給することが可能である。MGの新規構築時や，既存MGの設備増強時には，設置するDERの設置位置や線種，変圧器等の設備計画を策定，改定する必要があり，系統の電圧や電流量を見積もった上で，平常時のコストと非常時のレジリエンス性を両立した，設備計画を決定する手法が求められる。本稿では，平常時のコストと非常時のレジリエンス性を目的関数としたMGの設備計画手法を提案する。

6-162

停電災害対策への貢献を目指した電動バスによるレジリエンス性能のポテンシャル評価検討

○飯野 穣・井原雄人・藤本 悠・光岡正隆・林 泰弘（早稲田大学）

近年，地震や台風などの自然災害による都市の停電災害がしばしば発生しており，電力システムのレジリエンス対策の議論が盛んになりつつある。本研究では，電動バス群を停電発生時（有事）に，公共施設への電力供給などに役立てることを想定した，レジリエンス貢献度のポテンシャル評価を目的とする。第一に平時の最適充電計画を前提とした，電動バス蓄電池の蓄電残量を評価する。また，電動バスの限られた蓄電池リソースを平時・有事双方に活用する場合，トレードオフによる性能限界が想定される。そこで，台風接近時や電力需給ひっ迫時など，事前に停電災害が予測できるケースに対し，予測対応レジリエンスモードの最適充電計画手法を新たに提案し，災害予測可否の両ケースに対するレジリエンス性能評価を試みる。

6-163

Battery State of Charge Limitations for Energy Preservation during Prolonged Outages

◎Kihembo Samuel Mumbere・Yutaka Sasaki・Naoto Yorino・Yoshifumi Zoka・Yoshiki Tanioka・Bedawy Ahmed（Hiroshima University）

The adoption of renewable technologies, such as distributed energy resources (DERs) and small-scale shared energy sources, has been increasing globally. However, unplanned outages are also on the rise and can significantly impact business continuity, especially when prolonged. Additionally, integrating DERs into power systems can present challenges, including voltage and frequency fluctuations, phase mismatches, and supply-demand imbalances, which may reduce the reliability of the power system and require energy management systems (EMS). Despite these challenges, DERs can store energy through battery energy storage systems (BESS), which can be useful during disasters when stored energy within a BESS may be necessary for communication, navigation, and access to other necessities for disaster recovery. This paper proposes using BESS state of charge (SOC) limitations to preserve energy for critical services during a disaster. It discusses the EMS for interconnected power systems with PV and BESS systems.

6-164

BCPを考慮したコーポレートPPAによる蓄電池充放電の最適計画

◎榊本貴之・植田 譲・崔 錦丹（東京理科大学）

本研究では近年の世界的な脱炭素化を背景に電力系統への依存性の低下を目的として，コーポレートPPAを締結した需要家を想定し，BCPを考慮した蓄電池充放電計画を作成した。 コーポレートPPAはオンサイトPPAとオフサイトPPAの併用を想定し，工場需要とPV発電量，蓄電池充放電量に対して，BCPを考慮したSOC制約を条件とし，系統との電力やり取り量の2乗を目的関数とした最適化問題を解くことによって蓄電池の最適な充放電計画を作成した。 最適化を行ったモデルと蓄電池充放電制約の範囲内で余剰時に充電し不足時に放電を行う最適化なしのモデルを比較した結果，最適化システムによって系統との電力やり取り量の削減を確認することができた。

6-165

停電対策用蓄電池の確率的最低確保充電量 －評価手法の提案

◎松永洸樹・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

近年，レジリエンス強化対策の一つとして非常用電源の有用性が再認識されている。非常用電源として太陽光発電（PV）と蓄電池を組み合わせることで，PVの持つ自然変動性を緩和するだけでなく，非常用電源としての有用性も向上できると考えられる。しかし，蓄電池のコストは高く，設備容量を必要最低限に抑えつつ，平常時から有効に活用することが重要である。そこで本稿では，非常用電源として使用する蓄電池に対して，停電回避に必要な充電量（最低確保充電量）を確率的に求める手法を提案する。また，最低確保充電量を時間軸に沿って動的に変化させ，空いた蓄電池容量の一部を平常時に有効活用することの経済的価値を評価する。試算の結果，空き容量を平常時に活用することで新たに利益を創出できることが示された。

6-166

BCPを考慮した分散型蓄電システム管理のためのマイクログリッド周波数制御

◎網本和也（中電工）・餘利野直人（呉工業高等専門学校）・佐々木 豊・造賀芳文（広島大学）

電力系統の供給信頼度の維持・改善は，大規模停電と密接に関連する重要な課題である。また，関連企業では災害発生時の損害を最小限に抑え，事業の継続や回復を図るための計画として事業継続計画（Business Continuity Plan: BCP）に関する対策が進められている。そのためBCPの要求を満たすマイクログリッド（Microgrid: MG）が注目され，MG内の蓄電池管理の重要性が増している。MGのリアルタイム運用では通信ネットワークが利用されるが，通信システムの整備コストやシステムの信頼性維持・向上に関する課題が付きまとう。本研究では，BCPに必要な72時間運用を考慮し，通信に依存せずに需要家の蓄電設備を含めMG内に分散する蓄電システムを最大限活用するための新しい制御手法を提案する。

6-167

マイクログリッドの需給制御性能に対する通信遅延の影響評価

◎阿部 颯（東京都市大学）・松井遼平・若林 諒・島 明生（日立製作所）・中島達人（東京都市大学）

持続可能な社会の実現を目指したカーボンニュートラル達成のために，マイクログリッドに向けた再生可能エネルギーを活用した分散型電源の大量導入が検討されている。しかしながら，再生可能エネルギー電源は発電出力が変動しやすく慣性力を持たない電源であるため，マイクログリッドの需給バランスと周波数が変動しやすいという課題を抱えている。ここで，需給制御に生じる遅れが大きくなった場合，マイクログリッドでは電力品質の低下や停電をもたらす需給アンバランスの頻発化，許容範囲を超える周波数変動の発生が懸念される。そこで，高速通信を活用してマイクログリッド制御を高度化することに期待が集まっている。 本論文では数10MW規模のマイクログリッドを対象として，需給制御性能に対する電源および負荷の監視制御で生じる通信遅延の影響を評価した結果について報告する。

6-168

自立マイクログリッドにおける適応型モデル予測制御を用いた負荷周波数制御に関する検討

◎王 偉朝・佐々木 豊（広島大学）・餘利野直人（呉工業高等専門学校）・造賀芳文（広島大学）

近年，太陽光発電（PV: Photovoltaic）や風力発電（WT: Wind Turbine）などの再生可能エネルギーや蓄電池（BESS: Battery Energy Storage System）からなるマイクログリッド（MG）に注目が集まっている。大量の再生可能エネルギーを導入したMGの周波数制御は難しくなりつつある。特に，小規模なMGシステムでは，大幅かつ急激な周波数変動をもたらす可能性がある。モデル予測制御（MPC: Model Predictive Control）は，内部モデルに基づいて将来の状態を予測しながら現在の制御を決定する手法である。近年，MPCは，周波数制御の分野でも研究が進んでいる。著者らは，無香カルマンフィルタ（UKF: Unscented Kalman Filter）を用いたシステムの内部モデルをリアルタイムに推定し，制御ゲインの最適化を行う適応型MPC（AMPC）を提案した。本研究では提案手法を自立MGに適用し，PV，WT，BESSを含むMGモデルを用い，提案法の応用可能性を検討する。

6-169

遺伝的アルゴリズムを用いた電力制御システムの最適化によるマイクログリッドの周波数制御

◎石橋博和・熊野照久（明治大学）

本論文では，遺伝的アルゴリズムを使用したPI制御の制御パラメータの最適化について検討する。 近年，地球温暖化問題の対策として風力発電の導入量が急速に伸びており，特に離島などのマイクログリッドにおいて導入が進んでいる。しかし，風力発電を導入することによって周波数変動を引き起こす可能性があり，対策が必要である。 著者らは，周波数制御方式として検討事例が多いPI制御に注目した。一般的に，PI制御における制御パラメータは試行錯誤的な調整例が多く，最適値を求めることが困難である。そこで，制御パラメータの最適化を多目的最適化問題とし，遺伝的アルゴリズムを適用することで制御パラメータの最適化を行った。 本研究では，提案手法によって求めた制御パラメータを用いることで従来手法を用いた場合よりも結果が改善され，周波数変動を抑制することが確認できた。

6-170

Brain Storm Optimizationに基づくマイクログリッドの需給運用計画の決定手法

◎尾関智之・林 亮佑・高野浩貴（岐阜大学）・浅野浩志（電力中央研究所）

マイクログリッドの需給運用計画は，需給運用上満足すべき制約条件をすべて満たし，かつ，運用コストが最小となる各設備の運用状態を決定することである。マイクログリッドの発電機の場合は，発電機の起動停止状態と，出力を同時に決定する必要がある。マイクログリッドが蓄電池を有する場合，その出力も同時に決定する。これは非線形混合整数計画問題として定式化される。本稿では，可制御機器と，非可制御機器（需要家負荷等）で構成されるマイクログリッドの需給運用計画の作成をするために，メタヒューリスティクスの一つである，ブレインストーム最適化（BSO: Brain Storm Optimization）に基づく手法を提案する。

6-171

GAとDEアルゴリズムを用いたマイクログリッドの最適経済運用計画手法に関する研究

◎髙野光二・呉 国紅（東北学院大学）

本論文では，今後の電力系統へ大量に導入される太陽光や風力等の再生可能エネルギー発電を効率的に運用できるマイクログリッドの最適経済運用計画問題について検討する。そのために，マイクログリッドにおける再エネ発電の電力不足を補うためのバックアップ電源である発電機の起動停止（UC）問題を考慮にいれ，遺伝的アルゴリズムGAと差分進化アルゴリズムDEを組み合わせたハイブリッド最適計算手法を提案した。さらに，この手法を適用しシミュレーションを行い，マイクログリッドにおいて各種の制約条件を満たしつつ，発電機のUC問題を取り組んだ最適な経済負荷配分が行われ，バッテリーの適切な運用スケジュールも同時に得られたことにより，本手法の有効性を確認できた。

6-172

DG発電量と設備容量の最小化を目的としたマイクログリッド内のEMS制御手法の検討

◎齋藤龍平・児玉安広・飯野 穣・林 泰弘（早稲田大学）・前田 亮・生石光平・森 健二郎（東京電力パワーグリッド）

近年，太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入量増大に伴い電源の分散化が進んでいる。電力の地産地消や災害時のレジリエンス向上などの観点から地域マイクログリッドが注目されているが，環境負荷などの観点から分散型電源を有効利用した系統運用を行うことが重要となっている。そこで本稿ではDG，PV，BESSからなるマイクログリッド系統モデルにおいてDGの発電量と設備容量を同時に最小にするためのEMS制御手法を提案した。計算結果から，適切なパラメータを設定することで同時最適化の有効性を示した。今後は，電圧分布や配電ロスなどの多様な評価指標を考慮することによるさらなるマイクログリッドの経済価値向上が期待される。

6-173

開閉器区間ごとの自立運転を考慮した動的マイクログリッド構成 －自立運転区間の順序決定手法の提案－

◎奥野典杜・北 裕幸・原 亮一（北海道大学）

マイクログリッド（以下 MG）は災害発生時の停電回避の方策の一つである。ところで，MGの自立運転に移行するためには，MG内設備の健全性を確認する必要がある。そのためには多くの時間・作業人数を要し，自立運転の開始が遅れることが考えられる。そこで本研究では，MG内を区分開閉器により複数の区間に分け，区間ごとに設備の点検を行い，健全性が確認できた区間から順次，自立運転を開始することで，動的にMGによる自立運転範囲を調整することを考えている。本稿では動的なMG構成の実現に向けた基礎検討として，区間ごとの自立運転への移行順序を決定するための手法を提案する。全設備の点検後に自立運転を開始した場合との比較を行い，提案手法の有効性について示す。

6-174

ZETにおける建物間電力融通に関する研究

◎山崎祥吾・安武直朗・川﨑章司（明治大学）

ZET（Net Zero Energy Town）とは，創エネ技術及び省エネ技術によって町全体での発電量が需要量を上回った町のことで，建物間での電力融通に強みを持っており，カーボンニュートラルに向けた取り組みとして注目されている。しかし，ZETの実証事業は小規模なものが多い。そこで，本稿では静岡市を参考に地方都市規模のシミュレーションモデルを構築した。各建物の実測需要データと発電量データを基に1時間毎の需給シミュレーションを行い，ZET達成率を算出することで大規模ZETの実現可能性について検証を行った。また，系統からの電力購入量や系統への逆潮流量も算出し，ZETの系統からの独立性の評価も行った。ZET実現が可能なことや建物間電力融通の有効性を確認できたので報告する。

6-175

リユース蓄電池・デジタルツイン構築に向けたリアルタイムセンシング及び制御P-HILS

○林田 淳（北海道立総合研究機構）・原 亮一（北海道大学）・太田 豊（大阪大学）

Reuse battery is key technology for Sustainable renewable energy use within micro-grid (MG). Digital-twin of MG using proposal P-HILS, which performs real-time sensing and control, is used to determine optimal introduction plan and operation method of reuse battery. The data update cycle and communication delay of each device determined optimal communication of the P-HILS.

6-176

経済的運用を目的とする地域マイクログリッド蓄電池の最小容量決定に関する検討

○周 意誠（早稲田大学）・佘 錦華（東京工科大学）・横山隆一（早稲田大学）

本論文は，地域マイクログリッド構築における経済運用という目的として，蓄電池の適正容量の算出方法を検討する。具体的には，経済運用の視点から，どのような負荷／太陽光発電パタンでは蓄電池の充放電が経済的な利益を持たれるか，どのようなパタンでは経済的な利益が持たれないかを分析し，実用的な算出方法を検討する。検討要素としては，需給バランス，蓄電池の充放電効率，経済負荷配分ELD計算により得られた各時点での発電単価などを入れる。実際の計算プロセスを検討し，地域マイクログリッド構築における経済的な蓄電池の最小容量の決定方法を提案する。

6-177

マイクログリッドの経済運用を考慮した蓄電池群の容量構成の算定

◎林 亮佑・尾関智之・高野浩貴（岐阜大学）・浅野浩志（電力中央研究所）

蓄電池は，その充放電機能により電力需要や自然変動電源出力の変動を補償し，電力の安定供給に貢献する。蓄電池は種類によって特性が異なるため，異なる種類の蓄電池を組み合わせることで，よりその特性を活かすことができる。筆者らは，マイクログリッドにおいて，蓄電池導入後の可制御設備の運用計画を考慮して，蓄電池の最適な総容量（集約蓄電池の容量）を算定する問題の枠組みを提案している。本稿では，その枠組みを拡張し，複数の蓄電池を組み合わせた際の最適な容量構成を算定する問題の枠組みを提案する。提案手法の妥当性を検証するために，マイクログリッドにリチウムイオン電池とNaS電池を導入する際の容量構成を算定した。

6-178

災害時に自立運転可能なPVを主電源とするマイクログリッドの設計 －PV・蓄電池の必要容量の算定－

◎喜田勇志・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・竹内雅靖・藤原基伸（日新電機）

近年，レジリエンス対策として災害による系統停電発生時にも自立運転により電力の供給を継続できるマイクログリッド（MG）に期待が集まっている。著者らは電力・熱の需要に対して太陽光発電（PV），蓄電池等の設備を備えるMGの新規導入を検討する。平常時運用と，任意の時刻に発生した災害時の運用を同時に決定する問題を定式化し，災害時運用を保証できるかを評価した。固定価格買い取り制度により導入されているPVはMG運用者が制御できないことを条件に踏まえると，このPV既設容量が大きい場合，電力余剰側で災害時運用を保証できないケースが生じることを示した。PV既設容量が小さい場合は災害時運用を保証できるPV・蓄電池容量の関係がトレードオフの関係になることを示した。

6-179

再生可能エネルギー導入地域グリッドの実現に向けた検討

○吉山和宏・西田悠介・宮崎 輝（東京電力ホールディングス）・鍵田昌幸・河野俊介・板屋伸彦（三菱電機）・前田 亮・生石光平（東京電力パワーグリッド）

昨今，地震や台風等により大規模停電が発生し，電力インフラのレジリエンス強化の重要性が認識されている。この強化策として既存配電線を活用した地域マイクログリッドの構築が検討されているが，再生可能エネルギーが主電源となる場合は，従来の配電設備と形態が異なるため，課題の洗い出しと解決の必要がある。 上述の課題解決・対策技術検討のため，新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）の「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた次々世代電力ネットワーク安定化技術開発（STREAMプロジェクト）」事業に応募し採択された。 これにより，将来の再エネ主電源地域MG導入の円滑化に向けて検討を進めているが，これまでの検討概要について報告する。

6-180

地産地消自立型エネルギーシステムの実証設備構築について

◎岡本 守・安ヶ平裕介・THANTIP KRASIENAPIBAL・内垣内 洋・竹本享史（日立製作所）

日立北大ラボでは，北海道大学や他のステークホルダーと連携して，北海道における過疎化，少子高齢化などの社会課題解決と持続可能な地域社会の実現に向け，健康・農食・エネルギーが連携した共生のまちづくりを推進している。本稿では，岩見沢市と連携して，太陽光発電と温泉ガスに含まれるメタンガスや低濃度エタノール等を利用可能なマルチ燃料エンジンを電力源とする，地域における地産地消低炭素な電力供給と災害時も供給可能な電力網の構築をめざした地産地消自立型エネルギーシステムの実証設備を構築したので，これについて紹介する。

6-181

豪州からの輸入水素を考慮した離島系統における最適電源構成の検討

◎寺師彩俊・馬場旬平（東京大学）・細越秀男・和山 亘（東北電力ネットワーク）

大規模系統との連系がない離島系統の多くでは内燃力発電が主電源となっており，燃料輸送費もかかることから環境性や経済性を考慮した電源構成が求められる。そのため，再生可能エネルギーをはじめとする脱炭素電源の導入が検討されている。本稿では，カーボンニュートラルへ向けた電源構成として再生可能エネルギーと水素火力発電を考慮し，線形計画法により経済的に最適な電源構成を決定する。また，発電に使用する水素はオーストラリアからのグリーン水素を想定し，そのコストについて評価を行った。最適化計算の結果，再生可能エネルギーおよび輸入水素価格の低減に伴い，水素火力発電を含む電源構成は現実的な価格で実現できる可能性を示した。

6-182

地域マイクログリッド構築のための事前検討フレームワークの提案

◎勝崎友裕・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）

国内外においてマイクログリッド（MG）への関心は高まっており，様々なMGの構築やその運用形態などが議論されている。資源エネルギー庁が提唱する地域MG構築フローにおける事前検討の段階では多種多様な地域MGの必要性・目的・概要の検討を行える汎用的な枠組みの構築が望まれる。本稿では，事前検討フレームワークとしてMFSVSサイクルを提案し，これを使用した地域MG構築の事前検討の例を示す。福井県越前市内の仮想3地域へ家庭用蓄電池システムを導入して地域MG構築を行う場合の事前検討の結果，コストの面を重視する場合には課題が残ることが明らかとなった。今後はMFSVSサイクルの妥当性評価を行っていく予定である。

6-183

需要地の特徴を考慮したオフグリッドのコスト評価 －需要家軒数とPV出力相関度による感度分析－

◎高田友弥・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

著者らは，過疎地域の送電に対する問題を解決する為，オフグリッドを構成することを目的に調査を行っている。本稿では，オフグリッド内の短周期変動の均し効果に着目し，設備費用を含んだオフグリッドの年間コストについての評価手法による試算を行うことで，需要地の特徴によるオフグリッド構成コストの評価を行った。オフグリッド内に設置した太陽光発電の短周期変動の相関度によって，必要となる調整力が変化し，導入される機器容量に違いが現れ，オフグリッド内の需要家軒数によっても，均し効果の変化によって機器容量が変化することを示した。

6-184

マイクログリッドの開発（その1）

○竹内雅靖・井尻有策・坪田慎二・村井正樹（日新電機）・新垣一紀・塩浜智洋・大城 剛（沖縄電力）

近年，太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーで電気をつくり，蓄電池などで電力量をコントロールして，地域内の電力供給ができるシステムを地域マイクログリッドと呼び，各地域で検討されている。今回マスタープラン後，実際の系統に接続する形で，沖縄県宮古島市来間島にMGとして開発，実装，運用した。

6-185

マイクログリッドの開発（その2）

○小松宣夫・山本 紘己紘己（日新システムズ）・角田広樹・竹内雅靖（日新電機）・金城尚吾・塩浜智洋（沖縄電力）・比嘉直人（ネクステムズ）

来間島内には家庭用の太陽光発電設備含めて，約600kWの太陽光発電と，負荷としてエコキュートがあり，各家庭用の発電・負荷を制御するゲートウェイとそれを束ねる需要家EMSを設けている。この需要家EMSにより，エネルギーとしての地産地消ができるように，50件以上の施設及び家庭を面的な制御としている。MG-EMSとの連携も行うことで，島全体でのエネルギー地産地消と自立化に貢献をしている。

6-186

マイクログリッドの開発（その3）

◎新垣一紀・塩浜智洋・大城 剛（沖縄電力）・坪田慎二・村井正樹・井尻有策・竹内雅靖（日新電機）

地域マイクログリッド（以下，MG）実証設備を来間島に設置し，22年5月に宮古島系統と切り離し，グリッドとして独立運転となるMG実動訓練を実施したので，その概要を報告。

6-187

電気自動車の急速充電器が配電系統の電力品質に与える影響

◎荘司卓也（電力中央研究所）

CO₂削減に向けてEVが普及すると，高速道路のサービスエリア等（以降，SA）ではEV急速充電器（以降，急速充電器）の大容量化や増設が必要となり，配電系統の電力品質に与える影響が懸念される。本稿では，SAに設置される急速充電器への供給手法として33kV専用ケーブル供給方式を提案し，電力品質に与える影響と建設コストについて評価した。その結果，提案方式は従来の配電線供給方式に比べて電圧変動が少なく電力品質に優れ，建設コストは割高となるものの，電力品質を保つための運用コストがかからないことがわかった。以上より，33kV専用ケーブル供給方式は，実現性のある候補であると言える。

6-188

再生可能エネルギー電源に併設された蓄電池のマルチユースに関する収益性評価

◎小牧祐太・志賀慶明・金子 雄（東芝エネルギーシステムズ）

太陽光発電（以下PV）に蓄電池を併設するメリットは以下の2点がある。 電力市場価格が安い時間帯にPVの発電電力を充電し価格が高い時間に系統に放電することで市場価格の変動に対応できる事と，PVの前日発電計画と当日の発電量予測の差分を打ち消すように充放電を実施することでインバランスを回避できる事である。 このように蓄電池の用途が複数ある時，各用途での運転計画の作成時に必要な蓄電池容量を仮想的に分けて個別に運転計画を作成し，運転計画を合算する手法を「マルチユース」と定義する。 本稿ではマルチユースでの蓄電池容量を仮想的に割り振る際の容量の配分比を日々変化させて蓄電池の運転計画を作成する方法を提案する。

6-189

運輸事業者の配送用EV車両の最適充電／運行計画モデルの構築

◎山田智之・高橋雅仁・坂東 茂（電力中央研究所）

脱炭素社会を目指す政策や経済潮流により，運輸事業者が内燃車を電気自動車（EV）へ置き換える動きがある。その際，運輸事業者はEV・充電器だけでなく太陽光発電（PV）設備も併せて導入することで消費電力の脱炭素化を図り，併せて，EV運用に伴う電気料金（基本料金および従量料金）の増大を抑えるようエネルギーマネジメントを行うことが見込まれる。 本稿では，運輸事業者の中でも配送車を運行する需要家がEVを導入しつつも，車両走行に支障をきたさない時間帯にEV充電を行うためのエネルギーマネジメントを行うケースを想定する。事業所には充電器（普通または急速）とPVも併せて設置し，それらを組み合わせて運用する時，電力コストを最小化する運用を考える。

6-190

急速充電と住宅地域の系統電圧制約を考慮したV2Hを含む蓄電池運用による潮流制御手法の開発

◎太田晃介・崔 錦丹・植田 譲（東京理科大学）

日本国内では「カーボンニュートラル」の実現にむけて再生可能エネルギーの導入が促進されている。それに伴い住宅への太陽光発電の普及が進むと，発電ピーク時に系統への逆潮流によって地域の系統電圧は上昇し，系統の電圧制約を逸脱してしまう可能性がある。そこで，本研究ではV2Hや定置型蓄電池の運用を行う住宅地域の系統電圧の適正化および電力潮流制御を行った。系統に電気自動車の簡易的な急速充電ステーションを想定した，V2Hや蓄電池の充放電動作を設定し，発電ピーク時の全体の電力潮流と末端の需要家の電圧の比較を行った。検証の結果，ピーク時の逆潮流の削減および系統の末端電圧の適正化を実現することができた。

6-191

EV充電の脱炭素化に向けた方策の一検討

○今中政輝・馬場博幸・荻本和彦（東京大学）・松村 淳（IoT-EX）

脱炭素社会に向け従来のガソリン自動車に代わり，電気自動車（以下，EV）の普及が期待されている。太陽光発電（PV）の増加に伴い電力系統に並列している電源が時間帯によって変化することから，EVへの充電時間帯によって二酸化炭素（CO2）の排出量が変化する。 筆者らはこのことに注目し，九州エリアの時刻ごとの火力発電の比率を簡単に分析した上で，脱炭素社会に向けてEVの充電を低炭素化する方策の組み合わせについて検討したので報告する。

6-192

EV充電器による電力品質問題対策手法の開発

◎佐久間宏彬・佐藤智希・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

今後電気自動車（EV）が普及すると，単相交流を電源とする普通充電器によって多数のEVが同時に充電されることが想定される。この場合，三相線路において電圧不平衡や電圧低下といった電力品質上の問題が生じる可能性がある。この問題に対し，設備の増強よりも低コストな対策手法として，EV充電電力の抑制制御を提案した。各相間の充電電力及び三相線路の線間電圧に基づいて，相間の充電電力上限を計算する制御手法を示し，提案手法によって電力品質問題の解消が可能であることを瞬時値解析によって確認した。

6-193

複数蓄電池の充放電制御への機械学習の適用可能性に関する検討

○齋藤 直・斎藤浩海（東北大学）

今後普及が見込まれる電気自動車に搭載される蓄電池の二次利用等により，将来，需要家側への蓄電池設置が大幅に増加すると予想される。蓄電池と太陽光発電を併用した場合，配電系統側への逆潮流によって配電系統の電圧上昇等の影響を与える可能性がある。そのため配電系統への影響をできるだけ抑制しつつ，需要家の蓄電池を最適に充放電制御することが望ましいと考えられる。需要家が自律分散的に蓄電池の充放電制御を行うことを想定して，機械学習としてQ学習アルゴリズムを適用した場合に，複数の蓄電池の充放電制御へのQ学習の適用可能性について検討した内容を報告する。

6-194

再生可能エネルギー活用のための宅配電気トラックの最適経路選択

◎植田和樹・森田 浩・太田 豊・岩田章裕（大阪大学）

電気自動車を用いた配送における経路選択では，限られた充電ステーションを適切に利用することが重要となる。これまでの研究では，電気自動車の航続距離に着目した配送経路が考えられてきた。近年，太陽光発電などの普及により昼間の電力市場価格が夜間より安くなる状況が起こっている。そのため，昼間の電気を使うことで，再生可能エネルギーの比率を高め，充電コストや二酸化炭素排出量の削減が期待できる。しかし，航続距離に着目した配送経路では，このような状況に対応することができない。本研究では，充電コストや発電時の二酸化炭素排出量に着目した経路を検討し，近年の電力事情に対応した配送の実現を目指す。

6-195

FIP制度下でのPV発電所併設蓄電池の機器容量と充放電時間の検討

◎川島大輝・伊庭健二（明星大学）

太陽光発電（PV）のさらなる導入はカーボンニュートラルの目標達成に不可欠である。国内の制度もFIT（Feed-in-Tariff）に代わりFIP（Feed-in-Premium）制度が導入され，再生可能エネルギー（RE）と蓄電池システム（BESS）の協調運用による新たな事業も注目されている。そこで本稿では，現在の電力市場におけるFIP制度下での蓄電池の経済運用を調査検討し，タイマー制御を用いた蓄電池の充放電制御によるアービトラージ（裁定取引/値差取引）の経済効果の調査および蓄電池の機器容量と充放電時間の最適な組み合わせをシミュレーションで求めたので報告する。

6-196

スクリーニングカーブ法に基づく太陽光発電および蓄電池の最適容量の分析：計算時間の検証

◎入江陽介・星野 光・古谷栄光（兵庫県立大学）

近年，自家消費の増大を促す政策が期待されており，その観点でPVと蓄電池を組み合わせた需要家の経済性に関する分析が多数報告されている。これらの分析では，PVや蓄電池の最適容量を線形計画問題（LP問題）などの最適化問題を解くことで求めているが，実データを用いた分析では対象期間が長くなると，計算時間が非常に長くなる問題があった。筆者らはスクリーニングカーブ法（SCM）に基づきPVおよび蓄電池による自家消費の経済性を簡易に分析する手法を提案している。本報告では提案手法とLP問題に基づく分析を計算時間の観点から比較し，提案手法の有効性を検証する。

6-197

地域太陽光発電余剰電力を活用した商用電気自動車群の低炭素運用計画手法

◎宮部稜士・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）

近年，カーボンニュートラル実現のために，急速に太陽光発電（PV）の導入が進んでいるが，それに伴い日中のPV余剰電力に起因する問題が顕在化しつつある。そこで本研究では商用電気自動車群の充電による余剰活用可能性に注目し，業務上求められる配送を満たしつつ，充電時に余剰電力を吸収できるように，配送・充電計画を最適化する手法（G-EVR²Pと呼ぶ）を提案する。本稿では，その初期検討としてG-EVR²Pを混合整数計画問題として定式化したのち，2種類の宇都宮で取られた実データに基づいた小規模問題を構築・最適化し，その結果からG-EVR²Pが地域PV余剰電力の活用に向けて価値のある枠組みであることを確認した。

6-198

翌日の運行計画に基づく電気自動車からの電力供給による小規模事業所の電力コスト削減効果

◎中村美友・占部千由・加藤丈佳（名古屋大学）・原田耕佑・有賀暢幸・小西充峻（ENEOS）

世界的に普及が進む電気自動車（EV）は，多目的な利用が期待される。実現には経済性も重要な観点であり，電力単価の変化に応じて事業所等に駐車中のEVを充放電することで，事業所等の電力コスト削減が期待できる。しかし，EVの走行という本来の利用目的から，充放電に利用可能な時間帯は日々異なり，その不確実性も大きい。そこで本稿では，小規模事業所で利用される5台のEVを想定し，それらの運行が計画とは異なる場合にも対応するためEVの充放電ルールを考案し，実データを用いた時系列シミュレーションにより事業所の電力需要及びEVの走行用充電電力のための電力コストの削減効果を評価した。その結果，EVの実際の運行が計画とは異なる状況でも，当日の各時刻・各EVのSOCに基づき，提案する充電・放電配分ルールを適用することで，計画したEV充放電が可能なことを確認した。

6-199

カーシェア型MaaSと融合したMG運用の協調最適化 －EVによるエネルギー輸送の自己託送代替性－

◎李 一達・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・岡本 守・内垣内 洋・竹本享史（日立製作所）

エネルギー部門（発電所等）と運輸部門（自動車等）の両分野において，脱炭素化にむけたセクターカップリングが重要視されている。エネルギー部門では再生可能エネルギーを主体としたマイクログリッド（MG），運輸部門ではMaaSへの期待が高まっている。著者らは，MaaSの拠点とMGとを共存させ，シェアリングされた電気自動車の配車・充電計画と，MG間のエネルギー融通を含めたエネルギーマネジメントとを協調させた運用手法の開発を進めている。本稿では，MaaSとMGにおけるエネルギーマネジメントとの協調効果について，MG間の自己託送のオプションを含めて検討した。将来的に柔軟な自己託送が実装された状況にあっても，MaaSとエネルギー供給とを協調する効果が示唆されたことを報告する。

6-200

Power Scheduling of the Apartment Building using Integrated Power Management System considering Vehicle-to-Home System

◎趙 珉徹・安芸裕久・小平大輔（筑波大学）

An apartment building (APB) has been constructed to provide households with residential spaces. The power consumption of the APB is composed of residential spaces and common facilities. The power management system (PMS) has been studied for managing residential spaces, but the complex structure of the APB distinguishes it from a single detached house. There is a possibility that households have different interests to manage their power consumption in the APB. In this study, the integrated PMS was developed considering the various interests of households in the APB. The proposed system was designed in two stages using a genetic algorithm. The 100-unit APB was assumed to compare the proposed and conventional PMS. As a result, compared to the conventional PMS, the total electricity cost and total peak power demand were reduced by the proposed system.

6-201

多端子直流送電システムにおける可変電圧閾値制御 －緊急時周波数制御機能の実装－

◎中村綾花・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

近年，地域間連系線と洋上風力発電所の接続先とを兼用させた多端子直流送電システム（MTDC）に注目が集まっており，関連技術の開発が進んでいる。MTDCは，特定の2地点間を接続する従来のHVDCと同様，交直変換所（端子）の融通電力を調整することで，当該端子が接続している交流系統の周波数制御に貢献することが可能である。ただし，MTDCではある端子がその融通電力を調整した場合，その調整分を他の複数の端子にどのように振り分けるかを予め決めておく必要がある。本発表では，著者らが開発したMTDCの運転方式に対して，緊急時周波数制御に貢献するための具体的な制御手法を提案する。

6-202

Testbed for HVDC Control Methods Based on a Scaled Down MMC-HVDC System and a Real-Time AC System Simulator

◎Nikola Krneta・磯野圭志・佐野憲一朗（東京工業大学）

It is necessary to investigate the interaction between AC power systems and high voltage DC (HVDC) transmission systems. System engineers have used offline computer simulations and hardware-in-the-loop real-time simulators (HIL-RTS), which are connected to test facilities that are scaled down versions of actual equipment. RTS combined with line-commutated converter based HVDC systems have been utilized by Japanese organizations. For example, there is the AC-DC power system simulator in the Central Research Institute of Electric Power Industry (CRIEPI), power system analysis (PSA) hybrid simulator in Chubu Electric Power Company, and Hybrisim in J-POWER.

6-203

リアルタイムシミュレータを用いたHVDC連系離島マイクログリッドの周波数制御手法の検証

◎利光直人・丸塚 豪・中島達人（東京都市大学）

近年，エネルギー資源の枯渇や地球温暖化といった環境問題における対策として，再生可能エネルギーを利用した分散型電源の普及が進められている。しかし，離島などの小規模な独立系統では，再生可能エネルギーを用いると，需給バランスの維持や，周波数・電圧の瞬時変動対策といった課題が存在する。そのため，離島の電力供給の多くは，依然としてディーゼル発電機（SG）に依存しており，CO2を多く排出している。また，燃料輸送費によるコスト高といった経済的な問題も同様に抱えている。一方，直流送電（HVDC）では交流送電とは異なり，ケーブルに充電電流が流れず送電損失が少なくなることから，ケーブル送電では交流送電より有利となる。海底ケーブルとHVDCを介して本土と離島間を連系すれば，HVDCの制御により前述の課題を解決できるものと期待される。 本論文では，HVDC連系離島マイクログリッドにおける周波数制御手法をリアルタイムシミュレータで検証した結果について報告する。

6-204

複数のデジタルシミュレータによる組み合わせの検証

◎坂本直生・小西勝久・玉井伸三（東芝三菱電機産業システム）

本報告では系統モデルを模擬した既存のデジタルシミュレータと変換器を模擬したデジタルシミュレータを組み合せて動作検証を行った。各シミュレータと実制御装置を接続し，シミュレータから制御装置へフィードバック信号を出力することで各種制御を行う。 本報告では60Hz系統から50Hz系統への電力融通を行い，電力指令に応じて融通電力が変化することを確認した。また，電力が変化している期間に電圧・電流波形に大きな脈動は見られず，制御装置の動作についても確認した。これにより既存のデジタルシミュレータを活用することで，モデル構築の手間を削減したり，シミュレータの演算負荷を低減したりすることが可能となる。

6-205

洋上風力発電用直流送電系統の構成に関する検討

○福嶋純一・菅野純弥（東京電力ホールディングス）・佐野憲一朗（東京工業大学）

再生可能エネルギーの導入が進む中，洋上風力発電の電力を効率的に送電するために，直流送電系統の構築が期待されている。洋上の風力発電適地から消費地までは，距離があり，洋上で風力発電を行う場合，洋上に偏在する複数の風力発電設備と，陸上の交流系統を結ぶ，海底ケーブルによる送電システムが必要となる。洋上直流送電系統には，拡張性や耐故障性能が求められる一方で，コスト面でも合理的である必要がある。しかしながら，これらを満たす系統の構成法は明らかではない。本稿では，今後増加が見込まれる洋上風力発電への適用を想定し，拡張性・耐故障性能に加え，コスト面でも合理的な洋上直流送電系統の構成例を検討を行った。

6-206

双極直流送電の正極負極間での系統切替時における風力発電設備の運転継続法

◎山花龍之介・佐野憲一朗（東京工業大学）・菅野純弥・福嶋純一（東京電力ホールディングス）

既存の自励式双極直流送電システムでは，直流線路の片極地絡事故時に事故極の交直変換器を一時停止させて事故を除去する。自復性の事故であれば，事故から1秒程度で送電を再開できる。しかし，上記保護方式を風力発電用の直流送電に適用した場合，変換器が一時停止する間，発電設備が停止し，再起動して送電を再開するまでに時間を要してしまう。筆者らは，事故を除去した後，変換器を事故極から健全極へと切り替えることにより，発電設備を停止することなく送電を継続する手法を提案した。本稿では，事故が除去されて復旧した極へと再び変換器を切り替え，当初の送電状態へ復帰させる操作を報告する。

6-207

多端子直流送電システムの線路故障時における超電導限流器の限流効果および過渡安定度向上効果

村上雅紀・◎西澤大将・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

多端子直流送電システムでは，系統運用・制御の観点からも直流遮断器が不可欠となり，その責務軽減を目的として，超電導限流器（SFCL）の導入が期待される。筆者らは，これまでに多端子直流送電モデル系統におけるSFCLの導入効果として，母線故障・ルート遮断時の故障電流抑制（限流）効果，過渡安定度向上効果およびSFCLの配置方法について検討してきた。今回，同モデル系統における線路故障・回線遮断時の解析を行った。結果として，多端子直流送電システムにおいて，既報の母線故障・ルート遮断時のみならず，線路故障・回線遮断時においてもSFCLの限流効果および過渡安定度向上効果が検証された。

6-208

疑似慣性を有するGrid forming invertersに適用する系統への同期投入方法提案

◎林 強・小川健一郎・兼清靖弘・宇野 皓・司城 徹（東芝）

インバータが系統と接続する時は必ず同期投入を実行しなければならない。同期投入をするためには系統とインバータの電圧・位相・周波数をすべて合わせる必要がある。本稿では，（virtual synchronous generator）VSG制御に基づいてPLLを利用し，周波数偏差がある場合でも突入電流を抑えることが可能な同期投入方法を提案している。同期発電機と蓄電システムを持っている疑似慣性GFMで構成されるシステムにおいて，系統周波数がそれぞれ48.0Hzと52.0Hzとなる極端な場合に，提案した同期投入方法の有効性を実証実験で検証した。

6-209

擬似慣性を有するGrid forming inverter搭載蓄電システムの充放電切替時のバッテリ電流実測評価

○小川健一郎・林 強・兼清靖弘・司城 徹（東芝）

低炭素化社会の実現に向け，化石燃料に依存する火力発電に代えて再生可能エネルギー電源の電力系統への導入が国内外で進んでいる。再生可能エネルギー電源の多くは電流制御型インバータ（GFL: Grid Following Inverter）を介して電力系統に交流で連系される。GFLが電力系統の中で増加する事により，慣性力低下に対する電力系統の調整力不足が懸念されている。変動性再生可能エネルギー電源の系統導入量が大幅に拡大する将来を見据えて，疑似慣性を供給する電圧制御型インバータ（GFM: Grid Forming Inverter）を搭載した定格20kW，定格容量45Ah，電池容量14.9kWhの蓄電システム（BESS: Battery Energy Storage System）を開発した。本稿では，GFM制御のBESSが充電中及び放電中に負荷変動が生じて慣性力を提供した際の，充放電切り替え動作時のバッテリ端電流特性を評価したので報告する。

6-210

慣性機能付きインバータの複数台並列での自立運転の検証

◎潘 海倫（工学院大学）

インバータ連系の再生可能エネルギーの導入拡大と共に，電力系統の同期機が持つ慣性が減っているため，インバータが同期機のように慣性を有する方法が注目されている。著者らは先行研究提案（1）のシミュレーションモデルに基づいて，設計製作した小容量のインバータ実験装置で自立運転検証した。一台のインバータの起動，停止，負荷変動と事故時の過電流制限機能を検証し，実験データを発表した（2）。しかし，大規模な電力系統において，インバータは複数台並列しなければならない。実系統の場合は，シミュレーションのように二台のインバータが同期起動を実現するのが難しいため，同期投入と並列運転状態の検証が必要である。

6-211

Grid Forming Inverterの事故時における安定度向上の研究

◎望月佑都・野呂康宏（工学院大学）

【目的】GFMインバータの問題点として，GFMインバータに過電流抑制を設ける事で，安定度の低下が懸念される。そこで，系統事故が起きた際のGFMインバータの安定度向上に重きを置いた，過電流制御方法を検討する。 【方法】GFMインバータの過電流制御方法をについて，3つの方法を提案し，ATPdrawでシミュレーションを行った。 【結果】過電流制御方法1と過電流制御方法3において，事故時間0.10sまでGFMインバータの安定運転が可能という事が確認出来た。過電流制御方法2において，事故時間0.20sまでGFMインバータの安定運転が可能という事が確認出来た。 【結論】いずれの方法でも事故時間が0.30sになるとGFMインバータが不安定になるという事が確認出来た。

6-212

遠隔地系統へのGFMコンバータ導入に関する検討

◎山口祐司・馬場旬平（東京大学）

近年，太陽光発電などの非同期電源の導入拡大により，系統安定性に対する懸念が生じている。その解決策として，電源の電力変換器を”GFM（Grid-Forming）”という手法で制御することが提案されている。そこで，様々な電圧階級の系統に連系されるという太陽光発電の特性を踏まえ，大規模系統から離れた遠隔地系統に，GFM方式で制御される電力変換器を用いた電源を導入した場合について，系統安定性に関する検討を行った。その結果，系統事故に対して，従来電源としての同期発電機よりも素早く応答することが分かった。また，事故中に発生する過電流について，抑制制御を実装した際の影響について検討した。

6-213

GFL・GFM並列運転時の系統安定化効果に関する検討

◎松井晴輝・三ツ木康晃・馬場旬平（東京大学）・栄田真吾・Verma S. C.・杉本重幸（中部電力）・末成展康（中部電力パワーグリッド）

再生可能エネルギーを用いた電源が増加し，系統に追従するGrid-Following方式のインバータ（GFL）の導入量が増加している。GFLにおいては，系統の周波数・位相を検出するPLLを起因として，弱小系統で系統を不安定化させる可能性が指摘されている。また，同期機の並列容量減少による系統慣性低下への対策として，系統の電圧・周波数を自律的に確立可能なGrid-Forming方式のインバータ（GFM）が提案されている。 本稿では，GFLの単体運転およびGFL・GFM並列運転という2つの条件下で，GFL出力が急変した場合について解析を行い，弱小系統においてGFLが出力急変により不安定現象を起こしやすいこと，GFLにGFMを並列運転することで同様の条件においても安定的に運転が可能であることを確認した。

6-214

GFM型インバータ並列運転時の制御安定性検討

◎松本航輝・マノハルルティカ・井上禎之・川上知之（三菱電機）

再エネ電源の導入が加速する中で，インバータ電源比率の増加に伴う電力系統の慣性力低下が懸念されており，その対策として模擬慣性インバータが提案されている。模擬慣性インバータは大別するとGFM（Grid Forming）型とGFL（Grid Following）型に分類されるが，特にGFM型は慣性力供与の観点で有利である。しかしながら，GFM型インバータを複数台並列運転させると，電圧位相差により横流が発生し，制御定数の設定やインバータ間のインピーダンス次第では動作が不安定となる。そこで，複数台のGFM型インバータを並列運転する際の不安定現象に対して相互干渉を考慮した動作特性を伝達関数モデル化し，系の安定性を確保する制御定数設計方法を検討し，妥当性を確認した。

6-215

同期発電機との並列運転時における過負荷リミッタを考慮したGFMの動特性

◎二村洋輝・青木 睦・Verma Suresh Chand（名古屋工業大学）

近年，再エネの普及拡大に伴うインバータ電源の増加により，電力系統の安定運用や電力品質維持が懸念されている。その対策として，自立で電圧と周波数を確立・維持する特徴を持つGrid-Formingインバータ（GFM）が期待されている。GFMの制御方式としてはドループ方式，VSG方式等の様々な方式が提案されている。しかしながら，GFMは電圧源として動作するため，過負荷時や系統事故時の過電流により，インバータ自身が破損する可能性がある。本論文では，過負荷リミッタを考慮したGFMと同期発電機が並列運転する系統において，負荷増加時の動特性についてシミュレーションを行い，各制御方式での応答を比較した結果を述べる。

6-216

MMC変換器を用いた仮想同期発電機と従来型火力発電機との負荷分担に関する検討

○荒井純一・田口保博・横山隆一（環境エネルギー技術研究所）・柴田龍一・蓑津真一郎・二田丈之（電源開発）

大容量インバータを想定し，それに仮想同期機特性を持たせ，従来火力発電機と並列運転した場合のインバータの応答をシミュレーションにより検討する。そのインバータとして主回路をMMCとし，慣性特性を組み込んだ電圧制御およびアーム間循環電流制御を適用しているGFMインバータとしており，主回路と制御の新しい組み合わせを提案している。

6-217

MMC変換器を用いたDroop制御付きGFLインバータのアナログシミュレータへの実装

◎柴田龍一・簑津真一郎・二田丈之（電源開発）・武田昌也・原口嵩康（J-POWERビジネスサービス）・大西亮太・今田倫行・勝下裕貴（三菱電機）

<p>近年，再エネ電源の導入量増大に伴う同期機電源の減少により，系統慣性の低下等の問題が上げられている。その対策として，再エネ電源のPCS内に同期機の特性を具備させた仮想同期発電機が注目されている。著者らはこれまで，MMC変換器を用いたDroop制御付き電流型インバータをデジタルシミュレーションにて検討してきた。しかし，デジタルモデルは一般的にMMC内の各セルのキャパシタ容量のバラつきや素子・回路上の寄生成分などに起因する現象は再現していない。そこで，より実機に近い現象を再現するため，本稿では，ミニチュア化した電流型インバータを作成し，アナログシミュレータに実装した結果を報告する。</p>

6-218

仮想同期発電機制御における慣性定数の選定

◎村松泰紀・林 勇希・藤田吾郎（芝浦工業大学）

太陽光発電の導入に伴い慣性力の低下が問題となっている。仮想同期発電機という同期発電機のような特性を付与することにより解決が図られている。本稿の目的はVSGの機器定数が電力システムの動的安定性にどのような影響をもたらすか明らかにすることである。周波数変動率及び，周波数最大偏差によって評価する。MATLAB/Simulinkでシミュレーションを行った。M=8, K=15（M：慣性定数, K：制動定数）の時に安定性が最も良く，M=2, K=0.04の時に安定性が最も低い結果となった。Rocofに関して言えばその差は0.082程度あり時間窓10msを考慮すれば周波数変動の差は8.2Hz/sあることとなる。Nadirで見てもその差は0.23Hzほどあり系統安定性に貢献すると考えられる。

6-219

仮想同期発電機制御方式のGrid-Formingインバータの数式モデル

◎川島伸明・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

近年，インバータ連系型の電源に系統安定化に資する機能を付加する，いわゆるスマートインバータ（SI）の開発が進んでいる。SIの普及により系統安定化効果がどの程度得られるかを検証するためには，SIの多くが連系するであろう配電系統から基幹系統までを含めた，全系を対象としたシミュレーションが必要になるが，詳細モデルを用いたシミュレーションは計算負荷の観点から難しい。そのため著者らはSIを含む配電系統の縮約手法を検討している。この縮約手法では対象系統を伝達関数で表現する必要がある。本稿では，特に近年開発が進められている仮想同期発電機制御（VSG: Virtual Synchronous Generator）方式のGrid-Formingインバータの数式モデルを導出したので報告する。

6-220

系統周波数変動に対する電流制御式VSGインバータの有効電力出力特性の評価手法

◎板山千都世・中島達人（東京都市大学）・三ツ木康晃・杉森 聡・橋口 弘（東芝三菱電機産業システム）

脱炭素に向けた世界的な取り組みにより，将来の電力系統はRE100（Renewable Energy 100%）に近づくと予想される。再生可能エネルギーを利用した発電は，その多くがインバータを介して系統連系される。従来の同期発電機と異なり回転機特性を持たないインバータは，系統の慣性や同期化力の低下をもたらし，特に事故発生時の系統安定度を低下させることが懸念される。RE100を実現するには，インバータ比率増加による系統安定性低下という問題への対策を行う必要がある。その対策の一つとして，同期発電機の特性を模擬することでインバータに系統安定化効果を付与するVSG（Virtual Synchronous Generator）制御の提案が行われている。本論文では系統周波数変動に対する電流制御式VSGの有効電力出力特性に着目し，系統安定性に寄与するVSG制御の評価手法を提案する。

6-221

同期機の動揺方程式を適用したGrid formingインバータにおける電力動揺の減衰性に関する一検討

◎平川遼太郎・白崎圭亮・天野博之（電力中央研究所）

電力系統における再エネの普及に伴い，各種系統安定性の低下が懸念されており，一対策として，GFM（Grid forming）インバータの導入が検討されている。GFMの代表的な制御手法として，同期機の動揺方程式を模擬したVSG（Virtual Synchronous Generator）等が提案されている。一方，GFMにおいて同期機の動揺方程式を模擬することで，外乱発生時に位相角が動揺し，電力動揺が発生するおそれがある。我が国では，GFMの電圧面や周波数面に対する貢献に注目が集まっているが，自身の位相角動揺を抑制し，系統安定度の低下を引き起こさないことも実運用の観点では重要となる。本稿では，GFMの実機における制約や特性を考慮し，周波数大幅変動を模擬したY法シミュレーション解析より，同期機の動揺方程式を模擬したGFMにおけるダンピング面の課題について明らかにした。

6-222

逆潮流による電圧上昇・低下を抑制するインバータ電源の新しい無効電力制御手法

◎山田康暉・七原俊也・雪田和人（愛知工業大学）

近年，太陽光発電や風力発電などの電流制御形インバータを用いた電源の導入量が増加傾向にあるが，これらの電源の導入量が増加した場合には電圧変動の問題が懸念されている。一般に，インバータ電源からの逆潮流が行われると電圧が上昇する。しかし，インバータ電源の導入量がより増加した場合には，逆潮流による電圧低下が生じることも指摘されている。この場合，インバータ電源の定力率制御では，一層の電圧低下を引き起こすことが予想される。本論文では，電圧上昇のみならず，電圧低下にも対応できるインバータの無効電力制御法として，P-V曲線の形状の特徴に基づく手法を提案する。

6-223

デジタルグリッドにおけるインバータ電源の台数制御法の提案と実験検証

◎河端晋平・湯浅隆之・川﨑章司（明治大学）

近年，再生可能エネルギーの導入量が増加しつつあるが，既存の電力系統では電圧の適正範囲の逸脱や周波数変動といった問題により導入量に限りがある。そこで新たな電力網としてデジタルグリッドが考えられている。中小規模の電力系統をセルとして分割し，このセル同士をDGRという装置で繋げた構造で，基幹系統と中小規模の電力系統が非同期連系した電力網である。 セル内では，複数のインバータ電源が並列に接続されることが想定される。我々は，これらのインバータ電源のCVCF方式による並列運用についての研究を行ってきた。本稿では，負荷の変動に合わせて，CVCF方式におけるスレーブモードのインバータ電源の投入台数を制御する方法を提案し，実験により提案法の有効性の検証を行った。

6-224

低慣性系統におけるGFM型STATCOMと同期調相機の比較検証

◎原口瑠理子・吉原 徹・大森隆宏（日立製作所）

従来の同期発電機に代わり，再生可能エネルギー電源の連系比率が拡大すると，系統の慣性力が減少し，系統事故に対する安定性の低下が懸念される。本報告では，STATCOMに蓄電設備としてスーパーキャパシタを組み合わせたGFM型STATCOMを提案し，低慣性系統における周波数安定化効果を同期調相機と比較した。周波数解析の結果，同期調相機は系統側の周波数変動に応じて，運動エネルギーを放出するため，保有エネルギーの6.7％しか慣性供給に利用していない結果となった。これに対し，GFM型STATCOMは蓄電容量の71%を慣性供給に利用しており，同じ定格容量の同期調相機と比較して慣性供給能力が高いことを確認した。

6-225

Fuzzy制御による仮想同期発電機の仮想慣性制御

◎東浦圭吾・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）

系統レジリエンスの強化を目的に，分散型電源に模擬慣性を実装するVSGが開発されている。外乱に対して慣性を備えておくことが系統レジリエンス強化を図る側面がある一方で，高速に調整力を供給する場合は，慣性やダンピングが出力を遅らせたり動揺させたりする要因となることもあり，個々のVSGが供給する適切な慣性特性については，明確ではない。そこで本研究は，擾乱発生時から周波数を戻す過程において，VSGの単位慣性定数およびダンピング係数を更新するFuzzy制御を適用したVSGを開発し，HILs環境にて機能の検証を行った。その結果，系統に慣性を供給しつつ，制御性能を向上させることができる。

6-226

蓄電池仮想同期発電機による系統慣性・調整力供給のためのFuzzy制御に基づく出力分担手法

◎高間翔人・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）

分散電源（DG）の導入に伴う同期発電機（SG）の減少により系統慣性・調整力の減少が懸念されており，対策として，インバータにSGの特性を模擬する仮想同期発電機（VSG）が開発されている。このVSGの電源に蓄電池を利用することで，系統慣性・調整力を柔軟に供給できる。本稿では，蓄電池VSGを並列稼働させ，充電率と蓄電池容量を入力とするFuzzy制御を適用することで，慣性・調整力を柔軟に供給するための出力分担比の決定手法を提案する。提案手法では，全蓄電池VSGの最大容量と充電率100%を基準に，Fuzzyルールを作成し，適用した。結果として，蓄電池VSGが持つエネルギー量の大きい順の出力分担により，系統擾乱が発生しても系統周波数安定性を維持しつつ，長時間・安定的に慣性・調整力を供給できた。

6-227

単相系統における仮想同期発電機制御を適用したインバータの安定運転に関する基礎検討

◎樋口健也・三浦友史（長岡技術科学大学）

停電等の非常時に構成される小規模電力系統には再生可能エネルギーの接続が望ましいが，系統の慣性不足を招くため，同期発電機の特性を模擬した仮想同期発電機（VSG）制御されるインバータの適用が検討されている。VSG制御は単相インバータにも適用されるが，三相系統と比較してインバータの出力電力算出等の遅れから，不安定になる可能性がある。一方，実際に使用されるディーゼル発電機の慣性は小さく，ガバナ遅れも大きいことから角周波数変動が大きいことが報告されている。本研究では，単相VSGインバータにより並列に接続されている非常用発電機の単位慣性定数の大きさを推定し，VSGインバータのがSGに対して大きくなると不安定になる問題に対して位相補償器の設計を行うことで安定化が実現できることを回路シミュレーションによって確認する。

6-228

スマート同期インバータの過渡時の周波数維持能力の検討

◎小林大輔・野呂康宏（工学院大学）

再生可能エネルギーの多くは，インバータを介して系統連系しているが，回転機ではないため，同期発電機の有する慣性や同期化力を備えていないため，導入量が増えると，事故時に系統が不安定になるという懸念が生じる。そこで，慣性を具備させたスマート同期インバータにおいて，事故を想定した負荷変動を起こし，周波数維持能力を評価する。また，従来型の同期発電機とスマート同期インバータを混在させた場合の周波数維持能力を評価する。

6-229

日本の4K昇温時における全天日射量の将来変化

◎砂村貴勇・宇野史睦（日本大学）

気候変動に伴い，風向風速などの気象条件が変化することで風力発電の発電量が変化する可能性が指摘されている。一方，日本における太陽光発電について調べた研究はほとんどない。このため，日本における太陽光発電を念頭に，全天日射量（日射量）の将来変化について調査した。 日射量の変化が特に顕著だった6月と2月について調査した。6月は梅雨入りが遅くなることで西日本を中心とした地域で日射量が増加し，2月はシベリア大陸から流入する北西風の弱化により日本海側を中心にほとんどの地域で日射量が減少した。日射量における将来変化の要因について全雲量を用いて調査した結果，6月は全雲量と日射量の将来変化の空間分布が一致したが，2月は一致しない地域もあり，雲の高度により雲量の将来変化が大きく異なることが影響した。

6-230

FIP制度下における蓄電池をもつ太陽光発電事業のRSVMによる事業価値評価

◎齊藤美紗・宮内 肇（熊本大学）・三澤哲也（名古屋市立大学）

著者らは，RSVM（Risk Sensitive Value Measure：リスク鋭感的価値尺度）を用いた電気事業の価値評価を提案し，その有効性を検証してきた。再生可能エネルギーについても，太陽光発電（PV）を対象として事業価値評価を行い，最適投資規模や最大投資可能規模について示している。2022年よりFIP（Feed In Premium）制度が導入され，蓄電池を用いた電力供給のタイムシフトが重要となることも既に明らかにしている。しかし，先行研究で用いた出力抑制モデルは簡易的なものであることから，本稿ではより現実的な出力抑制モデルを作成し，2030年度電源構成を的確に表現することを示した後，蓄電池を併設したPV事業の事業価値についてRSVMにより評価する。

6-231

FIT認定の太陽光発電に関する設置場所の土地利用形態の傾向分析

◎志村征輝・山内貴翔・加藤丈佳・占部千由（名古屋大学）

2050年のカーボンニュートラル実現に向けた検討では，数100GW規模の太陽光発電（PV）導入を前提とするにあたり，PVの空間分布の想定が重要になる。 そこで筆者らは，PVの代表的な設置形態7区分について，2050年における市区町村別の導入量推定を行なっている。その過程で，設置形態ごとの導入量の大小が地域毎の導入傾向を暗に示すことが確認できた。この導入量推定の精度をより高めるために必要となる情報を精緻なものとするために，現状のPV出力と設置形態の関係性を把握し，現在公開されているFIT認定量の統計とメッシュデータによる土地利用統計の対応付けを行った。

6-232

系統貢献する需要家の分散電源の最適配置

○根本 亮・友部 修・弓部良樹・池本 悠・高橋麻美（日立製作所）

一般送配電事業者は今後，出力が不安定な再エネの導入率が高まる中で，収益上限の制約のもとに系統を効率よく運用する必要に迫られる。そこで系統運用手段の候補として，需要家の蓄電池導入と，系統制御への活用による効率的な運用が挙げられる。本報告では，需要家の蓄電池導入コスト負担を押さえつつ，需要家設備による系統の安定運用を目的とした，蓄電池最適配置アルゴリズムを検討した。アルゴリズムには，系統電圧の変動と需要家設備や系統設備の導入コストを用い目的関数を設定した。アルゴリズム検証した結果，系統増強費用は約80％低減する見通しを得た。今後は需要家の利益を考慮したアルゴリズム策定を予定している。

6-233

PMSG発電を用いたDCリンク方式洋上風力送電システムに関する研究

◎小室 陸・呉 国紅（東北学院大学）

本研究では，洋上風力発電に用いられる発電機として，メンテナンス性が優れる利点を有する永久磁石式同期発電機（PMSG）を使用することを想定して，DCリンク方式を用いた洋上風力送電システムモデルを構築し，電力制御および電圧安定化制御系を設計してシミュレーション検討を行った。シミュレーションは，一定風速の場合と実測した変動風速の場合の2通りを行い，その結果より，作成したPMSG発電システムモデルおよびDCリンク方式の洋上送電システムモデルは正しく動作し，適切な交直変換動作および電力・電圧制御を行い，正常に発電・送電が行われていることが確認できた。

6-234

電圧変動スロープ制御を具備した再エネ向け自励SVC

◎相原雄也・板谷陽平（東芝三菱電機産業システム）・鈴木健一・近藤正佳（東京電機産業）

再生可能エネルギー発電所に併設されるSVCにおいて，連系点電圧一定制御（フィードバック制御）ではなく，高速に無効電力を出力する電圧変動スロープ制御（フィードフォワード制御）が要求されることがある。この制御を10Mvarクラスの中容量自励SVCに適用するにあたり，汎用PLCを用いた制御装置を制作したので報告する。

6-235

家庭用エネルギー供給システムの導入容量に関する一考察

◎山本 賢・川原耕治（広島工業大学）

太陽光発電システム（PV），燃料電池（FC），電気分解装置（EL）を用いてシステムを構成し，これまで運用計画を策定してきた。そこで本稿では導入及び運用時のコスト最小となるシステムの導入容量を決定する。これまでの気象データ及び電力・熱需要をもとに線形計画法を用いて，導入容量の決定を行う。20年間の総電力・熱需要を購入によって補うと約412万円かかることが確認できた。また，コスト最小となる導入容量としてはPVを2.8kW導入することで20年間の総コストが357万円となり，約60万円程度の削減につながることが分かった。現状のエネルギー供給コストでは，コスト最小の観点からみるとPVのみの導入が最適である。

6-236

太陽光発電出力実績からの太陽光発電出力制御特性関数の作成

○石井英俊・福留 潔（J-POWERビジネスサービス）・竹内知哉・瀬川周平・今中政輝・馬場博幸・荻本和彦（東京大学）

既存設備を有効活用する日本版コネクト＆マネージでは，太陽光発電（PV: photovoltaics）の予測（1）に基づき，PVの出力制御が行われる。実際に制御を行う為には期待するPV合計出力に対する制御指令値がどのようになるかが既知である必要がある。様々な設置条件にあるPVの発電実績から，各時刻における太陽光制御指令値と実際の発電出力を示す関数作成する。その関数は月，時刻，天気等の様々な要因によりある一定の範囲内の分布として現れ，一意には定まらない。その分布から発電出力を制御する為の制御指令値を求める関数（制御特性関数）を求める方法を提案する。

6-237

温度依存性を考慮した太陽光パネルの低電圧側動作点における最大出力推定手法の検討

◎長坂英朗・馬場旬平（東京大学）

近年，世界的な脱炭素化の動きに伴い，再生可能エネルギーへの注目が高まっている。しかし現在導入されている再生可能エネルギーの多くは変動性再生可能エネルギー（VRE）でありその出力は天候によって時々刻々と変化する。そのためVREの導入が増加した場合にはその変動を補うための電源である調整力が不足することが懸念されている。この問題のの解決策としてVRE自体から調整力を供給するというものが考えられる。 本稿では日本国内で最も導入量が多いVREである太陽光発電（PV）に注目し，PVから調整力を供給する際に必要となる最大出力推定手法について実証実験を行った。

6-238

配電系統における実負荷と太陽光発電出力の推定法

○大井章弘・神通川 亨・藤本 久（富士電機）・福山良和（明治大学）

近年，太陽光発電（PV）の配電系統への導入量が拡大している。配電系統では，実負荷とPV出力の値が個別に測定されておらず，それぞれの値を適切に把握する事が困難であり，PV導入量の拡大を受け，系統運用上の課題となっている。そこで，本論文では，系統送り出し点での潮流測定値とスマートメータの測定値を用いた実負荷とPV出力の推定法を提案する。提案法は，スマートメータの測定周期で推定を行う長周期推定と潮流の測定周期で推定を行う短周期推定で構成されている。また，提案法によるシミュレーション評価を行い，PV出力の不規則な変動が大きな場合でも，変動が小さな場合と比較し，推定誤差の拡大が小さいことを確認した。

6-239

PV発電量評価に向けたGPV（GSM）日射量1時間値の補間手法

◎糸井久瑠実・屠 雨陽・崔 錦丹・植田 譲（東京理科大学）

本研究では電力市場に対応したPV発電量30分値の作成を目的として，GPVデータの日射量・風速・気温の1時間値から30分値の変換を行った。日射量に対して前後の時間における変化量を基に内挿するSH（Smaller Half）内挿法を提案し，1時間値を30分値に変換した。さらに提案手法によって取得した30分値と，単純な線形補間を行った風速・気温を併せて用いることでPV発電量の30分値を作成した。作成したPV発電量のインバランス量を評価した結果，30分値に変換しても1時間値と同じ程度のインバランス量に抑えることができ，本提案手法はPV発電量を用いた検討に使用できると考えられる。

6-240

LSTMを用いた住宅用PVの短時間先発電量予測手法

◎那須 宙・植田 譲（東京理科大学）・宇都宮健志・佐々木 潤・岡田 牧・吉川茂幸・山口浩司（日本気象協会）

住宅用PVシステムにおいて太陽光発電量を予測するには，周りの障害物による影や方位角情報とのズレといった影響を考慮する必要があり，予測するのが困難である。先行研究では物理モデルという傾斜面日射量と損失係数から発電量を予測するモデルがあるが，これだと前述した住宅特有の影響を考慮することができない。そこで本研究では物理モデルで予測した発電量を，LSTMで補正するという流れで研究を行った。LSTMは時系列データの予測に強く，日射状況や太陽位置に関する情報をLSTMに学習させることで，結果として日射量の予測誤差を含めてLSTMで補正することができ，高精度な予測モデルを開発することができた。

6-241

レベル4のウェーブレット変換を用いたRBFN型ELMによる風力発電出力予測

◎渡辺航太郎・森 啓（明治大学）

本稿では，ニューラルネットワーク（Artifical Neural Network; 以後，ANNと略記）のRadial Basis Function Network（以後，RBFNと略記）にExtreme Learning Machine（以後，ELMと略記）を適用したネットワークに対して，前処理手法のウェーブレット変換を用いた風力発電出力予測法を提案する。出力変動が激しい風力発電出力予測に対して，RBFN型ELMネットワークによる高精度な予測モデルを提案した。その際，特徴抽出法としてウェーブレット変換を用いた。提案法を実データに適用することで提案法の有効性を示す。

6-242

物理学的手法とAIを組み合わせた日射量短時間予測技術の開発

宇都宮健志・佐々木 潤・○岡田 牧・吉川茂幸・山口浩司（日本気象協会）

著者らはNEDOの委託研究の一環として，数時間程度先までの日射量予測技術の開発を実施している。本研究では，数時間程度先までの高精度な日射量予測を実現するために，気象衛星ひまわり8号・9号の画像データ等を用いて，物理学的手法とAI（ディープラーニング）を組み合わせた新たな日射量の推定・予測モデルを開発した。開発したモデルでは，AIを用いた気圧場，風速場の推定を行うとともに，温湿度場から総雲水量の時間変化を推定するモデルを導入することで，雲の生成・消滅量を表現するための計算を行った。その結果，従来の予測手法（相互相関法）と比較して，RMSEで15％程度の精度向上が確認された。

6-243

海面更正気圧の主成分分析を利用した日射量予測大外し事例の分析

◎宮﨑 聡・久野勇太・前田剛宏・吉川茂幸・山口浩司（日本気象協会）

著者らはNEDOの委託研究の一環として，翌日および翌々日程度先の日射量予測が大きく外れる事象の改善を目的とした技術開発を実施している。開発する予測技術の1つとして，複数の気象モデル予測値の組み合わせ手法を検討している。本講演では，予測値の組み合わせ手法の高度化を目的として実施している，海面更正気圧の主成分分析を利用した日射量予測大外し事例の分析状況について報告する。2つの気象モデルの予測値を比較して，片方のモデルの予測誤差が大きい事例について海面更正気圧の主成分空間での特徴を調査した。この結果，特定のモデルの予測誤差が大きくなる傾向を持つ主成分空間上の領域の存在を確認した。

6-244

太陽光発電出力予測の不確実性の定量化

○野原大輔・菅野湧貴（電力中央研究所）

太陽光発電などの再生可能エネルギーは，天候の変化により出力が不安定となる性質を持つ。気象予測を元にした発電出力予測は電力システムに関わる様々な分野で利用されているが，気象場の状況によっては大きな誤差を生じる場合もある。本報告では，電力供給エリアを対象とした太陽光発電出力予測の精度向上の示唆を得る目的で，予測の不確実性の要因を整理し，それぞれを定量的に評価した。アンサンブル予測が表現する不確実性は気象の物理的性質のため不確実性の低減は困難である。一方，系統的不確実性はアンサンブル予測より大きいが，統計的補正法等で低減可能なものであり，確率予測の拡がり幅の縮小や予測誤差の低減が可能となる。

6-245

深層学習による全天球画像より算出した遠方雲量を利用した日射量予測

◎北林裕也・羽根佑歩・山本浩平・松井康人（京都大学）

本研究では深層学習の1種類であるLSTMを使用して各時刻の1時間先の日射量を予測した。また，現状の予測手法では急激な日射量変動の予測精度が低いため，急激な日射量変動を予測できる手法の提案を目指した。予測モデルの入力データとして，全天球画像に映る遠方の雲量を利用した。また，解析対象の遠方領域を決定するために連続した画像からオプティカルフローを算出し雲の動きをベクトル表示し，ベクトルの逆方向から遠方領域を決定した。また，雲の移動の速さを表したベクトルの大きさも入力データとして使用した。その結果，全天球画像から得られた情報を入力した予測の方が入力しなかった場合よりも予測精度が向上した。

6-246

プロセスバスシステムにおける重要故障モード影響解析の実施

水野 信・◎佐野優作・近藤健二（東京電力パワーグリッド）・山守 渉（東芝エネルギーシステムズ）

デジタル情報処理技術の発展に伴い，国内においても変電所監視制御システムへの国際規格IEC 61850の適用検討が広く進んでいる。 近年では機器近傍にMUを配置し，IEC61850を適用するなど，プロセスバスにおいてもデジタル化されたフルデジタル変電所システムの実用化が進められている。 プロセスバス実適用にあたってはシステムを構成する装置の異常発生時におけるシステム全体の挙動を明らかにするとともに，異常処理について検討しておくことが重要となる。 そこで重要故障モード影響解析の手法を使ってシステムFMEAを実施中であり，その検討状況について報告する。

6-247

デジタル変電所システムにおけるセキュリティ対応について

◎大澤 渉・吉田晴香・山守 渉・下村則雄（東芝エネルギーシステムズ）・田村恵子・小島嵩士（東京電力パワーグリッド）

近年，変電所構内における制御ケーブルの削減や運用・保守情報等のデジタル化を目的としたデジタル変電所システムの開発が進められている。その反面，デジタル情報処理技術の発展に伴い，デジタル変電所システムにおけるセキュリティ対策が重要課題となっている。 そのため本論文では，デジタル変電所システムにおけるセキュリティ方針及びその重要課題について国際的な規格に基づいたセキュリティ対策の一例をまとめた。今後の展開としては，運用中におけるセキュリティ保守対応についても検討を進めていく予定である。

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プロセスバス適用時における変電所所内電源の切替機能向け論理ノードの設計

◎漁野康紀・大谷哲夫（電力中央研究所）

IEC 61850に基づくプロセスバスを適用した変電所保護制御システムの導入が国内においても検討されている。ある一般送配電事業者においては，所内電源の常用系における異常発生時等に，待機系に切り替える従前からの仕組みを採用する。そのため，プロセスレベルに位置する装置を通じて，所内電源の切替を実施できる必要があるが，IEC 61850においては，プロセスレベルに位置する所内電源系を制御するための仕組み等が十分に定められていない。そこで，本発表では，IEC 61850に基づくプロセスバス適用時における所内電源の切替機能向け論理ノードを設計した結果を述べる。

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日本版コネクト&マネージメントシステムにおける制御値伝送シミュレーション環境の基礎検討

◎平川哲也・上田紀行（電力中央研究所）

日本版コネクト＆マネージの一方式であるノンファーム型接続では，系統の空き容量に応じて電源に対し制御値を送信することで出力制御を行う。制御値の伝送仕様を標準化して設備の調達を容易にすること，仕様を電力流通設備と共通化することを目指し，国内で普及が始まったIEC 61850に基づいた伝送仕様が策定された。制御値伝送においては，利用可能なセキュリティ対策方式を明らかにすること，およびその検証を実機を用いずに検証可能であることが望ましい。本稿では，伝送仕様に基づくTSO―PCS間通信の模擬が可能なシミュレーション環境の構築と，ネットワークセキュリティの検証を行った結果を報告する。

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国際規格に準拠したM-Gセット計測制御インタフェース基本仕様

○岩丸明史・上田紀行・田中彰浩・大谷哲夫・嶋田丈裕（電力中央研究所）

M-Gセット・GFL・系統安定化機能付きGFMは，再生可能エネルギー電源が基幹系統にも普及した状況における系統の安定化に寄与するものとして期待されている。M-Gセット等が国内に広く普及するためには，その運用に必要な計測制御インタフェースの仕様を共通化するとともに，その経済性を確保することが重要となる。さらには，将来の電力系統運用に必要となる高速応答性や多地点同時計測への対応，継続的に進化する安定化機能等への対応に必要な柔軟性の確保，サイバーセキュリティを含む信頼性の確保も欠かせない。そこで，本稿では，これら基本的な要件の充足を目指した計測制御IFの基本仕様提案と課題整理について発表する。

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IEC 61850準拠リレーユニットによる変圧器保護継電装置レトロフィット工法の実現

◎池山知孝・青木幸司・鬼頭和也・安藤 豊（シーテック）

高機能汎用型ディジタルリレー（IED）は，多くが国際規格IEC 61850に対応しており，多機能・コンパクト・低コスト・短納期といった特徴を有する。既存の受配電設備にIEDを適用する手段の一つとして，レトロフィット工法がある。レトロフィット工法は，配電盤もしくは受配電キュービクル筐体で寿命を迎えた保護・制御リレーのみを取り換える工法であり，工事期間の短縮や既存設備の大部分を流用できることによるコストダウンが図れる。そして，IED適用による機能向上のメリットも得られる。本稿では，今年度実施した電力用変圧器向け保護継電装置のレトロフィット工法を報告する。

6-252

中継盤化改造を用いた総合記録装置の更新適用

◎片又裕貴（日新電機）・南條 修・市川義治（東京電力パワーグリッド）・片山幸作・石倉定幸・奥田 誠・山本勝敏（日新電機）

自動オシロ機能等の記録機能を有している総合記録装置は，電力系統の安定運用や電力品質維持に大きな役割を果たしている。 過去に納入された既設総合記録装置は老朽化に伴う装置更新を順次実施しているが，主回路停止が伴うため，容易に更新できない状況にあった。 今回，既設盤を中継盤化する方法を採用し，更新の作業範囲を対象装置側に限定することで，主回路停止を不要とした装置更新を実施した。

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変電所における保護制御盤設置作業の負担解析

◎岩塚 武・池浦良淳・早川聡一郎（三重大学）・杉本敏文（中部電力）

電力会社の変電所管轄部門では，近年多発する自然災害時の緊急対応や設備高経年化による設備故障時の復旧対応において，請負者の確保が困難な場面での迅速な対応の実施を目指して，直営による作業実施が進められている。しかし，技能系作業に慣れていない若年者にとっては身体的負担を感じる作業が多い。そこで，人間工学を用いて身体的な負担分析を行い，作業負担を軽減する対策の研究を行っている。本講演では「保護制御盤設置作業」に着目し，姿勢評価方法としてOWAS法とREBAを用いた評価結果を示す。また，作業者一人あたりに加わる負担を解析し，姿勢改善を可能とするアシスト装置を提案する。

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変電所設備工事における制御ケーブル管理ツール適用に向けた実証

○橋本将司・嶋崎紀隆・黒岩良一（北陸電力送配電）・川本真也・岡 雅明（東芝エネルギーシステムズ）

変電所にある電力用機器や制御盤（以下，変電所設備）には，監視制御に必要な情報を伝達するため多数の制御ケーブルを使用している。変電所設備の端子台に接続されるケーブルの種類，芯数，芯線等の情報は，ケーブル接続図やケーブル表と呼ばれる紙媒体で管理している（以下，これらを管理図面という）。ケーブル管理に関する業務には，多大な労力をかけており，効率化が長年の課題であった。一方，東芝エネルギーシステムズでは，制御ケーブル管理ツールを開発しており，ケーブル管理の業務にこのツールを使用することで，業務の効率化が期待される。北陸電力送配電の変電所設備工事にこのツールを適用し，ケーブル管理に関する業務効率化について実証を行ったので，その結果について報告する。