一般講演

3-102

乳がん細胞と大腸がん細胞由来エクソソームの誘電泳動特性の違い

◎中林 龍・高山理衣・稲葉優文・中野道彦・末廣純也（九州大学）

がん細胞を含むほとんどの細胞が分泌する直径40-150 nm程度の小胞であるエクソソームが，がんのバイオマーカー候補として着目されている。我々は誘電泳動を利用したエクソソームによるがん診断手法の開発を目指している。本研究では，ヒト乳がん細胞とヒト大腸がん細胞由来エクソソームの誘電泳動特性を測定し，エクソソームの誘電泳動特性によるがん種同定の可能性を検討した。エクソソームを導電率と浸透圧を調製した溶液に懸濁させ，キャッスルウォール電極上に滴下後，周波数を変化させながら交流電圧を印加した。結果として，両エクソソーム間の誘電泳動特性の違いが明らかとなり，エクソソームの誘電泳動によるがん種同定の可能性が示された。

3-103

分散型光電気BMIデバイス向け0.18μm CMOSチップの機能評価

◎高松洸佑・衛 亦誠・坂田篤典・董 上・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

近年，脳神経科学の分野では実験の手法や対象の多様化が進んでいる。そこで我々は動物実験への応用を想定して，電気刺激・電気計測・光刺激・光計測の機能を持ち，多様な動物と用途に対応できる多点BMI（Brain Machine Interface）システムの実現を目指している。このBMIの実現には，必要な回路を単一のCMOSチップ内に収めることが求められる。今回，BMIの機能のコアとなる回路の全体を設計し，機能ごとの検証と動物実験を想定した検証をしたので報告する。今後はこの設計をもとにプロトタイプを作成し，より現実に即した形での検証を行う予定である。

3-104

mmスケールのIoTエッジに向けたサブスレッショルド領域で動作する電圧モニタ回路

◎吉本海生・伊藤淳太郎・横式康史・德田 崇（東京工業大学）

我々はすべてのものの情報化に向けて，mmスケールのIoTエッジデバイスの開発を行っている。mmスケールの太陽電池から得られる電力は数nWであるため充電用キャパシタの電位を判定する電圧モニタ回路の小電流化が必要である。電流を制限するためにサブスレッショルド領域で動作するMOSFETを用いた電圧モニタ回路を試作・評価した。従来の電圧モニタ回路はON電圧が低いことが課題であったが，今回試作した回路では目標としていた3V以上のON電圧を達成した。また，0.8 mm×0.9 mmの太陽電池を16個直列接続することによって最低10 lxの室内光で回路を動作させることに成功した。

3-105

上下液滴半径差による相補的なDroplet-array sandwiching technologyを用いた液滴内濃度制御

◎宮田佳典・坊野慎治・小西 聡（立命館大学）

上下に対向する液滴アレイの接触・分離を制御する技術はDroplet-array sandwiching technology（DAST）と呼ばれ，液滴間における物質輸送が可能である。DASTにおいて上下液滴の半径差により，下側液滴体積の液滴融合分離前後における体積差ΔVを任意の値に制御可能である。体積制御を用いたDASTのPositive（ΔV > 0）-Negative（ΔV < 0）条件を相補的に用いることにより，初期液滴体積を保ちつつ濃度差を生じさせる。結果，溶質濃度の正，0，負の三段階の変調を実現し溶質濃度依存性を示した。これは相補的なDASTを用いることで体積を一定に保ちつつ，液滴内濃度制御が可能なことを示している。

3-106

ウェット空間電気的特性計測のためのフレキシブル基板上三次元マイクロ電極アレイ

◎山内康生・金子雄太・小西 聡（立命館大学）

近年三次元細胞組織モデルや生体組織に対して内部を直接かつ空間的に計測する技術に関する研究が活発になってきている。本研究室においても三次元電極の研究開発を続けてきており，ワイヤーボンディング技術を援用した三次元マイクロ電極アレイについて過去に報告している。さらに，プローブ状の三次元電極アレイをゲルブロックに挿入し，内部の電気的特性を計測した成果についても報告している。本発表ではフレキシブル基板を用いた三次元電極アレイについて報告する。今回新たに開発したフレキシブル基板上三次元マイクロ電極アレイへのゲルへの挿入，さらに，ゲル内部のインピーダンス計測について評価を行ったので報告する。

3-107

打ち抜き加工によるサンプリングデバイスを用いた汗中成分モニタリングシステム

◎梶野琢磨・河奈正太郎・工藤寛之（明治大学）

ウェアラブルなデバイスにて生化学反応を伴う生体成分の分析やモニタリングを行うための技術開発では，対象となる物質の検出法のみならず，サンプリングや試料のハンドリングにもブレイクスルーが求められている。特に無侵襲な使い捨てのデバイスで再現性よく試料をサンプリングするデバイスが必要不可欠である。本研究では，PFAチューブをPDMS製のシートに埋め込み，一括で打ち抜き加工を行うことで作製した微小流路を汗サンプリングデバイスとして汗中乳酸モニタリングシステムに適用し，有用性を評価した。その結果，流路の小型化に伴うセンサの応答速度の向上を確認した。汗中成分計測への応用に向け，デバイス装着性の向上を行う予定である。

3-108

トラックエッチドメンブレンを用いた簡素なフロー式細胞捕捉誘電泳動デバイスの開発

○須加 実・林 凌雅・奥原太生・篠原寛明（富山大学）

生命工学や医療などの分野では，マイクロ流体デバイスと誘電泳動を組み合わせた細胞分離が試みられてきた。電極板上にフォトレジストでウェル型の細孔を形成したデバイスが開発されているが，電極と一体化しているため再利用が困難である。本研究では，使い捨て可能な市販のトラックエッチドメンブレンを電極上に極薄粘着シートで接着することで，安価で簡素な絶縁体ベース誘電泳動デバイスを作成し連続処理可能なフローシステムを開発した。この電気絶縁性メンブレンは平面が平滑で孔径が均一な貫通円筒孔をもつため，孔部分に強い電界を形成させ誘電泳動によって細胞を吸引捕捉できる。

3-109

傾斜角判別システムのニューラル比較器におけるヒステリシス特性の検討

○下尾浩正（佐世保工業高等専門学校）・南部幸久（有明工業高等専門学校）・寺村正広（佐世保工業高等専門学校）

筆者らは高速応答する傾斜角判別システムを提案しており，自然災害に起因する物体の転倒による物損回避に適用できないか開発を行っている。システムは，傾斜角判別にニューラル比較器を用いており，内部にコンパレータ回路を使用しているが，ヒステリシス特性を持たないため部分的に傾斜角判別が不安定になることがあった。そこで，コンパレータ回路に正帰還をかけヒステリシス特性を持たせることで不安定な判別解消の検討を行ったので報告する。実験の結果，ヒステリシス特性は出力の安定につながったが，判別する傾斜角に応じたヒステリシス特性の大きさを設定する必要があることがわかった。

3-110

分割リング共振器の二次元配列構造を用いた磁性体の位置検出

◎齋藤駿典・中山拡之・胡桃 聡・鈴木 薫・松田健一（日本大学）

分割リング共振器（SRR）は電磁波に対する共振器であり，近年では変位センサや，材料物質の分析デバイスとしての応用が検討されている。本研究の目的は，バラクタダイオード搭載型分割リング共振器（VLSRR）を基板上に複数配列した構造を作製し，個々の共振特性を，基板裏面に配置したコプレーナ導波路によって検出すること，VLSRRを含む基板面上に配置した磁性体の位置を共振特性の変化から検出することである。コプレーナ導波路上のS₂₁特性を測定した結果，磁性体を配置した方のVLSRRの共振周波数が高周波側にシフトしていることから磁性体の位置が検出可能であることが分かった。

3-111

動く電子回路への物理センサ集積化のための微細加工技術検討

◎石田佳洋・大塚 陸・張 詩芸・林 健司・佐々文洋（九州大学）

ソフトロボットは，軽量で安全かつ柔軟な特性を持ち，人体内や細胞などの領域での利用が期待されていて，我々は電気信号のみで動くフィルム型ソフトマイクロロボットを開発し，その小型化を進めている。本論文は，ステンシルマスクを用いてひずみ・温度センサを組み込んだ物理センサを作製し，温度とひずみに対して線形的な応答が得られ，P制御によるフィードバック制御が実現された。また，フォトリソグラフィ技術を使用して物理センサをアクチュエータフィルム上に作製したが，線幅・ピッチが小さいものではパターニングの欠損が見られ，その原因として気泡や接着剤の問題があった。そこで，アミンPDMSリンカーによる表面修飾による新規PI/OPP接合法を導入した結果，同程度以上の加熱による屈曲変化を示し，従来の方法に代わる代替プロセスとして活用できることが示された。

3-112

ロジックIC実装による動く電子回路のシリアル通信制御と省配線化

◎松永龍樹・林 健司・佐々文洋（九州大学）

バイモルフアクチュエータの駆動部に電子回路を実装することで制御部の簡略化を実現することを目的とし，70 μm厚のアクチュエータフィルムロボットに表面実装ロジックICチップを用いた新しい制御手法を提案する。実験では，導電ペーストで接着されたシフトレジスタICチップを用いて，シリアル通信による複数アクチュエータの同時制御を実現。この方法により，ロボットの微細化や動きの複雑化に伴う制御部の接続複雑化の問題を解決することが可能となる。結果から，ICチップを用いたアクチュエータフィルム上でのシフトレジスタの動作確認に成功し，電源との接続を5線のみに削減できることを示す。この技術はウェアラブルバイオセンサーなどへの応用が期待される。

3-113

結晶異方性シリコンドライエッチングを用いた斜めはり構造

◎岩成 優・前中一介・神田健介（兵庫県立大学）

一般的な平板型の片持ちはり構造のMEMS振動型エナジーハーベスタは発電可能な振動方向がはり形状に依存して単一軸方向に限定されるため，その多軸化，無指向性化が模索されている。無指向性化のためには単純には1軸のデバイスを3つ直交させて配置し発電電力を合成する手法があるが，複数のデバイスで発電する場合それらの交流電力を整流・合成する必要があり，その際に位相の調整や電力ロスが発生する。そこで我々は斜めはりにより入力振動の方向とはりの運動方向を変換する無指向性振動型エナジーハーベスタを目指し，それに用いる斜めはりを結晶異方性ドライエッチングで作製する方法を提案する。

3-114

高精度化に向けた真空封止とデカップリング構造をともなった振幅変調型加速度センサの動作検証

◎川野遥暉・武田悠吾・畑 良幸（名城大学）

振幅変調型加速度センサの高精度化に向けて，高Q値化によるメカノイズの低減と，デカップリングセンサ構造による他軸感度の低減を図っている。また，高Q値化に伴う応答性の低下に対してはForce Rebalance制御の導入を図っている。本研究では，デカップリング構造をもつ2軸加速度センサを試作し，セラミックパッケージ内に真空封止を行い，Force Rebalance制御適応前のセンサ特性を明らかにした。振動Q値はX軸，Y軸ともに400程度となった。センサ感度はX軸とY軸においてそれぞれ69 mV_rms/gと66 mV_rms/gであり，2軸加速度検知を確認することができた。他軸感度は約14 mgであった。アラン分散値から求めたVelocity Random Walkはおおよそ11 µg/√Hzであることが分かった。

3-115

臓器の層間すべり予兆検出に向けた把持力分布収集用3軸力覚センサアレイの開発

◎市ノ瀬 諒・細川真宏・神田脩太・前田祐作（香川高等専門学校）

内視鏡手術では，多層臓器の層同士がすべる“層間すべり”の発生などにより臓器の安定把持が難しく，技術の習熟が困難であるとされている。この問題を解決するため，実際に層間すべりが生じる前の予兆を検出する技術が必要である。本研究では，層間滑りの予兆検出に対する摩擦力分布取得の有効性検証に向けて，鉗子・臓器間の接触荷重および摩擦力を計測可能なセンサを5倍スケールで開発した。3軸力覚センサ7素子を鉗子モデルに装着することでセンサアレイとし，荷重分布を取得する。製作したセンサの荷重分解能は，垂直力61mN，摩擦力37mN以上だった。また，センサアレイに模擬臓器に見立てた風船を押し当てた際に得られたデータより，実際に垂直力・摩擦力の同時取得が可能であることを実証した。

3-116

酵素サイクリング反応に基づく超高感度アセトアルデヒド用蛍光バイオセンサ

◎飯谷健太・前野夕紀・張 耿（東京医科歯科大学）・當麻浩司（芝浦工業大学）・荒川貴博（東京工科大学）・三林浩二（東京医科歯科大学）

生体内のアセトアルデヒド（AcH）は各種がんのリスク要因となるが，呼気や経皮ガスに含まれるAcH計測により血中濃度を非侵襲的に評価することが可能である。これまでに自家蛍光を有するNADH（励起340 nm，蛍光490 nm）依存型のアルコール脱水素酵素（ADH）を用いたAcHセンサを開発しているが，呼気に比して低濃度な経皮ガス中AcHの測定には感度が不足していた。本研究では，ADHおよびアルコール酸化酵素を同時に用いるサイクリング反応によるシグナル増幅により，従来のADHのみを用いるセンサから約1000倍の高感度化を達成した（定量範囲 53 pM〜100 μM）。本講演では，高感度化の方法論およびセンサ特性について報告する。

3-117

ウェアラブセンサを可能とするレーザー抗体再生法

○山口昌樹（信州大学）

イムノアッセイは，抗体さえ入手すればほとんどのタンパクに適用可能な優れた分子認識技術であり，臨床検査で主流な分析方法となっている。しかし，抗体を再生するためには解離液で抗原を解離する必要があり，試薬の補給が必要で生体装着を実現する小型デバイス化ができない。筆者は，抗体の近傍に光酸を固相化し，特定波長の光を数秒照射することによりpHを変化させ，抗原が解離して抗体を再生できるレーザー pH 制御による再生法（レーザー抗体再生法）というバイオセンサのリサイクル技術を考案した。本研究では，これを適用した繰り返し測定できる心不全センサを提案する。

3-118

分割リング共振器列を用いた溶液濃度測定

◎中山拡之・齋藤駿典・胡桃 聡・鈴木 薫・松田健一（日本大学）

近年，分割リング共振器（SRR）の共振特性を利用した溶液濃度センサや化学分析デバイスが注目されている。今回我々は，マイクロストリップラインとそこに近接して配置されたバラクタダイオード搭載型分割リング共振器（VLSRR）からなる溶液濃度センサを作製した。また，VLSRRの一部に挿入された櫛形電極に液体滴下を行うことで，溶液濃度に伴うVLSRRの共振特性の変化をマイクロストリップライン上の電磁波透過スペクトルで検出することを試みた。発表では，一つのマイクロストリップラインに対して二つの異なるサイズのVLSRRを配置した構造において，エタノール水溶液の濃度変化や入力電磁波の強度に対してスペクトルの変化が観測できたのでこれについても報告する。

3-119

キイロショウジョウバエ嗅覚受容体Or98a発現細胞の気相バイオ匂いセンサの応答性評価

◎野本周平・中本高道（東京工業大学）・祐川侑司・光野秀文・二木佐和子・黒田枝里・神崎亮平（東京大学）

匂いは周囲の情報を多く有しており，農業や医療といった様々な業界で匂い検出に対する需要が高まっている。これに伴って，様々な材料を用いた匂い検出センサが開発されてきたが，現在まで多成分混合臭を定量できるセンサは開発されていない。生物由来の材料を利用した匂い検出バイオセンサは高い感度と複数の匂いに応答する特性から，センシング材料として注目を集めている。本研究では新しく作出されたOr98a嗅覚受容体発現細胞の気相における匂い分子に対する応答性の評価を行った。Or98aはEthyl Benzoateや3-Octanolといった様々な匂いに応答することが知られている。今後，Or98a発現細胞は多成分混合臭を検出するセンサ材料として活用の余地がある。

3-120

昆虫触角電図法に基づく携帯型匂い検出センサ用アンプの基礎検討

◎祐川侑司・中條卓也・神崎亮平・光野秀文（東京大学）

昆虫は，フェロモンや匂いなどをはじめとする化学物質を見つけ出す能力に長けている。昆虫はその触角に存在する神経細胞に発現する嗅覚受容体で化学物質を受容しており，その触角での電気的反応は触角電図法と呼ばれる手法により計測することが可能である。本研究では，昆虫触角を用いた携帯型匂い検出デバイスの実現を目指し，触角電図法のための小型計測アンプを作製して応答性能の評価を行った。評価実験にはオスカイコガの触角と性フェロモン主成分物質を用いた。実験の結果，作製した計測アンプでの性フェロモン物質の濃度依存的な応答性や，繰り返し性フェロモン刺激を与えたときの応答性を確認した。

3-121

Interference Separation Using Improved NMF for Odor Reproduction Analysis

◎Dani Prasetyawan・Lidong Huang・中本高道（東京工業大学）

Olfaction, is one of the primary senses in living beings, significantly impacts human daily life. Nowadays, a diverse range of odorant samples is available, including both pure samples and those mixed with chemical compounds, known as fixatives, to extend their shelf-life. These fixatives are odorless and create challenges in the odorant analysis. Consequently, it is essential to have a method for odorant analysis that are effective regardless of the presence or absence of these interfering fixatives.

3-122

Odor Reproduction Analysis with Interference Removal

○SHENGYU WANG・DANI PRASETYAWAN・中本高道（東京工業大学）

Olfaction, as one of the fundamental senses, plays an essential role in human perception. The diversity of odors in the real world underscores the significance of odor reproduction in olfactory research. Perfumes, as a prevalent samples of scents, often contain fixatives, odorless components added to prolong shelf life. The olfactory reproduction of perfumes is often compromised by the interference of these fixative components. In response to this challenge, we propose a Non-negative Matrix Factorization (NMF) algorithm with the interference fixed as basis vectors. Finally, we successfully used odor components to reproduce the target perfumes and reduce the interference of fixatives on the results comparing to the old methods.

3-123

フレキシブル基板を用いたAu/Agナノ粒子LSPRガスセンサの作製及び応用

◎Gyeong Heo・熊副慎吾・松岡真聖・Lingpu Gu・佐々文洋・林 健司（九州大学）

天災を予測する研究が行われているが，すべてを回避することは難しい。災害の後は被害者の救助や危険地区の分別など迅速な対応が求められる。人の呼吸を利用し埋もれた人の位置特定，危険ガス漏れを検知し危険地域特定などができる。匂いセンサの表面にパターンを作ることで空間情報を増やし，ガス流方向の可視化によりガス源位置推定を目的にする。実験結果からフィルム上に局在表面プラズモン共鳴（LSPR）を実現しフレキシブルセンサを作製した。また，このセンサを用い7種類のガスを同時に分離することができ，センサ表面に障害物を作り流れの可視化ができた。このデータを用いガスの流れを直感的に可視化できるよう画像データを解析する。

3-124

金/銀/酸化チタンLSPRガスセンサのUV/VIS照射によるプラズモニックガスセンサ性能の回復

◎熊副慎悟・松岡真聖・佐々文洋・林 健司（九州大学）

LSPRおよびSERSを応用したガスセンサにおいて，金属酸化によるLSPRガスセンサの性能低下への対処法を提案しました。酸化チタンのUV/VIS照射により金属の還元が達成され，実験結果ではLSPR吸収スペクトルの変化やセンサ表面の色の改善が確認されました。ガス応答測定においても，酸化チタンを塗布したセンサが1.5倍以上の回復性能を示し，銀の酸化による基板劣化の抑制が確認されました。この手法は金属ナノ粒子を用いたセンサの劣化に対する新しいアプローチを提案し，酸化チタンの光触媒反応を利用したセンサ性能の回復が可能であることを示唆しています。

3-125

TiO₂と紫外線照射によるSERSセンサの再利用可能化

◎山田健太・松尾拓哉・陳 林・佐々文洋・林 健司（九州大学）

表面増強ラマン散乱（SERS）は，貴金属ナノ粒子のナノギャップに分子が吸着することで，分子の指紋情報を含んだラマン散乱光が増強される現象である。SERSセンサは金や銀，銅のナノ粒子をガラスやシリコンに配置し，吸着した分子の特性を測定するもので，がん診断や食品の安全性分析，ガスセンシングに応用されている。しかし，一度測定した分子はセンサに吸着したままであるためセンサを再利用できないという課題がある。本研究では，酸化チタンの光触媒反応による有機物の酸化分解を利用するために，酸化チタン粉末を分散させたエタノールに有機物が吸着したSERSセンサを浸漬させながら紫外線を照射することで，センサ上の被測定分子を除去し，SERSセンサの再利用を可能とした。

3-126

Quantification of Ternary Gas Mixture Based on Active Sensing Method Using QCM Sensor Array

◎Ziteng Bao・Manuel Aleixandre・中本高道（東京工業大学）

This paper proposed an active sensing method to quantify ternary gas mixture using QCM sensor array. The sensor array consists of four QCM sensors, and both frequency and resistance response of each sensor are measured. The target gas is firstly introduced to the sensor array and then use odor blender to generate blended gas. The recipe of the blended gas is repeatedly modified using MIMO feedback control until the difference of the response pattern between them becomes sufficiently small. Through this process, the system can quantify the concentration of each component in gas mixture.

3-127

機械学習を用いた精油の匂い記述子の予測

◎原 世紀・Dani Prasetyawan・中本高道（東京工業大学）

ユーザーが指定した印象を基に香りを合成するシステムを実現するためには，化合物の匂いを嗅いだ際にヒトが感じる印象を試料の情報から推定できる予測モデルの構築が必要である。従来は，単一化合物の匂いの印象を予測する研究が行われてきたが，ここではヒトが日常においてより多く体験する，複合臭の印象予測を扱う。本研究では，複合臭を発する物質として精油を用い，それらのマススペクトルから匂い記述子を推定することを目標として，機械学習を用いた2つの予測モデルを構築した。具体的には，オートエンコーダを用いて次元削減したマススペクトルデータを入力として，ワンクラス・サポートベクターマシン（OCSVM）と3層パーセプトロン（MLP）を訓練し，性能を評価した。

3-128

人工嗅覚システムを用いたオリーブオイルの匂い識別

◎YIFEI ZHANG・彭 楠・劉 元昌・小野寺 武・矢田部 塁・都甲 潔（九州大学）

本研究はカーボンブラックと収着性の絶縁材料である GCMS の固定相材料（GC 材料）を複合した材料を用いた 16ch の人工嗅覚システムにより，異なるオリーブオイルの区別検知を行った。始めに，サンプルは¥170〜2500/100 gのオリーブオイル四種類を選定した。そして湿度を30%，温度を120℃に設定を人工嗅覚システムで測定し，機械学習により識別した。その中で，PCA，LDAとUMAPの次元削減法を使った。その結果，PCAにより次元削減をしたところ分類器の識別率は全部53%以下となり，識別できない状態であった。LDAの場合はDTやRFの分類器を使って，識別率は100％になった。UMAPの場合，CNNにより機械学習を行った場合，精度 100%で識別に成功し，分類器の識別率は概ね87％以上を可能とした。今後，オリーブオイルの欠陥を識別することを目指す，サンプル数を増やす実験を予定である。

3-129

Detection of Breast Cancer Biomarker Using Fluorescence Quenching of Bovine Serum Albumin

◎YUYAN GUO・YUANCHANG LIU・Takeshi Onodera（九州大学）

This study explored the interaction between 5-(z)-dodecenoic acid (5DA), a potential precursor in breast cancer cells, and bovine serum albumin (BSA) using fluorescence spectroscopy. The fluorescence intensity of BSA decreased upon interaction with 5DA. Experimental results reveal a different quenching degree for 5DA compared to other fatty acids. The quenching rate, constant, and degree are found to be 22.4%, 8269.8, and 8.27×10¹¹, respectively. This suggests a distinctive reaction strength between 5DA and BSA. The findings propose the potential for measuring 5DA concentrations using BSA.

3-130

小型ドローン群によるガス源探索―バーチャルフェロモン信号に関する検討―

◎長谷川瑠星・松原岳志・吉田佳純（東京農工大学）・松倉 悠（電気通信大学）・Patrick P. Neumann（ドイツ連邦材料試験研究所）・Felix Häusler・Jan Stührenberg・Kay Smarsly（ハンブルク工科大学）・石田 寛（東京農工大学）

本研究では，屋内環境で小型ドローンを用い，ガス源探索の実現を目指す。先行研究では，ガス源探索効率を向上するため複数のドローンを用い，仮想的なフェロモン信号を発する手法が提案された。本稿では，このフェロモン信号の効果について報告する。各ドローンは探索領域内をランダムに飛行し，ガスが検出されたら無線で信号を発信して，その場所に他のドローンを呼び寄せる。最終的に，ガス検出の回数が最も多かった地点をガス源位置と推定する。2台のドローンを同時に飛ばす実験を行った結果，1台のみの場合と比べて2倍以上にガス検出回数が増え，ガスが検出された地点に他のドローンを誘引するフェロモン信号の効果が示された。

3-131

アントラセン誘導体を用いた緑色電気化学発光素子の検討

◎山口紗羅・小林愛佳・秋野喜彦・笠原崇史（法政大学）

近年，発光性溶液を2枚の透明電極付き基板で挟むことで作製される電気化学発光（ECL）素子が，新たなディスプレイデバイスとして注目されている。我々はこれまでに，ECL研究の代表的な蛍光分子であるテトラセン誘導体（ルブレン）から成る溶液に，ジスチリルベンゼン（DPAVB）を発光補助ドーパントとして加えることで，ルブレンの発光特性を向上できることを示している。本研究では，高輝度緑色ECLの実現を目指し，アントラセン誘導体（TTPA）とDPAVBを混合した新規溶液を調製し，フッ素添加酸化スズ（FTO）から成る簡易素子を用い発光特性を評価した。その結果，最大ピーク波長が550 nmの強いECLが得られることを初めて実証した。

3-132

二重マスクを用いた弾性的異方性を有するチタン箔の作製

◎秦 夷之・海野一真・大石恭徳・寒川雅之・安部 隆（新潟大学）

二重マスク法と電解エッチング法を用いた力学的異方性を有するチタン箔の作製指の関節のような曲げ機構をフレキシブルデバイスに導入するためには，曲げやすさの異方性が必要である。また，大きな張力，圧縮力に曝されるために，耐久性が高い材料の利用が必要になる。
本研究では，チタン箔に溝を作製し，負荷に対して，複数の箇所において異なる曲率となる変形が可能な構造を作製する技術を開発した。具体的には，フォトレジストとアルミナ薄膜からなる二重マスクを作製し，電解エッチング法で，階段状の形状の作製に成功した。本法は，関節機能を有するフレキシブルデバイスへの応用が期待される。

3-133

ヒトのように検知可能なひずみゲージ圧電体複合集積化触覚センサの時間応答特性評価

◎耿 至鍇・水戸部龍介・安部 隆（新潟大学）・神田健介（兵庫県立大学）・寒川雅之（新潟大学）

触覚の再現技術はロボティクスや仮想現実の分野において必要とされ，今後も当該分野の発展が期待されている。本研究では，よりヒトの触覚の再現を可能にすることで，広い分野でエッジコンピューティングに有用なセンサを提案する。ヒト皮膚の時間的応答特性が異なる複数の触覚受容器を模倣するために，時間応答特性の異なる直流ひずみ抵抗素子と圧電素子を複合集積化したセンサを開発した。圧電素子の応答特性を議論するために，ランプ状荷重を印加した際の応答特性や再現性を評価し，ランプ状荷重の印加速度に対する時間応答特性も測定した。結果から，センサは異なる触覚刺激に対して高速機械学習の実現性を向上させることが可能と考えられる。