一般講演

6-001

グローバルGISの日本市場への適用（168kV）

◎高橋祐貴・川又雅史・西村隆浩・廣瀬 誠・六戸敏昭（日立製作所）

世界市場に多数の納入実績のあるグローバルスタンダードのガス絶縁開閉装置（GIS）をベースとして，軽量，低操作力などの利点を活かしながら，日本特有の要求仕様に適合する新形GISを製品化した。本稿ではその特長や検証試験について報告する。

6-002

グローバルGISの日本市場への適用（300kV）

◎中井雄輝・森川善一・廣瀬 誠・六戸敏昭（日立製作所）

世界市場での多数の納入実績を背景に，信頼性の高いグローバルスタンダードユニットを適用し日本市場の仕様に適合した新形ガス絶縁開閉装置（GIS）を製品化した。本稿では保守性に配慮した 300kV GIS の特長を報告する。

6-003

グローバルGISの日本市場への適用（550kV）

◎西谷 剛・中村一人・加藤達朗・廣瀬 誠・六戸敏昭（日立製作所）

今回，海外納入実績が多数あるグローバルスタンダードのユニットを適用しつつ JEC 規格に準拠した新形 550kV ガス絶縁開閉装置（GIS）を製品化した。グローバルスタンダードのユニットを適用するにあたり各機器における性能検証試験を実施しているが，それら試験項目全てにおいて良好な試験結果が得られており，JEC 規格を十分に満足する性能を有していることを確認している。その適用により従来GIS機種より，大幅に小形軽量化され，据付性，メンテナンス性の向上を実現することができる。

6-004

断路器のループ電流開閉試験におけるアーク電圧の過渡回復電圧への影響の検討

○白石勝彦・六戸敏昭（日立製作所）

ガス絶縁開閉装置の断路器（Disconnector:以下，DS）に関する試験内容は，国内ではJEC規格（JEC-2310-2014），国際的にはIEC規格（IEC62271-102-2018）で規定されている。IECでは2018年の改正においてアークのダンピング効果で過渡回復電圧（Transient Recovery Voltage）が低減されることから，TRVおよび過渡回復電圧上昇率（Rate of Rise of Recovery Voltage）を規定から削除した。日本においても，技術的観点から，アークがTRV に与える影響を評価しておくことは重要である。本報告では，アークがTRV及びrrrVに与える影響を評価した結果を報告する。

6-005

Numerical Investigation on Influence of O₂ Content Ratio in CO₂/O₂/C₄F₇N Gas Mixtures for Thermal Interruption

◎Aung Tat Htut・田中康則・中野裕介・石島達夫（金沢大学）

SF₆ gas used in gas circuit breakers has a very high global warming potential of 25200 and is targeted for emission reduction. Recently, CO₂/O₂/C₄F₇N mixtures have been proposed as alternative gases for SF₆ gas. This study focuses on the ratio of O₂ content to CO₂ in CO₂/O₂/C₄F₇N gas mixtures, as it significantly influences the temperature distribution of arc plasma in a decaying state, concerning the thermal interruption ability. The influence of O₂ content in the CO₂/O₂/10%C₄F₇N gas mixture on the current interruption in thermal mode was investigated by varying the delay time of artificial quasi-transient recovery voltage (TRV) application.

6-006

自然由来系CO₂/O₂消弧ガスにおけるアーク遮断過程で形成される高温ガスの耐電界特性：50%C₂F₄と10%Cu蒸気の2種蒸気混入

◎内山隼輔・横水康伸・兒玉直人（名古屋大学）・真島周也・森 正・井上 徹（東芝エネルギーシステムズ）

高電圧遮断器のアーク消弧過程では，高温ガスによって消弧室構成部品であるノズル材や電極材が溶発することがある。我々の研究では，自然由来系CO₂/O₂消弧ガスについて，C₂F₄溶発蒸気に加えてアーク接触子材料からのCu蒸気（以下，C₂F₄/Cu蒸気と記す）が混入した状態を対象として，研究を進めている。30%C₂F₄/10%Cu蒸気が混入した高温CO₂/O₂ガスでの反応生成物ひいては同ガスの耐電界特性を導出し，CuはC₂F₄からのFと結合して，特に3000 K以下ではCuFなどのフッ素化合物になり，臨界換算電界E_cr/Nに影響を与えないことを明らかにしてきた。本報告では，前述した条件よりもC₂F₄の混入量を高めた，50%C₂F₄/10%Cu蒸気が混入した高温ガスについて，熱分解・結合反応後の生成化学種を述べ，次いで，E_cr/Nを述べている。

6-007

定常CO₂/C₃H₂F₄混合ガス吹付けアークの混合率依存性の電磁熱流体数値解析

◎山越匡葵・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）

現在，ガス遮断器で消弧媒体として用いられるSF₆ガスの使用量削減を目的として，SF₆代替消弧ガスの研究が盛んに行われている。近年，CO₂を主ガスとして，少量のC₄F₇Nを混合したガスが世界の主要候補とされているが，C₄F₇NはPFAS問題から，主要供給社の1つから生産終了が発表されている。そのため，さらに様々な消弧代替ガスの可能性を探る必要がある。その候補の1つとしてGWPが4と非常に低く，さらに単体でSF₆と近い絶縁特性を持つHFO-1234yf（C₃H₂F₄）がある。本稿では，電磁熱流体数値解析により定常CO₂/C₃H₂F₄混合ガス吹付アークの2次元温度分布の混合割合依存性を検討した。その結果，C₃H₂F₄混合率が高いほど，熱的遮断性能が向上する可能性が示唆された。

6-008

浮体式洋上変電所への適用を想定したGISの傾斜・振動試験

○落合隆介・蒋 佳希・西島 剛・椎木元晴・網田芳明・岡山 仁（東芝エネルギーシステムズ）

浮体式洋上風力発電の導入に伴い，浮体式洋上変電所の検討が進められている。同変電所に設置される変電機器には，洋上特有の傾斜や振動が加わる。本報告では，浮体式洋上変電所への適用を想定し，陸上変電所にて運転実績がある168 kVガス絶縁開閉装置（GIS）に対して傾斜・振動試験を実施した。試験の結果，供試GISが本試験条件に対する耐動揺性を有するとともに，発生応力が構造解析の結果と一致することを確認した。

6-009

550kV GIS用ポリマーブッシングの劣化調査

◎小栁洋介・内村友紀・中尾政輝・笹森健次（三菱電機）・吉藤寿高・川東哲也・高木貴史（北陸電力送配電）

国内受変電設備において耐汚損性に優れるポリマーブッシングの適用が進んでおり，昨今では超高圧クラス以上の設備へも適用が拡大しているが，フィールドにおけるポリマーブッシングの経年変化に関する報告は少ない。今回，北陸電力送配電中能登変電所で18年使用した550 kVポリマーブッシングの外観状態観察，ゴム硬度，撥水性・撥水回復特性，表面汚損度（ESDD），漏れ電流，絶縁抵抗，水分透過量を測定・評価し，劣化状態の調査を行った。調査の結果，経年18年において目立った劣化兆候は認められなかったが，塵埃や藻類の付着が増加している点やゴム硬度が若干上昇している点など，経年による各種特性が得られたため，その結果について報告する。

6-010

変位によるポリマー形避雷器の耐震強度評価

○金谷和長・網田芳明・丸島 敬・齊藤暁斗・安食富和・後藤成彦・小林 純（東芝エネルギーシステムズ）

ポリマー形避雷器の耐震強度は試験時のひずみで評価されるが，測定箇所・方向の厳選や，外被の一部の剥ぎ取りが必要といった課題があった。そこでJEC-2374:2020に対応した新形器の耐震試験では，ひずみでの評価に加えて，簡易に測定が可能な，曲げ方向の変位を用いた評価手法について検討した。耐震試験時の変位を高速度カメラ映像の画像解析で算出し，曲げ試験と耐震試験でポリマー形避雷器のひずみと変位の関係を比較した結果，両試験で殆ど一致した。よってポリマー形避雷器の耐震強度は，曲げ試験の破壊時の変位を基準値とすることで，従来の破壊時のひずみを基準値とする手法と同様に，評価可能であることを確認した。

6-011

ポリマー形避雷器のポリマー材料評価

◎野中強也・小松龍矢・高田雅之（明電舎）

避雷器では，磁器がい管を使用した磁器がいし形避雷器から，耐震，耐汚損性能が期待されているポリマー形避雷器が採用されることが多くなっている。特に，電気協同研究会においてポリマーがい管の試験方法が提案され，避雷器規格であるJEC-2374においてもポリマー形避雷器が新たに対象とされたことにより，この流れは加速していくと考えられる。今回，JEC-2374：2020に新たに規定されたポリマー形避雷器の試験のうち，ポリマー材料に関わる項目について新品でのデータを取得したので報告する。試験内容は，紫外線による材料の劣化や汚損に関わる撥水性を測るものなどであり，本検証によって避雷器に用いられるポリマーの材料特性を得ることができた。

6-012

送電用避雷装置の累積処理エネルギーによる状態把握に向けた検討

○宮城 吏・新開裕行・中根龍一（電力中央研究所）

送電用避雷装置（以降，避雷装置）は，架空送電線の雷事故を防止するために適用が進んでいる。しかし，雷撃を処理することで，避雷装置が故障する場合があるため，避雷装置の状態把握は重要な課題である。そこで本稿では，避雷装置の累積処理エネルギーによる状態を把握することを目的として，避雷装置への繰り返し雷撃を模擬したインパルス電流の繰り返し印加実験を行った。これにより，1回当りの処理エネルギー（E）と避雷装置が故障に至るまでに処理した累積処理エネルギー（K）を調べた。その結果，Eの大きさによってKは異なり，Eが大きいほど，Kは小さくなる傾向があることが分かった。

6-013

合成空気中における磁気アーク駆動遮断方式断路器の開発

◎鍋倉航平・中内慎一朗・森 剛（三菱電機）

欧州ではFガス規制の改定が進められており，SF₆代替開閉器の開発が求められている。今回，合成空気中における永久磁石を用いた磁気アーク駆動遮断方式の断路器の開発を行い，その性能検証を実施したので報告する。試験器の封入ガスは合成空気（N₂:80 %，O₂:20 %）を用い0.7 MPa.gとし，電動操作装置を用いて低速での遮断にて性能検証を行った。ループ電流開閉試験を遮断電流1600 A,回復電圧100 Vにて実施した結果，遮断時アーク時間が安定した範囲内であり，コンタクト損耗が軽微である事を確認した。これにより，磁気アーク駆動方式を用いる事により合成空気中においてコンタクト構造の簡素化および断路器の低操作力化を図ることが可能との見通しを得た。

6-014

CO2/O2混合ガスGISのガス気密性能評価

◎大西智哉・田村珠美・松本純平・小池 徹・加藤紀光・内井敏之（東芝エネルギーシステムズ）

東芝エネルギーシステムズでは，自然由来系ガスを絶縁媒体としたGISを開発しており，その中でCO₂/O₂混合ガス（O₂を30 %含有）を採用したGIS（CO₂/O₂－GIS）に適用するガスシール材の評価を進めている。O₂を多く含む絶縁ガスの場合，ガス気密部のシール材の酸化劣化とガス透過が懸念される。CO₂/O₂－GISへ適用予定のシール材であるフッ素ゴム（FKM）製Oリングのシール材寿命とGISの実運用を想定したガス透過量を評価した。FKM製Oリングは，シール材寿命及びGISの実運用を想定したガス透過量ともに，従来のSF₆－GISとほぼ同様に運用できることを確認した。

6-015

直流GIS/GIL用σ-FGM絶縁スペーサの乾燥空気中におけるフラッシオーバ特性

◎杉本遼次・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

筆者らは直流ガス絶縁開閉装置や送電線路（DC-GIS/GIL）のコンパクト化や地球温暖化抑制を目的として，絶縁スペーサへの導電率傾斜機能材料（σ-FGM）の適用と実用化を目指している。これまでにも，DC-GISスペーサへのσ-FGMの適用効果を検証してきた。今回，SF₆代替ガスの一つである乾燥空気中におけるσ-FGMの適用効果を実験的に検証した。その結果，σ-FGMスペーサ（U5-0-5）および σ-FGMスペーサ（U10-5-10）の放電開始電圧は，Uniformスペーサの放電開始電圧より最大5.4 %および8.8 %向上することを実験的に検証した。

6-016

高圧Dry Airの準平等電界下での雷および開閉過電圧に対する絶縁破壊特性の実験的評価

○中臺洋史・坪井敏宏（東京電力ホールディングス）・中村圭祐（東京電力パワーグリッド）

ガス絶縁開閉装置の多くに使用されているSF6 ガスに代替ガス機器導入にあたりSF₆で成立していた試験電圧の考え方がを変える必要がないか検証する必要がある。本報告は代替ガス候補の一つであるDry Air を対象に高圧力下での電界利用率0.45 の準平等電界下で標準雷過電圧から開閉過電圧への換算に着目し実験的に評価した結果の報告する。

6-017

ドライエア中アーク消弧過程への高分子分解蒸気混入下における反応生成物および耐電界特性 -30%CH₂O混入-

◎山本伊織・横水康伸・兒玉直人・内山隼輔（名古屋大学）・江戸貴広（三菱電機）

電力機器の分野では，SF₆代替ガスとして，CO₂ガスあるいはN₂/O₂混合ガスに，高い絶縁耐力を持つC5-FKなどを添加することが検討されてきた。我々の研究プロジェクトでは，遮断器・断路器でのアーク消弧過程で形成される高温ガスを対象とし，第1フェーズでは，HFO-1336mzz（E）（化学式 C₄H₂F₆）などを添加した消弧ガスを検討してきた。本研究の第2フェーズでは，HFO系ガスのような非自然系ガスを無混合とする消弧ガス，すなわち自然由来ドライエアを消弧ガスとし，高分子材からの溶発蒸気が混入した高温ドライエアを検討している。本稿では，高分子材としてPOM（化学式（CH₂O）_n）を取り上げ，温度3000~300KにおけるCH₂O分解蒸気が混入した高温ドライエアでの反応生成物および耐電界特性を述べる。

6-018

高気圧乾燥空気中のトリプルジャンクションを起点とする沿面放電特性 ―電極表面粗さの影響―

◎田中禎也・日髙邦彦（東京電機大学）・梅本貴弘・佐藤正寛・熊田亜紀子（東京大学）・髙野 翔・早瀬悠二・山城啓輔（富士電機）

ガス絶縁開閉装置の絶縁媒体として，SF₆が用いられてきたが，近年では環境負荷が小さい乾燥空気が代替ガスとして注目されている。乾燥空気下に真空遮断器を設置する場合，金属部，固体絶縁物，乾燥空気の三重点が弱点となり，沿面放電が生じることが示唆されている。本研究では，より実器に近い形態として，円筒セラミックス沿面の高気圧乾燥空気下における沿面放電特性の測定を行い，特に電極部の表面粗さの違いに着目し，評価を行った。粗さが異なる電極2種類の気圧に対する，部分放電電圧（PDIV），絶縁破壊電圧（FOV）の測定をそれぞれ行った。結果として，表面が粗い電極がPDIV，FOVの電圧値が低くなり，FOVにおける飽和傾向がより低いガス圧領域で始まったことが測定できた。

6-019

下段コイル電力を変更したタンデム誘導熱プラズマ生成の高温ガスの絶縁破壊電圧測定と温度推定

◎石之腰昂弥・岡野里桜・中野裕介・田中康規・石島達夫（金沢大学）

SF₆ガス代替遮断器の開発のための重要事項として，代替ガスの高温状態での電気絶縁特性を明らかにすることがある。筆者らは，実験的評価手法として誘導熱プラズマ（ICTP）による高温ガス生成法を検討している。本手法では，タンデム型誘導熱プラズマ装置を用いて絶縁ガスを安定に加熱し，下部チャンバに高温ガスを導入する。その高温ガスに電極ギャップを導入し電圧を印加することで，高温絶縁ガス中の絶縁破壊を模擬する。本報では，電極間におけるガス温度を変更するために下段コイルの入力電力を変更し，絶縁破壊電圧を測定した。さらに分光観測を行い，ボルツマンプロット法を用いてAr原子の励起温度を推定した。

6-020

真空中インパルス絶縁破壊時における陽極表面からの金属粒子の飛散

北 直樹・◎上野楓真・小島寛樹（名古屋大学）・福田英昭・山村健太（明電舎）・早川直樹（名古屋大学）

真空中スパークコンディショニング過程において，陽極材料が陰極表面に付着し，その材料付着がコンディショニングの飽和を決定づけることが示唆されている。本稿では，ギャップ長の異なる3条件でコンディショニング実験を行い，陽極から飛散する金属粒子の個数密度について検討した。ただし，各実験で放電電荷量が同程度になるように回路条件を設定した。陽極表面から飛散する単位立体角あたりの金属粒子の個数密度を陰極先端の半径方向に対して取得した結果，各ギャップ長における金属粒子の個数密度の半径方向分布が同じオーダーであることが確認された。これは，陽極から溶融・飛散する金属粒子の個数密度が放電電荷量によって決定されることを意味するものと考えられる。

6-021

真空中高周波交流コンディショニングの絶縁耐力向上効果における電極材料依存性

◎小名木良太・小島寛樹（名古屋大学）・飯塚伸介・小林将人（日立産機システム）・早川直樹（名古屋大学）

真空中高周波交流コンディショニングにおいて，半周期内に複数回絶縁破壊（BD）するような多重BDが発生する。多重BDは直前のBDにより誘起され，コンディショニングによる微小突起溶融・耐圧向上に寄与せず，逆に悪影響を及ぼすことが考えられる。本稿では，Cu-Cuおよび SUS-SUS電極系において真空中高周波交流コンディショニングの多重BD抑制および耐圧向上効果を測定した。その結果，Cu-Cu電極系においては高周波化による到達耐圧の向上効果がみられた一方，SUS-SUS電極系においては向上効果がみられないことが明らかとなった。これは，熱伝導率・導電率が高いCuのような多重BDの悪影響が大きい電極系における交流コンディショニングの高周波化による向上効果が大きいことが考えられる。

6-022

真空沿面フラッシオーバのインパルスコンディショニングに対するACプレコンディショニング処理の影響

◎木村旺介・中野裕介・田中康規・石島達夫（金沢大学）・仲野秀作・小林将人（日立産機システム）

真空遮断器の性能向上を図るためには，真空中での表面放電メカニズムを理解し，その発生を抑制する必要がある。絶縁物表面における沿面放電は，2次電子の連鎖反応によって発生する。本報では，真空インタラプタを模した円筒型試料に対しACプレコンディショニング処理を施したサンプルと未処理のサンプルに対し，負極性標準雷インパルス電圧印加時の電流波形を測定し，ACプレコンディショニングがフラッシオーバの前駆電流波形およびフラッシオーバ電圧（FOV）に与える影響を検討した。その結果，フラッシオーバ前駆電流の流れ方に差が生じた。これはACプレコンディショニングによって電極表面の微小突起が減少し平滑化が行われ，初期電子の発生が抑制されたためと考えられる。

6-023

真空アーク消弧後の電極間へのインパルス電圧印加による極間絶縁回復特性の基礎検討

◎羽田達哉・香水大亮・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）・浅沼 岳・恩地俊行・山本真司（富士電機）

電力用遮断器は大電流を遮断し，設備を保護する機器である。中でも真空遮断器は高真空で電極を開極することで，電極から生じる金属蒸気を拡散させ真空アークを消弧する。筆者らは真空アーク減衰時における金属蒸気拡散による電極間の絶縁回復特性を実験的に測定してきた。本報では，真空アーク減衰後の遅延時間を変更し，過渡回復電圧を模擬したインパルス電圧を印加・比較することで絶縁回復特性の検討を行った。その結果，電極間の絶縁が完全に回復するには約2 ms程度を要することが分かった。これは真空アーク減衰後の数百 µsにわたって電極間に電子やイオンが残留し電極間の導電性が保たれ，電極間がほぼ短絡状態となっていたためと考えられる。

6-024

高電圧真空インタラプタにおける縦磁界電極のアーク挙動分析

◎西尾 悠・道念大樹・川田将司・三木真一（三菱電機）

真空遮断器では，アークに電流と平行な磁界を印加しアークを電極面全体に拡散させる縦磁界方式が広く用いられている。近年，Fガス規制に伴い真空遮断器の大容量化が要求されており，電極間の長ギャップ化と遮断電流の大電流化が必要である。本報告では，長ギャップ・大電流アークを観測可能な試験系を構築し，アークの画像分析結果と過渡磁界解析を比較することで，アークの挙動と拡散に必要な縦磁界を調査した。その結果，渦電流の効果により電流に対し縦磁界の位相が遅れるため，通電直後は集中アークが持続し，その後縦磁界の増加に伴い拡散に至ることを明らかにした。また拡散に必要な縦磁界強度は，ギャップや電流に依らないことを示した。

6-025

機械学習を用いた真空アーク陰極点の検出

宗像 敬（東京工業高等専門学校）・石原のぞみ・岩尾 徹（東京都市大学）・◎根本雄介（東京工業高等専門学校）

真空アークに関する製品の技術向上のため，真空アークの数値解析が報告されている。また，ハイスピードビデオカメラと分光器を用いて，真空アーク陰極点の逆行運動の解明を行っている。しかし，従来の数値解析や実験計測において，真空アーク陰極点の移動要因の解明は難しい。このため，人工知能に関する技術を用いれば，真空アーク陰極点の検出や移動予想モデルが構築できるという仮説を立てた。以上より本研究では，機械学習を用いた真空アーク陰極点の検出を行った。結果として，陰極点の学習モデルの構築ができ，「位置」と「陰極点らしさ」の定量化が可能になった。

6-026

240kVタンク形VCBの開発

○芹澤慎晶・縣 祐介・菊地徳明・山本秀治・鶴田豊久・長竹和浩（明電舎）

真空遮断器はその特徴である保守点検の容易性および電流遮断時には分解ガスを発生させないため，クリーンであることなどから高電圧・大容量化を含めた適用拡大が強く望まれている。明電舎ではこれまでに204kVタンク形VCBを開発し，その期待に応えてきたが，今回更なる高電圧に対応した240kVタンク形VCBを開発した。本器は2圧式および2点切りVIを採用し，2サイクル動作および240kV定格の耐電圧性能を実現した。JECに規定された一連の形式試験を実施し良好な結果を得た。また本器ではJEC-2300（2020）にて参考試験に追加された変圧器通過故障遮断試験（TLF）を実施した。過渡回復電圧の上昇率が高く，遮断器にとって過酷な責務であるTLF遮断試験にて良好な結果を確認した。

6-027

気中高周波アークの基礎的研究

◎森 俊樹・犬飼 響・腰塚 正・日髙邦彦（東京電機大学）

ケーブル系統などによく導入されているシャントリアクトルは，需要によって一日に多数回開閉される。開閉時，対地の静電容量とリアクトルで共振し，高周波アークが発生することがある。高周波アークが再点弧すると，多重再発弧や電圧エスカレーション，そして高電圧サージと様々な影響を及ぼす原因となる。ガス中アークでは一般に商用周波においてアーク電圧‐電流特性は負特性を示し，高周波においては正特性を示すことが知られている[2]。しかし，その実状について報告された例はまだ少ない。本研究では，周波数を112 kHz，43 kHzで測定し，アーク電圧‐電流特性の図から比較を行った。また，アーク様相の図から，残留プラズマについても考察を行った。

6-028

モデルDC限流ヒューズ内で生じる高温Cu/SiO₂混合蒸気アークにおける抵抗率の過渡推移–光学観測に基づく推定–

◎中村哉太・兒玉直人・竹中 湧・横水康伸・岩田幹正（名古屋大学）

DC限流ヒューズの性能向上には，大電流通電時にCuエレメントの溶断に伴って生じるCuアークの抵抗r_arcを高めることが重要である。筆者らはこれまでに，アーク消弧材として，SiO₂に加えてsilicone材を併用することで，r_arcが上昇することを見出してきた。ここでの r_arc上昇要因として，Cu/SiO₂混合蒸気アークにおける抵抗率ρ_arcの上昇が考えられた。更なる検討のためには，実験時におけるρ_arcの過渡推移を定量的に推定可能な方法を考案する必要がある。そこで本報告では，モデル限流ヒューズ内で生じる Cu/SiO₂混合蒸気アークにおけるr_arcの過渡推移を測定するとともに高速度カメラによって撮影することで，観測画像からアーク径d_arcを計測した。次いで，r_arcおよびd_arcの測定結果から，消弧過程におけるアーク抵抗率ρ_arcを推定した。

6-029

Verification of Fuse-Semiconductor Commutation Based on Online Estimation of Fuse Current-Limiting Status

◎YECHENG LIU・佐々木怜音・大西 亘・古関隆章（東京大学）・全 俊豪（東京工業大学）・山納 康・稲田優貴（埼玉大学）

Fuses offer high overcurrent limiting capability and low conduction losses, but also face DC disconnection challenges in high-voltage environments, as well as limitations associated with single-use applications. To address these shortcomings, especially in high-voltage applications, this study develops a real-time current transfer optimization algorithm based on existing fuse-semiconductor DC circuit breakers. Based on the current limiting performance of fuses at different voltage currents, the specific process of internal fuse failure is derived from the analysis. Our approach employs a successive least squares technique for continuous monitoring and adaptive control of current transfer based on the voltage and current profiles of the fuse. Under the condition of 1.5kV 5kA, we have successfully realized the interruption of a fuse with explosion risk, thus greatly improving the operational reliability of circuit breakers.

6-030

Cu蒸気アークへのsilicone樹脂分解蒸気の混合によるアーク径の高速収縮—塗布量5mg条件—

◎竹中 湧・兒玉直人・横水康伸・岩田幹正（名古屋大学）

DC限流ヒューズの遮断性能向上には，銅（Cu）製エレメントの溶断によって生じるCu蒸気アークの抵抗r_colを高めることが重要である。筆者らは，エレメントへ silicone 樹脂を塗布することで，silicone分解蒸気の珪砂蒸気への混合に伴う電気抵抗率ρ_Rの上昇により，r_colが高まることを見出してきた。一方，r_colは，ρ_Rのみならずアーク径d_arcにも影響される。そこで本報では，silicone樹脂を塗布したエレメントから生じるCuアークのr_col過渡推移を測定した。加えて，消弧期間におけるアークを高速度カメラで撮影し，画像からd_arcを計測した。以上から，Cu蒸気アークに対するsilicone蒸気の混合により，アーク径がより速く縮小することを示す。

6-031

高温空気への多量の銅蒸気混入時における換算衝突電離係数 -圧力0.1MPa, 温度3000K-

◎兒玉直人・横水康伸・五十嵐拓哉・岩田幹正（名古屋大学）

配電設備の故障時にアークによって多量の金属蒸気が生じた場合を想定し，圧力が0.1 MPaのN₂/O₂に対してCu蒸気が混入した際の耐電界特性を計算した。その結果，Cu蒸気混入率X_Cu が1%の場合，換算衝突電離係数α/Nが上昇し，臨界換算電界E_cr/Nが著しく低下した。この原因として，主たる電離反応源であるCu原子のモル分率が上昇したことが考えられる。一方で，X_Cuが20%と多量の場合，α/Nが著しく低下し，N₂/O₂以上にE_cr/Nも上昇した。この原因として，電子とCu原子間の電子励起衝突によって電子のエネルギー損失が増加し，Cuの電離電圧以上のエネルギーを有する電子の割合が減少した影響が考えられる。

6-032

接点近傍絶縁板配置がアーク電圧に与える影響

◎河原和馬・堀田克輝・稲口 隆（三菱電機）

低圧遮断器の小型化・高遮断容量化のためには速やかにアーク電圧を高め，限流することが重要である。今回は接点近傍の絶縁板の配置がアーク電圧に与える影響について調査した。接点と絶縁板終端部の距離を一定に絶縁板先端部の間隔が4.8, 7.0, 9.3 mmになるように絶縁板を配置すると，アーク電圧は絶縁板先端部の間隔が狭まるにつれ高くなり最大16%上昇した。アークはローレンツ力によりグリッド方向の絶縁板に衝突し，その絶縁板による細隙・アブレーション効果によってアーク電圧が高くなったと考えられる。以上より接点と絶縁板の距離を維持しつつアーク電圧を高電圧化する手法として，アーク駆動先の幅を狭くする樹脂配置が有効であることを確認した。

6-033

液中アークの圧力上昇とアーク抵抗の関係

◎山澤啓斗・河田正平・西村天馬・李 寧・新海 健（東京工科大学）

HVDC遮断器向けに液中アークの限流効果を研究している。これまでに水中アークの限流効果を検証してきた。今回は限流効果向上の期待できる圧力上昇の実験結果について報告する。水中アークチャンバー内の空気層の体積を変えて，圧力上昇を制御してアーク抵抗を測定した。空気層体積が4㏄で圧力が42barまで上昇し，17㏄で5bar，44㏄でほぼ0barであった。4ccは気泡とアーク領域の膨張を，密閉容器上部の空気層が吸収しきれず，水も体積変化（ひずみ）が発生し，水中で連続的かつ単調増加の圧力上昇が発生すると考えられ，圧力上昇が高いとアーク抵抗も上昇する結果が得られた。

6-034

SiC-MOSFETを用いた低電圧DC遮断プロセスにおける接合部での発生熱と温度上昇に関する考察

◎長谷川海渡・横水康伸・岩田幹正・兒玉直人（名古屋大学）

SiC系MOSFET半導体のスイッチング機能を用いた低電圧DC遮断方法として，電気抵抗による限流機能を具備したモデル遮断器の回路構成・仕様を検討してきた。さらに，同モデル遮断器を試作し，DC電源電圧120V下での電流遮断および過渡的発生電圧のプロセスを提示し，さらに接合部温度上昇も明らかにしてきた。筆者らは，現在200–400Vにおける同モデル遮断器によるDC限流遮断とその測定を考えている。これまで，限流抵抗を2Ωに設定してDC遮断実験を行い，DC限流遮断および接合部温度上昇プロセスを明らかにしてきた。本報告では，DC電源電圧200Vの条件で限流抵抗を5Ωおよび10Ωに設定し，限流抵抗による発生熱抑制および接合部温度緩和について述べている。

6-035

ハイブリッド直流遮断器のアーク電圧特性

◎水沼舜裕・新海 健・李 寧（東京工科大学）

近年，直流配電や直流マイクログリッドの導入が期待されており，半導体スイッチを活用した直流遮断器の研究が行われている。これらの研究では，機械接点を持たない直流遮断器，自動でトリガーする直流遮断器，機械接点を持ちながらアークレスを実現する遮断器などが提案されている。本研究では，通電損失が少なく，比較的制御の容易な半導体と機械スイッチのアーク電圧を用いたハイブリッド型の直流遮断器を対象としている。ハイブリッド型では，速やかにアーク電圧を上昇させることで早い転流を促すことができ，遮断時間を短縮することにつながる。そのため，種々の雰囲気媒体を用いてアーク電圧の基礎特性の測定を行った。

6-036

Dry-air封入遮断器の高周波電流遮断性能の調査

◎稲垣卓志・赤星卓勇・中村泰規・常世田 翔・亀井健次（三菱電機）

高電圧直流送電系統に適用される直流遮断器（DCCB）は，数10 kAの直流事故電流を遮断する主遮断部と事故電流を遮断した後に流れる数100 Hz，数100 Aの減衰性振動電流を遮断する残留電流開閉器（RCS）から構成される。このRCSには，減衰性振動電流（残留電流）の速やかな遮断によって交流系と同様の高速度再閉路を実現可能とすることと，雷サージ等の過電圧に耐えることが要求される。このようなRCSへの要求に対しては，交流系に適用されてきたSF6ガス遮断器（GCB）であれば，上記性能を満たしうるが，今後のSF6ガスレス化に向けては，代替ガス封入開閉器の適用が望ましいと考える。本稿においては，Dry-airを封入した開閉器の適用を検討すべく，RCSの遮断責務を解析し，その責務を考慮して，交流系の245 kV級パッファ形GCBにDry-airを封入した供試器を用いて残留電流を模擬した遮断試験を行った結果を報告する。

6-037

AC電流密度ベクトルの解析による円筒導体の電気抵抗の導出--電力DC機器のACによる代替試験の開発に向けて--

◎重村優介・横水康伸・岩田幹正・兒玉直人（名古屋大学）

今後の電力系統では，高電圧DC開閉機器の新規設置が予想され，性能検証を行う必要があるが，規格がまだ制定されていない。また，性能検証を行うための高電圧・大電流DC試験設備が国内外で不足している。これらのことから，IEC規格においては，DCではなくACによる代替試験を行うことが検討されている。本報告では，開閉機器の導体形状として使用されることがある円筒を対象としてAC電流密度ベクトルの解析による電気抵抗の導出を行った。外径60mmの銅円筒導体におけるAC通電時（60Hz）の電流密度は，径方向に分布を持つとともに，導体の中心に近づくにつれて全電流とは逆向きに流れる傾向が見られた。また，導体形状が円柱に近づくに伴い，AC・DC通電時の電気抵抗の差は大きくなった。

6-038

異なる電圧条件における低電圧DC短ギャップアーク検出のためのWavelet解析

◎西山直希・岩田幹正・横水康伸・兒玉直人（名古屋大学）・酒井智康・塚原正浩・宮本淳史（日東工業）

2050年カーボンニュートラルを目指し，再生可能エネルギーを用いた発電の普及が進む中で，DC技術の開発が期待される。一方で，DCはACに比べて遮断が困難であり，アークが継続しやすい。そのためDC系統内で負荷に対し直列に発生するDCシリーズアークの検出を行う必要がある。本報告では，電源電圧100V，200V，300V，設定電流15A条件のDCシリーズアーク発生実験より得られた電流に対して電極間距離が5mmとなる時刻までWavelet変換した後に，電極間距離に対する振幅の極大値の和を算出した。その結果，アーク発生前後で差が現れた。この特徴を用いることにより実際のDC設備で発生する短ギャップアークの検出が可能になると考えられる。

6-039

ハイブリッド直流遮断器の転流回路における半導体スイッチ保護手法の検討

◎桶川雄生・竜 虎・全 俊豪・竹内 希（東京工業大学）・大西 亘（東京大学）・中野裕介（金沢大学）・兒玉直人（名古屋大学）・山納 康・稲田優貴（埼玉大学）

近年，従来の交流送電と比較して，伝送時の損失が少ない直流送電が注目されており，それに伴って直流遮断器の需要も高まっている。本研究で扱うハイブリッド直流遮断器を高電圧・大電流に対応するには，転流回路中の半導体スイッチ（IGBT）を複数直列・並列に接続する必要がある。そこで，より低コストのハイブリッドDCCBを実現するために，転流回路中に，IGBTと直列に真空コンタクタ（VC）を挿入した。VCで発生するアーク電圧により，IGBTにかかる電圧が低減することが期待されたが，遮断の瞬間にIGBTへ大きなスパイク電圧がかかった。つづいてVC-IGBTと並列にキャパシタを挿入すると，遮断の瞬間の電圧がVCにかかるようになり，IGBTにかかるスパイク電圧は4分の1程度に低減された。

6-040

低電圧DC限流遮断プロセスにおけるアーク抵抗増加の出現域と高分子材配置による早期化

◎清水翔太・横水康伸・兒玉直人・岩田幹正・内山隼輔（名古屋大学）・酒井智康・塚原正浩・宮本淳史（日東工業）

低電圧直流給配電システムの利用は，インターネットデータセンタなどの需要家において広がっている。低電圧直流給配電システムでは，配線用遮断器が設置され，アーク電圧の上昇によって DC を限流し続け，ひいては DC を遮断することが求められる。筆者らは，実験用アーク弧装置を用いた DC 限流遮断実験を行い，アーク電圧の上昇要因を分析するとともに，アーク消弧時間の短縮を検討している。本報告では，高分子材配置下における DC 限流遮断プロセスにおけるアーク抵抗の時間変化と電極間距離の伸長とからアーク電圧の上昇過程を考察するとともに，DC アーク消弧時間を述べている。

6-041

ドライエア絶縁GIS断路器開閉サージによるセンサ電極出力

○前川俊浩・佐々木真人・鬼頭 豊（東京電力ホールディングス）・村北慶輔・中村圭祐・横畠系典（東京電力パワーグリッド）

真空遮断器を適用したドライエア絶縁GISの断路器開閉サージに伴う過電圧倍率や断路器極間電圧と真空度監視用に配置したセンサ電極の関係を実フィールドにて測定した。本測定データを用いてサージ電圧での誤動作のない範囲で真空度監視の感度向上を検討していく。

6-042

ドライエア絶縁GISの断路器開閉サージ測定と解析評価

◎佐々木真大・青木康二郎・前川俊浩（東京電力ホールディングス）・村北慶輔・中村圭佑・横畠系典（東京電力パワーグリッド）

2023年2月に，東京電力パワーグリッドでは地球温暖化防止に向け，高いGWP 値を有するSF6 ガスにかわりドライエア絶縁GIS を導入した。ドライエアはSF6 ガスに比べ絶縁性能が低いことから，SF6 ガス絶縁GISより大型になる。運転時に発生する各種過電圧レベルを見極め，適切な絶縁仕様を規定するための解析精度向上を目的とし，ドライエア絶縁GISの断路器開閉サージの実測，伝搬サージの減衰を模擬した電力系統瞬時値解析プログラム（XTAP）解析を実施し，過電圧レベル推定精度の確認を実施した。解析モデルの波高値と周波数特性については十分な精度が得られたが，電圧上昇については厳しい立ち上がりとなった。今後はさらなる解析モデルを精緻化を目指す。

6-043

500kV気中絶縁変電所におけるGIS用部分放電検出センサの感度特性

○青木康二郎・鬼頭 豊・前川俊浩（東京電力ホールディングス）・横畠系典・石川 渉（東京電力パワーグリッド）・三浦敬史・庄野篤司・丸山志郎（東芝エネルギーシステムズ）

ガス絶縁開閉装置（GIS）の絶縁診断手法として，部分放電により発生する電磁波を検出する診断装置が実用化されている。GIS のUHF 法による部分放電診断における感度検証について，実験室とオンサイト2 段階での詳細な手順が示されているが，今回，フィールド展開に向けて，実変電所のフィールドノイズがある状況で部分放電測定が実施可能か検証するため，500kV 気中絶縁変電所に設置した500kV GIS において部分放電検出センサの感度特性を測定したので報告する。

6-044

音を用いた開閉器の状態監視手法の開発

◎藤原海渡・井上雄仁・榎本 淳（東海旅客鉄道）

Along th route of the Chuo Shinkansen, a large number of contactors are installed, which requires a significant amount of effort for maintenance. In order to reduce maintenance costs, a condition monitoring method has been developed to diagnose faults from the operation sound. This paper compared the accuracy of MFCC and Mel spectrogram, which are commonly used as acoustic features. It was confirmed that using Mel spectrogram enables more accurate anomaly detection.

6-045

多数回開閉試験における接点消耗推定手法の実機電磁接触器への適用

◎堀田克輝・佐藤統隆・増本泰知・小林弘樹・稲口 隆（三菱電機）

低圧開閉器は開閉時のアークにより接点が消耗する。累積接点消耗量は開閉器寿命を決める重要な要素であるが，多数回開閉時の接点消耗現象は十分明らかになっていない。筆者らはこれまで多数回開閉における接点消耗現象を明らかにし，累積接点消耗量を計算する手法を開発してきた。今回は開発した手法を定格電流125Aクラスの実機電磁接触器に適用し，多数回開閉による接点消耗推移の予測結果と試験結果とを比較した。その結果，多数回開閉における接点の消耗により接点の過剰押し込み量は減少し，開閉毎の接点消耗量が増加するが，この特性を考慮することで実機の電磁接触器において接点消耗推移を予測できることを明らかにした。

6-046

油入ブッシング絶縁診断のための面電流センサの最適配置の実験的検討

◎豊田志苑・宮川瑞輝・匹田政幸・小迫雅裕（九州工業大学）・鬼頭 豊・前川俊浩・青木康二郎（東京電力ホールディングス）

本研究では，部分放電（partial discharge: PD）測定によるオンライン絶縁診断技術の確立を目指し，電磁波や過渡接地電圧の信号検出を検討している。本稿では，研修用の油無し変圧器を対象に，PD模擬信号をブッシングに注入した際の変圧器タンク外壁面に取り付けた面電流センサの検出信号の特徴を調査し，センサの最適配置を検討したので報告する。測定結果から複数の面電流センサの最適配置は，ブッシングの根元付近に取り付け，信号到達時間差に着目することで，PDが発生しているブッシングを特定できる可能性があり，信号強度のみのでは誤判定を招く可能性もあることが明らかとなった。

6-047

ループ配線型屋外直流給電システムにおける短絡保護方法の検討

○花岡直樹・樋口裕二・田中 徹（日本電信電話）

半導体遮断器を用いてループ配線型屋外直流給電システムにおいて短絡点を選択遮断する手法について検討した結果を報告する。

6-048

ANNによる翌日最大電力需要予測結果のeXplainable AIによる説明の基礎検討

◎田中嵩人・尹 家輝・福山良和（明治大学）・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

電力会社は，電力供給には適切な供給予備力の確保が必要であり，このためには，翌日最大電力需要予測を高精度に予測することが必須である。これまで翌日最大電力需要予測にはArtificial Neural Network（以下，ANN）が適用されてきた。しかし，ANNは，中身がブラックボックスとなっており，近年，開発が進んでいるeXplainable Artificial Intelligence（以下，XAI）技術をANNを用いた翌日最大電力予測に適用することにより説明機能を付加することが期待できる。本論文では，MCCを用いたANNによる翌日最大電力予測の予測値の説明のため，XAI技術の一つであるLIMEを用いた説明の有効性を検討した。説明対象データに対するLIME による偏回帰係数とANN特性を比較し，LIMEによる説明が可能であることが確認できた。

6-049

再エネの出力変動性を考慮できる確率的LODF解析手法を用いた送電線事故時の系統状態解析

◎坂本大空・金崎 翼・岩村一昭・中西要祐（早稲田大学）・服部 昇・春日 衛（東京電力ホールディングス）

近年，再生可能エネルギー（以下，再エネ）大量導入により電力系統の不安定化が懸念されている。本研究では，再エネ等の変動電源の変動性を考慮した電力系統の状態を高精度かつ高速に分析することができる確率潮流計算を用いた再エネの不安定さが系統に与える影響の分析，及び系統上の信頼度基準に対する逸脱量の算定を様々な観点から行う。本稿では，線路事故時の解析における潮流解析では，系統モデルの再構築などの煩雑な処理が必要なことに着目し，事故後の線路潮流配分を高速で解析することができるLODF（線路事故時の潮流分配係数）と確率潮流計算を組み合わせて解析を行うことにより，線路故障時の系統信頼度解析を行っている。

6-050

再エネ変動を考慮した調整電源の位置検討及び発電配分の検討

◎水口 祥・前川元志・中西要祐・岩村一昭（早稲田大学）・服部 昇・春日 衛（東京電力ホールディングス）

カーボンニュートラル実現に向けて，再生可能エネルギーの利用・導入が進むことが考えられる。再エネの出力は変動するため，大規模な再エネ電源が連系されると既存系統内の送電線の線路潮流に影響を及ぼし，系統運用が困難になることが想定される。そのため，線路潮流への影響を解析する必要がある。そこで，確率潮流計算を用いることによって不確実性を考慮し，線路潮流値だけでなく線路潮流の変動分布として表すことができる。現在，系統混雑が生じた際には調整電源として設定される発電機を出力抑制することで需給バランスを維持している。今後，再エネ大量導入に向けて，変動に対する調整電源の選定の必要がある。こうした背景から，本稿では再エネ変動を考慮した調整電源の位置検討及び発電配分の検討を行う。

6-051

最適潮流計算を活用したN-1電制適用電源の選定手法

◎新井翔斗・小出 明・井上俊雄（富山大学）

近年，カーボンニュートラル実現に向けた再エネ電源の大量導入が進められていて，今後も継続すると予想される。一方，再エネ電源の導入拡大により送電線の運用容量不足が課題となっている。この課題解決のために日本版コネクト＆マネージが取り組まれており，その一つにN-1電制がある。N-1電制では本来発電する発電機を解列するため発電事業者が不利益を被ることになる。よってN-1電制に関わるオペレーション費用を補填する必要があるが費用が増加すると，託送料金による負担が増加するため，費用の抑制が必要となる。本稿では，N-1電制時のオペレーション費用抑制を目的とする最適潮流計算を活用したN-1電制適用電源の選定手法を提案する。

6-052

信頼度制約付き発電機起動停止計画と交流法最適潮流計算の連携による将来系統の解析

◎齊藤朋世・梅澤春樹（構造計画研究所）・竹内知哉（千葉工業大学）・福留 潔（J-POWERビジネスサービス）・宇田川佑介（東京大学,構造計画研究所）・João Gari da Silva Fonseca Junior・瀬川周平・荻本和彦（東京大学）

日本では再生可能エネルギーの大量導入が進み，将来の電力系統を想定した日本版コネクト&マネージシステムの検討が進められている。筆者らは，送電線混雑と再エネ予測誤差を考慮できる信頼度制約付き発電機起動停止計画（SCUC）とタップ比可変の変圧器を考慮可能な最適潮流計算（ACOPF）モデルを開発し，SCUCとACOPFの連携手法を検討してきた。本報では，連携の手法および将来の東京エリア上位2電圧系統を想定したモデルによる解析について報告する。

6-053

CPAT to XTAP変換ツールの構築

○宜保直樹・菊間俊明・福井将吾（電力中央研究所）・渡辺 格・谷本大樹・竹村昌彦（電力計算センター）

本稿では，電気事業における様々な業務の効率化に資するため，実効値解析プログラムであるCPAT（CRIEPI’s Power system Analysis Tools）から瞬時値解析プログラムであるXTAP（eXpanable Transient Analysis Program）に変換するツールについて報告する。

6-054

高頻度計測データに基づいた電力系統のエリア慣性の推定手法に関する基礎検討

○川村智輝・天野博之（電力中央研究所）

系統の慣性の低下により，電源脱落時等の周波数変化率（RoCoF）が増加し，周波数安定性が低下することが懸念されている。電源脱落等が発生したエリアのRoCoFは系統全体の平均的なRoCoFと比較して大きくなり，そのRoCoFは当該エリアの慣性の影響を強く受ける。また，系統分離時に単独系統となったエリアでは大きなRoCoFが発生することも懸念されている。このため，RoCoFを評価するうえでは，エリアの慣性を推定することが重要となる。そこで本稿では，PMU（Phasor Measurement Unit）等により計測される高頻度の計測データを活用した電力系統のエリア慣性の推定手法を提案するとともに，手法の有効性についてシミュレーションにより基礎的な検証を実施する。

6-055

低慣性系統における高速周波数調整力（FFR）の発動パターンの選定

◎中嶌佳賀・井上俊雄・小出 明（富山大学）

近年，再生可能エネルギーの主力電源化に伴い，太陽光発電などの静止型電源が増加し火力発電などの回転型電源が減少することで系統の慣性が低下し，最低周波数が悪化することが懸念されている。その対策の候補として，低慣性系統における最低周波数の改善ではFFRパターン指定の適用が有効である。また，慣性応答模擬と比較して求められる技術要件が簡単であるため，市場から広く調達するにはパターン指定FFRの方が望ましい。本研究では，低慣性系統における電源脱落時の最低周波数の改善において，FFRの発動パターンを指定してシミュレーションを行い，有効な調整力発動パターンの選定を行った。

6-056

長距離配電線への直列コンデンサ導入によるPV導入可能量拡大効果及び最大電圧に関する考察

◎岩田拓真・飯岡大輔（中部大学）・中津井紳司・岩田邦男（中部電力）・彦山和久（中部電力パワーグリッド）

近年，再生可能エネルギーの導入拡大とともに，太陽光発電（以下 :PV）の設置が進んでいる。しかし，長距離配電線では逆潮流する電力が増加することで，電力と電圧の特性で表される送電容量の限界に近づくことが懸念されている。筆者らは，これを解決するため直列コンデンサを配電系統に設置することを考えている本稿では直列コンデンサの配電線リアクタンスの補償率を10%としたときのPV導入可能量についてベクトル図を用いて考察した。

6-057

VOC方式GFMインバータの系統故障時の特性に関する一考察

◎渡辺和樹（中部大学/三菱重工業）・飯岡大輔（中部大学）

近年，インバータ連系電源の系統連系においてはGFM（グリッドフォーミング）と呼ばれる新たな概念が議論される。一般に高圧系統に連系するインバータには，系統事故等によって瞬時電圧低下が発生した際の運転継続性が要求される。GFMインバータにおいては，制御安定性と過電流抑制機能が故障継続中および故障除去時に確保されることが重要となる。本稿では，GFMの一方式であるVOC（Virtual Oscillator Control）インバータを対象に，系統故障時の基礎的特性を論じる。VOCは，系統周波数との同期を非線形自励振動子の模擬により実現するパッシブな制御方式である。過電流抑制機能を実装した上で，系統故障中の動特性をシミュレーションによって分析した。

6-058

沖縄本島系統のブラックスタート時に発生する過電圧の解析

○林 大輔・米澤力道（電力中央研究所）・金子敏章・黒岩康生・島 航・大湾朝哲（沖縄電力）

沖縄本島系統では，万が一のブラックアウト発生時に備え，ブラックスタート可能な発電設備（以降，BS電源）が複数設置されている。BS電源による系統復旧（以降，BS 充電）では，全停後の速やかな復旧を目的に，特定の系統範囲を一度に充電するブロック充電を検討しており，また充電時に生じる過電圧を抑制する観点から，低い電圧から徐々に昇圧していく方式（逓昇加圧）が予定されている。本稿では，BS充電時の沖縄本島系統を瞬時値解析プログラム上で再現し，BS充電時に発生する過電圧や保護リレーの動作について，復旧範囲や変電機器の組合せ，逓昇加圧時間などを変化させて解析を行ったことから，その解析において得られた知見の一部を報告することを目的としている。解析結果より，系統用リアクトルを並入する場合，過電圧が発生することを確認した。また，逓昇加圧時間を延ばすことで，過電圧を抑制できることを確認した。

6-059

北海道2018ブラックアウトにおける発電機電圧挙動の考察

○伊与田 功（系統解析技術研究所）

北海道2018ブラックアウトにおける発電機電圧挙動について，OCCTOで公開されているデータを用いて検討した。個々の発電機の送電端電圧，有効電力，無効電力のデータを利用した。それらデータより，発電端電圧も算出して挙動を考察した。地震後も運転を継続した4台の火力発電所は，それぞれ異なる挙動を示した。そのうちの3台の挙動については，基幹系統の電圧が大幅に上昇した状況に対する応答として理解できる挙動を示した。しかし，伊達発電所2号機については，地震発生後に，発電機励磁系を制御して発電端電圧を上昇させる挙動を示したが，その目的と制御方法が理解できなかった。

6-060

無効電力供給制約下の電力系統における回帰木を用いた電圧安定性推定と特徴量選択の検討

◎宮崎理人・中村勇太・Suresh Chand Verma・青木 睦（名古屋工業大学）

近年，再エネ電源増加に伴い，同期発電機の稼働台数の減少が電力系統の電圧安定性低下が懸念されている。そこで本研究では，発電機無効電力制約下において，機械学習手法の一つである回帰木を用いて電圧安定余裕（Margin）を負荷母線ごとに推定を行った。連続型潮流計算によって，Marginを算出し，学習・テスト用のデータとした。本論文では，無効電力制約下において，定量的にMarginを高精度で推定ができることを示した。また，学習モデルの作成時の特徴量は，該当する負荷母線データと発電機の無効電力出力のデータを用いることで，PMUの設置数を最小限に抑え，推定精度を維持できることを示した。

6-061

ポテンシャルエネルギーを用いた電圧安定性及び過渡安定性評価の一検討

◎横田侑哉・石亀篤司・高山聡志（大阪公立大学）

近年の再生可能エネルギーの導入や日本の電力系統がくし型系統であることなどから，今後の日本の電力系統では電圧安定性と過渡安定性ともに問題が生じやすくなる。よってポテンシャルエネルギーを用いてそれぞれの安定性についての判定方法の開発を目的とする。電力中央研究所の系統解析プログラムであるCPATを用いて初期定常状態や負荷特性を変化させてシミュレーションを行った。この結果からノーズカーブ，エネルギー関数，垣本法などを用いて算出した値からグラフを作成した。これらのグラフにおいてそれぞれの負荷特性における安定，不安定の場合の共通点を発見し，ポテンシャルエネルギーを用いた電圧安定性，過渡安定性の判定法を提案した。

6-062

主系統電圧維持能力低下時の過渡安定度向上対策に関する考察

◎小島悠聖・井上俊雄・小出 明（富山大学）

近年，環境問題や資源問題の対策として，再生可能エネルギーの主力電源化が進行している。それに伴い，太陽光発電や風力発電などの非同期電源が増加すると，火力発電など主系統電圧維持能力を支える同期電源が減少する。本稿では，主系統の短絡容量の低下，すなわち主系統電圧維持能力の低下によって起こる問題についてシミュレーション解析をし，その対策について考察を行った。主系統電圧維持能力の低下により過渡安定度が悪化することと，無効電力により電圧を維持できることから，無効電力の注入が過渡安定度の向上につながることが分かった。また，STATCOMを適用することで，無効電力の注入によって過渡安定度の向上が見られるという結果を得ることができた。

6-063

可変速調相機の運動エネルギーの可制御性を活用した電力系統の過渡安定度向上方策

◎柳澤一輝・斎藤浩海（東北大学）

近年，再生可能エネルギー電源の増加により同期発電機の台数が減少し，過渡安定度の悪化が危惧されている。過渡安定度維持対策の1つである同期調相機には，運動エネルギー蓄積機能による事故中の加速エネルギーの減少と，電圧維持機能による事故除去後の減速領域の増大により過渡安定度を向上させることが分かっている。ただ，同期調相機は固定速のため運動エネルギーを能動的に制御することができない。そこで，本稿では運動エネルギーを制御することができる可変速調相機を活用した過渡安定度向上方策を提案する。提案制御により可変速調相機の有効電力入力が増大し，同期発電機の出力を増大させ加速エネルギーを減少させることで過渡安定度が向上した。

6-064

一機無限大母線系統における制動抵抗の系統安定度

◎山下晟生・津坂亮博・雪田和人・七原俊也・後藤康之（愛知工業大学）

近年の太陽光発電などの分散型電源の増加に伴い，電力系統においては，系統の安定性および電力品質の維持が，より強く求められている。特に，インバータを用いている機器が増加する状況の中で，系統の安定性については重要視されつつある。このため，著者らも電力系統の安定性向上のために，直並列の制動抵抗を用いた検討をこれまで実施してきた。本論文では，制動抵抗のほかにリアクトルを導入した場合について検討した。検証は，解析プログラムであるc patを使って行い，無限大母線に繋げられた発電機の出力端に制動抵抗を接続し，故障を発生させた。その時の制動抵抗単体とリアクトル導入時で比較を行った。その結果，リアクトルを制動抵抗に直列接続することにより過渡安定度は向上する事が確認できた。

6-065

変曲点原理に基づいたローカル測定による慣性中心周波数推定手法

◎王 宇凱・馬場旬平（東京大学）

周波数応答能力を持たない再生可能エネルギー源が普及するにつれ，電力系統は周波数不安定化の潜在的脅威にさらされる。慣性中心周波数とは，電力系統の全体的な周波数特性を表す指標で，系統安定性解析に重要です。本稿では，変曲点原理という先行研究に基づき，ローカル測定によって慣性中心周波数とその変化率（RoCoF）を推定する手法を提案した。この手法では，多項式フィッティングによって，過渡時の慣性中心周波数曲線を連続的に表現し，正確に捕捉することができるようになった。提案手法は，IEEE 10 機系でのシミュレーションにより検証され，従来の線形接続手法よりも高い精度で慣性中心周波数とRoCoFを推定できることが示された。

6-066

電力系統多重故障を想定した災害リスク予見型系統制御の一検討

◎加藤大地・松崎隆久・村上洋平・渡辺雅浩（日立製作所）

近年，国内外で地震や台風などの自然災害に起因した停電事例が発生している。電力系統のレジリエンス向上のためには，停電リスクを適切に評価した上で，対策を立案することが重要である。本稿では，原子力分野で実績のある確率論的リスク評価を電力系統の安定性評価および制御方策立案に取り入れることで，自然災害による停電リスクの評価と停電被害の低減に向けた対策の立案を可能とする災害リスク予見型系統制御手法を提案する。多重故障を模擬した検証の結果，高停電リスクの多重故障を抽出し，事前に高リスク発電所から低リスク発電所へ出力を持ち替えることで，周波数低下および停電を防止できる見通しを得たため，これを報告する。

6-067

System Strength：年間の短絡容量解析

○荻本和彦・瀬川周平・岩船由美子（東京大学）・東 仁・礒永 彰・福留 潔（J-POWERビジネスサービス）

インバータ連系設備である太陽光発電や風力発電の大量導入による同期発電機の運用容量の減少は，周波数変動や電圧の実効値の変動・波形の歪など，多様な電力品質・安定運用の課題を引き起こす。この課題は包括的にSystem Strengthなどと呼ばれ，短絡容量解析はSystem Strengthの課題の簡易検討として実施されることが多い。本検討では，送電網を考慮した起動停止計画（SCUC）の結果得られる発電機等の起動停止状態と連動した短絡容量解析について，将来の東北・東京エリアに関する解析状況について報告する。

6-068

スマートメータデータを用いた抽出・予測一体型の需要予測手法

◎南波和樹・内海将人・浜場大輔・飯村 洋（日立製作所）

電力運用の効率化や設備投資の適正化のためスマートメータの導入が進んでいる。スマートメータの計量データを用いることで需要予測精度の向上が期待できる一方，データ量が膨大となりモデル管理の複雑化や予測処理の高負荷化の問題が生じる。以上の問題に対し，一部のデータを抽出して用いる対策があるが，抽出するデータの違いによっては予測精度が悪化する場合がある。本稿では，抽出したデータの分布の均一性を予測への適合の度合いとして定義し，予測に有用なデータの抽出と当該データを用いた予測を行う，抽出・予測一体型の需要予測手法を提案する。データ検証により，提案手法が抽出データの違いによる精度悪化を抑制することを確認する。

6-069

負荷とPV出力の2段階モデル推定に基づく成分分離型の電力需要予測手法の開発

◎渡邊大地・内海将人・末永晋也・多田泰之（日立製作所）

世界的な再生可能エネルギー電源（再エネ電源）の増加により，電力供給の安定性と効率性の両立の機運が高まっている。安定的かつ効率的な電力供給のため，変電所単位の電力需要の短時間先の予測に基づく電圧制御が提案されている。変電所で計測される電力需要には，変動の傾向が異なる負荷と再エネ電源の成分が含まれているため，電力需要の高精度な予測には，各成分をそれぞれ分離して予測することが重要である。本稿では，太陽光発電（PV）出力を対象に，負荷とPV出力の直接的な計測が難しい状況下でも，各成分の分離した予測を行うことで，電力需要を高精度に予測する手法を提案する。加えて，提案手法の有用性の机上検証結果を報告する。

6-070

マイクログリッド蓄電池運用支援のための域内ネット需要の不確実性予測手法

◎野々村孟徳・藤本 悠・石井綱吉・林 泰弘（早稲田大学）・大貫正昌・長谷川匡彦・田中俊輔・唐澤利史（東京電力ホールディングス）

変動性再生可能エネルギー（VRE）を活用する地域マイクログリッド（MG）では，適切な蓄電池や補助電源の併用が必要であり，そのためにはVREの発電量や需要量の不確実性を考慮した予測が重要である。本研究では，地域MGにおける電力需給バランスの予測に焦点を当て，確率密度分布予測の枠組みを提案する。実配電系統データと気象予報情報に基づく予測モデルを構築し，その性能をPICP，PINAW，CRPSといった確率的予測における代表的な指標により評価を行った。数値実験では，本研究での提案手法と経験的予測とを比較し，提案手法が実測の動向を比較的よく捉えることを示した。今後は適切な確率分布関数の選択や蓄電池の運用計画手法の検討，予測手法の改善に注力する予定である。

6-071

電力需給解析モデルを用いたヒートポンプ給湯機群の需給調整ポテンシャルの評価

◎西尾峻吾・池上貴志（東京農工大学）

近年，再生可能エネルギー（RE）の導入が拡大している。出力変動の大きいREが大量導入された際の電力系統の需給バランス調整手法の一つとして，ディマンドレスポンス（DR）が注目されている。DRではヒートポンプ給湯機（HPWH）等の需要側の蓄エネルギー機器を用い，供給が需要を上回った際にエネルギーを貯蓄することで需給調整を行う。本研究では，電力系統全体の電力需給状況を模擬する電力需給解析モデルを基に，各家庭のHPWHを電力系統の一要素として扱い電力系統全体の最適化を行うモデルを開発した。このモデルを用い，HPWHを用いたDRによるRE出力抑制回避や発電燃料費低減を定量的に評価した。また，DRの効果の地域差の評価も行った。

6-072

V2G翌日計画の当日補正方法の検討

◎日浦翔太・田村 滋（明治大学）

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて，世界中でEVが急速に普及しつつある。また，EVを多数保有するEVアグリゲータは，EVをプラグインしてV2Gを行うことにより，電力エネルギー貯蔵設備と同様の役割を果たすことができ，再生可能エネルギーの大量導入時の柔軟性のある負荷・電源として期待されている。EVの所有者はV2Gよりも走行を優先するため，EVアグリゲータのV2Gの計画は不確実性を含む問題となる。先行研究では，確率計画法を用い，翌日のV2G計画策定を行い，そのビジネスポテンシャルを試算してきた。しかし，EV所有者の当日の計画外の走行などがあることから，翌日のV2G計画通りに当日のV2G運用を行うことが最も経済的であるとは限らない。本研究の目的は，翌日のV2G計画の当日補正方法の検討である。

6-073

熱的快適性に基づく人の空調機温度調節が周波数変動抑制に及ぼす影響

◎古田雅大・斎藤浩海（東北大学）

空調機の負荷制御を行っている最中の利用者による設定温度変更の可否は検討されていないと思われる。特に負荷制御中に需要家が設定温度を自由に変更可能とした場合，系統の周波数変動抑制効果にどのような影響があるのか明らかにされていない。本稿では，熱的な快適性に応じて設定温度を変更する需要家をモデル化した人間系と，それを組み込んだ周波数制御シミュレーションモデルを作成し，シミュレーションを行うことで，人間系が周波数変動抑制効果に及ぼす影響について検討した。その結果，空調機を束ねて制御するアグリゲーターが周波数変動抑制効果を向上させるように指令値を生成すると，需要家の設定温度変更という行動を誘起し，周波数変動抑制効果を悪化させる場合があることが分かった。

6-074

遠隔アンペア制御の需給調整力算定と影響評価

森田 誠・赤坂英人・辻 優介（関西電力送配電）・茂木一太郎・◎大橋康祐・北川英志（富士通）

次世代低圧スマートメーターに搭載される遠隔アンペア制御機能を活用することで，大規模災害等の需給ひっ迫時においても，広域での計画停電の回避や経済活動の維持が期待されている。本稿では，遠隔アンペア制御発動により期待できる需給調整力について，スマートメーターの消費電力実績データを用いて，次世代スマートメーター普及率およびアンペア設定値をパラメータに電力使用量の削減効果を算定した。そのポテンシャルを把握できた一方，一律のアンペア設定値では計器単位で影響を受ける時間が大きく分散するため，設備容量に応じた設定値を使い分けるなどの工夫や，制度開始に最低限必要となる普及率の線引きなど，運用上の課題も得られた。

6-075

地理情報システムを用いた詳細な空間解像度に基づく世界の太陽光発電ポテンシャル推計

◎國武凜太郎・大槻貴司（横浜国立大学）

近年，気候変動問題への懸念が高まり，脱炭素化社会が重要な政策課題となっている。先行研究にて，世界エネルギーシステムモデルにて再エネ導入シナリオ分析が実施されている。しかし，エネルギーシステムモデルにおいて再エネの空間偏在性や統合費用を整合的に取り扱うことが難しい課題があった。本研究では，世界各国の行政区画レベルでの再エネポテンシャル推計に取り組んでおり，本稿では太陽光発電の試算例を紹介する。地理情報システムを用いて各種データを統合し，設置可能面積算定計数を用いて推計した。結果，日本に設備容量3,733GW，年間発電量4,673TWhの太陽光発電ポテンシャルがあると推計された。しかし，立地における制約条件等を考慮できていないため，先行研究の推計結果よりも大きな値となった。より現実的な推計を実現するため検討を重ねていく。

6-076

2050年のカーボンニュートラルを見据えた設備設計シミュレータの開発

○林 巨己・近藤英幸・石上雄太・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

現在，2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするカーボンニュートラル（CN）の取組みが進められており，企業においても，敷地内に再エネを導入したり，CO2フリーの電力を調達したりするなどして，温室効果ガスの削減に取り組んでいる。しかし，この取組は設備投資を含む費用を要するものであり，コストを踏まえた長期的な電力調達手段を検討しなければならないという課題がある。筆者らは上記の課題に対し，将来動向が不確実な電源設備価格や燃料価格などのシナリオを設定することで，2050年までの電力設備構成を計画することができるCN対応設備設計シミュレータを開発したので報告する。

6-077

系統レジリエンスのアデカシー面からの多面的評価検討

○竹原有紗（早稲田大学/電力中央研究所）・湯山安由美（電力中央研究所）・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）

近年，地震や台風などの災害の激甚化によるインフラへの影響が大きくなっており，社会全体でレジリエンスへの関心が高まっている。レジリエンスは電力分野において概念としては認識されているが，具体的な評価手法はまだ確立されていない。また，レベニューキャップ制度のもと，電力の安定供給を維持しつつ，効率的に設備投資を行っていくことが求められており，災害に対してもレジリエントなネットワーク形成を合理的に実現していくことの重要性が一層高まってきている。そこで本研究では，レジリエントなネットワーク形成に向けて，電力系統のレジリエンスをアデカシーの面から定量的に評価する手法を検討する。

6-078

機械学習とオプティカルフローによる多地点のPVシステムの出力予測

◎山本裕己・呉 ⼤輝・近藤潤次（東京理科大学）・小平大輔（筑波大学）

従来の太陽光発電（PV）出力予測は雲画像や気象データなどの外部データを使用していたが，地理的に分散したPV設備では常に近隣地点のデータを得られるとは限らない。一方で近年，PVの普及と情報通信技術の進展により，分散型PV設備の時系列データを用いた予測に注目が集まっている。本研究では，外部データを使わず，多数台の分散型PV設備の過去の発電量，時間，位置情報のみを活用するオプティカルフローと機械学習の組み合わせによるハイブリッドモデルを提案した。提案手法は従来の気象データベースの予測モデルやオプティカルフローと比較して平均絶対誤差（MAE）をそれぞれ18.4%，5.8%改善した。

6-079

複数故障を考慮した二次調整力配分に関する研究

黒川大輝・◎永島 匠（広島大学）・久保川淳司（広島工業大学）・餘利野直人（呉工業高等専門学校）・造賀芳文・佐々木 豊（広島大学）

一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御・需給バランス調整を行うために必要となる調整力について，より効率的な需給運用の実現を目指すため，公募調達に加え，2021年4月よりエリアを越えた広域的な調整力の調達を行う「需給調整市場」が開設された。需給調整市場では一次から三次調整力までいくつかの商品があるが，今後すべての調整力の取引が開始され競争が激化していくと，制約条件のため応答できない場合が生じうる。先行研究では，二次調整力を考慮した最適潮流計算法を提案し，単一故障において線路潮流制約により発電機の応答が変化することを確認した。本論文では複数故障を考慮することにより，どこで故障が発生しても対応できる最適な調整力の調達法を提案する。

6-080

ローカル系統の送電混雑を考慮した蓄電所の運用計画手法の提案

◎木村 旭・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

現在，大型蓄電池を電力系統に接続して収益化を図る蓄電所事業が注目を浴びている。ただし，送電混雑が発生する地域では，蓄電所は充放電の制御指令を受ける可能性がある。しかし，特定の時間帯で充放電が制御されると，計画段階での充電残量と実際の状況に差が生じ，以降の時間帯の充放電計画を大幅に変更せざるを得ない状況が想像される。そこで本稿では，運用計画の段階で送電混雑の発生リスクを考慮し，かつスポット市場および需給調整市場での利益を最大化することを目的とした翌日充放電計画の作成手法を提案した。提案手法は，前日段階で当日運用の複雑性を大幅に緩和しつつ，蓄電所事業者が最終的に得られる収益の増加が期待できることを示した。

6-081

最適設備計画モデルと発電計画最適化モデルに基づく揚水発電の活用評価

○村井雅彦（東芝インフラシステムズ）・森 淳二・藤田 崇・宮崎保幸（東芝エネルギーシステムズ）

最適設備計画モデルと発電計画最適化モデルに基づいて，2035年度までの揚水発電の活用を評価した結果を発表する。太陽光発電や風力発電の導入が拡大し，揚水発電を増設する計画が得られる。さらに，定速機を可変速機に更新することで，再エネの出力抑制を低減できることを示す。

6-082

高時間解像度世界エネルギーシステムモデルによる鉄鋼部門脱炭素化に向けた予備的検討

◎菱沼恒平・大槻貴司（横浜国立大学）

近年，2050年カーボンニュートラルの実現に向けて，世界のエネルギー需給全体を取り扱うエネルギーシステムモデルを用いたシナリオ検討が行われている。当研究室では地理的・時間的解像度を詳細化したモデルを開発し，変動性再生可能エネルギーや水素キャリア等のエネルギー供給技術の導入可能性を評価してきたが，需要側のCO2削減技術オプションを簡易に表現している課題があった。そこで本研究では世界全体の温室効果ガス排出のうち約20%を占める産業部門，その中でも特に高温の熱を必要とする鉄鋼部門に着目し，鉄鋼生産技術を明示的に考慮したモデルを開発，特に水素還元製鉄に着目しその予備的検討を行った。

6-083

環境性を考慮した同時市場で決定される調整用電源の出力配分が周波数安定性に及ぼす影響

◎志村啓紀・加藤啓太・斎藤浩海（東北大学）

現在検討が進められている同時市場で決定される出力配分は，適正な価格で系統の周波数安定性を維持しつつ環境負荷が低減されることが望まれる。提案手法として，同時市場において発電コストとCO2排出量を最小化する多目的最適化計算を行う。そして，同時市場で決定した供給力と調整力の出力配分に関して，コスト評価と調整力供出電源の燃種の違いによる系統の周波数安定性への影響について解析を行った。その結果，メリットオーダーに環境性が反映されることで，発電コストが増加する一方CO2排出量が低減される。そして，環境性をより重視すると，軽負荷時には調整力として環境負荷が小さくかつ応答性の良い電源が落札され，周波数安定性が向上する。

6-084

経済負荷配分制御の制御周期が需給制御の性能に与える影響の一検討

◎山口麗雄・青木 祥・七原俊也・雪田和人（愛知工業大学）

太陽光・風力発電等の再生可能エネルギー（以下「再エネ」）電源の出力は，天候に左右され変動が大きいとともに，正確な予測が難しいため，再エネ電源の大量導入が進めば，電力系統の需給制御はより難しくなる。一方，再エネ電源の出力変動には周期十数分以上の変動が多く含まれるため，負荷変動のうち周期20分程度以上を分担する経済負荷配分制御（EDC：Economic Load Dispatching Control）の重要性が増している。本論文では，軽負荷期において，太陽光・風力発電の出力がランプダウン変動した場合に，EDC制御周期が需給制御の性能に与える影響について，EDC制御残・LFC指令値の指標を用いて考察する。

6-085

On the Quantiles Estimation for the Replacement Reserve for Fit: An Exploratory Study of Different Methods

○ガリ ダ シルバ フォンセカ ジュニアジョン・荻本和彦（東京大学）・竹内知哉（千葉工業大学）・堀 立磨（中部電力パワーグリッド）

需給調整市場においてFIT予測誤差に関する3次調整力②の調達が行われ，その必要量の計算手法の改善は経済性と安定供給から重要である。本検討では，現行の分位点推定法を評価し，3 つの代替推定法を検討した。提案手法では，従来手法が再生可能エネルギー発電の各断面に99.865分位値を1つずつ使用するのに対し，データの持つ情報を最大限に活用することを目指す。検討には，中部エリアの3年分のデータを用い，各推定手法による3次調整力②の合計による再エネの翌日発電予測誤差のカバレッジを評価した。検討の結果，従来手法では51.3％，それに対して提案した手法では67.6%と71.6％のカバレッジとなった。ただしそのためには年間の調整力の必要量の合計が9%から最大62％を増加した。

6-086

蓄電池のガバナフリー利用を考慮した負荷周波数制御方式の基礎検討

◎伊勢貴洋・占部千由・加藤丈佳（名古屋大学）・山口 遼・栄田真吾（中部電力）

導入拡大する再生可能エネルギー電源の出力変動に対応するため，出力応答速度の速い系統用蓄電池（BESS）の負荷周波数制御（LFC）やガバナフリー制御（GF）利用が検討されている。筆者らの先行研究では，BESSをGFで利用することで，LFCで利用した場合と比較して，周波数変動Δfは抑制されるものの，LFC調整力として必要な火力機のkW容量は増加することを示している。本稿では，周波数変動に対するBESSのGF出力応動が火力機よりも速いことに着目し，火力機の利用を想定して構築された従来のLFCにおいて，BESSのGF出力情報を反映したLFCロジックがΔfと火力機LFC出力の抑制に与える影響を評価した。

6-087

離島マイクログリッド連系HVDCを用いた島内系統周波数制御

◎内田康貴・中島達人（東京都市大学）

近年，環境問題やエネルギー問題の対策として，再生可能エネルギー（以下，再エネ）を主力電源とした電力を地産地消するマイクログリッドが注目されている。しかし，マイクログリッドは，再エネの大量導入に伴い，需給バランスの維持や周波数・電圧の変動対策，予備力の確保といった課題が生じる。これらの課題は，離島内に存在する同期発電機で対策することも考えられるが，燃料輸送費とCO2排出量の削減に向けては，発電機にはできるだけ依存しないことが望ましい。一方，送電距離50～60km以上の海底ケーブル送電では，交流送電に比べて直流送電が低コストとなるため，直流送電を用いて対策することも考えられる。本論文では，離島に形成されたマイクログリッドと本土系統の間を自励式直流送電システム（以下，HVDC）で連系し，再エネ出力変動が大きい場合においても，HVDCの離島側端子の制御系を用いて離島系統の周波数変動を抑制するための周波数制御手法を提案する。また，リアルタイムシミュレータを用いた一日分のシミュレーションを実行し，提案手法の性能を検証した結果についても報告する。

6-088

慣性応答領域の周波数調整力の定量化に向けた初期検討

◎志熊亮佑（早稲田大学）・織原 大・喜久里浩之・田岡久雄（産業技術総合研究所）・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）

近年のインバータ電源増加に伴い，一次調整力より早い時間領域の応答（FFR: Fast Frequency Response）の要件整備が進められている。そのFFRよりも前の時間領域は主に同期発電機の慣性応答（IR: Inertial Response）により安定化されているが，近年開発が進められている慣性低下対策インバータ電源もそのIR領域の調整力を保持することが期待される。しかしこのIR領域の調整力の要件はまだ十分に検討されておらず，所望の周波数安定性に対して調整力の必要量を適切に確保できるよう要件を策定することが重要である。本検討では調整力の定量的な要件策定に向けて，IR領域の系統内電源合計の周波数調整力を，その系統が示す周波数安定性指標の値と定義し，IR，FFR領域の対策インバータ電源ごとの有効電力出力量の違いについて定量的に評価する。

6-089

Impact of State-of-Charge Balancing on the Degradation of Battery Energy Storage Systems during the Provision of Frequency Control

◎ブチンスキーニキータ・斎藤浩海（東北大学）

Due to their fast response time and high ramp rates, Battery Energy Storage System (BESS) units can provide frequency support to the grid. Hence, they are widely acknowledged to play a key role in future power systems. However, the costs associated with the energy capacity of BESS units is still very high. In previous works, an SoC balancing mechanism was proposed that improves active power sharing among the BESS units by optimally redistributing the stored energy. The goal of this paper is to investigate and quantify the effect of the proposed control on the lifetime expectancy of the BESS units.

6-090

スポット市場価格における信頼区間推定に関する一検討

○石橋直人・増田達矢・池川聖悟・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

本稿は，スポット市場価格の信頼区間推定について，決定木を用いた手法を検討したものである。電力市場を活用した系統用蓄電池による裁定取引の事業モデルでは，市場価格を予測し最適な取引計画を立案する必要がある。しかし，市場価格は不確実性が高く予測精度を向上させるのに限界がある。そのため，市場価格の信頼区間を推定することで，リスクを考慮した取引計画を立案するのが現実的となる。筆者らは決定木に注目し，信頼区間の推定精度を向上させるための検討を実施した。本稿では，スポット市場価格の信頼区間推定における検討結果を示す。

6-091

時間前市場を対象とした市場価格予測に関する基礎検討

◎増田達矢・石橋直人・池川聖悟・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

近年，電力市場を活用した系統用蓄電池による裁定取引の事業モデルが注目されている。裁定取引の事業モデルは，市場価格が安い時間帯に電力市場から買電し，高い時間帯に蓄電池を介し売電することで，市場価格の値差により収益を得る。これを実現するには，設備構成に応じて再生可能エネルギー発電量や電力市場価格を予測し，それらを用いて，最適な取引計画を立案する必要がある。本稿では，日本卸電力取引所（JEPX）の時間前市場を対象として，市場価格予測の検討を行った結果を報告する。

6-092

需給調整市場三次調整力②の価格予測に関する一検討

◎池川聖悟・石橋直人・アダモサンタナ・増田達矢・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

本稿は，需給調整市場三次調整力②を対象として，市場価格予測に適した機械学習手法を検討したものである。系統用蓄電池を活用して収益をあげるためには，“再生可能エネルギーの発電量”，“市場価格” を予測して適切な蓄電池の運用計画を立てる必要がある。これまで筆者らは卸電力市場を対象とした市場価格予測技術の開発を行ってきた。本稿では2021年度に開設された需給調整市場三次調整力②を対象として，市場価格予測に適した予測手法の検討を行った結果を示す。

6-093

Quantile Regressionを用いた確率的電力価格予測

◎大曽根佑紀・小平大輔（筑波大学）

電力価格は天候条件などの不確実な要因の影響を受けるため，変動性と不確実性が高い。そのため，多くの太陽光発電や風力発電を導入する発電事業者と需要家にとって，電力価格の確率的予測は最適運用とリスクヘッジに有用である。近年，電力価格の確率的予測に関する研究は着実に増加しているが，その中でも Quantile Regression（QR）を用いた電力価格の確率的予測に関する研究は少ない。本稿では，英国の電力市場データから生成した静的データを用いて，QR による翌日の確率的電力価格予測と QR モデルの特徴選択における精度比較を行い，API 経由で取得した動的データを使用して，電力価格のリアルタイム予測を行う。

6-094

ELM型RBFNを用いた深層ニューラルネットワークによる電力価格予測

◎渡辺航太郎・森 啓之（明治大学）

This paper proposes ELM-type-RBFN for electricity price prediction. The use of ELM enables to speed up the learning process and construct more robust models. To improve the proposed method, the Wavelet Transform of Level 4 is employed to deal with the feature extraction of input variables as a precondition technique. Also, ensemble learning is proposed to enhance the model accuracy. The proposed method is successfully applied to real data of electricity price in ISO New England.

6-095

CNN-LSTMとアンサンブル学習を用いた電力スポット価格予測

◎王 子洋・前 匡鴻・松橋隆治（東京大学）

This paper presents a novel day-ahead electricity spot price forecasting framework for Japan's Kyushu region, focusing on periods with high renewable energy source (RES) production. It introduces a Convolutional Neural Network-Long Short-Term Memory (CNN-LSTM) model, enhanced with an ensemble learning approach for improved robustness. The model uniquely incorporates a range of inputs including actual and forecasted electricity metrics, spot prices, meteorological, and calendar data. This multimodal approach significantly boosts forecasting accuracy. Tested throughout the year 2022, the model demonstrates superior performance, achieving high levels of precision in its predictions, as evidenced by substantial improvements in key performance indicators of RMSE, MAE, and R2.

6-096

デマンドレスポンスのための電力市場価格予測手法の比較

◎蔡 思楠・前 匡鴻・松橋隆治（東京大学）

本稿では，日本卸電力取引所JEPXのスポット市場と三次調整力市場を対象として，複数の予測手法で市場価格を予測した。デマンドレスポンスにより市場から得られる収益に基づいて各予測手法を評価し，その結果を報告する。従来定義による予測精度が高い予測手法は，デマンドレスポンスによる収益が増加するとは限らないことが確認された。

6-097

「シングル・プライス・オークション」方式を用いたP2P電力取引のスケーリングとコストの評価

◎渡邉雄太・饗場智也・吉野開智・近藤潤次（東京理科大学）・小平大輔（筑波大学）

日本では電力の小売自由化が始まり，ブロックチェーンの技術を組み合わせて個人でも参入できる取引所を作ることが提案されている。これにより，小売りにも市場経済を普及できる。現在，JEPXのメイン市場の約定方式は「シングル・プライス・オークション」である。本研究では，ブロックチェーンを用いた電力取引市場を実装し，町単位までスケーリングした場合にかかる取引手数料及び取引回数を試算した。取引手法にはシングル・プライス・オークション方式を用いて各ノード数においてかかる取引手数料の推移を示した。その結果，本手法においては取引手数料がノード数の増加に応じて単調減少することが分かった。

6-098

「コンティニュアス・トレード」方式によるP2P電力取引の取引手数料とスケーリングの評価実験

◎饗場智也・渡邉雄太・吉野開智・近藤潤次（東京理科大学）・小平大輔（筑波大学）

消費者と生産者間の直接的な電力取引はP2P電力取引と呼ばれ，ブロックチェーンによる取引システムが提案されている。ブロックチェーンでは取引実行のため取引手数料が発生する。本研究ではPVの余剰電力をブロックチェーンによるP2P電力取引を実装し，町単位でスケーリングした場合にかかる取引手数料と取引回数を試算し，コンティニュアス・トレード方式及びシングル・プライス・オークション方式での電力取引シミュレーションを行った。その結果，取引手数料ではシングル・プライス・オークション方式の方が低く，取引回数ではコンティニュアス・トレード方式の方が多くなった。取引手数料と取引回数の試算を行うことができた。

6-099

蓄電池の普及が個人間電力取引の配電系統に与える影響

○富田基裕・高橋光騎・佐藤里奈・瀬戸寿之・若杉健一・村上朝之（成蹊大学）

標準的な配電用変電所1バンクおよび高圧フィーダ7系統からなる規模の需要家群を対象として，蓄電池が普及した社会に対して個人間電力取引（P2P取引）を実施した場合に配電系統が被る影響を数値シミュレーションにより明らかにした。蓄電池の普及により送電網のバスにかかる電圧ピーク値および逆潮流を抑えることができるならば，P2P取引市場の系統管理者が配電線路用自動電圧調整装置などを減らすことが可能である。本研究では生産消費者のみならず消費者への蓄電池普及が配電系統に与える影響を評価し，蓄電池の普及によって電力需要を増やすことにより電力の地産地消が活性化され，電力潮流およびバスにかかる電圧を改善できる可能性が示された。

6-100

調整力融通における送電ロスの影響を考慮した価格形成に関する基礎的研究

○簑津真一郎・馬場旬平（東京大学）

我が国では，電力量および調整力の広域運用において，調整力の融通に対する連系線容量を事前に確保する運用が行われている。我が国で同時最適化を導入するにあたり，連系線容量の確保も同時に最適化する必要があると考えられる。広域融通される調整力は送電ロスの影響を受けて減少する。同時最適化が導入された電力市場では，電力量の送電ロスに加え，送電ロスによる調整力減少の考慮が必要である。本論文ではLFC調整力を考え，LFC調整力融通のための連系線容量の確保と，LFC調整力融通における送電ロスの影響を考慮した価格形成手法を提案する。

6-101

位相調整器制御がLMPに与える影響に関する基礎的検討

○伊藤直樹・花井悠二・竹原有紗・中村優希（電力中央研究所）

将来的な市場主導型の混雑管理手法として，ノーダル制が有力な選択肢とされており，地点別限界費用LMPは，市場の価格シグナルなどとして利用される。また，ループ送電系統においては，位相調整器LPCにより有効電力潮流を制御している箇所があり，ノーダル制導入時には，LPC制御を考慮した最適潮流計算によりLMPが算出されると考えられる。本検討では，ループ送電系統のLPC制御が，LMPや総燃料費に与える影響について，LPC機能を追加した最適潮流計算ツールを用いて検討し，LMPの分布の変化を確認した。また，LPC制御により総燃料費が削減されることを確認した。

6-102

電力市場モデルを用いたkWh価格とΔkW価格の相互作用が供給力調達に与える影響の分析

◎加藤啓太・斎藤浩海（東北大学）

経済合理的に電力需給を一致させるために市場メカニズムが用いられている。著者らは，電力市場の取引が電力システムの安定運用に与える影響を解析するために電力市場取引モデルを構築している。本稿では，スポット市場と調整力市場に入札する調整力提供者が一日で総利潤を最大にすること目的とした発電機運用計画を基に市場に入札した場合に，供給力調達とそのコストに与える影響をモデルにより分析した。その結果，調整力提供者がスポット市場の落札価格を高く予測すると供給力は調達可能となり，調整力市場の落札価格を高く予測すると供給力が調達しにくくなることを明らかにした。また，二つの市場の関係によっては，供給力調達コストを増大させることを示唆した。

6-103

リスク鋭感的価値尺度による出力抑制を考慮した太陽光発電事業価値評価

○宮内 肇・島津優翔（熊本大学）・三澤哲也（名古屋市立大学）

著者らは，RSVM（Risk Sensitive Value Measure：リスク鋭感的価値尺度）を用いた電気事業の価値評価手法を提案し，その有効性について検証している。再生可能エネルギーについても既に，太陽光発電（PV）大量導入下におけるPV出力の抑制を考慮できるよう2030年目標の電源構成をモデル化し，出力抑制やFIP制度を考慮したPVの事業価値評価を行っている。本報告では，2030年目標モデルよりも原子力比率を上げた場合のPV事業価値の変化をRSVMにより評価する。その結果，原子力比率を上げた場合，PV事業の価値は下がる一方で，併設する蓄電池の最適な容量は変わらないことを示す。

6-104

事業者間の利益の中立性を確保するネガワット調整金の算定方法に関する基礎検討

◎福田剛久・山崎丸輝・高野浩貴・浅野浩志（岐阜大学）・Tuyen Nguyen Duc（ハノイ工科大学）

分散型エネルギー・リソース（DER）制御の方法の一つであるネガワット取引は，特定卸供給事業者（アグリゲータ）がインセンティブを与えることで，電力システム内の需要家設備の電力需要を抑制するものである。ただし，需要抑制は需要家と需給契約を締結している小売電気事業者の販売電力量を減少させる側面も持つ。そのため，この小売電気事業者の収入の減少分はアグリゲータのネガワット調整金の支払いによって補償されることとなっている。本稿では，各者の利益の中立性を確保できる，つまり各事業者と需要家とがそれぞれ利益を期待できるようにネガワット調整金単価が満たすべき条件について検討した結果を報告する。

6-105

路面電車電力線-PV直流集電システムにおけるPV最大容量の導入を考慮した経済性試算

◎出口滉人・下町健太朗・三島裕樹・北條昌秀（函館工業高等専門学校）

本論文では，再生可能エネルギーの一つである太陽光発電（PV）を公立学校に導入し，その出力を路面電車に供給するシステムを提案しています。これは電力の地産地消に寄与することが期待されます。システムの経済性を評価するため，前報で提案されたタブー探索法を用いて連系変換器の最適な設置場所と接続を探求し，PVの最大導入を想定した数値試算を行いました。試算結果として，函館市の路面電車の26カ所の電停と15校の公立学校にPVを設置する場合，最適な連系変換器の配置により，連系変換器の数が削減され，総設置費用が29.6%削減されることが示されました。今後は，PVの最適な導入容量を考慮して経済性をさらに評価することを考えています。

6-106

蓄電池を用いた太陽光発電自家消費向上に関する基礎検討

◎高橋修平・加藤政一（東京電機大学）

FIT制度施行後，一般家庭にPVが広く普及した。そのため，再生エネ賦課金と化石燃料の高騰により電気料金は増大し，FIT価格の下落が進み，需要家の経済負担が増大している。解決策として蓄電池の導入によりPV余剰電力の自家消費で経済性を高めることが出来る。しかし，蓄電池導入には設置場所や導入コストが掛かる。そこで，配電用蓄電池の導入し，その蓄電池を一般家庭に貸し出しをすることで自家消費を促しつつ，同時に配電系統内の電圧維持を行う蓄電池管理会社の検討をする。蓄電池に電力貯蔵機器と電圧維持機器の2つの役割を持たせることで蓄電池管理会社と電力会社，需要家の経済性から蓄電池の有用性を評価する。

6-107

モデル予測制御に基づく系統調整力提供のための需要家機器リアルタイム運用手法の開発

◎董 超・安芸裕久・小平大輔（筑波大学）

太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー電源の大量導入により，電力系統における需給バランスの維持に不可欠な系統調整力の確保が課題となっている。対策として，需要家機器の出力制御による需要側からの系統調整力提供が期待されている。本研究では，実需給時点における需要家内予測誤差並びに外部からの需給調整指令に対応するためのモデル予測制御を用いたリアルタイム需要家機器運用制御手法を開発し，想定した複数の需給調整状況の下でのリアルタイム運用シミュレーションの結果により提案の制御手法の有効性について分析した。

6-108

英国電力市場向け大型蓄電池システムの開発

◎寺園隆宏・三ッ木康晃（東芝三菱電機産業システム）・新美宏昭・ボドパリサラン（Nippon Koei Energy Europe B.V.）・北原正達・岩谷拓磨（日本工営エナジーソリューションズ）

英国電力市場において，同市場で調達される系統周波数調整力への適用を目的とした系統用蓄電池システムの開発・導入を行った。調整力市場参入における有効電力出力特性要件，ならびに同国電力系統への連系における無効電力出力特性要件に対し測定データを比較し，技術的に満足することを確認した。今回，同国同市場に3制度ある調整力制度のうち1制度入札時の応答波形に関し報告しており，今後，複数制度への入札における応答波形に関し別途報告予定である。

6-109

同時市場における調整力発動を考慮した需給計画の複数の電力価値評価

○田邊裕隆・益田泰輔（名城大学）・河辺賢一（東京工業大学）

我が国では電力システム改革の進展にともない，多数の発電，小売事業者が市場を通して電力の売買を行うことが可能となり，現在では複数の市場が整備されている。しかし，現行の市場制度下では，市場の売り切れやそれに伴う価格高騰などが懸念されている。この解決方策として同時市場が検討されている。先行研究では従来の電機起動停止計画手法に制約条件を追加することで，同時市場で系統運用者が作成する需給計画で決まった電力価値を評価する手法を提案した。本論文では同手法を改良し，制約条件だけでなく，目的関数も変更し調整力発動の際に係る燃料費をできるだけ小さくする手法を提案し，シミュレーションによって電力価値を評価する。

6-110

再生可能エネルギー出力の不確実性を考慮した複数市場に対する入札計画法の検討

◎桂田一輝・林 泰弘・藤本 悠・金子曜久（早稲田大学）・蓑津真一郎・柴田龍一・二田丈之（電源開発）

近年，カーボンニュートラル実現のために急速に再生可能エネルギーの主力電源化が進んでおり，発電事業者にとっては電力市場を介した取引がますます重要となり，取引戦略の洗練化による事業継続性・採算性の向上が求められている。特に既存の市場を最大限活用しつつ採算性の持続的な向上を図る取り組みの重要性は高い。本研究では，国内におけるスポット市場，調整力市場（三次調整力②）相当の要件を前提とした二種の市場を対象に風力発電電力の入札計画法の検討を行う。特に風力発電出力と市場の取引価格の不確実性を考慮した入札計画を立てるために，確率的予測を元に算出される期待収益の最大化の観点から，各時間コマに入札市場の選択および入札価格と入札量を決定する手法を提案し，その有用性を代表日を対象とした数値実験により評価する。

6-111

需要家側リソースの需給調整市場への市場入札戦略の一考察

◎今井龍之介・飯野 穣・林 泰弘（早稲田大学）・宮澤歩夢・西岡宏二郎（東京ガス）

日本では変動性再生可能エネルギーの導入が拡大しており，さらなる調整力の確保が必要である。また，需要家側にも様々な分散型エネルギー資源（DER）の普及が見込まれており，DERの調整力価値を需給調整市場で活用することが期待されている。このとき，需要家利用と需給調整市場利用を両立したうえで，DERの市場価値を最大化する最適な入札戦略の計画手法が必要となる。そこで，本研究では，需要家への電力供給計画と需給調整市場三次調整力②への入札戦略の二つの意思決定要素を持つDERの最適運用手法を提案し，市場データを用いた取引シミュレーションにより有効性を評価する。

6-112

停電コストの設定をめぐる考察

○髙橋玲子・佐藤航大・田村秀人・廣政勝利・當房拓朗・堺 紀夫・中田耕太郎（東芝エネルギーシステムズ）

停電コストの設定上の課題を整理し，これらの課題を踏まえて，停電コストの決定要因の整理を行い，評価の目的に合致した精緻な停電コストを推定する方法について検討した結果について報告する。

6-113

配電系統内へ設置された系統用蓄電池の稼働による同一バンク他フィーダへの影響解析

◎小林将矢・長谷川匡彦・唐澤利史（東京電力ホールディングス）・安居昂紀（東京電力パワーグリッド）

再エネ電源の連系量増加に伴い，系統設備容量の逼迫や設備増強コスト増加への懸念が拡大している。これを解決する手段として，系統用蓄電池による潮流制御を行うことで系統増強を回避することが期待されている。配電系統に系統用蓄電池などの大容量負荷を連系する際には，一般的に潮流計算などにより連系前の事前検討を実施するが，これらは主に当該配電線内における影響のみを考慮しており，同一バンクの他配電線への影響は考慮していない。本稿では1バンク配電系統モデルを作成し，系統用蓄電池の稼働による配電系統への影響を，特に系統用蓄電池が導入されたフィーダと未導入のフィーダに対する影響の差分に着目して解析を実施した。

6-114

多目的標準系統最適化問題の求解を目的とした多段階進化型アルゴリズム

○関崎真也・川上貴路・佐藤周也・林田智弘・西﨑一郎（広島大学）・武藤貴昭・岩田邦男（中部電力）・彦山和久（中部電力パワーグリッド）

配電系統には日常的に負荷新設の申込があるが，大容量負荷新設時に現系統において設備形成制約を違反する場合，標準系統の変更や設備投資（配電線太線化など）といった対策により設備形成制約違反を解消する。系統運用における意思決定支援の観点からは，設備投資コストと，運用目的の間のトレードオフの情報と共に複数の標準系統候補を系統運用者に提示することが重要となる。著者らは先行研究において，大容量負荷新設時における標準系統候補を導出する手法を提案したが，自動逆送可能制約を満たすことは難しい。本論文では多段階の最適化アプローチにより，自動逆送可能制約を満たす標準系統候補を発見する手法を提案する。

6-115

良質な解の多数決による柱上変圧器接続相推定

◎髙橋 琉・福山良和（明治大学）・関 孝二郎・大井章弘・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

本論文では，良質な解の多数決による柱上変圧器の接続相推定を提案する。筆者らは，誤差が大きいデータを除外して評価可能であるMaximum Correntropy Criterionと，メタヒューリスティック手法を適用する手法を提案してきた。しかし，柱上変圧器の数が32個の配電系統モデルにおいて，正解の接続相の組合せと，目的関数値が最良の組合せが一致しないという根本的な問題が発生していた。提案法は，目的関数値が最良の組合せを最終解とせず，良質な解の多数決によって最終解を決定することで，すべての接続相を正確に推定するとともに，推定精度が十分ではないと考えられる接続相を特定することが可能となっている。

6-116

判断基準の揺らぎを考慮したコンクリート電柱の保修判断支援モデルの検討

◎中山夏実・高野浩貴・浅野浩志（岐阜大学）・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）・杉本貴史・島川裕之・横山和弘（関西電力送配電）

著者らは，点検結果からコンクリート電柱の建て替え要否を自動的に判定する手法を提案してきた。決定木学習によって過去の点検結果と建て替え要否の判断結果との関係を分析し，分析結果に基づいて建て替え要否を判定するモデルを構築するものである。この取り組みにおいて，建て替え要否の判断基準の揺れがあると，モデルの判定精度を低下させる可能性があることを確認している。本稿では，事前にクラスタリング手法を適用して分析対象となるコンクリート電柱を分類し，得られたクラスタごとに決定木学習を適用する戦略を提案する。これにより，建て替え要否の判断基準の揺らぎを対処できるものと考えた。

6-117

分散型電源が大量導入した配電系統における系統構成の動的最適化手法に関する初期検討

◎SHANGHONG XIE・金子曜久・飯野 穣・林 泰弘（早稲田大学）・百川涼平・矢部啓之・直井伸也（東芝エネルギーシステムズ）

カーボンニュートラルの実現に向けを目指し，近年は配電系統太陽光発電（PV）をはじめとするにおいて分散型電源，特に太陽光発電（PV）の導入量が増加する中普及に伴い，配電系統の運用者には，系統混雑系統混雑や電圧逸脱の発生を防ぎ，それらのエネルギーを効率的に活用する運用手法の開発が求められている。この課題に対し，系統構成の更新は有用な対策であると考えられるが，PV発電などにより数時間単位で変化する潮流に対応するためには，系統構成の切替タイミングやその系統構成を適切に決定する必要がある。本稿では，1日の系統切替回数を制約に，電圧逸脱や系統混雑を解消し，配電損失を最小化する系統構成動的最適化手法を提案し，3フィーダモデルを用いた数値実験により，配電損失低減量の観点で提案手法の有用性を評価した。

6-118

QPPBSOを用いたアクティブ配電ネットワーク再構成のロバスト最適化

◎河内勇裕・森 啓之（明治大学）

本稿ではQPPBSO（Quantum Predator Prey Brain Storm Optimization）を用いたアクティブ配電ネットワーク再構成のロバスト最適化を提案する。配電ネットワークへの分散電源の多量導入により，電圧変動が課題である。アクティブ配電自動化の一環として本稿ではネットワーク再構成に着目する。ネットワーク再構成法としてフィーダの切替とシャントキャパシタ（SC）制御を用いるJiang-Baldick法を用いる（1）。その最適化手法としてBSOにPredator-Prey戦略を導入したPPBSOに量子コンピューティングを用いたQPPBSOとロバスト最適化を融合した手法を提案する。

6-119

スマートインバータの分散協調制御に向けたデータスカッシングと需要家クラスタリングの提案

◎金子奈々恵・藤本 悠・高橋 壮・金子曜久・林 泰弘（早稲田大学）

太陽光発電（PV）の急速な導入拡大の下，PVのスマートインバータ（SINV）を協調的に調整しながら，PVの出力抑制を公平に，かつ最小限に抑えながら複雑化する電力系統の潮流制御問題に対応するための次世代潮流制御の実現が期待されている。配電事業者は，数千軒の需要家端のSINV群にて計測される電圧やPV出力に関する高粒度のセンシングデータを低次元情報に集約しながら個々のSINVの制御パラメタを調整する必要がある。本検討では高粒度センシングデータから，各需要家の電力潮流状況やその端点における制御効果を論じる上で重要な低次元情報を抽出・集約し，需要家のうち制御パラメタを変更することが効果的な需要家群を識別するためのクラスタリング手法を提案する。

6-120

スマートメータデータを用いた柱上変圧器容量の選定方法の検討

◎塚本 恋・中山夏実・高野浩貴（岐阜大学）・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）・杉本貴史・島川裕之・横山和弘（関西電力送配電）

柱上変圧器の容量は，主に接続されている各需要家の契約容量の総和を基づいて選定されている。各需要家の契約容量は，各々の最大消費電力量を勘案して定めるものである。消費電力量が最大となる時刻が需要家によって異なる場合，柱上変圧器の容量は過剰になっていることも考えられる。また，需要家の契約容量は，突発的な電力消費に対応できるだけの余裕を持っていることもある。突発的な状態の時刻の消費電力量を抑える方策を取り入れることができれば，柱上変圧器の容量を更に低減できる可能性もある。本稿では，スマートメータによって需要家の電力消費特性を把握できることを活かし，上記を考慮して柱上変圧器の適正容量を求める方法を検討した結果を報告する。

6-121

線路定数計算プログラムを用いた配電線インピーダンスの算出と実測対比

◎田中洋平・福島健太郎・岡田有功（電力中央研究所）・中山顕貴（四国電力送配電）

電力系統を構成する架空送配電線や地中ケーブルの線路定数は，各種系統解析で必要となる電気定数の1つであり，精度良く計算することが求められている。IECでは，低圧機器の高調波の限度値に関して，規格にない2 kHzから9 kHzの範囲に関する限度値の議論が始まっており，当該周波数範囲における配電線のインピーダンスの値が特に重要視されてきている。本稿では，当所の赤城試験センターの需要地系統実験用配電線について，2 kHzから9 kHzを含む配電線インピーダンスの計算値を，インピーダンスアナライザにより測定した実測値と比較し，その妥当性を検証した結果を報告する。

6-122

スマートメーター情報を活用した配電系統における三相不平衡モデル構築方法の提案

◎伊東 嶺・高橋尚之（電力中央研究所）・小林将矢（東京電力ホールディングス）・森内映人（東京電力パワーグリッド）

配電系統における電力品質に関する課題の一つである電圧不平衡は主に単相変圧器の接続相偏りによって生じている。対策として変圧器の接続相替えによる負荷の均一化が有効であるが，今後太陽光発電やヒートポンプ等の大容量単相機器の導入が進むことで系統内の不平衡は複雑化し，対策検討が煩雑になることが懸念される。対策効果をシミュレーションにより比較する上では現場実態を高精度に再現できる精緻な配電線の不平衡モデルが必要であるが，その作成方法は確立されていない。本稿では，設備情報や高・低圧需要家のスマートメーター情報を用いて構成した高圧配電線の不平衡モデルの作成方法を提案し，現地実測値と比較することでモデルの妥当性を検証した。

6-123

配電系統状態推定のためDQPPBSOを用いたμPMU最適配置法

◎伊藤亮朗・森 啓之（明治大学）

本稿では，μPMUの最適配置問題のための配電系統状態推定を基にした手法を提案する。近年，効率的な系統運用や制御を行うためには配電自動化が重要であり，系統運用者が効率的な系統運用を行うための入力情報を提供する状態推定に着目する。近年，配電系統における観測器としてμPMUの重要性は年々高まっており，状態推定の精度向上が期待される。しかし，μPMUを配電系統の全ノードへと設置することはコスト面で困難であるため，μPMUの最適な設置ノードを決定する必要がある。本稿では，冗長度1未満の状態推定環境下において進化的計算法のPredator-Prey Brain Storm Optimizationに量子コンピューティングの概念を導入したQuantum PPBSOを離散化対応させたDQPPBSOを用いる手法を提案する。

6-124

配電系統における高調波発生源の推定と負荷の判別に関する研究

◎堀田祐希・神戸亮太郎・川﨑章司（明治大学）

パワーエレクトロニクス技術の進展による非線形負荷の普及により，配電系統における高調波が増大し，電力品質の悪化が懸念されている。そのため，高調波の発生が顕著な地点を推定し，効率的に抑制機器を設置することが望ましい。この高調波発生源の推定に関して，筆者らの先行研究では，進相コンデンサ（以下，SC）や直列リアクトル付SCが含まれる配電系統における発生源推定が困難であった。そこで本研究では，配電系統に存在するSCおよび直列リアクトル付SCに対して補正をかけて推定する手法を提案する。また，シミュレーションおよび実験により提案手法の妥当性を検証し，高調波発生源の推定と負荷の判別の可能性について示す。

6-125

配電系統の実需要推定手法に関する基礎的検討

○後藤泰希・若尾真治（早稲田大学）・冠城さやか・長谷川匡彦・唐澤利史（東京電力ホールディングス）

近年の太陽光発電（PV）システム大量導入に伴い，配電系統で測定される見かけの需要は実需要と大きく異なりつつある。実需要の把握が必要となる場面もあるが，逐一把握する事は現実的ではない。そこで，2種類の手法を用いて配電線の見かけの需要から実需要を推定し，両手法の特徴を分析した。1つめの手法では，見かけの需要から，対象エリア内のPV4地点の出力を基に推定したエリア全体のPV出力を引いたものを実需要推定値とした。2つめの手法では，過去の実測データより，実需要やPVの基本波形をあらかじめ導出しておき，それらを組合わせて見かけの需要を近似的に再現する手法である。1つめの手法では局所的なPV変動特性が過大に反映された結果として実需要波形が不自然に脈動してしまう短所が見られたが，2つめの手法では実需要波形が対象日に寄らず安定していた。

6-126

配電自動化システムにおける発電出力推定機能導入に関する研究

○英 洋平・樺澤祐一郎（東北電力ネットワーク）・坂内容子・村上好樹（東芝エネルギーシステムズ）

配電系統への太陽光発電設備連系量増加に伴い，実負荷把握が困難となることで，配電自動化システムの自動融通計算に係る精度低下が課題となっている。本研究では，配電系統へ取付したセンサ付き開閉器の計測値から，試行導入したシステムにより，配電系統に多数連系されている太陽光発電設備の発電出力を推定し，太陽光発電設備近傍の配電線に取付した計測器の計測値と比較を行った。発電出力の推定値と計測値を比較すると誤差は10％以下であり，実際のシステムへ導入した場合，自動融通計算に係る精度向上が期待できる結果となった。

6-127

配電系統における電圧不平衡改善のための工事地点最適化に用いる高速改良整数型PBILのベイズ最適化によるハイパーパラメータ自動調整

◎小林優斗・福山良和（明治大学）・関 孝二郎（富士電機）・大井章弘（明治大学/富士電機）・吉田武尊・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

本論文では，配電系統における電圧不平衡を改善する方法である配電線のねん架及び柱上変圧器の接続相付替を実施する工事地点を最適化する問題に対して適用する，組合せ最適化手法の一つである高速改良整数型Population-Based Incremental Learningに対して，Tree-structured Parzen estimatorによるベイズ最適化を用いたハイパーパラメータ自動調整手法を提案する。実規模に近い系統を対象に提案法によるシミュレーションを実施し，その有効性を検証した。

6-128

経済性と公平性の二目的最適化に基づく分散型電源を活用した配電系統電圧制御

◎畠山遼子・小野謙次・吉田琢史（東芝）・百川涼平・荻田能弘（東芝エネルギーシステムズ）

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い配電系統での電力品質悪化が懸念される中，分散型電源を活用した配電系統管理手法が注目されている。従来の発動コスト最小化を志向する経済性を重視する手法では一部の需要家に負担が偏り，公平性を考慮する手法ではコストが増大する課題があった。そこで，公平分割問題のフレームワークで公平性を定義し，経済性と公平性の二目的線形最適化により分散型電源の発動計画を立案する手法を開発した。提案手法による数値実験により，経済性と公平性のトレードオフをもつ複数の発動計画が得られた。また，過去の発動実績も考慮に入れることで公平性を維持しつつ経済性をさらに改善できる可能性を確認した。

6-129

不平衡負荷が接続された高圧配電系統における接続相替えによる電圧不平衡率緩和の基礎解析

◎荒木竜也・横水康伸・金森涼太朗（名古屋大学）・岩月秀樹（中部電力）・彦山和久（中部電力パワーグリッド）

近年の配電系統においては，脱炭素化に向けた取り組みとして電気自動車の普及による単相充電機器が接続され，さらに太陽光発電設備がある相間に連系されることがある。上述を代表とする背景のもと，高圧三相配電線を流れる電流の不平衡性が拡大し，ひいては，配電系統の三相電圧の不平衡性が高まり，配電系統の電力品質に望ましくない影響を与えてしまうため，単相負荷の接続相替えなどによって不平衡を改善する必要がある。筆者らは，これまでに，高圧配電系統の基本ユニットについて，配電線電流の正相分I_0,1，逆相分I_0,2および電流不平衡率U_0,cを求める基本解析式に基づいて，電流不平衡率U_0,cの例を報告してきた。本報告では，負荷接続点での電圧不平衡率を求め，単相負荷の接続替えによる電圧不平衡率の緩和を導いている。

6-130

最適潮流計算によるスマートインバータVolt-Var制御曲線決定手法

◎下山直人・小出 明・井上俊雄（富山大学）

近年，カーボンニュートラル達成に向け太陽光発電への期待が高まっている。しかし，太陽光発電が導入される配電系統では，逆潮流による電圧上昇問題が発生する。この解決策として，PCS（Power Conditioning System）を用いた無効電力制御が実施されている。しかし，電力需給状況によって系統内の同期発電機の起動状況が変化し PCS の無効電力制御による電圧維持が困難になる恐れがある。そこで，従来の PCS に通信機能等を追加し，遠隔でパラメータ調整可能であるスマートインバータを使用した制御が期待されている。本研究では，スマートインバータを使用し，最適潮流計算によってVolt-Var制御曲線を決定する手法を提案する。

6-131

Volt-Var制御を考慮したPV導入量最大化を目的とするPV導入地点選定手法

◎濱田恭輔・小出 明・井上俊雄（富山大学）

近年，地球温暖化などの問題から太陽光発電（以下「PV」）などの再生可能エネルギーの導入が推進されている。しかし，配電系統内に多くのPVが導入されその出力が増加すると，電圧上昇問題の発生が懸念される。ゆえに，PVの導入拡大を進めるためには配電系統内の電圧を適正範囲に維持することが重要であり，その対策として，スマートインバータによるVolt-Var制御機能が注目されている。そこで，本研究では，PVの導入量を高めて地産地消を進めるために，スマートインバータを通じて連系するPV導入地点の決定手法を提案する。具体的には，PV導入量の最大化を目的関数としたVolt-Var制御を考慮した最適化計算として定式化することで算出した。本稿では，数値計算例にて提案手法の有用性を検証した結果を報告する。

6-132

配電系統電圧上昇問題におけるPCS無効電力制御パラメータの検討

◎川島大輝・有江洋太・中西要祐（早稲田大学）・鈴木亮平・藤本 久（富士電機）

再エネ電源の導入拡大が進むに伴い，電力系統での余剰電力発生や電圧変動の増大といった電力品質に及ぼす影響が問題視されている。そこで配電系統の電圧管理方法として，PV用PCSの無効電力制御が可能となるスマートインバータによるVolt-var制御機能が注目されている。著者らはこれまで配電系統の電圧に対して，PCSの無効電力を出力することで電圧平準化を図る制御システムの開発を行ってきた。現在は電圧と無効電力により決定される制御パラメータを潮流計算に組み込み，再エネ電源による電圧上昇を抑制する効果を検討している。しかし，制御パラメータの値によっては電圧不安定を引き起こす可能性がある。本稿では，電圧不安定を回避可能な制御パラメータを算定する手法を提案する。

6-133

地点別PQ価格に基づく配電系統電圧管理手法～通信NWを考慮したシステム構築と検証～

久保龍汰・◎岡田心平・造賀芳文・佐々木 豊・田岡智志（広島大学）・餘利野直人・Bedawy Ahmed（呉工業高等専門学校）

近年太陽光発電の導入が進み，配電系統では電圧管理が難しくなっている。そこで先行研究では，黒板メモリを用いて系統情報を共有するマルチエージェント手法に基づき地点別のPQ価格・電圧上限値を提示し配電系統電圧を管理する手法を提案した。この手法では，売電収入の均等化，太陽光発電量の増加というメリットが得られる。しかし，この手法は通信を用いて各エージェントが情報を共有する必要があるが，先行研究では実際には通信を使用しておらず，単独のプログラムでシミュレーションを行っていた。そこで，本論文では複数のプログラムからなる環境を構築し，通信回線を介したシミュレーションを行うことで実環境に近い環境下でも提案制御システムは有効であることを検証する。

6-134

住宅用脱炭素化機器の普及拡大を考慮した自治体規模の配電系統解析

○畠山智行・村田新治・伊藤智道（日立製作所）・河村 勉（叡啓大学）

太陽光発電（PV），電気自動車（EV），ヒートポンプ給湯器（HP）といった住宅用脱炭素化機器の普及に伴い，配電系統の電圧が適正範囲を逸脱するおそれがある。このような問題を解決するため，必要に応じ機器の運転を制御するデマンドレスポンス（DR）が提案されている。DRを普及させていくには需要家たる住民の理解と協力が必要であるが，既往研究で示されているDRの評価は住民にとってイメージしやすいものとは言い難い。そこで本研究では，住宅用脱炭素化機器のDRに対する住民理解の促進を目的として，自治体規模で評価可能な配電系統モデルを構築・解析し，HPの運転時間の変更や，PVの出力抑制が配電系統の安定化に有効であることを示す。

6-135

配電系統向け潮流計算の並列処理による高速化の基礎検討

◎萩野良祐・小林優斗・福山良和（明治大学）

本論文では，サーバーのCPUコアを利用した，配電系統向け潮流計算の並列処理による高速化の基礎検討を行った結果を報告する。潮流計算の手法は，Backward-Forward Sweep法を用いた。この手法は，電力量の初期値を与えた後，上流ノードから末端方向へ各ノードの電力量を計算する前進計算と，末端ノードから上流方向へ状態変数の修正量を計算する後退計算を繰り返し行う手法である。各フィーダー毎の潮流計算をOpenMPにより並列化した。IEEE69母線系統をベースに作成した大規模系統を対象にシミュレーションを実施し，配電系統向け潮流計算に対する並列処理による高速化の有用性を確認した。

6-136

PV発電の有効活用に向けた配電系統のPV力率最適化に関する初期検討

◎渡邉崇史・金子曜久・石井英雄・林 泰弘（早稲田大学）・杉山開路・平田嘉裕（住友電気工業）

脱炭素社会に向け，太陽光発電（PV）の大量導入が見込まれる中，逆潮流やPVの出力変動による系統電圧の適正範囲からの逸脱が懸念されている。その対策として，力率一定制御が用いられているが，過積載の一般化や将来的なPV導入量の増加により，地域特性を考慮した力率値更新の必要性が増している。本稿では，JST-CREST126配電線モデルの内，住宅地域を対象に，電圧や線路容量制約を満たす中で，過積載における力率一定制御のPCS制約に伴うPV抑制量が最小となる高低圧PVの最適な力率組み合わせを探索し評価した。地域特性，PV導入量，PVの高低圧比率および季節ごとの最適な力率の差異および力率更新の有効性をPV抑制量の削減効果の観点から確認した結果を報告する。

6-137

PVSが2地点接続された長距離高圧配電線における負荷接続位置に対する供給可能電力

◎金森涼太朗・横水康伸・荒木竜也（名古屋大学）・松村年郎（名古屋産業科学研究所）・深江隆之・彦山和久・黒田将也（中部電力パワーグリッド）・岩月秀樹（中部電力）

太陽光発電装置（PVS）が再生可能エネルギー利用の1 つとして進み，近年ではメガワット級のPVSが高圧配電線に連系されることがある。しかし，PVS の出力電力が配電線の供給可能電力を超過した場合，PVS の発電停止が考えられる。これまでに，設備が3 地点に接続された配電系統に対して検討を行い，複数の設備を一時的に一つに集約，1 地点負荷接続下での電圧表現式を適用することによって，その後，反復計算を通じて，複数の接続点電圧を導く。本報告では，設備が3 地点接続された配電系統について，3 つの設備のうちPVS が2 地点，負荷が1 地点接続されている配電系統を対象に，各負荷接続位置に対する供給可能電力P_lim の算出結果を述べている。

6-138

クラスタリング手法を用いた太陽光発電の出力抑制時低電圧側動作点における発電可能電力推定手法の検討

◎長坂英朗・吉井 剣・松田響生・鈴木裕一・馬場旬平（東京大学）・簑津真一郎・柴田龍一（電源開発）

世界的なカーボンニュートラルに向けた動きに応じて再生可能エネルギーの導入が進められている。しかし，再生可能エネルギー電源が大量導入されると調整力が不足する恐れがある。本稿では日本で最も一般的な変動型再生可能エネルギー電源である太陽光発電に注目し，太陽光発電から調整力を供給するために必要となる出力抑制時の最大出力推定手法について検討を行った。本稿では，出力電流，電圧およびパネル温度から最大出力を推定するモデルの新しいパラメータ同定手法を提案し，実機を用いてその精度を検証した。結果として，提案手法を使用した場合，従来手法と比べて最大出力推定時の誤差が2.6%ポイント程度改善した。

6-139

PVを含む配電系統におけるPMUを用いた状態推定とSVR指令値決定手法

◎花城李紀・辻 隆男（横浜国立大学）・森内瑛人（東京電力パワーグリッド）・庄司智昭（東京電力ホールディングス）

近年ではエネルギー・環境問題の解決に向けて脱炭素化が世界的に進められている。日本では 2050 年カーボンニュートラル実現が宣言され，その達成に向けて太陽光発電（PV）などの分散型電源の導入が進展している。このような発電機の出力は天候に大きく左右されるため，配電系統の電圧は変動しやすくなり適正範囲内に収めることが難しくなる。その対策として，無効電力補償装置（SVC）や蓄電池の導入，自動電圧調整器（SVR）による電圧制御の高度化などが考えられる。そこで，本稿では変電所直下に SVR が設置されている配電系統を想定し，負荷とPV が不確実に変動することを考慮した SVRの最適な運用方法について検討を行った。負荷やPVの不確実性をシミュレーション上で模擬するために，複数の負荷・PV 出力パターンを生成し，各パターンにおける潮流状態の解析を通じて電圧分布を確率的に評価し，SVR 指令値を決定する手法を提案した。また，系統の状態は変電所二次側バンクに設置されたセンサと複数台の同期位相計測装置（PMU）から得られる情報から推定することとし，そこから得られた系統全体の状態を考慮してSVR 指令値を決定することとした。

6-140

過積載を考慮した太陽光発電出力制御特性関数の定量的検証

○石井英俊・福留 潔（J-POWERビジネスサービス）・竹内知哉（千葉工業大学）・瀬川周平・今中正輝・馬場博幸・荻本和彦（東京大学）

筆者らはこれまで，様々な設置条件にあるPVの発電実績から，太陽光制御指令値と実際の発電出力を示す関数を作成し，同一月，同一時刻，同一出力帯別に調査し，月別，時刻別の発電出力に対する制御指令値を求める関数（制御特性関数と呼称）を求めた。さらに，制御特性関数でPV制御の例を示してきた。本項では，本制御特性関数によりどの程度PVの出力制御量（PV制御量）を減少させることが出来たかを定量的に計算しそれにより得られた電力量を示す。

6-141

低圧PCSを起因とした電圧フリッカの家電機器へ与える影響評価試験

◎庄司智昭・長谷川匡彦（東京電力ホールディングス）

発電設備が配電系統へ接続される際には電力保安及び供給信頼度維持のための保護機能として単独運転検出機能が求められる。この単独運転検出機能として主に低圧PVを中心とし，パワーコンディショナ（Power conditioning subsystem: PCS）へステップ注入付周波数フィードバック方式が採用されており，これにより系統にて電圧フリッカが発生することが報告されている。本稿では，低圧PCSを起因とする基準周波数（50Hz）±3Hzの電圧を電圧フリッカの指標として⊿V₁₀の値を刻みながら家電機器へ印可することで，影響について試験実施により評価した。また，先行研究における基準周波数（50Hz）±6Hzの電圧の揺れを長時間印可することによる家電機器の動作不良の発生有無についても検証を行った。

6-142

低圧用STATCOMを用いたPCSによる電圧フリッカへの抑制効果検証

◎鈴木隆心・星 舞樹・川﨑章司（明治大学）

近年，配電系統では太陽光発電の大量導入が進み，PCSの単独運転検出機能の一つである新型能動的方式の無効電力注入による電圧フリッカ現象が発生している。本研究では，住宅用PCSによる電圧フリッカ対策として，低圧用STATCOMによる電圧フリッカの抑制を目的としている。シミュレーション及び実験では，PCSの無効電力注入を模擬し電圧フリッカを発生させ，電圧フリッカ成分をSTATCOMの設置点電圧より抽出し，それを相殺する無効電力注入を行うことでフリッカ抑制を行い，系統の安定化を示した。また，シミュレーションではSTATCOMの設置箇所による制御効果を比較し，系統の末端側であるほど需要家全体における抑制効果が見られることを示した。

6-143

低圧系統における高調波インピーダンス測定の検討

○岡田有功・田中洋平・福島健太郎・竹村亮宏（電力中央研究所）

高調波電流を発生する負荷を用いて，商用電源の基本波の周波数から9 kHz の範囲を対象とした低圧系統のインピーダンスの測定方法を検討した。検討結果に基づき測定装置を試作して，規格試験用の回路を対象に実効インピーダンスの測定値を検証した。

6-144

空調機用アクティブフィルタの基本波無効電流余力の評価

◎松田響生・馬場旬平（東京大学）・河野雅樹・太田圭祐・川嶋玲二（ダイキン工業）

近年，大量の太陽光発電（PV）が導入され，配電系統の電圧逸脱が深刻化している。これまで電圧逸脱の解消にはSVCなどの無効電力補償装置が用いられてきたが，需要家の無効電力資源を活用した電圧制御も検討されている。本稿では，需要家資源として業務用パッケージエアコンの高調波抑制に用いられるアクティブフィルタ（AF）に着目した。空調の未稼働時や部分負荷運転時のようなAFに余力が存在するとき，高調波補償電流に基本波無効電流を重畳して出力することで，配電系統の電圧調整に利用可能である。そこで，AF が出力できる基本波無効電流余力と，空調機の負荷率との関係を数式的に検討し，AF容量の大部分を系統の電圧調整に供出可能であることを確認した。

6-145

電圧集中制御における電圧上下限値決定手法の高度化に向けた検討

◎冠城さやか・長谷川匡彦・唐沢利史（東京電力ホールディングス）・安居昴紀（東京電力パワーグリッド）

配電系統へのPV導入が進むと，系統の電圧管理が難しくなるため，東京電力PGは，これまで電圧集中制御システム（CVCS）を開発した。CVCSは，高圧分岐や低圧系統等の計測不可能な箇所も考慮し電圧を制御するため，各ITSWに電圧上下限値を設定し，法定電圧を逸脱しないように電圧調整機器のタップを制御する。先行研究においては天候変動によるPV出力変動にも対応できる電圧上下限値決定手法を提案したが，新設・故障等で配電系統のPV容量が変わると，天候を誤判定し，適切な電圧上下限値が決定できない。そのため，本稿では，天候判断の誤判定を防ぎ，適切な電圧上下限値を決定するために配電系統のPV容量の変化を自動更新する方法を検討した。

6-146

無効電力出力状況に基づくスマートインバータとLRTの協調電圧制御手法に関する初期検討

◎高橋 壮・金子曜久・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）

カーボンニュートラル実現に向け太陽光発電（PV）大量導入が見込まれる中，配電系統における電圧制御手法の高度化が喫緊の課題である。配電系統の電圧は負荷時タップ切替変圧器（LRT）とPVパワーコンディショナ（PCS）の力率一定制御により制御されてきているが，電圧制御高度化にあたっては，PV-PCSに追加機能を具備したスマートインバータ（SI）の活用が注目されている。LRTとSIの双方を用いた制御では，応答速度の速いSIへの制御負担の偏りを適切に検討し，制御負担のバランスを取る必要がある。本稿ではSIの無効電力出力状況に応じてモード切替を行うことでLRTとSIの制御負担の分担を実現するLRT協調電圧制御手法を提案し，数値実験により手法の有用性を評価した。

6-147

電圧調整器のタップ動作回数を考慮した強化学習による配電系統の電圧制御手法

◎黒谷琉人・青木 睦（名古屋工業大学）・武藤貴昭・栄田真吾（中部電力）・彦山和久（中部電力パワーグリッド）

配電系統では電圧調整器を用いて系統電圧を適正範囲に維持しているが，太陽光発電の連系拡大により，これが困難になりつつある。そこで本研究では，配電用変電所においてオンラインで取得可能な情報を用いて系統全体の電圧を把握し，制御を行う手法の開発を目的とし，本論文では制御手法について検討する。電圧調整器のタップ位置を決定する方法として，不感帯パラメータを報酬設計に組み込んだ強化学習を用いる。十分な学習後，学習と異なる条件についてシミュレーションを行った結果，電圧調整器の過剰なタップ動作無く電圧を適正範囲内に維持する制御が可能であることを示した。

6-148

中規模ビルにおける数時間先の電力需要予測

◎小澤和也・佐々木拓也・柳瀬孝史・竹内 豊・佐野常世（関電工）

昨今の再エネ電源の増加に伴い，発電量と需要量の同時同量の達成が難しくなっている。このような背景を踏まえ，需要量を的確に把握することでエネルギー利用の効率化を図るという観点から，需要予測に対するニーズが高まっている。高精度な需要予測が行えれば，ピークシフトやピークカットの実施，DR（Demand Response）への参画など，電気エネルギーの有効活用が出来るようになる。よって本論文では，1時間ごとの気温データから，1時間後から数時間後の電力需要を予測する手法について，その概要と評価結果を述べる。

6-149

BEMS構築のための滞在人数データを活用した短時間電力需要予測

◎王 維浩・佐藤正寛・熊田亜紀子（東京大学）

Tackling the energy crisis requires a crucial move toward carbon neutrality. A transformation solution is establishing a robust and efficient Energy Management System (EMS). For Building EMS, various feature variables come into play, exerting influence on electricity demand forecasting. This study employs a time-dependent Pearson Correlation to discern the noteworthy impact of human congestion. Through a comparative analysis of two datasets—one encompassing human congestion and the other excluding it—the dataset with human congestion exhibits superior performance in demand forecasting. These findings substantiate the significance of considering human congestion in the context of Building EMS.

6-150

バーチャルオフグリッド型分散協調EMSにおけるリアルタイム制御の予測誤差影響評価

◎進士聖夫・飯野 穣・石井綱吉・林 泰弘（早稲田大学）・山下聡史・尾下 遥・土井淳平・大和久 崇（東京ガス）

近年新たな調整力電源として分散型エネルギー資源（DER）が注目されており，その制御手法として末端の計算機で地域全体最適化が可能な分散協調EMS制御が注目されている。本研究では先行研究でのDER最適運用計画の上位に予測機能，下位にリアルタイム制御機能を拡張し，予測誤差を考慮した分散協調EMS制御モデルにおいて，予測時パラメータの変化に対するコストおよび地域潮流の感度分析，予測，計画，制御の3段階の効果を調べるためのコスト要因分析を行った。結果として，コストと潮流のトレードオフ関係を解明し，リアルタイム制御効果や予測時パラメータ設定がコスト削減に寄与することを確認した。

6-151

最適化型エネルギーシステムモデルにおける住宅種別のモデル化と給湯脱炭素化に関する検討

松原里江・○大槻貴司（横浜国立大学）

当研究室で開発してきた日本エネルギーシステムモデルでは家庭部門を集約的に取り扱っており，住宅種別や既設・新設の差異を明示的に考慮していなかった。そこで本研究では，家庭部門における住宅種別のモデル化に取り組んでいる。集合・戸建て住宅，新設・既設住宅では電化のしやすさに差があると考え，モデルに制約を加えたが，制約の有無にかかわらず都市ガス給湯器が選択される結果となった。要因の一つとして主観的割引率の想定が考えられるため，家庭部門の主観的割引率について感度分析を行ったところ，割引率が低下した場合ヒートポンプ給湯機が選択された。主観的割引率によって最適な給湯技術選択が変わることがわかった。

6-152

淡水化装置を含む離島電力系統のPV導入・ESS予備力確保を考慮した最適需給計画

◎田中秀実・勝崎友裕・重信颯人・高橋明子・伊藤雅一（福井大学）

外部との連携線を持たない離島電力系島ではディーゼル発電機（DG）により島内需要を賄っている。しかし，高額な燃料単価と保守点検費が経済的負担を増大させている。また，島民のライフラインとして機能する淡水化装置（DU）の最大負荷は大きく，その運転計画を考慮した電力供給運用を行うことが重要である。本稿では，太陽光発電システム（PV）と蓄電池システム（ESS）の導入及び予備力制約（RC）の考慮の有効性検証のために，実運用に基づく試算と比較し，運用スケジュールの変化や各種費用について解析を行った。提案手法による最低化運用は実運用時に比べて燃料費と保守点検費が減少することが確認され，DUとDGの起動回数を削減した。

6-153

Study on the reward system of the power demand management for the multi-dwelling residential building

◎趙 珉徹・安芸裕久（筑波大学）

The residential community built by occupants in the multi-dwelling residential building (MRB) needs to consider not only individual satisfaction but also fairness to manage the overall demand of the building. The management system with an economical compensation approach can be developed to work out a possible compromise between the benefits of occupants and the MRB community. This study presents the demand management with a reward system for the MRB considering different combinations of occupant preferences. The results show that the reward system can be adopted for the demand management to improve the individual satisfaction and fairness of the MRB community.

6-154

Optimizing Power Consumption Management in Industrial Facilities with Integrated PV Generation

◎秦 舟・界 波・馬場旬平（東京大学）・神田博史（堀場製作所）

An innovative approach is presented for electricity consumption management in industries with integrated photovoltaic systems. Emphasis is placed on load shaping and the utilization of the Lowest Horizontal Search Algorithm and Particle Swarm Optimization for load scheduling. This strategy is shown to effectively reduce peak loads, offering a sustainable solution for energy management in industrial settings with PV integration.

6-155

停電災害対策への貢献を目指した電動バスによるレジリエンス性能のポテンシャル評価（続報）

○飯野 穣・井原雄人・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）・光岡正隆（宇都宮大学）

近年，自然災害による都市の停電対策が社会課題となっている。筆者らはこれまで，停電災害時に電動バス群の避難施設への電力供給を想定したレジリエンス貢献度の評価を試みてきた。それは電動バス蓄電池の蓄電残量SoC平均値を最大化するものであったが，SoC初期値を規定値に固定した運用であった。これに対し，翌日の天候予測に応じて，SoC初期値を意図的に増加させる自由度に着眼し，本研究ではSoC初期値の最大化を新たに評価関数に組み込んだ電動バス充電計画最適化手法を提案する。実在都市の164台の路線バス運行モデルを用いて，それらの電動化による避難所12か所への非常用電力供給能力を停電レジリエンス性能として定量評価する。

6-156

再生可能エネルギー導入地域グリッドの実現に向けた検討

○吉山和宏・森田真矢・西田悠介・宮崎 輝（東京電力ホールディングス）・河野俊介・板屋伸彦・鍵田昌幸（三菱電機）・森脇 滉（電力中央研究所）・生石光平・小泉僚平（東京電力パワーグリッド）

昨今，地震や台風等により大規模停電が発生し，電力インフラのレジリエンス強化の重要性が認識されている。この強化策として既存配電線を活用した地域グリッドの構築が検討されているが，再生可能エネルギーが主電源となる場合は，インバータを介する電源であり，通常系統の電源構成と異なるため，課題の洗い出しと対策の必要がある。上述の課題確認・対策技術検討のため，新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）の「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた次々世代電力ネットワーク安定化技術開発（STREAMプロジェクト）」事業に応募し採択された。これにより，将来の再エネ主電源地域MG導入の円滑化に向けて検討を進めているが，これまでの検討概要について報告する。

6-157

自立型地域エネルギーシステムにおける多目的最適化と災害時の避難所電力供給への応用

○内垣内 洋・林 佑宜・安ヶ平裕介・岡本 守・Thantip Krasienapibal・井出一正・竹本享史（日立製作所）

地方の過疎化・少子高齢化などの社会課題解決と持続可能な社会の実現に向け，再生可能エネルギーを用いた自立型地域エネルギーシステムを提案し，不確実な電力変動のもとでの運搬と電力運用の多目的最適化技術を開発した。評価の結果，Google OR-Toolsを用いた場合と比較して，運搬完了率は約13％増加し，電力過不足は約87%削減された。本技術の実適用として，岩見沢市における災害時の避難所への電力供給を評価した。その結果，ナノグリッドを市内3箇所の温泉施設に設置し，10台のEVを用いた場合，避難所の約2/3の電力需要をEVからの電力供給により賄えることがわかった。

6-158

着脱・移動型DCマルチパワーユニットと自立型DCシステムによる北海道実証向け設備構築

◎若林 諒・竹本享史・井出一正（日立製作所）

これまでに北海道岩見沢市と連携し，地域エネルギーである温泉ガスと太陽光を利活用する小規模な自立型グリッド（ナノグリッド）を構築してきた。今回，地域エネルギーの多目的運用に向けて，DCマルチパワーユニット（DCMPU）を用いた自走式バッテリを構築した。DCMPUはDCおよびAC出力の切替ができる電力変換装置であり，DC/DC充放電に加えて，バッテリからの非常用電源供給およびモータ動作が可能である。さらに，上記ナノグリッドからバッテリ充電するための自立型DCシステムを構築した。本自立型DCグリッドはCHAdeMOプラグで脱着可能である。地域エネルギーでバッテリ充電を行い電力融通および電源利用することで，地域エネルギーのさらなる利活用が期待できる。

6-159

マイクログリッドの設備設計における論点整理

◎赤木 覚・長谷川匡彦・吉山和宏（東京電力ホールディングス）・小泉僚平（東京電力パワーグリッド）

レジリエンス向上や再エネ主力電源化を受け，マイクログリッドへの期待が高まってきており，様々な研究・実証が行われている。MGと一口にと言っても，需要規模（需要家レベル～配電系統レベル）や電源機器（太陽光，蓄電池，同期発電機など）の構成はケース・バイ・ケースであり，それぞれに応じた検討が必要となる。効率的なMG設備設計にあたっては，各ケースの論点を整理し全体像を把握したうえで，詳細な検討を行うことが望ましいと考えられる。このような背景を踏まえ，MGの形態を分類したうえで検討項目について整理を行ったので本稿にて報告する。

6-160

マイクログリッドの地絡検出に関する実験的検証

○長谷川匡彦・赤木 覚（東京電力ホールディングス）・小泉僚平（東京電力パワーグリッド）

近年，レジリエンス向上や再エネ主力電源化を受け，マイクログリッドへの期待が高まってきており，MGの構築・運用について研究が盛んになってきている。課題の一つにMG運用時の地絡検出があり，シミュレーションや実験による検証が報告されている。MG構築・運用に関する手引きはあるものの，設備構成・運用方法は確立されていないため，検討に際してはさまざまな状況を考慮することが望ましいと思われる。本稿では，MG設備・運用のパターンを想定した地絡検出試験について報告を行う。

6-161

大学実験研究棟での単相・三相GFMによるマイクログリッド実験環境構築と電力融通試験

◎西中郁人（広島大学）・網本和也（中電工）・佐々木 豊・関﨑真也・造賀芳文（広島大学）・餘利野直人（呉工業高等専門学校/広島大学）

本稿では，TSIとSSIの連系運転を行い，協調して需給を維持できることを確認する。本稿ではSSIとTSIのマイクログリッド時において，協調して負荷への電力供給ができることを実験にて検証する。

6-162

単相同期化力インバータを用いた低力率負荷条件下での実機基本動作の検証

◎下幸茂大雅・井上浩孝・横沼実雄（呉工業高等専門学校）・餘利野直人（呉工業高等専門学校/広島大学）・島田拓也・菊池岳人・関﨑真也・佐々木 豊・造賀芳文（広島大学）

再生可能エネルギ電源の大量導入による系統安定性維持に関する問題が検討される中，広島大学ではGFM型単相同期化力インバータ（SSI）を提案し，SSI複数台によるマイクログリッド（MG）について，シミュレーション，実機実験によってその可能性と基本的性能を確認してきた。また，呉高専においても広島大学同様の実機実験環境を構築し，異なる実験環境下での基本動作，安定運転を確認して結果を報告した。今回，より厳しい運転条件での安定性を見るため，極端な遅れ負荷やひずみ電流などの低力率負荷条件下における，SSI複数台によるMG運転安定性についての動作検証を行い，その結果について報告する。

6-163

ハイブリッドマイクログリッド実験システムを用いた母線電圧の安定化効果に関する検討

◎五十嵐隼斗・呉 国紅（東北学院大学）

近年，太陽光発電や風力発電等の発電電力量に変動性および不確定性のある再生可能エネルギー発電を安定かつ高効率に利用できるために，マイクログリッド技術が注目を浴びている。本研究では，大学にて設計・導入された「ハイブリッドマイクログリッド実験システム」を用いて実験検討を行い，太陽光発電と風力発電や負荷変動による直流と交流母線の電圧変動に対し，2種類の電力貯蔵装置（蓄電池とEDLC）の充放電制御およびバックアップ電源であるディーゼル発電機の自動電力補償からなる協調制御による交直流母線電圧の安定化効果を検証し，設計導入したマイクログリッド実験システムの有効性を確認した。

6-164

EVによる仮想電力線及びリユース蓄電池を用いた地域マイクログリッドの基礎検討

○林田 淳（北海道立総合研究機構/北海道大学）・白土博康（北海道立総合研究機構）・原 亮一（北海道大学）・中村健太郎・中島達人（東京都市大学）

本報告では，バイオガスプラントと街区間のエネルギー輸送方法として，平常時は，既設の配電網を活用し，非常にはEVによる仮想電力線を用いる地域マイクログリッドモデルを提案する。非常時のためだけの設備導入はせず平常時に活用していく，持続可能かつレジリエンスを有する地域マイクログリッドモデルである。今回，地域マイクログリッドの需給マッチングの基礎的な検討として，非常時モデルで，仮想電力線として活用するためのEV運用についてシミュレーションで評価したので報告する。

6-165

水素蓄電システムを備えたマイクログリッドの需給運用計画と電力貯蔵設備容量の同時最適化

◎原田健登・高野浩貴・浅野浩志・神原信志（岐阜大学）

電力を水素として蓄え，蓄えた水素を電力として利用することができる，水素蓄電システム（HESS: Hydrogen energy storage system）が注目されており，マイクログリッドへの導入も検討されている。HESSは電力貯蔵設備の一つであり，マイクログリッドの電力需給バランス維持に貢献するものと期待される。著者らは，マイクログリッドの需給運用計画と蓄電池容量とを同時に最適化する問題の枠組みを提案してきた。ただし，この枠組みでは，HESSの特徴の一つである，水素を水素のまま取引することは想定していない。本稿では，水素の外部取引も視野に含めて需給運用計画と電力貯蔵設備（蓄電池とHESS）容量を同時に最適化する枠組みへと拡張した結果を報告する。

6-166

EKFに基づくマイクログリッドにおける蓄電池SOCの予測に関する研究

◎MINGCHONG FU（明治大学）

マイクログリッドやデジタルグリッドなどの自立給電システムは，エネルギー供給源と消費施設を一定の範囲でまとめて，エネルギーを地産地消する仕組みのことである。発電設備，負荷設備，電力貯蔵設備の三つの部分があるが，電力貯蔵設備はマイクログリッドにおいて最も重要な部分となる。そして，蓄電池の運用状況はマイクログリッドの安定性に関わる。しかし，蓄電池の化学反応は不安定であり，SOC（State Of Charge）等を直接測定するのは不可能であるため，蓄電池内部の各パラメータを解明する手法は世界中の研究者に注目されている。本稿では，鉛蓄電池を主な研究対象として，二次RC等価回路モデルとEKF（Extended Kalman Filter）アルゴリズムによる蓄電池のSOC予測法について提案し，実験で得られた実測値とシミュレーションで得られた予測値を比較することで，EKFによるSOC予測の可能性について検証する。

6-167

余剰電力補償を提供するマイクログリッドにおけるカルノーバッテリーの導入可能性の基礎検討

◎青木凜太郎・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

近年RE電源の増加に伴い，余剰電力の問題が発生しており，対策の実装が急務である。著者らは，マイクログリッド（MG）がこの問題に貢献可能ではないかと考えたが，余剰電力補償の実現に資する主要設備である蓄電池は，コスト面に課題がある。そこで本研究では，カルノーバッテリー（CB）と呼ばれる，電熱変換可能な蓄エネシステムを蓄電池の代替設備として導入することを検討している。CBはエネルギー変換効率や即応性の面で蓄電池に劣るものの，蓄電池より安価であり，長周期の蓄エネ用途においては有利になる可能性が期待される。本稿では，余剰電力補償を行うMGへのCBの導入可能性を，最適化容量設計によって分析する。

6-168

潮流方程式と需要家DER群モデルによるマイクログリッド多目的EMS方式の初期検討

◎齋藤龍平・飯野 穣・石井綱吉・林 泰弘（早稲田大学）・内山慎距・生石光平・森 健二郎（東京電力パワーグリッド）

近年，太陽光発電などの再生可能エネルギーを含む分散型エネルギー資源の需要家サイドへの導入が進んでいるが，電圧や電力潮流の変動増大・複雑化による電圧逸脱や配電ロスの増加など多くの問題が指摘されている。こうした問題の解決手段の一つとして，地産地消型のマイクログリッドが着目されているが，経済性と環境性の両立という課題に対し，マイクログリッドの付加価値の創出が求められている。本稿では，配電ロスや電圧差など多種の評価指標に着目し，潮流方程式に基づき，需要家DERを最大限活用するための最適潮流計算問題として多目的最適化問題の定式化を試みた。計算結果から，各評価指標間のトレードオフの関係を確認し，提案手法の妥当性を示した。

6-169

BWOAとDEアルゴリズムを用いたマイクログリッドの最適経済運用計画手法に関する研究

◎髙野光二・呉 国紅（東北学院大学）

本論文では，今後の電力系統へ大量に導入される太陽光等の再生可能エネルギー発電を効率的に運用できるマイクログリッドの最適経済運用計画問題について検討する。そのために，マイクログリッドにおける再エネ発電の電力不足を補うためのバックアップ電源である発電機の起動停止（UC）問題を考慮に入れ，BWOAとDEアルゴリズムを組み合わせたハイブリッド最適計算手法を提案した。さらに，この手法を適用しシミュレーションを行い，実測データを基づいた3日間のPVと風力発電量を考慮に入れ，マイクログリッドにおいて各種制約条件を満たしつつ，発電機のUC問題を取り込んだ経済負荷配分が行われ，バッテリーの適切な運用スケジュールも同時に得られたことにより，本手法の有効性を確認できた。

6-170

電力・熱供給率を考慮したオフグリッドの最適容量設計に関する基礎検討

◎井原隼希・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）・竹内雅靖・藤原基伸（日新電機）

近年，都市部への人口流出と少子化に伴い過疎化地域が増加しており，コスト削減の観点から過疎化地域のオフグリッド（OG）化が注目されている。OGを設計する際にはコストや信頼性，CO₂排出量などを考慮する必要がある。著者らはOGが若干の供給支障を許容する前提で設計した場合にどの程度のコスト削減が達成されうるかに着目している。電力・熱需要の常時の抑制を一定量許容したうえで，設備費・運用費の総和を最小とするようなOGの最適容量設計手法を提案する。また電力や熱の供給率と各設備導入量・総コストとの関係についてモデル地域を対象に評価する。数値試算により需要抑制のコストメリットを示した。

6-171

マイクログリッドのDC連系を利用した災害時に自立可能な地域電力供給システムの研究

◎棚澤龍之進・新海 健・李 寧・原 登（東京工科大学）

災害発生直後に近隣マイクログリッド間で，残存する健全設備とできるだけシンプルな自営DC連系を用いて双方向電力融通することで，災害時に地域で電力自立可能なシステムを目指す。東京工科大学と周辺に3つの仮想直流グリッドを想定し，災害後3日間の電力自立に必要な電力需要と融通量を検討した。また，DC連系について，連系線両端に設けた双方向の昇降圧チョッパの制御や運用問題点をシミュレーションと製作した実験装置で検証した。3グリッドのDC連携の小型実験装置を製作し，3グリッド間の電力潮流をduty比制御で行うことができた。また，連系線の異常な過電圧の発生する条件を見つけ，抑制する制御方法を検討した。

6-172

データドリブンによる短時間日射量予測技術の高度化

○岡田 牧・宇都宮健志・佐々木 潤・澤田真宏・山口浩司（日本気象協会）

著者らはNEDOの委託研究の一環として，数時間程度先までの日射量予測技術を開発している。本研究では，数時間先までの日射量予測を高度化するため，気象衛星ひまわり8・9号の画像を使い，物理学とAI（深層学習）を融合した新たな日射量予測モデルを提案し，3時間程度先までの予測でベンチマークと比較して約20%の改善を実現した。現在，この日射量予測の予測時間を6時間先まで延長することに取り組んでいる。この取り組みに当たり，雲物理過程の改良や初期時刻を未明にした予測技術の開発を実施している。加えて，予測の不確実性を表現する信頼度予測技術の開発も実施している。今回，これらの予測技術の開発状況を紹介する。

6-173

GISデータを用いた太陽光発電広域ポテンシャルの把握と発電能力評価

◎五十嵐大珠・崔 錦丹・植田 譲（東京理科大学）

本研究では，建物単体のみで電力の自給自足を考えるのではなく，太陽光発電を地域単位で導入することを考え，都市全域における太陽光発電システムの導入拠点の抽出と広域電力ポテンシャルを把握し地域内における電力需要と比較することで，主として都市において電力の地産地消の可能性を発電能力として評価することを目的とする。具体的には，ArcGIS（地理情報システム）を用いて東京都葛飾区を対象に太陽光発電システムの導入可能地点抽出方法を開発し発電ポテンシャルを可視化する。また，葛飾区の用途別の電力消費量と発電ポテンシャルの比較を行った。その結果，葛飾区では電力消費の大部分を太陽光発電により賄えるという試算結果を得た。

6-174

衛星画像を用いた電力需要予測の基礎検討

◎新沢 陸・浦野昌一（明治大学）

電力需要は人々の動きに大きく関係している。そのため，高精度な予測が求められている。また，電力需要は天気に大きく左右されるため天気を考慮して需要予測を行う必要がある。そこで，本稿では，1時間ごとの天気を把握するために衛星画像を用いる。衛星画像からは雲量，雲種，雲頂高度など様々な情報を得ることが出来るが，本稿では基礎検討として衛星画像から雲量を求め，電力需要予測の特徴量とすることで，予測精度向上を目指す。

6-175

全天空画像から求めた最大二方向の雲流推定結果に対する時間平滑化

◎脇坂 颯・坂東隆宏・伊藤 翼・宮原由紀・滝川浩史（豊橋技術科学大学）・平塚元久・真木志郎（エイム）

我々は，太陽光発電所での日射量予測のために，全天空画像より導出できるオプティカルフローを用いて雲流（雲の流れ）方向を推定してきた。これまでの研究では，円周標準偏差の閾値を設定することで，最大二方向の雲流を判定することができた。一方で，推定した雲流方向に瞬時的に大きな誤差が生じる場合があった。そこで，本研究では，雲流方向の推定結果に対して様々な時間平滑化法を検討し，瞬時的に発生する誤差の低減方法を開発した。

6-176

予測技術を活用したデマンド算出方法の検討

○児玉安広・大谷謙仁（産業技術総合研究所）・植村 篤（葛尾創生電力）

太陽光発電蓄電池を活用して不足する電力を購入し電力供給を行う電力事業において，デマンドピークと購入電力量を削減することは収益確保の観点から重要となる。将来の電力需要やPV発電量を予測することでより低減したデマンドを推定できれば電力購入コストの削減につながり，時間に対し一定値にすることができればインバランスリスク回避にもつながる。そこで，本稿ではPV発電と電力需要の実データと予測値から，最適化手法を用いてデマンドを低減する方策について検討する。時間に対して一定値に近いデマンドを正確に予測できれば，インバランスリスクの回避にも繋がる。

6-177

分位点回帰を用いた太陽光と風力発電の統合予測モデル

◎野村成孝・小平大輔（筑波大学）

近年，太陽光発電と風力発電の導入が加速化しているが，それらの発電量は天候に大きく依存し，変動が激しく予測が困難である。特に，Day-ahead marketにおいて再生可能エネルギーの予測精度が低下すると，発電量の予測と実際の差（インバランス）が生じ，利益減少に繋がることが指摘されている。本稿では，太陽光と風力発電の総発電量を予測するために，分位点回帰を用いた2つのモデルを提案した。季節性と非季節性の条件下での予測を行い，ピンボールロスで評価をした。その結果，季節性を考慮した条件（Seasonal）で，総発電量を直接的に予測するモデル（DQM）が有効であることが示された。

6-178

PV出力・負荷分離ツールによる給電運転支援

○塚本政和（中部電力パワーグリッド）

太陽光発電連係が進んだ系統における停電故障時は，PV脱落によって復電時に設備過負荷となる恐れがある。給電制御所向けのオンラインPとQのみを用いて，PV出力と負荷を分離解析する手法と，その適用性評価を報告してきた。この手法を用い，給電制御所の運転員に停電直前のPV出力を提供するツールを開発した。このツールは，リアルタイムでのPV出力を表示し，系統ブロック・送電線単位での区分け，PV設備量からのPV稼働率も確認出来る。給電制御システムに連係した既存の情報収集用PC端末に搭載し，日射量計や衛星気象データが不要なため経済性に優れている。9か月に及ぶ給電制御所での試行運用も良好で健全性を確認した。全ての給電制御所へ展開を検討。

6-179

オールインバータ系統におけるバッテリーの運用・制御

◎杉浦裕樹・加藤政一（東京電機大学）

小規模離島において，再生可能エネルギーのみで電力を供給したとき，オールインバータ系統が構成される。オールインバータ系統において，負荷変動に対してバッテリー間で協調性を持たせた状態で出力配分できるかの検討をする。また，バッテリーSOCに応じたバッテリーの運用計画を検討する。

6-180

洋上ウィンドファーム～陸上系統間三端子海底直流送電の制御手法の基礎検討

◎松山喬斗・中島達人（東京都市大学）

世界的なエネルギー資源の枯渇，地球温暖化の対策として，再生可能エネルギー電源の導入拡大が見込まれる。しかし，日本の風力発電の適地は陸上の風力発電の開発により減少してきている。そこで，陸上よりも風況に優れ，大量導入が可能である洋上風力発電が注目を集めているが，洋上風力発電所から需要地までは長距離であるため，長距離に適した送電方式の選定が必要となる。直流送電は，交流送電とは異なり，送電線に無効電力が発生せず，電流容量の小さなケーブルで送電可能であり，長距離ケーブル送電では交流送電よりも経済的であることから，洋上風力発電と陸上系統を結ぶ海底直流送電が期待されている。また，洋上風力発電と陸上系統は二端子直流送電で結ぶことも考えられるが，複数の陸上系統へ発電出力を供給したり，発電出力が低い場合に直流海底ケーブルの空き容量を地域間連系線として活用することも考慮して，三端子直流送電を構成することも選択肢の一つとして考えられる。本論文では，洋上風力発電と陸上系統間の三端子海底直流送電について，発電出力を二つの陸上系統に安定に配分するための制御手法の基礎検討を行った結果を報告する。

6-181

複数太陽光発電の余剰電力による水電解水素製造のための協調制御手法の提案

◎須藤飛竜・占部千由・加藤丈佳（名古屋大学）

将来，太陽光発電（PV）の大量導入によって，大量の余剰電力の発生が見込まれる。その有望な活用方法として水電解水素製造（以下WEHP）が期待される。PV余剰電力のみでFH2R規模（10MW）のWEHPを賄うには複数PVの余剰電力を活用することが想定される。本研究では，複数台のPVとWEHPとの具体的な協調制御手法を提案する。協調制御の目的は，系統へ送ることができるP V出力に一定の上限が課された状況でも，アグリゲータが各PVとWEHPの運転状況や種々の制約を考慮してPVに出力上限制御を行い，PV出力を最大限に系統に出力し，その上でPV余剰電力をWEHPに最大限用いることである。シミュレーションの結果，本提案手法により，概ね目的に沿った協調制御ができた。

6-182

MSMの時間先予測精度と深層学習による日射予測手法

◎野村大輝（福井大学）

急速に普及する太陽光発電（PV）システムの安定運用のため，日射量予測手法の重要性が注目されている。本研究では，気象庁発行のメソ数値予報モデル（MSM）を用い，LSTMおよびTransformerモデルによる日射量予測手法を提案する。またMSMの予報を更新することでの日射量予測精度の分析を報告する。MSMの予測精度分析では，予報更新による予測誤差の減少が確認された。提案手法では，LSTM，Transformer，および両者を組み合わせた手法を構築し，これらのモデルの性能を比較した。結果として，LSTMとTransformerを組み合わせた手法が最も優れた予測精度を示した。LSTMとTransformerを組み合わせた手法では両手法の欠点は改善され，RMSEは0.1543となり，単独の手法よりも精度が向上した。

6-183

太陽光発電の個別計測データに基づくエリア総出力の推定手法に関する検討

◎黒﨑太輔・河辺賢一（東京工業大学）

太陽光発電（以下PV）の大量導入に伴い，系統運用者がPVの出力を直接把握することが困難となっている。このことは，需給バランス制約や熱容量制約といった系統運用における種々の制約違反の原因になる恐れがある。これに対し，近年導入が進んでいるスマートメータ等によって計測された個別のPV出力から，エリア全体の出力を推定する方法が考えられている。本論文では，スマートメータ等によって計測された特定エリアにおける一部のPV群の30分電力量積算値を用いて，特定エリアのPV群の総出力を推定する一手法の提案，及び推定に用いる個別PV群の違いが推定精度に与える影響について考察する。

6-184

複数アンサンブル予報を使った統合予報による東京電力エリア前日日射予報の過大大外し低減

◎高松尚宏・中島 虹・大竹秀明・大関 崇（産業技術総合研究所）・山口浩司（日本気象協会）

本研究では，気象庁が運用するEPSであるGEPSとMEPSが生成する複数予報データを入力として，複数の機械学習を組み合わせたモデルを構成し，平均的な予報精度だけでなく過大大外しの改善も両立する前日日射予報モデルについて検討をおこなった。東京電力エリアを対象として，2021-05-01～2021-07-01のデータ期間で予報モデルの訓練とテストを行った結果，全ての予報を統合したモデルはベンチマーク前日予報に対しRMSEを2.47%，過大大外しを29.4%改善した結果が得られた。ただし，データ期間が限定的であることから，結果の妥当性については使用データ期間を長くするなどの検証が今後必要となる。

6-185

風力低発電をもたらす強風継続時間の将来変化

○岩永博之・山口和貴（東京電力ホールディングス）

洋上風力発電普及の機運が高まっている中で，本研究は地球温暖化に伴ってカットアウトより強い風速の継続が風力低発電をもたらす可能性を検討した。気候予測データセット（本州域d4PDFダウンスケーリング）を用いて，工業化前比2℃昇温想定と現在気候それぞれの強風最長継続時間を月別で解析し，その将来変化量を得た。その結果，月ごとでその分布は大きく変化し，10月は西日本の太平洋側，1月は日本海西部と関東沖の一部で最長継続時間が最大24時間程度長くなる結果が得られた。これらの結果から，将来の風力低発電リスクは弱風側だけでなく，カットアウトを超える強風の継続によっても高まる可能性があることがわかった。

6-186

蓄電池併設型太陽光発電システムにおけるVolt-VAR制御による電圧変動制御手法

◎内田詢人・前田はるか・Sitompul Sandro・藤田吾郎（芝浦工業大学）

近年，CO2排出量削減を目的とした再生可能エネルギーの導入量を増やす取り組みが進められ，その中でも太陽光発電（PV）の導入量が増加している。PVの系統連系を行う際には，電圧変動を適切な範囲内で維持する必要があり，SVC（静止型無効電力補償装置）などの電圧制御装置が変動抑制のために使用されている。しかし，九州地方などPVの導入量が高い地域では，事業者による電圧制御だけでは電圧変動が十分に抑えられないケースが出てきている。本稿では，PVの大量導入に伴う電圧変動をSVCにとって変わるスマートインバータによるVolt-VAR制御と蓄電池の充放電を用いて抑制する手法を提案する。

6-187

太陽光発電システムの出力電力減少時におけるPCSの挙動に関する実験的検討

○山中光樹・清水洋隆（職業能力開発総合大学校）・横水康伸（名古屋大学）

太陽光発電システムから配電系統に逆潮流される電力は，ある値（以降，出力限界値）以下に制限される。太陽光発電システムの出力電力が出力限界値に近づくと，パワーコンディショナ（PCS）が制御不能に陥る。これまでに，配電線の途中に連系された太陽光発電システムの出力電力が減少することによって，配電線末端に連系された太陽光発電システムの出力限界値が低下し，PCSが制御不能に陥る条件があることを，計算機シミュレーションにより示している。今回，配電線の途中に連系された太陽光発電システムの出力電力が減少することによって，末端に連系された太陽光発電システムのPCSが制御不能に陥ることがあることを実験的に明らかにした。

6-188

太陽光発電システムが集中連系した場合と分散連系した場合の配電線電圧の比較

○清水洋隆・酒井 颯・山中光樹（職業能力開発総合大学校）

配電系統に連系された太陽光発電システムの出力電力の増加にともない，配電線電圧が適正範囲から逸脱することが懸念されている。今回，太陽光発電システムが配電線末端に集中して連系された場合と配電線に沿って分散して連系された場合の配電線電圧を理論的に求め，比較・検討した。太陽光発電システムが集中連系された場合に連系点電圧が大きく低下するような出力電力と同じ大きさの電力が，分散連系された太陽光発電システムから出力されたとしても，配電線電圧は適正範囲内の値となることを示した。

6-189

自立型ナノグリッドを活用した自動運転EVバス公道走行実証実験に関する分析と評価

◎Thantip Krasienapibal・安ヶ平裕介・岡本 守・竹本享史（日立製作所）・田中義一（マクニカ）

北海道岩見沢市に構築した自立型ナノグリッドを活用した自動運転EVバス公道走行実証実験を実施した期間中，温泉ガス，軽油，太陽光による発電割合は約55％，35％，10％であった。ナノグリッドの電力を活用したことで，CO₂排出量25%，電気代約90%の低減効果を確認できた。今後，環境負荷が少ない地域交通サービスの実現のために，自立型ナノグリッドの太陽光発電の利用率を向上するためのEVバスの運行条件及び充電条件の検討を進める必要がある。

6-190

営業用電気自動車の充電・車両交換逐次運用制御による営業所需要ピークシフトの検討

◎宮部稜士・藤本 悠・林 泰弘（早稲田大学）・市川哲理・遠藤秀樹（東京ガス）

カーボンニュートラル社会を目指す企業の取り組みの一環として，自社営業所で保有する営業車の電動化が加速している。しかし営業用電気自動車（CEVs）の導入は拠点内にCEV充電による新たな電力需要をもたらし，元々の建物負荷と加えてその拠点の契約電力を大幅に引き上げる原因となり，その影響は電力料金に反映される。そこで本稿では，契約電力の不用意な上昇回避を目的として，営業所の建物負荷を考慮した充電と営業業務にあたる車両の状況に応じた交換を逐次的に制御する枠組みを提案する。数値実験の結果は，充電制御だけでなく，車両交換も行うことが一層の契約電力上昇抑制に貢献する可能性とCEVsの電欠回避にも寄与し得る可能性を示した。

6-191

事業所内での電動トラックの充電による住宅地域の配電系統の電圧降下への影響評価

◎萬成遥子・八太啓之（電力中央研究所）

CO2削減を目的とした，商用車の電動化が推し進められている。しかし，その導入に伴い，充電による重負荷が生じると考えられる。特に，配電系統においては，重負荷による大幅な電圧降下が懸念される。筆者らは，商用車のうち，事業所から顧客への配送を担う小型トラックに焦点を置き，その電動化が配電系統の電圧変動に及ぼす影響評価に取り組んだ。その評価のため，過去の文献をもとに電動トラックを導入した事業所の電力消費モデルを作成し，これを用いて住宅地域の配電系統の潮流計算を行った。その結果，事業所への50kWの急速充電器と電動トラックの導入台数が10台を超えた段階で，重負荷による電圧逸脱が生じうることが確認された。

6-192

FVSIを用いたEVの移動による面的影響評価

◎山田夏鈴（福井大学）

再エネ導入や交通電化に伴う系統安定性低下に対して，EVによる周波数や電圧安定性への貢献が期待されている。また，近年の系統変遷においては，発電機や系統の動揺などのダイナミクスを考慮した系統評価が必要である。汎用的な系統評価手法である潮流計算は線路インピーダンス等を考慮した面的評価が可能な一方ダイナミクスは考慮しない。本研究では潮流計算に動揺方程式・系統周波数応答特性モデルを組み合わせることで，面的な系統ダイナミクスの安定性評価を目指す。本稿では前段階として，EVの移動が電圧安定性に与える影響をFVSIにより評価した。その結果，EVの移動を行うことで系統の電圧安定性を向上可能なことがわかった。

6-193

将来的な配電系統混雑解消のための系統用蓄電池の導入場所に関する初期検討

◎蔵口桜子・金子曜久・石井綱吉・林 泰弘（早稲田大学）・小林将矢・長谷川匡彦・唐澤利史・吉永 淳（東京電力ホールディングス）

近年，脱炭素社会の実現に向け，太陽光発電（PV）の大量導入が進んでいる。一方で，将来的なPVの大量導入による配電系統の線路容量超過の発生が懸念されている。この問題に対し，今後更なる導入が進んだ場合の解決策の1つとして，蓄電池（BESS）の利用が考えられる。BESSは，日中のPVの発電電力を充電し，それ以外の時間帯の負荷に供給するといった電力流通の時間シフトが可能であるため，PV発電による線路容量超過の解消に貢献できると考えられる。しかし，PVの導入場所に対するBESSの適正電圧維持効果に関する検討は行われているものの，線路容量超過解消に必要なBESS容量選定については，これまで十分な評価が行われていない。本研究では，大量のPVが導入される将来的な配電系統を想定し，線路容量超過解消のためのBESSの設置場所と必要となる容量の関係について評価する。

6-194

EVトラックのバッテリー容量に関する考察

◎広瀬みやび・田村 滋（明治大学）

2050 年カーボンニュートラルの実現に向けて，輸送部門の二酸化炭素排出量を削減するために，日本政府は 2030 年代半ばまでにガソリンエンジンやディーゼルエンジンの新車販売を禁止すると宣言している。日本の運輸部門の二酸化炭素排出量において，旅客自動車がその 47%，貨物自動車が約 40%を排出しており，日本は乗用車だけでなく貨物車の EV（Electric Vehicle）を急速に普及させる必要がある。本研究の目的は，国土交通省の道路交通センサスデータから得られる貨物車の走行データを用いて，EV トラックに適したバッテリー容量を検討することである。

6-195

再生可能エネルギー出力制御軽減のためのEV充放電計画の検討

◎井上太陽・田村 滋（明治大学）

2050 年カーボンニュートラルを達成するために，経済産業省のエネルギー基本計画における2030年度の発電構成の目標において，再生可能エネルギー（再エネ）は 2019 年度 18%程度に対し，2030 年度は 36%～38%程度としており，今後益々再エネが増えていく。再エネが大量導入されると，休日などの軽負荷時に発電余剰の問題が発生することから，再エネ出力制御が今まで以上に高頻度で実施されることが予想される。本研究の目的は，再エネの有効活用の観点から再エネ出力制御をできる限り小なくするために，EV の最適な充放電計画を立てることにある。先行研究においては再エネ出力制御量を制約条件とし，制約条件を緩和しながら充放電計画を策定した。本論文では再エネ出力制御緩和量を目的関数に入れた定式化によるシミュレーションを評価する。

6-196

BESS（蓄電池システム）の実効値解析モデルの開発

◎浅田晴菜・田岡久雄（大和大学）・重信颯人・髙橋明子・伊藤雅一（福井大学）

BESSの充放電を制御し，慣性と同期化力を与えるBESSの実効値解析モデルの開発を目的とした。本稿では，解析対象の系統の規模を小規模な系統とした。BESSのモデルは，GFM（Grid Forming Inverter）を擬似的に模擬するために同期発電機モデルを用い，発電機出力指令値をプラスからマイナスまでの範囲を持たせることによりBESSの充放電特性を模擬した。

6-197

地域PV余剰電力の利用向上のための電気バス充電計画：気温不確実性が電力消費に及ぼす影響評価

◎中野はるか・藤本 悠・金子奈々恵・楊 イ翔・井原雄人・林 泰弘（早稲田大学）

近年カーボンニュートラルに向けて，CO2フリー電力による車両走行，及び太陽光発電に起因する変電所の混雑回避に繋がる，交通分野での再エネ利用が期待されている。一方車両電化において，バス事業者は運行計画の不履行回避のため，従前の給油に比べて時間を要する充電の実現，及び運行途中の電力不足（電欠）の防止に関する検討が求められている。本稿では地域PV余剰電力の利用を向上させる電気バスの運行前充電計画策定を考え，電気バスの消費電力が重量や空調利用等の影響を受けること，実際の当日の乗客数や気温等の走行状況に応じて運行不履行リスクも左右され得ることをふまえ，気温予報不確実性が充電計画の実行可能性に与える影響に注目した。分位点予測モデルにより不確実性による影響を見積もる提案手法により，検証において電欠リスクの低減および地域余剰利用の向上を確認した。

6-198

EVを活用したオフグリッドにおける配電系統運用の経済性評価

◎市原祐大・中村勇太・青木 睦（名古屋工業大学）・武藤貴昭・栄田信吾（中部電力）・彦山和久（中部電力パワーグリッド）

近年，再エネ由来電源の普及により，オフグリッド（OG）による電力運用が注目を集めている。OG化により撤去された配電設備分の維持費の削減等が期待される。しかしながら，OGの実現には，大容量の蓄電池などの蓄エネルギー装置やその他の可制御電源が必要となる。そのため，OGの構成機器の一つとして電気自動車（EV）を活用し，OG外の系統で充電した電力をOG内の需要に供給することが検討されている。ところが，その評価にはEVの移動による電力消費を含む各種損失については検討されていない。そこで本研究では，EVを活用したOG化に必要な各機器の容量や運用方法，配電系統における損失を評価し，経済的な観点から明らかにする。

6-199

大規模蓄電制御システムのプラットフォーム開発

◎榎本賢也・石綿敏之・松平源喜・鈴木元治・金本真依・佐藤 進・豊沢武彦・毛内俊晴（富士電機）・森下優斗（富士アイティ）

ウインドファームやメガソーラ発電所併設型蓄電池のほか，系統運用型の大型蓄電池システム，マイクログリッド等の独立系統における分散型の需給調整制御，蓄電池アグリゲーションによるVPP（Virtual Power Plant）システム構築等，様々な蓄電システムの構築・運用実績を積んできた。これらの経験をもとに，国内外の蓄電池と大容量PCSを組み合わせて，多様な用途に迅速かつ低コストで対応できる蓄電システムのプラットフォーム化を進めている。今回，このプラットフォームを用いて150MWを超える出力に対応した系統用蓄電池の制御システムを構築し，検証評価を実施したので報告する。

6-200

蓄電池の二次利用・長寿命化のための技術-概要-

○水谷麻美・井出 誠・亦野智博（東芝インフラシステムズ）・三ッ本憲史（東芝エネルギーシステムズ）

蓄電池のリサイクル，リユース，リファービッシュといった従来から提唱されている二次利用に加えて，劣化した電池を特定しシステム寿命を延伸させるリプレース，およびリロケーション（再配置）について，それぞれの手法の効果と解決すべき課題を抽出した。

6-201

蓄電池の二次利用・長寿命化のための技術－平均電圧差を用いた劣化電池の抽出手法－

○亦野智博・水谷麻実・井出 誠（東芝インフラシステムズ）・三ッ本憲史（東芝エネルギーシステムズ）

リプレース及びリロケーション（再配置）による蓄電池システムの寿命延伸を目的とし，平均電圧差を用いて運用データから劣化した蓄電池を抽出する手法の提案と評価結果を示す。

6-202

蓄電池の二次利用・長寿命化のための技術-実証機へのリロケイション適用-

○井出 誠・水谷麻美・亦野智博（東芝インフラシステムズ）・三ッ本憲史（東芝エネルギーシステムズ）

蓄電池システムの性能改善を図るための保守技術として，蓄電池劣化の指標のひとつである内部抵抗に基づき，劣化状態のばらつきを解消するリロケイション（再配置）を実証機に適用し，その有効性を評価した結果を報告する。

6-203

電気自動車充電実験シームレスシステムの構築

○今中政輝・馬場博幸（東京大学）・松村 淳（IoT-EX）

再生可能エネルギーの大量導入に向けて必要となる調整力を確保する上で，電気自動車やハイブリッド車（以下，EV等）の充電制御への関心が高まっている。また，EV等の普及促進には魅力的な充電サービスの開発は急務である。そうしたEV等の充電制御や充電サービス（以下，充電サービス等）を社会実装するには，研究者による実現可能性確認を経て，EV等のユーザに試験的に使用してもらいフィードバックを得ることが重要である。しかし，研究者が開発したアルゴリズムをユーザが使用するには，スマートフォンなどのアプリの開発に労力がかかる。本研究では，研究者の実験からユーザ用のアプリでの試験にシームレスに移行できるシステムの開発を行ったので報告する。

6-204

EVの用途・車両サイズを考慮したV2Hの効果検証

◎沖津郁弥（日本工業大学）

地球温暖化などの環境問題の深刻化から，カーボンニュートラルに向けた取組みが注目されている。家庭部門では，ZEHやLCCM住宅などの低環境負荷住宅や電気自動車（EV）の導入が増加傾向にある。さらに，防災レジリエンスの観点では，エネルギー供給支障に耐えうる住宅が求められている。近年では，住宅とEV間で電力融通を行うV2Hを採用することで電力レジリエンスの向上も期待されている。だが，自動車の利用状況によりその効果が限定的なものとなることが懸念される。そこで，本研究では，車両規格，用途別にV2Hの住宅敷地内におけるエネルギー自給率向上と環境負荷低減効果を数値解析により明らかにすることを目的とする。

6-205

持続可能なV2Hによる停電復旧におけるEV台数最小化の基礎検討

◎後藤 巧・稲垣有都・登 淳史・益田泰輔（名城大学）・Tayjasanant Thavatchai（Chulalongkorn University）

本研究グループでは，配電線が使用できない緊急時にEVの移動できる蓄電池としての性質に注目した停電復旧手法について検討を進め，配電線が使用できる区間でEVを充電し，停電区間で放電しているEVと交替させる持続可能な電力供給手法を提案した。本論文では停電復旧および持続可能な電力供給に必要なEVの最小台数を調べた。EV台数の最小化を目的関数とする混合整数線形計画問題として交替運用を定式化し，持続可能なEV交替運用を作成した。また，上記のシミュレーションはEVの移動が考慮できないため，作成された交替運用を用いてEVが実際に移動した場合，EVの移動時間と移動距離，またEVの交替回数によっては作成した運用では停電復旧が困難になることを明らかにした。

6-206

実地域におけるEV充電需要を考慮した配電系統シミュレーション分析

◎大日方将人・内田英明・芳澤信哉・山口容平・重松朋生・太田 豊・下田吉之（大阪大学）・池本佳史・南 雅弘・竹田圭一（関西電力送配電）

脱炭素社会実現に向け，太陽光発電（PV）をはじめとした再生可能エネルギーや電気自動車（EV）等の分散型エネルギーリソース（DER）の導入が進められる一方で，DER導入時に配電網において電圧不安定化や需要ひっ迫などの課題が生じることが指摘されている。本研究では，メガソーラーを含むPV普及が進む1配電所7フィーダー規模の地域を対象に，EVの普及が配電系統に与える影響の詳細なシミュレーションを実施した。その結果，地理的に広がりをもつフィーダーの電圧変動がより大きいことが分かった。対象地域は今後更にPV導入が進む一方で，電力需要の増加は見込めないと予想され，PVによる電圧不安定化現象はより顕著になることが想定される

6-207

収益向上を目指した強化学習による蓄電池制御

◎後藤拓也・小平大輔（筑波大学）

再生可能エネルギーの導入に向けて，再生可能エネルギーや電気自動車，蓄電池といった小規模な分散型エネルギーリソースを1つの発電所としてみなし，制御するVPPが注目されている。しかし，VPPの実証実験では太陽光発電の予測誤差や蓄電池の容量など，制御の失敗によってインバランス料金が発生し，VPPに携わるアグリゲータの収益低下を招く。本研究では，PV予測を決定論的ではなく確率論的に予測し，予測値が実績から外れたリスクを考慮しながら深層強化学習を用いて蓄電池の充放電計画を決定する手法を提案する。この充放電計画によって，蓄電池がなかった場合の結果と比較し，収益を改善することが認められた。

6-208

蓄電池と水電解装置の複合システムにおける需給調整市場に対応した制御手法の検討

◎綱分智則・小藤健太郎・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

系統用蓄電池と水電解装置を組み合わせたマルチリソースシステムを対象に，需給調整市場に対応した制御手法の検討を行った。系統用蓄電池で調整力を供出する場合，要求される応答性を有したΔkWの確保だけでなく，供出する時間内に指令値に追従するための電力量（kWh）が必要となる。そこで提案制御手法では，水電解装置と蓄電池の間で電力を融通させることで需給調整に必要な電力量を確保させる制御アルゴリズムを開発した。これにより，高速な応答が求められる一次調整力について，蓄電池の調整力用に確保したkWh容量を超える調整力を供出可能となることを示した。

6-209

直流配電線を介した電力融通についてのシミュレーション

◎西垣安貴・岡本和馬・河内祐也・久富和郎・大野裕之（ダイヘン）・坂本拓哉・米澤憲人・湧谷栄之（関西電力送配電）

これまで我々は直流配電線を介して太陽光発電と蓄電池が設置された2軒の住宅間の電力融通をする実証実験を行ってきた。実証実験では，系統に複数分散設置された蓄電池を電圧源として直流配電線の電圧を維持し，各蓄電池DC/DC出力電圧の制御により住宅間の電力融通をしてきたが，複数の蓄電池の制御干渉により配電線電圧が不安定化する懸念がある。本報では，過去の実証実験の懸念事象の確認とその解決を目指し，より多くの住宅が接続された回路モデルをMATLABにて作成し，シミュレーションを行った。その結果，蓄電池が複数接続する場合でも各蓄電池の制御を最適化すれば任意の電力融通を行いながら配電線電圧を安定させることができることが分かった。

6-210

超電導限流器が導入された多端子直流送電システムの限流協調

◎西澤大将・小島寛樹・早川直樹（名古屋大学）

多端子直流送電システムでは，直流遮断器の責務軽減等の観点から，超電導限流器（SFCL）による故障電流抑制効果が期待される。SFCL動作時には，過渡安定度を含めたSFCL間およびSFCLと直流/交流システムとの限流協調が重要となると同時に，液体窒素（LN2）中に気泡が発生し，定格電圧下で動的絶縁破壊が発生する可能性がある。今回は抵抗型SFCLが導入された多端子直流送電システムに関して，複数の故障点での正極性地絡故障をPSCAD/EMTDCで解析することで，限流協調について検討した。結果として，複数のSFCLの限流効果，過渡安定度，動的絶縁破壊特性を考慮した限流協調が必要であることが確認された。

6-211

洋上風力発電からのケーブルによる送電系統を対象とした送電損失に関する検討

◎山田康暉・津坂亮博・七原俊也・雪田和人（愛知工業大学）

近年，風力発電などの導入量が増加傾向にある。しかしながら，風力発電を設置するための，陸上の適地は減少しつつある。その中でさらなる風力発電の導入のために，洋上風力発電が注目されている。筆者らは今までに，送電電力と受電電力の関係について分析を行うことで，大容量の送電を行った場合には，送電損失が増加し，受電できる電力には限界があることを明らかとした。一方，洋上風力発電は電力ケーブルを用いて長距離交流送電を行うことから，ケーブルの静電容量を考慮した分析が必要となる。そこで，本論文ではケーブルの静電容量を考慮した場合の受電できる電力の限界について解析し，短絡容量比を用いた考察を行う。

6-212

洋上風力発電の運転継続が可能な直流系統の非選択事故遮断

◎清水雅哉・佐野憲一朗（東京工業大学）

洋上風力発電設備を陸上交流系統へ連系する方法として多端子直流送電システム（直流系統）が検討されている。直流系統の直流事故保護の方法は，直流遮断器を用いる選択事故遮断方式と，交流遮断器を用いる非選択事故遮断方式に大別される。後者は既に実用化されている交流遮断器で構成できる利点があるが，事故遮断時に発電設備が脱落し，再連系までの時間が長期化してしまう課題がある。そこで本研究では，洋上風力発電設備が接続された端子の交流遮断器を開く必要のない新しい非選択事故遮断方式を提案する。提案法を用いることにより発電設備の運転継続が可能となり送電停止時間を大幅に短縮できることをシミュレーションにより確認した。

6-213

洋上風力発電用直流送電における出力電力抑制法

◎Binti Zainoren Maira Izammel・佐野憲一朗（東京工業大学）

洋上風力発電用の直流送電の場合，一般には発電設備側が送電電力を決定し，交流系統に連系する受電側変換器は直流電圧制御（DCAVR）を行うため，直流送電の出力電力を制御することができない。仮に受電側変換器で出力電力を制限すると，洋上風力発電側が送電を続けているため，直流電圧が上昇し変換器が過電圧で止まる。したがって，直流電圧の上昇の抑制を目的として，送電側変換器に出力抑制制御を適用することを提案する。これにより，受電側変換器で出力電力を一時的に抑制した際に，シミュレーションにより送電側変換器の出力を抑制して直流電圧の上昇を抑えたことで，直流送電システムが運転を継続できることを確認した。

6-214

多回線直流送電の構成と直流事故除去方式

◎榎本光芳・清水雅哉・若月圭眞・佐野憲一朗（東京工業大学）

近年，再生可能エネルギーの1つとして洋上風力発電が注目されている。この際，洋上の風力発電設備から陸上の交流系統へ海底ケーブルを介して送電する必要があるが，本送電方法として，大容量・長距離送電を行う場合は直流送電が適する。また，近年では洋上から陸上への送電に加え，陸上の系統間連系も行う，多用途多端子直流送電が注目されている。一方，多端子直流送電においては事故の広範囲への波及が懸念され，それを防ぐために直流遮断器の使用が考えられる。しかし，直流遮断器は複雑で高価なため多用できない。そこで本稿では，少ない直流遮断器数で直流事故時にすべての端子が運転継続可能な多回線直流送電を提案する。加えて，実験により取得した，事故時の挙動を報告する。

6-215

多回線直流送電における機械式直流遮断器の適用可能性の検討

◎若月圭眞・榎本光芳・佐野憲一朗（東京工業大学）

著者らは，複数の洋上風力発電設備を陸上の交流系統へ接続する方法として，1回線で事故が発生しても送電を継続できる，多回線直流送電を提案している。しかし，そこで使用を想定している直流遮断器の遮断遅延時間は 5 ms であり，それほど高速な直流遮断器は実用化の途上にある。そこで本稿では，より低速な直流遮断器を用いても同等の運転継続性能が得られるか，シミュレーションにより検証した。その結果，対称単極構成の多回線直流送電に対し，50 ms と比較的低速で動作する機械式直流遮断器が適用可能であることを示した。また，アレスタの制限電圧によって，アレスタの熱容量，直流遮断器の遮断容量，送電線の過電圧耐量の性能要件が大きく異なることを示した。

6-216

NEDO多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発（RIGHTプロジェクト）

◎下里明日香・西林秀修・廣瀬圭一・今野直樹・藤田 悟・小河原竜一・小笠原有香・山本航介（新エネルギー・産業技術総合開発機構）

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）では，再エネの中でも洋上風力発電に着目し，国内での洋上風力発電の普及に資する系統技術として多端子直流送電システム技術の確立を目指し，2015 年度から5 カ年間，「次世代洋上直流送電システム開発事業」（2）を実施し，その後継事業として，直流送電線を地域間への電力供給の用途に利用できる制御開発を加え，2020 年度から「多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発（RIGHT プロジェクト）」に取り組んできた。今回本事業の開発の一部である，多端子直流送電システムの開発概要を紹介する。

6-217

多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発その1 －双極方式の多端子直流送電システムのシミュレーション－

◎工藤悠生（東芝エネルギーシステムズ）・吉原 徹（日立製作所）・宇田涼介（三菱電機）・山田剛史（東京電力パワーグリッド）・松田 洋（東京電力ホールディングス）・鈴木秀樹（J-POWERビジネスサービス）・中島達人（東京都市大学）

洋上風力発電の導入に向け，直流送電線を多端子化して適切に保護・制御を行うことで，信頼性が高く効率的な送電を可能とする高電圧直流（HVDC）送電技術の開発が進められている。本稿では，双極方式の多用途多端子直流送電システムの動作をリアルタイムシミュレーションにより検証した結果を報告する。検証に使用したシステムは陸上2端子，洋上1端子の計3端子から構成されており，端子ごとに異なるメーカーの変換器モデルを使用したマルチベンダー構成となっている。全53ケースについて動作検証したうち，出力配分変更試験・WF出力急変試験・直流ケーブル事故試験の各1ケースずつに関して結果を詳述する。

6-218

多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発その2 －対称単極方式の島嶼負荷を追加した多端子直流送電システムのシミュレーション－

○山田剛史（東京電力パワーグリッド）・川崎 圭（東芝エネルギーシステムズ）・石田圭佑（三菱電機）・大田文彦（東京電力ホールディングス）・木田雄三（J-POWERビジネスサービス）・中島達人（東京都市大学）

筆者らは，2020年度から，国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）委託事業「多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発」実施している。本稿では多用途多端子直流送電システムのユースケースとして，洋上WFから近傍の島嶼系統に経由し本土系統へ送電するシステムのシミュレーションを実施し，島嶼群の内燃機関の削減等を考慮しつつ，直流送電システムの制御により島嶼システムを安定に運転できる可能性があること示した。

6-219

多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発その3 ―対称単極方式の多端子直流送電システムにおけるHIL試験システムの構築―

○冨永真志（三菱電機）・秋山雪菜（東芝エネルギーシステムズ）・原口瑠理子（日立製作所）・山田剛史（東京電力パワーグリッド）・春日 衛（東京電力ホールディングス）・堀越敬博（J-POWERビジネスサービス）・中島達人（東京都市大学）

日本では，産学官連携でのオールジャパンで直流送電（HVDC: High Voltage Direct Current）の技術開発を進めるべく，2020年度から2023年度にかけてNEDOプロジェクト「多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発」を推進中である。本稿では対称単極方式の多端子HVDCシステムにおけるHIL試験システムの構築について報告する。一部の制御機器の実機を製作し，RTDSシステムと組み合わせてリアルタイムシミュレーションによる検証が可能な試験環境を実現した。

6-220

多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発その4 ー対称単極方式の多端子直流送電システムのHIL試験結果ー

◎春日 衛（東京電力ホールディングス）・太田勝也（三菱電機）・原口瑠理子（日立製作所）・久米里奈（東芝エネルギーシステムズ）・山田剛史（東京電力パワーグリッド）・堀越敬博（J-POWERビジネスサービス）・中島達人（東京都市大学）

2020年度から国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）委託事業「多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発」において，マルチベンダ多端子直流送電システム（Multi-Terminal Direct Current : MTDC）の技術開発を進めている。本事業において，実機によるMTDCシステムの制御保護機能の実現可能性および実機のインターフェースや挙動を加味した検証を目的に，HIL（Hardware In the Loop）試験を実施した。本稿では対称単極方式のMTDCシステムのHIL試験の実施結果を報告する。

6-221

多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発その5 - 多端子直流送電システムの標準仕様書の策定 -

○吉原 徹（日立製作所）・藤原修平（三菱電機）・飯尾尚隆（東芝エネルギーシステムズ）・山田剛史（東京電力パワーグリッド）・松田 洋（東京電力ホールディングス）・木田雄三（J-POWERビジネスサービス）・中島達人（東京都市大学）

再エネ導入拡大や系統増強を背景に，世界各地でHVDCの導入が進められている。諸外国の直流送電は単一ベンダで構成されることがほとんどである。日本では，HVDC 普及を加速させるため，マルチベンダ多端子直流送電（MTDC）の技術開発を進めている。マルチベンダMTDC を構築する場合，システムの発注者や運用者の要望・仕様を複数ベンダで共有した上で連携し，システムを設計・製作するため，システム構築に多大な時間を要する。これまでに，MTDC に対する交直変換器間や各種制御・保護機器間の制御方法を整理し，ベンダ間の相互連携を支援するための標準仕様書を，前事業の「次世代洋上直流送電システム開発事業」にて作成した。現在，本事業の成果を基に，標準仕様書の内容を更新している。

6-222

小規模電源系統の同期安定性に与えるGrid-Formingインバータ連系電源の影響

○井上俊雄・小出 明（富山大学）

既設水力機を主体とした小規模電源系統に太陽光発電等の再エネ電源の新規連系が増加することで電源線が重潮流化し，既設機の内部位相角が増加して同期安定性が低下する場合が考えられる。本稿では想定した小規模電源系統において再エネ連系インバータにGFMを適用することで系統故障時の既設機の同期安定度（過渡）を向上できる効果を示した。

6-223

擬似慣性PCSによる過渡安定度向上効果の定量評価と効果的な連系点の特定

○東野正和・河内駿介（東芝エネルギーシステムズ）

従来のインバータ電源に慣性や同期化力を付与した擬似慣性PCSが注目されている。このうち擬似慣性GFLを対象とし，多機系統における事故時の系統安定度の向上効果を定量的に評価する手法を考案した。本手法は拡張等面積法を応用したもので，縮約した発電機の加減速エネルギーを指標とする。本手法をIEEE-9busモデルで検証し，擬似慣性GFLの導入容量に応じて変化する事故後の相差角ピーク値と評価指標値が同様の傾向をとり，脱調の有無を正確に評価できることを確認した。また，擬似慣性GFLの連系点を変えた時の安定化効果の差異を定量的に算出し，最も安定化効果の高い連系点の特定が可能であることを確認した。

6-224

自律負荷制御による疑似慣性供給の可能性

◎北村武尊・近藤潤次（東京理科大学）

同期発電機を用いず慣性を持たない分散型電源の普及に伴い，電力系統全体の慣性が低下し，擾乱発生後の周波数変化率（RoCoF）や周波数最大偏差（Nadir）の増加が懸念されている。本論文では，需要側の各負荷が自身で周波数変動を検知し，各々の消費電力を調整する「自律負荷制御」を行う際に，周波数変化率に応じて消費電力調整を行うことで系統に疑似慣性を供給できることを理論的に示した。さらに，小規模電力系統を用意し，実験的に自律負荷制御による周波数変動の抑制効果を調べた。実験の結果，周波数変化率に応じた消費電力調整の制御ゲインを高めることでNadirは減少し，小規模系統に疑似慣性を供給できることを実証した。

6-225

PV用PCS力率制御への深層強化学習の適用

◎松島史弥・青木 睦（名古屋工業大学）・上田勝久・Suresh Chand Verma・中津井紳司（中部電力）

近年の電力系統では太陽光発電（PV）の大量導入により潮流状態が複雑化し，系統の電圧調整が困難になってきている。本研究は，複数のPVが連系されている特別高圧系統（負荷供給系統）を対象として，PV用パワーコンディショニングシステム（PCS）の力率制御方法を提案するものである。具体的には，深層強化学習をPCS力率制御に適用することにより，適切な力率値を決定する。PCSの連系地点によって異なる力率設定が求められるが，複雑な行動空間に効果的な強化学習手法Soft Actor Critic（SAC）を適用することにより，電圧を適正範囲に維持することができる。数値シミュレーションにより提案法の有効性を検証した。

6-226

弱小系統の電圧安定性とインバータ電源の制御方式に関する検討

◎三ッ木康晃・馬場旬平（東京大学）・栄田真吾・S.C Verma・杉本重幸（中部電力）・渡邉 直（中部電力パワーグリッド）

インバータ電源の大量導入に伴い，短絡比（SCR）の低下に伴う電圧問題の顕在化が懸念されている（1），（2）。我が国において，従来型の電圧源電流制御型インバータ（GFL）やgrid forming inverter（GFM）の制御方式が系統周波数に与える影響については多くの先行研究があるが，電圧問題を論じた研究は少ない。著者らは先行研究（3）において弱小系統に連系したGFMによる電圧安定化効果について論じた。本稿では自端電圧の変動に応じた無効電力を出力する機能（Volt-Var（4））を有するGFLと，電圧源として系統電圧を安定化させる能力を有するGFMの電圧安定化効果を瞬時値解析により比較した結果を報告する。

6-227

慣性低下対策インバータの制御種と導入地点が発電機脱落事故時の周波数変化率に与える影響の評価

◎吉川優衣・志熊亮佑・金子曜久・諏訪 寛・石井英雄・林 泰弘（早稲田大学）

再生可能エネルギー電源の大量導入に伴う系統慣性低下対策として，周波数安定化機能をもつGrid Following インバータやGrid Forming インバータの技術開発が進められている。これらの慣性低下対策インバータ（対策インバータ）の評価には，小規模系統モデルを用いることが多いが，実運用に向けて大規模系統モデルを用いた検討も必要である。特に，擾乱後に発生する各同期発電機の発電機間動揺はその変動周波数が異なるため，対策インバータの導入地点により慣性対策効果が変化すると示唆されている。そこで本稿では，電気学会EAST10機系統モデルを用いて，各種対策インバータを対象に，導入地点と擾乱発生地点間の電気的距離が慣性低下対策効果へ与える影響を評価した。

6-228

GFM型蓄電池の連系地点の違いが緊急時の周波数安定化効果に与える影響分析-受電エリアでの電源脱落に対する分析-

◎横井智紀・早田 尊・河辺賢一（東京工業大学）・灘 香帆（三菱電機）

発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合の増加に伴い，電源脱落事故が生じた際の周波数低下幅や周波数変化率（RoCoF）が悪化することが懸念されている。その対策として，Grid-Forming（GFM）型の電力変換器を持つ蓄電池の開発が進められている。著者らの先行研究では，基幹系統における GFM 型蓄電池の連系地点の違いが周波数安定性に与える影響を分析した。本論文では，先行研究では未検討であった受電エリアにおける電源脱落事故に対して，GFM 型蓄電池の連系地点の違いが周波数最低値や RoCoF の改善効果に与える影響に関する分析を行い，得られた知見を報告する。

6-229

系統安定化機能付きGFLインバータの仕様設計

○白崎圭亮・平川遼太郎・天野博之・父母靖二・片岡良彦（電力中央研究所）

再生可能エネルギー（再エネ）の導入拡大に伴い，同期発電機（発電機）の並列容量が減少しつつあり，系統事故時における電力系統の安定性を維持することが困難になると考えられる。当所では，将来的に再エネを基幹系統に連系する場合を想定し，系統安定性の維持に貢献する新たな再エネ・蓄電池の連系形態として，インバータではなく電動機・発電機（M-Gセット）を介して系統に連系することを考案している。再エネを活用した系統安定性への貢献は再エネの連系形態によって異なることが想定されるため，当所では狛江地区・電力系統シミュレータに実設備を導入し，基幹系統の連系に対する得失を評価するための準備を進めている。本稿では，導入予定のGFL（Grid Following）インバータが有する機能について述べる。

6-230

GFMインバータの仕様設計

◎平川遼太郎・白崎圭亮・天野博之・父母靖二・片岡良彦（電力中央研究所）

電力系統における再生可能エネルギーの普及に伴い，同期発電機の並列容量が減少しつつあり，各種の系統安定性の低下が懸念されている。種々の系統安定性の維持に貢献する対策技術は様々なバリエーションが考えられるが，一対策技術として，系統から見て電圧源として動作するGrid Formingインバータに注目が集まっている。当所では，狛江地区・電力系統シミュレータにGrid Formingインバータを導入し（便宜上GFM Aと称する），基幹系統への連系に対する得失を評価するための準備を進めている。本稿では，2019～2021年度実施されたNEDO事業で作成されたGFM1を比較対象とし，GFM Aの仕様について簡潔に取り纏めた。

6-231

系統形成型インバータ自立運転時の周波数制御

◎吉田直充・菊池 輝（日立製作所）・松永俊祐（日立産機システム）

系統安定化を目的に同期発電機の特性を模擬した系統形成型インバータ（Grid Forming Inverter, GFM）は電圧源として振舞うため，連系運転だけでなく自立運転も可能である。自立運転時のGFMの有効電力出力は有効電力指令値ではなく負荷の消費有効電力に従うため，有効電力指令値と負荷の消費有効電力が等しくない場合，GFMは基準周波数で運転できず，許容範囲外の周波数で運転してしまう場合がある。そこで，自立運転時に周波数指令を許容範囲内に制御する手法として，周波数指令が閾値周波数に到達したとき，閾値周波数で運転できるよう有効電力指令値を補正する方法を検討した。本発表ではそのシミュレーション評価結果を報告する。

6-232

双極HVDC変換器のGrid forming運転と横流抑制

◎関口 慧・新井卓郎・林 祐輔・児山裕史（東芝インフラシステムズ）・石黒崇裕（東芝エネルギーシステムズ）

カーボンニュートラルの実現に向けて，再生可能エネルギー電源の導入拡大とHVDC（High Voltage Direct Current）ルートの新規構築が検討されている。HVDCは，経済性の観点から双極2 GW単位での構築案が提示されている。風力発電機群の専用系統に連系するHVDC変換器は，Grid forming運転にて同系統の交流電圧を確立する。双極構成の場合に従来のCVCF（Constant Voltage Constant Frequency）制御を採用すると，各極変換器の交流端子電圧誤差に起因して横流電流が流れる可能性がある。本論文では，双極HVDC変換器にて非同期協調運転可能なGrid forming制御と横流抑制制御を組み合わせた連系制御を提案する。PSCAD/EMTDCを用いた瞬時値解析にて，特に横流電流の直流成分抑制による安定化効果を示す。

6-233

洋上風力HVDC連系システムにおけるGrid forming変換器の交流系統事故時運転継続手法

○林 祐輔・関口 慧・新井拓郎・児山裕史（東芝インフラシステムズ）・石黒崇裕（東芝エネルギーシステムズ）

洋上風力の発電電力を大電力需要地に効率よく供給する手段として長距離HVDC送電システムが期待されている。洋上風力の電力は，風力発電の交流出力端で集約され洋上交流系統を介してHVDC系統に連系される。洋上交流系統の基準電圧は，洋上交流系統とHVDCを連系する交直電力変換器（以下HVDC変換器と略す）がGFM（Grid forming）運転することにより確立される。GFM運転するHVDC変換器は，一般的に電圧制御動作するため，系統で地絡事故などが生じた場合は過電流を抑制できず運転を停止する。また，事故中は過電流によりHVDC変換器を再起動することができない。風力発電のFRT要件を超えてHVDC変換器が系統電圧を確立できない場合，風力発電も運転を停止することとなり発電機会を大きく損なうこととなる。本稿では，系統事故時にHVDC変換器を一時的にGB（Gate Block）し，GFM運転からGFL（Grid following）運転に切り替えてGB解除する運転継続手法を提案する。提案手法により，事故検出後数周期でHVDC変換器が過電流なく運転継続し，風力発電の電力をHVDC系統に再送電できることを回路解析により確認したので結果を報告する。

6-234

交流ブレーキングチョッパを用いた風力発電向けHVDCの事故時運転継続性能

○新井卓郎・関口 慧・林 祐輔・児山裕史（東芝インフラシステムズ）・石黒崇裕（東芝エネルギーシステムズ）

本論文では，風力発電を対象に，HVDCシステム内に流入する電力を消費するための交流ブレーキングチョッパを検討する。交流チョッパは従来の直流チョッパと異なり，送電端交流系統で事故時に余剰となった電力を直接消費できる。そのため，直流チョッパでは対応できない片極直流事故や送電端変換器事故にも対応が可能である。解析によって交流チョッパを有する双極HVDCの事故時運転継続性能を確認した。

6-235

事故後のオールインバータ系統の再起動方法

◎國井祐希・加藤政一（東京電機大学）・荒井純一（工学院大学）

小規模離島においてオールインバータ系統を運用した際の事故時の運転継続について検討した。運転継続不可の場合の再起動方式について詳細にシミュレーションした。

6-236

ソフトエラーに対する電力変換装置の運転継続性の考察

◎米村直樹・奥山涼太・小堀晃平・杉山 隆（東芝三菱電機産業システム）

電力系統には様々な電力変換装置が適用されているが，瞬時制御を行う装置においてソフトエラーは避けるべき重要な課題である。ソフトエラーとは，例えば，大気圏より降り注ぐ放射線により内部回路が誤動作する事象のことであり，半導体の微細化が進み，その影響が報告されている。ソフトエラーの発生頻度が低いデバイスを使用することも重要であるが，本報告では，電力変換装置を構成する制御基板上でソフトエラーが発生した場合でも，電力変換装置が継続運転するための連動について報告する。

6-237

Grid Formingインバータ制御安定化の一手法

○林 崇・高野幸雄（富士電機）

GFMインバータを抵抗成分が大きい系統に連系する場合のシミュレーションを行った結果，無効電力制御を行う場合に，擬似慣性制御と無効電力制御の干渉によって不安定化する可能性があることが判明した。また，前記干渉を回避するように擬似慣性制御を改良することによって，制御安定化できることが確認された。

6-238

GFM型蓄電池の連系地点の違いが緊急時の周波数安定化効果に与える影響分析-負荷供給系統を考慮した分析-

◎早田 尊・河辺賢一（東京工業大学）・灘 香帆（三菱電機）

電力変換器を用いた周波数安定化の研究では変換器の制御手法に着目することが多く，変換器の連系地点に注目した検討事例は少ないといえる。本論文では，基幹系統から配電系統に至る負荷供給系統のインピーダンスを簡易模擬し，負荷供給系統内における蓄電池の連系地点の違いが周波数安定性に与える影響を分析する。分析の結果，蓄電池を系統側に連系する場合，事故直後の蓄電池の有効電力出力の立ち上がりが早くRoCoFを改善する効果があることを示した。一方，蓄電池を負荷端に連系する場合，負荷供給系統内の潮流が減少することで，送電損失の減少による正味の負荷の減少と，電圧降下幅の低下による負荷の消費電力の増加が起こるとわかった。

6-239

線路インピーダンスがGFMインバータの実効慣性に与える影響に関する基礎検討

◎佐々木裕哉・川島伸明・原 亮一・北 裕幸（北海道大学）

再生可能エネルギー電源増加に伴い発生する問題の一つとして，電力系統の慣性力が低下する問題が挙げられる。この問題への対策として，同期発電機のように電圧源として振る舞うGFMインバータの導入が検討されている。GFMには擬似的な慣性力を持たせることが可能であり，慣性力低下問題への一定の貢献が期待されている。一方で，GFMインバータを系統に導入した際の効果は現状未解明な点も多く，GFMインバータを含んだ電力系統において適切な慣性力を確保するためには，系統の条件と，実効的な慣性力の関係を評価することが必要となる。本稿では，GFMインバータが1機導入された系統において，配電線の線路インピーダンスが実効慣性に与える影響を評価したので報告する。

6-240

Grid-Formingインバータにおける系統事故時の無効電流制御のための適応型仮想インピーダンス制御法

◎神田大介・Mohammad Bani Shamseh・李 海青（東芝三菱電機産業システム）

再生可能エネルギーの普及が進み，系統内の同期発電機の発電量が減少すると系統の慣性力が低下し，系統擾乱時の周波数の変動速度や変動幅が増加することが懸念されている。このことから慣性力を有するGrid-Forming（GFM）インバータが検討されている。GFMインバータは過電流容量が限られているため，系統事故時の出力電流を抑制するための制御が必要となる。一方，近年GFMインバータでは系統事故時に電圧低下に比例した無効電流を注入することが求められている。本論文ではGFMインバータにおいて，系統事故時に系統電圧低下に応じた無効電流を注入した上で，過電流を抑制する適応型仮想インピーダンス制御法を提案する。

6-241

誘導機を含む系統における過負荷リミッタを考慮したGFMの動特性

◎山田健生・青木 睦・Suresh Chand Verma（名古屋工業大学）

近年，再生可能エネルギーの普及拡大に伴うインバータ電源の割合増加により，電力系統の安定性に懸念が生じている。この対策として，現在Grid-Forming Inverter（GFM）が検討されており，Droop方式やVSG方式等の様々な制御方式が提案されている。しかし，GFMは電圧源であることため，インバータ保護の観点から系統の急激な変化により発生する過負荷・過電流を制限するリミッタを考慮する必要がある。本論文では，過負荷リミッタを考慮したGFMと同期発電機の並列運転時を想定し，誘導機を含む系統において，負荷投入時の動的特性についてシミュレーションを行い，各制御方式での応答を比較および検討した結果を述べる。

6-242

周波数安定化のためのGFM型蓄電池の可変ゲイン制御の検討-Anti-Windupのための改善手法の提案-

◎Seonghoen Oh・河辺賢一（東京工業大学）

インバータを介して連系される再エネは，同期発電機と異なり慣性応答ができないため，電力系統の周波数安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。電力系統における事故時の周波数安定化のため，著者らはグリッドフォーミング型の蓄電池（GFM型BESS）の制御手法として，可変ゲイン制御を提案してきた。本論文では，可変ゲイン制御において生じうるワインドアップ現象に注目し，その改善手法の提案およびシミュレーションによる有効性の評価を行う。

6-243

仮想インピーダンスを用いた複数台の連結コンバータによる電力振動抑制と負荷配分

◎米田真之介・三浦友史（長岡技術科学大学）・藤澤俊暢（ヤンマーパワーテクノロジー）

近年，直流配電システムの適用が進んでおり，船舶では交流系統と直流系統の両方を持つAC/DCハイブリッド配電システム（AC/DC-HDS）が中心になっていくと考えられる。船舶では冗長性が求められるため，複数台の連結コンバータ（ILC）の導入が望ましい。しかし，仮想同期機（VSM）制御を適用した複数台のILCを導入すると，負荷変動時に，負荷電力分担の偏りや電力の低周波振動の発生が懸念される。本研究では容量が異なる2台のILCを導入したAC/DC-HDSにおいて，電力振動が生じない条件を導出した。また，得られた条件を仮想インピーダンスを用いることによって各ILCに適用し，シミュレーションによって電力振動抑制効果を確認したので報告する。

6-244

高圧地絡電流Igと零相電圧Voの位相差シミュレ-ション

○井上善和（井上和電気設備管理事務所）

高圧電気設備で構内地絡事故が発生すると受電点近くに設置されて高圧地絡継電装置（DGR）は，零相電圧Voを基準に零相変流器ZCTが地絡電流Ioを検出する。このVo電圧を基準にIo電流の地絡位相が生じる過程をシミュレ－ト計算した。

6-245

分散型電源による配電線の短絡事故検出への影響

◎石川颯祐・青木 睦（名古屋工業大学）・天雨 徹（東京都市大学）・大谷哲夫（電力中央研究所）・對馬宏介（名菱電子）

分散型電源（DER）が配電系統に大量に連系されることによって，配電線で短絡事故が発生した際に，配電用変電所の過電流リレー（OCR）が検出する事故電流が減少し，OCRが適切に動作できないことが懸念されている。本研究では，OCRの適切な整定を目的として，1つの配電線にDERが集中連系された場合と分散連系された場合を想定し，DERの容量や連系位置を変化させて，短絡事故時のシミュレーションおよび等価回路による計算を行った。本論文では，DERの連系容量が増えるとフィーダでの事故電流は減少することが確認できたが，その減少幅がDERの容量や連系位置によって非線形に変化することを示した。

6-246

PCSの新型能動的方式による電圧フリッカ発生の実験的検証

◎草場彩乃・星 舞樹・安武直朗・川﨑章司（明治大学）

近年，太陽光発電の大量導入が進み，配電系統が複雑化することで電圧フリッカの発生など，系統に悪影響を及ぼしている。この電圧フリッカはPCSの単独運転検出機能の一つである新型能動的方式が配電系統に無効電力を注入することで発生している。そこで本研究では，MATLAB/Simulinkを用い，新型能動的方式を備えたPCSの詳細モデルを構築して，低圧系統において電圧フリッカを発生させること，更に，開発用インバータに新型能動的方式を実装して，模擬系統実験設備を用いて実験においても電圧フリッカの発生を再現することを目的としている。結果として，シミュレーションと実験の両方で電圧フリッカの発生を再現することに成功した。

6-247

半導体直流遮断器を適用した洋上風力発電システムの直流送電回路事故時の電気特性に関する検討

長南英樹・○呉 国紅（東北学院大学）

本研究では，洋上発電機として二重給電誘導発電機DFIG，系統側インバータとしてモジュラーマルチレベル変換器MMCを使用した自励式HVDC構成の洋上風力発電システムモデルを構築した上，直流送電回路事故を除去するために半導体直流遮断器を導入し，直流変換器後の線間短絡事故が発生した際における風力発電システムの安定運転特性をシミュレーションによって検討した。シミュレーション結果により，直流遮断器が導入されない場合において事故後に系統が継続運転できなくなることに対し，直流遮断器が導入されると，事故後に直流遮断器が正しく動作して事故を迅速に除去し，系統が安定な運転状態へ回復したことが確認できた。

6-248

対称性原理に基づく電力系統動揺の計測

○関 建平（三菱電機）

これまで，対称性原理を活用して電力系統周波数の計測を行い，テイラー展開を使用して定格周波数と周波数変化分を分けて求めることができた。本論文では，周波数変化分の計測結果のみを用いてフーリエ変換を利用し，系統動揺の周波数と位相変化を把握することができた。実測例により，提案手法の有効性が実証された。

6-249

基幹系統合型レジリエンスシステムの開発

◎田中昭洋・角井弘典・三川玄洋（中国電力ネットワーク）・犬飼善貴・吉本早織・森本智彦・星野友祐（東芝エネルギーシステムズ）

2018年9月の北海道胆振東部地震に伴う北海道エリアの全域停電後，電力系統のレジリエンス強化が求められており，国の審議会である「総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会」において，基幹送電線4回線同時事故時も大規模停電に至るリスクに対して対策を実施することが決定した。一方，周波数低下時に太陽光発電や自家発等が不要に解列することで想定以上に周波数が低下するリスクが顕在化しており，周波数維持に対するレジリエンス強化も求められている。このため，中国エリアにおける同期安定度，過負荷，周波数および電圧の複数課題に対して，電力系統の安定化を実現する基幹系統合型レジリエンスシステムを開発したので報告する。

6-250

マイクログリッドに関するIEC 61850の制定状況

○大谷哲夫（電力中央研究所）

IEC 61850は，制定当初，変電所構内の保護制御システムを対象とした国際標準であったが，現在では電力流通分野における様々な保護制御・自動化システムを対象としている。今もIEC 61850の対象領域は拡張が進められており，その一つにマイクログリッドが存在する。本稿では，マイクログリッドに関するIEC 61850の制定状況を，ユースケース／論理ノード／通信プロトコル／エンジニアリングの4点から紹介する。

6-251

複数同期/周波数サンプリングに対応したIEC 61850/61869準拠の新マージングユニット（SRI-MU）の構成手法

○岩丸明史（三菱電機）・小島一浩（中部電力パワーグリッド）

電力会社と大規模需要家のプロセスバス導入が進んでいるが，主な課題として変電所間のサンプリング同期がある。提案する国際標準IEC 61850/61869に準拠した新たなマージングユニット（MU）は，本課題に対処するとともに，容易に異なるサンプリングタイミングのサンプル値（SV）を生成することを可能とする。さらには，将来新たなサンプリング周波数が追加されても対応可能であり，国内外の保護制御装置との相互接続性を保証する。

6-252

デジタル変電所の実現に向けたマルチベンダIED組み合わせ試験の考察（その1）

◎飯田千哉・高山大輝・益戸直人・天雨 徹（東京都市大学）

近年，変電所の保護制御への IEC 61850 に準拠した装置の導入が行われている。IEC 61850 は，変電所の保護制御装置（IED）間の通信プロトコルである。これにより，異ベンダ IED 間の相互運用性の確保やシステムの構築・保守における省力化・システムの拡張性の強化が可能となる。しかしながら実際に異ベンダ装置を接続し試験を実施したという大学研究室での事例はそれほど多くはない。本論文では，デジタル変電所の実現に向け，IEC 61850 に準拠した異ベンダ IED 組み合わせ試験の考察を報告する。

6-253

変電所設備工事における制御ケーブル管理ツール適用に向けた実証その2

◎嶋崎紀隆・橋本将司・黒岩良一（北陸電力送配電）・岡 雅明・野田智史（東芝エネルギーシステムズ）

北陸電力送配電と東芝エネルギーシステムズでは，変電所設備工事における制御ケーブル管理ツール（以下，ツール）適用に向けた実証を進めている。これまでの実証において，ツールを活用した効率化の更なる改善，デジタルデータ化の工数削減の余地があることが判明している。今回，ツールの改良とデジタルデータ化の工夫を実施し，実際の連系用変電所リレー盤取替工事において，ツール改良による効率化効果およびデジタルデータ化の労務量について実証を行ったので，その結果について報告する。