今年の新企画
受賞記念講演 平成28年9月1日(木)9:00〜11:40(予定)
今年新たにオーガナイズドセッションの一つとして,「論文賞受賞者による受賞記念講演」を開催予定です。これは,D部門誌およびD部門英文論文誌に掲載された学会の電気学術振興賞(論文賞)およびD部門論文賞受賞者(いずれも平成28年受賞者)による講演で,受賞された論文に至った研究開発の経緯もお話いただき,特に若手研究者が良い論文を書くための一助となることを期待しております。
OS2: 論文賞受賞記念講演 | ||
9月1日午前 | 平成28年電気学会D部門大会実行委員会 | |
D部門誌およびD部門英文論文誌に掲載された学会の電気学術振興賞(論文賞)および2016年のD部門論文賞受賞者による受賞記念講演をオーガナイズドセッションの一つとして開催する。受賞内容のみならず,提案に至った経緯やその過程を苦労話なども交えてご講演いただく予定である。 | ||
電気学術振興賞 論文賞 佐藤孝洋, 五十嵐 一, 高橋慎矢, 内山 翔, 松尾圭祐, 松橋大器: 本論文では,規格化ガウスネットワーク(NGnet)を用いた新しいトポロジー最適化法を提案する.本手法では,最適化対象の領域を小さなセルに分割し, 与えらえられた拘束条件の範囲内で目的関数が最大(最小)となるように, 各セルの材料状態(例えば,鉄心/フラックスバリア)を決定する.NGnetは空間的に一様に配置された規格化ガウス基底の重み付き総和で表される.そしてNGnetの出力値によってセルの材料を決定する.最適化では,ガウス基底の重み係数を遺伝的アルゴリズムで決定する. 中島大輔, 渡辺優人, 稲葉敬之: 機体と地表面の相対速度と距離を測定する着陸レーダは,機体の安全な着陸を補助するセンサとして開発がなされている.着陸の最終フェーズのように,観測域がごく近距離に限定されるような応用においては,レーダで計測されるデータは高いSN比が確保されることが期待される.このようなシチュエーションにおいては,送信ピーク電力が抑えられ,かつ数十kHz程度の低速のA/D変換機および低速の信号処理にて高い距離分解能が得られるレーダ変復調方式として,多周波CW方式が有力な候補であると考えられる.本論文では,MUSIC法等の超分解能法(一次元MUSICおよび二次元MUSIC)を用いた多周波CW方式の信号処理アルゴリズムを示す.シミュレーションにおいて,バイアス誤差に関して高度の1%程度,ランダム誤差については一次元MUSICおよび二次元MUSICでそれぞれ1.3%~1.7%,0.8%~1.0%程度であり,二次元MUSICのランダム誤差が一次元MUSICのランダム誤差よりも小さいという結果が得られた.また,運動場において,クレーン車にレーダを取り付け,基礎実験を実施した.上記アルゴリズムを用いて高度1.0m~7.0mの間で安定した計測結果が実験においても得られることが確認された.以上の結果により,多周波CW方式が着陸の最終フェーズにおける着陸レーダの変復調方式として有効であることが示された. |
平成28年産業応用部門 部門論文賞 |
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崎村直秀,吉田圭佑,大橋駿裕,大石 潔,宮崎敏昌: 本研究では、著者らが発明したエラー予測型フィードフォワード制御系を基礎に、光ディスク装置のヘッドの上下方向のフォーカスサーボと左右方向のトラッキングサーボの両方のボイスコイルモータに対して、最速追従推力ベクトルを予測してモータ駆動を実現する2次元エラー予測型フィードフォワード制御系を新しく開発する。さらに、トラッキングとフォーカスのエラー信号の基本波成分と高調波成分を予測して高速高精度追従制御法も開発する。これにより、最速完全応答のナノスケールモータ駆動制御法を確立し、実験によりその有効性を確認する。 |
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小俣晋平,清水敏久: 太陽光発電用パワーコンディショナ(PCS)と太陽電池を接続する直流配線から放射される電磁ノイズは放送波に対する深刻な電波障害を引き起こし始めている。このような障害を防止するため、IEC(CISPR)ではノイズ規制方策について検討を行っている。本論では、PCSの交流出力側に加えて、直流入力側にもノイズフィルタを挿入した場合のノイズ抑制効果について検討を行った。その結果、交流側と直流側の両方にノイズフィルタを挿入した場合、ノイズフィルタのノイズ減衰特性はそれぞれに固有のノイズ減衰特性が得られないこと、および新たに生じた共振特性によりノイズフィルタのノイズ減衰特性が悪化することを指摘している。さらに、ノイズフィルタの減衰特性の悪化要因を定量的に分析するとともに、効果的なノイズフィルタの挿入方法について検討を行っている。最後に実験装置を用いた検証実験を行い、本論の解析の妥当性を実証している。 |
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大明準治,足立修一: 自動化ラインで多用されるシリアルリンク型のロボットアームは,減速機の弾性によって先端が振動しやすい。この振動は各軸を1入力1出力系+外乱と見なすと解決困難で,多入力多出力の非線形連成振動系に基づく振動抑制制御系を設計すべきである。著者らは既に,この振動抑制制御系として,非線形状態オブザーバを構築し,既存の速度PI制御系にプラグインできる状態フィードバック方式を提案した。このオブザーバは,ロボットアームの非線形動力学モデルをそのまま内蔵し,オブザーバゲインにはロボットアーム各軸の速度制御系と同じPI制御ゲインを使用する。物理パラメータさえ精度良く推定されていれば,線形化などでオブザーバ用の状態空間モデルを導く必要はなく,オブザーバを設計レスにできる。そして,速度制御系へのプラグインとして,オブザーバによる軸ねじれ角速度の推定値を状態フィードバック(TVFB:Torsion-angular Velocity FeedBackと名付ける)する。TVFBは手調整が容易であり,産業用など既存のロボットコントローラに導入しやすい利点がある。本論文では,設計レスの非線形状態オブザーバに基づくTVFBの改良と,TVFBを用いた速度制御系を内側のループに持つ位置制御系の評価について述べる。TVFBの改良では,軸ねじれ角速度推定値のフィードバックゲインにおいて手調整結果に基づく簡易なゲインスケジューリングが慣性変動に対する安定化に有効であること,位置制御系での評価では,PTP動作やCP動作における振動抑制制御の有効性を確認し,さらに位置制御ゲインを上げることによって位置決め整定時間の短縮ができることを示す。 |
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田中 晃,山本 修,荒 隆裕,堺 和人,小室修二: 本論文では、演算子インピーダンスの周波数特性グラフに補助線を描くことのみによって、同期機諸定数(直軸および横軸の時定数とリアクタンス)を簡単に求める方法を述べている。特に、直軸と横軸の開路過渡時定数ならびに開路初期過渡時定数、さらには直軸過渡リアクタンスを求めるためのシステマティックな作図法を新たに提案している。演算子インピーダンスの測定には「直流試験法」を用いる。直流試験法は小容量の直流電源を用いた静止試験であり、一回の静止試験によって商用周波数から0.1Hz以下の極低周波までの電動機や発電機の演算子インピーダンスを精度よく測定できる特長がある。また、回転試験が不要となることから大形機の工場試験に適すると考えている。800MVAの火力発電用同期機発電機に対する数値計算例と10kVAの積層磁極形同期機に対する実機実験例を示し、提案法の妥当性を明らかにしている。 |
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伊東淳一,野口健二,折川幸司: 本論文では,電気二重層キャパシタ(EDLC)と非接触給電技術を組み合わせた電動アシスト自転車システムの小型化を目的として,システム全体の検討を行った。まず,アシストに必要なEDLCのエネルギーを検討した。その結果,今後EDLCのエネルギー密度が現状よりも1.52倍以上向上すれば,EDLCの体積が従来用いられているリチウムイオン電池の体積より小型になることを明らかにした。次に,コイルの大きさを考慮した非接触給電用コイルを検討した。実機検証により,非接触給電用コイルの共振周波数を同じに設計する場合,新たにコンデンサを外付けするショート型コイルが,コイル巻線間の寄生容量を利用するオープン型コイルよりも,コイルサイズを小型に設計できることを明らかにした。さらに,EDLCを含めた電力変換システム体積を検討した。損失解析と体積計算により,電動アシスト自転車の電力容量(384W)では,昇圧形変換器が降圧形変換器に比べ体積を30%小型に設計できることを明らかにした。最後に,システムの素子数を低減するために,本来モータ駆動用である三相インバータの寄生ダイオードを用いて,非接触で受電する交流電圧を整流する手法を提案した。実機検証により,システムの素子数を2/3に低減できることを明らかにした。 |
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玉田俊介,中沢洋介,色川彰一 |