• セッションNo.84 エンジニアリング・エシックスの現在(OS)
  • 5月24日 パシフィコ横浜 G418+G419 14:55-17:35
  • 座長:東又 章(日産自動車)
OS企画趣旨
自動運転に代表されるAIを核とする技術の登場によってエンジニアの役割と責任は大きく変わりつつあります.エンジニアにとって従来の予防倫理的な発想では課題解決は難しく,これからは社会の価値観と技術との懸け橋となって,社会に受容される技術を創造しWell-beingを実現する「エシカル・エンジニア」の資質が重要なものとなっていくでしょう.本オーガナイズドセッションは現代の技術が抱える倫理的な課題に対して学際的なディスカッションを目指します.技術サイドのみならず,人文・社会科学,教育,人材育成など多面的な視点からの講演を期待します.
企画委員会
エシカル・エンジニア開発委員会
オーガナイザー
本澤養樹(滋賀医科大学),東又 章(日産自動車)
No. タイトル・著者(所属)
382

【基調講演】エンジニアリング・エシックスと現代のパターナリズム

本澤 養樹(滋賀医科大学)

AIを基盤とする運転支援技術は急速に進化しつつあり,レベル4自動運転の実証実験が始まろうとしている.しかし新しい技術に対して社会の十分な理解と合意形成のないまま社会実装が進められれば,新時代のパターナリズムが生じる危険がある.そこで本稿では現代のエンジニアリングエシックスのあり方について論じる.

383

技術が社会に受け入れられること
-意思決定におけるプロセス-

一杉 正仁(滋賀医科大学)

自動車をめぐっては様々な安全技術が開発され,実用化されていく.それを利用するのは人であるが,その意思決定を左右するのが社会受容性である.運転支援に対する新たな技術があっても,その安全性が受け入れられるとは限らない.医学・工学現場における調査結果をもとに,社会受容性の重要性を概説したい.

384

科学技術と社会-受容性と多様性の側面から

三木 則尚(慶應義塾大学)

科学技術倫理が社会からの受容により決定されることは,LGBTQに関する倫理の変遷等から明らかである.一方,その社会の変化がとどまらない中,多様性に乏しい日本社会がガラパゴス化し,それが倫理だけでなく,産業競争力にも大きな影を落としている.本講演では,科学技術と社会の受容性,多様性の関係について議論する.

385

倫理の三階層:自律走行車において倫理を考慮するために

伊藤 昌夫(ニルソフトウェア)

自律走行車を含む移動体の倫理について検討する場合,少なくとも3つの階層を考える必要がある.巨視的倫理においては,文化や社会構造の層で,倫理について考える.中間的倫理では,社会における制度について考える.微小倫理では,個人同士の相互作用を検討する.これらの階層区分は,価値判断を含みません.もちろん,各層は,相互に影響を及ぼすが,それぞれは独立して考えることができる.近年発行されたISO39003では5階層の区分を用いているが,主として巨視的倫理から敷衍して,安全な自律走行車の持つべき倫理について議論している.従って,倫理的に妥当か否かを判定するには,他の層についてのより深い考慮が必要と考える.

386

安全論証の観点からの自動運転に対する社会受容性調査

馬場 厚志・兼原 明美・西井 克昌(デンソー)

自動運転の実現に向けて,安全性を示すための国際的なルールの整備が進む中,自動運転の社会受容性を正しく把握することに課題がある.本稿では,安全論証の観点から,自動運転車が関与する具体的な事故ケースにおける被害・責任の所在を問うことで,社会導入に関するユーザの意識の変化・受容性を調査した.

387

高齢ドライバ向け安全運転への気付き支援アプリケーションによる行動変容の実証

熊谷 優惟子(本田技研工業)・木村 光樹(本田技研科技)・井上 大輔・竹林 諒(本田技研工業)

高齢ドライバによる交通事故を減らすため,不安全運転をフィードバックするアプリケーションを開発し,19名のドライバを対象に1ヶ月間の実証実験を行った.その結果,不安全運転は実証実験前と比べ有意に減少した.本結果はアプリの利用により運転の振り返りやメタ認知が促進され,不安全運転が減少することを示唆する.

Back to Top