一般講演

2-086

連続巻鉄心の巻線への組立による歪みが鉄損に与える影響

◎田中孝治・田中 剛（ダイヘン）

連続巻鉄心を用いた変圧器を設計するにあたり、製造上のストレスによる特性変動を把握したところ(1)、連続巻鉄心の内径が大きく板厚が薄い程、歪みの影響が小さく、組立作業による鉄損悪化率が低くなることを前回報告した。板厚が厚い30P105を用いた連続巻鉄心は、内径が55〜70mmの範囲において、組立て作業による鉄損悪化率が急増していた。本報告では、内径が55〜70mmでの鉄損変動をさらに詳細に調査し、組立機導入を検討するため、鉄心巻き替え時の一時的な変形による鉄損変化の影響について調査した内容となっている。

2-087

巻鉄芯変圧器の高効率化に向けた屈曲電磁鋼板の磁気特性評価

◎中原圭亮・髙橋康人・藤原耕二（同志社大学）・増田 剛（東芝産業機器システム）

現在，巻鉄芯変圧器の一般的な鉄芯形状として丸型コアが用いられているが，鉄芯形状によって鉄損値が異なる．本研究では，鉄芯コーナ部を45度または90度に屈曲させた電磁鋼板を用いて磁気特性劣化範囲を限定し，巻鉄芯変圧器の低鉄損化を試みる．まず，屈曲させた方向性電磁鋼板の磁気特性を局所的に測定する．また，測定結果を基に実器を模した巻鉄芯の鉄損解析を行い，屈曲電磁鋼板の有効性を検証する．研究結果から，方向性電磁鋼板を45度および90度に屈曲させた際の磁気特性の劣化範囲は，どちらも屈曲部から20 mmの範囲である．また，本研究での条件を実器で再現した場合，コーナ部を45度に屈曲させることで低鉄損化を実現できる．

2-088

積層鉄心結束時の溶接による磁気特性劣化

◎河口幸平・藤原耕二・髙橋康人（同志社大学）・松下真琴・徳増 正・矢口依穂（東芝）

モータを高効率化するために，製造過程で生ずる電磁鋼板の磁気特性劣化度合いを把握することは重要である．結束時の溶接による磁気特性劣化に関しては，その方法に大きく依存する．磁界解析などで正確に損失を評価するためには，溶接における劣化度合いの把握が必要である．本稿では，実機ステータ抜板を用いた試料を製作し，溶接されていない試料と溶接試料の測定結果を比較することで，溶接による磁気特性の劣化度合いに関する検討を行った．測定結果から，溶接箇所数が多く溶接量の多い試料ほど劣化度合いが大きくなることがわかった．また，溶接量と渦電流損，ヒステリシス損の関係を明らかにすることは鉄損低減につながると考えられる．

2-089

リング試料の鉄損測定値の比較

○沓掛暁史・下地広泰・池田 哲（大分県産業科学技術センター）・相原 茂（ブライテック）・佐藤 尊・戸高 孝（大分大学）

電磁鋼板の磁気特性は，モータ等の電気機器を設計・開発する上で不可欠である．特に鉄損は，機器の高効率化に直結するため，電気機器製造メーカが着目する指標のひとつである．本稿では，リング形状の無方向性電磁鋼板（50A1300）を対象に，正弦波励磁およびPWM励磁の基での鉄損値を比較した．鉄損の測定には，磁気測定法としてV-HセンサによるHコイル法と励磁電流法を，熱測定法として高温度分解能のサーモグラフィーカメラによる手法を用いた．いずれの測定法も，正弦波励磁に比べPWM励磁の場合の損失の増加をよく捉えられることを確認した．

2-090

一次元単板試験器を用いた二次元磁気特性測定法に関する基礎的検討

◎木村有佑・髙橋康人・藤原耕二（同志社大学）

二次元磁気特性を測定する際に用いられる二次元磁気単板特性試験器（2-D SST）の構造は非常に複雑であり，高精度な二次元磁気特性の測定は容易ではない．本稿では，単純な構造の一次元単板磁気特性試験器（1-D SST）を用いた二次元磁気特性測定に関して検討を行った．1-D SST内で磁束が励磁方向を向いていれば，二次元磁気特性をモデル化できるが，1-D SST内で磁束の向きと励磁方向が一致しているとは限らない．そこで，60 mm幅長方形試料の方向性電磁鋼板における磁束密度の方向を測定したが，磁束密度は長手方向を向いていなかった．この問題の改善に向けて，交差したHコイルを用いて磁界の強さの方向を測定し，試料幅を変更した際の磁界解析を行った．

2-091

Hコイル法を用いた単板試験器による方向性電磁鋼板の磁気特性評価に関する基礎的検討

◎松原 稜・渡壁 竜・髙橋康人・藤原耕二・石原好之（同志社大学）

単板試験器による電磁鋼板の磁気特性測定において，磁界の強さの検出に用いられるHコイル法では，試料表面からの距離に対して磁界の強さが変化するため，1Hコイル法では測定誤差が生じる可能性が指摘されている．そこで，Hコイルの設置位置の影響を補正するために，2Hコイル法が考案されている．本研究では，試料表面からのHコイル設置位置までの距離を変化させて測定することにより，磁界の強さの勾配とヒステリシスループから算出される鉄損値の関係を評価し，1Hコイル法と2Hコイル法による方向性電磁鋼板の磁気測定の差異について検討した結果を報告する．

2-092

無方向性電磁鋼板における一次元有限要素解析を用いた鉄損計算法の精度検証

◎習田祐作・髙橋康人・藤原耕二（同志社大学）

モータの磁界解析において，鉄芯材料である電磁鋼板の鉄損特性を正確に把握することは極めて重要である．鉄損は，ヒステリシス損，古典的渦電流損，異常渦電流損に分類される．この中でも，異常渦電流損の算出は困難であるため，広範な周波数および磁束密度の範囲における鉄損を高精度にモデル化することは容易ではない．そこで本稿では，無方向性電磁鋼板について，単板磁気特性試験器による磁気特性測定で得られた結果をもとに，一次元有限要素解析を用い，ヒステリシス損と古典的渦電流損を算出し，異常渦電流損補正係数の概念を導入した電磁鋼板の鉄損計算法の精度について検討する．

2-093

電磁石を利用したタービン発電機回転子鉄心の磁気特性評価

◎芝滝拓哉・髙橋康人・藤原耕二（同志社大学）・高橋則雄・藤田真史・十川和真・長倉 謙（東芝）

タービン発電機の回転子鉄心に使用される磁性材料は，機械的強度には優れているが，磁気的には透磁率が比較的低く，実機の運転状態で想定される磁束密度領域における磁気特性を測定することは容易ではない．そこで本稿では，十分大きな磁界が印加可能な電磁石を用いたシステムを構築し，タービン発電機回転子鉄心材の高磁束密度領域までの磁気特性測定を行ったので報告する．今後は，電磁鋼板の飽和磁化の測定を試みる予定である．

2-094

希塩酸処理したサブミクロン粒径CIPの磁気特性

宮嶋優希・◎山口宗太・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

筆者らは近接効果による損失の抑制を図るため，インダクタの導体ライン間スペースにエポキシ樹脂中にカルボニル鉄粉 (CIP) を分散させた複合材料を装荷する手法を考案し，Q値が増大することを明らかにした．更なるQ値を増大させる手法の一つとしてCIP表面を希塩酸で溶解させ，CIPの粒径をより小さくして，渦電流損を低減させ，損失係数を下げる方法を検討した．塩酸濃度10.3%で処理したCIP複合材料は，As-madeに比べて損失係数が約1/3減少した．発表当日では，より詳細に実験手法と磁気特性の結果について述べる．

2-095

FeCo-MgFナノグラニュラー薄膜の高周波誘電特性

○池田賢司・小林伸聖（電磁材料研究所）・薮上 信（東北学院大学）・荒井賢一（電磁材料研究所）

ナノグラニュラー薄膜は、絶縁体のマトリックス中に数nmの磁性金属微粒子を分散させた構造を有しており、様々な物性を示すことで知られている。我々はFeCo-MgFナノグラニュラー膜に関し、FeCo組成が30 at.%以下において誘電特性を示すことを見出し、磁界によって誘電率が変化する磁気誘電効果を確認した。この現象は、隣接する磁性粒子間のトンネル伝導による電気双極子に由来し、トンネル伝導によってその特性が大きく変化すると考えられる。特に、トンネル伝導の緩和時間の変化は、誘電率の高周波特性に大きく影響すると予測されることから、伝送線路の線間容量の測定による高周波誘電特性解析を検討した。

2-096

高周波伝送線路型プローブによる磁性薄膜の磁気ひずみ計測法の開発

○遠藤 恭（東北大学）・薮上 信（東北学院大学）・森 修・内海良一・島田 寛（東栄科学産業）

本研究では，高周波伝送線路型プローブを磁性膜に近接させ，応力負荷による磁気共鳴周波数の変化から磁気ひずみを評価し，同時に磁化ダイナミクスの計測が可能な方法を新たに提案する。磁性薄膜としてこれまで光てこ法およびCPW‐FMR法で磁気ひずみ定数およびダンピング定数を把握済みであるNi-Fe膜を選択し，その基本性能を確認して磁化ダイナミクスとの関係をを議論する。

2-097

Ni-Fe細線の磁化ダイナミクスに関する研究

◎友山昌洋・遠藤 恭・宮崎孝道（東北大学）

微小磁性体の磁化ダイナミクスを理解することは磁気物性とデバイス応用の観点から重要である．本研究では，磁界掃引型CPW-FMR測定法を用いてNi-Fe細線のFMR測定を行い，ダンピング定数αの細線幅による変化に関して検討した．細線幅が2um以上ではダンピング定数は一定であり，その値はおよそ0.011であることがわかった．

2-098

放電プラズマ焼結法により作製したNd-Fe-B系熱間加工磁石の保磁力

○齋藤哲治・野崎舜司・佐嶋裕介（千葉工業大学）

新しい焼結法である放電プラズマ焼結法によりNd-Fe-B熱間加工磁石が作製できるかどうかを試みた。また、得られたNd-Fe-B熱間加工磁石の保磁力を向上させるため，Nd-Cu合金粉末の添加を試みた。

2-099

優れた高温磁気特性と機械特性を有する樹脂レスの等方性Ndボンド磁石

前田 徹・渡辺麻子・○嶋内一誠（住友電気工業）・杉本 諭（東北大学）

モータの小型化や低コスト化ニーズから、形状および着磁自由度の高い利点がある等方性Ndボンド磁石が多く用いられている。通常は、ナイロンなどの高保形性樹脂がバインダとして使用されるが、高温での強度低下や熱膨張によるギャップ変動などの問題があり、PPSなどの高耐熱樹脂が必要になる。しかし、保形性が低く、多量の樹脂添加を要し磁気特性が低下する。著者らは、通常はNd磁石の保磁力向上手段であるHDDR工程の途中で一旦粉末が軟質化する現象に着目、樹脂バインダを使わずに磁粉を複雑形状に固めることができ、等方性磁石としての高い残留磁化を示すとともに、高温域で磁気的、機械的に優れた性能が得られることを確認した。

2-100

Nd-Fe-B磁石の結晶表面磁気劣化層が保磁力の温度依存性に及ぼす影響

◎原田俊貴・中村尚弥・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

Nd-Fe-B磁石は、現在室温で最も優れた最大エネルギー積をもつ永久磁石であるが、その保磁力は異方性磁界から期待される値に比べて小さい。また、高温での保磁力の低化が著しく、温度上昇が見込まれる用途での使用が困難である。この磁石の保磁力低下の原因の一つとしては、結晶表面での磁気異方性の低下等が挙げられる。そこで本研究では、シミュレーションモデルの結晶表面に磁気異方性の低下した磁気劣化層を配置し、この部分の異方性定数が保磁力の温度依存性に与える影響を計算機解析によって明らかにすることで、高温時での保磁力改善の手がかりを得ることを目的とした。

2-101

Si基板上Nd-Fe-B系厚膜磁石のデバイス応用に関する検討

◎清水 大・竹馬 雄・山下昂洋・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

デバイス応用を鑑み，数10 µm/hの成膜速度を有するPLD(Pulsed Laser Deposition)法を用い，Si基板への等方性Nd-Fe-B系厚膜磁石の成膜を試みた.厚さの異なる3種類の熱酸化膜と自然酸化膜を持つ計4種類のSi基板を用い，Si基板と厚膜磁石の界面に存在する「酸化膜の厚み」が試料の磁気特性と機械特性に及ぼす影響を検討した．加えて、その試料の磁気特性や磁石膜にダイシング加工を施すことで発生する機械特性について評価した結果を示す．

2-102

下地層利用によるSi基板上Nd-Fe-B系厚膜磁石の磁気特性改善

◎山口雄太・清水 大・竹馬 雄・山下昂洋・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

我々はPLD(Pulsed Laser Deposition)法を用い，熱酸化膜付きSi基板上に等方性Nd-Fe-B系磁石膜を成膜する際，Nd含有量を20 at. %以上に増加させることにより，熱処理時に生じる試料破壊を克服し，160 µmまでの厚膜化を実現した。しかしながら，上記の化学量論組成に比べ多量に存在するNdは，保磁力を向上させるものの，残留磁気分極や(BH)maxの低下を招き，磁気特性向上の観点からは好ましくない。 本研究では，磁石膜とSi基板の界面に人工的に(1) Nd下地層もしくは(2)Nd-richなNd-Fe-B下地層を設けた後，Nd含有量16 at. %以下のNd-Fe-B系厚膜磁石を成膜し，10〜100 μm程度の膜厚範囲において，試料全体のNd含有量の低減を促し，磁気特性の向上を図ったので報告する。

2-103

PLD法で作製したPr-Fe-B/Fe-Co系ナノコンポジット磁石膜の磁気特性

◎山下昂洋・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

我々は過去に，PLD(Pulsed Laser Deposition)法により10 μm厚程度の等方性Pr-Fe-B/α-Fe系ナノコンポジット磁石膜を実現している。 本研究では，飽和磁気分極値がα-Fe相と比べて高い値を有するFe-Co相に着目し，Pr-Fe-B/Fe-Co系ナノコンポジット磁石膜の作製を試み，その磁気特性ならびに微細構造を評価・観察したので報告する。

2-104

高保磁力Fe-Pt電析磁石膜の作製

◎本多純也・濱村 陵・眞﨑太郎・高嶋恵佑・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

Fe-Pt磁石は優れた磁気特性に加え，高い耐食性や生体適合性を有すため医療・歯科用デバイスへの応用が期待される。本研究室では，電析法によるFe-Pt磁石膜に関する検討を進めており，最近，クエン酸をベースとするめっき浴にてNaOHを用いてpHを4程度に調整することで高い保磁力が得られること（調整前のpHは2弱）を報告した。このpH増加による保磁力増加要因として，①錯化剤（クエン酸）の電離状態の変化，と考察したが，NaOHによるpH調整は②浴内のNaイオン量の変化，も同時に生じるため，①と②を切り分ける考察が必要となる。そこで本稿では，高保磁力Fe-Pt電析磁石膜の安定実現に向け，①および②に関する検討を行った。

2-105

クエン酸浴から作製したCo-Pt厚膜磁石

◎濱村 陵・本多純也・眞﨑太郎・高嶋恵佑・柳井武志・中野正基・福永博俊（長崎大学）

Co-Ptなどの白金系磁石膜は高い生体安全性を有しており，医療用磁気デバイスへの応用が期待されている。本研究室では，工業的な利点が多いめっき法を用い，磁石膜に関する検討を行ってきた。例えば，定電位法を用いた塩基性めっき浴から保磁力800 kA/m，膜厚1 µm程度のCo-Pt磁石膜を実現している。塩基性溶液内の金属イオンは水酸化物の沈殿を生じやすく，従来の検討において厚膜の実現を妨げる一因であった。最近我々は，クエン酸を用いた酸性めっき浴から高保磁力Fe-Pt膜を報告した。この知見を活用することで，既報のCo-Pt磁石膜よりも厚い膜厚を実現できるのではないかと考え，本稿では，クエン酸浴を採用し，厚膜磁石を実現することを目的に検討を行った。

2-106

高層建造物への落雷時の電流を磁化から探る

◎高野渓太・上村研人・酒井英男（富山大学）・高畑浩昭（クロスランドおやべ）・大林 匠（入善町）

鉄塔や風車等の高層建造物は，高構造のために直撃雷を受けやすく，被害軽減のための雷被害対策は重要な課題となっている。雷電流を安全に建物外へと逃がす適切な避雷設備が必要とされるなか、落雷後の電流挙動には不明な部分が多く対策は容易ではない。 本研究では，高層建造物内の雷電流の挙動を探るべく，人工的な磁化センサを作成し，雷の磁場をセンサの残留磁化として記録することで，落雷をモニタすることを考えた（物質の帯磁現象を用いる雷被害の軽減が目的である）。小矢部市クロスランドタワー（高さ118m）の支柱周りに磁化センサを設置し，測定した結果を報告する。

2-107

多重周波数印加磁場を用いた極低周波渦電流探傷検査法による鋼板裏面欠陥検出

◎合田剛士・芳賀勇太・富岡卓哉・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）

磁気を用いた非破壊検査法は現在，試験体表面の検査に用いられるのが一般的であり内部の検査は困難とされている．そこで我々は，磁気を用いた検査法である渦電流探傷検査法において，極低周波磁場と高感度磁気センサを用いて鋼板の裏面腐食を検査する装置の開発を行っている．以前の報告では，鋼板板厚の定量的な評価の成功を報告した．しかし，複数の周波数を掃引することから検査に時間がかかるといった問題があった．そこで，本研究では印加磁場に複数の周波数を合成した波形を用い，FFT解析を行うシステムを開発した．高い検査精度を保ったまま測定時間の短縮に成功したので報告する．

2-108

LCR共振回路を用いたコンクリート内の鉄棒と銅棒の非破壊検査に関する基礎的検討

石川和己・◎野地秀聡・鈴木賢哉・芳賀 昭（東北学院大学）

既存の建築物の改修工事などを行う場合，コンクリート内に埋め込まれた電源線が挿入されているCD管と鉄筋の位置を正確に把握する必要がある。今回，LCR共振回路を用いてコンクリート内の鉄棒と銅棒を非破壊検査によって検出することを目的として行った基礎的な検討結果を報告する。コンクリート試験体に設置したCD管に鉄棒または銅棒を挿入した時の位相の変化をLCRメータによって計測した結果，鉄棒を挿入した時の位相はプラス，銅棒を挿入した時の位相の変化はマイナスに大きくなり，位相の大きさと極性を計測することで，コンクリート内の鉄棒と銅棒を見分けることが可能であることが分かった。

2-109

S形状磁区を有した高周波キャリア型薄膜磁界センサと非破壊検査への応用

○中居倫夫（宮城県産業技術総合センター）

高周波キャリア型薄膜磁界センサは，小型矩形状に成形したアモルファス軟磁性薄膜に幅方向の一軸磁気異方性を誘導した素子であり，これに高周波電流を通電し，外部磁界の変化に応じて生じる素子のインピーダンス変化を高周波回路の手法を利用して検出する高感度磁界センサである。本報告では，検出する外部磁界が変化した際に生じる素子インピーダンスの階段状変化やヒステリシス特性などセンサを実用化する際に問題となる特性が発生しない滑らかなインピーダンス変化特性を有した素子に特徴的な磁区形状を報告し，これを工業製品や原材料内部に混入した異物の非破壊検査に適用する方法を提案する。

2-110

MIセンサを利用した道路横設置型車両計測装置の高精度化

◎王 昊・滝谷貴史・内山 剛（名古屋大学）

近年、増加する交通問題を解決するため、ITSが構築された。より簡易に交通情報を得るために、高利便性、低電力消費、低コストな磁気センサの利用が期待されている。本研究では、自動的に計測可能であり、簡単に設置や撤去ができる、車輛台数、車両速度、車両長も同時に計測可能な磁気センサを利用した車両計測装置の開発を目的としている。 2軸方向の磁界が計測できる磁気センサを用いて、片側2車線の一般道路横の歩道上で測定を行った。車両通過時の差分磁場に通過車両認識のための閾値を設定することにより、車両認識率は100%で、速度の算出精度2σ=9.2km/hという結果が得られた。 今後は速度算出の精度向上について検討する予定である。

2-111

バイアス通電によるミアンダコプレーナ薄膜磁界センサ

○薮上 信・植竹宏明・森谷健太・冨並 剛・小野寺秀彦（東北学院大学）

本稿では，伝送線路および磁性薄膜を薄膜プロセスにより一体化したミアンダコプレーナ構造の集積化薄膜磁界センサを作製し，バイアス電流を磁性薄膜直下にセンサ素子に一体化させた電極へ通電させた。その結果，外部からバイアス磁界を印加する場合とほぼ同等のセンサ感度を得られることを見いだした。

2-112

低ノイズパルス駆動型MIセンサ回路の開発

◎馬 家駒・内山 剛（名古屋大学）

本研究では、電子コンパスに実用化された従来型センサシステムに基づいて、高感度で低ノイズパルス駆動型MIセンサ回路について報告する。従来型と比べて、新しいCMOS IC MI センサシステムはシステムの動作方法を改善し、ワイヤへのパルス電流とサンプリングスイッチパルスの形を調整した。本研究で開発した新しいセンサシステムには、良好な線形性が得られ、ヒステリシスは、ほとんど見られない。ノイズレベルは、1Hzから100Hzのバンド幅で 5 pT/Hz1/2程度（60Hz除く）の結果が得られた。

2-113

交流変調を用いたTMRセンサの駆動法

◎中村喜浩・八杉拓也・馬島八世・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）

磁気計測の際，コイルをはじめとする各種磁気センサが使われているが，近年MRセンサなどの薄膜デバイスの高感度化の研究が盛んになっている．本研究では，地磁気観測などの絶対磁場測定ができる高感度磁気センサの開発を目指した．ここで，ナノグラニュラーTMR型センサは高感度であり，ヒステリシスが小さく，非線形な偶関数特性を持っていることに本研究では着目した．通常，MRセンサの動作方法として，直流バイアスを印加することで動作点を線形領域に移動させる手法を採っていた．しかし，この手法では相対磁場による計測であった．そこで本研究では，交流磁場を変調磁場として印加し，検波することにより外部磁場を計測する手法を開発した．これにより，磁場応答特性が温度変化によらずゼロ点を通過する線形応答特性が得られ，絶対磁場の計測が可能となった．

2-114

磁歪材料を用いた積層梁式振動発電スイッチの特性評価

◎岡井一晃・上野敏幸（金沢大学）

リモコンは電池で動作するため，電池交換や充電などの手間がある．この背景から，ボタンを押す動作で発電し，これを電源とした電池フリーリモコンの実用化が期待されている．そこで本研究では従来と比較してよりシンプルな構造の磁歪材料を用いた振動発電スイッチを試作し，特性を評価したので報告する．磁歪素子は2×0.5×16mm³，コイルは1400巻，抵抗70Ω，線径0.08mmのものを使用した．このとき，スイッチの共振周波数は332Hz，最大で1.9V得られた．出力エネルギーは100Ω付近で整合が見られ，最大で0.076mJ得られた．入力した力は2.1N，ストロークは1.8mmであるため変換効率は4.1%となった．無線信号を送信するためには0.5mJ必要であるため，変換効率の向上が求められる．

2-115

貼り付け型磁歪式振動発電デバイスを利用した電池フリー無線センサシステムの開発

◎竹中裕亮・上野敏幸（金沢大学）

近年，構造物などのヘルスモニタリングに無線センサを利用し，それらの電源に環境発電を利用することが注目されている．我々は磁歪材料（鉄ガリウム合金）を利用した振動発電デバイスを開発し，構造物の振動を利用して動作する自立型無線センサシステムへの応用を目指している．振動発電では一般に，振動源の周波数がデバイスの共振周波数から外れると発電量が著しく低下する問題がある．我々は構造物に貼り付けて利用し，その面の変形に応じて発電するデバイス（貼り付け型）を提案している．これは，デバイスの共振周波数を考慮する必要がない．今回，デバイスの出力により動作する無線センサシステムの試作を行ったので報告する．

2-116

実振動下での磁歪式振動発電の共振周波数調整に関する研究

◎松岡佑樹・上野敏幸（金沢大学）

近年，無線センサを利用した構造物モニタリングシステムの電源として振動発電が注目されている．当研究室で開発した磁歪材料を用いた振動発電デバイスは固有の共振周波数を持ち，モータやコンプレッサーなどの常時振動する構造物に取り付け，その振動の共振周波数と発電機の共振周波数が一致すると大きく発電する．一方，それらの環境振動は様々な周波数成分を含む．我々は振動源に設置した状態でデバイスの共振周波数を微調整できる構造を考えた．本研究では，調整機構を取り付けたデバイスの評価とその実振動下でのフィールド試験を行った．その結果，正弦波加振時に約2Hzずつ調整ができ，実振動時に共振周波数が変化し出力電圧が上昇できた。

2-117

磁歪式振動発電を用いた電池レスワイヤセンサの開発

◎長谷川 開（金沢大学）

・目的現在電池での動作がメインであるワイヤセンサに変わって，磁歪素子を用いた振動発電により電池レスのシステムを開発している．・方法・結果磁歪素子，ヨーク，磁石，コイルを用いて発電デバイスを作製した．手とワイヤでのスイッチングによる出力の比較を行った．その結果ワイヤでのスイッチングの出力が高いことがわかった．デバイスに負荷抵抗をつなげてエネルギーの測定を行った結果，入力エネルギー20mJに対して出力エネルギーが1mJであり変換効率は5%であった．・まとめと今後ワイヤでのスイッチングの有効性を示した．今後は発電効率，出力の向上をはかっていく．デバイスに適した無線送信回路を検討しワイヤセンサを実現させる．

2-118

酸化被膜付鉄系メタルコンポジットシートを用いた有機インターポーザ内蔵電源用積層パワーインダクタの開発

山口大貴・◎岡 亮太郎・秋山知輝・佐藤敏郎・曽根原 誠・宮地幸祐（信州大学）

筆者らは，更に性能指数Q値が高いインダクタの開発を目指すため，CIP内での渦電流損を低減させる手法の一つとして，CIP粒子同士を渡って大きな経路で渦電流を流さないため，大気中熱処理をしてCIP表面に酸化被膜を形成させる方法を検討している．本積層パワーインダクタ対しても有効であると考え，酸化被膜付鉄系メタルコンポジットシートを用いた3 turn x 2 layer積層パワーインダクタの試作を行なった．酸化被膜付鉄系メタルコンポジットシートを用いた積層パワーインダクタの方が，As-madeのものに比べて，50 MHzより低い周波数でQ値が大幅に増大した．発表当日では，より詳細に実験手法と磁気特性の結果について述べる．

2-119

疑似平角線を用いたα形パワーリアクトルの高周波特性

◎永井歩美・川原翔太・北村拓海（奈良工業高等専門学校）・服部文哉（パワエレアカデミー）・海老澤満男（アンド）・石飛 学（奈良工業高等専門学校）

磁気デバイスは，高周波化しても渦電流損，残留鉄損および表皮・近接効果による銅損が増加するため，容易に小型化できない。この対策として，筆者らはスパイラル形エッジワイズコイルと軟磁性コンポジットコアを組み合わせた新しい高周波リアクトルを提案し，先に報告している。今回，α形コイルを疑似的に丸線で構成したところ，製造コストの抑制だけでなく，特性改善を図れることがわかったので報告する。

2-120

多共振機構を利用した磁歪式振動発電デバイスの広周波数帯域化

◎堀田健斗・上野敏幸（金沢大学）

近年、IoT技術の進展が求められる中、無線センサ等の電源の確保において振動発電が注目されている。環境振動を利用した発電における問題点として、振動周波数が環境に左右されやすく不安定になることや多くの周波数成分を含むことが挙げられる。 現在、我々が開発した磁歪式振動発電デバイスは固有の共振周波数を有しており、その周波数以外では発電量が著しく低下してしまうため、複雑な環境振動において安定した発電を行うのは難しい。そこで本稿では、多くの周波数で共振し発電を行うデバイスを試作した。従来のデバイスと比較し、10〜200Hzの間の共振点が2点から5点に増加、発電量に関しても同程度以上得られることが実験により確かめられた。

2-121

立体形状試験体の全面を全方向に磁化する磁化装置の開発

○福岡克弘・三輪登芳（滋賀県立大学）・小林正樹・尾崎智裕・及川芳朗（電子磁気工業）

磁粉探傷試験では、傷に対して直交した磁化を与えた場合に明瞭な磁粉模様が現れる。しかし、複雑な形状をした試験体では、検査箇所に磁化器を直接配置できない場合や、適切な方向に磁化を与えることが困難な場合も多い。本研究では、立体形状試験体の全面において全方向の傷を高感度に検出できる探傷システムの確立を目的とし、試験体の各試験面で均一な回転磁束密度を形成できる磁化器の開発を検討したので報告する。

2-122

集積回路技術を用いた磁束波形制御の高速化

○下地広泰・沓掛暁史・池田 哲（大分県産業科学技術センター）・相原 茂（ブライテック）

交流磁気特性測定では定量的な磁気特性を得るため、磁束密度波形は正弦波に制御される。磁気特性の非線形性により正弦波励磁では磁束密度波形を正弦波とすることは困難であるため、フィードバック制御により正弦波磁束密度波形は得られる。フィードバック制御は差分制御で行なわれる。2軸励磁が必要な2次元単板磁気特性測定でもP制御で行われるが、2軸は完全な直交状態でないため、相互に干渉し制御性が悪く、緩和係数を小さくして発散を抑制しているため、制御時間が長くなる。そこで、本研究では波形制御アルゴリズムを集積回路化したFPGAを用いた磁束密度波形制御法を開発し、制御時間の短縮に成功したので報告する。

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PWM励磁下リング試料中の熱的鉄損測定

◎佐藤 尊・戸高 孝（大分大学）・相原 茂（ブライテック）・沓掛暁史・下地広泰・池田 哲（大分県産業科学技術センター）

PWMインバータ励磁によって鉄損が増加することは周知の事実であるが，PWMインバータ励磁下における鉄損評価方法が未だに確立されていない。そこで本研究ではキャリア周波数の影響を受けない熱測定を用いてPWM励磁下の鉄損測定を行った。熱測定には鉄損を分布として評価するためにサーモグラフィカメラを用いた。PWM励磁下の鉄損のほうがサイン波励磁よりも大きくなっており，その鉄損値の差は30%以上もあり，試料の内径側のほうで差が大きくなるという結果が得られた。

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三次元有限要素法によるアキシャルギャップ型高磁束密度PMSMの基礎特性解析

○石川 諒・宮原和希・吉田 敬（九州大学）

我々は、界磁に使用する永久磁石（PM）の配置をN、S極が対向するように配置した、ラジアルギャップ型高磁束密度配列PM同期モータ（PMSM）の研究を行ってきた。PMを高磁束密度配列で設置することで、エアギャップ中に高磁束密度を発生することが可能となる。これにより、トルクや効率に関して高い性能を得られることが分かった。本研究では、ハイブリッド車やインホイールモータへの応用を考え、三次元有限要素法解析により、デュアルモータ構造を持つ、アキシャルギャップ型同モータの基礎特性解析を行った。提案モータの回転速度や電流密度を変更し解析を行い、シングルロータ構造の同モータと比較して、38%のトルク向上を達成した。

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局在する自然エネルギ発電電力回収のためのワイヤレス給電回路の原理検証

◎岡田瑞季・土井達也（足利工業大学）

筆者等はマイクロ水力等の局在する自然エネルギをワイヤレスで回収するワイヤレス給電システムを提案している。提案システムは，自然エネルギ発電デバイスと電力回収デバイスで構成され，デバイス間は電磁界共振結合されている。提案システム中の発電デバイスには増幅回路が接続されている。この発電デバイスに対してワイヤレスで交流小電力（ベース電力）を送電し，発電デバイスの増幅回路で発電電力を電力供給源とした増幅を行ない，増幅回路出力に接続された送電コイルから電力回収デバイスにワイヤレス送電する。本稿では，提案システムのSPICEモデルを用いて，原理検証とシステムの基本的な入出力特性の検討を行なった。

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高周波誘導加熱方式を用いたFFP解凍装置の自動制御化

◎朝日滉達・飴井賢治・大路貴久・清田恭平・作井正昭（富山大学）

手術の際に用いられる新鮮凍結血漿（Fresh Frozen Plasma ,以下FFPと略す）は、血液の成分である血漿を採血後に凍結し、-20℃以下で保存されたものであり、使用時には成分劣化を防ぐため30〜37℃の温度で解凍しなければならず、緊急時への対応のため素早く解凍できることが望まれる。 筆者らは、FFPを加温水槽に浸漬しヒーターで加熱する従来の方式に対し、加熱効率が高く局部加熱が可能である誘導加熱方式を用いることで温度制御の高精度化や解凍時間の短縮を目的とした装置を提案してきた。本論文では、解凍状態に応じた加熱の自動制御化の検討、および解凍実験の結果について報告する。

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高周波帯材料定数測定用配向性磁性複合材料試作と磁性粒子内反磁界係数推定

◎園川直人（岩手大学）

Mn-Znフェライト複合材料の環状試料を作製し，試料内の粒子整列の影響を粒子内部の反磁界係数から評価した．粒子内部の反磁界係数を過去に提案・検討された比透磁率理論式と反磁界係数の体積割合依存性の両者を併用し見積もることを試みた．その結果，試料円周方向に磁場配向した場合では反磁界係数がゼロと推定され，磁界印加方向に対する粒子内の反磁界係数はゼロであることが確認された．試料内では磁性粒子が試料の円周方向に沿って整列していると予想される．磁場配向により透磁率実部が1 GHz未満で2倍程度に増加し，透磁率虚部においても共鳴周波数が低域側にシフトするものの，ピーク値で3倍程度に増加することが確認された．

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治療診断マイクロマシンを想定した直流モータの静磁場下駆動

◎高橋克希・山田 努・竹村泰司（横浜国立大学）

診断治療に用いる医療用マイクロマシンに回転機能を付与することを想定して、小型モータの利用に着目した。非磁性のモータとして静電モータや超音波モータが既に存在し、MRI装置の内部等で使用されているが、連続運転や高速回転の点では電磁モータに劣るため、普及が進んでいない。そのため、現在広く普及している小型の電磁モータと同様の構造をマイクロマシンに利用し、磁場中でも動作させることができれば理想的である。 以上を踏まえ、本研究では、電磁モータを静磁場中で回転させ、その動作にどのような影響が生じるか検証した。

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金属系磁性粒子を用いたシート材の交流磁場による加温

◎星山弘樹・柴田優花・青戸知広・山田 努（横浜国立大学）・深瀬美紀子・藤田雄一郎（大同特殊鋼）・竹村泰司（横浜国立大学）

比較的低周波数領域の励磁で、がん温熱治療に必要な発熱量を示す磁性体の開発という観点から研究を実施した。 がん温熱治療に用いる磁性体としてFeCrSi微粒子とそれをシート材に加工したサンプルの磁気損失を評価した。また、シート材を筒状に丸めたインプラント形状の試料を作製し磁気特性、加温特性を評価した。

2-130

高感度MIセンサを用いた視覚誘発P300脳磁場の計測と解析

○淺野光平・内山 剛・王 可望・西田貴樹（名古屋大学）

脳電位とは頭皮に設置した電極によって脳から生じる電気活動を記録したものである。P300は被験者に対して意味のある低頻度刺激に対して発生する脳電位であり、ブレインマシンインタフェース等に応用される。 脳電位は脳の神経細胞の電気活動によって発生するため、脳磁場計測においてもP300成分が計測できると考えられており、超電導量子干渉計を用いて測定した研究結果が報告されている。 小型で安価、シールドレスで脳磁場計測を行う機器として、磁気インピーダンス効果を利用した高感度な磁気センサであるMII磁気センサの利用が考えられる。今回は視覚誘発におけるP300成分の計測、解析を目的として脳波計との同時実験を行った。

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非導電性ファイバー型蛍光観察装置を用いた神経磁気刺激応答のリアルタイム検出

◎齋藤淳史・高橋正行・中園 聡（電力中央研究所）・鈴木敬久・和田圭二（首都大学東京）・池畑政輝・吉江幸子（鉄道総合技術研究所）・神保泰彦（東京大学）

時間変動する強磁界により誘導される生体神経系への刺激作用は，人体防護ガイドラインの根拠となるが，中間周波などの一部周波数帯では刺激閾値に関する生物学的な知見が乏しい現状にある。本研究では，磁界ばく露による生体神経系の刺激応答を高精度に評価するために，磁界の影響を受けない非導電性ファイバー型蛍光観察装置を開発した。また，本装置を中間周波帯の磁気刺激装置と組み合わせることにより神経磁気刺激応答を細胞レベルの高時空間分解能でリアルタイム検出することに成功した。加えて，本手法により培養神経細胞を用いた磁気刺激応答評価を行った結果，細胞体と神経線維の各部位では刺激応答特性が異なることを確認した。