一般講演

3-001

各種測定機器から得られる角層水分量の皮膚電気インピーダンスを用いた推定法について

○中村隆夫・楠原俊昌（岡山大学）・上原 治・松崎健一（アルケア）・山本尚武（岡山大学）

皮膚バリア機能の定量的な評価指標として、経表皮水分蒸散量(TEWL)が用いられている。筆者らはこれまでにTEWLと高相関の皮膚バリア機能の指標となるCB値(index of cornuem barrier)を皮膚電気インピーダンスより算出する回帰式を提案した。本研究では、同型の回帰式を用いて、スキコンおよびモバイルモイスチャーから得られる角層水分量の推定を行った。その結果、それぞれ相関係数が0.927、0.925となり高相関の推定が可能であった。今後は、皮膚電気インピーダンスの測定からTEWLや水分量の多項目の計測可能な装置への応用が期待できる。

3-002

適応ゲインと積分制御による選択的脳低温制御

○本間 達・若松秀俊（東京医科歯科大学）

脳組織の損傷に伴う発熱により，周辺の組織が二次的に破壊されるのを防ぐために，脳温を低温に維持する脳低温療法がおこなわれている．これまでに単純冷却とFuzzy制御を組み合わせて，脳内の代謝化が安定しているときは精密な温度管理が可能であることを示したきた．しかし代謝が不安定なときは，この手法では温度管理が困難であることが示唆されている．そこで本研究では，Fuzzy制御で温度管理が困難な病態に対応可能な制御則を，適応制御理論を適用して構築する．患者の代謝性熱産生が変動した場合を想定した温度管理の数理シミュレーションをおこない，制御則の違いによる脳温管理の適正について検討する．

3-003

選択式脳低温療法のための適応ゲインと積分制御の模型実験

本間 達・◎舟木大登・若松秀俊・伊藤 南（東京医科歯科大学）

選択式脳低温療法で脳温を自動管理するためにFuzzy制御の有効性が示唆されている(1)。しかしながら代謝が大きく変動する導入期には、Fuzzy制御のみで十分な温度管理が実現できない可能性があるので、適応ゲインと積分制御を組合せたアルゴリズムによる温度管理の数理シミュレーションがおこなわれている。本研究では、人体頭部の特性を反映し、選択式脳低温療法を模擬した模型実験を用いて有効性を検証した。代謝や脳温が不安定なときには適応制御を、安定しているときにはFuzzy制御則を用いるように制御則を適宜切り替えることで、より効果的な脳温管理の実現が示唆された。

3-004

小型NIRSシステムの検討

◎星野航一・佐々木昌浩（芝浦工業大学）

NIRS(Near Infrared Spectroscopy)は生体透過性の高い近赤外光を用いて，組織の酸素化状態を測定する手法であり，近年脳機能計測や医療，スポーツなど様々な分野で研究，応用が進められている．本研究ではNIRS装置の小型化・高精度化への研究に向けて，汎用ワンチップマイコンを用いたNIRSシステムの開発を行った．測定により得られた値を測定回路へとフィードバックし，増倍率を自動調節する機能を実現した．また，製作したNIRSシステムを用いて，腕部の血中酸素濃度変化の測定を行い，その動作を確認した．

3-005

固体境界が希釈食塩水中の放電に与える影響

○小松 真（岩手医科大学）

医用ジェットへの適用等を想定し，電極近傍の壁面が生理食塩水中の火花放電発生に与える影響を調査した．先端が四角錐の1.2mm径対向電極を水深25mmの位置に設置し，電極周囲の2面または4面に壁面を配置した．そのうち2面の間隔を変化させ電極間距離を固定し， 7kVで充電した0.2Fのコンデンサーを用い0.4%W/V生理食塩水水槽内で放電した．壁面4面の場合気泡が大きく成長し火花放電の発生に伴い大電流が観測されたが，壁面2面では火花放電が見られず，壁面数が放電電流に影響した．また壁面間距離が小さい場合気泡は壁面に沿って速く進展した．プラズマ生成が難しい比較的高導電率の条件でも，壁面により火花放電が生ずると判断できる結果となった．

3-006

磁性粉末を用いた生体用電極の試作

◎戸田慎也・藤田亮介・月山元貴・神田健介・藤田孝之・前中一介（兵庫県立大学）

NdFeB磁性粉末と多層カーボンナノチューブをフィラーとしてをエラストマ中に混和させることで，ディスポーザブルで磁性と導電性を両立させた生体用電極の試作を行った．生体用電極に磁性を付与することで，回路側への磁力による接続が可能となり，利便性の向上だけでなく，小型が期待される．フィラー濃度を変化させ，導電率237.1µS/cm, 表面磁束密度22.0mTを有する電極の作製に成功し，実際に左胸に装着し皮膚上での周波数特性を測定した．

3-007

オフセット電圧調整回路を用いた大きな出力電圧振幅を有する生体信号増幅回路

◎荻野景太・佐藤隆英・小川覚美（山梨大学）

胎児の心電信号など, 微小な生体信号の増幅に用いる増幅回路において大きな出力電圧振幅を得るための制御回路を提案する. 本回路の後段で用いる独立成分分析では, 目的とする信号の最大振幅が信号の分離精度に影響する. このため, できるだけ大きな出力電圧振幅を確保することが必要となる. 心電信号は大きなインパルス状の電圧変化を含むため, 信号の平均値と中央値が大きく異なる. そこで, 提案する増幅回路では, 出力電圧が飽和しない範囲で電圧利得を最大にするとともに, 増幅回路の出力電圧範囲の中央値に出力電圧振幅の中央値が揃うようにオフセット電圧を付加することで出力電圧振幅の最大化を実現している.

3-008

クラウドサーバ向けリアルタイム通信集約プロトコルの評価

◎松山拓紀・金井 遵・大西直哉（東芝）

社会インフラで用いられる制御システムでは、システム規模の柔軟な変更への対応や低コスト化のために、クラウドサーバを用いた高信頼なリアルタイム制御システムが求められている。しかし、リアルタイムな制御システムでは、多数のパケットがサーバに集中して通信遅延が発生することが課題となる。そこで、パケットの集約・分離やネットワークに応じて通信方式を変更して通信することで最大通信遅延時間を低減しつつ、広域ネットワークを通るパケットを多重に送信することによりパケットロスに対応するリアルタイム通信集約プロトコルを提案する。

3-009

IEC 61850およびXMPPのスマートグリッド用通信への適用性評価

○遊佐博幸・大谷哲夫（電力中央研究所）・辺見宏幸・新井 裕（明電舎）

スマートグリッドに関係する配電自動化，スマートメータ，デマンドレスポンスの各アプリケーションは，配電系統と需要家に関連することから，相互に連携する可能性を有している。それぞれの通信の統合を実現するための通信プロトコルとしてXMPP（Extensible Message and Presence Protocol）が有望である。IEC 61850及びXMPPを適用した通信を行う実験システムを構築し，XMPPのスマートメータ用通信への適用可能性について評価した。

3-010

送電線用ディジタル電力線搬送のDPLL方式について

○佐々木範雄（東北電力）・花海 丞・織田健志（通研電気工業）・安達文幸（東北大学）

送電線ディジタル電力線搬送に用いるオーバーサンプリングのDPLL方式において，送信シンボルクのタイミング抽出に用いる相関器のタップ数や乗算器の削減を目的に，トレーニング系列の部分相関測定でタイミングを抽出する方式を提案する。また，タップ数などが減少によりサンプリング点の誤差が生ずることを防止するため，相関関数から誤差サンプリング数を推定し補正する実験式を提案し，精度向上に寄与することを明らかにする。

3-011

CDMAの相関特性を用いた誤り訂正機能の評価

◎長門 響・望月 寛・中村英夫（日本大学）

CDMA(Code Division Multiple Access)の拡散符号として用いられている直交符号によって多重化された各チャネルの相関特性に着目し，誤り訂正符号等のビットを付加することなく誤り訂正機能を実現できる手法が提案されている．本研究では，それを従来研究で提案されているCDMA-QAM伝送方式に適用した際の性能評価を行った．その結果，1伝送64ビットあたりの誤りビット数が3ビット以内であれば，確実に誤り訂正可能であることを明らかにした．

3-012

LF電波伝搬特性測定のための送受信システム

◎福田智和・生越重章（香川大学）

Low Frequency(以下LF)は古くから船舶用の電波航法支援システムに用いられているほか，近年では地震予知への活用が検討されている．LFの電波伝搬の理論的解析方法としてWave hop法が挙げられる．Wave hop法は地表波と空間波に分け，それぞれについて解析したものを合成する方法である．地表波はマクスウェルの方程式を解くFull Wave theoryによって，空間波は幾何光学理論に基づくRay theoryによって解析をする．また，1000 km以下の近距離の場合ではレイトレース法を用いる．しかし，Wave hop法，レイトレース法共に雑音などの指標が含まれていない．LFではインバータ式のエアコンやソーラーパネルから発せられる雑音の影響を受けることが予想される．本稿ではその影響の調査を目的として伝搬測定を行うための送受信システムについて述べる．

3-013

マルチセンサプラットフォーム用マルチポイントバス接続型シングルエンド通信方法の提案

◎邵 晨鐘・田中秀治・室山真徳（東北大学）

Robot tactile sensation enables safer, more reliable and accurate human-robot communication. As for realization of robot tactile sense, wide coverage of tactile sensors on the robot body has many advantages such as accurate object recognition, high-sensitivity and high-reliability. Thus, we have proposed a tactile sensor network system and a multiple sensor platform with a dedicated CMOS-LSI on serial bus line communication. This paper shows a multiple sensor platform implementation on a 1.4 meters long bus line by using tuned characteristic impedance and terminations considering the normally used I/O driver characteristics with allowing some impedance mismatches between the interconnection and termination.

3-014

高齢者の歩幅や歩行速度による歩行パターンの解析

○臼田海羅・清水祐哉・山田一樹・鷲尾翔太・原川哲美（前橋工科大学）・大野洋一（高崎健康福祉大学）

高齢化社会の到来で、転倒による寝たきり生活が大きな問題となっている．この転倒の原因に関して研究・解析により、遊脚時のMTCのばらつきが要因となることが明らかとなっている。そこで、歩行時のMTCのばらつきを計測するシステムを考案して、いくつかの指標を求め、それらの関連性を明らかにした。

3-015

同期掃引によるバイスタティクレーダ受信方式

○杉谷茂夫・雨谷 純・岩井宏徳（情報通信研究機構）・久島萌人（名古屋大学）・森本昭彦（愛媛大学）・藤井智史（琉球大学）・滝川哲太郎（長崎大学）・市川 香（九州大学）

バイスタティクレーダは他局の送信源を利用するレーダシステムである。また、モノスタティクレーダと比較して送信機の数を減らすことが可能となるなど、周波数の利用効率やコストの削減につながるが、一方で受信のために遠方に設置される送信局からの送信波送出と同期を取る必要があることなどの技術的な課題があるため普及にいたっていない。われわれは、遠方の送信波に受信機が同期して掃引する信号源を用いたバイスタティクレーダ受信方式を開発し運用しているので報告する。

3-016

離型剤の付着状態について

◎山崎雄三・家永貴史・大野富生・松尾一壽（福岡工業大学）

従来，インクジェット技術はパーソナルコンピュータの記録装置として研究開発が成されてきた．最近，インクジェット技術は記録装置以外への応用が試みられている．筆者らはインクジェットの新たな応用として食品製造機器への適用を検討している．食品製造機器において離型剤が用いられている．離型剤は食品の付着や焼きつき等の防止し，食品のスムーズな剥離を促す為に用いられている．現在，離型剤のコーティングは手動で行なわれており，そのコーティング状態は均一でない．離型剤の均一なコーティングに静電誘引形インクジェット方式を用いた．本稿では静電誘引形インクジェット方式を用いた離型剤のコーティング結果について報告する．

3-017

並列接続IGBTモジュールの均等冷却に関する検討

◎重満優志・佐藤 聡・土谷多一郎（東芝三菱電機産業システム）

並列接続されるIGBTモジュールの均等冷却について，熱流体解析による検討を行った。 1枚の冷却フィンに2個のIGBTモジュールを実装することを想定した。冷却フィンの流路は流入流出の折り返し構造とし，各流路が隣接するように配置した。フィン材料はアルミニウム，冷媒は水とし，IGBTチップに400W，FWDチップに200Wの発熱量を与え，IGBTとFWDそれぞれの温度差を評価した。解析は冷媒流量と流入流出方向をパラメータとした。流量5L/minの場合の温度差はIGBTが0.71℃，FWDが0.58℃となった。今回の解析結果では冷却フィンの温度差は1℃以下となった。これはIGBTモジュールの最大ジャンクション温度(例えば125℃)に対して十分小さい値であり，本冷却フィンによって並列接続されたIGBTモジュールを均等に冷却できていることが分かった。

3-018

電力変換装置の寿命部品に対する高精度劣化検知に関する一考察

◎山田和人・藤本 久・大熊康浩（富士電機）

電力変換装置には、交流/直流変換に用いる平滑回路用の電解コンデンサなど、規定寿命を有する部品が必要不可欠であり、寿命部品は装置の故障の一因となっている。装置の故障によるシステム停止を避けるため、寿命部品の劣化を検知する技術が望まれる。 本稿では、雑音を利用して系の微小信号を顕在化させる「確率共鳴現象」を電子回路に応用し、寿命部品である電解コンデンサの劣化による微小な特性変動（容量低下）を検出する回路を提案する。 提案の回路について、シミュレーションによる動作の確認を行い、電解コンデンサのわずかな容量低下を検出できることを確認したので報告する。

3-019

ナノスケール観測装置における制御用電子回路の作製及び実機評価

◎中島瑞貴・潤間威史・佐藤宣夫（千葉工業大学）

次世代半導体デバイスの研究開発において，内部構造や材料物性の評価は，その取り組みの根幹を成す．具体的には，パワー半導体デバイスや有機半導体デバイスの実現に際し，ナノスケールでの精確な観測・評価が求められる．このようなナノ領域での観測・評価を行うツールの1 つに走査型プローブ顕微鏡(SPM)が挙げられる．また，SPM技術としては，原子間力顕微鏡法(AFM)や表面電位計測法(KFM)があるが，特にKFM の計測結果の再現性については，制御回路の安定度に強く依存すると考えられる．表面電位の高感度検出ならびに良好な再現性を達成するために，ナノスケール観測装置のための電圧フィードバック制御回路の開発が肝要である．本研究では，表面電位計測のために回路設計指針の確立に向けて，広帯域化のためにオペアンプの周波数応答特性の基礎検討を行ったうえで，制御回路の実機作製に基づいた評価を行う．

3-020

UHF帯デュアルバンド型薄膜コモンモードフィルタの開発

◎後藤洸亮・長田堅也・中山英俊（長野工業高等専門学校）・加藤貴規・志村圭祐・曽根原 誠・佐藤敏郎（信州大学）

筆者らの従来研究により、薄膜コモンモードフィルタ(以下、CMF)において、平面積層構造の結合インダクタとキャパシタを組み合わせた構造により、2つのフィルタ帯域(デュアルバンド特性)が得られた。本講演では、この特性を利用して1デバイスでデュアルバンドに対応した擬似伝送線路型の薄膜CMFの設計を行った結果を述べる。 携帯電話を想定した1GHz帯(0.7〜1.0GHz)および2GHz帯(1.7〜2.1GHz)において、差動信号の伝送特性が-3dB以上、同相信号の伝送特性が-20dB以下の目標仕様を満たす薄膜CMFを設計できた。設計したデバイスは、占有面積1.30×1.26mm ² 、厚さ10.5μmで、3層積層構造であった。

3-021

荷重測定用の容量型センサの試作及び評価と信号処理回路の開発

◎棚田康介・小川覚美・佐藤隆英（山梨大学）

容量型センサとは、加速度や荷重などの物理量を検知するために幅広い分野で用いられているセンサである。本研究では荷重測定用の容量型センサに着目し、人の指ごとの握力を容量型センサを用いて測定することを目的とする。しかし、想定する荷重範囲に対応した容量型センサは数が少なく、高価である。そのため、本研究では握力測定に適した容量型センサを安価に製作し、センサから得られた情報を高精度に電気信号へと変換するための信号処理回路の提案を行う。本稿では荷重測定用の容量型センサを試作した結果と、容量型センサを信号処理回路に用いた場合のシミュレーション結果を報告する。

3-022

トランスの和動接続への切替え動作を用いた低降圧比DC-DCコンバータ回路

◎生駒早紀・劉 雨瀚・佐野勇司（東洋大学）

携帯電話やパソコン等のロジック回路の電源電圧は低電力化と高速化に伴い、3Vから1.2V等に低減されている。降圧型DC-DCコンバータ回路の最低降圧比は1/8程度に抑えられているが、より低い降圧比とより大きな出力電流が得られる回路の開発が望まれている。本研究においては、トランスの和動接続切替え動作を用いることにより、電力効率を低下させずに従来よりも低い降圧比を実現するDC-DCコンバータを提案した。入力電圧12.0V時に出力電圧が1.80Vになるよう制御パルスを設定した場合に、入力電圧3.0V〜12Vにおいて降圧比を従来回路の1／2.1以下に低減し、出力電流も2.1倍に増加することができた。また、入力電圧3.0V〜12Vにおいて出力電圧1.80Vに設定した場合の電力効率は、従来回路と同等以上（最大1.97％向上）になった。

3-023

和動接続のトランスの電気抵抗とDC-DC コンバータの電力効率に関する研究

○劉 雨瀚・関口 諒・佐野勇司（東洋大学）

携帯機器を長時間使用するために、電池のエネルギーを使い切ることが望まれている。トランスの1次・2次巻線間を和動接続に切替え、高昇圧比を実現するDC-DCコンバータ回路を提案した。提案回路の電力効率を向上すべく，和動接続時のトランスの巻線に生じる抵抗増加の低減を図った。トランスをトロイダルコアとリッツ線に替えることにより、巻線の抵抗成分が低減できることが分かった。実験結果においては、トロイダルコアを用いることによって、ソレノイドコアよりも、従来回路の電力効率が0.94％〜12.7％、提案回路では0.54％〜16.8％増加した。リッツ線を巻くことによって、エナメル線よりも、従来回路の電力効率が1.10％〜6.43％、提案回路では1.07％〜5.53％増加した。

3-024

低容量化ニューロンモデルの出力電圧に対する一検討

◎佐々木芳樹・佐伯勝敏（日本大学）

脳型情報処理システム構築のため，生体ニューロンが持つ優れた情報処理能力の工学的応用を目指した研究が行なわれている．先に我々は， CMOSプロセスで集積回路化可能な低容量化ニューロンモデルを提案したが，低容量ではバイアス電圧の制御が困難であり，出力電圧が電源電圧に対して小さくなる．本稿では，ニューロンモデルの出力電圧上昇時に，バイアスキャパシタから電荷を強制的に引抜く動作に制限を加え，バイアス電圧の減少を制御することで，低容量化したニューロンモデルでも電源電圧に対して十分な出力電圧を得られることを明らかにしている．

3-025

出力波形制御可能な四足歩行CPGモデル

○岩切達也・佐伯勝敏・佐々木芳樹（日本大学）

動物の歩行運動は，脊髄に存在するCentral Pattern Generator(CPG)と感覚による反射によって自律的に行われることが，神経生理学の実験により報告されている．先に我々は，四足歩行パターンを生成するCPGモデルを構築したものの，限られたパターンのみ出力が可能であり，環境に応じた歩行を行わせるためには，自由度の高いCPGモデルが必要となる．本稿では，出力波形が制御可能なCPGモデルの構成について，シミュレーションにより検討を行い，結合構成を変更し，介在細胞集団モデルの時定数を調節することで，任意の位相差，パルス幅，発振順序が出力可能であることを明らかにしている．

3-026

側抑制の特性を有する神経節細胞の電子回路モデルの構築に対する検討

◎宮武良乃介・佐伯勝敏・佐々木芳樹（日本大学）

生体の情報処理機構をモデル化し，工学的に応用する研究が行われている．視覚器の電子回路モデル化において，外界の状況に柔軟に対応しながら視覚情報を取り込み，処理するためには，能動的な情報処理能力は不可欠である．本稿は，負性抵抗を用いた細胞体モデルを用いて，神経節細胞がもっている，側抑制の特性を再現した電子回路モデルの構築に対して検討を行ったもので，2次元平面において側抑制の影響で起こるといわれているハーマングリッド錯視を用いて検証を行い，提案したモデルが側抑制の特性を有する神経節細胞の特性を再現可能であることを明らかにしたものである．

3-027

非線形LC梯子回路上の電圧ソリトン伝播に対する不純物サイトの影響

◎浅利 慶・中村祐貴・胡桃 聡・鈴木 薫・松田健一（日本大学）・畠中憲之（広島大学）

本研究では，非線形LC梯子回路上を伝播する電圧ソリトンに対する「不純物」としての線形LC共振部分の挿入の効果，特にその不純物サイトの数に対する電圧ソリトン伝播過程を調べた.作製した非線形LC梯子回路では，インダクタとしてL = 1 mH，非線形キャパシタとして容量可変ダイオードを100段分接続して使用した．その途中には，「不純物」サイトとして線形のLC共振部を挿入できるようにした．これにより，不純物サイト部分で振幅が減少することと，その不純物部分の距離が長いと減衰量も大きくなることがわかった.このことから不純物サイト上を伝搬していく電圧パルスは、不純物サイトの数が増えるほど振幅の減衰は大きくなることが観測された.

3-028

非線形性LC梯子回路における電圧パルスの衝突と不純物サイトの影響

◎中村祐貴・浅利 慶・胡桃 聡・鈴木 薫・松田健一（日本大学）・畠中憲之（広島大学）

本研究では，電圧ソリトンの衝突現象を利用したインバータ動作の実現を目指し，実際の回路を作製し，パルス伝播特性を検証した．インバータ動作を実現するために，回路中に「不純物サイト」と呼ばれる“線形な”LC共振部分を挿入した非線形梯子回路を作製した．入力波の振幅を，1〜4Vの範囲で変化させた時の不純物サイト上の衝突波形を観測したところ，入力波の振幅が大きくなるほど，不純物サイトを含んだ衝突波形が不純物サイトを含まない衝突波形に比べて，振幅の減衰率が大きくなることが観測できた．このことから，不純物サイトの特性が電圧ソリトンの衝突によるインバータ動作の実現のために重要であることが示唆された．

3-029

減算回路を用いた単一出力乗算回路

◎渡辺正之助・関根かをり（明治大学）

光ファイバー等を通って伝送された信号は様々な影響から歪みが生じてしまう。その歪みの波形整形に用いられているFIRフィルタをディジタル回路ではなくアナログ回路で構成し、小面積化と低消費電力化を目指している。処理を行う上で目標とするビットレートは10Gbpsの矩形波である。FIRフィルタをアナログ回路で構成するにあたり、乗算器を可変利得増幅器（VGA）であるギルバートセルで設計できるが、10GbpsのビットレートではMOSの容量等の原因により能動負荷を用いて差出力をとることができない。そのため、回路の同相成分を除去できない問題があった。そこで本稿では、減算回路を用いてギルバートセルの単一出力化を試みた。

3-030

アナログFIRフィルタに用いる遅延回路における温度補償の検討

◎太田達哉・関根かをり（明治大学）

FIRフィルタは、回路素子や外部環境が影響する発熱により、出力信号の特性が温度依存性をもつことが考えられる。シミュレーションによりアナログFIRフィルタを構成する乗算回路と遅延回路が、それぞれ出力振幅と時間軸方向に温度特性をもっていることが確認できた。本稿では、遅延回路に使用しているインバータの温度依存性が時間軸方向のずれとなるため、その補償を検討する。 遅延回路として、抵抗器負荷型インバータを用いている。温度変化により貫通電流が変化し遅延時間にずれが生じる。温度変化に対して所望の貫通電流を流すことで温度補償を行うために、電流源としてカレントミラーをインバータに付けた構成としている。

3-031

差動容量型センサの信号処理回路の精度改善

◎シュレスタソミ・小川覚美・佐藤隆英（山梨大学）

差動容量型センサは、圧力差、加速度、回転角度などの物理量の検知に広く用いられている。物理量の変化量xは、センサの2つのキャパシタの容量差と容量和の比(Ca–Cb)/(Ca+Cb)で表すことができる。これまでに、スイッチドキャパシタ容量・時間(C/T)変換器を用いた差動容量型センサの信号処理回路が提案されている(1)。この回路は、素子の非理想的特性の影響によって精度が8ビット程度に制限されている。ここでは、素子の非理想的特性の影響を軽減できる差動容量型センサの信号処理回路を提案する。提案回路の構成、Hspiceシミュレーションによって評価した回路の特性について述べる。