一般講演

1-001

TBL活動におよぼす学習意欲の影響の検討

○内田君子（名古屋学芸大学）・奥田隆史（愛知県立大学）

アクティブラーニング型授業の問題点として，意欲的な学習者とそうでない学習者との間に生じる学びの質や量の二極化が指摘されている．そこで本研究は，アクティブラーニング型授業の一つとして注目されているTBL（Team-Based Learning：チーム学習）を，e-Learningシステム（Moodle）を用いて大学の情報基礎教育に取り入れ，TBL活動と学習意欲がどのように関連しているか検討を行った．その結果，学習活動を高める促進的要素5因子の合計得点（Positive得点）とTBL活動時間との間に有意な正の相関関係が認められた．すなわち，学習意欲の促進的側面の強さがTBL活動に影響をおよぼしていることが明らかとなった．

1-002

専門科目における授業内容の項目関連構造分析

○松田豊稔（熊本高等専門学校）

情報通信系の専門科目（電磁波工学）に対してテキストマイニング用のフリーソフトKH Coderを用いて項目関連構造解析を行った結果を報告する。項目関連構造解析は，授業内容を多数の構成要素（学習項目）に細分化して，学習項目間の関連性と順序性を定量的に定め，学習項目の階層構造関連図を作り，授業科目の全体像とその内部構成を視覚的に把握できるようにするものである。電磁波工学のように，学習項目が多く，広範囲に亘り，他教科の学習を必要とする授業科目に項目関連構造解析を行い，授業設計や授業改善に役立つデータの収集すること目的とする。

1-003

線形代数を対象にした誤答原因の推定機能を有する学習支援システムの開発

◎齋藤 大・星野貴弘・浜松芳夫（日本大学）

2012年の学習指導要領の改訂の影響によって行列の単元は大学の線形代数学で学ぶ単元となった。そのため，現在の学習指導要領により学習した学生は改訂前の学生と比べて行列の前提知識が少ないと考えられる。一般的な講義形式の授業では数学の知識が少ない学生は自力で十分な理解をすることが困難であると考えられる。本研究では主に行列の単元を対象にした学習支援システムの開発を行った。ニューラルネットワークを利用して学習者の誤答情報から誤答原因の推定を行い，学習者の習熟度に合わせた学習支援を行えるシステムの開発を行った。

1-004

マトリクスLEDによる4コマストーリー演出

○宮内 肇（松江高等専門学校）

我々は，子ども達に工学のものづくりと文系の伝統文化に同時に興味を持たせる手法の開発を行っている。本研究では，現代の子ども達の課題の一つである，コミュニケーション力の不足に鑑みて，四コママンガ（起承転結）に着目して，子ども達が，自分の考えを相手に的確に伝えるロジカルコミュニケーションの楽しいトレーニング手法として，8×8マトリクスLEDとマイコンプログラミングを用いた四コマショートストーリー演出を考案した。

1-005

電気モノづくり工作とプログラミングによる科学啓発活動の実践

○木村尚仁（北海道科学大学）

本論文では，電気・電子工学系分野を新たな発想に基づいて担っていく人材の育成のため，モノづくりとプログラミングを合わせた科学啓発講座の代表実施例について紹介報告を行う。この講座では，ミニブレッドボード上に3色のフルカラーLED，抵抗，スイッチを配置，配線し，また白濁色プラスチック年度を用い，スイッチを押すことで赤，青，緑の三原色，あるいは色を合成して点灯する「ミニLEDランプ」を作製した。またmicro: bitを用いて，このミニLEDランプを点灯制御するプログラミングを行った。この講座は小学生を対象に開催したが，概ね満足度の高い内容を実施することができたと言える。

1-006

点字カードを用いたプログラミング学習教材の試作と考察

◎宇田涼佑・大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

2020年度から学習指導要領の改訂に伴い小学校でプログラミング教育が開始される。特別支援学校の1つである盲学校でも同様にプログラミング学習を取り入れる必要がある。しかし，盲学校の児童らがプログラミング学習を行える学習教材がない為，盲学校の児童でも学習が可能なプログラミング学習教材が必要となる。しかし，全盲の児童がPCやタブレットを使用したプログラミングは困難である。本研究では，全盲の児童がプログラミング学習を行うために，点字を用いた点字カードによるプログラミング学習教材を試作し実際に盲学校の協力のもと学習効果及び学習教材の考察を行った。

1-007

ARと3軸磁気センサを使った磁界可視化教材の検討

◎山内康平・谷崎礼治・眞鍋知久・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）・野口 聡（北海道大学）

電磁気学は電気・電子・情報分野における基礎であり，重要な分野である。我々は，電磁気学分野における教材開発として，ARやVRを利用した電磁界の可視化システムを開発している。これらの可視化システムでは，実際の磁界を計測していなかったが，我々は新たに，3軸磁気センサを多数利用して磁界分布を計測するデバイスを製作し，磁界の可視化を試みている。本発表では，AR技術と磁界計測データを組み合わせて磁界を3次元的に可視化するソフトウェアを開発した内容について報告する。

1-008

AR/VRを利用した電磁界可視化システムの開発(その2)

◎河村悠汰・長井玲音・眞鍋知久・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）・野口 聡（北海道大学）

電磁界は視覚的に直接捉えることができないため，板書等利用した講義形式だけでそのイメージを教授することは難しい。そこで我々は，拡張現実(AR)技術や仮想現実(VR)技術を利用し，電磁気学初学者でも簡単に電磁界のイメージを得られる可視化システムの開発を続けている。本発表では，昨年の報告に引き続き，電磁界可視化システムの最新の開発状況について報告する。

1-009

長野地区における出張リフレッシュ理科教室の10年

○曽根原 誠・宮入圭一（信州大学）

筆者らは，2008年から2016年を除き2018年まで10年に亘り，(公社)応用物理学会（北陸・信越支部）が主催するリフレッシュ理科教室事業に補助を頂き，長野地区において出張型の理科教室を企画・実施してきた．同教室は，子どもの理科離れを憂慮し，児童・生徒達に実験や工作を自ら体験してもらう場を提供し，理科への興味と自然現象・物理現象への関心と理解を促すことを主たる目的としている．また，小中学校の教諭の理科教育に関するリフレッシュを図ることも兼ねている．一部(一社)電気学会東海支部に共催して頂き，こどもマイスター教室（2016年のみ主催）と協賛し連携して実施している．本稿および発表当日では，主に2018年に実施した学会連携出張リフレッシュ理科教室ついて報告する．

1-010

小学生向けの再生可能エネルギーに関する教材の開発

◎見田 萌・橋本慎也・山本敏和（福島工業高等専門学校）

近年，再生可能エネルギーに注目が集まっているが，その理解が深まっていないことは大きな問題の一つである。そうした状況下において，将来を担う子どもたちへのエネルギー教育は極めて重要な意義を有している。本研究では，小学校低学年生を対象とした教材の検討を経て，「かるた」，「すごろく」，「絵本」の製作を行った。開発した教材を用いて小学生対象の出前授業を行い，アンケートにより効果を確認した結果，有効性を確認することができた。開発した教材は，学習の導入のための教材としての役割を有しており，遊びを通じて関心度や理解度を高めるだけでなく再生可能エネルギーへの興味を抱かせることにも役立っていることが確認できた。

1-011

電気の知識を広めるための動画作成

○新藤孝敏（東京大学）・大来雄二（金沢工業大学）・神津 薫（国士舘大学）・長谷川有貴（埼玉大学）・小林隆司（物質・材料研究機構）

電気の知識を広めるため，教育用のビデオの作成を行った。作成したビデオは送電線で高圧にすることにより，遠方への送電が可能であることをモデル実験で示すものである。その経緯とビデオ作成の状況および今後の課題について説明する。

1-012

中学校理科教員を対象とした教育支援事例

○陶山健仁・田中里美・西方正司（東京電機大学）

本稿では，足立区立中学校理科教員を対象とした教育支援事例について報告する。1校あたりの理科教員数は限定されており，かつ互いに主たる専門分野が異なるため，自己研鑽を行なう場を設けることが困難である。また，教員の多くは電気の単元に関する苦手意識があり，電気に関する研修行事が強く望まれている。本稿では，東京電機大学で実施している中学校理科教員研修行事について報告する。

1-013

教職指定科目での小冊子「電気の知識を深めようシリーズ」の活用

○中村 格（鹿児島工業高等専門学校）

電気学会においては，一般の方々の電気技術に対する関心と理解を高める事を目的として「電気の知識を深めるWG」を設置し，（1）初中等教育・一般，（2）放送大学等，（3）ウェブ活用技術及び電子書籍化の3つの小グループで活動を行い，小冊子「電気の知識を深めようシリーズ」の活用も重要な活動の一つである。筆者も同WGの委員を務める。高等学校教諭「家庭」の普通免許状取得に必要な指定科目に「家庭電気・機械」があり，鹿児島工業高等専門学校での教育活動を活かし鹿児島大学教育学部において筆者が講義し，本務にフィードバックしている。本稿では，その教職指定科目における小冊子の活用を紹介し，受講学生の意見感想を分析する。

1-014

中高生が電気工学に親しむ理科教室の実施

○長谷川有貴・山納 康（埼玉大学）

理科離れ，工学離れの状況を改善することを目的とした体験的，実験的な理科教室が，高等教育機関，学術団体，自治体，民間企業などにより，年間を通して日本各地で数多く実施されているが，電気工学に関連する理科教室，特に中高生を対象とするものは非常に少ない。 著者らは，2011年から小中学生向けの「充電式ソーラーカーの製作」，2015年からは高校生向けの「非接触給電－太陽光パネルによる充電式ハイブリッドカーの製作」を題材とし，エネルギー教育を踏まえた電気工学分野の理科教室を学内外で実施している。本報告では，一例として，高校生向けに実施しているイベントを紹介する。

1-015

小学校での理科実験支援活動と教員研修

○服部邦彦・瀧ヶ崎隆司・佐藤杉弥・梅谷篤史・狩野みか（日本工業大学）

近隣の小学校の理科支援として，発展的で魅力的な実験を小学校教員と大学教員・学生が協働して開発し実施することで，児童・生徒の興味を喚起し，大学のある地元から理科好きの子どもを育てていきたいとの考えで理科教材の製作ならびにクラブ活動への参加を実施してきた。その中で，「手回し発電機とコンデンサ」の理科実験教材の製作と提供を行なうにあたって，小学校における電気実験の現状や問題点を知ることになった。そこで，小学校教員の研修会を実施し，電磁誘導の実験（発電機のしくみ）とオシロスコープによるコンデンサ放電の可視化で授業で問題となった内容の解消に寄与した。

1-016

回路図作成テストによる電気回路概念の実態調査

○石橋 直（福岡教育大学）

平成29年の学習指導要領改訂によって，中学校技術・家庭科技術分野（技術科）において電気回路を構想して設計を具体化する能力の育成が一層重視されるようになった。回路設計には電気回路概念の操作が不可欠であるため，設計学習の指導にあたっては学習者の概念形成の実態を事前に把握する必要がある。本研究は，設計志向の回路図作成テストを大学生に実施することを通して，設計学習に有用な知見を得ることを目的とした。その結果，回路構成に関連性の高い回路・抵抗概念は良好な正答率を示したが，電力，電流，電圧の概念について課題があることが分かった。発表では，これらの各概念の形成状況や誤概念の特徴について報告する。

1-017

高周波回路に関する回路・電磁界シミュレータを活用した学生実験の一検討

○大島心平（小山工業高等専門学校）

本論文では，安価な材料を用いたMSL構造の高周波フィルタを題材にした高周波回路に関する学生実験について提案する。提案手法はPDCAサイクルを学生実験に導入した方法であり，回路・電磁界シミュレータ及び伝送線路の活用方法の習得に適した手法である。

1-018

3軸磁気センサを使った磁界観察教材の検討

◎谷崎礼治・山内康平・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）・野口 聡（北海道大学）

磁界は本質的に不可視であるので，特に初学者に磁界のイメージを捉えさせる有効な教材があれば有用である。我々はAR/VR技術とリアルタイムシミュレーションを融合して電磁界を可視化する手法を開発してきたが，それらの可視化システムでは実際の磁界を計測している訳ではない。そこで我々は新たに，3軸磁気センサを多数利用して磁界分布を計測する教材を製作し，磁界を効果的に可視化する方法を検討している。

1-019

パワエレ機器開発を推進する技術リーダの育成

○村田雄一郎・板垣秀信・岩田明彦（三菱電機）

パワーデバイスを核とするパワエレ技術は，数多くの電気機器の電力制御手段として利用される重要技術である。パワエレ機器開発には，パワーデバイス，受動部品，各種センサ，デジタル信号処理技術，制御技術，実装技術など様々な技術に精通し，プロジェクト全体を取りまとめることのできる人材が必要となる。本発表では，当社グループのパワエレ技術者向けの人材育成施策を報告する。

1-020

ホール素子変位センサ式磁気浮上システムを利用したモデルベース制御教育の実践

○安里健太郎（沖縄工業高等専門学校）

これまで著者らは，モデルベース制御教育に活用できる教材として，ホール素子変位センサを利用した磁気浮上システムの開発を行ってきた．本論文では，まず，この開発教材を活用することで実施可能な学習内容の具体的項目について紹介する．そして，沖縄工業高等専門学校（以下，沖縄高専）の講義内で実施した，開発教材を利用したモデルベース制御教育について報告する．

1-021

自動運転・無線制御可能なマイコンカーの製作

○畑迫健一（産業技術短期大学）

本学は工学系短期大学であり，2年次には卒業研修という1年間を通して1つのテーマを取り上げ，実験・実習を行うという科目の履修がある。この卒業研修のテーマに「ぶつからないクルマ」を取り上げ，運転支援システム，自動運転できるマイコンカーを作製することに取り組んできた。「走る，止まる，曲がる」の自動車の基本機能だけではなく，学生が工夫を凝らした追加の機能をマイコンカーにおいて実現した。マイコン，センサ，無線，モータ制御，等の学習ができ，また，学生たちが興味・関心を持って取り組み，テーマとして良いテーマであると考える。

1-022

Average Consensus and Synchronous Control of Multi Agent System for Energy Systems

○菊池智志・川西通裕・ノツトラン/フィン・成清辰生（豊田工業大学）

マルチエージェントシステムの基本要件として各エージェントが共有する状態量の同時性があるが，ネットワーク経由で互いの状態量を通信する場合，通信遅延が生じると同時性が失われ制御性が悪化し状態量が保存されない場合がある。 分散最適化を計算するためには高速で高頻度の通信が必要となるためその影響は大きくなる。 この論文では，実際の通信遅延データに基づきシミュレーションによる影響解析及び，通信抑制と同期補償による制御の安定性と状態量の保存を両立する手法の提案をする。

1-023

周期外力を受けるマッシュー型振動子から導かれたサインサークルマップの近似とカオス振動の存在条件

○山口尚宏・太田垣博一（岡山理科大学）

周期外力を受ける非線形システムの振動の態様は，外力の特徴やシステムの固有角周波数との関係によっては分岐現象やカオス現象を呈示するなど，きわめて多様で，複雑でありうることから，これらの態様を解明することは重要である。 本研究では，周期励振力を受けるマッシュー型振動子から導かれたサインサークルマップとその近似マップ（Piecewise Continuous Map (PCM)）を用いることによって，この振動子のカオス振動の存在条件を判定する方法を提案し,その有効性を検討する。

1-024

量子力学に対する回路理論の重要な役割

○永井信夫（北海道大学）・渡辺一央・真田博文（北海道科学大学）

量子力学は現代の科学技術を支える基礎理論であるが，その理論体系は確率論を用いていて，物理現象を説明するのに重要と考えられる因果律を満たす理論体系とはなっていない。ところで，電気と磁気とを利用した電磁波のエネルギーに情報を乗せて，遠方に情報を伝える理論体系として誕生した回路理論には，過渡応答と定常状態の応答とがあり，定常状態の応答には因果律が成り立ち，しかも定常状態の応答はニュートン力学の定義を満たさない。 本文では，量子力学には定常状態の応答が存在するという理論体系により，量子力学に存在する難問のいくつかを説明する鍵となる理論を創る試みを述べる。

1-025

ボクセルモデル用FMM-SCMによる2段階静電誘導電流計算

○濱田昌司（関西大学）

電力設備・機器周辺の商用周波電界の人体へのばく露に関し，静電誘導による体内電流・電界の計算法を検討する。既に，SPFD 法，有限要素法，準静的時間領域有限差分法，表面電荷法(SCM)と有限要素法を用いる2 段階法，ボクセルモデル用高速多重極(FMM)表面電荷法とSPFD 法を用いる2 段階法などが用いられている。同一の計算問題を複数の数値計算手法で扱うことは，各手法の長所・短所や課題を検討する上で大変有用である。ここでは新たに，ボクセルモデル用FMM-SCMのみを用いる2 段階法を提案し，NICT Taro モデルの解析を行う。他手法と同等の計算を行えることを示すとともに，計算時間の例も示す。

1-026

電力ケーブルの送電容量評価に向けた交流導体実効抵抗値の温度依存性に関する基礎検討

○杉原英治・舟木 剛（大阪大学）

将来の電力システムにおいては，出力変動型電源の大量導入に伴い一部の送電線で混雑が生じるとともに，大規模電源の出力低下により送電系統全体では設備利用率の低下が懸念される．一方，送電ケーブルの常時許容電流は，導体温度に基づき定められており，リアルタイムの送電容量を正確に評価するには発熱量を決定する交流導体実効抵抗値を正確に評価することが重要である．本研究では，地中送電ケーブルの送電容量評価に向けて，表皮効果や近接効果を考慮した交流導体実効抵抗値の温度依存性を評価する．さらに，送電容量評価に用いる単心CVケーブルの熱等価回路モデルを対象として事故時のステップ電流変化に基づき，交流導体実効抵抗値の温度依存性がケーブル導体温度推定結果に与える影響を評価する．

1-027

混合媒質を有する角柱物体による電磁波の散乱

○山﨑恆樹・柴山俊輝・尾崎亮介（日本大学）

近年，導体と誘電体が混合した任意形状物体の散乱問題が注目され,色々な解法で解析されている。なかでもアトム法は散乱体の分極に着目し,導体と誘電体の混合媒質に適応可能で,有力な解法の一つである。 本文では混合媒質として内部にストリップ導体と誘電体を有する角柱物体による電磁波の散乱問題をアトム法で解析し，ストリップ導体と誘電体が散乱特性に及ぼす影響をTE波について検討した。

1-028

Fox-Li法による正多角形鏡光共振器のモード計算

◎鈴木雄太・手塚信一郎（横河電機）

Fox-Li法はFabry-Perot光共振器のモード形状や回折損失を算出する手法として知られている．我々はこれまでに，直接対角化法による高精度な高次モードの導出や，微小光共振器へのFox-Li法の適用について検討してきた．Fabry-Perot光共振器は対向する2枚の鏡の大きさでモード形状が決まるが，これまでは四角形鏡や円形鏡で多くの計算がなされてきた．本研究では，正多角形鏡光共振器について計算を行った．その結果，モード形状は鏡の形状と関連した形状となった．また，光共振器の回折損失は，正多角形鏡の頂点数を増加させたとき，その正多角形に内接または外接する円形鏡光共振器の回折損失に収束した．

1-029

青色光網膜障害の実用的な測定方法の開発

◎秋葉拓也・澁谷孝幸（東京都立産業技術研究センター）

近年，青色LEDの開発が進み，照明用途としてLED光源が広く用いられている。青色LEDは従来光源と比較してエネルギーの高い短波長の光を多く含むため，人体，特に目に対する影響が無視できないことが問題になっている。その為，青色光の影響について測定することが必須となっているが，従来方法では，測定波長範囲や視野角の設定などの条件について，一般に販売されている輝度計では実現が難しい。そこで，本研究では，輝度測定に，分光放射輝度値が値付けられたハイパースペクトルカメラ（HSC）を利用することで，短時間で最大輝度の判定を行い，簡便にIEC TR 62778:2014による青色光リスクレベル評価が実施可能な手段について開発した。

1-030

異なるピーク波長の近紫外線LEDによる発光スペクトルの検討

◎川延就郁・須山雄二郎・三栖貴行（神奈川工科大学）

近年の白色LEDは演色性が向上している。また，白色LEDに橙色LEDを調光することで色温度が変更可能にする実験が行われている。本研究では色温度が変更可能なリモートフォスファー型照明器具の開発を目的とした。蛍光体をガラス基板に塗布し，蛍光サンプルとした。蛍光サンプルを異なるピーク波長を持った近紫外線LEDによって励起発光させたものを分光放射照度計により分光スペクトル，演色性と色温度を測定した。発光強度を近似した紫外線によって分光スペクトル，演色性と色温度が変化した。したがって近紫外線光のピーク波長を変更することで色温度と演色性が変化する可能性について検討したので報告する。

1-031

低周波電界ばく露による培養神経細胞の刺激作用のリアルタイム観察

○池畑政輝・吉江幸子（鉄道総合技術研究所）・鈴木敬久・牧野 佳・和田圭二（首都大学東京）・齋藤淳史・中園 聡（電力中央研究所）

ヒトiPS細胞由来の培養神経細胞を用い，近傍に配置した電極による低周波電界印加時の細胞の刺激応答の周波数－電圧応答特性を検討した。周波数10Hz～50kHzについて検討を行った結果，指示電圧の上昇に伴い，細胞内Ca^2＋濃度が一過的に上昇し，細胞が刺激応答していることが観察された。Ca^2＋濃度の上昇が観察できる指示電圧の閾値は周波数に依存して変化した。一方， Ca2＋濃度の上昇度については，印加する電位に依存していたが，周波数に依存した特徴は見られなかった。

1-032

伝導電流測定における供試機器配置および電流クランプ位置による影響に関する一検討

○川又 憲・石橋 拓・石上 忍（東北学院大学）

インバータ機器から発生する電磁雑音による障害が問題なっており，電磁雑音限度値や測定法を規定する国際規格の見直しや新たな規制導入が検討されている。例えばCISPRにおいては，装置筐体からの放射を規制するために新たに150kHz～30MHzの放射磁界測定の導入が検討されている。そこで本研究では規格検討に資するため，30MHz以下での発生磁界を議論する上で重要となる伝導電流成分を測定し，供試機器の配置位置や電流プローブのクランプ位置によって，伝導電流の測定結果がどのような影響を受けるかについて基礎的検討を行った。

1-033

電気機器から発生する電磁雑音の機器設置条件による特徴の検討

○石上 忍・阿部慎也・今田凌志・川又 憲（東北学院大学）

近年，省電力の観点よりインバータなどのスイッチング素子を導入した電気機器が普及拡大している．しかし，一方で，多数のインバータによる雑音の重畳により電磁環境が悪化しているとの懸念から，多数台の影響を考慮した電磁雑音限度値導入のために，国際規格見直しが検討されている．本研究では，規格改訂に資する基礎的検討として，電気機器からの伝導及び放射電磁雑音について，多数台設置の条件（供試機器間の距離）を変えたときの電磁雑音の特徴について検討を行う．

1-034

鉄筋コンクリート造建築物における雷サージ解析の検討

◎井波伸英（NTTファシリティーズ）

建物への落雷時，雷サージが建物の構造物や内部の設備に伝搬または誘導し，故障や誤動作を引き起こす恐れがある。このリスク評価には，各種解析シミュレーションを用いるが，既存の方法では，雷サージの周波数における鉄筋の電気的特性までは十分に考慮されていないこと及び構造物が単一的な導体ではない鉄筋コンクリート造建築物の膨大な解析処理が課題である。本検討では，この電気的特性を適用し，鉄筋コンクリート構造における各構造物間の電磁結合係数を導出する方法を考案することにより，建物を受動素子のみで構成した回路シミュレータSpiceモデルを構築した。これを計算することにより，リスク評価に用いる落雷時の各構造物における最大電圧及び最大電流を取得した。

1-035

高速パルス伝送方式における狭パルス信号生成回路の検討

○桑原 崇・板倉 洋・大和田 哲（三菱電機）

近年，通信機器間の伝送レートはGbps級まで高速化されている。しかし矩形デジタル信号は，ケーブル損失による高周波減衰に起因して信号間干渉量が大きくなるとビット誤りが増加する。そこで信号間干渉低減を図るため，従来から矩形デジタル信号をパルス波形へ変換することを特徴とした高速ケーブル伝送方式が検討されている。しかしパルス生成の際に遅延回路や結合器を用いる方式では，製造ばらつきやコスト，サイズに課題があった。そこで本稿では，上記課題を克服するために，ショートスタブを用いて狭パルス信号を生成する方式について検討したので報告する。

1-036

高速パルス伝送方式の多分岐線路における反射波抑制手法に関する検討

◎板倉 洋・大和田 哲（三菱電機）

高速インターフェースでは，伝送路に分岐があるとインピーダンス不整合による信号反射が生じ，伝送波形が劣化する。そのため，多点接続の高速I/Fではスイッチ等の機器が必要となり，コストの増加や配線量増大，装置大型化を検討せざるを得ない。そこで本稿では，高速パルス伝送方式を多分岐線路へ適用し，分岐による反射の影響を抑制する簡易的な手法を報告する。検討の結果，分岐間隔を等しく且つダミーの分岐線路(以下，ダミー分岐)の追加により反射波が打ち消し合う効果を得られ，主波に対する反射波の電圧振幅が最大で約19%抑制されることを確認した。

1-037

WPT用7kW級SiCインバータ電源装置からの不要電波による無線受信感度への影響評価

○宮澤安範・田中 聡・山口正洋（東北大学）・椙本祥史・渡邊 航・永田 真（神戸大学）・近藤幸一・栗本正樹（トーキン）・沖米田恭之（昭和飛行機工業）

第5世代移動体通信システム(5G)では無線通信端末の使用周波数が6GHz帯以上まで拡大されるとともに，接続機器が100万台/km2にも達すると見込まれるため，無線電力伝送システム(以下WPT)等のインバータ機器と無線通信機器が近接した状況で使用されると想定される．一方でSiCやGaNなどの高速なパワースイッチング素子を使用したインバータ機器の普及により，インバータから放射されるGHz帯の不要電波が増加し無線通信機器の通信品質が劣化する場合がある．本研究ではWPTをテストベンチとし，インバータ機器から放射される不要電波による無線受信感度への影響を評価した結果について報告する．

1-038

二つの電圧瞬時値を用いた電圧実効値，及び電力の推定方法の最適化

◎圓句拓海・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・小林昭二（）

近年，スマートグリッドが注目されている。実現には多くの需要家で，従来の電力量計からデータ送信を行えるものに取り換える必要がある。ゆえに，CTにより高価格になっている電力量計のコストダウンが要求されている。そこで本研究では電流を測定せずに，ある任意の2点における電圧瞬時値から電力を求める方法を提案している。従来，数100 nsの時間差測定ために，波形をゼロクロス付近の ∆t=2 μs だけ観測していた。しかし，高周波ノイズの影響により誤差が大きく出ていた。そこで，観測する時間を少しマクロにすることにより，高周波ノイズの影響の削減を試みた。

1-039

3D送電コイルと渦形受電コイルを用いた非接触給電のコイル特性の計測

◎織田大和・相知政司（千葉工業大学）

近年，非接触給電は様々な機器，環境で利用されているが，解決すべき課題も少なくない。非接触給電は送受電コイルの位置関係によって，著しく伝送特性が変化してしまう。円筒コイルや渦形コイルのような従来の平面的なコイルでは，送受電コイルの位置関係によっては，結合係数kが非常に小さく，またはゼロに非常に近くなる無給電点が存在するため，複数の送電コイルを用いて，これを解決している。また，最近では受電コイルに3Dコイルを用いた全方位受電の検討が行われている。しかし，受電側に3Dコイルを用いると，機器の重さ，大きさから持ち運びが不便である。本研究では，小型民生機器への給電を想定し，送電コイルに3Dコイル，受電コイルに渦形コイルを用いて，3Dコイルの特性評価を行う。

1-040

Hコイル付きエプスタイン枠を用いた無方向性電磁鋼板の高磁場磁化測定

○藤村浩志・和嶋 潔（新日鐵住金）・籔本政男（日鉄住金総研）

モータや発電機などの回転機を設計・開発する初期段階で，機器の性能予測するために鉄心材料となる無方向性電磁鋼板の磁化特性を用いた電磁界解析が行われる。回転機の性能解析の精度を向上させるには磁化特性を精度よく求めることが重要である。通常，無方向性電磁鋼板の磁化特性は，JIS規格にある25cmエプスタイン法を用いて測定される。しかしながら，回転機コア内一部の磁束密度レベルは，規格で対応している磁束密度より大きいため，性能解析の精度向上には不十分である。本研究では，25cmエプスタイン法をベースとしてHコイル法による磁界強度測定を行い，JIS規格で未対応の高磁場域における50H250の磁化特性を測定した結果を報告する。

1-041

単発音を用いた距離計測

○三谷康夫・中村優一・岩佐勇輝（福山大学）

対象物までの距離計測は，様々な工学的分野において重要な技術である。従来，距離計測の手法として，レーザ光や超音波，マイクロ波レーダやGPSを用いた測定がしばしば用いられる。本研究では，可聴音の音響信号を用いた距離計測を考察する。通常，超音波を用いて対象物にパルス音を送出し，それが反射音として帰ってくるまでの時間から距離を推定する方法が一般的である。しかし，超音波を用いると空気による距離減衰が大きく，長距離の計測には限界がある。また，音の広がりが小さいため，途中で障害物などが存在する場合に計測が困難になる。そこで，本研究では，可聴音を用いた距離計測法の一つとして，室による定在波や反射波の影響を考慮し，100〔Hz〕までの単発音を採用し，比較的長距離の計測法を提案する。

1-042

自己結合効果を用いた距離・速度デジタル測定

◎柴田慧一・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

工場内でのファクトリーオートメーション化への需要の高まりとともに，それを実現するために不可欠な低コスト・省スペースの要求を満たしたセンサの需要が増している。そこで，私達はレーザの自己結合効果を利用し，距離・速度同時測定可能なセンサ開発を行ってきた。それぞれのセンサで行ってきた測定をひとつのセンサで行うことにより，高まるセンサの性能への要求を満たすことを目指した。また，目視による計測からデジタル値による計測への移行に向けデジタル回路で処理を行い，最適なアルゴリズムを探求した。このことにより，演算をデジタル回路上で行うことによるリアルタイム性の向上，測定環境に合わせた値を用いることによる分解能の向上を目指した。

1-043

電気定位を用いた水中センシングシステムの研究開発

◎中島寛貴・鈴木飛揚・高橋祐人・三枝幹雄（茨城大学）

南アメリカやアフリカに生息する弱電気魚は，放電により周囲に電界を形成し，その歪みを感知することで周囲の状況を把握する「電気定位」と呼ばれる能力を有している。電気定位はソナーやカメラなどでは測定が困難な濁りや気泡を含む水中でも測定が可能であるといった優れた特徴がある一方で，未だ工学的応用が成されていないセンシング技術である。 本研究では電気定位の特徴を活かし，周囲の物体を3次元的に感知することができる3次元電気定位水中センサーを提案し，数値解析・実験により性能評価を行った。実験で得られたデータから，物体の位置や電気的性質の違いを検出することができ，センサーの有用性を確認した。

1-044

太陽電池評価のためのレーザ磁気顕微鏡法の開発

◎岡田英朗・薮本 海・佐藤宣夫（千葉工業大学）

結晶粒界や転位などの結晶欠陥は太陽電池のエネルギー変換効率を低下させる．そのことから，太陽電池デバイスに点在する個々の欠陥の評価は極めて重要である．太陽電池の評価方法としてはLBIC(Laser Beam Induced Current) 法が有名である．しかし，LBIC 法にて得られる情報は太陽電池に生じる電流の総和であり，散乱光等の影響を受けてしまう．本報告では，新たに太陽電池の評価手法である走査型レーザ磁気顕微鏡法を開発し， LBIC 法と比較することによりその有効性を示す．

1-045

半導体デバイスの故障解析のための超音波刺激抵抗変動(SOBIRCH)検出法における最適キャリア周波数の検討

◎辰巳功祐・川島朋裕・村上義信・穂積直裕（豊橋技術科学大学）・松本 徹（浜松ホトニクス）

半導体デバイスの故障箇所絞り込み手法として，SOBIRCH(ultraSOnic Beam Induced Resistance CHange)法の開発を行っている。超音波により封止樹脂内部の配線を加熱し，発生する抵抗変化を電流変動として検出することで故障箇所の絞り込みを行う。この手法は封止樹脂を開封しないため，故障状態を維持できるという利点がある。配線を覆う樹脂が薄くなる程多重反射の影響が大きくなるため，適切なキャリア周波数の選択により感度の向上が図れると予想した。そこで，薄い樹脂に覆われた配線サンプルを用いて，キャリア周波数による信号強度の変化を実験的に確認した。実験結果より，適切なキャリア周波数を選択することによって，樹脂内の共振を利用した感度向上を図れる可能性が示唆された。

1-046

超音波距離計の受信信号の減衰特性を利用した誤差補正における回路パラメータの調査

◎高橋真悟・松岡俊佑（旭川工業高等専門学校）・川口秀樹（室蘭工業大学）・藤枝直輝・市川周一（豊橋技術科学大学）

リアルタイムで測位可能な超音波測位システムの受信信号の減衰特性を利用して誤差を補正する方法について．受信回路の回路パラメータを変えたときの補正の効果について調査したので報告する．

1-047

超音波測位システムのフェーズドアレイ送信機の実験検証

◎伊藤大道・松岡俊佑（旭川工業高等専門学校）・川口秀樹（室蘭工業大学）・藤枝直輝・市川周一（豊橋技術科学大学）

超音波測位システムの指向範囲の拡大のためフェーズドアレイ送信機の導入を検討する．ファンクションジェネレータを用いてフェーズドアレイ送信機を構築し，指向性実験を行ったので報告する．

1-048

陰極はく離した塗装鋼板内部に対するテラヘルツイメージング

○布施則一（電力中央研究所）・菅江清信（新日鐵住金）

塗装鋼材にテラヘルツ波を照射すると，試料の断層構造界面における屈折率の差に起因し，反射が生じる。パルス状のテラヘルツ波を用いた場合，各断層界面からの反射波の分離は比較的容易であり，これより断層ごとの屈折率を推定できる。本研究では，これに表面粗さの影響を考慮した周波数解析法を提案した。陰極はく離試験により塗膜内部にNaOH層を作成した試料に対し，テラヘルツ波の反射測定を行った。人工欠陥付近から新たなテラヘルツ波反射が観測され，これを解析することにより，塗膜下NaOHの分布を屈折率の推定により非破壊イメージングすることができた。

1-049

レーザーを用いたコンクリート構造物内部欠陥検査手法の高速化と屋外検査装置の開発

◎倉橋慎理（レーザー技術総合研究所）・北村俊幸・岡田 大・三上勝大・近藤修司・長谷川 登・錦野将元・河内哲哉（量子科学技術研究開発機構）・河中準二（大阪大学レーザー科学研究所）・島田義則（レーザー技術総合研究所）

（公財）レーザー技術総合研究所では，レーザーを用いた遠隔・非接触で測定可能な方式の実現をめざしてコンクリート構造物の欠陥検査技術の開発を継続して行っており，これまでにコンクリート構造物内部の空洞の検出を遠隔・非接触で行える技術の開発を行ってきた．本手法の実用化に向けて，量子科学技術研究開発機構とともに同手法の高速化に取り組んできており，平成28年度には検査速度50Hzで運用可能な装置の開発に成功し，平成29年度には同装置を車載化し，屋外模擬トンネルにおける実証試験を実施した．平成30年度はさらなる実用化を目指し屋外道路トンネルにおいて実証試験を実施したので，その内容について報告する．

1-050

不飽和交流漏洩磁束法を用いた鉄鋼構造物の亀裂形状の推定

◎齊藤大介・林 実・中村喜浩・堺 健司・紀和利彦・塚田啓二（岡山大学）

建造物の欠陥検出を行う非破壊検査技術において，欠陥の有無だけでなく，欠陥の形状を推定する技術が求められている。磁気センサを用いた交流漏洩磁束法を開発したことは過去に報告した。本研究ではその手法を用いて，平面形状に応じたUSAC-MFL用磁気センサプローブを作製した。測定サンプルとして，深さの異なる表面スリットと裏面スリット，また長さの異なる表面スリットを用意し，作製した磁気センサプローブで測定を行った。その結果，サンプル表面から1 mmから6 mmまでの表面スリットの深さ推定ができた。また，長さ5 mmから25 mmまでの表面スリットの長さ推定ができた。また，サンプル表面から深さ4 mmに位置する裏面スリットの検出ができた。

1-051

積層セラミックコンデンサの短絡故障における非破壊電流経路可視化

◎薮本 海・佐藤宣夫（千葉工業大学）

専用の銅箔基板上に実装した市販の積層セラミックコンデンサに，耐圧を超える電圧を印加することで短絡故障を再現し，非破壊検査を適用することで，欠陥箇所の特定や当該手法の有効性について検証する．解析手段としては，遠隔磁場から電流経路を特定可能な，サブサーフェス磁気イメージングシステムを適用する．正常品と欠陥品の電流分布を比較することで欠陥箇所を推定した後，物理的な解析結果との照合を行う．

1-052

反射波長の異なるFBGセンサを用いた火災の発生位置の推定方法に関する検討

◎松本 勇・落合旺永・山口達也・松村太陽・篠田之孝・小野 隆（日本大学）

筆者らは火災の発生位置の推定が可能なシステムを構築し，早期の火災検知，避難誘導，消火活動に役立てることを目的としている。その方法として，温度や歪みの変化を光波長の変化として検出できるfiber Bragg grating (以後FBG) を組み込んだ光ファイバ型センサを使用することにした。今回は実験室内に火災を模擬した熱源を設置し，加熱させた際に得られる各FBGセンサの温度情報から，熱源の発生位置を推定する方法を検討した。熱源の発生位置の推定は，熱源から各FBGセンサに熱が伝達するまでの時間差と各FBGセンサの温度変化量の差から求める方法を提案した。その結果誤差5.4㎝以内で熱源の発生位置を推定できる見通しが得られた。

1-053

雨滴電荷に着目した降雨観測の検討

◎野中 知・安藤大地・山下幸三（足利大学）・佐藤光輝・高橋幸弘（北海道大学）

本研究では，構造が単純かつ廉価で，高密度センサーネットワークへの応用を可能とする降雨センサーの確立を検討する。空間スケールが小さく既存の降雨観測網のセンサー間隔では検知が難しい，局所的豪雨の早期検知への応用を目指す。本稿では，降雨粒子の帯電に着目した測定システムの試作，動作検証，試験観測の概要を報告する。測定システムは，センサー部として構造が単純なアルミ平板を用いた。動作検証として，人為的に帯電した水滴をセンサー部に滴下し，パルス波形が発生することを確認した。試験観測の結果，観測点近傍のアメダスによる降水量と，アルミ平板に生じるパルス頻度の変化に大まかな一致が見られることを確認した。

1-054

磁場顕微鏡を用いたリチウムイオン電池のショート箇所特定

○鈴木一博・堤 雅義・照井裕二（東芝ナノアナリシス）

最近，ショート箇所特定技術として，磁場顕微鏡を用いる手法が提案されている。本研究では，磁場顕微鏡を用いたリチウムイオン電池のショート箇所特定の事例について報告する。

1-055

同軸プラズマガン堆積法におけるインパルス電圧と気圧・間隙長の特性について

◎八重樫哉雅・橋口 舞・胡桃 聡・松田健一・鈴木 薫・小林大地・関口純一・浅井朋彦（日本大学）

Fe2TiAl系フルホイスラ―合金は有害元素を含まず，理論的に高い熱電能を有すると考えられている．しかし，各元素配合量の僅かな変化がゼーベック係数の大きさや符号に影響することが分かっており，制御の困難さが応用上の期待を低下させている．そこで我々が着目したのが同軸プラズマガン (Coaxial Plasma Gun, CPG) (1)を用いた堆積法である．これは複数種の金属からなる内部電極を持つCPGを個別にインパルス放電させ，スパッタされる各々の微粒子を制御することにより合金薄膜が生成可能な方法である．本稿ではAlターゲットCPGの基礎特性としてインパルス電圧と気圧・間隙長の関係について報告する．

1-056

FRC衝突合体実験における中性子計測のための高速応答検出器の開発

◎佐原直人・小川 洋・関口純一・髙橋 努・浅井朋彦（日本大学）・Richard Magee（TAE Technologies, Inc.）

FRC（Field-Reversed Configuration）のパフォーマンス向上を目的に，逆磁場シータピンチ法で生成された2つのコンパクトトロイドを，アルヴェン速度を超える〜500km/s程度の相対速度で衝突合体させ，FRCを生成する実験がTAE Technologies社や日本大学理工学部などで開始されている。衝突時に生じる衝撃波加熱などの過程が，合体生成されるFRCの性能を決定すると考えられるが，未だ未検証な点も多い。本研究では衝突加熱過程の時間スケールが数マイクロ秒であることから，高時間分解能かつ加工性に優れたプラスチックシンチレータと高磁場中で使用可能な光電子増倍管を組み合わせた中性子検出器を製作し，高速時間応答性を確認するため，異なる条件におけるFRC衝突合体時の計測を行った。

1-057

移送磁場反転配位のプラズマパラメータ評価法の開発

◎小林大樹・永田昌基・関口純一・浅井朋彦・高橋 努（日本大学）

移送中のFRCのプラズマパラメータの評価は，移送経路上に複数の計測器を配置し，移送中のプラズマパラメータの分布の時間変化を推定して求める方法で行われる。解析的なモデル計算から，制動放射光計測から電子密度を評価できる可能性が示された。本報告では，移送経路に配置した排除磁束半径計測，制動放射光計測，およびレーザー干渉計を用いて，移送中のプラズマ長，プラズマ体積，電子密度，全粒子数，それらの減衰時間の計測を従来の方法と新しい計測方法で測定し，それぞれの計測制度などについて比較検討し評価する。

1-058

揺動磁場計測と制動放射光計測による移送磁場反転配位プラズマのWobble運動の評価

◎廣橋光始光始・長田昌之・関口純一・浅井朋彦・髙橋 努（日本大学）

日本大学のFAT-CM装置では磁場反転配位プラズマの衝突合体実験を行っている．生成されたプラズマにはWobble運動と呼ばれる巨視的な運動が発生し，衝突するプラズマの中心軸がずれて非対称な衝突合体となり衝突後に起こるポロイダル磁場の磁気再結合に影響を与え，衝突合体の効果を低下する恐れがある．Wobble運動によってプラズマの中心軸が運動することによって理想的な磁場反転配位プラズマには無いトロイダル方向の揺動磁場が発生する．本報告では，分割型sin-cosプローブによる揺動磁場のモード解析及び制動放射光の2次元計測を用いて移送過程におけるプラズマの巨視的運動を観測し，揺動磁場と巨視的運動の関連と衝突合体へのWobble運動の影響について報告する．

1-059

コーシー条件面法による磁場反転配位プラズマの形状及びプラズマ電流評価

◎星野啓雄・吉野智哉・関口純一・浅井朋彦・高橋 努（日本大学）

磁場反転配位（FRC）プラズマは，＜β＞≒1が実現可能となる唯一の磁場閉じ込めプラズマである。生成したプラズマの位置形状を正確かつ高速に決定することは，プラズマを能動的に評価・制御する上で重要である。本研究では，JT-60の実時間プラズマ形状計測に開発されたトカマクプラズマの形状決定法であるコーシー条件面（CCS）法をFRCプラズマに適用することで正確な最外殻磁気面を同定し，高精度な形状解析と未知であるプラズマ電流評価の可能性を検証する。CCS法は，Green関数を用いた境界要素法で解析解として求めているため，計測器に誤差がないとすれば他の如何なる形状計測よりも高精度に形状再構築を行える上，Green関数など既知の数値をあらかじめ計算しておくことで実時間での高速計算が可能である。今回FRC衝突合体生成装置(FAT-CM)で，CCS法によるFRCプラズマの形状再構築シミュレーション及びその実験を行った結果について報告を行う。

1-060

大気圧グロー放電プラズマのラングミュアプローブ計測

○牟田浩司・大石 亮・石橋 凌・内原光之助・中村隆昌・土内裕太郎（近畿大学）

本研究では，大気圧グロー放電プラズマ中に挿入したラングミュアプローブの挙動を流体方程式に基づく数値シミュレーションし，算出されたVI曲線を測定から得られるVI曲線にフィッティングすることでプラズマパラメータを算出する。本手法ではデータ処理に要する時間が懸念されるが，数値解析モデルを必要最小化することで，実用的な時間で計測可能なシステムを目指している。これにより許容精度を有する実用的な大気圧プラズマ用プローブ計測システムの構築を目標とする。

1-061

高圧アルゴンガス中でのフェムト秒レーザープラズマの電子温度測定

◎土田晃輔・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

高圧ガスをターゲットにしたナノ秒レーザープラズマについては既に研究されている。また，フェムト秒レーザープラズマに関する研究も報告されているが，それらは低気圧下での研究であり，高圧ガスをターゲットにした研究は報告されていない。そこで高圧アルゴンガスをターゲットにしたフェムト秒レーザープラズマの特性を明らかにするために，プラズマの電子温度を測定した。その結果，フェムト秒レーザープラズマの電子温度はガス圧や測定する位置によって3000Kから10000K程度まで変化した。

1-062

ソレノイドの一様磁場輸送中におけるレーザーアブレーションプラズマのイオン電流密度分布

◎高橋一匡・和田雄太・佐々木 徹・菊池崇志（長岡技術科学大学）

レーザーイオン源は，高強度レーザーを固体ターゲットに照射することによって高密度のプラズマを生成することが可能であるため大電流のイオンビームが供給できる。イオン源の長パルス化に伴うイオン電流の減少を抑制するため磁場印加によるプラズマのガイディングが検討されている。重イオン慣性核融合のイオン源では，マルチビームレット方式が検討されており，プラズマから多数のイオンビームを引き出す必要があるため，径方向に一様な密度分布のプラズマが必要となる。本研究ではソレノイドによる縦磁場を印加し，径方向のイオン電流密度分布の変化を調べた結果，イオン電流密度分布は中心の電流密度が高い分布を維持しながらソレノイド内を輸送されることが明らかになった。

1-063

フラーレンイオンビーム形成のためのC60ターゲットを用いたレーザーアブレーションプラズマ生成装置

◎葛本雅之・齋藤佑樹・和田雄太・南口 誠・高橋一匡・佐々木 徹・菊池崇志（長岡技術科学大学）

慣性核融合のエネルギードライバーとして，巨大クラスターイオンビームを用いる方式が提案されている。 質量の揃ったクラスターを容易に得られるため，フラーレン(C60)やSi-100のイオンビームの利用が検討されており，クラスターイオンのための加速器も検討されている。また，高強度レーザーの照射によって発生するアブレーションプラズマは高密度であり，大電流イオンビーム源として期待されている。本研究では，C60の粉末(purity 99.5%)を固めて作製したターゲットを用いたレーザーアブレーションプラズマ生成装置を構築し，ファラデーカップを用いたイオン電流の測定によりプラズマの生成の確認を行った。

1-064

ヘテロダイン型レーザー干渉計を用いた衝突合体FRCプラズマの多点密度計測

◎巽 ありさ・関口純一・高橋 努・浅井朋彦（日本大学）

日本大学理工学部・FAT-CM装置では，FRCプラズマの超アルヴェン速度衝突合体生成実験が行われており，2つのプラズモイドを衝突合体させることで，高温で配位持続時間の長いFRCが得られることが分かっている。しかし，FRC衝突時の相対速度がアルヴェン速度を超えることから，衝撃波形成など磁気圧とプラズマ圧の変動に差を伴う動的プロセスが生じていると考えられ，実験による検証が急務である。本研究では3台のヘテロダイン型レーザー干渉計による同時多点電子密度計測の結果を，磁場や放射光計測と比較することで，FRCの衝突合体生成時の粒子増加やエネルギーフローについて検証する。

1-065

対向発散磁界下誘導結合プラズマ中の電子閉じ込め効果に対するシースの影響の定性的検討

◎小澤良輔・菅原広剛（北海道大学）

誘導結合磁化プラズマの一種であるX点プラズマは容器内に対向発散磁界を形成し，電子閉じ込め効果を示す。励起源アンテナ側上部領域では電子数密度が高く維持され，下部拡散領域では低エネルギー電子が付着等の反応により負イオンを多く生成すると期待される。本報では電子閉じ込め効果へのシースの定性的影響を調べるため，上部領域における電子数の電離衝突による増加と閉じ込めからの脱出による減少を含めた実効電子増加率の依存性を観察した。シース厚さを5mm一定とし0，12，24，36，48Vの電位差を与えて解析した結果，シースの有無による電子閉じ込め効果の差は目立たず，定性的議論の本質を大きく変えるものではないことが示唆された。

1-066

誘導結合型磁化プラズマ容器器壁近傍における電子エネルギー利得の位相分解モンテカルロ解析

◎高橋宏徳・菅原広剛（北海道大学）

誘導結合型磁化プラズマの一種であるX点プラズマは，低圧下で高密度プラズマを維持する上，容器内に形成される対向発散磁界による電子閉じ込め効果を有し，リモートプラズマ省空間化への応用が提案されている。既報では，容器側壁近傍の電磁界下で電子ドリフトが生じることで電子加速と減速がrf電界位相に依存しその加速／減速量が偏る機構が解明された。本研究ではその加速／減速の内訳を定量的に議論するため，rf周期を前後半に分け電子エネルギー利得と電子滞在時間に対応する利得サンプリング回数の空間分布を解析した。またシース電界とrf電界による利得を各々区別し利得の要因を明らかにした。結果，当該利得機構を定量的に確かめられた。

1-067

交流電界・直流磁界下気体中の電子輸送係数解析

◎佐藤 壮・菅原広剛（北海道大学）

13.56MHzの交流電界と直流磁界の下で駆動する誘導結合磁化プラズマの一種であるX点プラズマの構造と動特性理解のため交流電界・直流磁界下の電子輸送解析を行い，電子平均エネルギー，衝突周波数，ドリフト速度，拡散係数を算出した。ドリフト速度と拡散係数については方向成分ごとに算出した。磁界強度の解析範囲には，X点プラズマで高いエネルギー利得が報告されている部分共鳴が起こる共鳴磁界強度を含めた。電子平均エネルギーや衝突周波数とともにドリフト速度の周期変化も共鳴磁界強度付近において絶対値最大となった。実機の複雑な電磁界における電子輸送を理解する上で比較の基準として有用と考えられる基礎特性が観察された。

1-068

大気圧イオン移動度測定における換算電界強度に対する移動度ヒストグラム

◎池田一樹・奥山 由（苫小牧工業高等専門学校）・菅原広剛（北海道大学）

本研究では反応速度定数及びイオン移動度の報告値を用いて，大気圧のLow-purity O₂中を想定したシミュレーションを，0.03 ≤ E/N ≤ 30.0 Tdの範囲において行い，実験結果と比較，検討した。 その結果，平衡状態においては実験結果と同様にN₂O₂^-及びCO₄^-のイオン強度が高くなったが，実験で観測されたE/Nの低下，即ち，ドリフト時間の増加に伴う移動度ヒストグラム上でのピークの分離は観測されなかった。この原因の1つとして，本シミュレーションではイオン検出時の針対平板電極間における電子雪崩を考慮していないためと考えられ，この点について更に検討していく必要がある。

1-069

弱電離気体プラズマの解析(CL) 高E/N領域におけるN₂ガスの電離係数(2)

◎末次泰基・川口 悟・髙橋一弘・佐藤孝紀（室蘭工業大学）

定常Townsend法を用いて，E/N = 400–4,200 TdにおけるN₂ガスの電離電流を測定し，Lucasの電流成長式を用いたカーブフィッティングを行うことで電離係数を算出した。今回の測定で得られた電離係数は，E/N = 3,400 Tdまで増加し，それ以上のE/Nにおいて減少した。これは，先行研究と同様の結果であり，高E/N領域における正確な電離係数を導出するためには，非等方散乱と不均一なエネルギー分配を考慮する必要があることがわかった。

1-070

弱電離気体プラズマの解析(CLI) N₂ガス中の高次の係数の測定

◎中田理幸・川口 悟・高橋一弘・佐藤孝紀（室蘭工業大学）

二重シャッタードリフト装置によりE/N = 300 ~ 600 Tdの範囲においてN₂ガス中の電子到着時間分布(Arrival Time Spectra : ATS)を測定し，これまで報告されていない高次の係数D₃を求め，Monte Carlo Simulation(MCS)による計算結果と比較を行った。実験により得られたATSは，ドリフト距離が長くなると，分布が遅れて現れる，拡散により分布が広がる，電離増倍によりピーク値が上昇するなどの特徴を有する結果となった。ATS理論により求めたD₃は，MCSによる計算結果と同じオーダーとなったが，ばらつきのある結果となった。

1-071

Ar(3P2)のH2Oによる失活レート係数

○鈴木 進・平田 立・碓氷陽平・伊藤晴雄（千葉工業大学）

準安定励起原子Ar(3P2)の基底状態Ar(1S0)とH2Oによる失活レート係数の温度依存性を300 Kから353Kまで変えて決定したが，本報告では，Ar(3P2)のH2Oによる失活レート係数を導出するため過渡電流波形を再度検討した結果について報告する。

1-072

準大気圧下における高繰り返しナノ秒パルス窒素グロー放電の特性評価

◎平野 涼・井岡克也・前川拓也・菊池祐介（兵庫県立大学）・大坪 陽・西村芳実（栗田製作所）・八束充保（兵庫県立大学）

ナノ秒パルス電源を用いたグロー放電生成技術によって，大気圧／準大気圧下において一様な非平衡プラズマを生成する研究が行われている。従来使われていたナノ秒パルス電源の繰り返し周波数はkHzオーダーであったが，近年開発されたSiC-MOSFETをスイッチング素子に用いることで，繰り返し周波数を数百kHzまで上昇させることが可能となった。これによって，プラズマプロセス速度を高めることが期待される一方で，高繰り返し化によってパルス放電特性がどのように変化するかは未解明である。そこで本研究では，放電ガスに窒素を用いて，ガス圧力や周波数を変化させたときの放電特性を調査した。

1-073

気中放電における多重バリアの放電孔の半径と電流値の関係

◎佐々木佑樹・荒岡信隆・高村紀充・高根直也・水﨑雅之・花井正広（福岡大学）

近年，風力発電機の普及に伴い，高層建造物である風力発電機への落雷による被害が増加している。特に，落雷が風力発電機のブレードを貫通する事故にはメカニズムが解明されていないことから効果的な対策がなされておらず，新たな対策案が求められている。筆者らは気中放電が絶縁物を貫通するメカニズムを解明するために，主要因と考えられる熱や圧力，電界について調査を行っている。現在，気中放電の圧力を調査する上で必要な気中放電の面積を推定する研究を行っており，その過程で放電孔の半径に電流が関係し，フラッシオーバ時の電流により放電孔が生じる可能性が示唆された。結果として，放電孔の半径と電流値はほぼ比例していることが示唆された。

1-074

大気圧酸素放電下のO原子計測におけるオゾン干渉の分離

◎中川雄介・川北拓弥・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）

大気圧プラズマによる酸化処理では，基底状態の酸素原子が重要な役割を担うため，分光計測による酸素原子挙動観測が必要である。しかし純酸素放電下では，オゾンの光解離で酸素原子が生じるオゾン干渉により，酸素原子の分光計測は困難であった。本研究では，二光子励起レーザー誘起蛍光法（TALIF）により酸素原子の挙動を観測した。放電由来酸素原子とオゾン干渉とでTALIF信号のレーザー光強度依存性が異なることを利用し，オゾン干渉の影響を除去することに成功した。

1-075

大気中ストリーマ進展形状の外部印加電界分布依存性

○本間敬浩・稲田優貴・前山光明（埼玉大学）

ストリーマ放電は大気圧プラズマの一種として知られており，様々な分野で応用が進んでいる．しかしストリーマ内の活性種の反応過程に対する知識は不十分であり，技術開発は理論ではなく経験に頼らざるを得ないのが現状である．活性種の生成には，プラズマの電界，電子密度が深く関わっており，これらのプラズマパラメータの測定を行う事で，活性種の生成機構解明につながると考えられる．しかし，ストリーマは時空間的再現性が低いため，これらのプラズマパラメータの測定が困難である．そこで，本研究では，電界測定および電子密度測定への足掛かりとして，ストリーマの空間再現性の向上を目的に，一次ストリーマの画像診断及び，電極周辺の電界分布のシミュレーションを行った．

1-076

8巻-8巻の上下段コイルにより駆動するタンデム型Ar-O2誘導熱プラズマの電磁熱流体解析

◎明石恵太・隠田一輝・清水光太郎・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

誘導熱プラズマ(ICTP)は，高いガス温度，高い化学反応性の特徴を有し，さらに無電極放電のため電極物質の混入がない利点がある。そのためICTPは材料処理への応用が活発である。しかしICTPは，外部擾乱に対し比較的容易に不安定となり，例えばナノ粒子生成時にトーチ内に大量原料を投入した時，熱プラズマが消滅する場合がある。この短所を解決する一手法として筆者らはタンデム型ICTPを開発している。タンデム型ICTPは，1つのトーチに2つのコイルでICTPを維持する。さらにこの2コイルに流す高周波電流を独立に制御することで，安定かつ効率的なプロセスを期待できる。材料プロセスではしばしば分子性ガスを導入し，これが熱プラズマ挙動に大きな影響を与える。本報では，シースガスからのO2流量を様々に設定した場合についてタンデム型ICTPの電磁熱流体解析を行い，温度場，流れ場および酸素混合率分布への影響を検討した。

1-077

誘電体に吸着する電子の脱離が誘電体バリア放電に与える影響

○明石治朗・吉永智一（防衛大学校）

誘電体バリア放電において誘電体表面での蓄積電荷の振る舞いを計算機シミュレーションを用いて解析を行った。これまで，誘電体表面に蓄積している電子について吸着エネルギーを考慮しないモデルでの電子脱離を解析してきたが，今回は誘電体表面に蓄積している電子について吸着エネルギーを考慮し，より現実に近いモデルによる解析を行った。その結果，電子脱離が局所的に起こり，電子脱離が起こらないところからフィラメント状放電の発生が得られた。

1-078

Analysis for Charge Propagation Phenomena with Equipotential Sphere Forming Gas-Solid Interface

◎MinHee Kim・Se-Hee Lee（Kyungpook National University）

To analyze the surface and space charge propagations with a floated lossy medium, we have developed a fully coupled finite element model including a suitable boundary condition resulting from the migration-Ohmic dielectric modeling. Until now, there have been frequently reported for discharge simulation in the air without any obstacle in the discharge column. However, the real electric apparatus contains various electric structures such as floated conductive media. To verify our numerical model, first, the migration-Ohmic model has been tested with one carrier system with a charge injection mechanism. The critical angle which limits the charge amount adhering to the surface and the tendency of space charge propagation were successfully compared while adjusting the amount of injected charge

1-079

真空紫外吸収分光法を用いたTiN成膜用HiPIMSプラズマ中の窒素原子密度計測

中村将之・竹田圭吾・○太田貴之（名城大学）

中性粒子のイオン化促進と高エネルギーイオンの生成が可能なハイパワーインパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)において，マイクロホローカソード光源を用いる真空紫外吸収分光法によりN2/Ar ガス下におけるTi - HiPIMSプラズマ中の基底状態N原子密度計測を行った．ターゲットに印加するパルス電圧を増加させると，光吸収率，すなわちN原子密度は電源電圧の増加に伴いほぼ比例的に増加し，N2分子の解離が進むことが示唆された．

1-080

パルススパッタペニング放電による熱可塑性樹脂基板上への窒化チタン薄膜の作製

○東 欣吾・永 井僚・田中達也・岡 好浩（兵庫県立大学）

高電力パルス・スパッタリング(HPPS)は，直流スパッタリングに比べ波高値が十分に大きい高電圧パルスをスパッタターゲット陰極に印加することにより，ターゲット構成物質からなる質金属プラズマを得る方法である。ペニング放電タイプ・ターゲットカソードを使用したHPPS放電はスパッタ現象に伴って生じる高エネルギーの反跳粒子がプラズマ生成領域から拡散するプラズマにほとんど含まれないため，基材の温度が上昇しにくい特徴を有する。プラズマ源から30 mmの位置にポリエチレン基板とポリ塩化ビニル基板を置き窒素雰囲気下でチタンプラズマを生成した結果，金色の膜が得られた。ただし，塩化ビニル基板ではくすんだ色になった。

1-081

RFマグネトロンプラズマ法による窒化鉄生成の試み

◎矢澤翔大・石原聖久・江頭雅之・工藤祐輔・黒岩 孝・新妻清純（日本大学）

金属は表面処理を行うことにより耐摩耗性，耐食性，防錆性，濡れ性等が向上することが知られている。様々な表面処理方法からプラズマ窒化処理に注目した。本研究室ではDCプラズマ装置を改良しプラズマの電子密度を高めるためプラズマ処理部のカソード電極の下に磁石を配置したDCマグネトロンプラズマ処理を行ってきたが，プラズマ処理部に試料を多数設置するとプラズマが点火しないことやプラズマ処理中にプラズマが安定しないといった課題があった。そこで，DCプラズマ装置と同様にプラズマ処理部に磁石を配置したRFマグネトロンプラズマ装置を用いることで鉄箔への窒化処理を試みた。本研究ではプラズマ入力電力を変化させ検討した。

1-082

Ar/N2 ループ型誘導熱プラズマを用いたSi 基板表面の窒化試験

◎大関元紀・藤田敦士・田中康規・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）・幸本徹哉・川浦 廣（シー・ヴィー・リサーチ）

筆者らは熱プラズマによる大面積にわたる超高速表面改質を目指し，これまでにループ型誘導熱プラズマ(Loop-ICTP)装置を開発している。この装置では，ループ型トーチを円型コイルで挟み，ループ管に垂直な交番磁界により，ループ周回方向に電界を印加して誘導熱プラズマを維持する。このループ型誘導熱プラズマの一部を基板上に直接生成し，これを基板表面全体に照射することにより，高速表面処理が可能となる。これまでに本装置を用いてSi の高速表面酸化を実証してきた。ここでは，本ループ型ICTP の窒化処理への適用を試みた。本報告ではAr/N2 ガスを導入したループ型誘導熱プラズマをSi 基板表面上に直接生成し，Si 基板表面の高速窒化処理を試み，その適用性を検討した。

1-083

大気圧プラズマ窒化処理における還元フェーズ時間依存性の調査

◎大谷亮仁・市來龍大・中原弘将・西口宏泰・立花孝介・古木貴志・金澤誠司（大分大学）

ステンレス鋼を大気圧プラズマジェットを用いて窒化する上で，不動態被膜を還元する必要があり，窒素動作ガスに水素を導入すると試料に窒素が拡散される。そこで，導入水素ガスを増加させ，処理する試料の還元を目的とした還元フェーズと，試料の窒化を目的とした窒化フェーズの2段階の処理を行うことで従来の窒化フェーズのみの処理よりも膜厚を増加できるのではないかと考えた。そこで，今回は還元フェーズ時間依存性を調査した。還元フェーズ時間0 min~15 minでは時間の増加とともに膜厚が減少した。逆に，15 min~45 minでは，還元フェーズ時間の増加に伴い膜厚が増加した。この結果は，不動態被膜の還元の状況及び窒化フェーズ時間の増減が関係していると考えられる。

1-084

アモルファスカーボン成膜用大気圧He/CH₄プラズマの数値解析

◎小嶋正宏・大木一真・小田昭紀（千葉工業大学）

アモルファスカーボン膜は機械的特性に優れた性質を持つ膜であり，PETボトルへのガスバリアコーティングや切削工具へのコーティングなどさまざまな分野に応用されている．この膜を成膜する方法の一つとして，低温プラズマを利用した大気圧プラズマCVD法がある．大気圧プラズマCVD法は真空装置が不要なため低コストであることや成膜速度が速いという利点を持つが，実用化の際には硬度などの膜特性や生成制御等に課題が残る．このような課題を解決するには本プラズマの生成維持メカニズムの解明が重要になる．そこで，大気圧プラズマ CVD 法の確立を目的とした前段階として大気圧炭化水素プラズマのシミュレーションおよび解析を行ったので報告する．

1-085

色素増感太陽電池の高速低温焼成法の開発

◎全 俊豪（東京工業大学）・藤島恒人・小野 亮（東京大学）

先行研究で著者は，酸化チタン電極を紫外線照射しながら焼成するHot UV 焼成法を開発し，大気圧プラズマ処理と組み合わせることで，焼成温度をプラスチック基板の耐熱温度(150◦C) まで下げても高温焼成と同等の性能をもつガラス基板色素増感太陽電池を製作することに成功した。同手法を用いて，高温焼成用TiO2 ペーストをプラスチック基板上で製作した。本稿では改良した高速低温焼成手法は室内空気雰囲気下でDBDと低温焼成を同時に行うことで，高い密度の酸素系活性種を供給しながら高速低温焼成を実現できた。その後先行研究のHot UV焼成で仕上げ焼成を行うことで，酸化チタン薄膜の品質を保ちながら，焼成時間を18時間から3時間まで低下させることができた。

1-086

変調型Ar/CH ₄/H₂誘導熱プラズマ照射により生成する多結晶ダイヤモンド膜に対するトーチ内圧力の影響

◎畑 和史・荒井隆志・田中康規・上杉喜彦・石島達夫（金沢大学）

本報告では，変調誘導熱プラズマ照射による多結晶ダイヤモンド膜生成に対して, トーチ内圧力の影響を調査した。誘導熱プラズマ(ICTP)は，高温かつ熱容量が大きく，クリーンな反応場を生成できるという利点から，材料プロセス分野への応用が期待されている。筆者らは，このICTP をダイヤモンド膜生成に応用することを考えている。熱プラズマプロセスにおいて，圧力は温度や流速などに影響を及ぼす極めて重要な要素である。本報告では, 2通りの圧力条件下でSi基板に熱プラズマを照射した。熱プラズマ照射後の基板表面をSEMおよびラマン分光分析により評価した。その結果，より低い圧力条件下で熱プラズマを照射することで，ダイヤモンド膜が高速に生成することが示唆された。

1-087

キャビテーションプラズマによって銀電極から合成した銀ナノ粒子の合成メカニズムの検討

○岡 好浩・黒島朋哉・大塚健太郎・八束充保（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマ(CBP: Cavitation bubble plasma)法は効率良く液中に低温プラズマを生成できる手法である。これまでに，本手法により銀電極を母材として粒径が1 ~ 20 nm程度の銀ナノ粒子を合成することに成功した。今回，溶液中の銀イオン濃度および電極消耗量を評価し，銀ナノ粒子合成に及ぼすCBPの影響から銀ナノ粒子の合成メカニズムを調査した。プラズマ未発生時は銀イオン濃度が高く，電極消耗量が少ないが，プラズマ発生時は逆に銀イオンはほとんど存在しないが，電極消耗量が多くなることがわかった。このことから電圧を印加することによって電極から溶出した銀イオンがプラズマ中で還元され，銀ナノ粒子が生成されていることが考えられる。

1-088

He/O₂狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマの発光スペクトルと高分子表面処理特性

◎古田憲司郎・中野俊樹・北嶋 武（防衛大学校）

本研究ではHe/O₂狭ギャップ短パルス大気圧非平衡プラズマのO数密度のO₂混合比依存性を推測し，ポリエチレンテレフタレート（PET）のプラズマ表面処理特性との関連性を検討した。プラズマ発光スペクトルは分光器と光子計数システムを用いて取得し，処理表面の特性は，接触角から算出した表面エネルギーの分散力成分と極性力成分から評価した。発光スペクトル強度から，O₂混合比が5%から20%に増加すると，Oの数密度が約1.8倍に増加することがわかった。処理表面の特性は，O₂混合比を20%に増加すると，極性力成分は増加して，分散力成分は減少する傾向が見られた。これらの結果から，極性力成分上昇の要因はOの数密度の増加である可能性が高い。

1-089

アルミナ含有量の異なるエポキシ樹脂中のトリー生成と発生超音波

◎井上俊介・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田上東達也（かんでんエンジニアリング）

近年，高度成長期に大量投入された変圧器など機器が寿命を迎え，電力機器内における絶縁物の劣化や接触不良による，部分放電が発生する。この部分放電は放置すると絶縁破壊に至り，事故，故障が発生するため，絶縁破壊の前駆現象である部分放電を検出し診断することが重要である。本報告では電気機器内を模擬した測定系を用いて絶縁耐力の異なる絶縁物のトリー生成時における部分放電に伴う超音波の検出と周波数特性の調査を行った。

1-090

発泡エナメル皮膜材料における繰り返しパルス放電による帯電現象

◎武川秀介・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・宮崎優伍・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年の産業用モータは省エネルギー化が図れるインバータが用いられ高電圧で駆動している。しかし，モータコイルに使用されるエナメル線に高電圧が印加されると，部分放電が発生しエナメル線が損傷する可能性があり，部分放電抑制のために発泡エナメル線が開発されている。ここで，部分放電により発生した蓄積電荷がエナメル線の部分放電特性に影響を与えることが確認されており，発泡エナメル線でも同様に蓄積電荷の影響が考えられる。今回の研究で発泡率の違いに関わらず，負極性の方が帯電しやすいという結果が得られた。これは皮膜材料が電子を捕捉し負極性に帯電しやすい性質を持つためである。

1-091

部分放電電磁波の周波数特性における電極ーアンテナ間距離の影響

◎羽渕雄堂・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

部分放電は絶縁破壊の前駆現象であり，これを初期の段階に検知することは電力系統事故の回避に有効である。現在多くの部分放電検出法が提案されており，特に放射電磁波の計測は外部ノイズとの分離が必要であるが，アンテナ等は測定対象から分離されているという利点を有する。ここで，部分放電源からの距離によって取得電磁波の様子が異なるとき，放電特性の解析結果に支障が出てしまう。そこで本研究では，アンテナと部分放電源との距離を変化させ，部分放電電流とともに比較・検討した。その結果，取得電磁波の周波数強度を放電電流の波高値で規格化した値は，電極―アンテナ間距離に依存するものとしないものの2種類あることが分かった。

1-092

アンテナによる平角線モータコイルエンドの部分放電位置検出

◎山田哲也・高木謙一郎・白波瀬真人・高橋芳光・林 裕二（SOKEN）

アンテナを用いた電磁波検出により，平角線モータにおいてコイルエンド近傍のコイル間で発生する部分放電の発生位置解析を実施した。アンテナ検出強度を比較することで，ステータの周方向，軸方向のコイルエンドに対する部分放電発生位置が特定可能であり，絶縁弱部の解析に活用できる可能性がある。

1-093

電子付着性ガス混合によるDry Air中部分放電放射電磁波の検出特性変化に関する基礎検討

◎田中麻理菜・古家広貴・大塚信也（九州工業大学）・井波 潔・羽馬洋之（三菱電機）・山本尚史・岡部成光（東京電力ホールディングス）

近年，SF(sub)6(/sub)代替ガスとして Dry Air や CO(sub)2(/sub) などの自然ガスやC(sub)5(/sub)F(sub)10(/sub)Oなど新しいSF(sub)6(/sub)代替ガスの研究が進められている。電力機器の絶縁診断の高度化のためには，部分放電(PD)現象，特にPD電流と二次的に放射されるPD放射電磁波特性を理解する必要がある。筆者らは，これまでPD現象の理解を目的とし，SF(sub)6(/sub)及びN(sub)2(/sub)，CO(sub)2(/sub)，Dry AirのPD特性の基礎検討として，交流電圧印加時のPD電流及び放射電磁波に関する検討を行っている。本論文では，Dry AirにSF(sub)6(/sub)を混合させ，PD開始時の電流及び電磁波を同期測定し，特性を検討した。その結果SF(sub)6(/sub)混合により，混合ガスのPD電流波形はSF(sub)6(/sub)ガスの特性に近づくように変化し，この結果は電流波形の変化によることが確認された。

1-094

シリコーンゴムの部分放電劣化の評価（第4報）

◎小松一輝・島田美月・濵井貴宏・劉 浩・水野幸男（名古屋工業大学）

高分子がいしとして用いられるシリコーンゴムに関して，耐部分放電劣化性能を評価するため，前報に引き続き試験・評価を行っている。 大気中での部分放電試験を介したシリコーンゴムは，絶縁性能の劣化要因となり得る撥水性の低下や表面粗さの増大が起こる。部分放電によるこれらの劣化をシリコーンゴム表面の改質という面から赤外吸収スペクトルにより評価を行うことにした。長期間の試験の中でより細かな変化を観察するため測定を繰り返した。その結果を報告する。

1-095

複合誘電体の界面における半導電層の部分放電抑制効果

◎岡嵜岳陽・中村 孝（大阪大学）

パワーモジュールなどの電力変換装置は高電圧を出力するが，その絶縁を確保するために絶縁材料が使用される．本研究では絶縁特性に優れるマイカを絶縁材料として用いる．マイカの接着の工程において，微小なボイドが混入するなどして，高電圧印加時にマイカと導体との界面に部分放電が発生すると予想される．本研究では，放電防止用の半導電層をマイカに接着し，部分放電の抑制効果を調査した．銅板で挟み作製した供試体に交流高電圧を印加し，検出電圧と部分放電開始電圧が半導電層によりどのように変化するか測定を行った．結果より，半導電層によって部分放電開始電圧は上昇し，検出電圧は低下した．よって，半導電層は部分放電抑制効果を有することが明らかとなった．

1-096

空気中不平等電界下における2次ストリーマ発生条件

◎浅野竜大・小島寛樹（名古屋大学）・米須大吾・額賀 淳・六戸敏昭（日立製作所）・早川直樹（名古屋大学）

空気中不平等電界下の絶縁破壊は，2次ストリーマ発生可否によって異なるメカニズムを経ると考えられるため，本論文では2次ストリーマ発生可否をストリーク発光像における発光と1次ストリーマ到達後の電流の有無により判断することで，2次ストリーマ発生条件について実験的に検討した．その結果，1次ストリーマ発生可否は針電極先端の最大電界に依存するが，2次ストリーマ発生可否は最大電界ではなく，ギャップ間の平均電界に依存する可能性が示唆された．これは2次ストリーマ発生に必要な対向電極からの電子供給が行われる直前のチャネル内電位勾配がチャネルの導電性で決まるためほぼ一定であり，平均電界とみなせるためと考えられる．

1-097

エステル油/プレスボードの油隙中における雷インパルス電圧下の部分放電特性

◎山田大智・倉地将貴・中野裕介・小迫雅裕・匹田政幸（九州工業大学）・吉田成是・海永壮一郎・吉村 学・菅 健一（三菱電機）

電力用油入変圧器は，油／プレスボード複合絶縁系が用いられており，機器を高電圧化・小形化する上では，複合絶縁系における放電特性を解明することが重要である。一方，環境負荷低減への意識の高まりから，生分解性・難燃性に優れているエステル油を使用した変圧器のニーズが高くなっている。このような要望に応えるには，油／PBの複合絶縁系において，エステル油を絶縁油として適用した際の放電特性を解明することが重要である。そこで本稿では，エステル油/PB複合絶縁系の油隙中におけるインパルス部分放電開始電圧を測定し，鉱油における特性と比較することで，複合絶縁系におけるエステル油の特徴を明らかにしたので報告する。

1-098

キャビテーションプラズマ発生に及ぼす印加電圧繰り返し周波数の影響

◎岡田 翔・上田唯人・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマは高繰り返し高電圧短パルスを印加した電極間にキャビテーション気泡を含む溶液を導くことで生成される液中低温プラズマである。キャビテーションプラズマは処理能力が高く，分散，合成，分解，殺菌などへの応用が期待されている。しかし，その気泡内での放電現象については報告が少ない。先行研究では直前に発生した放電の影響を受けることが報告されており，その影響を調査するため印加電圧パルスの繰り返し周波数を20～200 kHzまで変化させた際のプラズマ発生率を調査した。パルス繰り返し周波数が20 kHzではほとんどプラズマが発生しないが，パルス繰り返し周波数を増加させるにつれてプラズマ発生率は上昇し，200 kHzでは30 %まで上昇した。

1-099

塩化ナトリウム水溶液中のキャビテーション気泡への連続放電の進展

◎上田唯人・岡田 翔・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

液中の放電によるプラズマの生成は気泡が少なく効率が良くない。そこで我々はキャビテーションプラズマ装置を開発し，効率の良いプラズマの生成に成功している。また装置内での放電の様子を観測した結果，プラズマが連続的に発生・消滅していることが分かった。しかし発生した微小気泡内での放電現象が未だ明らかになっていないため，周波数変化による微小気泡への連続放電の進展について調べた。 装置の反応室内には塩化ナトリウム水溶液を導入し，設置したタングステン電極間に周波数20～100 kHzの両極性パルス電圧を印加した。同時にICCDカメラで放電発光の撮影を行った。 放電路の高さは経過時間に対して緩やかに増加しており，周波数が高いほど放電路が高くなっている。

1-100

ブレード内部の水滴に対する放電特性

◎川上孝世・箕田充志（松江工業高等専門学校）

風力発電機の増加とともに，雷による破損事故が増加している。水抜き穴や損傷により生じた穴から内部に放電することによる，ブレード破損が報告されている。ブレード内部の水滴に雷が放電し，気化したための急激な内圧上昇がブレード破損の要因となる。本研究は，水滴に放電が生じるメカニズムの解明を目的とする。本稿ではブレードの穴直下からダウンコンダクタの距離を離し，ギャップ長を変化させたときの放電特性について報告する。実験結果より，ダウンコンダクタ上にない水滴に放電する確率は低いことが分かった。このことから，ブレードの穴直下からダウンコンダクタを離すことで，ブレード破損を予防できる可能性が示された。

1-101

印加電圧が電解放電加工特性に与える影響

○古谷克司（豊田工業大学）

無機絶縁体への微細加工法の一つとして，電解放電加工法がある。工具電極を一定速度で送ると工作物との間隔が開き，加工速度が低下する。加工中でも変更可能な加工条件は印加電圧であるので，本報では，工具電極と工作物との間隙および印加電圧が加工特性に与える影響を穴加工について実験的に調べた。ソーダ石灰ガラスをNaCl水溶液中で加工した穴形状を測定した。電流も同時に測定した。印加電圧が40，45Vでは泡の量が多く，放電はあまり観察されなかったが，加工量は大きかった。50，55Vでは泡の量が減り，放電は非常に激しかったが，加工量は小さかった。工具電極と工作物の初期間隙の電流波形への影響はなかった。

1-102

水中気泡内プラズマによる種々の有機物分解

○竹内 希（産業技術総合研究所）

水中酸素気泡内プラズマにより酢酸，N-ニトロソジメチルアミン（NDMA），およびペルフルオロオクタンスルホン酸（PFOS）の分解を行い，有機物の物性の影響や処理液pHの影響を調査した。酢酸分解では，処理液pHが中性のときに高速・高効率分解が可能であり，処理液が酸性の場合には分解がほとんど進まないことが分かった。

1-103

酸素ドープによる低温大気圧プラズマジェットのラディカル生成効率の向上

◎渡辺 茜・小林大地・浅井朋彦（日本大学）・小口治久（産業技術総合研究所）

低温大気圧プラズマジェットは大気圧下で安価かつ容易に低温プラズマを生成することができ，がん細胞のアポトーシス誘導や材料の表面改質を目的とした応用研究が進められている。通常の方法ではプラズマ生成が困難なアルゴンや混合ガスにおいても，予備電離法を適用することで，安定にプラズマを生成することが可能となった。そこで本研究では，プラズマ生成に用いるアルゴンに酸素をドープすることで酸素系ラディカルの生成効率の向上を試みた。酸素混合アルゴンとアルゴンのみの場合について分光計測により発光スペクトルから酸素系ラディカルの生成量を評価，また，生成されるオゾン濃度を計測し比較した。

1-104

球雷放電を用いた酢酸分解処理特性

◎田代潤一郎・稲田優貴・前山光明（埼玉大学）

球雷状放電は，100ms という大気圧放電としては非常に長い放電維持時間とOH ラジカル由来の強い発光が直径 10cm 程度の体積で観測されることなどから，これを用いた新たな水処理手法の開発が期待されている。今回の実験では，酢酸を対象として実験を行った。酢酸に対してもインジゴカルミン溶液と同様，OHラジカル由来の発光スペクトルが観測された。よって，球雷放電を用いた水処理が期待できる。酢酸はオゾンの影響を受けない難分解性有機物であり，OHラジカルによる影響のみを受ける試料として用いた。

1-105

酸化クロムを塗布した真空パルプ内壁における沿面放電のParticle-In-Cell Monte-Carlo-Collisionシミュレーション

◎長谷川優貴・江尻 開・熊田亜紀子・日髙邦彦（東京大学）・道念大樹・小倉健太郎（三菱電機）

真空遮断器内部の真空バルブの高耐圧化のため酸化クロムを真空バルブ内壁のアルミナ表面に塗布する手法がある。しかし，この手法が耐電圧を上昇させる詳細な原理は未だ不明である。酸化クロムの塗布が真空沿面放電進展機構に与える影響の解明を目指し，PIC-MCC(Particle-In-Cell Monte-Carlo-Collision)法でシミュレーションを行った。結果，酸化クロムを真空遮断器内壁の三重点に塗布すると陰極から電界放出した電子が内壁から離れる向きに拡散され，陽極に到達しにくくなることが確認された。

1-106

円柱端部がメタライズされたアルミナ試料の真空中沿面放電特性

◎京須亮太・山納 康（埼玉大学）・浅利直紀・松尾和宏（東芝インフラシステムズ）

真空中の絶縁において，金属－絶縁体－真空の三重点は電界が高まり，電子が放出しやすく沿面放電の起点となり得る。本論文では，アルミナにメタライズ層を付けた試料と付けていない試料の真空中沿面放電試験を行い，三重点における電極と絶縁体の接触が沿面放電特性にどのような影響を与えるのかを調査した。 その結果，メタライズ層がある場合，放電電圧が高くコンディショニングスピードが速くなり，沿面放電特性が良くなることがわかった。SEMを用いてメタライズ層とアルミナの隙間は1µmであるのに対し，メタライズ層がない場合は最大で0.1mm程度の隙間があることが示唆され，この隙間が沿面放電特性に影響を与えたと考えられる。

1-107

真空中沿面放電経路の初期帯電分布依存性

◎西田歩成・小島寛樹（名古屋大学）・飯塚伸介・田中 荘（日立産機システム）・早川直樹（名古屋大学）

真空中沿面放電(FO)に対して，アルミナ上の帯電電位と2次電子放出係数δから，初期帯電存在時のFO経路について検討した．FOは，初期帯電の分布・大きさにより，進展経路が異なる場合がある．初期帯電を迂回する場合は，放電最短経路上に2次電子なだれが発生し得るδ≧1の領域が存在しているが，電子の進展を妨げる方向に電界が向いているため，最短経路では進展しない．陰極から電子が進展する方向にδ≧1の領域が存在しているため，迂回したと推測された．一方，初期帯電を乗り越えて進展する場合は，放電最短経路上にδ≧1の領域が存在し，かつ電界方向は電子が進展する方向であるため，最短経路を通ったと考えられる．

1-108

真空/正帯電固体絶縁物上における交流沿面放電進展特性

◎大木駿士朗・小島寛樹（名古屋大学）・浅利直紀・竪山智博・佐々木良輔（東芝インフラシステムズ）・早川直樹（名古屋大学）

真空/固体複合絶縁系への交流電圧印加時には，固体絶縁物沿面上の帯電形成を伴う部分放電(PD)から沿面放電を経て，フラッシオーバに至る．今回，固体絶縁物上の正帯電が沿面放電の進展特性に与える影響について考察した．試験の結果，発光強度が増減を繰り返しており，それに対応して放電進展長が伸縮していることが分かった．これは以下の二つの過程の繰り返しにより発生していると考えられる． 1. PDの発生とともにアルミナ上の二次電子放出により正帯電量が上昇し，陰極近傍の電界が上昇する．これにより，次の負サイクルの放電進展長が長くなる． 2. 電界強調により陰極から突発的電子放出が発生すると，発生した電子と正帯電が打ち消しあうことで正帯電量が減少し，陰極近傍の電界が減少する．これにより，次の負サイクルの放電進展長が短くなる．

1-109

沿面放電を利用した落雷誘導へのCFRPの適用

◎和田光平・箕田充志（松江工業高等専門学校）

現在，多くの地域で大型の風力発電装置が建設されている．風車の大型化が進むことで，落雷による被害も増加している．落雷はブレード先端に落ちやすいため，先端部分には受雷部が設けれている．受雷部に導かれた雷電流は，ブレード内部を通って受雷部に導かれることで事故を低減している．しかし，落雷が受雷部に導かれずブレードを破損することがある．そのため，ブレードの破損事故を低減するために落雷を受雷部に導く方法が必要である．本研究では，軽くて丈夫で電気・熱伝導性に優れるCFRPを用いた場合の落雷誘導に与える効果を検討した．

1-110

沿面放電進展時の誘導電流観測

◎二階堂慎一・杉本俊之（山形大学）

接地平板の表面に帯電した薄い絶縁層があるとき，その上部から接地電極を近づけると進展性の高い沿面放電(PBD; propagating brush discharge)を引き起こすことがある。本研究ではこのPBDが進展する過程を誘導電流波形から調べる方法について検討した。-11.5 kVに帯電した厚み0.1 mmの絶縁シートの上部から接地された半球型電極を近づけPBDを発生させ，半球型電極の隣に設けた2つの誘導電極A，Bの誘導電流波形を観察した。この2つの波形は類似していてPBDの発生源に近い方が大きくなり，放電時の電荷移動に起因する脈動を持った誘導電流が流れることが分かった。これらの波形からPBD進展時の電荷の動きが推定できる可能性が示唆された。

1-111

ホール型電気集塵装置における電極構造の検討

◎袁 振東・宮下皓高・江原由泰（東京都市大学）

電気集塵装置(ESP)は高集塵率・低圧力損失などの利点がある一方,ディーゼルエンジンから排出される低抵抗率かつ高濃度な粒子を捕集する際に生じる再飛散現象が問題となっている。ホール型ESPはこの再飛散現象を抑制する装置であり,帯電粒子を電界がゼロの捕集区間内に誘導することで,再飛散現象を抑制することができる。ホール型ESPでは,再飛散現象の抑制と同時に,集塵性能の高効率化も求められている。集塵効率に影響する要因としては,電界強度および粒子の帯電量が挙げられる。 本研究では,ホール型ESPの電極構造に着目し,ケーシングに針電極を加えることにより,電界強度及び集塵効率への影響を検討した。

1-112

電気集塵装置におけるオゾン生成に及ぼす湿度の影響

◎板倉雄士・田中直輝・江原由泰（東京都市大学）・野崎優介・栗田加奈絵・永吉健太郎（富士通ゼネラル研究所）

電気集塵装置は有害な微小粒子物質の有用な除去方法である一方，放電によってオゾンが生じる。高濃度なオゾンの吸引は，胸痛・呼吸困難等の悪影響を与えるため，排出オゾン量の抑制を行う必要がある。本研究では，経時変化によりオゾン発生量が変化する現象に着目し，その特性について調べた。実験では，SUS304製の鋸歯電極および平板電極を組み合わせたものを放電電極に用いた。放電電極間のギャップが5.9 mmになるよう垂直に配置し，ギャップ中で放電を発生させた。結果として，短時間で排出オゾン量が増加するオゾン急増現象の発生およびオゾン急増現象に対する湿度の影響を確認した。

1-113

絶縁被覆接地電極の荷電性能とオゾン生成量

○永吉健太郎・栗田加奈絵・野﨑優介（富士通ゼネラル研究所）・江原由泰（東京都市大学）

2段式電気集じん装置の荷電部の接地電極を絶縁被覆をして意図的に逆電離現象を起こすことで，通常の直流コロナとは異なるパルス荷電相当のイオン空間が出現することを見出した。タングステンワイヤやステンレス製鋸歯状電極を正極放電電極として，ステンレス製平板接地電極を軟質塩化ビニルやテフロンで被覆したときの試作品で放電パルスを観察し，荷電量，オゾン生成量を計測した。小風量の時に高い荷電性能を示す一方，オゾン生成量を大幅に抑制できることが分かった。

1-114

高電界を利用した省エネ型電気集塵装置の開発

◎井上将吾・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）

電気集塵装置の省エネ化を目指し，コロナ放電を用いず電界のみで集塵する新たな集塵方式を考え，集塵率と電圧の関係を検討した。実験装置は平行平板電極構造とし，電極長は50～450 mm，ギャップは5 mmとした。平行平板電極の端部には丸みを設け，直流電圧を最大−12.5 kV 加えた。電極間の風速を2.5 m/sとし，集塵率を測定した。その結果，いずれの電極長においても電圧が高いほど集塵率は向上し，電極長450 mm，電圧12.5 kVにおいて72％が得られた。この時，電極間に流れる電流は検出されず，電力消費はほとんどなかった。

1-115

線電極が複数本の場合の線対平板型電気集塵装置におけるイオン風解析

◎伊藤航平・森 悠真・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・川田吉弘（職業能力開発総合大学校）・田岡智浩（住重プラントエンジニアリング）

本研究では，シミュレーションソフトCOMSOLを用いて，線電極を複数本配置した線対平板型電気集塵装置におけるイオン風の解析を行った．解析手法には，放電電流の実験値と解析値を合わせ込む手法を採用し，線電極本数は3本とした．その結果，放電電流の実験値と解析値を合わせ込むことで，接地平板電極表面付近の電流密度分布が実験結果と解析結果で概ね一致することがわかった．また，同一条件時におけるイオン風の解析を行ったところ，各線電極から2つ，計6つの渦状流れが確認された．解析空間におけるイオン風の最大流速は0.92 m/s，平均流速は0.46 m/sとなった．

1-116

静電霧化を用いた微粒子の集塵

◎矢澤拓海・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）

本研究では，上流側に微粒子の予備荷電部を設け，静電霧化による集塵効果を検討した。 実験装置は荷電部，水槽，霧化部，送風ファン，パーティクルカウンタによって構成した。装置内の風速は約1 m/sに調節した。荷電部には電流が1組あたり100 µAとなるように正極性直流電圧を約4.5 kV印加した。霧化部には最大9.0 kVの正極性直流電圧を印加した。 その結果，霧化部の電圧の上昇に伴い集塵率が約20ポイント向上した。これは霧化水滴の帯電量が増加し，微粒子と凝集しやすくなったためと考えられた。

1-117

マイクロホローカソード放電によるオゾン生成量と放電条件の比較

○前山光明・江角悠希・古滝 準・稲田優貴（埼玉大学）

大気圧放電プラズマの一つMCS 放電では比較的低い電源電圧でのオゾン生成が可能である。これまでにそのオゾン生成効率，生成したオゾンを用いた水処理効果等の評価を行ってきた。 更なる性能向上のため，主に発光スペクトル分布の情報を基に，放電条件とオゾン生成特性の関連性を調査した。

1-118

工学的手法を用いたジャンボタニシ防除法のフィールドテストによる効果検証

○柳生義人・猪原武士・篠原正典・大島多美子・川崎仁晴（佐世保高等専門学校）

1980年代に食用として日本に導入されたジャンボタニシは，水稲やレンコンなどの水田作物を食害する外来種として知られている。その被害は日本だけでなく，コメの主要輸出国であるタイをはじめとした東南アジア諸国やハワイなどでも報告されており国際的に解決すべき問題となっている。このジャンボタニシに対して，省力的かつ環境無負荷な防除技術の確立を目指し，工学的な見地から防除技術の開発に取り組んできた。本稿では，工学的手法によるジャンボタニシ防除法を確立するため，屋外の実験用水田および実際の水田を通じて，実用化に向けた研究開発を進めた結果を報告する。

1-119

正コロナ放電とウッドセラミックス電極による気中におい成分の除去

○川田吉弘・大川翔太郎・清水洋隆（職業能力開発総合大学校）

一段式の電気集塵装置と同様の線対平板電極構成のコロナ放電を用いた，圧力損失が少ない脱臭装置の検討を行った。接地平板電極に用いたウッドセラミックスについては，オガ炭（木材切断の際に出るおがくずを固めて炭にしたもの）から製作したものであり，環境負荷は低い。成形や電気抵抗率，細孔を製造工程で調整できる。対象としたにおい物質は気中のl-メントールであり，フーリエ変換赤外分光光度計（FT-IR）により測定した。本装置において，気中のl-メントール低減を促進でき，その際に発生したオゾン濃度はステンレス電極を用いた場合に対し低かった。イオン風や静電気的な除去であるか，オゾンによる酸化分解か，今後検討を進める。

1-120

積層形プラズマアクチュエータによるCd値の減少効果測定実験

山中建二・◎廣滋伸一（徳島大学）・福田 亮（いすゞ中央研究所）

トラックやバスといった重量車は，車体の構造上，乗用車に比べ空気抵抗が大きく，これを減少させる事が燃費向上へつながると考えられる。誘電体バリア放電を利用したプラズマアクチュエータは軽量なデバイスでありながら空気の流れを変化させることができ，空気抵抗の減少効果を期待できる。本稿では，複数の電極を積み重ねた積層形プラズマアクチュエータを提案し，従来の平行形に比べ高い風速が得られることを示す。また，トラックのキャビンを縮小させたモデルを用いて，風洞内でモデルにはたらく抗力を測定した結果から，Cd値の減少効果について報告する。

1-121

ブラシ電極を使用した放電解凍法

◎橋本浩輔・加藤正平（東洋大学）

ブラシ電極は複数の導電細線からなるが，細線が接近していると細線先端の電界が，細線が単独である場合より低くなり，コロナ放電発生電圧が上昇する。電圧を低下させるために，細線の長さの2倍程度の間隔をとり，近接効果は無視できるようにしたブラシ電極を製作し，メッシュ対向電極間でコロナ放電を従来より低い電圧で発生できるようにした。この電極は5kVの電圧を印加すると約1m/sの微風を発生することが出た。このイオン風をマグロの切り身の解凍に使用したところ，温度6℃の環境下で自然解凍に要する時間の約55%で解凍することができた。

1-122

スラグ流を伴うマイクロ流路内ナノ秒パルス放電による水素生成特性

◎井上 伶・猪原武士・長田秀夫・柳生義人・大島多美子・篠原正典・川崎仁晴（佐世保工業高等専門学校）

既存の水素生成法は環境面や維持・運転面において課題が存在するため，持続可能な水素生成法は確立されていない。本研究ではパルスパワー技術による水を原料とした新規の水素生成法の開発を目的とする。効率的な水素生成のために，エネルギーの高密度化の観点から高密度性，非平衡性などの特徴を持つマイクロ流路が有用であると考えた。今回，新たに3Dプリンタによって作成したマイクロ流路内にArガスと水道水による気液スラグ流を形成し，管内に気液界面放電を発生させた。気体と液体の流量比は一定とし，流量を変化させ水素生成特性を測定した。実験結果より，従来の気液界面放電による水素生成法よりも本マイクロ流路を用いた水素生成法のほうが生成量が増加することが確認された。

1-123

放電を用いた液体のメタン直接分解による水素生成における電力依存性の評価

◎吉田広平（豊橋技術科学大学）・梅田良人（東邦冷熱）・針谷 達・谷本 壮・滝川浩史・須田善行（豊橋技術科学大学）

気候変動問題へ対応するため，水素を製造・利用することが有効である．水素を連続的かつ大量に供給するために，高温・高圧の水蒸気改質反応などにより化石燃料から水素を製造している．(例:CH4＋2H2O→4H2+CO2)この時，CO2が発生するため，水素利用によりゼロエミッションを目指すためにはコストのかかるCCS処理などが必要となる．CO2フリー水素を直接製造することができれば，CCS処理は不要となる．我が国では，液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を輸入した後，ガス化して，都市ガス導管などを用いて需要家へ供給している．LNGをガス化する際，海水と熱交換しており，その冷熱の大部分は未利用のまま捨てられている．LNG中で放電することにより，気化工程を簡素化するとともに未利用冷熱を利用が期待できる．高温・高圧の反応を回避し，かつ，CO2フリー水素を連続的に製造することが目的である

1-124

加湿気相中ナノ秒パルス放電による水素生成

◎猪原武士・古谷拓海・長田秀夫・柳生義人・大島多美子・篠原正典・川崎仁晴（佐世保工業高等専門学校）

本研究は，ナノ秒パルス放電を用いて水を原料とした新しい水素製造法の開発を行うものである．先行研究として，パルス放電の初期状態である1次ストリーマが水素生成において重要であることを見出している．本発表では，加湿気相中でナノ秒パルス放電を用いた水素生成において，放電場の条件が水素生成に与える影響について報告するものである．実験結果として，放電部の管径が小さくなるに従い，水素生成量および放電時に生じる電流量が増加することが確認された．このことから，管径を小さくすることで放電場のエネルギー空間密度が高くなり，1次ストリーマと水分子との接触頻度が増加したことで水素生成が促されることが示された．

1-125

真空アークにおける圧力勾配と電磁力が及ぼす陰極点移動の解析

◎岩田総司・真栄田義史・岩尾 徹（東京都市大学）

現在，産業応用のため，真空アークの移動要因の解明が求められている。本論文では，陰極点の移動は圧力勾配による力や電磁力によって生じるという仮説の基，3次元電磁熱流体シミュレーションを用いて，真空アークにおける圧力勾配と電磁力が及ぼす陰極点移動への寄与を解析した。結果として，陰極点中心での単位体積当たりの力の合計が100000 N/m^3以上となる条件において，陰極点が移動することが示唆された。

1-126

真空アークにおける熱的非平衡を考慮した電子温度と重粒子温度の算出

◎高木真宏・根本雄介・岩田総司・真栄田義史・岩尾 徹（東京都市大学）

真空アーク陰極点は，金属表面の酸化膜を除去できるため，溶射前処理への利用が期待されている。真空中でのアーク放電は，電子温度と重粒子温度が異なる熱的に非平衡な二温度性を持つ(1)。このため，二温度性を考慮した解析が求められている。しかし，真空アークにおける電子温度と重粒子温度を算出した例は少ない。本論文では，3次元電磁熱流体シミュレーションを用いて，真空アークにおける熱的非平衡を考慮した電子温度と重粒子温度の算出を行った。結果として，電子温度と重粒子温度を分けた解析が可能となった。

1-127

溶射用磁界印加型小電力プラズマトーチの特性把握

○藤野貴康・松本 光（筑波大学）

本講演では，外部磁界印加型溶射用小電力プラズマトーチの特性把握のために行った実験の結果について報告する。

1-128

水蒸気混入による大気圧Arアークプラズマの特性変化

◎加納 亘・杉本尚哉（秋田県立大学）

アルゴンガスを動作ガスとする大気圧アークプラズマにおいて，アルゴンガスに水蒸気を混入させると，アルゴンガスのみの場合と比較してアーク電力は大きくなり，アーク柱周囲を覆うように青紫色に見える発光領域が発生する。水蒸気混入率が高いほど，アーク電力は大きくなり，発光領域は濃くはっきりと現れ，発光スペクトルにおいては，Ar Iの発光強度に対してCu I，H_α，H_β，O Iの発光強度は高くなる。発光領域は，プラズマトーチのガス出口から遠くなるにつれてアーク柱から外部へ広がっており，水蒸気を起源としたHとOのプラズマだと考えられる。

1-129

ポリアクリル酸ゲルのアブレーションを考慮したアークの電磁熱流体解析モデルの構築

○柴山正雄・田中康規・石島達夫・上杉喜彦（金沢大学）

低圧遮断器の消弧方法の一つにアブレーションがある。アブレーション物質は一般的にポリマーが用いられている。これに対し筆者らは液体の水の適用性について検討している。液体の取り扱い上の制約を減らすため，保水性能を有するポリアクリル酸に吸水させてゲル状にすることを検討している。保水ゲルのアブレーション効果を検討するため，ポリアクリル酸に質量比50%のH₂Oを混合した保水ゲルの熱力学・輸送特性の値を計算した。条件は101 kPa，300～30000 Kとした。熱力学・輸送特性を用いてアブレーションアークを解析する電磁熱流体解析モデルを構築した。アブレーションアークの温度分布の計算結果を示す。

1-130

横風吹付け時におけるアークの重粒子と電子の流速の算出

◎根本雄介・岩田総司・真栄田義史・岩尾 徹（東京都市大学）

遮断器は，開極時に発生するアーク放電を確実に消弧することが求められている。ポストアーク領域においては，系統から過渡回復電圧が印加されるため，重粒子と電子で生じる物理現象は異なる(1)。しかし，重粒子と電子の物理現象の違いを定量的に解析した例は多くない。 本論文では，重粒子と電子のそれぞれの運動量保存式を解くことにより，横風吹付け時におけるアークの重粒子の流速と電子の流速の算出を行った。 横風吹付け時において，重粒子の流速分布は横風吹付けに伴い変化するのに対して，電子の流速分布はほとんど変化せず，電界による加速が支配的であることが定量的に明らかとなった。

1-131

3次元電磁熱流体シミュレーションによる横風吹き付け時のアーク内の窒素濃度分布の解析

◎真栄田義史・岩尾 徹（東京都市大学）

ガスシールドアーク溶接において，横風によるアークの偏向によって，溶けた母材内に窒素が混入し溶接欠陥を起こす問題がある。この問題を防ぐためには，横風によって生じるアーク内へ窒素混入過程の解明が必要となる。横風によって生じる窒素の混入過程をシュリーレン法によって観測した報告例がある。しかし，アーク発弧時の観測ではないため，アーク内の窒素混入現象が解明されていない。このため，横風によって生じるアーク内への窒素混入過程を数値解析的に検討することが求められる。以上より，本論文では，3次元電磁熱流体シミュレーションによる横風吹き付け時のアーク内の窒素濃度分布の解析を行った。

1-132

溶接速度向上に向けた回転横磁界の周波数が及ぼすアーク電圧と回転半径

坐間義幸・◎杉山雄紀・松本昂樹・真栄田義史・岩尾 徹（東京都市大学）

TIG溶接は様々な金属において高品質に溶接が可能な接合法である。自動溶接においてトーチの移動に対しアークに遅れが生じ，溶接欠陥を引き起こす。しかし，回転横磁界を印加することにより，この溶接欠陥を防止できると考える。以上より，溶接速度向上に向けた回転横磁界の周波数が及ぼすアーク電圧と回転半径について計測を行った。本実験では，陰極はタングステン電極，陽極はSUS304とした。シールドガスはArを用い，電極間距離は3 mmとした。アーク電流は100 A，回転横磁界の磁束密度を1 mTとし，周波数を0，50，100，500，1000 Hzとした。結果として，アーク電圧は回転横磁界の周波数が増加することにより減少し，回転半径は100 Hzで最大値をとった。

1-133

繰り返しインパルス電圧下における絶縁ゲル中のキャビティー進展現象の極性効果

◎中村 信・佐藤正寛・熊田亜紀子・日髙邦彦（東京大学）・早瀬悠二・髙野 翔・山城啓輔・高野哲美（富士電機）

近年需要が高まるパワーモジュールの絶縁にはシリコーンゲルが用いられる。パワーモジュールではキャビティーと呼ばれる樹枝状の空孔がシリコーンゲルと基板の界面に部分放電によって形成される。著者らは正弦波交流や繰り返しインパルス電圧下等，各種印加電圧波形における，シリコーンゲル中の放電進展特性を調査してきた。本稿では繰り返しインパルス電圧下のキャビティー進展現象の極性効果について調査した。繰り返しインパルス電圧でキャビティー進展の高速度撮影を行ったところ，正極性印加電圧では正極性ストリーマ，負極性印加電圧では負極性ストリーマといずれも波頭で発生するストリーマがキャビティーの進展に寄与すると考えられる。

1-134

ESDガンを用いたプリント配線基板電極間の絶縁破壊現象のガス絶縁媒体種依存性に関する基礎検討

◎嵩西栄人・福山晃弘・大石雄介・大塚信也（九州工業大学）

筆者らはこれまで，プリント配線基板(PCB)の静電気耐性の向上として，ESDガンを用いた配線導体間ギャップでの絶縁破壊現象を検討している。これまで，大気やシリコーンゲル，絶縁油あるいは SF6ガス等でPCB上パターン導体電極間ギャップを絶縁した際の破壊電圧のギャップ長依存性や絶縁媒体による相違などを検討している。本論文では，ガス絶縁に着目し，大気及び大気以外のガス絶縁媒体としてSF6，CO2，N2を対象に，各ガスで絶縁された同一のパターン導体電極間ギャップのESDガンによる絶縁破壊電圧を，ギャップ長を変化させて調べた。その結果，PCB電極系でのVBDはN2 > CO2となることが分かった。これは放電形態が沿面放電であることによる影響かと示唆される。

1-135

発泡エナメル線の部分放電現象における絶縁皮膜構造の影響

◎石津祥子・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・宮崎優伍・溝口 晃・山内雅晃（住友電気工業）

近年，モータ巻線の部分放電による絶縁劣化の促進が懸念されており，耐部分放電性を高めることが求められている。耐部分放電性を高める方法として部分放電の抑制に着目した。部分放電の抑制の方法としては絶縁被膜内に気泡を入れることによって，被膜の誘電率を低下させる方法に着目した。本報告では交流電圧を10分間印加した場合の皮膜の表面層の異なる発泡エナメル線(ポリイミド銅線，PIW)の部分放電電荷量及びその発生回数の時間特性の測定を行った。過電圧率一定の交流電圧を印加した場合，表面層の発泡有無で時間特性に違いがあり，発泡有りのエナメル線は部分放電電荷量の大きな放電は減少しやすいことが確認された。

1-136

薄膜PETフィルムの帯電電荷による局部的な貫通破壊現象

◎佐々本 凌・宮崎貴駿・西嶋喜代人（福岡大学）

著者らは，PETフィルムの厚さが帯電電荷減衰過程に与える影響について調査を行ってきた。結果，薄膜PETフィルムの厚さが，帯電電荷減衰メカニズムに変化を及ぼすことを報告した。その後，薄膜PETフィルムの絶縁破壊現象は，厚いそれと異なる現象であることを観測した。通常，気中を介した誘電体材料の絶縁破壊は，ストリーマ放電，グロー放電，火花放電の順で絶縁破壊が生じる。しかし，厚さが0.0115 mmの極薄なPETフィルムでは，ストリーマ放電，グロー放電，そして放電が気中を介さずに絶縁破壊が生じた。この気中を介さない絶縁破壊現象について，放電発光写真，放電痕の解析，帯電電荷減衰の観点から報告する。

1-137

炭素繊維方向及び電流経路が間接雷試験においてCFRP複合材からのスパーク放電特性に与える影響に関する検討

◎徳益 昂・鴨田将一・山内辰浩・大石雄介・大塚信也（九州工業大学）・西 孝裕樹（SUBARU）

筆者らはこれまで，CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を用いた次世代航空機の耐雷技術開発の一環として，雷撃試験におけるCFRP供試体ファスナ周辺からのスパーク発生特性を検討している。本論文では，更にCFRP供試体を増やして雷撃試験を行い，スパーク発生方向と炭素繊維方向の関係を調べる事で，雷撃試験時のスパーク発生機構を検討した。その結果，CRRP供試体のファスナ部スパークはファスナと炭素繊維の接触部のジュール発熱に起因する事を支持する結果が示された。

1-138

低気圧下における電界電子放出に起因した絶縁破壊現象

◎北林優祐・岩渕大行・大山 力（横浜国立大学）

近年注目が高まってきている真空遮断器の非持続性破壊放電(Non-Sustained Disruptive Discharge : NSDD)について，その発生原因として電界電子放出電流に注目し，PIC-MCC法を用いて電極間にN2中性粒子もしくはCu中性粒子が0.1 Torrの気圧で存在する場合における絶縁破壊のシミュレーションを行った。その結果，電極の表面状態を表す電界強化係数の大きさによっては電極間の中性粒子の電離により生じた正電荷が電極表面の電界を強化し，電界電子放出電流を増加させて絶縁破壊を引き起こすことが確認された。以上より，低気圧下において電界電子放出が絶縁破壊を引き起こす可能性を示すことができた。今後はさらに真空に近い条件にてシミュレーションを続ける予定である。

1-139

真空中における絶縁破壊進展のParticle-In-Cellシミュレーション

◎江尻 開・熊田亜紀子・日高邦彦（東京大学）

真空中の絶縁破壊の開始プロセスとして様々なモデルが提案されているが，絶縁が破壊され，大きな電流が流れる定量的な条件は明らかにされていない。本稿では，Particle-In-Cellシミュレーションを用いて，負極近傍における電子や金属蒸気の放出，正イオンの生成を統合的にシミュレートした。その結果，負極表面から拡散した金属蒸気に，電界電子放出により放出された電子が衝突してイオン化し，生じた正イオン郡が負極近傍に接近することで電界が強化されて電界電子放出が促進されるという正のフィードバックは，放出領域の温度及び電界と電界強化係数の積によって決定される一定の範囲でのみ生じることが明らかになった。

1-140

水滴を介する鉱油中絶縁破壊現象解明のための油中水滴挙動の連成解析

◎山内辰浩・古家広貴・芝田拓樹・大塚信也（九州工業大学）

油中絶縁では水分混入により絶縁破壊電圧やPD開始電圧が低下することが知られている。筆者らはこれまで，鉱油中に設置した針対平板電極系に水滴を混入して，絶縁破壊現象ならびに破壊時の水滴挙動を，高速度カメラを用いて観測し，水滴は最終的に電気力線に沿って伸展して電極ギャップ間を橋絡し破壊に至ることを確認している。 本論文では，このような不平等電界下の油中水滴挙動を連成解析ソフトウェア(COMSOL Multiphysics)を用いて電界と流体を考慮した連成解析で検討し，高速度カメラで観測された挙動を再現できた。また，水滴が電極ギャップ間を橋絡するような伸展が発生する位置を評価できた。

1-141

不平等電界における菜種油中のバリア放電様相

○山本博法・桶谷 健・宮城克徳・花岡良一（金沢工業大学）

現在の油入変圧器に使用されている鉱油は，焼却時のCO2排出や漏油による土壌汚染など，環境問題が懸念されるため，環境循環型社会の構築に向けて，絶縁油を鉱油からカーボンニュートラル効果のある植物油（菜種油など）に変更した環境調和型の変圧器に注目が寄せられている。本研究では，環境保全の観点から鉱油の代替油として有望視されている菜種油に着目し，AC 38kV及び標準雷インパルス電圧印加時におけるバリア放電時のストリーマの進展様相を鉱油中と対比したので，ここに報告する。

1-142

針-球面電極間の空気中静電気火花放電発光スペクトルの観測

○三浦 崇（労働安全衛生総合研究所）

静電気による空気中火花放電は静電エネルギーが高いほど可燃性物質を着火する傾向にあるため，最小着火エネルギーで危険性が評価されている．これに対して発生する静電気火花放電の静電エネルギーを決定するために分光学的手法による基礎研究を進めてきた．これまでに，静電エネルギー空間密度が高いほど，N I（励起窒素原子発光）に対するN II（励起窒素イオン発光）の輝線強度が強くなる傾向が確認されている．一般に針電極では球ギャップの平等電界に比べ低い電場で絶縁破壊が起こる．本研究では，針-球面電極間での静電気放電の分光を行った．その結果，静電エネルギーや放電路の長さの違いによる輝線強度比の変化を確認できた．

1-143

Simple longitudinally excited CO₂ laser driven by a fast high-voltage solid-state switch using IGBTs

◎ノール シャヒラマスローン・大橋薫泰・中野人志（近畿大学）・宇野和行（山梨大学）

Simple longitudinally excited CO₂ laser driven by a fast-high voltage solid state switch using IGBTs has been developed. Laser oscillation was successfully demonstrated and produced laser output energy of about several mJ. Simple, compact and affordable CO₂ gas laser can be realized.

1-144

Influence of the inner electrode geometry on the performance of a tapered plasma focus device

◎スパダベッキャウルデリコ・志村尚彦（東芝エネルギーシステムズ）・柿沼啓太・志熊良樹・高橋一匡・佐々木 徹・菊池崇志（長岡技術科学大学）

The present work aims to clarify the necessary operating conditions of a tapered plasma focus device (PFD) for efficient particle acceleration by means of the shock acceleration mechanism, when a high speed plasma interacts with magnetic fields under collisionless condition. For a preliminary study in the absence of an external magnetic field, the performance of the PFD is analyzed under low pressures (1Pa) for three types of inner electrodes and its influence on the reproducibility and plasma velocity is verified.

1-145

両極性パルス加速器におけるパルス重イオンビームの2段階加速の実証

◎寺田匡志・石田治康・伊藤弘昭（富山大学）

高強度パルス重イオンビームの産業応用，例えば表面改質やイオン注入などの材料プロセス分野において，高強度・高純度のパルス重イオンビームが必要である。本研究では，イオンビームを多段加速させると同時にイオン純度の向上が可能である両極性パルス加速器（Bipolar Pulse Accelerator : BPA）を開発し，窒素イオンビームを用いてBPAの実証実験を行ってきた。本発表ではBPAの実証を目指し，2段加速部におけるパルス重イオンビームの特性をトムソンパラボラ分析器で評価した結果を報告する。

1-146

反射三極管型仮想陰極発振器における出力マイクロ波電力測定と電極間距離依存性

◎春木亮太朗・田中稜大・伊藤弘昭（富山大学）

仮想陰極発振器とは相対論的電子ビームを用いた高出力マイクロ波源である。空間電荷効果により仮想陰極を形成し，電子ビームの往復運動と仮想陰極自身の振動の二つの機構より高出力マイクロ波を発生させる。仮想陰極発振器は他のマイクロ波源に比べ構造が単純でありながらGW級の高出力マイクロ波の発生が可能である。しかし，マイクロ波変換効率が著しく低いという欠点を持っているため変換効率向上に向けた研究が行われてきた。本研究室では，これまで反射三極管型仮想陰極発振器の開発とマイクロ波の発生条件に関する評価を行ってきたが，マイクロ波の出力評価を行っていなかった。本発表では，カロリーメータを用いて電力と変換効率の評価とともにギャップ長の依存性を調べた。

1-147

NOx treatment by Nanosecond Pulsed Power Discharges in Gas mixed of NO, N2, and O2

◎Shujing Yang・Shingo Ishino・Maako Ohishi・Kenji Teranishi・Naoyuki Shimomura（徳島大学）

Nitrogen oxides(NOx), as a kind of air pollution gas, is getting more and more attention in the way of environmental protection. NOx is a main reason of acid rain and photo-chemical smog. And it can cause disease for human. The main sources of nitrogen oxides include vehicle exhaust, coal combustion and so on. On the base of previous research, We further explored the practicality of nanosecond pulse discharge treatment of nitrogen oxides. Considering the existence of oxygen in the exhaust gas , a suitable concentration of oxygen(O2) is added to the mixed gas of nitrogen (N2) and nitric oxide(NO) to simulate the exhaust gas in laboratory. This paper aims to explore the treatment efficiency of nanosecond pulsed power on nitrogen oxides in an oxygen-rich environment.

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模擬空気を原料とした誘電体バリア放電水処理装置による酢酸の分解

○寺西研二・米沢昌紘・長濱 蒼・浜田俊輔・下村直行（徳島大学）・鈴木 進（千葉工業大学）

本報告では，誘電体バリア放電型水処理装置に模擬空気を供給した際の酢酸の分解特性について調査した結果を記述した。本水処理装置では，平板電極表面に処理対象水を噴射して水膜を形成し，この水膜と気相中で生成したDBDが接触することにより水処理が行われる。本研究では，ギャップ長を1 mm，窒素80%と酸素20%の混合ガスである模擬空気を放電ガスとし，濃度20 mg/L，処理水量490 mLの酢酸水溶液に対して240分間の放電処理を行った。その結果，放電処理前に8.12 mgTOC/LであったTOC濃度は，240分の放電処理により1.42 mgTOC/Lまで減少し，TOC分解率は82.5%であった。一方，放電電力は放電処理開始から10秒後において9.1 Wであったが，処理開始から240分後には6.3 Wまで低下した。

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マイクロ波によるカーボンブラックの燃焼における酸素濃度の影響

◎渡久地崇磨・金子 慎・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・乾 貴誌（富士電機）

本研究では，マイクロ波によるカーボンブラックの燃焼率と酸素濃度の関係を検討した。 実験装置はソリッドステート電源，同軸導波管変換器，導波管，短絡板によって構成した。導波管内の電磁界の最大地点とその中間にカーボンブラック2.0 gを入れたるつぼを配置し，酸素濃度10～21 %の範囲において，マイクロ波を20分照射した。 その結果，いずれの酸素濃度においても，燃焼率は電界最大が高く，磁界最大が低くなった。また，燃焼に必要な酸素の濃度が低下すると，当然燃焼率も低下した。しかし，燃焼率は低下しているものの，酸素濃度10 %においてカーボンブラックの燃焼が止まることはなかった。

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がん治療のための高周波バーストパルス印加によるHeLa細胞のDNA断片化の調査

◎佐藤浩美・南谷靖史（山形大学）・大西伸明・卜部 玄・勝木 淳（熊本大学）

副作用が軽い可能性があるがん治療として，パルスパワーを用いることが注目されている。がん細胞に数十kV/cm程度のナノ秒のパルスパワー高電界を印加することでアポトーシスを誘導できることが明らかになっている。このとき単発のパルスを繰り返し細胞へ供給するよりも，連続的なパルス供給のバーストパルスを加える方がより効果的と思われる。そこで本研究では高周波バーストパルスの細胞印加によるアポトーシス誘導の有無を，アポトーシスはDNAの断片化が起こることが必須条件とされているため，DNAの断片化により調査した。

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メダカ受精卵に対する組み合わせ矩形波電気パルスを用いた物質導入

◎永井 匠・池松裕人・山口明美・冨永伸明・河野 晋（有明工業高等専門学校）

今日，化学物質が生体に及ぼす影響調査の必要性が増している．調査するためには試験体に化学物質を導入する必要がある．その手段の一つに電気パルスを用いた電気穿孔法がある．これまでメダカ受精卵に対し広範囲のパルス幅の矩形波を1発印加し物質導入実験を行い，電気的影響と導入の可否を調査してきた．今回，それぞれ単発では導入効率の低いパルスを2つ組み合わせた導入実験を行った．今回の実験では1発目のパルスを同一にし，2発目のパルスを投入エネルギーが同一でパルス幅を変化したものとしたが，2発目のパルス幅によって導入効率に大きな差がみられた．これより，2発目のパルスには最適なパルス幅と電圧が存在することが分かった．

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沿面放電を用いた液中プラズマによるOHラジカルの生成特性

◎DINH TUNG LE・伊藤大樹・安井晋示（名古屋工業大学）

本研究では，植物工場における沿面放電を用いた液中プラズマという新たな殺菌技術の開発を目的とする。今回の実験で，より高い殺菌効果を得るために，最適なプラズマ発生条件を見出す目的で，パルス電源の周期および供給Arガス流量を変えることによって，OHラジカルの発生量を調べた。沿面放電を生成する電極は石英板の中心部に穴を空けた構造であり，高電圧パルスを印加して，Arガスプラズマを液中に照射した。プラズマ照射した溶液に対して化学プローブ法を用いてOHラジカルの定量を行った。今回の実験結果は沿面放電の電極径に対して，1000ccmの最適な流量があること示した。また，パルス周期を短くすると，OHラジカルの生成量が増加している。

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各種放電処理空気を含む水を用いたコマツナの水耕栽培におけるパルス放電の影響

○大澤直樹・尾山太一・中野雄祐・山口宗一郎（金沢工業大学）

本研究では，誘電体バリア放電装置とエジェクタで構成される放電処理空気混合水の生成システムと水中パルス放電システムを併用して各種放電処理水を生成した。また，それら用いてコマツナの水耕栽培を実施した。30日の生育実験の結果，1000ppmのオゾンを含む空気混合水を用いることにより，コマツナの地上部乾燥重量や茎の太さが対照区よりも大きくなることを確認した。

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輸送中における大気圧プラズマを用いたみかんへの消毒方法の検討

◎川島 夏・山澤 優・北野佑磨・高木勇佑・竹下慎二（和歌山工業高等専門学校）

輸送中及び保存中のみかんは，みかん同士の接触や湿度などが原因で発病し，品質を著しく低下させ，少なからず損失が発生することが問題となっている。そこで，近年研究されているプラズマ応用技術において，細菌やカビへの殺菌効果があることが報告されていることから，みかんへの消毒効果を調査し，輸送中や保存中のみかんへの消毒方法を検討した。輸送用コンテナを想定した小型アクリルケース内に消毒対象を設置し，コンテナの天井部からプラズマを間接照射した。みかんの病原菌であるカンキツ緑かび病菌（Pencillium digitatum）を対象とした結果，6minの連続照射で30%，40minで90%の死滅率を得た。また，みかん果皮を対象として40min照射した結果，発病する果皮を25%に抑えることができた。

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大気圧プラズマによるマクロファージの活性化への影響

◎姚 翊綺・林 信哉（九州大学）

The macrophage cell line J774.1 is taking direct/indirect actions to expose around plasma environment. Compare to the results of cell counting, the activated effect of macrophage cells has been suggested to be related oxygen gas flux. Despite unremarkable effect of oxygen plasma, it’s no doubt that oxygen plasma produced large oxidation for cell growth process.

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平行平板型DBDプラズマ処理による芽胞菌の不活化メカニズムに関する研究

◎松村速人・林 信哉（九州大学）

本研究は，大気圧バリア放電を用いたプラズマが芽胞菌に及ぼす影響に関するものである．バリア放電プラズマを芽胞菌に直接照射し，液体培地による培養を行い，その後の菌の活動を計測した．その結果，バリア放電を照射したサンプルは未照射のサンプルに比べて，増殖曲線の遅れや，その後の増殖活動に影響を及ぼすことが確認された．それらは，生体活動に関係する部位へプラズマが作用した影響であることが予想される．また，遺伝子発現変動解析を行い，解析結果と増殖特性の比較しながら，さらに詳しい考察を行った．

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沿面放電液中プラズマによるフザリウム萎凋病防除効果の検証

◎坂本源起・伊藤大樹・安井晋司（名古屋工業大学）・寺添 斉・庄子和博（電力中央研究所）

近年，植物工場で使用する培養液の殺菌技術の開発が望まれている。これまでに筆者らは，新たな殺菌手法としてArガスプラズマを用いた殺菌技術の開発を行い，液中プラズマによる培養液への殺菌効果を確認してきた。本研究では，ホウレンソウの根に萎凋病の病原菌であるフザリウム菌を十分付着させた後，根へ近距離からプラズマを照射した時の萎凋病防除効果を検証した。その結果，プラズマ処理を5分間行うことによって感染率を67%から20%まで減少させることができ，防除効果を確認した。

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沿面放電液中プラズマのPythium属菌遊走子への殺菌効果

◎平原大地・坂本源起・安井晋示（名古屋工業大学）・景山幸二（岐阜大学）

近年，地球環境上の問題を背景として，食料の安定供給を可能とする植物工場への関心が高まっている。しかし，植物病原菌が工場内に侵入すると，培養液循環システムが拡散を助長し，多大な被害をもたらす。この問題を解決する殺菌技術の確立が必要である。筆者らは，液中プラズマによる新たな殺菌技術の開発を行っており，これまでにFusarium属菌胞子を対象に殺菌効果があることを確認した。本研究では，菌種・菌形態の異なるPythium属菌遊走子を対象に殺菌実験を行い，発芽率を算出することにより，沿面放電液中プラズマのPythium属菌遊走子に対する殺菌効果があることを確認した。

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放電型光触媒装置による浮遊菌の処理（Ⅸ）―実環境での浮遊菌処理特性―

○志村尚彦（東芝エネルギーシステムズ）・瀬川 昇（東芝環境ソリューション）

放電型光触媒装置を実際のモニター先に設置し，浮遊一般生菌の除去性能を測定した。装置入口と出口の付近でサンプルした結果は入口と出口において有意な差があると結論でき，有効性を示すことができた。