一般講演

3-150

3次元誘電泳動デバイスを用いた腫瘍細胞分離における給電線の影響

◎川村直弘・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）・円城寺隆治・脇坂嘉一・高野雅代（AFIテクノロジー）

不均一電界の印加により誘電体微粒子を操作する誘電泳動（dielectrophoresis: DEP）法は，希少細胞などの選択的分離に対する有効な手段の一つである。著者らは，微小円柱（ピラー）電極を有する三次元DEPデバイスを用いた腫瘍細胞と正常細胞の分離を検証してきた。しかし，デバイスの底面近傍には給電線が配置されており，細胞の挙動に影響を与える可能性がある。そこで本報では，デバイス内の底面近傍におけるDEP力を導出し，設計の指針となるピラー配置との相関を考証した。数値解析より，給電線の細胞挙動への影響は，流路内高さ0 - 10 µmにおいて大きく現れることが分かった。また，底面付近における給電線の影響を低減する為には，ピラー列の配置角度を小さく，給電線同士の間隔を広く設計する必要がある。

3-151

微粒子誘電泳動を用いた流体マイクロデバイスのDNA検出感度の調査

◎徐 鏡雯・松田兼弥・丁 震昊・中野道彦・末廣純也（九州大学）

筆者らは，ポリメラーゼ連鎖反応により増幅したDNAを微粒子に修飾することで生じる微粒子の誘電特性の変化を利用したDNA検出法を開発した。しかし，この手法では大きな誘電特性の変化を利用している事から修飾するDNA量が多くなってしまうという問題がある。そこで，低濃度DNAを検出するために，DNA修飾微粒子に働く負の誘電泳動力がDNA修飾量に応じて変化することに着目し，その変化を検出するためのマイクロ流体デバイスを考案した。このデバイスを用いることで負の誘電泳動力の変化を微粒子の運動軌跡の変化として観察することができる。本研究では，微粒子懸濁濃度を変化させてDNA検出感度の下限を調べた。。

3-152

誘電泳動インピーダンス計測を用いた芽胞形成菌の電気特性評価

◎堀 貴嗣・内田 諭・杤久保文嘉（首都大学東京）・青木仁史（ニチレイフーズ）

自然界に存在する細菌のなかでも芽胞形成菌は，加熱や空気などの外的要因に対して強い耐性を有する．そのため，食材等に付着すると食中毒や腐敗を引き起こす危険性がある．そのため，食品加工過程における混入の早期発見や細菌状態の即時把握が重要となっている．我々は，電気的検出法である誘電泳動インピーダンス計測に着目し，本手法を用いた芽胞形成菌の検出を試みた．また，対象細菌の芽胞形成状態と発芽後の栄養細胞状態における測定結果の違いについて報告する．測定結果から，対象細菌に対する本手法の最適条件を決定した．更に，本手法とコロニーカウント法における生菌濃度測定とを比較し，本手法が対象細菌検出に対して有効であることを示した．

3-153

微粒子誘電泳動を用いたチップ型DNA検出装置のオートメーション化の検討

◎福島光彦・堀田博一・寺野祐貴・丁 震昊・中野道彦・末廣純也（九州大学）

筆者らの研究グループでは，微粒子の誘電泳動現象とインピーダンス計測を組み合わせた迅速かつ簡便なDNA検出法としてDEPIM法を提案してきた。現在我々はPCRや微粒子とDNAの結合，DEPIM法による検出の各プロセスを別々に行いピペッティングによるサンプル移送が必要であったため，プロセス間でクロスコンタミネーションやサンプルロスなどが生じる恐れがある。本研究では，一連の操作を閉じた密閉空間で行い，サンプル液を自動的に移送するデバイスを作製するためのプロセスとして，微細電極を含むチャンバ内でDNA修飾微粒子の洗浄とDEPIM検出を行う手法について検討している。

3-154

A needle shape fluorescence micro-imager with interference and absorption filters

○Erus Rustami・Kiyotaka Sasagawa・Yasumi Ohta・Makito Haruta（Nara Institute of Science and Technology）・Toshihiko Noda（Toyohashi University of Technology）・Takashi Tokuda・Jun Ohta（Nara Institute of Science and Technology）

Implantable imaging device is a breakthrough approach to observe deep area of the living body. However, achieving high excitation rejection performance in contact imaging setup remains an issue due to the inadequate performance of the emission filter. In this study, we propose a fabrication method of a thin film composite filter comprises an interference filter and an absorptions filters on an image sensor chip. In addition, the fiber-coupled laser provides high-quality excitation light. As a result, the imaging device observed fluorescence emission from GFP developed cells in the mouse brain slice.

3-155

有限要素解析を用いた経上皮電気抵抗測定マイクロ流体デバイス内電極形状の設計

◎宮崎貴史・平井義和・亀井謙一郎・土屋智由・田畑 修（京都大学）

経上皮電気抵抗（TEER）は，細胞単層のバリア機能を非侵襲的かつ経時的に測定可能な指標であり，創薬スクリーニングにおける重要な評価項目である。しかし，デバイス内の電極や細胞培養チャンバの形状および配置によって，同一の細胞種を用いても測定値が異なるという問題が指摘されている。そこで，マイクロ流体デバイスでの正確なTEER測定を目的に，有限要素法を用いて電流密度解析を行い，測定精度に関する指標である感度分布を比較した。本発表では，創薬スクリーニング中の細胞観察とTEER測定が同時に可能であり，マイクロ流体デバイスに適している新たな電極形状とその配置について報告する。

3-156

SnO₂薄膜を感応膜としたEIS構造キャパシタの溶存酸素応答

◎杉原勇也・Sylvia Mei Lin Loo・飛沢 健・岩田達哉・村上健介・高橋一浩・野田俊彦・澤田和明（豊橋技術科学大学）

神経活動や生体エネルギーの生成には酸素が必要不可欠であり，イオンやその他の化学物質を同時に可視化することで様々な未知の事象を理解することができると考えられる。空気中にある酸素分子の吸着現象を利用した酸化物半導体方式ガスセンサは多く報告されているが，液体中の薄膜特性についての報告は少ない。ガスセンサの薄膜が液体中の酸素分子と吸着し，溶存酸素感応膜となれば，イオンイメージセンサの画素上に薄膜を成膜することでイオンとガスの反応領域を同時に観察するマルチモーダルイメージングが可能になる。本研究では，イオンイメージセンサの基本構造であるEIS構造キャパシタにおけるSnO₂薄膜の溶存酸素応答について検討した。

3-157

変調波レゾルバのパルス幅変調(PWM)方式による電子制御技術の開発

◎磯野大介・瀬田 慶・渡辺智貴（東京都市大学）・吉田征夫（ワイエスデイ）・仁木清美・桐生昭吾（東京都市大学）

変調波レゾルバは，変調された高周波励磁を用いたアブソリュートセンサである。これはコイルの巻数が大幅に減少したことでプリント基板化が可能となり小型・薄型化が可能となった。しかし，既存の変調波レゾルバの周辺回路は励磁波生成にデジタルアナログコンバータ(DAC)を用いているため，コストと面積が増加してしまう。そのため，DACを使用しない方法としてPWM波にバンドパスフィルタ(BPF)を通すことで励磁波の生成を行った。本方式によりカウンタ値を取得することに成功した。だが，角度誤差がプラスマイナス1度以内におさまっていないため，レゾルバの特性に合わせた角度補正が必要となる。

3-158

神経網型センシングシステムの無線化と応用についての提案

◎尾關涼哉・菅沼雄介（名城大学）・室山真徳（東北大学）・野々村 裕（名城大学）

人間の神経網を模した神経網型センシングシステムを研究開発している。人間の健康状態把握や，介護現場などの移動を含む広い領域に展開するために，従来の神経網型センシングシステムにBLE (Bluetooth Low Energy) 無線機能を加える。BLEモジュールを用いてリレーノードとのI2C通信，大きなデータ長の通信に対応する分割と結合などのプログラムを開発し無線双方向通信を実現した。神経網型センシングシステムを用いた温度測定においてBLE無線システムは有効であると考えられる。これにより神経網型センシングシステムを用いた温度測定などの人体状態測定や人の活動する環境にセンサ群を配置した統合的な無線センシングとその応用が可能となる。

3-159

画像処理による植物種判別システムの開発

◎高野郁弥・内田秀和・長谷川有貴（埼玉大学）

近年の都市化に伴い，人々の植物に関する知識が損なわれつつある。一方，カメラ機能付きのタブレット端末の普及により，植物の撮影が容易になっている。そこで現在，植物を写した画像からその植物種を判別する研究が非常に盛んに行われている。これまでの研究では，植物の葉や花の画像を判別の指標とするものが多いが，撮影環境からのノイズの影響を受けやすいという課題がある。そこで本研究では，撮影環境の影響を受けにくい植物の気孔を指標とした植物種判別システムの構築を目的とし，すでに大規模な画像データセットによって訓練済みのニューラルネットワークモデルの一部をファインチューニングすることで，植物種判別精度を評価した。

3-160

IoTを用いた砂塵濃度測定システムの試作

◎宮下奏一郎・渡辺誠一・浅沼和志（長野工業高等専門学校）

長野県松本盆地南西部において，毎年2月から5月頃まで強風が吹くと畑作地帯の地表の細かい土が舞い上がり砂塵が発生する。この砂塵が住宅地に向かうと生活環境に影響が出ることや，視界不良となり交通に支障が出る。砂塵被害を防ぐために，耕作者が地表を網マルチで覆い砂塵の発生を防ぐことが行われている。また，寒天の製造過程で出る搾りかすなどを混ぜ合わせた混合物を畑に散布して表面を被覆するなどの試みが行われている。本稿では，砂塵を防ぐ観点ではなく，地域住民が「砂塵とうまく付き合っていく」観点で，IoTを活用して砂塵の飛散状況をモニタリングして住民に伝える砂塵濃度測定システムを試作した結果について報告する。

3-161

遮光板による太陽光方位の検出

◎阿部拓哉・天野雄一朗・河口俊一・大矢博史（明星大学）

近年，一般住宅やメガソーラなどで太陽光発電は盛んに利用されている。これら太陽電池設置の設置は，南向きで実際の仰角より小さな角度で設置されている。しかし，太陽光エネルギーを最大限利用して発電するためには太陽電池の設置面は，常に太陽の向きに向けるのが最良である。研究では，太陽光の向きを検出するために小型太陽電池と遮光板を用いて太陽の方位を検出する指向性のあるセンサを試作したので報告する。

3-162

微小流体チップ用水晶発振回路式液体濃度センサのための回路の最適化

◎佐藤洋太・江端 亮・寒川雅之・安部 隆（新潟大学）

本研究では，微小流体チップ用の水晶発振回路式液体濃度センサの検出濃度範囲および応答値改善のための測定システムのチューニングを行ったので報告する。本センサは，水晶発振回路に微小容量センシング用電極(SC)を直結させた複素容量センサであり，液体の物性変化を周波数変化として検出するものである。しかし，水溶液濃度測定において，低濃度領域で周波数応答と容量変化が一致しないことが分かった。この理由として，回路の抵抗成分が周波数に影響しているためと考えられ，回路に抵抗器をチューニングすることによって応答性を改善した。また，抵抗器の値が大きいほど共振周波数は単調減少し，容量変化と一致することが確認された。

3-163

非接触型水晶発振回路式複素容量センサの土壌モニタリングへの応用

◎村上尚駿・江端 亮・寒川雅之・安部 隆（新潟大学）

本研究では，非接触型水晶発振回路式複素容量センサを用いて，土壌内の水分量および塩分濃度の測定を行ったので報告する。本センサは，フリンジ電界を測定対象に侵入させることが可能な平面展開型の検出用コンデンサ(Sensing Capacitor: SC)を水晶発振回路に接続し，SC間の複素容量変化を発振回路の共振周波数の変化として検出する仕組みとなっている。SCの複素容量に影響を与える要因として測定対象の誘電率や導電率が挙げられる。本センサは，これらの変化を測定でき，土壌の緩みや塩害などを予測する土壌モニタリング技術として期待される。 本研究では，本センサを用いて土壌内に含まれる水分量と塩分濃度の変化の分析を試みた。

3-164

フッ素エラストマとCNT分散樹脂を用いたフレキシブル圧力・曲げセンサの基礎検討

◎高橋拓海・富田 亮・安部 隆・鳴海敬倫・寒川雅之（新潟大学）

本研究では，フッ素エラストマを用いた静電容量型圧力センサと，CNT分散樹脂を用いた曲げセンサを複合したフレキシブルセンサを考案し，試作と基礎特性の評価を行った。本センサは，印加圧力を上下電極間の静電容量で検出し，曲げをCNT分散樹脂の曲率による導電性変化として検出する。そこで，押込み試験・曲げ試験を行い，その際の印加圧力・曲げに対する静電容量変化・抵抗変化をそれぞれ測定した。 結果，圧力の印加に伴い電極間の静電容量が増加し，曲げに対しては，半径3 cm程度の曲率からCNT分散樹脂の抵抗の増加が確認された。このことから，本センサにより圧力と曲げを検知可能であることが示された。

3-165

Development of a bonding technique using photoresists for a pressure sensor array.

◎YOUNA LEE・田中哉太・村上健介・木村安行・岩田達哉・野田俊彦・澤田和明（豊橋技術科学大学）・小笠原 健・清水 聡（東邦化成）

Even though there are recently a growing interesting of touch sensing devices with a high spatial resolution in robotic field, most of all sensors are limited due to their large device size. Especially high density array sensors based on MOSFETs have a problem with their thinner gate insulator layer, a junction of the thin gate insulator was easy to ruin during poling of piezoelectric materials directly deposited on an ion sensitive FET (ISFET) array. Therefore, we here demonstrate a bonding technique that connects a polarized PVDF film to a 256 × 256 ISFET array to fabricate the pressure sensor without the junction damages.

3-166

軟質材料把持における滑り現象

◎坂口晴哉・野々村 裕（名城大学）

軟らかい把持対象の適切な把持の実現に向け，把持により変形を伴う軟質材料が滑る際に把持部が受ける力の計測を行う。分銅をぶら下げたシリコン樹脂製の試料を試験機で把持し，把持間距離を微小に広げていくことで把持力が減少し，試料が滑り落ちるまでに把持部が受ける力を計測した。力の計測は先端部が硬めのシリコン樹脂製である3軸力センサを用い，これが把持部となっている。軟らかい試料を硬い把持部で把持した場合，滑り開始から落下までに滑り時間が生じた。その間，把持間距離が広がることによる把持力の減少が緩和する現象が観察され，再現性も確認できた。把持材料，把持方法による本現象の観察，測定を行い，現象の解明を進める。

3-167

小型熱流センサによる熱流計測と素材との関係

◎樋口創太・大橋裕也・土屋駿斗（名城大学）・室山真徳（東北大学）・野々村 裕（名城大学）

人間の生活を支え，人間と密接に関わるロボットには触覚センサが重要となる。触覚センサにおける熱流検知に焦点をあてる。熱流を測定することにより接触相手の熱伝導率が分かり，材質を判断できる。そこで，ロボットの指先に装着可能な小型熱流センサを開発し，素材の認識を目標とする。チップ抵抗をヒータに，ポリイミドフィルムを熱抵抗体に用いることにより，3.2x2.9x1.9mm³のサイズとすることができ，先行研究の熱流センサ部に対し体積を1/24倍に小型化できた。試作した小型熱流センサによりアルミ，ガラス，ポリエチレンを熱流ピーク値，熱流飽和値により識別ができた。熱流値は力に依存するために，力センサの搭載を今後検討する。

3-168

法面変位センシングシステムにおける無線センサネットワークの開発

○八木章好（三菱電機）

電波位相差を用いた法面変位センシングシステムにおける無線センサネットワークを開発した。本システムは，法面に設置したセンサ端末から変位計測用の電波を送信し，道路側に設置した受信機で変位計測するとともに，センサ端末に接続された傾斜計等のセンサデータを無線メッシュネットワーク経由で収集する2つの機能を有する。

3-169

パッシブ無線センサプラットフォームの検討

○工藤高裕・古市卓也・森田 晃（富士電機）

弾性表面波（Surface Acoustic Wave 以下SAWと略す）を利用したパッシブワイヤレスセンサについて，SAWの反射器に接続されたインピーダンスの変化を利用する方式の課題である通信距離の影響について解決方式の検討を行ったので報告する。

3-170

二次電池の出力特性を模擬した木炭EDLCによる独立型電源装置

○福島志斗・福間眞澄・杉山耕一朗（松江工業高等専門学校）・吉野勝美（島根県産業技術センター）

現在，IoT技術を活用したワイヤレスセンサネットワーク（WSN）システムの運用が多く行われている。WSNシステムは，屋外での運用に環境発電や二次電池が用いられ，二次電池の蓄電状態に応じた動作により省電力化されている。本研究では，独自に開発した木炭を材料とする電気二重層キャパシタ（木炭EDLC）を用い，既存のWSNシステムに対応するため，二次電池の出力特性を模擬した電源装置の開発と実証試験を行った。実証試験の結果，屋外で使用するWSNシステムを対象とした電源装置として，木炭EDLCによる鉛蓄電池の出力を模擬した電力の制御が可能であった。また，木炭EDLCが，省電力なIoT機器を対象とした蓄電器として有効であることも確認できた。

3-171

400 kHz型空中超音波マイクロアレイセンサの開発

○田中恒久・中山健吾・村上修一（大阪産業技術研究所）

空中超音波を用いた非破壊検査では，主に400～800 kHzの高周波数の超音波が用いられるため，400 kHz型空中超音波マイクロアレイセンサの開発を行った。試作の結果，共振周波数が設計どおりに400 kHz付近に揃っており，出力電圧のばらつきが少なことが解った。本400 kHz型空中超音波マイクロアレイセンサは，非破壊検査装置への適用が可能であると考えられる。

3-172

磁歪材料の電解めっき成膜とそのひずみセンサ応用

◎江面大河・猪股直生・戸田雅也・小野崇人・古屋泰文（東北大学）

本研究では，磁歪材料Fe_1-xGa_xの逆磁歪効果を利用したひずみセンサを作製し評価した．磁歪材料の成膜方法として電解めっき法の条件について検討したところ，-1750mVにおいて大きな磁歪を示すx=20%の組成を持つ磁歪膜が得られることが分かった．次に，ホール素子を集積化したデバイスを作製し評価を行った．デバイスは，Siと磁歪材料によるカンチレバーとホール素子からなる．カンチレバーが変形することにより磁場が発生し，その磁場をホール素子で検出する．作製したデバイスの出力電圧を測定したところ，カンチレバーの共振周波数近傍においてピーク形状をもつ出力特性を得た．逆磁歪効果を利用した新たなひずみセンシングの可能性を示した．

3-173

波長選択赤外光源用マイクロヒータ

◎Yen-Wei Chang・矢作秀賀・Hai Minh Nguyen・佐々木 実（豊田工業大学）

New microheaters for the wavelength selective IR emitter is fabricated based on MEMS process. This microheater is combined with the gold grating for using the surface plasmon polariton. There is a center hole for emitting IR from the gold grating placed beneath. The zig-zag aluminum metal pattern is prepared on the thin Si membrane being supported by the bulk Si ring frames. These Si microstructures are for the thermal isolation and the mechanical rigidness. Although the present IR intensity is low, the IR emitter shows the enhancement matched around the wavelength of CO2 gas absorption (4.3μm).

3-174

小型光散乱式粒子センサーのダブルミラー構造の検出効率に関するシミュレーション評価

○中井賢也・榎 望・中原彰太・藤原 卓・島田昌明・竹下伸夫（三菱電機）

大気中のPM2.5濃度を高精度に測定する小型の光散乱方式の粒子センサーを開発している。本センサーは，対向する2枚の非球面ミラーで構成したダブルミラー構造を採用し，立体角2.4πの範囲で粒子散乱光を検出し高効率化を図っている。本発表では，ダブルミラー構造による検出光学系について，光学シミュレーションモデルを構築し，これにより本センサーの検出特性について評価を実施した。本シミュレーションモデルでは，照射光ビームのパワー密度分布，ミー散乱光強度分布を考慮し，粒子散乱光の検出効率特性及びセンサーの実効的な検出領域について評価した内容を述べる。

3-175

流路構造付きMEMS流量センサの開発

◎瀧川流成・長谷川義大・谷口和弘・式田光宏（広島市立大学）・松島充代子・川部 勤（名古屋大学）

MEMS技術によってセンサの小型化が進んだことで，従来では不可能であった微小領域での計測が可能となった一方で，微細配線を有するセンサ素子部から外部への配線取出しを行う実装工程は煩雑さを増している．本課題を克服することを目指し，当研究室では，基板材料として銅張積層板を用いた，センサ素子と微細配線とを自動的に一括形成するセンサ構造・作製方法を提案している．本研究では更なる実装工程（配管への流量センサ実装工程）の簡素化を目的とし，銅張積層板の一部を塑性変形させ，センサと同一基板上に流路構造をも形成するという「流路構造付きMEMS流量センサ」の実現を目指した．

3-176

点滴投与量計測用マイクロ流量センサの開発

◎下平千尋・長谷川義大・谷口和弘・式田光宏（広島市立大学）・松島充代子・川部 勤（名古屋大学）

医療現場では，投与速度を高精度に維持管理しながら一定時間内に薬剤を投与する精密持続点滴が行われている．現行の点滴では，チューブ内を流れる薬液を液滴状にして点滴筒に滴下させ，その滴下数をカウントすることで薬剤投与速度を計測している．しかし実際には，薬剤の違いにより薬液の性質が変わり，液滴一個の体積が変化する．その結果，投与速度は最大で±10%の誤差が生じると言われている．そこで本研究では，点滴投与時の薬液流れの高精度な計測可能な点滴投与量計測用チューブ実装型マイクロ流量センサの開発を目指し，熱式原理を用いた液体流量センサのプロトタイプの作製技術及び微小流量領域での流量計測特性を検証した．

3-177

動物実験用人工呼吸器計測評価システムの開発

○吉田 誉・長谷川義大・谷口和弘・式田光宏（広島市立大学）・松島充代子・川部 勤（名古屋大学）

ヒトは肺内部の圧力を負圧にして大気圧の空気を体内に取り入れるが，人工呼吸器を接続した場合には外気を体内に強制送風する必要があるため，大気圧よりも高い圧力の空気を体内に送る。よって，肺内部での圧力状態は自発呼吸時と人工呼吸器時とでは負から正へ反転することとなり，最近では，人工呼吸器接続時における気道内圧による圧外傷が問題視されている。また，他の問題として容量損傷などがある。本研究では人工呼吸器使用時における上記現象の解明を目的として，先ずは，動物実験系にて人工呼吸器接続時における気道内流量および圧力を定量的に計測評価できる小動物実験用人工呼吸器計測評価システムを実現することを目指した。

3-178

指先の手触り感計測に向けた走査型高分解能触覚センシングシステムの製作

◎西田吉広・中光孝太・綿谷一輝・寺尾京平・下川房男・高尾英邦（香川大学）

近年，人間の触覚を工学的に模した様々な計測装置が開発されている。本研究室では，指紋スケールのシリコン接触子を有する2軸高分解能MEMS触覚センサが開発されている。しかし，これまでの測定では複雑な実験系が必要であり，サンプルの形状や計測環境に制限があった。本研究では，このセンサを用いたハンディ型の手触り感計測システムを提案する。本計測システムによって既存の触覚センサの計測方法よりも非常に短い時間でかつ高分解能な表面形状と摩擦力を取得可能となった。これにより様々な対象に対して自在に計測が可能となり更なる指先の手触り感計測に向けた研究の発展が期待できる。

3-179

温力感センサヘッド設計のためのFEM熱解析

◎大橋祐也・土屋駿斗（名城大学）・室山真徳（東北大学）・野々村 裕（名城大学）

ロボットに実装するために力，温度，熱流を同時に測定可能な温力感センサヘッドを研究・開発している。センサヘッドにヒータと熱抵抗体を組込むことでセンサヘッド内の温度差から熱流を算出する。熱流検知を行うことで人間と同じように触れたものの材質を識別できるようになる。熱流測定においてセンサヘッドが被測定体に触れるとセンサヘッドから被測定体に熱が流れ，被測定体において面方向，深さ方向に温度分布が生じる。センサヘッドの接触面寸法と被測定体寸法による熱流特性を知るためにFEM熱定常解析を行った。解析結果から熱抵抗体の直径に対し被測定体の厚みが約0.5倍以上，幅が約4倍以上で，安定した熱流値が測定できることがわかった。

3-180

SiGeによるコンボセンサを指向したサーモパイル素子

○横松得滋・神田健介・藤田孝之・前中一介（兵庫県立大学）

IoT社会進展に伴うセンサ小型化要求に対し，我々は回路上へのMEMS構造体モノリシック集積が期待できるSiGeを用いたコンボセンサを検討中で，今回はこのSiGeを用いたサーモパイル素子を試作評価した。構造はSiGe-Cr熱電対20ペアの直列接続とした。実測によるSiGe-Crのゼーベック係数は40 µV/℃となり，K熱電対とほぼ同等の値となった。試作素子は70 mm離れた熱源の温度変化に対し0.8 µV/℃の感度を示した。温接点部分に赤外吸収材を塗布すると感度が2割程度増加するが，赤外吸収材なしでも，また集光レンズなしでも十分に検出可能な出力が得られることがわかった。

3-181

農作物の栽培に適した土壌の見える化に関する電気的考察

横山章啓・◎小林亮太・大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

現在，農家は高齢化や人手不足が深刻化し減少傾向にある。また，多くの農家は長年の経験で培った感覚を基に農作業を行っている。一方，近年は農作物の選別を画像処理と人工知能を用いた技術も実用化されている。今後も農業において様々な技術支援が期待されている中で，私たちは農業の基礎である土壌の評価技術が重要だと考える。 本報告では，農業に適した土壌を判断できる手法を検討する為，土壌に必要な要素の測定，比較し，土壌が畑に適しているか考察する。また，電気的特性や画像処理により適合する土壌の見える化に向け，考察を行った。各要素の値を基に，農家が長年の経験で培った感覚の代わりとなる支援ツールの開発に繋げたいと考える。

3-182

Wireless Sticker-like Health-monitoring Devices Operated by Optical Power Transfer

◎Nattakarn Wuthibenjaphonchai・Thanet Pakpuwadon・川崎祐久・春田牧人・笹川清隆・徳田 崇・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

Wireless epidermal attachable devices attract interests and expectations as a tool for personalized, low-cost health monitoring technology. This work aims to develop a wireless attachable device for noninvasive health monitoring sensor. The device consists of two functional parts: an optical power transfer and an amperometric measurement. The operation starts when the optical power transfer part accumulates power and supplies the power to the amperometric measurement circuit. The amperometric measurement circuit controls the oxidation voltage and measures a faraday current of the target metabolite and displays the data by a LED. The function of the circuit was successfully demonstrated in simulations.

3-183

尿中バイオマーカーの分光的検出に向けた基礎的検討（第2報）―微量アルブミンの高感度比色定量法の構築―

○横山 徹・菅原俊継・相川武司・渡邉翔太郎・清水久恵・山下政司・印藤智一・三浦寛子・黒田 聡・木村主幸（北海道科学大学）

これまでに，健康診断等で汎用されている尿試験紙法のように迅速な尿中バイオマーカーの分光的検出を，尿素，尿酸，クレアチニンの酵素比色定量として考案した．さらに，簡便な目視半定量手法もマイクロプレートを用いたマイクロアッセイとして考案してきた．最近，腎疾患等の早期発見に推奨されている尿蛋白質の検査項目である微量アルブミン（Alb）について，その150 mg/L以下の濃度範囲の高感度検出に向けて新たな反応系を見出した．今回，Alb濃度と吸光度の特性における直線的な関係式に注目し，反応溶液の濃度，添加量等の最適化を検討した．

3-184

簡便なセルフチェックを目的とした無線制御式唾液中尿酸計測システム

◎池本有輝・今村優佑・高木優樹・工藤寛之（明治大学）

電気化学式尿酸センサ，チップポテンショスタット，無線マイコン，サンプリングデバイスを組み合わせることで無線唾液中尿酸計測システムを開発した。被験者が自ら自身の唾液をサンプリングデバイスにより採取し，尿酸センサの小型反応セルに挿入することで計測が可能である。また本システムはzigbeeを搭載したマイコンを介してPCで制御できることが特長である。特性評価の結果，本システムには尿酸に対する高い選択性(>60)及び10 µMから400 µMの範囲で定量特性が確認できた。そこで健康な成人男性の唾液中尿酸値を評価した結果，約140 µMと推測できた。この値が既報の論文の唾液中尿酸値と合致するため，健常者の唾液中尿酸を評価できる可能性が示唆された。

3-185

CMOS Circuit Design for Flexible Retinal Prosthesis Device based on Multi-Unit Architecture

◎ChiaChi Chang・森 康登・遠藤広基・秦 真誉（奈良先端科学技術大学院大学）・野田俊彦（豊橋技術科学大学）・鐘堂健三・寺澤靖雄（ニデック）・春田牧人・笹川清隆・徳田 崇・太田 淳（奈良先端科学技術大学院大学）

AC powerling scheme was newly introduced in a retinal prosthesis implant for the sake of risk management. We adopted two-frequency power transfer scheme to comply with two contradictory constraints of limited chip area (requires high frequency) and large parasitic capcitance of inter-unit cable (requires low frequency).

3-186

眼球運動トレーニング支援装置の開発

◎芹澤彩夏・谷口和弘・長谷川義大・式田光宏（広島市立大学）

我々はパソコンやスマートフォンの利用などによる眼精疲労の改善を目的に，フォトリフレクタを左右の目じりに1つずつ配置するだけで眼球を上下運動と左右運動を区別することができる眼球運動の計測手法とそれを利用した眼球運動トレーニング支援装置を開発した。試作機はゼスチャーセンサや音声生成モジュールを用いることでユーザーフレンドリーなインタフェースとした。被験者3名による実験の範囲内において，フォトリフレクタを用いた計測値から被験者が上下の眼球運動トレーニングを行ったのか，左右の眼球運動トレーニングを行ったのかを判別することが可能であった。今後は被験者を増やして眼球運動トレーニングの効果を検証していく。

3-187

気道内留置可能なステント型流量センサの開発

◎野間颯斗・長谷川義大・谷口和弘・式田光宏（広島市立大学）・松島充代子・川部 勤（名古屋大学）

新薬開発における非臨床試験は，新薬候補物質をヒトに投与した時の有効性，安全性や投与量などの情報を動物実験にて検証する目的で実施する極めて重要な試験である．本試験においては，生命機能を司る呼吸系，中枢神経系，心血管系への影響を評価する安全性薬理試験が実施される．この内，呼吸系への薬物の作用は，呼吸数や一回換気量を麻酔及び拘束なしの条件下で評価する必要がある．しかし，現在一般的に行われている方法では，一回換気量の正確な測定が困難という欠点がある．上記課題を鑑み，本研究では，動物の気道内壁に固定した状態で流量計測が可能なステント型流量センサを開発した．

3-188

先端部分離性の向上を目的とした四角錐先端分離型マイクロニードル

◎坂本瑞生・長谷川義大・谷口和弘・式田光宏（広島市立大学）

近年，新たな薬剤投与手法として，マイクロニードルを用いた経皮吸収製剤が注目されている．本研究室では，薬剤を含んだ先端部位とそれを支える基盤部位の二段構造の先端分離型マイクロニードルの開発を行っている．本ニードルは，皮膚穿刺時に，先端部位の根元部分が返しとして働き，先端部位のみが皮膚下に残留することで，薬剤の瞬時投与が可能となるものである．しかし，従来の研究で使用していた八角錐型ニードルでは，返しとなる部分が小さく，先端部位の分離成功率は低かった．そこで本研究では，四角錐型ニードルを採用し，それを 45 度回転させて重ね合わせることで，返し部分を拡げた分離性の高い先端分離型マイクロニードルを開発した．

3-189

ピット型誘電泳動デバイスにおける交流電気浸透の効果の数値解析

◎河嶋涼介・内田 諭（首都大学東京）・西川宏之（芝浦工業大学）

近年，ナノ粒子をアセンブリした機能性デバイスの開発が注目されている。金ナノ粒子を平面配置した場合は温度センサ，三次元積層した場合はバイオセンサに利用されている。著者らはアセンブリ技術の確立を目途として，ピット型誘電泳動デバイスにおける金ナノ粒子の挙動解析を行ってきた。誘電泳動による捕捉領域までの輸送手段として，交流電気浸透または電気泳動の利用が考えられる。しかしながら，本モデルにおいて交流電気浸透による粒子輸送の促進は確認されなかった。そこで本報では，詳細なメカニズムが解明されていない誘電体上の交流電気浸透を考慮した粒子挙動を数値的に検証した。

3-190

ピット型電極を用いた三次元誘電泳動における直流オフセット電圧の影響

◎丸山大貴・内田 諭（首都大学東京）・加藤滉大・西川宏之（芝浦工業大学）

金属ナノ粒子は高い反応性や活性度を有し，機能性デバイスへの応用が期待されている。デバイスへの応用を可能とする，ナノ粒子の精密操作技術方法として誘電泳動法が注目されている。本研究グループでは，三次元ピット型DEPデバイスを試作し，様々な条件下における金属ナノ粒子の凝集特性を評価した。本報では，電気泳動による捕集量の増大を目的として，直流オフセット電圧の重畳を提案する。 直流オフセット電圧を重畳した際には，粒子の捕集量及び捕集速度が増加した。しかし，オフセット電圧が0.6V以上の際には，印加電圧をOFFにした直後にピット内からの粒子の噴き出しが確認された。以上より，直流オフセット電圧の印加は粒子捕集の効率化が期待できるが，条件により捕集粒子の液中への再分散が生じる。

3-191

誘電泳動集積法を用いたFET型カーボンナノチューブガスセンサの作製とNO2検出

◎行部晃生・尾崎圭佑・中野道彦・末廣純也（九州大学）

本研究の目的は誘電泳動集積法を用いたFET型CNTガスセンサの作製とそのセンサを用いたNO2応答の取得である。Si基板上にスパッタリング，フォトリソグラフィとエッチングによりCr電極を作製した。Si基板背面はフッ酸により酸化膜を除去した。誘電泳動集積法により純度99.9%の半導体CNTを電極間に集積した。作製したガスセンサをチャンバ内に設置しN2中でゲート電圧-ドレイン電流測定をした。次に，チャンバ内にN2100秒間供給し，その後NO2 20ppm を300秒供給し，この時の時間-ドレイン電流測定をした。作製したCNT-FETのオンオフ比は約7.2倍であり，閾値は5V付近で確認された。規格化応答は閾値にほぼ近いゲート電圧Vg=5Vの時最大となり，約27であった。このFET型センサの応答は抵抗型に比べて約1.9倍であった。

3-192

誘電泳動集積法により作製したSnO₂ナノ粒子修飾カーボンナノチューブガスセンサのNO₂検出に及ぼすSnO₂修飾量の影響

◎河野雅紀・小田士剛・中野道彦・末廣純也（九州大学）

著者らは，これまでナノマテリアルを誘電泳動力によってマイクロ電極上に集積するセンサ作製法を開発し，同集積法で作製したCNT/SnO₂センサによってNO₂を検出した。同センサの応答はp型半導体であるCNTとn型半導体であるSnO₂の間に形成されるpn接合を利用しているため，著者らはこれら2つの材料が形成するネットワーク構造が応答特性に影響を与えると考え，本研究ではCNTとSnO₂の材料比を変えてセンサを作製し，そのネットワーク構造とNO₂応答特性を調査した。3つの材料比で作製したセンサはそれぞれ空気希釈NO₂に対して抵抗が上昇する応答を示し，SnO₂の量を増やすことで応答量は向上したが，さらに増やすと応答は減少した。

3-193

白金微粒子を坦持した酸化チタンナノチューブ薄膜を用いた高感度ガスセンサ

○阿部宏之（宮城県産業技術総合センター）・馬 騰・但木大介・平野愛弓（東北大学）・木村康男（東京工科大学）・庭野道夫（東北福祉大学）

我々は，これまで，チタン薄膜を局所的に陽極酸化することによりチタン電極間の微小領域にガス感応部である酸化チタンナノチューブ薄膜を形成した微小ガスセンサを作製し，その性能を報告してきた。 本研究では，酸化チタンナノチューブ薄膜を用いたガスセンサの感度向上と応答時間，回復時間短縮を実現するため，原子層堆積法によって，酸化チタンナノチューブ薄膜の表面及びナノチューブ内壁の上面から底面までの全体に触媒となる白金微粒子を一様に坦持した。その結果，一酸化炭素ガスに対して，感度が約一桁向上し，応答時間が約1/10に短縮した。

3-194

導電性MIPインクによるプリンタブルケミレジスタガスセンサアレイの開発

◎葛 霊普・佐々文洋・林 健司（九州大学）

本研究では電極のみならずガス感応部，分子選択部も含め，センサ全てを印刷により作製することを目標とし，Molecularly Imprinted Polymer (MIP)に基づく分子選択性を持ったガス応答導電性インクを開発した．このMIPにカーボンブラック（CB）導電層を組み合わせることでインクに導電性を付与し，ガスセンサアレイを作製することができた．

3-195

分子鋳型Sol-Gelプラズモニックガスセンサアレイによる有機揮発性物質の検出

◎清水晶太・商 亮・佐々文洋・林 健司（九州大学）

局在表面プラズモン共鳴 (LSPR) 技術に基づいた高速応答ガスセンサと分子鋳型 Sol-Gel による分子識別技術を組み合わせることで，高速分子識別プラズモニックガスセンサを作製することができる。本研究ではこのプラズモニックセンサをアレイ化し，有機揮発性物質の1つであるシスジャスモンを暴露したときの各センサチャンネルの応答値を測定した。

3-196

イメージプロジェクタによる光誘起Au/Agコアシェル構造LSPRマルチガスセンサの作製

◎副田貴明・楊 中元・佐々文洋・林 健司（九州大学）

危険なガスの充満した災害現場や，目に見えない匂い痕跡を追従する薬物探索などの現場において，素早くガスの存在を検知することができるセンサは有用である。金属ナノ粒子の周辺媒質の誘電率に依存した共鳴現象Localized Surface Plasmon Resonance (LSPR)を利用したガスセンサは，高速かつ高い空間分解能を持っている。これはリアルタイムなガスのイメージングに適した性能を有しているが分子選択制を持っておらず，LSPRガスセンサによるガス種の識別は困難である。本研究ではガス吸着特性の異なるAu/AgコアシェルLSPR構造のピクセルパターンをAgの光成長およびイメージプロジェクタを利用したパターン露光を用いて作製した。作製した基板により線型回帰により2種類のガスを識別した。

3-197

銀／塩化銀によるバイポーラ電極の電位制御

◎ムタリブアシキン・假屋洸希・栗原寿明・鈴木博章（筑波大学）

バイポーラ電気化学系では，通常の電気化学系と異なり，外部装置とのコンタクトのない孤立した電極を含む溶液中に電位勾配を形成し，溶液電極間に電位差を発生させ，電極両端で酸化・還元反応を進行させる。(1)カソード側で検出を行う場合には，アノード側で電気化学発光(ECL)を起こし，反応の進行を検出する。従来のバイポーラ電極（BPE）では，電極が電気的に浮いた状態で，溶液／電極間の電位差を精密に制御することは行われていなかった。そこで，本研究では，BPEの一部に銀／塩化銀を形成し，カソード側，アノード側の電極反応を制御することを試みた。

3-198

細胞の呼吸活性評価のための微小酸素電極の改良検討

◎朴 善浩・佐藤達哉・薛 安汝・鈴木博章（筑波大学）

近年，様々な応用において，細胞の呼吸活性の測定が求められる状況が増加している。この目的のためには，酸素透過膜で内部電解液を分離した微小な酸素電極が有用である。演者らのグループでも，これまで様々な微小酸素電極を開発し，多様な目的に使用してきたが，熟練していない一般のユーザーの使用，水の蒸発に伴う応答の不安定化が課題となっていた。そこで，本研究では，デバイスを乾燥状態で完成させ，酸素の検出に必要な水分を酸素透過膜を通して水蒸気で導入する方式を用いた。応答特性の改善，水分の蒸発防止による応答の不安定化についての検討結果について報告する。

3-199

ウシ血清アルブミンの蛍光を用いたダイズ根圏のダイゼイン計測フィルムの開発

◎李 心竹・矢田部 塁・田原祐助・鰺坂大樹（九州大学）・細木 藍・櫻井 望（国立遺伝学研究所）・杉山暁史（京都大学）・小野寺 武（九州大学）

1背景ダイゼインはダイズの根で最も多く分泌されるイソフラボンで，根と根粒菌の共生において重要である。そのため，ダイゼインの動向をモニタする必要がある。 2実験ダイゼイン自体に蛍光性はないが，蛍光物質ウシ血清アルブミン（BSA）と相互作用することができる。BSA溶液に，ダイゼイン溶液を滴定する。285nmの光で励起し，蛍光スペクトルを測定する。結果はダイゼインの増加によって，BSAの蛍光強度は減少する。 3応用実際の測定では，BSAを膜に固定する必要がある。膜をダイズの根の近土壌に貼り付け，ダイゼインとの相互作用による消光から，ダイゼインの濃度を判断する。本研究はこれからポリビニルアルコール (PVA) を用いて，膜の作製を試みる。

3-200

インピーダンスによる食品の識別と味覚表現

○佐籐仁樹（公立はこだて未来大学）

クロマトグラフィー，味覚センサ，分光光度計等の高価な機器を用いることなく，簡単に食品を評価するために，食品のインピーダンスを基に食品を分析した。まず，4種類のお茶×5種の濃度の試料(計20種類)を，それらのインピーダンスを基に多群線形判別により識別した。その結果，濃度に依存せずに4種類のお茶を識別できた。また，3種類の緑茶をモデル試料としてそれらを混合し，その混合比を目的変数，インピーダンスを説明変数として重回帰分析により混合比を推定できた。これにより，典型的な味の試料をモデル試料として選ぶことにより，任意の食品の味をモデル試料の味を項目としたレーダーチャートで表現できる。

3-201

水中化学探査ロボット開発に向けたザリガニの嗅覚探索行動の観察に関する基礎的研究

◎三宅新人・石田華子・三石健暉（東京農工大学）・松倉 悠（大阪大学）・石田 寛（東京農工大学）

本研究では，匂いを頼りに餌を探すザリガニの行動を模倣し，水中に漂う化学物質を辿ってその発生源を探すロボットの開発を目指す。そのために，歩行中のザリガニが作る噴流を可視化し，その方向を計測することを試みた。ザリガニは，顎脚を振って噴流を生成する。この噴流に向かって引き寄せられる流れを利用し，周囲から匂いを引き寄せ，流れの乏しい環境下でも嗅覚による餌の探索を可能にしていると言われている。この行動のメカニズムを解明するため，ザリガニに小型インク放出装置を取り付けて，噴流を可視化した。ザリガニの行動を2台のカメラを用いて観察することにより，インクで可視化された噴流の三次元的な角度を求めることができた。

3-202

イオン液体膜の安定性向上と匂いセンサへの応用

◎中澤 薫・Manuel Aleixandre・中本高道（東京工業大学）

イオン液体とは，常温において液体状態の塩であり，ガスセンサの感応膜として用いた研究も行われてきた。しかし，イオン液体を塗布したQCM(Quartz crystal microbalance)センサの問題として，センサ応答の不安定性がある。そこで，本研究ではイオン液体膜にセルロースを混合し，センサ応答の安定性向上を検討した。イオン液体のみの膜と比較して，混合膜は測定前後でのQCMセンサの周波数と抵抗の変化が小さかった。また，測定中にベースラインを示し，ガスの脱着後に周波数と抵抗がベースラインへと回復した。従って，エチルセルロースの混合によりセンサ応答の安定性が向上したことが確かめられた。今後は，センサ応答が不安定な場合，混合膜をQCMセンサの感応膜として利用する。

3-203

嗅覚受容体発現細胞を用いた匂いバイオセンサの応答安定性の向上

◎伏 凡・祐川侑司・中本高道（東京工業大学）・光野秀文・神崎亮平（東京大学）

生体の仕組みを匂いセンサに取り込むことにより優れたセンサを実現できる可能性がある。我々は蛍光タンパク質が導入された嗅覚受容体発現細胞を用い，匂い刺激に伴う蛍光強度変化を測定するシステムを開発した。しかし，その蛍光強度変化量が時間と共に減少する問題があった。そこで，本研究では断続的に励起光を照射することで蛍光強度変化量の低下を抑える方法を検討した。

3-204

タンパク質–リガンドドッキング計算による匂い結合タンパク質の特性の予測

◎祐川侑司（東京工業大学）・Khasim Cali・Krishna Persaud（The University of Manchester）・中本高道（東京工業大学）

匂い結合タンパク質（OBP）は匂い分子と結合し，嗅覚受容体のもとへ運搬する働きがあると言われている。この特性を匂いセンサに応用するために，タンパク質–リガンドドッキング計算を用いてショウジョウバエOBPの特性予測を行った。ドッキング計算にはSwissDockサーバを利用し，OBPとリガンド分子の組み合わせを様々に変えて計算した。それぞれの計算結果に含まれる複数の結合部位の候補から，タンパク質の結合ポケットにリガンド分子が吸着していて，かつ結合自由エネルギーが最小となるものを選択した。得られた結果からOBPは広い選択性を有しており，OBPごとの特性差異が小さいことが示唆された。この予測結果はセンサとして利用可能なOBPをスクリーニングするための参考情報を与えるだろう。

3-205

バイオ蛍光式探嗅カメラによる経皮エタノールガスの時空間イメージング

◎飯谷健太・佐藤敏征・當麻浩司・荒川貴博・三林浩二（東京医科歯科大学）

呼気・皮膚ガス中の揮発性有機化合物を利用した簡便かつ非侵襲的な疾病スクリーニングや代謝評価が期待されている。本研究では，皮膚ガスの放出部位の特定や放出動態の評価を目的として，経皮エタノール(EtOH)ガスの時空間的な変化を動画像として捉える探嗅カメラを構築し，経皮EtOHガスへ適用した。探嗅カメラは，アルコール脱水素酵素を固定化したメッシュ上でEtOHが酸化される際に生じるNADHを蛍光検出することでEtOHを可視化する。既知濃度のEtOHガスを用いた実験にて飲酒後の経皮エタノール濃度を含む0.1–1000 ppmの範囲で定量性が観察され，実際に飲酒後の経皮EtOHガスの時空間イメージングに応用した結果，濃度分布および代謝に応じた濃度変化を評価できた。

3-206

温冷風を利用した匂いの変調

◎藤野佑一・松倉 悠・岩井大輔・佐藤宏介（大阪大学）

近年，匂いの提示は三次元音響や三次元映像と同様に臨場感を与える手段として有効であると考えられており，嗅覚提示装置の需要は高まっている．しかし，匂いを全て表現する基底となる基本臭が確立されていない．そのため，人工的に匂いを合成して提示するために必要な基本方針がなく，多種の匂いを提示するためには対応する匂いの素を大量に用意する必要がある．そこで本研究では，温風や冷風を匂いの付いた空気と共に提示することで被験者が感じる匂いを変調させることを考える．実験として花の匂いと汗の匂いを温風(冷風)と共に被験者に提示し，評価を行った．実験の結果，温風または冷風を同時に提示した場合に，匂いの感じ方が変調した．

3-207

匂い強度を短時間で増幅する装置の基礎的研究―濃縮効果の官能検査による調査―

◎塚田鷹介・河合拓実（東京農工大学）・松倉 悠（大阪大学）・石田 寛（東京農工大学）

本研究では周囲に漂っている匂いを濃縮して人間の鼻に提示し，嗅覚の感度を疑似的に増幅する装置を開発する。匂い物質を吸着剤に通すことで匂いを吸着して蓄え，ヒータにより吸着剤を加熱し，蓄えられた匂い物質を一気に脱着して高濃度の匂いを得る。今回は官能検査を行って匂い濃縮効果を確かめた。リンゴ香料を揮発させた匂い蒸気を用意し，濃縮前の匂いと濃縮後の匂いを被験者8人に提示した。その結果，8人全員が濃縮後の匂いの方が強いと回答し，7人が濃縮後の匂いの方がおいしそうであると答えた。開発した装置により匂いの強さを高めて提示することができ，よりおいしく感じさせるなどの効果が期待できることが分かった。

3-208

機械学習による匂い印象予測に向けた匂い記述子グループの作成

◎木下湧気・中本高道（東京工業大学）

匂いに関する記述子は多数存在しており，機械学習や主成分分析を行う際に目標となる記述子の数が多いことはより良い学習をすることや精度を上げることを妨げる。そこで，DravniecksとSigma-Aldrichの官能検査に使われた173の記述子に対して，グルーピングするために自然言語処理システムWord2vecを用いてウォード法による階層的クラスタリングを行った。匂い記述子のグループを15に設定した時のクラスタリングの結果を載せている。また今後，この結果を用いてマススペクトルデータを入力とした深層学習により匂い印象グループの予測を行う。