一般講演

3-001

アンテナ用誘電体レンズの形状設計への機械学習の導入に関する基礎的検討

◎大森宇栄・伊藤桂一（秋田工業高等専門学校）

誘電体レンズの設計にトポロジー最適化を用いた場合，高い設計性能を有する一方で計算負荷が高いことが短所となっている。原機械学習を援用して判別器を生成し，低評価個体の評価をスキップすることにより高速化が期待される。本研究ではアンテナ用誘電体レンズの形状最適化に機械学習を導入するために，レンズ画像の判別器の作成と評価を行った。VGG16をベースとした転移学習モデルを用いて作成した判別器により誘電体レンズの画像判別が可能であることを示した。

3-002

境界要素法を用いたミリ波クラック検知システムの解析的検討

◎佐藤海斗・伊藤桂一（秋田工業高等専門学校）

ミリ波は空間分解能が高く，直進性も高いため距離センサや障害物センサとして用いられている。微細なクラックを高精度に測定するためには指向性の鋭い指向性アンテナが必要となると考えられる。本研究は数値解析によってクラック検知の様子を可視化するとともに定性的に解析することを目的とする。数値解析には大規模空間でも解析可能である境界要素法を採用し，実験結果と同様の結果が得られることが分かった。

3-003

ミリ波ホーンアンテナ用誘電体レンズの試作と評価

◎三浦悠介・煤賀 司・田中将樹・伊藤桂一（秋田工業高等専門学校）

ミリ波センサを河川の水位測定に用いる場合，外部環境からアンテナ自体を保護するレドームが必要である。アンテナを保護しつつ性能も改善する誘電体レドームの開発が最終的な目標である。そのために本研究では76GHzミリ波ホーンアンテナを対象とした誘電体レンズの設計および試作を目的としている。3次元トポロジー最適化によって得られた設計結果を試作し，実際のアンテナに装荷して測定による評価までを行った。

3-004

ディジタル通信線搬送におけるバルク伝送方式について

◎佐藤真俊・花海 丞・佐々木範雄（通研電気工業）・鈴木英祐（東北電力）

ディジタル通信線搬送装置は，メタルケーブルを伝送媒体とし，ディジタル情報を伝送する装置である。東北電力では，平成19年度より導入がなされ，小規模電気所となる末端系のIPネットワーク構築に適用されている。今後，ネットワーク構成の伸長化および高速化が求められる。そこで，伝送距離の伸長化および伝送速度の高速化を実現するため，送信側で伝送信号を分離して2対のケーブルで伝送し，受信側でその信号を合成するバルク伝送方式について開発を行い，試作機によるBER特性を明らかにした。

3-005

技術試験衛星9号機搭載中継器マイクロ波モジュール部分試作評価

○角田聡泰・稲沢良夫・尾野仁深・草野正明・須永輝巳・金指有昌・堀江延佳・坂井英一（三菱電機）

技術試験衛星9号機ではKa帯のHTS衛星の実現に向けて利用周波数帯域のフレキシビリティ化による周波数利用効率向上を目指しているが，さらに空間的変動に対応したフレキシビリティ（エリアフレキシビリティ）の実現を目指した研究開発を行っている。今回採用を検討している各種マイクロ波モジュールについて試験結果を報告する。

3-006

電力設備を利用したLPWA通信の評価

○富木洋一・野崎広之（東京電力ホールディングス）・後 友恵・中島義明（NTTドコモ）

ドローンを用いた物流や巡視点検の自動化に向け，長距離の目視外自動飛行が求められる。この実現のためには長距離の通信が必要となる。近年，低消費電力で広域の通信エリアを安価に構築できるLPWA通信に分類される方式が複数提案，実用化されている。通信デバイスとして，ドローン飛行の安全に寄与する気象センサ等のIoTセンサ，および移動体で双方向通信が望まれるドローンを想定し，LoRaWANを評価した。送電線の取り外された鉄塔上部に複数のLoRaWANの親機を設置し，ドローンと車両に搭載した子機との長距離通信の可否を評価した。見通しが取れる場所では長距離通信が可能であり，送電鉄塔にLPWAの基地局を設置するメリットは大きい。

3-007

光周波数同期技術を用いた周波数安定化高周波RF信号生成

◎上川紘輔（青山学院大学）・菅野敦史・山本直克（情報通信研究機構）・外林秀之（青山学院大学）

爆発的な通信需要の拡大に対応するため，ミリ波等を用いた高周波数資源の開拓が注目されている。RF信号生成の手段の一つとしてあげられる光2トーンであるが，非同期駆動の場合で周波数変動を伴うなどのデメリットを持つ。我々はこれを高精度な周波数同期により解消し，さらに光周波数コム生成技術を応用することで，周波数安定化高周波RF信号の生成を検証した。過去の研究において，被生成信号には数十Hz単位の変動および高調波を伴ったが，本研究における周波数同期精度の向上によって飛躍的な改善が見られた。

3-008

技術試験衛星9号機搭載可変ビーム用アンテナ給電部の基本設計

◎金指有昌・高谷侑希・稲沢良夫・尾野仁深・草野正明・須永輝巳・角田聡泰・堀江延佳・坂井英一（三菱電機）

平成33年度に打ち上げ予定の技術試験衛星9号機(ETS-IX)の開発に関し，平成29 年度～平成31年度(予定)にて，総務省委託研究「Ka帯広帯域デジタルビームフォーミング機能による周波数利用高効率化技術の研究開発」を受託した。ディジタル回路を利用し振幅位相を制御することで可変ビームを生成し，空間的変動に対応したフレキシビリティ（エリアフレキシビリティ）を実現できる中継器等を開発中である。本稿ではETS-IX搭載用に開発している，可変ビーム用アンテナ給電部の基本設計の結果を報告する。

3-009

技術試験衛星9号機搭載広帯域DBFプロセッサの電気基本設計

◎尾野仁深・稲沢良夫・角田聡泰・須永輝巳・草野正明・金指有昌・堀江延佳・坂井英一（三菱電機）

近年静止通信衛星市場において，HTS(High Throughput Satellite)のような通信容量の大容量化のニーズと並んで，通信サービスエリアを柔軟に変更する技術が望まれている。可変ビームの形成方法として，DBF(Digital Beam Forming)は，アナログのAPAA(Active Phased Array Antenna)と比較して集積化による小型化とビーム数の拡大が見込める。DBFプロセッサは，給電素子で送受信する通信信号の振幅/位相(励振係数)の重み付けをし，ビーム形成を行う機能を有し，デジタル信号処理に基づいたビーム形成を行う主要部である。今回，技術試験衛星9号機で技術検証する，帯域100[MHz]級の処理を実現する衛星搭載用DBFプロセッサの電気基本設計について報告を行う。

3-010

発電プラント向け無線伝送技術の模擬環境での通信試験

黒田英彦・○代田孝広・池田芳朗・長谷川 健・小田直敬・浅野直樹（東芝エネルギーシステムズ）

発電プラントへ無線機器を導入する場合には無線通信時のサイバーセキュリティ，発電設備への電磁ノイズ干渉への対策が求められる。そこで電波の到達範囲を制御して電磁ノイズの影響を低減し，通信時の認証，通信データの暗号化と改竄検知を行う高セキュリティの無線通信システムを開発している。 電波強度を5dBで制御し，通信セキュリティを実装した無線通信システムを試作した。ここでは無線周波数2.4GHzのIoTセンサを想定して現場を模擬した障害物環境で通信試験を行い，セキュリティ処理時にも一定間隔でデータ伝送でき，また1.9kB/secの通信速度を確認した。この結果，発電設備の各種データを無線伝送できる見込みを得た。

3-011

電気探査法による疑似人体インピーダンスの3次元分布測定

◎小坂田優希・畑 文人・宇戸禎仁（大阪工業大学）

胸部体表面電位分布計測は,心疾患のスクリーニング検査として有効であるといえる。我々は多数の電極を1枚のシリコンシートに埋め込んだ電極アレイを作製し,心電分布の計測を行ってきた。更なる診断精度向上には体内インピーダンス計測が必要であり,計測方法としてEIT（Electrical Impedance Tomography）があるが測定に時間がかかるため,短時間の測定で済みデータの重合処理が容易な電気探査法に着目した。そこで本研究では電気探査法の技術を用いた体内インピーダンス測定技術の開発を行っている。今回は食塩水の入った水槽内を疑似人体模型とし電気探査法による比抵抗分布を作成した。測定対象物の配置を移動させ各地点での測定結果から3次元情報の取得を試みた。

3-012

加速度脈波による血圧推定-MTシステムによる推定式の選定-

小黒 諒・○越水重臣（産業技術大学院大学）

血圧は，重要な生理指標であり，心拍のように常時モニタリングが可能となれば，体調急変を事前に察知することが出来る。本研究では，安静座位時の加速度脈波（容積脈波の2次微分波）を計測し，脈波の特徴量から，品質工学のパターン認識手法であるMTシステムを用いて血圧値の推定を試みた。加速度脈波は，年齢や性別，疾患の有無などによって，波形のパターンは異なる。我々は，検証用データを推定式に代入する前に，誤圧距離を用いて，推定誤差を事前に評価する方法を提案した。解析より，誤圧距離が大きいデータは，推定誤差が大きくなることを確認した。

3-013

顔面可視画像からの血圧変動に関する特徴抽出

◎大岩孝輔・中根成志・野澤昭雄（青山学院大学）

長期的な血圧モニタリングは，高血圧に起因する重篤な疾患の早期発見・診断において重要であり，その実現には非接触生体計測技術が必要不可欠である。著者らは非接触生体計測技術を利用した血圧センシング技術の開発を目指した研究を進めている。先行研究では可視ガメラで計測した顔面可視画像内の鼻部領域における皮膚色変動から取得した脈波成分に基づく血圧値の線形回帰モデルを構築した。しかし被験者毎でモデルによる血圧推定精度が異なり汎用性が低いことが課題であった。本研究では，顔面全体の可視画像に対し深層学習アルゴリズムを適用することによる血圧変動に関連する特徴抽出を目的とする。

3-014

多波長を用いた光音響イメージングによる血腫性状の評価

◎内本 陽・浪田 健・近藤健悟・山川 誠・椎名 毅（京都大学）

皮下組織のイメージングは，外傷による皮下血腫，静脈血栓症などの病態把握に有用である．そこで我々は，光音響イメージングによる非侵襲かつ簡便な血腫性状の評価を目指し，開発したハンドヘルド型装置で，血腫模擬試料を用いた検討を行った．血腫形成からの経過時間を反映する血液中のビリルビンの割合を変化させた模擬試料のイメージングを行い，いずれにおいても血腫の形態を正しく描出できることを確認した．また，波長700 nm付近と900 nm付近の少なくとも2波長間の光音響信号強度比を用いることで，ヘモグロビンとビリルビンの割合の推定可能性を示した．これらの解析をとおし，光音響イメージングによる血腫性状の評価可能性を実証した．

3-015

レーザー照射によるメラニン色素の透過率

○河本敬子（近畿大学）・桒島史欣（福井工業大学）

赤外のレーザー光は，皮下に存在するメラニン色素に対して選択的に吸収され易いため，良性の色素性疾患治療に有効であり，レーザー脱毛にも応用できる。しかし，同じ用途に対して様々な波長のレーザーが用いられており，最適な波長も明らかとなっていない。また，これまでのレーザー装置は巨大，高価かつ使用に専門的知識を必要とする。一方，個人向けに売られている商品は，波長，出力，照射範囲などが曖昧となっている。 本研究は，半導体レーザー素子（DL-7140-211PA）の透過率の変化を調査することで，脱毛における半導体レーザーの最適波長を検討することを目的としている。

3-016

920MHz帯パッシブRFIDによる患者認証用リストバンドタグの開発

○保坂良資（湘南工科大学）

病棟ではリストバンドのバ－コ－ドで患者認証を行っている。2004年に秋田大学附属病院で我が国初のRFIDリストバンドが実現された。しかしこのリストバンドタグは，Suicaと同様の13.56MHz帯の信号で認証を実施している。このRFIDは認証域が原理的に小さく，パフォ－マンスに上限がある。一方，920MHz帯に代表されるUHF帯RFIDは原理的に認証域が大きく，病棟での患者認証に適する。本研究では，患者の快適性を考慮した薄型リストバンドタグの実用性を検討した。その結果，効果的な薄型スペーサの活用で，920MHz帯RFIDタグがリストバンドタグとして応用可能であることを確認したので報告する。

3-017

高分解能制御入力を有する機能的電気刺激制御システムの開発

◎平田 輝・車谷大揮・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

人工的な電気刺激を神経に与えて関節を動かすことは機能的電気刺激（Functional Electrical Stimulation: FES）と呼ばれ，脳卒中や脊髄損傷などの患者のリハビリテーションに活用されている。FESでは電気刺激波形として電流パルスや電圧パルスが多く使われている。FESによる関節角度制御の従来研究ではパルス幅やパルス周期，パルス振幅のいずれかが制御入力として調整されているが，これまで制御入力の分解能について十分検討されていない。本研究では電圧パルスのパルス幅とパルス周期を非常に高い分解能で調整できるFES制御システムを設計し，パルス幅の分解能が10 nsであることを実験により検証した。また，モーションキャプチャシステムを用いたFES制御システムの応用事例を紹介した。

3-018

P300スペラにおける発光時刻のずれの影響とその補正法の提案

◎山下大輔・橋本泰成（北見工業大学）

脳の認知・注意機能を応用したP300スペラは，文字入力を目的としたブレイン・マシン・インターフェースとして近年注目を集めている．P300スペラの構成要素に液晶ディスプレイがあるが，この発光性能が脳波やスペラに与える影響は明らかになっていない．そこで，本研究ではフォトトランジスタとP300スペラを使った実験系を構築し，ディスプレイの発光時刻差とP300潜時の関係を若年健常者4名で計測した．その結果，文字盤はプログラムで同時に発光させるように設定しても画面内の発光位置により十数ミリ秒の時刻ずれが起き，脳波分析結果にも影響があることがわかった。これを補正して処理することでより顕著な脳波特徴を表示することができた。

3-019

断面形状による水中放電誘起キャビテーションの差異

○小松 真（岩手医科大学）

医用ジェットと水処理への応用を視野に入れ，水路断面形状が水中放電誘起キャビテーションに与える影響を実験調査した．15mm四方の正方形断面，15mm径の円断面の水路を用意し，リアクタ兼駆動流体となるNaCl水溶液を導入し対向電極で水中放電した．誘起される気泡と1.2mm径のノズルを付け発生させたジェットを高速度撮影した．同時に放電点より25mmにある底面およびノズル前方2mmでのよどみ圧を計測した．気泡位置は断面形状で大きく異なり，正方形では壁面に沿って進展し，円では底面前に多数発生した．圧力上昇は円断面のほうが早く始まりばらつきが少なかった．これらは側壁形状による衝撃波の反射の差異が高速流形成に影響を及ぼすためと考えられた．

3-020

クロックレス電圧共振半波形降圧DC-DCコンバータのマルチフェーズ化に関する研究

◎熊 軼・今岡 淳・山本真義（名古屋大学）・小堀康功・小林春夫（群馬大学）

This paper describes an implementation of multi-phase on a clock-less half-wave voltage resonant buck DC-DC converter. In the converter, a resonant compositor is set with switch in parallel in order to make the voltage resonant in sine wave.Furthermore, a multi-phase controller is designed by analog circuit and applied on the converter, which produced good performance on transient respond. The experiments are verified with simulation.

3-021

LC直列構造を含むE級発振器に基づいた無線電力伝送の検証

◎瀬川翔太・和田和千（明治大学）

E級発振器を無線電力伝送に用いることを考え，送電用の結合素子と受電回路が等価的にコイルと抵抗との直列構造になることを予め見込んで構成し設計した，新しいE級無線電力伝送回路を実装し，実験によって動作を検証している。実験結果とシミュレーション結果の比較から，E級動作条件は満足されているようであり，設計目標通りの周波数で動作しているものの，受電回路への伝送は理論値と大きく異なることから，位置に対して感度が高いことが課題である。

3-022

可変容量ダイオードを用いた昇圧チョッパ回路の周波数特性

○濱﨑真一・橋本慎也・伊藤 淳・鈴木晴彦・山本敏和（福島工業高等専門学校）

微小電圧を蓄電池への充電可能な大きさまで昇圧可能なチョッパ回路に利用されるコンデンサー部を可変容量ダイオードに置き換えた時の周波数特性を測定する。昇圧チョッパ回路においてのコンデンサの容量変化における特性は周波数特性が変化するのみで昇圧率が大きく変化することはないが，可変容量ダイオードを用いることで，その昇圧率の変化を確認し，さらに広域周波数帯で安定した昇圧が観察できた。また，この回路を用いた蓄電池への充電過程を報告する。

3-023

機械学習を用いたLSIオンチップ配線容量抽出

◎葛西亮介・黒川 敦（弘前大学）

昨今の人工知能（AI）のブームに伴い，予め用意されたデータを元に学習して結果予測などを行う機械学習が注目されている。機械学習の手法の一つであるニューラルネットワーク(1)は，医療などの様々な分野で活用されている。我々は人工知能をLSI設計に適用して設計効率を改善することに取り組んでいる。本発表では，LSIのオンチップ配線の寄生容量抽出にニューラルネットワークを適用した結果を報告する。従来法との違いは，設計者が予め構造別に回帰分析等を用いて容量式を準備しなくて良い点である。

3-024

メガネ型ウェアラブルデバイスの熱解析

◎松橋功大・黒川 敦（弘前大学）

近年，メガネ型のウェアラブルデバイスが脚光を浴びてきている。さらに，ハンズフリーであるという特徴からジェスチャーによる操作の研究(1)や，目の動きの感知の研究(2)などが行われ，医療や教育，日常生活で広く利用されることが期待されている。しかし，課題の一つとして発熱による温度の上昇が挙げられる(3)。メガネ型ウェアラブルデバイスは常に皮膚に触れているため，低温やけどを引き起こす可能性がある。そこで，熱解析などを行い，デバイスの表面温度を明確にすることが重要となる。本論文では，4種類の構造のメガネ型ウェアラブルデバイスの熱解析結果を示す。

3-025

リストウェアラブルデバイスのベルト放熱効果

◎岡本慎太郎・松橋功大・今井 雅・金本俊幾・黒川 敦（弘前大学）

ウェアラブルデバイスの世界市場は拡大し続けている。小型・多機能・高速化に伴い，電力密度が増大し，発熱の問題が懸念されている。最も需要の多いリスト装着型（腕時計型やバンド型）は直接肌に触れるので低温やけどを引き起こす可能性があり，十分な熱対策が必要である。スマートウォッチの温度測定結果(1)やシミュレーションによる温度対策(2)が報告されているが，ベルト放熱効果を実測した報告はない。本論文では，リストウェアラブルデバイスのベルトの放熱（温度低減）効果を測定により明らかにする。

3-026

接地虚抵抗を用いた3次RiCRフィルタの一構成

◎藤井達哉・荒木恒星・庄野和宏（筑波大学）

無線通信機器の小型化・省電力化に貢献できる回路技術として，直流に対し非対称な特性を持つ複素フィルタが知られている。さらに，近年は集積化に適した回路構造を持つ片側接地の虚数抵抗（以下，接地虚抵抗）を用いたRiCRフィルタが提案されている。 本稿では，従来の回路よりも少数の素子でより高いイメージ抑圧比を実現可能な接地虚抵抗のみを用いた3次RiCRフィルタの一構成法を提案する。提案回路は既存研究で提案された回路に対し，周波数変換と回路の変換を施すことで導出される。提案手法の有効性を計算機シミュレーションにより確認している。

3-027

弱反転動作するMOSFETを用いた万能ガンマ補正ICの信号ダイナミックレンジの拡大

◎新井将広・佐野勇司（東洋大学）

画像入出力機器には，画像デバイス固有の非線形性を補正すべく，信号変換特性をガンマ値乗のべき乗関数とするガンマ補正回路が搭載されている。我々は，半導体素子の非線形性を利用した小規模回路によって，任意のガンマ値に設定可能なガンマ補正回路を提案し，ICを試作してきた。 本研究の目的は，本ガンマ補正回路の信号ダイナミックレンジを拡大することである。ガンマ補正ICの指数変換回路をカスコード化しつつサブストレートをソース接続することにより，レンジを最大5 dB拡大できることをシミュレーションで確認した。また，ガンマ値が大きいほど拡大効果が大きい。今後の課題は，試作ICの性能評価をし，実用化を図ることである。

3-028

マルチスロープ容量・ディジタル変換回路の変換速度の改善

◎住栄俊一郎・小川覚美・佐藤隆英（山梨大学）

容量型センサは，圧力や加速度等の検知に広く用いられている。これまでに，高精度の容量・ディジタル変換の高速化のためにマルチスロープ容量・ディジタル変換回路が提案されている。ここでは，変換速度を改善して更に高速動作が可能な容量・ディジタル変換回路の構成，Hspiceシミュレーションによる回路の特性について述べる。

3-029

多入力生体信号増幅回路の低消費電力設計

◎青島諒児・佐藤隆英・小川覚美（山梨大学）

脳波や胎児の心電信号等は微小であるため，観測信号から目的信号の抽出には独立成分分析が用いられる。独立成分分析には観測信号に含まれる信号の数以上の観測信号が必要となるため装置には多数の増幅回路が必要となるが，消費電力およびチップ面積の増加が問題となる。本稿では独立成分分析に用いる多入力生体信号増幅回路として，増幅回路の2段目を複数の入力間で時分割共有する構成の増幅回路の設計を行う。増幅回路全体を所望のチップ面積内に実現する際に消費電力を最適化する設計手法について述べている。提案する設計手法に基づく設計例を示し，計算機シミュレーションによりその有効性を確認している。

3-030

FGキャリブレーション付きニューロンCMOS可変論理回路の検討

◎大塚 陸・藏野貴教・恩地夏央・山田海貴・福原雅朗（東海大学）

従来のニューロンCMOSインバータ（νCMOS）を用いた単一出力可変論理回路（νCMOS可変論理回路）には，回路中のどこにも接続されていないフローティングゲート（FG）があり，チップ製造時にそのFGに蓄積される初期電荷の影響によって誤動作を起こす可能性が指摘されていた。そこで本論文では，νCMOS可変論理回路に対してFGキャリブレーション回路を適用することで，8種類の論理演算の中から一つの演算を選択する可変論理機能を失うことなく初期電荷の問題の解決を図った。本文では，FGの電圧の解析及びHSPICEシミュレーションを行い，提案回路が所望の動作をすることを検討した。

3-031

電圧領域を用いたハミング距離判定回路に関する参照信号の検討

◎藏野貴教・恩地夏央・山田海貴・大塚 陸・福原雅朗（東海大学）

我々は，ニューロンCMOSインバータのフローティングゲート（FG）の電圧を活用し，二つのデータ間のハミング距離が参照距離以内であるかどうかを判定する回路の提案を行なってきた。従来回路では，参照距離を設定するために，ビット長-1個という多数の参照信号を用いている。従来回路では，FGの初期電荷に問題が生じていた。提案回路では，従来回路に対しFGキャリブレーション回路を付加することで，初期電荷に関する問題を解決した。今回は，FGキャリブレーション回路を付加した回路でのフローティングゲート電圧の変化量について解析とHSPICEシミュレーションを行ない，参照信号の個数を削減できることを明らかにする。