一般講演

3-032

エネルギーマネジメントを考慮したジョブショップスケジューリング問題に対する並列Reactive Hybrid Particle Swarm Optimizationの提案

◎川口嵩平・福山良和（明治大学）

著者らは，ジョブショップスケジューリング問題（以下，JSP）に対してエネルギーマネジメントの最適運用を同時に考慮する統合フレームワークを提案しており，これまでにHybrid Particle Swarm Optimizationのアルゴリズム内のTabu Search処理をReactive Tabu Searchに改良したReactive Hybrid Particle Swarm Optimizationを統合フレームワークに適用し，RTS手法に比べ良質な解が得られることを確認した。しかし，複数の探索点を逐次的に計算しているため，問題規模が大きくなるにつれて計算時間が飛躍的に大きくなるという課題があった。 本論文では，この手法を改善するために探索点ごとに並列処理を行う解法を提案する。これにより，解の質を維持しつつ計算時間の高速化が実現できることを確認した。

3-033

Cooperative Coevolution using Global-best Brain Storm Optimizationによるスマートコミュニティ全体最適化

◎佐藤繭子・福山良和（明治大学）・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

現在，スマートコミュニティ（以下，SC）の実証試験が世界中で行われている。著者らは，SCの定量的評価のためSC全体最適化を検討してきた。PSO，DE，DEEPSO，BSO，MBSO，GBSO等の様々な進化計算手法によるSC全体最適化や探索領域の削減も提案してきた。しかし，解の質には改善の余地があった。また，大規模最適化において，解の質を改善するために，Cooperative Coevolutionが提案されてきた。よって本論文では，Cooperative Coevolution using GBSO（以下，CCGBSO）の提案と，CCGBSOによるSC全体最適化を提案する。

3-034

MPIを用いたディペンダブルな並列複数集団DEEPSOによるオンラインエネルギープラント最適運用計画の検証

西村典大・○福山良和（明治大学）・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

データセンターで複数箇所のエネルギープラント最適運用計画をオンラインで計算する際，並列分散処理による高速化が必要となる。この際，オンライン最適運用計画は，いくつかの並列分散プロセスからの応答がない場合でも，解の質を維持し最適化計算を継続して実行可能なディペンダブルな方式が求められる。本論文では，データセンターでのオンラインのエネルギープラント最適運用計画サービスを想定し，実環境に近いクラスターPC上でMessage Passing Interfaceを用いて，ディペンダブルな並列複数集団型DEEPSOの仮想環境での検証の妥当性と，実環境での提案法の有効性と高速性を確認したので報告する。

3-035

テーブル化された最適価格に基づく数式処理型高速最適制御

◎桐生智志・丹下吉雄・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

当社ではPLCのような計算リソースの少ないデバイスを対象とした，数式処理型最適制御技術を開発してきた。これまでに，高速に最適化計算ができることを確認するとともに， C言語への実装支援技術の開発や，需要予測への対応，重み付けへの対応といった改良を行ってきた。本稿では，価格関数が線形の場合に，数式処理結果をテーブル化する機能を追加した。そして3台の発電機の負荷分配問題を対象として最適化計算を行った。その結果，最適化計算の速度が提案済みの方法と比較して38.7倍高速となった。また，テーブル化により必要なメモリサイズは約1/11となり，高速化と省メモリが実現可能なことを確認した。

3-036

快適室温の変化を考慮した分散型電力ネットワークにおける最適化

◎伊藤朋彰・東 剛人（宇都宮大学）

本研究の目的は「分散型電力ネットワークにおける電力需給バランスの最適化」である．そのために新たな次世代電力ネットワークを考え，電力の需要者と供給者などをモデル化し，どのように電力の価格を決定すれば，よりよいメカニズムとなるのかについて考える．電力価格の決定は，需要者から報告されるパラメータをもとに解析的に求める．そして，実際に宇都宮市の数値を用いてシミュレーションを行い，その結果を示す．また，本研究では需要電力として空調を想定しているが，各需要者における快適室温の変化を考慮したことは新たな試みである．本研究の結論としては，需要者の快適室温の変化を考慮したうえで，分散型の電力需給最適化を行ったということである．

3-037

HEMSでのバッテリ運用最適化を目的としたLSTM による局地用日射量予測アルゴリズムの開発

◎冨樫愛采・川江 修（旭川工業高等専門学校）・小原伸哉（北見工業大学）

HEMS（Home Energy Management System）に設置するバッテリと太陽光発電の運用を最適化するため，LSTM（Long Short-Term Memory）による局地用日射量予測アルゴリズムを開発する．本アルゴリズムは過去の日射量情報を基に作成した学習モデルを使用して，数日前の日射量から対象日の日射量を予測する．春分，夏至，秋分，冬至の日射量を予測させた結果，作成した学習モデルでは，年間を通した長期的な日射量の変化に対応した予測ができたが，天候の影響による短期的な日射量の予測は誤差が大きかった．そのため，雲量など短期的に日射量へ影響を与える項目も学習させることで，長期的な日射量の変化と短期的な日射量の変化へ対応できるモデルが作成できると考えられる．

3-038

制約条件の自動抽出機能を持つ巡回保全作業スケジューラの開発

佐藤 誠・◎長坂真理（東芝）

本研究では，インフラ機器の保全サービスなどにおける，比較的広域をカバーする保全作業の1ヶ月程度の巡回スケジュールを自動生成するスケジューラを対象にしている．スケジュール生成時に考慮しなければならない制約には様々なものがあるが，それらは広域サービスの拠点や顧客毎に異なるため，設定の煩雑さが課題となっていた．本稿では，データマイニング手法の一つであるK近傍法を用いて，スケジューラが必要とする制約条件を保全作業の履歴データから自動抽出する方式を提案する．論文ではスケジューラ全体の機能構成について紹介し，自動抽出機能の詳細を述べる．

3-039

魚群マルチトラッキングと評価値の応用可能性

○本田 匠（釧路工業高等専門学校）・虎尾 充（北海道立総合研究機構 さけます・内水面水産試験場）・井川 久（北海道立総合研究機構 工業試験場）

群れ行動は魚類の普遍的な行動の1つであり，捕食者の回避・索餌の最適化・学習の場・繁殖相手の確保・回遊精度の向上に利点があると考えられている．本実験ではサケマス稚魚を使用し，群れ行動・挙動を解析した．サケマスの回帰率は稚幼魚期の影響を受けることから育成中の稚魚の挙動を詳細に分析し，良好な育成環境を構築する必要がある．近年では，海産魚類を中心に群れ行動の解析が行われ，魚種によって群れ行動の発現様式が異なることが明らかとなってきた．本研究では群れ行動解析のためサケマス稚魚のマルチトラッキングを行い，解析結果を示す．今回の設計値や評価値について，他生態への応用可能性について検討する．

3-040

Deep learningを用いたコドラート画像の3カテゴリへの分類の評価

○野崎真也（琉球大学）・鈴山正剛（三井E&Sプラントエンジニアリング）・坂巻隆史（東北大学）

サンゴの種類や数などを調査する際，その手法の一つとしてコドラート法が用いられている。海底内を一定の大きさの枠を置いて撮影する。PC上で枠内にある画素をランダムに複数点選ぶ。それらを目視で基質を判別して統計データとしてまとめて，知見を得るが，画像の枚数は膨大であり自動化が求められる。 これまで，枝状サンゴやなどの判別などの研究がなされている。これらの手法は，選ばれた画素周辺画素の情報も用いるので周辺情報に枠が含まれていると誤判別の原因になる。 そこで本研究では，コドラート画像内の任意の点において，枠などの人工物，岩，そしてサンゴでの判別について，deep learningを用いて判別する手法を提案して評価したので報告する。

3-041

顔認証による入退管理システム

◎小笠原桃太・南角茂樹（大阪電気通信大学）

大阪電気通信大学では，卒業研究を行う上で450時間が最低従事時間だと明示されている。そして，従事時間を計測する方法は各研究室によって異なる。組込みリアルタイムシステム研究室ではノートに研究室滞在時間を記述する自己申告制を採用している。そのため，ノートへの書き忘れや統一して正しい時間を測定できないなどの問題がある。そこで本研究ではノート記述より正確かつ操作手順を少なくするために顔認証を用いて研究室の入退を管理し，研究室に滞在した時間を研究時間として記録するシステムを提案する。顔認証はほかの生態認証とは違い，指紋や静脈などを読み取るための特別な装置を必要とせず，市販のカメラで認証できる。また，特別な動作をする必要もなく認証をすることができる。具体的には， Open Source Computer Vision Library(OpenCV)ライブラリを用いてwebカメラから顔が検知されれば撮影し，撮影された画像を深層学習で学習したデータと照らし合わせて個人の特定を行い，対象者のデータに対して入退に応じた操作を行う。深層学習にはTensor Flowを使用し，システムはGUIで操作できるようにする。本研究では深層学習を簡易化して学校指定PCでも動作するようなシステムとする。

3-042

ドローンを活用した鹿の捜索システム

◎長瀬康斗・佐竹利文・以後直樹（旭川工業高等専門学校）

平成29年度の北海道の野生鳥獣による被害金額は47億円で，その中でも鹿による被害は39億3千万円と無視できない額となっている．効率的な鹿の駆除を実現するために，本研究はドローンとマルチスペクトルカメラを用いて，あらかじめ設定した探索範囲内を自動飛行させ，鹿の位置を特定するシステムを構築することを目的とする．現状では鹿をマルチスペクトルカメラで上空から撮影したデータが存在せず，検出するためのプログラムが実現できていない．そのためドローンの自動飛行用アプリケーションの作成と，マルチスペクトルカメラの画像処理プログラムの一部までしか作成できていないが，2019年2月に猟友会の方々と協力してデータを撮らせていただくことができる機会がある予定のため，そこからデータを取得でき次第，検出プログラムの作成を続けていきたい．

3-043

遠隔臨場感システムにおけるARグラスの利用

○政清史晃・喜田大貴・岩佐英彦（近畿大学工業高等専門学校）

遠隔にあるWeb カメラの制御を行う場合，固定利用もしくはアクセス権を得た一人のみが首振り制御する利用方法が多い。今後，ロボットにカメラを装着し，映像とともに制御信号を送信してロボットやカメラを制御して視聴角度を自由に変える利用が増えると考えられる。この時，(1)カメラの雲台を直接制御する方法，(2)全方位カメラの映像を受信し，受信側で見たい方向の映像をソフトウェアで再構成する方法，の2通りが考えられる。また，複数人で利用する場合， (2)の方法では，1つの映像を受信側で2つ以上の方向に再構成すればよい。本研究では，これら2つの方法のメリット・デメリットを考察する。

3-044

LSTMおよびCNNを用いた動画改ざん領域の検出

◎多谷邦彦（京都府警察）・黒木修隆（神戸大学）・竹田直人（扶桑プレシジョン）・沼 昌宏（神戸大学）

動画中の一部のフレーム内で改ざん処理が行われている場合において，改ざんされている領域を検出する手法を提案する。改ざん対象となるフレームの前後15フレームを含んだ画素値をLSTMに入力することで時間方向の特徴量を抽出する。次に，LSTMの出力値をCNNに入力することで空間方向についても解析を行う。CNNまたはLSTMのみの検出方法と比較して，両者を併用する本提案手法は高い検出結果が得られた。

3-045

古い紙面におけるタイトル領域検出に関する検討

◎越高佑芽・景山陽一・石沢千佳子（秋田大学）・末廣健二・高橋美紀・小林拓也（秋田ケーブルテレビ）

超高齢社会におけるQOLの向上には，関心を持つディジタルコンテンツにユーザが容易にアクセスできることが重要と考える。例えば，古い紙面はマイクロフィルムにより保存されている。一方，これらの紙面からユーザが関心のある記事を利活用するためには，人手により記事領域を切り出しているのが現状である。したがって，迅速に情報を提供するためには，その前処理として記事領域を分類する手法の開発が必要である。そこで本研究は，古い紙面を画像データ化したものを用いて，各記事領域を分類する手法の開発を目的としている。本稿では，画像処理を用いて，紙面からタイトル領域を分類する手法について検討を加えた。

3-046

非一様な空間解像度をもつ画像のためのカメラキャリブレーション手法の考察

◎亀山尚明・清水創太（芝浦工業大学）

大きく歪んだ入力画像を効率よく精度よく取り扱うために，画像の歪み情報を正確に把握・表現できるカメラキャリブレーション手法が求められる。本稿では約100度の視野を有し，視野中心部分で像倍率が最も高く，視野の周辺に行くにつれて急激に像倍率が低下する，広角中心窩センサ(WAFセンサ)入力画像から精度の高い歪み情報を取得するために，視野領域を高解像度の中心視野と広角の視野全体に分けてキャリブレーションを行う。結果として，入力画像は大きな歪曲を持つが，視野の中心部分に限定することで高い精度の歪み補正情報を得られた。

3-047

敵対的生成ネットワークを用いた手書き文字の書体補正に関する一検討

◎折居英章・江田孝治（福岡大学）・河野英昭（九州工業大学）

手書き文字はプリンタなどで印字された文字と比べ書き手の個性が読み手に伝わりやすく，デジタル化が進む現在でも自身の思いを込めた大事な情報を相手に伝えたい場合などには未だに用いられる．一方，日本語ではひらがな・カタカナ・漢字・数字・アルファベットなど多種多様な文字を混合して文章を表現することが可能であり，それを手書きで記述する際にはそれらの文字を一つ一つバランス良く書き表わす必要がある．このため，見た目に美しい文章を書くためには知識や経験，技術が重要となる．本稿では，字形のバランスやとめ・はね・はらいなどの局所的な形状に不備を含む手書き文字（以下，下手文字）を見た目のバランスが良い文字形（以下，美文字）へ補正する画像処理手法を提案する．具体的には，敵対的生成ネットワーク（GAN: Generative Adversarial Network）を用いて，下手文字画像から美文字画像を生成する生成器と下手文字画像と美文字画像を識別する識別器を同時学習する．

3-048

空撮全球パノラマ写真の遭難者捜索への活用

○三橋龍一（北海道科学大学）・福本義隆・山本修知（福本工業）・佐々木正巳・青木由直（北海道科学大学）

2007年頃から現在まで第3次登山ブームと言われている。現在の登山ブームはスマートフォンの普及などにより，GPSを使用して登山ルートを容易に知ることが出来るようになったことから，山岳会に属さない「未組織登山者」の割合が増加し，体力・装備・知識を身に着けていない登山者が多いことが特徴であるとされている。日本全国の山岳遭難者は，2008年の1,631人から2017年の2,583人と，この10年間で約1.58倍となっている。 現在の山岳遭難者捜索の問題点について述べ，ドローンやインターネット技術を利用した捜索方法を提案する。

3-049

浮体式洋上風車の動揺抑制を考慮した2ループPI制御器のFRIT法によるゲインチューニング

◎市川 崇・原 尚之・小西啓治（大阪府立大学）

近年，浮体式洋上風車に注目が集まっている．浮体式洋上風車では波や風により，出力の変動や浮体の動揺が引き起こされる．本研究では，出力変動と浮体動揺を抑制するために，二つのPI制御器によって構成される2ループブレードピッチ角制御系を提案した．各PI制御器のゲインパラメータのチューニングにはFRIT（Fictitious Reference Iterative Tuning）法を用いた．そして，提案法の有効性を非線形シミュレーションによって確認した．

3-050

ウィンドシア条件下における風車スケール模型を用いた個別ピッチ角制御の初期検討

◎末元大樹・原 尚之・二瓶泰範・小西啓治（大阪府立大学）

風力発電分野において，発電量増加のために風車の大型化が進んでいる。大型化は風車構成要素の製造コストの増加を引き起こす。そのため，大型風車では発電量の調整だけでなく，構成要素にかかる疲労荷重も考慮したブレードピッチ角制御が必要とされる。 本研究では，ロータ速度（発電量）の目標値追従およびブレードにかかる荷重低減を目的とした個別ブレードピッチ角制御器を設計する。制御器設計にはPI制御法を用いる。また，大型風車のスケール模型を用いた実験をおこない，設計した制御器の性能を評価する。

3-051

位置検出遅れを考慮した制御対象の制御設計手法

○金武佑介・竹下伸夫（三菱電機）

位置検出遅れが大きい位置制御システムにおいて，制御性能の向上を図った。提案手法では，外乱オブザーバにおいて，位置検出遅れを含まない位置推定信号を位置制御の帰還信号とし，かつ位置検出遅れを考慮した推定信号を外乱推定に用いることで，位置検出遅れの影響を低減した位置制御システムを構築した。その結果，位置追従性能が従来に比べ良好となり，位置検出遅れの無い理想的な場合とほぼ同じ結果が得られることをシミュレーションで確認した。

3-052

離散操作量に対応したエッジ型モデル予測制御

○丹下吉雄・桐生智志・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

モデル予測制御の高度な制御性能をエッジデバイス上で実現する方法として，筆者らは数式処理に基づくゲイン設計と予測フィルタを用いたエッジ型モデル予測制御手法を提案し，連続系の制御シミュレーションでPIDを上回る性能を確認してきた。 しかし，制御対象によっては，ON／OFFやマルチレベルなど，離散値しか取れないケースがある。 従来の，最適化に基づくモデル予測制御では整数計画問題などとして扱う必要があり高速化は困難であった。 そこで，今回，操作量が離散値を取るプラントに対しても数式処理に基づくエッジ型モデル予測制御手法を適用可能とする拡張を提案する。

3-053

Fractional Order Extremum Seeking Control without Steady-State Oscillation

◎銭 維舜・大森浩充（慶應義塾大学）

Extremum seeking control (ESC) technology has been an active area during recent years. It is one of the best ways to ensure that the output of the system can still be adaptively converge and stabilized to the optimal solution of the output function even in the case that reference trajectory of the actual control system cannot be accurately known. In order to eliminate a steady-state oscillation in the system, a fractional order extremum seeking control (FO-ESC) scheme for the optimization of nonlinear plants and the system for removing steady-state can be proposed.

3-054

カーネル法によるL1適応制御系の提案

◎越智祐介・大森浩充（慶應義塾大学）

適応制御系の構成方法として，L1適応制御系が提案され，多くの応用例が示されている。本論文では，L1適応制御系の制御対象のクラスを非線形系まで拡大するため，カーネル法を利用したカーネルL1適応制御系の構成を提案する。

3-055

ネットワーク制御システムの制御器設計

○米山 淳（青山学院大学）

ネットワーク制御システムに対する安定化制御器の設計法を提案する。ネットワーク制御システムは2つのむだ時間を含むシステムであり，その安定性解析や制御系設計はむだ時間を含まないそれよりも困難となることが知られている。そのようなネットワーク制御システムに対して，新たなリアプノフ・クラソフスキ関数を導入することで，保守性の低い設計条件を導出し，その条件に基づいた制御器の設計法を紹介する。特に，多重積分を含むリアプノフ・クラソフスキ関数を用いることで，設計条件の保守性の低減がなされる。数値例を用いて，先行研究の結果よりも大きなむだ時間に対しても漸近安定となる制御器の設計を示す。

3-056

球面波対応型レーザマイクロホンの特性評価

◎水嶋大輔・津田紀生・山田 諄（愛知工業大学）

半導体レーザ(以下LD)の自己結合効果を応用したレーザマイクロホンは，音波による屈折率の変化を検出する光マイクロホンである。現在のレーザマイクロホンはLD－反射板間の10cmの空間を音波検出部として利用する。このとき，一般的な点音源から放射される球面波を入射させると，レーザビームの端部の音波の位相がビームの中央部と異なるため正しく音波が検出できない。本研究は，レーザマイクロホンによって球面波を検出するため，多重反射を利用した新しい音波検出構造を採用したレーザマイクロホンの特性を評価するものである。発表では，新しい音波検出構造に平面波を入射した際の特性についてレーザマイクロホンの特性について報告する。

3-057

Fuzzy c-means法を用いた八郎湖における水質特徴解析

◎松井 解・景山陽一・横山洋之（秋田大学）

近年，河川や湖沼における水質汚濁の深刻化が問題となっており，水質汚濁状況の把握を目的とした水質調査が実施されている．筆者らはこれまでに，リモートセンシングデータを用いたFuzzy c-means法(FCM)による水質推定手法を提案している．FCMはクラスに与える初期値によって分類結果が異なるため，このため，良好な分類を可能にする初期値の設定について検討する必要がある．そこで本研究では，リモートセンシングデータ取得時における対象地域の水質データに着目し，FCMにおける初期値設定法に関する検討を行った．その結果，提案する初期値設定法は，詳細な水質状況を反映した良好な分類結果が得られることを明らかにした．

3-058

UAVデータを用いた送電線・樹林間の離隔計測を目的とした3次元復元手法に関する検討

◎新井達也・景山陽一・石沢千佳子・髙橋 毅（秋田大学）・末廣健二・高橋美紀・小林拓也（秋田ケーブルテレビ）・石井雅樹（秋田県立大学）

電力は，私たちの生活における重要なライフラインの一つであり，安全に使用するためには，鉄塔周辺の送電線・樹林間における離隔状態の把握が必要不可欠である．無人航空機(UAV)は運用コストが低く，UAVによって取得されるデータ(UAVデータ)は高分解能であることに加え，任意のタイミングにおけるデータの取得が可能である．したがって，UAVデータを用いて送電線・樹林間の離隔状態を把握することは，業務の標準化やコスト削減に寄与すると考える．そこで本研究では，UAVデータから鉄塔周辺の送電線および樹林の状態を復元した3次元データを作成し，離隔計測を行う手法について検討を行う．

3-059

測定記録支援システムの開発

○中島栄一・山口紘輝・岡 信哉（関電工）

IT等の各種技術を活用することで建設工事における各種の作業や業務を効率化し，負担を軽減する取り組みの一環として，測定記録支援システムの開発を行い，2018年度下期より施工現場において使用を開始している。 開発したシステムは，多種多様な通信方式とデータ構造を備えた測定器に対応し，複数のアプリケーションに対して，ユーザの手を煩わせることなく自動的に測定値を入力することが可能である。 2018年7月より現場実証を行い，既に照度測定及び絶縁抵抗測定，電圧測定についてシステムの使用を開始している。今後，さらなる現場展開をはかり，対応する測定のラインナップを拡張していく。

3-060

乱雑性データに対するフィルタを搭載した非線形モデル推定の適用

○中川善継（東京都立産業技術研究センター）・佐藤春彦・森 一幸（イング）

時系列データにモデル関数をあてはめて挙動を捉える手法に関数フィッティングがある．本稿では，環境モニタリング等においてセンサから得られる機械的，確率的ノイズを内包したデータ群に対して，非線形性を有した未知パラメータを複数持つ関数フィッティングを用いて，かつ，フィルタ挿入することにより時系列データに含まれる乱雑性を排除し，未知パラメータの推定値を改善する方法を提案した．

3-061

仮想音環境構築のための 1 次元音場モデルの検討

◎横田英治・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

近年，遠隔地で起こっている現象をあたかもその場で体験しているかのような感覚をもたらす超臨場感システムが注目を集めている。このシステムの発展に伴い，音響再生において臨場感のある再生技術を実現する高臨場感音響技術が盛んに研究されている。しかし従来では音響システムにおける音場の信号情報のみを扱っており，音場のダイナミクスを考慮していない。そのため現在地に作り出した仮想的な遠隔地の音環境に対して聴取者が能動的に干渉することができない。そこで本論文では音場のダイナミクスを考慮した音響技術のため，音環境情報を音響インピーダンスとして表現した1次元音場モデルを提案する。

3-062

双曲型偏微分方程式に対する高性能数値計算法の統一的構築の試み

◎村上裕哉・武居 周（宮崎大学）

近年，計算機の普及と性能向上を背景に，数値解析技術が製品開発の現場で広く用いられるようになった．これまでに提案した，並列有限要素法に基づく大規模音響解析手法に，マイクロ波帯域の電磁界解析機能を追加し，両者の並列計算アルゴリズムをはじめとする機能の共通化を測る．有限要素法において，これら二つの解析はともに，自由曲面を含む複雑形状，解析領域の拡大，解析周波数の上昇等により大規模解析が必要となり，かつ反復法の収束履歴が同じ傾向を示す等の共通した特徴がある．そこで，本研究ではコードを統一的に構築し，それにより得たいくつかの数値例について報告する．

3-063

情報セキュリティに関する教材を用いた実験の構築と評価

◎島田哲平・向平卓矢・土居茂雄（苫小牧工業高等専門学校）

本研究では，IoTセキュリティに関する教材の研究開発と教材を用いた実習の計画，教材の教育現場への導入を行う。まず本校の実験に教材を導入し，その反響を元に教材を改良し，よりよい教材を目指す。教材の普及により，情報処理技術者のセキュリティ意識・スキルの向上を目指している。 実際にIoTカーを用いた実験を構築し，昨年10月より6週間にわたって高専情報系3年生に対して実験を展開した。本発表では実験の事前アンケートと事後アンケートの学生評価と今後の改良点について報告する。

3-064

金属酸化物半導体ガスセンサによる匂い計測と匂い識別

○〇大松 繁（大阪工業大学）

金属酸化物半導体ガスセンサを用いて，様々なコーヒの匂いを計測し，機械学習によるコーヒの種類識別を行った結果について報告する。

3-065

Correntropyコストに基づく非線形システムの状態推定の検討

◎真木隼斗・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

状態推定法は直接取得することが困難な値を知る手段として有名でありカルマンフィルタが有名である。これは状態の真値と推定値の誤差の二乗をコストとしたアルゴリズムであり，線形システム・白色雑音下において有用であることが知られている。しかし雑音分布が白色でない場合，二乗コストでは不十分である。二乗コストに変わるコストとしてCorrentropyコストがある。Correntropyコストは二乗コストでは捉えることが困難な情報をアルゴリズムに用いることができ，フィルタリング問題で二乗コストより推定値の精度が良いことが報告されている。しかし，非線形システムに対する例は少ない。そこで本稿では，Correntropyを用いた非線形システムに対する状態推定法を提案する。

3-066

Twitterにおける情動解析の研究

○冬爪成人・卜部恵輔・遠藤 優・上田隼人（東京電機大学）

近年インターネットサービスが普及すると同時に，それを利用した問題が増えてきている。特に，Twitter等のオープンなSNSでは，炎上等の問題を未然に防ぐことが必要である。そこで，本研究では，Twitterのツイートからツイート者の感情を予測するシステムの構築を目的とし，情動の変化の推移をトレース出来るシステムの構築を検討する。また，ツイートのある情動の予測について正解率を記録したので，それについて報告する。

3-067

要約文の検出を目的とした文章の類似度比較手法に関する検討

◎眞壁寛倖・石沢千佳子・景山陽一（秋田大学）

本研究では，PCを用いた文書ファイル作成時に発生する参考文献の記載漏れを未然に防止するため，文書作成時に使用された文献の情報を整理して，ユーザへ提示する手法の開発を目的として検討を加えてきた。その結果，コピーされた文字列を一字一句変更せずに使用した文章，およびコピーされた文字列に変更を加えた文章の検出が可能であることを明らかにした。しかしながら，参考文献の内容を要約した文章を検出するまでには至っていない。そこで，本稿では，要約文の検出を目的とし，作成された文章と参考文献内における文章の比較方法について検討を行った。

3-068

クラスタリングベースアンダーサンプリングを用いたショーケース故障解析へのアンサンブル手法提案

◎塚越裕也・酒井航士・加藤綾重・福山良和（明治大学）・川村 雄・村上賢哉・Adamo Santana・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

冷凍・冷蔵ショーケースは，コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで食品の冷凍・冷蔵保存及び陳列に利用されている。ショーケースで故障が発生し，庫内が設定した温度に保てなくなると，食品の品質低下が生じ，店舗の信頼だけでなく，ショーケースメーカの信頼も揺るがす事態が起きてしまう可能性がある。本論文では，クラスタリングベースのアンダーサンプリング手法(以下，CUS)を用いたショーケース故障解析へのアンサンブル手法を提案する。提案法は，従来法と比較し，着霜・冷媒漏れの判定精度を向上することができた。

3-069

審判支援を目的としたスポーツ映像における状況の提示

◎菅野 陸・村木祐太・西尾孝治・小堀研一（大阪工業大学）

スポーツ競技において，公正な試合のために，審判員は必須の存在であるが，様々な試合状況に対して，審判員が常に正しい判断を下すことは困難である．そのため，判定に疑惑があるプレーに対して，映像による再審を行うビデオ判定がある．また，サッカー競技においてビデオ判定はVARと呼ばれ，特定の条件下でのみ用いられる．本研究では，映像より得られる特定の状況を自動で判定し，審判の支援を行う手法を提案する．提案手法では，2台のカメラより背景差分およびテンプレートマッチングを用いてボールの軌道を抽出し，体の位置や向きを解析できるOpenPoseより得られた姿勢推定結果と組み合わせることで，ハンドリングの検出を行う．

3-070

Kinectによるテニスフォーム確認システム

◎森川英紀・南角茂樹（大阪電気通信大学）

テニスにおいて，フォームは非常に重要視されている. 正しいフォームは，指導を受けることで効率的に習得できるが，指導を受けることができる機会は限られており，多くの場合は自主練習となるため，自身のフォームが正しいかどうかを判断することは難しい. 本研究では，Kinect v2を用いて，指導者がいなくても正しいフォームを習得できるようなシステムを提案する. 判定方法は，Kinect v2の身体の各関節を検知する機能であるBodyTrackingを利用する．取得した関節を教則と比較し，結果を画面に表示する．表示した画面を確認することによって，自身のフォームと教則のフォームとの違いを把握し，ミスや故障が減少するプレイを利用者に意識させることが期待できる.

3-071

視線軌跡解析に基づく視覚探索の判別の検討

◎須藤敬三郎・加藤和夫・門倉博之（東北学院大学）・黒木友裕・石川敦雄（竹中工務店）

本研究では，空間周波数特性が観察者の視線応答にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的に，ニューラルネットワーク(CNN)の手法を用い，視線軌跡の解析を試みた．実験では，空間周波数パラメータβ = 0の特性を持ち，縦横5×5の領域に分割された背景画像の1か所に，背景とは異なるβ値を持つターゲット画像を埋め込んだ．被験者には，ターゲット画像の位置を探索するように教示した．ターゲット画像の位置に対する被験者の主観的な口頭回答に基づき探索時間と正答率，また眼球運動測定装置によりターゲット画像探索中の視線軌跡を測定した．β = 0.4において主観評価とCNNによる正答率の結果に差異が見られたことから，無意識的視覚探索が存在する可能性が示唆された．

3-072

組合せ回路用テストパターン生成における外部入力の重要度に関する統計的調査

○稲元 勉・樋上喜信（愛媛大学）

本稿は，論理回路の運用段階で実施する故障検出手法である論理BISTを念頭におき，その際に発生させるテストパターン集合の故障検出率を向上させることを目的とし，有用な外部入力を判別するために統計的検定を利用する手法の調査結果を報告することを目標とする．本稿の手法では，外部入力iの値を網羅化したテストパターン集合を外部入力iの値を因子として2群へ分割し，故障検出率を観測値としてt検定を適用する．外部入力iが故障検出率へ影響を与えるならば，テストパターン集合のサイズが増すほどt検定で得られるp値は低下すると予想される．計算例として，小規模回路に対してその予想を検証した結果を示す．

3-073

プログラマブルデバイスPSoCへの軽量ブロック暗号の実装検討

○岡部 忠（東京都立産業技術研究センター）

CPS/IoT向けプログラマブル・エッジ/フォグデバイスの候補の一つとしてCypress社のPSoCが挙げられるが，セキュリティの面で不充分である。本発表では，CPS/IoT向けにセキュリティ機能をPSoCへ付加することを検討した。

3-074

オペランドの差の最大値を考慮したA>B比較器のビット幅削減

◎柴田尚明・中村一博（日本工業大学）

ディジタル回路において比較器はループ処理を実現するために用いられる重要な回路である．ループ継続判定に用いられるA<B比較器のビット幅を削減する手法として，オペランドの差の最大値を考慮した比較器のビット幅を削減する手法がある．本研究では，A>B比較器をループの継続判定に用いるループ処理のためのA>B比較器のビット幅削減と評価を行った．提案するA>B比較器は，オペランドの差の最大値を考慮しビット幅を狭くしたA>B比較器と補正回路から構成される．ビット幅削減前のA>B比較器と提案するA>B比較器を比較すると，オペランドの差の最大値が小さいほど提案するA>B比較器のビット幅の削減と面積遅延積が削減されていることがわかった．

3-075

PSoCマイコンを用いた抵抗器の熱雑音による真性乱数生成器の検討

○松岡俊佑（旭川工業高等専門学校）・藤枝直輝・市川周一（豊橋技術科学大学）

本研究では，抵抗器の熱雑音を利用した真性乱数生成器をPSoCマイコンへ実装し，生成した乱数列の品質評価を行ったので報告する．

3-076

密結合マルチコアプロセッサ組込みシステムにおける公平な相互排除方式の検討

○南角茂樹・藤本堅太・藪田優平（大阪電気通信大学）

近年組込みシステムにおいても，性能向上および省エネルギーの観点から，マルチコアプロセッサ，特に同じコアを複数配置した共有メモリ型のSMP(Symmetric Multi Processors)の採用が増加している。そしてコア間の相互排除方式として，アルゴリズムの大幅な変更が不要，オーバーヘッドが少ないなどの理由により，組込みシステムにおいてはスピンロックが主流である。しかしながらスピンロックには各コアのロック獲得機会の公平性やリアルタイム性が保証されないなどの課題がある。そこで，本稿では密結合マルチコアプロセッサ組込みシステムを対象とした，公平性やリアルタイム性が保証できる，相互排除方式に関する提案を行う。

3-077

M16C REMON メモリプールの提案と検証

◎山田惇平・南角茂樹（大阪電気通信大学）

組込みシステムの開発の際には潤沢にリソースを使用できない製品も存在する. リアルタイム組み込み簡易モニタ(REMON)は, リソースが少ない等の理由でRTOSを搭載できない製品でRTOSと同等の同期排他制御機能が実現できるシステムである. しかしながら, 現在のREMONにはリソースの1つであるメモリを管理する機能がない. そこで本研究では, メモリ管理機能であるメモリプール機能をREMONに追加することを提案する. メモリプール機能を追加することにより, メモリリーク等のリスクの低減が実現可能である. 本研究では, 固定長メモリプールをREMONに追加し, 動作の検証と評価を行った.

3-078

CPUアイドル時間計測によるCPU使用率向上の提案と検証

◎上田 澪・南角茂樹（大阪電気通信大学）

世の中のほとんどの製品に組込みシステムが利用されている．利用可能なリソースが限られた環境で開発を行う場合，リソースを効率よく使用する必要がある．そのためには，CPU使用率を可能な限り向上させる必要がある．そこで，CPUが有効な処理を行っていない時間であるアイドル時間の存在は，CPUを効率的に使用できていない可能性があるとして問題である．具体的には，マイコンに搭載されているタイマを使い，CPUのアイドル時間の計測し，CPUが有効な処理をしている割合を計測することで，CPU使用率を計測する．計測結果から，現在のタスクでのアイドル時間を特定できる．本研究により，アイドル時間に有効な処理を実行させるなどの対処をすることができ，CPU使用率を向上させることができると考えられる．

3-079

M16C REMON メールボックス

◎大野真琴・南角茂樹（大阪電気通信大学）

リアルタイム組込み簡易モニタ(Real-time Embedded MONitor：REMON)は，リソースの限られた環境下においてもRTOSのような同期排他制御機能が使用可能である。排他制御をする際にはセマフォを使用するが，従来のREMONのセマフォ機能のみでは，ISR間でデータの送受信と同期を同時に実現する機能がない。そこで，RTOSの1つであるμITRONにおけるメールボックスと類似する機能をREMONに持たせることを提案する。これにより，データのサイズに関わらず通信が可能となり，通信及び同期が同時に行えることが可能になることでソフトウェアの構成が簡単になり，不具合の低減が期待できる。

3-080

REMONメッセージバッファの提案と検証

◎平口陽太（大阪電気通信大学）

組み込みシステムはエアバックや自動改札，携帯電話，家電製品のような身近なものまで組み込みシステムは存在する．その製品の多くはリアルタイムOSを用いている．しかしながら限られたリソースがないなどの理由にリアルタイムOSを使用することできない製品も存在する．そこでリアルタイム組み込み簡易モニタ(Real-time Embedded MONitor:REMON)を南角研では提案してきた． REMON使うことでリアルタイムOSを使うことができないシステムでもリアルタイムOSのような同期排他制御の機能を実現でき，リアルタイム性の向上が可能となる． REMONにはセマフォという排他制御が設けられているが，同期とデータ送信を同時に実行するための機能は存在していない．そこで本研究ではREMONに同期とデータ通信を同時に実行できるメッセージバッファを提案する．

3-081

ARM REMON高速割り込み処理の提案と評価

◎山口拓海・南角茂樹（大阪電気通信大学）

現在，組込みシステムは生活に欠かせないものとなっている。組込みシステムにはリアルタイム性が求められるが，潤沢なリソースがないなどの理由によりリアルタイムOS(RTOS)を使えない製品も存在する。そこで所属する研究室で提案してきたリアルタイム組込み簡易モニタ(Real-time Embedded MONitor：REMON)を使用することでRTOSが使えない製品でもDI，EIを使うことなく排他制御が可能となる。しかしながら割り込み処理の切り替えにオーバーヘッドが生まれる。厳しい応答時間を要求されるシステムにおいてオーバーヘッドは小さいことが望ましい。そこで，本稿では厳しい応答時間への要求が可能となる高速割り込み処理の提案と評価を行う。

3-082

マルチコアプロセッサ向けLock-free相互排除方式における複数要求管理手法の提案

○藤本堅太・追立信吾（三菱電機）・薮田優平・高橋貴之・山崎拓也・南角茂樹（大阪電気通信大学）

近年組込みシステムにおいて，性能および省エネルギー性の向上のため，マルチコアプロセッサ（以後マルチコア）の採用が増加している。我々はこれまでマルチコアプロセッサ向けの排他制御方式として，Lock-free 相互排除方式を提案してきた。本方式は，スピンロックと比較したときに，最悪実行時間と最小実行時間の差分であるジッタが十分に小さいかつ，ビジーウェイトを行わないためCPUを有効利用できる利点がある。しかし，各コアから同時に2 つ以上の相互排除権を取得できない問題がある。そこで，本論文では，各コアの複数のタスクから相互排除を要求できる複数要求管理手法について述べる。

3-083

重回帰手法による補正機構を用いた電力需要予測

◎内桶淳基・東 剛人（宇都宮大学）

近年，火力発電において省エネの重要性がこれまで以上に高まっている．無駄な発電を防ぐために必要となるトピックのひとつが電力需要の予測である．高精度な予測が行えれば，発電機の効率的な起動停止計画を立てることができる．これに対して，本研究では過去の需要データや電力需要と密接に関係する気象等のデータから，赤池情報量基準（AIC）を用いて説明変数を選択し重回帰分析を行った．さらに，求められた予測値の精度を向上させるため，1時刻前の予測誤差を現時刻の値に反映させる補正機構を提案した．全体的な精度向上は見られたが，気温による相関が弱い春秋において，説明変数を決定する際に場合分けすることで更なる精度向上を考えている．

3-084

住宅における翌日の電力消費量予測手法の検討その1 電力消費量の時系列的特徴

○近藤修平（関西電力）

近年一般住宅の需要家サイドにおいて，太陽光発電や燃料電池，また家庭用の定置用蓄電池システム等が普及しつつある. また, これらの電源リソースを活用して電力受給逼迫時に系統側からの要請に応じて需要家が調整を行うデマンドリスポンス（DR）や，需要家サイドの小さな発電設備を束ねて仮想的な一つの発電所（VPP）として活用するエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス（ERAB）が試行されている. このような需要家側のリソースの活用を行う場合, 使用可能なエネルギーリソースを把握するためには，需要家端での電力消費の予想が必要である. そこで, 一般の住宅を対象とする翌日の電力消費量予測手法について検討を行った。

3-085

全天球カメラによる短時間太陽光発電量の変化予測

◎髙島祐弥・奥村成皓・箕輪昌裕（古野電気）・花尾隆史・北村高嗣・大堀彰大・服部将之（ダイヘン）

本研究では，自家消費の需要家に設置された数十m四方の太陽光発電の発電量予測システムの構築に向けて，太陽光パネルの横に全天球カメラを設置し，取得した画像から処理を行い，日射を遮る雲の判定及び，日射量の変化予測が可能かの検討を行った。

3-086

ニュートン法型分散極値制御による電力系統の入力遅れを含むリアルタイムプライシング

◎合田 航・大森浩充（慶應義塾大学）

リアルタイムプライシングとは，電力価格をリアルタイムで変更することによって供給側，需要側ともに制御し，電力系統の安定的な運用を実現する方法である．しかしこの設計には需要家，供給家，同期発電機の詳しいダイナミクスの情報を必要とするという問題点がある．これを解決するため，詳細な制御対象の情報なしに，与えられた評価関数の極値に拘束が可能な極値制御を用いた．さらに今回は，電力価格にむだ時間が存在すると仮定する．次に，電力系統は一般に大規模システムであるので，分散協調的な推定器によって系統全体の評価関数を推定し，これによって極値制御を行う．以上の条件で安定化可能な極値制御を提案し，リアルタイムプライシングに適用した．

3-087

UAV向け燃料電池システムの妥当性検証

◎吉川 覚・安藤真司・松江武典（SOKEN）・平井雅尊（DENSO）

現状利用されているUAVは多くのアプリケーションで必要十分な飛行時間を備えているとは言い難い。 この問題に対し，著者らはUAVへのFC(燃料電池)搭載による飛行時間延伸を検討している。 本報では，その端緒としてUAV向けのFCシステムを考案し，6翼マルチコプターで飛行試験を実施したので報告する。

3-088

構内電力の監視・制御システム遅延時間の比較検討

○高野さつき・成 慶珉（茨城工業高等専門学校）

現在，太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの需要が高まり一般家庭にも広く普及している。これらは，現在様々な場所で導入されているIoT技術を用い，家屋や構内の発電した電力の流れをPCまたはスマホ等で可視化することで更なる導入効果が期待できる。IoT技術を用い，既に構内に構築されているインターネット回線を利用することで経済的なシステムが実現できる。本研究では構内電力監視システムを構築し，データ転送の遅延時間の比較・検討を行う。

3-089

停電復電シミュレーションソフトウェアの開発

○松村康宏・坂田義晴（関電工）

電気設備作業は対象箇所を停電させてから実施するが，準備段階で充電部と非充電部に色分けをした単線結線図を多数作成しているので，充電状態変化を動的に表示できるシミュレーションソフトを開発した。今回は，電力線の充電状態を表示する際の，処理の課題と解決方法について報告する。停電作業は，開閉器の操作箇所が任意で，周囲の開閉器状態も変化するため，操作のたびに，全体の開閉器状態を反映させて，充電範囲(色替)を検索する必要があった。しかし，変化箇所は一部なので，全体を用いなければ，より効率的な処理となる。次の接続された開閉器情報のみで,次の開閉器へ送付する玉突き的な処理とすることで解決した。

3-090

Content Centric Networking 上のストリーミングにおけるキャッシュ管理手法の提案

◎赤堀優毅・松本倫子・吉田紀彦（埼玉大学）

Content Centric Networking（CCN）は，インターネットでのアドレスに基づく通信と，コンテンツ配信が主流となっている利用形態との齟齬を解消する新しいアーキテクチャの1つとして，注目を集めている。しかし，動画配信の需要が高まっているにもかかわらず，CCNにはストリーミングの仕組みが標準的に備わっていない。これまでにCCN上でストリーミングを行う様々な手法が提案されてきたが，これらの手法はキャッシュ管理を考慮していない。そこで本研究では，ストリーミングのデファクトスタンダードであるHTTP Live Streamingで用いられているインデックスファイルの単位でキャッシュ管理を行う手法を提案する。

3-091

MANET における Cooperation Enforcement の改良

◎土屋拓也・松本倫子・吉田紀彦（埼玉大学）

アドホックネットワーク（MANET）の実装には様々な課題が残されており，その中でもセキュリティは重要な課題である．特に，自身の利益のみを考えて行動するセルフィッシュノードの存在は，パケット到達率の低下やノードのバッテリー減少に繋がる．この解決策として，各ノードに報酬や罰を与えることでノード間の協調を促す Cooperation Enforcement が考えられている．しかしその報酬ベースには，金銭を十分に持つノードの協調を促せないという課題がある．そこで，ネットワーク貢献度の導入と，支払う対価をその貢献度に応じて変化させることを提案し，シミュレータを用いて提案手法の有用性を評価した．

3-092

継続的なSSID/RSSI監視に基づくフリーWiFi接続サービスの高信頼化・脅威軽減

○山内雪路（大阪工業大学）

ツーリストを呼び込むため，フリーWiFi接続サービスを導入する自治体や商業施設が増えている。しかし悪意ある者が設置する偽アクセスポイント(AP)による中間者攻撃の危険性や，設置したまま放置され管理が放棄されてセキュリティ的に看過できないAPの存在が指摘されている。本論文では「ダミークライアント」と呼ぶ試作装置をフリーWiFi接続サービス提供エリア内に配置し，APの識別情報 (SSIDビーコン)や信号強度(RSSI)を継続的に監視することでこれらの問題に対する現実的な解決策を提案する。また提案システムの動作実績について併せて報告する。

3-093

雨水利活用のためのIoTデータ収集最適化方式

◎飯田晃浩・笠井利浩・北上眞二（福井工業大学）

離島において雨水の利活用を促進するためには，地域の雨量や雨水の利用状況に関する多種多様なデータを収集し，その分析結果に基づいて雨水貯留量を決定して初期雨水除去などを制御する必要がある．しかし，離島においては，データ収集のためのネットワーク帯域不足とシステム稼働に必要となる電力確保が課題となる．本稿では，これらの課題を解決するために，省電力通信技術のLoRaWANを利用する場合に，収集するデータの変化に応じてデータ収集間隔やデータキャッシュ量を自律的に調整するIoTデータ収集最適化方式を提案する．

3-094

超スマート社会実現に向けたデータ活用による異種のシステム間連携に関する研究

◎田口智也・貝原俊也・藤井信忠・國領大介（神戸大学）

人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」実現に向け，IoT 技術の発展に伴いリアルタイムかつ多種多様なデータの収集・解析が可能となり，「サイバー空間」と「フィジカル空間」を高度に融合させた取組が進んできた．新たな社会形成には，分野や地域を超えた異種の複数のシステム間の連携協調ならびに新しい価値創出が求められており，我々はIoT 技術により取得した多種多様な大量のリアルタイムデータの利活用に着目してきた．本発表では新型インフルエンザ対策を例として，計算機上に構築した仮想都市にて，異分野間でのデータ活用ならびに連携を考慮した感染拡大防止対策を立案し，その有効性について検証する.

3-095

IEC 61850テレコンシミュレータによる給電情報伝送システムの伝送量に関する基礎評価

◎小久保翔太・上田紀行・大谷哲夫（電力中央研究所）・田中克郎・平林大樹（電源開発）

電力会社ではこれまで，発電所やダム等を遠隔監視制御するための給電情報を伝送する通信網に，HDLC方式やCDT方式を用いてきた。近年，これらの伝送方式からIP伝送技術を用いた通信網への転換が推進されている。また，遠隔監視制御を行うための国際規格として，IEC 61850が国内外で普及し始めている。そこで，本論文では，電力会社で一般的に利用されており，光回線よりも狭帯域である1.5 Mbpsインタフェースを具備したマイクロ波無線設備を考慮し，今後，給電情報がIEC 61850準拠となった場合においても給電情報が伝送できるか伝送量の観点から行った基礎評価について報告する。

3-096

階層型メタデータによる空間情報連携方式の検討

○坂入威郎（三菱電機）

本研究では，階層型メタデータを用いた空間情報連携方式について述べる。階層型メタデータはRDF（Resource Description Framework）で定義し，システム毎に管理されるデータのメタ情報を一元管理し，データアクセスを効率化することを目的としている。本稿では，自治体に関連するデータを事例にとして挙げ，データ連携の流れについて示している。

3-097

再帰型深層学習によるカオスモデリングおよび定量評価

○清水能理（八戸工業大学）

深層学習（ディープラーニング）は機械学習から発展したの手法であるが，ネットワーク構築や多くの変数の決定など，試行錯誤部分が膨大である。近年，従来のニューラルネットワークを改良して作られたディープラーニングの登場により，パターンマッチング研究が盛んにおこなわれている。しかし，ニューラルネットワークは予測やモデリングに活用されているのに対し深層学習はあまり活用されていない。よって，時系列データに対する深層学習が注目されている。今回は深層学習をカオスモデリングに使用することで，これまでのニューロモデルと，精度や安定性を比較し，深層学習の時系列データへの活用の可能性を考察する。

3-098

デイープラーニング法を使った地域伝統音楽(津軽三味線)保存用自動採譜装置の研究

○小坂谷壽一・川守田礼子・花田一麿（八戸工業大学）

地域伝統音楽の継承は古来より口伝が主であった。この為，時を経る毎に次第に正確性が失われ，いわゆる正調節の保存が年々難しくなってきている。最近，次の時代を担う若年層演奏者に口伝ではなく，譜面として正確に記録する事が，伝統芸能継承者などより強く望まれている。今回，弦毎にピックアップマイクロフォンを備えたエレクトリック三味線と，この音源から譜面を自動的に作成するデイープラーニング方式自動採譜装置を開発した。 本研究では，音源の解析処理～譜面の記録化に関する基礎技術を確立し，今後，譜面の無い様々な楽器の自動採譜にも応用展開を図る予定である。

3-099

コンクリートクラック情報の抽出の一手法

◎梶岡聡貴・村木佑太・西尾孝治・小堀研一（大阪工業大学）

コンクリート建造物は劣化などによりクラックが発生し，放置するとコンクリート建造物の崩壊につながる危険性がある．そこで本研究では，クラックの自動検出の一手法として，ディープラーニングを利用したクラック検出を提案する．提案手法では，強調したコンクリート表面の画像からクラックの領域を切り出した画像を訓練画像とし，手動でクラックの領域を指定した真値画像をアノテーション画像とすることで，独自のデータセットを作成する．そして，ディープラーニングのネットワークの一種であるFCNにより，未知のコンクリート壁面の画像からクラックの領域を推定する．また，推定後は画像処理により角度に応じたクラックの幅を算出し，高精度の検出を実現する．

3-100

ニューラルネットワークモデルによる特異地域の抽出

○坂本憲昭・森 博美（法政大学）

人口移動や事業所数の統計データ分析において，特異地域の抽出は，自治体等の施策や街づくりの指針において有用である。これまで分析手法としてクラスター分析や数量化4類などを用いてきた。ここで最近の著者らの研究では，小地域における転入人口の流入ポテンシャルを算出しているが，説明変数22，地域数2300であり従来手法の適用では困難を極めている。変数が多い場合に多重回帰や主成分分析等を用いるが，小地域の場合には埋もれた変数が重要な場合があり，変数の取捨選択には慎重を要する。そこで本稿は数理モデルがないことから，すべてのデータで階層型ニューラルネットワークモデルを構築し，その学習結果において誤差が大きい地域を特異地域として抽出する手法を提案する。

3-101

畳み込みニューラルネットワークを用いた熱電併給システム運転計画手法

◎小野哲嗣・河村 勉・中村亮介（日立製作所）

熱電併給システムの運転計画を高速で生成するため，最適運転計画の特性を学習させた機械学習モデルを用いた運転計画手法を開発を進めている。本研究では，蓄熱槽を有する熱電併給システムの運転計画の高精度化のため，電力・冷水需要の時間変化の特徴量を学習できる畳み込みニューラルネットワーク（CNN）を用いた。最適化計算により生成した運転計画を教師データとし，CNNを用いて運転計画を生成した結果，最適化計算の運転計画に対する平均誤差は2.3%以下となり，多層ニューラルネットワークの平均誤差10.1%以下に比べて精度が向上することを確認した。

3-102

Deep Learningの出力根拠説明による電力需要予測への適用検討

◎関段友哉・石橋直人・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

近年，Deep Learningの研究が進み，様々な分野への応用が増えてきている。一方，Deep Learningで用いられる多層のニューラルネットワーク(NN)は，出力の根拠説明ができないことから，安全性が求められる分野に適用し難い問題がある。 著者等は，従来型の3層の階層型NNの構造の最適化や，出力の説明方法を提案し，実システムに適用してきた。また，提案手法を，ReLU関数を用いた中間層が2層以上の多層NNに拡張し，出力の根拠説明，及びモデルの構造自動決定が可能なことを確認した。本稿では，本手法を翌日最大電力需要予測に適用し，運用者の感覚と近い説明結果を得られたのでこれを報告する。

3-103

プレイアウトと深層学習を組み合わせた囲碁アルゴリズム

○伊藤 雅（愛知工業大学）・伊藤有人（Hamee）

プレイアウトと深層学習を組み合わせて少資源環境下で動作する囲碁アルゴリズムを構築する。ここで少資源とは1CPU＆1GPU程度で構成されるデスクトップPCをいう。 提案法では，Tree Policyの処理過程を省略し，ノード展開時にSL Policy Networkと同期させて，着手確率が高い有望手の上位20手のみをノード展開時に追加する。アルファ碁が提唱するRolloutによる勝敗は使わず，この部分を通常のモンテカルロ木探索と同様にプレイアウトを使用する。ノード評価値は一般的なUCB1値ではなく，アルファ碁が提唱するアクション値を採用する。 数値実験により提案法の統計的有意性を確認した。

3-104

クラスタリングを用いた進化的画像生成における遺伝子多様性評価指標の比較

○田村謙次（中央学院大学）

芸術的な要素を持つコンテンツの良し悪しは数値化することが困難なため，多くの場合，人間が評価を行うが，コンテンツの視聴や選択操作，同レベルの作品の良し悪しを比較するなどの負担が多く，それを軽減することが課題の一つである。我々はこれまで，GE(Grammatical Evolution)に色彩調和論や美度，個体間の遺伝子列の多様性を指標としたクラスタリングを用いて，個体の多様性を維持する手法の研究を行ってきた。本研究では，遺伝子列の多様性評価指標であるドットマトリックス，Levenshtein距離，スミス-ウォーターマンを用いたクラスタリングを行う手法を提案し，その評価を行った。

3-105

機械学習による野生ジカ捜索方法の検討

◎小笠原 駿・三橋龍一・三澤顕次・佐々木正巳・青木由直（北海道科学大学）

北海道で増加が著しいエゾシカは環境や生態系への影響，更には作物被害・交通事故の一要因として深刻な問題である。しかし，効率な対策方法が無く，様々な制限・狩猟者数の減少によって現行の手法も頭打ちであり，具体策が必要とされている。 そこで，エゾシカを効率的に見つけるためにドローンや画像処理を用いて捜索を行い，狩猟効率向上の検討を行った。結果として背景差分などの画像処理によりカメラから50m程度であれば比較的安定した発見が可能となった。また他の用途として，人・クマの発見による危険予測やエゾシカ誘導目的での活用にも転用可能である。本研究は危険と隣り合わせである山林の安全と狩猟効率を向上させ，エゾシカの適切な個体調整に繋げることを目的としている。

3-106

リングオシレータPUFに対する階層的進化戦略を用いた解析手法

◎梅田大知・野崎佑典・吉川雅弥（名城大学）

電子機器の模造品被害が問題になっている．そこで，模造品対策として，半導体の物理的な製造ばらつきをIDとして認証に利用する物理的複製不可能関数（PUF）が注目されている．しかし近年，PUFの認証IDを複製するモデル化解析の脅威が報告されている．また，我々はこれまで，遺伝的アルゴリズムを用いたモデル化解析手法を提案してきた．PUFの安全性評価のため，より効率的な手法について検討することは非常に重要である．そこで，本論文では，これまでの研究をベースに新たな解析手法を提案する．提案手法では，モデルの修正処理を導入することでモデル化精度を改善する．また，評価実験により，提案手法の有効性を示した．

3-107

ニューラルネットワークPUF向けアービター回路の実装と評価

◎柴垣和也・野崎佑典・吉川雅弥（名城大学）

人工知能（AI）技術の発展に伴い，AIのエッジコンピューティングでの利用が期待されている．一方で，半導体市場の5%は偽造品と言われており，半導体の偽造品被害は深刻である．そこで，回路規模に厳しい制約があるAIエッジ機器に適した半導体の認証技術として，ニューラルネットワーク向け物理的複製不可能関数（NN PUF）が報告されている．NN PUFでは，NNの伝搬時間をアービター回路により検出し，それに基づいた固有のIDにより認証を行う．しかし従来のNN PUFは，NNの入力によってはアービター回路に値が伝搬せず，伝搬時間差を検出できない場合がある．そこで本研究では，どのような入力に対しても動作可能な新たなNN PUF向けのアービター回路を提案する．そして，評価実験によりNN PUFの性能を評価し，提案アービター回路の有効性を示す．

3-108

定常状態におけるニューラルネットワーク制御のオンライン・オフライン融合型学習法

◎森田昌一・黄 慶九・森下明平（工学院大学）

ニューラルネットワーク制御は，学習によって制御対象の特性を獲得できるため，高精度な位置決め制御に期待されている。ただし，特性が変わると再度の学習をしなければならず，実時間制御に向いていないという欠点がある。そこで，特性の変化に対して学習するオンライン学習法とオンライン学習法によって獲得したパラメータを利用するオフライン学習法を融合させたオンライン・オフライン融合型学習法の提案を行い，サーボモータの位置決め制御を用いて，提案手法の有効性を検証した。本研究では，制御対象のパラメータの値と定常状態で負荷イナーシャの値を変更した場合におけるオンライン・オフライン融合型学習法の有効性を検証する。

3-109

仮想現実での直接教示によるロボットの動作獲得

◎徳久龍之介・田中大介・眞鍋知久（新居浜工業高等専門学校）

ロボットに複雑なタスクを実行する動作を獲得させるには強化学習によるアプローチが有効である。強化学習の初期軌道を直接教示によって決定することで効率的に学習することができる。しかし，実機による直接教示は機械的な摩耗によって実機の故障する可能性があり，教示できるロボットの大きさにも制限がある。これらの問題を解決するためには仮想現実空間上の仮想ロボットに対する直接教示が1つの解決策となり得る。そこで筆者らはUnityとGazebo を統合したシステムで仮想ロボットに直接教示できるシステムを開発し，仮想現実空間で決定した軌道に対して強化学習が有効に機能するかを検証したのでその結果について発表する。

3-110

自己組織化マップを用いたごく狭い地域における暑さ指数と気圧の予測

宅野将司・○権田英功・宮田仁志（米子工業高等専門学校）

近年，高温・大雨などといった異常気象がごく狭い地域で頻繁に発生している．特に夏は連日猛暑日となり熱中症患者が多発している．熱中症に関する情報の開示やそれが起こりやすい状況の予測の必要性が高まっている．また，天候の急変に連動し気圧の変化も激しくなっており，喘息患者の発作が問題視されている．POTEKAと呼ばれる小型気象計を用いたごく狭い地域の気象データをリアルタイムで共有可能なネットワークのシステムを有効活用し，観測された暑さ指数と気圧のデータから，高度な知識を必要とせず地方自治体等でも新たな資金投入なしに適用できる手法として注目されている自己組織化マップを用いた時系列予測を検証した．

3-111

改良型MaMeMiフィルタを用いたR波検出

○岡井貴之・大屋英稔・星 義克・平田祥悟（東京都市大学）・中野和司（電気通信大学）・山口芳裕・五十嵐 昂（杏林大学）

心電図は，心筋の電気的活動を示すものであり，心電図から心拍などの情報を得ることが出来る．特に，正常洞調律におけるR-R間隔の変動は，自律神経の緊張状態を反映していると考えられている．そのため，R波の検出についてこれまでに多くの検出アルゴリズムが報告されている．本稿では，先行研究で提案されているMaMeMiフィルタを改良し，従来のR波検出アルゴリズムの前処理として加えることで，より精度の高いR波検出アルゴリズムを提案する．また，MIT-BIHデータベースを用いて検出アルゴリズムの精度を検証し，提案手法が従来手法より高精度の識別性能を持っていることを確認した．

3-112

SegNet Basicに基づく顔領域分割の精度向上に関する検討

◎古川貴大・関 弘翔・細野裕行（日本大学）

セマンティックセグメンテーションによる顔領域分割は表情認識や顔認証，機械読唇などの様々な研究の基礎となる重要なタスクである．本報告ではSegNet Basicアーキテクチャに対してDilated Convolution Blockやショートカット結合の効果的な適用による顔領域分割の精度向上に関する検討を行い，評価実験を行った．

3-113

HMM遷移ネットワークを用いた人間の行動要素抽出手法-人間の行動データを用いた場合の行動要素抽出の検証-

◎井上 佳・道木加絵（愛知工業大学）・橋本幸二郎（公立諏訪東京理科大学）・道木慎二・舟洞佑記（名古屋大学）・鳥井昭宏（愛知工業大学）

筆者らは膨大な人間の行動データから統計的処理に基づき再現性の高い人間の行動モデルを生成する手法を提案してきた。従来手法では設計者の知識に基づき観測データから行動の最小単位となる行動要素を抽出してきたがこの手法では抽出される要素は人依存になる等の問題点があった。そこで観測データから再現性の高い行動要素の自動抽出を目的としHMM遷移ネットワークを用いた行動要素の自動抽出手法を提案している。本発表では，シミュレーションソフトを用いて実際に人間の運転動作時のハンドル操作を計測し，観測時系列データから再現性の高い行動要素をHMM遷移ネットワークを用いて抽出する実験を行い提案手法の有用性について検証した。

3-114

脳波データ分析による脳波変化に対するモチベーションへの影響の基礎検討

◎山本堅司・浦野昌一（明治大学）

本稿では，ある行動や刺激をする前後における脳波を測定し，周波数スペクトル解析によって行動や刺激の結果としてあらわれる特徴量を捉えることを考える。この特徴量をみることにより，どのような行動がモチベーション向上に効果的であるのか検討する。 筆者らはこれまでの研究で，脳波計測装置によっては，脳波データを取得する際に，目の動きなどの外的な要因により計測波形にノイズが多く含まれていることを確認した。そこで，本稿では，外的要因の影響を考慮し目を閉じた状態で音による刺激に対する脳波の変化がモチベーションにどのような影響を与えるのか検討する。

3-115

患者の足部体表温の温度変化計測による健康状態推定

○津吉 彰（神戸市立工業高等専門学校）

糖尿病の患者の中には手や足先まで十分に血液が循環せず，壊死してしまう等の症状が現れる場合もある。体温と血流との直接的な因果関係は無いため，血液循環の確認のため，逐一患部の温度を測定する必要がある。そこで筆者らは放射温度計を用いて簡便に温度を測定する方法として急速暴露法を提案した。その手法の確立のため，足部の保温材除去後の放熱過程を表すモデルを仮定し，数値計算により放熱時の温度低下の過渡現象について解明した。その際，患部の炎症がある場合や，患部につながる血管での血行不良がある場合の体表温の変化が正常時と異なる事が分かったので，足部の体表温度の過渡変化を計測する事に異常を検出できる事を理論的に明らかにした。

3-116

ヒストグラムの構成比変化に基づく音声データの改ざん検知方式

◎中山雄也・木許雅則（日本工業大学）

音声データは編集が容易であるため，第三者の手によって改ざんを加えられる恐れがある．改ざんを検知する手段として，コンテンツをブロック分割し，そのブロックごとで電子透かしを施す方法がある．筆者らは以前の報告で，音声データの振幅値から生成したヒストグラムに対して埋め込みを行う，ヒストグラム移動を応用した埋め込み手法を提案している．しかし提案法では，透かしの埋め込みにより生じるヒストグラムの規則性が比較的分かりやすく，透かしの存在を第三者に認識される恐れがあった．本稿では，透かし情報の隠蔽により効果的な，ヒストグラムの構成比変化に基づく埋め込み手法を提案する．

3-117

指尖容積脈波による動画像の自律神経系への影響解析

八子真澄・石元達也・○水谷賢史（東海大学）

人間は色から評価性，活動性，力量性の感情を受け取る．3つの精神的感情を伴う色彩刺激や配色を使った映像は得られる心理的効果は高い．本実験では自然映像を使って視聴覚動画刺激を作成し，更に再生スピードを変更させた時に自律神経へどのような影響を及ぼすのか，指尖容積脈波を用いてストレス指標であるLF/HFを求める事で解析した．安静刺激の音や画像の再生速度を変更すると提示中のLF/HF値が上昇するが，想起閉眼時には平常へと戻る．不快刺激では再生速度を遅らせた場合の提示中や再生速度を変えた場合の想起閉眼時にLF/HF値が上昇する．視覚からの刺激は再生速度を遅らせると不自然に感じるのかもしれない．聴覚からの刺激は再生速度を速めると不快に感じるものと推察する．

3-118

脳血流計測を用いたマインドワンダリング検出

◎佐藤哲也・伊東嗣功・石井雅樹・堂坂浩二（秋田県立大学）

本研究では,低コスト4chNIRSデバイスを開発し,MWの解析を行った. 近年,脳活動から得られる情報を基に,外部とのインタラクションを行うインタフェースとしてBCI(Brain-Computer-Interface)の開発が進んでおり,BCIを用いた脳機能計測が盛んに行われている.また,従来のBCIは集中状態にある脳を計測し,集中状態とMW(Mind Wandering)を判別していなかった.つまり,MWを判定することによってBCIの精度向上が期待できる.実験の結果, MW生起1秒前から酸素化ヘモグロビン濃度の上昇傾向及びMW時の反応速度の上昇が計測された.従来報告と多少の差はあったが,整合性のある結果を得られた.さらに,開発したNIRSデバイスはwearable化可能なため,漫然運転を未然に防ぐシステム開発に繋がると期待できる.

3-119

心拍センサによる情動の評価

◎山野成章・松本彩野・渕上昌彦・阿部拓海・冬爪成人・石山 仁（東京電機大学）

近年，Iot(Internet of Things)機器が普及しており，さらにIot機器に各種センサを搭載し，人間から様々な情報やデータの取得が行われている。本研究では，心拍センサと小型マイコン基盤を用いて脈波情報を取得し，それを用いた情動の予測を行うシステムを構築することを目的としている。

3-120

IoT機器による生体情報モニタリング

◎小川和真・土屋 彬・對馬一希・冬爪成人・石山 仁（東京電機大学）

近年IoT(Internet of Things)が注目されており，機器の廉価化も進んでいる。また，IoTを利用したシステムの1つとして，ヘルスモニタリングが注目されている。そこで本稿では，マイコンキットM5Stack，IoT可視化プラットフォームThingsBoard，心拍センサを利用した，生体情報の可視化システムを提案する。 心拍情報は心拍変動解析を行い心理状態を得た。それと同時に，Wi-Fiのアクセスポイント情報をもとにした位置測位技術により位置情報を取得した。それらの得た情報をもとに，IoT環境により可視化を行った。

3-121

触覚・視覚刺激を併用した心拍フィードバックシステムが心拍変動に与える影響

◎黒澤遥太・大岩孝輔・野澤昭雄（青山学院大学）

ストレス管理と共に自律神経機能の調整は健康維持において重要である。自律神経系は心臓活動や呼吸活動などを制御している一方で，生体外部からのリズミカルな刺激によって生体内部リズムは引き込まれる。これに類推を得て我々は触覚・視覚刺激を併用した心拍フィードバックシステムを開発した。本研究では，本システムが与える生理的影響の中でも特に自律神経系活動の指標である心拍変動に焦点を当てて評価を行った。脈波間隔に対し延長させたタイミングで触覚もしくは視覚刺激を与えることで，心拍R波間隔の延長及び心拍変動スペクトルの高周波成分の上昇が確認され，副交感神経系活動に影響を与える可能性が示唆された。

3-122

血行力学動態と顔面皮膚温度分布に基づくストレス対処様式の判別

◎一箭大貴・大岩孝輔・野澤昭雄（青山学院大学）

血行力学動態の変化と顔面皮膚温の変化には遅延時間が存在すると考えられる。本研究では，顔面皮膚温度と血行力学動態の遅延時間を考慮し，顔面皮膚温度分布からストレス対処様態に関連する特徴量の抽出し，それに基づく，ストレス対処様式の判別を試みた。その結果，遅延時間が10s時に判別率が最も高くなった。また，ストレス対処様態ごとの特徴マップにおいて，能動的対処と受動的対処で鼻部に共通の特徴が見られた。さらに受動的対処において鼻部以外の領域に特徴が見られた。

3-123

血行力学的パラメータに基づく眠気推定モデルの導出

◎正木彩花・大岩孝輔・野澤昭雄（青山学院大学）

居眠りや漫然運転を要因とした自動車死亡事故が多発している. これに対して, 予防安全を目的としたドライバの覚醒度低下の予兆を捉えるシステムの研究が行われてきた. 坂東らは眠気レベルと自律神経系活動の関連について顔面皮膚温と血行力学的パラメータを明らかにした.本研究では血行動態パラメータに基づく眠気レベル推定法の開発を目的とし, 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて,血行力学的パラメータに基づく眠気レベルの推定モデルの導出を試みた. 導出したモデルの判別率は97.8%であった. この結果, 被験者間での眠気レベル推定モデルを導出することが可能であることが明らかとなった.

3-124

単純計算課題解答時における計算数とまばたきの関連に関する検討

◎中野隼輔・景山陽一（秋田大学）

本研究では，QOLの客観評価法の確立を目的とし，評価に有用な特徴量を選定する。就職適正検査などに用いられる内田クレペリン精神検査では，運動・飲酒などのストレスが負荷された場合において，局所的に作業量が低下するなどの傾向が有意に表出することが報告されている。この変化と関連のある特徴量を選定することができれば，対象者へのストレス負荷が発生したかを間接的に判断することが可能となり，QOLの客観評価法の確立に寄与すると考える。そこで本稿では，特徴量の1つとしてまばたきに着目し，内田クレペリン精神検査に従事した場合におけるまばたき回数と計算解答数の相関係数を算出し，関連について調査した。

3-125

リアルタイム発汗モニタリングシステム

◎RUI GONG・佐藤里恵・大畑豊和・佐藤洋平・田部井賢一・村越英樹（産業技術大学院大学）

This is a research about sweating and dehydration. A system that we designed for online real-time monitoring of the body's dehydration status by using a temperature sensor and a humidity sensor to measure the amount of sweat in a sectional area, and estimating the amount of sweating throughout the body by calculating the surface area of the skin. Dehydration is prevented by real-time feedback from the system that can also give a matched reference amount of drinking water according to different ages. This paper mainly describes the design and composition of the system aboved.

3-126

生体リズムを基にした時間管理システムの提案

○佐藤里恵・RUI GONG・大畑豊和・佐藤洋平・田部井賢一・村越英樹（産業技術大学院大学）

人は生体リズムと呼ばれる固有のリズムを持っている。 この固有のリズムは，地球環境や自身の生活行動によって構成される生活リズムに同調することで，地球の自転と同じ24時間周期に調整している。 加齢により同調機能が低下すると，生体リズムを生活リズムに同調させることが困難となり，睡眠障害やうつ病に掛るリスクが増大，ひいてはアルツハイマー型認知症発症のリスクを高める。 そこで，同調機能が低下した高齢者を対象とした生体リズムと生活リズムを同調すりあわせさせるための時間管理システムを提案する。

3-127

肌領域の彩度に着目したストレス計測手法に関する検討

◎佐藤 翔・高橋 毅・石沢千佳子・景山陽一・伏見雅人（秋田大学）・高橋富士雄・猿田 宙・宮崎 大（日立超エル・エス・アイ・システムズ）

近年，人生の質や生活の満足度を示すQOLの重要性とその維持の必要性が認識されている。また，人間はストレスを抱えた状態が続くと，心身に悪影響を及ぼし，QOLが低下する。このため，個人のストレス状態を定期的に把握することは，QOL向上に有用と考える。ストレスを計測する手法として，唾液アミラーゼ濃度の計測などが知られている。しかしながら，日常的にストレス状態を把握するためには，より簡便な計測手法が望ましいと考える。そこで本研究では，被験者9名を対象とした暗算によるストレス負荷実験を行い，顔画像から対象者のストレス状態を判別する画像処理アルゴリズムについて検討を加えた。

3-128

物質から人間までの進化を実現した生化学ソフトウェアモデルⅣ

○吉井清明・井上 浩（セイフティーワールド）

有機物質から人間までの進化を導いた駆動力として生化学ソフトウェア，および，駆動力のコアとして循環論理の評価システムが存在するとの仮説を立て，2003年から電気学会で発表してきた。 このたび，エピジェネティクスの文献により，上記主仮説と共に発表していた3つの小仮説が肯定された。 1．遺伝子には書き込みやすい遺伝子とそうでない遺伝子が有る 2．制御遺伝子には獲得情報（発表では動形質情報）や生化学ソフトウェアが記憶されている 3．獲得情報やバイオソフトを記憶する場所はジャンク（発表ではジャンクRNA）の領域であるこの結果，本仮説はバーチャルから，リアルなモデルに近づいた。 今回は，①工学的分析が期待される進化メカニズム，②進化の新たな分類と定義，③循環論理の評価システムなどについて報告する

3-129

生物進化の駆動力となったバイオソフト仮説

○井上 浩・吉井清明（セイフティーワールド）

生物進化は従来，遺伝子が絶対的な存在とみなされていたが，実際には生物化学的なソフトウェア，とりわけ評価システムが駆力になってきたとの観点から研究してきた。今回は新たに7つの仮説を立てたので報告したい。

3-130

ケーブルを搭載した自律移動ロボット経路計画 -短い経路を生成するための評価関数の検討

◎大浦与輝・道木加絵・鳥井昭宏・元谷 卓（愛知工業大学）・舟洞佑記・道木慎二（名古屋大学）

本研究ではケーブルを搭載した自律移動ロボットを用いたEVやPHEVの自動充電システムの構築を目指しており，これまで筆者らは時間制約付きヒューリスティック探索を用いるケーブルの曲率を考慮した自律移動ロボットの経路計画手法を提案してきた。従来手法ではロボット移動時のケーブルの負荷を考えLook-upテーブルによる移動制限のみならず評価項目として曲率変化量を加えていた。そのため，生成された経路が曲率変化量を重視し，必要以上に長い経路となった。そこで，本稿では従来の曲率変化量の項目を削除した新評価関数を検討し，これと従来評価関数をシミュレーションによる経路生成実験によって比較した。

3-131

草刈ロボット用首振り機構の動作評価

◎鈴木涼汰・内⽥敬久（愛知⼯業⼤学）

筆者らは，小型の遠隔操作型草刈ロボットAMR-D01を開発してきた．しかしながら，AMR-D01は小型であるため刈幅が狭く，長時間の作業を要していた．そこで刈幅増加を目的として草刈ロボット用の首振り機構を提案し，シミュレーションにより評価をしてきた．本論文では製作した実機を用いて動作軌跡と刈幅の特性を評価した．理論と実機の軌跡に進行方向において0.07 mの差異があった．また，刈幅に関しては理論上0.620mに対し実機では0.640mとなった．これは，実機の組み立ての誤差や遊び，一部組み付けの変更をしたためである．そのため，実機のリンク形状を考慮したシミュレーションで比較するとほぼ一致する結果となり，刈幅増加を実現した．

3-132

モジュールロボットの自動接続手法の提案

◎加藤久弥・内田敬久（愛知工業大学）

現在までに著者らは，MMSと名付けたモジュールロボットの研究を行ってきている．使用環境に応じて組み換えて駆動させるが，現在手動で各モジュールの接続を行っている．モジュールの自動脱着が可能になれば，環境に合わせて形態を変えることができ，環境適応性が向上すると考えられる．本論文では初期段階として2次元でのロボット接続動作について提案した．2段階でロボットを接近，接続させる．シミュレーション上でロボットを動かし，接続待機位置に対して約1㎝，約1度の精度で到達することがわかった．しかし，2段階目としては精度不足であり，誘導精度向上に向けて別途センサによる精密な誘導が必要であることがわかった．

3-133

歩行者のパーソナルスペースを考慮した自律移動ロボットの移動制御

◎張 斌（神奈川大学）・金子正秀（電気通信大学）・林 憲玉（神奈川大学）

ロボットが移動する際に障害物を避けるが，歩行者は障害物と違って，避けられる必要だけでなく，不快感を与えないことも要求されている。本研究は歩行者のパーソナルスペースを考慮し，複数の個人が独立に行動する場合と複数人が同時に行動する場合のパーソナルスペースの形成過程をモデル化し，ロボットが移動する途中に，パーソナルスペースにできるだけ入らないことで，周りの歩行者に不快感を与えないようにする。やむを得ずパーソナルスペースに入った場合は，一言を謝ることで，歩行者の不快感を減らすようにする。社会的に思いやりを持つ機能をロボットに備えることで，ロボットの人間の日常生活環境への普及に役に立つことを目指す。

3-134

球輪装備車両の小型化と直進性能の改善

◎中村澪雄・川村 武（北見工業大学）

本研究室では3つのゴム球(球輪)を駆動して，その場での方向転換や全方向への並進運動などできる球輪装備車両を製作し研究を進めている．球輪装備車両は球輪を3つ正三角形の頂点上に配置して，それぞれの球輪を主にDCギアドモータ，オムニホイールにより駆動している．この3つの球輪の駆動力のベクトル合成により車体は走行する．球輪装備車両はオムニホイールを用いているため，オムニホイールと球輪の間で滑りが生じる．これが原因の一つとなり，車両は軌道を外れて走行することがある．そのため，ロータリーエンコーダにより各球輪の回転数を測定し，PI制御を行う．これまで実用性の向上のため，フレームサイズの小さな車両を作製して，8方向の並進運動の走行性能の改善を行った．ここでは，左右及び斜め45度方向並進運動より前後並進運動の軌道追従性能が悪く改善が望まれた．そこで本研究では，この前後並進運動の軌道追従性能を向上させるべく球輪の一つに新たな駆動輪を追加した．

3-135

歩行者がロボットの進路方向を認知しやすくするためのロボット動作の一提案

◎新井雄介・横田 祥・山田和明・松元明弘（東洋大学）・中後大輔（関西学院大学）・橋本洋志（産業技術大学院大学）

本研究の目的は，人とサービスロボットがすれ違う場面で，人がロボットの進行方向を容易に認知できるようになる移動ロボットの設計指針を見出すことである．その手順は次の通りである．まず，①人は，対向者のどの身体部位に注目しているのかを明らかにし，②その身体部位の動きの特徴を調べる．次に③その身体部位を非ヒューマノイド型ロボットの外形に持たせるために，人のように感じるロボットの外形「スタティックデザイン」を見出す．そして，④その擬人化した③の部位の動き「ダイナミックデザイン」を②を元に設計する．なお，①~③は我々の研究で知見を得ていることから，特に本稿では④のロボットの動きについて1つの提案を行う．

3-136

産業用ロボット向け自由姿勢部品の姿勢分類方法

○永谷達也（三菱電機）

センサ技術の向上に伴い，産業用の3Dビジョンセンサを利用したロボットシステムの提案が増加している。自由姿勢部品の取扱いは生産現場で求められ続けてきた技術であり，その解決策が広く研究開発されてきた。その中でも，3Dビジョンセンサによる部品位置姿勢の認識と垂直多関節型ロボットによるハンドリングは，特に研究開発が活発な分野である。しかし，自由姿勢部品を取扱うロボットシステムの立上げは複雑であり，その支援技術が生産現場では求められている。本稿では，自由姿勢部品の姿勢分類方法と，姿勢分類毎の把持方法の設定における制約条件の付与方法について報告する。

3-137

運転の振り返りを促すロボットシステムの評価

◎相川裕哉・加納政芳（中京大学）・ジメネスフェリックス（愛知県立大学）・早瀬光浩（豊橋創造大学）・田中貴紘・金森 等（名古屋大学）

近年，高齢者ドライバの交通事故率は年々増加している。この問題に対し，高齢者が自身の運転について見直すことや運転を振り返る機会が必要であると考える。運転の振り返りの機会を提供するために，ロボットを用いる研究が行われている。本稿では，ロボットを用いた運転の振り返りにおいて，複合現実を用いる有効性を確認するために，映像提示デバイスによる差異と映像の有無による効果を検証した。実験では，映像を提示するデバイスとして複合現実とタブレットのそれぞれを使用した群と，ロボットのみの群の三つの群を用意した。実験の結果，運転の振り返り映像を，複合現実を用いて提示することが重要であることが示唆された。

3-138

Semantic Segmentationを活用した区画線検知による走行車線別カメラ画像分類手法の検討

○当麻英梨子（奈良女子大学）・五十嵐雄治・亀井克之・伊川雅彦（三菱電機）・城 和貴（奈良女子大学）

本稿では，カメラ画像を用いて，特定の道路地物の有無にかかわらず，走行車線別に分類する手法を検討し，車線幅が狭く，区画線が一部消えているような2車線以下の一般道における高精度地図生成を目指す。今回，機械学習の1つであるSemantic Segmentationの利用を提案する。本提案の実現性を検証するため，予め用意されているSemantic Segmentationの正解データに対して，画像処理を行うことで区画線を検知する。得られた検知結果に基づいて，車両の走行車線及び隣接車線を抽出し，カメラ画像データを走行車線毎に分類できるか検証を行う。

3-139

路面画像と複数のオプティカルフローセンサによるオドメトリ

◎内田圭祐・横田 祥・山田和明・松元明弘（東洋大学）・中後大輔（関西学院大学）・村松 聡（東海大学）・橋本洋志（産業技術大学院大学）

本稿では，路面画像と2つのオプティカルフローセンサを用いたオドメトリ手法を提案する．使用するオプティカルフローセンサは移動量をピクセル値で出力するため，この値に重みをかけ，実移動距離[m]を算出する．このため本手法は，重みを求めるキャリブレーションモードと，これに続く実測モードから成る．キャリブレーションモードでは，加速度センサと停止状態を用いて推定した距離と，オプティカルフローセンサの出力値を比較し，重みを決定する．実測モードでは，キャリブレーションモードで決定した重みを用いて，オプティカルフローセンサと地面画像を用いてオドメトリを行う．検証実験の結果，正しくオドメトリできたことを確認した．

3-140

ドライバの状態を考慮した注意喚起方式

◎土屋克典・清原良三（神奈川工科大学）

最近，自動運転技術の研究が盛んに行われているが，自動運転車両のレベルによっては，運転の権限移譲が必要となる．また普及には時間がかかるため，手動運転車両の安全性に関する研究も必須である．そこで，運転者の状態，車両の状態，周囲の状態といったコンテキストを活用しドライバに警告を与えるシステムを提案する．意味のある警告手法について評価検討を行う．

3-141

車載ECU更新向けデータ圧縮方式

◎林 敏生・清原良三（神奈川工科大学）

現在自動車におけるソフトウェア更新においてOTA(Over the Air)機能が開発されており，ユーザの待ち時間を最小限にするためにもソフトウェアの更新時間を最小限にすることが目標となっており，更新時間を最小限にするために差分更新技術が開発されている．ソフトウェア更新において差分が適用できない場合に対して更新時間を最小限にするためのデータ圧縮方式の提案．

3-142

自動／手動運転車両混在環境における交差点通行方式

◎大場大輔・清原良三（神奈川工科大学）

自動運転は人為的なミスによる事故を減らすことや，交通渋滞の緩和などが期待されている．自動運転と手動運転の混在環境下で如何に効率の良い交通流を実現するかが課題となる．混在環境下での交通流の改善完全を目的とし従来手法を改良する方式を提案し，シミュレーションで評価した。その結果を報告する。

3-143

障害物回避機能を有したシルバーカーアシスト制御について

◎井野雅之・大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

自立歩行が可能な高齢者が荷物の運搬や移動の補助としてシルバーカーが利用されている。杖に比べて安定した歩行が可能だが，シルバーカーを使用することによる転倒事故が発生している。事例として車輪が段差に引っかかったり，下り坂でシルバーカーが前方に進んだり，バランスを崩したりといった例がある。対策として段差や下り坂に対する製品が販売されているが，人や障害物を回避するときのアシスト制御について検討されていない。本報告では，実際のシルバーカーの動作を解析し，解析結果から障害物回避のシミュレーションとモデルによる動作確認を行なう。その結果を基に障害物に対するシルバーカーの回避アシスト制御について検討した。

3-144

片手駆動による直進走行可能な競技用車いす走行時の筋電位評価

◎熊谷真行・舘山颯斗（苫小牧工業高等専門学校）・宗方大地（長岡技術科学大学）・大橋智志（苫小牧工業高等専門学校）・塩野谷 明（長岡技術科学大学）

2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し，障がい者スポーツへの関心も高まっている。その中で車いすを扱う競技は多数存在し，競技で扱う車いすの構造や仕様は選手のパフォーマンスに大きく関係する。 様々な障がいに対応するため，片手駆動による直進走行可能な競技用車いすが開発された(1)。しかし，片手駆動と両手駆動の場合では，操作者の筋活動においても変化が生じる。そこで，本研究では駆動方法の違いで生じる筋活動の変化および特性を評価することを目的として報告する。

3-145

片手駆動車いす走行時における座圧と体軸変化の関係

◎舘山颯斗・熊谷真行（苫小牧工業高等専門学校）・宗方大地（長岡技術科学大学）・大橋智志（苫小牧工業高等専門学校）・塩野谷 明（長岡技術科学大学）

本研究で用いる車いすは，片手駆動走行が可能な車いす（以降，片手駆動車いす）であり，片麻痺者に対する移動手段を提供するために開発された．この片手駆動車いすは，片側に設置した2本のハンドリムを同時に操作することにより，直進走行を可能にする内部機構を有している(1)．本稿では，一般的な車いすの操作方法とは異なる片手駆動車いす操作における搭乗者への影響を，搭乗者の座圧と加速度センサーによる体軸の移動量から定量的に評価する．

3-146

A proposal of a measurement method for measuring physical aptitude of the elderly for assembling work

◎須田 聡・高見 愛・原内 聡（三菱電機）

製造業では，労働力の高齢化に伴い，高齢者に特化した，作業適性度評価のための身体機能の計測手法が必要である。本論文では，手指の巧緻性に対する計測手法としてペグボードテストを採り上げ，ペグボードテストにより，製造業の実際の組立作業に対する適性度の評価が可能であることを検証する手法を提案する。検証手法では，現場作業を想定し筆者らが考案した組立作業を行う。そして，ペグボードテストと組立時間の相関を算出し，組立作業に対する適性と手指の巧緻性の関係を評価する。本手法により，双方に有意な相関があれば，ペグボードテストが組立作業に対する適性度評価のための手指の巧緻性の計測手法として有用であると云える。

3-147

変電所内の砕石路面での巡視作業における歩行動作に関する検討

◎立松大輝・近藤伸哉・池浦良淳・早川聡一郎（三重大学）・杉本敏文（中部電力）

本研究では，変電所作業の中で人間の身体に負担を及ぼす可能性が高い砕石路面での巡視作業について取り上げた。砕石歩行による脚にかかる負担を，砕石路面を作成し，作業中に実際に使用している安全靴を履き，筋電図測定・モーションキャプチャを用いて，筋活動及び歩行フォームの違いについて評価を行った。

3-148

締め付け確認システムの開発

◎山口紘輝（関電工）

現状，盤内の端子台またはブレーカに電線を接続する際，「接続位置はあっているか，ビスに緩みはないか，締め忘れがない」の確認を複数人で行っているが，ビスの締め忘れや緩み等が原因で設備事故が起きている。そこで今回，ビスの締め忘れを確認できるプロトシステムを開発したので紹介する。

3-149

音源方向推定を用いた音源位置推定方法の提案

◎神田雄輝・内田敬久（愛知工業大学）

現在日本には軽度の難聴者も含めて聴覚障がいを持つ人が少なくない。しかし，障がいがある人に対して，まだ十分に対策が進んでいるとはいえない。特に人に危険が及ぶ場合の対策が必要である。そこで著者らは，危険音の音源方向を推定し使用者に伝達する音源方向推定装置「CASH-H」を提案し研究を行ってきた。本論文では，開発したCASH-Hによる2つのマイクの信号の時間差を用いて音源方向推定を行う。次に連続的な音源方向推定結果を用いて音源位置推定を行う方法を提案する。提案した位置推定方法に対して，実験的に位置推定精度を評価する。 実験的に位置推定精度を評価した結果，測定距離1mの近距離に対し誤差0.15mの精度を得ることができた。