一般講演

4-199

グラインダーの自動調整のための研磨力モニタリング

◎岡 直明（慶應義塾大学）

近年ものづくりの自動化が進んでおり，その背景としてものづくりの人手が減少している現状がある。この人手減少により熟練者の技術が消失してしまう可能性が存在する。それを防ぐためには，その技術をモーションコピーシステムによりデータ化し，未来永劫消えないものとして保存しておく必要がある。 本論文では，金属の板をダイレクトドライブモータを用いて研磨したときの，速度と研磨力の関係を検証し，研磨の自動化を目指す。この時，研磨するときの制御を速度制御として検証する。また，加えてモーションコピーシステムを用いて，熟練者の研磨の仕方をデータで保存し，研磨の自動化の手助けをすることを目指す。

4-200

可変構造弾性アクチュエータを用いた打撃によるボールの回転および軌道についての一考察

◎舛田博勇・安部義隆・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

近年，人間の動作を再現する研究は盛んに行われているが，アクチュエータの性能の限界により，瞬発的な力および高速動作を必要とする高負荷動作の再現は難しいとされている。本研究では，高負荷動作の一つとして回転を伴うボールの打撃について考える。高負荷動作を再現する機構の一つとして，高トルクおよび高速動作を可能にする可変構造弾性アクチュエータが提案されている。本研究では，可変構造弾性アクチュエータを用いた回転を考慮した打撃の解析として，ボールの回転および軌道について実験を行った。ボールの回転およびボールの到達距離はラケットの角度に関係することが確認された。

4-201

陸上短距離走選手の走行フォームに基づく2足ロボットの走行制御

◎扇谷祐仁・安部義隆・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

2足走行ロボットを研究することは，ロボットが人間に近い環境下において高速な移動を実現すること，および「跳ぶ」「蹴る」といったよりダイナミックな動作を達成することの一助になると考えられ，ロボットの活躍の場が広がると期待される。本稿では，より高速な走行の達成を目的とした。 2足走行ロボットの指令値生成は，倒立振子のような簡素化されたモデルに基づき設計したものや，ある評価関数について最適化することで導出したものが多い。そこで，本稿では人間の実際の走行フォームに基づき遊脚先端と重心位置の指令値を生成した。 陸上短距離走選手より取得した指令値を基に，シミュレーションではモータの性能下において最高3.40 m/sの速度で走行することが確認された。

4-202

通信遅延下における動作再現システムのむだ時間補償法の検討

◎南房航哉・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

人間動作を保存し再現可能な動作再現システムが提案されている。動作再現システムを用いることにより任意の場所，時間に人間の動作を再現することが可能になる。しかしながら，遠隔地での動作再現を行う場合，通信遅延による影響でシステムが不安定化する可能性がある。動作再現システムは力制御を含むことから，従来提案されているモデルベースの補償法を適用する場合，正確な接触環境のモデルが必要になる。しかしながら一般に接触環境のモデルを正確に得ることは困難である。そこで本稿では動作保存時の情報を用いた遅延補償法について検討する。本手法を用いることで，環境のモデルを用いることなく遅延補償を行うことが可能となる。

4-203

適応周期外乱オブザーバを用いた力制御

◎村松久圭・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

現在，産業の自動化が進み，高速・高精度・長時間の運用が可能な産業機械がその生産力を支えている。そして，より高精度な運動，より多様な運動を求め，モーションコントロールの研究は盛んに行われてきた。本研究ではその中でも，適切な力加減を実現する力制御の高精度化に着目する。産業機械に要求されるタスクの多くは繰り返しの周期運動である。しかし，周期運動は周期外乱を誘発し，その精度を劣化させる問題を有する。この問題に対して，周期外乱を推定・補償する適応周期外乱オブザーバがこれまでに提案されている。本研究では周期的な力制御を行うシステムに対して，適応周期外乱オブザーバを付与し，その外乱抑圧性能を向上させる。それにより，繰り返し運動を行う力制御の高精度化を行う。

4-204

FDTD法に基づく離散オブザーバの設計手法

◎武藤大貴・横倉勇希・大石 潔（長岡技術科学大学）

本論文ではFDTD法のLeap-Frogアルゴリズムをオブザーバに適用し, 状態フィードバックに用いることを提案する。FDTD法は数値積分をLeap-Frogアルゴリズムによって計算する手法であり, 電磁界解析などに利用されている。 提案手法によって離散化されたシステムは連続時間領域の微分方程式の係数をそのまま使用して離散方程式を構成するため, 物理的意味を明確にしたままオブザーバの設計を可能にしている。 従来法は計算時間が875μsであったのに対して, 提案手法は69μsで離散化が可能となる。

4-205

電動耕耘機における耕耘爪の速度制御のための突発外乱オブザーバ

◎多田武流・福井順一・宮崎敏昌（長岡技術科学大学）

耕耘機の爪を一定速度で制御することで,耕耘のムラを減らし,少ない回数で耕耘することができる。しかし耕耘爪は土の反力や,小石の影響によって速度が変動する。そのためそれぞれを周期外乱,突発外乱として補償する必要がある。 このうち,周期外乱については繰返し制御を用いて補償する方法が提案されている。 しかし,突発外乱が入力されたとき,繰返し制御は性能が劣化するため,より早く突発外乱のみを推定し補償する必要がある。 この問題を解決する方法として,突発外乱オブザーバとそれに基づく制御系が提案されている。 そこで,本論文では耕耘機の爪の駆動に適したS.DOBと速度制御系を提案し,数値シミュレーションにより有効性を確認する。

4-206

制御平衡点移動による射出成形機の高速力バランス制御

◎松井佑樹・大石 潔・横倉勇希（長岡技術科学大学）・森田 洋・堀田大吾（住友重機械工業）

近年，精密な成形に対する要求精度が高くなっている。精密な成形では型締時に金型接触面にかかる力バランスが重要となる。金型間を支える4 本のタイバーの長さを熱膨張を用いて微小に変化させることで力バランスを調整するタイバー温調が提案されている。しかしながら，冷却装置は実装が困難であるため，本研究では加熱のみを用いて力バランスを調整することで高速な力バランス制御を実現する制御平衡点移動法を提案した。従来法では収束時間が33分であったが提案法では20 分となり，提案法を用いることで収束時間が61%に短縮できることを実機実験により確認した。

4-207

負荷側オブザーバのノミナル剛性設計と入力修正を用いた柔軟マニピュレータのバイラテラル制御

◎中村尭子・下野誠通（横浜国立大学）

マニピュレータの遠隔制御方式の1つに，位置と力を同時に制御し，遠隔側の触れた環境の力触覚を伝達するバイラテラル制御というものがあるが，宇宙マニピュレータのようにアームが柔軟である場合，加減速時に振動が発生し，ロバストな制御が行えないという問題が生じる。本稿では，柔軟構造を任意の剛性に変化させ，アームの振動を抑制させる機能を持つオブザーバと，加わる外乱の影響を補償し，高精度な制御を可能とする入力修正をバイラテラル制御に適用する。また，二慣性共振系を用いて実験を行い，提案手法の有効性を確認する。

4-208

多関節運動における力-速度関係を用いた最大出力分布の推定法

◎藤代崇弘・下野誠通（横浜国立大学）

低侵襲で四肢の運動機能を評価する手段として，二関節筋の存在を考慮した機能別実効筋理論に基づく四肢機能評価法が注目を浴びている。この手法を用いれば，四肢の最大出力を幾回か計測することにより，その運動機能を定量的に評価することができる。しかし，高齢者などにこの手法を適用することを考えた場合は，より負担を小さくすることが求められる。そこで本稿では，多関節運動における力-速度関係に着目し，最大出力を行わずに四肢の運動機能を評価する手法を提案する。また，リニアモータを用いた実験を通し，その有効性を確認する。

4-209

最適レギュレータによる3慣性系に基づいた電動ベビーカーのアシスト制御

◎長谷川緑樹・寺西 郁・嶋田直樹（石川工業高等専門学校）

近年，我々の生活の中では手押し車が多く普及している。しかしながら，段差が乗り越えづらい，傾斜のある道では手押し車が押しにくいなど，路面の状況によって手押し車の使用が困難になる場合がある。これにより，手押し車が横転する，傾斜のある道において勝手に滑走するなど事故が発生する危険性がある。このような問題を解決する方法の一例として，電動アシスト機能が考えられる。 本研究では，三輪ベビーカーを実機とし，三慣性系であると仮定する。加えて，ベビーカーの外乱オブザーバを最適レギュレータ問題を用いて設計する。提案手法の有効性は数値シミュレーションにより確認する。

4-210

準同型暗号に基づくセキュアなモーションコントロール

◎寺西 郁・嶋田直樹（石川工業高等専門学校）・小木曽公尚（電気通信大学）

近年，制御システムのサイバーセキュリティが注目を集めている．一方，モーションコントロールにおいては十分なセキュリティ対策がなされていないのが現状である．本稿では，外乱オブザーバを用いたモーションコントロールシステムに対して，乗法準同型暗号に基づく暗号化制御を適用し，制御器のゲインと制御系内の信号を攻撃者から秘匿化する．暗号化制御器の有効性は実機実験により検証し，制御器の暗号化を行なった場合でも制御性能が劣化することはなく，第三者に対して制御情報が秘匿化されることを確認した．

4-211

樹脂軸受けすべりねじの低速度域動特性に関する研究

◎中西彩乃・寺西 郁・嶋田直樹（石川工業高等専門学校）

モータなどの回転運動を直線運動に変換する機械要素部品としてボールねじやすべりねじなどが挙げられる。多くの産業用機械ではボールねじがよく用いられているが，低速度域の摩擦特性が非線形であるというデメリットを持つ。そこで，本研究では軸受けに摺動性の高い樹脂を使用した転造すべりねじに着目した。 このすべりねじはボールねじに比べて低速駆動時の摩擦特性における非線形摩擦が小さくなることが期待される。そこで，等速度試験を実施し，摩擦曲線について調査した。その結果，樹脂軸受けすべりねじは低速度域でも線型的な摩擦特性を持っており，全速度域で強い非線形性が見られないことを確認した。

4-212

混合整数二次計画法に基づくモデル予測制御によるオムニホイールロボットの非線形摩擦を考慮した軌道追従制御実験

◎武田敏季・加藤健一（松江工業高等専門学校）

高い移動性を有するロボットとして，オムニホイールを利用した全方向移動ロボットがある．このロボットは，3 自由度(並進 2 自由度，旋回 1 自由度)方向への移動が可能で，病院や倉庫等の施設で用いられている．しかし，その軌道追従制御においては，非線形性を有する摩擦の影響を陽に考慮することが難しく，如何にその精度を向上させるかが問題となっている．本研究では，混合整数二次計画法に基づくモデル予測制御器を構成し，高精度の軌道追従制御を実現させる．発表では，実機検証による従来手法との性能比較について報告する．

4-213

慣性モーメントが変動するPendubotの視覚フィードバック制御器の新設計法

◎畑田和良（福岡大学）・佐藤昌之（宇宙航空研究開発機構）・平田健太郎（岡山大学）

本発表では，カメラの設置誤差とプラントのダイナミクスの変動が同時に発生する状況の下における，バランスタスクの視覚フィードバック制御について考える。我々は，これまでに前述の問題に対して，スケジューリングパラメータに内在する誤差を許容するゲインスケジューリング制御器の設計法を適用して，Pendubot（アーム型倒立振子）の安定化を実現している。この設計法は理論的制約から保守的であったが，近年，上記の誤差に対する保守性を改善する新たな設計法が提案されている。そこで，新たな設計法を視覚フィードバック制御へ適用した場合の優位性について，数値例の結果を用いて述べる。

4-214

モデルベースのマニピュレータの位置と力のハイブリッド制御

◎岩沢健一（工学院大学）

本研究では，直交座標系を作業空間とした3自由度ロボットアームを制御対象とし，手先の移動に関しては，各関節の角度から手先の位置を導出する順運動学と手先の位置から各関節を求める逆運動学を用いた。実際にロボットの関節にモータを導入して動かす場合，トルクやモーメントが考慮されるため，入力されたトルクから各関節の角度，角速度，角加速度が求まる順動力学と各関節の角度，角速度，角加速度からトルクを求まる逆動力学を用いて，重力を考慮した現実的なロボットアームの動きを実現し，固定された壁の平面上にある目標位置に手先を移動させ，その位置に対して目標の力を加えることを目標とした。

4-215

多関節ロボットアームのインピーダンス制御による面接触作業

◎花房拓哉・黄 慶九（工学院大学）

ロボットによる力制御において，力制御を要素技術として一般的な作業の実現に向けた制御系の設計が望まれている。本研究では，PUMA型ロボットアームを制御対象とし，位置指令型インピーダンス制御をPUMA型ロボットアームに対する代数的解法を用いた逆運動学制御系を用いて設計した。この制御系を用いて，ロボット手先に取り付けた平面上のエンドエフェクタを，ワールド座標系のy軸，z軸に傾斜を持たせた平面を有する壁を接触対象にし，目標位置姿勢に対してロボット手先を制御しつつ，モーメント目標値を0としてエンドエフェクタを壁の傾斜に合わせ面接触を行い，所望の力で壁に力を加えることが可能であるのか検証を行った。

4-216

非平面の超音波振動面における音響力学現象とその応用の検討

◎青野浩平・青柳 学（室蘭工業大学）

約40kHzで振動する逆円錐形振動面や円筒状窪み振動面などの非平面の振動面において，幾つかの音響力現象が確認された。一つ目は振動面上に置かれた板状物体のパルス音を伴った跳躍現象，二つ目は振動面上に置かれた粉体を穴開き板などで覆った際の粉体の激しい吐出現象である。跳躍現象に関する解析および実験結果から，板状物体の浮揚距離と音響放射力が共に増幅するため，短時間に浮揚距離がエスカレートして跳躍に至ることが分かった。さらに，円筒状窪み振動面にPETシートが吸着され，中央部が80℃程度まで上昇し直径0.5mm程度の穴が生じた。これら現象は外部からの空気供給を必要としない流体アクチュエータや超音波ツイーザとして応用が考えられる。

4-217

高速な光軸変更手段を用いた多方位同時監視の研究

○松家大介・三村昌弘（日立製作所）

一台のカメラで複数の方位に位置する被写体を同時に撮像可能な，多方位同時監視システムを研究している。複数の被写体を監視する際に，従来のPTZ(Pan-tilt-zoom)カメラでは被写体数必要としたが，本システムでは高速変更手段であるガルバノメータスキャナを用い，撮像と光軸変更の時間を調停することで，一つのカメラで複数の被写体を同時に監視できる特長を持つ。本報告では，システムの概要と動作原理について述べた後に，評価試験の結果について述べる。

4-218

バイラテラル制御系への通信遅延が及ぼす影響の調査

◎横田陸矢・大場 譲（仙台高等専門学校）

2台のロボットで位置情報と力情報を相互にやり取りし,作業力覚を操作者へ与えるバイラテラルシステムが存在する。 バイラテラルシステムにおいて通信遅延は,鋭敏な力覚伝達を阻害し,かつシステムの不安定化を誘発することが知られている。 しかし,遠隔地間にて力覚伝達を行う場合,必然的に通信遅延は生じてしまう。 それゆえ,遅延時間を考慮したシステムを設計するための様々な制御手法が提案されてきた[1][2]。 本稿では,通信遅延が実際にバイラテラルシステムへどのような悪影響を及ぼすのかを,シミュレーションにより確認する。

4-219

日々改善可能で，低コスト・高信頼な社会システムに関する研究

○村川佳樹・浅野勝宏（名古屋工業大学）

日々の生活を守り，住民サービスを提供する社会システムにおいては，災害に強く，長期にわたり安定したサービスを提供できる高信頼度システムが求められる。クラウド利用のシステムを前提に，日々改善可能で，低コスト・高信頼な並列冗長系システムを検討した。

4-220

需要施設の定期点検時漏れ電流のランダムフォレストモデルに関するパラメータ設定

◎本橋祐之介・山口順之（東京理科大学）・加藤謙晴・鈴木正美（関東電気保安協会）

電力需要施設に関する保安データからデータセットを作成し，複数のハイパーパラメータの組み合わせでRandom Forest（RF）を実装する。そして，決定係数を算出することでその組み合わせでのRFモデルを評価する。それにより，ハイパーパラメータの傾向を明らかにする。

4-221

リチウムイオン蓄電池システムの充放電設定に関する実験と考察

◎大島誠一郎・小林 浩（トーエネック）

マイクログリッド内の蓄電池システムを様々な充放電設定で実験的に動作させた結果，待機時の充電電力設定が必要であること，充電端付近で一定の充電電力値に制限されること，待機時にSOCが減少することなどが確認された。本稿では，これらの現象について，ユーザの視点で運用上の留意点を考察した結果を報告する。

4-222

ロボット技術による電気設備内状態監視の応用

◎田邊淳希（関西電気保安協会）

電気主任技術者の主な業務に電気設備の保安管理業務がある。変圧器の温度監視の機械化に取り組んだ。

4-223

DRを考慮したバランシンググループの需給調整市場への参加による余剰変化の評価

◎森谷綾乃・髙林花帆・山口順之（東京理科大学）

2021年を目途に，調整力を市場で取引する需給調整市場の創設が予定されており，新電力等の電気事業者が調整力提供者として，電力需給の調整に参加する機会が訪れることが期待されている。今後，需給調整市場での取引を活性化してより効率的に調整力の確保を行うためには，個々の調整力提供者の需給調整市場での取引による経済性を定量的に評価する必要がある。そこで本研究では，需給調整市場での調整力取引をモデル化し，調整力提供者となるバランシンググループの余剰を試算して，バランシンググループが需給調整市場に参加することによる経済性の評価を行う。

4-224

電力消費監視システムを用いた大学内講義棟の需要予測に関する研究

◎藤本訓史（広島工業大学）

現在，本学では電力需要が大幅に上昇し契約電力量の逼迫時に大学内の自家発電機を運転することで節電対策を行っているが，効率的な運転計画が明確に立案されていない。また，分散電源を新規導入した場合の費用対効果が最大となる設備容量を求めることで省エネ化の余地がある。これらの運用計画と設備計画を立てるために電力需要値からモデルを構築することを目的としている。これまでに，本大学内の約25%の需要を占める講義棟に電力消費監視システムを設置し，消費電力データを収集してきた。本稿では収集したデータに基づいて，重回帰分析を用いた電力需要モデルの作成し，シミュレーションを行うことでそのモデルの精度の確認を行った。

4-225

BEMSを用いた省エネサービス適用に関する実証評価

○木村文昭・木村剛維・佐藤智洋（三菱電機ビルテクノサービス）・北上眞二（福井工業大学）

これまでの法令などの改正動向から，ビルにおけるエネルギー管理者は，エネルギー使用量の削減義務達成に行き詰まりを感じてしまう課題がある．課題解決にはBEMSによる可視化に加えて，専門家による分析の適用が望まれている．本稿では，可視化に必要なBEMSに専門家による分析を加えた省エネサービスを構築し，実際の中規模オフィスビルで行った実証評価の結果をもとに，専門家による分析を導入したことで確認できた課題と今後の検討が必要とされる点について考察する．

4-226

高圧電気設備に設置した零相変流器（ZCT)が検出する電流

○井上善和（関西電気保安協会）

高圧受電設備に設置した零相変流器（ZCT)が検出するIo電流の分析結果から，対称座標法の零相分と正相に分けることができる。検出原理と実験結果について考察行った。

4-227

無効電力・力率の極性誤認によるプラント不適合事例と改善案

○芦崎祐介・板谷陽平・相原雄也（東芝三菱電機産業システム）

プラント（発電所や工場）では無効電力と力率の管理・監視が行われるが，無効電力と力率の極性表記「進み／遅れ」の誤認により，不適合が発生することがある。誤認の要因，不適合事例，トラブル回避のための改善案の一例について記載する。

4-228

エネルギープラント運用計画への群強化学習の適用におけるパラメータ感度解析

◎高橋賢二郎・佐藤繭子・福山良和（明治大学）

本論文では，群強化学習を適用したエネルギープラント運用計画に対し，決定変数の刻みとε-Greedy法で用いるεを変化させた場合のパラメータ感度解析を実施した。現在，進化計算を用いたBEMSを実現するためには，多くのエンジニアリングが必要であり，コスト回収が困難である。中小ビル向けBEMSの実現においては，強化学習の適用により新たなプログラミングをすることなくエンジニアリングの削減が必要不可欠である。以上の様な背景より，著者らは，中小ビルのエネルギープラントモデルに対する運用計画作成に関するエンジニアリング工数の削減を目的として，エネルギープラント運用計画への群強化学習の適用を行った。

4-229

エネルギープラントのオンライン最適運用計画に対するディペンダブルな並列複数集団型FBSOの提案

◎新井 馨・福⼭良和（明治⼤学）・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

工場・ビルにおいては，エネルギープラントの最適運用は経営上の大きな課題である。一方，データセンターにおいて，複数箇所のエネルギープラントの最適運用計画を同時にオンラインで計算することを考慮すると，高速に最適な運用計画を導き出すことが必要とされるので，並列分散処理による高速化が考えられる。著者らはディペンダブルな並列複数集団型differential evolutionary particle swarm optimizationを既に提案したが,ディペンダビリティ性の向上に余地があることが課題であった。本論文はディペンダブルな並列複数集団型Fast Brain Storm Optimizationを提案し，それをエネルギープラントのオンライン最適運用計画に適用し，ディペンダビリティ性が向上することを確認したので報告する。

4-230

「システムUPS®」の開発 ― その1 開発コンセプトと開発状況 ―

○宇田怜史・岡崎直哉・福田有貴・柏原弘典・邱 大偉・西村荘治・河崎吉則（日新電機）

当社では電力パラダイムシフトの変化に対応し，「システムUPS」を開発した。コンセプトは非常用発電機と蓄電池システムを組み合わせた「ピークカットと瞬低・停電対策を両立する電源システム」である。特徴は独自開発したハイブリッドスイッチによる低損失・高速開放と，コンパクト・長寿命の蓄電デバイスを搭載していることである。弊社社内で実証設備を構築し，開放停電に対して2m秒以内で停電補償動作することを確認したので報告する。

4-231

「システムUPS®」の開発 ― その2 リアルタイムシミュレータを用いた開発事例の紹介 ―

◎岡崎直哉・福田有貴・柏原弘典・邱 大偉・宇田怜史・西村荘治・河崎吉則（日新電機）

当社では電力パラダイムシフトの変化に対応し，「システムUPS」を開発した。コンセプトは非常用発電機と蓄電池システムを組み合わせた「ピークカットと瞬低・停電対策を両立する電源システム」である。実機検証の事前検証としてリアルタイムシミュレータを用いたリアルタイム検証を導入し，制御装置のデバッグ期間の短縮や実機検証で困難な故障モードの検証を実施することで，システム開発のスピードアップに寄与できたことを報告する。

4-232

「システムUPS®」の開発 ― その3 撮影画像による燃料残量推定方法の構築 ―

◎邱 大偉・岡崎直哉・福田有貴・柏原弘典・宇田怜史・西村荘治・河崎吉則（日新電機）

当社では電力パラダイムシフトの変化に対応し，「システムUPS」を開発した。コンセプトは非常用発電機と蓄電池システムを組み合わせた「ピークカットと瞬低・停電対策を両立する電源システム」である。システムUPSの安定運転継続性の確保と，保守点検（燃料監視）の省人化のために，非常用発電機に装備された燃料メータの撮影画像から，燃料残量を推測する遠方監視手法を開発したので報告する。

4-233

射出成形におけるオートエンコーダを用いたモータ電流からの成形不良検知技術の開発

○中原 崇・牧 晃司・出口見多・鈴木英明・金子 悟・岩路善尚（日立製作所）

射出成形機により製造される部品検査を自動化または支援するため，射出成形機の金型に温度や圧力などのセンサを設置する代わりにモータ電流から品質を推定する技術を開発している。推定する品質のうち外観不良をモータ電流から検知する技術を開発した。具体的には3相モータ電流をdq変換して得られたq軸電流をを入力とし，ニューラルネットワークのうち出力が入力を模擬するよう学習するオートエンコーダを使用し，入出力の差を異常度として閾値判定した。その結果，外観不良に関して検知率87．5％，誤検知率1．7％の性能で検知可能であることを確認し，オートエンコーダがモータ電流から外観不良を検知可能であるという見通しを得た。

4-234

ランダムフォレストを用いた需要家設備の警報発報時漏れ電流の予測手法

横手 愛・○山口順之（東京理科大学）・加藤謙晴・鈴木正美（関東電気保安協会）

電気保安業務においてIoTやAI等の「先進技術」の導入により，異常予知や事故の未然防止，操作の自動化などの，業務効率化の実現に大きな期待が寄せられている。特に，電気設備の安全点検における絶縁監視は，測定した漏れ電流値などのデータに基づいて対応判断を体系化することが期待されている。 本研究では，定期点検時に計測された漏れ電流などの保安業務基幹システムのデータと気象データの中から，異常警報が発報された際に測定された漏れ電流との関係が深い変数を見つけるため，ランダムフォレスト（RF）を用いた変数重要度解析を行った。

4-235

魚眼カメラを用いた姿勢検出技術の検討

◎野間拓耶・浅野貴正・茶薗佑毅・竹内 豊・石河範明（富士電機）

近年，店舗の来店客や工場で働く作業員など，様々な状況における人の姿勢や動作を画像認識で把握する技術への需要が高まっている。そこで，1台で広範囲を撮影可能な魚眼カメラとOpenPoseを組み合わせ，低コストで導入が容易なシステムを検討している。歪み補正やパノラマ展開処理を適用することで被写体の歪みを抑え，検出精度を向上させることができるが，画面全体に対して補正や展開を行うと，被写体の位置によって写りが小さくなりすぎてしまう場合や，消えてしまう場合がある。本稿では，移動体である各被写体が中心となる領域(注目領域)を抽出し，歪み補正を適用した姿勢検出を行い，その検出精度を検証した。

4-236

メータ自動読み取りクラウドシステム

○伊藤憲彦・千原晋平（電力中央研究所）・左貝雅人（日本電気）

現在，データ伝送機能がないメータの指示値を読み取るためには，作業者が現場に赴くか，監視カメラを利用して人間が目視により読み取ることがよく用いられている。電力中央研究所では，以前より固定カメラを用いた針回転式のメータ読み取り技術を開発していた。また，日本電気株式会社では，郵便宛名の文字認識技術を有していた。今回，巡視作業の効率化を目的として，両者の技術を組み合わせるとともに，持ち運び可能なモバイル端末で撮影したメータ画像でもメータ指示値を読み取るシステムを構築した。メータ読み取りシステムの概要を説明するとともに，実際にメータを撮影した画像を用いて読み取り精度を確認し，多くの画像で誤差が目盛の半分以内に収まることを示し，実用性があることを発表する。

4-237

"ながらスマホ"の危険性を評価する自転車シミュレータの開発

◎名倉成輝・大野暢亮・内田勇人（兵庫県立大学）・田村祐一（甲南大学）

近年，自転車運転中にスマートフォンや携帯電話の画面を見たり操作する，いわゆる"ながらスマホ"が原因となる交通事故が後を絶たず，事故の相手である歩行者が亡くなる事故も発生している。自転車利用者に自転車事故の危険性を提示するために，安全面やコスト面での利点により，自転車シミュレータを用いた研究が多く見られる。本研究では，"ながらスマホ"に着目した自転車シミュレータの開発を行い，「スマートフォン操作あり」と「スマートフォン操作なし」の状況の下，仮想空間内の歩行者とぶつかった回数および歩行者を避けさせた回数を測定し比較する実験を行った。結果，両者に有意差は見られなかった。

4-238

一端短絡・他端開放SIRを用いたチップレスRFIDタグの評価

○佐川守一・牧本三夫・小野 哲・酒井文則・和田光司（電気通信大学）

バーコードによるIDタグは安価で広く普及しているが，秘匿性や改ざんなどセキュリティ上の課題も多い。これに対処するため，電磁波を利用したチップレスタグ方式が検討されている。筆者らもすでにステップインピーダンス共振器（SIR）のマルチモードやその高次モードを利用した方式を提案している。ここでは，先に検討した一端短絡・他端開放SIR を用いた小型チップレスタグについて，試作・評価を行ったので，その結果を報告する。

4-239

粒子フィルタを用いた空調設備の非計測データ推定手法

◎曹 民圭・村田新治・裘 瑋・石井良和（日立製作所）

地域や街区でエネルギーを融通し，エネルギー設備の利用効率向上を目的とする設備構成最適化や運転計画ソリューションへのニーズが高まっている．これらに用いる空調設備モデルとして，LCEM(Life Cycle Energy Management)があり，計画から運用まで一貫して適用可能である．LCEMでは，仕様値や計測した時系列データを入力項目として，主にエネルギー消費量を計算するが，入力が揃わない場合，何らかの方法で入力値を決める必要がある．本稿では，このような非計測入力項目の時系列データの推定に，非線形のLCEM式に適用でき，将来のオンライン推定への拡張も狙える粒子フィルタを適用した.模擬データを用いて推定した結果，真値との誤差が小さく，手法の妥当性を確認した.

4-240

Web監視画面の3次元対応化検討

◎米田詠美・島田惇哉・大崎雅代（三菱電機）

IoT，および3次元画面へのニーズ拡大に対応するため，容易に3次元画面を作成できる3次元Web監視画面開発環境の検討を行った。2次元編集画面上でxy軸方向とz軸方向の操作を分けることでマウス操作による直感性を損なうことなく3次元画面を作成・編集可能になった。また3次元シンボルの高さを自動補間することにより，簡易に3次元画面を生成できることを確認した。今後の課題として，開発者が事前に用意する必要のある3次元シンボルデータの作成支援に向けて取り組むことを検討していく。

4-241

産業用イーサネットにおける障害を局所化する通信切替装置の試作と評価

○米良恵介（東芝）

工場やプラント，自動車や鉄道車輛など，様々な社会インフラおいて産業用イーサネットが普及しつつある。産業用イーサネットには高い可用性が求められる。また，デイジーチェーン接続という数珠繋ぎ型の配線が採用されることがある。しかし，一部のデイジーチェーン接続された通信装置に停電や故障などの障害が発生すると，他のノードの通信を阻害してしまうという課題がある。この課題を解決するため，デイジーチェーン接続された通信装置に停電や障害が発生した場合にも，該通信装置のみに障害を局在化するための動作原理を考案した。本発表では，該動作原理を提案し，試作・評価結果を紹介する。

4-242

Non-negative Matrix Factorizationを用いたスペクトログラム特徴抽出と異常検知

○中尾浩二・林 孝則（明電舎）

非負値行列分解（Non-Negative Matrix Factorization：NMF）による機械設備の振動診断手法を提案する。異常検知システムには異常検出能力だけでなく，結果に対する説明能力や可読性の高いモデルが求められる。そこで，振動振幅スペクトログラムの非負性および加法性に着目し， NMFにより特徴抽出と再構築誤差による異常検知を行う。ベアリングの加速劣化データを用いた評価を行い，本手法により故障前に予兆をとらえることが可能であることを示した。

4-243

アンサンブル学習法を用いたダム流入量予測

◎高瀨信彰・深井寛修・庭川 誠（明電舎）

水力発電所における1日の発電計画の立案には，ダム流入量やダム指定推移，維持放流量など多くの制約条件を考慮する必要がある非常に煩雑な作業である。現在，ベテラン作業員の経験とノウハウによって毎日の発電計画を立案している。本研究では，発電計画立案作業の省力化，発電効率の最大化を目的として，高精度なダム流入量予測手法を提案する。将来のダム流入量の高精度な予測が可能であれば，ダム水位や放流量の制御が容易となり，安定的かつ高効率の運転が実現できる。本研究得は，気象予測データとアンサンブル学習法を用いた方法によって，ダム流入量を正確に予測する方法を提案した。

4-244

監視制御システムの画面雛形自動生成手法

◎松本慶太・大西宏明・宗次 亮・海江田広和（三菱電機）

監視制御システムとは，受配電設備等で遮断器や断路器といった機器の運転状態を監視・制御するシステムである。監視制御システムは，機器が持つセンサの信号が記載された信号リストと，機器の運転状態を表示する画面で構成される。監視制御システムの作成工数は，熟練者のノウハウに依存し，機器に応じて多様な種類が必要な画面作成が多くの割合を占める。画面設計者は，信号リストや機器配置図面を元に，信号と対応付けた部品群を配置して画面を作成する。本論文では，ノウハウ依存度及び，作業工数の低減を目的とし，信号リスト間の類似度比較による最類似過去データを活用した，画面の雛形自動生成手法について述べる。

4-245

汎用モバイル端末を用いた列車接近警報システムの試作

○祗園昭宏・岩田浩司（鉄道総合技術研究所）

就業人口の減少に対応した業務の効率化と省力化，また，さらなる安全性向上による労働環境の改善のため，スマートフォンやタブレット端末に代表される汎用モバイル端末の保守作業等への活用へのニーズが存在する。しかし，汎用モバイル端末はノンフェールセーフ構成の装置であり，高い安全性が要求される用途へそのまま適用することが困難であった。 そこで，モバイル端末の処理と入出力の健全性を中央装置にて常時確認するフィードバック手法の検討を行ってきた。今回，保守作業における用途のうち，特に高い安全性が要求される列車接近警報用途にフィードバック診断を適用したフィードバック型列車接近警報システムの試作を行ったので報告する。

4-246

コレントロピーに基づくFast Brain Storm Optimizationを用いたArtificial Neural Networkによるショーケースの故障解析

◎大高直哉・福山良和（明治大学）・川村 雄・村上賢哉・Adamo Santana・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

コンビニエンスストアなどで利用されているショーケースでは，着霜や冷媒漏れ等によって庫内が設定温度に保てなくなる可能性が稀にある。従って，高精度の故障解析は，顧客サービスの継続には欠かせない。本論文では，故障判定精度向上と共に，異常値を含むデータに対するエンジニアリング業務軽減のため，ニューラルネットワーク(以下，ANN)のパラメータ学習に，コレントロピーを適用したFast Brain Storm Optimization（以下，FBSO）を用いたショーケースに対する故障解析手法を提案する。従来のパラメータ学習法である最小二乗法を適用したBackpropagation及びコレントロピーを適用したDifferential Evolutionary Particle Swarm Optimizationとの比較シミュレーションにより，提案法の有効性を確認した。

4-247

画像認識を用いた店舗別商品仕分け設備の開発

○土井達也・田中泰仁・神内直寛・茶薗佑毅・高木秀記（富士電機）

近年，人手不足，人件費高騰により食品製造工場では省人化の要求が高まり，自動化が進められている。しかし，弁当やおにぎり等の商品を配送先の店舗に仕分ける工程の自動化は実現していない。そこで，この要求に応えるため我々は，ロボットを活用した摘み取り方式の店舗別商品仕分け設備を開発している。 本稿では，画像認識を用いた①供給コンテナからの商品（弁当）の取出し手法，及び②出荷コンテナへの商品（おにぎり，弁当）詰込み手法（商品荷崩れ検知）を検討した結果を報告する。

4-248

パワーエレクトロニクス用センシングにおける高信頼な無線パケット通信技術の適用

◎松﨑頼人・和田圭二（首都大学東京）

近年，パワーエレクトロニクス機器は大型化・大容量化が進められているだけでなく，複数台が連携して動作するようになってきている。これらの機器では，電圧・電流などの瞬時値または平均値の広範囲でのセンシングが必要になっている。センサデータの送信は有線通信が主流であるが，配線の複雑化に加えて測定箇所ごとに電気的絶縁が必要である。本研究では，パワーエレクトロニクス機器でのセンシングデータ収集に，無線通信方式の一つである同時送信型フラッディングを適用することを提案する。同時送信型フラッディングにより，多数の観測点からのセンサデータ通信を一定の遅延時間で実現できることを，実機実験によって評価する。

4-249

ドローンのための全方位近接センサの提案

○辻 聡史・西村京介・茅野志穏・大植直人・小浜輝彦（福岡大学）

現在，ドローンが注目され，様々な場所での活躍が期待される。検査，物流や室内で利用する場合，障害物や対象にドローンが近づいて作業を行う必要があることから，衝突の危険が伴う。本研究は，自動で衝突回避可能なドローン実現のための全方位近接センサの開発を目的とする。ドローン周囲を距離センサ(ToFセンサ)で覆い，リアルタイムに対象までの距離を測定し，ドローンにフィードバックさせ制御することで衝突しないドローンの実現ができると考える。本稿では，試作したセンサをドローンに実装し，測定を行ったので報告する。

4-250

センサレスLCIによる高炉送風機の起動

◎太田大博・川口裕敬・荻野宏之・石津智啓・曾 德全（東芝三菱電機産業システム）

コンバインドサイクル火力発電（GTCC）プラントのガスタービンや製鉄所の高炉送風機の起動装置として，LCI（Load Commutated Inverter）が適用されている。LCIのインバータ点弧の位相基準に必要な同期機回転子の磁極位置検出用に，従来は回転子近傍に近接センサを設置していた。しかし，近接センサは高い取り付け精度が求められる上，同期機の点検毎に調整が必要である。この近接センサを不要とするセンサレス制御機能を開発し，複数のGTCCプラントに適用してきた。本稿では，ガスタービンと比較してLCIの運転条件が異なる高炉送風機の起動に対してセンサレス制御機能を初適用した結果，良好な制御特性が得られたためこれを報告する。

4-251

単純適応制御を用いたゲイン可変調整則に関する研究

◎尾花雄一郎・黄 慶九（工学院大学）

サーボモータの位置決め制御において，負荷が変わると制御ゲインの再調整を行わなければならない。この調整が正しく行われていなければ, モータが故障したり, エラーなどの問題が発生する場合がある。この問題に着目し, 本研究では, 構造が比較的簡素で実現が容易である単純適応制御(SAC)を研究対象とした。単純適応制御における適応調整則として, 積分調整則や積分＋比例適応調整則などが挙げられる。しかし, 適応調整則の働きを左右するのは内部的な調整則ゲインのパラメータによるものが大きい。そこで, 調整則ゲイン自体をある一定条件化での可変にすることで, 適応ゲイン調整の手間を省きつつ制御を行う方法を本研究により提案した。

4-252

サーボモータの位置決め制御における最適レギュレータの重み決定法

◎松岡宏明・黄 慶九（工学院大学）

本研究ではサーボモータの位置決め制御における最適レギュレータの重み行列決定法を研究する。具体的に，サーボモータの位置決め制御の解析データから，最適レギュレータの評価関数の重みと状態変数，制御入力との関係によって最適な評価関数の重みを決定する。研究方法はMATLABを使ってサーボモータの位置決めを解析して最適レギュレータの重みを決めた。その結果，サーボモータの位置決め制御の解析データから，最適レギュレータの評価関数の重みと状態変数，制御入力との関係を研究した。今後は最適レギュレータの評価関数の重みと状態変数，制御入力との関係を定式化する予定である。

4-253

放射基底関数を含むCMACを用いたFELによるディーゼルエンジンの燃焼制御

◎江口 誠・大森浩充（慶應義塾大学）

近年, 高効率かつ低エミッションな内燃機関が社会的に求められている. これを実現するための燃焼方式として, PCCI燃焼が注目されている. この燃焼を実現するためにはロバストな燃焼制御器が必要である. 現在主流となっている, マップ制御は, マップ作製にコストや労力がかかる他, 環境変化に対してロバストでないという欠点を持つ. そこで, 本報告ではフィードバック誤差学習による制御手法を提案する. これによって, マップ作製の手間が自動化され, 環境変化にも対応可能な制御系が構築できる. さらに, 本報告では学習アルゴリズムに, 放射基底関数を含む小脳演算モデルコントローラを提案する. これによって従来手法よりも精度が向上する. そして本手法の有効性を数値シミュレーションにて確認する.

4-254

遺伝的アルゴリズムを用いた最適フィードバック制御器構造探索の効率化

◎黒田英太郎・國立 周・前田佳弘・岩崎 誠（名古屋工業大学）

精密サーボシステムの制御性能向上に際し，フィードバック(FB)制御系の広帯域化は有効なアプローチの一つである。筆者らは，従来，広帯域化に資するFB制御器の構造とパラメータを数理最適化に基づいて自動設計するアルゴリズム基盤を提案した。本稿では，構造探索の効率化を目的に，遺伝的アルゴリズムを用いた構造探索アルゴリズムを新たに提案し，その有効性を数値シミュレーションにより検証した。その結果，提案法は従来法より設計時間を約5割減少させており，構造探索の効率化の点で提案法の有効性が示された。

4-255

Additional thoughts about ideas related to temperature distributin and thermal conduction presented in previous papers

○多田利春（無所属）

今までにB部門で発表した温度論文の補足になります。(1)二重層の複合物体における温度分布の条件が，自然界にも適用できるかの考察です。(2)熱抵抗が高いと熱が物体内に貯まる式の公表です。(3)金属と木材比較つまり結晶隙間から見た比熱についての考察です。(4)温度上昇Δθにも，プランク定数が関係することを論じています。(5)物体のイオン振動から高周波の赤外線が放射されることを，式を使って提案しています。(6)物体内のいろいろなイオン運動を単一振動として扱い，それらの振動エネルギーの増加が，赤外線エネルギーつまり熱エネルギーの増加へつながることを，式を使って述べています。また比熱の式も提案しています。以上の内容で，いずれも未発表です。

4-256

大容量電解装置におけるアルカリ生成効率の検討

○櫻井周伶・袴田大樹・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・糸川和芳・乾 貴誌（富士電機）

電解によるアルカリ調整システムの開発を目的とし，容量100 Lの電解槽を用いて検討した。 実験装置は，電解槽にSUS電極(陰極)6枚，Mg電極 (陽極)5枚をSUS電極が両端となるよう交互に30 mm間隔で挿入し，Na2SO4水溶液を100 L投入した。電極の浸漬面積は0.1 m2とし，Na2SO4水溶液の導電率は実スクラバ水と同等とした。 その結果，Na2SO4水溶液のアルカリ度は電解時間に対し上昇傾向にあり，最大63.1 g-CaCO3/Lまで上昇した。単位エネルギーあたりのアルカリ生成量であるアルカリ生成効率を計算すると0.185 mg-CaCO3/Jとなった。一方，本実験条件における理論アルカリ生成効率を計算すると0.270 mg-CaCO3/Jとなり，実験値は理論値の約70 %であった。

4-257

実験用小形電解装置におけるアルカリ生成効率の検討

◎袴田大樹・櫻井周伶・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・糸川和芳・乾 貴誌（富士電機）

舶用エンジン排ガス中の有害物質を抑制するため，EGRが採用され始めている．しかしEGRに用いられるスクラバ水は，排ガス中のSOxを吸収するため，再利用するには吸収により低下したpHを回復させる必要がある．そこで本報では，スクラバ水をアルカリ化することを目的に，陽極をMg，陰極をCもしくは水素過電圧の低いSUSとして電解し，アルカリ度上昇効果と実機換算電力を検討した．その結果，模擬スクラバ水のアルカリ度は時間と共に上昇し，60分間で約300 mg-CaCO3/Lとなった．また，実機換算電力はSUS電極のとき169 W，炭素電極のとき529 Wとなり，SUS電極を用いることで実機換算電力を低減できることが分かった．

4-258

交流き電変電所母線地絡故障検出リレーの開発

○宇佐美 進・七海光一・小貫素彦（東日本旅客鉄道）

当社における交流き電用変電所のき電母線地絡故障検出は，せん絡保護方式（保安器動作と過電流リレーの組合せ）により検出を行っている。過電流リレーは定常負荷で誤動作しないよう，極端に整定値を低くすることや動作時限を短くできない。その結果，保安器動作に至らない地絡抵抗値の高い故障では，検出動作に時間を要し，または整定値に達せず検出不能により，信号通信設備等へ被害が波及する要因となっている。そこで，高感度かつ瞬時に事故検出できる母線故障検出リレーを開発した。

4-259

エンジントルクエミュレータにおけるIPMSMの電圧飽和回避制御

松浦亮平・竹下隆晴（名古屋工業大学）・○濱田鎮教・久保 肇・只野裕吾（明電舎）

自動車開発の期間短縮や運転性能向上などを背景・目的として，エンジンベンチ用ダイナモメータシステムに要求されるモータ制御技術が近年高度化している。現在はエンジントルクを模擬する駆動モータの高速電流制御技術およびそのインバータが開発されている。しかし，駆動モータで用いられるIPMSMは回転数に比例した誘起電圧を発生するので，高速回転時において誘起電圧が上昇する。よって，高効率のMTPA制御のみではインバータが電圧飽和を引き起こすため駆動できなくなる。本論文では瞬時的なエンジントルク指令に対してインバータの電圧飽和を回避したIPMSMの電流制御法を提案する。また実験により制御法の有効性を確認したので報告する。

4-260

SVMによる誘導電動機の電気的・機械的故障診断

◎浅野恵介・エサキムトゥ パンダラコンシリナータン・グナセカランサントス・水野幸男（名古屋工業大学）・中村久栄（トーエネック）

誘導電動機は基幹動力源として広く用いられているが，高経年電動機の保守管理が適切に行われていないことが多く，経済的観点から故障診断手法確立が要望されている。 筆者らは，負荷電流スペクトルから抽出した特徴量に対し，故障形態ごとに異なる診断手法を提案してきた。現場適用性向上のためには，故障形態にかかわらず同じ手法で故障診断ができることが望ましい。本報では，ベアリング損傷，回転子バー折損，固定子巻線短絡を対象として，サポートベクターマシーン（SVM）を用いた診断を行った。特徴量の分布領域が重なる場合でも，故障有無の判定のみならず故障特定ができることを示した。

4-261

誘導電動機の軽微ベアリング故障検出－サポートベクターマシンと人工知能による診断の比較－

◎Santhosh Gunasekaran・Shrinathan Esakimuthu Pandarakone・浅野恵介・水野幸男（名古屋工業大学）・中村久栄（トーエネック）

Minor bearing fault detection of induction motor in industry becomes indispensable in the recent years. To perform maintenance activities, initial detection and follow-up the progress of fault is required to avoid financial crises. In the present paper, a comparative study is proposed between Support Vector Machine (SVM) and artificial intelligence - deep learning (DL) for detecting minor fault in bearing. DL produced high accuracy rate than SVM due to the neural networks which provides better feedback during the training and detection phase. The proposed method is effective in detecting the minor bearing fault at the initial stage.

4-262

自動車産業の産業連関構造を考慮した動学的多部門エネルギー経済モデルの開発と電気自動車等の普及による経済効果の評価

◎大谷尚徹・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

本研究では，エネルギー消費量や二酸化炭素排出量の比率が大きい自動車産業での需給や車種による生産コスト，走行時燃料消費の違いを整合的に考慮に入れた動学的多部門エネルギー経済モデルを新たに開発した。既往研究では電力部門や素材産業の産業連関構造を考慮した経済モデルの開発が行われていたが，本研究の新規性は新たに自動車産業を考慮の対象とした点であり，電気自動車をはじめとする次世代自動車の普及による経済やエネルギー需給への影響評価を行った。

4-263

ニュートラルレンジの積極利用によりエネルギ収支を改善する電気自動車走行法の基礎検討

○加藤修平・岩﨑憂音・小井戸純司（日本大学）

電気自動車普及に向けた最大のボトルネックは短い航続距離（充電1回で走行可能距離）である。本稿ではEV特有の高速トルク制御を積極利用する走行方法に着目した。そして従来不要と考えられてきたニュートラルレンジの概念を覆し，減速停止におけるエネルギ収支を大幅（約2倍）に改善できる走行方法とその基礎実験結果を報告する。この結果は100%電気で走行する電気自動車に限らず，水素燃料電池自動車や純電気走行が可能なハイブリッド車に広く応用可能なため非常に大きな波及効果が期待できる。

4-264

ワイヤレス給電における遮蔽物の影響に関する研究

◎石田椋平・李 暁楊・熊野照久（明治大学）

ワイヤレス給電は電気自動車の充電時間や航続距離の問題を解決する手段として注目を集めている。しかし，電気自動車に応用した場合，広い電力伝送空間が発生し，この空間の環境変化が電力伝送に影響を及ぼすことが想定される。そのため，本研究では伝送空間内に遮蔽物が存在した場合の受電電力への影響や遮蔽物の発熱をJMAGを用いて解析した。また実験を行い理論値との比較を行った。今回は共振周波数を200[kHz]，送受電コイルのギャップを200[mm]とした。また，遮蔽物は銅，鉄，アルミニウム，プラスチックを使用した。この結果，伝送空間内に金属が存在するときは受電電力量が約4分の1になり，また鉄では1時間で9[kcal]もの熱量が発生することが分かった。

4-265

新型電気自動車用駆動モータの開発

○岡澤俊雄・岩井明信・本庄 聡・鈴森洋史（本田技術研究所）

電気自動車と燃料電池車に代表される電動車の普及が拡大するなか，電動車ならではの力強いドライブフィールと環境性能の向上を実現するため，新型電気自動車用の駆動モータを開発した。新たな磁石配置を採用することで，渦電流損失の影響を考慮しつつ，出力向上が可能な最適磁石配置に設定した。新規に追加した昇圧コンバータの昇圧動作と合わせて最高出力を41%向上することができた。また，モータの運転範囲に応じて昇圧コンバータの最適動作により，ハイウェイ走行時のパワートレイン全体損失を4％低減した。最高車速域においては昇圧動作により渦電流損失を29%低減し，新たな磁石配置による渦電流損失の低減効果も含めて最高回転数を25%向上することができた。

4-266

地理情報システム(GIS)を利用した電気自動車の走行支援システムの検討

◎鶴原圭太（九州工業大学）・塩田 淳（北九州市役所）・三谷康範・佐竹昭泰（九州工業大学）

近年，環境問題を背景に販売台数が増加している電気自動車は航続可能距離がガソリン車と比べ短く，充電に必要な時間が長いなどの課題や回生ブレーキのようなEV特有の動作があるため走行中に電気エネルギー管理を適切に行う必要がある。 本研究はEV運転者の走行を支援するシステムを構築することを目的とし，その機能の一つとして走行中の運転者に対してより消費電力量が少ない運転方法の指導を行うシステム構築する。一定距離を走行した実測の消費電力量と先行研究より求めた推定値を比較することで運転者ごとの運転特性を把握し，より消費電力量の少ない運転を指導する方法を考える。

4-267

誘導機を用いたハイブリッドシステムの燃費向上効果の検証

◎澤田健太・山中建二・北條昌秀（徳島大学）

自動車に搭載されている巻線界磁型同期発電機を電動機として駆動させ，エンジンアシストを行うマイルドハイブリッドシステムが近年普及してきている。筆者らは，巻線界磁型同期発電機をかご型三相誘導電動機(誘導機)に置き換えることで，メンテナンス項目の省力化及び装置の簡素化を目的としたシステムを提案し，運転状況に応じたアシスト動作と発電動作が可能であることを確認した。本稿では， M-Gセットを用いて10.15モード燃費による運転特性試験を行い燃費向上効果の検証を行ったので報告する。

4-268

ハイブリッド自動車のMTクラッチ操作レス発進の実験

◎小林 亮・山中建二・北條昌秀（徳島大学）

近年，自動運転に対する関心が高まっており，マニュアルトランスミッション(MT)より，オートマチックミッション(AT)での開発が進んでいる。しかし，燃費効率的にはMTが望ましい。MTの場合，クラッチ操作の自動化が問題となるが，ハイブリッド自動車に搭載するジェネレータ(G)と，ディファレンシャルギアを用いることで解決を図る。アイドリング時，ディファレンシャルギアとつながったGの発電トルクを小さくし，エンジンの動力をタイヤではなくGに伝える。そして，エンジン回転数の上昇と共にGの発電トルクを大きくし，タイヤにエンジンからの動力を伝える。本稿では，提案システムでの坂道発進実験を行った結果を報告する。

4-269

交差点での周囲情報提示を行う運転支援システムのドライバ受容性評価

◎田中 捷・早川聡一郎・堤 成可・池浦良淳（三重大学）

本研究では自動車事故削減に向けて交差点での運転支援について，複数の他交通参加者がいる状況下で情報提示の優先順位を決める手段を考案した．交差点内に対向車と交差する可能性のある範囲として危険領域を定め，その領域通過までの時間をもとに情報提示を行う．自車が危険領域に到達するまでの時間が一定以下のとき，他車両の危険領域を通過するまでの時間の値によって情報提示の有無・種類を決定する．本手法における支援は周囲環境を知らせる情報提示のみであり，操作はドライバに一任する．複数のリスクがある実験環境をドライビングシミュレータに構築し，シチュエーションごとにアンケートをとることによってドライバの受容性を評価した．

4-270

2電源HEECSパワートレインにおけるSOCアンバランス解消制御の具体的なシミュレーション検討

◎石橋隆之・田村文太郎・海原拓郎・河村篤男（横浜国立大学）

著者らのグループは，EVの航続距離を向上させる技術として，2電源HEECSチョッパ回路を用いたパワートレインに関する各種研究を公表してきた。このパワートレインは2つのバッテリを用い，片方のバッテリ出力に降圧チョッパを介してインバータに印加する電圧を速度に応じて制御することで，インバータにおける損失を低減し，高効率な運転を実現する。しかし，走行状況により各バッテリにおける消費電力は均一とならず，片方のバッテリ残量(SOC)が先に0となり走行不能となるSOCアンバランス問題が発生する。その解法が報告されているが，具体的な手法が示されていなかった。 本論文では，SOCアンバランス問題を，降圧チョッパの制御により解決する手法を提案する。

4-271

超音波ドップラーレーダを用いた高精度自律航法

◎大熊 穂・於保 茂（日本工業大学）

自動車や農業機械の自律航法には通常,車輪速センサとジャイロが用いられている.しかし,車輪のスリップやジャイロのドリフト誤差のため,安価なセンサでは高精度化が難しい.本研究では超音波ドップラーレーダを用いた自律航法を提案する.提案方式では対地車速を検出するため, 距離や角度計測の性能改善が期待できる. 空転実験：実験車に試作レーダを取付け10m走行した.走行路（畑相当の荒れ地）の一部に水をまき,加速してタイヤを空転させた.試作レーダ及び車輪速センサを比較した.周回実験：既知の長さの電線で周回路（周長19m）を作り,電線に沿って試作レーダを取付けた台車（前輪の向きを固定）を手動で動かした.

4-272

LC直列回路方式セル電圧均等化回路におけるセル切替周期と均等化時間の関係性に関する一考察

◎佐藤大記（公立諏訪東京理科大学）・佐藤大記・星 伸一（東京理科大学）

著者らはこれまでに，蓄電装置の充放電容量低下の防止を目的としたLC直列回路方式セル電圧均等化回路（以下，提案回路）を提案し，その有用性について検討してきた。提案回路では各蓄電セルとLC直列回路を，双方向スイッチを用いてセル切替周期T_CC毎に順次切り替えることでセル電圧の均等化を図る。そのため，T_CCの値により均等化に要する時間（以下，均等化時間と呼ぶ）が変化するが，これまでT_CCと均等化時間の関係性に関する検証は不十分であった。そこで本稿ではこれまでの検討に加え，セル数やデッドタイム，電流制限値等の影響を加味したT_CCと均等化時間の関係性について，回路シミュレータPSIMを用いたシミュレーションにより検証したので報告する。

4-273

高パワー・エネルギー密度WO3蓄電池の特性評価Ⅱ

◎高木茂行・伊藤 弦（東京工科大学）・佐々木敦也・佐々木亮人・片岡好則・平林英明（東芝マテリアル）

電気自動車の減速時に発生する回生電力を効率良く蓄電するため，パワー密度の高い蓄電池が要求されている。Liイオン蓄電池で，負極の電極材料をカーボンからWO3に変更することで，高いパワー密度の蓄電池を開発している。モータで発電した電力を回生する回路を用い，試作したWO3蓄電池と鉛蓄電池，Liイオン蓄電池，電気二重層キャパシタ（EDLC）とのパワー密度の比較を行った。結果として，WO3蓄電池はEDLCと同等のパワー密度を持ち，エネルギー密度も高く，Liイオン蓄電池とEDLCの中間の性能を持つ蓄電池であることが示された。

4-274

登坂時における電動カートのスリップ抑制制御

◎高橋空路・高木茂行（東京工科大学）

電気自動車の利点はトルク応答性が高く，きめ細かなトルク制御が可能なことである。この点を利用して，平地や下り勾配において，トルクを制御し，スリップを抑制する手法が提案されている。しかし，登坂時のスリップ抑制制御についての報告例は少ない。そこで，エコカーレース用電動カートに，車両モデルを応用し，登坂時でのスリップ抑制制御に関する研究を行い，登坂時においてもトルク関数制御が有効であることを確認した。

4-275

フラクタル画像解析による走行車両の検出に関する研究

○黒岩 孝・矢澤翔大・新妻清純（日本大学）

著者らは，ドローンにより安全な空域において道路を俯瞰して撮影した画像をフラクタル解析することで，ある領域内の車両を検出する手法について既に報告しているが，領域内に街路樹が含まれると，車両の一部または大部分が隠れるという状況が発生する。そこで本研究では，領域内に街路樹が含まれる場合について検討する。

4-276

複数尤度によるパーティクルフィルタを用いた先行車両追跡

◎後藤悠希・高橋遥平・関 弘翔・泉 隆（日本大学）

先行車両に自動追従するACCなど，ドライバを支援する機能が実用化されている。低コスト，小スペース，，単眼による距離推定が可能などのメリットから，車両下影に着目した先行車両追跡を検討している。本稿では，パーティクルフィルタを用いた先行車両追跡について報告する。パーティクルに用いる尤度として輝度とテクスチャ特徴量を組み合わせた手法について検討した。特に，テクスチャ特徴量として代表的なLBP特徴量を改良した，CLBP特徴量では高い正追跡率となり，有効性が確認できた。

4-277

ETC車両検知器データを利用した車種判別-学習区分細分化による精度向上-

◎増島悠人・泉 隆（日本大学）・山内伸一郎（首都高ETCメンテナンス）・及川宗敏（首都高速道路）

ETC(Electronic Toll Collection System)は⾼速道路料⾦所で料⾦収受を無線通信により⾏うシステムである。本研究は，ETCレーンシステムにおけるETC⾞両検知器の⾼度化を⽬的としており，⾞両検知器データから⾞種と関連のある特徴量を抽出し，AdaBoostにより特徴量を組み合わせたETC料⾦区分別の⾞種判別を⾏っている。本稿では，学習区分を細分化することによる⾞種判別の精度向上に関する検討を⾏う。また，提案⼿法の有効性を確認するため，⾞種判別実験を⾏う。

4-278

ボトルネック区間周辺における車間制御機能の利用効果についての検討

◎小平紘史・星野貴弘・浜松芳夫（日本大学）

Adaptive Cruise Control(ACC)は，定速走行及び前走車との車間制御が可能であり，渋滞の改善，予防に有効である。本研究は，渋滞緩和を目的とし，車間制御機能を搭載したACC車両と搭載していない一般車両を混在させた交通流を対象とする。ボトルネック区間及びその周辺において車間制御機能の利用割合及び利用区間を変化させたときの影響を検討した。結果として旅行時間及び流率において改善が見られたが，ボトルネック区間内に利用区間を設けた方がボトルネック区間外に設けるよりも改善効果が高いことを明らかにした。

4-279

DRMを活用した経路探索システムの構築

◎川瀬英治・滕 琳・泉 隆（日本大学）

ITS (Intelligent Transport Systems) は，道路交通における道路の拡張に伴う複雑化，交通渋滞など多くの問題を情報技術により解決するシステムである。ITSには9つの開発分野があり，その1つであるナビゲーションシステムの高度化では，運転者の快適性・利便性・安全性の向上を図ることを目的としている。 本研究では，その実用化システムであるカーナビゲーションシステムに着目し，デジタル道路地図データベース (DRM-DB: Digital Road Map Data Base) を活用した経路探索システムの構築を検討している。 本稿では，Webによるデジタル道路地図の表示手法を検討したので，報告する。

4-280

フリープラン観光ルート推薦システムに関する検討

◎田 京寧（日本大学）

近年，世界中の旅行人数は増え続けていき，特に中国の旅行人数は世界一位となった。その中ではフールプラン旅行の人数が半分以上を占めている[1]。一般的な旅行方式とは違い，フリープラン旅行では添乗員がいなく，自由行動が中心である。観光客が自分で観光地を探し，観光ルートを計画するなど自由度が高まる一方，充実で，かつ疲れない計画を立てるのはなかなか難しい。 そこで，本研究ではユーザの希望に従い，観光要素を考慮した観光ルート推薦システムを検討する。

4-281

最適な駐車場プラン推薦システムの構築

◎費 莞舒・滕 琳・泉 隆（日本大学）

ドライバーの好みを考慮して目的地周辺の駐車場を検索，推薦して駐車場までのルート案内も提供できるシステムの構築の紹介。

4-282

濃霧下における可変式道路情報板の視認特性

○中澤嘉之・永谷広行（星和電機）・古荘雅生（神戸大学）

近年の可変式道路情報板ではLED化が普及し，マルチカラー対応や高輝度対応など様々な改善が図られている。しかし，深刻な課題とされている濃霧下における視認性の低下については解決には至っていない。今回この濃霧下における可変式道路情報板文字の視認性について，文字色や高輝度化を試み，視認性向上の効果を確かめた。試験は，視程50mの中で赤・橙・黄・白の4色と3種の輝度，および60 m・70 m・80 m・90 m・100mの5種類の視距離をパラメータに差異を調べた。結果は，白色が常に劣勢にあり他の3色間では有意な差異はほぼ無かった。輝度は高輝度である程視認性が向上するが，一定以上では効果が薄れる傾向を示した。

4-283

自発光式デリニェータの濃霧下での視認性改善

○谷口浩二・永谷広行（星和電機）・滝沢正仁（拓殖大学）

道路濃霧時の視環境向上を目的として設置されている自発光式の視線誘導灯(デリニェータ) について，視認性がどの程度まで保たれているか，併せて，灯具の種類による差異の有無について確かめた。 本試験では，LED発光光度を高くした提案型デリニェータ2種(丸形・角型)について，既設の3種(電球型1種，LED型2種)を比較対象とし，認知性向上の効果を確かめた。 結果は，提案型が常に認知性が高く，既存型に対し大きく優位であると確かめられた。本試験の条件下では，光度を高くした提案型デリニェータの有効性を確認した。特に昼間においては，光度の向上が視認性に大きく寄与することを確認した。但し，夜間ではその効果が薄れることも確認した。

4-284

道路交通表示設備の保全情報による劣化予測手法に関する研究

○村上千春・西村和則（広島工業大学）・村山光弘・山口裕正（星和電機）

電気設備の保全に対する要求は，社会情勢とともに変化している。高度経済成長期に電力需要の増加・インフラ整備を目的として設置された設備は，その運用が適切に行える保全を目的として，これまで定期保全が行われていた。しかし，現在では，個々の設備の運用や劣化状態に応じた状態保全が注目されている。そこで，状態保全を電気設備に適用する目的で，これまで蓄積されてきたデータを利用し，設備の故障時期を予測する。そのためにデータマイニングを用いて，故障に起因する要素を抽出・分析する。この分析手法により，設備の状態に応じた最適な保全周期を定め，高精度な設備品質を確保できる。

4-285

高効率簡易設置型ロードヒーティングシステムについて

○一戸善弘（北海道科学大学）・菅原弘人（三栄工業）

三栄工業株式会社では従来施工とは異なるパネル型高効率ロードヒーティングシステムの提案・開発を行っている。このシステムは地中熱のみでも融雪できることから，ランニングコストを抑えることができることが見込める

4-286

可視画像によるトンネル照明設備とトンネル内環境の関係性検討

◎松村和則・濱田祥文（西日本高速道路エンジニアリング四国）・小田 功（木更津工業高等専門学校）

道路管理者は良好なトンネル内視環境や第三者への落下防止，走行の安全を維持するため，トンネル照明灯具など各種設備の保守・点検作業や清掃を実施している。しかし，設備の老朽化と技術者不足が深刻化する中，現状施設の劣化状況を把握するためには保守作業を効率的かつ効果的に行う必要がある。本論では，トンネル照明設備における可視画像による照明灯具劣化度評価を用いた，灯具の劣化とトンネル内環境の関係性について報告するものである。

4-287

鉄道車両機器における位置特定手法の検討

◎中川愛梨・辰巳尚吾・小林優祐・竹内丈志（三菱電機）

近年，鉄道車両の保守や故障予測手法が注目されている。機器の運用履歴が分かれば，メンテナンスや故障原因の究明に役立てることができる。車両機器は修理等で取り外され，元の車両に戻されない場合がある。その対策として，客室の床下部分に存在する車両機器にRFIDタグを付与し，各機器の識別情報を収集し，位置情報と関連付けて記録することで，車両機器の位置が追跡できると考えられる。しかし，複数の列車が狭い範囲に存在すると，別の列車の機器情報を読み取ってしまうという問題があった。そこで，本稿では複数の列車が存在する場合に対象列車のみの機器識別情報を収集する方法として，RFIDタグと列車の設計情報を活用する方法を提案する。

4-288

駅ホーム上におけるホームドアの設置と旅客移動時間に関するシミュレーションの検討

◎柴 悠香子・石田隆張（明星大学）

本報告では駅ホーム上での乗客密度の変化と降車客が目標地点へ到達する時間の観点からの人流シミュレーションが必要と考え，実際の駅のホームをモデルとし，かつ簡易な手法を用いた人流シミュレーションの開発と検証を行った。

4-289

モータ駆動式掃除機ヘッドの回転と集じん除去率に関する実験的考察

◎阿久根康広・大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

掃除機の吸引ヘッドの構造の一つに，モータ駆動によってブラシを回転させる方式のヘッドをもつ掃除機が販売されている。モータ駆動式ヘッドは操作をアシストするだけでなく，じゅうたんのパイルに埋もれたじんあいを吸引する働きがあるとされている。 実際に砂を散布したじゅうたんにて，ヘッドブラシの回転が集じんにどのような影響があるか，日本工業規格（JIS）を用いてモータ駆動式ヘッドをもつ掃除機で前進，後退それぞれの操作ごとに集じん量の計測を行った。結果からじゅうたんにおけるじんあい除去に必要な要件を考察した。考察からモータ駆動式ヘッドの性能向上に求められる構造や制御を検討した。

4-290

マルチコイルモータの回生制動に関する研究

◎大里信平・小林智和・安田 彰（法政大学）

各相のステータコイルを分割したマルチコイルモータが提案されている．本報告ではマルチコイルモータに対し，回生エネルギー効率を向上する手法を提案する．力行時に独立しているコイルを，回生制動時のみ直列に接続し，回生エネルギーをコンデンサに回収する．これにより，ロータの回転で生じる発電電圧が接続したコイル分足され，モータから回生される電流が増加した．LTspiceでシミュレーション行い，提案方式は従来方式より回生エネルギー効率が5%改善されることを確認した．

4-291

電動アシスト自転車向けトルクセンサを用いたフィードフォワード制御手法の開発

◎五十嵐優人・石田隆張（明星大学）

近年の省エネ指向，移動性の高さと利用の簡便性から，電動アシスト自転車の需要が原動機付バイクの需要を上回ったデータが報告されている。 従来のアシスト方式は先行研究によると，制御時に踏力の脈動を倍増させるため，加減速の変動による効率の低下が報告されている。そのため，適切なアシストをするためにフィードバック制御が使用されてきた。 一方，この方法は測定値を目標値に達するように制御するため，モータトルク(アシスト+踏力)として出力するまでに時間遅れが発生してしまう。この現象を解決するために，本報告では自転車をこぐ人とモータの状態を予測するフィードフォワード制御手法を用いた電動アシスト自転車の制御方法を検討した。

4-292

蓄電池容量の決定方法に関する一考察

○市川英弘・高村幸宏（中部電力）

リチウムイオン蓄電池の急激な価格の低下と再エネの増加により，需要家においても今後蓄電池導入が進むことが予想される。このため，どのような容量の蓄電池の導入が負荷平準化とエネルギーコストの削減に繋がるのかを求める方法として，IRR（内部収益率）を最大とする蓄電池容量を計算する手法について考察し，導入が進むスマートメーターからのデータを基にお客さまにとって最適な蓄電池容量をアドバイス出来る方法となり得ることが確認できた。

4-293

リチウムイオン電池のかくれ過充電・かくれ過放電を防止する制御

○志村重輔（村田製作所）

開回路電圧曲線解析法は，リチウムイオン電池の劣化診断のツールとして広く利用されている。今回，診断ではなく劣化を抑制するための制御ツールとしての可能性を検討した。まず，開回路電圧曲線解析の結果と単極セルの参照データを用いて，参照極のない電池の正負極の電位を推定する方法を確立した。これを用いてサイクル試験中の電位挙動を観察したところ，正負極のアンバランスな劣化によって，端子間電圧が正常範囲であっても正負極の電位が正常範囲を逸脱することを見いだした。正負極の電位が逸脱しないよう使用電圧範囲を適宜更新したところ，サイクル劣化が抑制された。

4-294

カスケード制御による可搬型水素エンジン発電機の出力電圧制御に関する検討

◎新田ひかり・星 伸一（東京理科大学）・福田一人（デイトナ）

本研究では，可搬型水素エンジン発電機の出力電圧制御を行っており，著者らは過去に比例制御弁を用いた水素エンジン発電機の出力電圧制御システムを構築しPI制御を利用して負荷変動に対し発電機出力電圧を100 Vに制御する方法を提案した。しかし，比例制御弁が持つヒステリシス特性，応答時間が制御演算結果に及ぼす影響を考慮していなかったため，水素エンジン発電機に供給される水素流量が必ずしも適切ではない場合があり，それが応答性を悪化させる原因の一つになっていた。そこで本論文では，カスケード制御を採用することで，比例制御弁の特性の変化を素早く検知し，応答性が改善できることを実機実験により明らかにする。

4-295

擬似ランダム信号を使用した系統連系インバータによる誘導性負荷の推定に関する実験的検討

◎寺口直希・南 政孝・茂木進一・道平雅一（神戸市立工業高等専門学校）

本研究は, 住宅用太陽光発電システムに使用されるPCSに負荷推定機能を付与することを提案している.先行研究では, 広い周波数帯域を有する擬似ランダム信号を用いることで純抵抗負荷に対する推定精度が向上したことを報告している. 今回の報告では, 推定対象に誘導成分を有する負荷を用いた場合でも負荷推定が可能であることを実機により検証し, その推定信号の周波数ごとの結果を示す.

4-296

住宅床面における埃の静電特性のフラクタル的考察（Ⅱ）

◎大谷昌生・宮内佑輔・早坂 亮・川島健弥・金井徳兼（神奈川工科大学）

空気中で発生した微小な埃（綿埃）は，生活空間内の気流の影響を受けながら自由落下し，堆積していく。生活空間内に浮遊する埃の自由落下はブラウン運動的に落下すると考える。埃の堆積過程を予測し，電気的に計測することで，生活空間内の埃の可視化につながると考える。 本報告では，生活空間内を微小な浮遊する埃をブラウン運動的に考え，生活空間内の埃の堆積過程のシミュレーションツールを作，シミュレーションツールを活用し埃の堆積過程から2次元的な埃の堆積画像を作成する。2埃の堆積画像から，フラクタル次元数や埃の静電的特性へ応用可能かを検討した。

4-297

住宅床面における埃の静電特性のフラクタル的考察（Ⅲ）

◎宮内佑輔・早坂 亮・川島健弥・大谷昌生・金井徳兼（神奈川工科大学）

埃は住環境に浮遊する微小な綿埃の集合体であり，その成分は繊維が50%以上を占めている。これまでの報告では，埃には静電的特性があり，コンデンサを構成することで静電容量として計測できることが実験的な考察されている。住環境に応用する際，気温や湿度の変化から，埃の静電特性に影響すると考えた。埃の主な成分は繊維であるため，私たちは繊維の静電的特性について実験的に考察した。 本報告では，住環境の埃の構成成分に着目し，季節などによって変化する気温や湿度が，静電気的な特性にどの程度影響するか実験的に考察した結果について報告する。実験では，埃の成分と堆積量を一定にするため，埃のモデルを布に置き換えて実験した。

4-298

静電吸着式ロールクリーナーの綿糸吸着特性

◎古屋佑樹（山形大学）

一般に，気流を用いずゴミを除去する方法として粘着式ロールクリーナーが使われることが多い。しかし，粘着式では捕捉したゴミをロールから離脱し，廃棄するのに手間がかかる。本研究では静電気力を用いて簡単にゴミの吸着と脱離が可能なクリーナーの開発を目指し，絶縁被覆した円筒状の高電圧電極と3種類の基準電極から装置を製作して，ほこりを模した直径0.2 mm,長さ20 mmの木綿糸の吸着特性を調べた。その結果，基準電極の構造を工夫することにより静電気力で95%以上の捕集率で木綿糸を吸着できることがわかった。

4-299

アオコおよび活性汚泥を用いた微生物燃料電池（MFC）に関する研究

◎佐藤凌太・カビールムハムドゥル（秋田大学）・髙橋俊秀（SDバウエナジー）

世界の無電化地域人口は約13億人で，慢性的な電力不足地域もあり，また，停電リスクの高い地域や災害による停電への対応などが求められている．これらの課題に対し，その地域に繁茂する廃棄植物を有用化して小規模に発電し，夜間の簡易電力や携帯電話の緊急充電を可能にするための技術開発を目指す．本研究では，廃棄植物に着目し，その電力資源化を試みた．具体的には，アオコおよび活性汚泥の代謝反応時の電荷の授受を利用し，微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell，MFC)を検討した．その結果，無負荷状態での電位生成に成功した．

4-300

低温人工栽培環境下における植物蒸散の考察

◎菅 結実花・小原伸哉（北見工業大学）

本研究の目的は，エネルギー効率の高い，付加価値付与型の植物工場の開発である．寒冷地では冬季に，「寒締めホウレンソウ」「越冬キャベツ」などの，より付加価値の高い野菜が生産されている．このうち，寒締めホウレンソウは，低温時に吸水や蒸散が制限されることにより，糖度が向上するという研究結果がある．本稿では，人工的な低温栽培環境下における，植物からの水分蒸散量をPenman-Monteith式を用いて調査した．結果として，低温下においても蒸散が行われるため，給水のシステムは必須であることが判明した．また，光を照射しない暗期では蒸散量が減少するため，適切な湿度調整を行うことで，廃棄の少ない栽培システムとなることが示唆された．

4-301

半断線電源コードの短絡発生現象の基礎検討

◎石川由祐・竹中清人・水野幸男（名古屋工業大学）・河合智成・吉田敦至（河村電器産業）

東京消防庁の調べによると，平成29 年度には電気設備機器の火災は1,152 件発生している。その中でも電源コードの短絡は288 件(25 %)と，出火部位においても最も多く，火災の未然防止が喫緊の課題となっている。本報告では，半断線させた電源コードに起因する短絡現象の解明と火災防止手法の第一段階として半断線に起因する短絡実験の結果について述べる。

4-302

電源コードの導体素線断線判定法の基礎検討

○竹中清人（あいち産業科学技術総合センター）・水野幸男（名古屋工業大学）・吉田敦至（河村電器産業）

家庭用電化製品のAC電源コードや延長コードの素線導体の断線は，電気設備から発生する火災の主な原因の一つである。コードに過度な曲げやねじり，挟み込み等の外力が加わることにより素線が半断線状態となり，局所的に抵抗が高くなることにより発熱し，火災が発生したとの報告がある。 この報告では，50本の素線導体のうち1本だけを残して切断し，最も苛酷な半断線状態を模擬した。通電により素線が半断線状態から断線に至る際の電圧波形の歪みに基づく素線断線判定法を検討した。

4-303

太陽光発電余剰電力の自家消費のための家電制御の検証

○中西 弘・坂井寛大（関西電力）

2019年以降，住宅用太陽光発電設備の固定価格買取制度の期限終了により，余剰電力を積極的に自家消費するシステムが必要となる。本稿では，エネルギーマネジメントの技術を活用して自然冷媒ヒートポンプ給湯機（EQ）を昼間に沸き上げるシステムの検討を行った。翌日のPV発電量予測，住宅の電気負荷予測，EQわき上げ予定電力から判定して翌日の昼間運転をクラウド上のサーバからOpenADRとエコーネットライト規格により指令するシステムを検討し，自家消費が効率的に実施可能であることを実機により検証した。

4-304

P-V平面上のMPPベクトルの特異点に注目した常時PVストリング内BPD故障診断方法の提案

○南野郁夫・道永 尚（宇部工業高等専門学校）

我が国ではFITにより太陽光発電システムPVSが急増し，PVSの効率や安全に関する異常状態監視が必要になっている。異常状態の一つにPVモジュールに高温ホットスポットを発生させるバイパスダイオードBPDの開放故障が有り，火災などの危険な状態を引き起こす可能性がある。従来は人手による保守点検作業のため発電中の常時診断ができない問題が有った。そこでFFの時間的変化に注目した方法を提案した。今回この方法とは別のP-V特性（平面）上のMPPベクトルの特異点に注目した常時診断方法を検討したので報告する。本方法でMPP移動曲線の特異点（接線ベクトルが定義できない点）でBPD開放故障を診断できる。同様に明け方は下から上へのMPP移動が利用できる。

4-305

商用系統の日較差低減を目指した蓄電池制御を伴うHEMSでの日射量予測誤差の影響

◎平澤拓磨・小原伸哉（北見工業大学）・長野克則（北海道大学）・川江 修・冨樫愛采（旭川工業高等専門学校）

先行研究ではPV出力の予測情報と遺伝的アルゴリズムを用いた数値解析より，電力需要の日較差の最小化目的に従って，PV・蓄電池併設住宅の最適な蓄電池の充放電計画を調査したが，予測外れを考慮していなかったため，本稿では予測外れによる日較差の増加量を調査する．更に予測値と当日の日射量の誤差より，充放電計画を適時修正していく方法を提案し，改善された日較差の低減量を報告する．修正しない場合の日較差の低下率は，1月は57%，4月は59%，7月は73%であり，最適解と比較して日較差の増加は18%~25%となった．修正した場合の日較差の低下率は，1月は75%，4月は77%，7月は73%であり，1月と4月では約18%の日較差の増加を抑制する効果が得られた．

4-306

SOFCコジェネ-太陽光発電ハイブリッドシステムによる寒締め・ユキノシタ野菜加工用寒冷地植物工場の開発

◎菊池直紀・小原伸哉（北見工業大学）

北海道の農業では冬期に露地栽培ができないことや，就業者の高齢化が問題となっている．そこで本研究では，オホーツク地域の代表的な農産物であるホウレンソウの寒締め・ユキノシタ野菜加工用寒冷地植物工場のエネルギーシステムについて検討する．本システムでは， SOFCコジェネと太陽光発電によって電力を供給する．SOFCコジェネの排熱は吸収式冷凍機と蓄熱槽を経由して植物工場内に供給し，熱需要を賄うことで，省エネルギーなシステムを開発した．その結果，提案する植物工場の初期費用は約8年で回収が可能であり，太陽光発電を導入することでCO₂排出量を最大8.5×10⁶kg-CO₂削減出来ることがわかった．

4-307

家庭用電力契約の変更行動に関する研究

○天羽伸二・錦織聡一・日髙一義（東京工業大学）

電力小売市場が全面自由化され，新たな電力会社への契約変更者は全体の約10%（2018年3月時点）に及ぶ。今後市場の活性化によりサービス向上や低料金プラン提供等顧客への価値向上や経済活性化が期待されるため，顧客の契約変更行動を明らかにする意義は大きい。本研究の結果，新たな電力会社に契約変更した顧客は夫々電力会社の特徴に基づく理由で契約を変更している事が示された。また契約変更行動，電力消費行動及び設備投資行動の間に関係性が見られ，個人的要因や意図が影響を及ぼしている可能性が示唆された。本結果が電力会社におけるマーケティング，商品・サービス開発に反映され，電力小売市場が更に発展していく事を期待する。

4-308

電力消費量に関する比較情報が電力消費行動と心理的要因へ与える影響

○川本弥希（東京工業大学）・森谷孟史（元東京工業大学）・錦織聡一・日髙一義（東京工業大学）

本研究の目的は，比較情報を用いた情報的介入を一般家庭に実施し，環境配慮行動の変容と再生可能エネルギー利用に関する意識の変化を検証することである．長崎県対馬市在住のスマートメーターを設置した48世帯を対象に，自分の家庭の電力消費量に加えて，過去の電力消費量や他の家庭における電力消費量の情報をWebモニタリングシステムより提供し，介入効果の検証を行った．その結果，他者との比較情報を提供した場合には，再生可能エネルギーの利用に関する意識の形成を伴う節電行動が実施されている可能性が示唆された．また，介入の効果を得るためにはWebシステムを閲覧する意識の形成が必要であり，それには再生可能エネルギーに関する知識と協調的自己効力感の向上が重要であることわかった．

4-309

スマートメータBルートデータ計測の課題—一般家庭での実証実験を通じた課題抽出—

○三浦輝久・服部俊一（電力中央研究所）・佐藤洋介・伊藤千加・大谷智子（凸版印刷）

スマートメータやIoTセンサの普及に伴い，簡易なデバイスにより，Bルートによりスマートメータデータを簡易に取得可能になりつつある。サービスを広めるためには，モニタ自身が簡易にデバイスを設置可能なことが重要である。本稿では，一般家庭にデバイスを設置するうえでの課題を，実証実験を通じ抽出した結果を報告する。