一般講演

1-001

超音波センサを用いた高圧鉄塔の余寿命診断手法の開発

○鎌田憲嗣（東京電機大学）・房野俊夫・湯地敏史（宮崎大学）

This study investigates the educational effectiveness of the Basic Electrical and Electronic En-gineering Experiments course for second-year students through a comprehensive analysis of both interim and end-of-year surveys. The interim survey collected feedback during the course, highlighting immediate issues related to understanding, experiment execution, and TA support, enabling timely adjustments. The end-of-year survey provided holistic evaluations, focusing on overall satisfaction, evaluation transparency, and the quality of course materials. By employing co-occurrence network analysis on the survey responses, key themes and areas for improvement were identified, including the enhancement of lecture clarity, revision of experimental proce-dures, reinforcement of TA training, and the necessity for transparent evaluation methods. This research aims to refine the educational approach, ensuring a robust framework that fosters ac-tive learning and improves the overall educational experience for students in the field of elec-trical and electronic engineering.

1-002

コーオプ教育プログラムにおける共創と実践

◎松葉悠真・直江伸至（金沢工業大学）・田子靖章・松下 剛（メタウォーター）

学生の進路選択サポートは大学にとって重要な事項であり，インターンシップなどの就業体験が大きな役割を担っている。最近展開されているコーオプ教育プログラムは，インターンシップを一歩踏み込んだもので，「長期間・目的達成」の観点から学生の就業意識向上の一手段として期待出来る。そこで，本研究室では企業の協力を得て設備系DXを就業体験するコーオププログラムを計画・実践した。本稿では本学におけるコーオププログラムの概要と実践例について報告する。

1-003

授業中の学生状態把握に向けた脳波計測の活用

○塩尻（斎藤）亜希・椋木颯人・吉見愛莉・上條浩一・門田裕次・神沼充伸・大関和夫（東京国際工科専門職大学）

授業の効果を高めるには，学生の学習状況や集中度合いなどを教員が的確に把握し，それに応じた授業構成を提案することが重要である。本研究では，学生の学習状況を客観的に評価する手法として脳波計測を用い，プログラミングと英語の補講における集中度合いを分析した。授業前後テストおよび授業中の脳波データを比較した結果，授業中はβ/αが上昇し集中度が高いことが示された。特にα波が低下する傾向は，記憶課題における先行研究と一致した。これにより，脳波データを用いた学生の状態把握の有効性が確認され，授業設計に活用できる可能性が示唆された。

1-004

宇宙開発をテーマとした実験および結果解析の体験学習プログラムについての検討

◎夏嶋里帆・嶋田直樹（石川工業高等専門学校）

本研究では，小中学生でも宇宙開発のことを学べて，更に打ち上げをした後の解析をできるようにする体験講座について検討する。従来ペットボトルロケット，モデルロケットを製作して打ち上げる実験や体験は数多く行われているものの，その軌道を解析するような実験はあまり行われていない。提案するプログラムではCanSatを通して宇宙開発について学ぶだけでなく，打ち上げ実験を実施し，実験時に得られた測定データを自らが作成した解析ツールで検証するまでの一連を体験できる。また解析ツールを作成することでプログラミングについても学ぶ。提案する教育プログラムは，宇宙開発，ものづくりへの興味・関心を高めるものと考えている。

1-005

クドバスチャートを活用したパワエレ技術要素の体系化に関する一検討

◎増尾柊人・五十嵐智彦（職業能力開発総合大学校）

パワーエレクトロニクス（以下，パワエレという）は様々な分野の集合技術であり，回路設計には多くのノウハウが必要なため，企業における教育訓練の難しさが報告されている。電気学会ではパワエレ教育に関する協同調査研究委員会にて活動が行われているが，同委員会をはじめとする教育訓練に関する報告では，教育手法や内容まで踏み込んだ提案は少ない。一方，教育工学や教育心理学ではインストラクショナルデザインを活用した教育訓練カリキュラムの研究が進んでおり，これらを活用することで効果的かつ効率的な教育モデルの提案ができる可能性がある。そこで，筆者らは第1弾として職業訓練で用いられるカリキュラム開発手法「CUDBAS（クドバス）」を活用し，パワエレ回路設計技術の基本技術要素の体系化を試みたので報告する。

1-006

単相インバータを用いた教育プログラムの構築

◎降旗翔太（芝浦工業大学）

日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指し，再生可能エネルギーの導入を推進しています。しかし，送電網の複雑化や少子高齢化に伴う電力技術者不足が課題となっています。本研究では，単相インバータの動作原理を学ぶためのモジュール型実習装置を提案しました。この装置は，小型で省スペース設計，回路の組み換えが容易で，安全性に優れています。また，自作の制御基板を用いてPWMやデッドタイム生成回路を視覚的に学べる工夫がされています。教育プログラムでは，実験前後のレポートやアンケートを通じて学習効果を測定します。本研究により単相インバータの理解を深める教育環境を構築し，今後は三相インバータにも応用する予定です。

1-007

志田林三郎「電信機の説」にみるダニエル電池の運用

○志佐喜栄（多久市先覚者資料館）

1869年に日本で初めて電信が実用に供されてから電力網が全国にくまなく整備される1950年頃まで，主に電信用電源として用いられたのがダニエル電池であったことはよく知られている。わが国初の電気工学者である志田林三郎が1878年に記した「電信機の説」をもとに，インフラ電源としてのダニエル電池運用の実際を明らかにする。

1-008

日本初の工学博士 志田林三郎の卒業論文の活字化とその分析

○長谷川有貴（埼玉大学）・大来雄二（金沢工業大学）

日本初の工学博士であり，電気学会の創設者である志田林三郎が1879年に書き上げた210ページにわたる工部大学校の卒業論文の内容は，以前から読み解かれてきたが，その完全なる電子化（活字化）は行われていない。そこで，生成AIを活用しながら電子化を試み，その内容の解析を進めた結果について報告する。

1-009

産業用自律走行ロボット学習教材の試作

◎藤田優一郎・池田龍生・金井徳兼（神奈川工科大学）

近年，土木・建築業や酪農業をはじめとする様々な産業分野において，ロボットの導入が加速している。これにより，作業の自動化・省人化が推し進められている。しかし，産業現場でのロボット導入が加速する一方で，高等教育機関や企業内研修において，画像処理や機械学習などのロボット教育に活用できる手軽で導入しやすいロボット教材が不足していると考える。
本報告では，若年層を対象とした複数のロボット競技大会について，各大会がどのような技能の育成を目的としているか調査を行った。その調査結果を基に独自の課題を策定し，課題攻略を通じて画像処理やデータ通信，設計・製作，機械学習といった幅広い技術に触れることが可能な教育用自律走行ロボットの試作および検討を行った。

1-010

工業高校におけるダイオードの温度センシング特性の授業実践

◎豊嶋奏多・小山英樹（兵庫教育大学）

工業高校にて，ダイオードを温度センサ教材として利用し，温度センシング特性とダイオードそのものについて学習を行う授業実践を行った。授業では，ダイオードを指で摘まませることで加温させ，室温から体温程度までの温度変化によるI-V特性，順方向電圧，逆方向電圧の変化の違いを測定させた。授業後のアンケートで温度センサとしてのダイオードの動作や注意事項などを尋ねたところ，多くの生徒がそれらについて正しい理解ができている様子が見られた。

1-011

星の観測に白熱球のランプシェ－ドの製作

○四元照道（兵庫県立錦城高等学校）

K高校普通科定時制の有志の生徒で，地元の人と生徒の活動ができる場とした地域貢献の行事として，天体観測をおこなった。見学者が整列して並ぶことができるように列を設定し，その先頭がどこかを確認できるように，目印を付けたその場所に光のオブジェを設置した。光のオブジェは，望遠鏡を見る人が，スムーズに移動できるように工夫して設置した。LEDの照明は，眩く感じることがあり今回は，白熱球を用いてやわらかな光になるように工夫して製作した。

1-012

3次元可視化デバイスを用いた物理現象のインタラクティブな可視化

◎北野太一・脇 麟太朗・黒川達馬・眞鍋知久・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）

物理現象の可視化は，従来PCディスプレイ上で平面的に行われてきたが，VRやMR技術の進展により，3次元データの立体的な可視化が可能となった。本研究では，初等教育向けに簡易なモデルと基本的な物理現象を教材として活用し，ユーザーが試行錯誤しながら学べるインタラクティブな可視化システムを構築する。特に，HTC VIVE，Microsoft HoloLens 2，VIVE XR Eliteを用いたマルチプラットフォーム対応システムを開発し，VRおよびMRでシームレスな教材の提供を目指す。磁界の可視化では，HoloLens 2を使用し，解析結果をリアルタイムで表示し，ユーザーが物理量の変化に応じて再解析できる環境を実現したが，複雑なモデルでは計算コストが課題となった。さらに，シミュレーションをリアルタイムで行うことで，学習者が条件を自由に変更しながら直感的に理解できる環境を提供する。今後は，各デバイスの描画性能に基づいて，没入感，操作性，教育効果を比較し，システムの最適化を進めていく予定である。

1-013

電気電子実験系におけるデジタルツイン技術の導入の検討

◎脇 麟太朗・北野太一・黒川達馬・眞鍋知久・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）

本研究では，物理実験の不可視現象をリアルタイムに可視化し，実験装置との統合を目指した「デジタルツイン」技術の構築を検討した。ローレンツ力実験を例に，実験装置の操作を基にシミュレーション結果をVirtual Realit(VR)で表示するシステムを構築し，イオン軌道の観察を実現した。さらに，空間再現ディスプレイを活用し，操作性や視認性の課題を克服した三次元可視化教材の開発を提案した。電磁界実験系への応用では，Wi-Fiによる無線通信で物体の現実空間と仮想空間における座標と向きの統合を実現し，仮想オブジェクトの動的操作を可能にした。本研究は，幅広い分野での実験教育への展開可能性を示す。

1-014

永久磁石周辺の磁束密度測定とAR可視化への応用

◎神山勝哉・中西 空・松友真哉（新居浜工業高等専門学校）・岡本吉史（法政大学）

近年，産業界では，EVなどで使用されるモータの開発が活発化している。電磁気学教育では，モータに装荷されている永久磁石が作る磁界の理解を促進することが求められている。そこで，本稿では永久磁石周辺を磁束密度を測定し，それらをAR（拡張現実）技術を利用して磁界を可視化する装置を開発した。本装置では，ARマーカーを磁石側と基板側で合わせて2つ使用し，それらを撮影しながら永久磁石をレール上を移動させ永久磁石のどの部分を測定しているかを計測している。そのため永久磁石をレール上で移動させ，測定基板の下部を通過させることで，広範囲をまとめて測定できる。この装置は永久磁石の性能評価や教育面での活用が見込まれる。

1-015

小学生を対象とした酪農DX体験教材の試作

◎松永大輝・関口幸之助・池田龍生・金井徳兼（神奈川工科大学）

近年，少子高齢化が進み業界を問わず人手が不足しており，作業過程にロボットなどの機材を導入した省人化が検討されている。児童・生徒向けの教育分野ではプログラミング教育の導入が進められ，IT素養を身につけた人材の育成が進められている。北海道標津郡中標津町と連携し酪農をテーマとしたプログラミング講座を実施した。ロボットと酪農の関わりに注目して牛舎をモチーフにした課題コースを設計し，ロボットはレゴエデュケーションSPIKEプライムを利用した。プログラミング講座実施後に，アンケート調査を実施した。児童から好評であり，児童の身近な酪農をテーマにしたコースを利用した効果が得られたと考える。

1-016

周期的誘電率分布をもつスラブ導波路による複素伝搬定数の解析

◎干川雄太・尾崎亮介・山﨑恆樹（日本大学）

本文では，周期的誘電率分布をもつスラブ導波路の複素伝搬定数を解析し，誘電率分布の影響について検討する。

1-017

偏波情報を用いた分散型平面格子の差分応答解析

◎増田悠希・尾崎亮介・山﨑恆樹（日本大学）

本文では分散型平面格子構造のTM波入射に対し定式化を行い，時間応答解析結果を用いてTM波・TE波の両電磁界の偏波情報から差分波形を生成し，金属ストリップ幅検出について検討する。

1-018

3Dプリンタ製ミリ波誘電体充填導波管フィルタの試作と測定

○松田英昭・伊藤桂一・野坂 肇・西野智路・古市朋之・末松憲治（秋田工業高等専門学校）

3Dプリンタ（以下3DP）を用いてbeyond 5Gでの需要が見込まれるミリ波部品を安価に製作する方法が注目されている。本研究では3DPで印刷した角柱の表面に絞りを入れ，無電解ニッケルメッキし，誘電体充填導波管フィルタの設計・試作を行った。誘電体充填導波管フィルタを3DPによって試作し，ミリ波帯でも十分な性能があることを確認できれば，3DPの高い表現力を利用して複雑な導波管ユニットの試作も安価かつ比較的容易に実現可能となる。今回は提案方法の実現可能性について検証するために試作および測定を行ったので報告する。

1-019

Studies of thermal energy linearity and infrared ray energy equation

○夛田利春（無所属）

The linearity of thermal energy was certified on the basis of the data. The frequency value of maximum temperature data was about 100THz IRs. When the latent heat frequency had the 30 times as large as 100THz, the linearity of thermal energy was verified. IR energy was radiated by ion SHM. Its equation containing the square of frequency was derived from the displacement cuurent. According to this, the linearity equation of general electromagnetic wave energy is proposed. Additionnlly, the equations indicating the values of Boltzmann constant and Planck constant are reported, along the above theories.

1-020

変分法による二次元抵抗値と静電容量値の近似計算法 ～上下界値の計算法の物理的解釈～

○渡辺和夫（元フジクラ/元千葉大学/元芝浦工業大学）

二次元抵抗媒質と誘電媒質の抵抗と静電容量計算において解析解が得られない場合，近似計算や数値計算が行なわれる。これまでその近似計算の手法として，変分原理を用いた上下界の計算法が提案され，その具体的計算例を筆者は報告してきた。その際，純粋に数学的に導かれた計算原理の式について，単位系の次元も含めいくつかのご質問やご指摘をいただいた。そこで本報告では，それらの計算原理の式を物理的解釈から導出する。合わせて単位系についても説明する。

1-021

自己結合型微小振動PCSELセンサの自己結合信号に関する基礎研究

◎石倉想也・佐藤大輝・五島敬史郎・津田紀生（愛知工業大学）

本研究では，高出力を実現するPhotonic Crystal Surface Emitting Laser (PCSEL)を用いた自己結合型微小振動センサを開発し，自己結合信号を観測した。自己結合効果は，レーザ光が対象物で反射し戻り光が活性層に再入射することで光出力が変化する現象である。PCSELの平行ビーム特性を活かし，集光レンズの焦点距離の2倍の位置に測定対象物を配置。圧電素子に1kHz，64Vの正弦波を印加し，光路長変化による自己結合信号を取得した。特に急峻な位相変動で信号が顕著に増大することを確認し，高出力LDによる振動計測の可能性を示した。

1-022

LEDの主波長の影響解析によるRGB色LED照明下における視力改善効果の向上

◎荻原大河・田村怜奈・佐野勇司（東洋大学）

RGB色LEDを用いた照明下では, 各色光の色収差に起因して網膜映像が鮮鋭化し，老視により伸びる近点距離の短縮と視力を改善できることが，当研究室の研究で明らかになっている。しかし，現状の改善効果は小さく更なる改善が望まれた。赤色光あるいは青色光のはみ出しを大きくすることで更に視覚向上する可能性があると考えられる。そこで，著者らは明るさを確保できる範囲で赤色と青色LEDの夫々の主波長を長く，及び短くした照明を試作し，主観評価実験を繰り返した。その結果，既存照明に対して視力は12~22%増加した。

1-023

液晶調光フィルムを用いた照明光の拡散性可変型画像データベース撮影装置の構築

◎岡田素哉・中山敬三（近畿大学）

本研究では，液晶調光フィルムを用いて光の拡散性（光質）を連続的に変化させるデバイスとターンテーブルを組み合わせた，自動撮影システムを構築した。これにより，手動では困難であった光質と被写体の角度をパラメータとした大量の画像を自動で取得可能となった。また，取得画像の閲覧性を向上させるため，光質と角度をスライダーで調整できるビューアーを開発した。実際に，球体やボビンを撮影して観察した結果，十分な陰影の変化が得られた。
本システムにより，光質と角度の変化による被写体の質感の違いをスムーズに観察できるデータベースの構築が容易となった。

1-024

自動車における磁界の測定

○福井博道・南 典宏・種崎征利・大久保千代次（電気安全環境研究所）

電磁界情報センターは，電磁界に関する一般市民の不安を解消するために，電磁界に関する科学的な情報を分かりやすく伝えるためのの様々な活動を実施している。その活動の一つとして電力設備や家電製品等から発生する磁界を測定し，その結果を公表しており，2013年には，電気自動車（EV），ハイブリッド車（HV）及びガソリン車（ICE）の磁界測定結果を報告している。近年，世界的にEVやプラグインハイブリッド車（PHEV）の普及が急速に進んでいること，及び自動車の磁界測定方法を規定したIEC62764-1:2022が制定されたことから，今回現行モデル車について改めて磁界の測定を実施した。

1-025

商用周波磁界の短期間ばく露がヒト化マウスの造血系へ及ぼす影響評価

○高橋正行・西村 泉（電力中央研究所）・戸田年彦（ジェー・エー・シー）

商用周波磁界へのばく露と小児白血病発症の因果関係を解明するため，実験動物用磁界ばく露システムを開発し，令和6年電気学会全国大会で報告した。本研究では，そのシステムを用いて造血系をヒト細胞で置換したヒト化マウスに50 Hz, 5.0 mT(rms)磁界を2ヶ月間ばく露し，ヒト造血系への影響を評価した。免疫原物質を投与した陽性対照群では造血組織内の全白血球に対するヒト白血球の割合が減少したが，磁界ばく露群での割合は対照群と同等であった。得られた結果から，疫学研究で小児白血病のリスク上昇が議論されている0.4 μTより遥かに強い磁界をばく露しても，ヒト化マウスのヒト造血系に異常は生じないことが示唆された。

1-026

ヒト感覚神経スフェロイドを用いた刺激応答評価のための多点電極アレイデバイスの開発

○齋藤淳史・吉田映子・中園 聡（電力中央研究所）・榛葉健太（東京大学）

時間変化する低周波～中間周波帯（主に1 Hz～100 kHz）の電磁界は，誘導電界を介して神経や筋を電気的に興奮させる。この現象は，「刺激作用」と呼ばれ，国際的な人体防護ガイドラインの生物学的根拠となっている。一方，刺激作用の「閾値」に関しては科学的な不確かさが指摘されており，特に10 kHz以上の中間周波帯ではヒトの痛覚に関わる刺激作用の閾値解明が求められている。そこで我々は現在，痛覚に関わる刺激作用の閾値をヒト感覚神経スフェロイドの軸索束を用いて精密に評価するための多点電極アレイデバイスの開発を進めている。本発表ではこれまでに開発したデバイスの概要と同デバイスを用いた刺激誘発応答の評価結果を紹介する。

1-027

移動式クレーンの帯電現象に関する一検討

◎大森駿季・佐藤宣夫・岩井光太（千葉工業大学）・竹野清太郎・藤崎浩之・三枝 寿・梅野隆次（加藤製作所）

クレーンは金属構造物であり，アンテナのように電波を受信して高電圧を発生させる。この高電圧が制御基板の損傷や作業員の感電を引き起こしている。本研究の目的は，クレーンの帯電メカニズムを解明し，高電圧を減衰または消失させる装置を開発することである。実験では，高耐圧ダイオードで帯電した電荷を整流し，電解コンデンサに充電した。ブーム角度を変えてワイヤーロープ長を調整し，20秒間の充電を計測した。実測の結果，ブーム角度と受電電圧に角度依存性が見られ，AMラジオ波が帯電現象の原因であることが判明した。

1-028

放射イミュニティの代替法となる近接照射法の検討

○佐々木秀勝・近藤 崇（東京都立産業技術研究センター）

放射イミュニティの誤動作に対する事前評価法の開発を目的として，放射イミュニティの代替法を検討した。マイクロストリップ線路を評価対象とし，近接照射法の評価条件を放射イミュニティの受信レベルを指標に決定した。負荷の違いによらない一義的な評価条件であることを明らかにし，適切な評価条件を近接照射法に適用することで，放射イミュニティの代替法として有効であることを示した。

1-029

金属衝突による電波発生への気象条件の影響

◎加瀬一樹（日本大学）

金属の衝突や接触時，岩石破壊時に電波が放射することが確認されている。本研究では，金属板に同種の金属球を落下衝突させ，得られた電波波形から，発生エネルギーを算出し，絶対湿度との関係について検討する。また，本研究において，落下の再現性を高めるため，1mの金属管とプラスチック管といった落下ガイド管を用いて研究を行う。研究結果として，衝突による電波の受信確率は，プラスチック管を用いた場合の方が，金属管よりも大きく，絶対湿度などといった気候条件が電波エネルギーに大きく影響していることが分かった。そして，アルミニウムは，銅より絶対湿度による変化が大きいことも分かった。

1-030

金属衝突により生じる電波の波形および落下ガイドと接地による影響の検討

◎猪野一将・三枝健二・高野 忠（日本大学）

火山噴火活動や崖崩れにおいて，岩石の破壊による電波の放射が報告されている。この電波は金属衝突時に放射される電波と類似していることから，金属衝突による電波放射のメカニズムを解明できれば，自然災害の早期検知に応用できる可能性がある。これまでに，気候要素，金属試料，落下高さの変化による電波の受信確率について検討されてきた。本研究では，金属球を落下させる落下ガイド種類と測定系の接地有無による影響について検討した。その結果，プラスチック製落下ガイドは銅製ガイドより，また接地ありはなしより，それぞれ電波放射の確率が高くなった。その原因として，金属試料が帯電して電波がより放射されやすくなることが考えられる。

1-031

動画像による配電柱の振動解析とその評価

○高田 巡・早田直広・藤原広太・伊藤憲彦（電力中央研究所）

動画像解析により構造物の振動を計測・可視化する画像計測技術を用いて電柱の振動を簡易計測する実験を行い，加速度計および数値解析と対比することによりその評価を行った。この結果，各計測手法・各方向（線路直交方向・線路方向）で概ね共通するピーク周波数が得られ，画像計測の妥当性が確認できた。また今回，健全な電柱状態に加えて曲げ剛性を低下させた状態でも風応答解析を行ったところ，特に線路直交方向で固有振動数の低下が予測され，本技術による検知可能性を示す結果が得られた。

1-032

受配電設備向けスマート保安

○小鶴 進・渡邊謙二郎・平田陽介・西村勇佑・峯原将志・小須田貴之・石川瑞朗・ビラムハンマド メヘディ・金藤 悟（三菱電機）

電気保安分野では，電気保安人材の高齢化や人材不足，電気設備の高経年化に対応するため，IoTやAIなどの新技術を導入し，保安レベルの維持・向上と生産性の両立を図る「スマート保安」の取り組みが進められている。三菱電機では，センサを用いた遠隔監視，異常検知，余寿命診断の3つの機能を実現するスマート保安を開発している。

1-033

IEC（b）－平板電極系におけるフィルム絶縁材料の厚さに対する部分放電電流波形特性

◎隋 昊軒・欧陽高遠・植原弘明・岡本達希（関東学院大学）

高圧電力機器の絶縁性能は，長年の使用による様々なストレス要因によって経年劣化し，絶縁劣化を引き起こす。特に電気的ストレスは重要な劣化要因であり，部分放電による絶縁材料の侵食，その後の電気ツリーの発生，最終的には絶縁破壊に至る。本実験では，IEC(b)面電極系のモデル電極を用いて，複数の印加電圧に対する部分放電特性の周波数依存性を測定した。

1-034

ウェーブレット変換を用いたユーティリティポールの異常検知に関する基礎研究

◎齋藤巧武・古屋直樹・岩月栄治・小塚晃透・岩田隆弘（愛知工業大学）・本多祐二（本多電子）・津田紀生（愛知工業大学）

近年，強大化する台風などの災害によりユーティリティポールの倒壊が増加している。一般にユーティリティポールの標準期待寿命は65年と言われており，耐用年数近くの電柱が増加している。少子化に伴い診断が困難になることが予想される打音調査，目視調査に変わる劣化装置の開発に向けて研究をおこなった。本実験では健全管，劣化管それぞれに探触子を用いて超音波を発生させ，その際の受信波形を比較する。その際にMorlet wavelet変換を用いてデータの抽出をおこない，周波数解析をおこなうと劣化管の方が早く信号が減衰していることが分かった。

1-035

OPMを利用した簡便なキャップ型脳磁図測定システムの開発

○廣江総雄（国際電気通信基礎技術研究所）・武田祐輔（国際電気通信基礎技術研究所/理化学研究所）・鈴木啓大（国際電気通信基礎技術研究所）・山下宙人（国際電気通信基礎技術研究所/理化学研究所）

脳磁図計測(MEG)は脳神経活動に伴う磁場信号を高い時間分解能で測定可能であり信号源電流の推定が正確であるため非侵襲の測定方法として非常に優れている。しかし従来のSQUID型MEGは液体ヘリウムを必要とするため装置が大型となりランニングコストも非常に高くなる。また被験者も装置に拘束されるなど負担が大きい。
我々はSQUIDに替わる高感度磁気センサーとして光ポンピング磁気センサー(OPM)を利用して脳波測定のような容易さで脳磁図を測定できるキャップ型のMEG測定システムを開発し基本的なMEG測定実験を行いその有効性を検証してきた。
本件ではOPM-MEGをより簡便かつ高精度で測定するため独自に開発したOPMセンサーキャップと位置合わせ法を報告する。

1-036

高精度電界推定に向けた電界誘起第二高調波の位相分布計測

◎佐藤丈尚・梅本貴弘・佐藤正寛・藤井 隆・熊田亜紀子（東京大学）

非接触，非侵襲，高感度な電界計測法として，電界誘起第二高調波発生法(E-FISHG法)が注目されている。従来のE-FISHG法においては，計測で取得される情報が第二高調波の強度分布のみであるため，電界の形状を仮定する手法や最適化を用いた手法が広く用いられてきた。本研究では，一意に電界分布を決定することを目指して第二高調波の位相を取得する手法を提案した。第二高調波の位相を測定するために，レーザの光をビームスプリッタで分割し，一方をβ-BBO結晶に入射することで参照光を生成した。この参照光と電界誘起第二高調波を合波した際の干渉縞の変化を観察することで焦点位置を変えた際の位相分布を実測し，理論分布と一致することを示した。

1-037

DC Electric Field Measurement with Modulation Technique under Ion Flow Conditions

◎Yufan Yang・Takahiro Umemoto・Masahiro Sato・Takashi Fujii・Akiko Kumada（The Universiity of Tokyo）

Ultra-high voltage direct current (UHVDC) transmission lines face challenges related to the DC electric field influenced by ion flow(1). This study employs a modulation technique using a lock-in amplifier to enhance measurement sensitivity. By analyzing the normalized waveforms of signals from a transiently exposed Pockels crystal, a correlation between signal variations and the applied electric field is demonstrated, showcasing the method's precision in ion flow environments.

1-038

気圧センサを用いた低層域での高度計測

○瀬島紀夫（福山大学）・平島隆洋（エイチエレック）・三谷康夫（福山大学名誉教授）

高度計測機器として，レーザ距離計，超音波距離計などがあるが，何れも基準点と計測点の間に障害物があると計測できない問題が生じる。それに対して気圧センサを用いた高度計測は，障害物の影響を受けることなく高度計測が可能であり，簡便な高度計測の一つの選択肢として有効な計測手段になると考えられる。そこで本稿ではIoTデバイスを使って計測器を製作し，気圧センサを用いた低層域での高度計測について考察を行った。室内における実験では高度の誤差が最大でも±0.09m以下と良好な計測結果を得た。

1-039

多点化したファイバブラッググレーティングによるシグマ型ファイバリングレーザの出力測定

◎永喜多真佳・山口達也・篠田之孝（日本大学）

ファイバブラッググレーティング（FBG）は特定の波長（ブラッグ波長）の光を反射する光ファイバ型の光学素子である。このブラッグ波長がひずみや温度などの外的変化に敏感に変化するため，FBGの反射特性の評価によるセンサ化が進められている。本研究の目的はFBGの高速かつ多点計測を実現する計測システムを開発することである。本文は複数光路に多点化したシグマ型ファイバリングレーザの出力測定した結果の報告である。

1-040

同一波長領域の反射率の異なるファイバブラッググレーティングのピーク波長測定の基礎検討

◎村田亜優・山口達也・篠田之孝（日本大学）

光ファイバセンサのファイバブラッググレーティング（FBG）は低損失性や耐熱性に優れており，幅広い分野で注目されている。本研究ではFBGの多点性能を向上するため，機械学習を用いた計測法の開発を進めている。本文は機械学習を用いて多点化した同一波長領域のFBGの反射スペクトルからピーク波長測定について検討した報告である。

1-041

シリコン埋め込み型光ファイバセンサを用いた加圧位置変化による応答特性の基礎実験

◎中溝元規・篠田之孝・山口達也（日本大学）

力覚センサはロボットや機械が物体を正確かつ安全に取り扱うために欠かせない技術として普及している。筆者らの目的は高感度かつ柔軟性に優れた光ファイバ型力覚センサを開発することである。本研究では反射型光ファイバセンサのファイバブラッググレーティング（FBG）を用い，シリコン埋め込み型FBG（SE-FBG）の開発を進めている。本文は二つのFBGを設置したSE-FBGの加圧位置に対する応答特性を測定した結果の報告である。

1-042

デュアルソースブリッジ型高精度高抵抗測定器のADCの分解能向上による不確かさ低減の評価

◎柄澤大樹・染谷貴史（長野県工業技術総合センター）・大江武彦・金子晋久（産業技術総合研究所）

高抵抗測定技術は高電圧測定や微小電流測定など様々な応用を背景に重要性を増しており，直流高抵抗の高精度測定の手法の一つにデュアルソースブリッジ（DSB: Dual Source Bridge）がある。以前開発したDSB型高精度高抵抗測定器の1 TΩ以上の測定不確かさにおいてA/D変換器の測定分解能に起因する不確かさが支配的であることが示された。そこでA/D変換器の分解能を10 bitから16 bitへ向上させ，拡張不確かさを1 TΩで8 µΩ/Ω，10 TΩで100 µΩ/Ω低減したほか，測定範囲を100 TΩまで拡張した。100 TΩにおける拡張不確かさは3200 µΩ/Ωであった。国家標準の供給に用いる高抵抗ブリッジと比較した結果，10 TΩまでは約20 µΩ/Ω以内, 100 TΩでは約100 µΩ/Ω以内で整合する結果が得られた。

1-043

半導体歪ゲージによる低温域での高感度・高精度測定

◎山本実奈・山田寛之・神田昌枝・山口作太郎（中部大学）

歪ゲージは，幅広い分野で使用されて，基礎的なセンサーとされている。中部大学では，歪ゲージ計測の研究・開発を数年前に始め，継続している。主な内容は，歪ゲージ測定で長年広く利用されてきたブリッジ回路に代わり，新たなアナログ差分回路の提案である。この特徴は，従来のブリッジ回路に比べて感度が同じ定電流源を利用すると 4 倍になり，さらに四端子測定と同等の回路を利用するため，高精度の抵抗値測定と高精度電圧差分測定が可能である。また，従来の金属箔歪ゲージから半導体歪ゲージを用いることで，さらなる高感度測定が可能である。新たなアナログ差分回路と半導体歪ゲージを組み合わせ，液体窒素中での実験を行った。

1-044

コンクリート構造物の遠隔塩分計測に向けたダブルパルスLIBSシステムの開発

○倉橋慎理・染川智弘（レーザー技術総合研究所）

高架橋などの鉄筋コンクリート構造物の塩害対策のため，レーザー誘起ブレークダウン分光（LIBS: Laser Induced breakdown Spectroscopy）法を用いた手法の開発を行っている。本稿では，遠隔・実時間塩分計測が可能なリモートダブルパルスLIBSシステムの開発を行った。
構築したシステムを用いて，3m離れた位置に設置したモルタルブロックからLIBSスペクトルを計測する試験を実施した。発生したプラズマからの発光の波長200 ~ 900 nmの成分を分光測定し，Si，Al，Fe，Ca，Na，K，Oなどのコンクリートの代表的な構成元素を検出に成功した。構築したシステムがコンクリートの遠隔計測に必要な感度を有していることを示した。

1-045

カーリングプローブを使った電子温度計測の可能性

○小川大輔・中村圭二（中部大学）

カーリングプローブはマイクロ波領域における共振現象を利用し，プラズマ中の電子密度の計測をすることができる。その一方で，通常このプローブを使った電子温度の計測は原理的にできないが，プローブが測定表面から数mm向こうの電子密度まで平均値を計測しているという特性と，プラズマのシース厚が電子温度に依存するという特性を利用し，電位温度の計測が可能であることがわかった。本報告ではシミュレーションソフトウェアを使った調査を示し，プローブ周辺に適切なバイアスを印加することにより，通常のプロセスプラズマで用いられる電子温度が可能であることを示している。

1-046

準大気圧He/O₂パルスバリア放電におけるO原子の挙動計測

○中川雄介・小林真矢・杤久保文嘉（東京都立大学）

大気圧プラズマの多様な処理対象を維持しつつラジカルの寿命を延長し処理効果を向上する手段として，大気圧からわずかに減圧した準大気圧プラズマに着目し，準大気圧He(50%)/O2パルスバリア放電におけるO原子ラジカルの挙動をレーザー分光法で測定した。圧力70 kPaの陽極近傍において，He/O2混合放電では純酸素放電よりも高いO原子密度が得られた。これはHe混合による電子エネルギー増大により，O2解離レートが向上したためと考えられる。また，O原子の時間変化では，放電後のO原子生成が観測された。これはHe混合放電において，電子衝突解離だけではなくイオン，準安定粒子，ラジカル等の重粒子反応によってO原子が生成されることを示唆している。

1-047

平板電極を用いたMCS放電の開発とその放電特性

◎浜坂大輔・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

現在，真空装置を必要としない大気圧プラズマの1つであるMCS放電が注目されている。本研究では，MCS放電の大容積化によるオゾン生成量の増加と放電装置の簡易化を目指して，第三電極に平板型導電性ガラスを用いたMCS放電を開発し，従来の錫メッキ線電極によるMCS放電との放電特性の比較と評価を行った。その結果，錫メッキ線電極によるMCS放電の放電電流の方が大きく，オゾン生成速度，効率が優れる結果となった。高電界によって電子の抽出量が増加したためだと考えられる。しかし，装置の簡易化という観点においては平板電極によるMCS放電が優れ，更なる研究が期待される。

1-048

非加法的統計力学に基づいた非平衡プラズマの励起温度の自己無撞着再定義

◎菊池浩司・赤塚 洋（東京科学大学）

多くの非平衡プラズマにおいて, プラズマの統計的特性は標準的なMaxwellやBoltzmann分布から逸脱することが報告されている. そのため, べき乗の数理を有する非平衡プラズマにおいては, ボルツマンプロットの傾きが温度としての物理的意味合いをもつ伝統的な統計力学では, 適切に系の物理的特徴を表す事が出来ない. この問題を克服するために, 指数分布をべき乗分布へ拡張する意味合いをもっている非加法的拡張によるNonextensive統計力学を適用し, 低温弱電離水素プラズマの励起温度を検討した

1-049

ICP放電窒素プラズマへのアルゴン混入による非平衡性の変化

◎櫻井彩貴・山下雄也・YUCHEN YE・島谷和希・福本晃己・根津 篤・赤塚 洋（東京科学大学）

本研究では，窒素プラズマへのアルゴン添加がプラズマ状態に及ぼす影響を解明することを目的とし，アルゴンを混合した窒素プラズマ中の窒素分子の回転温度および振動温度を分光法を用いて測定した。窒素プラズマは誘導結合プラズマ放電により生成し，アルゴン添加プラズマ中の窒素分子からの発光スペクトルを分光計により取得した。得られたスペクトルを理論的に計算したスペクトルにフィッティングすることにより，窒素分子の回転温度および振動温度を算出した。さらに，アルゴンの混入率および印加電力を変化させて測定を行い，回転温度および振動温度の二次元分布を評価した。

1-050

ZnO板上マイクロギャップにおける放電挙動の印加電圧極性の影響

◎岡本昂大・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）

近年,半導体内部の高集積化に伴い，静電気放電 (ESD)による機器の損傷の対策として，ESD保護デバイスが実用化されている。ESDによって発生した電流の高速伝送が必要となっているため，高速伝送が可能なマイクロギャップ放電を利用したESD保護デバイスが注目されている。しかし，放電では正極性および負極性パルス電圧印加時放電形態が異なることが考えられる。沿面でのマイクロギャップ放電では，沿面放電となり放電開始電圧が低下したことが報告されている。先行研究では，ZnO上マイクロギャップ放電について報告されているが，極性の影響について未解明である。そこで本研究では，ZnO上マイクロギャップ放電について，正極性および負極性パルス電圧印加時の放電挙動を調査した。

1-051

イオンドリフト平衡状態におけるイオン移動度スペクトルピークの推定

○奥山 由（苫小牧工業高等専門学校）・菅原広剛（北海道大学）

本研究では大気圧を含む高ガス圧力中においてイオン移動度測定を行ってきたが，そこで観測されるイオン移動度スペクトルは単一のピーク中に複数のイオン種が存在しているため，イオン種個々の移動度を実験的に求めることが難しいのが1つの課題であった。さらに，ドリフト長が短い場合は非平衡状態における速い移動速度をもつ電子の影響が移動度スペクトル上に観測されるが，十分に長ければ平衡状態となり，一定のイオン移動度が観測されることを報告した。本報告では実験とシミュレーションのフィッティングによって求めた個々のイオン移動度から，イオンドリフトが平衡状態での移動度スペクトル上で観測されるピーク値について推定した結果を述べる。

1-052

発電機固定子巻線の部分放電に着目した絶縁診断における巻線温度の影響

◎中村 信・倉石隆志・宮嵜 悟（電力中央研究所）

発電機固定子巻線の絶縁診断のために，発電機に結合コンデンサを接続し，発電機の運転中に固定子巻線で発生する部分放電を測定し，最大放電電荷量の推移から絶縁劣化の推移を推定している。発電機は負荷によって運転温度が変化するため，固定子巻線の温度が最大放電電荷量に与える影響を把握する必要がある。そこで，複数の発電機において，巻線の温度が異なる環境下で最大放電電荷量を測定した。最大放電電荷量が温度と共に増加する場合と減少する場合の2パターンあることがわかった。

1-053

両極性急峻波電圧による巻線の絶縁特性変化

◎星 陽介（富士電機）

回転機の高電圧化とインピーダンス不整合に起因するINVサージにより，モータ素線間に部分放電が発生し易くなる為，回転機の短寿命化・信頼性低下懸念の検証を進めている。本稿では，高速スイッチング波形を模擬した電圧加速評価を可能とする試験電源を開発し，印加電圧波形（極性）による巻線の絶縁寿命特性変化について検討した。片極パルスと両極パルス印加時における絶縁寿命の印加電圧及び周波数加速特性を評価した結果，両極性で短寿命となる傾向があり，極性反転が絶縁寿命の低下に寄与していることが分かった。

1-054

真空中固体絶縁物上の帯電形成と電界変歪による貫通破壊

◎窪田愛斗・小島寛樹（名古屋大学）・道念大樹・山口信一（三菱電機）・早川直樹（名古屋大学）

真空バルブの交流電圧コンディショニング過程において，真空バルブの固体絶縁物であるアルミナが貫通破壊する事例が報告されている。筆者らは，アルミナ上に形成される帯電が影響し，貫通に至る可能性を考えている。そこで本研究では，アルミナ表面でフラッシオーバ発生後に形成される局所帯電電位分布を取得し，アルミナ表面の帯電がアルミナ内部の電界変歪・貫通破壊に与える影響について検討した。その結果，正帯電がアルミナ全体に形成された一方で，20 kV以上の負帯電が棒電極直下に局所的に形成された。さらに，帯電を考慮した電界解析を行い，高電圧印加時に形成される負帯電がアルミナ内部の電界を変歪・強調し，貫通破壊に至ることを示唆した。

1-055

電圧上昇率がSiO₂の絶縁破壊特性に及ぼす影響

◎木村剛留・村上義信・川島朋裕（豊橋技術科学大学）

デジタルアイソレータはフォトカプラよりも小型，高速，低消費電力であり，医療機器や電気自動車等へ広く使用されており，デジタルアイソレータは厚さ数µmの酸化ケイ素(SiO₂)を用いて電気絶縁を行っている。そこで本研究ではシリコン基板と厚さ3.13 µmのSiO₂で構成される試料に正極性直流ランプ電圧および正極性インパルス電圧を印加し，絶縁破壊電圧(Vb)を測定した。この結果，インパルス電圧で破壊した場合のみ，Vbが3 kV程度と1.8 kV程度に分かれて分布し，いくつかの割れた試料が見られた。インパルス電圧下では試料に働くマクスウェル応力の緩和時間が短くなるため試料が割れる場合があると考えられる。

1-056

TiO₂薄膜コーティングしたアルミナ基板のフラッシオーバ電圧評価

○小倉暁雄・片桐創一・野木広光・蓮沼 隆（筑波大学）

本研究は，絶縁体表面に金属酸化物膜を形成し，二次電子放出係数およびフラッシオーバ電圧（FOV）について評価した。アルミナ基板上に膜厚10 nmの窒化チタン（TiN）を成膜した後，酸素雰囲気中でアニールし，金属酸化物薄膜（TiO₂）とした。TiN，TiO₂（350℃，400℃）それぞれに対して二次電子放出係数（SEEY）を測定したところ，アルミナのピーク値4.2から1.8程度まで減少した。ランプ電圧を印加した時の平均FOVは，7.4 kV（アルミナ），32.0 kV（TiO₂ 350℃），26.0 kV（TiO₂ 400℃）となり，4.3倍，3.5倍と大幅に向上した。TiO2薄膜はFOV改善のための一つの材料として期待できる結果が得られ，その原因はSEEY抑制，帯電除去効果によるものと考えられる。

1-057

Result Analysis of DC Breakdown Test using McKeown Electrode System for Polypropylene based Insulators

◎Ji-Ho Park・Hye-Gyo Hong（Hoseo University）・Chul-Ho Kim（Shiniltek）・June-Ho Lee（Hoseo University）

This study investigated breakdown properties using McKeown electrodes under two conditions. Three sample types (A, B, C) were tested at two temperatures (30°C, 90°C) and two aging periods (0, 90 days). Abnormal breakdowns were categorized as Type I, occurring at the sample-frame interface without surface damage, and Type Z, involving creepage discharge along the surface. Surface observations using an optical microscope were compared with Weibull distribution statistical analysis. Filtering abnormal breakdown data reduced testing time and improved reliability.

1-058

絶縁体表面抵抗値変化時の部分放電電流と電束密度センサ信号の検討

◎西村凌汰・池田有志・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

機器及び周辺における絶縁媒体としてエポキシ樹脂が多用されている。エポキシモールド機器は大気中の塵埃やイオン化合物の付着が原因で絶縁劣化が進行する。このような外部劣化に対して，活線時に絶縁抵抗値を推定する手法についての報告はほとんど見当たらない。そこで本稿では放電電流波形と電束密度センサの信号波形から表面抵抗値を推定する手法の検討を行った。試料にはエポキシ樹脂，塵埃を模擬してエポキシ樹脂をガーゼ，またはフェルト布で覆ったものを用いた。試料上に放電源として球対平板電極を設置した。そして試料下にセンサを設置した。実験結果より，表面抵抗値が大きい試料で電流値，センサ信号値が大きいという結果が得られた。

1-059

絶縁体表面の抵抗値変化による部分放電電流信号の検討

◎池田有志・西村凌汰・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

電気機器の外部環境による絶縁劣化には, 機器表面への大気中の塵埃やイオン化合物の付着によるものが挙げられる。その付着によって絶縁抵抗が低下し, 機器表面に沿面放電が発生する。これは機器の故障を引き起こす要因となる。そのため, 停電時に機器表面の絶縁抵抗を測定することで, 劣化状態を推定している。しかし活線状態で劣化状態を推定する手法の数は少ないことから, 本研究では活線状態で取得可能な部分放電電流波形の特徴から表面抵抗値の推定を目指している。今回は, 表面抵抗値の異なる試料を用いた場合の部分放電電流波形の比較検討を行ったため, その実験方法の詳細と得られた結果について報告する。

1-060

電圧極性が絶縁体-空隙-金属電極におけるサージ部分放電開始電圧の湿度依存性に与える影響

◎榊原知晃・村上義信・川島朋裕（豊橋技術科学大学）

電力機器の破壊原因となる放電現象には湿度の影響が報告されており，湿度がPD特性に与える影響の解明は重要である。本研究では湿度がサージ電圧印加時の部分放電開始電圧に与える影響を把握するため，CIGRE Method-II型絶縁体-微小空隙-金属（CM-II型IGM）電極系を用いて負極性サージ電圧印加下における部分放電開始電圧(Surge-PDIV)を測定した。結果，湿度が高いほどSurge-PDIVは低下し，この傾向はこれまで筆者らが測定したCM-II型IGM電極系の正極性サージ電圧におけるSurge-PDIVの湿度依存性と逆の傾向であった。電極からの初期電子発生確率が異なることが影響したと考えられる。

1-061

EVステータコイルの電気的絶縁評価のためのインパルス部分放電計測

◎藤賀貴耀・小野﨑 樹・梅津 潔（電子制御国際）・永田正義（兵庫県立大学）・森 史弥・鍋田雄大（スズキ）

現代のEモビリティでは，小型・軽量化や高電圧化，高トルク化などが求められ主機駆動モータに高い絶縁性能が必要とされています。そのため，IEC国際規格ですでに発効されている産業用の乱巻きモータの評価試験法がEVモータの絶縁評価試験法に適応性があるかを確認する。本研究では，IEC規格に基づき，A結線およびB結線でPD計測を行い繰り返しPD開始電圧を評価した。インパルス電圧を印加しPD信号波形を確認したところ，立ち上がりピーク，電圧の極性反転後，再反転後にPDが観測された。EVステータは相間絶縁紙がなく樹脂被膜で絶縁性を確保しており，相端子間の分担電圧差が大きい部分でPDが発生していると推定される。現在，電圧波形の伝搬とPD発生箇所の詳細な検証を進めている。

1-062

平角巻線の部分放電計測のためのパッチアンテナの指向性スペクトル解析

◎小野﨑 樹・藤賀貴耀・梅津 潔（電子制御国際）・永田正義（兵庫県立大学）

電気自動車は小型軽量化と高電圧化により，部分放電が発生しやすくなっている。その中で，平角巻線の寿命試験や絶縁信頼性評価試験法についてIECによる国際規格化も検討されている。パッチアンテナで部分放電を検出する方法により，試験サンプルとパッチアンテナの配置との関連性，パッチアンテナの特性，電磁波の周波数帯域と指向性について報告する。
実験方法は，試料サンプルに対するパッチアンテナの位置を変えてPDの検出を行い，PD電磁波信号の周波数スペクトル解析を行った。
実験結果は，パッチアンテナをサンプルの正面と横の配置で比較し，平角線アローペアでは，パッチアンテナを正面に配置した場合の方がPD信号強度は大きくなっている。ステータでは正面と横の配置による差は，アローペアのように大きくなかった。

1-063

トリー伸展における放電電流とTEVセンサ信号の関係

◎石田陽太郎・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・牟田神東達也（かんでんエンジニアリング）

電力機器の絶縁劣化の要因には，ボイドなどの電界集中点から部分放電が長期間発生することによる樹枝状の破壊路(トリー)の伸展がある。本研究では放電時の電磁波などを検出するTEV(Transient Earth Voltage)センサを用いたトリー検出を目的として，トリー伸展時の放電電流とTEV信号の関係を調査した。TEV信号ではトリーの伸展に伴い信号強度増加やより高周波領域での新たなピークの検出といった変化が見られた。また，同時に測定した放電時のパルス電流にはピーク値や立ち上がり時間に変化が見られた。それらの実験結果からトリー伸展時の放電電流とTEV信号の関係について検討を行った。

1-064

壁面設置型センサ信号におけるセンサ位置と周波数特性の関係

◎樋口瑞樹・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・久保直也・森田祐志・谷口和彦（きんでん）

近年では電気機器の劣化状態を把握することで，設備の維持管理に対する計画的な取り組みや重大事故の未然防止が図れることから，劣化診断技術に対する期待が高まっている。絶縁破壊の前駆現象として発生する部分放電(PD)を，早期検知することで設備の劣化状態を段階的に識別可能にすることは重要であると考えられる。検知方法の中でも壁面設置型センサは，設備停止の必要がなく，電気設備に容易に設置できるという点で注目されている。発表では壁面設置型センサ信号による位置特定を目的とし，部分放電源と壁面設置型センサの距離を変化させたときの周波数特性について検討を行ったので報告する。

1-065

エポキシ樹脂中の電気トリー進展過程における壁面設置型センサ信号の解析

◎中川透吾・石田陽太郎・岡田 翔・上野秀樹（兵庫県立大学）・久保直也・森田祐志・谷口和彦（きんでん）

電力機器の長期使用に伴い，絶縁材料中に欠陥が生じ，電気トリー（Electrical Tree）が発生することがある。電気トリーは部分放電（Partial Discharge, PD）を伴い，進展することで最終的に絶縁破壊に至る可能性がある。このため，電気トリーの早期検出と正確な診断は，絶縁破壊リスクの低減や電力の安定供給において重要な課題である。本研究では，壁面設置型部分放電センサを用いて，部分放電および電気トリー進展過程におけるセンサ信号の特徴を観測し，劣化状態の把握に向けた基礎的検討を行った。

1-066

キャビテーションプラズマ発生における電極間気泡の隔たりに及ぼす印加電圧の影響

◎鎌田在希・阿部光希・岡田 翔・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマは，減圧沸騰現象を用いて液中に微小気泡を大量に発生させることで，効率的にプラズマの生成が可能である。プラズマの発生率を増加させるためには，未放電時から連続放電に移行する起点数を増加させることが重要である。これまでに，局所的に気泡量が増加する電極近傍下部において，放電の起点となる微弱な発光が生じることが判明している。印加電圧が異なる場合，絶縁破壊電圧が変化し，放電の起点となる電極間の気泡状態に影響を及ぼすと考えられる。そのため，放電直前における電極間気泡の隔たりに及ぼす印加電圧の影響について調査した。印加電圧の上昇に伴い気泡が隔たって集まり微弱な発光が発生することが示された。

1-067

水溶液中での有機化合物の酸化に適した液中プラズマ生成リアクタの製作及び能力検証

◎岩井光太・小杉篤司・佐藤宣夫（千葉工業大学）

海や生態系を守り，人間が自然と調和して生きることができる未来を築くことが我々人類の使命であることは議論を待たない。一方，難分解性の有機物による水質汚染が深刻化している。そこで，難分解性の有機物を除去する方法として，放電プラズマによる処理に注目した。本報告では，メチレンブルーを対象物質とし，溶液内で空気泡を発生させ，液中プラズマを生成する。メチレンブルーの酸化分解状況の確認手段として，水溶液の透過光強度及び吸光度の変化から分解の程度を考証し，放電リアクタの酸化能力検証を行う。透過光強度及び吸光度の変化より，メチレンブルーは放電時に生成されたOHラジカルにより酸化されたと結論づけ，酸化分解を実証した。

1-068

パルス誘電体バリア放電によるインジコカルミンの分解処理に対する永久磁石の効果

◎李 振邦・喜屋武 毅（近畿大学）

本研究では，磁場中に電極を配置し，電場と磁場が直交した際に生じるローレンツ力を利用して放電プラズマを制御する方法を採用した。この方法により，電子雪崩を強化し，処理効率を向上させることを目指した。
実験では，10kHzまでの高繰り返し動作が可能な自作のMPC電源を使用し，永久磁石を備えたシャワーヘッド型同軸円筒リアクタに放電プラズマを生成して，インジゴカルミン水溶液に対する分解処理実験を行った。その結果，永久磁石の効果で電子雪崩を強化し，放電電流の増加と共にOHラジカル生成量も向上することで分解率が上昇した。廃水処理技術への応用として，放電プラズマと永久磁石の組み合わせが有効であることが示された。

1-069

キャビテーションプラズマ発生率に及ぼす螺旋流路回転角度の影響

◎岸本大海・岡野竜也（兵庫県立大学）・髙野秀樹・橋本智裕（大日製作所）・岡 好浩（兵庫県立大学）

液中プラズマの一種であるキャビテーションプラズマにより処理されたキャビテーションプラズマ処理水には殺菌効果が持続することがわかっており，化学農薬の代替利用が検討されている。実用化のためには処理効率の改善が求められ，そのためには気泡生成量の増加によるプラズマ発生率の改善が有効である。これまでに，気泡生成用ノズル内部に螺旋状の流路を設置することでプラズマ発生率が増加することがわかっているが，同時に装置内の流量の減少が課題となっている。本報告では，キャビテーションプラズマ発生率に及ぼす螺旋流路の回転角度の影響について調査した。回転角度が0°のとき，流路を設置していないノズルに比べてプラズマ発生率が約40％増加した。

1-070

水中の真菌に対するパルス沿面放電処理における過酸化水素の分割滴下効果

○門脇一則・松本隆杜・香川 尋・片岡洋志・弓達新治・野澤 彰（愛媛大学）

水耕栽培においてオゾン障害による農作物の成長阻害を引き起こすことなく，養液中に残存する真菌類の胞子を放電技術で不活化させることを目的として，クモノスカビを含んだ水に対し，過酸化水素を滴下しながら，水面上の剃刀電極から繰り返しパルス放電を進展させた。過酸化水素の総量を一定として，最初に全量（濃度換算で全体の0.01 %）を投入した場合と，12回に分割して，数分毎に微量滴下を繰り返した場合との間で，水中の生菌数を比較した。最初に全量を投入した場合，1時間の処理で水中の生存胞子数は初期値より3桁低下した。これに対し分割滴下では，30分の処理で生存胞子数が4桁低下したことから間欠滴下の有効性が示された。

1-071

W/Ag対向電極を用いたキャビテーションプラズマ処理水によるメチレンブルー分解

◎江口佳吾・日下部蓮太郎・澁谷直也・川野宏太朗・岡 好浩（兵庫県立大学）

液中プラズマの一種であるキャビテーションプラズマにより処理されたキャビテーションプラズマ処理水には過酸化水素および放電電極の消耗に起因する金属ナノ粒子・イオンが含まれている。これまでにW電極を用いたキャビテーションプラズマ処理水において有機物分解効果があり，Ag電極ではほとんど分解しないことがわかっている。本報告ではWおよびAg電極を対向させて作製した処理水によるメチレンブルー分解を調査した。波長664 nmにおける吸収ピーク値は処理後経過時間2 minのとき2.01であり，時間経過にともない減少し，24 h後1.61となった。一方，W電極同士，Ag電極同士を対向させたときの24 h後の吸収ピーク値はそれぞれ0.94，2.00である。このことから，単独材質の電極と比較して分解機構が異なることが示唆された。

1-072

キャビテーションプラズマの放電経路長および放電経路抵抗に及ぼすパルス電圧波高値の影響

◎阿部光希・鎌田在希・岡田 翔・岡 好浩・上野秀樹（兵庫県立大学）

キャビテーションプラズマ(CBP)は液中プラズマの一種であり，減圧沸騰現象を利用して大量の微小気泡を溶液中に発生させ，その溶液に高繰り返し高電圧短パルスを印加することで，効率的な低温プラズマの生成が可能である。CBPによる溶液の処理効率には，プラズマと溶液の接触面積が重要であり，放電経路長は接触面積に大きな影響を及ぼすため，その把握が求められる。これまでに，放電経路長と放電経路抵抗に正の相関があることがわかっている。しかし，CBP処理中の溶液導電率上昇によって減少するパルス電圧波高値が，放電経路長および放電経路抵抗に与える影響は未解明である。本報告では，放電経路長と放電経路抵抗の関係に及ぼすパルス電圧波高値の影響を調査した。

1-073

トラッキング火災の前兆検知のための等価回路モデルの検討

◎遠藤 工・芳賀 仁（静岡大学）・添田拓巳（長岡技術科学大学）・阿武孝文（東京電力パワーグリッド）

トラッキング火災の前兆検知技術開発を目的に，等価回路モデルを構築した。部分放電や絶縁性変化を模擬し，実験波形との整合を確認。本モデルは火災発生前の特徴検出に寄与する基盤を提供する。

1-074

空気スパーク放電ガス曝気時の水成分の経時変化

◎野見山 剛・滝川浩史・川島朋裕・山内高弘（豊橋技術科学大学）

水に放電処理を行って製造するプラズマ栄養水を，本研究室では水に対し直接スパーク放電(針対水面スパーク放電)を発生させることで製造していた。今回は放電によって生成される活性酸素・窒素種(RONS)の拡散を防ぐため，放電管内で「針対針気中スパーク放電」を行うことにした。エアポンプを用いて室内空気を放電管に送り込み，放電ガスを水へ導入(曝気)した。
「針対針気中スパーク放電」を行った結果をこれまで行ってきた「針対水面スパーク放電」と比較したところ，NO₃^-，H₂O₂，などの水成分量が明らかに向上していることが分かった。このことから空気中へのRONSの拡散を防げたと考えられる。

1-075

大気吸い込み式アーク推進機の動作シミュレーション構築に向けた低圧気中アークの特性調査

◎浅井拓人・胡 誉騰・森 浩一（大阪公立大学）

電動航空機に関する研究が盛んな中，低密度大気を用いてプラズマを生成し推進力の発生に利用する“大気吸い込み式アークプラズマ推進”が提案され，電動航空機の高速・高高度性能の向上に寄与すると予想されている。本研究では，この推進方式を使用する推進機の動作シミュレーションモデルの構築に向けた低圧気中アークのモデル化を目的として，その特性を調査する実験に取り組んだ。実験結果から，大気圧下におけるアークと低圧大気下におけるアークとでその特性が若干異なる可能性があることが示された。また，得られた抵抗-電流特性を用いて推進機の放電動作のシミュレーションを構築し，その動作のおおまかな流れを再現することに成功した。

1-076

女満別観測施設における電場と雷電流値の関係

○米田 稔（無所属）

女満別観測の電場データとフランクリンジャパンの落雷解析を用い，負電場・正電場と雷極性の関係を調査する。

1-077

タンデム型変調誘導熱プラズマにおけるトーチ中段からのArガス導入法がSiナノ粒子生成に与える影響の数値解析

◎小林義隆・岡野里桜・田中伶郎・田中康規・石島達夫・中野裕介（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

筆者らは2つのコイルとRF電源を用いて時空間に変調可能な温度場を生成するタンデム型パルス変調誘導熱プラズマ(Tandem-PMITP)と，原料粉体の時間制御供給(TCFF)法を用いたナノ粒子大量生成手法に対し数値解析モデルを開発してきた。Tandem- PMITPにおいて，上段コイルの種火プラズマの安定性向上および下段コイル電流変調による熱プラズマ温度のさらなる精密制御を目的として，2つのコイル間からのArやH2の導入が可能な中段フランジの挿入を検討している。本稿ではトーチ中段フランジからArガスを連続・間歇的に導入し，Siナノ粒子の生成量に与える影響を数値解析した。

1-078

Ar＋H₂タンデム型変調誘導熱プラズマにおける下段コイル電力変更がSiナノ粒子生成に及ぼす影響の数値解析的検討

◎田中伶郎・岡野里桜・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）・末安志織・渡邉 周・中村圭太郎（日清製粉グループ本社）

筆者らは，変調型誘導熱プラズマを用いてSi系ナノ材料を生成する際，シースガスArとともにH₂を導入することで生成物の平均粒径を小さくでき，かつ還元作用により酸素含有量を制御できることを実験的に見出している。さらに，Ar-H₂熱プラズマ電磁熱流体とナノ粒子生成・成長を考慮した数値解析モデルを開発してきている。本報はタンデム型変調誘導熱プラズマにおける下段コイル電力がSiナノ材料生成に与える影響を数値解析的に検討した。本数値解析ではシースガスArを90 L/minに加え, H₂を0.25 L/min導入した。下段コイル電流の変調度を20%とした。熱プラズマへの平均流力電力を上段コイル15 kW，下段コイルを10 kW，15 kWに変更した。

1-079

ダイヤモンド膜成長用変調誘導熱プラズマにおける原料CH₄ガス間歇供給遅れ時間が照射ラジカルに与える影響

◎松田航征・細井大和・田中康規・中野裕介・石島達夫（金沢大学）

筆者らは，独自開発した変調型誘導熱プラズマ(MITP)照射による単結晶ダイヤモンド膜の高速成長を検討している。MITPでは，入力電流波形を任意に変調することで基板に照射する熱流束・ラジカル粒子束を詳細に制御できる。本報ではコイル電流を周期15 msの鋸波変調するのに加えて，原料CH₄ガス間歇供給のタイミングを電流変調周期の15 msの1/8である1.875 msずつずらした場合のAr/CH₄/H₂ MITPの時分解発光分光観測を行い, 基板に照射されるラジカル種の時間変化を実験的に検討した。

1-080

誘導結合磁化プラズマにおける電子放出位置発の磁力線に沿った電子加熱観察

◎大久保祐馬・村中伶羽・菅原広剛（北海道大学）

誘導結合プラズマは対向発散磁界の閉じ込め効果により材料処理における損傷低減等が期待されるが，強磁界による磁気冷却効果に打ち勝つため効率的電子加熱が必要とされる。強磁界下でも発現する電子加熱機構の一つ部分共鳴有効利用のため，器壁の複数位置から初期電子を放出し，電子が磁力線に導かれる間の電子加熱過程を観察した。電子自由飛行中の電子加熱期待値は概ね容器内磁力線長共鳴域内比と相関していた。一部放出位置では電子がコイル近傍の強磁界域に近づく過程で磁気ミラー効果による反射が観察された。共鳴域内磁力線長の他に放出位置と共鳴域との距離，共鳴域と磁力線の交差角，共鳴域滞在時間等の電子加熱への影響が示唆された。

1-081

誘導結合磁化プラズマ電子閉じ込め効果下での電子加熱励磁コイル間隔依存性

◎山北瑛伍・岡崎凌大・菅原広剛（北海道大学）

対向発散磁界下誘導結合プラズマは，分界面による電子閉じ込め効果により，基板の損傷低減等様々な利点が期待される。一方で磁気冷却効果に打ち勝つためプラズマ維持には効率的電子加熱が求められる。先行研究では電子閉じ込めの効く強磁界下でプラズマを従来より高周波で駆動することでより高いエネルギー利得（EEG）が得られた。一方でコイル間隔を変え共鳴域の位置や範囲を変えたとき，駆動周波数ごとに高EEGを得られる最適値が見られた。本報告では高EEGが得られた条件での電子分布を調査し，電子閉じ込めを効かせつつ電子加熱が行える条件を模索した。結果，高周波駆動時に強電界域に電子が集中する条件が有望と示唆された。

1-082

湾曲分界面対向発散磁界下誘導結合プラズマ中の電子加熱分布のアンテナ高さ依存性数値解析

◎岡崎凌大・菅原広剛（北海道大学）

対向発散磁界下の誘導結合プラズマでは分界面の片側で高電子数密度とすることができ，材料損傷低減などの機能性が期待される。また，共鳴域で電子加熱が生じ易い部分共鳴現象が観察される。先行研究では電子数密度n_eの分布，電子加熱Gの分布の位置制御を期待し，上下励磁コイル電流比を変化させた。このとき，分界面は上にたわみ電子閉込め領域は限定されるので高n_e領域が変化し，共鳴域は高電界域に近づきGが増す結果を得た。本解析では湾曲分界面をもつ対向発散磁界で，高n_eと高Gの領域の範囲が励起源RFアンテナ位置にどのように依存するかを観察した。共鳴域と高電界域が重なるとプラズマにさらに高い電力を投入できることが示唆された。

1-083

パルス電圧刺激の原木シイタケ収穫への影響

○高木浩一・小野寺秀太・高橋克幸（岩手大学）・坂本裕一（岩手生物工学研究センター）・吉田浩幸（盛岡広域森林組合）

高電界・プラズマの農業利用の研究が進められている。パルス高電圧を用いたキノコ増産は，農業のプレハーベスト段階に該当し，生長形態を栄養生長から生殖生長へのシフトを電気刺激により促すもので，主に物理刺激の効果を利用する。これまでキノコの栽培環境に合わせた刺激用電源開発や，いくつかの種類のキノコでの電気刺激の効果の検証などが行われてきた。本報告では，原木栽培のシイタケに対する電気刺激の効果として，春種である森908号を用いて春・秋の季節に対する刺激の効果，また収穫後のホダ木への刺激による子実体の再形成への効果について述べる。

1-084

パルス電界処理による野菜組織のインピーダンス過渡変化の測定

◎沼畑奎翔・岡田稜平・永田稜拓・民田太一郎（大阪電気通信大学）

本研究ではパルス電界（PEF）処理のメカニズム解明の手法としてインピーダンス分光に着目し，TSP(Time Stretched Pulse)信号を用いて，インピーダンスを高速かつ連続的に測定することにより，PEF処理の直後から細胞が時間的にどのように変化していくかを電気的に観測することを試みた。
観測結果より，見かけの容量が処理直後に大きく減少し，その後上昇をはじめ，0.7秒で一定値に収束していることが分かった。これは細胞膜がPEF処理により孔が空き，その後時間をかけて孔が塞がる可逆性の穿孔に起因していると考えられる。本結果はPEF処理による食品加工のメカニズム解明に大きく寄与できると思われる。

1-085

GaNパワー半導体を用いたパルスパワー電源の高出力化に向けた基礎研究

○長尾長尾・藤田凌史（小山工業高等専門学校）・須貝太一（長岡技術科学大学）・徳地 明（パルスパワー技術研究所）・江 偉華（長岡技術科学大学）

次世代半導体でワイドギャップ半導体であるGaNパワー半導体は，従来の半導体であるSi半導体の大電流キャパシティとSiCの高いバンドギャップと破壊電界強度を有しており，2つの材料の良いとこ取りした材料である。しかし，高負荷時では，高速すぎるターンオフによって定格を超えるサージ電圧がFETのドレイン-ソース間に発生する。回路インダクタンスが小さくても，ターンオフ時の電流変化率が大きく，結果的に大きなサージ電圧が発生し，電力キャパシティを制限，信頼性を著しく低下している。本研究ではゲート駆動回路の最適化を行い，デバイスの最大定格で動作させるための第一ステップとして，ゲートチャージコントロールによる出力パルス特性を評価した。

1-086

水処理用高出カバイポーラMarx発生器の開発

◎賀 陽・汪 鑫・須貝太一・江 偉華（長岡技術科学大学）

Bipolar Marx generators have emerged as an advanced technology for water treatment, offering significant advantages over conventional Marx generators. By generating high-voltage pulses with alternating polarities, bipolar Marx generators create stronger and more uniform electric fields. General bipolar Marx generators are using big inductor which will cause energy loss. Most bipolar Marx generators' switches need to endure the twice of input voltage.
Therefore, a bipolar Marx generator was developed and this circuit consists of the plus part and reverse part, which can work separately and the output also can be adjusted by increasing or decreasing the stage of Marx generator.

1-087

A Novel Pulsed Power Generator Circuit using Hybrid Energy Storage

◎Xijie Wang・Taichi Sugai・徳地Akira・Weihua Jiang（Nagaoka University of Technology）

Pulsed power has been widely used in the field of gas discharge with its characteristic of short pulse width and fast rise time. However, without discharge barrier to limit the current and prevent arc discharge, impedance variation is inevitable in gas discharge. Therefore, preventing the sudden current increase caused by the low impedance state of arc discharge has become the objective that we are striving for. In this research, we designed a Marx generator using hybrid energy storage(HES), which not only prevents the large currents caused by arc discharge and obtains rapid rise-time pulses, but also allows for partial energy recovery.

1-088

金属塩水溶液によるパルスパワー放電におけるヒドロキシラジカル生成への影響

◎鈴木隆聖・岡村春佳・中村健太郎・布川史章・矢沢勇樹（千葉工業大学）

本研究はパルスパワー放電をパルス電圧の極性を変えて金属塩水溶液に対して行い，それによるOHラジカルの生成にどのような影響を及ぼすのかを電流電圧波形から算出した放電の消費エネルギーと化学プローブ法によるOHラジカルの定量，放電発光スペクトルのピーク強度に関して評価し，それぞれがどのように関係しているのかについて検討したものである。結果から，OHラジカルの生成量は正極性放電の方が負極性放電よりも多くなることが示唆された。またKCl,CaCl₂はOHラジカルの生成を促進することが示唆された。MgCl₂はOH発光ピークで強い発光示したが液相におけるOHラジカルの量は少なかった。

1-089

ガラス電極刺入によるアニサキスの体内電位の計測

◎石上 陽・尾形洸綺・上田龍生・宇戸禎仁（大阪工業大学）・王 斗艶・波平隆男（熊本大学）

アニサキス食中毒は，お刺身やお寿司など魚介類を生のまま食べることにより引き起こされるが，近年，日本国内の食中毒発生件数のうち約4割をアニサキス食中毒が占めており年々増加傾向にある。アニサキスは寄生虫の一種で，太さ0.5〜1.0mm，長さ2〜3cm程度である。アニサキスは高電圧パルスを瞬間的に印加することで，生魚の風味に影響なく駆除できるが，その機序については不明な点が多い。そこで，アニサキスの体内電位を計測することで，パルス電圧殺虫法の機序解明を目指す。

1-090

高繰り返しナノ秒パルスAr/CH₄グロー放電プラズマ照射により成膜したDLC膜の機械特性

◎北口 蓮・玉越順也・大里辰希・菊池祐介（兵庫県立大学）

本講演では，高繰り返しナノ秒パルスAr/CH4グロー放電プラズマを用いて成膜したダイヤモンドライクカーボン（DLC）膜の機械特性を評価した結果を報告する。実験ではプロセスガス圧力0.36 kPa, 電源のパルス幅250 ns，周波数600 kHzとし，基板温度83℃から213℃にてプラズマを10分間照射し，膜厚約1.0 umのDLCをSi基板上に成膜した。その結果，膜硬度，膜密度は基板温度に対してほぼ線形に増加し，それぞれ約2.1 g/cm3, 約16 GPaが得られた。また，動摩擦係数は基板温度によらず約0.14と得られ，従来の低ガス圧プラズマ照射に比べて約10倍程度の成膜レートにて，高硬度，低摩擦力，低残留応力のDLC成膜を実現した。

1-091

細胞間の緩衝液が低温大気圧Heプラズマと細胞との電気的相互作用に及ぼす影響の数値解析

◎笠井直弥・石原卓也・中島大雅（千葉工業大学）・立花孝介（大分大学）・八木一平・内田 諭（東京都立大学）・小田昭紀（千葉工業大学）

低温大気圧プラズマは，常温常圧下で電子，イオン，活性種を高密度に生成可能である。これを生体に照射することで，医療効果を得ることができる。しかし，プラズマが細胞に与える電気的影響については測定が困難であることから未解明である。そこで，本研究は，低温大気圧Heプラズマモデルと細胞周囲の電気的等価回路モデルの連成モデルを構築し，プラズマ照射が細胞に及ぼす電気的相互作用を解析した。本研究では，細胞間の緩衝液に着目し，細胞膜間の液相が細胞に流れる電流にどのように作用しているかについて解析を行ったので報告する。

1-092

球雷放電によるインジゴカルミン分解処理特性

◎加世田倭杜・前山光明・稲田優貴（埼玉大学）

球雷放電は難分解性有機物に有効な活性種であるOHラジカルを高密度で生成でき，水処理への応用が期待されている。その水処理性能は放電の極性や電極材料によって変化する。この発表では処理性能に影響がある可能性が高い生成物と水処理性能の関係についての調査結果について報告する。
本研究では印加電圧3.5 kV，放電回数300回で球雷放電による水処理を行い，分光光度計を用いて波長と吸光度の測定をした。被処理物質には吸光波長が610 nmであるインジゴカルミンを用いた。
負極性放電では710 nmに副生成物が見られ，この物質が分解速度を遅らせていると考えられる。

1-093

高気圧高電界下での誘電体バリア放電によるトマト種子内部の殺菌処理

◎村上 叶・村上龍一・弓達新治・尾﨑良太郎・野澤 彰・門脇一則（愛媛大学）

種子内部に侵入する菌類は多く，トマトかいよう病菌もその一つである。我々はトマト種子内部に侵入したかいよう病菌を効果的に殺菌するため，高気圧下でのDBD処理を考案した。これまでの研究において，かいよう病菌に汚染されたトマト種子に対して大気圧での180分のDBD処理を施したところ，かいよう病菌の生菌率の低下は初期値から2桁程度であったが，本研究では4気圧でのDBD処理により生菌率がN₂ 100%で3桁，N₂ 95% + O₂ 5%では4桁程度低下した。さらにN₂ 100%では発芽率への悪影響が見られず，発芽率を低下させずに殺菌効果を向上させることに成功した。

1-094

発光分光法によるHe/O₂大気圧非平衡プラズマのO原子相対密度の診断に及ぼす電子エネルギー分布関数の影響

○中野俊樹・明石治朗・北嶋 武（防衛大学校）

高速繰り返し短パルス電圧と狭ギャップ電極系を用いたプラズマ生成は，大気圧下で非平衡性の高いプラズマを生成する上で有効な手法である。本報告ではHe/O₂ガスで生成したプラズマ中のO原子相対密度に与えるパルス電圧の立ち上がり時間の影響を発光分光法により診断し，その結果に及ぼす電子エネルギー分布関数（EEDF）の影響を検討した。EEDFとしてボルツマン方程式の数値解とマックウェル分布を用いて診断した結果，O原子相対密度はどちらの場合でも1以上となり，立ち上がり時間の減少によりO原子密度は増加することがわかった。この結果はいずれのEEDFでも定性的に同じ診断結果が得られることを示唆する点で重要である。

1-095

湿式コロナ放電を用いたウイルスサンプリング装置の基礎特性

◎座間滉人・木原聖次・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・沖野晃俊（東京科学大学）・神田一弘（横浜電子）・細田 悟（雷神の風/大田病院）

本研究では，湿式コロナ放電を用いたウイルスサンプリング装置の基礎特性としてオゾンの発生量を調べた。実験装置は主にポンプ，流量計，ダクト，カーボンブラシ電極と水電極によって構成した。カーボンブラシ電極に最大20.5 kVの直流正極性電圧を印加し，大気をダクト内風速0.1 ~ 0.4 m/s で流した。装置下流の排気ダクトから流通ガスの一部を吸引し，オゾンモニターを用いてオゾン濃度を測定した。その結果，オゾン濃度は電圧が高いほど上昇し,風速0.1 m/s，電圧6 kV で約0.1 ppm となった。また，風速が速いほどオゾン濃度は低くなり，風速0.4 m/s，電圧6 kV で 0.02 ppm となった。オゾン濃度は風速の上昇に対して反比例的に減少することが示された。

1-096

高風速型高電界電気集じん装置の開発

◎伊藤颯人・安本浩二・瑞慶覧章朝（神奈川工科大学）・江原由泰（東京都市大学）

本研究では，高電界ESPの高風速化を目指し，集じん率に対する風速と電極長の関係について検討した。その結果，電極長1000 mmにおける集じん率は風速2 m/sで平均87%であり，風速が増加するに従い集じん率が減少し，風速10 m/sで平均57%となった。また，電極長2000 mmにおける集じん率は風速2 m/sで平均88%であり，風速10 m/sの高風速においても電力をほとんど消費することなく平均75%の高い集じん性能を示した。電極長 1000 mm と比べると，ESP 内における DEP の滞在時間が長くなるため，2000 mm の方が集じん率が高くなった。