一般講演

7-001

非固定式の追尾型太陽光発電システムの設計

◎泉 大樹・神戸英利（東京電機大学）

近年，地震や台風などの自然災害による大規模停電のリスクが顕在化している。特に停電が長期化した場合，家庭や避難所での電力供給手段の不足が課題となる。本研究では，災害時に使用可能な個人向け太陽光発電システムを提案する。システムは，限られたスペースでの使用を想定し，展開可能な薄型フレキシブル太陽光パネルと，光センサおよびGPSモジュールを用いた太陽追尾機能を組み込むことで，発電効率の向上を図る。さらに，ポータブル電源に蓄電し，スマートフォンなどの情報端末への給電を可能にする。現在は，光センサと軌道計算の設計を進めており，今後は架台の展開機構や駆動部の実装・評価を行う予定である。

7-002

PVモジュールの超音波洗浄に適用可能な物理的な洗浄モデルの検討

小川大士・○田中正志（茨城大学）・乾 義尚（滋賀県立大学）

本研究では，超音波洗浄によるPVモジュールの表面洗浄の洗浄モデルを提案し，そのモデルを基に計算したモジュールの性能指標と実際にシミュレーションと同条件の洗浄実験で得た発電性能を比較することによって，今回提案する洗浄モデルの妥当性を検証した。その結果，計算と実験で得た指標はそれぞれほぼ一致して，提案モデルの妥当性を検証できた。

7-003

営農型太陽光発電における太陽電池アレイ下の環境観測

○髙島 工・大関 崇（産業技術総合研究所）・竹内大将・馬上丈司（千葉エコ・エネルギー）

農地の上部空間に太陽電池を設置し農業を継続しながら太陽光発電を行う営農型太陽光発電において，作物がどのような環境下におかれるかを事前に知ることは営農型太陽光発電の実施にあたって必要不可欠なことである。本報では，福島県内の水稲圃場に設置された営農型太陽光発電設備にて太陽電池アレイ下の環境を観測した結果を報告する。慣行区と比較して試験区（遮光率40%）では，(1)積算日射量は慣行区の半分程度，(2)日照時間は3割程度，(3)風速は4～5割低下，(4)気温や相対湿度は同等，との結果を得た。

7-004

LCAを用いた太陽電池のリサイクルにおける電力のCO2排出原単位減少による影響

◎中村湧真・重信颯人・髙橋明子・伊藤雅一（福井大学）・大関 崇（産業技術総合研究所）・津野裕紀（PVSQマネジメント）

FIT制度により太陽電池が大量導入され，寿命の20～30年後である2030～2040年に大量廃棄が懸念される。また，カーボンニュートラル（CN）実現に向けて電源のCO2排出原単位は減少しているが，これによるリサイクルへの影響は議論されていない。本研究では，ライフサイクルアセスメント（LCA）を用いて太陽電池のアルミニウム，銅，ガラス，銀のリサイクルを想定した。2050年のCN実現時の電力と各年代の電力のCO2排出原単位を想定すると，2022年と比較して13.6%のCO2排出量の減少が確認できた。また，原料採取から製造する場合のCO2排出量を比較すると，リサイクルによって全体で65.6%のCO2排出量が削減でき，特に，アルミニウムで89.3%の削減ができた。

7-005

CNNを用いた日射量推定法における自動色調補正機能付きカメラ画像使用時の時刻データの利用

◎中村健人・髙橋明子・重信颯人・伊藤雅一（福井大学）

畳み込みニューラルネットワーク（CNN）を用いた画像解析による日射量推定手法では，自動色調補正機能を無効化した画像が使用される。しかし，一般的なカメラでは自動色調補正機能が付いており，無効化することが難しい。そこで本研究では，自動色調補正機能の有無による日射量推定精度の比較，および時刻データを利用，CNNの構成を変更することによる推定精度への影響を検証した。その結果，自動色調補正機能有の場合は推定精度が悪化すること，モデルの構成を変更し10進数で時刻データを利用することで推定精度が改善し，学習時の上位モデルのみを使用することで，推定時の計算量を削減しつつ時刻データを使用しない場合と比較して推定精度が13.93%改善することを確認した。

7-006

RGB画像化した気象データで構築する畳み込みニューラルネットワーク日射量予測手法

◎熊野杏耶・重信颯人・髙橋明子・伊藤雅一（福井大学）

太陽光発電（PV）システムの安定運用には，高精度な日射量予測が必要である。気象庁のMSM予測データは，PV出力予測において広く活用されている。本研究ではまず，MSM予測データの予報時刻の違いによる日射量予測精度の分析を行う。次に，日射量，気温，相対湿度を活用したRGB画像を用いたCNN日射量予測手法を提案する。提案手法では，MSM予測データの更新を考慮し，3日前21時から当日3時の予報データ（計11断面）の各要素をR・G・Bとして当てはめ，画像化した。結果として，提案手法は，既存手法よりも変動の捉え方で劣るものの，画像化による新たな説明可能性の提供が今後期待される。特に，画像の元となる気象データの予測精度向上が重要な課題であることが示唆された。

7-007

日射予測大アンサンブル生成に向けた最適な確率分布の選択

◎中山俊太朗・大竹秀明・高松尚宏・大関 崇（産業技術総合研究所）・山口浩司（日本気象協会）

太陽光発電の発電量は気象条件により変動するため，日射の予測が重要となっている。日射予測の高精度化にあたり，筆者らはアンサンブル予報に着目し，アンサンブル予報のメンバー数を増やすための手法について検討を行ってきた。本報告においては，確率分布からのサンプリングにより大アンサンブル予報を生成するために，最適な確率分布の選択を行った。確率分布を生成するモデルは機械学習により構築し，説明変数としてMSMの各予報値，目的変数として観測値を使用している。比較の結果，ジョンソンSU分布が適していることを確認し，確率分布の中央値を使用することで，MSMの日射予報の予測精度を改善することができた。

7-008

Voitenko型プラズマ発生器を用いた爆薬駆動MHD発電機の数値解析

◎首藤悠汰（防衛装備庁）

爆薬により生成したプラズマを磁界が印加された流路に流すことにより，流体の熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する爆薬駆動MHD発電機について，プラズマ発生器として，超高速のプラズマを得られるVoitenko型プラズマ発生器を用いた場合の数値解析を実施した。作動流体はアルゴンとし，3価の電離まで考慮した。数値解析の結果，プラズマ速度は，プラズマが球台から管に進入する際に上昇し，40km/s以上に達した。また，それと同時に電離も活発化し，Ar¹⁺及びAr²⁺の密度が減少する一方，Ar³⁺の密度の上昇が見られた。MHD発電機の出力電力は約580MWまで達し，同軸型プラズマ発生器を用いた場合の約36倍の出力を得られた。

7-009

出力調整用低温駆動希ガスMHD発電機の電離度制御に向けた予備実験

◎山口拓海・菊田陽奈・田渕宏太朗・藤野貴康（筑波大学）

本研究では，自然変動性再エネ電源大量投入時の出力調整用電源として，従来よりも低温（作動ガス全温度1300 K）程度で駆動させる外部高周波(RF)電力利用希ガスMHD発電機を用いることを想定している。同発電機は，このRF電力の調整により，プラズマの電離度を制御し，発電出力の調整を行う。それ故，同発電機の実用化には，RF電力の調整による電離度制御技術の確立が不可欠となる。このRF電力の調整により，プラズマの電離度を制御し，発電出力の調整を行う。それ故，同発電機の実用化には，RF電力の調整による電離度制御技術の確立が不可欠となる。そこで著者らは，出力調整用低温駆動希ガスMHD発電機のためのRF電力利用プラズマ生成・電離度制御技術の開発を最終的な狙いとし，その最初の取り組みとして，同発電機を模擬したRF電力利用プラズマ生成容器を製作し，生成されるプラズマの電子温度・電数密度・電離度の計測・評価技術の確立を目的にした予備実験を現在進めている。本発表では，同実験装置を用いたプラズマ生成実験，またそこで生成したプラズマに対してプラズマ診断を行い，電子温度や電子数密度といったプラズマパラメータを評価した結果について概説する。

7-010

巻取式慣性モーメント制御型固定速フライホイール蓄電装置の放電検証

◎菅田凌雅・松原建志・近藤潤次（東京理科大学）

近年，分散型電源の急速な導入により電力需給アンバランスの拡大や系統慣性力の相対的な減少に伴う系統周波数の安定性低下が問題となり，解決手段として蓄電設備の重要性が増している。フライホイール蓄電技術は短時間充放電能力やサイクル寿命に優れており，筆者らは周波数変換器を介さず発電電動機を電力系統に直結し慣性モーメントの変化により充放電する固定速方式での充放電を現在研究中である。本論文では，慣性モーメント制御を巻取機構で実現した試験機を大型化し，充放電時間延長による計測精度向上を図るとともに，放電動作を検証した。その結果，従来比5倍の推移時間を確保しエネルギー放出に成功したが，放電効率の向上が課題として残った。今後，効率改善を進める予定である。

7-011

風力発電量予測のためのアンサンブル予報を用いた決定論的風速予測

◎小谷 航・吉田健人・田邊隆之（明電舎）

本稿では，再生可能エネルギーの導入や活用が進められている状況下で，その発電量が天候に大きく左右されるという課題を踏まえ，風力発電を対象に当日および翌日分の決定論的風速予測を検討した。特徴として，従来の単一の数値気象予報データに加えて，アンサンブル数値気象予報データを入力とした予測モデルを構築した点が挙げられる。2種類の数値気象予報データは互いに予報間隔が異なるため，適切な前処理が必要であるが，本稿で使用する予測モデルは異なる予報間隔のデータを統一的に扱うことができる。結果として，単一の数値気象予報データのみの場合と比較して予測精度が向上したものの，その改善率は限定的でありさらなる改良が必要であると考えている。

7-012

確率モデルを用いた風速予測制御の基礎検討

◎勝川一途・梅村敦史・高橋理音（北見工業大学）

昨今,球温暖化の抑制を目的に風力発電が増加しているが,風力発電の出力は風速によって変動し不安定である。系統に不安定な電力を送ることは系統バランスを大きく乱す要因となる。現在のように風力発電力が少なければ影響は小さいが,今後さらに増加し系統への影響も増加していくと看過できない大きな問題となる。本稿では風力発電の出力を予測し蓄電池で平滑化を行うための方法として風速データをもとにその地域の風速の確率分布を予測し,その確率分布からその地域の平均風速を算出,それをもとに風力発電機出力を算出し制御に用いることで風力発電の出力平滑化を達成することが出来た。

7-013

電流形直列接続方式ウインドファームの出力に関する検討

○西方正司・竜田藤男（東京電機大学）

洋上風力発電の導入促進のため，技術開発によるコスト削減が期待されている。現在，風力タービン／発電機の出力を，洋上変電所において並列接続して高圧直流電力を送電する方法が実用化されているが，洋上変電所はコストが嵩むなどの課題がある。本稿では，洋上変電所の不要な電流形直列接続方式ウインドファーム(WF)の風車としてIEA15MW Offshore Reference Wind Turbineを適用した場合の出力について，洋上の風速変動を考慮して検討した。その結果，単一風車の平均出力に対する出力変動の標準偏差の比率は 39.38% であるのに対し，36機の風車からなるWF の場合は 6.24% であり，出力平準化効果が達成されることを確認した。

7-014

風力発電機ブレードの音響イメージング技術による劣化診断

◎藤田博仁・佐藤 学（ユカインダストリーズ）・松本 聡（芝浦工業大学）

風力発電所設置台数は増加しているが，過酷な環境下に設置されていることが多く，風車ブレードは日光，落雷，雨，雪などにより損傷を受け，空力性能が低下し，さらに損傷が進行するとブレードの折損に至ることから，定期的にメンテナンスを実施し，設備の健全性を維持する必要がある。ブレードの損傷はドローン技術等を活用した監視手法が一般に用いられているが，今回，音響カメラを利用した音響イメージング技術によっても損傷箇所を特定できるか検討した。音響カメラを用いて風車ブレード風切り音を計測し，風切り音の中に含まれる特徴的な周波数の音源位置を特定した。音響カメラにより特定した音源位置とドローンによる観察結果を比較した

7-015

再生可能エネルギーを用いた水電解の評価技術構築とその展望

○前田哲彦・小島宏一・長澤兼作・五舛目清剛・津田勇希・小林靖和・佐久間雄一（産業技術総合研究所）

NEDOグリーンイノベーション基金事業に，産業技術総合研究所から提案した「再生可能エネルギーシステム環境下での水電解評価技術基盤構築」について，その内容，設備概要，展望を紹介する。

7-016

再エネを利用した水素プラントにおける炭素強度演算方法

○田丸慎悟（東芝エネルギーシステムズ）・久保田和人（東芝インフラシステムズ）・上滝直樹（東芝エネルギーシステムズ）

日本でも水素の製造・供給工程において低炭素水素の基準（3.4kg-CO2e/kg-H2）が設定された。低炭素水素の供給に向けて，各水素プラントにて水素製造時における炭素強度(CI: Carbon Intensity)の演算が必要となる。大規模水素プラント「福島水素エネルギー研究フィールド（FH2R）」では，オンサイトPVによる発電電力と，電力系統から電力を受電して水素を製造する。本稿では，FH2Rにおいて製造された水素の炭素強度の演算方法の一例を示す。海外のCI値算定ルールを参考にFH2Rにおける算定ルールを立案し，製造した水素は電源種によるラベル分けが可能とした。シミュレーションにより，系統由来水素と再エネ由来水素のそれぞれのCI値の演算結果を示す。

7-017

多接続水電解システムの劣化診断手法の実用化に向けた適用条件に関する検討

◎葛 家宸・軍司 章・水上貴彰・杉政昌俊（日立製作所）

カーボンニュートラル社会の実現に向けて水素利用の拡大が見込まれており，将来の水素需要を満たすための手段の1つとして，水電解システムが注目されている。水電解システム運用上の課題の一つは水電解スタックの劣化状態の把握であり，システムを停止することなく，簡便な設備構成で劣化状態を診断することが求められる。水電解スタックの劣化は，電気触媒の劣化と電解膜の劣化に分けられる。電解膜の劣化によって発生するピンホールは爆発の原因となるため，電解膜の劣化状態を表す電気抵抗R₀の分離が極めて重要である。これまでに，運転中に供給電流を大きく変えることなく，個々の水電解スタックの電気抵抗R₀を分離する方法（スイープ法）を提案した。本報では，診断対象のセル仕様が診断精度や診断条件に与える影響を明らかにすることを目的とした。

7-018

高電圧水電解システムの絶縁配管内における気液混合状態での電気絶縁性の評価

◎藤田晋士・米須大吾・軍司 章・杉政昌俊（日立製作所）

大容量の水電解システムは，電力系統に接続する際，高電圧系統から受電する必要があるが，既存の水電解スタックの運転電圧は数百V程度であるため，変圧器や整流器が複数必要となり，電源システムが大型化する。我々は，電源システムの小型化のため，水電解スタックを多直列接続して自励式変換器で駆動させる構成を検討しており，これまでに定格8Vの水電解スタックに碍子と絶縁配管を設ける構成で，1300V以上での運転を実証している。水電解スタックの酸素・水素の吐出側は，純水との気液混合であり，気泡形状により電位分布が変化して，放電する可能性がある。本報告では，絶縁配管内の気液混合時の絶縁性を解析評価した結果を報告する。

7-019

交流インピーダンス法と機械学習を用いた水電解装置の状態推定における測定時間の短縮

◎伊木涼真・片山 昇（東京理科大学）

近年，蓄電用途や工業的な用途として，水電解技術が注目を集めている。水電解装置を運用する上では，その運転状況や劣化状況などの状態を監視することが重要である。
交流インピーダンス法 (EIS法) でインピーダンスを測定し，そのデータから状態を推定することは，水電解装置に限らず燃料電池やリチウムイオン電池などでも行われている。しかしながら，EIS法は測定中に状態が変化しないことを前提としており，測定にかかる時間が長いと測定中に状態が変化してしまうおそれがある。測定時間を短縮するために，特に測定時間の大半を占める低周波数側の測定点を減らすことが効果的である。
一方で，インピーダンスと状態との間の関係は未だ完全には解明されていないため，我々はEIS法に加えて，機械学習の一種であるニューラルネットワーク (NN) を用いた状態推定について提案してきた。本研究では，NNの推定精度に影響を与えることなく，低周波数側の測定点を減らすことにより，測定時間を短縮することを目的とした。

7-020

固体高分子形燃料電池におけるセグメント化触媒層を作製する静電噴霧法の条件の検討

◎吉田英司・荒井 輝・片山 昇（東京理科大学）

固体高分子形燃料電池（PEFC）の触媒層は電気化学反応が生じる重要な部分であり，反応物濃度の分布に応じた触媒インクの塗布を行ったセグメント化触媒層を作成することが性能向上に有効である。本研究では，静電噴霧法を用いた触媒層のセグメント化において課題となる塗幅の不均一性を改善するため，噴霧条件とマスク形状を検討した。白金担持カーボンを用いた触媒インクを噴霧し，印加電圧やマスク間隙を変更して触媒層を作製した結果，電圧10.0kVおよびマスク間隙1.5mmの条件で，最も均一な塗布幅と目標値に近い塗布が実現した。本研究は触媒層デザインの最適化に向けた基盤を提供するものである。

7-021

アンモニア分解流路付き円筒横縞形SOFCスタックの性能評価

◎石津颯也・安藤 巧・小椋晴貴・田中正志（茨城大学）・乾 義尚（滋賀県立大学）

著者らはアンモニア分解流路付き円筒横縞形SOFCスタックを提案している。本研究では分解流路の設置がスタックの温度分布や発電性能に及ぼす影響について検討を行った。

7-022

複数熱源を持つ熱電併給システムの最適化検討

◎堀内碧人・馬場旬平（東京大学）・雨宮 俊（東京ガス）

熱電併給システムでは電力だけでなく熱フローも考慮してより複雑なシステムに対しての最適化が必要となる。本稿ではガスコージェネレーションを中心とするシステムのコストおよびCO2排出量を抑えた最適な運用方法を特定するための第一歩として，ランニングコストの最小化を目的に混合整数計画法による設備運転の最適化を行った。その結果，系統からの受電とボイラーの稼働を減らす代わりにガスコジェネレーションの負荷率を上げる運用が導き出された。排温水を温熱供給に活用したことでボイラーでの燃料消費が減り年間のランニングコストが減少する結果が得られた。

7-023

太陽熱集熱器とヒートポンプ給湯器の運転制御による省エネルギー化の検討

◎中村智哉・平松 誉・竹本泰敏（日本工業大学）

カーボンニュートラルへの取り組みとして，ZEH，LCCM住宅をはじめとする低環境負荷住宅が推進されているが，創エネルギー設備として太陽光発電を採用することが多く，昼間時間帯の発電構成で太陽光発電が占める割合が増加する。このため，近年では，再生可能エネルギーの効率的利用，系統逆潮流抑制の観点から蓄電設備を併設することが多い。しかし，蓄電設備は経済的負担が課題となる。そこで，本研究では，太陽光発電と太陽熱集熱器の併用，ヒートポンプ給湯器の運転制御により昼間時間帯の余剰電力削減を提案すると共に，提案システムにおける二酸化炭素排出量削減効果と，経済的負担低減効果を数値解析から明らかにする。

7-024

家庭用エアコンの遠隔制御技術の開発

○大山達也・加藤 尚・村上純一（東北電力）・奥瀬俊哉（セカンドフェイズ）・堀内賢一（日本ウェルネスソリューションズ）・大舘陽子・上田博三（Crossdoor）

遠隔地からインターネット回線を介して制御可能な家電機器の普及が進んでおり，これらの機器を自動制御し，再エネ普及拡大にともなう電力需給調整に活用する検討が進んでいる。現在では，家電の制御規格であるECHONET Liteを用いて，蓄電池・エコキュート，エアコンなど，様々な家庭用の電気製品を制御することが可能となっている。しかしながらECHONET Liteを用いて家庭用の電気製品を制御する際には，HEMSコントローラーなどが必要となり，一般的に高コストとなる傾向があることに加え，ECHONET Liteに対応した新しい電気製品以外は制御できないという課題がある。このため，システムの広い普及を考え，すでに普及しているエアコンに着目し，これらを安価に制御するために，赤外線を用いて制御する方法を開発した。

7-025

東日本の再生可能エネルギーの地域別導入量とヒートポンプ給湯機の需要能動化の最適化分析

◎志村啓紀・山本博巳（東北大学）

本稿では，2030年のCO₂排出量46%削減（2013年度比）を低コストで実現するシナリオを検討する。
東日本における再生可能エネルギー電源(VRE)の地域別の配置と，ヒートポンプ給湯機(HPWH)によるデマンドレスポンスが，エネルギーチェーンのコストに与える影響について分析する。筆者らが開発した，電力システムの制約を考慮した多地域エネルギーチェーンモデルを用いて，1次エネルギー供給から需要家によるエネルギー消費に至るまでのコストの解析を行う。試算の結果として，VREの新規導入容量の地域別の最適化とHPWHによる需要能動化を組み合わせることで，CO₂排出量46%削減を達成した状態で，エネルギーチェーンの総コストが低減される。

7-026

燃料電池発電FCおよび電気自動車EVが導入されたマイクログリッドの過渡的電気特性に関する研究

◎尹 一博・呉 国紅・和 敬涵（東北学院大学）

本研究では，再生可能エネルギー発電の導入拡大に資するマイクログリッドの過渡的電気特性について検討した。そのために，太陽光発電と燃料電池などの分散型電源や，電気自動車と電解槽などの直流負荷を有するマイクログリッドシステムを構築し，シミュレーションモデルを作成してシミュレーション研究を行った。加えて，複数の分散型電源の効率的な協調運転を実現し，システム内の電力需給バランスを維持するためのエネルギー管理システムも設計した。MATLAB/Simulinkを用いたシミュレーション結果によって，太陽光発電電力が大きく変動しても，システム全体の迅速な応答により直流母線電圧が安定的に維持されることを確認できた。

7-027

浪江町を対象としたカーボンニュートラルのエネルギーチェーンの分析

◎望月雄真・志村啓紀・山本博巳（東北大学）

福島県浪江町は，東日本大震災からの復興と地域活性化を目指して再生可能エネルギーの導入を進めている。そこで，浪江町を対象に再生可能エネルギーを活用したエネルギーチェーンの最適化計算を行った。本稿では，太陽光，風力，バイオマスを一次エネルギー源とし，バッテリおよび水素貯蔵を導入した独立型エネルギーチェーンモデルを設計した。モデルを線形計画法を用いて最適化し，エネルギーフローや発電コストを評価した。結果として，再生可能エネルギー電源を主体としつつ，水素貯蔵やバッテリを活用したエネルギー供給が可能であることが示された。本稿では，最適化計算の詳細とその結果について報告する。

7-028

グリーン燃料活用分散発電システムのビル需要向けエネルギーマネジメント方法の検討

◎小祝隆太郎・島田敦史・熊野賢吾（日立製作所）・田中光太郎（茨城大学）

需要家における分散発電システムは災害時リスク低減，地域配電系統の安定化等で有効であるが，これまでに小規模の天然ガス水素混焼エンジン発電機は実用化事例が少ないことから検討例が少ない。
本稿では空調使用に起因する季節電力需要変動が大きい特徴をもつビル需要家をユースケースとして，PV余剰電力から水素を製造・貯蔵し水素混焼発電するシステムを対象に，系統電力と比較してCO2排出量を50%以上削減するシステム構成および運用方針について検討した。その結果，本稿の検討条件において，長期・大容量が要求されるシステムでは蓄電池システムと比較し，水素活用分散発電システムがCO2削減および電力コストの面で有効であることを示した。

7-029

ラミネート型リチウムイオン電池に対するリプル電流の影響評価

◎平井勢児・西口博人（三菱電機）

電力変換器にリチウムイオン電池（以下，LIB）を接続した機器では，LIBに流れるリプル電流を低減するためにコンデンサが用いられており，基板コストの増大が課題であった。これまでリプル電流を模擬した正弦波電流を円筒型LIBに通流し，上限電圧を超過する場合にLIBの容量の低下，抵抗の増加が促進されることを明らかにしてきた。今回は，電池形状によって正弦波電流による劣化促進に差異があるかを確認するため，ラミネート型LIBに正弦波電流を通流し，LIBの容量低下等について検討した。その結果，正弦波電流の通流有無でLIBの劣化挙動に差異はなく，ラミネート型LIBではコンデンサを小型化できる可能性がある。

7-030

リチウムイオン電池の定電力充放電性能解析（1）－正極活物質材料の影響－

◎小島光太・河野昭彦・藤田洋司・池永訓昭（金沢工業大学）

本発表では，リチウムイオン電池（LIB）の正極活物質が定電力充電性能に与える影響を解析する。市販LIBでは構成材料の詳細が不明なため，学術的な電池性能比較が困難である。そこで，正極材料LiCoO₂，LiNi_1/3Mn_1/3Co_1/3O₂，LiFePO₄(LFP)以外全て同一の構成材料を用いた3種類のLIBを組み立て，従来の定電流制御による評価ではなく，実用途で重要な電力制御で性能を比較する。LFPを用いたセルは他のセルと比較して電圧が低くエネルギー的に不利であるものの，大電力充電では充電継続時間が最長であることに起因して，最高の充電エネルギーが得られたことを示す。これらの結果から，LFPが高電力条件において急速充電性能に優れている可能性があることを報告する。

7-031

リチウムイオン電池の定電力充放電性能解析（2）－物理ベース回路シミュレーションモデルによる状態推定－

○河野昭彦・小島光太・藤田洋司・漆畑広明（金沢工業大学）

筆者らは，リチウムイオン電池（LIB）と電力変換器との協調制御の高度化のために，LIBの新規な物理ベース回路シミュレーションモデルを開発し，報告してきた。本発表では，このモデルを実際のシステムのエネルギーフローに近い電力制御充放電シミュレーション解析に応用した結果を述べる。実測値との比較により，本モデルは，3～4C程度の高負荷電流が継続的に発生する大入出力での電力制御充放電特性（充放電時の電池出力電圧および充放電電流の時間変化）が高精度に解析できることを示す。また，本モデルによりリアルタイム推定されたLIB内部の反応種，電流，電位等の分布を示し，モデルの電池状態推定器としての性能を報告する。

7-032

層状およびオリビン型正極材料を混合したリチウムイオン電池正極の電気化学特性

◎安部勇輔・三澤祐介・瀬川裕康・熊谷誠治（秋田大学）

本研究では，オリビン型LiMn_xFe_1-xPO₄に層状遷移金属酸化物LiCoO₂を混合したリチウムイオン電池正極を製造し，その電気化学特性を評価した。その正極中において，LiMn_xFe_1-xPO₄とLiCoO₂の混合比率を変化させることで，リチウムイオン電池正極としてのLiイオン脱離挿入時における挙動を評価し，Liイオン脱離挿入比容量の向上やレート特性の改善が実現できる混合条件を調査した。さらに，LiMn_xFe_1-xPO₄を単体で用いた場合における正極の電圧変動を，LiCoO₂の混合によってその軽減が可能かどうかについても電圧プロファイルおよびdQdV解析から詳細に評価した。その結果，混合正極中におけるLiCoO₂の混合比率が支配的だと，諸性能の向上や電圧変動の軽減が可能であることが明らかになった。

7-033

リチウムイオン電池の非破壊劣化解析手法の検討

○加藤 尚（東北電力）

定置用蓄電システムとして期待されるリチウムイオン電池に着目し，市販のリチウムイオン電池の非破壊劣化診断として，充放電時の電圧容量微分（dV/dQ）解析による容量低下傾向および充放電曲線解析による内部抵抗の経時的変化について調べた結果を報告する。対象とした電池では容量劣化と内部抵抗増加に直線的相関があることを把握した。

7-034

Li析出リスクを低減するLiイオン電池の交流加熱方法の検討

◎堀口颯空・宮野竜一・足立将一（静岡大学）

近年の自動車の電動化や定置用蓄電池の普及に伴い，リチウムイオン電池の需要が増加している。しかし，低温環境下では内部抵抗の増加によるリチウムイオン電池の性能低下や充電時のリチウム析出が懸念される。そのため，リチウムイオン電池を適正温度までの加熱・維持することが求められる。本論文では，電池の内部抵抗を利用する交流加熱を採用する。交流加熱では，振幅が大きく低周波数の交流電流を使用することで，目標温度到達への消費電力量を低減が可能な一方，低周波数ではリチウム析出による劣化が懸念される。そこで，リチウム析出への影響と消費電力量を評価指標とし，最適な振幅および周波数の交流加熱法を検討する。

7-035

容量および内部抵抗が異なるセルを並列接続した組電池の挙動

◎土屋拓也・足立将一・宮野竜一（静岡大学）

電動車両の駆動源となるLiイオン電池を他用途にリユースする取り組みが進められているが，これらの電池は新品時と比較して性能ばらつきが大きい。このため，リユース先で必要となる要求仕様に応じて，新たに組電池を作成する際に，個々の電池の挙動を把握するのが難しくなる。今回は性能の異なるセルを並列接続した場合の挙動について検討する。容量と内部抵抗と劣化の影響を切り分けるため，内部抵抗が同じで容量だけが異なるセル，容量は同じで内部抵抗だけが異なるセルを並列接続した組電池モデルを用意し，それぞれを定電流放電した場合を模擬した。その結果，容量劣化と内部抵抗劣化とでは充電状態の高低関係が逆に推移することがわかった。

7-036

脱炭素社会を経済的に実現する蓄熱発電

○岡崎 徹（エネルギー総合工学研究所）

経済的な脱炭素社会の実現のため，世界で蓄熱発電が注目され始めた。蓄熱発電は，系統電力をヒータ等で熱に変え，蓄熱し，必要時に発電することで需給調整し，系統の安定化を図る。蓄熱からの発電は，典型的には蒸気タービンを用いるため高くとも40%程度の効率で，非合理的に見える。しかし蓄熱設備は蓄電池等と比較して圧倒的に低コストで，また揚水発電の様な立地制限が無い。さらに既存の石炭火力等を段階的な蓄熱発電化することも可能である。産業の熱需要にも容易に対応できる。この蓄熱発電の国内外の開発状況を報告する。この蓄熱発電の中で，世界でもほとんど検討されていない電熱変換を回転機による低コスト化も検討している。

7-037

回転発熱機向け誘導機のT-Ⅱ形およびT形等価回路に基づく回路定数の比較検討

◎金井拓磨・劉 佳雨・大口英樹（東海大学）・今盛 聡（富士電機）・岡﨑 徹（エネルギー総合工学研究所）・三浦友史・斎藤博起（長岡技術科学大学）

本研究では余剰電力を蓄える方式として蓄熱発電に注目し，その電熱変換装置である回転発熱機について電気学会ベンチマークモデルである K モデルをベースとしたかご型ロータ，円筒および溝付きソリッドロータの等価回路定数を電磁界解析によりT形・T-Ⅱ形等価回路を適用し算出，比較検討を行った。
結果，かご型に比べ2つのソリッドロータは漏れ磁束が流れやすく漏れリアクタンスが大きくなることが明らかとなった。また，T-II形とT形の励磁リアクタンス，漏れリアクタンスはおおむね一致した。T-II形ではロータ変更の影響の比較が容易となった。

7-038

回転発熱機向け誘導機における滑りが発熱量に与える影響に関する研究

◎劉 佳雨・大口英樹（東海大学）・今盛 聡（富士電機）・岡﨑 徹（エネルギー総合工学研究所）・三浦友史・齋藤博起（長岡技術科学大学）

近年，再生可能エネルギーによる発電量が増加しており，余剰電力を蓄えるにあたり蓄熱発電が注目されている。また蓄熱発電システムにおける電熱変換装置として回転発熱機の適用が検討されている。回転発熱機ではロータの発熱量をなるべく大きくすることが求められる。
本研究では，かご型ロータと溝付きソリッドロータ誘導機において，滑りを変化させた場合の発熱量を電磁界解析により明確化することを目的とする。ステータのつばの有無やロータスロット数が発熱量に与える影響を検討したので，報告する。

7-039

回転発熱機の熱流体解析

○榎並義晶・今盛 聡（富士電機）・岡崎 徹（エネルギー総合工学研究所）

回転発熱機は余剰電力を熱として貯蔵し，必要に応じて発電する蓄熱システム向けの装置である。本研究では流体の摩擦熱だけで加熱する方式の回転発熱機の実験機について熱流体解析を行い発熱量を検討した。解析の結果，装置全体の発熱量は416W，外部への放熱量は27Wで，温度上昇に寄与した熱エネルギーへの変換効率は93.5％と高く，摩擦熱だけでも回転発熱機を実現できる見通しを得た。今後の課題は解析結果の精度評価や，誤差要因が発熱量に与える影響の検討である。

7-040

2011東日本大震災14年後でみる太陽光・火力・原発再稼動の状況と電力安定供給

○白川晋吾（IEEJプロフェショナル会）

2011年3月11日14：46東北太平洋側沖大地震M9が発生，福島第一原発に大津波15.7mが侵入，原子炉電源破壊・冷却不能・異常過熱で原子炉6基中4基が損壊，その後約14年，福島第一原発と同型の女川原発2号機，島根原発2号機が2024年12月26日に運転復帰，他方，九州・関西・四国エリアでは原発は復旧・稼働している。本稿では主要電力エリアでの太陽光発電・火力発電・原発再稼動・電力安定供給に関して述べる。

7-041

2050年のカーボンニュートラルの先を見据えた創電の提言

○木下繁則（IEEJプロフェショナル）

昨年の本大会では，過去の石炭，石油利活用来の大気環境対策の経緯を踏まえて，現状の石炭，石油利活用由来の地球温暖化対策を提言した。，地下資源は有限であるので，将来に向けては，地下資源に頼らない創電の検討が必要であると考える。そこで，本稿では2050年のカーボンニュートラルの先を見据えた創電について提言する。再生可能エネルギーとして実用化が進められている太陽光発電や風力発電は天候に大きく左右される。特にPV発電は昼間のみの発電であり，夜は発電できない。本稿の提言のポイントは昼間のPV発電の余剰電力で水を揚水池迄汲み上げて，PV発電の電力のない夜間に発電する小容量揚水発電システムの提案である。

7-042

鉱物資源を考慮したカーボンニュートラル実現可能性の分析

◎藤原 陸・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギーシステムの転換に伴い，鉱物資源の需要が急増している。本研究では，鉱物資源の制約がエネルギー技術選択に与える影響を動学的最適化モデルを用いて分析する。特に，鉱物資源の価格変動や供給制約がエネルギーシステムの費用や技術構成に及ぼす影響を評価し，再生可能エネルギーや次世代自動車の実現可能性を明らかにする。エネルギーと鉱物資源の関係性に焦点を当て，資源制約下でのカーボンニュートラル実現の可能性を多面的に評価することを目的とする。

7-043

逆阻止型IGBTの極低温冷却下の導通損失評価

◎増田光希・許 航・野村新一（明治大学）・力石浩孝（核融合科学研究所）

本研究は，超電導マグネットの電源設備の小型化・低損失化を目標としており，特に逆阻止型IGBTのオン抵抗が低温でどう変化するかを検討する。超電導マグネットの電源には数十kA程の電流容量が必要であり，従来のサイリスタは導通損失が大きいため設備が大型化するという問題点がある。低温下では格子振動の抑制によるオン抵抗の減少とキャリア密度の減少によるオン抵抗が増加のバランスが重要となる。実験結果より，小電流通電時にはオン抵抗が増加し，大電流通電時にはほぼ変化しないことが確認された。これは，半導体素子の発熱によりジャンクション―パッケージ間に温度勾配が生じ，熱電対による温度測定がジャンクション温度の推定に寄与していない可能性が考えられる。今後は熱電対の配置数を増やし実験するとともに，パッケージの熱特性を調べる。

7-044

極低温で使用する電力変換器用半導体素子のオン抵抗測定

○力石浩孝（核融合科学研究所）

大電流低電圧の超伝導コイル励磁電源を小型にするために，変換器本体を極低温領域に置く構成を検討している。この構成において，負荷が大インダクタンスの超伝導コイルであり使用電圧も低いためスイッチ素子には高速動作は必要ではなく，通電時の電圧降下低減がより重要である。本研究では，半導体スイッチ素子の極低温での可能性を探るため，市販されている素子について極低温下でのオン抵抗低減の効果を調べた。

7-045

JT-60SA TFコイルの位置ずれによるコイル間相互インダクタンスの評価

◎数野未結・吉田涼風・小林倫香・中村一也・髙尾智明（上智大学）・園田翔梧・村上陽之・濱田一弥（量子科学技術研究開発機構）

JT-60SAの超電導コイルはトロイダル磁場(TF1-18)コイル，平衡磁場(EF1-6)コイル，中心ソレノイド(CS)からなる。EFコイルとCSに通電した際TFコイルのクエンチ検出電圧にクエンチ検出の閾値を超える電圧が確認されている。設計ではEFコイルとTFコイルは直交しており誘導電圧は発生しないが，コイルの設置誤差により相互インダクタンスが変化し誘導電圧が発生したことが原因の一つと考えられる。
本研究では，TF1と各EFコイルを含む解析モデルを有限要素法解析ソフト COMSOL Multiphysicsを用いて作成し，TF1の傾きがEFコイルとの相互インダクタンスに与える影響を定量的に評価した。

7-046

多層磁気面法と電磁流体力学の関係

○筒井広明・王 靖霆（東京科学大学）

磁場閉じ込め核融合装置の非軸対称プラズマ平衡は電磁流体力学で記述される。一方，プラズマを変形可能なコイルでモデル化した多層磁気面法では系を電気回路で表している。本研究ではそれらの関係を示し，多層磁気面法でプラズマの平衡，安定性を論じることができることを示す。

7-047

超高密度ステラレータ型核融合プラントの検討

○鈴木康浩・廖 佳輝（広島大学」）

Qを大きくするためのシナリオは，現在，中心温度Teを上げる事が有力と考えられている。中心密度neの高い領域から，Qが大きい領域にアクセスしようとすると，熱的不安定性が現れる領域を通過する必要があり，核融合プラントのシナリオとしてふさわしくないと考えられるためである。しかし，中心温度Teを高くするシナリオは，ダイバータの熱負荷が大きくなるなど核融合プラント実現を難しくする様々な問題を生む。そこで，ダイバータの熱負荷の問題を避け，より簡単にQが大きい領域にアクセス出来る超高密度シナリオを採用したステラレータ型核融合プラントを検討する。

7-048

核融合プラント開発の商業化シフトの現状

○芦川直子・Pearson Richard（京都フュージョニアリング）

核融合エネルギーがなぜ必要なのか。この説明は時代により変化しています。筆者自身，2015年ごろまで「核分裂炉に代わるベールロード電源の候補」という説明をしてきました。しかし，世界的なカーボンニュートラル（CN）化社会に向けたCNバジェット管理が必要となり，いかにカーボンフリーのエネルギー源が必要か，という視点が重要視されるようになりました。このような状況を鑑み，「未来のエネルギー」といわれてきた核融合エネルギー利用の早期実証が強く求められています。本稿では，1）核融合プラントを有する未来のあるべき姿，2）民間による核融合エネルギー開発，3）現在の課題，4）核融合エネルギー開発の世界的な状況，について主に言及します。

7-049

落雷マッピングシステムの開発

◎大川稔貴・成田知巳（湘南工科大学）

世界規模の落雷位置標定ネットワークの実現を目指したBlitzortungがある。落雷位置の表示は公式のWebページから閲覧することは可能であるが，過去の落雷位置は最短でも2時間分表示されてしまい，分刻みで落雷の詳細座標を視覚的に理解することが出来ない。また，表示されるマップは縮尺が固定であり，自由にマップを拡大・縮小して落雷を表示することが出来ない為，データ分析には不便である。そこで，これらを解決出来るシステムを開発した。

7-050

2024年の落雷数に関する一考察

◎江部幸多・成田知巳（湘南工科大学）

IoT技術を活用した安価な受信局を用いて，世界規模で高精度の落雷位置標定ネットワークの実現を目指した「Blitzortug」を使用して，落雷の多かった2024年の落雷数を調査した。その結果，2024年は2023年に比べて年間1.5倍，8月は2倍近く多かった。気象衛星NOAAの海水温について2023年と2024年を比較した結果，2024年は，関東沖の海水温が2℃～3℃高いことから落雷数が増えた原因の一つと考えられる。

7-051

秋田県南部の2023年度のJLDNの上向き雷で発生した後続雷撃の標定精度

○道下幸志（静岡大学）・松井倫弘（フランクリン・ジャパン）・深山康弘（昭電）・高野浩二（九州電力）・本庄暢之（ジェイウインドサービス）・臼井 崇（電源開発）

電力設備などの雷害対策を考える上では，雷撃を検知する事は必須である。近年では，避雷装置の適用が進み，波頭峻度の高い後続雷撃も注目されている。本報告では我が国最大規模のLLSであるJLDNによる，秋田県南部で発生した後続雷撃に対する標定精度について述べる。

7-052

DALMAで観測した電磁放射パルスの特徴による冬季上向き雷の検出手法の検討

◎髙田尚弥・王 道洪・ティン ウ（岐阜大学）

従来の到達時間差法による雷の3次元標定システムは上向き雷の検出を不得手とする。本研究では，複数地点に設置したアンテナのDALMAで受信した7例の上向き雷の電磁波を用いて，電磁パルスの特徴を利用した上向き雷の検出手法を検討した。上向き雷の電磁パルスには，各サイトでのパルスの時間同期特性と減衰特性があると考えた。結果として，パルスの同期特性により上向き雷は検出できたが，雲放電も同時に検出された。また，上向き雷は特定の減衰特性を持ち，雲放電とは異なる特性を持つことが分かった。以上より，同期電磁パルスの検出と上向き雷の特定の減衰特性範囲でのフィルタリングの2つの手順で，未検出の1例の上向き雷の検出に成功し，DALMAを用いて上向き雷を検出できる可能性を示した。

7-053

縮小鉄塔モデル雷撃時に接地条件が変電所過電圧に与える影響についての研究

◎倉田向陽・大市直輝・植田俊明（大同大学）

鉄塔雷撃時に生じる雷サージは，変電所に侵入した場合変圧器等の絶縁破壊を招くため，極力低減することが望ましい。
本研究では，縮小鉄塔モデルを第一鉄塔とした送電線から変電所引込みまでのモデルにおいて，第一鉄塔への雷撃を模擬した実験を行う。また，FDTD法に基づく解析プログラムVSTL REVを用いて，モデルにおける接地条件が変電所過電圧に与える影響について考察を行う。​
従来は大地全面を接地と見なした解析を実施してきたが，実測値と解析値の誤差が課題となっていた。そのため，接地条件の調整により精度向上を試みた。
今回は実測空間における大地を再現した銅板の敷設状況を模擬し，解析空間に接地平板を導入した。その結果，実測値と解析値の誤差が小さくなった。

7-054

雷電磁パルスの影響を考慮可能な雷サージの回路解析ツールLiCATの開発

◎山中章文・石本和之・立松明芳（電力中央研究所）

雷電磁パルス (LEMP) の影響を考慮可能な雷サージの回路解析ツールLiCATの概要とその送配電線の雷サージ解析への適用例を示す。LiCATは台形則に基づく回路解析プログラムであり，LEMPの影響を考慮するための，①帰還雷撃電流の計算，②LEMPの計算，③LEMPによる誘導電圧と線路に流入する雷電流による雷過電圧の計算，の3要素を有する。LiCATでは送配電線のモデリングを線路始点・終点の位置座標で行うため，例えば面状に広がる配電線の形状を考慮した解析が容易に実行できる。配電線への適用例では，実配電線の雷事故――被雷柱から19径間離れた柱に施設された変圧器ブッシングの破損――がLEMPによる誘導電圧で生じ得ることを示した。

7-055

地理情報システムを活用した高圧配電線への雷撃発生頻度計算に関する検討

◎森 亮太・山中章文・石本和之（電力中央研究所）

近年では，地理情報システム（Geographic Information System, GIS）を活用し得られる地図情報を基に，地物等を詳細に表現することが可能となってきている。このことから，一般送配電事業者が保有する配電設備データとその周辺地物のデータを組み合わせることで配電線への雷撃発生頻度を詳細に評価することが期待できる。本稿では，配電線フィーダ／電柱単位の雷リスク評価を可能とするツール開発を目的として，GIS を活用して得られる地図情報から，配電線とその周辺の建築物を模擬した市街地モデルを作成し，配電線への雷撃頻度を電気幾何学モデルに基づき算出した結果を報告する。

7-056

各種データを活用した配電線雷リスク評価ツールの開発

○石本和之・森 亮太・山中章文（電力中央研究所）

配電設備における雷リスクとは，地域毎の雷性状や雷害対策を含む配電設備の構成毎に得られる（期待される）雷事故率と雷事故によってもたらされる影響度の積によって評価できると考えられる。後者の雷事故による影響度の考え方は事業者によって異なる一方，前者の雷事故率（ハザード）については，配電設備構成や各地域の特性によって一意に定まるものであり，従来の雷リスク評価ではこちらの雷事故率評価を中心とした検討が行われてきている。本稿では，電力中央研究所で開発を進めている配電線雷リスク評価ツールの概要について述べる。

7-057

柱上変圧器の内部巻線に発生する雷過電圧の抑制に関する実験的検討

○松浦 進・道下幸志（静岡大学）・金谷賢一（北陸電力送配電）

柱上変圧器は，他の配電機器よりも耐電圧が低く，施設数が多いことから，配電機材の中でも雷被害の割合が高い。そのため，1980年代後半頃から変圧器の1次側への避雷装置の取付けが進められており，これに伴って変圧器の1次ブッシングの雷被害は減少してきている。一方で，依然として変圧器の内部巻線の雷被害が発生している。この様な雷被害を防止するには，変圧器の内部巻線に発生する雷過電圧を効果的に抑制する対策を検討する必要がある。本稿では，変圧器への雷サージの侵入を想定した実験を行い，各種の変圧器保護用の避雷装置による内部巻線の雷過電圧の抑制効果を確認した結果について報告する。

7-058

66/77kV送電線を対象とした送電用避雷装置の3並列気中ギャップの同時フラッシオーバ特性

◎中根龍一・三木 貫・三木 恵（電力中央研究所）

本稿では，送電線の塔頂雷撃時における多相雷事故の現象解明を目的に，送電用避雷装置を想定した3並列気中ギャップに雷インパルス電圧を印加した時のフラッシオーバ（FO）特性を調査した。実験の結果，雷インパルス電圧の波頭峻度が大きくなるほど，それぞれのギャップでリーダ放電が開始するまでの時間が短くなり，またそのバラつきが小さくなることがわかった。これにより，リーダの進展からFOが発生する過程で，それぞれのギャップのリーダの進展長に差が生じにくくなるため，全てのギャップが同時にFOする確率が上昇することがわかった。以上より，並列ギャップの同時FO特性に影響する要因の1つとして，雷インパルス電圧の波頭峻度が重要であることを実験的に検証した。

7-059

鉄塔雷撃電流の分流による電力線電圧の変化

○加藤正平（東洋大学）

送電線路における逆フラッシオーバー現象の解析を進め，これまで架空地線による雷撃電流の分流効果によって，電力線と鉄塔間の電圧が低減される結果が得られている。これは，電磁界問題として鉄塔雷撃時の電圧電流を考えると，一般的な3次元回路における複数導体による電力線への誘導現象と考えられる。そこで本研究では送電線路鉄塔への雷撃時の架空地線，鉄塔，雷道の分流電流によって，どのように電力線電圧が変化するか調べた。
数値電磁界解析法を使用して，複数の電流路モデルにおける鉄塔雷撃時の雷撃電流路による電力線に発生する電圧を検討した。電力線と垂直な電流路となる場合は電力線電圧が高くなる結果が得られた。

7-060

FDTD法に基づくZnO素子の電磁界，熱および熱応力の連成解析手法の提案

◎高木智哉・諏訪 樹・馬場吉弘（同志社大学）

電気設備への過電圧を防護するために，酸化亜鉛（ZnO）素子を用いた避雷器や避雷装置が設置される。しかし，エネルギーが大きい雷電流がZnO素子に侵入すると，素子の溶融やひび割れを引き起こすことがある。雷電流に対して，ZnO素子の耐力や破壊原因を検討する上で，過渡的な電磁界，熱および熱応力をFDTD法により連成的に解析することができれば有用である。本稿では，ZnO素子に生じる応力をFDTD法によって連成的に解析する手法を提案し，FDTD法とFEMによるハイブリッド解析により得られた応力との比較を行い，FDTD連成的解析結果の妥当性を検証した。

7-061

GIS開閉サージに起因する低圧制御回路の誘導サージ特性－制御線長さによる影響の評価－

◎田代大貴・立松明芳（電力中央研究所）

変電所の遮断器や断路器を操作した際に主回路に発生する開閉サージは，その一部が二次側回路へ結合し，制御線等を介して制御盤やリレー盤へ侵入することで，低圧制御回路の故障を引き起こす場合がある。特に，ガス絶縁開閉装置（GIS）における断路器開閉サージ（GIS開閉サージ）は，一般に数 MHz～数10 MHzと高い周波数帯に及ぶため，ディジタル形機器の耐サージ性能の点ではとくに苛酷な事象とされる。このようなサージの特性を系統的に把握するために，電力中央研究所では，GISの実験モデルと保護継電装置（実機）を用いて低圧制御回路の一部を模擬する試験回路を構成し，GIS開閉サージを模擬する急峻波サージに起因して制御線に生じる誘導電圧について，実験的な評価を進めている。本稿では，主回路から保護継電装置までの距離（制御線の長さ）の影響に着目し，その基礎特性を評価した結果の概要について述べる。このような評価は，従来的な設備構成だけでなく，ディジタル変電所のように，ディジタル形機器が主回路の近傍に配置されうる将来的な設備構成においても重要である。

7-062

柱上変圧器リサイクル絶縁油の吸湿特性に関する基礎検討

◎坂井太一・青山和樹・大塚信也（九州工業大学）・尾迫修二（キューヘン）

油浸変圧器の絶縁特性は絶縁油の劣化や油中の不純物や水分に影響を受けることが知られている。筆者らは現在，柱上変圧器の使用済み絶縁油を吸着処理してリサイクルしたリサイクル絶縁油（以下，リサイクル油）の絶縁基礎特性を検討しているが，大気中で実験すると周囲環境の相対湿度の影響を受けることが確認された。
本研究では，リサイクル油の吸湿特性の基礎検討として，相対湿度の異なる大気中にリサイクル油と共に使用前の新油およびリサイクル前の使用済み油（以下，劣化油）を放置して，時間経過による油中水分量の変化を比較検討した。

7-063

平等電界下におけるリサイクル絶縁油の短時間V-t特性に関する基礎検討

◎青山和樹・坂井太一・大塚信也（九州工業大学）・尾迫修二（キューヘン）

近年，CO2排出の抑制とともに循環型社会の要望により，柱上変圧器の使用済み絶縁油を吸着処理してリサイクル絶縁油として再使用することが行われている。このリサイクル絶縁油は長期安定性を含むJIS規格を満足する基本性能を有しているが，長期の絶縁性能については評価されていない。そこで本研究では，絶縁性能評価の基礎検討として，平等電界を形成する球対球電極系に短時間領域におけるV-t特性を油中水分量に注意を払い実験により調べた。比較のためリサイクル絶縁油とリサイクル前の使用済み油(劣化油と呼ぶ)と使用前の新油の3種類を比較検討した。

7-064

Discrimination between Lightning Impulse and Switching Impulse Waveforms using the Normalised Sum of Two Exponential Functions

○Shuji Sato（Utsunomiya University）・Hiroyuki Shimizu（Nippon Institute of Technology）・Seisuke Nishimura（Yokohama National University）

The present standard IEC 60060-1: 2010 defines LI as having a front time less than 20us whereas SI as having also a front time 20 us or longer. The front time of SI in IEC 60060-1: 2010 is time to peak, Tp (to be precise, the value is evaluated by the approximation function). Identical definitions are to be used in the forthcoming IEC 60060-1 in which SI is defined by the identical procedure with LI. From this fact, discriminant of LI is used as T1 evaluated and t30 and t90 whereas the discriminant of SI would still be a Tp value in the impending standard. Then one would imagine a possibility a certain waveform belongs both LI and SI, or having T1 < 20 us and T_p > 20 us. Authors reveal this examples using the normalised sum of two exponential functions and wish to give a warning of antimony in the new standard.

7-065

Anomalous Lightning Impulse and Validity of k-Factor Application

Shuji Sato（Utsunomiya University）・○Hiroyuki Shimizu（Nippon Institute of Technology）・Seisuke Nishimura（Yokohama National University）

The anomalous LI can be classified as an LI waveform unable to be fitted with the sum of two exponential functions. Thus the present LI parameter determining procedure required in IEC 60060-1:2010, which uses k-factor, may result in questionable result.
Authors analysed three new anomalous LIs with the method comliant with IEC 60060-1:2010 and report the results in the paper. Also in the paper validity of k-factor is discussed.

7-066

心電図解析による現場作業での熱中症兆候把握技術の検討

◎水野僚太・福井あやか・仲林昂彦・池浦良淳・早川聡一郎（三重大学）・八尾健一朗・中神正樹（中部電力）

近年，夏季の猛暑日が続き，熱中症患者数が増加している。特に電力会社の屋外作業では身体的負担が大きく，熱中症による労働災害が多発している。作業員が自身の健康状態を把握し，熱中症を予防することは困難である。熱中症の一種である熱失神はBezold-Jarisch reflexによる迷走神経刺激が関与し，心電図のRR間隔変動の高周波（HF）成分の振幅値が増加することが知られている。本研究室では，人工気候室での実験によりHF成分の急上昇が熱失神の前兆である可能性を確認したが，データ数が限られており明確な判定基準の確立には至らなかった。そこで本稿では，交通警備員を対象に作業中の身体データと熱中症の自覚初期症状に関するアンケートを収集し，これらのデータを解析した結果を報告する。

7-067

心電図SDNNを用いた熱中症リスク評価の基礎的検討

◎仲林昂彦・池浦良淳・早川聡一郎（三重大学）・中神正樹・八尾健一朗（中部電力）

本研究では, 地球温暖化に伴い増加する熱中症リスクに対応するため, 心拍変動（HRV）の指標であるSDNNを用いて, 高湿環境と常温環境における熱中症初期症状との関連性を検討した。人工気候室において8名の被験者にトレッドミル歩行およびロープワークを実施させ, 心電データを収集・解析した。結果, 常温環境下ではHFバースト発生の少し前にSDNNの急増が観測された。また, 高湿環境下では, 主観アンケートで熱中症初期症状が報告されたロープワーク終了直前にSDNNの急増が確認された。これらのSDNNの急増は, 熱中症に起因する集中力低下と深く関係している可能性が示唆される。今後の課題として, 被験者数を増やし, さらなるHRV指標との関連性を詳細に検討する必要がある。

7-068

IoT技術を活用した高電圧設備の放電観測に向けた基礎的検討

○武村順三（中部電気保安協会）・小迫雅裕（九州工業大学）

現状の電気設備の調査・点検では目視や臭気の確認，ウルトラホン，サーモカメラ（熱画像）などを活用している。高圧配電線で発生する地絡故障を模擬して，ZCTの零相電流の波形の特徴とTEVセンサで検出する放電パルスの発生位相で地絡故障の発生原因を精度高く推定できる可能性を確認している。針－球ギャップを用いて接地線電流とTEVセンサのデータをメモリハイコーダで観測した結果，閃絡発生時の信号は500kS/sで充分観測が可能であったが，閃絡前の部分放電発生時の信号は1～5MS/s以上ないとTEVのデータに取りこぼしがある場合を確認した。なお接地線電流は閃絡時の電流値（波形のピーク値）に合わせてレベル調整すると部分放電発生の判断は困難であった。

7-069

絶縁トルクドライバのねじゆるみ試験結果

○落合正治・武村順三（中部電気保安協会）・野崎洋二・兼古敦史（アネックスツール）

ねじ類を締付けする工具の中で「ドライバー（ねじ回し）」はJISやIECなどで仕様は示されているが，絶縁トルクドライバは製造者や使用者の判断によっている。仕様の中でねじ類の締付けは「弾性域締付け」と「塑性域締付け管理方法」の2種類に大別される。電気設備は機械構造材料の締結と異なりねじ類を再利用するため，締付け管理方法は弾性域締付けのトルク法を適用することが最適である。今回は実際の機器を振動させてネジゆるみを確認する試験を名古屋工業研究所で実施した。電力量計JISに基づき低圧スマートメーターの振動試験を実施して採用検討中の絶縁トルクドライバで締め付けたねじ類のゆるみが発生していないことを確認したので報告する。

7-070

水素燃料電池ドローンの飛行試験

◎谷口秦蔵・鈴木貴雄（東京電力ホールディングス）・貝應大介（ロボデックス）

架空送電設備巡視への活用検討の取組として，カーボンニュートラルの観点から，近年開発されている水素燃料電池を動力とするドローンに着目し，同機体の飛行試験を行い，架空送電設備巡視への適用性確認結果について報告する。

7-071

配電鉄柱に施設する接地極の施設条件緩和に向けた検討

○前田智寛・森 亮太・石本和之（電力中央研究所）・日高哲也・新井伸隆（中国電力ネットワーク）

電気設備の技術基準の解釈では，配電鉄柱に施設する接地極について，鉄柱との間の距離や地表面からの埋設深さのような施設条件が定められているが，鉄柱を建てざるを得ないような場所では，道路が狭いことや埋設物が輻輳しているなどにより，接地極を規定どおりに施設するのが困難な場合がある。
そのため本稿では，配電鉄柱に施設する接地極の施設条件緩和を目的として，解析により様々な接地極の施設形態を再現し，接地極に電流を流した時の，地表面に現れる歩幅電圧・接触電圧を評価した。その結果，いくつかの施設条件で規定の接地極の施設条件緩和について検討する余地があることを示すことができた。

7-072

熱劣化をうけた電線の寿命推定手法

○磯崎正則（フロントラインアシスト）

電線の劣化形態のうち，熱劣化が主な原因と想定される山側地区の鋼心アルミより線（以下ACSR）や硬銅より線（以下HDCC）の劣化判定手法について，電線の抵抗変化と引張強度の変化を対応させ，抵抗測定結果から電線の張替え時期を推定する新たな手法を提供する。

7-073

高機能電線の各種特性評価結果

○松田祐太・白石智規・高田則之（東京電力パワーグリッド）・菅 伸明・高橋忠大・江中大晟（住友電気工業）

架空送電線の雪害対策としては，過去より難着雪リングやスパイラルロッドに代表されるように，付属品による対策が多く行われている。雪害対策品の取付省力を目的に開発した高機能電線は，電線単体で難着雪性能を有することを確認した。今回開発した高機能電線は電線素線形状を変更することにより，電線の表面を滑りながら成長する重着雪(筒雪)を防止できるような構造である。この高機能電線について架空送電線の電線評価で通常実施している風圧特性やコロナ特性などの各種性能評価結果について試験を実施し，良好な結果であることを確認した。

7-074

高風速時における乱流モデルを考慮した架空送電線の導体温度FEMモデルの構築と検証

◎澤野 大・杉原英治（関西学院大学）・江中大晟・岩間成美（住友電気工業）

送電線の電流容量は，導体温度に基づき定められており，特に高風速時には導体温度が低下するため，電流容量を増加できる可能性がある。本稿では，架空送電線の導体温度を算出するため，有限要素法（FEM）を用いたモデルを構築し，風洞実験による測定結果に基づき，FEMモデルの妥当性を検証した。特に，高風速時に乱流モデルを考慮した架空送電線の導体温度FEMモデルを構築した。2種の架空送電線（ACSR/AC 410 mm2とACSR/AC 160 mm2）における導体温度評価において，高風速時に乱流モデルを考慮した場合，層流のみ考慮する場合よりも風洞実験値との温度推定誤差が小さく，高精度な導体温度推定が可能となった。

7-075

高機能電線の難着雪性能評価結果

白石智規・高田則之・松田祐太（東京電力パワーグリッド）・菅 伸明・高橋忠大・◎江中大晟（住友電気工業）

従来，架空送電線の難着雪対策は，難着雪リングやスパイラルロッド等の付属品による対策が多く行われている。開発した高機能電線が，電線単体で難着雪性能を有するか確認するため，人工着雪実験設備にて検証を行った。
無対策のACSR/AC410が，筒雪にまで成長するような気象条件下で着雪試験を実施した。同条件で，高機能電線の着雪試験を実施した結果，筒雪になる前に落雪することを確認した。このことから，高機能電線は難着雪対策用の付属品がなくても，電線単体で筒雪を防止する難着雪性能を有することを確認した。

7-076

カーボンファイバ心電線の耐熱特性

○奈良清延・宮崎幸一・八巻卓夫・藤井一幸（北日本電線）・鈴木基希・山下弘展（東京製綱インターナショナル）

カーボンファイバ心超耐熱アルミ合金より線は，コア部を従来の鋼線から炭素繊維ケーブルであるCFCCに置き換えて，その周囲に超耐熱アルミ合金線を同心円状により合わせた構造であり，増容量低弛度電線（要求温度：連続許容210℃，短時間許容240℃）への適用に向けて，CFCCの耐熱性を検証した結果を述べるものである。

7-077

ポリマーがいしの寿命評価に関する基礎研究

○青木佳明・吉田遼大郎・白石智規（東京電力パワーグリッド）・谷口 栄・鈴木貴雄（東京電力ホールディングス）

架空送電線に使用されるポリマーがいしは長期使用における性能維持の把握と保全方策の確立が重要である。本報告では，電気的ストレス（コロナ放電）による外被耐性評価としての「コロナ単独影響試験」と実環境を模擬した長期的な断連リスク（寿命）評価としての「複合環境促進試験」の途中経過を報告する。試験の結果，コロナ単独影響試験について5,000時間経過時点で，ヒビ・亀裂等の発生はなかったことを確認した。また，複合環境促進試験について，10.4年経過相当の状態を評価した結果，ヒビ・亀裂等の発生はなかったことを確認した。複合環境促進試験については，劣化進展状況を確認するため，今後も試験を継続し評価する予定である。

7-078

漏れ抵抗測定による高分子がいしの撥水性転移特性の評価

◎北 直樹・三好雅仁・本間宏也（電力中央研究所）

高分子がいしの外被材には，シリコーンゴムなどの撥水性転移材料（HTM）が用いられている。HTMは，表面の撥水性が一度失われた後でも，材料内部から低分子量成分が表面に滲み出し，堆積した汚損物質を被覆するため，時間とともに撥水性が回復する。この撥水性回復能力について定量的に検討するため，本研究では，漏れ抵抗測定により高分子がいしの撥水性転移特性を評価した。1日目に撥水性を除去した状態のがいしサンプルを用意し，1日1回の漏れ抵抗測定を1週間にわたり行った。その結果，1週間後の漏れ抵抗は，1日目の漏れ抵抗の数倍～十数倍となり，本研究で使用した高分子がいしは十分な撥水性回復能力を有するものと判断された。

7-079

特殊環境下における高分子がいしの絶縁破壊事象

○本間宏也・三好雅仁（電力中央研究所）・関根崇正（北陸電力送配電）

2020年2月に，北陸電力送配電管内の154 kV送電線において，相間短絡事故が発生した。この事故では，一部のポリマー相間スペーサで，シリコーンゴムの外被材とFRPのコア材の界面で絶縁破壊（フラッシアンダー）が発生し，スペーサとしての絶縁性能が完全に喪失されていた。また，外被材表面には白色の劣化層が形成され，内部に向け亀裂が発生するなど，外被材自体に劣化（変質）が進行している様子が認められた。この送電線直下には，木質バイオマス発電設備の煙突があることから，その排出ガスが外被材の劣化を促進した可能性があると推測された。

7-080

2面切土場に立地する送電鉄塔における逆T字型基礎の圧縮支持力に関する解析と考察

◎寺中吉輝・岡 滋晃・服部洋子・花輪高史（東京電力ホールディングス）

既設の送電鉄塔の周辺で地形改変が発生した場合，設計時に期待していた基礎の圧縮支持力が確保できなくなるおそれがある。1面が切土された逆T字基礎の支持力についてはすでに多くの知見があるが，2面が切土された場合の支持力に関する既往の知見は少ない。本研究では2面切土場における圧縮支持力の低減を明らかにすることを目的として，既往の遠心載荷実験を対象に，Subloading tijモデルを用いた三次元弾塑性FEMによる再現解析を実施した。その結果，解析結果は実験結果を良好に再現することができた。また，三次元場ではすべり土塊は基礎直下に局所化し，切土による支持力の低減は大きくならないことがわかった。

7-081

送電用鉄塔の設計荷重作用時における基礎の変位と鉄塔部材応力への影響

○山崎智之・田中恵悟（東京電力パワーグリッド）

送電用鉄塔の基礎は，基礎荷重や地盤条件等に応じた適切な基礎形式が採用される。平野部の軟弱地盤地域では杭基礎が採用されることが多く，基礎設計として上部からの荷重に対する安定照査に加え，基礎や杭の変位を許容値内に収めることとしている。その許容変位量は各脚独立基礎の場合，①杭頭の水平許容変位量，②基礎頭部の水平変位量としている。前者の許容変位量は道路橋示方書を参考に定めたものであり，後者はJEC127-1979に記載された上部材への影響を考慮した脚間の不同変位量（相対変位量）の規定を準用し，杭設計における絶対変位に対する許容値として設計に反映しているいるのが実情である。本論では，鉄塔・基礎一体モデルによる複合非線形立体応力解析を実施し，設計荷重作用時の基礎の変位ならびに鉄塔部材応力への影響について検討した。

7-082

送電用山形鋼鉄塔における主柱材のフラットバー付加補強に関する研究

◎田中恵悟・山崎智之・由井翔太（東京電力パワーグリッド）

既設の送電用鉄塔について主柱材が強度不足と判定された場合，高コストである鉄塔建替に依らざるを得ない状況であることから，経済的・構造的により合理的な主柱材の補強工法の確立が求められている。本研究は送電用山形鋼鉄塔の主柱材にフラットバーを付加した補強工法の確立を目指し，部材試験を行い，その補強効果の特性分析や定量的評価を実施した。その結果，FB付加による耐力補強が確認でき，また補強後部材の特徴的な座屈性状として，最大耐力を発現時において，2種類の座屈モードが確認された。これらは間隙幅やつづりボルトピッチが影響を与える因子だと考えられる。今後，FB付加補強を実設備に適用し標準化を図っていく。

7-083

送電鉄塔用防錆塗装試験片の促進耐候性試験後の断面観察結果

○吉野恵一・菊地玄馬・金井雄大・龍岡照久（東京電力ホールディングス）・伊地知弘光・宮島拓郎・山崎智之・白石智規（東京電力パワーグリッド）

送電用鉄塔は溶融亜鉛めっき処理された鋼材が用いられており，建設後，大気環境で亜鉛めっきが減耗し鋼材が腐食する前に，防錆塗装を行うことで健全性を維持している。防錆塗装を行う前に，部材表面の腐食生成物等を除去する素地調整が行われるが，素地調整を十分に行わずに塗装すると，早期に塗膜下腐食が発生する場合がある。今回，実機部材に素地調整を施した溶融亜鉛めっき鋼板を用意し，当社の標準的な塗装をした試験片を作製した。試験片に対してメタルハライドランプを光源とした促進耐候性試験により塗膜下腐食を再現させ，素地調整よる塗膜下腐食の増加傾向の違いを断面観察より評価した結果を報告する。

7-084

水トリー抑制剤を添加した非架橋絶縁体の誘電正接

○三枝哲也（古河電気工業）

ポリプロピレンベースの絶縁体に水トリー抑制剤を添加し，誘電正接（tanδ）を低く抑える技術について報告する。ポリプロピレンは耐熱性が高く，XLPE並みのtanδとTR-XLPE並みの水トリー抑制能力を両立できれば，ケーブルの設置・運用コストを削減できる可能性がある。実験では，ポリエチレングリコール（PEG）と無水マレイン酸（MAH）を添加し，tanδ測定と水トリー試験を実施した。結果，PEG添加によりtanδが上昇するが，MAHを併用することでtanδを低く抑えられ，水トリー長も抑制できた。これにより，高い耐熱性と水トリー抑制能力を持ちながら，低いtanδを実現できることが示された。

7-085

ケーブルの伸び出し量算出式について（その5）

○鴨志田博史（技術工房 延）

管路内の座屈を考慮した水平管路布設ケーブルの伸び出し量について検討した。その結果，S字オフセットが形成されると殆どのケーブル長で座屈が発生する結果となった。また，水平管路布設では，最大伸び出し量は90度曲がりオフセットが形成された場合であることを確認し，その算出式を導出した。

7-086

重負荷運用に伴う変電所壁貫通部における送電容量確保方策について

◎望月瑞生・名倉正和・辻 貴章・橋本浩二（東京電力パワーグリッド）

A線はX変電所とY変電所を連係する2回線の超高圧のCVケーブル線路であり，通常は2回線で運用しているが，約2か月間，1回線の線路停止が必要となり，残りの1回線に負荷電流が集中する重負荷運用が必要となった。重負荷運用時のケーブル導体温度を算出した結果，一部区間において，常時許容温度（90℃）を超過することが判明したため，ケーブル収容管路内に冷却管を布設し，ケーブルの冷却対策を実施した。冷却対策後，重負荷運用中の管路の空気温度の実測と解析，ケーブル導体温度シミュレーションを実施し，対策の妥当性ならびに計算プログラムの有効性を確認したことから報告する。

7-087

3芯海底電力ケーブルの鉄線鎧層損失の評価

◎松本勇輝・桑原諒介・三浦大暉（古河電気工業）

3芯海底電力ケーブルの鉄線損失は，従来のIEC規格により算出方法では，実際の損失を過大に評価してしまうことが示唆されていた。その後，2023年に当損失を正確に評価する方法を提唱したCIGRE TB 908が制定された。
本論文では，このCIGRE TB 908で提唱される実測/有限要素解析/計算の3つの手法により，3芯海底電力ケーブルの鉄線損失を実際に評価したので報告する。評価結果は，3手法の場合とも，現行のIEC規格による算出結果より非常に小さい結果が得られた。
今回得られた鉄線損失を電力ケーブルのサイズ選定に実際に採用することで，従来よりも電力ケーブルのサイズダウンが可能となり，ケーブルの軽量化ならびにコスト低減に繋がる。

7-088

パルス静電応力法による電力ケーブルの空間電荷測定における音響結合器の改良

○穂積直裕（穂積計測研究所）・Zhara Shafira・森田翔亮・川島朋裕・村上義信（豊橋技術科学大学）

パルス静電応力法は，空間電荷が形成する電界にパルス電界を作用させて生じる音響信号を外部の音響センサで検出し，電荷の大きさと位置を計測する。高分子音響結合器を利用して，電力ケーブル中の空間電荷を高感度で測定可能となった(1)。また，音響センサを接地電位に保って測定点の遮蔽電極に高圧パルスを印加し，品質のよい信号が簡単に得られる。ところが状況により外部遮蔽電極からの信号の近くにghost信号が現れ，測定に支障をきたすことが判ったので，その対策を行った。

7-089

DC525kVケーブルシステムの開発

◎大竹陽介・茂森直登・吉田敬佑・劉 勁・森 大樹（古河電気工業）

本研究では，DC525 kV陸上ケーブルシステムのPQTおよびTTを実施した。試験線路はケーブル，気中終端接続部と中間接続部から構成され，長期課通電試験はCIGREに準拠し，良好な結果を得られた。残存試験は，定格DC電圧を印加した条件下で，同極性・逆極性の開閉インパルス，逆極性雷インパルスを重畳し，耐久性を確認した。試験結果から，DC525 kVケーブルシステムは要求性能を十分に満たすことが確認され，今後の直流送電システムの発展に寄与することが期待される。

7-090

CVケーブル遮蔽層交流インピーダンス測定条件に関する一検討

○田口 彰（九州電力）・高橋俊裕・牧野裕太（電力中央研究所）

22kV以上CVケーブルについて，絶縁劣化の主要因である水トリーの診断には損失電流法や残留電荷法がよく用いられる。しかし，両手法は費用が高額であり，例えば発変電所内ケーブルなど短尺ケーブル診断にはメリットが少ない。そこで我々は安価で有効な22kV以上CVケーブル絶縁劣化診断を実現するため，電力中央研究所提案の「CVケーブル遮蔽層交流インピーダンスによる診断法」の実用化に向け，研究中である。今回，この診断法に関する測定条件の検討を進めてきた結果について報告する。

7-091

66kVCVケーブル終端接続部ガス分析診断結果に関する一考察

○池田裕介・五十嵐晃一・岩崎公裕（東京電力パワーグリッド）

近年CVケーブル終端接続部の絶縁破壊，劣化が確認されつつある。
そこで，終端接続部保護管内のアセチレン濃度で劣化有無を判断するガス分析診断手法を適用した。
その診断結果を報告する。

7-092

OFケーブルへのPFT法の適用

◎三橋拓斗・相原靖彦（東京電力ホールディングス）・岩崎公裕・辻 浩（東京電力パワーグリッド）・関 雄次郎（古河電気工業）

OFケーブルにおける漏油点の早期発見を目的とし，POFケーブルで使用実績があるPFT法のOFケーブルへの適用について検討を実施した。PFT法は絶縁油中にトレーサガスであるPFTガスを溶解させておき，漏油時に地上に気化したトレーサガスを検知することで漏油点を特定する手法であり，国内OFケーブルに対して適用実績はない。OFケーブルはPOFケーブルと諸特性や設備形態が異なっており，ガス注入法に課題が存在する。また，海外のOF適用実績は技術要件が公開されていないため，適用条件の再評価を実施した。
文献調査や実証試験により，PFT法のOFケーブルへの適用について問題がないこと，および，注入方法としてフラッシングが有効であることを確認した。

7-093

狭い作業用地でのHDD工法を可能とする電力用管路の機械式継手の開発

◎飯田昌宏・吉本正浩（東京電力パワーグリッド）・椙島正樹（エステック）・岩下修二（岩下産業）

東京電力パワーグリッドの地中線管路工事では，河川や国道横断時に主に推進工法が採用されているが，発進・到達立坑が大規模で工期が長期化する課題がある。
これに対し，立坑が小規模で工期短縮が可能な誘導式水平ドリル（HDD）工法の採用を検討した。しかし，HDD工法はPE管のバット融着に時間を要し，広大な作業用地が必要であり，都市部の狭隘な公道での施工条件に適さない課題があった。本稿では，これらの課題を解決するために実施したHDD工法用継手の開発内容と成果について報告する。

7-094

電力用管路工事へのHDD工法適用における施工実績

○山本祐美加・野口敏男（東京電力パワーグリッド）・中島賢司（東起業）・櫻井 淳（エステック）

東京電力パワーグリッドの地中線管路工事では，河川や大きな交差点等を横断する場合，主に推進工法を採用している。この推進工法における工期短縮のため海外で実績が多い誘導式水平ドリル（HDD）工法に着目した。本稿では，狭い作業用地内での施工実績について報告する。