一般講演

3-100

バンコマイシン連続測定用LRSPRアプタセンサ

◎大野晃平・里村結衣・市川健太・飯谷健太（東京科学大学）・當麻浩司（芝浦工業大学）・三林浩二（東京科学大学）

医療関連感染の治療薬として使用されるバンコマイシン（VCM）は，その治療有効濃度域の狭さから定期的な血中濃度管理が必要とされる。本研究では，VCMの高感度リアルタイム測定を目的として，「VCM認識部位を有するアプタマー」と「長距離伝播型表面プラズモン共鳴（LRSPR）検出系」を組み合わせることで，VCM用LRSPRセンサシステムを構築し，特性評価を行った。構築したLRSPRセンサは，従来のSPRセンサと比して共鳴角における反射率曲線が急峻化し，高感度な計測が可能であった。また，センサ感応部のリジェネレーションを行わない条件でもVCM濃度に応じた反射率の変化が観察され，VCMの連続測定の可能性が示唆された。

3-101

飲料糖の口腔内計測用センサに関する基礎研究

◎岡田蒼海・趙 于民・市川健太・飯谷健太・三林浩二（東京科学大学）

糖質の多量摂取は2型糖尿病等の生活習慣病の罹患リスクを高める。特に飲料中に甘味料等として含まれる糖質は，固形食品よりも素早く小腸から吸収されるため，食後高血糖を起こしやすい。本研究では，口腔内での飲料中グルコース濃度のリアルタイム計測を目標とし，マウスガード材料とグルコース脱水素酵素を用いたシート材バイオセンサを作製し，清涼飲料水グルコース濃度の口腔内測定の可能性を検討した。作製したセンサは1 µM～10 mMの範囲でグルコースの定量が可能であり，グルコース測定キットと同等の精度で清涼飲料水中のグルコース濃度が測定可能であった。今後はMG型バイオセンサを作製し，飲料水中のグルコース濃度の連続計測を進める。

3-102

A Novel Impedimetric Biosensor based on Titanium Nitride Nano-Electrode Arrays for Procalcitonin Detection

◎Yi-Chen Li（National Tsing Hua University）・Shih-Wei Wang（National Cheng Kung University）・Chun-Lung Lien（NEAT Biotech）・Ching-Fen Shen（National Cheng Kung University）・Chao-Min Cheng（National Tsing Hua University）

We developed a CMOS-based impedimetric biosensor using a titanium nitride (TiN) nano-electrode array (NEA) for procalcitonin (PCT) detection. The sensor surface was pretreated using different cleaning methods to ensure stability and performance. TiN's biocompatibility and diazonium electrografting introduced carboxyl groups on the surface, enabling antibody binding via EDC/NHS chemistry. The sensor exhibited a strong correlation in ΔR_ct (%) during modification and antibody immobilization. Tested in serum, it achieved an LOD of 15.62 pg/mL, demonstrating its potential as a POCT device for real-time PCT detection.

3-103

Dielectrophoretic Capture of Motile Sperms using 3D-TiN Nano-Electrode Arrays

◎I-Hsuan Liao・Jeng-Huei Shiau・Kuan-Ru Chou・Chun-Lung Lien・Chao-Min Cheng（National Tsing Hua Universiry/NEAT Biotech）

Sperm quality is vital for assisted reproduction technology. Our study utilized a novel dielectrophoresis chip with a 3D-TiN nano-electrode array to enhance semen quality. Fabricated via CMOS technology, the chip exhibits stronger electric field strength and enables effective sperm capture at low voltage. An insulator layer prevents Joule heating, safeguarding sperm viability. Adjustable electrode spacing optimizes capture efficiency, which increases with higher voltage and frequency. At 70 μm, 3 MHz, and 20 Vpp, the capture efficiency reached 59.98±0.93%, with a throughput of 6 mL/hr.

3-104

DNAアレイにおける蛍光劣化の光量補正方法の検討

◎栗原暢人・宮内祐樹・田口朋之（横河電機）

DNAアレイは，固相基板上に検出対象としたい核酸の相補配列とCy3蛍光分子を有する検出用 DNA プローブをアレイ状にスポットし，固定化した分析ツールである。DNAプローブをハイブリダイズ反応させ，蛍光読取装置で蛍光画像を取得することで，光量値からターゲット核酸の有無を評価できる。DNAアレイは常温保管が可能であるが固定化されているプローブは劣化することが想定され，ターゲット核酸の評価に偽陰性が発生するなど検査結果の精確性が低下する課題がある。そこで，長期保管したDNAアレイでもターゲット核酸を精確に評価するため，ターゲットとの反応に関わらず蛍光を発するマーカースポットを設け，DNAプローブの光量値をマーカースポット光量により補正することでターゲット核酸の評価を可能とする手法を確認した。

3-105

微粒子誘電泳動DNA検出法を用いたたばこ煙成分の迅速検出に関する基礎検討

○中野道彦・村山史敏・旭 航希・稲葉優文・末廣純也（九州大学）

たばこ煙には多数の人体に有害な成分が含まれていることが知られている。喫煙者が吸引する主流煙以外にも，たばこから発生する副流煙や壁などに付着したたばこ煙が再飛散して生じる三次喫煙についても健康リスクが指摘されている。本研究では，三次喫煙を迅速かつ簡便に計測するための新しい手法を提案する。その手法は，たばこ煙成分によるDNA分解を利用した者で，そのDNA分解を微粒子誘電泳動DNA検出法で計測する。本報では，たばこ煙成分のうちのヒドロキノンによるDNA分解，および，そのDNA分解の検出について示す。

3-106

五感実現のためのバイオミミクリによるセンシング技術の開発

○島田邦雄（福島大学）

将来ロボットは，仕事や介護などの現場において身近なものとなり，我々人間の生活には欠かせないものとなる。また，AIロボットも現実のロボットとして人間の生活に入って来ると予想される。そのために，人間らしい形態が必須となる。すなわち，五感を兼ね備えたロットであることが条件となる。また，五感を失った障害者でも同様である。ここで，人間に近い人工的な五感を実現するためには，人間の生体と同じ弾力性のあるものでなければならない。その結果として，ゴムを素材として五感を人工的に実現する技術を開発する必要がある。本論文では，その実現に向けて，バイオミミクリによる技術開発のアウトラインについて述べる。

3-107

in vivo動物実験用超小型生体埋め込み刺激計測システムの提案

◎池上将平・坂田篤典・徳田 崇（東京科学大学）

近年，動物実験は生命科学や医療研究において重要な役割を果たし，特にin vivo動物実験は，生体内での実際の反応を観察するために不可欠な手法とされている。我々は，光照射，光計測，電流刺激，および電位測定の機能を有するin vivo動物実験用デバイスの開発を目指している。このデバイスは，小型かつワイヤレスで動作するマイコン制御デバイスであり，低消費電力で長時間利用できるものを目指す。今回，デバイスデザインと，コア機能である神経アンプの設計を行った。

3-108

分散型光電気BMIデバイス向けADCの改善設計

◎坂田篤典（東京科学大学）・横式康史（青山学院大学）・德田 崇（東京科学大学）

我々は，動物実験向けに，電流刺激・電位計測・光刺激・光計測の機能を有した多点で動作する分散型BMI（ブレインマシンインターフェース）デバイスの実現を目指している。提案するBMIは電源や命令を供給するマスターデバイスと刺激や計測を行い，CMOSチップを搭載する単位デバイスで構成される。今回，チップ内で計測機能の AD 変換を担う ADC の改善設計とシミュレーションによる検証を行い，オフセット補償等の改善により，ADCの分解能向上が期待できることが確認できた。

3-109

高スループットCMOS製造による三次元チタン窒化物ナノ電極誘電泳動チップを用いた細菌捕捉

◎盧 樺蓉（国立清華大学）・蕭 正輝・周 冠儒・連 俊龍（瑞禾）・沈 靜芬（国立成功大学）・鄭 兆珉（国立清華大学）

臨床環境における細菌感染症は深刻な健康リスクを伴い，現在の診断方法である寒天培地培養法では，細菌の培養に15～48時間を要し，最大15.3%の死亡率に至る可能性がある。非一様な交流電場における分極力を利用する誘電泳動法は，迅速な細菌捕捉のためのアプローチとして開発されている。誘電泳動力は，粒子と媒質の誘電特性，印加周波数，および印加電圧などによって影響を受け，生きた細菌を正確に捕捉することが可能である。
しかし，MEMS製造による誘電泳動チップは，限られた有効面積により，高いジュール加熱と低いスループット（約400 µL/時）といったいくつかの制約に直面している。これらの制約を解決するために，CMOS製造技術を用いて3次元TiNナノ電極アレイ誘電泳動チップを開発し，マイクロ流体チャネルと統合した。このチップは，脱イオン水中で最大93%の生きた細菌捕獲効率を達成し，高スループット1.8 mL/時を実現している。

3-110

バッテリレス光駆動IoT向けRISC-V CPUの設計

◎中西亮介（東京科学大学）・横式康史（青山学院大学）・德田 崇（東京科学大学）

超スマート社会実現に向け，光駆動・エナジーハーベスティングを活用したバッテリレス小型IoTエッジ技術を目指し，省電力かつ再プログラム可能なRISC-V CPUを設計した。本研究では，柔軟な拡張性を特徴とする命令セットRISC-Vの最小構成に剰余算命令を追加したRV32IMのCPUに，不揮発性メモリを外部搭載してプログラム編集を可能にした。現段階でFPGA上での動作検証と外部メモリからのプログラム読み込みに成功し，0.18 µm CMOSによるチップ設計を完了。今後は光駆動IoTデバイスでの動作検証を行う予定である。

3-111

局所的高電圧パルスによる印加部位とアニサキスの損傷

◎上田龍生・尾形洸綺・石上 陽・宇戸禎仁（大阪工業大学）・王 斗艶・浪平隆男（熊本大学）

アニサキスは魚介類に寄生する線虫で体長2～3cm，幅0.5～1mm程度，半透明白色をしている。生きた状態でヒトが食べると，激しい腹痛や嘔吐を伴う食中毒を引き起こすが，生魚を冷凍や加熱することで容易に駆除でき，食中毒予防に有効な方法である。しかし，冷凍や加熱処理は魚介類の新鮮な風味や食感に影響を与えるため，刺身や寿司など新鮮な魚介類を好む日本の食文化にとっては大きな問題となっている。そこで，魚介類の風味や品質を損なわずにアニサキスを殺虫する技術として，高電圧パルスを用いた殺虫技術が注目されている。本研究では，アニサキスに局所的な高電圧パルスを印加して，アニサキスに与えるダメージについて調べた。

3-112

周辺回路駆動のための間欠駆動型CPUの改良

◎山上 椿・横式康史（青山学院大学）

近年，エナジーハーベスティングや無線送電などの新しい無線電力供給方法が注目されているが，これらの方法から得られる電力は不安定になる場合がある。本研究では，間欠駆動電源を利用することで，不安定な電力供給下でも安定して動作する“間欠駆動型CPU”の実現を目指す。本研究では，間欠駆動型CPUが周辺回路のみを独立して駆動させるための回路設計を行った。設計した回路は，周辺回路のスイッチの役割を担うDual Gatingとカウンタである。Dual GatingはPMOSとNMOSで駆動回路を挟み込み，それぞれのゲートへの入力信号によって回路のオンオフを切り替えるスイッチの役割を担う。CPUの電力がオフになっていても，カウンタのみ駆動させ，時間経過後よりオフさせることで回路全体の低消費電力化を図ることを目指す。カウンタは，Verilog HDLで記述し，CPUからのSTART信号でカウントを開始し，STOP信号でカウントを終了してQにカウント値を出力するように設計した。

3-113

間欠駆動回路のためのチャージポンプ昇圧回路の最適化

◎笠原舶斗・横式康史（青山学院大学）

現行のIoTデバイスはバッテリーのサイズがそのデバイス全体のサイズを決定しているため小型化が困難である。私の所属する研究室では間欠駆動により，世の中にない小型デバイスを実現しようとしている。これは，小型のエナジーハーベスタから電力をキャパシタに充電し，必要電圧に達したら瞬間的に負荷を駆動するもので，デバイスを小型化できる。本研究では太陽電池1セルで動かすことのできる間欠駆動回路実現のため，0.4 Vの入力電圧を2.5 V程度まで上昇させることができる低消費電力チャージポンプ昇圧回路を目指し設計した。

3-114

光学素子を用いた傾斜角判別システムにおけるニューラル比較器の実装数向上の試み

○下尾浩正（佐世保工業高等専門学校）・南部幸久（有明工業高等専門学校）・寺村正広（佐世保工業高等専門学校）

筆者らは，ニューラル比較器と光学素子を組み合わせた高速応答する傾斜角判別システムを提案しており，振動や傾きの検知への応用の手がかりとして，基本特性の測定を行っている。ニューラル比較器は，可変抵抗とコンパレータを用いたシンプルな電子回路で構成することで，判別可能な傾斜角度を柔軟に設定でき，かつマイクロ秒オーダで高速応答する。本稿では，ニューラル比較器の実装数を向上させるために新たにニューラル比較器の基板を開発し，16個接続して-8.0°から+8.0°まで1.0°毎の判別実験を行った結果を報告する。ニューラル比較器の最大接続数を予測するにあたり，出力電流を算出した結果，接続数に余裕があることが示唆された。

3-115

圧電素子を用いた浮上機構が発生する圧力

◎宮田英寿・鳥井昭宏・元谷 卓・道木加絵（愛知工業大学）

筆者らの研究室は，小型移動機構への搭載を目的とした浮上機構の研究を行っている。浮上機構は圧電素子の振動により，浮上機構と床面の間に空気の膜を形成するスクイーズ膜効果によって浮上する。これまで，浮上機構の浮上量や振動振幅等の浮上特性を明らかにした。今後，新たな浮上機構を製作する上で，浮上原理であるスクイーズ膜効果について理論的な解析が不可欠である。そこで今回は，浮上機構が発生させるスクイーズ膜の圧力値を理論的に算出した。その結果，浮上機構が形成する流体の圧力は浮上機構の振動振幅によって変化し，時間平均の圧力は周囲の圧力よりも高くなる正の圧力を示した。

3-116

インチワーム型移動機構の1電源駆動の提案

◎高山優斗・鳥井昭宏・元谷 卓・道木加絵（愛知工業大学）

筆者らの研究室では位置決め装置や小型生産システムの応用を目的として，インチワーム型微小移動機構の研究を行っている。この機構は，位置保持用の電磁石と移動用の圧電素子で構成される。変位の微小な圧電素子でも，インチワームの原理に基づいて長距離動作を可能としている。この機構の駆動には，圧電素子と電磁石を直列に接続した回路を使用し，単一入力により動作する。電磁石に並列にダイオードを接続することで電流経路が決まり，電磁石のオン・オフが切り替わる。駆動方向は入力電圧のオフセット電圧を調整することで変更できる。本稿では，インチワーム機構の構造，動作回路，実験方法，実験結果について述べる。

3-117

電池を用いた圧電素子駆動用昇圧手法の提案

◎大口大輝・宮田英寿・鳥井昭宏・元谷 卓・道木加絵（愛知工業大学）

筆者らの研究室では，電磁石と圧電素子を用いた3自由度位置決めが可能な小型移動機構を開発してきた。本機構の駆動には圧電素子の伸縮を利用するが，電力ケーブルの張力や剛性の影響で目標軌道に誤差が生じるため，ワイヤレス化が求められる。小型化の必要性から，大容量バッテリーの搭載は困難である。そこで，アルカリ乾電池を電源とし，昇圧回路を用いて圧電素子の駆動電圧を供給する方法を提案する。本稿では，昇圧チョッパ回路とコッククロフト・ウォルトン回路を組み合わせた昇圧回路を設計し，シミュレーションソフトLTspiceで動作を評価した。その結果，目標出力電圧150Vを達成可能であることを確認した。この手法は，小型軽量な電池を用いた圧電素子駆動において有用であると期待される。

3-118

鉄心型永電磁石を用いた位置保持機構

◎井上 健・高山優斗・鳥井昭宏・元谷 卓・道木加絵（愛知工業大学）

筆者らはこれまでに平面方向への移動を目的とした圧電素子と永電磁石を用いた小型移動機構の開発を行ってきた。永電磁石とは永久磁石と電磁石を組み合わせた磁石のことで，これまでに使用していた永電磁石はアルニコ磁石とネオジム磁石を組み合わせた磁石である。コイルが発生させる磁界によりアルニコの磁極を反転し永電磁石のオンオフを切り替える。本磁石は短いパルス電流でオンオフを切り替えることができるため，機構の省電力化が期待できる。しかし，アルニコ磁石の保磁力が大きいことから磁極反転時には6 Aの電流を必要とし瞬間的な消費電力が大きいという問題があった。[1][2]そこで本稿ではアルニコの替わりに保磁力の小さい鉄心(S45C)を使用した永電磁石を提案する。アルニコ磁石を鉄心とすることでコイルに流す電流を小さくすることができ，永電磁石の消費電力を抑制することができる。

3-119

肺細気管支での呼吸計測が可能なマイクロカテーテル一体化型流量センサの開発

◎平山 蒼・アル・ファリシィムハンマド・サルマン・長谷川義大・式田光宏（広島市立大学）・松島充代子・川部 勤（名古屋大学）

慢性閉塞性肺疾患（COPD）は，タバコの煙を主とする有害物質を長期間吸入することで生じる肺の炎症性疾患である。咳嗽や気流低下，肺胞の破壊を伴い，治療で元に戻すことはできないため，予防と早期発見が重要である。また，病変部は肺の細気管支（内径2 mm以下）であり，現在の診断法では局所的な定量評価が難しい。本研究では，MEMS流量センサ（外径1.8 mm，内径1.0 mm）と医療器具であるステアリングマイクロカテーテルを組み合わせて，細気管支（内径0.82 mm，第13分岐）での呼吸計測を可能とする新たな流量センサシステムを提案した。発表では，本センサシステムの作製と測定機能の評価について報告する。

3-120

肺内部における定量的呼吸計測を可能とするバルーンカテーテル型センサシステムの開発

◎吉田 潤・アル・ファリシィムハンマド・サルマン・長谷川義大・式田光宏（広島市立大学）・松島充代子・川部 勤（名古屋大学）

慢性閉塞性肺疾患（COPD）は，主に喫煙や大気汚染が原因となる呼吸器疾患で，気道の炎症や閉塞が進行し，咳や痰の増加，呼吸困難を引き起こす。当研究グループでは，気道内での局所的な呼吸計測が可能なプローブ型流量センサの開発を行っている。しかし従来のセンサは，気道内流量を得るために挿入箇所の気道径を計測し，それを基に換算する必要があった。本研究では，気道径に依存せず定量的な流量計測が可能なバルーンカテーテル型センサシステムを提案した。本システムは，気道内でバルーンを拡張させることで，気道内気流が全て内径が既知のチューブ内を通過することになり，気道径に依存せずにチューブ内に設けたセンサで流量を計測できる。

3-121

血管外漏出検知を可能とするLIG製ダイアフラム式圧力センサの開発

◎刈谷麟太郎・アル・ファリシィムハンマド・サルマン・長谷川義大・式田光宏（広島市立大学）・松島充代子・川部 勤（名古屋大学）

血中薬剤濃度を一定かつ持続的に投与する手法としてシリンジポンプを使用した持続静脈注射がある。しかし，送液に変位制御を用いていることから，静脈内に留置した針が外れた場合でも薬液が周囲に押し流され続け，皮膚組織の炎症や壊死が生じる（血管外漏出）。本研究グループでは，流量センサと圧力センサを組み合わせた血管外漏出検知デバイスを提案している。本研究では，同デバイスの小型化・簡易化を目指し，流量及び圧力センサの同一フィルム基板上への集積化を試みた。具体的には，レーザ誘起グラフェン（LIG）を用いた歪ゲージを使用して圧力センサを作製した。発表では主に，LIGを用いた圧力センサの作製について報告する。

3-122

Fabrication of Diaphragm Structure using Fiber Laser Local Etching

◎Mohammad Nizar Mohamed Zukri・Muhammad Salman Al Farisi・Yoshihiro Hasegawa・Mitsuhiro Shikida（Hiroshima City University）

This study focuses on fabricating diaphragm structures for sensors and micro-actuators using fiber laser local etching. Challenges such as material redeposition, surface discoloration, and tearing, caused by the Gaussian beam profile, thermal effects, and uneven ablation, were mitigated. An optimized sequential process was introduced, combining R-type engraving and T-type redeposition removal with a cooling step and circular ablation patterns. Each cycle successfully ablated a 10-micrometer depth, with no tearing or discoloration observed. The LM110M fiber laser, operating at 6 W power, 70 mm/s scanning speed, and 10-20 μm hatching gaps, successfully achieved precise local thinning of titanium foil for diaphragm fabrication.

3-123

超高感度静電誘導センサを用いた歩行/走行動作の非接触検出技術

○栗田耕一・平野勝大（近畿大学）

私たちは歩行動作に伴い人体電位が変動する現象に着目した。歩行や走行動作中の被験者の近傍に電極を設置すると，被験者と電極間に静電容量が形成される。歩行や走行動作による人体電位変動により電極にはpA程度の静電誘導電流が過渡的に誘起される。この電流を検出可能なセンサを開発した。本研究ではルームランナーを用いて設定速度を7段階で変化させた歩行/走行動作を超高感度静電誘導センサを用いて非接触で計測した。得られた波形には，足が離地する際に負のピークや足が接地する際の正のピークが検出されていることが分かった。さらに，CNNによる個人識別を試みた結果，約92%の精度で個人識別が可能であることを明らかにした。

3-124

高感度人工嗅覚センサ検出回路の開発

○林 拓哉・花井陽介・山田翔太・関根幹弥・牛尾浩司・瓜生幸嗣（パナソニックインダストリー）

様々な対象のにおい検出を想定し，複数のセンサ素子を自由に組み合わせることが可能なアレイ状人工嗅覚センサを開発している。本研究では，幅広い濃度範囲のにおいに対応するためにアンプのゲインを可変にしたり，センサ素子の構成に合わせてセンサ信号電圧が最適値になるように調整したりするため，ホイートストンブリッジを形成する参照抵抗等を自動調整可能な補償回路と，高SN比増幅回路を組み合わせたアナログフロントエンドを開発した。これにより，センサ信号SN比が従来比で平均29dB（28倍）改善することを実証し，数ppbのにおい濃度を検知可能となった。

3-125

三次元点群を用いる樹上リンゴ果実のサイズ推定法の比較検討

◎田中俊輝・三浦健司・渡邉 学（岩手大学）

本研究では，果実が葉や枝に隠れる遮へい（オクルージョン）が原因で不完全な果実点群が得られる状況を考慮し，円錐形状の果実サイズ推定の精度向上を実現する手法について検討した。リンゴ果実である'はるか'を対象に，iPad Proを用いて3Dスキャンを実施し，点群データを生成した。果実サイズ推定には球フィッティングによる直径推定法，球表面積を用いる手法，取得点群の𝑧座標平均値の平面付近にある点群から円または楕円にフィッティングする手法を比較検討した。結果，最小二乗球表面積を用いる手法が最も良好な結果を示し，すべての可視率区間で平均4.4 mm，可視率40%以上のデータでは3.7 mmの平均絶対誤差を達成した。

3-126

収穫後果実の植物生体電位による熟度評価に関する研究

◎唯木厚志・長谷川有貴（埼玉大学）

本研究では，収穫後も熟成を続けるクライマクテリック型果実であるリンゴを対象に，植物生体電位を用いた非破壊的な熟度評価方法を提案しました。赤色光を1時間ごとに照射・遮断した際の植物生体電位応答を10日間連続測定し，日数経過による電位応答の変化を観察しました。その結果，評価指標として定義した電位変動幅が時間経過とともに増加し，測定後半では変化が緩やかになる傾向を確認しました。本研究は，植物生体電位を用いた収穫後果実の熟度評価の可能性を示唆し，腐敗との境界設定や他の熟度基準との関連性の検討が今後の課題です。

3-127

DLCフレークを利用した水素ガスセンサの開発

◎阿部紘佳・西谷 平・金杉和弥・平栗健二（東京電機大学）・石黒康志（防衛大学校）

現状の水素ガスセンサには材料として白金などの貴金属触媒が使用されており，動作には300℃以上の高温が必要で, 将来的な資源枯渇や安全性, 省電力性に課題がある。水晶振動子マイクロバランス(QCM)デバイスは室温動作可能であるため, このような問題の解決策として有効である。現在, QCMデバイスを基板とし, その水素ガス吸着膜に, 資源が豊富であり, 膜質制御性に優れる独自の窒素含有非晶質炭素(N-DLC, 以下DLC)を採用した研究が報告されている。しかし, 現状では従来型水素ガスセンサに比べて感度が低いことが課題である。本研究では, 高感度な水素ガス検知を目指して, センサ部の表面積増大が期待できるフレーク状DLCを適用し, QCM性能の向上を目指した。

3-128

経皮アセトン計測用バイオスニファの高感度化

◎細見佑一郎・石月尚宏・市川健太・飯谷健太・三林浩二（東京科学大学）

皮膚ガス中の揮発性有機化合物（VOCs）は代謝状態や疾患の有無により濃度が変化するため，VOCs濃度の計測による非侵襲な「代謝機能評価」及び「疾病スクリーニング」が期待されている。本研究では，脂質代謝や糖尿病に関連するマーカー成分であるアセトンの経皮ガス計測を目的として，酵素を認識子に用いた生化学式ガスセンサ（バイオスニファ）の開発を行った。「標準ガス発生器」と「ガス希釈器」を組み合わせて極低濃度のアセトンガスを調製し，センサ感応部に負荷したところ，ガス負荷に伴う出力の変化と濃度に応じた定常値が確認された。また，呼気中のアセトン以外の成分には殆ど出力を示さず，酵素の基質特異性に基づく高い選択性が得られた。

3-129

LSPR-SERSデュアルモードガスセンサの開発

◎王 瑶・王 聡・佐々文洋・林 健司（九州大学）

近年，環境モニタリングや産業制御の需要の増加に伴い，ガス検出技術が急速に発展している。表面増強ラマン散乱（SERS）および局所表面プラズモン共鳴（LSPR）は，高感度な検出手法として，ガス検出において大きな可能性を示している。LSPRは，局所屈折率の変化を検出することでリアルタイムの吸着情報を提供し，SERSは分子指紋となる振動特性ラマンスペクトルを提供する。これら2つの効果を組み合わせることで，センサーの検出感度と選択性をさらに向上させることが可能である。本研究では，LSPRとSERSの二重効果を備えたセンサーを成功裏に作製し，そのガス検出への応用可能性を実証した。この二重効果センサーは，環境モニタリングや産業用ガス制御の新たな可能性を提供するものである。

3-130

インクジェット印刷によるピクセル化LSPRガスセンサの作製

◎吉福敬尋・蔣 天舒・佐々文洋・林 健司（九州大学）

金属ナノ粒子中の自由電子の集団振動によって特定の波長の光を吸収するLSPR（局在表面プラズモン共鳴）現象を利用し，ガスを検知するLSPRガスセンサはガス濃度の勾配を正確に検知でき，高い感度及び流動的に変化するガスの動きに追従可能な高い空間分解能や高速な応答・回復速度を持つ。本研究では簡単かつ低コストでデバイスを作製することが可能であるプリンテッドエレクトロニクス技術を取り入れ，インクジェット印刷のパターニングにより稠密なアレイセンサを作製した。また，ピクセル構造を導入することで2次元ガスセンシングを高精度で行うことができ，空間内に存在するガスの濃度分布及び種類の検出が可能になる。Au・Agナノ粒子の粘度・表面張力を調整し，インクジェットプリンタで印刷し，ハイパースペクトルカメラを用いてガス応答を確認した結果，金属ナノ粒子が存在する領域がガス応答を示す事，構成する金属ナノ粒子のLSPRスペクトルの特徴に応じてガス応答が異なることを確認した。

3-131

SERSによる揮発性物質検知のためのサンプリング方法の検討

◎秋永銀士・山田健太・佐々文洋・林 健司（九州大学）

皮膚ガス，呼気の成分は低濃度であり，複数種類の混合ガスである。そのため，それらを分析するには高感度で分子識別能力があるセンサが必要である。なので，高感度であり，選択性が高いSERS（表面増強ラマン散乱）センサは適している。本研究ではSERSセンサを用いた揮発性物質の検知について検討することを目的とした。バブリング法，接触，滴下による検知を行った。それぞれの方法でピークの大きさは異なっていたが，ピークを確認することができた。また，接触，滴下の方法では低い濃度での検知ができた。今後はより低濃度での検知，接触サンプリングを用いてポータブルラマン分光器によるその場計測を可能にしたい。

3-132

マルチモ-ダルセンサによる室内ガス検知口ボット

◎呉 俊傑・葛 灵普・佐々文洋・林 健司（九州大学）

Develope a mobile monitoring robot system based on Arduino Uno,which utilizes ultrasonic sensors for obstacle detection and achieves obstacle avoidance motion. It is equipped with plD sensors, semiconductor sensors, SCD4X sensors, sound sensors, and LSPR sensors to detect indoor gas changes and determine environmental categories based on gas data. In addition, PlD sensor, semiconductor sensor, and LSPR sensor are used to prelinminarily identify the sensitivity differences of volatile organic compounds(VOCs).

3-133

深層学習を用いた屋外環境におけるガス源探索 ―ガスセンサのベースラインの個体差の影響―

◎趙 高挙（東京農工大学）・松倉 悠（電気通信大学）・石田 寛（東京農工大学）

格子状に並べたガスセンサの応答値を深層学習ニューラルネットワークモデルで処理し，ガス源位置を判定するシステムを提案する。風向きによっては，ガス源に最も近いセンサではなく，その隣のセンサが大きな応答を示すこともあり，単純に応答値を比較してもガス源位置は推定できない。そこで，ガスの空間分布の特徴をCNN（Convolutional Neural Network）で抽出し，その時系列変化をLSTM（Long Short-Term Memory）で識別して，ガス源位置を判定する。並べたガスセンサのベースライン応答値に個体差があると空間的な応答パターンに狂いが生じるが，応答値を標準化してCNN-LSTMに与えれば高いガス源位置判定精度を得られることが分かった。

3-134

カイコガの匂い源探索行動に同期する触角応答計測法の確立

◎李 庭ミン・祐川侑司・Stephan Hauput・加沢知毅・神﨑亮平・光野秀文（東京大学）

本研究では昆虫の匂い源定位能力をロボットに導入するためのモデル構築を目的とし，カイコガの匂い源探索行動と触角応答を同期して計測するための新たな実験システムの構築と評価を行った。その結果，構築したシステムが自然環境における匂い源を模倣し，両者が同程度の触角応答を引き起こすことを確認した。この匂い刺激装置を用いて，匂い刺激に対するカイコガの行動データと触角応答を同時に記録し，両者の関連性を明らかにした。本成果は，カイコガの匂い探索アルゴリズムの解明と応用可能性を示唆するものである。今後の研究では，EAG信号と行動データに基づく新たな匂い源探索アルゴリズムの開発を進めていく。

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ハーモニカリード型MEMS発電素子における素子厚みによる振動特性への影響評価

◎遠藤七海・神田健介・前中一介（兵庫県立大学）

風はさまざまな場所に存在し，IoTセンサのエネルギ源の重要な候補のひとつである。ハーモニカリードは気流による抗力と間隙を流れるジェットによる負圧により自励振動を生じ，薄くMEMSに適した構造である。本研究では，自励振動から電力を得るハーモニカリード型MEMS振動発電素子のリード厚みに着目した。複数のリード厚みの素子を作製し，自励振動に関する評価を行った。厚みが小さい素子は自励振動が生じるカットイン風速が低く，推奨される風速範囲も小さい。厚みが大きい素子は振動が安定することがわかった。また，リードの厚みはその素子の反りとの関係も重要で，振動に大きな影響を与えることがわかった。

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光の伝搬時間差を用いた多点化光ファイバガスセンサの開発

◎野口拓真・安藤 毅（千葉工業大学）

近年，エネルギー資源として水素が注目されており，それに伴ってガス漏洩の監視システムの需要が高まっている。一般に漏洩監視には複数点のガス濃度測定が必須となる。また水素等の引火性ガスに対しては，測定部を防爆構造とする必要があるため，コストの増加が懸念されている。本研究で着目した光ファイバガスセンサは，電気的な接点が測定部にないため防爆構造の必要がなく，さらに，1つの測定系で複数点の測定可能な手法が複数考案されている。本研究では，高コストになりがちな光学系を単純な構造とすることを目的として，光の経路長による伝搬時間差を利用した多点化光ファイバガスセンサの開発を行った。

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クマリン545Tを用いた緑色電気化学発光素子の検討

◎槫松一樹・波形奏汰・山口紗羅・笠原崇史（法政大学）

近年，次世代のディスプレイの応用に向けて，電気化学発光(ECL)素子の研究が行われている。ECL素子は2枚の透明電極で発光性溶液を挟んだシンプルな構造を有する自発光デバイスである。従来のECL溶液は単一の発光性分子を有機溶媒に溶解し調製するSingle ECL Systemが広く採用されていたが，2023年より我々の研究グループでは補助ドーパントを用いたMixed ECL Systemを検討してきた。これまでにテトラセン誘導体であるrubrene溶液に，補助ドーパントとしてスチルベン誘導体(DPAVB)を添加することで，黄色ECL素子の発光特性が向上することを示している。そこで本研究では，クマリン色素(C545T)を発光分子として用いた新たな緑色ECLを検討した。溶液に補助ドーパントを添加することで最大輝度が10 cd m^-2を超すECLが得られた。

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手指骨折治癒度可視化に向けた多電極生体インピーダンス分光法システムの構築

◎戸田 響・齊藤甫武・伊達功紀・池谷徳之・安原京介・増田治輝・村上裕二（静岡理工科大学）・五谷寛之（大阪掖済会病院）

本研究では，非侵襲的な骨折治癒モニタを目的とし，電気インピーダンストモグラフィ（EIT）法の手指への適用を進めた。手指を覆う電極数の制限から，精密な画像化が難しい課題を克服するため，多電極インピーダンス分光法システムを開発した。ANALOG DEVICES社の生体電気AFE（AD5940）を用い，Raspberry Pi4で制御した16chマルチプレクサを介して8電極に信号を振り分け，食用肉を用いて周波数別にインピーダンスを計測した。結果，同期なしでは周波数スキャン切り替えと電極切り替えのタイミングがずれる問題が確認され，同期制御により改善が見られた。さらに，食用肉の周波数別インピーダンスの特性も示され，生体組織の周波数スキャン特有の減衰が確認された。これらのデータを基にEIT法での断層像実現を目指す。