一般講演

3-017

輸送収益の最大化を目的とした貨客混載輸送計画法

○羽田明生（鉄道総合技術研究所）

近年，鉄道を利用した貨客混載輸送が注目されている。鉄道は様々な輸送機関の中でも環境性に優れており，定時性・速達性も高い輸送手段であるため，高い導入効果が期待されている。しかし，鉄道を利用した貨客混載の輸送計画を作成する際は，荷室のスペース，停車時間内での積み下ろし作業，荷物の持ち込みや受け取りの場所と時刻など様々な条件を考慮しなければならないため，運用可能な輸送計画の作成は非常に困難となる。そこで本稿では，鉄道を利用した貨客混載輸送を対象として，鉄道事業者の輸送収益が最大となるように輸送計画を作成する手法を提案し，提案手法の有用性をケーススタディにより確認した。

3-018

ジョブの処理優先度を考慮した並列機械工程スケジューリング問題に対する整数最適化

◎矢口喬脩・海江田広和・中井敦子（三菱電機）・飯間 等（京都工芸繊維大学）

製造現場の要求に応えつつ，生産性向上を追求した生産スケジュールを作成することは極めて重要な課題である。この課題に対し，著者らはジョブの処理優先度を考慮した並列機械工程を題材として，整数最適化問題として処理する部分とルールベースのアルゴリズムで処理する部分を組み合わせた高速なスケジューリング手法を提案した。本論文では，先述の提案法でルールベース処理をしていた部分についても整数最適化問題として解くスケジューリング手法を提案する。いくつかのテストケースに対し，提案法と比較手法を適用する数値実験を実施したところ，多くのケースにおいて比較手法より優れたスケジュールを作成することができた。

3-019

運転実績を活用したプラントの設定値計算技術

○桐生智志・鈴木 聡・飯坂達也・松井哲郎（富士電機）

産業プラントの完全自動運転に向け運転員の運転実績を参考にする方法が有効と考えられる。過去実績を考慮して最適な操作を計算する方法としてAIの分野で DACEが提案されていたが，プラントのように操作できる設定値と操作できない変数が混在する場合や，状態が時間変化する対象に適用できないという課題があった。そこで本稿では，DACEで扱う変数を直接操作できる設定値と，直接操作できない計測値に分割したうえで，定式化の中に時間変化を表す変数を導入する方法を提案する。

3-020

可変パラメータを用いたImproved Spider Monkey Optimizationによるスマートシティ全体最適化

◎大原智博・福山良和（明治大学）・渡辺拓也・飯坂達也（富士電機）

現在，世界全体で持続可能な社会の実現に向けた取り組みが進められている中，地域内で省エネ・節電とエネルギーの安定供給を同時に実現する社会システムである，スマートシティ（以下，SC）の実証実験が世界各地で進められている。著者らは，SC全体最適化手法として改良型Spider Monkey Optimization（以下，ISMO）など，様々な進化計算手法の適用を提案してきたが，解に改善の余地があった。本論文では，SC全体最適化に対し，可変パラメータを用いたISMO（以下，ISMO-VP）による手法の適用の提案を行う。また，ISMOによる手法と比較し，良質かつ安定した解が得られることを確認できたことを報告する。

3-021

Jaccard係数によるMP-IDCSOを用いた災害時における緊急支援物資の配送計画の有効性検証

◎MINGQI LIANG・福山良和（明治大学）

日本では大規模自然災害が頻発しており，被災者への緊急支援物資の効率的かつ公平な配送が課題となっている。この課題解決のため，著者らは最適2次集積所の数，位置，配送エリア，配送計画の4つの要素を統合的に解決する最適緊急支援物資ロジスティクスを提案し，最適化手法としてタブーサーチを適用した。また，DCSOを改良したIDCSOを緊急支援物資配送に適用し，良質な解を少ない評価回数で生成できることを確認した。さらに，multi populationのアプローチを採用したMP-IDCSOを適用した手法により解の質を向上できることを確認した。本論文では，Jaccard係数を用いて，MP-IDCSOとIDCSOを適用した手法を比較し，MP-IDCSOを適用した手法の有効性を分析した結果を報告する。

3-022

異なるコストで個別評価可能な多目的最適化に対するベイズ最適化手法の改良

◎桐淵大貴・吉田琢史（東芝）

複数の目的関数のトレードオフのある最適な複数のパラメータを求める多目的最適化問題を考える。コスト（計算時間）の異なる複数のシミュレーションによって，複数の目的関数がそれぞれ得られる場合がある。この場合に対する多目的ベイズ最適化手法としてFlexiBOが提案されている。しかし本手法は，連続変数の最適化や，評価指標としてHVの大きい複数解を求める際には非効率な課題がある。本稿では，連続変数と評価指標HVに適するようにFlexiBOを3点改良する。3次元の連続変数で2目的のテスト問題を用いてHVを評価し，改良手法は従来のFlexiBOと比較して最適化時間を32%削減できることを確認する。

3-023

エリート部分解伝播を用いたCVT-MAP-ElitesへのMemetic Algorithmによる局所探索の導入

○田村謙次（中央学院大学）

進化計算は大域探索と局所探索とのバランスが必要であることから，それらを実現するためにさまざまな手法が提案されてきた。そのような背景において，Quality Diversityのように解の多様性を維持しながら，各解の品質も向上させることを目指す手法が盛んに研究されている。その一つであるCVT-MAP-Elitesは分割された特徴空間上における最適解を保持することにより多様性の維持と解探索を行うが，特徴空間を幅広く探索することを重視しているため局所的な探索機能に課題がある。本研究ではCVT-MEにエリート個体の部分解伝播を用いた手法にMemetic Algorithmによる各タスクに対する局所探索を導入し，マルチタスク問題に適用した結果を報告する。

3-024

CO₂フリー電力による合成メタン製造を考慮した世界エネルギーモデルによる脱炭素戦略の分析

◎石田悠菜・小宮山涼一・藤井康正（東京大学）

本研究では，CO₂フリー電力を活用した革新的なメタネーション技術と水素関連技術を組み込んだ地域細分化型世界エネルギーモデルを構築し，ネガティブエミッションの実現可能性を評価・分析する。温室効果ガス削減に向け，熱需要分野での脱炭素化が求められる中，クリーンエネルギーとして直接供給可能な水素や，既存インフラを活用できる合成メタンが注目されている。本研究では，CO₂排出量制約を考慮したコスト最小化の観点から，世界全体での最適なエネルギー構成を検討し，合成メタン導入の可能性を定量的に評価する。これによる脱炭素社会実現に向けた最適な資源と技術の選択，および効果的な政策提言を目的とする。

3-025

実数値遺伝的アルゴリズムを用いた回路トポロジー最適化に関する基礎検討

◎片岡優斗・佐々木秀徳（法政大学）

近年，電子機器の高性能化や小型化に伴い回路構成は複雑化しており，回路の最適設計は困難を極める。本発表では回路トポロジー，素子の種類および素子値を考慮した新たな回路自動設計手法を提案する。本発表では提案手法をバンドパスフィルタの回路トポロジー最適化に適用した結果を報告する。

3-026

ハイブリッドアプローチを活用したモデル予測制御におけるロバスト性の向上

◎池口誠人・加納潤一・木下雄介（パナソニックインダストリー）

工作機械の分野では，加工精度と生産性を両立する最適な軌道を生成する手法として，モデル予測制御 (MPC: Model Predictive Control) の適用が提案されている。しかしながら，MPCは有限の範囲内でのみ最適な制御入力を逐次的に探索するため，制約を満たす最適解が存在しない領域に状態が誘導され，軌道生成が失敗する可能性があるという課題があった。本稿では，制約を満たす最適解が存在しない状態に対し，幾何学計算により最短時間で停止する安全な解を代替的に提供することで，MPCのロバスト性を向上させる手法を提案する。この手法に基づいて2軸ステージの制御シミュレーションを行い，軌道生成の成功率が48%から100%に改善することを確認した。

3-027

フィードバックループの外乱抑制に関する内部モデル原理の補完

◎前田真之介・黄 慶九（工学院大学）

ACサーボモータには，外乱の影響により，回転速度制御や角度制御を行っても，所望の値に制御することができなくなってしまう。それらの周期外乱を抑制するため，ACサーボモータの状態空間モデルおよび内部モデル原理に基づいて，最適制御理論により設計したサーボシステムの制御手法がある。しかし，その制御手法ではセンサノイズを抑制することが出来ない。
本論文では，最適制御理論によりサーボシステムを設計し，入出力外乱を抑制するとともに，センサノイズの抑制を可能とするための新たな周期外乱の補償器を用いたサーボシステムを提案する。また，その設計法により作成したシステムの性能のシミュレーションを行い確認する。

3-028

最適レギュレータを用いたACサーボモータの周期外乱の抑制

◎萩原琢斗・黄 慶九（工学院大学）

ACサーボモータの回転速度や角度の制御は，産業用ロボットアームや製造ラインなど，産業界において盛んに使用されている。ACサーボモータには，磁極からの吸引力によるコギングトルクやセンサからの周波数成分をもつ外乱が生じることがある。それらの外乱の影響により，モータのトルクが脈動してしまうため，回転速度制御や角度制御を行っても，所望の値に制御することができなくなってしまう。
本論文では，それらの周期外乱を抑制するため，ACサーボモータの状態空間モデルおよび内部モデル原理に基づいて，最適制御理論により設計したサーボシステムの制御手法を提案する。また，その設計法により作成したシステムの性能をシミュレーションおよび実機での駆動を行い確認する。

3-029

ゼロトルクフィードバック制御を用いた電気自動車の省エネルギー駆動システム

◎西 暖・黄 慶九（工学院大学）

環境問題への関心の高まりから純粋な電気自動車の普及は急務であるが，電気自動車の普及を妨げる要因の一つに，一充電での航続距離の短さが挙げられる。よって，本研究では既存のバッテリーを元に，駆動制御によって電気自動車の一充電航続距離を伸ばす技術の開発を目指す。減速機のギヤ摩擦や転がり抵抗，車輪の負荷慣性などの無駄なトルクをモータの電流から疑似トルクとして検出し，それらの影響を打ち消すことでモータの回転を自由化させ，無駄なエネルギーを消費させないゼロトルクフィードバック制御を開発する。これにより電気自動車の省エネルギー駆動を実現する。

3-030

直進航行する三胴ロボット船のフォーメーション制御に関する基礎検討

◎北野雅智・原 尚之・小西啓治・杉谷栄規（大阪公立大学）

本報告では，3隻の三胴ロボット船を用いた，直線航行時におけるフォーメーション航行制御則を提案する。リーダー・フォロワー戦略を用いることで，フォーメーションの形成を実現する。フォロワー船に適用する制御則は2段階の構造をもつ。1段階目では，フォロワー船がリーダー船の航路に基づき算出される目標航路を航行するように制御する。2段階目では，フォロワー船が目標航路収束後，その目標航路上にある点に収束するように制御する。数値シミュレーションを行い，3隻の三胴ロボット船が，フォーメーションを形成し，航行できることを確認した。

3-031

浮体式洋上風車の定格風速近傍におけるベースライン制御器の安定性解析

◎林 優太・原 尚之・小西啓治・杉谷栄規（大阪公立大学）

本研究では，浮体式洋上風車におけるベースライン制御器の安定性を調査する。浮体式洋上風車の線形モデルを作成し，定格風速付近における制御則の切り替わり動作を含むダイナミクスを，区分的アファインシステムで表現する。線形行列不等式に基づく解析により，切り替え動作を含む浮体式洋上風車システムの安定性を解析する。

3-032

FRITを用いた3入力3出力磁気浮上システムのデータ駆動制御

◎福田 駿・東 剛人・佐久間洋志（宇都宮大学）

磁気浮上システムの中で電磁石を用いずに永久磁石のみで磁性体の3次元運動を制御する磁気浮上システムが開発されている。このシステムは3つの永久磁石を用いて磁性体を制御する装置である。このシステムの制御対象は3入力3出力という多入出力系であり，PI制御器により制御される。しかし，このシステムのPI制御器設計はハンドチューニングで調整されているため理論的な設計が課題である。モデル化が困難である。本稿では，データ駆動制御手法の一つであるFRITを用いて3次元運動制御のための磁気浮上システムのPIチューニングを行う。

3-033

Improved Target Trajectory Tracking of Predictive Functional Control by Extended State Observer

◎山崎健生・石田義久・村上隆啓（明治大学）

Predictive Functional Control (PFC)はモデル予測制御の一つであり，シンプルで直感的な動作と，制約や遅延の処理能力の高さから実用化が進んでいる。一方で，PFCの調整パラメータである閉ループ応答時間と実際の閉ループ応答時間が一致しないことが問題として挙げられている。本稿では，制御対象が高次で重極をもつ場合のPFCにおいて，予測ステップが大きくなればなるほど，閉ループ系が制御対象と同じ動特性をもつことを利用し，PFCで制御するESOと制御対象の拡大系を高次で重極をもつシステムに近似することを提案する。提案法において設定した閉ループ応答時間に対応する拡大系の重極を設定することで，先述の問題点が解決される。

3-034

PID制御器を加えたmodel-free adaptive controllerの安定性および制御性能の検証

◎假屋園健太・石田義久・村上隆啓（明治大学）

Model-free adaptive control（MFAC）は非線形なプラントを対象としたデータ駆動制御である。しかし，MFACは原点に極を持つ制御対象に対して不安定であることが明らかとなっている。この問題に対して，MFACにPID制御器を加えること（MFAC+PID）で，安定性を改善する方法が提案されているが，理論的な裏付けはP制御器を加えた場合（MFAC+P）のみであった。また，制御性能についてもMFAC+Pのみが検証されており，これをMFAC+PIDに一般化することで制御性能が改善される可能性がある。本稿では，原点に極があるプラントに対しMFAC+PIDの安定性の解析および制御性能の検証を行った。

3-035

動的システムのS4モデルに対するモデルベース制御系設計

◎黒﨑 智・南 裕樹・石川将人（大阪大学）

近年，ニューラルネットワーク（NN）が様々な分野で使われている。特に，システム制御分野においては動的システムのモデリングにNNを活用する手法が数多く提案されている。しかし，動的システムがNNでモデル化されているとき，そのモデルを用いてどのように制御系を設計すればよいかについては十分議論されていない。そこで本研究では，NNでモデル化された動的システムのための制御系設計論の構築に挑戦する。特に，本研究ではStructured State Space Sequence model（S4）と呼ばれるNNモデル（S4モデル）で動的システムがモデル化されている場合において，モデルベース制御系設計手法を提案することを目的とする。本発表では，S4モデルに対するモデルベース制御系設計手法を提案し，その結果と考察を述べる。

3-036

ベイジアンニューラルネットワークとフィードバック誤差学習との融合によるサーボシステムの位置決め制御

◎村松直幸・黄 慶九（工学院大学）

ベイジアンニューラルネットワーク(BNN)を用いたフィードバック誤差学習(FEL)は，高い制御性能を示す一方で，計算コストが大きいという課題がある。この課題に対し，本研究では，BNNとFELとの融合によるサーボシステムのFELを提案し，その有効性を検証する。

3-037

活性化関数の可変調整パラメータによる電気モータのカスケードニューラルネットワーク制御

◎内藤温仁・黄 慶九（工学院大学）

先行研究で提案されたカスケードニューラルネットワーク制御は適応制御の一種であり，従来のフィードバック制御と比較して位置決め精度が高い。しかし，学習初期段階における位置決め制御の整定時間が長くなる場合がある。本研究では電気モータの位置決め制御の整定時間を短縮するため，先行研究で提案されたカスケードニューラルネットワーク制御における活性化関数の出力範囲を可変的に調整する手法を提案する。

3-038

XRによる現実と仮想の融合空間の研究

◎伊東弘騎・神戸英利（東京電機大学）

COVID-19の影響で普及したテレワークでは，コミュニケーションの質が課題となっています。本研究では，現実空間と仮想空間をリアルタイムで融合し，ユーザに負担をかけず，コストを抑えたシステムの開発を目指します。提案手法では，スマートフォンや軽量なモーションキャプチャ，スマートグラスを活用し，部屋をデジタル再現してアバターを操作することで，現実空間のようなコミュニケーションを実現します。OpenCVを用いた人物検出やLSD-SLAMを利用した環境地図の生成を行い，システムの実装を進めています。今後は，未実装部分の開発を進め，提案手法の有効性を評価・検証する予定です。

3-039

マルチモーダルを考慮したマスキングシステムの開発

◎山内優汰・神戸英利（東京電機大学）

デジタル社会における個人情報保護の重要性が増す中，本研究では映像と音声の両方に対応するマルチモーダルマスキングシステムの開発を目指します。従来のマスキング技術は特定のモーダルに特化しており，リアルタイム性や精度に課題がありました。本研究では，映像データから個人情報要素（例：顔，車のナンバープレート）を特定してマスキングし，音声データでは特定単語をリアルタイムで認識・マスキングする技術を提案します。具体的には，データの取得・分析，要素選択，マスキング処理，および結果保存のプロセスを構築し，処理速度や精度の向上を目指します。本研究は，より安全で利便性の高い情報保護の実現に貢献します。

3-040

Visual SLAMにおける反射特性を有する表面の三次元マッピング精度の向上

◎河合悠貴・神戸英利（東京電機大学）

本研究では，Visual SLAMにおけるガラスや鏡面などの反射特性を持つ表面の三次元マッピング精度を向上させる手法を提案する。従来のSLAMでは，これらの表面が正確に認識されず，三次元再構成の精度低下を招く問題があった。本手法では，追加のセンサを用いずに，画像認識技術を活用して反射平面の検出と再構成を行う。特に，ARマーカーの一種であるAprilTagを利用し，反射したマーカーの鏡像を解析することで，対象平面の奥行きや位置を推定する。さらに，セマンティックセグメンテーションを活用し，ガラスや鏡の形状を精度良く特定することで，Visual SLAMのマップ情報を補正する。本手法は屋内環境でのロボット動作において実用性を検証し，安全かつ高精度なマッピングの実現を目指す。

3-041

Pan-Tilt制御型LiDAR-カメラ複合センサによる電波送受信端末の3次元位置特定

○井深真治・肥後明豪・武田和夫・梅津和眞・冨永真司・東馬場 徳・堀内岳人（ブレインズ）

筆者らは，LiDARとカメラを組み合わせた複合センサによる物体位置特定技術を開発している。光軸キャリブレーション済みの複合センサにインスタンスセグメンテーション技術を適用することで，多種対象物体に対する物体認識および位置特定が実現できる。しかし，小型の対象物体に対してはセグメンテーション領域内の点群密度が低く，高精度な位置取得の妨げとなっている。そこで，本研究では複合センサをPan・Tilt制御することにより，小型物体に対する取得点群密度の増加，複合センサの自己位置取得精度の向上を実現する手法を提案する。本稿では光軸キャリブレーション手法の改良を含め，位置取得精度向上手法について報告する。

3-042

超音波B-mode動画中の移動消化物解析による小腸蠕動運動活性度評価

◎淺田 祥・阪田 治（東京理科大学）

研究の目的は，小腸の活性度を定量的に評価する手法の開発にある。小腸はストレスや体調の影響を受けやすく，その活性度を評価することで全身の健康状態を把握する手がかりとなる。しかし，現在は，小腸の活性度は医師が聴診器を用いて診断する主観的な方法に頼っている。そこで本研究では，超音波動画像を用いて画像処理を行うことで小腸の活性度の定量的評価法の開発を目的としている。小腸の構造は複雑であり，小腸自体の動きを検出することは難しいため，消化物の移動度に焦点をあて研究を進めている。

3-043

3D Model Generation for Game Characters Based on Hand-Drawn Illustrations

◎Ningxin Yan・Takahiro Yakoh（Keio University）

This paper presents a 3D model generation method for game characters based on hand-drawn illustrations, addressing the limitations of single-view approaches, which often lack detail and geometric consistency. The technique enhances 3D information in illustrations using Stable Diffusion, generates normal maps with a pre-trained diffusion model, and integrates multi-view inputs with a geometry-aware standard fusion algorithm. Experimental results show that this approach outperforms single-view methods in detail restoration and geometric accuracy, meeting the high-quality requirements of game character production.

3-044

画像処理に基づく鶏舎内での鶏の運動量計測

○鈴木浩司・高橋未優・北島孝弘・桑原明伸・安野 卓・榎本崇宏・芥川正武・粟飯原睦美・木内陽介・馬渡一論・高橋 章（徳島大学）・下畑隆明（福井県立大学）

近年，畜産業においてもロボットや ICT 技術を活用した省力化や生産成向上，高品質化が推進されている。肉用鶏舎においても，衛生環境維持や監視・死鶏発見を目的としたロボットの導入が検討されている。一方，ロボットに対する警戒心や運動の強制による鶏のストレス増加が懸念される。一般に，家禽の行動評価において，ネガティブな心理的要因により歩数が増加されることが知られている。本研究では，画像処理による物体の検出および追跡アルゴリズムを用いて鶏の移動量を推定する手法を提案し，ロボットの導入による鶏への影響を評価している。

3-045

敵対的生成ネットワークを用いた電子透かし手法の開発

◎太田雄也（順心広尾学園高等学校）・矢向高弘（慶應義塾大学）

本研究では，GANを用いた新たな再撮影耐性電子透かしを作成する手法を提案し，その有効性を確認した。今後は，元画像の視認的品質を保ったまま情報を埋め込める技術や，文字列以外のデータ埋め込み，また動的なコンテンツへの適用やリアルタイム処理への拡張など，さらなる研究の展開が期待される。

3-046

仮想空間における動物アバター操作が犬恐怖心の緩和に与える影響

○小渡 悟・金城愛音（沖縄国際大学）

本研究では，犬型アバターを使用し，被験者がこのアバターを操作することによって犬恐怖症の緩和が期待できるかどうかを検討する。特に，アバターの操作によって犬に対する恐怖心や心理的ストレスがどのように変化するかを調査することを目指す。

3-047

SDNを用いたスマートグリッドネットワークにおけるマルチパスルーティング方式

◎星 拓斗（関東学院大学）

スマートグリッドは，情報通信技術の統合により次世代型電力網を実現するが，ネットワーク輻輳や通信障害が課題である。本稿では，SDNとQ-learningを活用した動的マルチパスルーティング手法を提案し，高信頼性と低遅延を目指す。シミュレーションを通じて提案手法の有効性を確認した。

3-048

エラー発報データによる故障部位推定技術の保守作業支援への導入検討

○高 明淑・矢野 亨（東芝）・稲木達哉（東芝テック）

複合機(Multifunction Peripheral: MFP)は，印刷・プリント・スキャン・FAX等，複数の機能を持ち，機能実行のプロセスを実現する複数のモジュールで構成される。MFPは，一般的にリース製品であり，定期・不定期の保守メンテナンスサービスが付帯する。MFPの保守サービス会社は，遠隔でMFPの状態・動作に関わるデータを収集する仕組みを印刷枚数の自動検針，消耗品の自動手配，故障発生時の対応作業に活用している。本稿では，故障対応作業時の故障部位特定のために遠隔データに対して機械学習を適用する際に抽出した課題とその提案について述べる。

3-049

仮想空間と現実空間における触覚刺激の協調による臨場感増加効果に関する研究

◎柴田結衣・秋山康智（東京電機大学）

近年，メタバースをはじめとする仮想空間技術の進展により，視覚・聴覚を通じた高い臨場感を提供する技術が実用化されつつある。一方で，触覚を含む多感覚的な再現技術が未熟であり，仮想空間と現実空間の間にギャップが生じている。
本研究では，仮想空間での風向情報を基に，現実空間で風を用いた触覚刺激を提供するシステムを開発した。
開発したシステムでは，仮想空間での風向を計算し，その角度情報を現実空間に正常に送信・受信できることを確認した。また，ステッピングモーターが角度情報通りに動作し，車両が移動して風を提示する準備が整った。これにより，仮想空間の体験と現実空間の触覚刺激を連動させる仕組みが実現した。

3-050

ARグラスとハンドジェスチャーを活用した料理アシストシステムの提案とAI支援実装

◎保戸塚結治・秋山康智（東京電機大学）

近年，ARの関心が高まっており，身近なデバイスで体験できることから幅広い層に受け入れられていることから本研究はARグラスとハンドジェスチャーを活用し，手が濡れている状態でも，また手を汚すことなくハンズフリー操作ができる料理アシストシステムを開発し，その効果として効率性や快適性を向上させるとともに，料理体験の向上も促進させることを目的とし，その検証を行う。
本研究の成果として目的は概ね達成したと考える。実装した機能の評価においてSNS共有機能に不具合が生じる点があるものの，ユーザーテストによるアンケート評価から本システムが日常生活の料理シーンにおいて有効性があると考えられる結果が得られた。

3-051

仮想現実とAIを駆使した採用面接練習システムの開発と評価

◎白根亨祐・秋山康智（東京電機大学）

面接練習において，誰かに面接役を頼み，模擬面接を行うことが効果的とされている。しかし，先生やキャリアサポーターなど，適度な緊張感を保つことのできる相手とスケジュールを合わせるのは，困難な場合がある。本研究では，一人でも緊張感があり，効果的な面接練習システムの開発と評価を目的とし，生成AIによるリアルタイムでの質問生成とVR空間での面接環境を組み合わせたシステムを実装した。ユーザーアンケートによる評価を行った結果，緊張感があり，効果的な面接練習システム実現の可能性が示唆されたが，いくつかの改善案も挙げられた。今後はユーザーアンケートにより得られた改善案を基に，システムの改良を行い，より有用なシステムの開発を目指す。

3-052

AI技術を活用した生徒の感情把握システムの提案と実装

◎森下直紀・秋山康智（東京電機大学）

実際に授業を行うと生徒の理解度や興味度の把握が難しいと感じることが多く，その把握において新任教師とベテラン教師等，教師間の能力における格差が顕著である。また，近年AIの技術進化が目覚ましく，人の表情やしぐさから様々な情報を推定できるようになってきている。そこでAI技術を活用した生徒の理解度や興味度を把握できるシステムの研究を行った。
本実装により，各生徒の興味度と理解度を0から100までの数値で示すことで定量的な評価を実現することができた。これにより，経験の浅い教師でも生徒の理解度や興味度を把握することが可能となり，教育現場における生徒指導の大きな助けとなる可能性が期待できる。

3-053

フォグコンピューティングにおけるスイッチマイグレーション問題に関する研究

◎WENXUAN LI（関東学院大学）

フォグコンピューティングは，クラウドとエッジの中間に位置するアーキテクチャで，低レイテンシーと効率的な帯域利用を実現する。しかし，フォグノードはリソースの制約や攻撃リスクが高く，ネットワーク全体への影響が懸念される。本稿では，これらの課題に対応するため，スイッチマイグレーション技術を活用する手法を提案する。

3-054

時系列予測のための適応型指数平滑移動平均法

◎松村太希・中間公啓・小圷成一（千葉大学）・銭 飛（関東学院大学）

本稿では, 平滑化係数を,時系列データの変動に応じて動的に調整する時系列予測手法として,指数平滑化と単純移動平均を組み合わせた手法である適応型指数平滑移動平均法を提案する。提案手法は,適応性,安定性,計算効率の3つの側面で優れている。適応性については,時系列データの急激な変動と緩やかな変動の両方に対してバランスの取れた予測が実現できる。安定性については,時系列データが急変する場合でも安定した予測を提供できる。計算効率については,計算負荷が比較的軽く,リアルタイム予測にも適するため,ネットワークの負荷予測において,大規模なトラフィックデータにも応用可能である。

3-055

重み自動修正機能を備えた適応調和型ハイブリッド予測法の開発

◎付 研磊（関東学院大学）

ネットワークトラフィックの時系列データには，線形的特徴（規則的な増減や季節性）と非線形的特徴（突発変動や複雑な依存関係）が混在しており，単独手法では十分な予測精度を得ることが困難である。本研究では，ARIMAとLSTMを統合し，重みの自動調整機能を備えた適応型ハイブリッドモテルを提案し，その有効性を実験的に検証した。

3-056

ARグラスによるパーソナライズされたDOOH広告の向上

◎野口翔陽・神戸英利（東京電機大学）

本研究では，ARグラスを用いたDOOH（Digital Out-of-Home）広告の実装手法および個別最適化手法を提案する。ユーザの属性情報および現実世界の環境情報に基づき，AR空間上で広告を最適表示することにより，広告の有用性とユーザが得る情報の質を向上させることを目的とする。システムにはARグラスとAndroidスマートフォンを使用し，ユーザ属性の入力，環境情報の取得，広告の表示機能を実装した。考察では，日光下における視認性の課題が明らかとなり，透過率自動調整機能を備えたARグラスの必要性が示された。今後は，広告推薦アルゴリズムの高度化，サーバ通信機能の実装，広告表示手法の改良を進める必要がある。本研究は，次世代のAR広告技術の発展に貢献するものである。

3-057

小規模遅延時の進路設定順序自動計算の考え方

○杉山陽一（鉄道総合技術研究所）

鉄道の運行管理と連動制御は機能が独立している。一方，ラッシュ時間帯では早期の遅延回復のため進路設定に手動で介入することがあり，遅延拡大やデッドロックが発生する場合がある。このような事象を防ぎ，さらなる安定運行を実現するには，運行管理と連動制御の機能連携が必要である。
著者は，進路設定順序を高速に計算し，進路設定の妥当性をチェックする手法の開発を目指している。本手法により，遅延拡大を防止する進路設定順序の自動的な決定を可能とする。
本稿では，順序を高速に決定するための検討条件と，順序管理をシンプルに行うグラフ構造について述べる。また，高速な順序決定に必要な計算性能を把握する際の，問題の絞り込みについて述べる。

3-058

格子状多点表面筋電図を用いた筋疲労評価システムの構築

○赤澤 淳（明治国際医療大学）

スポーツやリハビリテーションにおいて，治療や怪我の予防のために筋力トレーニングにおける筋疲労状態を正確に把握することが求められているが，対象とする神経や筋についての詳細な情報を取得するシステムは極めて少ない。運動単位は一つのα運動ニューロンとそれに支配される筋線維群であり，神経筋の機能的最小単位である。本研究の目的は，特定部位の筋および神経に関係する筋疲労の評価を単一運動単位レベルで行うためのシステムを構築することである。本研究では，8チャネルの表面筋電図から被験者が視覚的フィードバックによりコントロールした上腕二頭筋の単一運動単位の発火周波数を算出するシステムを構築したので報告する。

3-059

汎用性を考慮した脳温分布推定法の提案

○本間 達（東京科学大学）

ICUで管理される全ての患者は深部体温をモニタリングされており，また脳低温療法の多くで鼓膜温度を測定して脳温の代用としている。すなわち，深部体温と鼓膜温度は無侵襲で利用可能な患者のモニタリングデータであり，これらを用いて脳温分布を推定できれば，患者の病態管理に有益な情報を提供できる可能性がある。
本研究では，鼓膜温度の利用を想定し，鼓膜温度に近似するとされる脳内温度分布の平均値を代用とする。これにより深部体温と脳内平均温度から脳温の推定が可能であるか検討したので報告する。

3-060

脳波を用いたストレス強度の計測

◎上野圭都・島田尊正（東京電機大学）

【背景】現代社会において人々は多くのストレスと向き合って生活をしている。長期的なストレスは「うつ病」発症リスクを高める可能性がある。本研究では，脳波を用いた測定方法を提案し，従来の特徴波（θ波やα波）ではなくより細かい周波数帯域に着目し，ストレスとの関連性を調査した。【方法】クレペリンテストでストレスを与えた前後で脳波データを取得し，唾液アミラーゼ活性で測定したストレス値との相関を解析した。【結果】ストレスレベルと有意な正の相関を示す周波数帯域を検出することができた。【結論】θ波帯域やβ波帯域より細かい周波数帯域を用いることで精度が高い，客観的かつ定量的なストレス計測ができる可能性が示された。

3-061

逆推定に基づく調音運動の評価 ―/agV/と/akV/音形における声道体積の比較―

◎牛島稜太・緒方公一（熊本大学）

音声技術の発展に伴い，より優れた技術のためには調音運動の理解が重要となる。本研究室では，調音運動の様子を低コストかつ効率的に把握するための手法として，声道音響管マッピングインタフェースの開発を進めてきた。本稿では，本インタフェースを用いて，有声子音を含む/agV/と無声子音を含む/akV/の発話における咽頭部の体積について後続母音が5母音の場合で評価を行い，特徴について述べる。結果として，子音閉鎖直前と終了直後を見ると，いずれの後続母音にも共通して/agV/の方が/akV/よりも咽頭部の体積が大きいことが確認された。有声無声の制御は主として声帯の役割であるが，声道の咽頭部の体積の違いも関与していることが示唆された。

3-062

多次元音響解析による危険示唆音到来方向推定

◎戸祭皓介（東京理科大学）

PDC（Partial Directed Coherence）は，脳波の伝搬方向推定に用いられるアルゴリズムの1つであり，時系列間の相関関係を定量化するコヒーレンスに加え，情報の方向を特定する特性を持つ。本研究では，このPDC理論が特定の音声信号に応用可能であるとのシミュレーション結果を基に，4つのマイクと2つのスピーカーを用いて実測データとの比較を行った。その結果，救急車のサイレンといった危険示唆音の到来方向を推定できることを確認したが，約20度前後の誤差が発生することも明らかになった。本技術は，ノイズ除去や周波数フィルターの適用により精度向上が期待され，自動運転における活用や異なるマイク特性下での音声トラッキングなど，多様な応用が見込まれる。

3-063

波長掃引光による重なり合ったファイバブラッググレーティングの反射信号測定に関する基礎検討

○山口達也・篠田之孝（日本大学）

ファイバブラッググレーティング（FBG）は母材をガラスで構成する光ファイバセンサである。そのため，高い柔軟性と耐久性を備えており，社会インフラの監視から高放射線環境下での温湿度計測まで幅広く利用されている。筆者らはFBGの多点化の限界の克服に向け，機械学習を用いた計測法の開発を推進している。本報告では波長掃引レーザを用いて同一波長のFBGの反射信号を高速に取得し，機械学習を用いたピーク波長解析について検討した。

3-064

製造現場でのUWB測位における課題検討

◎東 駿・武輪知明・松岡 仁・秋山雄輝・八田俊之（三菱電機）

製造現場でのIEの自動化に向けて，環境構築が簡易であり，製造ラインの通路幅約2 mを判別可能な精度の屋内測位技術の開発を目指し，UWB測位の適用可能性を評価した。製造現場における実際の作業中のデータを収集し，収集したUWB 測位データとカメラで撮影したリファレンスデータから位置精度を評価することで，UWB測位の現場適用に向けた課題を検討した。課題検討の結果，設置の簡易性を重視して製造ライン等の設備にアンカーを設置した場合，電波がアンテナ面の裏側方向にまで回折し，設備の隙間を通って反射波が受信されることで測位誤差の主要因となっていることが明らかとなった。

3-065

火山の噴煙中のSO₂ガス濃度分布を可視化する多バンド赤外カメラの開発

○實渕哲也（防災科学技術研究所）

防災科学技術研究所は，火山の表面現象（温度，ガス濃度分布）の面的観測手法として，表面現象撮像カメラ（Surface Phenomena Imaging Camera：SPIC）を開発した。SPICは，異なる波長特性（バンド）を有する同期した4台の赤外カメラ（カメラ1，2，3，4）からなる多バンド赤外カメラである。本装置の性能実証の為，SPICによる火山試験観測を実施し，放射伝達シミュレーション解析により，SPICで計測した輝度温度分布は，SO₂ガスの赤外放射と解釈でき，その濃度は約0～20ppmvと推定できた。この値は，気象庁の紫外線による噴煙の断面濃度観測から推定された値と整合的であった。

3-066

時間波形特徴量型MT法に基づく健全変状自動判定法

◎天野椋介・福井杏樹・田邉 造（公立諏訪東京理科大学）

本論文は，MT法に基づく非破壊検査の自動判定法を提案する。提案手法は，（Step 1）従来手法[1]に基づき，観測信号に対して調波打撃音分離（HPSS）を用いて雑音抑圧処理をした後に，（Step 2）雑音抑圧後の波形から変化量(微分特性）と存在量(積分特性）の特徴量を算出する。次いで（Step 3）健全部の特徴量のみから健全部の単位空間を定義することより，未知の観測信号とのマハラノビス距離に基づいた健全と変状の状態を自動で判定する。提案手法の特徴は，(ⅰ) 単位空間を健全部の観測信号のみで定義でき，(ⅱ) 変化量と存在量の特徴量から健全変状判定精度の向上が期待できる。

3-067

バッテリー残量を考慮した位置情報利用型ルーティング

○岡田 康・原 元司・渡部 徹・加藤 聡（松江工業高等専門学校）・釜谷博行（八戸工業高等専門学校）

我々の研究グループでは，大規模災害時に適用可能な緊急通信ネットワークを提案してきた。このネットワークでは，通信機能を有する安価な小型コンピュータに学習オートマトンを組み込んだ独自の位置情報利用型ルーティングα-BGRを導入した。
このα-BGRでは，本来目的の通信ノードまで最短距離を優先してパケット中継を行うが，提案手法では距離に加えて小型コンピュータのバッテリー残量を考慮したパケット中継を行う。
このことにより，通信成功率を維持したうえで，システム全体の稼働をより長く維持できることを確認することに成功した。
本発表では，バッテリー残量を考慮したα-BGRについて報告する。

3-068

粒子フィルタを用いたCOVID-19新規重症患者の推移予測

◎立花如太郎・高木謙輔・松野純男・大星直樹（近畿大学）

感染症対策は現代社会における重要な課題の一つである。我々は，大阪府における新型コロナウイルス感染症の重症患者数データ(2021年2月1日～2021年7月26日)を対象に粒子フィルタを用いて推移の予測を試みたので報告する。本稿では設定ノイズの標準偏差を1から10までの間で0.1刻み，固定ラグの値を7から14までの間で1刻みとして，シミュレーションを行った。週間相加平均のグラフと新規重症患者数の推移予測との誤差を平方根平均二乗誤差（RMSE）で算出したところ，約1.84であった。これは，実データの標準偏差が約11.48であり，予測の誤差が小さいこととから本手法の有用性が示唆された。

3-069

拡張SEIRモデルによるCOVID-19感染予測

◎竹内一成・松野純男・大星直樹（近畿大学）

2020年初頭より感染拡大したCOVID-19は社会に大きな影響を与えた。医療対策立案のためには正確な感染者数の予測が必要である。本稿では，感染予測に適応されるSEIRモデルのS(未感染者), E(潜伏中の感染者), I(感染者), R(隔離, 免疫獲得者)のうち，S(未感染者)を行動に関する自粛の意識レベルに応じて3つのグループに分けてシミュレーションを行った。その際，感染の有無の指標となるPCR検査の感度，特異度，さらに感染率を設定し，大阪の実データにより算出した。拡張SEIRモデルで感染率を2.7%としたとき，シミュレーション値と実データとの差が最も小さいという結果を得た。

3-070

動的ユーザモデルの音楽印象推定への適用

◎周 慧・林 貴宏（関西大学）

音楽推薦システムでは，ユーザごとの音楽に対する感性の違いを考慮したパーソナライズ推薦が重要である。ユーザが抱く音楽に対する印象を推定するためには，学習データとして，ユーザが聞いた音楽に対する印象評価データを収集して分析する必要がある。しかし，新規ユーザの音楽印象推定の場合，データ収集に時間がかかるコールドスタートの問題がある。コールドスタートの問題に対処するための機械学習モデルである動的ユーザモデルが提案されている。本研究では，動的ユーザモデルを，音楽印象推定へと適用し，新規ユーザに対するコールドスタート問題が解決できるか検証実験を行い，その結果を確認した。

3-071

脳波解析及び腸の蠕動運動測定を用いたストレス蓄積計測法の検討

◎鈴木悠真・山野井佑介・阪田 治（東京理科大学）

脳波の量や流れ方を多次元有向情報量と多次元有向コヒーレンスを用いて計測する事で，ストレス蓄積を可視化する手法を開発する研究を行っている。現在，瞬間的なストレスの計測をする手法は存在するが，長期的なストレスの蓄積を可視化する技術は存在しない。その技術の実現が目標である。通常状態とストレス蓄積状態における脳波の確率分布や相関をプログラムを用いて調べる事により，ストレス蓄積状況を把握できる可能性がある。今後はより多くの実験回数をこなす事で正確性を高めていく予定である。また，腸の活動状況をウェアラブル装置を用いて調べ，脳波と心電図との相関を調べる事によりストレス蓄積の指標を作成する予定である。

3-072

統合情報量を用いた異種生体情報因果解析に基づくストレス蓄積評価手法

◎星野瑞貴（東京理科）

可視化できないシステムの統一性を評価できる統合情報量を用いて，異なる物理量の生体信号を掛け合わせることで長期的なストレス蓄積を評価できるシステムを開発する研究を行っている。瞬間的なストレスを評価する手法は存在するが，計測不可能な概念的現象である長期的なストレスを評価する手法は存在しない。そこで実在する物理現象である脳腸相関を用いて，計測不可能な概念的現象を再現し，評価が可能になればストレスにより悪影響を受けた時期を調べられる可能性がある。今後，様々なパターンをシミュレーションで行い，正確性を高めていく予定である。また，複数名に実験を行い，個人差を調べることで，信憑性を高める予定である。

3-073

音楽生成AIを利用したリアルタイムのストレス軽減手法

◎根岸喜勝・神戸英利（東京電機大学）

近年，ストレス社会における精神疾患の増加が深刻な社会問題となっている。仕事中にストレスが溜まりやすい点に着目し，本研究では，場所を選ばず手間をかけずにストレスを軽減する方法として，音楽生成AIの活用を提案する。脈拍計測と感情認識AIを用いてユーザーのストレス状態をリアルタイムに解析し，その状態に応じた音楽を生成する。音楽生成は心拍数から最適なBPMを，感情やストレス状態からコード進行を決定し生成する。生成された音楽を聴取させることでストレス軽減及びリラックス状態の維持を図る。本研究は，現代社会におけるストレス管理の新たな手法を提供し，即時性や汎用性の高いストレス対策としての有用性が見込まれる。

3-074

SNSデータを用いたリアルタイムの仮想通貨価格変動トレンド予測と投資判断支援システムの開発

◎大嶋健人・神戸英利（東京電機大学）

本研究は，SNSデータを活用したリアルタイムの仮想通貨価格変動予測システムの提案を目的としている。仮想通貨市場は高いボラティリティとSNSの影響を受けやすい特徴を持ち，これを分析に活用することで市場予測と投資支援が可能と考えられる。本研究では，SNSコメントを収集・前処理し，センチメント分析を行い，その結果を価格予測に活用するシステムを構想している。提案モデルは，リアルタイム性や精度向上を目指したアプローチを取り入れており，今後の実装や検証を通じて，仮想通貨市場での実用性を確認する予定である。本研究の意義は，短期間の価格変動にも対応可能な市場予測ツールの提供にある。

3-075

リアルタイム性のある表情認識と生成AIを用いた感情認識AIメンターシステム

◎小茂田 諒・神戸英利（東京電機大学）

コロナ禍による社会的孤独感を緩和するため，本研究では表情認識と生成AIを組み合わせたリアルタイム対話システムを提案した。本システムは，顔画像をもとに感情を予測し，そのデータを大規模言語モデル（LLM）に転送して応答を生成する。生成された応答は音声合成APIを介してユーザに返される。評価では，検証した全体の約92%の応答が3秒以内に生成され，リアルタイム性が確認された。また，応答文は概ね自然だったが，部分的に翻訳調の表現が見られることからさらなる改善が必要である。今後は，より繊細な感情分析と自然な応答生成を実現し，ユーザ体験を向上させることを目指す。

3-076

複雑な運動のAIを用いた正確性判定及び改善点フィードバック

◎福田康成・神戸英利（東京電機大学）

この研究は，複雑な運動，特にダンスに焦点を当て，AIとモーションキャプチャ技術を組み合わせた正確性判定およびフィードバックシステムの開発を目指しています。高額な既存システムに代わり，SONY製のモバイルモーションキャプチャ「mocopi」を使用してデータを取得し，AI解析によりリアルタイムで改善点を提示します。これにより，初心者でも効率的かつ安全に技術向上が可能となり，誤ったフォームによる怪我のリスクを軽減します。提案手法では，スマートフォンアプリでデータを校正し，Unityで解析とフィードバック生成を行います。本研究は，低コストで利用可能なシステムを構築し，広範なユーザー層に対するサポートを実現することを目的としています。

3-077

拡散モデルを用いた家庭電力需要データの生成

◎佐川大志・田中謙司（東京大学）

家庭の電力需要データの利活用におけるプライバシー保護を目的に，拡散モデルを用いた擬似データ生成手法を開発した。複数の需要家IDを埋め込み，気温や曜日，祝日などの外的要因を条件付けしながら，1日単位の需要パターンを学習・生成する。学習期間中のコロナ影響により，生成データの累計需要は実データと比較してやや増加したが，ランダムフォレストを用いた予測精度に大きな差は見られず，実データに近い検証が可能であることが示唆された。本手法により，家庭の電力需要データを公開せずとも，研究開発やモデル検証に活用できる擬似データが得られる。今後は地域差や長期系列への対応も課題となる。

3-078

ゼロショット文書分類を用いた文章からの危険性検知に関する検討

◎松村莉子・緒方公一（熊本大学）

現在，生産年齢人口の減少により，労働力不足が深刻化しており，作業支援の必要性が高まっている。一方で，画像キャプショニングなどの画像理解技術により，画像内の状況を文章で説明することが可能になりつつある。本研究室では，画像から現在の状況を把握し，今後起こりうる事態や行動を予測するシナリオを生成することで，人間の行動における危険性の検知や応用を検討している。そこで本研究では，文章から危険を検知するという部分に焦点を当て，その方法を検討した。また，検証結果の評価を行い，どの程度，文章から危険を検知することが可能であるかについて考察した。

3-079

MRR-RAGを用いたLOCAL-LLMに基づく部内情報チャットボットの開発

◎ファム・ドゥクズオン・佐藤 浩・久保正男（防衛大学校）

防衛大学校の学生は，校則を遵守し統制事項を確実に履行することが求められる。ただ，複雑かつ膨大な校則や統制事項を手作業で調べることは，多忙な学生生活の大きな負担となっている。だからといって，CHAT-GPTのような外部のAIシステムの恩恵を受けるために部外秘情報を外部にアップロードすることは許されていない。本稿では，この課題を解決するために開発した「部内情報チャットボット」を紹介する。このシステムは，LOCAL-LLM及び新たに提案したMRR-RAGを活用し，迅速かつ高精度の自動応答を実現することを目指した。本稿を通じて，本システムの設計思想，精度，そして防衛大学校における実用性について詳述する。

3-080

CWGANsによるデータ拡張を用いたショーケース異常検知

◎小山創央・福山良和（明治大学）・村上賢哉・鈴木 聡・飯坂達也（富士電機）

本論文では，ショーケース異常検知において，Conditional Wasserstein Generative Adversarial Networks（以下，CWGANs）によるデータ拡張後，ショーケース異常検知を行う手法を提案する。ショーケースでは，稀に異常が発生することがあり，異常による販売機会の損失防止を目的に高精度に異常検知を行う手法が求められている。従来，様々な方法が提案されてきたが，精度に改善の余地があった。そこで，現在世界中で注目を浴びている生成AIの1種であるGANsを用いて異常検知を行う方法を提案する。CWGANsによるデータ拡張を行った場合と行わなかった場合に異常検知を実施し，比較を行った。その結果，提案法であるCWGANsによるデータ拡張後に異常検知を行う方法の有効性を確認した。

3-081

Ensemble Local Outlier Factorを用いたガスタービン発電機の異常検知

◎加藤雄太・福山良和（明治大学）・村上賢哉・鈴木 聡・飯坂達也（富士電機）

カーボンニュートラルを実現するにあたり，ガスタービン火力発電は重要である。重大事故防止や技術者不足の観点から，AIによるガスタービン発電機の高精度な異常検知が求められている。従来のガスタービン発電機の異常検知には精度向上の余地があったため，本論文ではアンサンブルLOFを異常検知に用いることを提案する。従来法と比較し，AUC値の向上及び計算時間が短縮できることを確認したため，結果を報告する。

3-082

ガウスカーネルSupport Vector Machineを用いたContextual Outlier Interpretationによるガスタービン異常検知の説明

◎尹 家輝・福山良和（明治大学）・村上賢哉・鈴木 聡・飯坂達也（富士電機）

This paper proposes explanation of gas turbine generator anomaly detection using a modified Contextual Outlier Interpretation with Gaussian Kernel Support Vector Machine(AHC-GK-COIN). Since the original COIN employs linear support vector machine (SVM), it is difficult to explain anomaly data in cases where the data distribution is linearly inseparable. Using the proposed method, such anomaly data can be explained correctly. The effectiveness of the proposed AHC-GK-COIN is verified using actual gas turbine generator data.

3-083

Local Interpretable Model-agnostic Explanationsによるショーケースの異常検知の説明

◎設楽涼介・福山良和（明治大学）・村上賢哉・鈴木 聡・飯坂達也（富士電機）

本論文では，冷蔵・冷凍ショーケースの異常検知結果に対しLocal Interpretable Model-agnostic Explanations(以下，LIME)による説明を提案する。提案手法は，実際のショーケースデータを用いて異常に関連する特徴的な変数を確定できることを確認した。

3-084

農作業の軽労化を目的とした収穫作業台車の作業者追従に関する研究 ―作業者状態を考慮した台車制御システムの構築―

◎高松昂洋・都築力司・鳥井昭宏・道木加絵・元谷 卓（愛知工業大学）

現在の日本の労働力不足は農業分野においても深刻な影響を与えている。そこで，筆者らはキャベツの拾い採り作業に着目し，軽労化を目的として収穫時に使用する作業台車（以下，台車）の知能化を目指してきた。従来研究では，3次元点群を用いて台車前方の作業者の状態を識別し，得られた作業者の状態及び作業者―台車間の距離を基に台車制御をするシステムを構築した。作業者状態識別手法は第一歩として2種類の姿勢を対象としていたが，本研究では収穫作業に適したシステムを目指し識別対象となる姿勢の再検討を行う。更には，実機実験によりシステムの有効性の検証を行う。

3-085

加速度センサによる生活振動を用いた行動認識に向けた基礎検討

◎北野雄大・飯島洋祐（小山工業高等専門学校）

近年，幼児や高齢者の見守りの需要が高まっている。カメラを利用した見守りでは，人工知能を活用した解析が可能な一方，プライバシーや設置場所などの課題がある。従来のフロアに設置した加速度センサ情報を利用する行動分類手法に対し，本研究では，MEMS加速度センサを壁に設置し，生活振動を取得して畳み込みニューラルネットワークにより分類する手法を提案する。実験の結果，複数箇所から取得したデータで学習したモデルは在室／不在の二値分類でF値0.90を達成し，別箇所のみのデータで学習した場合でもF値0.85の精度を達成した。これにより，壁に設置した加速度センサによる生活振動を用いた室内見守りの可能性を示した。

3-086

水中物体検出のためのYOLO11における強化検出ヘッド設計

◎ダンタインコン・佐藤 浩・久保正男（防衛大学校）

Underwater object detection remains significant challenges due to computational constraints in underwater robotics. This study introduces an enhanced detection head for YOLO11, incorporating DCNv3-DyHead to improve feature extraction and spatial adaptability, alongside a multi-head architecture for better contextual information utilization. Experiments on DUO and URPC2020 datasets demonstrate mAP improvements of 1.8% and 1.4% over baseline YOLO11, validating the model's effectiveness for computationally efficient underwater detection.

3-087

みつばちドローンに搭載するミッション機器の構成と動作

○清水 聡・松室尭之・後藤 遼・阿野 進（国際電気通信基礎技術研究所）

筆者らは，ドローンにカメラ・ジンバル・花粉の射出装置から成るミッション機器を搭載し，AIにより検出したリンゴの花そうの中心花に向けて花粉を射出する“みつばちドローン”の開発を進めてきた。全体構成は，花粉を射出するミッション，機器を搭載して運ぶフライト機能，その両方を総合管理するソフトウェアから成る。本稿ではミッション機器の構成と動作について説明する。

3-088

変電所での4足歩行ロボット活用に向けた検証

○富木洋一・林 克也・青木康二郎・前川俊浩（東京電力ホールディングス）・飯田真成・武田清充・横田琢也（東京電力パワーグリッド）

電力設備の保守保全を担う要員の高齢化や減少が進む中，巡視・点検の効率化，トラブル発生時の早期確認等のため，変電所でのロボット活用が期待されている。アームで扉を開けることができる4足歩行ロボット（SPOT）を検証対象とし，その機能検証を屋外変電所と地下変電所とで実施した。スペック通りの機能が確認され，変電所において扉開閉や写真撮影を組み込んだ自動走行が可能である。一方，一部変電所の環境整備も必要であることが分かった。

3-089

農作業の軽労化を目的とした作業台車の自律移動に関する研究 ―GNSSを用いた農作業台車の自律移動システム―

◎都築力司・高松昂洋・鳥井昭宏・道木加絵・元谷 卓（愛知工業大学）

近年，少子高齢化の影響により日本の労働力不足は深刻化し，農業分野においても影響を与えている。この問題の解決策としてスマート農業が注目されている。本研究では，キャベツの収穫作業に着目する。この作業では，収穫後に人が作業台車（以下，台車）を操縦し集荷場まで収穫物を運搬する。本研究では，台車の操縦者が箱詰め等の他作業に参加できるよう，台車の自律移動の実現を目指す。本研究では安価なシステム構築を目指し，台車の自己位置推定には単一のGNSSを用いる。これまで，台車を模したテスト開発用電動クローラユニットを用いて自律移動システムの有効性を確認した。そこで，本発表では提案システムを台車に導入することを目指す。

3-090

複雑環境におけるファジィ理論に基づいたロボットの経路計画手法

◎王 昊翔・米山 淳・髙橋佑徳（青山学院大学）

本研究では，複雑環境における自律移動ロボット（AMR）の経路計画性能向上を目指し，ファジィ理論に基づく新しい手法を提案した。従来のDynamic Window Approach（DWA）にてロボットの速度や障害物との距離などを基に評価関数を計算して経路を決定するが，従来手法では障害物回避時に大きく迂回する課題が存在する。これを改善するため，ロボット周囲の障害物との距離や目標点までの距離を入力とし，ファジィ理論を用いて評価関数のパラメータの値をリアルタイムに動的調整する手法を導入した。シミュレーション検証では，障害物配置が複雑である環境において提案手法により経路が従来のDWAに比べ約18.1%短縮され，効率的な障害物回避が可能であることが確認され，AMRの複雑環境への対応力を向上させた。今後は実環境での検証およびさらなる計算効率の向上を検討する。

3-091

構造線情報を利用する自己位置推定精度向上法の提案

◎橋本鵬弘・日高浩一（東京電機大学）

人口減少による労働力不足や宅配サービスなどの増加により,人と協働が可能なロボットが要求されている.これらの運搬ロボットでは自己位置及び環境状況の認識が重要な技術である.現在まで2Dおよび3D各点群データによるSLAMや自己位置推定法が多数提案されている.本発表では室内運搬ロボットを想定した自己位置推定を行い,室内環境の特徴を利用して柱等の特徴線を併用した自己位置推定の精度向上を目指している.本発表では,構造線情報を利用した自己位置推定法を提案し,既知マーカ情報のみの場合と構造線＋マーカ情報を利用した各自己位置推定の実験結果より構造線情報使用可否での位置精度の違いについての検討結果を示す.

3-092

マルチエージェントの合意形成制御

◎吉田侑生・日高浩一（東京電機大学）

環境モニタリング，橋梁やトンネルなどの点検では，センサーを搭載した複数のエージェントが協調して作業を行うことで，省人化や効率の向上が期待できる.その実現には,複数エージェントのフォーメーションの制御法が必要となる.また,一人の人間がすべてのエージェントを同時に操縦することは現実的でないため,少数のエージェントを操縦してフォーメーション全体を動かす仕組みが必要となる.本発表では,リーダーのみに速度指令を与え,それ以外のフォロワーはリーダーの速度に追従する単純な合意制御によってフォーメーション維持を達成できるかどうかを可制御性の観点から確かめ，実際の精度を数値シミュレーションによって検証する.

3-093

子供用手指デバイスAll-in-One Wakkaの試作と基本性能評価

○打田正樹（鈴鹿工業高等専門学校）・高戸 了（名古屋工業大学）・山﨑一德（大同大学）・森田良文（名古屋工業大学）

我々は，手指の巧緻性の改善や認知症の早期発見のために，手指把握力調整能力評価トレーニングデバイス（iWakka）の研究開発を行ってきた。本研究では，その適用範囲を小児疾患の改善に拡大するために，新たなに三種類のWakkaの試作を行った。具体的には直径35mm，45mm，54mmの三種類を製作した。それらの直径の変更に伴い，内蔵される板ばね等の再設計を行った。本稿では，その詳細と性能評価実験結果について述べる。

3-094

遭遇型触覚デバイス用多関節ロボットの試作と評価

◎油田崚市・直江颯祐・民秋 実・白木原香織・打田正樹（鈴鹿工業高等専門学校）

バーチャルリアリティ（VR）の臨場感向上を目的に，視覚に加えて触覚を提示する技術が注目されている。本研究では，操作者への負担が少なく，様々な動作に対応可能な遭遇型触覚デバイス用多関節ロボットを試作し，その性能を評価した。試作ロボットは5自由度であり，力覚センサを搭載し反力提示機能を実現した。評価実験では，追従性能と反力提示精度を測定した。応答速度は設計時に想定した性能を概ね満たし，反力もほぼ一定に提示可能であることを確認した。今後はVR空間での触覚提示を行い，その臨場感などを評価する。

3-095

筆記特徴を用いた発達障害を示す特徴量の検討に関する研究

森 創一朗・◎神戸英利（東京電機大学）

近年，発達障害者の社会進出や合理的配慮をはじめとした支援に注目が集まっている。しかし当事者が社会参加を行うには現在まで十分な支援を必ず受けられるとは限らず，非専門家だけでは発達障害を疑うことすら困難である。結果として自らが発達障害を抱えていると気づけないまま過ごしている人も多く存在している。そのような人に対し簡易に発達障害の傾向を発見することで専門機関へのアクセスを促す一助となることや，特性の検証を行うことで今後さらに有効な支援手法を検討することができると考え，発達傾向ごとに筆跡に現れる特徴量を検討する。

3-096

TLSとなったALS患者のためのERPを利用した脳波意思伝達アプリ

○加納尚之（島根県立大学）

意思伝達能力を損なった筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のための意思伝達補助装置(CA)の開発が切望されている。CAで最も重要な部分は入力装置である。そこで，目標刺激に対して出現する事象関連電位(ERP) の成分であるP200，N200，P300，N400に着目し，完全閉じ込め症候群(TLS)となったALS患者のための触覚刺激によるERP利用した脳波意思伝達アプリを開発した。本研究は島根県立大学出雲キャンパス倫理審査委員会の承認（承認番号188）を得てALS患者を対象として実験を行った。本論文においては，各ERP成分のばらつきと，その波形について分析を行ったので報告する。

3-097

低覚醒状態における低周波帯域脳波の解析

◎関 智仁・伊東嗣功・堂坂浩二・石井雅樹（秋田県立大学）

注意散漫状態の検出には脳波α波帯域や眼球停留関連電位を用いた研究が行われていたが，α波帯域よりも低周波帯域に該当するδ波帯域における検証はされていなかった。そこで，本研究ではδ波帯域脳波と安静開眼時及び安静閉眼時脳波から算出される減衰係数を用いて注意散漫状態の原因となる低覚醒状態の評価を目的とした。実験は安静状態にした被験者の閉眼時脳波と注視点を見ている状態の開眼時脳波をそれぞれ30秒間測定し，測定直前に記録した主観的覚醒度とδ波帯域脳波の減衰係数との関係を調査した。結果として，主観的覚醒度が低い被験者ほど減衰係数の値が小さくなり，簡易的な脳波測定でも低覚醒状態を検出できることが示唆された。

3-098

食事介助における圧力センサを用いた嚥下動作検出システムの考案

○福田博也（神戸大学）

介護施設における食事の際，介護スタッフが少し離れた場所から食事介助が必要な人の嚥下動作の有無を確認できれば，食事ペースをつかめるため，少ない人数の介護スタッフで被介護者全員に対して食事の際のさまざまな配慮ができるようになる。嚥下動作を検出するための取り組みとしては，加速度センサや咽喉マイクロフォンなどを用いたものもあるが，センサの大きさや構造上，介護スタッフが適切な位置に装着することは難しい。
本研究では，介護施設における介護スタッフの食事介助の負担を軽減し，他の介護サービスの質と生産性の向上させるために，容易かつ日常的に装着できるような嚥下センサの開発と嚥下動作検出システムを考案している。

3-099

ペルチェ素子を用いた人体における熱インピーダンス同定

◎小島愛菜・櫻井駿一・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

人間は日常生活において触覚を通じて接触動作から多くの情報を得ている。触覚の中でも，温熱感覚は物理的意味をはじめとする様々な情報の取得に寄与している。本研究では，ペルチェ素子を用いて人体における熱インピーダンスの同定を行う。ペルチェ素子は直流電流の印加により熱流を発生させることができ，従来，温熱感覚のレンダリングに関する研究が様々なされてきた。したがって，ペルチェ素子を用いて人体の熱特性を同定することは，将来の遠距離コミュニケーションや医療現場における貢献が期待される。