一般講演

4-118

複数蓄電池制御によるCレート分布管理手法

○丹下吉雄・綱分智則・小藤健太郎・神通川 亨・藤本 久（富士電機）

再エネ導入拡大に伴い，調整力不足が懸念され，その対策として系統用蓄電池を用いた蓄電所が注目されている。
本発表では，蓄電所の長期運用における課題である効率化と劣化抑制を解決するため，複数の蓄電池を用いて，
充放電時のCレート分布を管理しつつ劣化を抑制する制御方式を開発し，シミュレーションを行った結果を報告する。

4-119

複数クレーンを有する鉄鋼コイル製品倉庫スケジューリングへの並列ACS-GRASP-TSの適用

◎阿部拓海・福山良和（明治大学）・渡辺拓也・飯坂達也（富士電機）

近年，鉄鋼業界は人材不足という課題を抱えていると共に，エネルギーの効率的な使用が求められている。そのため，鉄鋼コイル製品倉庫において作業者の負担が削減や消費エネルギーの削減を目的とした，搬出コイルの選択と移動順序，配置を求めるクレーンスケジューリングは重要な問題である。本論文では，鉄鋼コイル製品を2段まで積み重ねることが可能な複数のクレーンを有する鉄鋼コイル製品倉庫におけるクレーンスケジューリングに対して並列Ant Colony System with Greedy Randomized Adaptive Search Procedure and Tabu Searchの適用を提案する。

4-120

遺伝的アルゴリズムを用いた照明個別制御手法

秋山早弥香・藤原健一・大槻知史・○矢野 亨（東芝）・川越 真（東芝ライテック）

カーボンニュートラル実現に向けて，オフィスの省エネが改めて重要となっている。オフィスでは，多くの業務がPCで行われているが，従来の基準照度500lx はペーパーワークを想定したものであり，PC業務が一般的である現在では，明るさを落として省エネできる可能性がある。また，執務者のいるエリアにのみ，個々の作業に適した照度とする照明制御によって省エネが見込める。一方で，省エネのための照度調整は執務者の作業効率を落とす恐れがあり，これを考慮する必要がある。本発表では，省エネと照度分布の均一性を測る均斉度の両者を考慮した多目的最適化による照明個別制御手法を遺伝的アルゴリズムに基づいて提案する。

4-121

再エネ出力制御の影響を軽減するプレDERMSの導入効果試算

○中村亮介・渡邉敬司・友部 修・曹 民圭・鈴木 敬（日立製作所）・梅川和也・笛木一樹・毛 書悦・大橋将和（日立システムズパワーサービス）

再エネ普及による需給制約や系統混雑に対して，出力制御下で発電事業者の再エネ設備を管理するプレDERMSの効果試算ツールを作成し，ケースランを実施した。プレDERMSは，配電系統情報を使用しないながらも需給制約や系統混雑予測を基に分散電源を対象にメリットある運転計画を立案するDERMSの一つ手前の技術であり，出力制御回避のための蓄電池容量確保の演算が可能である。再エネ抑制率等のパラメータサベイによる評価を行い，以下の結果を得た。(1)同一収支で導入可能な蓄電池容量が増加する (2)単年度収支が改善する

4-122

農業のグリーン化と経済合理性を両立する可搬式蓄電池を活用した支援ソリューションの検討と実証

○Thantip Krasienapibal・安ヶ平裕介・岡本 守・中村宝弘（日立製作所）

北海道岩見沢市で，自立型ナノグリッドとAC/DC弁用可搬式蓄電池（MMFB）を用いた農機具への電力供給の実証実験が行われた。花き設備園芸用の水まきポンプにMMFBを適用した結果，CO2排出量を94%削減し，年間約4.6万円の電気代削減が確認された。今後，農業需要に応じて投資回収年数を5年未満にするためには，短時間使用かつ高出力の複数機器で蓄電池をシェアリングすることが重要である。この取り組みにより，農業経営の効率化と持続可能性が期待される。

4-123

インバータ駆動誘導機の異常診断に向けた特徴周波数推定手法

○岩脇智行・金丸 誠・安原裕登・宮内俊彦（三菱電機）

電流の分析により誘導機の状態を遠隔監視する電流徴候診断技術は点検業務の省人化に貢献する。現状，商用電源駆動誘導機の電流徴候診断は実用化の流れにあるが，省エネの観点から導入が進むインバータ駆動に対しては技術課題が残されている。特に誘導機の異常に起因する特徴周波数成分とインバータ起因のスパイクが電流徴候診断に使用する周波数スペクトルに混在する課題に関しては充分に検討されていない。そこで今回，電流と電圧の測定値に加え，誘導機の特性試験結果を用いることで特徴周波数成分を0.1 Hz以下の精度で特定する手法を開発した。本手法によりインバータ駆動誘導機の異常診断が可能となる見込みである。

4-124

鉄道代行バスにおける環境性能と利便性向上のための一検討

◎高山 涼・石亀篤司・高山聡志（大阪公立大学）

近年人口の減少や自家用車の普及などによる鉄道利用の
減少や，自然災害による線路の断線により多くの地域で鉄
道代行バスが走行している。バスを用いることで比較的低
コストで運用できることや災害時にも迅速に輸送を再開で
きるメリットがある一方で，鉄道代行バスが廃線前の鉄道
の不便なダイヤを引き継ぐことによる沿線住民の利便性や
ディーゼル車によるCO2の排出といった環境性能に課題が
ある。そこで本研究では EV と価値関数を用いた環境性能と利
便性を追求した鉄道代行バスシステムのモデルを提案し
て，環境性能や収支の影響について検討したので報告行う。

4-125

大規模言語モデルを活用した電力需要設備の事故分析システムの検討

◎持田大雅（広島工業大学）・西村和則（名古屋大学）・板井志郎（広島工業大学）・福島宗次（富士電機）・砂山 渡（滋賀県立大学）

高度経済成長期に設置された老朽化が進む電力需要設備では，事故原因の特定や技術継承が課題となっている。本研究はNITEが公開する事故データを活用し，大規模言語モデル（LLM）を用いてケーブル事故の要因や劣化プロセスなどを自動抽出する試みを行った。
具体的にはケーブル事故原因の「部位」「要因」「劣化プロセス」「最終事象」を設定し，LLMで抽出する手法を検討した。専門家との比較により高い一致率が確認できた。一方，情報不足で特定が困難な事例も多数存在し，外部データ活用や専門知識の付与が不可欠である。本研究では，これらの検討を踏まえて得られた劣化プロセス分析精度向上のための知見を報告する。

4-126

実用的な生産シミュレータを用いた初期確率行列設定方法を適用した複数集団整数型Population-Based Incremental Learningと局所探索による加熱炉の階層的最適生産計画

◎任海 晟・福山良和（明治大学）・高橋賢二郎・川口嵩平・佐藤隆臣（三菱電機）

本論⽂では，ある実際の組⽴加⼯系⼯場のバッチ⽣産方式の加熱炉を題材に，炉毎の⽣産割合と製品毎の⽣産開始時間の2つを最適化対象パラメータとして，実⽤的な⽣産シミュレータを用いた複数集団整数型PBILと局所探索による階層的⽣産計画最適化を提案する。進化計算における複数集団は，適用手法によらずに，解の質を向上させることができる可能性がある手法であり，整数型PBILも，複数集団整数型PBILを用いることで解の質の向上が期待できる。本手法は，通常の整数型PBILを用いた場合の手法と比較して，より⽣産コスト削減可能な良質な⽣産計画が得られることを確認した。

4-127

実用的な生産シミュレータとベイズ最適化による改良型生産計画最適化

◎関口珠生・福山良和（明治大学）・髙橋賢二郎・川口嵩平・佐藤隆臣（三菱電機）

従来，実現場向けに生産計画最適化の研究が行われてきた。しかし，従来法では実現場への適用が困難であったり，生産計画立案にシミュレータを用いることにより長時間を要するなど多くの課題点が存在する。今回は，実際の組立加工系工場の研磨工程を対象とした実用的な生産シミュレータとベイズ最適化を用いた生産計画最適化を提案する。ベイズ最適化は，近年多くの分野で注目されている，少ない解の評価回数で良い解を得ることの可能な手法である。決定変数は，生産割合，生産順序，生産開始時間の3つであり，生産割合決定にベイズ最適化を，生産順序，生産開始時間決定にサロゲートモデルと列挙法を適用し，生産計画を立案する。提案法と従来法を比較し，その有効性を確認した。

4-128

大阪・関西万博向けスマートポールの開発

○清水慶一・中村共章・萬本英人（日本ネットワークサポート）・十島政憲・宇野信治・松島義弘・和泉公司・加藤 廉・植村咲希（エネゲート）

2025年に開催される大阪・関西万博に設置するためのスマートポールを開発したので紹介する。ここで，スマートポールとは，通信基地局やWi-Fi，カメラ，街路灯，デジタルサイネージなどを搭載した多機能ポールの総称であり，特に自動運転支援や電動モビリティへの給電などモビリティ分野での活用が期待されている。

4-129

ドローンによる水力発電所の複数階自動巡回点検の実証

○上田紘司・川端俊一・坂本直弥・山上俊輔（東芝エネルギーシステムズ）

普段は無人で運転している水力発電所にドローンを配備し，自動巡回して点検対象を撮影・分析することで，作業員が点検作業のために定期的に現場に出向く回数を削減し，O&Mコストの低減を図ることを目指している。発電所内の広範囲を飛行し，点検対象であるメーター類や漏れ出した油が広がるリスクがある床面などを撮影するためには，幅約1mの狭い階段や通路を通過する必要がある。そこで，距離センサを用いて周囲の障害物を検知し，壁面に接触しないように経路を修正しながら通過するようにした。その結果，実際の水力発電所において，階段や通路を移動して発電機フロアや水車フロアなど複数階にわたる自動巡回ができることを確認した。

4-130

卵キャッチロボットにおける力制御の検討

関根悠介・○浦川禎之（日本工業大学）

近年，日本は高齢化が進んでおり介護ロボットなど人と共存するロボットの需要が増している。人と共存するロボットに於いて衝突緩和は重要な技術である。性能向上させるには積極的に衝撃を軽減する制御方式が必要となる。具体的には衝突検知後は衝撃軽減動作を行い，その後安全な所で停止する卵を受け止めるような動作である。「卵キャッチロボット」の力制御について検討した。具体的には力を直接制御するP制御，PI制御，PD制御について検討し比較実験を行った。

4-131

管内移動・クランプ力のハイブリッド制御モジュール

◎池内拓斗・桑原央明（芝浦工業大学）

配管内点検ロボットは人間の介入が困難な配管の点検に用いられる。年々増加する老朽化配管を点検するため，低コストで適用範囲の広いものが求められる。本研究では，異径配管内での姿勢保持と移動を同時に実現し，複雑形状に適用可能で，対応できる異径配管の配管系の変化の幅が大きい，低コストな力センサレスロボットを提案する。ロボットはモジュール構成になっており，提案するモジュールは2リンク端点駆動型である。リンク端点に駆動輪をつけることで配管内での移動と把持力を両立させる。力センサの代わりに反作用トルク推定オブザーバを用いる。把持力を推定し実際の力と比較し，推定値は実際の把持力に相当することが確認できた。

4-132

力制御グリッパによる把持物体情報のアクティブセンシング

◎横山 稜・桑原央明（芝浦工業大学）

産業分野における自動化の進展に伴い，物体把持の精度向上とコスト削減が求められている。本研究では，センサレスで把持中の物体情報を推定する新しい手法を提案する。具体的には，外乱オブザーバと反力推定オブザーバを組み合わせた力制御グリッパを用いて，対象物に加振を行い，周波数解析を通じて機械インピーダンスを推定する。この手法により，物体の質量，剛性，粘性といった内部状態をリアルタイムで評価可能とした。実験では，静的および動的条件下でのパラメータ推定を行い，提案手法の有効性を検証した。今後は，データ取得方法の改善やモデル精度の向上を図ることで，さらなる適用範囲の拡大を目指す。

4-133

俯瞰情報と駆動力の機能モード統合を用いた協調搬送制御

◎鎌田泰栄・桑原央明（芝浦工業大学）

In recent years, research on cooperative transport using multiple mobile robots has been advancing for emergency rescue and transportation. Particularly in wide-range transportation within factories, the challenge lies in simultaneously controlling the position information of the transported object and the appropriate gripping force according to the object. This study proposes a method to transform the cooperative transport of multiple mobile robots into functional modes, each controlled by wide-range information (overhead information) from cameras and driving force of the mobile robots.

4-134

機械学習による車椅子搭乗者の操縦意図の推定及びパワーアシスト制御の検討

◎山本一敬・小田尚樹（公立千歳科学技術大学）

車椅子搭乗者の操縦支援のために，搭乗者の深度画像から機械学習モデルにより操縦意図を推定し，パワーアシスト制御への応用を検討した。画像分類モデルは畳み込みニューラルネットワークと Long Short Term Memoryから構成され，時系列データに対応している。学習後のモデルによる分類精度を検証し，さらに車椅子実機を用いてリアルタイムでの指令値導出検証を行った。実験結果より，操縦意図の推定について一定の効果を確認し，パワーアシスト制御応用へ向けた検討を行った。

4-135

駆動冗長性の透明化に基づく運動・駆動ハイブリッド冗長ロボットの制御

◎櫻井駿一・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

本研究では，運動学的冗長性と駆動冗長性を併用したハイブリッド冗長性を有するロボットの制御法を提案する。提案手法はインタラクションモード制御の考えに基づく仮想力の導入により駆動冗長性を透明化し，従来の冗長ロボット制御法を適用可能とする点が特徴である。また，外乱オブザーバに基づくロバストな位置と力のハイブリッド制御が実現可能であり，座標変換は仮想仕事の原理より導かれた。平面パラレルロボットを用いた実験により，提案手法の妥当性を実証した。実験では位置と力のハイブリッド制御および運動学的冗長性を活用したサブタスクの遂行がそれぞれ検証された。

4-136

反力推定オブザーバを用いたボール状態予測によるサッカーロボットの高性能化

◎市川陽一・大場 譲（仙台高等専門学校）

自律制御を用いたサッカーロボットの開発を通じて工学の発展を目標とする競技であるRoboCup Soccerの車輪型ロボットの高性能化を目的とし，ボール状態予測の視点から新しい手法を検討する。
本研究で用いる競技用ロボットには，ドリブル機構と呼ばれるボール保持のための機構が取り付けられており，この機構はモータによって駆動する。そこで，モータの入力電流と出力角速度から外部からの反力を推定することができる反力推定オブザーバを実装することでロボットがボールを保持しているときのモータへの反力をもとにボール状態の予測を行う。また，実用を考え反力推定オブザーバと速度制御系を併用した反力推定を行う。

4-137

複合感覚統合による脊椎手術スキルトランスファシステムの開発

◎湯田耀介・横山 稜・楠 鈴香・鎌田泰栄（芝浦工業大学）・岩井宏樹（岩井医療財団）・中村雅也（慶應義塾大学）・下野誠通（横浜国立大学）・大西公平（慶應義塾大学）・桑原央明（芝浦工業大学）

少子高齢化が進む中で医師の減少が懸念されており，手術スキルの伝承（スキルトランスファ）技術の確立が急務である。低侵襲脊椎手術においては，内視鏡で得られる視覚情報と，手術器具を介して得られる振動情報（聴覚，力覚情報）を統合したスキルトランスファ技術が要求される。そこで本研究では，複合現実（MR）空間を利用した視覚・聴覚情報の再現技術と，ハプティクスを利用した環境情報（骨の硬さなどの情報，人間が道具や骨に与える情報，道具が人間や骨に与える情報）の抽出と再現技術を融合する。これにより，視覚・聴覚・力覚の感覚情報を統合したスキルトランスファシステムを開発する。

4-138

高サンプリング信号観測に基づく制御周期内システム同定による適応PID制御の実現可能性

◎宮内太聞・陳 啓歌・石川 潤（東京電機大学）

本稿では，最大50MHzの高速サンプリング，高性能なFPGAによる高速演算が可能なコントローラを用いた，モデルマッチング型適応PID制御の一構成法を提案する。具体的に提案手法は，1制御周期内で高速サンプリングを活用し，制御対象のパラメータを同定し，その結果に基づいてPIDゲインを逐次調整するものである。提案手法の有効性を検証するため，制御対象のパラメータをノミナル値から変動させた場合の，追従性能を確認するシミュレーションを行った。その結果，従来の制御系よりロバストな制御系を構成できる可能性があることが確認された。

4-139

面接触動作情報を推定・伝達するパラレルリンク型遠隔操作ロボット

◎楠 鈴香・桑原央明（芝浦工業大学）

日本では少子高齢化の進行に伴い，陶芸やガラス工芸といった熟練技術を要する製造業で後継者不足が深刻化している。これらの工芸品は長年の経験と感覚に基づく精密な作業を必要とし，面接触を伴う作業が多い。しかし，現在の遠隔操作ロボットは点接触作業に特化しており，面接触作業への対応が十分ではない。本研究では，面接触作業を正確に推定・伝達できる遠隔操作ロボットを提案する。垂直リニアパラレルリンク機構を採用し，高い位置決め精度と運動学解析の容易さを両立させた。本論文では，ロボットの運動学的および力学的モデル，ハイブリッド制御システム，重力補償の詳細を説明し，将来的な実世界への応用と検証についても議論する。

4-140

全方向移動マニピュレータによる物体との仮想姿勢角推定と自律押し動作制御

◎橋本勇大・桑原央明（芝浦工業大学）

本研究では，全方向移動マニピュレータを用いた自律的な押し動作を実現するために，移動ロボットとマニピュレータの連動による押付力を最大化する方法と未知物体に応じた姿勢最適化の方法を提案する。押付力の最大化には，移動ロボットの滑りを考慮した駆動力分配・駆動力制御を用いる。また，姿勢最適化には，マニピュレータに作用する推定外乱を基とする物体との仮想姿勢角を制御する手法を用いる。提案手法により，ロボットの押す力を最大化するとともに，未知物体への柔軟な応用が可能となる。提案手法の有効性を検証するため，外乱を模擬したシミュレーションを行い，駆動力制御に必要なヤコビ行列を実験によって推定した。

4-141

圧電駆動型マイクログリッパにおけるひずみ信号を用いた位置推定の改善検討

◎藤本俊輝・関 健太・岩崎 誠（名古屋工業大学）

マイクロスケール下でのマニピュレーションでは，位置情報と接触環境からの反力を精度よく検出し，それらを操作者に伝達することが必要となる。筆者らは圧電素子で駆動されるマイクログリッパを試作し，ひずみ信号を用いて先端の位置と力が制御可能なことを示した。本論文では，グリッパ先端の位置推定に対して，先端が環境に接触している場合を考慮した推定モデルを新たに提案し，そのモデルを適用した遠隔把持システムの有効性について検討を行った。実験により，新たに構築したモデルを用いることで，グリッパ先端の位置と接触力を精度よく推定することを確認した。

4-142

筋電位を用いたモータのPWM制御に関する基礎検討

◎高木昭瑛（法政大学）・岩波康生（法政）・岡本吉史（法政大学）

現代の日本は，超高齢社会[1]とよばれ，65 歳以上の人口が全人口の21 %を占めている状態である。これに伴い高齢者の心身の活性化を目的とした遊びリテーションシステムの開発などが行われている。
本稿では，認知症のリハビリテーションを促進するため，筋電位[2]をインタフェースとしたPWM制御を提案・開発したので報告する。

4-143

時間カプラを用いた繰り返し動作再現制御

◎増田淑人（慶應義塾大学）・長津裕己（拓殖大学）・桂 誠一郎（慶應義塾大学）

近年，少子高齢化による労働人口の減少により，高度な技術を必要とする熟練技能の継承者不足や喪失が深刻な問題となっている。熟練技能を保存，再現する技術としてモーションコピーシステムが提案されている。産業分野における熟練動作には繰り返し動作が含まれており，保存した動作の力と位置の情報に周期信号発生器を実装することで繰り返し同じ動作を再現する手法が提案されている。保存した動作の終了時と開始時で参照値が連続でない場合急激な動作の変化が生まれる。そこで本研究では，時間カプラを用いることでスムーズな繰り返し動作再現制御を提案する。

4-144

複数のメカナムホイールロボットを用いた障害物回避制御の検討

◎髙田康多・星野貴弘（日本大学）

近年，無人搬送車は物流倉庫や製造工場で広く利用されているが，障害物によって無人搬送車が停止することで搬送効率が低下してしまう。そこで本研究では，複数台の無人搬送車を模擬したマイコンカーを用い，先行車が取得した障害物等の情報を後続車と共有することで，効率的な障害物回避を実現する協調制御手法を提案することを目標とする。先行車のセンサ情報を共有することで，2台目以降のセンサを簡略化できるため，システム全体を低コスト化させる効果が期待される。

4-145

小規模農家を対象とした土壌水分計測に関する研究

○歌谷昌弘（福山大学）

現在，農業従事者の高齢化と減少が進んでおり，これに対応するため，国や自治体はIoTやICTを活用したスマート農業の推進を積極的に支援している。実際，農作業の省力化や効率化を目指したシステムやサービスを提供する企業も増加している。しかし，導入コストなどの課題から，小規模農家がこれらのサービスを個人で利用するには至っていない。著者らはこれまでに構築した環境情報を収集するシステムを基に，小規模ハーブ農家が個人で導入可能な栽培支援システムの検討を進めてきた。本研究では，これまでの検討結果を踏まえ，土壌水分量の計測に最適と考えられるRC発振回路で用いるプローブ用コンデンサについて検討した結果を報告する。

4-146

深層学習を用いた河川流速値の異常判定の検討

◎成田比呂（YDKテクノロジーズ）・宮田統馬（神奈川工科大学）

近年，地球温暖化の影響により河川災害が頻発しており，防災において河川流量の把握が重要である。現在，新たな観測技術のひとつとして電波式流速計による実証実験が行われているが，装置が受ける環境ノイズにより正しい流速の抽出が難しいデータが存在する。こうしたデータは異常データとして人が識別して除外する必要があるが，データ量は膨大となるため自動識別できると省力化に貢献する。本稿では，深層学習を用いて異常な観測データを判定する方法を検討し，その結果について報告する。

4-147

深層学習によるカメラレンズの外観検査に関する検討

○綾田アデルジャン・梁瀬 智（秋田県産業技術センター）・後藤 巧・米田久男（河野光学レンズ）

カメラレンズは光学機器の性能を左右する重要な部品であり，特に医療用カメラレンズでは高い精度と信頼性が求められる。その外観検査は主に実体顕微鏡を用いて行われているが，専門性と長時間の作業負担が大きく，視覚的な疲労や人的ミス，効率性の限界が課題である。また，検査精度を一定に保つことが難しい点も問題視されている。このような背景から，外観検査の自動化が強く求められている。本研究では，深層学習モデルを用いて医療用カメラレンズの外観検査手法を検討し，その結果について報告する。

4-148

製造現場における骨格推定を用いた作業ミス検知技術の検討

◎野間拓耶・鈴木崇大・石河範明・浅野貴正（富士電機）

製造現場では，労働力不足を背景にAI等のデジタル技術を活用した生産ラインの自動化を進めている。しかしながら，緻密な作業が必要な梱包や組立等の工程は自動化が困難であり，人の手作業に依存している。このような工程では，不良や遅延に繋がるような人為的ミスが発生するため，即座にミスを検知し防止する対策が求められている。そこで，深層学習による骨格推定を用いて作業者の骨格情報を推定し，動きや位置情報からリアルタイムに作業ミスを検知するシステムを検討している。
本稿では，製造現場の梱包工程を模擬した作業動画を対象に，作業者の指関節点と作業工程を基にした判定ルールを用いて作業ミスを検知可能か評価した結果を報告する。

4-149

転炉吹錬操業への構造化Deep Learningの適用検討（Ⅰ）－溶鋼温度・溶鋼C濃度予測－

中山日菜子・長野真孟・佐藤美穂・森重直人（JFEスチール）・◎金田龍哉・島崎祐一・吉川 肇（富士電機）

鉄鋼プラントの製鋼工程では，転炉に装入した溶銑に酸素を吹込み，溶鋼を生成する。この一連のプロセスは吹錬と呼ばれ，製品毎の品質に応じて溶鋼の成分調整を行う重要なバッチプロセスとなる。吹錬操業では，目標となる溶鋼温度・溶鋼C濃度に応じて酸素吹込量，副原料投入量の制御を行うため，溶鋼温度・溶鋼C濃度を予測する必要がある。本稿では，鉄鋼プラントの溶鋼温度・溶鋼C濃度予測に対して，構造化 Deep Learningを用いた高精度な予測モデルを提案する。構造化Deep Learningは出力根拠の説明が可能な予測モデルである。JFEスチール西日本製鉄所倉敷地区の実データを用いてシミュレーションを行い，オペレータの感覚と近い説明結果を得られたので報告する。

4-150

転炉吹錬操業への構造化Deep Learningの適用検討（Ⅱ）－酸素吹込量・副原料投入量計画－

中山日菜子・長野真孟・佐藤美穂・森重直人（JFEスチール）・○島崎祐一・金田龍哉・吉川 肇（富士電機）

鉄鋼プラントの製鋼工程では，転炉に装入した溶銑に酸素を吹込むことで，溶鋼を生成している。この一連のプロセスは吹錬と呼ばれ，製品毎の品質に応じて溶鋼の成分調整を行う重要なプロセスとなる。吹錬操業では，オペレータが溶鋼温度・溶鋼C濃度を予測し，溶鋼温度・溶鋼C濃度の目標値を目指して酸素吹込量，副原料投入量の計画を行う。
本稿では，溶鋼温度・溶鋼C濃度の予測モデルをシミュレータとして活用し，酸素吹込量，副原料投入量を計画する手法を提案する。提案手法について，JFEスチール西日本製鉄所倉敷地区の実データを用いてシミュレーションを行い，オペレータの感覚と近い計画結果を得られたので報告する。

4-151

風力発電用レセプタの開発

○箕田充志（松江工業高等専門学校）・上野敏之（島根県産業技術センター）・守谷吉弘（守谷刃物研究所）

近年，風力発電の導入数が増加している。一方，風力発電の主たる故障原因の一つに，落雷による被害があげられる。落雷により風車ブレードが被害を受けるとメンテナンスのため多大な時間と費用を必要とする。
風車ブレードはブレード先端部分に落雷の受雷部として，銅やSUS製のレセプタを取り付け，ブレード内部のダウンコンダクタを通じて落雷電流を流すことで落雷対策を行っている。しかしながら，落雷のエネルギーによってレセプタが溶解・破損する場合がある。
本研究は，落雷のエネルギーを短時間で拡散させる伝熱性と，落雷による衝撃等の機械的応力に対応した，新たなレセプタを開発し，長期間にわたるフィールド試験を実施した。

4-152

電気設備監視への差圧センサの活用

◎小林宏規・福永哲也・千林 暁（日新電機）・河嶋俊之（日本ファシリティ・ソリューション）・小澤正一（東京電力ホールディングス）・梅津聡一朗（関電工）

冷却ファンが必要なPCS設備に着目し，冷却効果と設備内汚損・絶縁低下防止の両立を目的とした高性能吸気フィルタの採用やPCS出力に応じたファン出力制御や各種センシングによる効果確認を実施してきた。効果確認方法最適化の試みとして，冷却ファン運用時にPCS設備内外に発生する圧力差（差圧）を計測する差圧センサを試作し，フィールドでの検証および評価を着手したので報告する。

4-153

Machine Learning-Based Prediction of Excess Power in Photovoltaic Mini Grids

◎Minella Bezha（Doshisha University）・Iacovos I. Ioannou（University of Cyprus）・Naoto Nagaoka（Doshisha University）・Saher Javaid（Japan Advanced Institute of Science and Technology）・Vasos Vassilou（University of Cyprus）

The transition to green energy is essential for addressing environmental issues, with PV mini-grid systems offering decentralized energy production. However, unpredictable power flow from these systems remains a challenge due to varying sunlight conditions. This research uses Machine Learning (ML) to predict excess power generation, improve energy management, and optimize storage. Various ML models are compared to identify GRU as the most effective method for managing power flow, enhancing green energy integration, and reducing waste in residential PV systems.

4-154

持続可能な社会のためのフライホイール電池

○中島篤志（PandaPower/東京電機大学）・六角和夫・中尾清春（PandaPower）・斎藤守弘（モーションシステムテック）・伊東洋一（GSユアサ）・下垣好文（エクセディ）・杉元紘也・佐藤大記（東京電機大学）

化石燃料から再生可能エネルギーに転換するために蓄電池が必須であり，Li-ion電池が普及しつつある。しかし同電池は充放電サイクルによる劣化が避けられず，ランニングコストやリサイクルの点で課題がある。また出力密度はセルの性能で制限されるため，セル性能を超える大出力に対応することは困難である。そこで筆者らは，長寿命で大出力密度，リサイクルも容易なフライホイール電池を提案する。構想から試作，動作テストを行ったので紹介する。

4-155

道路交通システム安全性分析手法の研究

○長澤弘之・阿久津渉了・髙田哲也（京三製作所）

道路交通において,踏切・道路交差点での車両相互間の交通事故等を防ぐことが，システムの安全性について求められる最重要要件となる.この要件について,新たなシステム構築のための安全性要求事項を決め,その後,安全性要求事項に基づき設計要件をまとめる方法を提案する.
STAMPの特徴であるシステム全体を確認できる点と，ガイドワードを使用できる点に着目し,提案手法では，新システムとしてSTAMP/STPAで作成したFTA図と現用システムのFTAと組み合わせることによって,既存システムでは対応が難しい部分についても課題である点を新システムで補完していることを示すことができ,より現実的な安全性解析の抜け防止と安全性評価の精度向上が期待できる.

4-156

SDGsな街乗り電気自動車の研究

◎前澤寧音・神戸英利（東京電機大学）

日本では2035年までに乗用車新車販売を次世代自動車100％にする方針が掲げられ，次世代自動車にはEV・HV・PHV・FCV・CDVが含まれる。2022年には次世代自動車が新車販売台数の57.8％を占め，EVは前年比2.7倍の5万9237台を販売したが，充電時間の長さや航続距離の短さ，急速充電器の設置不足など普及に向けた課題が多い。本研究では，燃料電池と太陽光発電など複数の発電システムを組み合わせ，充放電システムを最適化し，環境負荷を抑えつつ航続距離を大幅に延ばし，充電回数を削減することで，EVの課題解決と普及促進を図り，持続可能な社会の実現を目指す。

4-157

変調充電電流を用いた電気自動車と普通充電器の個体識別手法の開発

◎野村成孝・小平大輔（筑波大学）

再生可能エネルギーの需給調整手段として電気自動車（EV）の充放電が注目されている。しかし，普及が見込まれる普通充電器では，EVと相互の個体識別が実現できておらず，EV充放電を電力システムに統合する上での課題となっている。本研究では，変調充電電流を用いたEVと普通充電器の個体識別手法を提案する。具体的には，充電電流波形の類似度を評価する相関係数に加え，電流の絶対的な値の近さを捉える偏差を組み合わせた新たな評価指標を導入する。実運用環境を想定したシミュレーションの結果，提案手法は従来手法と比較して大幅な精度向上が確認された。特に，EVの電流計測間隔を30秒とした場合，提案手法では100%の識別精度を達成し，実用化における利点が示唆された。

4-158

輪番充電方式電気自動車用充電システムにおけるダイナミック群制御の提案

◎安井璃央・佐藤大記（東京電機大学）

電気自動車複数台同時充電システムにおける輪番充電方式の課題に対し，バッテリの充電状態(SOC)を考慮した動的グルーピングを導入するダイナミック群制御を提案した。SOCの低いEVをグルーピングし，それらを優先的に充電することで，充電時間を短縮できる。シミュレーション結果から，FIFO方式や従来の輪番方式に比べ，充電時間を短縮し，需要電力を効率的に活用できることを確認した。また，群切替周期の設計指針も提示し，実運用における有用性を示した。

4-159

PV充電の不確実性に基づく太陽光発電余剰電力の利用ポテンシャル評価

◎関口陽太・秋元祐太朗・岡島敬一（筑波大学）

PV出力抑制問題を解決するため，PV余剰電力をEV充電に活用する研究が盛んである。しかし従来研究はEV充電行動の不確実性を十分に考慮しておらず，現実の状況を反映しきれていない。本研究では，EVユーザーの充電行動の不確実性を考慮し，PV余剰電力の削減効果を定量的に評価する。具体的には時間帯ごとのPV余剰電力量とEV充電需要を比較し，EV充電によるPV余剰電力の活用度をEV充電マッチング率として算出する。さらに一定のマッチング率を達成するために必要なEV台数を算出することで，EV充電によるPV余剰電力の削減能力を定量的に評価する。

4-160

LC直列回路方式セル電圧均等化回路における多重線形回帰を用いたバッテリ等価直列抵抗の推定

◎関口雄也・佐藤大記（東京電機大学）

電池管理システムにおいて，蓄電装置の長期安定運用を目的としたセル状態監視の精度向上が求められている。本研究では，LC直列回路方式セル電圧均等化回路を用い，バッテリセルの等価直列抵抗（ESR）を機械学習の一つである多重線形回帰により簡易かつ高精度に推定する手法を提案した。シミュレーションでは，学習用および評価用データを基に作成したモデルにより，従来手法と比較してRMSPE=3.65%と高精度でESRを推定可能であることを確認した。また，未知のESR値を含むデータに対してもRMSPE=3.81%を達成し，提案手法の汎用性と実用性の高さを示した。

4-161

電動バイクの自律移動制御

◎塚瀬翔太・桑原央明（芝浦工業大学）

二輪車の自動運転化には，走行時の軌道追従制御性と車体の安定性を確保する必要がある。そこで本研究では電動バイクの自動運転化に向け姿勢制御と軌道追従制御を開発し，それらを両立させる制御方法を構築することを目的とする。姿勢制御では車体を安定化させるため，スライディングモード制御を用いて，ステアリング操作によって車体のキャンバ角を安定化させる。軌道追従制御ではステアリング角の変化に対応するため，path-following制御を用いる。それぞれの制御でシミュレーションを行い，初期姿勢や外乱に対してロバスト性を確認した。また，二つの制御系をスライディングモード制御によって切り換え，不安定時の，車体の姿勢安定性と軌道追経路性を確認した。

4-162

大型商用車向け並列インバータにおける共振抑制・出力電流均等化駆動技術

◎大野友幹・上妻 央（日立製作所）・若林佑一・仲二見信吾・二宮隆典（日立インダストリアルプロダクツ）

並列インバータは電流不均一とユニット並列構成固有の共振発生が課題である。本稿では並列インバータの出力電流均等化と共振抑制を目的に，ゲートパルス時間調整方式とACコアを用いた大容量並列化技術を提案し，実機検証により有効性を明らかにした。

4-163

ディーゼルエンジン排出ガス後処理系における熱源設定値操作法の検討

◎竹野紘一郎・児島 晃（東京都立大学）・山﨑一彦・堤 宗近（日野自動車）

ディーゼルエンジンの開発において，排出ガス浄化性能を向上させることが要求されており，その方策のひとつにはNOxガス浄化触媒であるSCR(Selective Catalytic Reduction)システムの温度を速やかに活性温度域に移行させることが挙げられる。本研究では，エンジン排出ガスを熱源ととらえた制御システムに着目し，様々な運転状態において指定の排出ガス温度を達成する設定値操作法を導く。設定値は，エンジンエアパス系を表すLPV（線形パラメータ変動）モデルから求められ，制約下で過渡特性を最適化することができる。そして提案法の特徴を，いくつかの運転状態におけるシミュレーションにより調べ，提案法が過渡特性を改善していることを確認する。

4-164

誘導加熱コイルのリッツ線代替検討

○伊藤雄一郎（三菱電機）

IHクッキングヒータの誘導加熱コイルにおいて，銅リッツ線の代替としてアルミ単線を検討した。銅リッツ線は交流抵抗の増加を抑制するが，製造コストが高い。アルミ単線を用いることで低コスト化を目指し，コイル損失の観点から実現可能性を検証した。解析および基礎試作コイルによる実測にて検討した結果，巻線間隔を広げることで交流抵抗が低減し，近接効果の影響が小さい中間領域のみ導体幅を広げると効果的であることが確認された。アルミ単線においても，銅リッツ線と遜色ない損失レベルでの実現可能性を得た。

4-165

Observation of discharge light emission from metal objects during MWO operation interruption using a high-speed camera

◎Gonchigsuren Sergelen・Tuvshinzaya Gantulga・Shinya Ohtsuka（Kyushu Institute of Technology）

The authors have demonstrated that fires caused by discharges from a metal object inside a microwave oven (MWO) can be prevented by selectively detecting discharge signals and using the discharge signal to interrupt power supply as a trigger. A commercial solid-state relay (SSR) was initially used for interruption and a MOSFET circuit was developed to achieve a shorter the operating time.
In this study, a high-speed video camera (HSC) was applied to simultaneously capture the light emission phenomena from discharge generation to interruption along with the radiated -EM waves. The relationship between the discharge detection, interruption operations and the corresponding light emission phenomenon was examined.

4-166

GAを用いた電磁型骨伝導デバイスの振動板形状最適化

◎江坂真凜・田島直輝・北川 亘・竹下隆晴（名古屋工業大学）・増田明弘・増田良平・中嶋政広（三光金型）

本研究は，遺伝的アルゴリズム（GA）を用いて，電磁型骨伝導デバイスの振動板形状の最適化を行い，従来のデバイスを上回る性能向上を実現することを目的としている。骨伝導デバイスは，外耳や中耳に障害がある場合でも使用可能であり，騒音環境下でのヘッドセットや補聴器などの用途で注目されている。しかし，従来のスピーカー構造では，骨導音を得るために大きな加振力が必要であり，デバイスの小型化と高推力化が課題となっている。本研究では，三次元有限要素法による解析を通じて，振動板形状を最適化し，振動加速度レベルの向上を目指した。その結果，各周波数における最適化モデルは従来のモデルに比べて平均17.3dBの出力向上を実現した。今後は，複数周波数帯域の同時最適化や実証実験を通じて，さらなる性能向上を目指す。

4-167

磁気飽和起電圧を利用したPMSMセンサレス制御へのマイナーサンプリング処理の導入

◎酒井酒井・岩路善尚（茨城大学）

永久磁石モータの低速センサレス制御として，120度通電をベースとした磁気飽和起電圧(IVMS: Induced Voltage caused by Magnetics Saturation)を利用した方式がある。この方式にはインバータのスイッチ動作に伴うリンギングを避けるための調整が必要であったが，本論文で，ローパス・フィルタとマイナーサンプル処理を導入し，停止状態で6モードを順番に印加して，IVMSを計測する。ここで,
IVMS-N，IVMS-Pは1周期の半分で正と負に分かれるため，同じ相のIVMSを足し合わせることで，その極性からホールIC信号と同様の初期位置情報が得られる。本論文で，この手法において，良好な結果を得たので報告する。

4-168

配電系統の高調波電圧歪みを低減するPFCコンバータ制御における高調波位相の影響

◎近藤健一・八代陸渡・大橋俊介（関西大学）

負荷から発生する高調波電流による高調波電圧歪みは機器の故障の原因となりうる。PFCコンバータは入力電流波形を入力電圧波形に追従するよう制御することで，負荷からの高調波電流を低減するが，入力電圧に高調波成分が含まれる場合，入力電流にも高調波成分が含まれることになる。この電流による電圧降下は配電系統の高調波電圧歪みを低減する。
本研究では，この入力電圧の高調波成分に起因する入力電流の高調波成分が大きくなるように入力電流指令を変更することで，電圧歪みの低減効果を強化する制御を提案した。シミュレーションで動作確認をし，どのような5次高調波位相に対しても電圧歪みを低減する効果があることを確認した。

4-169

カレンダー連携によるホームセキュリティシステムの開発

◎近藤綾香・神戸英利（東京電機大学）

カレンダーの予定に家電を連携させて生活サイクルを隠蔽し，侵入時にはスマホアプリで確認・通報が可能なホームセキュリティシステムの開発をする。具体的には，Googleカレンダーに外出予定が登録されている場合，スマートリモコンを用いて家電を自動的に操作し，外出しているように装うことで侵入を防ぐための事前対策を手軽に実現する。また，窓への衝撃または開閉によって侵入を検知した場合にモバイルアプリに通知を送り，家の内部カメラ映像をアプリで確認する。その状況に応じて自ら110番または119番通報する仕組みを構築する。これにより，簡便かつ有用的なホームセキュリティシステムを目指す。

4-170

電気料金削減と電力の有効活用を可能にするShared Batteryを考慮したEMSの提案

◎大野結人（名古屋大学）・稲垣伸吉（南山大学）・鈴木達也（名古屋大学）

本研究では，大規模太陽光発電設備を有する商業施設内に共用バッテリー（Shared Battery）を設置し，EVユーザーの電力購入と施設との電力取引を可能にするEMSを提案している。モデル予測制御に基づき，EVとShared Batteryの充放電を最適制御する手法を開発し，24時間先までの消費・発電電力予測を用いて10分ごとに制御計画を更新する。計算機実験により，EVがShared Batteryから効率的に充電を行い，太陽光発電が可能な時間帯での充電と不可能な時間帯での放電という運用パターンが確認された。この手法により，再生可能エネルギーの最大活用と系統依存の低減が期待でき，EVユーザーに対して最適な利用方法の提案が可能となる。

4-171

リチウムイオンキャパシタを用いた小規模菜園向けIoT環境モニタの開発

宮本晨平・○嶋田直樹（石川工業高等専門学校）

本研究では，小規模事業者や個人が導入しやすいIoT環境モニタシステムを実現に向けて開発した，環境モニタデバイスについて報告する。菜園の温度，湿度，土壌水分量をLPWANによって事業所，または自宅のPCに定期送信するIoTデバイスを開発した。このデバイスはソーラーパネルとリチウムイオンキャパシタを用いた独立電源によって駆動され，電源がない場所であっても長期にわたって運用することが可能である。冬季の北陸地方を想定した数値シミュレーションによって，運用可能期間を検討しており，1時間あたり5分間の間欠動作とさせることによって，悪天候が続いても連続運用が可能であることを示した。

4-172

閉鎖型栽培装置における熱回路網法を用いた光源の放熱設計のモデル化

◎谷内民聖・安藤 毅（千葉工業大学）

本研究では，伝熱の挙動を効率的かつ包括的に示すため，複雑な栽培条件を単純化し，汎用性の高いモデルとして構築することを目的として研究を行った。このモデル化の過程では，熱の移動に関する現象を電気回路で表現する「熱回路網法」の手法を採用した。さらに，この熱回路網を解くことによって，栽培装置表面の温度や内部の気温を求め，簡易的な実験器との比較を行った。

4-173

施設園芸における温度管理の脱炭素化に向けて：外気温情報を活用した空気熱源式ヒートポンプと燃油暖房機の協調運用

◎石森貴也・菅野颯馬・藤本 悠（早稲田大学）・石井雅久（農業・食品産業技術総合研究機構）・田辺新一・林 泰弘（早稲田大学）

施設園芸における温度管理の脱炭素化に向けて，化石燃料依存の低減策として提案される燃油暖房機と空気熱源式HPを併用したハイブリッド運用では，外気温の低温時に室外機の熱交換器につく霜を取るために発生するデフロスト運転からのCO2排出量が課題である。
本稿では，ハイブリッド運用に加え，外気温情報によりHPの稼働を停止を制御する手法を提案し，エネルギーシミュレーションツールであるTRNSYSを用い，シミュレーションモデルの年間や季節ごとにおけるCO2排出量や一次エネルギー消費量を算出した。比較手法として，燃油暖房機のみの場合と既存の手法の場合も同様に算出し，提案手法の有効性を定量的に確認した。

4-174

モータ電流信号を用いたポンプのエアかみ検知技術の開発

◎神納康宏・篠塚遼太郎・金丸 誠（三菱電機）

工場やビルの空調設備等で用いられるポンプ設備の安定稼働のため，運転時の状態監視を行い異常を検出することが求められる。ポンプの状態監視手法の一つとして，モータ電流信号の解析によりモータおよびその負荷機器の監視を行う，モータ電流徴候解析と呼ばれる手法がある。今回，我々はポンプの状態監視の対象として，エアかみ現象を検知する技術の開発に取り組んだ。本報告では，エアかみ時のモータ電流の特徴および，提案する検知手法について報告する。

4-175

ヒートポンプ用冷媒安定性試験法確立に向けたアーク電圧評価

○伊藤 誠・東 朋寛・橋本克巳（電力中央研究所）

蒸気圧縮式ヒートポンプのサイクルに用いられる冷媒の低GWP化の候補としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を混合した物質が提案されていが，一部のHFOは機器内での連鎖的な自己分解反応による事故リスクが想定されている。
ヒートポンプの実機内では，圧縮機のモーター部分が反応が生じやすい高温高圧の冷媒雰囲気下にあり，また故障時のレイヤーショートが反応連鎖の起点となりうるため，これを防止することが実用上重要である。
そこで，このような自己分解性を持つ冷媒を分類し安全に使用するための指標の標準化が必要となる。本研究では，試験法として有望とみられる発弧線溶断法を対象に，投入エネルギーの制御の知見を得るため，0.7MPaA条件でのフロン中のアークエネルギーの評価について報告する。

4-176

電動機の固定子電流解析によるベルト張力劣化検知技術の開発

◎篠塚遼太郎・神納康宏・金丸 誠（三菱電機）

本報告では，駆動中の電動機の固定子電流情報のみを活用し，電動機と負荷機器の連結に広く利用されているベルトの張力劣化検知手法を提案する。提案手法は，電流時系列データから電流実効値を抽出し，電流周波数解析結果から側帯波スペクトル，尖度，歪度を抽出し，SVM（Support Vector Machine）を用いて張力劣化を診断するものである。ベルトの張力を変化させた試験データを用いて評価した結果，提案手法は負荷の変化に依らずに83%以上の正解率を達成した。また，ベルトの長さとプーリ径の大きさの変化に対しても有効であることを示した。これにより，設備を停止させずにオンライン・リアルタイムでベルトの張力劣化を検知できる見込みを得た。